説明

耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板

【課題】 本発明は、耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いたテープキャリアパッケージを提供する。
【解決手段】 折り曲げスリットを有する絶縁フィルム表面に接着剤層を介して配線パターンが形成され、配線パターンは折り曲げスリットを横切っており、折り曲げスリットを横切った配線パターンの少なくとも片側表面がフレックス樹脂層で保護され、更に配線パターンが形成された領域の大部分がオーバーコート層によって保護されているテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板であって、前記オーバーコート層が、硬化後に、フィルムとして25℃での初期弾性率が10〜1200MPaであり、十分なレベルの電気絶縁性、260℃で10秒間のハンダ耐熱性を有し、且つ無機フィラーとして炭酸塩化合物を含有した硬化性樹脂組成物で構成されたことを特徴とする耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板に関し、特に、オーバーコート層が無機フィラーとして炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムを含有した硬化性樹脂組成物で構成されたことを特徴とする耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
テープキャリアパッケージは、絶縁フィルム上に金属配線パターンが形成されたテープキャリアからなる柔軟性配線板に、半導体チップなどの電子部品を、例えばTAB(Tape Automated Bonding)方式によって搭載したパッケージのことである。
【0003】
代表的なTAB方式のテープキャリアからなる柔軟性配線板は、次のような方法によって製造される。すなわち、例えば35mm、48mm、又は75mm幅の接着剤層付絶縁フィルムに、テープ送りのためのパーフォレーションホール(スプロケットホール)、半導体チップを接合するためのインナーリードを形成するデバイスホール、及び実装時の折り曲げ部位に対応した折り曲げスリット等をプレス打ち抜きで加工し、更にこの接着剤層付絶縁フィルムに銅箔などの導電金属箔を加熱接着する。その後、折り曲げスリット部の裏側表面にフレックス樹脂層を形成することによって保護し、次いで金属箔表面に感光性樹脂レジストを塗布し、焼付け・現像・エッチングによって絶縁フィルム表面上に配線パターンを形成する。配線パターンは、折り曲げスリットを横切っており、デバイスホールではインナーリードを形成し、更に端部では他の部品と接合するためのアウターリードを形成している。次いで、配線パターンが形成された領域の大部分の表面をオーバーコート層によって保護し、表面に保護膜が形成されなかったインナーリードやアウターリードなどの接続部分を含む配線パターンの表面はスズメッキ、金メッキ、半田メッキなどによって表面処理が施される。
【0004】
このテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板においては、インナーリードにバンプなどの方法で半導体チップの端子を接合することによって、半導体チップが実装され、更に半導体チップは半導体封止樹脂によって覆われて保護される。このようにして形成されたテープキャリアパッケージは、絶縁フィルムに形成された配線パターンに半導体チップなどが実装された各電子部品の単位がテープ状に繰り返し連続した形態で製造される。テープ状に繰り返し連続した形態のテープキャリアパッケージは、各電子部品の単位ごとに切断され、そのアウターリードを他の部品と接合し、必要に応じて折り曲げスリット部を折り曲げて屈曲させた状態で電子機器類に組み込み搭載される。例えば液晶表示装置では、表示装置のドライバーLSIを実装したテープキャリアパッケージが、折り曲げスリット部で折り曲げた状態で好適に搭載されている。
【0005】
従来のテープキャリアパッケージ用の柔軟性配線板は、絶縁フィルムとしては耐熱性の芳香族ポリイミドフィルム、接着剤層としては変性エポキシ樹脂、フレックス樹脂層としては柔軟で適当な機械的強度を有し電気絶縁性が優れ耐熱性を有するポリイミドシロキサン樹脂組成物からなる硬化物、オーバーコート層はポリウレタン樹脂組成物からなる硬化物が好適に採用されている。
【0006】
このような従来の柔軟性配線板を用いたテープキャリアパッケージは、使用電圧が低い液晶表示装置で主に用いられたために、耐燃性については特に問題にならなかった。しかしながら、最近、テープキャリアパッケージをPDP(プラズマディスプレイ)表示装置のような使用電圧が高い電気・電子装置類に使用することが進められており、その場合には、火災の発生を防止する観点から、テープキャリアパッケージ及びそれに用いられる柔軟性配線板の耐燃性を改善することが求められた。
【0007】
特許文献1、2には、折り曲げスリット部を特定の機械的物性を有するフレックス樹脂(ソルダレジスト)で絶縁被覆した柔軟性配線基板が記載されている。また、特許文献3には、ポリイミドシロキサン絶縁膜用樹脂組成物が、特許文献4には、ポリウレタン絶縁膜用樹脂組成物がそれぞれ開示されている。しかし、これらの文献には、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板の耐燃性を改良すること、特にフレックス樹脂層、絶縁フィルム、接着剤層、及びオーバーコート層を積層した積層体の耐燃性を改良することについては記載も何らかの示唆もなかった。
【0008】
【特許文献1】特開平11−121682
【特許文献2】特開平11−220248
【特許文献3】特開2004−211064
【特許文献4】特開平11−61037
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、折り曲げスリットを有する絶縁フィルム表面に接着剤層を介して配線パターンが形成されており、配線パターンは折り曲げスリットを横切って設けられており、折り曲げスリットを横切って設けられた配線パターンの少なくとも片側表面がフレックス樹脂層で保護されており、更に配線パターンが形成された領域の大部分がオーバーコート層によって保護されているテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板であって、前記オーバーコート層が、硬化後に、フィルムとして25℃での初期弾性率が10〜1200MPaであり、十分なレベルの電気絶縁性、260℃で10秒間のハンダ耐熱性を有し、且つ無機フィラーとして炭酸塩化合物を含有した硬化性樹脂組成物で構成されたことを特徴とする耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板に関する。
【0011】
また、本発明は、前記のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のオーバーコート層を構成した硬化性樹脂組成物が、無機炭酸塩化合物が樹脂固形分100重量部に対して1〜90重量部含有されていること、及び無機炭酸塩化合物が炭酸カルシウムであること、更に、前記のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のフレックス樹脂層、絶縁フィルム、接着剤層、及びオーバーコート層を積層した積層体がUL94V−0の耐燃性を有することに関する。
さらに、本発明は、前記のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のオーバーコート層が、ポリイミドシロキサン樹脂組成物を加熱処理して得られた硬化膜であること、又はポリウレタン樹脂組成物を加熱処理して得られた硬化膜であることに関する。
【0012】
また、本発明は、前記のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を用いたテープキャリアパッケージに関し、また、本発明は、硬化後に、フィルムとして25℃での初期弾性率が10〜1200MPaであり、十分なレベルの電気絶縁性、260℃で10秒間のハンダ耐熱性を有し、且つ無機フィラーとして炭酸塩を含有したことを特徴とする、前記のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のオーバーコート層用硬化性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、PDP表示装置などの使用電圧が高くて、その部品には改良された耐燃性が求められる製品の部品として好適に使用することができる、耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明のテープキャリアパッケージの代表的な一例を部分的に示す概略の平面図であり、図2は、図1のA−A’線における部分的な断面図である。1は絶縁フィルム、2は接着剤層である。3は配線パターンであって、絶縁フィルム1の表面に接着剤層2によって接着されている。配線パターン3は、4のデバイスホールにおいて3aのインナーリードが形成され、5の折り曲げスリットを横切っており、端部では他の部品と接続するための3bのアウターリードが形成されている。インナーリード3aは6のバンプによって7の半導体チップが接続されている。折り曲げスリット5を横切っている配線パターン3の片方の表面には、それを保護するための8のフレックス樹脂層が形成されており、さらに配線パターン3が形成された領域の、前記のインナーリード3aやアウターリード3bが形成された領域を除いた主たる表面には、9のオーバーコート層(ソルダーレジスト層)が形成されて配線パターンが保護されている。またインナーリード3aと接続された半導体チップ7は、10の半導体封止樹脂によって封止されて保護されている。11はパーフォレーションホール(スプロケットホール)、3cはテストパッド(配線パターン)である。
