説明

肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制剤

【課題】肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制剤として有用な医薬組成物を提供する。
【解決手段】ナトリウム/グルコース共輸送体2阻害薬を有効成分として含有することを特徴とする医薬組成物であり、肝臓への異常な脂肪蓄積を抑制する作用を有しているため、一般的な脂肪肝を始めとして、非アルコール性脂肪肝(NASH)、過栄養性脂肪肝、糖尿病性脂肪肝、アルコール性脂肪肝または中毒性脂肪肝などの進展抑制剤として極めて好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム/グルコース共輸送体2(以後SGLT2と称する)阻害薬を有効成分として含有する、肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な脂肪肝を始め、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、過栄養性脂肪肝、糖尿病性脂肪肝、アルコール性脂肪肝または中毒性脂肪肝などの、肝臓中に脂肪が異常に蓄積する疾患を呈する患者は年々増加しており、なかでも非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、重篤な病状を示すとして特に問題視されている(非特許文献1または2を参照)。さらに、肝臓への異常な脂肪蓄積は、肝臓の炎症や肝臓の繊維化(肝硬変)を引き起こしたり、肝癌等の重篤な疾患へ移行することが指摘されており(非特許文献1〜4を参照)、この脂肪蓄積を抑制することは極めて重要である。
【0003】
肝臓への脂肪蓄積は、近年の生活様式の変化をはじめとする様々な要因が相互に重なり合い、肝臓におけるエネルギー代謝に異常をきたした結果引き起こされると考えられており、そのためその治療方法は一様ではない(非特許文献5参照)。現在、肝臓への脂肪蓄積を改善する方法としては、食餌療法、運動療法、薬物療法などが試行されているが、これらの方法は、コントロールや継続的な実施が困難であるために、必ずしも満足のいく治療効果が得られない場合も多い。一方、薬物療法においてはポリエンフォスファチジルコリン製剤が脂肪肝に対して保険適用となっているのみである。以上のように、肝臓への脂肪蓄積に対してはまだ十分な処置方法が確立されておらず、脂肪蓄積に対してより有効性の高い薬剤の開発が嘱望されている。
【0004】
SGLT2阻害薬は、腎臓における糖の再吸収を阻害して、血糖降下作用を示す薬剤であり、糖尿病の予防または治療薬として有用であること知られている(例えば、特許文献1〜19を参照)。また、これまでSGLT2阻害薬は、式
【化1】

【0005】
で表されるT−1095をペルオキシソーム増殖活性化受容体(以後PPARと称する)アゴニストまたはレチノイドX受容体(以後RXRと称する)アゴニストと同時に使用することにより、PPARアゴニストまたはRXRアゴニストの使用量を減らすことができ、それ故、PPARアゴニストまたはRXRアゴニストに伴う脂肪肝等の副作用の発現を抑えることが可能である旨の提案がされている(特許文献20または21を参照)。しかしながら、本発明のように、SGLT2阻害薬が肝臓脂肪の異常蓄積に対して抑制効果を奏することについては未だ知られていない。
【0006】
糖尿病性脂肪肝の治療においては、血糖降下剤の使用が検討されている(非特許文献6を参照)。しかしながら、血糖低下作用を有する糖尿病治療薬、例えばトルブタミドは、肝臓への脂肪蓄積を抑制する効果を発揮しないこと(非特許文献7を参照)や、逆に肝臓への脂肪蓄積を増悪させるおそれがあることも指摘されており(非特許文献6を参照)、脂肪肝に対する有用性は確認されていない。
【0007】
また、高脂血症治療剤であるクロフィブレートは、血中の中性脂肪やコレステロールを低下させる一方、肝臓への脂肪蓄積という副作用を引き起こすことも報告されている(特許文献22を参照)。更に、高脂血症治療剤であるミクロソームトリグリセライド転送蛋白(以後MTPと称する)阻害薬においても、血中の中性脂肪やコレステロールを低下させるものの、肝臓への脂肪蓄積を誘発することが報告されている(特許文献23〜24、非特許文献8〜9を参照)。以上の通り、これらの高脂血症治療薬においては、血中と肝臓での中性脂肪やコレステロールの量には相間が認められない上に、脂肪肝を誘発する場合も観察されている。
【0008】
【特許文献1】国際公開第02/28872号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/44192号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/53573号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/16147号パンフレット
【特許文献5】国際公開第01/68660号パンフレット
【特許文献6】国際公開第03/11880号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/00712号パンフレット
【特許文献8】国際公開第02/068440号パンフレット
【特許文献9】国際公開第02/68439号パンフレット
【特許文献10】国際公開第02/64606号パンフレット
【特許文献11】国際公開第03/80635号パンフレット
【特許文献12】国際公開第02/88157号パンフレット
【特許文献13】国際公開第02/36602号パンフレット
【特許文献14】国際公開第03/20737号パンフレット
【特許文献15】国際公開第01/74835号パンフレット
【特許文献16】国際公開第01/74834号パンフレット
【特許文献17】特開2003−012686号公報
【特許文献18】国際公開第01/27128号パンフレット
【特許文献19】国際公開第03/99836号パンフレット
【特許文献20】国際公開第02/080936号パンフレット
【特許文献21】国際公開第02/080935号パンフレット
【特許文献22】特開平8−119860号公報
【特許文献23】特開2002−220345号公報
【特許文献24】国際公開第03/075232号パンフレット
【非特許文献1】石井裕正,「医学のあゆみ」,2003年,第206巻,第5号,p.323−325
【非特許文献2】田中直樹,他1名,「肝臓」,2002年,第43巻,第12号,p.539−549
【非特許文献3】小池和彦,「医学のあゆみ」,第206巻,第5号,p.385−388
【非特許文献4】内村浩太郎,他3名,「臨床と研究」,2003年,第80巻,第3号,p.503−506
【非特許文献5】岩村健一郎,「肝臓」,1971年,第12巻,第12号,p.659−669
【非特許文献6】岩村健一郎,「最新医学」,1978年,第33巻,第3号,p.524−531
【非特許文献7】A.Beringer,他3名,「Deutsche Medizinische Wochenschrift」,1967年,第92巻,第号,p.2388−2392
【非特許文献8】大橋 健、「Annual review. 内分泌,代謝2000」,中外医学社出版,p.17−23
【非特許文献9】大須賀淳一,「内科」,2002年,第89巻,第5号,p.875−881
