説明

耐衝突構造体

【課題】組み付けの精度を高めることができる耐衝突構造体を提供する。
【解決手段】車幅方向に並んだシートの間のセンターコンソール内に配設した耐衝突構造体1であって、矩形型の底板部11と、車両前方へ面を向けていて底板部11の前縁に繋がった前壁部12と、車両後方へ面を向けていて底板部11の後縁に繋がった後壁部13と、前壁部12の上縁と後壁部13の上縁とに連結した天板部14と、前壁部12と後壁部13との間で、底板部11と天板部14とに連結した中間壁部15,16と、を備え、底板部11、前壁部12、後壁部13、天板部14及び中間壁部15,16が一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向に並んだシートの間のセンターコンソール内に配設された耐衝突構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は従来の車両100の構造を示す断面図であり、110L,110Rは車幅方向に並んだ二つのフロントシート、120はフロントシート110L,110Rの間に配設されたセンターコンソールである。このセンターコンソール120の中には、耐衝突構造体130が配設されている。
図4(A)は従来の耐衝突構造体130の斜視図であり、図4(B)は従来の耐衝突構造体130の分解斜視図である。
耐衝突構造体130は、図4(B)に示すように、内側の骨格部材140と骨格部材140に被着するカバー部材150とから構成されている。
【0003】
骨格部材140は、前後一対の取付フランジ141,142と、これらの取付フランジ141,142の間で上下に屈曲形成された屈曲部143と、から成る。屈曲部143は、具体的には、図4(B)に示すように、前方に面を向けた第1壁部143Aと、この第1壁部143Aの上縁から後方へ延出した第1水平部143Bと、この第1水平部143Bの後縁から延設し前方へ面を向けた第2壁部143Cと、この第2壁部143Cの下縁から後方へ延出した第2水平部143Dと、この第2水平部143Dの後縁から起立し前方へ面を向けた第3壁部143Eと、この第3壁部143Eの上縁から後方へ延出した第2水平部143Fと、この第2水平部143Fの後縁から延出し前方へ面を向けた第4壁部143Gとから構成されている。
【0004】
カバー部材150は、骨格部材140の左右をそれぞれ覆う一対の側部151,152と、これらの一対の側部151,152の上端に連結された天板部153と、から構成されている。
【0005】
耐衝突構造体130は、シート110L,110Rの位置(以下、シートポジションと言う。)の前後方向幅に対応し、衝突車両200からの入力荷重Fに対し、荷重Fを受ける為に板金を折り曲げて縦壁、即ち第1壁部143A、第2壁部143C、第3壁部143E、第4壁部143Gを有する骨格部材140を形成している。この骨格部材140の上からカバー部材150を被せて溶接し、箱状に構成している。なお、図4(B)中の153Aはセンターコンソール120への取付穴、141A,142Aはボディへの取付穴であり、それぞれボルト締結される。
【0006】
車両100の側面衝突時には、衝突車両200が左側のドア外板151を押しながらボディを変形させ、左側のフロントシート110Lを変形させる。衝突車両200の進入を抑える為に、シート構造の強化と共に、左右のシート110L,110R間のセンターコンソール120内に設定した耐衝突構造体130が反衝突側シート、図示例では右側のシート110Rとの間に挟まれることにより、図5に示すように衝突側シート110Lの変形と移動量を抑え、その結果、ボディ変形を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の耐衝突構造体130は2部品で構成されており(図4(B)参照)、それぞれが折り曲げて製作される為、組み付けの精度出し、ボディの取付穴に対するセンターコンソール穴の位置精度出しが容易ではなかった。耐荷重性を考慮すると、板厚を厚くする必要があるため、質量の増大化を招いていた。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて創作されたもので、組み付けの精度を高めることができる耐衝突構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、車幅方向に並んだシートの間に配設された耐衝突構造体であって、矩形型の底板部と、車両前方へ面を向けていて底板部の前縁に繋がった前壁部と、車両後方へ面を向けていて底板部の後縁に繋がった後壁部と、前壁部の上縁と後壁部の上縁とに連結した天板部と、前壁部と後壁部との間で、底板部と天板部とに連結した中間壁部と、を備え、底板部、前壁部、後壁部、天板部及び中間壁部が一体に形成されている。例えば、車幅方向に並んだシートの間にセンターコンソールが配設される場合に、耐衝突構造体は、センターコンソール内に配設することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、底板部、前壁部、後壁部、天板部及び少なくとも一つの中間壁部が一体に形成されることで、従来二分品で成る耐衝突構造体130を製造する際に必要であった溶接作業を省略することができる。例えば、本発明の材料としてアルミニウムを使用することで、従来の耐衝突構造体130と同等の大きさで、同等の強度を確保しつつ、重量を大幅に軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る耐衝突構造体の斜視図である。
【図2】(A)及び(B)は本発明の他の実施形態に係る耐衝突構造体の側面図である。
【図3】従来の車両の側面衝突前の状態を示す断面図である。
【図4】(A)は従来の耐衝突構造体の斜視図であり、(B)は従来の耐衝突構造体の分解斜視図である。
【図5】従来の車両の側面衝突後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、図中のFrは車両前方を、Upは車両上方を、LHは車両の横幅方向であって左方を示す。
