説明

耐疲労性熱可塑性組成物、製法、およびその成形品

熱可塑性組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した場合、30000以上の重量平均分子量を有するポリカーボネート、1〜50重量パーセントのシロキサン単位を含むポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーを含み、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの量が、ASTM D638-03タイプ1に準じて、圧力28.2MPaおよび振動数5Hzにおいて、70000サイクル以上で該熱可塑性組成物における疲れ破損が生じるように選択され、該熱可塑性組成物の粘度が、ASTM D4440-01に準じて、せん断速度6000sec-1および300℃で測定した場合、112Pa-s以下である樹脂組成物を含む。熱可塑性プラスチックを製造する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱可塑性組成物、特に耐疲労性熱可塑性組成物、製法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性プラスチックは、繰り返される機械的応力に耐えなければならない物品を調製するために広く使用されている。特に、ノート型パソコン、携帯型情報端末(PDA)、携帯電話などの、頻繁に開き、それに伴う機械的応力を受ける小型軽量の携帯型電子機器用のハウジングに使用される熱可塑性プラスチックは、高度の耐疲労性を備えなければならない。耐疲労性は、機械的な疲労に対する熱可塑性プラスチックの耐性として説明され、疲れ破損点において、亀裂として、および最終的には物品中の破壊応力点として明示し得る。例えば、蝶番は、任意の上記および他の類似品のハウジング中の高い応力点であり、疲れ破損を受けやすい。したがって、疲れ破損点は、高いことが望ましい。
【0003】
優れた表面仕上げ、着色適性、および機械特性を有するポリカーボネートは、上述した用途において使用し得る。高分子量のポリカーボネートは、高い疲れ破損点を付与するために使用し得る。しかしながら、高分子量は、ポリカーボネートの射出成形特性を制限し得る低メルトフロー特性を伴う恐れがある。改良された流動性を与えるためにポリマーを可塑化する通常の方法も、例えば衝撃強度および耐疲労性などの機械特性を低下または損失させる恐れがある。このように、耐疲労性の高い用途におけるポリカーボネートの有用性は、機械特性に関するこれらの二次的検討事項によって低下しかねない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当技術分野においてポリカーボネートを含む耐疲労性熱可塑性組成物の必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した場合30000以上の重量平均分子量を有するポリカーボネートと、シロキサン単位を1〜50重量パーセント含むポリシロキサン-ポリカーボネートと、SANコポリマーとを含み、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの量は、ASTM D638-03タイプ1に準じて、圧力28.2MPaおよび振動数5Hzにおいて、70000サイクル以上で熱可塑性組成物に対する疲れ破損が生じるように選択され、該熱可塑性組成物の粘度が、ASTM D4440-01に準じて、せん断速度6000sec-1および300°Cで測定した場合、112Pa-s以下である樹脂組成物を含む熱可塑性組成物によって、当技術分野の上記欠点は軽減される。
【0006】
別の実施形態では、熱可塑性組成物を製造する方法は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した場合30000以上の重量平均分子量を有するポリカーボネートと、シロキサン単位を1〜50重量パーセント含むポリシロキサン-ポリカーボネートと、SANコポリマーとを溶融ブレンドすることを含み、この場合、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの量は、ASTM D638-03タイプ1に準じて、圧力28.2MPaおよび振動数5Hzにおいて、70000サイクル以上で該熱可塑性組成物に対する疲れ破損が生じるように選択され、該熱可塑性組成物の粘度は、ASTM D4440-01に準じて、せん断速度6000sec-1および300°Cで測定した場合、112Pa-s以下である。
【0007】
別の実施形態では、熱可塑性組成物を含む物品を開示する。
【0008】
上述および他の特徴は、以下の図および詳細な説明によって例示する。
【0009】
ここで、図に言及するが、図は、例示であって限定するものではないことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
意外にも、高分子量ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびスチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマーを含む樹脂組成物を含む熱可塑性組成物が、優れた耐疲労性に加え、高せん断速度で測定した場合、低粘性を有することが見出された。したがって、熱可塑性組成物は、適切な機械特性と同様に優れた成形性を有する。高分子量ポリカーボネートは、本明細書で開示するように、30000以上の分子量を有する。分子量は、本明細書で開示するように、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して決定し、原子質量単位(AMU)で報告する。
【0011】
樹脂組成物は、ポリカーボネートを含む。本発明で使用する場合、「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」という用語は、式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
のカーボネート構造の繰り返し単位を有する組成物を意味する。式中、R1基の全数の少なくとも60パーセントは、芳香族有機基であり、その残りは、脂肪族基、脂環式基、または芳香族基である。一実施形態では、各R1は、芳香族有機基、例えば、式(2)
【0014】
【化2】

【0015】
の基である。式中、A1およびA2の各々は、単環式二価アリール基であり、Y1は、A1とA2を隔てる1個または2個の原子を有する架橋基である。ある例示的な実施形態では、1個の原子がA1とA2を隔てる。この種類の基の例示的な非限定例は、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-C(O)-、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンである。架橋基Y1は、炭化水素基、またはメチレン、シクロヘキシリデン、もしくはイソプロピリデンなどの飽和炭化水素基であってもよい。
【0016】
ポリカーボネートは、式(3)
【0017】
【化3】

【0018】
のジヒドロキシ化合物を含む、式HO-R1-OHを有するジヒドロキシ化合物の界面反応によって製造し得る。式中、Y1、A1およびA2は上述した通りである。また、一般式(4)
【0019】
【化4】

【0020】
のビスフェノール化合物も含まれる。式中、RaおよびRbは各々、ハロゲン原子または一価の炭化水素基を表し、同じかまたは異なってもよく、pおよびqは、各々独立に0〜4の整数であり、Xaは、式(5)
【0021】
【化5】

【0022】
の基の1つを表す。式中、RcおよびRdは、各々独立に水素原子または1価の直鎖もしくは環式炭化水素基を表し、Reは、二価の炭化水素基である。
【0023】
好適なジヒドロキシ化合物の幾つかの例示的な非限定例には、以下のもの、レゾルシノール、4-ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル) シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、トランス-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンチン、α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオリン、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6'-ジヒドロキシ-3,3,3',3'-テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン、および2,7-ジヒドロキシカルバゾールなど、ならびに前述のジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0024】
式(3)によって表し得るビスフェノール化合物の種類の具体例には、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下では「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)が挙げられる。前述のジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組み合わせもまた使用してもよい。
【0025】
枝分かれポリカーボネートもまた、線状ポリカーボネートと枝分かれポリカーボネートとのブレンドと同様に有用である。枝分かれポリカーボネートは、重合中に枝分かれ剤を添加することによって調製し得る。これらの枝分かれ剤には、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、および前述の官能基の混合物から選択される3個以上の官能基を含む多官能有機化合物が挙げられる。具体例には、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、三塩化トリメリット、トリス-p-ヒドロキシフェニルエタン、イサチンビスフェノール、トリスフェノールTC(1,3,5-トリス((p-ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリスフェノールPA(4(4(1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)エチル)-α,α-ジメチルベンジル)フェノール)、4-クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸、およびベンゾフェノンテトラカルボン酸が挙げられる。枝分かれ剤は、使用する場合、ポリカーボネートに0.05〜2.0重量%の量で添加し得る。
【0026】
枝分かれポリカーボネートは、使用する場合、ポリカーボネートの全重量の10重量%以下で、特定すれば5 重量%以下で、より特定すれば1重量%以下で、更により特定すれば0.5 重量%以下でポリカーボネート中に存在し得る。したがって、枝分かれポリカーボネートは、枝分かれポリカーボネートの存在が、熱可塑性組成物の所望の特性に有意に影響を及ぼさないことを条件として、ポリカーボネートにおいて有用なものとみなされる。
【0027】
ある実施形態では、ポリカーボネートは、線状ポリカーボネートを含む。ある具体的な実施形態では、線状ポリカーボネートは、A1およびA2の各々がp-フェニレンであり、Y1がイソプロピリデンである、ビスフェノールAから誘導されるホモポリマーである。線状ポリカーボネートは、ポリカーボネートの全重量の90重量%以上、特定すれば95重量%以上、より特定すれば99重量%以上、更により特定すれば99.5重量%以上の量でポリカーボネート中に存在し得る。
【0028】
ポリカーボネートは、グラム当たり0.3〜1.5デシリットル(dl/g)、特定すれば0.45〜1.0 dl/gのクロロホルム中、25℃で測定される場合の固有粘度を有し得る。ポリカーボネートは、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、試料濃度ミリリットル当たり1ミリグラムで測定し、ポリカーボネート標準物質で較正した場合、重量平均分子量(Mw)10000〜150000を有し得る。ある実施形態では、好適なポリカーボネートは、30000以上、特定すれば33000以上、より特定すれば35000以上のMwを有する。別の実施形態では、好適なポリカーボネートは、GPC を使用して測定した場合、30000〜150000、特定すれば33000〜100000、より特定すれば35000〜50000の高いMwを有する。別の実施形態では、ポリカーボネートは、10000〜30000未満の低いMwを有する。ある具体的な実施形態では、ポリカーボネートは、高いおよび低いMwのポリカーボネートを重量比100:0〜50:50、特定すれば100:0〜80:20、より特定すれば100:0〜90:10でブレンドする、高いおよび低いMwの該ポリカーボネートのブレンドであり得る。
【0029】
一実施形態では、ポリカーボネートは、薄い物品の製造に適する流動特性を有する。メルトボリュームフローレート(MVRと略すことが多い)は、所定の温度および荷重でオリフィスを通る熱可塑性プラスチックの押出速度を測定する。薄い物品の形成に適するポリカーボネートは、ASTM D1238-04に準じて、300℃/1.2kgで測定される、10分間当たり0.5〜35立方センチメートル(cc/10分)のMVRを有し得る。ある具体的な実施形態では、好適なポリカーボネート組成物は、ASTM D1238-04に準じて、300℃/1.2kgで測定される、0.5〜5cc/10分、特定すれば0.5〜4.5cc/10分、より特定すれば1〜4cc/10分のMVRを有する。異なる流動特性のポリカーボネートの混合物を使用して、所望の総合的流動特性を実現し得る。
【0030】
ポリカーボネートは、ASTM D1003-00に準じて測定した場合、55%以上、特定すれば60%以上、より特定すれば70%以上の光透過率を有し得る。コポリマーは、ASTM D1003-00に準じて測定した場合、50%以下、特定すれば40%以下、最も特定すれば30%以下のヘイズを有する。
【0031】
本明細書で使用する場合の「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」は、ポリカーボネートとカーボネート鎖単位を含む他のコポリマーとのブレンドを更に含んでもよい。ある具体的な好適コポリマーは、コポリエステル-ポリカーボネートとしても知られるポリエステルカーボネートである。このようなコポリマーは、式(1)のカーボネート鎖の繰り返し単位に加え、式(6)
【0032】
【化6】

【0033】
の繰り返し単位を更に含む。式中、Dは、ジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基であり、例えば、C2〜10のアルキレン基、C6〜20の脂環式基、C6〜20の芳香族基、またはアルキレン基が2〜6個の炭素原子、特定すれば2、3、もしくは4個の炭素原子を含むポリオキシアルキレン基であり、Tは、ジカルボン酸から誘導される二価の基であり、例えば、C2〜10のアルキレン基、C6〜20の脂環式基、C6〜20のアルキル芳香族基、またはC6〜20の芳香族基であり得る。
【0034】
一実施形態では、Dは、C2〜6のアルキレン基である。別の実施形態では、Dは、式(7)
【0035】
【化7】

