説明

耐熱性樹脂組成物とその製造方法及びそれを用いた成形品

【課題】環境に悪影響を与える物質を含有せず、耐熱性に優れることに加え、硬化特性に優れると共に、従来のものに比べて硬化物のクッラクやボイドが大幅に改善された耐熱性樹脂組成物とその製造方法及びそれを用いた成形品を提供する。
【解決手段】(A)特定のビスマレイミド化合物、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分として含み、揮発成分の含有量が0.3質量%未満であることを特徴とする耐熱性樹脂組成物とその製造方法及びそれを用いた成形品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4,4’−ジアミノジフェニルメタンを含まず環境への悪影響が少なく、良好な硬化特性を有し、かつ、その硬化物が高度の耐熱性を有し、接着性、機械的特性も良好で硬化物のクッラクやボイドが大幅に改善された耐熱性樹脂組成物であって、例えば成形材料、砥石、ブレーキ、圧粉磁心等だけでなく精密機械の構成材料として好適な耐熱性樹脂組成物、その製造方法及びそれを用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からビスマレイミドと芳香族ジアミンとの反応により耐熱性樹脂組成物が得られている(例えば、特許文献1参照)。このような耐熱性樹脂組成物は、一般に硬化物の電気的、機械的特性、耐熱性が良好であるため、自動車部品、電子電気部品、機械部品等の広範囲の分野に利用されている。また、このような耐熱性樹脂組成物は摺動性に優れることから、機構部品の製造にも多用され、接着性にも優れることから接着剤として使用されている。
しかしながら、耐熱性樹脂組成物を用いて成形加工を行う際に、クッラクやボイドが発生してしまい、精密機械には使用できないという欠点があるため、これらの向上が要求されている。
【0003】
また、耐熱性樹脂組成物には、環境への配慮から4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)を用いないことが求められている。4,4’−ジアミノジフェニルメタンは環境に悪影響を与える物質であり、耐熱性樹脂組成物の製造時のみならず、その成形時及び成形品の使用時における環境及び人体への影響が懸念されている。
一方、本発明者らは、4,4’−ジアミノジフェニルメタンを用いることなく耐熱性を向上させるため、特定のポリイミドを導入した樹脂組成物を提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭46−23250号公報
【特許文献2】特開2005−82628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、環境への配慮から4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を用いない耐熱性樹脂組成物を精密機械分野へ利用すること、加えて該耐熱性樹脂組成物を用いて成形加工を行っても、クッラクやボイドが発生せず、精密機械に使用できる程度の、これらの向上が求められている。
【0006】
本発明は上述した状況に鑑みなされたものであって、環境に悪影響を与える物質を含有せず、耐熱性に優れることに加え、硬化特性に優れると共に、従来のものに比べて硬化物のクッラクやボイドが大幅に改善された耐熱性樹脂組成物とその製造方法及びそれを用いた成形品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、(A)特定の化学式で表されるビスマレイミド化合物、(B)特定のアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分とし、有機溶剤等の揮発成分の含有量が0.3質量%未満である耐熱性樹脂組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記の耐熱性樹脂組成物とその製造方法及びそれを用いた成形品を提供する。
【0008】
1.(A)下記化学式で示されるビスマレイミド化合物、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分として含み、揮発成分の含有量が0.3質量%未満であることを特徴とする耐熱性樹脂組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、R1は少なくとも2個の炭素原子を含む2価の基を示す。]
2.(A)ビスマレイミド化合物を115〜150℃で加熱脱気処理することにより、揮発成分を0.3質量%未満にしたものであることを特徴とする上記1に記載の耐熱性樹脂組成物。
3.(A)ビスマレイミド化合物成分と(B)アミノフェノール類とを150〜200℃、80hPa以下で加熱溶融混練したのち、(C)エポキシ樹脂を添加し混練することにより、揮発成分を0.3質量%未満にしたものであることを特徴とする上記1又は2に記載の耐熱性樹脂組成物。
4.上記1〜3のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
5.(A)下記化学式で示されるビスマレイミド化合物、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分として含み、揮発成分の含有量が0.3質量%未満である樹脂組成物の製造方法であって、下記(a)、(b)及び(c)の少なくとも一つの処理を施すことを特徴とする耐熱性樹脂組成物の製造方法。
