説明

肉盛用溶接材及びこれを用いて硬装した掘削工具並びに摩耗防止用プレート

【課題】 硬化肉盛層中での分散性に優れ、かつ強固に焼結超硬合金粒子と結合金属が溶着されて、十分な耐摩耗性と靭性を付与することができる肉盛用溶接材及びこれを用いて硬装した掘削工具並びに摩耗防止用プレートを提供する。
【解決手段】 鋼管2と、鋼管2の内部に充填された焼結超硬合金粒子3とからなる肉盛用溶接材1において、焼結超硬合金粒子3は、CoあるいはCoとNiの結合相中にWCを分散配置させたものであるとともに、TiC、TaC、NbC、VC及びCrのうちの1種または2種以上を、焼結超硬合金粒子3の重量に対して0.4〜5.0Wt%含むものとされ、かつ焼結超硬合金粒子3の粒径が7〜80メッシュの範囲のものとされて、肉盛用溶接材1の重量に対する焼結超硬合金粒子3の重量比率が45〜70Wt%とされるとともに、鋼管の重量比率が、肉盛用溶接材1の重量に対して25〜50Wt%とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば岩石や地盤などの掘削に用いられる掘削工具を硬装するための肉盛用溶接材及びこれを用いて硬装した掘削工具並びに摩耗防止用プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば岩石や地盤などを掘削するための掘削工具には、その先端側に例えば炭化タングステンを焼結して形成された硬質刃体が植設され、特に硬質刃体近傍の工具本体が掘削に伴って摩耗することを防止するため、この硬質刃体近傍に、例えばマルテンサイト系溶接材や重量比率で30Wt%のクロム(Cr)を含む鉄系溶接材によって硬化肉盛層を形成して掘削工具の硬装化を図ったものがある。
【0003】
しかしながら、マルテンサイト系溶接材や重量比率で30Wt%のクロム(Cr)を含む鉄系溶接材によって形成した硬化肉盛層は、炭化タングステンを焼結した硬質刃体よりもその硬度が小さく、掘削工具の硬質刃体近傍の摩耗を十分に抑制するには至っていなかった。これに対して、硬化肉盛層を形成するための肉盛用溶接材には、例えば軟質の鉄系金属からなる鋼管の内部に、炭化タングステン(WC)または炭化タングステンと一炭化二タングステン(WC)の共晶を例えばコバルト(Co)などの結合相中に結合した焼結超硬合金粒子を充填したものが存在する(例えば、特許文献1参照)。このような、炭化タングステンを含む焼結超硬合金粒子を備えた肉盛用溶接材を用いて、例えばガス溶接や電気溶接などにより掘削工具の硬質刃体近傍に肉盛溶接した場合には、鋼管の結合金属中に焼結超硬合金粒子が分散されて、非常に大きな硬度を有する硬化肉盛層が形成されるため、掘削工具の耐摩耗性を向上させることが可能とされる。
【特許文献1】特開平6−269987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の肉盛用溶接材及びこれを用いて硬装した掘削工具においては、炭化タングステンを備えた焼結超硬合金粒子が、非常に大きな硬度を有する反面、逆に靭性が低下してしまい、特に衝撃力を付加して掘削を行なうような掘削工具においては、硬化肉盛層中の焼結超硬合金粒子が衝撃に伴い先行して破壊され、硬化肉盛層に欠損が生じ、その結果として、掘削工具の寿命を満足するものにし得ない場合があるという問題があった。
【0005】
また、溶接時に、焼結超硬合金粒子と鋼管が溶融した結合金属の境界において、その反応が十分に進行しない状態で硬化し、硬化肉盛層が形成されてしまう場合があり、このような場合には、焼結超硬合金粒子と結合金属とが強固に溶着せず、掘削に伴って焼結超硬合金粒子が硬化肉盛層から脱落しやすくなってしまうという問題もあった。
【0006】
この一方で、特開平10−258390号公報に開示されているような、焼結超硬合金粒子を、結合相の重量比率を2.0〜5.0Wt%とするとともに、相対密度が98%未満となるポーラスな構成とした肉盛用溶接材もある。この肉盛用溶接材においては、焼結超硬合金粒子にその硬度を維持しつつ靭性を付与し、溶接時には、結合金属を焼結超硬合金粒子のポーラスな部分に侵入させることで、焼結超硬合金粒子と結合金属を強固に一体として、焼結超硬合金粒子が掘削に伴い硬化肉盛層から脱落することがないものとされる。
【0007】
しかしながら、特開平10−258390号公報に開示されているような肉盛用溶接材を用いた場合においても、焼結超硬合金粒子中に侵入した結合金属が、溶接時の熱と、冷却時の体積収縮の影響によって焼結超硬合金粒子の硬さの低下を招くことがあり、このような場合には、焼結超硬合金粒子の破壊が生じやすくなって、硬化肉盛層の欠損が発生してしまうという問題があった。
【0008】
また、一般に、溶接時には、肉盛用溶接材に熱を加え肉盛用溶接材の各成分を溶融させることとなるが、これとともに空気中から多量の酸素が取り込まれる。この硬化肉盛層に取り込まれた酸素のうち、一部の酸素は肉盛用溶接材の成分と化合する一方、残りの酸素は活性化された酸素として硬化肉盛層にポアとして残存される。このため、上記の肉盛用溶接材を用いて形成した硬化肉盛層には、溶接時に取り込まれて残存するポアに加えて、ポーラスな構成とされた焼結超硬合金粒子のポアに、溶接時に取り込まれた酸素の影響などによって結合金属が侵入されず、これらの残存したポアで硬化肉盛層が多孔質化されてしまう場合がある。このような場合には、結合金属による焼結超硬合金粒子の保持力が弱まって硬化肉盛層からやはり焼結超硬合金粒子の脱落が生じ、この硬化肉盛層で硬装した掘削工具の寿命が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑み、硬化肉盛層中での分散性に優れ、かつ耐摩耗性と靭性に優れた焼結超硬合金粒子を備え、この焼結超硬合金粒子と結合金属が強固に溶着された硬化肉盛層を形成可能な肉盛用溶接材及びこれを用いて硬装した掘削工具並びに摩耗防止用プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
本発明の肉盛用溶接材は、鋼管と、鋼管の内部に充填された焼結超硬合金粒子とからなる肉盛用溶接材において、前記焼結超硬合金粒子は、コバルトあるいはコバルトとニッケルの結合相中に炭化タングステンを分散配置させたものであるとともに、炭化チタン、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化バナジウム及びクロムのうちの1種または2種以上を、前記焼結超硬合金粒子の重量に対して0.4〜5.0Wt%含むものとされ、かつ該焼結超硬合金粒子の粒径が7メッシュ〜80メッシュの範囲のものとされて、前記肉盛用溶接材の重量に対する前記焼結超硬合金粒子の重量比率が45〜70Wt%とされるとともに、前記鋼管の重量比率が、前記肉盛用溶接材の重量に対して25〜50Wt%とされていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の肉盛用溶接材において、前記焼結超硬合金粒子は、フェロマンガン及びフェロシリコンの1種または2種を、前記肉盛用溶接材の重量に対する重量比率で0.5〜5.0Wt%含むことが望ましい。
【0013】
さらに、本発明の肉盛用溶接材において、前記焼結超硬合金粒子は、その硬度がHRAで86〜95とされ、前記結合相の重量比率が2.0〜20.0Wt%とされていることが望ましい。
【0014】