【0036】
の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。式中、各Rfは、独立に、ハロゲン原子、C1〜10の炭化水素基、またはC1〜10のハロゲン置換炭化水素基であり、nは、0〜4である。ハロゲンは普通臭素である。式(7)によって表し得る化合物の例には、レゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなどの置換されているレゾルシノール化合物、カテコール、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなどの置換されているヒドロキノン、または前述の化合物の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0037】
ポリエステルを調製するために使用し得る芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'-ビス安息香酸、および前述の酸の少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。1,4-、1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸などの、縮合環を含む酸も存在し得る。具体的なジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらの混合物である。具体的なジカルボン酸は、テレフタル酸とイソフタル酸の重量比が91:9〜2:98である、イソフタル酸とテレフタル酸との混合物を含む。別の具体的な実施形態では、Dは、C2〜6のアルキレン基であり、Tは、p-フェニレン、m-フェニレン、ナフタレン、二価脂環式基、またはこれらの混合物である。この種のポリエステルには、ポリ(アルキレンテレフタレート)が挙げられる。
【0038】
ポリエステルポリカーボネートは、エステル単位以外に、前述のようにカーボネート単位を含み得る。式(1)のカーボネート単位は、式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物からも誘導し得、この場合、具体的なカーボネート単位は、レゾルシノールカーボネート単位である。
【0039】
具体的には、ポリエステル-ポリカーボネートのポリエステル単位は、イソフタル酸のおよびテレフタル酸の二酸の組み合わせ(またはその誘導体)とレゾルシノール、ビスフェノールA、またはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせとの反応から誘導し得、この場合、イソフタレート単位とテレフタレート単位のモル比は、91:9〜2:98、特定すれば85:15〜3:97、より特定すれば80:20〜5:95、更により特定すれば70:30〜10:90である。ポリカーボネート単位は、レゾルシノールカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位のモル比を0:100〜99:1で、レゾルシノールおよび/またはビスフェノールAから誘導し得、ポリエステル-ポリカーボネート中の、イソフタレート-テレフタレート混合ポリエステル単位とポリカーボネート単位とのモル比は、1:99〜99:1、特定すれば5:95〜90:10、より特定すれば10:90〜80:20であり得る。ポリエステル-ポリカーボネートとポリカーボネートとのブレンドを使用する場合、このブレンド中のポリカーボネートとポリエステル-ポリカーボネートの重量比は、それぞれ、1:99〜99:1、特定すれば10:90〜90:10であり得る。
【0040】
ポリエステル-ポリカーボネートは、1500〜100000、特定すれば2000〜80000、より特定すれば3000〜50000の重量平均分子量(Mw)を有し得る。分子量の決定は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用し、ポリカーボネート基準物質に対して較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して実施する。試料は、濃度約1mg/mlで調製し、流速約1.0ml/分で溶出する。
【0041】
好適なポリカーボネートは、界面重合および溶融重合などのプロセスによって製造し得る。界面重合の反応条件は様々であり得るが、例示的プロセスは一般に、水酸化ナトリウムまたは炭酸カリウム水溶液中に二価フェノール反応物を溶解または分散させ、生じた混合物を適切な水不混和性溶媒に加え、該反応物とカーボネート前駆体をトリエチルアミンなどの適当な触媒または相間移動触媒の存在の下、pH条件を例えば8〜10に制御した条件下で接触させることを含む。最も汎用される水不混和性溶媒には、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが挙げられる。好適なカーボネート前駆体には、例えば、臭化カルボニルもしくは塩化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、または二価フェノール(例:ビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスクロロギ酸エステル)もしくはグリコール(例:エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロギ酸エステル)のビスハロギ酸エステルなどのハロギ酸エステルが挙げられる。前述の種類のカーボネート前駆体の少なくとも1つを含む組み合わせもまた使用し得る。連鎖停止剤(キャッピング剤とも称する)を重合中に含めてもよい。連鎖停止剤は、分子量成長速度を制限し、したがってポリカーボネートの分子量を制御する。連鎖停止剤は、モノフェノール化合物、モノカルボン酸塩化物、および/またはクロロギ酸エステルの少なくとも1つであってもよい。
【0042】
例えば、連鎖停止剤として好適なモノフェノール化合物には、フェノール、C1〜C22のアルキル置換フェノール、p-クミルフェノール、p-第3ブチルフェノール、ヒドロキシジフェニルなどの単環式フェノール、p-メトキシフェノールなどのジフェノールのモノエーテルが挙げられる。アルキル置換フェノールには、8〜9個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル置換基を有するフェノールが挙げられる。モノフェノールUV吸収剤は、キャッピング剤として使用し得る。このような化合物には、4-置換-2-ヒドロキシベンゾフェノンおよびその誘導体、アリールサリチレート、モノ安息香酸レゾルシノールなどのジフェノールのモノエステル、2-(2-ヒドロキシアリール)ベンゾトリアゾールおよびこれらの誘導体、2-(2-ヒドロキシアリール)-1,3,5-トリアジンおよびその誘導体などが挙げられる。具体的には、モノフェノール連鎖停止剤には、フェノール、p-クミルフェノール、および/またはモノ安息香酸レゾルシノールが挙げられる。
【0043】
モノカルボン酸塩化物もまた、連鎖停止剤として好適であり得る。これらには、塩化ベンゾイル、C1〜C22のアルキル置換塩化ベンゾイル、塩化トルオイル、ハロゲン置換塩化ベンゾイル、ブロモベンゾイルクロライド、塩化シンナモイル、4-ナジイミドベンゾイルクロライド、およびこれらの混合物などの単環式モノカルボン酸塩化物、無水トリメリット酸塩化物、塩化ナフトイルなどの多環式モノカルボン酸塩化物、ならびに単環式および多環式モノカルボン酸塩化物の混合物が挙げられる。22個以下の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸の塩化物が好適である。塩化アクリロイルおよび塩化メタクリロイルなどの脂肪族モノカルボン酸の官能化塩化物もまた好適である。クロロギ酸フェニル、アルキル置換クロロギ酸フェニル、p-クミルクロロギ酸フェニル、クロロギ酸トルエン、およびこれらの混合物などの単環式モノクロロギ酸エステルを含むモノクロロギ酸エステルもまた好適である。
【0044】
ポリエステル-ポリカーボネートは、界面重合によって調製し得る。ジカルボン酸それ自体を利用するのではなく、対応する酸ハロゲン化物などの酸の反応性誘導体、特に酸二塩化物および酸二臭化物を採用することができ、好ましい場合さえもある。したがって、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、またはこれらの混合物を使用する代わりに、二塩化イソフタロイル、二塩化テレフタロイル、およびこれらの混合物を採用することができる。
【0045】
使用し得る相間移動触媒の中には、式(R3)4Q+Xの触媒があり、式中、各R3は、同じかまたは異なり、C1〜10のアルキル基であり、Qは、窒素またはリン原子であり、Xは、ハロゲン原子またはC1〜8のアルコキシ基もしくはC6〜18のアリールオキシ基である。好適な相間移動触媒には、例えば、[CH3(CH2)3]4NX、[CH3(CH2)3]4PX、[CH3(CH2)5]4NX、[CH3(CH2)6]4NX、[CH3(CH2)4]4NX、CH3[CH3(CH2)3]3NX、およびCH3[CH3(CH2)2]3NXが挙げられ、式中、Xは、Cl-、Br-、C1〜8のアルコキシ基、またはC6〜18のアリールオキシ基である。相間移動触媒の効果的な量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量に対して0.1〜10重量%であり得る。別の実施形態では、相間移動触媒の効果的な量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量に対して0.5〜2重量%であり得る。
【0046】
あるいは、ポリカーボネートを製造するために溶融プロセスを使用し得る。一般に、溶融重合プロセスでは、ジフェニルカーボネートなどのジヒドロキシ反応物(複数も)とジアリールカーボネートエステルとを、均一な分散を形成させるBanbury(登録商標)ミキサー、二軸押出機などの中において、溶融状態で、エステル交換触媒の存在下で共に反応させることによってポリカーボネートを調製し得る。揮発性一価フェノールは、蒸留によって溶融反応物から除去し、ポリマーは、溶融残留物として分離する。
【0047】
ポリエステル-ポリカーボネート樹脂もまた、界面重合によって調製し得る。ジカルボン酸それ自体を利用するのではなく、これに相当する酸ハロゲン化物などの、酸の反応性誘導体、特に酸二塩化物および酸二臭化物を採用することができ、好ましい場合さえもある。したがって、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、またはこれらの混合物を使用する代わりに、二塩化イソフタロイル、二塩化テレフタロイル、およびこれらの混合物を採用することができる。
【0048】
上記のポリカーボネート以外に、ポリカーボネートと他の熱可塑性ポリマーとの組み合わせ、例えば、ポリカーボネートおよび/またはポリカーボネートコポリマーとポリエステルとの組み合わせを使用することもできる。本発明で使用する場合、「組み合わせ」には、全ての混合物、ブレンド、アロイ、反応生成物などが挙げられる。好適なポリエステルは、式(6)の繰り返し単位を含み、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶ポリエステル、およびポリエステルコポリマーであってもよい。枝分かれ剤、例えば、3個以上のヒドロキシ基または三官能もしくは多官能カルボン酸を有するグリコールを組み入れた、枝分かれポリエステルを使用することもできる。更に、組成物の最終目的の使用に応じて、ポリエステル上に様々な濃度の酸およびヒドロキシル末端基を有することが望ましいことがある。
【0049】
有用となり得るポリエステルの例には、ポリ(アルキレンテレフタレート)が挙げられる。ポリ(アルキレンテレフタレート)の具体例には、それだけに限らないが、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタレート)(PBN)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、および前述のポリエステルの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。PETGとして略される、ポリマーがポリ(エチレンテレフタレート)を50モル%以上含む、およびPCTGとして略される、ポリマーがポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)を50モル%より多く含む、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)-コ-ポリ(エチレンテレフタレート)もまた有用である。上記のポリエステルには、ポリ(アルキレンシクロヘキサンジカルボキシレート)などの類似の脂肪族ポリエステルが挙げられてもよく、これらの好適例は、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)である。コポリエステルを形成するために、脂肪族二酸および/または脂肪族ポリオールから誘導された、少量の、例えば0.5〜10重量パーセントの単位を有する上記のポリエステルも企図している。
【0050】
したがって、ポリカーボネートは、樹脂組成物の全重量の65〜87重量%、特定すれば72〜86重量%、より特定すれば73〜83重量%の量で樹脂組成物中に存在し、この場合、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの合計量は、樹脂組成物の100重量%である。
【0051】
この樹脂組成物は、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマー(本明細書では「ポリシロキサン-ポリカーボネート」とも称する)を更に含む。ポリシロキサン-ポリカーボネートのポリシロキサン(本明細書では「ポリジオルガノシロキサン」とも称する)ブロックは、式(8)
【0052】
【化8】

【0053】
のシロキサンの繰り返し単位(本明細書では「ジオルガノシロキサン単位」とも称する)を含む。式中、Rの各出現は同じかまたは異なり、C1〜13の一価の有機基である。例えば、Rは、C1〜C13のアルキル基、C1〜C13のアルコキシ基、C2〜C13のアルケニル基、C2〜C13のアルケニルオキシ基、C3〜C6のシクロアルキル基、C3〜C6のシクロアルコキシ基、C6〜C14のアリール基、C6〜C10のアリールオキシ基、C7〜C13のアラルキル基、C7〜C13のアラルコキシ基、C7〜C13のアルカリール基、またはC7〜C13のアルカリールオキシ基であり得る。前述の基は、フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素、またはこれらの混合物で完全にまたは部分的にハロゲン化し得る。前述のR基の組み合わせは、同じコポリマー中に使用し得る。
【0054】
式(8)中のDの値は、熱可塑性組成物中の各成分の種類および相対量、組成物の所望の特性、および類似の考慮事項に応じて広範囲に変化し得る。一般に、Dは2〜1000、特定すれば2〜500、より特定すれば5〜100の平均値を有し得る。一実施形態では、Dは10〜75の平均値を有し、更に別の実施形態では、Dは40〜60の平均値を有する。Dがより低い値、例えば、40未満である場合、比較的多量のポリシロキサン-ポリカーボネートを使用することが望ましいこともある。反対に、Dがより高い値、例えば、40を超える場合、比較的少量のポリシロキサン-ポリカーボネートを使用することが必要なこともある。
【0055】
第1のポリシロキサン-ポリカーボネートのDの平均値が、第2のポリシロキサン-ポリカーボネートのDの平均値未満である、第1および第2の(またはより多くの)ポリシロキサン-ポリカーボネートの組み合わせを使用し得る。
【0056】
一実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(9)
【0057】
【化9】

