説明

耐熱透明A−PET容器

【課題】電子レンジで直接加熱される食品容器において、150℃まで耐え得る高耐熱性及び高透明性を確保できるようにする。
【解決手段】A−PETシート1を加熱して一軸一次延伸後、一次熱固定した延伸A−PETシート7と、OPPフィルムとを貼合して一体化した積層シートを、熱成形機の金型で加熱成形し成形による二次延伸後、同じ金型内で二次熱固定する。延伸A−PETシート7が、ロールによる延伸装置を用い、A−PETシート1を延伸温度90〜120℃でMD方向に2〜4倍一軸一次延伸された後、延伸温度より5〜20℃高い温度で一次熱固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンビニエンスストア等において食品を収納して販売するための食品容器に関し、さらに詳しくは、油分を含む食品が電子レンジ加熱で上昇する150℃でも変形がない耐熱性を有するとともに、優れた透明性を有する耐熱透明A−PET容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア、デパート、スーパー等の食品売場おいては、トレー、カップ、丼容器等の食品容器に、惣菜、麺類、サラダ等の食品が詰められて売られている。このような食品容器は、食品を収納する容器本体と、容器本体を密封する蓋体とで構成されており、一般に、容器本体は、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、フィラー入りポリプロピレン、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、耐熱発泡ポリスチレン、A−PET(Amorphous PET)等のシートを真空、圧空、真空・圧空成形機で熱成形して製造されている。また、蓋体は、A−PET、ニ軸延伸ポリスチレン(OPS)、ポリプロピレン(PP)等のシートで形成されている(特許文献1参照)。
また、近年、一軸延伸されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが、高透明で耐熱性があることからIT関連のタッチパネルや液晶表示素子として用いられてきている(特許文献2、3、4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−329972号公報
【特許文献2】特開2000−82335号公報
【特許文献3】特開2000−82336号公報
【特許文献4】特開平5−165035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、コンビニエンスストア等で購入した食品を、食品容器に収納された状態でそのまま電子レンジで温めることが日常的に行なわれているが、このように食品を食品容器ごと電子レンジで温めると、油分を含む食品は150℃ぐらいまで温度が上昇するものであった。したがって、食品容器には、150℃まで耐え得る高耐熱性が要求されている。
さらに、食品容器においては、中身食品が一目でクリアに認識でき、商品性を向上させるために、高透明性が要求されている。
【0005】
しかしながら、上述した従来使用されている各種シートにおいては、高耐熱性と高透明性との2つを同時に満足するものが存在しなかった。すなわち、これらの各種シートの内、高透明性を有するものとしては、A−PETシートとOPS(ニ軸延伸ポリスチレン)シートとがあるが、これらのシートは、70℃ぐらいで軟化し、高耐熱性を有するものではなかった。また、PPシートは、高耐熱性を有するが、透明性が劣るものであった。
【0006】
なお、タッチパネル等に用いられる一軸延伸されたPETフィルムは、高透明性かつ耐熱性であるが、特許文献2にも記載されているように、TD(横)一軸延伸後220℃で熱固定されており、加熱しても伸びがなく熱成形機で成形することは不可能である。
【0007】
以上のように、従来、電子レンジで直接加熱される食品容器においては、高耐熱性及び高透明性を要望されていたが、これら両者を同時に満足する食品容器は未だ提案されていなかった。
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたもので、高耐熱性と高透明性を有する食品容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討し、高透明性を有するA−PETシートやOPSシートに着目し、これらのシートの耐熱性を改善することにより課題を達成することができると考えた。しかしながら、OPSシートは、残留モノマー、ダイマーやトリマー、添加剤の溶出による安全衛生性上の懸念があり、食品安全衛生性に優れているA−PETシートの耐熱性を改善することを検討した。
【0010】
本発明者らは、以上の検討の結果、A−PETシートの耐熱性を改善することについて鋭意検討し、A−PETシートを延伸による配向結晶化と熱固定による結晶化によって結晶化度を上げることによって、150℃にも耐え得る高耐熱性を付与することが出来ること、また、一軸延伸による裂け易さを防止するため二軸延伸されたOPPフィルムを積層することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
請求項1に係る耐熱透明A−PET容器は、A−PETシートを加熱して一軸一次延伸後、一次熱固定した延伸A−PETシートと、OPPフィルムとを貼合して一体化した積層シートを、熱成形機の金型で加熱成形し成形による二次延伸後、同じ金型内で二次熱固定したことを特徴として構成されている。
【0012】
請求項2に係る耐熱透明A−PET容器は、延伸A−PETシートが、ロールによる延伸装置を用い、A−PETシートを延伸温度90〜120℃でMD方向に2〜4倍一軸一次延伸された後、延伸温度より5〜20℃高い温度で一次熱固定されたことを特徴として構成されている。
【0013】
請求項3に係る耐熱透明A−PET容器は、延伸A−PETシートの下記の式で示される結晶化度が22%以上30%未満であることを特徴として構成されている。
【数1】