また、本発明の肉盛用溶接材において、前記焼結超硬合金粒子は、63メッシュ〜80メッシュの範囲に留まる粒径を備えたものの重量比率が、少なくとも80Wt%以上であることがより望ましい。
【0015】
さらに、本発明の肉盛用溶接材において、前記鋼管の内部には、前記焼結超硬合金粒子とともに珪酸ソーダが充填され、該珪酸ソーダの前記肉盛用溶接材の重量に対する重量比率が、0.5〜3.0Wt%とされていることがさらに望ましい。
【0016】
本発明の掘削工具は、前記硬質刃体を除く掘削工具の外面の少なくとも一部に、上記の肉盛用溶接材が肉盛溶接されて硬装されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の摩耗防止用プレートは、硬質刃体を除く掘削工具の外面の少なくとも一部に固着して前記掘削工具を硬装するための摩耗防止用プレートであって、上記の肉盛用溶接材が肉盛溶接されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の肉盛用溶接材によれば、鋼管の内部に充填される焼結超硬合金粒子に、コバルトあるいはコバルトとニッケルの結合相中に炭化タングステンを分散配置させるとともに、炭化チタン、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化バナジウム及びクロムのうちの1種または2種以上を、前記焼結超硬合金粒子の重量に対して0.4〜5.0Wt%含むことによって、焼結超硬合金粒子の硬度を高く維持しつつその靭性を好適な状態にすることができ、この肉盛用溶接材を用いて形成した硬化肉盛層に、衝撃などが負荷された場合においても、焼結超硬合金粒子が破壊することを防止でき、硬化肉盛層の耐摩耗性を向上させることが可能となる。前記炭化物(炭化チタン、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化バナジウム)及びクロムのうちの1種または2種以上の含有量を0.4Wt%よりも小さくすると焼結超硬合金粒子の硬度が十分でなくなり耐摩耗性が低下し、前記炭化物及びクロムのうちの1種または2種以上の含有量を5.0Wt%よりも大きくすると、焼結超硬合金粒子の硬度が大きくなって耐摩耗性が向上するものの靭性が低下して焼結超硬合金粒子の破壊が生じやすくなる。なお、このように耐摩耗性を維持しつつ好適な靭性を得るには、前記炭化物及びクロムのうちの1種または2種以上の含有量を0.4〜1.0Wt%とすることがより好ましい。
【0019】
また、焼結超硬合金粒子を、7メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備えるものとすることによって、粗粒と細粒を共存させることができ、さらに、充填率を高くして焼結超硬合金粒子を鋼管の内部に充填することが可能となるため、溶接時に、鋼管が溶融した結合金属中(硬化肉盛層中)に焼結超硬合金粒子を均一に分散させることが可能となる。
【0020】
特に、63メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備えた焼結超硬合金粒子を、全体の焼結超硬合金粒子に対する重量比率で80Wt%以上とすることによって、硬化肉盛層中の焼結超硬合金粒子をさらに均一に分散させることが可能となる。
【0021】
さらに、焼結超硬合金粒子に、フェロマンガン及びフェロシリコンの1種または2種を、肉盛用溶接材の重量に対する重量比率で0.5〜5.0Wt%含ませることによって、溶接時に発生する活性化された酸素を化合しつつ除去して硬化肉盛層中に化合されずに残存する活性化された酸素量を減らすことが可能となる。これにより、焼結超硬合金粒子と結合金属との溶着強度を高く安定した状態にすることができ、衝撃などが負荷された際に、焼結超硬合金粒子が硬化肉盛層から脱落することを防止できる。なお、フェロマンガン及びフェロシリコンの1種または2種の肉盛用溶接材の重量に対する重量比率を、0.5〜2.5Wt%とすることによって、上記の効果をより確実に付与することが可能とされる。
【0022】
また、焼結超硬合金粒子の結合相の重量比率を2.0〜20.0Wt%とすることによって硬度をHRAで86〜95とすることができ、耐摩耗性を維持することができるとともに靭性を付与することが可能となる。なお、焼結超硬合金粒子の結合相の重量比率を2.0Wt%未満とした場合には、耐摩耗性が向上するものの衝撃などに耐える十分な靭性を得ることができず、逆に焼結超硬合金粒子の結合相の重量比率を20.0Wt%より大きくした場合には、耐摩耗性が低下することとなる。
【0023】
さらに、鋼管の内部に、焼結超硬合金粒子とともに充填される珪酸ソーダを、肉盛用溶接材の重量に対する重量比率で0.5〜3.0Wt%とすることによって、溶接時に、鋼管とともに珪酸ソーダが溶融されて、これにより、焼結超硬合金粒子同士が適度に粘着されることとなり、加熱に伴って焼結超硬合金粒子が鋼管内部から流れ落ちることを防止できる。また、この珪酸ソーダは、硬化肉盛層を形成した際に、その表面を被覆するように溶接されるため、硬化後の硬化肉盛層の酸化を防止することが可能となる。よって、安定した硬化肉盛層を形成することが可能とされる。
【0024】
本発明の掘削工具によれば、上記の効果が付与された硬化肉盛層で硬装されることによって、耐摩耗性に優れた掘削工具とすることができ、被削物を好適に掘削可能な掘削工具とすることが可能となる。
【0025】
また、本発明の摩耗防止用プレートによれば、上記の効果が付与された硬化肉盛層が形成された摩耗防止用プレートを掘削工具の外面に固着することによって、耐摩耗性に優れた掘削工具とすることができ、被削物を好適に掘削可能な掘削工具とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1から図3を参照し、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、例えば岩石や地盤などを掘削するための掘削工具に、肉盛溶接を施し硬化肉盛層を形成して、掘削工具の硬装化を図るための肉盛用溶接材に関するものである。
【0027】
本実施形態の肉盛用溶接材1は、図1から図2に示すように、円柱棒状に形成され、軟質の鉄系金属からなる鋼管2と、造粒により形成され、鋼管2の内部に充填された焼結超硬合金粒子3とから構成されている。また、本実施形態の肉盛用溶接材1の鋼管2の内部には、焼結超硬合金粒子3とともに、珪酸ソーダ(NaO・nSiO・xHO)が肉盛用溶接材1の重量に対する重量比率で0.5〜3.0Wt%の範囲内となるように充填されている。さらに、鋼管2は、肉盛用溶接材1の重量に対する重量比率が25〜50Wt%の範囲となるように形成されている。
【0028】
焼結超硬合金粒子3は、Co(コバルト)あるいはCoとNi(ニッケル)の結合相中に、WC(炭化タングステン)を分散配置させて形成されている。また、この焼結超硬合金粒子3は、その硬度がHRA(ロックウェル硬さ)で86〜95とされており、焼結超硬合金粒子3全体の重量に対する結合相の重量比率が2.0〜20.0Wt%の範囲とされている。さらに、このとき、この結合相中には、WCとともに、TiC(炭化チタン)、TaC(炭化タンタル)、NbC(炭化ニオブ)、VC(炭化バナジウム)及びCr(クロム)のうちの1種または2種以上が、焼結超硬合金粒子3の重量に対して0.4〜5.0Wt%の範囲となるように含有されている。また、焼結超硬合金粒子3には、FeMn(フェロマンガン)及びFeSi(フェロシリコン)の1種または2種が、肉盛用溶接材1の重量に対する重量比率で0.5〜5.0Wt%の範囲となるように含有されている。なお、本発明においては、結合相中に、TiC、TaC、NbC、VC及びCrのうちの2種以上を含有させた場合には、2種以上を合わせた重量比率が、焼結超硬合金粒子の重量に対して0.4〜5.0Wt%とされる。また、FeMn及びFeSiをともに含有させた場合においても、同様に、FeMnとFeSiを合わせた重量比率が、肉盛用溶接材1の重量に対して0.5〜5.0Wt%とされる。