【0058】
の構造の繰り返し単位によって得られる。式中、Dは上記の通りであり、各Rは同じかまたは異なってもよく、上記の通りであり、各Arは同じかまたは異なってもよく、結合が、芳香族部に直接結合している、置換されたまたは置換されていないC6〜C30のアリーレン基である。式(9)中の好適なAr基は、C6〜C30のジヒドロキシアリーレン化合物、例えば上記の式(3)、(4)、または(7)のジヒドロキシアリーレン化合物から誘導し得る。前述のジヒドロキシアリーレン化合物の少なくとも1つを含む組み合わせも使用し得る。好適なジヒドロキシアリーレン化合物の具体例は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニルスルフィド)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパンである。前述のジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組み合わせも使用し得る。
【0059】
このような単位は、式(10)
【0060】
【化10】

【0061】
の対応するジヒドロキシ化合物から誘導し得る。式中R、Ar、およびDは上記の通りである。式(10)の化合物は、相間移動条件下で、ジヒドロキシアリーレン化合物と、例えばα,ω-ビスアセトキシポリジオルガノシロキサンとの反応によって得ることができる。
【0062】
別の実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(11)
【0063】
【化11】

【0064】
の単位を含む。式中、RおよびDは上記の通りであり、R1の各出現は、独立に二価のC1〜C30のアルキレンであり、また、式中、重合したポリシロキサン単位は、その対応するジヒドロキシ化合物の反応残基である。したがって、式(11)のポリシロキサンブロックは、Si-O-C結合が含まれず、したがって、化学安定性および加水分解安定性の向上が望ましい組成物において有用である。ある具体的な実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは、式(12)
【0065】
【化12】

【0066】
の構造の繰り返し単位によって得られる。式中、RおよびDは上記の通りである。式(12)中、各R2は二価のC2〜C8の脂肪族基である。式(12)中、各Mは同じかまたは異なり、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C8のアルキルチオ、C1〜C8のアルキル、C1〜C8のアルコキシ、C2〜C8のアルケニル、C2〜C8のアルケニルオキシ基、C3〜C8のシクロアルキル、C3〜C8のシクロアルコキシ、C6〜C10のアリール、C6〜C10のアリールオキシ、C7〜C12のアラルキル、C7〜C12のアラルコキシ、C7〜C12のアルカリール、またはC7〜C12のアルカリールオキシであって、各nは独立に0、1、2、3、または4であり得る。
【0067】
一実施形態では、Mは、ブロモもしくはクロロ、メチル、エチルもしくはプロピルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシもしくはプロポキシなどのアルコキシ基、またはフェニル、クロロフェニルもしくはトリルなどのアリール基であり、R2は、ジメチレン、トリメチレン、またはテトラメチレン基であり、Rは、C1〜8のアルキル、トリフルオロプロピルなどのハロアルキル、シアノアルキル、またはフェニル、クロロフェニル、もしくはトリルなどのアリールである。別の実施形態では、Rは、メチル、メチルおよびトリフルオロプロピルの混合基、またはメチルおよびフェニルの混合基である。更に別の実施形態では、Mはメトキシであり、nは1であり、R2は二価のC1〜C3の脂肪族基であり、Rはメチルである。
【0068】
式(12)の単位は、対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサン(13)
【0069】
【化13】

【0070】
から誘導し得る。式中、R、D、M、R2およびnは、上記の通りである。このようなジヒドロキシポリシロキサンは、式(14)
【0071】
【化14】

【0072】
の水素化シロキサン(式中、RおよびDは、前述の通りである)と脂肪族不飽和性一価フェノールとの間の白金触媒付加によって作製できる。好適な脂肪族不飽和性一価フェノールには、例えば、オイゲノール、2-アリルフェノール、4-アリル-2-メチルフェノール、4-アリル-2-フェニルフェノール、4-アリル-2-ブロモフェノール、4-アリル-2-t-ブトキシフェノール、4-フェニル-2-フェニルフェノール、2-メチル-4-プロピルフェノール、2-アリル-4,6-ジメチルフェノール、2-アリル-4-ブロモ-6-メチルフェノール、2-アリル-6-メトキシ-4-メチルフェノール、および2-アリル-4,6-ジメチルフェノールが挙げられた。前述の少なくとも1つを含む混合物も使用し得る。一実施形態では、この方法を使用して調製した有用なポリシロキサン-ポリカーボネートは、Si-O-C結合を含まない。
【0073】
ポリシロキサン-ポリカーボネートは、カーボネート単位を50〜99重量%およびシロキサン単位を1〜50重量%含む。この範囲内で、ポリシロキサン-ポリカーボネートは、カーボネート単位を70〜98重量%、特定すれば75〜97重量%、およびシロキサン単位を2〜30重量%、特定すれば3〜25重量%含んでもよい。
【0074】
ポリシロキサン-ポリカーボネートは、ASTM D1003-00に準じて測定した場合、55%以上、特定すれば60%以上、より特定すれば70%以上の光透過率を有し得る。ポリシロキサン-ポリカーボネートは、ASTM D1003-00に準じて測定した場合、50%以下、特定すれば40%以下、より特定すれば30%以下のヘイズを有し得る。
【0075】
具体的な一実施形態では、ポリシロキサン-ポリカーボネートは、ポリシロキサン単位、およびビスフェノールAから誘導されるカーボネート単位を含み、すなわち、A1およびA2の各々がp-フェニレンであり、Y1がイソプロピリデンである式(3)のジヒドロキシ化合物である。ポリシロキサン-ポリカーボネートは、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって、試料濃度1ミリリットル当たり1ミリグラムで測定し、ポリカーボネート標準試料で較正した場合、2000〜100000、特定すれば5000〜50000の重量平均分子量を有し得る。
【0076】
ポリシロキサン-ポリカーボネートは、300℃/1.2kgで測定される、10分当たり1〜35立方センチメートル(cc/10分)、特定すれば2〜30cc/10分のメルトボリュームフローレートを有し得る。異なる流動特性のポリシロキサン-ポリカーボネートの混合物は、所望の総合的流動特性を実現するために使用し得る。
【0077】
樹脂組成物は、追加成分の存在下、ポリシロキサン-ポリカーボネートを、それから調製した熱可塑性組成物の少なくとも1つの機械特性を維持するのに有効な量で含む。したがって、ポリシロキサン-ポリカーボネートは、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの合計量が、樹脂組成物の100重量パーセントである場合、3〜15重量%、特定すれば4〜13重量%、より特定すれば5〜12重量%の量で樹脂組成物中に存在する。
【0078】
したがって、樹脂組成物中に存在するポリシロキサン-ポリカーボネートによって得られる場合のそのポリシロキサン含量は、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの合計量が、樹脂組成物の100重量パーセントである場合、樹脂組成物の0.6〜3重量%、特定すれば0.8〜2.6重量%、より特定すれば1〜2.4重量%の量で存在し得る。
【0079】
熱可塑性組成物中に使用する樹脂組成物は、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、またはフマロニトリルなどの少なくとも1つのエチレン性不飽和ニトリルから誘導される構造単位を含むニトリル含有芳香族コポリマーを更に含む。アクリロニトリルは、特に有用である。式(15)
【0080】
【化15】