(a) 前記(A)成分を115〜150℃で加熱脱気処理する。
(b) 前記(A)成分と(B)成分とを混練したのち、前記(C)成分を添加し、混練する方法において、(A)成分と(B)成分とを150〜200℃、80hPa以下で加熱溶融混練する。
(c) 前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む樹脂組成物を、150〜200℃、80hPa以下で加熱溶融混練する。
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、R1は少なくとも2個の炭素原子を含む2価の基を示す。]
【発明の効果】
【0013】
本発明は、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の環境に悪影響を与える物質を含有せず、(A)特定の化学式で表されるビスマレイミド化合物、(B)特定のアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分とし、揮発成分である有機溶剤等の含有量を0.3質量%未満とすることにより、環境への悪影響が極めて少なく、耐熱性に優れることに加え、硬化特性に優れると共に、従来のものに比べて硬化物のクッラクやボイドが大幅に改善された耐熱性樹脂組成物、その製造方法及びそれを用いた成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[耐熱性樹脂組成物]
本発明の耐熱性樹脂組成物は、(A)特定の式で表されるビスマレイミド化合物〔以下、単に(A)ビスマレイミド化合物と称す〕、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類〔以下、単に(B)アミノフェノール類と称す〕及び(C)エポキシ樹脂を必須成分とするものである。
【0015】
(A)ビスマレイミド化合物
(A)ビスマレイミド化合物は下記化学式で示されるものである。
【0016】
【化3】

【0017】
上記化学式中、R1は少なくとも2個の炭素原子を含む2価の基を示す。
(A)ビスマレイミド化合物としては、例えばN,N’−3,3’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−パラフェニレンビスマレイミド、N,N’−メタフェニレンビスマレイミド、N,N’−(2−メチルメタフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド及びN,N’−(3,3’−ジフェニルスルフォン)ビスマレイミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明における(A)ビスマレイミド化合物は、芳香族ジアミンと無水マレイン酸とを反応させることによって製造することができる。このとき溶剤としてカルボン酸又は芳香族系の有機物を使用するが、本発明の耐熱性樹脂組成物を用いた製品中にこれらの有機溶剤が残留すると成形品のクラック、ボイドが発生しやすくなることがわかった。そのため、本発明の耐熱性樹脂組成物は、後述の方法により上記有機溶剤等の揮発成分の含有量を0.3質量%未満とすることを要する。
本発明の耐熱性樹脂組成物においては、(A)成分は115〜150℃で加熱脱気処理したものであることが好ましい。
【0019】
(B)アミノフェノール類
(B)アミノフェノール類は、硬化剤としての役割を有するものであり、主として(A)ビスマレイミド化合物や(C)エポキシ樹脂を硬化させるために加えられるものである。
(B)アミノフェノール類は、1分子中に第1級アミノ基とフェノール性水酸基とを有するものであり、例えばオルトアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、2−(4−アミノフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−アミノ−4−クロロフェノール及び2−アミノ−4−クレゾール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(C)エポキシ樹脂
(C)エポキシ樹脂は、主として耐熱性樹脂組成物の接着性を向上させるために加えられる。(C)エポキシ樹脂は特に制限されるものではなく、一般に知られているものを広く使用することができる。
(C)エポキシ樹脂としては、例えばフェノール又はアルキルフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合物をエポキシ化することによって得られるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、テトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンのエポキシ化物及びビスヒドロキシビフェニル系エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(C)エポキシ樹脂は、良好な反応性、成形性等を得るために、分子量が1000〜3000程度の固形エポキシ樹脂が好ましい。このようなものとしては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂のエピコート1000シリーズ(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)等が挙げられる。この(C)エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(含有量)