【0029】
さらに、鋼管2の内部には、肉盛用溶接材1の重量に対して45〜70Wt%の範囲内となるように上記の焼結超硬合金粒子3が充填されるとともに、この充填された焼結超硬合金粒子3は、7メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径のものとされている。また、このとき、焼結超硬合金粒子3は、63メッシュ〜80メッシュの範囲に留まるものの割合が、全焼結超硬合金粒子3に対して重量比率で80Wt%以上となるように充填されている。
【0030】
このように構成された肉盛用溶接材1は、例えばガス溶接や電気溶接によって、例えば図3に示すように、掘削工具10の、その先端側に植設され、炭化タングステンを焼結して形成した硬質刃体11近傍の工具本体10aの外面10bに、硬化肉盛層12を形成し工具本体10aを硬装するために用いられる。この硬化肉盛層12は、加熱によって、鋼管2が溶融した結合金属2a中に焼結超硬合金粒子3が分散され、これが冷却とともに硬化することで形成される。なお、本実施形態の肉盛用溶接材1は、工具本体10aの外面10bに直接肉盛溶接を施して掘削工具10を硬装するために用いられることに限らず、後述の摩耗防止用プレートのように、鋼製のプレートに肉盛溶接を施して硬化肉盛層12を形成し、このプレートを固着して掘削工具10を硬装するような場合に用いられてもよいものである。
【0031】
ここで、従来の肉盛用溶接材を用いて掘削工具の硬装を施した場合には、炭化タングステンを備えた焼結超硬合金粒子が、非常に大きな硬度を有する反面、逆に靭性が低下してしまい、特に衝撃力を付加して掘削を行なうような掘削工具においては、硬化肉盛層中の焼結超硬合金粒子が衝撃に伴い先行して破壊され、硬化肉盛層に欠損が生じ、掘削工具の耐摩耗性を満足するものにし得ないという問題があった。また、結合金属と焼結超硬合金粒子との溶着強度が不十分となり、焼結超硬合金粒子が硬化肉盛層から脱落してしまうという問題があった。
【0032】
これに対して、本実施形態の肉盛用溶接材1を用いた場合には、鋼管2の内部に充填される焼結超硬合金粒子3に、コバルトあるいはコバルトとニッケルの結合相中に炭化タングステンを分散配置させるとともに、炭化チタン、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化バナジウム及びクロムのうちの1種または2種以上が、焼結超硬合金粒子3の重量に対して0.4〜5.0Wt%含有されているため、焼結超硬合金粒子3の硬度を高く維持した状態で、その靭性を向上させることができ、硬化肉盛層12中の焼結超硬合金粒子3に衝撃などが負荷された場合においても、その靭性の向上によって破壊されることがなく、硬化肉盛層12の欠損が生じることを防止することができる。
【0033】
また、本実施形態では、焼結超硬合金粒子3を、7メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備えるものとし、粗粒と細粒が好適に共存されるようにすることで、鋼管2に、焼結超硬合金粒子3を高充填率で充填することができ、溶接時には、鋼管2が溶融した結合金属2a中(硬化肉盛層12中)に焼結超硬合金粒子3を均一に分散させることが可能とされる。
【0034】
このとき、63メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備える焼結超硬合金粒子3の割合が、全焼結超硬合金粒子3の重量に対する重量比率で80Wt%以上とされていることにより、硬化肉盛層12中の焼結超硬合金粒子3の分散状態をより均一にすることが可能とされる。
【0035】
さらに、焼結超硬合金粒子3に、フェロマンガン及びフェロシリコンの1種または2種が、肉盛用溶接材1の重量に対する重量比率で0.5〜5.0Wt%の割合で含有されることにより、溶接時に発生する活性化された酸素を硬化肉盛層12中から化合しつつ除去して、硬化肉盛層12中に、化合されずに残存する活性化された酸素量を小さく抑えることが可能とされる。このため、この肉盛用溶接材1で形成される硬化肉盛層12の焼結超硬合金粒子3と結合金属2aとの溶着強度を高くすることができ、衝撃が負荷されて焼結超硬合金粒子3が硬化肉盛層12から脱落することを防止できる。
【0036】
また、焼結超硬合金粒子3の結合相の重量比率を2.0〜20.0Wt%とすることによって、焼結超硬合金粒子3の硬度をHRAで86〜95とすることができ、十分な耐摩耗性と靭性を得ることが可能とされる。
【0037】
さらに、鋼管2の内部に、焼結超硬合金粒子3とともに珪酸ソーダが充填され、この珪酸ソーダが肉盛用溶接材1の重量に対して重量比率で0.5〜3.0Wt%とされていることによって、溶接時に、鋼管2とともに珪酸ソーダを溶融させて、これにより、焼結超硬合金粒子3同士を適度に粘着する効果を得ることができ、加熱に伴って焼結超硬合金粒子3が鋼管2内部から流れ落ちることなく溶接作業を行なうことが可能となる。また、この珪酸ソーダは、硬化肉盛層12の表面を被覆するように溶接されることになるため、硬化肉盛層12の酸化を防止する効果をも付与することが可能となり、硬化肉盛層12の安定性を向上させることが可能とされる。
【0038】
したがって、上記の肉盛用溶接材1によれば、硬質で、焼結超硬合金粒子3が脱落することのない靭性に優れた硬化肉盛層12を形成することができるため、この硬化肉盛層12を形成して硬装を施した掘削工具10を確実に耐摩耗性に優れた掘削工具10とすることが可能とされる。
【0039】
なお、本発明の肉盛用溶接材は、上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、肉盛用溶接材1が鋼管2とこれに充填される造粒により形成された焼結超硬合金粒子3とから構成されるものとしたが、焼結超硬合金粒子3は、鋼管2の内部に挿入可能な棒状の焼結体や半焼結体として形成されてもよいものである。
【0040】
ついで、図4(a)から図4(c)を参照し、本発明に係る掘削工具の第1実施形態について説明する。本実施形態の掘削工具は、例えばシールドマシン等の掘削機械の先端に配置された回転円盤の先端面に着脱可能に取り付けられて、地盤の掘削に供されるシールドカッタである。ここで、図4(a)は、本実施形態のシールドカッタの正面図を示しており、図4(b)は、上面図を示し、図4(c)は、左側面図を示している。
【0041】
このシールドカッタ20は、図4(a)から図4(c)に示すように、超硬合金等の硬質刃体21と、硬質刃体21を保持するシャンク部(工具本体)22とから構成されている。シャンク部22は、上面22a側からの対向視で略長方矩形状を呈するブロック状の鋼材とされている。また、シャンク部22の上面22aは、長手方向の先端20aから後端20bに向かうに従い下面22b側に傾斜するように形成され、先端面22cは、上面22aから下面22bに向かうに従い後端20b側に後退するように形成されている。さらに、このシャン部22には、先端20a側と上面22a側と両側面22d側にそれぞれ開口するように先端20a側の上面22a側が切り欠かれ、先端面22cに沿って延設された硬質刃体取付座23が形成されている。
