肝臓造影像を用いた医用画像診断装置および方法、並びにプログラム
【課題】肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像に基づいて、各時相における関心領域の信号値の時系列的変化を詳細かつ効率的に把握する。
【解決手段】関心領域設定部32が、肝臓造影画像の各々に対して、各時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定し、局所画像生成部34が、各時相の肝臓造影画像の各々に基づいて、関心領域を表す局所断面画像を時相毎に生成し、表示制御部36が、生成された時相毎の局所断面画像を比較読影可能な態様で表示させる。
【解決手段】関心領域設定部32が、肝臓造影画像の各々に対して、各時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定し、局所画像生成部34が、各時相の肝臓造影画像の各々に基づいて、関心領域を表す局所断面画像を時相毎に生成し、表示制御部36が、生成された時相毎の局所断面画像を比較読影可能な態様で表示させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いて得られた肝臓造影像に基づいて画像診断を行う医用画像診断装置および方法、並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
造影剤を用いた肝臓の超音波検査の際に、原発性肝癌、肝細胞癌のような重大な肝臓腫瘍は、周囲の正常な組織及び良性腫瘍と比較して、造影剤の急速注入後の早い段階での収容及び増光により検出されることに着目し、造影剤注入後に時系列的に取得された画像から、造影剤のこの早い収容及び増光が生じる画素又はボクセル領域を探し、識別し、肝臓での造影剤の到着時刻の分布を表すパラメータ画像においてこれらの画素又はボクセルの位置を強調表示する超音波診断システムが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、肝臓等の灌流(perfusion)CTアプリケーションとして、血流量やピーク強調までの時間等の灌流パラメータの値の範囲毎に所定の色を割り当て、画像中の灌流パラメータの値毎に色分け表示するものが提案されている(特許文献2)。
【0004】
一方、3次元画像データから2次元の断面画像を再構成して表示する装置としては、アキシャル、サジタル、コロナルの直交3断面の画像を表示するものがよく知られている(特許文献3)。
【0005】
また、複数のシリーズの医用画像の比較読影を行うための装置であって、各シリーズの医用画像データに基づいて、同じ方向から見た、同じ断面位置の断面画像を各々生成して表示するものが知られている(特許文献4)。
【0006】
さらに、1回の撮影で、心臓などの同一部位を連続して撮影することで、撮影時刻が異なる複数のボリュームデータを取得し、各ボリュームデータの代表画像を生成して縮小表示するとともに、縮小表示された代表画像の各々に、そのボリュームデータの撮影時刻を示すマーカーを重畳表示するようにした装置も知られている(特許文献5)。
【0007】
ところで、肝特異性のMRI用造影剤として、常磁性のガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)を有効成分とするもの(以下、EOB造影剤と呼ぶ)が開発されている。ガドキセト酸ナトリウムは、従来の非特異的な細胞外液性造影剤であるガドベンテト酸メグルミン(Gd-DTPA)に類似する基本骨格に、ベンゼン環と脂溶性のエトキシベンジル基(EOB)が付加された構造を有しているため、脂溶性が高まることによって細胞膜通過性が亢進し、正常な機能を有する肝細胞内に選択的に取り込まれるという性質を有する。その結果、正常な肝細胞(信号値が高い)と機能の低下または消失した肝細胞(信号値が低い)との画像上のコントラストにより、これまでの造影剤では実現されなかった、肝細胞機能の側面から見た腫瘍(例えば、のう胞、転移性肝癌、ほとんどの肝細胞癌)の検出、特に1cm以下の小さな腫瘍の検出や、肝腫瘍の良悪性の鑑別が可能になると期待されている。(非特許文献1から3)
EOB造影剤を用いた肝臓の造影検査では、造影剤投与後の経過時間によって造影効果が出現する部位が異なる。具体的には、造影剤投与20〜35秒後のタイミングで撮影された動脈相では、肝動脈から肝臓に流れ込んだEOB造影剤により、肝臓内の血管の豊富な部位が強く造影される。そして、造影剤投与3分後の平衡相や投与20分後の肝細胞造影相になると、EOB造影剤は正常な肝細胞に取り込まれるので、正常な肝細胞の部分が強く造影され、最初に強く造影された血管の豊富な部位でのEOB造影剤の濃度は下がる。
【0008】
したがって、EOB造影剤を用いた肝臓の画像診断では、造影剤投与後の複数の時相で得られた画像に基づいて総合的な判断を行うことが重要であるとされている。例えば肝実質中に多血性肝腫瘍があれば、動脈相ではその部分は強く造影され、画像中では高信号領域となる。これに対して、平衡相や肝細胞造影相では、多血性肝腫瘍の部分の造影剤濃度は下がり、さらにこの腫瘍の部分は肝実質中の正常な部分ではないのでEOB造影剤は取り込まれず、画像中では低信号領域となる。すなわち、多血性肝腫瘍の場合、動脈相では血流を反映して高信号領域として画像化された後、平衡相や肝細胞造影相では肝機能の異常性を反映して低信号領域として画像化されるというように、各相での信号値の変化を時系列的に解析することにより、高い精度での検出・鑑別が可能となる。(非特許文献2および3)
また、EOB造影剤は、静脈内投与後、血管内および細胞間隙に分布し、投与20分後から肝細胞造影相の撮影が可能になり、信号増強効果は少なくとも2時間は持続し、そして、最終的には尿中および胆汁中に排泄される。したがって、造影剤投与直後から排泄までの血流動態を画像化したものを用いて血流評価による診断が可能であるだけでなく、肝細胞造影相における肝細胞機能評価が可能となる。(非特許文献1から3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2008−531082号公報
【特許文献2】特開2006−334404号公報
【特許文献3】特開2004−105256号公報
【特許文献4】特開2007−282656号公報
【特許文献5】特開2009−148422号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】中川 裕幸、「肝細胞特異性MRI用造影剤「EOB・プリモビスト注シリンジ」の概要について」、[online]、2008年7月24日、社団法人 岐阜県放射線技師会 西濃支部、[2009年7月10日検索]、インターネット〈URL:http://plaza.umin.ac.jp/~GifuART/sibu/seino/2008_seino_HP/pdf/dai1kai_syouroku_nakagawa.pdf〉
【非特許文献2】斎藤 聡、「新しい造影剤:ガドキセト酸ナトリウムの可能性について(教育講演,テーマB:MR『上腹部MR検査を再考する』)」、放射線撮影分科会誌、2008年10月1日、51号、pp.30-33
【非特許文献3】加藤 勇治、「肝細胞癌スクリーニングに新たなMRI造影剤登場」、[online]、2008年2月22日、日経メディカル オンライン、[2009年7月10日検索]、インターネット〈URL:http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200802/505562.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
EOB造影剤を用いた肝臓の画像診断を効率的に行うためには、複数の撮影時相における関心領域の信号値の時系列的変化を的確に把握できることが求められる。
【0012】
これに対して、特許文献1や2に記載されたパラメータ画像は、時間軸方向に対して圧縮を行った画像となっているため、関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することは困難である。また、実際の画像診断の現場では、パラメータ画像のみから判断を行うことは現実的ではなく、原画像に立ち返って判断を行うことになるため、複数の撮影時相における原画像を、診断効率の向上に適した態様で表示することが求められる。
【0013】
そこで、医用画像の表示に関する上記先行技術の採用を検討すると、例えば、特許文献3に記載された画像表示装置を応用し、画面全体を表示したい撮影時相の数の小領域に分割し、各小領域内に、1つの撮影時相における直交3断面の画像を表示することにより、画面内に、直交3断面の画像を複数時相分並べて表示することが考えられるが、この場合、画面サイズの制約から、各撮影時相における各断面画像のサイズが小さくなってしまい、関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することは困難である。また、表示される断面画像はその断面における被検体全体を表すものであるから、各断面画像において関心領域を特定する必要があり、関心領域の信号値の時系列的変化を効率的に把握するという点では、十分な機能を有しているとはいえない。
【0014】
また、特許文献4に記載された医用画像表示装置では、各シリーズの医用画像がEOB造影剤投与に伴う各撮影時相の医用画像に相当するとすれば、複数の撮影時相の断面画像を並列的に表示することは可能であるが、表示される断面画像は、その断面における被検体全体を表す画像であるから、表示するシリーズの数、すなわち撮影時相の数を増やせば、各断面画像のサイズは小さくなってしまうため、上記と同様に、関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することは困難である。また、関心領域の効率的な特定の点でも課題が残る。
【0015】
さらに、特許文献5に記載された装置では、各撮影時相の医用画像が一覧表示されるものの、撮影時刻毎に表示される代表画像中に関心領域が存在するとは限らず、また、表示される代表画像も縮小されたものとなっているため、関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することは困難である。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像に基づいて、各時相における関心領域の信号値の時系列的変化を詳細かつ効率的に把握することを可能にする医用画像診断装置および方法、並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の医用画像診断装置は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成する局所画像生成手段と、生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させる表示制御手段とを設けたことを特徴とする。
【0018】
本発明の医用画像診断方法は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定するステップと、前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成するステップと、生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させるステップとを行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の医用画像診断プログラムは、コンピュータに上記方法を実行させるためのものである。
【0020】
本発明において、肝臓造影画像は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査で取得されたものであり、肝臓における血流と肝機能が画素値の高低として反映された画像となる。
【0021】
また、造影検査で用いられる造影剤は、肝臓における血流と肝機能とを異なるタイミングで画像に反映するものであることが好ましい。具体例としては、ガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)を有効成分とするMRI用の造影剤が挙げられる。
【0022】
また、この造影検査において肝臓造影画像が取得された複数の時相のすべてを注目時相としてもよいし、複数の時相の中から2以上の注目時相を選択するようにしてもよい。具体的な選択方法としては、造影剤投与後の経過時間に応じて注目時相を選択する方法が考えられる。例えば、造影剤投与後、所定の時間間隔で注目時相を選択することや、造影剤投与後、予め決められた時間(例えば、20秒、70秒、3分、20分)が経過した時点を注目時相として選択することが考えられる。このとき、造影剤が肝動脈から肝臓中の血管に流れ込んでいる時点である動脈相、および、造影剤が正常な肝細胞に取り込まれた時点である肝細胞造影相が注目時相に含まれるようにすることが好ましい。
【0023】
「各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定する」とは、各注目時相での肝臓造影画像に対して別個の関心領域を設定するのではなく、同一の関心領域を各注目時相の肝臓造影画像に対して設定することを意味する。したがって、設定された関心領域は各注目時相間で位置的に対応したものとなる。具体的には、ある注目時相の肝臓造影画像中に、ユーザによる手動設定、または、画像解析による自動設定、あるいは両者の組合せによって、関心領域を設定した後、他の注目時相での肝臓造影画像において、先に設定された関心領域と同じ座標値を有する領域を関心領域として設定することが考えられる。この場合、体動や呼吸等による時相間での関心領域の変位を考慮して、局所画像の大きさを、注目時相間での関心領域のありうる変位の最大値よりも大きい範囲を含む程度にすることが好ましい。あるいは、関心領域の設定の段階でこのような変位を考慮して、ある注目時相の肝臓造影画像中に関心領域を設定した後、各注目時相の肝臓造影画像の内容的特徴に基づいて、他の注目時相での肝臓造影画像中に、先に設定された関心領域に対応する関心領域を設定するようにしてもよい。具体的には、各注目時相の肝臓造影画像に対して、線形および/または非線形の位置合わせを行うことによって、時相間での相対応する位置の座標値の対応関係を求めておき、先に設定された関心領域の座標値をその対応関係に基づいて変換することによって、他の注目時相の肝臓造影画像中に関心領域を設定することが考えられる。また、上記位置合わせ自体を手動で行ってもよい。
【0024】
各注目時相において関心領域を表す局所画像は、関心領域の時系列的変化を詳細に観察するための画像であるから、縮小処理や画素の間引き処理等が行われていないものであることが好ましい。また、各時相の肝臓造影画像は3次元画像とし、関心領域を3次元領域とした場合、関心領域を複数の方向から見た局所画像を注目時相毎に生成するようにしてもよい。具体的には、関心領域を通る、アキシャル・サジタル・コロナルの直交3断面による断面画像を注目時相毎に生成することが考えられる。
【0025】
注目時相毎の局所画像の表示の際の比較読影可能な態様の具体例としては、注目時相毎の局所画像を1画面内に並べて表示する態様や、注目時相毎の局所画像を時系列順に切替表示する態様等が挙げられる。
【0026】
また、本発明において、複数の時相で取得された肝臓造影画像に基づいて、少なくとも肝臓全体を含む領域であって関心領域を含む領域を表す全体画像を生成するようにし、局所画像と全体画像とを同時に表示させるようにしてもよい。この全体画像についても、各時相の肝臓造影画像は3次元画像とし、関心領域を3次元領域とした場合、複数の方向から見た全体画像を生成するようにしてもよい。このとき、局所画像および全体画像は同じ方向から見た画像とすることが好ましい。具体的には、ある注目時相の肝臓造影画像に基づいて、関心領域を通る、アキシャル・サジタル・コロナルの直交3断面による断面画像を生成することが考えられる。このとき、全体画像の生成のもとになる肝臓造影画像の注目時相はユーザ操作によって選択可能としてもよい。全体画像は、ある注目時相の3次元肝臓造影画像に対してボリュームレンダリング処理等を行うことによって得られる擬似3次元画像であってもよい。また、肝機能を表す機能画像を全体画像としてもよいし、前記の断面画像のような形態画像と前記の機能画像とを重ね合わせた画像を全体画像としてもよい。機能画像は、例えば、肝臓造影画像から肝臓領域を抽出し、肝臓領域内を分割して得られる複数の小領域のうちの少なくとも一部の小領域について、その小領域における肝機能を表す肝機能評価値を算出し、肝臓造影画像および肝機能評価値に基づいて生成することができる。ここで、肝臓領域内を分割して得られる小領域は、1画素(ボクセル)の領域としてもよいし、数画素程度の領域としてもよいし、クイノーの肝区域等のように、肝臓領域を数個に分割した程度の大きさの領域であってもよい。
【0027】
また、全体画像を、上記の直交3断面の断面画像のように、関心領域の位置を特定可能な画像とし、全体画像中に関心領域を表すマーカーを重畳表示させるようにしてもよい。さらに、このマーカーをユーザが入力手段を用いて移動させることが可能なものとし、移動後のマーカーの位置を検出し、検出されたマーカーの位置に基づいて、全体画像のもとになる肝臓造影画像中の関心領域を設定し、関心領域が設定された肝臓造影画像以外の注目時相の肝臓造影画像の各々に対して、対応する関心領域を設定するようにしてもよい。さらに、局所画像中の関心領域に対してもマーカーを重畳表示させるようにしてもよい。
【0028】
また、注目時相毎に関心領域における肝機能評価値を算出し、関心領域における時相間での肝機能評価値の時系列的変化をグラフ等の態様で視覚化するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において取得された2以上の注目時相の肝臓造影画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定し、注目時相の肝臓造影画像の各々に基づいて、関心領域を表す局所画像を注目時相毎に生成し、生成された注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させるので、表示された注目時相毎の局所画像を容易に比較読影することができ、各注目時相における関心領域の信号値の時系列的変化を詳細かつ効率的に把握することが可能になる。
