説明

肝不全後の透析における組換えアルブミンの使用

本発明は、生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている組換えHSAの透析における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肝臓透析における組換えヒト血清アルブミン(HSA)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肝不全とは死に至る危険性が高い重篤な疾患を意味し、しばしば、肝炎ウィルスまたは中毒により引き起こされる。肝不全の場合、肝臓におけるアルブミンの新生が阻害される。アルブミンは血中タンパク質結合型物質毒性物質(PBTS)の主要な輸送システムの1つなので、上記事象は血中における毒性物質の蓄積を導く。適当なドナー肝臓が見出され、時期を見て移植されない限りは、最終的な結果として意識を消失し、そして最後には患者は死に至る。これら毒性物質を透析を介して血液から、およびより正確には、血液中の患者のアルブミンから除去することは、適当な移植器官が見つかるまでの時間を埋めるための助けになるであろう。幾つかの場合、透析により肝臓自体が再生する時間を与えることにより、移植手術が時代遅れにさえなるかもしれない。
【0003】
現在、アルブミンから毒性物質を取り除くために種々のシステムが使用されている。これらには、患者のアルブミンを注入したアルブミンで置換すること、または患者の血液を直接、活性炭ベースの吸着剤に通すことが挙げられるが種々の血液構成成分の望ましくない活性化を導くかもしれない方法である。
【0004】
別のアプローチは、例えば、米国特許第5,744,042号に開示されるような透析系の使用である。このような系は、患者の血液が精製物質と直接接触することを避け、患者のアルブミンに結合した毒性物質を引き継ぐ物質を充填した第2サーキット(例えば、アルブミン溶液)を使用する。メンブレン接触面を介して、患者自身のアルブミンから第2サーキット由来のアルブミンへの毒性物質の移動が生じる。次いで、後者を第2サーキット内に配置した1種以上の吸着物質に通すことにより再生する。
【0005】
今日まで、上記の透析システムにおいて、通常、天然の供給源から調製される(例えば、多数の血液ドナーから採集した、プールした血液の分画による)ヒト血清アルブミンが用いられている。しかし、この調製方法は肝炎ウィルス、ヒト免疫不全ウィルスのような感染因子、または新規変異型CJDのような感染因子等での汚染の危険性を明らかに含んでいる。従って、ヒト血液由来HSAの精製は、安全性の高い製品を製造するための最終製品の長期低温殺菌工程を含むが、特に、熱安定性感染因子を考慮すると、危険性を除去することはできない。米国特許第5,744,042号は、天然由来アルブミンの代わりに組換えアルブミンも使用できることを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以前は、これまで肝臓透析に用いられたアルブミンは毒性タンパク質に対する能力が低いことが指摘されていた。これにより、透析プロセスの効率が低くなる。
【発明の効果】
【0007】
従って、本発明は、その根底にある問題を解決するために、肝不全における血液透析の効率を上昇させ、同時に低コストで入手可能である改善型アルブミンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1局面に従うと、この問題は、生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている組換えHSAを透析に使用することにより解決される。
【0009】
驚くべきことに、生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている組換えHSAは、透析において、特に肝不全後の透析において従来のアルブミンよりも効率がよいことが見出された。
【0010】
好ましい態様に従うと、効率の増加は少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%である。
【0011】
本発明によると、用語「透析」は体液、特に血液の生体外ろ過方法を意味する。
【0012】
本出願の目的に関して、用語「HSA」は、本来ヒト血液中に見出されるアルブミンスーパーファミリーのヒトタンパク質、ならびにそれらの天然または合成的に修飾されている改変体を意味するために使用される。ヒトアルブミンの多数の多形および変異体が当業者に公知であり (T. Peters, All about Albumin: Biochemistry, Genetics and Medical Applications, Academic Press Incl, 1996)、用語「HSA」ならびにヒトタンパク質のフラグメント(タンパク質配列の少なくとも1/3、好ましくは2/3より多くを含む)に含まれる。
【0013】
他の改変体は、HSAをコードする遺伝子に対するヌクレオチドの置換、挿入または付加により入手することができ、そのようにして得られたHSAヌクレオチド配列がなおも天然の配列と少なくとも75%のホモロジー(少なくとも85%のホモロジーが好ましく、少なくとも90%のホモロジーが最も好ましい)を有するかぎり、本出願において使用される用語「HSA」に含まれる。
【0014】
本発明の好ましい態様において、組換えHSAは他の付随してくる物質(好ましくはホルモン等のタンパク質または金属もしくは金属イオン)からさらに精製される。
【0015】
本発明によると、HSAは組換えHSAを生産することができる任意の供給源から入手することができる。これには、原核生物細胞株または真核生物細胞株でのHSA生産、ならびに任意の非ヒトトランスジェニック動物、植物またはトランスジェニック鳥の卵においてのHSA生産が挙げられる。また、真核生物細胞株は酵母株であってもよいが、酵母以外の真核生物細胞株が好ましい。非ヒトトランスジェニック動物が最も好ましい。
【0016】
細胞株によるHSAの生産方法は、HSAをコードする核酸での細胞のトランスフェクション、HSAの発現を可能にする条件下での細胞の培養、およびHSAの細胞からの単離を含む。このような方法は当該分野において公知である (T. Peters, All about Albumin: Biochemistry, Genetics and Medical Applications, Academic Press Incl, 1996)。また、HSAに関する一般的なさらなる情報およびその保存に関する情報も文献から入手することができる。
【0017】
トランスジェニック動物によるHSAの生産方法も当該分野において公知である。これは、非ヒト動物の単独細胞を、HSAとトランスジェニック動物中でタンパク質を発現するための調節配列とをコードする外来性DNAで形質転換すること、ならびにトランスジェニック動物を再生することを含む(W091/08216; Bondioliら、Biotechnology, 16巻 (1961), 265; Ebertら、Bio/Technology, 9巻 (1991), 835; Hammerら、Nature, 315巻(1985), 680; Houdebine L.M. (編), Transgenic Animals-Generation and Use, Harwood Academic Publishers GmbH (1996), Amsterdam; Pinkert C.A. (編), Transgenic Animal Technology; A Laboratory Handbook. Academic Press, San Diego (1994), CA)。
【0018】
