説明

耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体の製造方法

本発明は、耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体として使用される、熱可塑性樹脂を含浸した繊維複合体を製造する方法に関する。当該技術分野の現況の製造方法と比較すると、本発明による方法は、製造機械の複雑さを低減することにより、より効率的な方法で、かつより低コストで耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体を製造することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺性および衝撃性複合構造体として使用される、熱可塑性樹脂を含浸させた繊維複合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲な脅威に対する保護を提供するために、多層構造においてポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)などの高靭性繊維を使用することが知られている。このようなアラミド織物繊維から製造された製品は、例えば、突き刺しなどのナイフ穿刺および衝撃弾丸に対して抵抗性であることが知られている。
【0003】
保護製品の耐穿刺性および耐衝撃性をさらに改善する目的で、樹脂およびアラミド繊維に基づいた複合構造体が開発されている。国際公開第2001/037691号パンフレットには、各層が複数の高強度繊維および樹脂から製造された支持材料を含んでなる複数の分離可撓層を含んでなる保護材料が開示されている。樹脂内に埋め込まれていることにより、着用者に生じた衝撃の際、繊維の相対的運動が減少し、したがって、ブラント損傷抵抗性の増大に至る。
【0004】
このような複合材料を製造するために用いられる従来の方法は、先ず積層ステップ、次いで樹脂昇華ステップを含む。
【0005】
積層ステップは、薄膜内への樹脂の押出しを含んでなり、次いで、薄膜と繊維との間に十分な接着性を持たせ、複合構築体を形成するために、この薄膜を高強度繊維から製造された織物上に積層化する。このように製造された複合構築体が加熱されたロール上に粘着することを防ぐために、この工程には、一般的にはシリコーン紙から製造され薄膜と積層ロールとの間に位置する抗粘着層を使用することが必要である。これらの抗粘着層の使用には、織物を片側に含浸させるか両側に含浸させるかに依って、3つ以上のローラーを有する製造機械が必要である。このことは、より複雑な張力調整システムと操作手順を示唆し、全体的な製造速度を低下させる。
【0006】
樹脂昇華ステップにおいて、積層化ステップ下で得られた複合構築体は、樹脂が織物マトリックスを通って昇華し、したがって、それに含浸するために、加熱圧縮(プレッシング)において加熱と加圧を受ける。樹脂含浸は、最終的な複合構造体の保護効果を改善する。昇華ステップは一般的には、積層化ステップ下で製造された複合構築体のシートが共に加圧されるバッチ過程である。
【0007】
樹脂昇華ステップ下での生産収率を増加させるため、積層化ステップ下で得られた複合構築体のできるだけ多くの層を加熱圧縮に装入することが知られている。しかし、このような場合、熱圧縮時に2つの複合構築体が粘着し合うことを防ぐため、これら各々の間に、上記のような抗粘着層を挿入することが必要である。この多層パイルの処理は、抗粘着層と複合構築体とを交互に堆積させ、加熱圧縮のサイズを合わせるためにパイルの境界を切断することもあり得る従来の機械によって行われる。パイルの加圧と冷却後、このように含浸された複合構造体各々の間の抗粘着層を最終的には取り除かなければならない。
【0008】
積層化ステップ時と昇華ステップ時に抗粘着層を使用することにより、複雑さおよび全体的製造過程のコストが増加する。さらに、上記の抗粘着材料は、高価であり、一製造サイクルを超えて使用することができず、特にシリコーン紙から製造されている場合は、処理することが通常困難である。シリコーン紙の厚さに関連するエネルギー消費の増加により、さらに環境上の懸念が強まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上記のような耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体を製造するためのより簡便でより効率的な方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題は、
a)アラミド織物層を提供するステップと;
b)熱可塑性樹脂に基づく少なくとも1層の熱可塑性層と、熱可塑性層の融解温度よりも実質的に高い融解温度を有する少なくとも1層の剥離層とを含んでなる多層構造体を提供するステップと;
c)交互順に配置された、少なくとも1層のアラミド織物層と、多層構造体の熱可塑性層がアラミド織物層に物理的に接触している少なくとも1層の多層構造体とから作製されたパイルを得るステップと;