【0030】
すなわち、表示された注目時相毎の局所画像を読影することにより、特許文献1や2に記載のパラメータ画像を表示する従来技術では実現できなかった、複数の時相間での関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することが本発明により実現される。また、本発明では全体画像中の一部である関心領域のみを表示させることができるので、特許文献3から5に記載の従来技術のように縮小された全体画像中の関心領域を読影するのではなく、従来技術と同じ画面サイズであれば少なくとも全体画像ほどは縮小を伴わない局所画像を読影することができるので、各注目時相における関心領域を詳細に観察することが可能になる。さらに、本発明では関心領域のみが表示されるので、特許文献3から5に記載の従来技術のように全体画像中から関心領域を特定する必要もなく、読影効率が向上する。
【0031】
このように、本発明は、肝臓の血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査における、複数の撮影時相の関心領域の信号値の時系列的変化を的確に把握したいという要求に応えるものであり、このような造影剤を用いた肝臓の画像診断においてきわめて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態における肝機能造影像を用いた医用画像診断システムの概略構成図
【図2】本発明の実施形態における肝臓造影画像を用いた医用画像診断機能を実現する構成および処理の流れを模式的に示したブロック図
【図3】本発明の実施形態における表示画面の構成例を模式的に表した図
【図4A】全体画像の表示対象のフェーズの選択を行う際のユーザインターフェースの一例を表した図
【図4B】全体画像の表示対象のフェーズの選択を行う際のユーザインターフェースの他の一例を表した図
【図5】本発明の実施形態における医用画像診断システムの動作遷移を表すチャート
【図6】本発明の実施形態における画像表示例を表した図
【図7】本発明の実施形態における他の画像表示例を表した図
【図8】本発明の実施形態の変形例の構成および処理の流れを模式的に示したブロック図
【図9】肝機能造影像の画素値の時系列的変化(Time Intensity Curve: TIC)を表すグラフ
【図10】本発明の実施形態の変形例における画像表示例を表した図
【図11】肝区域の特定を行う際のユーザインターフェースの一例を表した図
【図12】肝区域毎の機能評価値を色分け表示したボリュームレンダリング画像の一例を示す図
【図13】肝区域毎の機能評価値を色分け表示したボリュームレンダリング画像の他の例を示す図
【図14】肝臓領域抽出部の詳細を示すブロック図
【図15】肝臓領域の基準点およびその近傍領域の一例を示す図
【図16】図14の領域抽出部により対象領域を抽出する一方法を説明するための図
【図17】シード点および基準点の位置に基づいてs-linkおよびt-linkの値を設定する一方法を説明するための図
【図18】図14の領域抽出部により対象領域を抽出する一方法を説明するための図
【図19】アキシャル画像表示領域中の局所画像の関心領域にマーカーを重畳表示させた例を表した図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態となる肝臓造影画像を用いた医用画像診断システムについて説明する。本発明の実施形態となる医用画像診断システムは、前述のEOB造影剤を用いた造影検査において複数のフェーズ(時相)で取得された肝臓造影画像(図2のV[1],V[2],・・・,V[8];以下、まとめてV[t]と表記することがある。tはフェーズを表す。)に基づいて、ユーザによって指定されたフェーズにおける肝臓全体を表す、ユーザによって指定された肝臓中の関心領域を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による全体断面画像(図2のWIA[T]・WIC[T]・WIS[T];以下、まとめてWI[T]と表記することがある)を生成するとともに、その関心領域、および、他のフェーズの肝臓造影画像中の対応する関心領域を通る、アキシャル・コロナル・サジタル断面による局所断面画像(図2のLIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・;以下、まとめてLI[t]と表記することがある)をフェーズ毎に生成し、これらの全体断面画像WI[T]および局所断面画像LI[t]を並べて表示するものである(図6参照)。
【0034】
図1は、医用画像診断システムの概要を示すハードウェア構成図である。図に示すように、このシステムでは、モダリティ1と、画像保管サーバ2と、画像処理ワークステーション3とが、ネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0035】
本実施形態では、モダリティ1にはMRI装置が含まれる。また、このMRI装置は、ガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)を有効成分とする前述のEOB造影剤の投与前、および、例えば、投与から20秒、1分、2分、5分、10分、20分、21分経過後の腹部(肝臓を含む)の3次元肝臓造影画像(ボクセルデータ)V[1]、V[2]、・・・、V[8]を取得するダイナミック撮影が可能なものである。この撮影で得られた各フェーズの肝臓造影画像には、EOB造影剤投与後の経過時間が付帯情報として関連づけられている。
【0036】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された3次元肝臓造影画像V[t]や画像処理ワークステーション3での画像処理によって生成された医用画像の画像データを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理用ソフトウェア(たとえば、ORDB(Object Relational Database)管理ソフトウェア)を備えている。
【0037】
画像処理ワークステーション3は、読影者からの要求に応じて、モダリティ1や画像保管サーバ2から取得した1以上のフェーズの3次元肝臓造影画像V[t]に対して画像処理(画像解析を含む)を行い、生成された画像を表示するコンピュータであり、CPU,主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置、表示装置、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーションシステム等がインストールされたものであるが、特に、入力装置として、読影者からの要求を入力するポインティングデバイス(マウス等)を備え、主記憶装置は、3次元肝臓造影画像V[t]の少なくとも一部を格納可能な容量を有しているものである。本発明の医用画像診断処理は、この画像処理ワークステーション3に実装されており、この処理は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたプログラムを実行することによって実現される。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0038】
画像データの格納形式やネットワーク9経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)等のプロトコルに基づいている。
【0039】
図2は、画像処理ワークステーション3の機能のうち、本発明の実施形態となる医用画像診断処理に関連する部分を示すブロック図である。図に示すように、本発明の実施形態となる医用画像診断処理は、入力装置31、関心領域設定部32、全体画像生成部33、局所画像生成部34、マーカー制御部35、表示制御部36、表示装置37によって実現される。以下、各処理部等の詳細について説明する。なお、以降の説明では、3次元肝臓造影画像は肝臓造影画像と表記する。
【0040】
入力装置31は、全体断面画像WIA[T]、WIC[T]、WIS[T]の生成・表示の対象となるフェーズTを選択する操作や、表示されている全体断面画像WIA[T]、WIC[T]、WIS[T]中の関心領域の中心位置MP[T]を指定する操作をユーザが行うためのものであり、本実施形態では、マウス等のポインティングデバイスであるものとして説明を行う。なお、入力装置31はキーボード等の他の装置であってもよい。
【0041】
関心領域設定部32は、各フェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]の中の関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]の位置を特定するものである。具体的には、関心領域設定部32は、全体断面画像WIA[T]、WIC[T]、WIS[T]中の関心領域の中心位置MP[T]に基づき、フェーズTの肝臓造影画像V[T]中に、位置MP[T]を中心とする1辺が所定の長さに相当する画素(ボクセル)数の立方体領域を関心領域VOI[T]に設定する。ここで、1辺の長さは、この造影検査中の被検体の呼吸や体動による肝臓の変位のありうる最大値を考慮して予め定められた長さである。次に、フェーズT以外の他のフェーズの肝臓造影画像の各々に対して、関心領域VOI[T]と同じ座標値を有する領域を関心領域に設定する。
【0042】
全体画像生成部33は、ユーザによって指定されたフェーズTに基づき、フェーズTの肝臓造影画像V[T]を入力として、公知のMPR(Multi-Planar Reconstruction)技術を用いて、フェーズTの関心領域VOI[T]の中心位置を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を再構成する。
【0043】
局所画像生成部34は、各フェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]を入力として、それらのうちの各フェーズの関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]内を表す画像データに対して公知のMPR技術を用いて、フェーズ毎に、関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]の中心位置を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を再構成する。
【0044】
マーカー制御部35は、ユーザによって指定されたフェーズTに基づき、フェーズTの関心領域VOI[T]の位置情報を取得し、その関心領域の位置をアキシャル・コロナル・サジタル断面による全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]中に示すためのマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]を生成する。マーカーの具体的な態様については後述する。
【0045】
表示制御部36は、全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]、マーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]、局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を所定のレイアウトで表示装置(ディスプレイ)37に表示させる制御を行う。
【0046】
図3は、表示装置37に表示させる画面50のレイアウト例を示したものである。図に示したように、表示画面50は、大きく分けると、アキシャル画像表示領域51A、コロナル画像表示領域51C、サジタル画像表示領域51S、任意画像表示領域51Xから構成されている。そして、アキシャル画像表示領域51Aは、アキシャル断面による全体断面画像WIA[T]を表示する全体画像表示領域52Aと、各フェーズのアキシャル断面による局所断面画像LIA[1], LIA[2],・・・, LIA[8]を表示する局所画像表示領域53A[1], 53A[2],・・・, 53A[8]とから構成されている。また、全体画像表示領域52Aには、マーカーMA[T]を全体断面画像WIA[T]に重畳させて表示させる。具体的には、マーカーMA[T]は、アキシャル断面画像中で関心領域VOI[T]の中心点を通るサジタル断面を表す直線54AS、コロナル断面を表す直線54AC、両断面を表す直線の交点(両断面の交線)、すなわち、関心領域VOI[T]の中心を表す点55Aとして表示される。このように、本実施形態では、関心領域の中心点が、アキシャル・コロナル・サジタルの3断面の交点と一致するようになっている。コロナル画像表示領域51C/サジタル画像表示領域51Sもアキシャル画像表示領域51Aと同様に、各々、コロナル/サジタル断面による全体断面画像WIC[T]/WIS[T]を表示する全体画像表示領域52C/52Sと、各フェーズのコロナル/サジタル断面による局所断面画像LIC[1], LIC[2],・・・, LIC[8]/LIS[1], LIS[2],・・・, LIS[8]を表示する局所画像表示領域53C[1], 53C[2],・・・, 53C[8]/53S[1], 53S[2],・・・, 53S[8]とから構成されている。また、コロナル画像表示領域51Cの全体画像表示領域52CにおけるマーカーMC[T]は、コロナル断面画像中で関心領域VOI[T]の中心点を通るサジタル断面を表す直線54CS、アキシャル断面を表す直線54CA、関心領域VOI[T]の中心を表す点55Cとして表示され、サジタル画像表示領域51Sの全体画像表示領域52SにおけるマーカーMS[T]は、サジタル断面画像中で関心領域VOI[T]の中心点を通るコロナル断面を表す直線54S
C、アキシャル断面を表す直線54SA、関心領域VOI[T]の中心を表す点55Sとして表示される。任意画像表示領域51Xは、任意の画像を表示可能な領域であり、この領域内をさらに分割して複数の画像を表示させることも可能である。
【0047】
図4Aおよび図4Bは、入力装置31によってフェーズTの選択を行うためのユーザインターフェースの具体例を示したものである。図4Aに示したように、フェーズ選択ウィンドウを別途表示して、入力装置31の操作(例えばマウスを用いたスライドレバーのドラッグ操作)によりスライドレバーを移動させることによりフェーズの選択を受け付けるインターフェースや、図4Bに示したように、入力装置31の操作(例えばマウスの右クリック操作)によりフェーズ選択メニューを表示させ、入力装置31の選択操作(例えばマウスのポインタを所望のフェーズに移動させてから左クリックする操作)によりフェーズの選択を受け付けるインターフェースが考えられる。この他、図3の局所画像表示領域53A[t], 53C[t], 53S[t]の中から、所望のフェーズTの表示領域を入力装置31で選択する操作(例えばマウスのポインタを所望のフェーズの表示領域に移動させてから左クリックする操作)を行うことによりフェーズの選択を受け付けるインターフェース等も考えられる。
【0048】
一方、入力装置31によって関心領域VOI[T]の中心点MP[T]の位置を変更する操作の具体例としては、図3の全体画像表示領域52A、52C、52S内の所望の位置で入力装置31を用いた指定操作を行うことが考えられる。例えば、所望の位置でのマウスのダブルクリック操作や、全体画像表示領域52A、52C、52S内のマーカーである直線54AS、54AC、54CS、54CA、54SC、54SAや中心点55A、55C、55Sをドラッグ操作で所望の位置に移動させる操作が挙げられる。
【0049】
次に、本発明の実施形態となる医用画像診断システムを用いた肝臓の画像診断の流れについて説明する。図5は、本発明の実施形態となる医用画像診断処理における動作の遷移を表したチャートである。
【0050】
まず、MRI撮影室のオーダリングシステムの端末において、EOB造影剤を用いた肝臓の造影検査の検査オーダを受信した場合、その検査オーダの対象の被検者は、EOB造影剤投与前の腹部の撮影が行われ、肝臓造影画像V[1]が生成される。その後、EOB造影剤が被検者に投与され、例えば、投与から20秒、1分、2分、5分、10分、20分、21分経過後の各タイミングで、同様の撮影が行われ、肝臓造影画像V[2]、・・・、V[8]が生成される。生成された肝臓造影画像V[1]、・・・、V[8]は、画像保管サーバ2に転送されて保管されるとともに、画像処理ワークステーション3が設置された読影室または診断室に検査オーダ(読影オーダ)が転送される。
【0051】
画像処理ワークステーション3において、この検査オーダが選択されると、画像処理ワークステーション3は、画像保管サーバ2から読影対象の肝臓造影画像V[T]を取得するとともに、検査オーダの内容を解析し、検査オーダに応じたアプリケーション・プログラム、すなわちここではEOB解析アプリケーションを起動させる。
【0052】
EOB解析アプリケーションが起動されると、まず、このアプリケーションに対する設定ファイルを読み込み、全体断面画像の表示対象のフェーズのデフォルト値T0、および、関心領域VOI[T0]の中心点のデフォルト値MP[T0]0を取得する。
【0053】
関心領域設定部32は、中心点のデフォルト値MP[T0]0に基づいて各フェーズの肝臓造影画像V[t]の関心領域の位置VOI[t]0を特定する。そして、表示対象のフェーズのデフォルト値T0およびそのフェーズT0における関心領域のデフォルト値VOI[T0]0に基づいて、全体画像生成部33は、そのフェーズT0の肝臓造影画像V[T0]を入力として最初に表示する全体断面画像WI[T0]0を再構成し、マーカー制御部35は関心領域の位置VOI[T0]0を表すマーカーM[T0]0を生成する。また、局所画像生成部34は、各フェーズの関心領域VOI[t]0に基づいて、各フェーズの肝臓造影画像V[t]を入力として最初に表示する局所断面画像LI[t]0を再構成する。表示制御部36は、生成された全体断面画像WI[T0]0、マーカーM[T0]0、局所断面画像LI[t]0を図3に示したレイアウトで表示装置37に表示させる(#1)。