まとめると、従来技術において公知の多数の方法のいずれかにより細胞を核酸で形質転換することができる。例えば、非ヒトトランスジェニック動物は、HSAをコードする核酸を適当な非ヒトレシピエント細胞に導入すること、およびレシピエント細胞から非ヒトトランスジェニック動物を再生することを含む方法を用いて得ることができる。
【0019】
好ましくは、レシピエント細胞は胚細胞であるが、他の細胞型も使用することができる。レシピエント胚細胞からの非ヒトトランスジェニック動物の再生は、非ヒト雌性動物に細胞を移植すること、および胚をその中で成長させることを含み得る。
【0020】
非ヒトトランスジェニック動物の生産方法は、動物をクローニングすることをさらに含むかもしれない。動物のクローニング方法は当業者に周知であり (Baguisiら、Nature Biotech., 17巻(1999), 456-461 ;Campbellら、Nature, 380巻 (1996), 64-66, Cibelliら、Science, 280巻(1998), 1256; Katoら、Science 282巻(1998),2095-2098 ;Schnieke ら、Science, 278巻 (1997),2130-2133 ; Vignonら、C.R. Acad. Sci. Paris, Sciences de la vie/Life Sciences 321巻(1998), 735-745 ; Wakayamaら、Nature 394巻(1998),369-374; Wellsら、Biol. Reprod. 57巻 (1997), 385-393 ; Wilmutら、Nature, 385巻 (1997), 813)、多数のトランスジェニック動物を調製するために本発明に関して簡単に適用することができるかもしれない。
【0021】
本発明において、HSAはウシ、ブタ(procine)、ウマ、齧歯類またはヤギを供給源として入手することが好ましい。
【0022】
好ましい態様において、HSAは非ヒトトランスジェニック動物の乳または血液、好ましくは泌乳牛の乳から入手することが好ましい(例えば、WO 96/02573を参照のこと)。
【0023】
別の態様において、HSAはトランスジェニック鳥の卵から入手する。トランスジェニック鳥は、好ましくはニワトリである。トランスジェニック雌ニワトリ中でタンパク質を発現させることにより、そのタンパク質をその雌ニワトリの卵に移す方法が当該分野において公知である(例えば、Morrisonら、Immunotechnology, 4巻 (1998), 115〜125頁を参照)。
【0024】
本発明において、用いた組換えHSAは、生産される間に付随してくる脂肪酸から、好ましくは他の付随してくる物質から精製されている。本発明において、表現「付随してくる(付随する)脂肪酸または物質」とは、細胞株またはトランスジェニック動物もしくは植物中での合成の間にHSAに結合する脂肪酸または物質を意味する。従って、これらの脂肪酸または物質はまた、細胞株またはトランスジェニック動物もしくは植物により生産される。さらに、表現「付随してくる脂肪酸または物質」は、例えば、細胞片または他の構成成分(HSAを含有する溶液が保存されている容器から遊離する金属イオン等)由来の、抽出または精製プロセスの間に結合している脂肪酸または物質を意味する。
【0025】
本発明において、表現「〜から精製した」とは、HSAの結合能力が上昇する程度に脂肪酸がHSAから除去されていることを意味する。本発明の好ましい態様において、少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%の脂肪酸が除去されている。
【0026】
脂肪酸の程度に関する試験は当該分野において公知であり、例えば、和光純薬から入手可能である。適当なキットの1つは和光製Nefa-C-キットである。
【0027】
付随してくる脂肪酸からHSAを精製する種々の方法が当該分野において公知である(例えば、WO 96/02573を参照のこと)。通常、HSA(例えば、非ヒトトランスジェニック動物由来)は、適用した場合に免疫原性の影響または他の副作用を引き起こさない程度まで高度に副生成物から精製されている必要がある。
【0028】
付随してくる脂肪酸から、好ましくはまた他の物質から、HSAを精製する適切な方法としては、組換えHSAを含有する溶液を活性炭と、活性炭:HSAの比が好ましくは1:2、最も好ましくは少なくとも1:1で混合することを含む。しかしながら、他の濃度もまた、使用することができる(例えば、2:1またはそれ以外)。
【0029】
活性炭は粉末、顆粒、カプセルまたは練炭の形態で存在してもよい。
【0030】
精製は、3.5よりも低いpHを有する緩衝液中で行われることが好ましく、3.0未満がより好ましい。
【0031】
好ましくは、緩衝液はリン酸緩衝液である。しかし、炭酸緩衝液、または適当な緩衝化能力およびpH範囲を有する限り、他の緩衝液も使用することができる。
【0032】
精製は、好ましくは室温で、好ましくは少なくとも30分で行われる。
【0033】
本発明の好ましい態様において、組換えHSAは付随してくる脂肪酸から活性炭を用いることにより精製されている。
【0034】
好ましい態様において、組換えHSAの調製は浄化(清澄化)工程を含む。
好ましくは、浄化はろ過により行う。
【0035】
あるいは、またはさらに、組換えHSAの調製を組換えHSA含有溶液から沈殿させることを含んでもよい。例えば、HSAは単独の沈殿工程により非ヒトトランスジェニック哺乳動物の乳または血液から高純度で得ることができる。HSAを沈殿させ得る適当な試薬は当該分野において公知であり、当業者が簡単な実験を用いることにより同定することができる。続いて、HSAを周知の方法を用いて所望の溶媒に再懸濁してもよい。好ましくは、HSAのさらなる精製を単純化するHSA用溶媒を用いる(pH、イオンの選択)。
【0036】
さらに、組換えHSAの調製は、組換えHSAを含有する溶液から混入タンパク質を沈殿させることを含んでいてよい。
【0037】
HSAの単離方法はさらに、1回以上のクロマトグラフィー精製工程を含んでもよく、当該分野で公知の多数のクロマトグラフィー方法に従って行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーの使用が好ましい(T. Peters, All about Albumin:Biochemistry, Genetics and Medical Applications, Academic Press Incl, 1996)。
【0038】
好ましい態様において、組換えHSAは透析液中に存在する。好ましい態様において、組換えHSAは組成物の約1〜約40%、好ましくは約5〜約30%(w/vol)の範囲、最も好ましくは20%の濃度で透析液中に存在する。透析液に関しての使用については、同じ態様を以下の本発明の透析液に関して適用する。
【0039】
透析において、組換えHSAを透析に十分または有効な量で用いる。これは、例えば、患者の体重または疾患の重篤度に依存し、肝臓透析の分野における熟練した医療従事者により適合させることができる。
【0040】
好ましくは、多量のHSAの保存に十分適したプラスチック容器中でHSAは提供される。好ましくは(しかし、これらに限定しない)、組換えアルブミン20%溶液(w/vol)を含有するパッケージ(600ml)である。ガラス標準容器を用いることができるが、気体透過性の低い任意のタイプの適当なプラスチック容器またはバッグ(例えば、献血の回収および保存に用いられるバッグ)も同様に用いることができる。
【0041】
さらに好ましい態様では、透析膜上に組換えHSAが存在する。本発明には、透析物膜に関して以下に開示する態様もまた、適用する。
【0042】