【0014】
請求項4に係る耐熱透明A−PET容器は、OPPフィルムが、MD方向及びTD方向の延伸倍率が3〜6倍、面積倍率が9〜36倍となるように二軸延伸された後、MD及びTD方向ともに弛緩させて熱固定を行い、120℃グリセリン浴の収縮率がMD及びTD方向ともに0.5〜10%であることを特徴として構成されている。
【0015】
請求項5に係る耐熱透明A−PET容器は、積層シートを、80〜150℃で加熱成形して二次延伸し、同じ金型内で130〜155℃で二次熱固定することを特徴として構成されている。
【0016】
請求項6に係る耐熱透明A−PET容器は、前記二次延伸後、二次熱固定された容器のA−PET層の下記の式で示される結晶化度が30%以上であることを特徴として構成されている。
【数1】

【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る耐熱透明A−PET容器に於いては、一軸一次延伸・一次熱固定工程において、A−PETシートの結晶化度を熱成形出来る範囲内で大きくし、さらに二次延伸・二次熱固定工程に於いて、積層シートを容器の形状に成形すると同時に、延伸A−PETシートの結晶化度をさらに大きくして耐熱性を向上させ、その結果、150℃にも耐え得る容器としての耐熱性を付与している。また、二軸延伸したOPPフィルムを積層しているので、延伸A−PETシートの横方向の力に裂け易い欠点を補って容器としての強度を保持している。
【0018】
請求項2に係る耐熱透明A−PET容器に於いては、A−PETシートを延伸温度90〜120℃でMD方向に2〜4倍一軸一次延伸した後、延伸温度より5〜20℃高い温度で一次熱固定することにより延伸A−PETシートを形成しているので、透明性を維持しつつ、結晶化度を20%以上30%未満にコントロールできる。また、ロールによる簡単な設備で安く製造することが出来る。
【0019】
請求項3に係る耐熱透明A−PET容器に於いては、延伸A−PETシートの下記の式で示される結晶化度を、22%以上30%未満とすることにより、熱成形出来る結晶化度であり、次の二次延伸・二次熱固定工程で高耐熱性が得られる結晶化度30%以上にすることが出来る。
【数1】

【0020】
請求項4に係る耐熱透明A−PET容器に於いては、OPPフィルムがMD方向及びTD方向の延伸倍率が3〜6倍(面積倍率が9〜36倍)となるように二軸延伸した後、MD及びTD方向ともに弛緩させて熱固定を行い、120℃グリセリン浴の収縮率がMD及びTD方向ともに0.5〜10%であるので、高透明であり熱成形出来るフィルムである。
【0021】
請求項5に係る耐熱透明A−PET容器に於いては、積層シートを80〜150℃で熱成形して二次延伸し、同じ金型内でPETの最適結晶化温度の範囲内である130〜155℃で二次熱固定することにより、透明性を維持しつつ、配向による結晶化と熱固定による結晶化とによって(耐熱透明A−PET容器に積層されている)延伸A−PET層の結晶化度を30%以上とすることが出来る。
【0022】
請求項6に係る耐熱透明A−PET容器に於いては、二次延伸・二次熱固定後の延伸A−PET層の下記の式で示される結晶化度を30%以上にすることにより、高透明で150℃の高耐熱性を付与することが出来る。
【数1】