【0054】
ユーザは、表示装置37に表示された全体断面画像WI[T0]0や局所断面画像LI[t]0を観察し、画像中に病変と疑われる病変候補領域が見つからなければ、必要に応じて、全体断面画像の表示対象のフェーズの変更(#2)や、関心領域、すなわち、全体断面画像や局所断面画像の断面の位置の変更(#4)のための操作を行うことができる。
【0055】
ここで、ユーザが、図4に示したユーザインターフェースで表示対象のフェーズをT0からT1に変更する操作を行うと(#2)、変更後のフェーズの値T1およびそのフェーズT1における関心領域VOI[T1]0に基づいて、全体画像生成部33は、そのフェーズT1の肝臓造影画像V[T1]を入力として全体断面画像WI[T1]0を再構成し、マーカー制御部35は関心領域の位置VOI[T1]0を表すマーカーM[T1]0を生成し、表示制御部36は、全体断面画像WI[T1]0、マーカーM[T1]0に表示を更新する(#3)。このとき、関心領域の位置は変更されていないので、局所断面画像LI[t]0の表示は更新されない。
【0056】
一方、ユーザが、デフォルト値による表示画面において、図3の全体画像表示領域52A、52C、52S内のマーカーを移動させる操作を行うことによって、関心領域VOI[T0]0の中心点の位置をMP[T0]0からMP[T0]1に移動させると(#4)、関心領域設定部32は、移動後の中心点の位置MP[T0]1に基づいて各フェーズの肝臓造影画像V[t]の関心領域の位置VOI[t]1を特定する(#5)。そして、表示対象のフェーズT0およびそのフェーズT0における移動後の関心領域VOI[T0]1に基づいて、全体画像生成部33は、フェーズT0の肝臓造影画像V[T0]を入力として全体断面画像WI[T0]1を再構成し、マーカー制御部35は移動後の関心領域の位置VOI[T0]1を表すマーカーM[T0]1を生成する。また、局所画像生成部34は、移動後の各フェーズの関心領域VOI[t]1に基づいて、各フェーズの肝臓造影画像V[t]を入力として局所断面画像LI[t]1を再構成する。表示制御部36は、生成された全体断面画像WI[T0]1、マーカーM[T0]1、局所断面画像LI[t]1を図3に示したレイアウトで表示装置37に表示させる(#6)。このように、関心領域の位置を変更した場合には、全体断面画像WI[T0]1、マーカーM[T0]1、局所断面画像LI[t]1のすべての表示が更新される。
【0057】
以下、図5のステップ#3から#2または#4に向かう矢印や、ステップ#6から#2または#4に向かう矢印で示したように、ユーザは、必要に応じて、全体断面画像の表示対象のフェーズの変更(#2)や、関心領域の位置の変更(#4)のための操作を繰り返し行うことができ、それに応じて、表示される画像やマーカーの表示が適宜更新される(#3, #5, #6)。そして、例えば、ユーザが、表示された画像中に病変候補領域を見つけた場合には、その病変候補領域およびその周辺領域の観察に適したフェーズの全体断面画像を表示するために、必要に応じて、全体断面画像の表示対象のフェーズの変更操作(#2)を行って、全体断面画像とマーカーの表示を更新させるとともに(#3)、その病変候補領域の中心が関心領域の中心(各断面の交点)となるようにマーカーの移動操作(#4)を行って、各フェーズの関心領域を変更させ(#5)、全体断面画像、マーカー、局所断面画像の表示を更新させる(#6)。図6は、フェーズ8の全体断面画像WI[8]を表示させるとともに、画像中の病変候補領域の局所断面画像LI[t]を表示させた画面例である。図に示したように、EOB造影剤による造影後期(フェーズ8:肝細胞造影相)における正常な肝細胞に対する造影作用により、病変候補領域およびその周辺領域の肝細胞の機能レベルを全体断面画像WI[8]から観察することができるとともに、EOB造影剤による造影初期(動脈相)における血管造影作用から後期における正常な肝細胞の造影作用への変化に伴う病変候補領域の時系列的変化を局所断面画像LI[t]から観察することができる。
【0058】
以上のように、本発明の上記実施形態によれば、関心領域設定部32が、肝臓における血流および肝機能が画像に反映されるEOB造影剤を用いた造影検査において取得された肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]の各々に対して、各フェーズ間で位置的に対応する肝臓中の関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を設定し、局所画像生成部34が、各フェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]の各々に基づいて、関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を表す局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]をフェーズ毎に生成し、表示制御部36が、生成されたフェーズ毎の局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を1画面中に並べて表示させるので、表示されたフェーズ毎の局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を容易に比較読影することができ、各フェーズにおける関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]の信号値の時系列的変化を詳細かつ効率的に把握することが可能になる。すなわち、本発明の上記実施形態は、EOB造影剤を用いた造影検査における、複数のフェーズの関心領域の信号値の時系列的変化を的確に把握したいという要求に応えるものであり、EOB造影剤を用いた肝臓の画像診断においてきわめて有用なものである。
【0059】
また、全体画像生成部33が、表示対象のフェーズTにおいて、肝臓全体を含む領域であって関心領域VOI[T]を含む領域を表す全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]を生成し、表示制御部36が、全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]と局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]と同時に表示させるようにしたので、関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]の時系列的変化と、その周辺領域の様子とを同時に観察することができ、より詳細な診断が可能になる。
【0060】
その際、マーカー制御部35が、全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]中に関心領域VOI[T]を表すマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]を重畳表示させるようにしたので、全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]中の関心領域の位置VOI[T]をより容易に把握することが可能になり、読影効率が向上する。
【0061】
また、このマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]を、ユーザが入力装置31を用いて移動させることが可能なものにし、移動後のマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]の位置MP[T]を検出し、関心領域設定部32が、検出されたマーカーの位置MP[T]に基づいて、全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]のもとになる肝臓造影画像V[T]中の関心領域VOI[T]を設定し、関心領域VOI[T]が設定された肝臓造影画像V[T]以外のフェーズの肝臓造影画像V[t](ここではtはT以外の各フェーズを示す)の各々に対して、関心領域VOI[t]を設定するようにすれば、マーカーの移動操作に応じて関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を移動させることができ、全体画像生成部33が、フェーズTにおいて移動後の関心領域VOI[T]を表す全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を生成するとともに、局所画像生成部34が、各フェーズにおいて、移動後の関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を表す局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を生成し、表示制御部36が、生成された各画像を表示させることができるようになる。すなわち、ユーザによるマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]の移動操作に連動して関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を移動させ、移動後の関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を表す全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]および局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]に表示を切り替えることができるようになる。したがって、ユーザは、全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を観察しながら、画像中の各部に関心領域VOI[T]を設定し、その位置における局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を表示させることによって、関心領域VOI[T]が設定された部分における信号値の時系列変化を同時に観察することが可能になり、より詳細かつ柔軟な観察をより効率的に行うことができるようになる。
【0062】
また、各フェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]が3次元画像で、関心領域が3次元領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]であり、全体画像生成部33は複数の方向から見た全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を生成するので、関心領域の周辺を容易に3次元的に観察できるようになり、より詳細な診断が可能になる。また、局所画像生成部34も複数の方向から見た局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を生成するので、関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を複数の方向から読影することができ、より詳細な診断が可能になる。例えば、アキシャル断面による局所断面画像LIA[1], LIA[2],・・・, LIA[8]では円形の病変のように見える領域が、サジタル断面やコロナル断面による局所断面画像LIC[1]・LIS[1], LIC[2]・LIS[2],・・・, LIC[8]・LIS[8]でも円形に見えれば、その領域は病変である可能性が高いと判断することができ、一方、サジタル断面やコロナル断面による局所断面画像では管状に見えれば、その領域は血管であり、アキシャル断面による局所断面画像では血管を輪切りにした断面が病変のように見えただけであると判断することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、フェーズ間での関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]のありうる変位の最大値よりも大きい範囲を表す画像を局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]としているので、被検体の呼吸や体動に起因するフェーズ間での関心領域の変位により、あるフェーズにおいて関心領域が局所断面画像の範囲から外れてしまうというような問題が生じなくなり、関心領域の時系列的変化の観察の精度が向上する。
【0064】
次に、上記の実施形態に対する変形例について説明する。
【0065】
上記の実施形態では、関心領域設定部32は、表示対象のフェーズTにおいてユーザによって指定された関心領域VOI[T]と同じ座標値を有する、他のフェーズにおける領域を関心領域に設定しているが、各フェーズの肝臓造影画像V[t]に対して、公知の剛体または非剛体レジストレーション(例えば、Rueckert D Sonoda LI,Hayes C,et al.、“Nonrigid Registration Using Free-Form Deformations:Application to Breast MR Images”、IEEE Transactions on Medical Imaging、1999年、Vol.18,No.8,pp.712-721参照)や、軸位断画像に対する撮影部位認識処理(例えば、特開2009-095644号公報参照)等を用いて、異なるフェーズの肝臓造影画像間で、平行移動・回転・変形・拡大・縮小等による位置合わせを行い、フェーズ間での各画素の移動方向・移動量を予め求めておき、表示対象のフェーズTで指定された関心領域VOI[T]の座標値を、他のフェーズとの間での各画素の移動方向・移動量を用いて変換することによって、他のフェーズでの対応する関心領域の座標値を求めるようにしてもよい。なお、位置合わせについては、例えば、図6に示された局所画像の各々に対するドラッグ・ドロップ操作等によって、その操作対象の局所画像の画面に平行な方向への移動ができるようにすることによって、ユーザの手動による位置合わせや、上記手法による自動位置合わせ結果に対する手動修正を行えるようにしてもよい。このように、複数のフェーズの肝臓造影画像V[t]の各々に対して、画像の内容的特徴に基づいて、位置的に対応する関心領域VOI[t]を設定するようにした場合には、被検体の体動や呼吸等による、フェーズ間での関心領域VOI[t]の変位の影響を受けることなく、各フェーズの肝臓造影画像V[t]に対して解剖学的に同一の位置に関心領域VOI[t]を設定することができるので、上記実施形態のように、関心領域のありうる変位量を考慮して関心領域(局所断面画像)の大きさを決定しておかなくても、あるフェーズの局所断面画像中には関心領域が含まれていないというような問題が生じなくなり、関心領域の時系列的変化の観察の精度が
向上する。
【0066】
また、上記の実施形態では、マーカー制御部35が、全体断面画像中にのみ、関心領域を表すマーカーを重畳表示させるようにしていたが、各フェーズの局所画像中の関心領域にもマーカーを重畳表示させるようにしてもよい。図19は局所断面画像に対してマーカーを付した表示例である。図では、アキシャル画像表示領域51Aのみを示しているが、コロナル画像表示領域51C、サジタル画像表示領域51S、任意画像表示領域51X中の局所画像についても同様にマーカーを重畳表示させればよい。また、マーカーの形態は様々な形態を採用可能であり、例えば、矢印やテキストコメント等であってもよい。
【0067】
また、上記の実施形態では、すべてのフェーズの局所断面画像を1つの画面内に並べて表示することによって、比較読影を容易にしていたが、ディスプレイのサイズの物理的制約等により表示画面のサイズを大きくできない場合や、より広い範囲の関心領域を表す局所断面画像を観察する必要がある場合、あるいは、関心領域を拡大して観察する必要がある場合等には、図7に例示したように、アキシャル画像表示領域51A、コロナル画像表示領域51C、サジタル画像表示領域51Sには、各々、1つのフェーズのアキシャル・コロナル・サジタルの全体断面画像を表示させ、任意画像表示領域51Xに、1つのフェーズのアキシャル・コロナル・サジタルの局所断面画像のみを並べて表示し、入力装置31の操作(例えば、局所断面画像の1つをクリックした後でマウスのホイール操作を行う等)によって、各フェーズの局所断面画像を時系列的に順次切替表示させるようにしてもよい。このような表示態様にすれば、関心領域の時系列的変化を動画的に捉えることが可能になる。
【0068】
また、上記の実施形態では、モダリティ1(MRI装置)によるダイナミック撮影で得られたすべてのフェーズの肝臓造影画像V[t]を、全体断面画像や局所断面画像の生成・表示対象としているが、図2の構成に、生成・表示対象のフェーズの選択を行う注目フェーズ選択部をさらに設けてもよい。注目フェーズ選択部は、所定の選択条件に基づいて自動選択するものであってもよいし、ユーザの操作によって手動選択するものであってもよい。自動選択の具体例としては、生成・表示対象のフェーズの取得タイミング(例えば、造影剤投与からの経過時間)を選択条件として予め設定ファイル等に準備しておき、モダリティ1で得られた肝臓造影画像V[t]の各々に関連づけられた取得タイミングの付帯情報を参照して、上記の選択条件に合致するフェーズの肝臓造影画像を選択する方法が挙げられる。手動選択の具体例としては、モダリティ1で得られた肝臓造影画像V[t]の各々から再構成された代表画像(例えば、所定の位置でのアキシャル断面画像)とその画像の取得タイミングの情報を一覧表示し、ユーザが入力装置31を用いて生成・表示対象のフェーズを選択する方法が挙げられる。このように生成・表示対象のフェーズを選択可能にすることにより、診断上必要なフェーズの画像のみを観察することができるので、診断効率の向上に資する。
【0069】