本発明を通じて、付随してくる脂肪酸からの精製後、組換えHSAを、例えば、HSAの溶解性を高めるために、他の脂肪酸(N-アセチルトリプトファン、オクタノエート、またはカプリレート等)または関連物質と規定量で組合せる。好ましくは、これらの物質は、全体として32mM以下で20% w/w以下のHSA溶液中に、または40mM以下で25%w/w以下のHSA溶液中に含有される。好ましくは、1つの物質のみをHSAと組み合わせる。あるいは、2つの物質を当量で添加してもよい。
【0043】
本発明はさらに患者の血液の透析方法に関し、ここで、上記のように、合成され、生産され、および/または精製された組換えHSAが使用される。
【0044】
本発明はさらに、組換えHSAを含有する透析液を意味し、ここで組換えHSAは生産される間に付随してくる脂肪酸から精製される。
【0045】
好ましい態様において、HSAは上記の特徴を有するか、または上記の通りに合成され、生産され、および/または精製される。
【0046】
透析液は、生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている組換えHSAを含有する。これは、液体(A)から除去されるべき物質である、アルブミンに結合する能力を有し得るタンパク質結合型物質 (PBS)に対するアクセプターおよび遊離物質に対するアクセプターとして働く。組換えHSAの濃度は、好ましくは約1〜約50g/100ml、好ましくは約6〜約40g/100ml、より好ましくは約8〜約30g/100ml、最も好ましくは約8〜約20g/100mlである。
【0047】
透析液は、NaCl、KCl、MgC12、CaC12、乳酸ナトリウムおよびグルコース一水和物のようなさらなる塩を、特定の患者の血液中の電解質組成に依存する量で含有してもよい。例えば、低カリウム血症に罹患した患者の透析においては、高濃度のカリウムイオンが要求される。
【0048】
透析液(重炭酸緩衝液)中の好ましいイオン濃度は、ナトリウムに関しては約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムに関しては約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムに関しては約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムに関しては約0.2〜約0.8mmol/1000ml、塩化物イオンに関しては約100〜約110mmol/1000ml、重炭酸イオンに関しては約30〜約40mmol/1000ml、酢酸イオンに関しては約2〜約10mmol/1000mlであり、ヒト血清アルブミンに関しては約1〜約50g/100ml、好ましくは約6〜約40g/100ml、より好ましくは約8〜約30g/100ml、最も好ましくは約8〜20g/100mlである。
【0049】
透析液(重炭酸緩衝液)中のより好ましいイオン濃度は、ナトリウムに関しては約135〜約140mmol/1000ml、カルシウムに関しては約1.5〜約2.0mmol/1000ml、カリウムに関しては約3.0〜約3.5mmol/1000ml、マグネシウムに関しては約0.4〜約0.6mmol/1000ml、塩化物イオンに関しては約104〜約108mmol/1000ml、重炭酸イオンに関しては約34〜約38mmol/1000ml、酢酸イオンに関しては約4〜約8mmol/1000mlであり、ヒト血清アルブミンに関しては約1〜約50g/100ml、好ましくは約6〜約40g/100ml、より好ましくは約8〜約30g/100ml、最も好ましくは約8〜20g/100mlである。
【0050】
透析液(酢酸緩衝液)中のより好ましいイオン濃度は、ナトリウムに関しては約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムに関しては約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムに関しては約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムに関しては約0.2〜約0.8mmol/1000ml、塩化物イオンに関しては約100〜約110mmol/1000ml、酢酸イオンに関しては約30〜約40mmol/1000mlであり、ヒト血清アルブミンに関しては約1〜約50g/100ml、好ましくは約6〜約40g/100ml、より好ましくは約8〜約30g/100ml、最も好ましくは約8〜20g/100mlである。
【0051】
透析液(酢酸緩衝液)中のより好ましいイオン濃度は、ナトリウムに関しては約135〜約140mmol/1000ml、カルシウムに関しては約1.5〜約2.0mmol/1000ml、カリウムに関しては約3.0〜約3.5mmol/1000ml、マグネシウムに関しては約0.4〜約0.6mmol/1000ml、塩化物イオンに関しては約104〜約108mmol/1000ml、酢酸イオンに関しては約33〜約38mmol/1000mlであり、ヒト血清アルブミンに関しては約1〜約50g/100ml、好ましくは約6〜約40g/100ml、より好ましくは約8〜約30g/100ml、最も好ましくは約8〜20g/100mlである。
【0052】
透析液の1例は、透析液1リットルあたりヒト血清アルブミンを約10〜20重量%、NaClを約6.1g、乳酸ナトリウムを約4.0g、KClを約0.15g、、CaCl×2H2Oを約0.31g、MgCl2×6H2Oを0.15g、およびグルコース一水和物を1.65g含有する。
【0053】
本発明の透析液が本発明またはEP615780Aに記載される透析系において使用されるならば、任意の適当な膜(例えば、アクセプター物質でコーティングされている膜)を使用し得る。あるいは、本発明に記載の膜もまた使用しうる。
【0054】
本発明はさらに、透析液(B)に対する透析により、タンパク質結合型物質を含有するタンパク質含有液(A)からこれらの物質を分離するための膜に関し、この膜は生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている組換えHSAが膜の少なくとも片面に結合されており、タンパク質結合型物質が膜を通過しうるような孔径を有する。
【0055】
好ましい態様において、本発明の膜は本発明での使用のために上記のように合成、生産および/または精製されている、上記の組換えHSAを含有する。
【0056】
好ましくは、本発明の膜は2個の機能的に異なる部分を含む。一方は、本発明の方法の条件下においてタンパク質結合型物質(PBS)および水可溶性物質を透過させ、液体(A)中のPBSおよび液体(B)の組換えHSAと結合したタンパク質を除き得る、実際の分離膜機能を有し、そして他方はポートおよび吸着(port-and adsorption)機能を有する。好ましくは、本発明において定義しているように、膜は組換えHSAでコーティングされている。好ましい態様において、本発明の膜は、液体(A)側に面したトンネル状構造の薄層(このトンネルの長さは約10μmよりも短く、液体(A)中のHSAを排出するのに十分小さい直径を有する)および透析液(B)側にポートおよび吸着構造を有する。好ましくは、膜は少なくとも片側がコーティングされており、好ましくは透析液(B)の側が組換えHSAの薄いフィルムでコーティングされている。
【0057】
本発明の膜は肉眼で見える形は平坦なフィルムであって、壁は薄いが、直径の大きいチューブであるか、または好ましくは繊細な(fine)中空糸であり得る。膜技術、中空糸膜、および透析はKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology、第3版、7巻(1979)、564-579(特に574-577)、12巻 (1980)、492-517および15巻 (1981)、92-131に記載されている。さらに、膜および膜分離プロセスはUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、 A 16巻(1990), 187-263に記載されている。