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制剤として有用な医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題に鑑み、肝臓への脂肪蓄積を抑制する作用を有する化合物について鋭意研究を重ねた結果、SGLT2阻害薬が、優れた脂肪蓄積の抑制効果を有するという驚くべき知見を得、本発明を成すに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)SGLT2阻害薬を有効成分として含有することを特徴とする、肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制用の医薬組成物;
(2)SGLT2阻害薬が、2−(4−メトキシベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシドまたはその薬理学的に許容される塩、或いはそのプロドラッグである、前記(1)記載の進展抑制用の医薬組成物;
(3)メトフォルミン、トログリタゾン、塩酸ピオグリタゾン、ベザフィブラートおよびボグリボースから選択される1種類以上の薬剤と組み合わせて用いられる、前記(1)または(2)記載の医薬組成物;等に関するものである。
【0012】
本発明の有効成分であるSGLT2阻害薬とは、SGLT2の活性を阻害し腎臓における糖の再吸収を阻害する化合物を意味する。本発明におけるSGLT2阻害薬としては、前記特許文献1〜19に記載されているSGLT2阻害薬を挙げることができ、好ましい実施態様の具体例としては、以下の群から選択される化合物またはそれらの薬理学的に許容される塩を挙げることができる。
2−(4−メトキシベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−メチルベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−イソブチルベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−エトキシベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−イソプロポキシベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、5−ヒドロキシメチル−2−(4−プロポキシベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)−5−ヒドロキシメチルフェニル β−D−グルコピラノシド、2−〔4−(2−ヒドロキシエチル)ベンジル〕−5−ヒドロキシメチルフェニル β−D−グルコピラノシド、2−〔4−(2−ヒドロキシエチル)ベンジル〕フェニル β−D−グルコピラノシド、2−〔4−(3−ヒドロキシプロピル)ベンジル〕フェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルチオベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−〔2−(メトキシ)エチルオキシカルボニル〕−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−ヘキサノイル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−プロピオニル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−ブチリル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−イソブチリル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−エチルスクシニル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−イソプロピルオキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−メチルベンジル)フェニル 6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、 2−(4−メチルベンジル)フェニル 6−O−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)フェニル 6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)フェニル 6−O−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、5−アミノ−2−(4−エチルベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、 2−〔4−(3−ヒドロキシプロピル)ベンジル〕−3,5−ジメチルフェニル β−D−グルコピラノシド、2−〔4−(2−ヒドロキシエチル)ベンジル〕−3,5−ジメチルフェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−メトキシベンジル)−3,5−ジメチルフェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)−5−ヒドロキシメチルフェニル 6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)−5−ピバロイルオキシメチルフェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)−5−ヒドロキシメチルフェニル 6−O−ブチリル−β−D−グルコピラノシド、5−アセトキシ−2−(4−エチルベンジル)フェニル 6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)−5−(エトキシカルボニルオキシメチル)フェニル β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)−5−ヒドロキシメチルフェニル 6−O−ヘキサノイル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)−5−ヒドロキシメチルフェニル 6−O−ピバロイル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)−5−ヒドロキシメチルフェニル −O−イソブチルオキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−エチルベンジル)−5−ヒドロキシメチルフェニル −O−イソプロピルオキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、2−〔4−(2−ベンジルオキシエチル)ベンジル〕フェニル 6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、2−〔4−(2−ベンジルオキシエチル)ベンジル〕フェニル 6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド、2−〔4−(2−アセトキシエチル)ベンジル〕フェニル 6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド、2−(4−ピラゾール−1−イルベンジル)フェニル β−D−グルコピラノシド、2−〔4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)ベンジル〕 