なお、本発明のテープキャリアパッケージは図1、2に示した具体例に限定されるものではない。図1、2では、折り曲げスリットが2ケ所に形成された例を示したが、折り曲げスリットは1ケ所でも複数ケ所でも構わない。また、折り曲げスリットを横切った配線パターンの片方表面(裏面)だけがフレックス樹脂層で覆われているが、片側表面だけでなく両面ともフレックス樹脂層で覆われていても構わない。
【0015】
本発明において、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板とは、テープキャリアパケージのうち、半導体チップなどの電子部品及びその接続部やそれらを保護するための封止樹脂などを除いた、絶縁フィルム、接着剤層、配線パターン、フレックス樹脂層、及びオーバーコート層を含んでなる柔軟性を有する配線板をいう。通常、これらは、リールに巻き取ったり、実装工程で連続的に取り扱ったりできるように、両端部に配列された一対のパーフォレーションホール(スプロケットホール)を有する長尺の絶縁フィルム上に形成されている。
【0016】
本発明において、絶縁フィルムは、TAB用やFPC用に用いられる耐熱性の絶縁フィルムであって、絶縁破壊強さが大きく且つ誘電正接が小さく、耐熱性が高く、可撓性があり且つ適度な剛性を有し、耐薬品性があり、熱収縮率が小さく且つ吸湿に対する寸法安定性に優れた耐熱性ポリマーからなるフィルムである。好ましくは芳香族ポリイミドフィルム、芳香族ポリアミドイミドフィルム、芳香族ポリエステルフィルムであり、特に芳香族ポリイミドフィルムである。具体的には、宇部興産株式会社製のユーピレックスやデュポン社製のカプトンなどを好適に挙げることができる。また30〜150μmの厚さのもの、通常は75μm、100μm又は125μmの厚さのもの、特に75μmの厚さのものが好適に用いられる。
【0017】
本発明において、接着剤層は、接着力、絶縁信頼性、耐熱性および耐薬品性が優れ、又硬化後の反りが小さく、平面性に優れたエポキシ系接着剤又はフェノール系接着剤を好適に用いることができる。特に可撓性に優れる変性エポキシ樹脂接着剤が好適であり、具体的には、東レ株式会社製のTAB用接着剤フィルムである#7100、#8200、#8600などを好適挙げることができる。また、接着剤層は1〜30μm特に2〜20μm通常10μm程度の厚さで好適に用いられる。
【0018】
本発明において、配線パターンは導電性の金属箔によって形成される。金属箔としては、銅箔やアルミ箔などが好適である。銅箔は圧延銅箔でも電解銅箔でも構わない。配線パターンの厚みは10〜100μm、通常18μm、25μm、35μmのものが好適に用いられる。また配線パターンは、線幅が10〜500μm特に30〜300μm程度、線間隔が10〜500μm特に40〜400μm程度のものが好適に用いられる。
【0019】
本発明において、フレックス樹脂層は、折り曲げスリット部に印刷などの方法によって容易に塗布が可能であって、基材との密着性が良好で、硬化後の絶縁信頼性、密着性、耐熱性及び耐薬品性が良好であり、反りが小さくて平面性に優れ、折り曲げスリット部を折り曲げても、剥離や破断を生じないで十分用いることができる柔軟性や可撓性を有する硬化性樹脂組成物によって好適に形成される。具体的には、特許文献2に記載のとおり、硬化後に、フィルムとして25℃での初期弾性率が10〜700MPa、破断点強度が5〜200MPa、伸びが30〜500%であり、十分なレベルの電気絶縁性、200℃で30秒以上好ましくは260℃で10秒間のハンダ耐熱性、及び熱分解開始温度が250〜500℃であることが好適である。このような性能を有するフレックス樹脂層を用いることによって、折り曲げスリット部で90°程度まで折り曲げた形態で電子機器類に組み込み搭載することが可能なテープキャリアパッケージを得ることができる。フレックス樹脂層は、前記の性能を有する硬化性の樹脂組成物であれば特に限定されるものではないが、例えばポリウレタン樹脂組成物、ポリカーボネート樹脂組成物、ポリアミドイミド樹脂組成物、又はポリイミドシロキサン樹脂組成物の硬化物、中でも特にポリイミドシロキサン樹脂組成物の硬化物が好適に用いられる。具体的には、宇部興産株式会社製のポリイミドシロキサン樹脂組成物からなるユピコートFS−100Lを好適に挙げることができる。なお、フレックス樹脂層は折り曲げスリットを横切った配線パターンの厚さの0.2〜5倍程度の厚さであることが好ましく、0.5〜200μm特に1〜100μm更に5〜50μm程度の厚さで好適に用いられる。
【0020】
本発明において、オーバーコート層(ソルダーレジスト層)は、配線パターンの表面と配線パターン間のスペースとを含む配線パターン領域の表面を覆った保護膜である。このオーバーコート層は、印刷などの方法によって塗布され、次いで乾燥及び加熱などによって硬化する硬化性樹脂組成物によって好適に形成される。本発明のオーバーコート層は、硬化性樹脂組成物によって形成されるものであって、硬化後に、フィルムとして25℃での初期弾性率が10〜1200MPa程度の柔軟性を有し、十分なレベルの電気絶縁性(通常は体積絶縁抵抗が1012Ω・cm以上、好ましくは1013Ω・cm以上)、260℃で10秒間のハンダ耐熱性を有し、且つ無機フィラーとして炭酸塩化合物を含有した硬化性樹脂組成物で構成されたことを特徴とする。炭酸塩化合物を含有することは本発明の特徴である耐燃性を改良するうえで特に重要である。本発明のオーバーコート層は、さらに好ましくは、反りが小さくて平面性に優れ、耐屈曲性、基材及び封止剤との密着性、耐溶剤性(例えば、アセトンに対する耐溶剤性)、耐メッキ性、スズ潜り、絶縁信頼性などの性能が良好である。
本発明において、オーバーコート層は、例えばポリイミドシロキサン樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物、特にポリブタジエンジオール及び/又はポリエステルジオールとイソシアネート化合物との組合せからなるポリウレタン樹脂組成物及びポリイミド変性ポリウレタン樹脂組成物などのポリウレタン樹脂組成物、ポリアミドイミド樹脂組成物、特にポリカーボネートジオール変性ポリアミドイミド樹脂組成物などの変性ポリアミドイミド樹脂組成物、又はポリカーボネート樹脂組成物などによって好適に形成される。特に、ポリイミドシロキサン樹脂組成物及びポリウレタン樹脂組成物はオーバーコート層として要求される種々の特性を容易に得やすいので好適に採用される。また、本発明のオーバーコート層はフレックス樹脂と同じ樹脂組成物から形成されても構わない。更に本発明のオーバーコート層は0.5〜200μm特に1〜100μm更に5〜50μm程度の厚さで好適に用いられる。
【0021】
オーバーコート層に無機炭酸塩化合物以外の他の難燃剤を含有させることによって耐燃性を改良することは可能であるが、その際オーバーコート層として要求される諸特性を低下させ易いので好適ではない。例えば塩素系及びアンチモン系の難燃剤は環境問題を生じ易く電子部品のノンハロゲン化の動きに逆行するものであるから使用は避けるべきであり、リン系(リン酸エステル)の難燃剤は加水分解し易いので加水分解して酸を発生し絶縁性能に悪影響を与えるので好ましくない。また水酸化アルミニウム水和物などは親水性のために絶縁性能に悪影響があるのみならず、200℃程度の加熱で脱水するから加熱工程を含む実装工程で膨れなどの不具合の原因になり易いので好ましくない。
本発明の特徴は、無機炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムをオーバーコート層に無機フィラーとして含有させて、耐燃性を改良し且つオーバーコート層として要求される諸特性をも達成していることにある。本発明において、オーバーコート層に用いられる硬化性樹脂組成物は、樹脂固形分100重量部に対して、無機炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムが1〜90重量部好ましくは4〜45重量部更に4〜35重量部含有されていることが好適である。また、本発明においては、炭酸塩化合物は、どのような形態のものでもよいが、平均粒子径が0.001〜15μm特に0.005〜10μm更に0.005〜2μm程度の微細なものが耐燃性を改良するうえで好ましい。更に、この範囲外のものを使用すると、スクリーン印刷による塗布がむずかしくなり、また得られる硬化膜が屈曲したときに折り曲げ部に亀裂や白化が起こりやすくなるので好ましくない。