【0042】
また、シャンク部22には、上面22a及び両側面22dの硬質刃体取付座23の近傍に位置する部分に、前述の肉盛用溶接材1を用いて溶接した硬化肉盛層12が形成されている。ここで、両側面22dのそれぞれに形成された硬化肉盛層12は、先端20a側から上面22aまで硬質刃体取付座23を囲むように帯状で形成され、シャンク部22の幅方向に延設された硬質刃体取付座23に平行するように帯状で形成された上面22a側の硬化肉盛層12と連続するように形成されている。さらに、先端面22cにも、同じく前述の肉盛用溶接材1を用いて溶接した硬化肉盛層12が形成されている。この先端面22cの硬化肉盛層12は、3つのX字状に形成された硬化肉盛層12が隣り合う硬化肉盛層12の端部同士を繋げて連続するように形成されている。
【0043】
一方、硬質刃体21は、略板状に形成されており、硬質刃体取付座23にろう付されてシャンク部22と一体とされている。また、硬質刃体21は、硬質刃体取付座23に取り付けられた状態で、その上面21aがシャンク部22の傾斜する上面22aと同一平面を形成するように、かつ硬質刃体21の先端面21bがシャンク部22の先端面22cと同一平面を形成するように形成され、この硬質刃体21の上面21aと先端面21bが鋭角に交わる部分が、シールドカッタ20の先端20a側に突出するように形成されている。
【0044】
上記の構成からなるシールドカッタ20は、掘削機械の先端に配置された回転円盤の先端面に、例えばボルトでシャンク部22を締結し、硬質刃体21の先端部分を掘削機械の外方に突出させて取り付けられる。そして、回転円盤とともにこのシールドカッタ20が回転しつつ地盤に切り込まれ、地盤の掘削に供されることとなる。このとき、掘削屑が激しくシャンク部22、特に硬質刃体取付座23近傍部分に接触することとなる。これに対して、本実施形態においては、この掘削屑が激しく接触する硬質刃体取付座23近傍のシャンク部22の上面22aや側面22d、先端面22cに硬化肉盛層12が形成され、かつこの硬化肉盛層12が、前述の肉盛用溶接材1で形成されているため、耐摩耗性に優れたものとされ、この硬装を施した部分が掘削に伴って摩耗されにくいものとされる。
【0045】
したがって、上記のシールドカッタ20によれば、前述の肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層12が形成されることで、従来の硬化肉盛層を形成して硬装を施したシールドカッタと比較し、掘削に伴い激しく接触する掘削屑に対する耐摩耗性に優れたものとされ、シールドカッタ20の耐久性を向上させつつ好適に掘削を行なうことが可能なものとされる。
【0046】
なお、本発明の掘削工具は、上記の掘削工具の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0047】
ついで、図5(a)から図5(b)を参照し、本発明に係る掘削工具の第2実施形態について説明する。本実施形態の掘削工具は、例えばシールドマシン等の掘削機械の先端に配置された回転円盤の先端面に回転可能に装着されて、地盤の掘削に供されるローラーカッタである。ここで、図5(a)は、本実施形態のローラーカッタの断面図を示しており、図5(b)は、後述する切刃部32を示した側面図である。
【0048】
このローラーカッタ30は、図5(a)から図5(b)に示すように、略円筒状のカッタ本体(工具本体)31と、カッタ本体31の外周面31aに植設された超硬合金等の硬質材料からなる硬質刃体35と、カッタ本体31の中心部に挿着された軸部材33と、カッタ本体31と軸部材33との間に介装されて、カッタ本体31を回転自在に支持する軸受34とが主な構成要素とされている。
【0049】
カッタ本体31には、外周面31aから径方向外側に向けて突出し周方向に無端状に複数延設された切刃部32が設けられており、この切刃部32は、図5(a)に示す軸線に直交する方向の断面視で、頂部32aを径方向外側に向けた山形形状を呈するものとされている。また、この切刃部32には、頂部32aから径方向内側に向けて凹む複数の硬質刃体取付孔32bが形成されており、これらの硬質刃体取付孔32bは、周方向に所定の間隔をもって並設されている。このように形成された硬質刃体取付孔32bには、例えば超硬合金などで形成された硬質刃体35がカッタ本体31と一体となるように焼き嵌めや圧入などの手段を用いて装着され、硬質刃体35の硬質刃体取付孔32bから径方向外側に突出した部分が、切刃部32の外面と連続する面をなすように形成されて、硬質刃体取付孔32bが形成されていない部分の切刃部32の断面山形形状と、硬質刃体取付孔32bが設けられ硬質刃体35が装着された部分の断面形状が同一形状を呈するものとされている。
【0050】
さらに、本実施形態においては、切刃部32の傾斜する外面及び、切刃部32の近傍のカッタ本体31の径方向外側を向く外面31aに、前述の肉盛用溶接材1を用いて肉盛溶接した硬化肉盛層12がそれぞれ形成されている。
【0051】
上記のように構成されたローラーカッタ30は、掘削機械の先端に配置された回転円盤の先端面に、例えばボルトで固定され、切刃部32の硬質刃体35が配設された頂部32a側を掘削機械の外方に突出させて取り付けられる。そして、回転円盤が回転するとともに、カッタ本体31が、周方向に並設された複数の硬質刃体35が順次掘削機械の外方に配されるように回転してこれが地盤に切り込まれて、地盤の掘削が行なわれる。このとき、掘削屑が激しくカッタ本体31に接触することとなり、これに対して、本実施形態においては、この掘削屑が激しく接触する切刃部32の外面やカッタ本体31の外面31aに硬化肉盛層12が形成され、かつこの硬化肉盛層12が前述の肉盛用溶接材1を用いて形成されたものであるため、耐摩耗性に優れ、この硬装を施した部分が掘削に伴って摩耗されることのないものとされる。
【0052】
したがって、上記のローラーカッタ30によれば、前述の肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層12が形成されることで、従来の硬化肉盛層を施して硬装したローラーカッタと比較し、掘削に伴い激しく接触する掘削屑に対する耐摩耗性に優れたものとすることができるため、カッタ本体31の耐久性を向上させて好適に掘削を行なうことが可能とされる。
【0053】
なお、本発明の掘削工具は、上記の掘削工具の第2実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0054】
ついで、図6(a)から図6(c)を参照し、本発明に係る掘削工具の第3実施形態について説明する。本実施形態の掘削工具は、アースオーガーのスクリュー端部に設けられたカッタホルダに装着されて、地盤の掘削に供されるアースオーガー用カッタである。ここで、図6(a)は、本実施形態のアースオーガー用カッタの上面図を示しており、図6(b)は、側面図を示し、図6(c)は、下面図を示している。
【0055】