【0081】
のモノマーを含むことができるビニル芳香族化合物をエチレン性不飽和ニトリルモノマーと共重合することにより、コポリマーが形成される。式中、各XCは、独立に水素、C1〜C12のアルキル、C3〜C12のシクロアルキル、C6〜C12のアリール、C7〜C12のアラルキル、C7〜C12のアルカリール、C1〜C12のアルコキシ、C3〜C12のシクロアルコキシ、C6〜C12のアリールオキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであり、Rは、水素、C1〜C5のアルキル、ブロモ、またはクロロである。使用し得る好適なモノビニル芳香族モノマーの例には、スチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチルビニルトルエン、α-クロロスチレン、α-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ-クロロスチレンなど、および前述の化合物の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0082】
この種類の好適なニトリル含有芳香族コポリマーには、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、α-メチルスチレン-アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル-スチレン-メタクリル酸エステルターポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-エチルアクリレート-スチレンコポリマー、およびゴム変性アクリロニトリル-スチレン-ブチルアクリレートポリマーが挙げられる。一実施形態では、好適なニトリル含有芳香族コポリマーは、スチレンおよびアクリロニトリルから誘導されるスチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマーである。
【0083】
スチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマーは、耐衝撃性改良剤として通常使用され、本発明で特に有用である。好適なSANコポリマーは、エチレン性不飽和ニトリル単位を5〜40重量%、特定すれば15〜35重量%、より特定すれば20〜30重量%含む。特定すれば、SANコポリマーは、共重合混合物中のモノマー比率にかかわらず、スチレン単位を約75重量%およびアクリロニトリル単位を約25重量%含むことができ、したがって、これらは最も頻繁に使用される比率である。SANコポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定したところ、ポリスチレン標準試料に比べて30000〜150000、特定すれば40000〜100000、より特定すれば50000〜90000であり得る。
【0084】
したがって、熱可塑性組成物は、SANコポリマー、ポリカーボネート、およびポリシロキサン-ポリカーボネートを含む樹脂組成物を含む。SANコポリマーは、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの合計量が、樹脂組成物の100重量パーセントである場合、10〜20重量%、特定すれば10〜15重量%、より特定すれば12〜15重量%の量で樹脂組成物中に存在する。
【0085】
高分子量のポリカーボネートの使用(Mw30000以上)は、ポリカーボネートから調製した物品における機械特性の向上をもたらし得ることが認められた。具体的には、ポリカーボネートを含む熱可塑性組成物から調製した物品における耐疲労性は、所望の特性であり、該物品では耐疲労性が分子量の6〜7乗に伴って増加することが見出された。線状ポリマーは、枝分かれポリマーより優れた耐疲労性を有し得る。SANコポリマーと結合した高分子量のポリカーボネートを使用すると、ポリカーボネートのメルトフローおよび、例えば曲げ弾性率などの、1つまたは複数の機械特性が向上し得る。しかしながら、高濃度(20重量パーセントを超える)のSANコポリマーが存在すると、ポリカーボネートと比較して、この組み合わせの他の機械特性は、特に低温で低下もし得る。
【0086】
SANコポリマーの存在が、ポリカーボネートの耐疲労性に影響を及ぼすことは重要である。耐疲労性は、一定の機械的応力が、熱可塑性組成物から調製した物品の特定の部分に掛かる用途向けのポリマーの機械的弾性を表し、規則的な速度および一定荷重下で、該物品の破壊点に繰り返し応力を加えることによって試験する。ポリカーボネート-SAN組成物の疲れ破損点、つまり耐疲労性の測定値は、30000サイクル以下であり、これは、一定の繰り返し応力が組成物から調製した物品に掛かる用途に不適となり得る。ある発明が如何に機能するかを説明する必要はないが、このような理論は、読者がその発明を理解するのに更に役立つために有用であり得る。したがって、クレームは以下の実施の理論によって限定されるものではないことが理解されよう。したがって、理論で縛られることを望まなければ、SANがポリカーボネートと混ざらず、ポリカーボネート基質内で孤立した領域を形成することができ、したがってポリカーボネート基質およびSAN領域が相分離する傾向があり得ると考えられる。この結果、ポリカーボネート-SAN組成物の脆弱性が増加し、ポリカーボネートの機械特性を損ない得る。脆弱性材料は、非脆弱性(すなわちプラスチック)材料よりすぐに疲れ破損を受け、したがって、ポリカーボネート-SAN組成物は、SANが無ければ、ポリカーボネートよりすぐに疲れ破損を受け得る。20重量%を超えるSANの高添加量と例えば0℃以下の低温との双方で、ポリカーボネート-SANブレンドの脆弱性は増加し、したがって機械特性は更に低下し得る。耐衝撃性改良剤は、ポリカーボネートなどの材料とブレンドした場合、材料の剛性が上昇し、それによって1つまたは複数の機械特性が向上し得る。しかしながら、典型的な耐衝撃性改良剤を使用しても、SANの性能に基づき、改良が十分に得られないことが予想された。
【0087】
意外にも、ポリシロキサン-ポリカーボネートを、線状ポリカーボネートを90重量パーセント以上含むポリカーボネートとSANコポリマーの組み合わせに添加することにより、物品を調製する熱可塑性組成物中に含めた場合、ポリシロキサン-ポリカーボネートを含まないポリカーボネート-SAN組成物と比較して高いせん断速度(毎秒6000を超える)で、低い粘度を与える樹脂組成物が得られることが見出された。このより低い粘度は、言い換えると、樹脂組成物を含む熱可塑性組成物に対し高いせん断条件下で流動特性の向上をもたらす。熱可塑性組成物はまた、SANコポリマーが存在しなくともポリカーボネートの1つまたは複数の機械特性を維持または改良しながら、熱可塑性組成物およびその物品において有意に改良された疲れ破損点も有する。ポリシロキサン-ポリカーボネートは、ブレンド中のポリカーボネート相の可塑性を改良し、低温(0℃以下)におけるSAN相とポリカーボネート相との相容性を改良しより低いSAN添加量を使用して、例えば、高せん断速度(6000sec-1以上)時の低粘性、メルトフロー性能、機械特性に対するSAN充填量の悪影響軽減などの所望のレオロジー性能を達成できると考えられる。したがって、ポリシロキサン-ポリカーボネートを上記の熱可塑性組成物中に含めるとより高分子量(30000以上のMw)の線状ポリカーボネートが使用でき、これにより、ポリシロキサン-ポリカーボネートのないポリカーボネートとSANコポリマーの組み合わせと比較して、高い耐疲労性に加え100sec-1以下の低せん断速度でより高い粘度が得られる。
【0088】
したがって、せん断減粘は、特に、典型的なせん断速度6000〜20000sec-1を有する射出成形などの高せん断加工で使用する際、熱可塑性組成物の流動性の改善が得られる。高せん断速度時のより低い粘性(せん断減粘挙動)により、改良された金型充填能力が得られることは有利である。低せん断速度時の粘度がより高くなると、熱可塑性組成物の延性が改良され、したがって、150sec-1以下の典型的なせん断速度を有する押出成形などの低せん断加工に有利となり得る。
【0089】
したがって、熱可塑性組成物の疲れ破損は、ASTM D638-03(タイプ1)に準じて、振動数5ヘルツ(HZ)において、平方インチ当たり4000ポンド(28.3メガ-パスカルまたはMPa)で測定される、70000サイクル以上、特定すれば80000サイクル以上、より特定すれば90000サイクル以上、更により特定すれば100000サイクル以上で生じる。
【0090】
熱可塑性組成物の粘度は、ASTM D4440-01を使用して、せん断速度6000sec-1および300℃で測定した際、112パスカル-秒(Pa-s)以下、特定すれば110Pa-s以下、より特定すれば108Pa-s以下、更により特定すれば105Pa-s以下であり得る。熱可塑性組成物の粘度は、ASTM D4440-01に準じて、せん断速度25sec-1および300℃で測定した場合、900パスカル-秒(Pa-s)以上、902 Pa-s以上、905Pa-s以上、910Pa-s以上となり得る。
【0091】
熱可塑性組成物は、樹脂組成物以外に、この種の樹脂組成物と共に通常組み込まれる様々な添加剤を含み得るが、但し、添加剤は、熱可塑性組成物の所望の特性に悪影響を及ぼさないように選択される。添加剤の混合物を使用してもよい。このような添加剤は、熱可塑性組成物を形成する成分の混合中に適時に混合し得る。
【0092】
熱可塑性組成物は、顔料および/または色素添加剤などの着色剤を含んでもよい。好適な顔料には、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物および混合金属酸化物、硫化亜鉛などの硫化物、アルミン酸塩、スルホケイ酸ナトリウム、硫酸塩、クロム酸塩など、カーボンブラック、亜鉛フェライト、群青、ピグメントブラウン24、ピグメントレッド101、ピグメントイエロー119などの無機顔料、ならびにアゾ、ジアゾ、キナクリドン、ペリレン、ナフタレン、テトラカルボン酸、フラバントロン、イソインドリノン、テトラクロロイソインドリノン、アントラキノン、アンサンスロン、ジオキサジン、フタロシアニン、およびアゾレーキ類、ピグメントブルー60、ピグメントレッド122、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド179、ピグメントレッド202、ピグメントバイオレット29、ピグメントブルー15、ピグメントグリーン7、ピグメントイエロー147、ピグメントイエロー150などの有機顔料、あるいは前述の顔料の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。顔料は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物100重量パーセントに対して0.01〜10重量パーセントの量で使用し得る。
【0093】
好適な色素は、有機材料であってもよく、例えば、クマリン460(ブルー)、クマリン6(グリーン)、ナイルレッドなどのクマリン色素、ランタニド錯体、炭化水素および置換された炭化水素色素、多環芳香族炭化水素色素、オキサゾールもしくはオキサジアゾール色素などのシンチレーター色素、アリールまたはヘテロアリール置換ポリ(C2〜8)オレフィン色素、カルボシアニン色素、インダンスロン色素、フタロシアニン色素、オキサジン色素、カルボスチリル色素、ナフタレンテトラカルボン酸色素、ポルフィリン色素、ビス(スチリル)ビフェニル色素、アクリジン色素、アントラキノン色素、シアニン色素、メチン色素、アリールメタン色素、アゾ色素、インジゴイド色素、チオインジゴイド色素、ジアゾニウム色素、ニトロ色素、キノンイミン色素、アミノケトン色素、テトラゾリウム色素、チアゾール色素、ペリレン色素、ペリノン色素、ビス-ベンゾキサゾリルチオフェン色素(BBOT)、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、ナフタルイミド色素、ラクトン色素、近赤外波長で吸収して、可視波長で発光するアンチストークスシフトの色素などのフルオロフォア、7-アミノ-4-メチルクマリン、3-(2'-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ビフェニリル)オキサゾール、2,2'-ジメチル-p-クアテルフェニル、2,2-ジメチル-p-テルフェニル、3,5,3"",5""-テトラ-t-ブチル-p-キンクフェニル、2,5-ジフェニルフラン、2,5-ジフェニルオキサゾール、4,4'-ジフェニルスチルベン、4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン、1,1'-ジエチル-2,2'-カルボシアニンヨウ化物、3,3'-ジエチル-4,4',5,5'-ジベンゾチアトリカルボシアニンヨウ化物、7-ジメチルアミノ-1-メチル-4-メトキシ-8-アザキノロン-2、7-ジメチルアミノ-4-メチルキノロン-2、2-(4-(4-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジニル)-3-エチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩、3-ジエチルアミノ-7-ジエチルイミノフェノキサゾニウム過塩素酸塩、2-(1-ナフチル)-5-フェニルオキサゾール、2,2'-p-フェニレン-ビス(5-フェニルオキサゾール)、ローダミン700、ローダミン800、ピラン、クリセン、ルブレン、コロネンなどの発光色素、あるいは前述の色素の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。色素は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して0.01〜10重量パーセントの量で使用し得る。
【0094】
上記に開示したSANコポリマー以外に、熱可塑性組成物は、その耐衝撃性を向上させるために更に耐衝撃性改良剤を含んでもよく、この場合、耐衝撃性改良剤は、熱可塑性組成物の所望の特性に悪影響を及ぼさない量で組成物中に存在する。これらの耐衝撃性改良剤には、(i)10℃未満、より特定すれば-10℃未満、またはより特定すれば-40℃〜-80℃未満のTgを有するエラストマー性(すなわちゴム性)ポリマー基質と(ii)エラストマー性ポリマー基質にグラフトした硬質ポリマー性表層(superstrate)とを含むエラストマー変性グラフトコポリマーが挙げられる。公知の通り、エラストマー変性グラフトコポリマーは、まず、エラストマー性ポリマーを用意し、次いで硬質相の構成モノマー(複数も)をエラストマーの存在下で重合することによって調製し、グラフトコポリマーを得ることができる。グラフトは、グラフト枝としてまたはシェルとしてエラストマーコアに結合し得る。シェルは単に、コアを物理的に包み、またはシェルは、部分的にもしくは本質的に完全にコアにグラフトし得る。
【0095】
エラストマー相として使用するのに好適な材料には、例えば、共役ジエンゴム、共役ジエンと50重量%未満の共重合可能なモノマーとのコポリマー、エチレンプロピレンコポリマー(EPR)またはエチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM)などのオレフィンゴム、エチレン-ビニルアセテートゴム、シリコーンゴム、エラストマー性のC1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、C1〜8のアルキル(メタ)アクリレートとブタジエンおよび/またはスチレンとのエラストマー性コポリマー、あるいは前述のエラストマーの少なくとも1つを含む組み合わせを含めてもよい。
【0096】
エラストマー相を調製する好適な共役ジエンモノマーは、式(16)
【0097】
【化16】

【0098】
であり得る。式中、各Xbは、独立に水素、C1〜C5のアルキルなどである。使用し得る共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、1,3-ヘプタジエン、メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、1,3-および2,4-ヘキサジエンなど、ならびに前述の共役ジエンモノマーの少なくとも1つを含む混合物である。具体的な共役ジエンホモポリマーには、ポリブタジエンおよびポリイソプレンが挙げられる。
【0099】
共役ジエンゴムのコポリマー、例えば、共役ジエンと、共役ジエンと共重合可能な1つまたは複数のモノマーとの水溶性ラジカルエマルジョン重合によって製造される共役ジエンゴムのコポリマーも使用し得る。共役ジエンと共重合するのに適するモノマーには、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの、縮合した芳香環構造を含有するモノビニル芳香族モノマー、または式(15)のモノマーが挙げられる。使用し得る好適なモノビニル芳香族モノマーの例には、スチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチルビニルトルエン、α-クロロスチレン、α-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラクロロスチレンなど、および前述の化合物の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。スチレンおよび/またはα-メチルスチレンは、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして使用し得る。
【0100】
共役ジエンと共重合し得る他のモノマーは、イタコン酸、アクリルアミド、N-置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N-アルキル、アリール、またはハロアリール置換マレイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、および一般式(17)
【0101】
【化17】