無機炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムは、樹脂組成物の硬化工程やテープキャリアパッケージの実装工程では安定であって絶縁性能などに悪影響を与えることがない。また燃焼時の燃焼熱、特に接着剤層の燃焼による高温の燃焼熱によって吸熱分解し、その結果不燃性の二酸化炭素ガスを発生すると考えられるから、その吸熱作用あるいは二酸化炭素の作用によって耐燃性の改良効果が発現すると推定される。炭酸塩化合物は、特に限定するものではなく例えば炭酸バリウムなども挙げられるが、とりわけ炭酸カルシウムが好適である。
【0022】
本発明の耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、オーバーコート層を無機フィラーとして炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムを含有した硬化性樹脂組成物で構成することによって耐燃性を改良したものである。その結果、好ましくは、そこに用いられたフレックス樹脂層、絶縁フィルム、接着剤層、及びオーバーコート層を、前記の記載順に従って積層した4層からなる積層体がUL94V−0の耐燃性を有する。本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を構成するフレックス樹脂層、絶縁フィルム、接着剤層、及びオーバーコート層のうち、芳香族ポリイミドなどの絶縁フィルムは最も耐燃性が高く、変性エポキシ樹脂などの接着剤層は最も耐燃性が低い。本発明においては、最も耐燃性が低い(可燃性が高い)接着剤層を覆うオーバーコート層を無機フィラーとして炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムを含有した硬化性樹脂組成物で構成することによって、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板の耐燃性を改良し、好ましくはフレックス樹脂層、絶縁フィルム、接着剤層、及びオーバーコート層からなる積層体がUL94V−0の耐燃性を有するようにしたことを特徴としている。
なお、テープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、前記の4層からなる積層体と比較すると、構成中に配線パターンを有すること、及び折り曲げスリット部以外ではフレックス樹脂層がない点などで相違するが、これらの相違はいずれも耐燃性を高くするものであるから、前記積層体がUL94V−0の耐燃性を有するときは、それらのフレックス樹脂層、絶縁フィルム、接着剤層、及びオーバーコート層から構成された実際のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板もまたUL94V−0と同等以上の耐燃性を有する。
【0023】
本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を特徴付けるオーバーコート層を特に好適に形成することができる樹脂組成物のひとつであるポリイミドシロキサン樹脂組成物について以下詳細に説明する。前記ポリイミドシロキサン樹脂組成物は、好適には(a)有機溶剤可溶性のポリイミドシロキサン100重量部、(b)多価イソシアネート0〜40重量部好ましくは2〜30重量部特に5〜30重量部、(c)エポキシ化合物0.1〜8重量部好ましくは0.1〜4重量部、(d)無機フィラーである炭酸塩化合物好ましくは炭酸カルシウム、及び(e)有機溶剤を含有してなる溶液組成物である。
【0024】
本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物の(a)有機溶剤可溶性のポリイミドシロキサンは、テトラカルボン酸成分と、ジアミノポリシロキサン30〜95モル%、極性基を有する芳香族ジアミン0.5〜40モル%、及び、前記ジアミノポリシロキサン及び前記極性基を有する芳香族ジアミン以外のジアミン0〜69.5モル%とからなるジアミン成分とを、略等モル好ましくはジアミン成分1モルに対してテトラカルボン酸成分が1.0〜1.2モル程度の割合で用いて有機溶媒中で反応して得ることができる。テトラカルボン酸成分が前記より多すぎると得られるポリイミドシロキサン絶縁膜用組成物の印刷特性が低下するので好ましくない。
【0025】
前記ポリイミドシロキサンのテトラカルボン酸成分としては、具体的には、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ヘキサフルオロプロパン、ピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(3,4−フェノキシジカルボン酸)フェニル〕プロパン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンなどの芳香族テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物、及び、シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2,4,5−テトラカルボン酸などの脂環族系テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物を好適に挙げることができる。これらのなかでも特に2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、及び3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物は、ポリイミドシロキサンとしたときの有機溶媒に対する溶解性が優れているので特に好適である。また、テトラカルボン酸成分中に、前記の芳香族テトラカルボン酸成分を80モル%以上、特に85%〜100%含有することが好ましい。
【0026】
テトラカルボン酸成分は、ジアミンと反応させることが容易なテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
また、テトラカルボン酸二無水物の使用量がジアミンに対して1.05倍モル以上で未反応無水環が残存するような場合には、そのままでもよいが、エステル化剤で開環ハーフエステル化してもよい。エステル化剤であるアルコール類の使用量は、過剰なテトラカルボン酸二無水物の1.1〜20倍当量特に1.5〜5倍当量であることが好ましい。アルコール類の割合が少ないと、未反応の無水環が残って、組成物での貯蔵安定性が劣るものとなり、過剰のアルコール類は不溶分が析出したり貧溶媒となって固形分濃度を低くすることになって印刷による塗膜の形成が容易でなくなるので好ましくない。
エステル化剤を用いた場合は、反応溶液をそのまま用いても構わないが、過剰のアルコール類を加熱や減圧留去して使用することもできる。
【0027】
前記ポリイミドシロキサンのジアミン成分は、下記化学式(1)で示されるジアミノポリシロキサンが30〜95モル%特に50〜95モル%更に60〜95モル%、極性基を有する芳香族ジアミンが0.5〜40モル%、及び、前記ジアミノポリシロキサン及び前記極性基を有する芳香族ジアミン以外のジアミンが0〜69.5モル%(通常、0〜30モル%)の割合で好適に使用される。いずれかの成分がこれらの範囲を外れると、得られるポリイミドシロキサンの有機溶媒に対する溶解性が低下したり、他の有機化合物との相溶性が悪くなったり、得られる絶縁膜の曲率半径が小さくなって反りが発生し、耐屈曲性、基材との密着性、又は耐熱性が低下することがある。
【0028】
【化1】

(式中、Rは2価の炭化水素基又は芳香族基を示し、Rは独立に1価の炭素水素基又は芳香族基を示し、n1は3〜50の整数を示す。)
【0029】
前記式中Rは炭素数1〜6の2価の炭化水素基又はフェニレン基、特にプロピレン基であり、前記式中R2は独立に炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、前記式中n1は3〜50、特に3〜20である。n1が3未満では得られる絶縁膜の耐屈曲性が悪くなるので好ましくなく、又n1が50を超えるとテトラカルボン酸成分との反応性が低下して得られるポリイミドシロキサンの分子量が低くなったり、ポリイミドシロキサンの有機溶剤に対する溶解性が低くなったり、組成物における他の有機成分との相溶性が悪くなったり、得られる絶縁膜の耐溶剤性が低くなったりするので前記程度のものが好適である。尚、ジアミノポリシロキサンが2種以上の混合物からなる場合は、n1はアミノ当量から計算される。
【0030】