【0058】
膜用マトリックス物質は、液体(A)および透析液(B)側のタンパク質に対する親和性を有する限り、多数の物質(セラミックス、グラファイト、金属、金属酸化物、およびポリマーを含む)から製造することができる。今日、最も広範に使用されている方法は、粉末の焼結、フィルムの伸展、フィルムのX腺照射およびエッチングおよび相反転技術である。本発明の膜用に好ましい物質は、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリロニトリルポリマー、ビニルアルコールポリマー、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマーおよびセルロースアセテートポリマーからなる群から選択される有機ポリマーである。例えば、ポリビニルピロリドンで親水性化されているポリスルホン膜が特に好ましい。
【0059】
膜の正確かつ完全な定義はかなり難しい。Ullmann, loc. cit. , 190-191頁, No.2.1および2.2を参照のこと。膜は、均一な多孔性または異成分からなる構造上対称または非対称のものであり得る。中性であってもよく、または特異的結合または錯体化能力を有する官能基を有してもよい。分離方法で現在用いられている最も重要な膜は、非対称膜である。Ullmann, loc. cit., 219〜頁、No.4.2を参照。既知の非対称膜は「指(finger)」型構造の段階的(graded)孔サイズ分布を有するスポンジ状構造か、または均一な孔サイズ分布を有するスポンジ状構造を有する。Ullmann, loc. cit., 223-224頁参照。
【0060】
本発明の最も好ましい膜構造は、非常に多孔性の薄い選択的表面スキン層(thin selective skin layer)の基礎構造からなる非対称膜であり、この孔は指またはチャネルの形でだいたい垂直に表面(skin)から下方へ膜を貫通している。非常に薄い表面は実際の膜を示し、孔を含んでもよい。多孔性基礎構造は、スキン層に対する支持体として機能し、組換えHSAが表面に接近してタンパク質結合型物質が液体(A)側から透析液(B)側へとスキン層を透過することを可能とする。
【0061】
分離方法の前に、好ましくは膜を以下のように調製する。膜を、液体(A)側から、および/または液体(B)側から、組換えヒト血清アルブミンを約1〜約50g/100ml、より好ましくは約5〜約20g/100mlの濃度で含有する液体、好ましくは0.9%NaCl溶液で処理する。処理時間は約1〜約30分、好ましくは約10〜約20分で、約15〜約40℃、好ましくは約18〜約37℃である。
【0062】
本発明の膜の詳細
好ましくは、本発明の膜は2個の機能的に異なる部分(領域)を含む。一方は、本発明の方法の条件下でPBSおよび水可溶性物質を透過させ、液体(A)中のPBSおよび液体(B)の組換えHSAに結合しているタンパク質を排除する実際の分離膜機能を有し、他方はポートおよび吸着機能を有する。好ましくは、膜は組換えHSAでコーティングされている。好ましい態様において、本発明の膜は、液体(A)側に面したトンネル状構造の薄層(このトンネルの長さは約10μm未満、好ましくは約5μm未満、より好ましくは0.1μm未満、最も好ましくは約0.01〜約0.1μmである)を有する。このトンネルは直径が、液体(A)中のタンパク質を排除し、好ましくは、約20,000ダルトン〜約66,000ダルトン、より好ましくは約50,000〜約66,000ダルトンの分子量を有する分子がトンネルを通過できる程度に十分小さい。好ましくは、液体(A)中のタンパク質に関する膜のふるい係数は0.1未満、より好ましくは0.01未満である。さらに、好ましくは、膜は透析液(B)側にポートおよび吸着構造を備える。この部分は、透析液(B)中の組換えHSAがポートおよび吸着層に入って膜の液体(A)側から来たPBSを受容できるように十分に開いている構造を提供する必要がある。さらに、この部分の内部表面は以下に記載のコーティング手順により、吸着されている組換えHSAを介してまたはPBSを結合するために適した他の構造を介してPBSに対する吸着剤として作用する。この吸着は長期にわたり安定であるか、または可逆的であるかのいずれかであり得る。好ましくは、膜は組換えHSAの薄層フィルムで少なくとも片側がコーティングされている。本発明の膜を備えた市販のダイアライザーは、組換えHSAの溶液を液体(B)側に含有しうる。
【0063】
本発明の膜は肉眼で見える形の平坦なフィルムであり、壁は薄いが、直径の大きいチューブであるか、または好ましくは繊細な中空糸であり得る。
【0064】
膜用のマトリックス物質は、液体(A)および透析液(B)側のタンパク質に対する親和性を有する限り、種々の材料(セラミックス、グラファイト、金属、金属酸化物、およびポリマーを含む)から製造することができる。今日、最も広範に使用されている方法は、粉末の焼結、フィルムの伸展、フィルムのX腺照射およびエッチングおよび相反転技術である。本発明の膜に好ましい物質は、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリロニトリルポリマー、ビニルアルコールポリマー、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマーおよびセルロースアセテートポリマーからなる群から選択される有機ポリマーである。
【0065】
本発明で用いる好ましいポリマー膜は、ポリビニルピロリドンで親水性化されている非常に透過性の高い非対称のポリスルホン膜である(例えば、Fresenius AGのHF80)。
【0066】
このような膜および膜モジュール、透析カートリッジ、人工腎臓膜システムは市販されている。例えば、Fresenius AG製 (例えば、HF80)、GAMBRO AB製 (例えば、Polyflux)、Baxter Inc.製 (例えば、CT190G)。
【0067】
第1部分:
液体(A)側に面した膜の層または構造は、タンパク質結合型物質および水可溶性物質(すなわち、低分子物質および「中程度のサイズの分子」)を液体(A)側から透析液(液体(B)側)へと選択的に移動させ得る実際の膜を提供する必要がある。従って、液体(A)側から透析液(B)側へと向かって減少する望ましくない物質の濃度勾配に従って液体(A)側から透析液(B)側へと、望ましくない物質の有効な正味の輸送が生じる。実際の膜に関しては3個の条件を満たす必要がある:
1.トンネルは十分短くなければならず、好ましくは約5μm、より好ましくは約1μm、および最も好ましくは0.1μm未満である。
2.トンネルの直径は、望ましくない分子の通過が可能となる程大きく、液体(A)中に含まれる望ましい分子の液体(B)への通過、および組換えHSAの液体(B)から液体(A)への通過が阻害されるように十分小さい必要がある。液体(A)が血漿または血液の場合、排除限界は、好ましくは、約66,000ダルトンである。液体(A)中のタンパク質に関する膜のふるい係数は0. 1未満が好ましく、より好ましくは、0.01未満である。
3.液体(A)側に面する層の構造または実際の膜の構造の化学特性、物理特性等は、望ましくない物質の通過が疎水性微小ドメインおよび親水性微小ドメイン等により可能となるようなものである。
【0068】
第2部分:
液体(B)側に面する層または膜の構造は、通常、スポンジまたはフィンガー様式で、より隙間のある(open)膜構造を提供する必要がある。この部分は、膜のこの部分内に重要なポートおよび吸着機能を提供する。
1.膜のこの部分の隙間のある間隔の開いた(open spaced)構造に起因して、透析液(B)側に由来する組換えHSAは上記の液体(A)側に面する構造の透析液側小孔(dialysate side ostium)に接近し、液体(A)側からトンネル状構造を通過するタンパク質結合型物質のような望ましくない物質を受け入れる。