【0102】
のモノマーなどのモノビニルモノマーである。式中、Rは水素、C1〜C5のアルキル、ブロモ、またはクロロであり、XCはC1〜C12のアルコキシカルボニル、C1〜C12のアリールオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルなどである。式(17)のモノマーの例には、アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなど、および前述のモノマーの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸2-エチルヘキシルなどのモノマーは、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして普通使用する。前述のモノビニルモノマーとモノビニル芳香族モノマーとの混合物もまた使用し得る。
【0103】
エラストマー相として使用するのに適する好適な(メタ)アクリレートモノマーは、架橋された、C1〜8の(メタ)アクリル酸アルキル、特にC4〜6のアクリル酸アルキル、例えば、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2-エチルヘキシルなど、および前述のモノマーの少なくとも1つを含む組み合わせの粒子状エマルジョンホモポリマーまたはコポリマーであり得る。 C1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーは、場合により、式(15)、(16)または(17)のコモノマーを15重量%以下混合して重合し得る。例示的なコモノマーには、それだけに限らないが、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ペンチル、N-シクロヘキシルアクリルアミド、ビニルメチルエーテル、および前述のコモノマーの少なくとも1つを含む混合物が挙げられる。場合により、多官能架橋型コモノマー、例えば、ジビニルベンゼン、ビスアクリル酸グリコールなどのジ(メタ) アクリル酸アルキレンジオール、トリ(メタ)アクリル酸アルキレントリオール、ジ(メタ) アクリル酸ポリエステル、ビスアクリルアミド、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸のトリアリルエステル、リン酸のトリアリルエステルなど、ならびに前述の架橋剤の少なくとも1つを含む組み合わせが5重量%以下で存在してもよい。
【0104】
エラストマー相は、連続、セミバッチ、バッチ操作を使用して、塊状、エマルジョン、懸濁、溶液、またはバルク-懸濁、エマルジョン-バルク、バルク-溶液、もしくは他の技法などの複合プロセスによって重合し得る。エラストマー基質の粒径は、重要ではない。例えば、エマルジョンベースの重合したゴムラテックスの場合、0.001〜25マイクロメートル、特定すれば0.01〜15マイクロメートル、または更により特定すれば0.1〜8マイクロメートルの平均粒径を使用し得る。バルク重合したゴム基質の場合、0.5〜10マイクロメートル、特定すれば0.6〜1.5マイクロメートルの粒径を使用し得る。粒径は、簡単な光透過法または毛細管流体クロマトグラフィー(CHDF)よって測定し得る。エラストマー相は、微粒子の、適度に架橋した共役ブタジエンまたはC4〜6のアクリル酸アルキルゴムであってもよく、70重量%を超えるゲル含量を有することが好ましい。ブタジエンとスチレンおよび/またはC4〜6のアクリル酸アルキルゴムとの混合物もまた好適である。
【0105】
エラストマー相は、全グラフトコポリマーの5〜95重量%、より特定すればエラストマー変性グラフトコポリマーの20〜90 重量%、および更により特定すれば40〜85重量%となり、その残りは硬質相となり得る。
【0106】
エラストマー変性グラフトコポリマーの硬質相は、1つまたは複数のエラストマー性ポリマー基質の存在下で、モノビニル芳香族モノマーと任意選択で1つまたは複数のコモノマーとを含む混合物をグラフト重合することによって形成し得る。スチレン、α-メチルスチレン、ジブロモスチレンなどのハロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブチルスチレン、パラ-ヒドロキシスチレン、メトキシスチレンなど、または前述のモノビニル芳香族モノマーの少なくとも1つを含む組み合わせを含めた、式(15)の上述のモノビニル芳香族モノマーは、硬質のグラフト相中に使用し得る。好適なコモノマーには、例えば、上述のモノビニルモノマーおよび/または一般式(17)のモノマーが挙げられる。一実施形態では、Rは、水素またはC1〜C2のアルキルであり、XCは、シアノまたはC1〜C12のアルコキシカルボニルである。硬質相中に使用する好適なコモノマーの具体例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなど、および前述のコモノマーの少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0107】
硬質グラフト相中のモノビニル芳香族モノマーとコモノマーとの相対比は、エラストマー基質の種類、モノビニル芳香族モノマー(複数も)の種類、コモノマー(複数も)の種類、および耐衝撃性改良剤の所望の特性に応じて、広範に変化し得る。硬質相は、モノビニル芳香族モノマーを最大100重量%、特定すれば30〜100重量%、より特定すれば50〜90重量%のモノビニル芳香族モノマーを一般に含み、この残りはコモノマー(複数も)である。
【0108】
存在するエラストマー変性ポリマーの量に応じて、エラストマー変性グラフトコポリマーと共に、非グラフト化硬質ポリマーもしくはコポリマーの独立した基質または連続相を同時に得てもよい。通常、このような耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤の全重量に対して、エラストマー変性グラフトコポリマーを40〜95重量%およびグラフト(コ)ポリマーを5〜65重量%含む。別の実施形態では、このような耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤の全重量に対して、15〜50重量%、より特定すれば15〜25重量%のグラフト(コ)ポリマーと共に、50〜85重量%、より特定すれば75〜85重量%のゴム変性グラフトコポリマーを含む。
【0109】
別の具体的な種類のエラストマー変性耐衝撃性改良剤は、少なくとも1つのシリコーンゴムモノマー、式H2C=C(Rd)C(O)OCH2CH2Re(式中、Rdは、水素またはC1〜C8の直鎖もしくは分枝アルキル基であり、Reは、C3〜C16の分枝アルキル基である。)を有する枝分かれアクリレートゴムのモノマー、第1のグラフト結合モノマー、アルケニル含有重合性有機物質、および第2のグラフト結合モノマーから誘導される構造単位を含む。シリコーンゴムモノマーは、例えば、環状シロキサン、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、(アクリルオキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、もしくはアリルアルコキシシランの単独または組み合わせ、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはテトラエトキシシランを含み得る。
【0110】
例示的な枝分かれアクリレートゴムモノマーには、アクリル酸イソ-オクチル、アクリル酸6-メチルオクチル、アクリル酸7-メチルオクチル、アクリル酸6-メチルヘプチルなどの単独または組み合わせが挙げられる。アルケニル含有重合性有機物質は、例えば、式(15)または(17)のモノマー、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピルなどの非枝分かれ(メタ)アクリレートの単独または組み合わせとなり得る。
【0111】
少なくとも1つの第1のグラフト結合モノマーは、(アクリルオキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、もしくはアリルアルコキシシランの単独または組み合わせ、例えば、(γ-メタクリロキシプロピル)(ジメトキシ)メチルシランおよび/または(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランであり得る。少なくとも1つの第2のグラフト結合モノマーは、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、もしくはイソシアヌル酸トリアリルの単独または組み合わせなどの、少なくとも1つのアリル基を有するポリエチレン性不飽和化合物である。
【0112】
シリコーン-アクリレート耐衝撃性改良剤組成物は、例えば、少なくとも1つのシリコーンゴムモノマーが、ドデシルベンゼンスルホン酸などの界面活性剤の存在下で、少なくとも1つの第1のグラフト結合モノマーと温度30℃〜110℃で反応してシリコーンゴムラテックスを形成するエマルジョン重合によって調製し得る。あるいは、シクロオクタメチルテトラシロキサンおよびテトラエトキシオルトシリケートなどの環状シロキサンは、(γ-メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシランなどの第1のグラフト結合モノマーと反応し、100ナノメートル〜2マイクロメートルの平均粒径を有するシリコーンゴムを得ることができる。次いで、少なくとも1つの枝分かれアクリレートゴムモノマーは、過酸化ベンゾイルなどのラジカル発生重合触媒の存在下のメタクリル酸アリルなどの、場合によっては架橋性モノマーの存在下で、シリコーンゴム粒子と重合させる。次いで、このラテックスは、アルケニル含有重合性有機材料および第2のグラフト結合モノマーと反応させる。グラフトシリコーン-アクリレートゴムの複合物のラテックス粒子は、凝集を経て(凝集剤で処理することにより)水相から分離し、乾燥させて微粉にし、シリコーン-アクリレートゴム耐衝撃性改良剤組成物を作製し得る。この方法は、100ナノメートル〜2マイクロメートルの粒径を有するシリコーン-アクリレート耐衝撃性改良剤を作製するために一般に使用し得る。
【0113】
前述のエラストマー変性グラフトコポリマーを形成する公知のプロセスには、連続、セミバッチ、またはバッチ操作を使用して、塊状、エマルジョン、懸濁、および溶液プロセス、またはバルク-懸濁、エマルジョン-バルク、バルク-溶液もしくは他の技法などの複合プロセスが挙げられる。
【0114】
SANコポリマーを含む前述の種類の耐衝撃性改良剤は、C6〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなど、アルカリ金属炭酸塩、ドデシルジメチルアミン、ドデシルアミンなどのアミン、およびアミンのアンモニウム塩などの塩基性物質の含まないエマルジョン重合プロセスによって調製し得る。このような物質は、エマルジョン重合の際、界面活性剤として普通使用し、エステル交換および/またはポリカーボネートの分解を触媒し得る。その代わりに、硫酸塩、スルホン酸塩、またはリン酸塩のイオン性界面活性剤を、耐衝撃性改良剤、特に耐衝撃性改良剤のエラストマー性基質部を調製する際に使用し得る。好適な界面活性剤には、例えば、C1〜22のアルキルまたはC7〜25のアルキルアリールスルホン酸塩、C1〜22のアルキルまたはC7〜25のアルキルアリール硫酸塩、C1〜22のアルキルまたはC7〜25のアルキルアリールリン酸塩、置換ケイ酸塩、およびこれらの混合物が挙げられる。具体的な界面活性剤は、C6〜16、特定すればC8〜12のアルキルスルホン酸塩である。実際には、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ金属炭酸塩、および他の塩基性物質が含まない限り、任意の上述の耐衝撃性改良剤を使用し得る。
【0115】
この種類の具体的な耐衝撃性改良剤は、MBS耐衝撃性改良剤であり、この場合、上述のスルホン酸塩、硫酸塩、またはリン酸塩を界面活性剤として使用してブタジエン基質を調製する。この耐衝撃性改質剤が3〜8、特定すれば4〜7のpHを有することも好ましい。耐衝撃性改質剤は、存在する場合、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して0.1〜30重量パーセントの量で熱可塑性組成物中に存在し得る。
【0116】