このアースオーガー用カッタ40は、図6(a)から図6(c)に示すように、超硬合金等の硬質の硬質刃体41と、硬質刃体41を保持するシャンク部(工具本体)42とから構成されている。シャンク部42は、略矩形棒状を呈するブロック状の鋼材とされている。また、シャンク部42の先端42a側の上面42b及び下面42cは、それぞれ、長手方向の後端42d側から先端42aに向かうに従い、高さ方向略中央に位置し長手方向に延びる中心軸線O1側に傾斜するように形成されている。さらに、このシャン部42には、先端42a側の上面42bが一段下面42c側に窪むように切り欠かれた硬質刃体取付座43が形成されている。
【0056】
また、シャンク部42には、硬質刃体取付座43の近傍に位置する先端42a側の、上面42b、下面42c及び両側面42eに、前述の肉盛用溶接材1を用いて溶接した硬化肉盛層12が一体に繋がるように形成されている。
【0057】
一方、硬質刃体41は、略板状に形成されており、前述の硬質刃体取付座43にろう付されてシャンク部42と一体とされている。また、硬質刃体41は、硬質刃体取付座43に取り付けられた状態で、中心軸線O1方向外側に配された先端41a部分が、硬質刃体41の上面41a側からの平面視で山形形状を呈するように形成されており、この先端41aが中心軸線O1上に位置されるとともに、シャンク部42の先端42aよりも中心軸線O1方向外側に突出されている。
【0058】
上記の構成からなるアースオーガー用カッタ40は、図示せぬアースオーガーのスクリュー端部に設けられた取付溝に、例えば略コ字状のブロック状を呈したカッタホルダが溶接され、この開口部分にアースオーガー用カッタ40のシャンク部42が挿入されてアースオーガーに保持される。このとき、例えばボルトでカッタホルダにシャンク部42が締結されてアースオーガー用カッタ40と一体化され、この状態で、アースオーガー用カッタ40は、その硬質刃体41の先端41a部分が掘削機械の外方に突出されて一体とされる。そして、アースオーガーがその軸線回りに回転されつつ軸線方向に前進することで硬質刃体41が地盤に切り込まれ、地盤の掘削に供されることとなる。この地盤を掘削することにより、掘削屑が激しくシャンク部42、特に硬質刃体取付座43近傍部分に接触することとなる。これに対して、本実施形態においては、この掘削屑が激しく接触する硬質刃体取付座43近傍のシャンク部42の上面42bや下面42c、側面42eに硬化肉盛層12が形成され、かつこの硬化肉盛層12が、前述の肉盛用溶接材1で形成されているため、耐摩耗性に優れるものとされ、この硬装を施したシャンク部42が掘削に伴って摩耗されることのないものとされる。
【0059】
したがって、上記のアースオーガー用カッタ40によれば、前述の肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層12が形成されているため、従来の肉盛を施して硬装したアースオーガー用カッタと比較し、掘削に伴い激しく接触する掘削屑に対する耐摩耗性に優れ、アースオーガー用カッタ40の耐久性を向上させ、かつ好適に掘削を行なうことが可能とされる。
【0060】
なお、本発明の掘削工具は、上記の掘削工具の第3実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0061】
ついで、図7(a)から図7(b)を参照し、本発明に係る掘削工具の第4実施形態について説明する。本実施形態の掘削工具は、リング状に形成された工具本体の内周側に硬質刃体を備えたインナーリングである。ここで、図7(a)は、本実施形態のインナーリングの正面図を示しており、図7(b)は、図7(a)の切刃部近傍の内周側を拡大した図である。
【0062】
このインナーリング50は、図7(a)から図7(b)に示すように、リング状に形成された工具本体51の内周側に、周方向に一定の間隔をもって複数の硬質刃体52が並設されており、この硬質刃体52は、超硬合金等で形成されてその先端52a側が径方向内側に若干突出するように設置されている。また、工具本体51は、隣り合う硬質刃体52の間の周方向略中央の内周縁51aが、内周縁51aから外周縁51b側に向けて断面円弧形状を呈して凹むように形成されている。
【0063】
一方、工具本体51の隣り合う硬質刃体52の間に位置する内周縁51aには、前述の肉盛用溶接材1を用いて溶接した硬化肉盛層12が形成されている。
【0064】
このように形成されたインナーリング50は、軸線O2回りに回転しつつ軸線O2方向を維持して地盤に送り込まれ、径方向内側を向く硬質刃体52により地盤を掘削してゆく。この地盤の掘削に供された際には、工具本体51、特に隣り合う硬質刃体52の間に位置する内周縁51a側に、掘削屑が激しく接触することとなる。これに対して、本実施形態においては、この掘削屑が激しく接触する工具本体51の内周縁51aに硬化肉盛層12が形成され、かつこの硬化肉盛層12が、前述の肉盛用溶接材1で形成されているため耐摩耗性に優れ、この硬装を施した工具本体51が掘削に伴って摩耗されることのないものとされる。
【0065】
したがって、上記のインナーリング50によれば、前述の肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層12が形成されているため、従来の肉盛を施して硬装したインナーリングと比較し、掘削に伴い激しく接触する掘削屑に対する耐摩耗性に優れ、インナーリング50の耐久性を向上させることが可能とされる。
【0066】
なお、本発明の掘削工具は、上記の掘削工具の第4実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0067】
ついで、図8(a)から図8(b)を参照し、本発明に係る掘削工具の第5実施形態について説明する。本実施形態の掘削工具は、リング状に形成された工具本体の外周側に硬質刃体を備えたアウターリングである。ここで、図8(a)は、本実施形態のアウターリングの正面図を示しており、図8(b)は、図8(a)の硬質刃体近傍の外周側を拡大した図である。
【0068】
このアウターリング60は、図8(a)から図8(b)に示すように、リング状に形成された工具本体61の外周側に、周方向に一定の間隔をもって複数の硬質刃体62が並設されており、この硬質刃体62は、超硬合金等で形成されてその先端62a側が径方向外側に若干突出するように設置されている。また、工具本体61は、隣り合う硬質刃体62の間の周方向略中央の外周縁61aが、外周縁61aから内周縁61b側に向けて断面円弧形状を呈して凹むように形成されている。
【0069】
一方、工具本体61の隣り合う硬質刃体62の間に位置する外周縁61a及び、軸線O3に直交する工具本体61の側面61cの外周縁61a側には、前述の肉盛用溶接材1を用いて溶接した硬化肉盛層12が形成されている。
【0070】
このように形成されたアウターリング60は、軸線O3回りに回転しつつ軸線O3方向を維持して地盤に送り込まれ、径方向外側を向く硬質刃体62により地盤を掘削してゆく。この地盤の掘削に供された際には、工具本体61、特に隣り合う硬質刃体62の間に位置する外周縁61aや、外周縁61a側の側面61cに、掘削屑が激しく接触することとなる。これに対して、本実施形態においては、この掘削屑が激しく接触する工具本体61の内周縁61a側に硬化肉盛層12が形成され、かつこの硬化肉盛層12が、前述の肉盛用溶接材1で形成されているため耐摩耗性に優れ、この硬装を施した工具本体61が掘削に伴って摩耗されることのないものとされる。
