説明

耐l−メントール性を有する弾性繊維、弾性不織布及びこれらを用いた繊維製品

【課題】優れた弾性と耐l−メントール性を有し、更に比較的安価で繊維製品としての用途に好適な弾性繊維、弾性不織布を提供すること。
【解決手段】分子中に構成単位A、Bを含有し、かつブロック構造がA−B−Aまたは(A−B)Xで表され、Aの含有量が10〜50重量%であり、Bの含有量が90〜50重量%であり、Aの含有量とBの含有量の和が100重量%である水添ブロック共重合体を用いて得られる弾性繊維による。
A:芳香族ビニル化合物モノマー単位を主とする構成単位。
B:共役ジエン化合物モノマー単位を主とし、かつ共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量が50重量%以上、80重量%未満である、共役ジエンモノマー単位由来の二重結合残基の80%以上が水添された構成単位。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性繊維、弾性不織布及びこれらを用いた繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パップ剤は、身体にフィットすることが物理的性能として重要であることから、弾性シートが基布として用いられてきた。近年、よりフィット性を向上させるために、種々のエラストマー樹脂から作られた弾性不織布が検討されている。
例えば、芳香族ビニル化合物モノマー単位を主体とする構成単位(A)と、共役ジエン化合物モノマー単位を主体とする構成単位(B)とから構成される、A−B−Aまたは(A−B)X(ここで、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤残基である。)で表される水添ブロック共重合体からなる弾性不織布が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この弾性不織布は、良好な弾性を有することからフィット性に優れているものの、これをパップ剤の基布として用い、l−メントールを付着した場合には、弾性性能が低下し、不織布が破断し易くなる不具合があり、パップ剤等の用途に適してはいなかった。
【特許文献1】特開平8−13237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の課題は、優れた弾性と耐l−メントール性を有し、更に比較的安価で繊維製品としての用途に好適な弾性繊維、弾性不織布を提供することであり、更にこれを用いた繊維製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、本発明の課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、下記構成にすることで前記課題を解決することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させた。
【0005】
本発明は、以下の構成を有する。
[1] 分子中に下記構成単位A、Bを含有し、かつブロック構造がA−B−Aまたは(A−B)Xで表され、Aの含有量が10〜50重量%であり、Bの含有量が90〜50重量%であり、Aの含有量とBの含有量の和が100重量%である水添ブロック共重合体を用いて得られる弾性繊維であり、該弾性繊維を5重量%のl−メントールエタノール溶液に1時間浸漬させた後の破断強度が、浸漬させる前の破断強度の80%以上である、弾性繊維。
A:芳香族ビニル化合物モノマー単位を主とする構成単位。
B:共役ジエン化合物モノマー単位を主とし、かつ共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量が50重量%以上、80重量%未満である、共役ジエンモノマー単位由来の二重結合残基の80%以上が水添された構成単位。
ここで、ブロック構造(A−B)Xで表される水添ブロック共重合体において、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤残基である。
[2]水添ブロック共重合体が、(スチレン)−(エチレン−ブチレン)−(スチレン)ブロック共重合体である前記[1]項記載の弾性繊維。
[3] 分子中に下記構成単位A、Bを含有し、かつブロック構造がA−B−Aまたは(A−B)Xで表され、Aの含有量が10〜50重量%であり、Bの含有量が90〜50重量%であり、Aの含有量とBの含有量の和が100重量%である水添ブロック共重合体を用いて得られる弾性不織布であり、該不織布を5重量%のl−メントールエタノール溶液に1時間浸漬させた後の機械方向の破断強度が、浸漬させる前の破断強度の80%以上である、弾性不織布。
A:芳香族ビニル化合物モノマー単位を主とする構成単位。
B:共役ジエン化合物モノマー単位を主とし、かつ共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量が50重量%以上、80重量%未満である、共役ジエン化合物モノマー単位由来の二重結合残基の80%以上が水添された構成単位。