前記ジアミノポリシロキサンの具体的化合物の例としては、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0031】
前記ポリイミドシロキサンのジアミン成分を構成する極性基を有する芳香族ジアミンは、分子中にエポキシ樹脂あるいはイソシアネートとの反応性を有する極性基を有する芳香族ジアミンであり、好ましくは下記化学式(2)で示されるジアミンである。
【0032】
【化2】

(式中、X及びYは、それぞれ独立に直接結合、CH、C(CH、C(CF、O、ベンゼン環、SOを示し、r1はCOOH又はOHを示し、n2は1又は2であり、n3、n4はそれぞれ独立に0、1又は2、好ましくは0又は1であり、n3及びn4の少なくとも一方は1又は2である。)
【0033】
前記化学式(2)で示されるジアミン化合物としては、2,4−ジアミノフェノ−ルなどのジアミノフェノ−ル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシビフェニルなどのヒドロキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−ハイドロキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−アミノ−3−ハイドロキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−ハイドロキシフェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシジフェニルメタンなどのヒドロキシジフェニルアルカン化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシジフェニルエ−テルなどのヒドロキシジフェニルエ−テル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシジフェニルスルホンなどのヒドロキシジフェニルスルホン化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−ハイドロキシフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのビス(ハイドロキシフェノキシフェニル)アルカン化合物類、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ハイドロキシフェノキシ)ビフェニルなどのビス(ハイドロキシフェノキシ)ビフェニル化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−ハイドロキシフェノキシ)フェニル〕スルホンなどのビス(ハイドロキシフェノキシフェニル)スルホン化合物類などのOH基を有するジアミン化合物を挙げることができる。
【0034】
更に、前記化学式(2)で示されるジアミン化合物としては、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸などのベンゼンカルボン酸類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−カルボキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−アミノ−3−カルボキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−カルボキシフェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシジフェニルアルカン化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエ−テルなどのカルボキシジフェニルエ−テル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルホンなどのカルボキシジフェニルスルホン化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)アルカン化合物類、4,4’−ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)ビフェニルなどのビス(カルボキシフェノキシ)ビフェニル化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル〕スルホンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)スルホン化合物類などのCOOH基を有するジアミン化合物を挙げることができる。
【0035】
ポリイミドシロキサンのジアミン成分を構成する前記ジアミノポリシロキサン及び前記極性基を有する芳香族ジアミン以外のジアミンは、特に限定されるものではないが、下記化学式(3)で示される芳香族ジアミンが好適である。
【0036】
【化3】

(式中、X及びYは、それぞれ独立に直接結合、CH、C(CH、C(CF、O、ベンゼン環、SOを示し、n5は1又は2である。)
【0037】
前記化学式(3)で示される芳香族ジアミンは、具体的には、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2,5−ジハロゲノベンゼンなどのベンゼン1個を含むジアミン類、ビス(4−アミノフェニル)エ−テル、ビス(3−アミノフェニル)エ−テル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(3−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、o−ジアニシジン、o−トリジン、トリジンスルホン酸類などのベンゼン2個を含むジアミン類、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンなどのベンゼン3個を含むジアミン類、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセンなどのベンゼン4個以上を含むジアミン類などのジアミン化合物が挙げられる。
また、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノドデカンなど脂肪族ジアミン化合物を上記ジアミンと共に使用することができる。
【0038】
ポリイミドシロキサンは、特に限定するものではないが、例えば次の方法で得ることができる。
(1)テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを略等モル使用し、有機極性溶媒中で連続的に15〜250℃で重合及びイミド化させてポリイミドシロキサンを得る方法。
(2)テトラカルボン酸成分とジアミン成分とをそれぞれ分けて、まず過剰量のテトラカルボン酸成分とジアミン成分(例えばジアミノポリシロキサン)とを有機極性溶媒中15〜250℃で重合及びイミド化させて平均重合度1〜10程度の末端に酸無水物基(又は、酸、そのエステル化物)を有するイミドシロキサンオリゴマーを調製し、別にテトラカルボン酸成分と過剰量のジアミン成分とを有機極性溶媒中15〜250℃で重合及びイミド化させて平均重合度1〜10程度の末端にアミノ基を有するイミドオリゴマーを調製し、次いでこの両者を、酸成分とジアミン成分とが略等モルになるように混合して15〜60℃で反応させて、さらに130〜250℃に昇温して反応させてポリイミドシロキサンを得る方法。
(3)テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを略等モル使用し、有機極性溶媒中でまず20〜80℃で重合させてポリアミック酸を得た後に、そのポリアミック酸をイミド化してポリイミドシロキサンを得る方法。
【0039】
これらの方法でポリイミドシロキサンを得る際に使用される有機極性溶媒としては、含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど,硫黄原子を含有する溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど,フェノール系溶媒、例えばクレゾール、フェノール、キシレノールなど,ジグライム系溶媒,例えばジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムなど、酸素原子を分子内に有する溶媒、例えばアセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど、その他ピリジン、テトラメチル尿素などを挙げることができる。また必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒やソルベントナフサ、ベンゾニトリルなど他の有機溶媒を併用してもよい。
【0040】
ポリイミドシロキサンは、前記(1)〜(3)などいずれの方法で得られたものを使用してもよいが、有機溶媒に少なくとも3重量%以上、好ましくは5〜60重量%、特に5〜50%程度の高濃度で溶解させることができるもので、25℃の溶液粘度(E型回転粘度計)が1〜10000ポイズ、特に1〜100ポイズであることが好ましい。