【0071】
したがって、上記のアウターリング60によれば、前述の肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層12が形成されているため、従来の肉盛を施して硬装したアウターリングと比較し、掘削に伴い激しく接触する掘削屑に対する耐摩耗性に優れ、アウターリング60の耐久性を向上させることが可能とされる。
【0072】
なお、本発明の掘削工具は、上記の掘削工具の第5実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0073】
ついで、図9(a)から図9(b)を参照し、本発明に係る摩耗防止用プレートの一実施形態について説明する。本実施形態の摩耗防止用プレートは、硬質刃体を除く掘削工具の工具本体の外面の少なくとも一部に固着して掘削工具を硬装するためのものであり、前述の肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層が形成されたものである。ここで、図9(a)は、摩耗防止用プレートの正面図を示し、図9(b)は、上面図を示している。
【0074】
本実施形態の摩耗防止用プレート70は、図9(a)から図9(b)に示すように、長方矩形板状に形成された鋼製のプレート本体71と、このプレート本体71の上面に形成された硬化肉盛層12とから構成されている。この硬化肉盛層12は、前述の肉盛用溶接材1を用いて形成されたものであり、プレート本体71の上面全面に設けられている。
【0075】
このように、前述の肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層12が形成されることにより、摩耗防止用プレート70は、耐摩耗性に優れた状態で硬装されることになる。そして、このように構成された摩耗防止用プレート70は、例えば、前述の第1から第5実施形態の掘削工具の工具本体に形成した硬化肉盛層12に代えて、この工具本体の外面に、プレート本体71の下面が例えばろう付により固着されて設けられる。
【0076】
摩耗防止用プレート70を固着した掘削工具は、地盤の掘削に供された際に、この掘削屑が激しく接触する工具本体に、硬化肉盛層12が形成された摩耗防止用プレート70が固着され、かつこの硬化肉盛層12が、前述の肉盛用溶接材1で形成されていることによって、確実に耐摩耗性が付与されて、工具本体が掘削に伴って摩耗されることのないものとされる。
【0077】
したがって、上記の前述の肉盛用溶接材1で形成した硬化肉盛層12を備える摩耗防止用プレート70は、これを掘削工具に固着することによって、掘削に伴い激しく接触する掘削屑に対する耐摩耗性を向上させ、掘削工具を耐久性に優れたものにすることができる。
【0078】
なお、本実施形態では、摩耗防止用プレート70が長方矩形状を呈するように形成されているものとしたが、その形状は特に限定を必要とするものではなく、摩耗防止用プレート70は、これが設置される工具本体の形状に合わせて形成されればよいものである。
【実施例1】
【0079】
以下に本発明の実施例1を具体的に説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0080】
本実施例は、前述の肉盛用溶接材1で硬装を施した図6に示した掘削工具40を用い、地盤の掘削屑を仮想した研磨材を一定時間撹拌し、撹拌後の硬化肉盛層12の摩耗状況を確認して、本発明の肉盛用溶接材1及びこれを用いて硬化肉盛層12を形成した掘削工具40の優位性を明らかにするものである。具体的には、肉盛用溶接材1の重量に対する焼結超硬合金粒子3の重量比率を35〜75Wt%に変化させた肉盛用溶接材1を用いて研磨材を撹拌し、その摩耗状態を確認することで、焼結超硬合金粒子3の重量比率を45〜70Wt%とすることによる優位性を明らかにするものである。
【0081】
はじめに、使用した肉盛用溶接材1について説明する。
本実施例の肉盛用溶接材1において、焼結超硬合金粒子3は、炭化タングステンをコバルトの結合相に分散させて形成されたものである。また、鋼管2の内部に充填された焼結超硬合金粒子3は、7メッシュ〜63メッシュの範囲の粒径を備えるものの割合が重量比率で20Wt%、63メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備えるものの割合が重量比率で80Wt%とされている。さらに、結合相は、焼結超硬合金粒子3の重量に対して重量比率が5Wt%とされている。
【0082】
本実施例では、Case1からCase9の9種のそれぞれの肉盛用溶接材1で硬化肉盛層12をそれぞれ形成した掘削工具40を用いて試験を行なっており、肉盛用溶接材1の全重量に対する焼結超硬合金粒子3の重量比率が、Case1で35Wt%、Case2で40Wt%、Case3で45Wt%、Case4で50Wt%、Case5で55Wt%、Case6で60Wt%、Case7で65Wt%、Case8で70Wt%、Case9で75Wt%となる肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層12を形成している。
【0083】
ここで、焼結超硬合金粒子3の重量比率が35Wt%の肉盛用溶接材1を用いたCase1は、一般に常用される焼結超硬合金粒子3の重量比率のものとされ、本実施例では、このCase1を他のケースと比較するための基準として用いている。
【0084】
ついで、使用した研磨材について説明する。
本実施例で使用した研磨材は、7号珪砂10kgとバレル石10kgと水5リットルとを混同したものである。7号珪砂は、その粒径が0.2mm以下で、その組成は、SiOが94%以上、Alが2.5%以下、Feが1.0%以下、MgOが0.2%以下、CaOが0.2%以下とされている。また、バレル石は、宇治電化学工業株式会社製の軽研削用トサリットCABを用いている。
【0085】
ついで、上記の研磨材を掘削工具40で撹拌する際の試験条件について説明する。
上記の研磨材中に、Case1〜Case9の肉盛用溶接材1を用いてそれぞれ硬化肉盛層12を形成した掘削工具40を埋設させ、ボール盤回転数83回転/minで120時間の撹拌を行なっている。このとき、掘削工具40の硬質刃体41の周速は53m/minであり、120時間の撹拌によって硬化肉盛層12と研磨材の摺動距離は、約381.6kmとされる。
【0086】
ついで、評価方法について説明する。
まず、Case1の試験前の掘削工具40の重量と試験後の掘削工具40の重量を測定して、Case1の摩耗量を確認する。そして、このCase1の摩耗量に対する他のCase2からCase9の摩耗量の割合を求め、基準としたCase1の摩耗量とCase2からCase9のそれぞれの摩耗量の大小を比較することで評価を行なうこととした。すなわち、Case1の摩耗量の割合を1として、Case2からCase9の摩耗量のCase1に対する割合が1よりも小さい場合に、Case1よりも耐摩耗性に優れると判定し耐摩耗性の評価を行なっている。
【0087】
ついで、上記の試験条件等で試験を行った結果を、表1に示す。
【0088】
表1は、Case1と、Case1に対して焼結超硬合金粒子3の重量比率が順次大きくなる肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層12を形成したCase2からCase9との撹拌終了後の摩耗量を、Case1の摩耗量を基準として相対的に示したものである。