2.この構造体に存在する総表面積が大きいことに起因して、仲介膜吸着においてある種のスペーサーとして機能する結合分子を介してかなりの量のタンパク質結合型物質 (PBS)を吸着するか、または、膜がその構造に起因してPBSを吸着する能力を有する場合はPBSは直接膜に結合する。この吸着は可逆性または不可逆性のいずれであってもよいが、好ましくは可逆性である。
3.膜の透析液(B)側に対して隙間のある構造に起因して、透析物の動きは垂直方向に向かうものであってもよいし、または外側膜表面に平行であってもよいし、異なる様式であってもよく、HSA分子をポート層の内側およびポート層の外側の両方に輸送することができる。好ましくは、外側膜表面に対して垂直方向の動きおよび輸送は、液体(B)の流入および流出運動(ポート膜に入る動きおよび液体(B)の流路へと戻る動きである)が交互に生じることにより提供される。この流入および流出は、ローラーポンプの使用により得られるパルス様圧力プロフィール、または最初に液体(B)(陽圧TMP)へと向かい、最後には液体(A)(陰圧TMP)へと向かうことにより膜に沿って変化する膜間圧力差の変化により提供される(TMP=膜間圧力差)。
【0069】
それゆえ、好ましくは本発明の透析膜はトンネル状部分と指状またはスポンジ状のポート/吸着部分に機能的に分けられる。これらは両方とも、本発明の方法を可能にするための特定の必要条件をみたさなければならない。理想的なトンネル状部分はほぼ0に近い長さ(0.01〜0.1μm)であり、精製され、保持液(retentate)中に維持されるべき所望のタンパク質の直径(例えば、アルブミンの直径)に近い直径を有する。言い換えると、トンネル状部分は、液体(A)の有益かつ望ましい所望の物質を保持液中に十分保持でき、液体(A)に含まれるタンパク質結合型物質および他の望ましくない物質を透析液(B)側に透過させることができる程度に十分小さい直径を有する。
【0070】
本発明の透析膜の理想的なポート/吸着部分は、組換えHSAが接近してトンネルの透析液側の隣の領域に遊離できる程、非常に隙間のある構造を有する。直接または組換えHSAを介してPBSを吸着する大きい内部表面を有する。この部分の全直径は、やはり、透析液流路中への交換をより効率よくするために可能な限り小さくすべきである。後者の2点は、吸着または膜のポート/吸着部分を通しての通過のいずれがより望ましいかに応じて、他方をほとんど考慮しなくてもよいかもしれない。
【0071】
血漿または血液等を精製するための従来的な透析膜は、機能的または構造的判断基準により分類することができる。機能的判断基準とは、ハイフラックス(high flux)、ローフラックス(low flux)または高透過性(highly permeable)等であり、他方、構造的判断基準とは、平坦、中空糸、対称または非対称等である。本発明に有用なトンネル状膜(TM)のグループは、これらの用語では十分に記載することができない。その理由は以下の通りである。
a) TMはハイフラックスおよび高透過性の膜であるが、「高透過性」と命名されたハイフラックス膜の全てがTMであるわけではない(例えば、HOSPAL製AN69)。
b) TMは非対称性であり得るが、全ての非対称性膜がTMであるわけではない(例えば、FRESENIUS AG製F8)。
c) TMは非対称性かつ高透過性であり得るが、全ての非対称性かつ高透過性膜がTMであるわけではない(Toray製PMMA)。
d) TMは対称性であり得るが、全ての対称性膜がTMであるわけではない(例えば、AKZO製Cuprophan)。
【0072】
それゆえ、用語、トンネル状膜とは、本発明に有用な、構造的および機能的特徴を有する新しい品質の透析膜を表す。
【0073】
使用前に、本発明の膜は予め以下のように処理することが好ましい。膜を、液体(A)側および液体(B)側の少なくとも片側、好ましくは両方で組換えHSA溶液を含浸させる。含浸工程に好ましい溶液は、HSAを約1〜約50 g/100ml、好ましくは約6〜約40g/100ml、より好ましくは約8〜約30g/100ml、最も好ましくは約8〜約20g/lOOmlの濃度で含有する0.9%NaCl溶液である。膜の2部分での透過および組換えHSAの吸着を可能にするために十分な時間、通常、約1〜約120分、好ましくは約10〜約60分の間、約15〜40℃、好ましくは約18〜約37℃で、pH約5〜約9,好ましくは約7で含浸液を膜の液体(A)側および液体(B)側に通す。予備処理は膜の使用直前に行うことが好ましいが、予備処理した膜は24℃以下で2年以内の間、滅菌条件下で保存することもできる。
【0074】
好ましくは、コーティング方法の間、例えば、2つのローラーポンプ(一方はダイアライザーの透析液側コンパートメント、および他方はダイアライザーの血液側コンパートメント)により、含浸液を「パルス様圧力プロフィール」を示すローラーポンプでくみ上げる。2つのポンプの圧力プロフィール間に相遅延があり、そのために膜の両側で液体が確実に有効に流入および流出されることが好ましい。
【0075】
本発明はまた、タンパク質結合型物質を含有する血漿または血液からこれらの物質を分離するための使い捨てセットに関し、このセットは上記の本発明の膜を備えたダイアライザーを含む。
【0076】
好ましい態様によると、ダイアライザーは透析液(B)側にヒト血清アルブミン含有液を有する。
【0077】
本発明はさらに、タンパク質結合型物質を含有する血漿または血液からの当該物質を分離するための使い捨てセットに関し、このセットは、本発明の膜を備えたダイアライザー、血液透析用の従来的な第2のダイアライザー、血液灌流用の従来的な活性炭吸着剤および管により連結されている血液灌流用の従来的なイオン交換樹脂ユニット、および組換えヒト血清アルブミン含有透析液(B)のユニットを備え、ここで組換えHSAは生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている。
【0078】
本発明はさらに、タンパク質結合型物質を含む血漿または血液から当該物質を分離するための使い捨てセットに関し、これは本発明の膜を備え、ヒト血清アルブミン含有液を透析液(B)側に充填したダイアライザーを含み、血液透析用の従来的な第二透析装置、血液灌流用の従来的な活性炭吸着ユニット、および管により連結されている血液還流用従来的なイオン交換樹脂ユニットおよびヒト血清アルブミンを含有する透析液のユニットを備え、この組換えHSAは生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されているものである。
【0079】
本発明はさらに、タンパク質結合型物質を含有するタンパク質含有液体(A)からのこれらの物質の分離方法に関し、この方法は膜および組換えHSAにより液体(A)を透析液(B)に対して透析することを含み、この膜はタンパク質結合型物質を透析液(B)側に透過することができ、このHSAは透析液(B)中に遊離形態で存在するか、および/または少なくとも膜の片側に結合して存在している。
【0080】
本発明はさらに、タンパク質結合型物質をこれらの物質を含むタンパク質含有液体(A)から分離する方法に関し、この方法は液体(A)を2つの機能的に異なる部分(1つはタンパク質結合型物質および水可溶性物質の通過を可能にし、そして液体(A)中のタンパク質結合型物質および液体(B)中の組換えHSAに結合したタンパク質を排除する実際の分離膜機能、他方はポートおよび吸着機能)を備えた膜により組換えHSAを含有する透析液(B)に対して透析することを含み、ここで組換えHSAは生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されており、膜は組換えHSAでコーティングされている。