(A)ビスマレイミド化合物、(B)アミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂の含有割合は、これら(A)〜(C)成分の合計量100質量%のうち、(B)成分の含有量を5〜20質量%、(C)成分の含有量を5〜20質量%とすることが好ましい。
(B)成分の含有量が5質量%以上であれば反応性が良好であり、硬化特性が向上し、20質量%以下であれば組成物の粘度が増加し過ぎず成形性が良好なものとなり、硬化物の機械的特性及び耐熱性も良好なものとなる。
また、(C)成分の含有量が5質量%以上であれば反応性が良好であり、硬化特性が向上し、20質量%以下であれば組成物の粘度が増加し過ぎず成形性が良好なものとなり、硬化物の機械的特性及び耐熱性も良好なものとなる。
【0023】
さらに、(A)成分及び(B)成分の含有量が、(B)アミノフェノール類のアミノ基数と(A)ビスマレイミド化合物の不飽和結合数との比〔(B)アミノフェノール類のアミノ基数/(A)ビスマレイミド化合物の不飽和結合数〕が、0.1〜0.5となるように調整することがより好ましい。この比が0.1以上であれば硬化反応が十分に進行し、0.5以下であれば硬化物の物性、特に耐熱性が低下することなく好ましい。
【0024】
(硬化促進剤)
上記(A)〜(C)成分の他に、本発明の耐熱性樹脂組成物に速やかな硬化性を付与させるため、硬化促進剤を含有させることが好ましい。
使用することができる硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂組成物を硬化させるために一般に用いられているものであれば特に制限されるものではなく、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニルホスフィン)、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン及びビス(ジフェニルホスフィノ)メタン等の有機ホスフィン化合物;2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール及び2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物又はその誘導体;DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデンセン−7)又はそのフェノール塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
硬化促進剤の含有量は、硬化促進剤の種類によって触媒活性が異なるため一概にその好適量を決めることはできないが、(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。0.1質量部以上であれば硬化特性の向上が発現でき、5質量部以下であれば流動性及び製造性が低下することなく、また硬化物の耐熱性も低下しない。
【0026】
(添加剤)
本発明の耐熱性樹脂組成物は、本発明の目的に反しない限度において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、粒子状もしくは繊維状の有機又は無機充填材、離型剤、着色剤、カップリング剤等を添加してもよい。
他の熱硬化性樹脂としては、例えば耐熱性の高いポリアミドイミド等、離型剤としては合成ワックス、天然ワックス、エステル類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド類、パラフィン類等、着色剤としてはカーボンブラック等が挙げられる。
【0027】
また、粒子状もしくは繊維状の有機又は無機充填材は硬化物の機械的特性等を向上させるために加えられ、例えば四フッ化エチレン重合体等の有機充填材、シリカ、マイカ、金属酸化物、ダイヤモンド、グラファイト及びカーボン等の無機充填材が挙げられる。
粒子状もしくは繊維状の有機又は無機充填材を添加する場合、(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して、100質量部以上添加することが好ましい。粒子状もしくは繊維状の有機又は無機充填材を100質量部以上添加することで、本発明の耐熱性樹脂組成物の硬化特性を向上させ、成形性をさらに向上させることができる。
【0028】
[耐熱性樹脂組成物の製造方法]
本発明の耐熱性樹脂組成物の製造方法は、(A)前記化学式で示されるビスマレイミド化合物、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分として含み、揮発成分の含有量が0.3質量%未満である樹脂組成物の製造方法であって、下記(a)、(b)及び(c)の少なくとも一つの処理を施すことを特徴とする。
(a) 前記(A)成分を115〜150℃で加熱脱気処理する。
(b) 前記(A)成分と(B)成分とを混練したのち、前記(C)成分を添加し、混練する方法において、(A)成分と(B)成分とを150〜200℃、80hPa以下で加熱溶融混練する。
(c) 前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む樹脂組成物を、150〜200℃、80hPa以下で加熱溶融混練する。
【0029】
具体的には、(A)ビスマレイミド化合物(例えば、平均粒径2〜200μmの粉末)、(B)アミノフェノール類(例えば、平均粒径2〜200μmの粉末)及び(C)エポキシ樹脂(例えば、平均粒径2〜200μmの粉末)を用意し、