【0089】
この結果、表1に示すように、Case2からCase8の肉盛用溶接材1を用いて硬化肉盛層12を形成した場合には、Case1の摩耗量に対する相対比率が、Case2で0.95、Case3で0.83、Case4で0.78、Case5で0.74、Case6で0.67、Case7で0.75、Case8で0.89となり、特に、焼結超硬合金粒子3の重量比率を45〜70Wt%としたCase3からCase8において、Case1よりも耐摩耗性に優れた硬化肉盛層12が形成されるという結果となった。この一方で、焼結超硬合金粒子3の重量比率を75Wt%としたCase9では、摩耗量の相対比率が1.12となり、Case1よりも耐摩耗性に劣るという結果となった。
【0090】
【表1】

【0091】
以上の結果から、肉盛用溶接材1の重量に対する焼結超硬合金粒子3の重量比率を45〜70Wt%とし、この肉盛用溶接材1を用いて掘削工具40の硬化肉盛層12の形成を行なうことで、優れた耐摩耗性を得ることが可能であることが実証された。
【実施例2】
【0092】
ついで、以下に本発明の実施例2を具体的に説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0093】
本実施例は、実施例1で示したCase1からCase9の肉盛用溶接材1に対して、それぞれ、焼結超硬合金粒子3の粒径分布を変化させた場合における耐摩耗性の優劣を確認したものである。ここでは、焼結超硬合金粒子3の粒径を、7メッシュ〜63メッシュの範囲の割合が重量比率で40Wt%(63メッシュ〜80メッシュの範囲の割合が重量比率で60Wt%)、30Wt%(同70Wt%)、25Wt%(同75Wt%)、20Wt%(同80Wt%)、10Wt%(同90Wt%)、0Wt%(同100Wt%)となるようにそれぞれ変化させている。
【0094】
一方、本実施例では、焼結超硬合金粒子3の結合相を、実施例1と同様に焼結超硬合金粒子3の重量に対して5Wt%としている。また、ここでは、実施例1と同様の研磨材を用い、試験条件、評価方法も実施例1と同様に行なっている。
【0095】
上記の各肉盛用溶接材1で硬化肉盛層12を形成した場合の結果を、表2に示す。
【0096】
表2は、焼結超硬合金粒子3の粒径分布を変化させた際の、Case1からCase9との摩耗量を、Case1の摩耗量を基準として相対的に比較した結果を示している。
【0097】
この結果、表2に示すように、7メッシュ〜63メッシュの範囲の粒径を備える焼結超硬合金粒子3の重量比率を0〜20Wt%(63メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備える焼結超硬合金粒子3の重量比率を80〜100Wt%)とした場合には、実施例1と同様に、焼結超硬合金粒子3の重量比率が45〜70Wt%となるCase3からCase8において顕著に耐摩耗性が向上する結果が確認された。
この一方で、7メッシュ〜63メッシュの範囲の粒径を備える焼結超硬合金粒子3の重量比率を25〜40Wt%(63メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備える焼結超硬合金粒子3の重量比率を60〜75Wt%)とした場合には、Case3及びCase8の耐摩耗性が低下する結果となった。
【0098】
【表2】

【0099】
以上の結果から、焼結超硬合金粒子3の粒径を、7メッシュ〜80メッシュの範囲とすることで、耐摩耗性の向上を図ることが可能であるとともに、特に、63メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備える焼結超硬合金粒子3の重量比率を80Wt%以上とすることで、この効果が顕著に認められることが実証された。
【実施例3】
【0100】
ついで、以下に本発明の実施例3を具体的に説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0101】
本実施例は、実施例1で示したCase1からCase9の肉盛用溶接材1に対して、焼結超硬合金粒子3に含有させたFeMn及びFeSiの、肉盛用溶接材1の重量に対する重量比率を変化させた場合における耐摩耗性の優劣を確認したものである。ここでは、FeMn及びFeSiの重量比率を、0.5Wt%、1.0Wt%、2.5Wt%、5.0Wt%、6.0Wt%の5段階に変化させている。
【0102】
一方、本実施例では、焼結超硬合金粒子3の結合相の重量比率を、実施例1と同様に5Wt%としている。また、実施例1と同様に、焼結超硬合金粒子3は、7メッシュ〜63メッシュの範囲の割合が重量比率で20Wt%、63メッシュ〜80メッシュの範囲の割合が重量比率で80Wt%とされている。ここでは、実施例1と同様の研磨材を用い、試験条件、評価方法も実施例1と同様に行なっている。
【0103】
上記の肉盛用溶接材1で硬化肉盛層12を形成した場合の結果を表3に示す。
【0104】
表3は、焼結超硬合金粒子3のFeMn及びFeSiの重量比率を変化させた際の、Case1からCase9の摩耗量を、Case1の摩耗重量を基準として相対的に比較した結果を示している。
【0105】
この結果、表3に示すように、FeMn及びFeSiの重量比率を0.5〜5.0Wt%とした場合に、Case3〜Case8で耐摩耗性が向上する結果となった。この一方で、FeMn及びFeSiの重量比率を6.0Wt%とした場合においては、前述の実施例1の表1に示した結果と比較し、FeMn及びFeSiを添加することによる大きな優位性が認められないことが確認された。
【0106】
【表3】

【0107】
以上の結果から、焼結超硬合金粒子のFeMn及びFeSiの重量比率を、0.5〜5.0Wt%とすることで、耐摩耗性の向上を図ることが可能であることが実証された。
【実施例4】
【0108】
ついで、以下に本発明の実施例4を具体的に説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0109】
本実施例は、実施例1で示したCase1からCase9の肉盛用溶接材1に対して、それぞれ、焼結超硬合金粒子3にFeMn及びFeSiを含有させ、肉盛用溶接材1の重量に対するFeMn及びFeSiの重量比率を0.5Wt%としている。また、焼結超硬合金粒子3とともに珪酸ソーダを鋼管2の内部に充填し、その重量比率を変化させた場合における耐摩耗性の優劣を確認している。ここでは、珪酸ソーダの重量比率を、0.5Wt%、1.0Wt%、1.5Wt%、3.0Wt%、4.0Wt%の5段階に変化させている。
【0110】
本実施例では、焼結超硬合金粒子3の結合相を、実施例1と同様に焼結超硬合金粒子3の重量に対して5Wt%としている。また、実施例1と同様に、焼結超硬合金粒子3は、7メッシュ〜63メッシュの範囲の粒径を備える割合が重量比率で20Wt%、63メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備える割合が重量比率で80Wt%とされている。ここでは、実施例1と同様の研磨材を用い、試験条件、評価方法も実施例1と同様に行なっている。
【0111】
上記の肉盛用溶接材1で硬化肉盛層12を形成した場合の結果を表4に示す。
【0112】