熱可塑性組成物は、充填剤または強化剤を含んでもよい。使用する場合、好適な充填剤または強化剤には、例えば、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、溶融シリカ、結晶質黒鉛珪石、天然ケイ砂などのケイ酸塩およびシリカ粉末、窒化ホウ素粉末、ホウケイ酸塩粉末などのホウ素粉末、TiO2、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物、硫酸カルシウム(この無水物、二水和物、または三水和物としての)、チョーク、石灰石、大理石、合成沈降炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、繊維質、モジュラー、針状、層状タルクなどを含めたタルク、ケイ灰石、表面処理ケイ灰石、中空および中実ガラス球、ケイ酸塩球、セノスフェア、アルミノケイ酸塩(アルモスフェア)などのガラス球、硬質カオリン、軟質カオリン、焼成カオリン、ポリマー性マトリックス樹脂との相容性を促進するための当技術分野に周知の様々な被膜を含むカオリンなどを含めたカオリン、炭化ケイ素、アルミナ、炭化臭素、鉄、ニッケル、銅などの単結晶繊維または「ウィスカー」、アスベスト、炭素繊維、E、A、C、ECR、R、S、D、もしくはNEガラスなどのガラス繊維などの繊維(連続繊維およびチョップドファイバーを含めた)、硫化モリブデン、硫化亜鉛などの硫化物、チタン酸バリウム、バリウムフェライト、硫酸バリウム、重晶石などのバリウム化合物、粒子状もしくは繊維状アルミニウム、青銅、亜鉛、銅およびニッケルなどの金属および金属酸化物、ガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、二ホウ化アルミニウム、アルミニウムフレーク、スチールフレークなどのフレーク状充填剤,繊維状充填剤、例えば、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および硫酸カルシウム半水和物などの少なくとも1つを含むブレンドから誘導される無機短繊維などの無機短繊維、木材を粉砕することにより得られる木粉、セルロース、綿、サイザル、黄麻などの繊維状産物、澱粉、コルク粉、リグニン、落花生の殻、トウモロコシ、籾殻などの天然充填剤および強化剤、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機充填剤、ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリ(ビニルアルコール)などの繊維を形成できる有機ポリマーから形成された強化用有機繊維状充填剤、ならびに雲母、粘土、長石、煙塵、フィライト、石英、珪岩、真珠岩、トリポリ石、珪藻土、カーボンブラックなどの追加の充填剤および強化剤、あるいは、前述の充填剤および強化剤の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0117】
充填剤および強化剤は、導電性を促進するために金属材料の層で被覆してもよく、またはポリマーマトリックス樹脂との接着および分散を改良するために、シランで表面処理してもよい。更に、強化充填剤は、モノフィラメントまたはマルチフィラメントの繊維の形態で供給し得、単独か他の種類の繊維との組み合わせのいずれかで、例えば、交織もしくは芯/鞘、サイドバイサイド、オレンジ型、またはマトリックスおよび微小繊維構造によって、あるいは繊維メーカーの当業者に周知の他の方法によって使用し得る。好適な混繊構造には、例えば、ガラス繊維-カーボンファイバー、カーボンファイバー-芳香族ポリイミド(アラミド)繊維、および芳香族ポリイミドガラス繊維ファイバーなどが挙げられる。繊維状充填剤は、例えば、ロービング、0-90度織物などの繊維織物強化剤、連続ストランドマット、チョップドストランドマット、薄織物、紙、およびフェルトなどの不織繊維強化剤、または編組みなどの三次元強化剤の形態で供給し得る。充填剤は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0〜90重量パーセントの量で使用し得る。
【0118】
好適な抗酸化添加剤には、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどの有機亜リン酸エステル、アルキル化モノフェノールもしくはポリフェノール、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタンなどの、ポリフェノールとジエンとのアルキル化反応生成物、p-クレゾールもしくはジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、ベンジル化合物、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価もしくは多価アルコールとのエステル、β-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸と一価もしくは多価アルコールとのエステル、ジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのチオアルキルまたはチオアリール化合物のエステル、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸などのアミド、あるいは前述の抗酸化剤の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。抗酸化剤は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0.0001〜1重量パーセントの量で使用し得る。
【0119】
好適な熱安定添加剤には、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリス(2,6-ジメチルフェニル)、亜リン酸トリス(混合モノおよびジ-ノニルフェニル)などの有機亜リン酸エステル、ホスホン酸ジメチルベンゼンなどのホスホン酸エステル、リン酸トリメチルなどのリン酸エステル、または前述の熱安定剤の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。熱安定剤は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0.0001〜1重量パーセントの量で使用し得る。
【0120】
光安定および/または紫外光(UV)吸収添加剤もまた使用し得る。好適な光安定剤には、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、および2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾトリアゾール、または前述の光安定剤の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。光安定剤は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0.0001〜1重量パーセントの量で使用し得る。
【0121】
好適なUV吸収添加剤には、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアジン、シアノアクリレート、オキサニリド、ベンゾオキサジノン、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(CYASORB(商標)5411)、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB(商標)531)、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノール(CYASORB(商標)1164)、2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)(CYASORB(商標)UV-3638)、1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL(商標)3030)、2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン、全て100ナノメートル未満の粒径を有する、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などのナノサイズ無機材料など、または前述のUV吸収剤の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。UV吸収剤は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0.0001〜1重量パーセントの量で使用し得る。
【0122】
可塑剤、潤滑剤、および/または離型剤も使用し得る。この種の材料間にはかなりの重複があり、例えば、ジオクチル-4,5-エポキシ-ヘキサヒドロフタレートなどのフタル酸エステル、トリス(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリステアリン、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェート、およびビスフェノールAのビス(ジフェニル)ホスフェートなどの二官能または多官能芳香族リン酸エステル、ポリ-α-オレフィン、エポキシ化大豆油、シリコーンオイルを含めたシリコーン、エステル、例えばアルキルステアリルエステル、例えばステアリン酸メチル、ステアリン酸ステアリル、テトラステアリン酸ペンタエリスリトールなどの脂肪酸エステル、ステアリン酸メチルと、ポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマー、およびこれらのコポリマーを含む疎水性および親水性ノニオン界面活性剤との混合物、例えば、適切な溶媒中のステアリン酸メチルおよびポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマー、蜜ろう、モンタンろう、パラフィンろうなどのワックスが挙げられる。このような材料は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0.0001〜1重量パーセントの量で使用し得る。
【0123】
「帯電防止剤」という用語は、ポリマー樹脂に加工し、かつ/または材料もしくは物品上にスプレイして導電性および総合的な物理的性能を改良し得る、モノマー、オリゴマーまたはポリマー材料を指す。モノマー帯電防止剤の例には、モノステアリン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、トリステアリン酸グリセロール、エトキシ化アミン、第1級、第2級および第3級アミン、エトキシ化アルコール、硫酸アルキル、硫酸アルキルアリール、リン酸アルキル、硫酸アルキルアミン、ステアリルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、第4級アンモニウム塩、第4級アンモニウム樹脂、イミダゾリン誘導体、ソルビタンエステル、エタノールアミド、ベタインなど、または前述のモノマー帯電防止剤の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。
【0124】
例示的なポリマー帯電防止剤には、各々が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール部またはポリアルキレンオキサイド単位を含む、特定の、ポリエステルアミド、ポリエーテルポリアミド(ポリエーテルアミド)ブロックコポリマー、ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、ポリエーテルエステル、またはポリウレタンが挙げられる。このようなポリマー帯電防止剤、例えば、Pelestat(商標)6321(Sanyo)またはPebax(商標)MH1657(Atofina)、Irgastat(商標)P18およびP22(Ciba-Geigy) は市販されている。帯電防止剤として使用し得る他のポリマー材料は、本質的に、ポリアニリン(PANIPOL(登録商標)EBとしてPanipolから市販されている)、ポリピロールおよびポリチオフェン(Bayerから市販されている)などの導電性ポリマーであり、高温で溶融加工後、これらの固有の導電性の一部を維持する。一実施形態では、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、または前述の任意の組み合わせを、化学的帯電防止剤を含有するポリマー樹脂中に使用して、この組成物を静電気散逸性にし得る。帯電防止剤は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0.0001〜5重量パーセントの量で使用し得る。
【0125】
添加し得る好適な難燃剤は、リン、臭素、および/または塩素を含む有機化合物であり得る。非臭素化および非塩素化リン含有難燃剤、例えば、有機リン酸エステルおよびリン-窒素結合を含有する有機化合物は、規制上の理由により特定の用途で好ましい場合がある。
【0126】
例示的な有機リン酸エステルの1種は、式(GO)3P=Oの芳香族リン酸エステルであり、式中、各Gは、独立にアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であるが、但し、少なくとも1つのGは芳香族基である。G基の2個は、互いに結合し、環式基、例えば、ジフェニルペンタエリスリトールジホスフェートとなり得る。他の好適な芳香族リン酸エステルは、例えばフェニルビス(ドデシル)ホスフェート、フェニルビス(ネオペンチル)ホスフェート、フェニルビス(3,5,5'-トリメチルヘキシル)ホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジ(p-トリル)ホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)p-トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、ビス(ドデシル)p-トリルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2-クロロエチルジフェニルホスフェート、p-トリルビス(2,5,5'-トリメチルヘキシル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどであり得る。具体的な芳香族リン酸エステルは、各Gが芳香族であるリン酸エステルであり、例えばリン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、イソプロピル化リン酸トリフェニルなどである。
【0127】
二官能または多官能芳香族リン含有化合物も有用であり、例えば以下の式の化合物である。
【0128】
【化18】