また、上記の実施形態では、ユーザによって選択された1つの表示対象フェーズTの肝臓造影画像V[T]から全体断面画像WI[T]を生成して表示していたが、造影検査で取得された複数のフェーズの肝臓造影画像を用いて、時間軸を圧縮した機能画像を全体断面画像として生成して表示するようにしてもよい。図8は、このような変形例を表すブロック図であり、図2に示したブロック図に肝臓領域抽出部38および肝機能解析部39が付加された構成となっている。
【0070】
肝臓領域抽出部38は、例えば、本出願人が特願2008-50615で提案している方法を用いて、複数のフェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]の各々から肝臓領域LV[1],LV[2],・・・,LV[8]を抽出する。
【0071】
具体的には、あるフェーズにおける肝臓造影画像(例えば、肝臓領域と周辺領域とのコントラストが大きい肝細胞造影相の肝臓造影画像V[8])に対して、ユーザがポインティングデバイス等を操作して、肝臓領域内の任意の点を設定するとともに(以下、この点をユーザ設定点と呼ぶ)、機械学習によって取得された識別器を用いて肝臓領域の輪郭の角ばった箇所を基準点として検出し、ユーザ設定点を中心として、肝臓を含む程度の大きさの3次元領域(以下、処理対象領域と呼ぶ)内の各点(ボクセル)について、機械学習によって取得された識別器を用いて、肝臓の輪郭上の点かどうかを表す評価値を算出し、処理対象領域の外周上の各点を肝臓領域外の背景領域内の点を予め判定するとともに、ユーザ設定点および基準点が肝臓領域内の点であると予め判定した上で、さらに処理対象領域内の各点の評価値を用いて、グラフカット法を適用することによって、肝臓造影画像V[8]から肝臓領域LV[8]を抽出する(さらに詳細な説明は、末尾の補足説明参照)。
【0072】
他のフェーズの肝臓造影画像V[1]、・・・、V[7]については、各肝臓造影画像から上記と同様の方法を用いて肝臓領域LV[1]、・・・、LV[7]を抽出してもよいし、肝臓造影画像V[8]から抽出された肝臓領域LV[8]と座標値が一致する領域を他のフェーズにおける肝臓領域LV[1]、・・・、LV[7]としてもよい。また、前述したとおり、剛体または非剛体レジストレーション、または撮影部位認識処理等を用いた異なるフェーズ間の位置合わせの結果に基づいて、肝臓領域LV[8]を座標変換することによって、肝臓領域LV[1]、・・・、LV[7]の位置を特定してもよい。
【0073】
なお、肝臓領域の抽出には、特開2002-345807号公報に記載された方法等、他の公知の方法を用いてもよい。
【0074】
肝機能解析部39は、複数のフェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]、および、各フェーズの画像中の肝臓領域LV[1]、・・・、LV[8]に基づいて、肝臓領域内を所定の画素(ボクセル)単位で小領域に分割し、分割された小領域毎に肝臓の機能レベルを表す肝機能評価値LFを算出する。小領域は、例えば、1辺の長さが3〜5画素(ボクセル)程度の立方体の領域とすることが考えられるが、1画素(ボクセル)毎に、すなわち、小領域を1辺の長さが1画素の立方体の領域として、肝機能評価値LFを算出してもよい。
【0075】
ここで、肝機能評価値LFの具体例としては以下の値が挙げられる。
(1)平均画素値
小領域毎に、小領域内の各画素の各フェーズでの画素値すべての平均を算出したもの。
(2)最大平均画素値
小領域毎に、小領域内の各画素の画素値の平均値をフェーズ毎に算出し、算出された平均値の最大値を求めたもの。
(3)最小平均画素値
小領域毎に、小領域内の各画素の画素値の平均値をフェーズ毎に算出し、算出された平均値の最小値を求めたもの。
(4)平均画素値の時系列的変化におけるカーブ下面積
小領域毎に、小領域内の各画素の画素値の平均値をフェーズ毎に算出し、図9に示したように、横軸を各フェーズ(時刻)、縦軸を平均画素値として、小領域毎に平均画素値の時系列的変化をグラフ化したときのカーブ下の面積(図9の斜線部参照)。
(5)平均画素値の時系列的変化における平均画素値のピーク時刻
(4)と同様に小領域毎に平均画素値の時系列的変化をグラフ化したときの平均画素値がピークとなる時刻(図9のtpeak参照)。
この他、(1)(2)(3)(4)の平均画素値・最大平均画素値・最小平均画素値・カーブ下面積を肝臓領域全体についても算出し、肝臓領域全体での値に対する各小領域での値の比率を評価値としてもよい。また、腹部大動脈と各肝区域の各々における画素値の時系列的変化を求め、これらの時系列変化をデコンボリューション法で解析することによって得られた評価値を用いてもよい(Hun-Kyu Ryeom, et al.、“Quantitative Evaluation of Liver Function with MRI Using Gd-EOB-DTPA”、Korean Journal of Radiology、韓国、The Korean Radiological Society、2004年12月31日、Vol.5(4), pp. 231-239参照)。さらに、CT画像を対象とした公知の灌流解析で用いられる評価値を転用することも考えられる。さらにまた、肝機能評価値の算出の際に、他の臓器、例えば、EOB造影剤の取り込みが生じる脾臓領域に対する比率を用いてもよい(図13参照)。MRIによる画像の場合、信号の絶対値には意味はなく、他の領域との相対的な関係に意味があるので、このように他の臓器を基準領域として肝機能評価値を算出することにより、より適切な機能評価が可能になる。なお、この場合、脾臓領域の抽出は、前述の肝臓領域の抽出方法と同様の方法を適用することが可能である。
【0076】
また、本変形例では、全体画像生成部33は、複数のフェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]、および、算出された肝機能評価値LFに基づいて、全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を生成する。具体的には、所定の表示対象フェーズTにおける関心領域VOI[T]の中心位置を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による全体断面画像(形態断面画像)を生成するとともに、各小領域での肝機能評価値LFを3次元の機能画像と捉えて、上記中心位置を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による断面画像(機能断面画像)を生成し、生成された両画像を重ね合わせた画像を生成することが考えられる。図10は、このようにして生成された画像を表示制御部36によって表示装置37に表示させた例である。図に示したように、肝機能評価値LFが算出された肝臓領域では、形態断面画像の上に機能断面画像が重畳的に表示される。また機能断面画像中の画素値である肝機能評価値については、肝機能評価値の範囲毎に異なる色を割り当てることによって、肝臓領域内の肝機能レベルの相違を視覚的に識別可能な態様でマップ画像化している。なお、局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]については、上記の実施形態と同様である。
【0077】
このように、本変形例によれば、肝臓領域抽出部38および肝機能解析部39で得られた肝臓領域の機能評価値LFをさらに用いて、全体画像生成部33が全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を生成するので、肝機能を表す機能画像と関心領域を表す局所形態画像とを同時に表示させることができ、診断効率の向上に資する。
【0078】
上記変形例では、肝臓領域内を比較的小さい領域に分割して肝機能評価値LFを算出したが、肝臓領域全体を8分割するクイノーの肝区域のように、肝臓を比較的大きい範囲に分割してもよい。肝臓の画像診断や手術においては、このように、肝動脈、門脈、肝静脈の支配領域によって分類された肝臓中の区域を単位として行われることが一般的であり、肝臓の画像診断によって切除手術の対象領域を決定するような場合には、肝臓の区域を単位として決定する必要があるので、各区域の機能レベルを表す全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]と、肝臓中の病変候補である関心領域を表す局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]とを同時に表示することにより、上記のような医療現場のニーズにより的確に応えることができる。
【0079】
なお、肝区域の分割の具体的方法としては、図11に示したように、ユーザがポインティングデバイス等を操作して、1つの肝臓領域を表す画像(例えば、肝細胞造影相の肝臓領域を表すボリュームレンダリング画像)内の複数の肝区域の境界となる平面または曲面(図11では線分L1およびL2)を指定することにより、肝臓領域内の複数の肝区域を特定する手動分割手法が挙げられる。ここで、特定された複数の肝区域は3次元の領域である。他のフェーズの肝臓領域については、上記と同様の方法を用いて各フェーズにおける肝区域を特定してもよいし、1つのフェーズの肝臓領域において特定された肝区域と座標値が一致する領域を、他の各フェーズにおける肝区域として特定してもよいし、前述の剛体または非剛体レジストレーション、または撮影部位認識処理等を用いた異なるフェーズ間の位置合わせの結果に基づいて、手動設定された肝区域の座標値を変換することによって、他のフェーズの対応する肝区域の位置を特定してもよい。また、肝区域の特定には、肝臓領域内の血管を抽出し、ボロノイ図(Voronoi diagram)を用いて、肝臓領域内の血管以外の領域(肝臓実質等)がどの血管の支配領域に属するかを特定することによって、各血管の支配領域を肝区域として特定する方法等(特開2003-033349号公報や、R Beichel et al.、“Liver segment approximation in CT data for surgical resection planning”、Medical Imaging 2004: Image Processing. Edited by Fitzpatrick, J. Michael; Sonka, Milan、2004年、Proceedings of the SPIE, Volume 5370, pp. 1435-1446等参照)、公知の自動分割方法を用いることもできる。
【0080】
また、上記実施形態において、図3の任意画像表示領域51Xには、他の撮影条件で得られた画像、例えば、造影剤投与前のT1強調画像やT2強調画像のコントラストの観察が肝腫瘍の鑑別において有用であるという知見に基づいてこれらの画像を表示させるようにしてもよい。具体的には、腺腫様過形成(dysplastic nodule)はT1強調画像で高信号、T2強調画像で低信号となり、高分化の肝腫瘍はT1強調画像で等信号からやや高信号、T2強調画像でやや等信号から低信号となり、中分化の肝腫瘍はT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号となることが知られており、任意画像表示領域51Xに表示されたEOB造影剤投与前のT1強調画像およびT2強調画像と、他の表示領域51A、51C、51Sに表示されたEOB造影剤投与後の肝臓造影画像とをあわせて観察することにより、より精度の高い肝臓の画像診断が可能になる。
【0081】
あるいは、他の画像処理によって生成された画像を図3の任意画像表示領域51Xに表示させるようにしてもよい。図12、13はその具体例である。両図とも、上記の方法で肝臓領域を複数の肝区域に分割して、肝区域毎に肝機能評価値を算出した後、算出された肝機能評価値を各肝区域内のすべての画素がその肝区域の評価値を画素値として有している3次元機能画像データとして捉え、この3次元機能画像データを入力として公知のボリュームレンダリングを行うことによって生成された画像である。評価値の範囲毎に異なる色を割り当てることによって、肝区域毎の機能レベルの相違を視覚的に識別可能な態様で画像化している。図12は、2つの肝区域が特定された場合のボリュームレンダリング画像の例である。一方、図13は、3つの肝区域が特定された場合のボリュームレンダリング画像の例であり、不透明度の設定を図12の画像例から変更し、肝臓実質部分の不透明度を低くして半透明化し、肝臓内の血管に対して色を割り当てることによって、各肝区域の色分け表示と血管部分の表示とを両立している。また、図13では、実際の機能評価値をテキスト情報としても表示している。このように、図6に示したような肝臓領域全体の形態を表す全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]と、肝臓中の病変候補である関心領域の形態を表す局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]とを表示するとともに、さらに、図12または図13に示したような肝区域毎の機能評価値を表す画像も同時に表示するようにすれば、関心領域の時系列的変化の観察と関心領域周辺の観察を同時に行えるとともに、前述のとおり、肝臓の画像診断上重要な肝区域単位での肝機能評価も同時に行うことができるので、医療現場での要求にさらに合致したものとなり、肝臓の画像診断の効率の向上にきわめて有効である。
【0082】
この他、上記の実施形態におけるシステム構成、処理フロー、モジュール構成等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0083】
例えば、上記の実施形態では、図2に示された各処理が1台の画像処理ワークステーション3で行われるように説明したが、複数台の画像処理ワークステーションに各処理を分散して協調処理するように構成してもよい。
【0084】
また、上記の実施形態はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。
【0085】
例えば、上記の実施形態で用いたEOB造影剤は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤の一例であり、同様の作用を生じさせる他の造影剤、すなわち、肝臓における血流および肝機能が画素値の高低として反映された肝臓造影画像を取得可能な他の造影剤であってもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、局所断面画像とともに全体断面画像を同時に表示させるようにしていたが、局所断面画像のみを表示させるようにしてもよいし、局所断面画像と図12、13に示した肝区域毎の機能画像とを同時に表示させるようにしてもよい。また、これらの表示態様を、自動的に、あるいは、ユーザの操作に基づいて切り替えて表示させるようにしてもよい。
【0087】
さらにまた、上記の実施形態では、全体断面画像と局所断面画像とで同じ断面位置で連動させていたが、異なる断面位置としてもよい。
【0088】
また、関心領域については、肝機能評価値の時系列的変化を視覚化して別途表示するようにしてもよい。視覚化の具体的態様としては、図9に示したような、各フェーズにおける関心領域内の平均画素値の時系列変化を表すグラフ等が挙げられる。
【0089】
[補足説明:肝臓領域抽出部38の詳細について]
以下、特願2008-50615の明細書を引用して、肝臓領域の抽出方法の詳細について説明するが、説明を簡潔にするために、まず2次元画像からの抽出方法について説明した後で、3次元画像からの抽出方法を説明する。
【0090】
図14に示すように、肝臓領域抽出部38は、医用画像Pから肝臓領域を抽出するものであって、基準点検出部110、点設定部120、領域設定部130、輪郭らしさ算出部140、領域抽出部150などを備えている。
【0091】
基準点検出部110は、肝臓領域の輪郭上に存在し、かつ近傍領域の画素値分布に基づいて特定可能な基準点が既知である複数のサンプル画像中の、基準点を表す画素および基準点以外の点を表す画素のそれぞれについて、近傍領域の画素値分布を予め機械学習し、その機械学習の結果に基づいて医用画像P中の基準点を検出するものであって、識別器取得部111と、検出部112とを有する。
【0092】
ここで、基準点は、入力画像から抽出したい対象領域の種類に応じて定められるものであり、その数に制限はない。本実施の形態では、たとえば、図15に示すように、全体的になめらかな曲線からなる肝臓領域の輪郭における、角ばった箇所に存在する点Aおよび点Bのいずれかまたは両方を基準点として用いる。
【0093】
識別器取得部111は、たとえば特開2006−139369号公報に記載されているように、肝臓領域を含む複数のサンプル画像を用意し、サンプル画像中の、基準点を表す画素および基準点以外の点を表す画素のそれぞれについて、近傍領域の画素値分布を予め機械学習することにより、サンプル画像中の各画素が基準点を示す画素であるか否かをその画素の近傍領域の画素値分布に基づいて識別する識別器Dを取得するものである。これにより取得した識別器Dは、任意の医用画像中の各画素が基準点を示す画素であるかどうかを識別する場合に適用することができる。なお、2以上の基準点(たとえば基準点A、B)を用いて肝臓領域を抽出する場合には、それぞれの基準点について識別器Dを取得する。
【0094】
ここで、各画素の近傍領域は、その近傍領域の内の各画素における画素値が変化する方向、その変化の大きさなどの、近傍領域の画素値分布に基づいてその画素が基準点であるか否かを識別できる程度の大きさの領域であることが望ましい。また、この近傍領域は、その画素を中心とした領域であってもよいし、その画素を中心から外れた位置に有する領域であってもよい。
【0095】
なお、図15に、基準点A、Bの近傍領域RA,RBの一例を示す。ここでは、近傍領域が矩形の領域である場合について例示しているが、近傍領域は円形、楕円形等、種々の形状の領域であってもよい。また、その近傍領域内の一部の画素の画素値分布のみを上記機械学習に用いるようにしてもよい。
【0096】
また、この識別器Dを取得する処理には、アダブースティングアルゴリズム(Adaboosting Algorithm)、ニューラルネットワーク(Neural Network)、SVM(Support Vector Machine)等を用いることができる。