d)熱可塑性樹脂の昇華および熱可塑性樹脂による少なくとも1層のアラミド織物層の含浸を可能にするために、c)で得られたパイルを、剥離層の化学的および物理的性質を実質的に変化させない温度と圧力による熱圧縮によって、耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体を得るステップと;
e)ステップd)で得られた耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体から少なくとも1層の剥離層を除去するステップと、
を含んでなる耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体を製造する方法によって克服することができる。
【0011】
ステップd下での樹脂の昇華およびアラミド織物層の含浸の後、化学的および物理的性質を実質的に変えられることのない剥離層は、こうして得られた耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体から容易に剥離することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記の従来の製造方法に比較して、本発明による方法は、より効率的に、またより低コストで耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体を製造することを可能にする。従来の方法の2つの独立した積層化ステップと昇華ステップは、熱可塑性層および予備構築構造の形体である剥離層を提供することにより1つのステップへと組合わされる。このことにより、製造機械の複雑さおよび全体的製造過程の複雑さが減少する。
【0013】
上記の従来の方法におけるようなシリコーン紙の使用を回避することにより、製造コストおよびエネルギー消費が減少し、したがって、最終的な耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体の全体的製造コストが減少する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体に用いられるアラミド織物層は、繊維から作製される糸から製造される。本明細書の目的に関して、用語「繊維」は、その長さに垂直な断面にわたって、幅に対する長さの比率が高い比較的可撓性で肉眼的に均一体として定義される。繊維の断面は任意の形状であり得るが、一般的には円形である。本明細書における用語「フィラメント」は、用語「繊維」と同義的に用いられる。
【0015】
「アラミド」とは、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香族環に直接結合しているポリアミドを意味する。好適なアラミド繊維は、Man−Made Fibers−Science and Technology、第2巻、標題がFiber−Forming Aromatic Polyamidesの節、297頁、W.Blackら、Interscience Publishers、1968年に記載されている。アラミド繊維およびそれらの製造は、米国特許第4,172,938号明細書;米国特許第3,869,429号明細書;米国特許第3,819,587号明細書;米国特許第3,673,143号明細書;米国特許第3,354,127号明細書;米国特許第3,094,511号明細書にも開示されている。好ましいアラミドはパラ−アラミドである。好ましいパラ−アラミドは、PPD−Tと称されるポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。
【0016】
本発明による方法に用いられる多層構造体は、少なくとも1つの熱可塑性層および少なくとも1層の剥離層の予備構築構造体である。これら2つの層は、剥離層上への熱可塑性樹脂の積層化もしくは押出しコーティングまたは2つの層の同時押出しを含み得る単一工程により共に構築される。押出しコーティングが用いられる場合、剥離層は、例えば、インフレート法、キャストフィルム押出し法、またはキャストシート押出し法などの従来の方法によって製造される。
【0017】
本発明の方法に用いられる多層構造体の熱可塑性層のベースとなっている熱可塑性樹脂は、例えば、アイオノマー類、ポリエチレン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリカーボネート類、ポリウレタン類、ポリエーテルエーテルケトン類、フェノール性修飾樹脂およびそれらの混合物など、当該技術分野で周知の広範な樹脂の中から選択することができる。熱可塑性樹脂は、1つ以上のアイオノマーから作製されるのが好ましい。
【0018】