ここで、ブロック構造(A−B)Xで表される水添ブロック共重合体において、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤残基である。
[4] 水添ブロック共重合体が、(スチレン)−(エチレン−ブチレン)−(スチレン)ブロック共重合体である前記[3]項記載記載の弾性不織布。
[5] 前記弾性不織布が、スパンボンド法、メルトブロー法またはトウ開繊法のいずれかの製法から作られる前記[3]項または前記[4]項記載の弾性不織布。
[6] 前記[3]〜[5]のいずれか1項記載の弾性不織布に、該弾性不織布以外の不織布、フィルム、ウェブ、織物、編物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層し一体化されてなる弾性不織布。
[7] 前記[1]項または前記[2]項記載の弾性繊維を用いた繊維製品。
[8] 前記[3]〜[6]のいずれか1項記載の弾性不織布を用いた繊維製品。
[9] 前記[3]〜[6]のいずれか1項記載の弾性不織布の片側に、l−メントール及び粘着剤が付着されてなるパップ剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明の弾性繊維及び弾性不織布は、優れた弾性と優れた耐l−メントール性を有しており、人体へのフィット性を要求される繊維製品に好適に利用できる。なかでも耐l−メントール性を要求されるパップ剤に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の弾性繊維は、分子中に下記構成単位A、Bを含有し、かつブロック構造がA−B−Aまたは(A−B)Xで表され、Aの含有量が10〜50重量%であり、Bの含有量が90〜50重量%であり、Aの含有量とBの含有量の和が100重量%である水添ブロック共重合体を用いて得られる弾性繊維であり、該弾性繊維を5重量%のl−メントールエタノール溶液に1時間浸漬させた後の破断強度が、浸漬させる前の破断強度の80%以上である、弾性繊維である。本発明において、構成単位は、共重合体を構成する重合体ブロックをいう。Aは、芳香族ビニル化合物モノマー単位を主とする構成単位であり、Bは、共役ジエン化合物モノマー単位を主とし、かつ共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量が50重量%以上、80重量%未満である、共役ジエンモノマー単位由来の二重結合残基の80%以上が水添された構成単位(以下、「共役ジエン化合物モノマー単位を主とする構成単位」という場合がある。)である。ここで、ブロック構造(A−B)Xで表される水添ブロック共重合体において、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤残基である。
また、本発明の弾性不織布は、分子中に下記構成単位A、Bを含有し、かつブロック構造がA−B−Aまたは(A−B)Xで表され、Aの含有量が10〜50重量%であり、Bの含有量が90〜50重量%であり、Aの含有量とBの含有量の和が100重量%である水添ブロック共重合体を用いて得られる弾性不織布であり、該不織布を5重量%のl−メントールエタノール溶液に1時間浸漬させた後の機械方向の破断強度が、浸漬させる前の破断強度の80%以上である、弾性不織布である。Aは、芳香族ビニル化合物モノマー単位を主とする構成単位であり、Bは、共役ジエン化合物モノマー単位を主とし、かつ共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量が50重量%以上、80重量%未満である、共役ジエン化合物モノマー単位由来の二重結合残基の80%以上が水添された構成単位である。ここで、ブロック構造(A−B)Xで表される水添ブロック共重合体において、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤残基である。
本発明に用いられる水添ブロック共重合体は、該水添ブロック共重合体中の共役ジエン化合物モノマー単位由来の二重結合残基の95%以上が水添されていることが特に好ましい。
【0008】
Aを主に構成する芳香族ビニル化合物モノマー単位は、A中に80重量%以上、好ましくは90重量%以上含まれる。Aを構成する芳香族ビニル化合物モノマー単位以外の他のモノマー単位は、ランダム、テーパーのどちらの構造で存在していてもよい。芳香族ビニル化合物モノマー単位の含有量がこの範囲であれば、Aのガラス転移温度が低下しないので、得られる繊維、不織布に充分な弾性を付与できるために好ましい。
【0009】
Aに用いられる芳香族ビニル化合物モノマー単位としては、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができる。なかでも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましく利用できる。
また、他のモノマー単位は特に限定されないが、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等の共役ジエン化合物モノマー単位を挙げることができる。なかでも、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が好ましく利用でき、特に1,3−ブタジエンが好ましく利用できる。