【0097】
検出部112は、医用画像P上に識別器取得部111において取得した識別器Dを走査させることにより、医用画像P中の基準点A、Bを検出するものである。なお、この検出部21による基準点の検出より先に、後述する領域設定部130において対象領域の全体を含むと思われる判別領域Tが設定されている場合には、医用画像P全体のうち、設定された判別領域Tあるいはその判別領域Tを含む一部の領域上にのみ識別器Dを走査させることにより、医用画像P中の基準点を検出するようにしてもよい。
【0098】
点設定部120は、医用画像P中の肝臓領域内に任意の点C(シード点)を設定するものであって、たとえば、肝臓領域抽出部38に備えるキーボードやポインティングデバイス等による、操作者の入力に基づいて指定された医用画像P上の位置をその任意の点として設定するものであってもよいし、従来の対象領域検出方法により自動検出された肝臓領域内の各点に一定の質量が与えられているとし、その領域の重心位置をその任意の点として設定するものであってもよい。
【0099】
また、この点設定部120による任意の点Cの設定より先に、基準点検出部110において基準点A、Bが検出されている場合には、肝臓領域と基準点A、Bの解剖学的な位置関係により、下記の式(1)により、基準点A(xA、yA)と基準点B(xB、yB)を用いて任意の点C(xC、yC)を設定するようにしてもよい。
【数1】
【0100】
なお、この任意の点Cは、肝臓領域のおおまかな中心に設定されたものであってもよいし、肝臓領域の中心から外れた位置に設定されたものであってもよい。
【0101】
領域決定部30は、医用画像P中に、肝臓領域の全体を含むと思われる判別領域Tを設定するものであって、たとえば、肝臓領域抽出部38に備えるキーボードやポインティングデバイス等による、操作者の入力に基づいて指定された医用画像P上の領域をその判別領域Tとして設定するものであってもよいし、点設定部120において設定された点Cを中心とした、肝臓領域のありうる大きさ以上の大きさの領域を判別領域Tとして自動的に設定するものであってもよい。これにより、全体の医用画像Pから注目する領域の範囲を限定でき、以降の処理を高速化することができる。
【0102】
なお、判別領域Tは、その周縁形状として矩形、円形、楕円形等、種々の形状を採用することができる。
【0103】
輪郭らしさ算出部140は、領域設定部130において設定された判別領域T内の各画素の輪郭らしさを、その画素の近傍画素の画素値情報に基づいて算出するものであって、評価関数取得部141と、算出部142とを有する。
【0104】
評価関数取得部141は、肝臓領域を含む複数のサンプル画像を用意し、サンプル画像中の、輪郭上の点を表す画素および前記輪郭以外の点を表す画素のそれぞれについて、近傍画素の画素値情報をその画素における特徴量として予め機械学習することにより、サンプル画像中の各画素が輪郭を示す画素であるかどうかをその特徴量に基づいて評価する評価関数Fを取得するものである。
【0105】
具体的には、たとえば特開2007−307358号公報に記載されているように、各画素の近傍画素の画素値情報、たとえば、その画素を中心とする水平方向5画素×垂直方向5画素の領域内のそれぞれ異なる複数の画素の画素値値の組み合わせを用いて、その画素が輪郭を示す画素であるか否かの判別を行う複数の弱判別器を、その弱判別器全てを組み合わせた評価関数Fがサンプル画像中の各画素が輪郭を示す画素であるかどうかを所望の性能で評価できるようになるまで逐次生成する。
【0106】
これにより取得した評価関数Fは、任意の医用画像中の各画素が肝臓領域の輪郭を示す画素であるかどうかを評価する場合に適用することができる。
【0107】
また、この評価関数Fを取得する処理にも、アダブースティングアルゴリズム(Adaboosting Algorithm)、ニューラルネットワーク(Neural Network)、SVM(Support Vector Machine)等の機械学習の手法を用いることができる。
【0108】
算出部142は、判別領域T内の各画素の特徴量に基づいて、各画素の輪郭らしさ、つまりその画素が輪郭を示す画素であるかどうかの評価値を、評価関数Fを用いて算出するものである。
【0109】
領域抽出部150は、任意の点C、基準点S、および各画素の輪郭らしさを用いて判別領域Tから肝臓領域を抽出するものであって、たとえば、Yuri Y. Boykov, Marie-Pierre Jolly, “Interactive Graph Cuts for Optimal Boundary and Region Segmentation of Objects in N-D images”, Proceedings of “International Conference on Computer Vision”, Vancouver, Canada, July 2001 vol.I, p.105-112.や、米国特許第6973212号明細書等に記載されているグラフカット法(Graph Cuts)により判別領域Tを肝臓領域と背景領域とに分割する際、肝臓領域と背景領域の境界が肝臓領域の輪郭上に存在する点である基準点A、Bを必ず通るようにして、判別領域Tから肝臓領域を抽出する。
【0110】
具体的には、まず、図16に示すように、判別領域T中の各画素を表すノードNij(i=1,2,…、j=1,2,…)と各画素が取り得るラベル(本実施の形態では、肝臓領域または背景領域)をそれぞれ表すノードS、Tと、隣接する画素のノード同士をつなぐリンクn-linkと、各画素を表すノードNijと肝臓領域を表すノードSをつなぐリンクs-linkと、各画素を表すノードNijと背景領域を表すノードTをつなぐリンクt-linkとから構成されるグラフを作成する。
【0111】
ここで、n-linkには、判別領域中の各画素を表すノードNij毎にそのノードから四方の隣接するノードへ向かう4本のリンクが存在し、各隣接するノード間には互いのノードに向かう2本のリンクが存在する。ここで、各ノードNijから四方の隣接するノードへ向かう4本のリンクは、そのノードが示す画素が四方の隣接する画素と同一領域内の画素である確からしさを表すものであり、その確からしさはその画素の輪郭らしさに基づいて求められる。具体的には、そのノードNijが示す画素の輪郭らしさが設定しきい値以下である場合には、それらの各リンクに確からしさの所定の最大値が設定され、輪郭らしさが設定しきい値以上である場合は、その輪郭らしさが大きいほど、小さい値の確からしさが各リンクに設定される。たとえば、確からしさの最大値を1000とした場合、ノードNijが示す画素の輪郭らしさが設定しきい値(ゼロ)以下である場合には、そのノードから四方の隣接するノードへ向かう4本のリンクに1000という値が設定され、輪郭らしさが設定しきい値(ゼロ)以上である場合は、次式(1000−(輪郭らしさ/輪郭らしさの最大値)×1000)により算出された値をそれらの各リンクに設定することができる。ここで、輪郭らしさの最大値は、算出部142により判別領域T内の各画素において算出した全ての輪郭らしさのうち最大の値を意味する。
【0112】
また、各画素を表すノードNijと肝臓領域を表すノードSをつなぐs-linkは、各画素が肝臓領域に含まれる画素である確からしさを表すものであり、各画素を表すノードNijと背景領域を表すノードTをつなぐt-linkは、各画素が背景領域に含まれる画素である確からしさを表すものであり、それらの確からしさは、その画素が肝臓領域又は背景領域のいずれかを示す画素であるかの情報がすでに与えられている場合、その与えられた情報に従って設定される。
【0113】
具体的には、任意の点Cは肝臓領域内に設定された画素であるので、図16に示すように、その点Cを示すノードN33と肝臓領域を表すノードSとをつなぐs-linkに大きい値の確からしさを設定する。また、肝臓領域内に設定された任意の点を基準として、その肝臓領域を含むように設定した判別領域Tは、通常、肝臓領域及びその肝臓領域の周囲に存在する背景領域を含むようになっていることから、判別領域TT2の周縁の各画素を、背景領域を示す画素であろうと想定し、それらのその各画素を示すノードN11、N12、…、N15、N21、N25、N31、、と背景領域を表すノードTとをつなぐt-linkに大きい値の確からしさを設定する。
【0114】
また、図17に示すように、点設定部120において設定された点Cから基準点A、Bをそれぞれ通る方向に延びた各線分全体のうち、基準点Aと点Cとの間、基準点Bと点Cとの間の部分に位置する各画素は肝臓領域の内部に存在する画素であると判断することができるので、それらの各画素を示すノードと肝臓領域を表すノードSとをつなぐs-linkに大きい値の確からしさを設定し、基準点Aから点Cとは反対側に延びた部分、および基準点Bから点Cとは反対側に延びた部分に位置する各画素は肝臓領域の外部に存在する画素であると判断することができるので、それらの各画素を示すノードと肝臓領域を表すノードTとをつなぐt-linkに大きい値の確からしさを設定する。
【0115】
そして、肝臓領域と背景領域は互いに排他的な領域であるので、たとえば図18に点線で示すように、全てのn-link、s-link、およびt-linkのうち適当なリンクを切断してノードSをノードTから切り離すことにより、判別領域Tを肝臓領域と背景領域に分割して、肝臓領域を抽出する。ここで、切断する全てのn-link、s-link、およびt-linkにおける確からしさの合計が最も小さくなるような切断を行うことにより、最適な領域分割をすることができる。
【0116】
なお、ここでは、グラフカット法(Graph Cuts)を用いて肝臓領域を抽出する場合について例示しているが、それに代えて、たとえば特開2007−307358号公報に記載されているような動的計画法を用いて肝臓領域の輪郭を決定する等他の手法を用いて肝臓領域を抽出してもよい。
【0117】
次いで、上記の構成により、医用画像Pから肝臓領域を抽出する際に行われる処理の一例について説明する。
【0118】
まず、検出部112が、識別器取得部111により予め取得した、任意の医用画像中の各画素が基準点A、Bのいずれかを示す画素であるかどうかを識別できる識別器DA、BBを用いて、医用画像P中の基準点A、Bを検出する。次に、点設定部120が、上記の式(1)により、基準点A(xA、yA)と基準点B(xB、yB)を用いて、医用画像P中の対象領域内に任意の点C(xC、yC)(シード点)を設定する。次に、領域設定部130が、医用画像P中に、対象領域の全体を含むと思われる判別領域Tを設定する。次に、算出部142が、評価関数取得部141により予め取得した、任意の医用画像中の各画素が肝臓領域の輪郭を示す画素であるかどうかを評価できる評価関数Fを用いて、判別領域T内の各画素の輪郭らしさを算出する。最後に、領域抽出部150が、たとえばグラフカット法(Graph Cuts)により、設定された任意の点Cおよび算出された各画素の輪郭らしさに基づいて、かつ、肝臓領域の輪郭が基準点A、Bを必ず通るようにして、判別領域Tから対象領域を抽出し、処理を終了する。
【0119】
上記実施の形態によれば、入力画像中の対象領域内に任意の点を設定し、入力画像中に、対象領域の全体を含むと思われる判別領域を設定し、設定された判別領域内の各画素の輪郭らしさを、その画素の近傍画素の画素値情報に基づいて算出し、設定された任意の点および算出された各画素の輪郭らしさに基づいて、入力画像から対象領域を抽出する際に、その対象領域と同種の対象領域の輪郭上に存在し、かつ近傍領域の画素値分布に基づいて特定可能な基準点が既知である複数のサンプル画像中の、基準点を表す画素および基準点以外の点を表す画素のそれぞれについて、近傍領域の画素値分布を予め機械学習し、その機械学習の結果に基づいて入力画像中の基準点を検出し、その検出結果にさらに基づいて対象領域の抽出を行うようにしているので、対象領域の内部または外部に輪郭のような画素値分布が存在する場合であっても、対象領域の正しい輪郭上に存在する点として検出した基準点を確実に通るように、対象領域の輪郭を決定することができ、対象領域の抽出性能をより向上させることができる。
【0120】
なお、上記実施の形態においては、本発明の肝臓領域抽出部38を2次元の入力画像から対象領域を抽出するものに適用した場合について説明したが、3次元の入力画像から対象領域を抽出するものに適用することもできる。
【0121】
たとえば、3次元の医用画像中の肝臓領域の輪郭を決定する場合、2次元の医用画像から肝臓領域を抽出するときと同様に、全体的になめらかな曲面からなる肝臓領域の輪郭の角ばった箇所に存在する点を基準点として用いる。
【0122】
識別器取得部111が、肝臓領域を含む複数の3次元のサンプル画像を用意し、それらのサンプル画像中の、基準点を表すボクセルおよび基準点以外の点を表すボクセルのそれぞれについて、近傍領域の画素値分布を予め機械学習することにより、サンプル画像中の各ボクセルが基準点を示すボクセルであるか否かをそのボクセルの近傍領域の画素値分布に基づいて識別する識別器を取得する。ここで、各ボクセルの近傍領域は、その近傍領域の内の各ボクセルにおける画素値が変化する方向、その変化の大きさなどの、近傍領域の画素値分布に基づいてそのボクセルが基準点であるか否かを識別できる程度の大きさの3次元領域であることが望ましい。検出部112が、3次元の医用画像上に識別器取得部111において取得した識別器を走査させることにより、その医用画像中の基準点を検出する。
【0123】
また、点設定部120が、3次元の医用画像の肝臓領域内に、3次元座標系での任意の点Cを設定し、領域決定部30が、その3次元の医用画像中に、肝臓領域の全体を含むと思われる3次元の存在範囲を設定する。ここで、存在範囲は、その周縁形状として六面体、球体等、種々の形状を採用することができる。
【0124】
また、評価関数取得部141が、肝臓領域を含む複数の3次元のサンプル画像を用意し、それらのサンプル画像中の、輪郭上の点を表すボクセルおよび輪郭以外の点を表すボクセルのそれぞれについて、近傍ボクセルの画素値情報を予め機械学習することにより、任意の3次元の医用画像中の各ボクセルが肝臓領域の輪郭を示すボクセルであるかどうかを評価できる評価関数Fを取得する。ここで、近傍ボクセルの画素値情報としては、例えば、そのボクセルを中心とするX軸方向5ボクセル×Y軸方向5ボクセル×Z軸方向5ボクセルの立方体の領域内の異なる複数個のボクセルにおける画素値の組み合わせを用いることができる。次に、算出部142が、判別領域T内の各ボクセルの特徴量に基づいて、各ボクセルの輪郭らしさ、つまりそのボクセルが輪郭を示すボクセルであるかどうかの評価値を、評価関数Fを用いて算出する。
【0125】
領域抽出部150が、たとえば米国特許第6973212号明細書等に記載されている3次元のグラフカット法(Graph Cuts)により、3次元の判別領域Tを肝臓領域と背景領域とに分割する際、肝臓領域と背景領域の境界が、検出部112において検出された基準点を必ず通るようにして、判別領域Tから肝臓領域を抽出し、処理を終了する。
【符号の説明】
【0126】
31 入力装置
32 関心領域設定部
33 全体画像生成部
34 局所画像生成部
35 マーカー制御部
36 表示制御部
37 表示装置
38 肝臓領域抽出部
39 肝機能解析部
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いて得られた肝臓造影像に基づいて画像診断を行う医用画像診断装置および方法、並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
造影剤を用いた肝臓の超音波検査の際に、原発性肝癌、肝細胞癌のような重大な肝臓腫瘍は、周囲の正常な組織及び良性腫瘍と比較して、造影剤の急速注入後の早い段階での収容及び増光により検出されることに着目し、造影剤注入後に時系列的に取得された画像から、造影剤のこの早い収容及び増光が生じる画素又はボクセル領域を探し、識別し、肝臓での造影剤の到着時刻の分布を表すパラメータ画像においてこれらの画素又はボクセルの位置を強調表示する超音波診断システムが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、肝臓等の灌流(perfusion)CTアプリケーションとして、血流量やピーク強調までの時間等の灌流パラメータの値の範囲毎に所定の色を割り当て、画像中の灌流パラメータの値毎に色分け表示するものが提案されている(特許文献2)。
【0004】
一方、3次元画像データから2次元の断面画像を再構成して表示する装置としては、アキシャル、サジタル、コロナルの直交3断面の画像を表示するものがよく知られている(特許文献3)。
【0005】
また、複数のシリーズの医用画像の比較読影を行うための装置であって、各シリーズの医用画像データに基づいて、同じ方向から見た、同じ断面位置の断面画像を各々生成して表示するものが知られている(特許文献4)。
【0006】
さらに、1回の撮影で、心臓などの同一部位を連続して撮影することで、撮影時刻が異なる複数のボリュームデータを取得し、各ボリュームデータの代表画像を生成して縮小表示するとともに、縮小表示された代表画像の各々に、そのボリュームデータの撮影時刻を示すマーカーを重畳表示するようにした装置も知られている(特許文献5)。
【0007】
ところで、肝特異性のMRI用造影剤として、常磁性のガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)を有効成分とするもの(以下、EOB造影剤と呼ぶ)が開発されている。ガドキセト酸ナトリウムは、従来の非特異的な細胞外液性造影剤であるガドベンテト酸メグルミン(Gd-DTPA)に類似する基本骨格に、ベンゼン環と脂溶性のエトキシベンジル基(EOB)が付加された構造を有しているため、脂溶性が高まることによって細胞膜通過性が亢進し、正常な機能を有する肝細胞内に選択的に取り込まれるという性質を有する。その結果、正常な肝細胞(信号値が高い)と機能の低下または消失した肝細胞(信号値が低い)との画像上のコントラストにより、これまでの造影剤では実現されなかった、肝細胞機能の側面から見た腫瘍(例えば、のう胞、転移性肝癌、ほとんどの肝細胞癌)の検出、特に1cm以下の小さな腫瘍の検出や、肝腫瘍の良悪性の鑑別が可能になると期待されている。(非特許文献1から3)