(a) (A)成分を90〜110kPa程度の圧力下、115〜150℃で加熱脱気処理してもよいし、
(b) (A)成分と(B)成分とを150〜200℃、80hPa以下で均一に混合して、熱ロール又はニーダー等により加熱溶融混合処理を行ってもよく、
(c) (A)〜(C)成分を150〜200℃、80hPa以下で均一に混合して、熱ロール又はニーダー等により加熱溶融混練処理を行ってもよい。
あるいは、上記(a)〜(c)の処理を二つ以上組み合わせて行ってもよく、特に上記(a)と(b)とを組み合わせて行うことが好ましい。
上記のような処理を施したのち、冷却固化させ適当な大きさに粉砕することにより、揮発成分が0.3質量%未満である耐熱性樹脂組成物を製造する。
【0030】
[成形品]
前述した製造方法により製造された本発明の耐熱性樹脂組成物は、例えば低圧トランスファー、射出成形、圧縮成形等の成形方法を用いて成形品を製造するために用いることができる。また、成形は成形温度約200〜230℃で行うことができる。
本発明の耐熱性樹脂組成物は4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を含まないため環境への悪影響が少なく、硬化特性に優れ、硬化物の特性、特に耐熱性に優れており、さらに成形時のクッラクやボイドが少ないため、例えば成形材料、砥石、ブレーキ、圧粉磁心等の電気・電子分野、自動車分野における各種精密部品の構成材料として好適に用いることができ、接着剤としても用いることができる。
【実施例】
【0031】
実施例により本発明を説明する。なお、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下に示す実施例1〜6、比較例1〜3は、樹脂組成は変わらず、実施例1と実施例2とは、(A)ビスマレイミドの製造元(製造に使用した溶媒)が異なり、実施例1,3〜6及び比較例1〜3はそれぞれ製造工程が異なる。
【0032】
[実施例1]
(A)ビスマレイミド(A社製)78.3質量%、(B)メタアミノフェノール(商品名、住友化学工業株式会社製)7.4質量%、(C)エピコート1004(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、分子量 約1650)5.6質量%、(C)エピコート1007(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、分子量 約2900)8.7質量%を用い、
140℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を170℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
なお、A社製のビスマレイミドは、酢酸を溶媒として製造されたものである。
【0033】
[実施例2]
(A)ビスマレイミド(B社製)78.3質量%、(B)メタアミノフェノール(商品名、住友化学工業株式会社製)7.4質量%、(C)エピコート1004(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、分子量 約1650)5.6質量%、(C)エピコート1007(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、分子量 約2900)8.7質量%を用い、
140℃、1時間で(A)B社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を170℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
なお、B社製のビスマレイミドは、キシレンを溶媒として製造されたものである。
【0034】
[実施例3]
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
140℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を150℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
【0035】
[実施例4]
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
140℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を190℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
【0036】
[実施例5]
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
140℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を130℃、大気中で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
【0037】
[実施例6]
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
加熱ニーダーにより(A)A社製のビスマレイミド及び(B)成分を170℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
【0038】
[比較例1]
実施例1で(A)ビスマレイミドの脱気処理をせず、加熱溶融混合処理を130℃、大気圧下で行ったほかは、同様にして樹脂組成物を得た。
【0039】