β−D−グルコピラノシド、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−5−メチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−〔(4−プロピルフェニル)メチル〕−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソブチルフェニル)メチル〕−5−メチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−〔(4−プロポキシフェニル)メチル〕−1H−ピラゾール、4−〔(4−エトキシフェニル)メチル〕−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕−1H−ピラゾール、5−エチル−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロピルフェニル)メチル〕−5−メチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕−5−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メトキシフェニル)メチル〕−5−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メトキシフェニル)メチル〕−5−メチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−メチル−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕−5−トリフルオロメチルピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−〔(4−メチルフェニル)メチル〕−1H−ピラゾール、4−〔(4−エチルフェニル)メチル〕−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−1H−ピラゾール、4−〔(4−エチルフェニル)メチル〕−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メトキシフェニル)メチル〕−1,5−ジメチルピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−メチル−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕−5−トリフルオロメチルピラゾール、1−エチル−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕−5−トリフルオロメチルピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕−1−プロピル−5−トリフルオロメチルピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−5−メチル−1−プロピルピラゾール、1−エチル−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−5−メチルピラゾール、1−エチル−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メトキシフェニル)メチル〕−5−メチルピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メトキシフェニル)メチル〕−5−メチル−1−プロピルピラゾール、1−エチル−4−〔(4−エトキシフェニル)メチル〕−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−1−プロピルピラゾール、1−エチル−4−〔(4−エチルフェニル)メチル〕−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチルピラゾール、4−〔(4−エチルフェニル)メチル〕−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−1−プロピルピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−{〔4−(シクロプロピリデンメチル)フェニル〕メチル}−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−〔(4−シクロプロピルフェニル)メチル〕−1H−ピラゾール、(E)−4−{〔4−(ブタ−1−エン−1−イル)フェニル〕メチル}−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−{〔4−(チアゾール−2−イル)フェニル〕メチル}−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−{〔4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕メチル}−5−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−{〔4−(2−メチルプロパ−1−エン−1−イル)フェニル〕メチル}−1H−ピラゾール、4−{〔4−(4−フルオロフェニル)フェニル〕メチル}−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−1H−ピラゾール、4−{〔4−(シクロブチルオキシ)フェニル〕メチル}−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−1H−ピラゾール、3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−1−(シクロプロピルメチル)−4−〔(4−シクロプロピルフェニル)メチル〕−1H−ピラゾール、1−(シクロプロピルメチル)−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕−1H−ピラゾール、4−〔(4−エチルフェニル)メチル〕−3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−メチル−1H−ピラゾール、2−(4−ピラゾール−1−イルベンジル) β−D−グルコピラノシド、2−〔4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)ベンジル〕フェニル