EOB造影剤を用いた肝臓の造影検査では、造影剤投与後の経過時間によって造影効果が出現する部位が異なる。具体的には、造影剤投与20〜35秒後のタイミングで撮影された動脈相では、肝動脈から肝臓に流れ込んだEOB造影剤により、肝臓内の血管の豊富な部位が強く造影される。そして、造影剤投与3分後の平衡相や投与20分後の肝細胞造影相になると、EOB造影剤は正常な肝細胞に取り込まれるので、正常な肝細胞の部分が強く造影され、最初に強く造影された血管の豊富な部位でのEOB造影剤の濃度は下がる。
【0008】
したがって、EOB造影剤を用いた肝臓の画像診断では、造影剤投与後の複数の時相で得られた画像に基づいて総合的な判断を行うことが重要であるとされている。例えば肝実質中に多血性肝腫瘍があれば、動脈相ではその部分は強く造影され、画像中では高信号領域となる。これに対して、平衡相や肝細胞造影相では、多血性肝腫瘍の部分の造影剤濃度は下がり、さらにこの腫瘍の部分は肝実質中の正常な部分ではないのでEOB造影剤は取り込まれず、画像中では低信号領域となる。すなわち、多血性肝腫瘍の場合、動脈相では血流を反映して高信号領域として画像化された後、平衡相や肝細胞造影相では肝機能の異常性を反映して低信号領域として画像化されるというように、各相での信号値の変化を時系列的に解析することにより、高い精度での検出・鑑別が可能となる。(非特許文献2および3)
また、EOB造影剤は、静脈内投与後、血管内および細胞間隙に分布し、投与20分後から肝細胞造影相の撮影が可能になり、信号増強効果は少なくとも2時間は持続し、そして、最終的には尿中および胆汁中に排泄される。したがって、造影剤投与直後から排泄までの血流動態を画像化したものを用いて血流評価による診断が可能であるだけでなく、肝細胞造影相における肝細胞機能評価が可能となる。(非特許文献1から3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2008−531082号公報
【特許文献2】特開2006−334404号公報
【特許文献3】特開2004−105256号公報
【特許文献4】特開2007−282656号公報
【特許文献5】特開2009−148422号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】中川 裕幸、「肝細胞特異性MRI用造影剤「EOB・プリモビスト注シリンジ」の概要について」、[online]、2008年7月24日、社団法人 岐阜県放射線技師会 西濃支部、[2009年7月10日検索]、インターネット〈URL:http://plaza.umin.ac.jp/~GifuART/sibu/seino/2008_seino_HP/pdf/dai1kai_syouroku_nakagawa.pdf〉
【非特許文献2】斎藤 聡、「新しい造影剤:ガドキセト酸ナトリウムの可能性について(教育講演,テーマB:MR『上腹部MR検査を再考する』)」、放射線撮影分科会誌、2008年10月1日、51号、pp.30-33
【非特許文献3】加藤 勇治、「肝細胞癌スクリーニングに新たなMRI造影剤登場」、[online]、2008年2月22日、日経メディカル オンライン、[2009年7月10日検索]、インターネット〈URL:http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200802/505562.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
EOB造影剤を用いた肝臓の画像診断を効率的に行うためには、複数の撮影時相における関心領域の信号値の時系列的変化を的確に把握できることが求められる。
【0012】
これに対して、特許文献1や2に記載されたパラメータ画像は、時間軸方向に対して圧縮を行った画像となっているため、関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することは困難である。また、実際の画像診断の現場では、パラメータ画像のみから判断を行うことは現実的ではなく、原画像に立ち返って判断を行うことになるため、複数の撮影時相における原画像を、診断効率の向上に適した態様で表示することが求められる。
【0013】
そこで、医用画像の表示に関する上記先行技術の採用を検討すると、例えば、特許文献3に記載された画像表示装置を応用し、画面全体を表示したい撮影時相の数の小領域に分割し、各小領域内に、1つの撮影時相における直交3断面の画像を表示することにより、画面内に、直交3断面の画像を複数時相分並べて表示することが考えられるが、この場合、画面サイズの制約から、各撮影時相における各断面画像のサイズが小さくなってしまい、関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することは困難である。また、表示される断面画像はその断面における被検体全体を表すものであるから、各断面画像において関心領域を特定する必要があり、関心領域の信号値の時系列的変化を効率的に把握するという点では、十分な機能を有しているとはいえない。
【0014】
また、特許文献4に記載された医用画像表示装置では、各シリーズの医用画像がEOB造影剤投与に伴う各撮影時相の医用画像に相当するとすれば、複数の撮影時相の断面画像を並列的に表示することは可能であるが、表示される断面画像は、その断面における被検体全体を表す画像であるから、表示するシリーズの数、すなわち撮影時相の数を増やせば、各断面画像のサイズは小さくなってしまうため、上記と同様に、関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することは困難である。また、関心領域の効率的な特定の点でも課題が残る。
【0015】
さらに、特許文献5に記載された装置では、各撮影時相の医用画像が一覧表示されるものの、撮影時刻毎に表示される代表画像中に関心領域が存在するとは限らず、また、表示される代表画像も縮小されたものとなっているため、関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することは困難である。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像に基づいて、各時相における関心領域の信号値の時系列的変化を詳細かつ効率的に把握することを可能にする医用画像診断装置および方法、並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の医用画像診断装置は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成する局所画像生成手段と、生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させる表示制御手段とを設けたことを特徴とする。
【0018】
本発明の医用画像診断方法は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定するステップと、前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成するステップと、生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させるステップとを行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の医用画像診断プログラムは、コンピュータに上記方法を実行させるためのものである。
【0020】
本発明において、肝臓造影画像は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査で取得されたものであり、肝臓における血流と肝機能が画素値の高低として反映された画像となる。
【0021】
また、造影検査で用いられる造影剤は、肝臓における血流と肝機能とを異なるタイミングで画像に反映するものであることが好ましい。具体例としては、ガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)を有効成分とするMRI用の造影剤が挙げられる。
【0022】
また、この造影検査において肝臓造影画像が取得された複数の時相のすべてを注目時相としてもよいし、複数の時相の中から2以上の注目時相を選択するようにしてもよい。具体的な選択方法としては、造影剤投与後の経過時間に応じて注目時相を選択する方法が考えられる。例えば、造影剤投与後、所定の時間間隔で注目時相を選択することや、造影剤投与後、予め決められた時間(例えば、20秒、70秒、3分、20分)が経過した時点を注目時相として選択することが考えられる。このとき、造影剤が肝動脈から肝臓中の血管に流れ込んでいる時点である動脈相、および、造影剤が正常な肝細胞に取り込まれた時点である肝細胞造影相が注目時相に含まれるようにすることが好ましい。
【0023】
「各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定する」とは、各注目時相での肝臓造影画像に対して別個の関心領域を設定するのではなく、同一の関心領域を各注目時相の肝臓造影画像に対して設定することを意味する。したがって、設定された関心領域は各注目時相間で位置的に対応したものとなる。具体的には、ある注目時相の肝臓造影画像中に、ユーザによる手動設定、または、画像解析による自動設定、あるいは両者の組合せによって、関心領域を設定した後、他の注目時相での肝臓造影画像において、先に設定された関心領域と同じ座標値を有する領域を関心領域として設定することが考えられる。この場合、体動や呼吸等による時相間での関心領域の変位を考慮して、局所画像の大きさを、注目時相間での関心領域のありうる変位の最大値よりも大きい範囲を含む程度にすることが好ましい。あるいは、関心領域の設定の段階でこのような変位を考慮して、ある注目時相の肝臓造影画像中に関心領域を設定した後、各注目時相の肝臓造影画像の内容的特徴に基づいて、他の注目時相での肝臓造影画像中に、先に設定された関心領域に対応する関心領域を設定するようにしてもよい。具体的には、各注目時相の肝臓造影画像に対して、線形および/または非線形の位置合わせを行うことによって、時相間での相対応する位置の座標値の対応関係を求めておき、先に設定された関心領域の座標値をその対応関係に基づいて変換することによって、他の注目時相の肝臓造影画像中に関心領域を設定することが考えられる。また、上記位置合わせ自体を手動で行ってもよい。
【0024】
各注目時相において関心領域を表す局所画像は、関心領域の時系列的変化を詳細に観察するための画像であるから、縮小処理や画素の間引き処理等が行われていないものであることが好ましい。また、各時相の肝臓造影画像は3次元画像とし、関心領域を3次元領域とした場合、関心領域を複数の方向から見た局所画像を注目時相毎に生成するようにしてもよい。具体的には、関心領域を通る、アキシャル・サジタル・コロナルの直交3断面による断面画像を注目時相毎に生成することが考えられる。
【0025】
注目時相毎の局所画像の表示の際の比較読影可能な態様の具体例としては、注目時相毎の局所画像を1画面内に並べて表示する態様や、注目時相毎の局所画像を時系列順に切替表示する態様等が挙げられる。
【0026】
また、本発明において、複数の時相で取得された肝臓造影画像に基づいて、少なくとも肝臓全体を含む領域であって関心領域を含む領域を表す全体画像を生成するようにし、局所画像と全体画像とを同時に表示させるようにしてもよい。この全体画像についても、各時相の肝臓造影画像は3次元画像とし、関心領域を3次元領域とした場合、複数の方向から見た全体画像を生成するようにしてもよい。このとき、局所画像および全体画像は同じ方向から見た画像とすることが好ましい。具体的には、ある注目時相の肝臓造影画像に基づいて、関心領域を通る、アキシャル・サジタル・コロナルの直交3断面による断面画像を生成することが考えられる。このとき、全体画像の生成のもとになる肝臓造影画像の注目時相はユーザ操作によって選択可能としてもよい。全体画像は、ある注目時相の3次元肝臓造影画像に対してボリュームレンダリング処理等を行うことによって得られる擬似3次元画像であってもよい。また、肝機能を表す機能画像を全体画像としてもよいし、前記の断面画像のような形態画像と前記の機能画像とを重ね合わせた画像を全体画像としてもよい。機能画像は、例えば、肝臓造影画像から肝臓領域を抽出し、肝臓領域内を分割して得られる複数の小領域のうちの少なくとも一部の小領域について、その小領域における肝機能を表す肝機能評価値を算出し、肝臓造影画像および肝機能評価値に基づいて生成することができる。ここで、肝臓領域内を分割して得られる小領域は、1画素(ボクセル)の領域としてもよいし、数画素程度の領域としてもよいし、クイノーの肝区域等のように、肝臓領域を数個に分割した程度の大きさの領域であってもよい。
【0027】
また、全体画像を、上記の直交3断面の断面画像のように、関心領域の位置を特定可能な画像とし、全体画像中に関心領域を表すマーカーを重畳表示させるようにしてもよい。さらに、このマーカーをユーザが入力手段を用いて移動させることが可能なものとし、移動後のマーカーの位置を検出し、検出されたマーカーの位置に基づいて、全体画像のもとになる肝臓造影画像中の関心領域を設定し、関心領域が設定された肝臓造影画像以外の注目時相の肝臓造影画像の各々に対して、対応する関心領域を設定するようにしてもよい。さらに、局所画像中の関心領域に対してもマーカーを重畳表示させるようにしてもよい。
【0028】
また、注目時相毎に関心領域における肝機能評価値を算出し、関心領域における時相間での肝機能評価値の時系列的変化をグラフ等の態様で視覚化するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において取得された2以上の注目時相の肝臓造影画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定し、注目時相の肝臓造影画像の各々に基づいて、関心領域を表す局所画像を注目時相毎に生成し、生成された注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させるので、表示された注目時相毎の局所画像を容易に比較読影することができ、各注目時相における関心領域の信号値の時系列的変化を詳細かつ効率的に把握することが可能になる。
【0030】
すなわち、表示された注目時相毎の局所画像を読影することにより、特許文献1や2に記載のパラメータ画像を表示する従来技術では実現できなかった、複数の時相間での関心領域の信号値の時系列的変化を詳細に把握することが本発明により実現される。また、本発明では全体画像中の一部である関心領域のみを表示させることができるので、特許文献3から5に記載の従来技術のように縮小された全体画像中の関心領域を読影するのではなく、従来技術と同じ画面サイズであれば少なくとも全体画像ほどは縮小を伴わない局所画像を読影することができるので、各注目時相における関心領域を詳細に観察することが可能になる。さらに、本発明では関心領域のみが表示されるので、特許文献3から5に記載の従来技術のように全体画像中から関心領域を特定する必要もなく、読影効率が向上する。
【0031】
このように、本発明は、肝臓の血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査における、複数の撮影時相の関心領域の信号値の時系列的変化を的確に把握したいという要求に応えるものであり、このような造影剤を用いた肝臓の画像診断においてきわめて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態における肝機能造影像を用いた医用画像診断システムの概略構成図
【図2】本発明の実施形態における肝臓造影画像を用いた医用画像診断機能を実現する構成および処理の流れを模式的に示したブロック図
【図3】本発明の実施形態における表示画面の構成例を模式的に表した図
【図4A】全体画像の表示対象のフェーズの選択を行う際のユーザインターフェースの一例を表した図
【図4B】全体画像の表示対象のフェーズの選択を行う際のユーザインターフェースの他の一例を表した図
【図5】本発明の実施形態における医用画像診断システムの動作遷移を表すチャート
【図6】本発明の実施形態における画像表示例を表した図
【図7】本発明の実施形態における他の画像表示例を表した図
【図8】本発明の実施形態の変形例の構成および処理の流れを模式的に示したブロック図
【図9】肝機能造影像の画素値の時系列的変化(Time Intensity Curve: TIC)を表すグラフ
【図10】本発明の実施形態の変形例における画像表示例を表した図
【図11】肝区域の特定を行う際のユーザインターフェースの一例を表した図
【図12】肝区域毎の機能評価値を色分け表示したボリュームレンダリング画像の一例を示す図
【図13】肝区域毎の機能評価値を色分け表示したボリュームレンダリング画像の他の例を示す図
【図14】肝臓領域抽出部の詳細を示すブロック図
【図15】肝臓領域の基準点およびその近傍領域の一例を示す図
【図16】図14の領域抽出部により対象領域を抽出する一方法を説明するための図
【図17】シード点および基準点の位置に基づいてs-linkおよびt-linkの値を設定する一方法を説明するための図
【図18】図14の領域抽出部により対象領域を抽出する一方法を説明するための図