アイオノマーは、ポリマーの有機主鎖に加えて金属イオンを含有する熱可塑性樹脂である。アイオノマーは、部分的に中和されたα,β−不飽和C3―C8カルボン酸を有するエチレンなどのオレフィンのイオン性コポリマーである。酸性コポリマーは、アクリル酸(AA)またはメタクリル酸(MAA)であることが好ましい。好ましい中和剤は、ナトリウム、カリウム、亜鉛、マグネシウム、リチウム、およびそれらの混合物である。本発明に用いられるアイオノマーの酸性基は、1.0%から99.9%、好ましくは、20%から75%中和されている。アイオノマーは任意に、エチレンと共重合可能な少なくとも1つの軟化コモノマーを含んでなり得る。アイオノマーおよびそれらの製造方法は、米国特許第3,264,272号明細書に記載されている。本発明に使用するための好適なアイオノマーは、E.I.du Pont de Nemours and Company、Wilmington,Delaware,USAから、Surlyn(登録商標)の商標で市販されている。
【0019】
少なくとも1つの熱可塑性の厚さは、可撓性および耐穿刺性および/または耐衝撃性の程度を変えることにより、最終使用適用に依って選択できる。熱可塑性層の最適な厚さは、熱可塑性樹脂を含浸させる必要のあるアラミド織物の数および厚さに依る。アラミド織物層の片側だけを含浸させる必要がある場合、少なくとも1層の熱可塑性層の厚さは、10μmから200μmであることが好ましい。アラミド織物層の両側を含浸させる必要がある場合、少なくとも1層の熱可塑性層各々の厚さは、20μmから150μm、より好ましくは、25μmから100μmであるべきである。少なくとも1層の熱可塑性層のこの好ましい厚さの違いの主な理由は、熱可塑性樹脂にほぼ包囲された線維の内部浸透性網状構造を形成するために、十分な熱可塑性樹脂がアラミド織物層の適切な含浸に利用可能であることが必要だからである。得られた耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体において、少なくとも1層の熱可塑性層はアラミド織物層内へ昇華しており、もはや明確な層として存在しておらず、アラミド織物層を包囲する熱可塑性樹脂連続体として存在している。
【0020】
剥離層が昇華過程の間、物理的および化学的に損なわれずに留まり、最終的には含浸アラミド織物層から容易に剥離されるために、少なくとも1層の剥離層は、熱可塑性層の融解温度よりも実質的に高い融解温度を有する。剥離層の融解温度は、好ましくは、熱可塑性層の融解温度よりも少なくとも20℃、より好ましくは、少なくとも50℃高い。
【0021】
剥離層としての使用に好適なポリマーの例としては、ポリエステル類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、塩化ポリビニル類、ポリスチレン類およびそれらの混合物が挙げられる。剥離層に用いられる材料は、好ましくは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、またはポリナフタレンテレフタレート(PEN)などのポリエステルであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0022】
少なくとも1層の剥離層は、例えば、滑り剤、粘着防止剤、色素または着色剤などの種々の添加剤、炭酸カルシウムまたはタルカムなどの無機充填剤および発泡剤をさらに含むことができる。剥離層を可視化する目的で、剥離層に色素または着色剤を含むことができる。
【0023】
少なくとも1層の剥離層の厚さは、熱可塑性層の厚さに依る。剥離層は、熱可塑性層から剥離できるように、また昇華工程時に機械的に損傷されないように十分に厚くする必要がある。剥離層は、一般的には、約1μmから約50μmの範囲の厚さを有し、約5μmから約30μmの範囲の厚さが好ましい。
【0024】
昇華時に一定温度を維持するために、一般的には、種々の層の発熱体を含んでなる加熱圧縮を用いることによって、パイルは熱と圧力(熱圧縮)を受ける。パイルは、交互の順に配置される、少なくとも1層のアラミド織物層と、多層構造体の熱可塑性層がアラミド繊維層と物理的に接触している少なくとも1層の多層構造体とから作製された集成体である。パイルの製造は、例えば、アラミド織物層と1層以上の多層構造とを交互に送達する2台の機械によって実施することができる。このような機械はまた、このような種々の層を加熱圧縮のサイズに適合させるために切断するシステムを含むことができる。剥離層の化学的および物理的性質を実質的に変化させずに、熱可塑性樹脂が、昇華し、飽和し、アラミド織物層の繊維を内部に封入することを確実にするのに十分な時間内で、また十分な圧力と温度において、プレス内で種々の層のパイルを同時に加熱する。
【0025】
一般的には、2バールと100バールとの間の圧力で、より好ましくは10バールと40バールとの間の圧力でパイルを圧縮する。熱可塑性樹脂の適切な昇華を可能にするために、温度は、熱可塑性層の融点よりも少なくとも約30℃以上が一般的である。熱圧縮時間は、20分と60分との間が好ましく、パイルの種々の層の数に依る。含浸させた複合構造体は、圧力を一定に維持しながら一般的に50℃まで冷却し、次いで周囲条件下で室温まで冷却する。含浸させた複合構造体から剥離層を剥離することによって最終製造物を最後にパイルから回収する。
【0026】
本発明による方法で製造された耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体は、例えば、弾丸、ナイフまたは他の尖刃装置の衝撃からの防御用耐貫通性製品または耐衝撃性製品の製作など、全ての防御目的のために使用することができる。