【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の耐熱透明A−PET容器は、A−PETシートを用いるものであり、このA−PETは、非結晶状態であり、その結晶化度は大略5〜7%のものである。A−PETシートとしては、一般に市販されているA−PETシートを用いることができ、A−PETシートに用いる樹脂は、固有粘度(IV値)が高いものであることは必要ではないが、固有粘度が0.6dL/g以下の樹脂や、回収PETボトルのフレークを用いた樹脂から成形したシートだと表面性が良好でない場合があるので特別な前処理が必要である。
【0024】
以上のようなA−PETシートを一軸一次延伸後、一次熱固定して延伸A−PETシートを形成する。延伸A−PETシートを形成するには、予め成形して得たA−PETシートを延伸しても、Tダイ成形機で成形直後のA−PETシートをインラインで延伸手段に送り込んでもよい。
【0025】
一軸一次延伸の延伸温度は、90〜120℃が好ましく、95〜110℃がより好ましい。延伸温度が90℃未満であると、A−PETシートが延伸される際に張力が掛かりすぎて延伸ムラを起こして、延伸A−PETシートの偏肉が起こり易くなり、また120℃を超えると、シートが白濁気味となるとともに、表面肌あれも発生し、透明で良好な延伸A−PETシートが得られない。
【0026】
延伸倍率は、2〜4倍が好ましく、2.6〜3.7倍がより好ましい。延伸倍率が2倍未満であると、示差走査熱量計(DSC)測定から冷結晶化点が観測され、結晶化度が22%未満となって後述する熱成形で成形体が白化してしまう。また、4倍を超えると延伸時に延伸ロールでスベリが起こり易くなり、滑った部分と滑らない部分が発生するので、延伸A−PETシートに横波模様が発生するものである。
【0027】
延伸装置としては、例えば、加熱ロールを用いた延伸装置を用いることができるが、この加熱ロールの短区間の1段延伸でも、2段延伸以上の多段延伸であってもよい。
【0028】
一次熱固定の温度は、特に限定されないが、アニールによる配向緩和をさせる観点から延伸温度より5〜20℃高い温度が好ましい。熱固定温度が、延伸温度より5℃より高くないと、延伸A−PETシートの熱収縮率が大きくなり、また、延伸温度より20℃より高いと、表面に肌荒れが起こり白化気味となる。
【0029】
なお、上記熱固定温度の範囲において、延伸A−PETシートの収縮率が小さくなり、熱成形体を製造する際に変形を少なくできるので、高めの熱固定温度とすることがより好ましい。
【0030】
なお、熱固定ロールの速度はシートの配向緩和に合わせるため延伸ロール速度より0.5〜10%程度遅めにする。
【0031】
以上のような一軸一次延伸、一次熱固定工程を経た延伸A−PETシートは、下記の式で示される結晶化度が、22%以上30%未満であることが好ましい。結晶化度が22%未満であれば、冷結晶化点が存在するので、二次延伸において加熱された際、白化する恐れがある。また、30%以上であると、熱成形が困難となり、金型の再現性が得にくくなる。
【0032】
【数1】