【図19】アキシャル画像表示領域中の局所画像の関心領域にマーカーを重畳表示させた例を表した図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態となる肝臓造影画像を用いた医用画像診断システムについて説明する。本発明の実施形態となる医用画像診断システムは、前述のEOB造影剤を用いた造影検査において複数のフェーズ(時相)で取得された肝臓造影画像(図2のV[1],V[2],・・・,V[8];以下、まとめてV[t]と表記することがある。tはフェーズを表す。)に基づいて、ユーザによって指定されたフェーズにおける肝臓全体を表す、ユーザによって指定された肝臓中の関心領域を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による全体断面画像(図2のWIA[T]・WIC[T]・WIS[T];以下、まとめてWI[T]と表記することがある)を生成するとともに、その関心領域、および、他のフェーズの肝臓造影画像中の対応する関心領域を通る、アキシャル・コロナル・サジタル断面による局所断面画像(図2のLIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・;以下、まとめてLI[t]と表記することがある)をフェーズ毎に生成し、これらの全体断面画像WI[T]および局所断面画像LI[t]を並べて表示するものである(図6参照)。
【0034】
図1は、医用画像診断システムの概要を示すハードウェア構成図である。図に示すように、このシステムでは、モダリティ1と、画像保管サーバ2と、画像処理ワークステーション3とが、ネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0035】
本実施形態では、モダリティ1にはMRI装置が含まれる。また、このMRI装置は、ガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)を有効成分とする前述のEOB造影剤の投与前、および、例えば、投与から20秒、1分、2分、5分、10分、20分、21分経過後の腹部(肝臓を含む)の3次元肝臓造影画像(ボクセルデータ)V[1]、V[2]、・・・、V[8]を取得するダイナミック撮影が可能なものである。この撮影で得られた各フェーズの肝臓造影画像には、EOB造影剤投与後の経過時間が付帯情報として関連づけられている。
【0036】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された3次元肝臓造影画像V[t]や画像処理ワークステーション3での画像処理によって生成された医用画像の画像データを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理用ソフトウェア(たとえば、ORDB(Object Relational Database)管理ソフトウェア)を備えている。
【0037】
画像処理ワークステーション3は、読影者からの要求に応じて、モダリティ1や画像保管サーバ2から取得した1以上のフェーズの3次元肝臓造影画像V[t]に対して画像処理(画像解析を含む)を行い、生成された画像を表示するコンピュータであり、CPU,主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置、表示装置、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーションシステム等がインストールされたものであるが、特に、入力装置として、読影者からの要求を入力するポインティングデバイス(マウス等)を備え、主記憶装置は、3次元肝臓造影画像V[t]の少なくとも一部を格納可能な容量を有しているものである。本発明の医用画像診断処理は、この画像処理ワークステーション3に実装されており、この処理は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたプログラムを実行することによって実現される。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0038】
画像データの格納形式やネットワーク9経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)等のプロトコルに基づいている。
【0039】
図2は、画像処理ワークステーション3の機能のうち、本発明の実施形態となる医用画像診断処理に関連する部分を示すブロック図である。図に示すように、本発明の実施形態となる医用画像診断処理は、入力装置31、関心領域設定部32、全体画像生成部33、局所画像生成部34、マーカー制御部35、表示制御部36、表示装置37によって実現される。以下、各処理部等の詳細について説明する。なお、以降の説明では、3次元肝臓造影画像は肝臓造影画像と表記する。
【0040】
入力装置31は、全体断面画像WIA[T]、WIC[T]、WIS[T]の生成・表示の対象となるフェーズTを選択する操作や、表示されている全体断面画像WIA[T]、WIC[T]、WIS[T]中の関心領域の中心位置MP[T]を指定する操作をユーザが行うためのものであり、本実施形態では、マウス等のポインティングデバイスであるものとして説明を行う。なお、入力装置31はキーボード等の他の装置であってもよい。
【0041】
関心領域設定部32は、各フェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]の中の関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]の位置を特定するものである。具体的には、関心領域設定部32は、全体断面画像WIA[T]、WIC[T]、WIS[T]中の関心領域の中心位置MP[T]に基づき、フェーズTの肝臓造影画像V[T]中に、位置MP[T]を中心とする1辺が所定の長さに相当する画素(ボクセル)数の立方体領域を関心領域VOI[T]に設定する。ここで、1辺の長さは、この造影検査中の被検体の呼吸や体動による肝臓の変位のありうる最大値を考慮して予め定められた長さである。次に、フェーズT以外の他のフェーズの肝臓造影画像の各々に対して、関心領域VOI[T]と同じ座標値を有する領域を関心領域に設定する。
【0042】
全体画像生成部33は、ユーザによって指定されたフェーズTに基づき、フェーズTの肝臓造影画像V[T]を入力として、公知のMPR(Multi-Planar Reconstruction)技術を用いて、フェーズTの関心領域VOI[T]の中心位置を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を再構成する。
【0043】
局所画像生成部34は、各フェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]を入力として、それらのうちの各フェーズの関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]内を表す画像データに対して公知のMPR技術を用いて、フェーズ毎に、関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]の中心位置を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を再構成する。
【0044】
マーカー制御部35は、ユーザによって指定されたフェーズTに基づき、フェーズTの関心領域VOI[T]の位置情報を取得し、その関心領域の位置をアキシャル・コロナル・サジタル断面による全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]中に示すためのマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]を生成する。マーカーの具体的な態様については後述する。
【0045】
表示制御部36は、全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]、マーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]、局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を所定のレイアウトで表示装置(ディスプレイ)37に表示させる制御を行う。
【0046】
図3は、表示装置37に表示させる画面50のレイアウト例を示したものである。図に示したように、表示画面50は、大きく分けると、アキシャル画像表示領域51A、コロナル画像表示領域51C、サジタル画像表示領域51S、任意画像表示領域51Xから構成されている。そして、アキシャル画像表示領域51Aは、アキシャル断面による全体断面画像WIA[T]を表示する全体画像表示領域52Aと、各フェーズのアキシャル断面による局所断面画像LIA[1], LIA[2],・・・, LIA[8]を表示する局所画像表示領域53A[1], 53A[2],・・・, 53A[8]とから構成されている。また、全体画像表示領域52Aには、マーカーMA[T]を全体断面画像WIA[T]に重畳させて表示させる。具体的には、マーカーMA[T]は、アキシャル断面画像中で関心領域VOI[T]の中心点を通るサジタル断面を表す直線54AS、コロナル断面を表す直線54AC、両断面を表す直線の交点(両断面の交線)、すなわち、関心領域VOI[T]の中心を表す点55Aとして表示される。このように、本実施形態では、関心領域の中心点が、アキシャル・コロナル・サジタルの3断面の交点と一致するようになっている。コロナル画像表示領域51C/サジタル画像表示領域51Sもアキシャル画像表示領域51Aと同様に、各々、コロナル/サジタル断面による全体断面画像WIC[T]/WIS[T]を表示する全体画像表示領域52C/52Sと、各フェーズのコロナル/サジタル断面による局所断面画像LIC[1], LIC[2],・・・, LIC[8]/LIS[1], LIS[2],・・・, LIS[8]を表示する局所画像表示領域53C[1], 53C[2],・・・, 53C[8]/53S[1], 53S[2],・・・, 53S[8]とから構成されている。また、コロナル画像表示領域51Cの全体画像表示領域52CにおけるマーカーMC[T]は、コロナル断面画像中で関心領域VOI[T]の中心点を通るサジタル断面を表す直線54CS、アキシャル断面を表す直線54CA、関心領域VOI[T]の中心を表す点55Cとして表示され、サジタル画像表示領域51Sの全体画像表示領域52SにおけるマーカーMS[T]は、サジタル断面画像中で関心領域VOI[T]の中心点を通るコロナル断面を表す直線54S
C、アキシャル断面を表す直線54SA、関心領域VOI[T]の中心を表す点55Sとして表示される。任意画像表示領域51Xは、任意の画像を表示可能な領域であり、この領域内をさらに分割して複数の画像を表示させることも可能である。
【0047】
図4Aおよび図4Bは、入力装置31によってフェーズTの選択を行うためのユーザインターフェースの具体例を示したものである。図4Aに示したように、フェーズ選択ウィンドウを別途表示して、入力装置31の操作(例えばマウスを用いたスライドレバーのドラッグ操作)によりスライドレバーを移動させることによりフェーズの選択を受け付けるインターフェースや、図4Bに示したように、入力装置31の操作(例えばマウスの右クリック操作)によりフェーズ選択メニューを表示させ、入力装置31の選択操作(例えばマウスのポインタを所望のフェーズに移動させてから左クリックする操作)によりフェーズの選択を受け付けるインターフェースが考えられる。この他、図3の局所画像表示領域53A[t], 53C[t], 53S[t]の中から、所望のフェーズTの表示領域を入力装置31で選択する操作(例えばマウスのポインタを所望のフェーズの表示領域に移動させてから左クリックする操作)を行うことによりフェーズの選択を受け付けるインターフェース等も考えられる。
【0048】
一方、入力装置31によって関心領域VOI[T]の中心点MP[T]の位置を変更する操作の具体例としては、図3の全体画像表示領域52A、52C、52S内の所望の位置で入力装置31を用いた指定操作を行うことが考えられる。例えば、所望の位置でのマウスのダブルクリック操作や、全体画像表示領域52A、52C、52S内のマーカーである直線54AS、54AC、54CS、54CA、54SC、54SAや中心点55A、55C、55Sをドラッグ操作で所望の位置に移動させる操作が挙げられる。
【0049】
次に、本発明の実施形態となる医用画像診断システムを用いた肝臓の画像診断の流れについて説明する。図5は、本発明の実施形態となる医用画像診断処理における動作の遷移を表したチャートである。
【0050】
まず、MRI撮影室のオーダリングシステムの端末において、EOB造影剤を用いた肝臓の造影検査の検査オーダを受信した場合、その検査オーダの対象の被検者は、EOB造影剤投与前の腹部の撮影が行われ、肝臓造影画像V[1]が生成される。その後、EOB造影剤が被検者に投与され、例えば、投与から20秒、1分、2分、5分、10分、20分、21分経過後の各タイミングで、同様の撮影が行われ、肝臓造影画像V[2]、・・・、V[8]が生成される。生成された肝臓造影画像V[1]、・・・、V[8]は、画像保管サーバ2に転送されて保管されるとともに、画像処理ワークステーション3が設置された読影室または診断室に検査オーダ(読影オーダ)が転送される。
【0051】
画像処理ワークステーション3において、この検査オーダが選択されると、画像処理ワークステーション3は、画像保管サーバ2から読影対象の肝臓造影画像V[T]を取得するとともに、検査オーダの内容を解析し、検査オーダに応じたアプリケーション・プログラム、すなわちここではEOB解析アプリケーションを起動させる。
【0052】
EOB解析アプリケーションが起動されると、まず、このアプリケーションに対する設定ファイルを読み込み、全体断面画像の表示対象のフェーズのデフォルト値T0、および、関心領域VOI[T0]の中心点のデフォルト値MP[T0]0を取得する。
【0053】
関心領域設定部32は、中心点のデフォルト値MP[T0]0に基づいて各フェーズの肝臓造影画像V[t]の関心領域の位置VOI[t]0を特定する。そして、表示対象のフェーズのデフォルト値T0およびそのフェーズT0における関心領域のデフォルト値VOI[T0]0に基づいて、全体画像生成部33は、そのフェーズT0の肝臓造影画像V[T0]を入力として最初に表示する全体断面画像WI[T0]0を再構成し、マーカー制御部35は関心領域の位置VOI[T0]0を表すマーカーM[T0]0を生成する。また、局所画像生成部34は、各フェーズの関心領域VOI[t]0に基づいて、各フェーズの肝臓造影画像V[t]を入力として最初に表示する局所断面画像LI[t]0を再構成する。表示制御部36は、生成された全体断面画像WI[T0]0、マーカーM[T0]0、局所断面画像LI[t]0を図3に示したレイアウトで表示装置37に表示させる(#1)。
【0054】
ユーザは、表示装置37に表示された全体断面画像WI[T0]0や局所断面画像LI[t]0を観察し、画像中に病変と疑われる病変候補領域が見つからなければ、必要に応じて、全体断面画像の表示対象のフェーズの変更(#2)や、関心領域、すなわち、全体断面画像や局所断面画像の断面の位置の変更(#4)のための操作を行うことができる。
【0055】
ここで、ユーザが、図4に示したユーザインターフェースで表示対象のフェーズをT0からT1に変更する操作を行うと(#2)、変更後のフェーズの値T1およびそのフェーズT1における関心領域VOI[T1]0に基づいて、全体画像生成部33は、そのフェーズT1の肝臓造影画像V[T1]を入力として全体断面画像WI[T1]0を再構成し、マーカー制御部35は関心領域の位置VOI[T1]0を表すマーカーM[T1]0を生成し、表示制御部36は、全体断面画像WI[T1]0、マーカーM[T1]0に表示を更新する(#3)。このとき、関心領域の位置は変更されていないので、局所断面画像LI[t]0の表示は更新されない。
【0056】
一方、ユーザが、デフォルト値による表示画面において、図3の全体画像表示領域52A、52C、52S内のマーカーを移動させる操作を行うことによって、関心領域VOI[T0]0の中心点の位置をMP[T0]0からMP[T0]1に移動させると(#4)、関心領域設定部32は、移動後の中心点の位置MP[T0]1に基づいて各フェーズの肝臓造影画像V[t]の関心領域の位置VOI[t]1を特定する(#5)。そして、表示対象のフェーズT0およびそのフェーズT0における移動後の関心領域VOI[T0]1に基づいて、全体画像生成部33は、フェーズT0の肝臓造影画像V[T0]を入力として全体断面画像WI[T0]1を再構成し、マーカー制御部35は移動後の関心領域の位置VOI[T0]1を表すマーカーM[T0]1を生成する。また、局所画像生成部34は、移動後の各フェーズの関心領域VOI[t]1に基づいて、各フェーズの肝臓造影画像V[t]を入力として局所断面画像LI[t]1を再構成する。表示制御部36は、生成された全体断面画像WI[T0]1、マーカーM[T0]1、局所断面画像LI[t]1を図3に示したレイアウトで表示装置37に表示させる(#6)。このように、関心領域の位置を変更した場合には、全体断面画像WI[T0]1、マーカーM[T0]1、局所断面画像LI[t]1のすべての表示が更新される。
【0057】
以下、図5のステップ#3から#2または#4に向かう矢印や、ステップ#6から#2または#4に向かう矢印で示したように、ユーザは、必要に応じて、全体断面画像の表示対象のフェーズの変更(#2)や、関心領域の位置の変更(#4)のための操作を繰り返し行うことができ、それに応じて、表示される画像やマーカーの表示が適宜更新される(#3, #5, #6)。そして、例えば、ユーザが、表示された画像中に病変候補領域を見つけた場合には、その病変候補領域およびその周辺領域の観察に適したフェーズの全体断面画像を表示するために、必要に応じて、全体断面画像の表示対象のフェーズの変更操作(#2)を行って、全体断面画像とマーカーの表示を更新させるとともに(#3)、その病変候補領域の中心が関心領域の中心(各断面の交点)となるようにマーカーの移動操作(#4)を行って、各フェーズの関心領域を変更させ(#5)、全体断面画像、マーカー、局所断面画像の表示を更新させる(#6)。図6は、フェーズ8の全体断面画像WI[8]を表示させるとともに、画像中の病変候補領域の局所断面画像LI[t]を表示させた画面例である。図に示したように、EOB造影剤による造影後期(フェーズ8:肝細胞造影相)における正常な肝細胞に対する造影作用により、病変候補領域およびその周辺領域の肝細胞の機能レベルを全体断面画像WI[8]から観察することができるとともに、EOB造影剤による造影初期(動脈相)における血管造影作用から後期における正常な肝細胞の造影作用への変化に伴う病変候補領域の時系列的変化を局所断面画像LI[t]から観察することができる。