【0027】
好ましい実施形態によれば、本発明による方法のステップc)下でのパイルは、熱可塑性層の各層は、アラミド織物層の各面上でアラミド織物層と物理的に接触している2層の多層構造体の間に配置される少なくとも1層のアラミド織物層から作製される1層以上のサンドイッチ形態から作製される。このような方法でアラミド織物層をアラミド織物層の両面に含浸させることが可能であり、したがって、本発明の方法によって最終的に得られた複合構造体の全体的耐穿刺性および耐衝撃性がさらに改善される。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1層の熱可塑性層は、熱可塑性樹脂に色素および/または着色剤を添加することによって着色される。色素および/または着色剤は、担体樹脂が熱可塑性層の熱可塑性樹脂と適合する着色マスターバッチを添加することによって熱可塑性樹脂に組み込むことが好ましい。着色マスターバッチを使用する場合のその量は、熱可塑性層を作製する熱可塑性樹脂の総重量の0.5重量%から5重量%が好ましく、1重量%から2重量%がさらに好ましい。本発明に使用するためのエチレンビニルアセテート(EVA)樹脂に基づく好適な着色マスターバッチは、Elain、Oyonnax,Franceから市販品として入手できる。
【0029】
着色熱可塑性層の使用により、本発明の方法により得られた複合構造体の均質性を評価するための信頼性のある品質管理試験を確立することが可能になる。アラミド織物の含浸度およびそれに関連する厚さの不均質性を評価することが可能になる。
【0030】
複合構造体の不均質性が、防護用衣料品またはそれから作製された製品の性能のばらつきを引き起こすと思われるため、このことは、人的保護の分野において重要である。現在、最終複合構造体の品質管理は全く不可能であり、加熱不良または圧力分布不良による昇華異方性、または薄膜稠度の不良による樹脂含量の均質性などの一定の問題は、複合構造体自体の製造時に検出することはできない。
【0031】
さらに、厚さおよび含浸度の機能において複合構造体を識別するために種々の色を使用することができる。使用者は、特殊適用の機能に必要な構造体を迅速に選択することができる。
【0032】
着色剤、色素、着色マスターバッチおよび/または他の添加剤を、少なくとも1層の熱可塑性層のベースである熱可塑性樹脂に添加する場合、このような構成物は、当該技術分野に知られた任意の融解混合法を用いてポリマー成分と非ポリマー成分とを合わせることによって得ることができる。
【実施例】
【0033】
本発明によるサンプルを製造するために以下の材料を使用した:
アラミド織物層:Kevlar(登録商標)1K1533の商標で、E.I.du Pont de Nemours and Company、Wilmington,Delaware,USAから市販入手できる1100dtexのポリ−p−フェニレンテレフタルアミドのヤーンを、平織物に織った。この織物は、8.5エンド/cm(ワープ)、8.5ウェフト/cm(ウェフト)および185g/m2の特殊乾燥重量を有した。
【0034】
多層構造体:
a)a1)エチレンと、利用可能なカルボン酸部分の45%がナトリウムカチオンで中和されている19重量%のMAA(メタクリル酸)とのコポリマー(Surlyn(登録商標)の商標で、E.I.du Pont de Nemours and Company、Wilmington,Delawareにより供給された製品)と、
a2)EVAマトリックス(M197328の商品番号でElian Oyonnax,Franceにより供給)ベースの1.1重量%の着色マスターバッチと
を含んでなる青色アイオノマー組成物を、
b)剥離層として23μmのポリエステル薄膜(Mylar(登録商標)の商標でDuPont Teijin Filmsにより供給された製品)
上に押出しコーティングすることにより2層ポリマー構造体を製造した。
【0035】
押出し機の温度を、176℃、199℃、221℃、240℃および259℃の温度プロファイルに従って同じ長さの5つの押出し機ゾーンに設定した。ダイ(63cm幅)および接続パイプを260℃に設定した。冷却ロールを12℃に設定した。ライン速度は30m/分であった。1ロールの薄膜は、幅50cm、長さ200mで製造した。最終的な多層構造体は、剥離層として23μm層のポリエステル上にコーティングされた55μm層の青色アイオノマー押出しにおいて構成された。
【0036】
本発明による複合構造体は、以下の加工処理によって製造された:
パイルは、以下の構造体:剥離層/熱可塑性層//アラミド織物層//熱可塑性層//剥離層を有する互いに30のサンドイッチ構造体を手動で互いに重ねることにより作製した。次にこのパイルを、以下のサイクルで加熱圧縮(SATIMからの50トンプレス)において処理した:a)105℃で21分間の熱圧縮;b)パイルを挿入;c)135℃、10バールで10分間のパイルの熱圧縮;d)135℃、20バールで20分間のパイルを熱圧縮;e)20バール圧下50℃で20分間、パイルを冷却;f)c)とd)の下での熱圧縮処理により得られた各含浸複合構造体のパイルからの回収;g)各含浸複合構造体の室温までの冷却;およびh)各含浸複合構造体から剥離層の剥離。