【0081】
タンパク質結合型物質、および当然のことながら存在しうる従来的な水可溶性物質の、タンパク質を含有する液体(A)からの分離に関する本発明の方法は以下の通りに行う。
【0082】
精製すべき液体(A)を、膜の液体(A)側に沿って膜を備えたダイアライザーに、液体(A)側の膜面積1sqmあたり流速約50〜約500ml/分、好ましくは約100〜約200ml/分で通す。透析液(B)を膜の透析液(B)側に膜面積1sqmあたり約50〜約500ml/分、好ましくは約100〜約200ml/分の流速、好ましくは液体(A)と同じ流速で通す。
【0083】
次いで、得られた透析液(B)(これは液体(A)由来のタンパク質結合型物質を含有し、おそらく水可溶性物質を含有する)を、従来的な透析装置に連結されている第2の従来的なダイアライザーに通すことが好ましい。水性標準透析液に対する透析を行う。この透析により、水可溶性物質を透析液(B)と標準透析液との間で交換する。従って、水溶性毒素(例えば、尿素またはクレアチニンなど)を透析液(B)から分離し、電解質、グルコースおよびpHを透析液(B)中で平衡化することができ、それゆえ液体(A)中でも平衡化することができる。次いで、水可溶性物質を含有しない、得られた透析液(B)を活性炭吸着剤(例えば、GAMBRO AB製Adsorba 300 CまたはASAHI製N350)およびアニオン交換カラム(ASAHI製BR350)に通して透析液(B)中のHSAからタンパク質結合型物質を除去することが好ましい。次いで、得られた精製透析液(B)を本発明の膜の透析液(B)側に戻し、再利用する。
【0084】
詳細には、本発明の方法は以下のように行うことができる。
【0085】
精製すべき液体(A)を本発明の透析膜液体(A)側に、流速約50〜約300ml/分、好ましくは約100〜約200ml/分/sqm(透析膜)で通す。透析液(B)を約50〜約1000ml/分/sqm(透析膜)、好ましくは約100〜約500ml/分/sqm(透析膜)の流速で膜の透析液側(B)に沿って通す。液体(A)、ひいては液体(B)の流速は、同じ程度(桁)であることが好ましい。液体(A)対液体(B)の流速の比は約1:0.1〜約1:10、好ましくは約1:1〜約1:5である。保持液は精製タンパク質含有液体(A)であり、そこからタンパク質結合型物質および他の望ましくない物質が取り除かれる。
【0086】
本発明の方法の好ましい態様において、液体(A)の第1の透析工程を、得られた透析液(B)の2工程の後処理と組み合わせる。
【0087】
まず、得られた透析液(B)を、従来的な透析装置に連結している第2の従来的なダイアライザーに通す。透析は標準的な透析水溶液に対して行う。この透析により、水溶性物質を透析液(B)と標準透析液との間で交換することができる。水溶性毒素、ウレア、および/またはクレアチニンを透析液(B)から取り除き、電解質、グルコース、およびpH値を保持液である透析液(B)中で平衡化することができる。その後、透析液(B)を活性炭吸着物に通し、(例えば、GAMBRO AB製Adsorba 300 CまたはASAHI製N350)、次いでアニオン交換カラム(例えば、ASAHI製BR350)に通してタンパク質結合型物質を透析液(B)中のHSAから除去する。次いで、精製したHSA含有透析液(B)を本発明の膜の液体(B)側に戻す。
【0088】
この方法を、タンパク質含有液体中のアルブミン結合型物質および毒素の分離用に診療所において実験的な設定で試験し、液体中のこれらの化合物の顕著な減少を導いた。
【0089】
本発明の方法を単純化する可能性のある他の態様としては、以下の変法が挙げられる。ダイアライザーからの透析液(B)を別のダイアライザーに通すが、吸着剤には通さなくてもよい。ダイアライザーからの透析液(B)を1つまたは2つの吸着物へと通してもよいが、別のダイアライザーへは通さなくてよい。ダイアライザーからの透析液(B)をダイアライザーの透析液コンパートメントへの流入口へと直接戻すようにポンプで送り込む(例えば、ローラーポンプ)ことにより、透析液(B)の十分な動きおよびABTの十分な除去を実現する。さらに単純な変法は、組換えヒト血清アルブミンを約1〜約50g/dl、好ましくは約6〜約40g/dl、より好ましくは8〜30g/dl、最も好ましくは約8〜約20 g/dlの濃度で含有する透析液(B)を充填した、透析物流入口および流出口が閉鎖されている透析液コンパートメントを備えたダイアライザーであろう(この組換えHSAは生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている)。振盪または回転などにより、透析装置全体が動くかもしれない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
概して、本発明は、本発明を通して、生産される間に付随してくる脂肪酸から精製された組換えHSAを使用するという利点を有する。これにより、透析方法の効率の驚くべき向上が生じる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている組換えHSAの透析における使用。
【請求項2】
組換えHSAが他の付随してくる物質、好ましくはタンパク質または金属イオンからさらに精製されている、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
組換えHSAが非ヒトトランスジェニック動物またはトランスジェニック植物から得たものである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
HSAがウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、齧歯類またはヤギを供給源として得られたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
HSAが非ヒトトランスジェニック動物の乳または血液から得られたものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
HSAが泌乳牛の乳から得られたものである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
HSAがトランスジェニック鳥から得られたものである、請求項3に記載の使用。
【請求項8】
組換えHSAが活性炭の使用により付随してくる脂肪酸から精製されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
組換えHSAの調製に浄化工程が含まれている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
浄化がろ過により行われている、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
組換えHSAの調製が組換えHSAを含有する溶液からの組換えHSAの析出を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
組換えHSAの調製が組換えHSAを含有する溶液からの混入タンパク質の析出を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
組換えHSAの調製がクロマトグラフィー精製工程を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
クロマトグラフィー工程がアフィニティーまたはイオン交換クロマトグラフィー工程を含む、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
組換えHSAが透析液中に存在する、請求項1〜14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