【0010】
Bを主に構成する共役ジエン化合物モノマー単位は、B中に50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは100重量%含まれる。共役ジエン化合物モノマー単位の含有量がこの範囲内であれば、Bのガラス転移温度が上昇せず、紡糸時の加工性が良好になるために好ましい。
【0011】
Bを主に構成する共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量は、50重量%以上、80重量%未満である。Bは、共役ジエン重合体モノマー単位の単独重合体または他のモノマー単位と共役ジエン化合物モノマー単位との共重合体である。Bを主に構成するモノマーに共役ジエン化合物モノマーとしてブタジエンを用いた場合、水添によりゴム状のエチレン−ブテン共重合体または他のモノマー−エチレン−ブテン共重合体と類似の構造を示す構成単位となる。この共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量が50重量%以上であれば、良好な曳糸性を示すため、好ましい。なお、ここで、ビニル結合とは、1,2−結合及び3,4−結合をいう。
【0012】
Bに使用される共役ジエン化合物モノマー単位としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができる。特に、工業的に利用でき、また物性の優れた水添ブロック共重合体組成物を得るためには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく利用でき、1,3−ブタジエン、イソプレンがさらに好ましく利用できる。
【0013】
また、Bに使用される他のモノマー単位としては、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができる。特に、スチレン、及びα−メチルスチレンが好ましい。なお、Bにおいて、共役ジエン化合物モノマー単位と他のモノマー単位とが共重合した場合、共役ジエン化合物モノマー単位の分布は、ランダム、テーパー(分子鎖に沿ってモノマー単位が増加または減少するもの)、一部ブロック状、またはこれらを任意に組み合わせたいずれであってもよい。
【0014】
本発明に用いられる水添ブロック共重合体は、(A−B−A)または(A−B)Xのブロック構造で表される。
水添ブロック共重合体中のAの含有量は、10〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%であり、Bの含有量は、90〜50重量%、好ましくは90〜60重量%、さらに好ましくは90〜70重量%である。
本発明に用いられる水添ブロック共重合体としては、Aがスチレンであり、Bが1,3−ブタジエンであり、スチレンの含有量が10〜50重量%であり、1,3−ブタジエンの含有量が90〜50重量%であり、水添ブロック共重合体中の共役ジエン化合物モノマー単位由来の二重結合残基の95%以上が水添された水添ブロック共重合体が好ましく利用できる。その一例は、(スチレン)−(エチレン−ブチレン)−(スチレン)ブロック共重合体である。このブロック共重合体は、スチレンと1,3−ブタジエンとの共重合体を水添させることによって得られる。このブロック共重合体において、1,3−ブタジエン単位由来の二重結合残基は、5%未満である。
【0015】
本発明において、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、必要に応じて弾性繊維が、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、ゴム等の柔軟性付与剤、その他の各種改良剤、ポリマー等を含んでいてもよい。前記ポリマーは、本発明で規定する水添ブロック共重合体以外のポリマーであり、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどの熱可塑性重合体を例示でき、水添ブロック共重合体と混合して、もしくは、複合繊維中で水添ブロック共重合体とは別の構成層を形成する複合成分として使用してもよい。
【0016】
本発明において、Bの共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量と、Aの含有量とのバランスが、耐l−メントール性に寄与している。従って、Bの共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量が50重量%以上、80重量%未満の範囲であることで、優れた耐l−メントール性を示すのである。また、良好な耐l−メントール性を維持するためには、Aの含有量は、10〜50重量%の範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明の弾性繊維は、50%伸長時の伸長回復率が70%以上となる優れた弾性を有していることが好ましい。より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。50%伸長時の伸長回復率が70%以上であれば、得られる製品に対して充分な弾性を付与させることが可能になる。また、本発明の弾性不織布も同様に、50%伸長時の伸長回復率が70%以上となる優れた弾性を有していることが好ましい。より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。50%伸長時の伸長回復率が70%以上であれば、得られる製品に対して充分な弾性を付与させることが可能になる。