[比較例2]
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
110℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を130℃、大気中で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、樹脂組成物を得た。
【0040】
[比較例3]
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
加熱ニーダーにより(A)A社製のビスマレイミド及び(B)成分を130℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、樹脂組成物を得た。
【0041】
[評価方法]
次に、実施例1〜6、比較例1〜3の樹脂組成物について、ゲルタイム、揮発成分を測定すると共に、それらの硬化物について耐熱性の評価として抗折強度、5%質量減少温度、ボイド数、クラック数を測定し評価した。測定方法は下記のとおりであり、結果を表1に示す。
【0042】
(ゲルタイムの測定)
200℃に保たれた熱板状で一定量の樹脂組成物を直径4〜5cmの円上に広げ、一定速度で練り合わせたときの樹脂組成物が増粘し最終的に粘りのなくなった時間を測定した。
(抗折強度の測定)
樹脂組成物を60mm×10mm×5mmの大きさに成形(圧力800N/mm2)し、この成形品を温度350℃、30分間空気中で焼成し、試験片を作製した。この試験片を用い、JISK6911に準拠して行った。
(5%質量減少温度、揮発成分の測定)
TG−DTA(セイコーインスルメンツ社製)を用い、昇温速度10℃/分で、上記と同様に作製した試験片を用い測定した。5%質量減少温度の測定は、質量減少が5%となる温度を測定し、揮発成分の測定は、170℃における質量減少の値を測定した。
(ボイド数、クラック数の測定)
樹脂組成物を直径50mm、厚さ4mmに成形(圧力800N/mm2)し、この成形品を温度350℃、30分間空気中で焼成し、試験片を作製した。この試験片の円面を研磨し、50μm以上のボイド数を測定した。クラック数は、5mm以上のクラック数を測定した。なお、ボイドの数は5個以下が好ましく、クラック数は0個のものが好ましい。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から、実施例の樹脂組成物は、比較例の樹脂組成物に比べ、抗折強度、耐熱性を損なうことなく、また、ビスマレイミド化合物の製造方法に依存することなく揮発成分、ボイド数、クッラク数が減少することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の耐熱性樹脂組成物は、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を含まないため環境への悪影響が少なく、良好な硬化特性を有し、また、その硬化物が高度の耐熱性を有し、機械的特性も良好であり、成形時のボイド数やクッラク数が少ないことから、例えば成形材料、砥石、ブレーキ、圧粉磁心等だけでなく精密機器への構成材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記化学式で示されるビスマレイミド化合物、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分として含み、揮発成分の含有量が0.3質量%未満であることを特徴とする耐熱性樹脂組成物。
【化1】

[式中、R1は少なくとも2個の炭素原子を含む2価の基を示す。]
【請求項2】
(A)ビスマレイミド化合物を115〜150℃で加熱脱気処理することにより、揮発成分を0.3質量%未満にしたものであることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)ビスマレイミド化合物成分と(B)アミノフェノール類とを150〜200℃、80hPa以下で加熱溶融混練したのち、(C)エポキシ樹脂を添加し混練することにより、揮発成分を0.3質量%未満にしたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
【請求項5】
(A)下記化学式で示されるビスマレイミド化合物、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分として含み、揮発成分の含有量が0.3質量%未満である樹脂組成物の製造方法であって、下記(a)、(b)及び(c)の少なくとも一つの処理を施すことを特徴とする耐熱性樹脂組成物の製造方法。
(a) 前記(A)成分を115〜150℃で加熱脱気処理する。
(b) 前記(A)成分と(B)成分とを混練したのち、前記(C)成分を添加し、混練する方法において、(A)成分と(B)成分とを150〜200℃、80hPa以下で加熱溶融混練する。
(c) 前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む樹脂組成物を、150〜200℃、80hPa以下で加熱溶融混練する。
【化2】

[式中、R1は少なくとも2個の炭素原子を含む2価の基を示す。]

【公開番号】特開2011−126999(P2011−126999A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286768(P2009−286768)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】