表4は、焼結超硬合金粒子3のFeMn及びFeSiの重量比率を0.5Wt%と一定として、珪酸ソーダの重量比率を変化させた際の、Case1からCase9の摩耗量を、Case1の摩耗量を基準として相対的に比較した結果を示している。
【0113】
この結果、表4に示すように、珪酸ソーダの重量比率を0.5〜3.0Wt%とすることで、安定した硬化肉盛層12が形成され、これに基づき、特にCase3〜Case8において耐摩耗性がさらに向上することが確認された。
【0114】
【表4】

【0115】
以上の結果から、珪酸ソーダの重量比率を、0.5〜3.0Wt%とすることで、耐摩耗性のさらなる向上を図ることが可能であることが実証された。
【実施例5】
【0116】
以下に本発明の実施例5について具体的に説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0117】
本実施例は、前述の肉盛用溶接材1を用いて、ガス溶接にて鋼板(試験板)上に肉盛溶接を行ない、硬化肉盛層12の外面におけるポア及び溶着金属の発生の有無等の状況を確認することによって、TiC、NbC、Crを添加することによる優位性を明らかにするものである。
【0118】
ここで、本実施例では、肉盛用溶接材1の重量に対する焼結超硬合金粒子3の重量比率を60Wt%、結合相の重量比率を8.0Wt%、FeMnの重量比率を2.0Wt%、珪酸ソーダの重量比率を2.0Wt%としている。また、焼結超硬合金粒子3は、7メッシュ〜63メッシュの範囲の粒径を備える割合が重量比率で12Wt%、63メッシュ〜80メッシュの範囲の粒径を備える割合が重量比率で88Wt%とされている。
さらに、本実施例では、焼結超硬合金粒子3にTiC、NbC及びCrを重量比率で0.6Wt%添加している。
【0119】
また、本実施例では、試験板上に形成した硬化肉盛層12に対して、目視及び拡大鏡にて観察を行い、その外面のポア及び溶着金属の有無などを確認してその評価を行なっている。
【0120】
この結果、焼結超硬合金粒子3にTiC、NbC及びCrを重量比率で0.6Wt%添加した場合には、ポアの発生が、従来の焼結超硬合金粒子と比較して大きく改善されることが確認された。また、顕微鏡による組織検査においても、焼結超硬合金粒子3が略均一に分布していることが確認され、ポアの発生も非常に少ない状態であった。
【0121】
以上の結果から、肉盛用溶接材1の重量に対する焼結超硬合金粒子3の重量比率を45〜70Wt%とし、この肉盛用溶接材1を用いて掘削工具の肉盛を行なうことで、優れた耐摩耗性を得ることが可能であることが実証された。
【0122】
なお、TiC、NbC及びCrを重量比率で1.0Wt%添加した場合においても、同様の結果を得ることが可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明に係る肉盛溶接材の一実施形態として示した図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】図1の肉盛溶接材を用いて形成した硬化肉盛層を示す図である。
【図4】本発明に係る掘削工具の第1実施形態として示した図である。
【図5】本発明に係る掘削工具の第2実施形態として示した図である。
【図6】本発明に係る掘削工具の第3実施形態として示した図である。
【図7】本発明に係る掘削工具の第4実施形態として示した図である。
【図8】本発明に係る掘削工具の第5実施形態として示した図である。
【図9】本発明に係る摩耗防止用プレートの一実施形態として示した図である。
【符号の説明】
【0124】
1 肉盛用溶接材
2 鋼管
3 焼結超硬合金粒子
10 掘削工具
10a 工具本体
10b 外面
11 硬質刃体
12 硬化肉盛層
20 シールドカッタ(掘削工具)
21 硬質刃体
22 シャンク部(工具本体)
30 ローラーカッタ(掘削工具)
31 カッタ本体(工具本体)
32 切刃部
35 硬質刃体
40 アースオーガー用カッタ(掘削工具)
41 硬質刃体
42 シャンク部(工具本体)
50 インナーリング(掘削工具)
51 工具本体
52 硬質刃体
60 アウターリング(掘削工具)
61 工具本体
62 硬質刃体
70 摩耗防止用プレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管と、鋼管の内部に充填された焼結超硬合金粒子とからなる肉盛用溶接材において、
前記焼結超硬合金粒子は、コバルトあるいはコバルトとニッケルの結合相中に炭化タングステンを分散配置させたものであるとともに、炭化チタン、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化バナジウム及びクロムのうちの1種または2種以上を、前記焼結超硬合金粒子の重量に対して0.4〜5.0Wt%含むものとされ、かつ該焼結超硬合金粒子の粒径が7メッシュ〜80メッシュの範囲のものとされて、前記肉盛用溶接材の重量に対する前記焼結超硬合金粒子の重量比率が45〜70Wt%とされるとともに、前記鋼管の重量比率が、前記肉盛用溶接材の重量に対して25〜50Wt%とされていることを特徴とする肉盛用溶接材。
【請求項2】
請求項1記載の肉盛用溶接材において、
前記焼結超硬合金粒子は、フェロマンガン及びフェロシリコンの1種または2種を、前記肉盛用溶接材の重量に対する重量比率で0.5〜5.0Wt%含むことを特徴とする肉盛用溶接材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の肉盛用溶接材において、
前記焼結超硬合金粒子は、その硬度がHRAで86〜95とされ、前記結合相の重量比率が2.0〜20.0Wt%とされていることを特徴とする肉盛用溶接材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の肉盛用溶接材において、
前記焼結超硬合金粒子は、63メッシュ〜80メッシュの範囲に留まる粒径を備えたものの重量比率が、少なくとも80Wt%以上であることを特徴とする肉盛用溶接材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の肉盛用溶接材において、
前記鋼管の内部には、前記焼結超硬合金粒子とともに珪酸ソーダが充填され、該珪酸ソーダの前記肉盛用溶接材の重量に対する重量比率が、0.5〜3.0Wt%とされていることを特徴とする肉盛用溶接材。
【請求項6】
鋼製の工具本体の先端側に硬質刃体が植設された掘削工具において、
前記硬質刃体を除く掘削工具の外面の少なくとも一部に、請求項1から請求項5のいずれかに記載の肉盛用溶接材が肉盛溶接されて硬装されていることを特徴とする掘削工具。
【請求項7】
硬質刃体を除く掘削工具の外面の少なくとも一部に固着して前記掘削工具を硬装するための摩耗防止用プレートであって、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の肉盛用溶接材が肉盛溶接されていることを特徴とする摩耗防止用プレート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−69227(P2007−69227A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257504(P2005−257504)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】