【0033】
次いで、以上のような一軸一次延伸、一次熱固定された延伸A−PETシートに、OPPフィルムを貼合して積層シートを形成する。
【0034】
OPPフィルムは、MD方向(フィルムの流れ方向)及びTD方向(フィルムの流れ方向と直角方向)の延伸倍率が3〜6倍であることが好ましく、また面積倍率が9〜36倍であることが好ましい。延伸倍率が3倍未満であると、フィルムの光沢が劣り、また配向による熱収縮率も小さくなってドローダウン防止に適さないものになる。また延伸倍率が6倍を超えると、光沢に優れ、ドローダウン防止にも適しているが、配向による熱収縮率が大きくなり、熱成形したときに延伸A−PETシートからの剥がれや、熱成形の安定性、金型再現性に劣るものとなる。また、MD方向、TD方向の延伸倍率は、ほぼ同じ倍率であることが好ましい。ほぼ同じ倍率にすることにより、熱成形時のドローダウン防止も成形品の金型再現性も好適に行われる。延伸方法は同時二軸、逐次二軸、又はチューブラー法による同時二軸いずれの方法でもよい。
【0035】
また、OPPフィルムは、二軸延伸後、MD方向及びTD方向ともに弛緩させて熱処理を行うものである。この熱処理は、特に限定されないがテンター(恒温室)内や熱ロールが用いられる。弛緩率はMD方向及びTD方向とも5〜25%であり、5%未満であると、容器に成形した時の収縮率が大きくなり、容器を変形させることとなり、25%を超えると延伸の効果が少なくなる。MD方向、TD方向とも同じ弛緩率で7〜15%が好ましい。
【0036】
OPPフィルムは、120℃グリセリン浴の収縮率がMD方向及びTD方向ともに0.5〜10%であり、好ましくは0.5〜8%である。収縮率が0.5%未満であると、ドローダウンを防止出来ず、収縮率が10%を超えると、熱成形時のドローダウン防止はできるが、シートからの剥がれや熱成形の安定性、金型再現性が劣ることになる。
【0037】
OPPフィルムに用いるポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン単独重合樹脂、エチレン、プロピレンランダム共重合樹脂又はこれらの混合樹脂が用いられ、MFRは1.0から10.0g/10分が好適である。
【0038】
延伸A−PETシートとOPPフィルムとを貼合して積層シートとする方法は、ドライラミネートやサーマルラミネート法が用いられる。ドライラミネート法は、貼合する一方の原反にコロナ処理を施し、溶剤に溶かした接着剤をグラビアロールで塗布し、乾燥オーブン中で溶剤を蒸発・揮散させ、もう一方の貼合する原反にコロナ処理を施し、そのコロナ処理面を接着剤塗工面と重ね合わせてニップロールで圧着して貼合する方法である。
サーマルラミネート法は、貼合する両方の原反にコロナ処理を施し、そのコロナ処理面を合わせた間に両方の原反に接着する樹脂を介在させ、熱ロールで熱をかけ、ニップロールで圧着しながら貼合する方法である。接着は接着樹脂が溶けて接着するので接着樹脂が溶ける温度まで熱をかける必要がある。
積層シートは、以上のような延伸A−PETシートとOPPフィルムとを貼合して一体化して形成されており、延伸A−PETシートが、主として耐熱性の役割を受け持ち、OPPフィルムが、二軸延伸されているので延伸A−PETシートの横方向の力に裂け易い欠点を補い、容器としての強度を保持するものである。
【0039】
以上のような積層シートを、熱成形機の金型で加熱成形して成形による二次延伸後、同じ金型内で二次熱固定することにより耐熱透明A−PET容器が形成される。二次延伸の温度は80〜150℃が好ましく、90〜140℃がより好ましい。延伸温度が80℃未満であると、成形体に波打ちが発生する。また、150℃を超えるとシートのドローダウンが大きくなり、成形された時に成形体にシワ(ブリッジ)が発生する。二次熱固定の温度は、PETの最適結晶化温度の範囲内である130〜155℃が好ましい。130℃未満では最適結晶化温度の範囲外となり、効果が少なくなる。155℃を超えると、未だ最適結晶化温度の範囲内であるが、ポリプロピレン樹脂の融点(160℃)に近くなるため軟化又は溶融して成形機への付着又は変形等のトラブルを起こし易くなる。
【0040】
上記PETの最適結晶化温度を図3に示す。図3は、結晶化温度と半結晶化時間の関係を示す図であり、平均分子量20500、32000、45000の最適結晶化温度を示している。
【0041】
以上のような二次延伸後、二次熱固定されて形成された容器の延伸A−PET層は、下記の式で示される結晶化度が、30%以上であることが好ましく、結晶化度が30%未満であると、十分な耐熱性を得ることが出来ない。
【数1】