また、ポリイミドシロキサンは高分子量のものが好ましく更にイミド化率が高いものが好ましい。分子量の目安としての対数粘度(測定濃度:0.5g/100ミリリットル、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン、測定温度:30℃)は、0.15以上、特に0.16〜2のものが硬化物の強度、伸度などの機械的物性の点から好ましい。また、赤外吸収スペクトルから求められるイミド化率は、90%以上特に95%以上更に実質的に100%のものが好ましい。
【0041】
本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物の(b)多価イソシアネートとしては、1分子中にイソシアネ−ト基を2個以上有するものであればよい。例えば、このような多価イソシアネ−ト化合物として、脂肪族、脂環族または芳香族のジイソシアネ−ト等があり、例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,5−ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−へキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト(イソホロンジイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト等を挙げることが出来る。
更に、多価イソシアネ−ト化合物として、脂肪族、脂環族または芳香族の多価イソシアネ−トから誘導されるもの、例えばイソシアヌレ−ト変性多価イソシアネ−ト、ビュレット変性多価イソシアネ−ト、ウレタン変性多価イソシアネ−ト等であってもよい。
本発明においては、多価イソシアネートとしては、ジイソシアネ−ト例えばトリメチロールプロパンにウレタン結合で付加したようなアダクト型構造を有する多価イソシアネートが、耐燃性を改良するうえで特に好適である。
【0042】
また、前記多価イソシアネ−ト化合物は、多価イソシアネ−トのイソシアネ−ト基をブロック化剤でブロックしたブロック多価イソシアネ−トが好適に使用される。
前記のブロック化剤としては例えば、アルコ−ル系、フェノ−ル系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾ−ル系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系化合物、ピリジン系化合物等があり、これらを単独あるいは、混合して使用してもよい。具体的なブロック化剤としては、アルコ−ル系としてメタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、2−エチルヘキサノ−ル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルピト−ル、ベンジルアルコ−ル、シクロヘキサノ−ル等、フェノ−ル系として、フェノ−ル、クレゾ−ル、エチルフェノ−ル、ブチルフェノ−ル、ノニルフェノ−ル、ジノニルフェノ−ル、スチレン化フェノ−ル、ヒドロキシ安息香酸エステル等、活性メチレン系として、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、メルカプタン系として、ブチルメルカプタン、 ドデシルメルカプタン等、酸アミド系として、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、酸イミド系として、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、イミダゾ−ル系として、イミダゾ−ル、2−メチルイミダゾ−ル、尿素系として、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、オキシム系として、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、アミン系として、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等、イミン系として、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、重亜硫酸塩として、重亜硫酸ソ−ダ等、ピリジン系として、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリン等が挙げられる。
【0043】
ブロック多価イソシアネ−トとしては、特に、大日本インキ化学工業株式会社製のバーノックD−500(トリレンジイソシアネ−トブロック化体)、D−550(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体)、三井武田ケミカル株式会社製のタケネートタケネートB−830(トリレンジイソシアネ−トブロック化体)、B−815N(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)ブロック化体)、B−842N(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体)、B−846N(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体)、B−874N(イソホロンンジイソシアネ−トブロック化体)、B−882N(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体)、旭化成株式会社製のデュラネートMF−B60X(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化体)、デュラネートMF−K60X(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化体)、第一工業製薬社製のエラストロンBN−P17(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト ブッロク化体)、エラストロンBN−04、エラストロンBN−08、エラストロンBN−44、エラストロンBN−45(以上、ウレタン変性多価イソシアネートブッロク化体1分子当たり3〜5官能、いずれも水エマルジョン品で乾燥単離後使用可能)などを好適に挙げることができる。
【0044】
前記多価イソシアネ−ト化合物の使用量は、ポリイミドシロキサン100重量部に対して0〜40重量部好ましくは2〜30重量部特に5〜30重量部である。多価イソシアネ−ト化合物を使用しなくても、オーバーコート層の酸素指数を向上させて耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を得ることはできるが、多価イソシアネ−ト化合物を2重量部以上使用すると酸素指数をより改良できるし、更にハンダ耐熱性もより優れたものになるので特に好適である。なお、多価イソシアネートを前記範囲を越えて使用すると、耐熱性が悪化することがあるので好ましくない。
【0045】
本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物の(c)エポキシ化合物としては、エポキシ当量が100〜4000程度であって、分子量が300〜10000程度である液状又は固体状のエポキシ樹脂が好ましい。例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート806、エピコート825、エピコート828、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1055、エピコート1004AF,エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010など)、3官能以上のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート152、エピコート154、エピコート180シリ−ズ、エピコート157シリ−ズ、エピコート1032シリ−ズ、チバガイギ−製:MT0163など)、宇部興産株式会社製のハイカーETBN1300×40、ナガセケムテックス株式会社製のデナレックスR−45EPT、エポキシ変性ポリシロキサン(信越化学工業社製:KF105など)などを挙げることができる。
【0046】
前記エポキシ化合物の使用量は、ポリイミドシロキサン100重量部に対して、エポキシ化合物0.1〜8重量部好ましくは0.1〜4重量である。エポキシ化合物の使用量が多くなるほど酸素指数が低下する傾向がある。エポキシ化合物を前記範囲を越えて使用すると、オーバーコート層の酸素指数が23未満となり、本願発明の耐燃性が改良された好ましくはUL94V−0の耐燃性を有するテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を得ることが困難になる。