【0129】
式中、各G1は、独立に、1〜30個の炭素原子を有する炭化水素であり、各G2は、独立に、1〜30個の炭素原子を有する炭化水素または炭化水素オキシであり、各Xaは、独立に、1〜30個の炭素原子を有する炭化水素であり、各Xは、独立に、臭素または塩素であり、mは0〜4であり、nは1〜30である。好適な二官能または多官能芳香族リン含有化合物の例には、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェートおよびビスフェノールAのビス(ジフェニル)ホスフェートのそれぞれ、これらのオリゴマーおよびポリマー相当物などが挙げられる。
【0130】
リン-窒素結合を有する例示的な好適難燃剤化合物には、塩化ホスホニトリル、リンエステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドが挙げられる。リン含有難燃剤は、存在する場合、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対し、該樹脂組成物の0.1〜10重量パーセントの量で存在し得る。
【0131】
ハロゲン化物質、例えば式(18)
【0132】
【化19】

【0133】
のハロゲン化化合物および樹脂もまた、難燃剤として使用し得る。式中、Rは、アルキレン、アルキリデン、または脂環式結合、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、ブチレン、イソブチレン、アミレン、シクロヘキシレン、シクロペンチリデンなど、または酸素エーテル、カルボニル、アミン、もしくは硫黄含有結合、例えばスルフィド、スルホキシド、スルホンなどである。Rはまた、芳香族、アミノ、エーテル、カルボニル、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどのような基によって結合された2個以上のアルキレンまたはアルキリデン結合からもなり得る。
【0134】
式(18)中のArおよびAr'は、各々独立に、フェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、ナフチレンなどの炭素単環式または炭素多環式芳香族基である。
【0135】
Yは、有機、無機、または有機金属基、例えば、ハロゲン、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、EがXに類似の一価の炭化水素基である一般式OEのエーテル基、Rによって表される種類の一価の炭化水素基、または他の置換基、例えば、ニトロ、シアノなどであり、前記置換基は、1個のアリール核当たり少なくとも1個、好ましくは2個のハロゲン原子が存在するのであれば本質的に不活性である。
【0136】
存在する場合、各Xは、独立に一価の炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、デシルなどのアルキル基、フェニル、ナフチル、ビフェニル、キシリル、トリルなどのアリール基、ベンジル、エチルフェニルなどのアラルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの脂環式基である。一価炭化水素基は、それ自体不活性置換基を含有してもよい。
【0137】
各dは、独立に1から、ArまたはAr'を含む芳香環上で置換される置換可能な水素の数に等しい最大値までである。各eは、独立に0から、R上で置換可能な水素の数に等しい最大値までである。各a、b、およびcは、独立に0を含む全数である。bが0で無い場合、aもcも0ではあり得ない。そうでなければ、aまたはcは、その双方で無く何れかが0であり得る。bが0の場合、芳香族基は、直接炭素-炭素結合によって結合する。
【0138】
芳香族基ArおよびAr'上のヒドロキシルおよびY置換基は、芳香環上でオルト、メタ、またはパラ位に変化し、これらの基は、互いに任意の可能な幾何学的関係を取り得る。
【0139】
上式の範囲内にはビスフェノールが含まれ、以下がその代表である:2,2-ビス(3,5-ジクロロフェニル)プロパン、ビス(2-クロロフェニル)メタン、ビス(2,6-ジブロモフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヨードフェニル)エタン、1,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)エタン、1,1-ビス(2-クロロ-4-ヨードフェニル)エタン、1,1-ビス(2-クロロ-4-メチルフェニル)エタン、1,1-ビス(3,5-ジクロロフェニル)エタン、2,2-ビス(3-フェニル-4-ブロモフェニル)エタン、2,6-ビス(4,6-ジクロロナフチル)プロパン、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)ペンタン、2,2-ビス(3,5-ジブロモフェニル)ヘキサン、ビス(4-クロロフェニル)フェニルメタン、ビス(3,5-ジクロロフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(3-ニトロ-4-ブロモフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジクロロ-3-メトキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、および2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン。1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジブロモベンゼン、1,3-ジクロロ-4-ヒドロキシベンゼン、および2,2'-ジクロロビフェニル、ポリ臭化1,4-ジフェノキシベンゼン、2,4'-ジブロモビフェニル、2,4'-ジクロロビフェニルなどのビフェニル、ならびにデカブロモジフェニルオキシドなども上記構造式の範囲内に含まれる。
【0140】
ビスフェノールAおよびテトラブロモビスフェノールAとカーボネート前駆体、例えばホスゲンとのコポリカーボネートなどの、オリゴマーおよびポリマーハロゲン化芳香族化合物もまた有用である。金属助剤、例えば、酸化アンチモンも難燃剤と併用し得る。ハロゲン含有難燃剤は、存在する場合、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0.1〜10重量パーセントの量で存在し得る。
【0141】
無機難燃剤、例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar salt), パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、およびジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなどのC2〜16アルキルスルホン酸塩の塩、ならびに、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属を反応させることにより形成される塩(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、およびバリウムの塩)、ならびに無機酸の錯塩、例えばNa2CO3、K2CO3、MgCO3、CaCO3、BaCO3などの炭酸のアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩などのオキソアニオン、またはLi3AlF6、BaSiF6、KBF4、K3AlF6、KAlF4、K2SiF6および/もしくはNa3AlF6などのフッ素アニオン錯塩も使用し得る。難燃剤の無機塩は、存在する場合、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0.1〜5重量パーセントの量で存在し得る。
【0142】
滴下防止剤、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフィブリル形成またはフィブリル非形成フッ素ポリマーも使用し得る。滴下防止剤は、上述の硬質コポリマー、例えばスチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)によってカプセル化し得る。SAN中にカプセル化したPTFEは、TSANとして公知である。カプセル化フッ素ポリマーは、カプセル化用ポリマーをフッ素ポリマー、例えば水分散液の存在下で重合することによって作製し得る。TSANは、TSANが組成物中でより容易に分散し得るので、PTFEに対して大きな利点を与え得る。好適なTSANは、例えば、カプセル化フッ素ポリマーの全重量に対して、PTFEを50重量%およびSANを50重量%含み得る。SANは、例えば、このコポリマーの全重量に対して、スチレンを75w%およびアクリロニトリルを25w%含み得る。あるいは、フッ素ポリマーは、第2のポリマー、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂またはSANなどと、何らかの方法で予めブレンドして、滴下防止剤として使用する凝集材料を形成し得る。何れの方法もカプセル化フッ素ポリマーを製造するために使用し得る。滴下防止剤は、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物の100重量パーセントに対して、0.1〜5重量パーセントの量で使用し得る。
【0143】
放射線安定剤、具体的にはガンマ線安定剤も存在し得る。好適なガンマ線安定剤には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、メソ-2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオールなどのジオール、1,2-シクロペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオールなどの脂環式アルコール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール(ピナコール)などの枝分かれ非環式ジオール、およびポリオール、ならびにアルコキシ置換環式または非環式アルカンが挙げられる。不飽和サイトを有するアルケノールも有用な種類のアルコールであり、この例には、4-メチル-4-ペンテン-2-オール、3-メチルペンテン-3-オール、2-メチル-4-ペンテン-2-オール、2,4-ジメチル-4-ペンテン-2-オール、および9-デセン-1-オールが挙げられる。別の種類の好適なアルコールは、ヒドロキシ置換された第3炭素を少なくとも1つ有する第3級アルコールである。これらの例には、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、2-フェニル-2-ブタノール、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノンなど、および1-ヒドロキシ-1-メチル-シクロヘキサンなどの脂環式第3炭素が挙げられる。別の種類の好適なアルコールは、芳香環中の不飽和炭素に結合する飽和炭素に結合しているヒドロキシ置換基を有するヒドロキシメチル芳香族である。ヒドロキシ置換飽和炭素は、メチロール基(-CH2OH)であるか、または式中R4が複雑もしくは単純な炭化水素である(-CR4HOH)もしくは(-CR424OH)の場合のようなより複雑な炭化水素基の一種であり得る。具体的なヒドロキシメチル芳香族は、ベンズヒドロール、1,3-ベンゼンジメタノール、ベンジルアルコール、4-ベンジルオキシベンジルアルコール、およびベンジルベンジルアルコールでもよい。具体的なアルコールは、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコールとしても公知である)、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールである。耐ガンマ線安定化化合物は通常、任意の他の添加剤および/または充填剤を除いて、樹脂組成物に対して、0.001〜1重量%、より特定すれば0.01〜0.5重量%の量で使用する。
【0144】
一実施形態では、熱可塑性組成物は、ポリカーボネートを65〜87重量%、ポリシロキサン-ポリカーボネートを3〜15重量%、およびSANコポリマーを10〜20重量%含む樹脂組成物を含む。別の実施形態では、熱可塑性組成物は、ポリカーボネートを72〜86重量%、ポリシロキサン-ポリカーボネートを4〜13重量%、およびSANコポリマーを10〜15重量%含む樹脂組成物を含む。別の実施形態では、熱可塑性組成物は、ポリカーボネートを73〜83重量%、ポリシロキサン-ポリカーボネートを5〜12重量%、およびSANコポリマーを12〜15重量%含む樹脂組成物を含む。ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの合計量は、樹脂組成物の100重量パーセントである。ある具体的な実施形態では、熱可塑性組成物は、耐衝撃性改質剤、充填剤、抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、離型剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、色素、難燃剤、滴下防止剤、またはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせを更に追加で含み得る。
【0145】
ある実施形態では、ASTM D256-04の方法を使用して、成形した3.18mmの棒状物に対して23℃で測定される、熱可塑性組成物についてのノッチ付アイゾット衝撃強さ(NII)は、センチメートル当たり70キログラム-センチメートル(Kg-cm/cm)以上、特定すれば80Kg-cm/cm以上、より特定すれば85Kg-cm/cm以上、および更により特定すれば90Kg-cm/cm以上であり得る。
【0146】
ある実施形態では、熱可塑性組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790-03に準じて測定した場合、23000Kg/cm2以上、特定すれば24000Kg/cm2以上、より特定すれば25000Kg/cm2以上、および更により特定すれば25250Kg/cm2以上であり得る。
【0147】
ある実施形態では、熱可塑性組成物のメルトボリュームレート(MVR)は、ASTM D1238-04に準じて、300℃および加重1.2Kgで、10cc/10分以下、特定すれば8cc/10分以下、より特定すれば7cc/10分以下、およびより特定すれば6.8cc/10分以下であり得る。別の実施形態では、熱可塑性組成物のメルトボリュームレート(MVR)は、ASTM D1238-04に準じて、250℃および加重10Kgで、11cc/10分以下、特定すれば9cc/10分以下、より特定すれば8cc/10分以下、およびより特定すれば7cc/10分以下であり得る。
【0148】
熱可塑性組成物は、当技術分野で一般に利用可能な方法によって製造することができ、例えば一実施形態では、手順の一方法として、粉末のポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、SANコポリマー、および/または任意選択で他の成分を、HENSCHEL-Mixer(登録商標)高速ミキサー中でまずブレンドする。手練りを含むがそれに限らない他の低せん断プロセスも、このブレンド形成を実施し得る。次いで、このブレンドは、ホッパーを介して押出機の供給口の中に供給する。あるいは、1つまたは複数の成分は、供給口で、および/またはサイドスタッファーを通して下流側で、押出機内に直接送ることにより、組成物中に組み込み得る。添加剤を、所望のポリマー樹脂とのマスターバッチ中に配合し、押出機に供給してもよい。押出機は、組成物を流動させるために必要な温度より高い温度で一般に操作する。押出物は、水浴中ですぐに急冷し、ペレット化する。このように調製したペレットは、押出物を切断する場合、所望の通り1/4インチ以下の長さとなり得る。このようなペレットは、次の成型、造形、成形のために使用し得る。
【0149】
ある具体的な実施形態では、熱可塑性組成物を調製する方法は、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーを溶融混合し、樹脂組成物を形成することを含む。溶融混合は、押出によって実施し得る。ある実施形態では、ポリシロキサン-ポリカーボネート、SANコポリマー、およびポリカーボネートの比率は、熱可塑性組成物の耐疲労性が所望の水準であると同時に、機械特性が最大であるように選択される。
【0150】
ある具体的な実施形態では、押出機が二軸押出機である。押出機は通常、温度180〜385℃、特定すれば200〜330℃、より特定すれば220〜300℃で操作するが、ダイの温度は異なってもよい。押し出しした熱可塑性組成物は、水中で急冷しペレット化する。
【0151】
熱可塑性組成物を含む成形品、造形品、または成型品も提供する。熱可塑性組成物は、射出成形、押出、回転成形、ブロー成形、および熱成形などの様々な手段によって成形し、有用な成形品となり得る。ある具体的な実施形態では、射出成形によって成形を行う。熱可塑性組成物は、優れた金型充填能力を有し、例えば、モニター用ハウジングなどのコンピュータおよび事務機のハウジング、携帯電話用ハウジングなどの携帯用電子機器のハウジング、スタジアムの座席(折畳み式)、折畳み椅子、家電用品、および内装成形パネル、フェンダー、装飾品、バンパーなどの自動車部品などの物品を形成するために有用であることが望ましい。
【0152】
(実施例)
熱可塑性組成物は、以下の非限定例によって更に例示し、表1
【0153】
【表1】

【0154】
に示す成分を使用して調製する。
【0155】
全ての熱可塑性組成物は、表示した場合を除いて、Werner & Pfleiderer同方向回転式二軸押出機(長さ/直径(L/D)比=30/1、吸引口はダイ面付近に位置する)でコンパウンド化する。二軸押出機は、ポリマー組成物間で良好な混合を生じるのに十分な分配要素および分散混合要素を有していた。次いで、この組成物は、ISO294に準じて、HuskyまたはBOY射出成形機で成形する。組成物は、コンパウンド化して温度285〜330℃で成形するが、この方法が、これらの温度に限定されない場合があることは、当業者によって認識されよう。
【0156】
疲労試験は、ASTM D638-03タイプ 1に準じて、振動数5Hz、圧力28.4MPaで測定したが、破損点は、破損したサイクル数で報告する。粘度は、ASTM D4440-01に準じて、パスカル-秒(Pa-s)で報告し、せん断速度10〜9000sec-1で測定する。メルトボリュームレート(MVR)は、ASTM D1238に準じて、1.2キログラム重を使用して300℃で、または10kg重を使用して250℃で、10分間測定した。加熱たわみ温度(HDT)は、ASTM D648の方法に準じて1/8インチ(3.18mm)の棒に対して測定した。ノッチ付アイゾット衝撃強さ(NII)は、ASTM D256-04に準じて、1/8インチ(3.18mm)の棒に対して、温度23℃で測定した後、センチメートル当たりキログラム-センチメートル(Kg-cm/cm)の単位で報告する。引張強度は、ASTM D638-03に準じて測定したが、平方センチメートル当たりのキログラム(Kg/cm2)で報告する。曲げ弾性率は、ASTM D790-03に準じて測定したが、平方センチメートル当たりのキログラム(Kg/cm2)で報告する。
【0157】
スパイラルフロー試験は、以下の手順に準じて実施した。3〜5オンス(85〜140g)のバレル容量および流路深さ0.03、0.06、0.09、または0.12インチ(それぞれ0.76、1.52、2.29、または3.05ミリメートル)を有する成形機に、ペレット化した熱可塑性組成物を詰めた。金型およびバレルは、ポリマーを流動させるのに適切な温度、通常285〜330℃に加熱する。この熱可塑性組成物は、溶融および温度平衡後、1500psi(10.34MPa)、毎秒6.0インチ(15.24cm)の速度、最小流動時間6秒で、金型の選択したチャネル中に射出することにより、ゲートが固まる前に流動を最大にできる。連続試料が、成形サイクル全時間35秒を使用して生成する。試料は、10回の試行を実施した後か、連続作製した試料のサイズが一定となる際の何れかで、測定用に保持する。次いで、5個の試料を集めて0.25インチ(0.64cm)以内の精度で測定し、この5個の試料の長さの中央値を報告する。
【0158】
比較例1〜17および実施例1〜16は、表1からの成分を使用して、上述の押出によって調製した。比較例1〜17は、表2(以下)に定めた比率に従って調製し、実施例1〜16は、表3(以下)に記載の比率に従って調製した。結果として押し出しした組成物のペレット化試料は、メルトフローおよび粘度の分析を行い、棒状に射出成形して、曲げ弾性率および疲労を測定した。
【0159】
【表2】