【0042】
熱成形機による熱成形方法は特に限定されず、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形いずれでもかまわない。
本発明の耐熱透明A−PET容器は、耐熱性と透明性が要求される各種容器に適用することができる。例えば食品容器、特に電子レンジで加熱する容器に最適である。
【0043】
本発明による耐熱透明容器を製造する工程について図面を参照して説明する。
図1は縦一軸延伸A−PETシートの製造装置の概略図、図2は熱成形機の概略図である。図3はPETの結晶化速度を示す図である。
【0044】
図1において、1はA−PETシート、2は予熱ロール、3はニップロール、4は加熱ロール、5は延伸ロール、6は熱固定ロール、7は縦一軸延伸A−PETシートであり、A−PETシート1を、まず予熱ロール2で70〜90℃に予熱した後、加熱ロール4で90〜120℃に加熱する。そして、この加熱されたA−PETシート1を延伸ロール5により、縦方向に2〜4倍延伸する。さらに、この一軸延伸されたA−PETシート1は熱固定ロール6で、加熱ロール4で加熱した温度より5〜20℃高い温度で加熱されて熱固定され、縦一軸延伸A−PETシート7が完成する。
【0045】
図2において、11は熱成形上部加熱ヒータ板、12は熱成形下部加熱ヒータ板であり、熱成形する前に積層シートを加熱するためのものである。また、13は熱成形上金型、14は熱成形下金型、15は熱成形下金型埋め込みヒータ、16は熱成形体であり、まず、熱成形上部加熱ヒータ11と熱成形下部加熱ヒータ12との間に積層シート8を設置し、積層シート8の表面温度が80〜150℃となるように加熱する。次に、この加熱した積層シート8を熱成形上金型13と熱成形下金型14とで熱成形し、取り出される。
【0046】
熱成形下金型14は、熱成形下部加熱ヒータ板12で最適結晶化温度の範囲内である130〜155℃に加熱されているので、熱成形体は130〜155℃で熱固定される。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
アテナ工業(株)製0.6mm厚みのA−PETシート(結晶化度6.1%)を日本製鋼所(株)製T−17型ロール延伸装置で延伸して、延伸A−PETシートを製造した。すなわち、予熱ロール温度80℃、加熱ロール温度(延伸温度)95℃、延伸ロール温度80℃、熱固定ロール温度100℃に設定し、A−PETシートを25m/分で繰り出して、加熱ロールと延伸ロールとの間で2.8倍に1段で延伸し、0.21mm厚みの延伸A−PETシートを得た。この延伸A―PETシートは、シワもなく透明であり、DSC測定値から求めた結晶化度は27.5%で冷結晶ピークは消えており、高結晶化されていた。
【0048】
<結晶化度>
セイコー電子DSC220示差走査熱量計で延伸A−PETシートの融解挙動を測定し、下記式に基づいて得た。なお測定サンプルは10mg、窒素50ml/minを流しながら昇温速度10℃/minで20〜300℃まで昇温して測定した。
【数1】