β−D−グルコピラノシド、4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−3−(6−O−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチルピラゾール、3−(6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、3−(6−O−イソプロポキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、3−(6−O−イソブトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、4−〔(4−エチルフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−3−(6−O−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチルピラゾール、3−(6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−エチルフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、4−〔(4−エチルフェニル)メチル〕−3−(6−O−イソプロポキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、4−〔(4−エチルフェニル)メチル〕−3−(6−O−イソブトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、4−〔(4−エトキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−3−(6−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチルピラゾール、3−(6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−エトキシフェニル)メチル−1−イソプロピル−5−メチルピ



ラゾール、4−〔(4−エトキシフェニル)メチル〕−3−(6−O−イソプロポキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、3−(6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−4−〔(4−メトキシフェニル)メチル〕−5−メチルピラゾール、4−(4−エトキシフェニル)メチル〕−3−(6−O−イソブトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、1−イソプロピル−3−(6−O−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−メトキシフェニル)メチル〕−5−メチルピラゾール、3−(6−O−イソプロポキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−4−〔(4−メトキシフェニル)メチル〕−5−メチルピラゾール、3−(6−O−イソブトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−4−〔(4−メトキシフェニル)メチル〕−5−メチルピラゾール、2−〔(4−エトキシフェニル)メチル〕−4−(β−D−グルコピラノシル)−1−クロロベンゼン、1−イソプロピル−3−(6−O−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチル−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕ピラゾール、3−(6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−5−メチル−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕ピラゾール、3−(6−O−イソプロポキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−5−メチル−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕ピラゾール、3−(6−O−イソブトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−1−イソプロピル−5−メチル−4−〔(4−メチルチオフェニル)メチル〕ピラゾール、3−(4−エチルベンジル)−2−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4,6−ジメチルピリジン、2−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−(4−メトキシベンジル)−4,6−ジメチルピリジン、2−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−{4−(2−ヒドロキシエチル)ベンジル}−4,6−ジメチルピリジン及び2−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−6−メトキシ−3−(4−メトキシベンジル)−4−メチルピリジン。
【0013】
上記の化合物は、例えば、前記特許文献1〜19に記載の方法あるいはそれに準拠した方法等により製造することができる。
【0014】
本発明において、肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患とは、肝臓内にトリグリセライドを始めとする脂肪が異常に蓄積する疾患を指し、肝臓の正常細胞に対する脂肪量の比や肝臓重量が異常に増加したり、肝臓の大きさが異常に増加する疾患であり、脂肪の蓄積量がさらに増大していくという進行型のものも含む。またさらには、脂肪の蓄積が原因で他の疾患へ移行するものや、炎症を伴うものも含まれる。具体的には、一般的な脂肪肝の他に、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、過栄養性脂肪肝、アルコール性脂肪肝、中毒性脂肪肝、糖尿病性脂肪肝、急性妊娠脂肪肝等が挙げられる。
【0015】
肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制効果は、例えば、脂肪肝を発症したKKAマウスを用いた試験により確認することができ、本発明者等は、SGLT2阻害薬である2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシドを経口的にラットに投与した場合、ラット肝臓への脂肪蓄積量が増大していく症状を、当該化合物を投与しない場合に比して有意に抑制することを確認した。以上の結果は、SGLT2阻害薬を有効成分として含有する医薬組成物が、肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制剤として極めて有効であることを裏付けるものである。
【0016】
本発明においては、有効成分であるSGLT2阻害薬に、脂肪肝に対して用いられている他の薬剤を適宜1種類以上組み合わせて使用することができる。組み合わせて使用できる他の薬剤としては、例えばポリエンフォスファチジルコリン製剤、大柴胡湯などを挙げることができる。また、本発明の目的が達成される限りであれば、上記以外の薬剤と組み合わせて使用しても良く、その場合の薬剤としては、メトフォルミン、トログリタゾン、塩酸ピオグリタゾン、ベザフィブラートまたはボグリボース等が挙げられる。
【0017】
SGLT2阻害薬と上記他の薬剤を1種類以上組み合わせて使用する場合、単一の製剤としての同時投与、別個の製剤としての同一または異なる投与経路による同一投与、および別個の製剤としての同一または異なる投与経路による間隔をずらした投与のいずれの方法で投与してもよい。
【0018】
本発明の医薬組成物は、それ自体あるいはその剤型に応じ調剤学上使用される手法により、適当な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤などの医薬品添加剤と適宜混合または希釈・溶解し、常法に従い調剤することにより、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤、軟膏剤、座剤、貼付剤等の剤形に製剤化でき、経口的または非経口的に投与することができる。また、消化管粘膜付着性製剤等を含む徐放性製剤としても良い(例えば、国際公開第99/10010号パンフレット、国際公開第99/16606号パンフレット、特開2001−2567号公報を参照)。