【0018】
本発明の弾性繊維の繊維断面形状は、曳糸性を考慮すると丸断面が好ましいが、曳糸性を損なわない範囲であれば、異型断面、または中空断面としてもよい。更にそれらの断面構造は、複合断面であってもよい。ただし、並列または鞘芯の複合断面である場合には、水添ブロック共重合体以外の複合成分が、耐l−メントール性を阻害しない成分であることが好ましい。また、l−メントールを付着することで、不織布物性が低下する材料を用いる場合には、鞘芯の複合断面構造を用いて、l−メントール付着による影響の少ない芯部分にのみにその材料を用いるとよい。
【0019】
本発明の弾性繊維は、原料樹脂として水添ブロック共重合体を用いて、通常の熱溶融紡糸法により製造できる。熱溶融され、口金から吐出した溶融樹脂を、冷風、水等の冷媒で冷却する。溶融樹脂の吐出量及び引き取り速度は、任意に設定し目標繊度の繊維とする。ここで、弾性繊維には、金属との摩擦抵抗を低減し、繊維間の粘着を防止するために油剤を付着させることが好ましい。得られた弾性繊維は、単繊維毎に巻き取り、単一糸とする。また溶融樹脂口金吐出後の粘着性が高い段階で、数本の単繊維または全部を束ねた繊維束として巻き取ってもよい。得られた弾性繊維を通常の延伸設備で延伸を行うこともできる。このとき、延伸は、紡糸工程から連続に行ってもよく、また、一度巻き取った後に、不連続に行ってもよい。
【0020】
本発明の弾性繊維の繊度は特に限定されないが、通常、1〜4000dtexが利用できる。好ましくは2〜3000dtexであり、更に好ましくは5〜2000dtexである。ここでいう繊度とは、単孔ノズルより得られる繊維の繊度である。また、繊維束で使用する場合には単糸繊度と構成本数を掛けた値が繊維束の総繊度となる。
【0021】
本発明の弾性不織布は、スパンボンド法、メルトブロー法、トウ開繊法等の方法によって得られる。スパンボンド法、メルトブロー法を用いる場合には、紡糸された繊維を、直接、ウェブ化し、不織布に加工できる。また、トウ開繊法を用いる場合には、一旦トウを捕集した後、このトウを開繊して不織布に加工できる。トウを使用し、これら以外の方法によっても不織布に加工できる。例えば、トウを5〜60mmの範囲の長さに切断し、カード法、エアレイド法、抄紙法等の方法によってウェブ化し、不織布に加工できる。これらの方法によって得られた弾性不織布は、ポイントボンド法、汎用のスルーエア法、ポイントスルーエア法、ソニックボンド法、ウォータージェット法、ニードルパンチ法、レジンボンド法等の方法によって、不織布強度を更に高くすることができる。
【0022】
単独で使用する場合における、本発明の弾性不織布の目付は、特に限定されないが、5〜300g/mが好ましく、より好ましくは20〜200g/m、更に好ましくは50〜150g/mである。
【0023】
スパンボンド法は、溶融した原料樹脂を紡出し、延伸、開繊、捕集及び絡合または接着を行って不織布を形成する方法である。メルトブロー法は、溶融した原料樹脂を高温高圧空気と共に噴射し開繊配列して不織布を形成する方法である。トウ開繊法は、長繊維束(トウ)を延伸し、捲縮付与後に開繊及び拡幅を行って不織布を形成する方法である。なかでも、生産性、製造コスト、生産の容易性、風合の点から本発明ではスパンボンド法とメルトブロー法が好ましく、メルトブロー法が特に好ましい。
【0024】
本発明の効果を阻害しない範囲内で、本発明の弾性不織布には、本発明以外の繊維の混綿または混繊を行ってもよい。その混綿または混繊の比率は、弾性を阻害しない範囲内とし、全繊維量の40重量%以下にとどめることが好ましい。また、弾性及び耐l−メントール性能を阻害しない、熱可塑性エラストマー等の樹脂を用いて得られる繊維であれば、その比率は、全繊維量の70重量%以下であってもよい。
【0025】
本発明の構成からなる弾性不織布は、5重量%l−メントールのエタノール溶液中に、1時間浸漬させた後、弾性不織布の機械方向(MD)の破断強度が、浸漬させる前の機械方向(MD)の破断強度の80%以上になる。このように、優れた耐l−メントール性を有する性能が、製品化には必要である。
【0026】