【0049】
次いで、MFRが7.0g/10分のポリプロピレン単独重合樹脂を用い、チューブラー法でMD方向4.0倍、TD方向4.0倍で同時二軸延伸し、テンター内で、MD方向10%、TD方向10%弛緩させて150℃で熱固定を行い、OPPフィルム(30μm厚×800mm巾×1000m長:120℃グリセリン浴の収縮率がMD方向1.5%、TD方向3%)を得た。
次に、このOPPフィルムに50W・分/mのコロナ処理を行い、このコロナ処理面に、中島精機エンジニアリング(株)ドライラミネート機LX−3にヘリオ彫刻によるスクリーン線数95線のグラビアロールをセットし、東洋モートン(株)製ウレタン接着剤(主剤:TM569、硬化剤:CAT37、溶剤:酢酸エチルエステル)を、加工速度28m/minで塗布し、その後、熱風温度40℃、65℃、55℃の3ゾーンで乾燥させた。
さらに、前記延伸A−PETシートの一方の面を50W・分/mのコロナ処理を行い、この延伸A−PETシートのコロナ処理面と、OPPフィルムの接着剤塗布面とを合わせ、ニップ圧18kg−cmの線圧で貼合して積層シートを得た。この積層シートを46℃の恒温室で3日間エージングを行った。
【0050】
次いで、この積層シートを、(株)浅野研究所製「FKC型」真空・圧空成形機で表面温度が130℃になるように加熱して軟化させ、上部径175cm×120cm、フランジ巾1cm、下部径150cm×95cm、深さ2.5cmの底部及びコーナーに丸みを持たせた雌型アルミ金型を用い、アルミ金型温度145℃に設定し、0.5MPaの圧空をかけながら、真空・圧空成形し、金型から取り出す際に、冷風を吹き付けてある程度固化させて取り出し、食品トレー容器(耐熱透明A−PET容器)を得た。
【0051】
この得られた食品トレー容器は、透明で、変形もなく、金型通りの成形体であった。延伸A−PET層の結晶化度は37.5%であった。
【0052】
<耐熱性の評価>
この食品トレー容器に食用油を充填し、電子レンジ(National NE−EZ2)にかけて温度を上げながらその変形の有無を観察した。100℃から温度を測定しながら観察したが150℃まで何の変形もなく、透明性も保持していた。従って、150℃までの耐熱性があると言える。
【0053】
<落下強度の評価>
この食品トレーに水を200ml充填した後、PETフィルム層(12μm)/O−NYフィルム層/イージーピール層(35μm)から成る蓋材をヒートシールにより密封した。この密封したサンプルを高さ2.0mからコンクリートの固い床に水平底部、垂直長径、垂直短径、垂直コーナー部から先に床に落下するようにして落下テストを行った。
【0054】
結果を表1に示す。
【表1】

【0055】
いずれの落下方向でも破損はなく、延伸A−PET層の横方向の力に弱い欠点もOPPフィルム層が補っている。コンビニ店の棚は約1.8mなので落下高さ2.0mに耐えられれば、十分に実用に耐えられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による耐熱透明A−PET容器に用いる延伸A−PETシートの製造装置の概略図
【図2】本発明による耐熱透明A−PET容器に用いる熱成形装置の概略図
【図3】結晶化温度と半結晶化時間の関係を示す図
【符号の説明】
【0057】
1 A−PETシート
2 予熱ロール
4 加熱ロール
5 延伸ロール
6 熱固定ロール
7 縦一軸延伸A−PETシート
8 積層シート
11 熱成形上部加熱ヒータ板
12 熱成形下部加熱ヒータ板
13 熱成形上金型
14 熱成形下金型
15 熱成形下金型埋め込みヒータ
16 耐熱透明A−PET容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A−PETシートを加熱して一軸一次延伸後、一次熱固定した延伸A−PETシートと、OPPフィルムとを貼合して一体化した積層シートを、熱成形機の金型で加熱成形し成形による二次延伸後、同じ金型内で二次熱固定したことを特徴とする耐熱透明A−PET容器。
【請求項2】
前記延伸A−PETシートが、ロールによる延伸装置を用い、A−PETシートを延伸温度90〜120℃でMD方向に2〜4倍一軸一次延伸された後、延伸温度より5〜20℃高い温度で一次熱固定されたことを特徴とする請求項1記載の耐熱透明A−PET容器。
【請求項3】
前記延伸A−PETシートの下記の式で示される結晶化度が22%以上30%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱透明A−PET容器。
【数1】

【請求項4】
前記OPPフィルムが、MD方向及びTD方向の延伸倍率が3〜6倍、面積倍率が9〜36倍となるように二軸延伸された後、MD及びTD方向ともに弛緩させて熱固定を行い、120℃グリセリン浴の収縮率がMD及びTD方向ともに0.5〜10%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の耐熱透明A−PET容器。
【請求項5】
前記積層シートを80〜150℃で加熱成形して、二次延伸し、同じ金型内で130〜155℃で二次熱固定することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の耐熱透明A−PET容器。
【請求項6】
前記二次延伸後、二次熱固定されて形成された容器の延伸A−PET層の下記の式で示される結晶化度が30%以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の耐熱透明A−PET容器。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−131930(P2010−131930A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311980(P2008−311980)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(594146180)中本パックス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】