【0160】
【表3】

【0161】
上記の表2および3中のデータの分析に基づくと、BPA-PC 35K(高分子量ポリカーボネート)の量の増加は、耐疲労性の向上とMVRの低下の双方と一般に相関することが見出された。配合物中のSAN量が増加するとせん断減粘、高せん断流動、および曲げ弾性率が増加することが見出された。PC-シロキサンの量が増加すると耐衝撃性が向上した。実施例1〜16(表3)の結果は、Stat-Ease Inc, (Minneapolis、MN)製Design-Expert(登録商標)ソフトウェアパッケージを使用してまとめ、これらの特性(メルトボリュームレート、高せん断粘度(最大6000sec-1で)、引張疲労の下で破損するサイクルおよび曲げ弾性率)の1つまたは複数の所望の比率のバランスに基づいて最適化し得る、これらの特性のための値を有する配合を提供する際に、補助すると思われる変換関数を分析した。こうして、これらのデータに基づいて、主要な特性について以下の変換関数を得た。
Ln(MVR 6) = (0.019863 * [BPA-PC 30K]) + (0.034239 * [BPA-PC HF]) + (8.88802E-003 * [BPA-PC 35K]) + (5.96793E-003 * [PC-シロキサン]) + (0.021097 * [SAN]) - (2.20941E-004 * [BPA-PC 30K] * [BPA-PC HF]) + (5.07122E-004 * [BPA-PC 35K] * [SAN]);
曲げ弾性率 = (3413.62878 * [BPA-PC 30K]) + (3910.82022 * [BPA-PC HF]) + (3790.87812 * [BPA-PC 35K]) - (1138.48989 * [PC-シロキサン]) + (3941.05313 * [SAN]) - (17.83000 * [BPA-PC 30K] * [BPA-PC 35K]) + (34.58258 * [BPA-PC 30K] * [PC-シロキサン]) + (261.89083 * [PC-シロキサン] * [SAN]);
高せん断粘度 = (0.24530 * [BPA-PC 30K]) + (0.90831 * [BPA-PC HF]) + (2.35804 * [BPA-PC 35K]) + (1.96366 * [PC-シロキサン]) + (23.80762 * [SAN]) + (0.10721 * [BPA-PC 30K] * [PC-シロキサン]) - (0.28483 * [BPA-PC HF] * [SAN]) - (0.36398 * [BPA-PC 35K] * [SAN]) - (0.39835 * [PC-シロキサン] * [SAN]);
疲れ破損サイクル = (1172.55343 * [BPA-PC 30K]) + (10817.58357 * [BPA-PC HF]) + (1951.13000 * [BPA-PC 35K]) - (3040.43131 * [PC-シロキサン]) - (660.86483 * [SAN]) - (202.25437 * [BPA-PC 30K] * [BPA-PC 35K]) - (808.69373 * [BPA-PC HF] * [PC-シロキサン])。
【0162】
実施例17および比較例19〜22。上記の変換関数を適用して、一連の所望特性を有する例示的な用途向けの最適な組成物を決定するのに役立てた。最適化プログラム(マイクロソフトエクセルのソルバー、マイクロソフト社)を使用し、上記の決定した変換方程式を使って最適化配合(実施例17)を得た。表4は、実施例17用に決定した配合、および比較の標準組成物についての配合を示し、比較組成物の双方は、内部で調製し(比較例19および20)、また市販されている(比較例21は、LG Chemical製LUPOY HI-1002MLであり、比較例22は、Samsung-Cheil Chemical Industries製STAREX HF-1023IMである。)
【0163】
【表4】

【0164】
表4(上記)に記載の組成物は、様々な機械的、熱的、および物理的特性を評価した。データの比較を以下の表5に提示する。
【0165】
【表5】

【0166】
表5から明らかなように、実施例17の高分子量(Mw=35000)のBPA-PC 35Kにより得られるような低せん断速度での高粘度は、非常に良好な耐疲労性を与えた。比較例20は、高い耐疲労性を有した。しかしながら、曲げ弾性率は、比較例21および22と実施例17に比べ低かった。SANコポリマーの存在に起因する高い曲げ弾性率、およびPC-シロキサン含量に起因する改良された23℃ノッチ付アイゾット衝撃強さは各々、比較例21および22を含めた比較の耐衝撃性を改良したPC対照物においてより実施例17において高い。更に、実施例17のメルトフローレート(MVR)は、比較例より低い。引張強度、引張伸び、および加熱たわみ温度(HDT)を含めた他のパラメーターは各々、実施例17に関して許容範囲内にある。
【0167】
図1は、実施例17と比較例21および22についての粘度(in Pa-s)およびせん断速度の比較を示す。プロットした曲線に見られるように、実施例17は、低せん断速度(100sec-1以下のせん断速度)でより高い粘度を有し、高せん断速度(6000sec-1以上のせん断速度)でより低い粘度を与える有意なせん断減粘を受ける。比較例は、比較的高い高せん断粘度を示した。
【0168】
実施例17は、成分の分子量と、PC-シロキサン成分と共にSAN成分を含有させたこととの双方の影響を判定するために、スパイラルフロー試験を使用して比較例19および20と比較した。比較例19および20は、上記データ(表5)で述べたように、各々、実施例17より低い低せん断粘度を有する。計算結果を、以下の表6
【0169】
【表6】

【0170】
中にまとめ、スパイラルフロー試料の写真比較を図2に提示する。
【0171】
表6中のデータに見られるように、スパイラル金型は、実施例17の組成物によって、そのより高い低せん断粘度にもかかわらず、より完全に充填される。この性能を図2(図中、比較例19はEXL 1112として標記し、比較例20はEXL 1414として標記し、実施例17はEXRL 0123として標記する)中に示す。実施例17(EXRL 0123)についてのスパイラルフローの長さは、比較例19および20(それぞれEXL 1112およびEXL 1414)のスパイラルフローの長さより有意に高いことがはっきりと見ることができ、このことは、比較し得る高せん断条件下で実施例17の流動性の向上を示す。
【0172】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から特に明確に示されない限り、複数の概念も含む。同じ特性または成分を記載する全ての範囲の端点は、独立に、組み合わせることができ、記載した端点も含む。全ての参考文献は、本明細書に参照により組み込んである。更に、本明細書において「第1」、「第2」などの用語は、任意の序列、量、重要性を示すものではないが、むしろ一要素と別の要素を区別するために使用されることに注意されたい。
【0173】
代表的な実施形態を例示のために記載したが、前述の説明は、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。したがって、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、様々な改変、適用、および代替を、当業者が思い付いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】熱可塑性組成物に関する粘度対せん断速度の比較プロットである。
【図2】異なる熱可塑性組成物のスパイラルフロー性能の比較を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した場合、30000以上の重量平均分子量を有するポリカーボネートと、
シロキサン単位を1〜50重量パーセント含むポリシロキサン-ポリカーボネートと、
SANコポリマーと
を含んだ樹脂組成物を含む熱可塑性組成物であって、
ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの量は、前記熱可塑性組成物に対する疲れ破損がASTM D638-03タイプ1に準じて、圧力28.2MPaおよび振動数5Hzにおいて、70000サイクル以上で生じるように選択され、前記熱可塑性組成物の粘度が、ASTM D4440-01に準じて、せん断速度6000sec-1および300℃で測定した場合、112Pa-s以下である熱可塑性組成物。
【請求項2】
ポリカーボネートが樹脂組成物中に65〜87重量パーセントの量で存在し、ポリシロキサン-ポリカーボネートが樹脂組成物中に3〜15重量パーセントの量で存在し、SANコポリマーが樹脂組成物中に10〜20重量パーセントの量で存在し、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネートおよびSANコポリマーの合計量が、樹脂組成物の100重量パーセントである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
ポリカーボネートが、線状ポリカーボネートを90重量%以上含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
線状ポリカーボネートが、ビスフェノールAポリカーボネートである、請求項3に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
樹脂組成物が、ポリシロキサン-ポリカーボネートによって得られるポリシロキサンを、樹脂組成物の全重量に対して0.6〜3重量パーセント含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
ポリシロキサン-ポリカーボネートがSi-O-C結合を含まない、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
ポリシロキサン-ポリカーボネートが、ポリジメチルシロキサン単位およびビスフェノールAカーボネート単位を含む、請求項6に記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
SANコポリマーが、65:35〜85:15の比率でスチレンおよびアクリロニトリルを含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
SANコポリマーの重量平均分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した場合、30000〜150000である、請求項8に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
耐衝撃性改良剤、充填剤、抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、離型剤、潤滑剤、帯電防止剤、顔料、色素、難燃剤、滴下防止剤、またはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせを更に含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項11】
引張強度が、ASTM D638-03に準じて、50mm/分で測定した場合、650kg/cm2以上である、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項12】
曲げ弾性率が、ASTM D790-03に準じて、2.8mm/分で測定した場合、約23000kg/cm2以上である、請求項1の組成物。
【請求項13】
ノッチ付アイゾット衝撃強さが、ASTM D256-04に準じて3.18mmのバーで23℃で測定した場合、70kg-cm/cm以上である、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項14】
熱可塑性組成物の粘度が、ASTM D4440-01に準じて、せん断速度25sec-1および300℃で測定した場合、900Pa-s以上である、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項15】
線状ポリカーボネートを90重量%以上含み、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した場合、30000以上の重量平均分子量を有するポリカーボネートを65〜87重量パーセントと、
シロキサン単位を1〜50重量パーセント含むポリシロキサン-ポリカーボネートを3〜15重量パーセントと、
SANコポリマーを10〜20重量パーセントと
を含んだ樹脂組成物を含み、
樹脂組成物が、ポリシロキサン-ポリカーボネートによって得られるポリシロキサンを、樹脂組成物全重量に対して0.6〜3重量パーセント含み、ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネートおよびSANコポリマーの合計量が、樹脂組成物の100重量パーセントである
熱可塑性組成物。
【請求項16】
熱可塑性組成物に対する疲れ破損が、ASTM D638-03タイプ1に準じて、圧力28.2MPaおよび振動数5Hzにおいて、70000サイクル以上で生じる、請求項15に記載の熱可塑性組成物。
【請求項17】
熱可塑性組成物の粘度が、ASTM D4440-01に準じて、せん断速度6000sec-1および300℃で測定した場合、112Pa-s以下である、請求項15に記載の熱可塑性組成物。
【請求項18】
ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した場合、30000以上の重量平均分子量を有するポリカーボネートと、
シロキサン単位を1〜50重量パーセント含むポリシロキサン-ポリカーボネートと、
SANコポリマーと
を含む樹脂組成物であって、
ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの量は、樹脂組成物から調製した熱可塑性組成物に対する疲れ破損が、ASTM D638-03タイプ1に準じて、圧力28.2MPaおよび振動数5Hzにおいて、70000サイクル以上で生じるように選択され、前記熱可塑性組成物の粘度が、ASTM D4440-01に準じて、せん断速度6000sec-1および300℃で測定した場合、112Pa-s以下である樹脂組成物。
【請求項19】
ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定した場合、30000以上の重量平均分子量を有するポリカーボネートと、
シロキサン単位を1〜50重量パーセント含むポリシロキサン-ポリカーボネートと、
SANコポリマーと
を溶融ブレンドする段階を含む熱可塑性組成物を製造する方法であって、
ポリカーボネート、ポリシロキサン-ポリカーボネート、およびSANコポリマーの量は、熱可塑性組成物に対する疲れ破損が、ASTM D638-03タイプ1に準じて、圧力28.2MPaおよび振動数5Hzにおいて、70000サイクル以上で生じるように選択され、該熱可塑性組成物の粘度が、ASTM D4440-01に準じて、せん断速度6000sec-1および300℃で測定した場合、112Pa-s以下である
方法。
【請求項20】
請求項1に記載の熱可塑性組成物を含む物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−507961(P2009−507961A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530091(P2008−530091)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/033629
【国際公開番号】WO2007/032901
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
【Fターム(参考)】