本発明の弾性不織布は、その少なくとも片面に、該弾性不織布以外のフィルム、不織布、ウェブ、織物、編物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層して、利用できる。積層に使用される材料は、特に限定されないが、目的によって種々の材料が適宜選択され、利用できる。例えば、穴あけ加工不織布、メルトブロー不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、エラストマーフィルム、スパンボンドポイントボンド不織布、ポイントスルーエア不織布、汎用のスルーエア不織布等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記積層する場合における、本発明の弾性不織布の目付は、特に限定されないが、1〜300g/mが好ましく、より好ましくは3〜200g/m、更に好ましくは5〜150g/mである。また目的に応じて、積層した後に、熱処理加工しても構わない。一般に、熱処理は、使用される粘着性成分の軟化点と非粘着性成分の軟化点との間の温度で行われる。熱処理の方法としては、加熱エンボスロールによるポイントボンド法、加熱空気によるスルーエア法、赤外線ランプによる方法等の公知の方法が使用できる。また、ソニックボンド法、ウォータージェット法、ニードルパンチ法、レジンボンド法等の加工法を用いてもよい。
【0028】
本発明の弾性繊維、弾性不織布は、耐l−メントール性に優れることから、パップ剤に利用されることが最も適している。しかし、それ以外の繊維製品、例えば、手袋、テーブルクロス、玄関マットの裏材、家具の防滑材、食品搬送用下敷き布、カーペットの裏材、マスク、フェースマスク、靴カバー、マウスパッド、ハンガー、衣類、ヘッドレストカバー、椅子カバー、包装材、床カバー、ロープ、シフトカバー、ノブカバー、蒲団シーツ、ベッドシーツ、肘置シート、医療用テープ、包帯、花むしろ、ござ、医療用布、自動車用シート、ハウスラップ用シート、屋根下地材、接着剤等にも利用できる。なお、本発明の弾性不織布の用途はこれらに限定されるものではない。
【0029】
本発明のパップ剤は、弾性不織布の片側に、l−メントール及び粘着剤が付着された構造であり、他の成分としては、サリチル酸グリコール、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク等の鎮痛剤が含まれていてもよく、また、必要に応じてその他の薬効成分などが含まれてもよい。パップ剤に用いる場合、弾性不織布の目付は、5〜200g/mの範囲が利用でき、20〜150g/mが好ましく、50〜120g/mがより好ましい。l−メントールの付着量は、1〜20重量%の範囲が利用でき、2〜10重量%が好ましく、3〜8重量%がより好ましい。
【0030】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における測定結果は下記の方法で行った。
【0031】
(1)弾性繊維の伸長回復率(50%伸長時の伸長回復率)
長さ200mmの繊維試験片を作製する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で50%まで伸長させた後、同じ速度で戻し、弾性不織布に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で50%まで伸長させ、負荷が再び始まる時の伸びた長さを測定した(Lmm)。伸長回復率は下記式に従って求めた。
50%伸長時の伸長回復率(%)={(100※1−L)/100※1}×100
※1:チャック間の試験片の最初の長さ(mm)
【0032】
(2)弾性繊維の破断強度
長さ200mmの繊維試験片を、機械方向を長さ方向にして作製する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で伸長させ破断するまでの最大強度を1000dtex換算した値(N/1000dtex)を破断強度とした。
【0033】
(3)弾性不織布の伸長回復率(50%伸長時の伸長回復率)
幅25mm長さ200mmの不織布試験片を、不織布の機械方向を長さ方向にして作製する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で50%まで伸長させた後、同じ速度で戻し、弾性不織布に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で50%まで伸長させ、負荷が再び始まる時の伸びた長さをLmmとした。伸長回復率は下記式に従って求めた。
50%伸長時の伸長回復率(%)={(100※1−L)/100※1}×100
※1:チャック間の試験片の最初の長さ(mm)
【0034】
(4)弾性不織布の破断強度
幅25mm、長さ200mmの繊維試験片を、機械方向及び機械垂直方向のそれぞれについて作製する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で伸長させ破断するまでの最大強度(N/25mm)を破断強度とした。
【0035】
(5)耐l−メントール性評価法(破断強度維持率の測定)
耐l−メントール性の評価は、以下の方法で破断強度維持率を算出し、判断した。幅25mm、長さ200mmの試験片を2枚用意し、1枚は、そのままで破断強度を測定し、もう1枚は、5重量%l−メントールのエタノール溶液に1時間浸漬し、常温にて充分に乾燥し、その破断強度を測定した。この測定値を下記式にあてはめ、破断強度維持率を測定し、浸漬前の80%以上の破断強度を維持する場合には、耐l−メントール性に優れると判断した。なお、破断強度は、弾性不織布のMD、CDを測定したが、耐l−メントール性については、MDの破断強度維持率で判定した。