図1は本発明の実施形態に係る耐衝突構造体1を示す斜視図である。耐衝突構造体1は、車幅方向に並んだシート(図3のシート110L,110R参考)の間のセンターコンソール内に配設されるものであり、衝突側シートの変形と移動量を抑え、その結果、ボディの変形を抑制するための部材である。
耐衝突構造体1は、底板部11、前壁部12、後壁部13、天板部14及び二つの中間壁部15,16から構成されている。
【0013】
底板部11は、矩形型に形成されている。
前壁部12は、車両前方へ面を向けており、底板部11の前縁に繋がっている。図示例では、前壁部12の下部は、底部11の前縁よりも下方へ延びていて、その縁にフランジ12Aが形成されている。このフランジ12Aには、ボディへの組み付け用のボルト穴12Bが形成されている。
後壁部13は、車両後方へ面を向けており、底板部11の後縁に繋がっている。図示例では、後壁部13の下部は、底部11の後縁よりも下方へ延びていて、その縁にフランジ13Aが形成されている。このフランジ13Aには、ボディへの組み付け用のボルト穴13Bが形成されている。
天板部14は、前壁部12の上縁と後壁部13の上縁とに掛け渡すように前壁部12と後壁部13とに連結している。天板部14の後部は、後壁部13の上端位置よりも後方へ延長してフランジ14Aが形成されている。このフランジ14Aにはセンターコンソールへの組み付け用のボルト穴14Bが形成されている。
複数の中間壁部15,16は、前壁部12と後壁部13との間で、底板部11と天板部14とに掛け渡すように底板部11と天板部14とに連結している。中間壁部15,16同士は、距離をおいて並設している。
底板部11、前壁部12、後壁部13、天板部14及び複数の中間壁部15,16が組み合わされて、車幅方向に沿った貫通孔17,18,19が形成されている。
【0014】
本発明の実施形態に係る耐衝突構造体1では、底板部11、前壁部12、後壁部13、天板部14及び複数の中間壁部15,16が一体に形成されている。耐衝突構造体1は例えばアルミニウムによって構成されている。
【0015】
耐衝突構造体1は、例えば先ずアルミニウムを一定断面で押出し形成し、この押出し材を所定の長さに切断したものを本体として成形する。本体形成の際、貫通穴17,18,19も形成される。次にこの本体に後加工を施し、前述のボルト穴12B,13,14Bを形成することで、耐衝突構造体1を製造することができる。
貫通穴17,18,19を形成する際、その位置、数、形状を調整することで、フロントシートから入力される衝突荷重を受ける部分である縦壁、即ち中間壁部15,16を設定できる。
【0016】
本実施形態に係る耐衝突構造体1によれば、底板部11、前壁部12、後壁部13、天板部14及び複数の中間壁部15,16が一体に形成されることで、従来二分品で成る耐衝突構造体130(図4(B)参照)を製造する際に必要であった溶接作業を省略することができる。
本発明は、側面衝突時の側方からの荷重に対して、従来の二分品構成の耐衝突構造体130と異なり、底板部11、前壁部12、後壁部13、天板部14及び複数の中間壁部15,16が一体になった断面で受ける為、高強度である。
【0017】
例えば、アルミニウムを使用することで、従来の耐衝突構造体130と同等の大きさで、同等の強度を確保しつつ、重量を大幅に軽量化することができる。
本体に穴加工を施す為、ボルト穴12B,13,14Bの位置精度を高くすることができる。
また、側面衝突時の側方からの荷重に対して、当該荷重を受ける縦壁、即ち中間壁部を自由に配置することができる。
【0018】
以上詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
例えば、内部の縦壁、即ち中間壁部の本数、形状は押出し材の口金型を変更することにより自由に設定可能であり、例えば、図2(A)及び図2(B)に示す耐衝突構造体1A,1Bのように構成することもできる。図2(B)に示す耐衝突構造体1Bでは、中間壁部15,16同士を連結する連結部20を有している。
また、図示省略するが、内部に設ける縦壁、即ち中間壁部の数は1枚でも、4枚以上でもよい。
【符号の説明】
【0019】
1,1A,1B 耐衝突構造体
11 底板部
12 前壁部
12A 前壁部のフランジ
12B ボルト穴
13 後壁部
13A 後壁部のフランジ
13B ボルト穴
14 天板部
14A 天板部のフランジ
14B ボルト穴
15,16 中間壁部
17,18,19 貫通穴
20 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に並んだシートの間に配設された耐衝突構造体であって、
矩形型の底板部と、
車両前方へ面を向けていて上記底板部の前縁に繋がった前壁部と、
車両後方へ面を向けていて上記底板部の後縁に繋がった後壁部と、
上記前壁部の上縁と上記後壁部の上縁とに連結した天板部と、
上記前壁部と上記後壁部との間で、上記底板部と上記天板部とに連結した中間壁部と、を備え、
上記底板部、上記前壁部、上記後壁部、上記天板部及び上記中間壁部が一体に形成されて成る、耐衝突構造体。
【請求項2】
車幅方向に並んだシートの間に配設された耐衝突構造体であって、
矩形型の底板部と、
車両前方へ面を向けていて上記底板部の前縁に繋がった前壁部と、
車両後方へ面を向けていて上記底板部の後縁に繋がった後壁部と、
上記前壁部の上縁と上記後壁部の上縁とに連結した天板部と、
上記前壁部と上記後壁部との間で、上記底板部と上記天板部とに連結した複数の中間壁部と、を備え、
上記底板部、上記前壁部、上記後壁部、上記天板部及び上記中間壁部が一体に形成されて成る、耐衝突構造体。
【請求項3】
前記中間壁部同士を連結する連結部を有する、請求項2に記載の耐衝突構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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