HSAが透析液中に、組成物の約1〜約40重量%の範囲の濃度で存在する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
上記範囲が組成物の約5〜約30重量%の範囲である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
組換えHSAが透析膜上に存在する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている組換えHSAを含有する、透析液。
【請求項20】
組換えHSAが他の付随してくる物質、好ましくはタンパク質または金属イオンからさらに精製されている、請求項19に記載の透析液。
【請求項21】
重炭酸で緩衝化されており、ナトリウムイオンを約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムイオンを約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムイオンを約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムイオンを約0.2〜約0.8mmol/1000 ml、塩化物イオンを約100〜約110mmol/1000ml、重炭酸イオンを約30〜約40mmol/1000ml、酢酸イオンを約2〜約10mmol/1000ml、およびヒト血清アルブミンを約1〜約50g/100mlで含有する、請求項19または20に記載の透析液。
【請求項22】
重炭酸で緩衝化されており、ナトリウムイオンを約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムイオンを約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムイオンを約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムイオンを約0.2〜約0.8mmol/1000 ml、塩化物イオンを約100〜約110mmol/1000ml、重炭酸イオンを約30〜約40mmol/1000ml、酢酸イオンを約2〜約10mmol/1000ml、およびヒト血清アルブミンを約6〜約40g/100mlで含有する、請求項19または20に記載の透析液。
【請求項23】
重炭酸で緩衝化されており、ナトリウムイオンを約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムイオンを約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムイオンを約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムイオンを約0.2〜約0.8mmol/1000 ml、塩化物イオンを約100〜約110mmol/1000ml、重炭酸イオンを約30〜約40mmol/1000ml、酢酸イオンを約2〜約10mmol/1000ml、およびヒト血清アルブミンを約8〜約30g/100mlで含有する、請求項19または20に記載の透析液。
【請求項24】
重炭酸で緩衝化されており、ナトリウムイオンを約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムイオンを約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムイオンを約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムイオンを約0.2〜約0.8mmol/1000 ml、塩化物イオンを約100〜約110mmol/1000ml、重炭酸イオンを約30〜約40mmol/1000ml、酢酸イオンを約2〜約10mmol/1000ml、およびヒト血清アルブミンを約8〜約20g/100mlで含有する、請求項19または20に記載の透析液。
【請求項25】
酢酸で緩衝化されており、ナトリウムイオンを約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムイオンを約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムイオンを約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムイオンを約0.2〜約0.8mmol/1000 ml、塩化物イオンを約100〜約110mmol/1000ml、酢酸イオンを約30〜約40mmol/1000ml、およびヒト血清アルブミンを約1〜約50g/100mlで含有する、請求項19または20に記載の透析液。
【請求項26】
酢酸で緩衝化されており、ナトリウムイオンを約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムイオンを約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムイオンを約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムイオンを約0.2〜約0.8mmol/1000 ml、塩化物イオンを約100〜約110mmol/1000ml、酢酸イオンを約30〜約40mmol/1000ml、およびヒト血清アルブミンを約6〜約40g/100mlで含有する、請求項19または20に記載の透析液。
【請求項27】
酢酸で緩衝化されており、ナトリウムイオンを約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムイオンを約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムイオンを約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムイオンを約0.2〜約0.8mmol/1000 ml、塩化物イオンを約100〜約110mmol/1000ml、酢酸イオンを約30〜約40mmol/1000ml、およびヒト血清アルブミンを約8〜約30g/100mlで含有する、請求項19または20に記載の透析液。
【請求項28】
酢酸で緩衝化されており、ナトリウムイオンを約130〜約145mmol/1000ml、カルシウムイオンを約1.0〜約2.5mmol/1000ml、カリウムイオンを約2.0〜約4.0mmol/1000ml、マグネシウムイオンを約0.2〜約0.8mmol/1000 ml、塩化物イオンを約100〜約110mmol/1000ml、酢酸イオンを約30〜約40mmol/1000ml、およびヒト血清アルブミンを約8〜約20g/100mlで含有する、請求項19または20に記載の透析液。
【請求項29】
透析液(B)に対する透析によりタンパク質結合型物質を含有するタンパク質含有液体(A)からこれらの物質を分離するための膜であって、この膜の少なくとも片側には生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている組換えHSAが結合されており、この膜はタンパク質結合型物質が膜を通り抜けることができるような膜サイズを有している、膜。
【請求項30】
組換えHSAが他の付随してくる物質、好ましくはタンパク質または金属イオンからさらに精製されている、請求項29に記載の膜。
【請求項31】
一方の部分はタンパク質結合型物質を通過させ、液体(A)中でタンパク質結合型物質に結合し、液体(B)中で組換えHSAに結合するタンパク質を排除する実際の分離膜機能を有し、他方の部分はポートおよび吸着機能を有する、2つの機能的に異なる部分(領域)を備え、少なくとも片側がタンパク質結合型物質に対するアクセプター機能を有するタンパク質でコーティングされている、請求項29または30に記載の膜。