【0047】
本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物には、ブロック多価イソシアネ−トのブロック化剤を一定の温度以上で解離する解離触媒や、多価イソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物、及び、ポリイミドシロキサンとの間の架橋反応を促進するための硬化促進触媒などからなる硬化触媒を含有することが好ましい。
ブロック多価イソシアネートの解離触媒としては、例えばジブチル錫ジラウレ−トや3級アミン類などが例示できる。解離触媒の量はブロック多価イソシアネ−ト100重量部に対して0.01〜25重量部程度特に0.1〜15重量部程度が好ましい。
また、硬化促進触媒としては、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類や3級アミン類が例示できる。硬化促進触媒の量は、ブロック多価イソシアネ−ト100重量部に対して0.01〜25重量部程度特に0.1〜15重量部程度が好ましい。
3級アミンを添加した組成物は、基材に塗布し次いで50〜130℃の低温で加熱処理することによって容易に硬化膜を得ることができるので有用である。
【0048】
前記3級アミンとしては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBUと略記することもある。以下同様)、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、2−ジメチルアミノメチルフェノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)、1,4−ジメチルピペラジン、シクロヘキシルジメチルアミンなどを好適に挙げることができる。
特に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、N,N−ジメチルベンジルアミン(DMBA)、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミンは、ブロックイソシアネートからブロック化剤を適当な温度において解離し、且つ、ポリイミドシロキサンなどのエポキシ基且つイソシアネート基との反応性を持つ置換基を有する化合物とイソシアネートやエポキシ樹脂との架橋反応を適当な速度に促進することができるので、本発明のポリイミドシロキサン樹脂組成物において極めて好適に使用することができる。
【0049】
3級アミンの使用量は、ポリイミドシロキサン100重量部に対して、0.3〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。使用量が、前記範囲を越えると耐溶剤性や電気的性質が悪くなることがあり、前記範囲よりも少ないと低温での硬化に長時間を要することがある。
【0050】
本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物の(d)無機フィラーである炭酸塩化合物は、樹脂組成物の硬化工程やテープキャリアパッケージの実装工程では安定であって絶縁性能などに悪影響を与えることがない無機炭酸塩化合物、とりわけ容易に入手でき耐燃性の改良効果が大きな炭酸カルシウムが好適である。無機フィラーである炭酸塩化合物は、どのような形態のものでもよいが、平均粒子径が0.001〜15μm特に0.005〜10μm更に0.005〜2μm程度の微細なものが耐燃性を改良するうえで好ましい。この範囲外のものを使用すると、スクリーン印刷による塗布がむずかしくなり、また得られる硬化膜が屈曲したときに折り曲げ部に亀裂や白化が起こりやすくなるので好ましくない。また、耐燃性を十分に改良するためには、無機フィラーである炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムが、ポリイミドシロキサン100重量部に対して2〜100重量部好ましくは5〜50重量部更に5〜40重量部、全樹脂固形分100重量部に対して1〜90重量部好ましくは4〜45重量部更に4〜35重量部含有されていることが好適である。
【0051】
本発明のオーバーコート層には、印刷性やハンダ耐熱性などの特性を改良する目的で炭酸塩化合物以外の微細な無機フィラーを更に含有することが好適である。これらの微細な無機フィラーは耐燃性を改良するうえでも相乗的な効果を示すことがある。これらの無機フィラーはどのような形態のものでもよいが、平均粒子径が0.001〜15μm、特に0.005〜10μmのものが好ましい。この範囲外のものを使用すると、スクリーン印刷による塗布がむずかしくなったり、又は得られる硬化膜が屈曲したときに折り曲げ部に亀裂や白化が起こりやすくなったりするので好ましくない。炭酸塩化合物以外の微細な無機フィラーとしては、例えば微粉状シリカ、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどを好適に挙げることができる。これらの炭酸塩化合物以外の微細な無機フィラ−の使用量は、ポリイミドシロキサン100重量部に対して、5重量部以上、好ましくは5〜100重量部特に10〜70重量部更に15〜50重量部である。使用量が前記範囲よりも少ないと印刷性やハンダ耐熱性が良好なポリイミドシロキサン樹脂組成物を得るのが難しくなることがある。一方、使用量が前記範囲を越えると、印刷性の良好なポリイミドシロキサン樹脂組成物を得るのが難しくなり、更にそれを用いてオーバーコート層を形成した場合に、折り曲げによりクラックが発生し易くなるので好適ではない。
【0052】
本発明においては、チクソトロピー性を付与して印刷性を良好にするための微粉状シリカと耐燃性を改良するための炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムとの組合せ、及び前記組合せに耐燃性の改良に補助的な効果を有するタルクを加えた、微粉状シリカと炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムとタルクとの組合せが特に好適である。
【0053】
本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物の(e)有機溶媒としては、ポリイミドシロキサンを調製するときの反応に使用した有機溶媒をそのまま使用することができるが、好適には、含窒素系溶媒、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなど、含硫黄原子溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなど、含酸素溶媒、例えばフェノ−ル系溶媒、例えばクレゾ−ル、フェノ−ル、キシレノ−ルなど、ジグライム系溶媒例えばジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(ジグライム)、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル(トリグライム)、テトラグライムなど、アセトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、エチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。特に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、ジエチレングリコ−ルジメチルエ−テルなどを好適に使用することができる。
【0054】
また、本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物には、有機着色顔料、無機着色顔料などの顔料を所定量、例えばポリイミドシロキサン100重量部に対して、0〜100重量部程度使用することができる。また、消泡剤を所定量、例えばポリイミドシロキサン100重量部に対して、0.1〜10重量部程度使用することができる。
【0055】
本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物は、ポリイミドシロキサン、多価イソシアネ−ト、エポキシ樹脂、炭酸塩化合物、更に炭酸塩化合物以外の微細な無機フィラーおよび有機溶媒などの所定量を均一に、撹拌・混合することによって容易に得ることができる。有機溶媒に混合させて溶液組成物にするにあたっては、ポリイミドシロキサンの重合溶液をそのままでも、又その重合溶液を適当な有機溶媒で希釈したものを使用してもよい。有機溶媒としては、前記ポリイミドシロキサンを得る際に使用できる有機極性溶媒を挙げることができるが、沸点140℃以上で210℃以下のものを使用することが好ましい。特に沸点180℃以上、特に200℃以上である有機溶媒(例えばメチルトリグライムなど)を使用すると、溶媒の蒸発による散逸が極めて減少するので、又その印刷インクを使用してスクリーン印刷などで印刷を支障なく好適に行うことができるので最適である。有機溶媒は、ポリイミドシロキサン100重量部に対して60〜200重量程度使用する。