【0037】
15の含浸複合構造体から作製されたサンプルを耐穿刺性に関して試験を実施した。このようなサンプルを24時間室温に維持してから、P1B試験用ブレード、24ジュールの攻撃エネルギー、発泡体から作製された裏材料および同じブレードの5回の落下を用いて、United Kingdom Home Office、Police Science and Development Branch(PSDB)からのHOSDB 07 Standard、すなわちHOSDB 07 Standard「PSDB Body Armor standards for UK Police,Part3,Knife and Spike resistance」に従って試験を実施した。
【0038】
本発明による方法で得られたサンプルに対して上記の標準規格に従って測定されたブレード貫通性は、15.8mmであった。この値は、従来の2ステップ工程で得られた同じ複合構造体のブレード貫通性と同等である。
【0039】
熱可塑性層と剥離層との組合わせとして予備構築された多層構造体の使用により、製造機械の複雑さおよび全体的製造工程の複雑さが低減する。さらに、上記のようなポリマーから作製された剥離層は、容易にリサイクルでき、したがってそれらの使用により、シリコン紙の使用に対して環境に優しい代替物となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アラミド織物層を提供するステップと;
b)熱可塑性樹脂に基づく少なくとも1層の熱可塑性層と、熱可塑性層の融解温度よりも実質的に高い融解温度を有する少なくとも1層の剥離層とを含んでなる多層構造体を提供するステップと;
c)交互の順に配置された、少なくとも1層のアラミド織物層と、多層構造体の熱可塑性層がアラミド織物層に物理的に接触している少なくとも1層の多層構造とから作製されたパイルを得るステップと;
d)熱可塑性樹脂の昇華および熱可塑性樹脂による少なくとも1層のアラミド織物層の含浸を可能にするためにc)で得られたパイルを、剥離層の化学的および物理的性質を実質的に変化させない温度と圧力による熱圧縮によって、耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体を得るステップと;
e)ステップd)で得られた耐穿刺性および耐衝撃性複合構造体から少なくとも1層の剥離層を除去するステップと、
を含んでなる耐穿刺性および耐弾道性複合構造体を製造する方法。
【請求項2】
前記剥離層の融解温度が、前記熱可塑性層の融解温度よりも少なくとも20℃以上高い請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップc)でのパイルが、2層の多層構造体の間に配置された少なくとも1層のアラミド織物層から作製された1つ以上のサンドイッチ形態から作製され、前記熱可塑性層の各々の層が、前記アラミド織物層の各面上のアラミド織物層と物理的に接触している請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アラミド織物層が、パラ−アラミド織物層である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、アイオノマー類、ポリエチレン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリカーボネート類、ポリウレタン類、ポリエーテルエーテルケトン類、フェノール性修飾樹脂およびそれらの混合物の中から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、1種以上のアイオノマー類から作製される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1層の熱可塑性層が着色されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1層の剥離層が、ポリエステル類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、塩化ポリビニル類、ポリスチレン類およびそれらの混合物の中から選択される請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱可塑性多層の剥離層が、ポリエステルである請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2011−528628(P2011−528628A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509697(P2011−509697)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/043933
【国際公開番号】WO2010/036406
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】