破断強度維持率(%)=(5重量%l−メントールのエタノール溶液に浸漬後の試験片の破断強度/未浸漬の試験片の破断強度)×100
【0036】
(6)ビニル結合含量
ビニル結合含量は、赤外分析法を用い、モレロ法により算出した。
【0037】
(7)スチレン含量
スチレン含量は、四塩化エチレンを溶媒に、100MHz、H−NMRスペクトルから算出した。
【0038】
(8)水添率
四塩化エチレンを溶媒に、100MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
【0039】
本発明の実施例、比較例において使用した材料は以下の通りである(なお、原料樹脂の詳細については、表1,表2参照)。
SEBS:(スチレン)−(エチレン−ブチレン)−(スチレン)ブロック共重合体
【0040】
実施例1
樹脂Iを原料樹脂として用いた。スクリュー(20mm径)、加熱体及びギアポンプを有する押出機、紡糸口金(孔径1.0mm、孔数30ホール)及び冷却装置を備えた紡糸機と、引取ロール(ゴデーロール)及び巻取機からなる引取装置を用いて溶融紡糸を行った。なお引取ロールと巻取機の間には油剤付着のためのキスロールを設置した。
押出機に樹脂Iを投入し、加熱体により樹脂Iを250℃で加熱溶融させ、紡糸口金から単孔当たり0.17g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維に冷却装置で冷却風をあて、単糸同士が癒着しないようにキスロールで油剤を付着し、2m/分の速度で巻取った。得られた弾性繊維の物性は前述の方法によって測定した。
その結果を表1に示す。得られた弾性繊維は、繊度が850dtexであり、優れた弾性と耐l−メントール性を有していた。
【0041】
実施例2
樹脂Iを原料樹脂として用いた。スクリュー(30mm径)、加熱体及びギアポンプを有する押出機、紡糸口金(孔径0.3mm、孔数501ホールが一列、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置及び空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、及び巻取機からなる不織布製造装置を用いてメルトブロー不織布の製造を行った。
押出機に樹脂Iを投入し、加熱体により樹脂Iを230℃で加熱溶融させ、ギアポンプにより紡糸口金から単孔当たり0.25g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲ−ジ圧)の圧縮空気によって、走行速度2m/分で走行しているポリエステル製ネットの捕集コンベアー上に吹き付けた。捕集コンベアーは、紡糸口金から25cmの距離に設置した。吹き付けた空気は捕集コンベアーの裏側に設けた吸引装置で除去した。捕集コンベアーで搬送された不織布を巻取機にてロール状に巻取った。得られた弾性不織布の物性は前述の方法によって測定した。
その結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、目付が60g/mであり、優れた弾性と耐l−メントール性を有していた。
【0042】
実施例2で得られた弾性不織布を用い、これにl−メントール成分を含む鎮痛剤と粘着成分を塗布して、パップ剤を製造した。このパップ剤を10枚用意し、モニター10人の膝に24時間貼り付け、状態を観察した。その結果、モニター全員に、過度の締付けによるかぶれ及び締め付け跡が残っていなかった。また締め付け不足によるパップ剤のズレや剥げもなかった。
【0043】
実施例3
樹脂Iを原料樹脂として用いた。スクリュー(40mm径)、加熱体及びギアポンプを有する押出機、紡糸口金(孔径0.4mm、120ホール)、エアーサッカー、帯電法開繊機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、ポイントボンド加工機及び巻取機からなる装置を用いてスパンボンド不織布の製造を行った。
樹脂Iを押出機に投入し、加熱体により樹脂Iを230℃で加熱溶融させ、ギアポンプで紡糸口金から単孔当たり0.57g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維をエアーサッカーに導入し直後に帯電法開繊機で開繊させ、捕集コンベアー上に捕集した。エアーサッカーの空気圧は、196kPaとした。捕集コンベアー上のウェブを上下ロール温度90℃に加熱したポイントボンド加工機(圧着面積率15%)に投入し、加工後の不織布を巻取機でロール状に巻取った。得られた弾性不織布の物性は前述の方法によって測定した。
その結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、目付が60g/mであり、優れた弾性と耐l−メントール性を有していた。
【0044】
実施例4
樹脂IIを原料樹脂として用いた以外は全て実施例1と同様にして弾性繊維を作製した。得られた弾性繊維の物性は前述の方法にて測定し、その結果を表1に示す。得られた弾性繊維は、繊度が850dtexであり、優れた弾性と耐l−メントール性を有していた。