【0019】
本発明の医薬組成物におけるSGLT2阻害薬の投与量は、患者の年齢、性別、体重、疾患の程度等により適宜決定されるが、経口投与の場合成人1日当たり概ね0.1〜1000mgの範囲で、非経口投与の場合は、成人1日当たり概ね0.01〜300mgの範囲で、一回または数回に分けて適宜投与することができる。また、SGLT2阻害薬以外の薬剤と組み合わせて使用する場合、SGLT2阻害薬の投与量は、SGLT2活性阻害薬以外の薬剤の投与量に応じて減量することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のことから、SGLT2阻害薬を有効成分として含有する、本発明の医薬組成物は、肝臓脂肪の異常蓄積を抑制する効果を有しており、肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制剤として極めて好適である。それ故、SGLT2阻害薬を用いることにより、従来の無理な食餌療法による食事制限や、持続の困難な運動療法を強いられることなく、肝臓への異常な脂肪蓄積を抑制することが可能な優れた医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の内容を以下の試験例により更に詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
肝臓脂肪の蓄積抑制効果の確認試験
実験動物として脂肪肝を呈するKKAマウス(KKAy/Ta Jcl、日本クレア株式会社製)を用いて、SGLT2阻害作用に基づく肝臓脂肪の蓄積抑制効果について評価した。脂肪肝を呈するKKAマウスは以下の方法により作製した。
【0023】
雌性、10週齢のKKAマウスを4週間予備飼育した。群分けの4日前までの予備飼育期間中はCE−2実験動物用固形飼料(日本クレア株式会社製)の自由摂食による飼育をおこなった。群分け4日前より飼料をCE−2実験動物用粉末飼料(日本クレア株式会社製)に変更した。群分けのため14週齢時に体重、血糖値および血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ値(ALT)を測定した。これら3項目の検査値のいずれについても二群間に有意差が無いように各群5例として群分けした。第二群に対してはSGLT2阻害薬として、2−(4−メトキシベンジル)フェニル 6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド(以下化合物Aと称する)をCE−2実験動物用粉末飼料(日本クレア株式会社製)に1000ppm含有する飼料を11日間給餌した後、肝臓中のトリグリセリド含有量を測定した。その測定結果は表1に示した通りである。その結果、脂肪肝を呈するKKAマウスに化合物Aを投与することにより、薬物未処置の場合に比べ、肝臓中への脂肪蓄積が有意に抑制されることが示された。このことは、SGLT2阻害薬が肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展を抑制する効果を発揮することを示すものである。
【0024】
肝臓中のトリグリセリド含有量の測定方法は以下の通りである。
1)肝臓1gに対し4mLの割合で氷冷した生理食塩水(大塚製薬株式会社製)を加え、ペッスル型ホモジナイザーにて均一な懸濁液を調製した。
2)1)の懸濁液100μLを取り、これに800μLのFolchの試薬(クロロホルム:メタノール=2:1)を加え激しく攪拌し、総脂質を抽出した。
3)2)の混合液を冷却遠心機(KUBOTA8900、株式会社久保田製作所)にて遠心分離した(3000rpm、10分、室温)。
4)3)の遠心分離後の下層を回収し別の容器に移し溶液(A)とした。
5)3)の遠心分離後の上層に150μLのFolchの試薬を加え激しく攪拌し、3)と同じ操作により遠心分離し、このうち下層を先の溶液(A)に加えた。
6)250μLの生理食塩水を、5)で得られた溶液(A)に加え激しく攪拌した後、再び3)と同じ操作により遠心分離した。
7)6)の遠心分離後の上層を吸引除去したのち、下層の溶媒を窒素気流下にて除去した。
8)7)の残渣に300μLのFolchの試薬を加え溶解した。
9)8)の溶解液のうち10μLをリアビーズチューブ(ダイナボット社)に移し、溶媒を窒素気流下にて除去した。
10)9)の残渣に対しトリグリセライドEテストワコー(和光純薬工業株式会社)の発色試薬1.5mLを加える反応系にてトリグリセリドを定量した。
11)10)の結果より肝臓1gあたりのトリグリセリド含有量を算出した。データは平均値±標準誤差で表記した。
【0025】
【表1】

【0026】
表1中の*印は、第一群に対して統計学的有意差(危険率5%以下)があることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0027】
SGLT2阻害薬を有効成分として含有する本発明の医薬組成物は、肝臓への異常な脂肪蓄積を抑制する効果を有しており、肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−(6−O−エトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制用の医薬組成物。
【請求項2】
3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−3−(6−O−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−メチルピラゾール、3−(6−O−イソプロポキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、若しくは3−(6−O−イソブトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−4−〔(4−イソプロポキシフェニル)メチル〕−1−イソプロピル−5−メチルピラゾール、またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する肝臓脂肪の異常蓄積に起因する疾患の進展抑制用の医薬組成物。
【請求項3】
メトフォルミン、トログリタゾン、塩酸ピオグリタゾン、ベザフィブラート及びボグリボースから選択される1種類以上の薬剤と組み合わせて用いられる、請求項1または2記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2012−92146(P2012−92146A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23667(P2012−23667)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【分割の表示】特願2006−529228(P2006−529228)の分割
【原出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000104560)キッセイ薬品工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】