【請求項32】
一方の部分は液体(A)側にトンネル状構造を備えた実際の分離膜機能を有し、このトンネルは約10μm未満の長さであり、液体(A)中のタンパク質および液体(B)中のアクセプタータンパク質を十分排除できる程度に小さい直径を有しており、ある部分は透析液(B)側にポートおよび吸着構造を備えている、請求項29〜31のいずれか1項に記載の膜。
【請求項33】
トンネルの長さが約5μm未満である、請求項32に記載の膜。
【請求項34】
トンネルの長さが約0.1μm未満である、請求項32に記載の膜。
【請求項35】
膜物質が、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリロニトリルポリマー、ビニルアルコールポリマー、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマーおよびセルロースアセテートポリマーからなる群から選択される、請求項29〜34のいずれか1項に記載の膜。
【請求項36】
膜物質がポリスルホンである、請求項35に記載の膜。
【請求項37】
請求項29〜36のいずれか1項に記載の膜を含むダイアライザーを有する、タンパク質結合型物質を含有する血漿または血液からこれらの物質を分離するための使い捨てセット。
【請求項38】
ダイアライザーが透析液(B)側にヒト血清アルブミン含有液体を含んでいる、請求項37に記載の使い捨てセット。
【請求項39】
請求項29〜36のいずれか1項に記載の膜を備えたダイアライザー、血液透析用の第2の従来的ダイアライザー、血液灌流用の従来的な活性炭吸着ユニットおよび管により連結されている従来的な血液灌流用イオン交換樹脂、および組換えヒト血清アルブミン含有透析液(B)のユニットを備えているタンパク質結合型物質を含有する血漿または血液からこれらの物質を分離するための使い捨てセットであって、ここで組換えHSAが生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている、セット。
【請求項40】
請求項29〜36のいずれか1項に記載の膜を含み、透析液(B)側にヒト血清アルブミン含有液体を充填しているダイアライザー、血液透析用の第2の従来的なダイアライザー、従来的な血液灌流用活性炭吸着ユニット、および管により連結されている従来的な血液灌流用イオン交換樹脂ユニット、および透析液を含有するヒト血清アルブミンのユニットを備えているタンパク質結合型物質を含有する血漿または血液からこれらの物質を分離するための使い捨てセットであって、ここで組換えHSAが生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている、セット。
【請求項41】
膜および組換えHSAにより透析液(B)に対して液体(A)を透析することを含む、タンパク質結合型物質を含有するタンパク質含有液体(A)からこれらの物質を分離する方法であって、この膜はタンパク質結合型物質の透析液(B)側への通過が可能であり、このHSAは透析液(B)中に遊離形態でか、および/または膜の少なくとも片側に結合した形態のいずれかで存在し、この組換えHSAは生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている、分離方法。
【請求項42】
組換えHSAが他の付随してくる物質、好ましくはタンパク質または金属イオンからさらに精製されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
組換えHSAを含有する透析液(B)に対して液体(A)を透析することを含む、タンパク質結合型物質を含むタンパク質含有液体(A)からこれらの物質を分離する方法であって、組換えHSAは生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されており、そしてこの膜は一方の部分はタンパク質結合型物質および水可溶性物質の通過を可能にし、液体(A)中のタンパク質結合型物質および液体(B)中の組換えHSAに結合しているタンパク質を排除する実際の分離膜機能を有し、他方の部分はポートおよび吸着機能を有する、2つの機能的に異なる部分を含む膜により分離し、膜は組換えHSAでコーティングされている、方法。
【請求項44】
組換えHSAが他の付随してくる物質、好ましくはタンパク質または金属イオンからさらに精製されている、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ある部分は液体(A)側にトンネル状構造を備えた実際の分離膜機能を有し、このトンネルは10μm未満の長さであり、液体(A)中のタンパク質および液体(B)中の組換えHSAを十分排除する直径を有し、ある部分は透析液(B)側にポートおよび吸着機能を有する、請求項41〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
膜のトンネルの長さが約5μm未満である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
膜のトンネルの長さが約0.1μm未満である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
膜物質が、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリロニトリルポリマー、ビニルアルコールポリマー、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマーおよびセルロースアセテートポリマーからなる群から選択される、請求項41〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
膜物質がポリスルホンである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
タンパク質含有液体(A)が血漿および血液からなる群から選択される、請求項41〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
組換えHSA生産される間に付随してくる脂肪酸から精製されている組換えHSAを含有する液体で膜がコーティングされている、請求項41〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
透析液(B)が組換えヒト血清アルブミンを、約1〜約50グラム/100ml、好ましくは約6〜約40グラム/100ml、より好ましくは約8〜約30グラム/100mlの濃度で、さらにより好ましくは約8〜約20グラム/100mlの濃度で含有している、請求項41〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
肝不全の治療用医薬組成物の調製のための、生産される間に脂肪酸から精製されている組換えヒト血清アルブミン(HSA)の使用。


【公表番号】特表2006−522752(P2006−522752A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504622(P2006−504622)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002456
【国際公開番号】WO2004/080575
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(505344029)フレゼニウス・カビ・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】FRESENIUS KABI DEUTSCHLAND GmbH
【Fターム(参考)】