【0045】
実施例5
樹脂IIを原料樹脂として用いた以外は全て実施例2と同様にして弾性不織布を作製した。得られた弾性不織布の物性は前述の方法にて測定し、その結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐l−メントール性を有していた。
【0046】
比較例1
樹脂IIIを原料樹脂として用いた以外は全て実施例1と同様にして弾性繊維を作製した。得られた弾性繊維の物性は前述の方法にて測定し、その結果を表1に示す。得られた弾性繊維は、繊度が850dtexであり、50%伸長回復率が低く、弾性に劣っており、かつ破断強度維持率が低いことから、耐l−メントール性にも劣っていた。
【0047】
比較例2
樹脂IVを原料樹脂として用いた以外は全て実施例2と同様にして弾性不織布を作製した。得られた弾性不織布の物性は前述の方法にて測定し、その結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、50%伸長回復率が低く、弾性に劣っており、破断強度維持率が低いことから、耐l−メントール性にも劣っていた。
【0048】
比較例3
樹脂Vを原料樹脂として用いた以外は全て実施例2と同様にして弾性不織布を作製した。得られた弾性不織布の物性は前述の方法にて測定し、その結果を表2に示す。得られた弾性不織布は、破断強度維持率が低いことから、耐l−メントール性に劣っていた。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に下記構成単位A、Bを含有し、かつブロック構造がA−B−Aまたは(A−B)Xで表され、Aの含有量が10〜50重量%であり、Bの含有量が90〜50重量%であり、Aの含有量とBの含有量の和が100重量%である水添ブロック共重合体を用いて得られる弾性繊維であり、該弾性繊維を5重量%のl−メントールエタノール溶液に1時間浸漬させた後の破断強度が、浸漬させる前の破断強度の80%以上である、弾性繊維。
A:芳香族ビニル化合物モノマー単位を主とする構成単位。
B:共役ジエン化合物モノマー単位を主とし、かつ共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量が50重量%以上、80重量%未満である、共役ジエンモノマー単位由来の二重結合残基の80%以上が水添された構成単位。
ここで、ブロック構造(A−B)Xで表される水添ブロック共重合体において、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤残基である。
【請求項2】
水添ブロック共重合体が、(スチレン)−(エチレン−ブチレン)−(スチレン)ブロック共重合体である請求項1記載の弾性繊維。
【請求項3】
分子中に下記構成単位A、Bを含有し、かつブロック構造がA−B−Aまたは(A−B)Xで表され、Aの含有量が10〜50重量%であり、Bの含有量が90〜50重量%であり、Aの含有量とBの含有量の和が100重量%である水添ブロック共重合体を用いて得られる弾性不織布であり、該不織布を5重量%のl−メントールエタノール溶液に1時間浸漬させた後の機械方向の破断強度が、浸漬させる前の破断強度の80%以上である、弾性不織布。
A:芳香族ビニル化合物モノマー単位を主とする構成単位。
B:共役ジエン化合物モノマー単位を主とし、かつ共役ジエン化合物モノマー単位中のビニル結合含量が50重量%以上、80重量%未満である、共役ジエン化合物モノマー単位由来の二重結合残基の80%以上が水添された構成単位。
ここで、ブロック構造(A−B)Xで表される水添ブロック共重合体において、nは2以上の整数であり、Xはカップリング剤残基である。
【請求項4】
水添ブロック共重合体が、(スチレン)−(エチレン−ブチレン)−(スチレン)ブロック共重合体である請求項3記載の弾性不織布。
【請求項5】
前記弾性不織布が、スパンボンド法、メルトブロー法またはトウ開繊法のいずれかの製法から作られる請求項3または請求項4記載の弾性不織布。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項記載の弾性不織布に、該弾性不織布以外の不織布、フィルム、ウェブ、織物、編物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層し一体化されてなる弾性不織布。
【請求項7】
請求項1または請求項2記載の弾性繊維を用いた繊維製品。
【請求項8】
請求項3〜6のいずれか1項記載の弾性不織布を用いた繊維製品。
【請求項9】
請求項3〜6のいずれか1項記載の弾性不織布の片側に、l−メントール及び粘着剤が付着されてなるパップ剤。

【公開番号】特開2006−83510(P2006−83510A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234521(P2005−234521)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(399120660)チッソポリプロ繊維株式会社 (41)
【Fターム(参考)】