【0056】
本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物は、特に限定するものではないが、室温(25℃)での溶液粘度が5〜1000Pa・s特に10〜100Pa・s更に10〜60Pa・sであることがスクリーン印刷などの作業性や溶液物性、得られる硬化絶縁膜の特性などから適当である。
【0057】
本発明のオーバーコート層に好適に用いることができるポリイミドシロキサン樹脂組成物は、スクリーン印刷などの方法によって配線パタ−ンを有する絶縁フィルムのパタ−ン面に、乾燥膜の厚さが0.5〜200μm程度特に1〜100μm程度の厚さ更に5〜50μm程度の厚さとなるようにスクリ−ン印刷などによって印刷して塗布した後、50〜100℃程度の温度で5〜60分間程度加熱処理して溶媒を除去し、次いで100〜210℃程度好適には110〜200℃で5〜120分間好適には10〜60分間程度で加熱処理して硬化させることによって、オーバーコート層を好適に形成することができる。得られるオーバーコート層は、配線パターン間のスペースを良好に埋め込み、25℃での初期弾性率が10〜1200MPa程度好ましくは10〜800MPa程度の柔軟性を有し、十分なレベルの電気絶縁性(通常は体積絶縁抵抗が1012Ω・cm以上、好ましくは1013Ω・cm以上)、260℃で10秒間のハンダ耐熱性を有する。さらに好ましくは、反りが小さくて平面性に優れ、耐屈曲性、基材及び封止剤との密着性、耐溶剤性(例えば、アセトン、イソプロパノ−ル、メチルエチルケトンに対する耐溶剤性)、耐メッキ性、スズ潜り、絶縁信頼性などの性能が良好である。そして、このオーバーコート層を採用したテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板の耐燃性を改良することができる。
【0058】
本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板は、オーバーコート層に炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムを無機フィラーとして含有させることによって耐燃性を改良したものであって、オーバーコート層として前述のポリイミドシロキサン樹脂組成物以外の例えばポリウレタン樹脂組成物、特にポリブタジエンジオール及び/又はポリエステルジオールとイソシアネート化合物との組合せからなるポリウレタン樹脂組成物及びポリイミド変性ポリウレタン樹脂組成物などのポリウレタン樹脂組成物を用いる場合でも、ポリイミドシロキサン樹脂組成物の場合と同様に、その樹脂組成物に炭酸塩化合物とりわけ炭酸カルシウムを無機フィラーとして含有させることによって耐燃性を好適に改良することができ、その結果、本発明の耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を好適に得ることができる。
【0059】
本発明のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板に、例えば表示装置のドライバーLSIなどの半導体チップやその他の電子・電子部品を実装したテープキャリアパッケージは、柔軟性配線板として改良された耐燃性好ましくはUL94V−0の耐燃性を有するものであるから、例えば使用電圧が60V以上のPDP表示装置などに従来のテープキャリアパッケージと同様に折り曲げた形態で好適に装填することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に説明する。これらの実施例では、フレックス樹脂層、絶縁フィルム及び接着剤層は、従来の通常用いられているものを使用し、オーバーコート層についてポリイミドシロキサン樹脂組成物を用いて検討したものであるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
以下の各例において測定、評価は次の方法で行った。
〔溶液組成物の粘度〕
E型粘度計(東京計器社製)を用い、温度25℃で、回転数10rpmにて測定した。
【0062】
〔オーバーコート層の評価〕
オーバーコート層の評価は、評価項目によって、以下のように加熱処理された硬化膜サンプルについておこなった。
すなわち、封止材料との密着性の評価は、80℃で30分次いで120℃で1時間加熱処理したサンプルについておこなった。
但し、封止材料との密着性の評価用サンプルは、サンプル表面に封止材料を滴下して塗布した後160℃で封止材料を硬化させたから、結局前記加熱処理に加えて更に160℃の加熱処理をされたものである。
それ以外のオーバーコート層の評価は、実装工程で最終的に封止材料を硬化するために160℃程度の加熱処理がおこなわれることを考慮して、80℃で30分次いで160℃で1時間加熱処理したサンプルについておこなった。
【0063】
封止材料との密着性の評価:
35μm厚電解銅箔光沢面上にオーバーコート層用の樹脂組成物を30μm厚に塗布し硬化させた硬化膜を形成し、この硬化膜上にICチップ封止材料CEL−C−5020(日立化成工業株式会社製)を約1mm厚、直径0.5cm程度の円状に滴下して塗布し160℃で1時間加熱処理して硬化させサンプルとした。手でサンプルを折り曲げ、封止樹脂のはがれ具合を観察した。硬化膜で凝集破壊を起こした場合及び硬化膜/銅箔界面剥離の場合を○、硬化膜の凝集破壊と硬化膜/封止樹脂界面剥離が共存する場合を△、硬化膜/封止樹脂界面剥離の場合を×で示した。
【0064】
電気絶縁性(体積抵抗)の測定:
JIS C−2103によって測定した。
【0065】
引張弾性率の測定:
厚さがおよそ75μmになるように硬化させたシート状試料を、幅1cm、長さ15cmに切り出して試験に用いた。ASTM D882によって測定した。
【0066】
ハンダ耐熱性の評価:
厚さ35μmの電解銅箔の光沢面に絶縁膜用組成物を30μm厚に塗布し硬化させ絶縁膜を形成した。絶縁膜上にロジン系フラックス(サンワ化学工業性:SUNFLUX SF−270)を塗布した後、260℃の半田浴に10秒間絶縁膜を接触させた。その後のサンプルの状態を観察して評価した。全く変化が生じない場合を○、わずかにふくれやハンダの潜りこみが観察された場合を△、膨れや剥れが生じた場合を×で示した。
【0067】
反りの測定:
50mm×70mmにカットした宇部興産製ポリイミドフィルム(ユーピレックス75S)の中央部分に30mm×40mmの面積に絶縁膜用組成物を塗布し、硬化させた。硬化膜の厚さは15μm±10μmであった。ポリイミドフィルムの4辺の最大高さを測定した。
【0068】
耐溶剤性の測定:
厚さがおよそ75μmになるように硬化させたシート状サンプル0.5gをアセトン(25℃)に30分間浸漬した後、アセトン可溶分の重量%で示した。尚、アセトン可溶分が100重量%はサンプルが完全に溶解したこと即ち未硬化であることを意味する。
【0069】
〔フレックス樹脂層、絶縁フィルム、接着剤層、及びオーバーコート層からなる積層体の耐燃焼性の評価〕
厚さ75μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックス75S)に厚さ15μmの接着剤(東レ製♯8200)が塗布された接着剤層付絶縁フィルムの接着剤が無い面(裏面)にフレックス樹脂(宇部興産株式会社製ユピコートFS100L)を塗布し、80℃30分、160℃1時間加熱し硬化させ、厚さ15μmのフレックス樹脂層を形成し、さらに、接着剤層付絶縁フィルムの接着剤面(表面)にオーバーコート層用の樹脂組成物を塗布し、80℃30分、160℃1時間加熱し硬化させ、厚さ25μmのオーバーコート層を形成した。得られた4層からなる積層体を5インチ×0.5インチに切り出して試験片として、燃焼試験に用いた。耐燃性の評価はUL94規格垂直燃焼試験法に準じて行った。すなわち、試験片を垂直方向にクランプ付きスタンドに保持し、その下端が12インチ(304.8mm)の高さになるように上部をクランプで固定した。また、サンプル下には火玉が落下した場合の着火確認のため、脱脂綿を置いた。試験片下端中央に0.75インチ(19.05mm)炎に調節したバーナーを10秒間接炎後(サンプル下部1インチ(25.4mm)の部分)、炎を離しサンプルの燃焼時間を測定した。消火後直ちに再度10秒間接炎し、燃焼(赤熱)時間を測定した。
測定はn=5を1セットとし、2セットについて試験した(計10点)。
UL94V−0の判定基準として以下の項目を確認した。
1)1回目の接炎後に10秒以上燃焼し続けない
2)5点×2回(計10回)の接炎後の燃焼時間が50秒以内
3)火玉滴下で12インチ下の脱脂綿を燃焼させない
4)2回目の接炎後の赤熱燃焼時間が30秒以内
5)クランプ部まで燃え上がらない
【0070】
以下の各例で使用した多価イソシアネート、エポキシ樹脂、充填材、硬化触媒について説明する。
〔多価イソシアネート〕
バーノックD−550:大日本インキ株式会社製、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体、ブロック化剤:メチルエチルケトオキシム
〔エポキシ樹脂〕
エピコート157S70:ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂
〔微粉状シリカ〕
アエロジル50:日本アエロジル社製、平均粒径30nm
アエロジル130:日本アエロジル社製、平均粒径16nm
〔硫酸バリウム〕
硫酸バリウムB−30:堺化学工業社製、平均粒径0.3μm
〔タルク〕
ミクロエースP−3:日本タルク社製、平均粒径5.1μm
〔炭酸カルシウム〕
炭酸カルシウム:宇部マテリアルズ社製A−30、平均粒径0.17μm
〔硬化触媒〕
DBU:アルドリッチ社製、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン
キュアゾール2E4MZ:四国化成工業社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール
〔消泡剤〕
KS531:信越化学工業社製、シリコーン消泡剤
DB−100:ダウコーニング・アジア社製、シリコーン消泡剤
【0071】
〔参考例1〕ポリイミドシロキサンの製造
容量500mlのガラス製フラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物47.1g(0.16モル)、溶媒のトリグライム(以下、TGと略記することもある。)100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で加熱撹拌した。α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(アミノ当量460)125.1g(0.136モル)、TG40gを加え、180℃で60分加熱撹拌した。さらにこの反応溶液にビス(3−カルボキシ−4−アミノフェニル)メタン(4,4’−ジアミノ−3、3’−ジカルボキシフェニルメタン)6.9g(0.024モル)及びTG39gを加え、180℃で15時間加熱撹拌した後、濾過を行った。得られたポリイミドシロキサン反応溶液は、ポリマ−固形分濃度50重量%、ηinh0.20の溶液であった。イミド化率は実質的に100%であった。
【0072】
〔実施例1〕
ガラス製容器に、参考例1で得たポリイミドシロキサン溶液40.8gに、エポキシ樹脂のエピコート157S70を0.35g(ポリイミドシロキサン固形分100重量部に対して1.7重量部、以下同様)、多価イソシアネートのバーノックD−550を2.04g(10.0重量部)、硬化触媒として2E4MZを0.04g(0.2重量部)とDBUを0.16g(0.8重量部)、シリコン系消泡剤のをKS531を0.9g(4.4重量部)、微粉状シリカのアエロジル50を0.83g(4重量部)、アエロジル130を3.7g(18重量部)、炭酸カルシウムを4.7g(23重量部)を加えて25℃で2時間撹拌し、均一に混合し、溶液粘度が35ポイズのポリイミドシロキサン樹脂組成物を得た。
このポリイミドシロキサン樹脂組成物は、約5℃で2週間放置しても、粘度変化は少なくスクリ−ン印刷可能であった。
このポリイミドシロキサン樹脂組成物を用いたオーバーコート層、及び前記オーバーコート層をフレックス樹脂、ポリイミドフィルム、接着剤層と4層に積層した柔軟性積層体について評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
〔実施例2〜3〕
実施例1と同様にして表1に示した組成からなるポリイミドシロキサン樹脂組成物を得た。
このポリイミドシロキサン樹脂組成物を用いたオーバーコート層、及び前記オーバーコート層をフレックス樹脂、ポリイミドフィルム、接着剤層と4層に積層した柔軟性積層体について評価した。その結果を表1に示す。
【0074】
〔比較例1〜3〕
実施例1と同様にして表1に示した組成からなるポリイミドシロキサン樹脂組成物を得た。
このポリイミドシロキサン樹脂組成物を用いたオーバーコート層、及び前記オーバーコート層をフレックス樹脂、ポリイミドフィルム、接着剤層と4層に積層した柔軟性積層体について評価した。その結果を表1に示す。
【0075】
〔比較例4〕
従来のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板に好適に用いられているオーバーコート材のウレタン樹脂組成物であるAR7100(味の素ファインテクノ株式会社製)を用いて、実施例と同様にして積層体の耐燃焼性試験をおこなった。耐燃焼性試験では、接炎すると一気に燃焼し、UL94V−0の耐燃性は不合格であった。
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によって、PDP表示装置などの使用電圧が高くて、その部品には改良された耐燃性が求められる製品の部品として好適に使用することができる、耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板、及びそれを用いて形成されたテープキャリアパッケージを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のテープキャリアパッケージの代表的な一例を部分的に示す概略の平面図である。
【図2】図1のA−A’線における部分的な断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1:絶縁フィルム
2:接着剤層
3:配線パターン
3a:インナーリード(配線パターン)
3b:アウターリード(配線パターン)
3c:テストパッド(配線パターン)
4:デバイスホール
5:折り曲げスリット
6:バンプ
7:半導体チップ
8:フレックス樹脂層
9:オーバーコート層(ソルダーレジスト層)
10:半導体封止樹脂
11:パーフォレーションホール(スプロケットホール)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げスリットを有する絶縁フィルム表面に接着剤層を介して配線パターンが形成されており、配線パターンは折り曲げスリットを横切って設けられており、折り曲げスリットを横切って設けられた配線パターンの少なくとも片側表面がフレックス樹脂層で保護されており、更に配線パターンが形成された領域の大部分がオーバーコート層によって保護されているテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板であって、前記オーバーコート層が、硬化後に、フィルムとして25℃での初期弾性率が10〜1200MPaであり、十分なレベルの電気絶縁性、260℃で10秒間のハンダ耐熱性を有し、且つ無機フィラーとして炭酸塩化合物を含有した硬化性樹脂組成物で構成されたことを特徴とする耐燃性が改良されたテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項2】
前記の硬化性樹脂組成物において、無機炭酸塩化合物が樹脂固形分100重量部に対して1〜90重量部含有されていることを特徴とする前記請求項1に記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項3】
前記の硬化性樹脂組成物において、無機炭酸塩化合物が炭酸カルシウムであることを特徴とする前記請求項1〜2のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項4】
前記のフレックス樹脂層、絶縁フィルム、接着剤層、及びオーバーコート層を積層した積層体がUL94V−0の耐燃性を有することを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項5】
オーバーコート層が、ポリイミドシロキサン樹脂組成物を加熱処理して得られた硬化膜であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項6】
オーバーコート層が、ポリウレタン樹脂組成物を加熱処理して得られた硬化膜であることを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれかに記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板を用いたことを特徴とするテープキャリアパッケージ。
【請求項8】
硬化後に、フィルムとして25℃での初期弾性率が10〜1200MPaであり、十分なレベルの電気絶縁性、260℃で10秒間のハンダ耐熱性を有し、且つ無機フィラーとして炭酸塩を含有したことを特徴とする、前記請求項1に記載のテープキャリアパッケージ用柔軟性配線板のオーバーコート層用硬化性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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