【0058】
以上のように、本発明の上記実施形態によれば、関心領域設定部32が、肝臓における血流および肝機能が画像に反映されるEOB造影剤を用いた造影検査において取得された肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]の各々に対して、各フェーズ間で位置的に対応する肝臓中の関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を設定し、局所画像生成部34が、各フェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]の各々に基づいて、関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を表す局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]をフェーズ毎に生成し、表示制御部36が、生成されたフェーズ毎の局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を1画面中に並べて表示させるので、表示されたフェーズ毎の局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を容易に比較読影することができ、各フェーズにおける関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]の信号値の時系列的変化を詳細かつ効率的に把握することが可能になる。すなわち、本発明の上記実施形態は、EOB造影剤を用いた造影検査における、複数のフェーズの関心領域の信号値の時系列的変化を的確に把握したいという要求に応えるものであり、EOB造影剤を用いた肝臓の画像診断においてきわめて有用なものである。
【0059】
また、全体画像生成部33が、表示対象のフェーズTにおいて、肝臓全体を含む領域であって関心領域VOI[T]を含む領域を表す全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]を生成し、表示制御部36が、全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]と局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]と同時に表示させるようにしたので、関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]の時系列的変化と、その周辺領域の様子とを同時に観察することができ、より詳細な診断が可能になる。
【0060】
その際、マーカー制御部35が、全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]中に関心領域VOI[T]を表すマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]を重畳表示させるようにしたので、全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]中の関心領域の位置VOI[T]をより容易に把握することが可能になり、読影効率が向上する。
【0061】
また、このマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]を、ユーザが入力装置31を用いて移動させることが可能なものにし、移動後のマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]の位置MP[T]を検出し、関心領域設定部32が、検出されたマーカーの位置MP[T]に基づいて、全体断面画像WIA[T], WIC[T], WIS[T]のもとになる肝臓造影画像V[T]中の関心領域VOI[T]を設定し、関心領域VOI[T]が設定された肝臓造影画像V[T]以外のフェーズの肝臓造影画像V[t](ここではtはT以外の各フェーズを示す)の各々に対して、関心領域VOI[t]を設定するようにすれば、マーカーの移動操作に応じて関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を移動させることができ、全体画像生成部33が、フェーズTにおいて移動後の関心領域VOI[T]を表す全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を生成するとともに、局所画像生成部34が、各フェーズにおいて、移動後の関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を表す局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を生成し、表示制御部36が、生成された各画像を表示させることができるようになる。すなわち、ユーザによるマーカーMA[T]・MC[T]・MS[T]の移動操作に連動して関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を移動させ、移動後の関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を表す全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]および局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]に表示を切り替えることができるようになる。したがって、ユーザは、全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を観察しながら、画像中の各部に関心領域VOI[T]を設定し、その位置における局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を表示させることによって、関心領域VOI[T]が設定された部分における信号値の時系列変化を同時に観察することが可能になり、より詳細かつ柔軟な観察をより効率的に行うことができるようになる。
【0062】
また、各フェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]が3次元画像で、関心領域が3次元領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]であり、全体画像生成部33は複数の方向から見た全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を生成するので、関心領域の周辺を容易に3次元的に観察できるようになり、より詳細な診断が可能になる。また、局所画像生成部34も複数の方向から見た局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]を生成するので、関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]を複数の方向から読影することができ、より詳細な診断が可能になる。例えば、アキシャル断面による局所断面画像LIA[1], LIA[2],・・・, LIA[8]では円形の病変のように見える領域が、サジタル断面やコロナル断面による局所断面画像LIC[1]・LIS[1], LIC[2]・LIS[2],・・・, LIC[8]・LIS[8]でも円形に見えれば、その領域は病変である可能性が高いと判断することができ、一方、サジタル断面やコロナル断面による局所断面画像では管状に見えれば、その領域は血管であり、アキシャル断面による局所断面画像では血管を輪切りにした断面が病変のように見えただけであると判断することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、フェーズ間での関心領域VOI[1],VOI[2],・・・,VOI[8]のありうる変位の最大値よりも大きい範囲を表す画像を局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]としているので、被検体の呼吸や体動に起因するフェーズ間での関心領域の変位により、あるフェーズにおいて関心領域が局所断面画像の範囲から外れてしまうというような問題が生じなくなり、関心領域の時系列的変化の観察の精度が向上する。
【0064】
次に、上記の実施形態に対する変形例について説明する。
【0065】
上記の実施形態では、関心領域設定部32は、表示対象のフェーズTにおいてユーザによって指定された関心領域VOI[T]と同じ座標値を有する、他のフェーズにおける領域を関心領域に設定しているが、各フェーズの肝臓造影画像V[t]に対して、公知の剛体または非剛体レジストレーション(例えば、Rueckert D Sonoda LI,Hayes C,et al.、“Nonrigid Registration Using Free-Form Deformations:Application to Breast MR Images”、IEEE Transactions on Medical Imaging、1999年、Vol.18,No.8,pp.712-721参照)や、軸位断画像に対する撮影部位認識処理(例えば、特開2009-095644号公報参照)等を用いて、異なるフェーズの肝臓造影画像間で、平行移動・回転・変形・拡大・縮小等による位置合わせを行い、フェーズ間での各画素の移動方向・移動量を予め求めておき、表示対象のフェーズTで指定された関心領域VOI[T]の座標値を、他のフェーズとの間での各画素の移動方向・移動量を用いて変換することによって、他のフェーズでの対応する関心領域の座標値を求めるようにしてもよい。なお、位置合わせについては、例えば、図6に示された局所画像の各々に対するドラッグ・ドロップ操作等によって、その操作対象の局所画像の画面に平行な方向への移動ができるようにすることによって、ユーザの手動による位置合わせや、上記手法による自動位置合わせ結果に対する手動修正を行えるようにしてもよい。このように、複数のフェーズの肝臓造影画像V[t]の各々に対して、画像の内容的特徴に基づいて、位置的に対応する関心領域VOI[t]を設定するようにした場合には、被検体の体動や呼吸等による、フェーズ間での関心領域VOI[t]の変位の影響を受けることなく、各フェーズの肝臓造影画像V[t]に対して解剖学的に同一の位置に関心領域VOI[t]を設定することができるので、上記実施形態のように、関心領域のありうる変位量を考慮して関心領域(局所断面画像)の大きさを決定しておかなくても、あるフェーズの局所断面画像中には関心領域が含まれていないというような問題が生じなくなり、関心領域の時系列的変化の観察の精度が
向上する。
【0066】
また、上記の実施形態では、マーカー制御部35が、全体断面画像中にのみ、関心領域を表すマーカーを重畳表示させるようにしていたが、各フェーズの局所画像中の関心領域にもマーカーを重畳表示させるようにしてもよい。図19は局所断面画像に対してマーカーを付した表示例である。図では、アキシャル画像表示領域51Aのみを示しているが、コロナル画像表示領域51C、サジタル画像表示領域51S、任意画像表示領域51X中の局所画像についても同様にマーカーを重畳表示させればよい。また、マーカーの形態は様々な形態を採用可能であり、例えば、矢印やテキストコメント等であってもよい。
【0067】
また、上記の実施形態では、すべてのフェーズの局所断面画像を1つの画面内に並べて表示することによって、比較読影を容易にしていたが、ディスプレイのサイズの物理的制約等により表示画面のサイズを大きくできない場合や、より広い範囲の関心領域を表す局所断面画像を観察する必要がある場合、あるいは、関心領域を拡大して観察する必要がある場合等には、図7に例示したように、アキシャル画像表示領域51A、コロナル画像表示領域51C、サジタル画像表示領域51Sには、各々、1つのフェーズのアキシャル・コロナル・サジタルの全体断面画像を表示させ、任意画像表示領域51Xに、1つのフェーズのアキシャル・コロナル・サジタルの局所断面画像のみを並べて表示し、入力装置31の操作(例えば、局所断面画像の1つをクリックした後でマウスのホイール操作を行う等)によって、各フェーズの局所断面画像を時系列的に順次切替表示させるようにしてもよい。このような表示態様にすれば、関心領域の時系列的変化を動画的に捉えることが可能になる。
【0068】
また、上記の実施形態では、モダリティ1(MRI装置)によるダイナミック撮影で得られたすべてのフェーズの肝臓造影画像V[t]を、全体断面画像や局所断面画像の生成・表示対象としているが、図2の構成に、生成・表示対象のフェーズの選択を行う注目フェーズ選択部をさらに設けてもよい。注目フェーズ選択部は、所定の選択条件に基づいて自動選択するものであってもよいし、ユーザの操作によって手動選択するものであってもよい。自動選択の具体例としては、生成・表示対象のフェーズの取得タイミング(例えば、造影剤投与からの経過時間)を選択条件として予め設定ファイル等に準備しておき、モダリティ1で得られた肝臓造影画像V[t]の各々に関連づけられた取得タイミングの付帯情報を参照して、上記の選択条件に合致するフェーズの肝臓造影画像を選択する方法が挙げられる。手動選択の具体例としては、モダリティ1で得られた肝臓造影画像V[t]の各々から再構成された代表画像(例えば、所定の位置でのアキシャル断面画像)とその画像の取得タイミングの情報を一覧表示し、ユーザが入力装置31を用いて生成・表示対象のフェーズを選択する方法が挙げられる。このように生成・表示対象のフェーズを選択可能にすることにより、診断上必要なフェーズの画像のみを観察することができるので、診断効率の向上に資する。
【0069】
また、上記の実施形態では、ユーザによって選択された1つの表示対象フェーズTの肝臓造影画像V[T]から全体断面画像WI[T]を生成して表示していたが、造影検査で取得された複数のフェーズの肝臓造影画像を用いて、時間軸を圧縮した機能画像を全体断面画像として生成して表示するようにしてもよい。図8は、このような変形例を表すブロック図であり、図2に示したブロック図に肝臓領域抽出部38および肝機能解析部39が付加された構成となっている。
【0070】
肝臓領域抽出部38は、例えば、本出願人が特願2008-50615で提案している方法を用いて、複数のフェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]の各々から肝臓領域LV[1],LV[2],・・・,LV[8]を抽出する。
【0071】
具体的には、あるフェーズにおける肝臓造影画像(例えば、肝臓領域と周辺領域とのコントラストが大きい肝細胞造影相の肝臓造影画像V[8])に対して、ユーザがポインティングデバイス等を操作して、肝臓領域内の任意の点を設定するとともに(以下、この点をユーザ設定点と呼ぶ)、機械学習によって取得された識別器を用いて肝臓領域の輪郭の角ばった箇所を基準点として検出し、ユーザ設定点を中心として、肝臓を含む程度の大きさの3次元領域(以下、処理対象領域と呼ぶ)内の各点(ボクセル)について、機械学習によって取得された識別器を用いて、肝臓の輪郭上の点かどうかを表す評価値を算出し、処理対象領域の外周上の各点を肝臓領域外の背景領域内の点を予め判定するとともに、ユーザ設定点および基準点が肝臓領域内の点であると予め判定した上で、さらに処理対象領域内の各点の評価値を用いて、グラフカット法を適用することによって、肝臓造影画像V[8]から肝臓領域LV[8]を抽出する(さらに詳細な説明は、末尾の補足説明参照)。
【0072】
他のフェーズの肝臓造影画像V[1]、・・・、V[7]については、各肝臓造影画像から上記と同様の方法を用いて肝臓領域LV[1]、・・・、LV[7]を抽出してもよいし、肝臓造影画像V[8]から抽出された肝臓領域LV[8]と座標値が一致する領域を他のフェーズにおける肝臓領域LV[1]、・・・、LV[7]としてもよい。また、前述したとおり、剛体または非剛体レジストレーション、または撮影部位認識処理等を用いた異なるフェーズ間の位置合わせの結果に基づいて、肝臓領域LV[8]を座標変換することによって、肝臓領域LV[1]、・・・、LV[7]の位置を特定してもよい。
【0073】
なお、肝臓領域の抽出には、特開2002-345807号公報に記載された方法等、他の公知の方法を用いてもよい。
【0074】
肝機能解析部39は、複数のフェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]、および、各フェーズの画像中の肝臓領域LV[1]、・・・、LV[8]に基づいて、肝臓領域内を所定の画素(ボクセル)単位で小領域に分割し、分割された小領域毎に肝臓の機能レベルを表す肝機能評価値LFを算出する。小領域は、例えば、1辺の長さが3〜5画素(ボクセル)程度の立方体の領域とすることが考えられるが、1画素(ボクセル)毎に、すなわち、小領域を1辺の長さが1画素の立方体の領域として、肝機能評価値LFを算出してもよい。
【0075】
ここで、肝機能評価値LFの具体例としては以下の値が挙げられる。
(1)平均画素値
小領域毎に、小領域内の各画素の各フェーズでの画素値すべての平均を算出したもの。
(2)最大平均画素値
小領域毎に、小領域内の各画素の画素値の平均値をフェーズ毎に算出し、算出された平均値の最大値を求めたもの。
(3)最小平均画素値
小領域毎に、小領域内の各画素の画素値の平均値をフェーズ毎に算出し、算出された平均値の最小値を求めたもの。
(4)平均画素値の時系列的変化におけるカーブ下面積
小領域毎に、小領域内の各画素の画素値の平均値をフェーズ毎に算出し、図9に示したように、横軸を各フェーズ(時刻)、縦軸を平均画素値として、小領域毎に平均画素値の時系列的変化をグラフ化したときのカーブ下の面積(図9の斜線部参照)。
(5)平均画素値の時系列的変化における平均画素値のピーク時刻
(4)と同様に小領域毎に平均画素値の時系列的変化をグラフ化したときの平均画素値がピークとなる時刻(図9のtpeak参照)。
この他、(1)(2)(3)(4)の平均画素値・最大平均画素値・最小平均画素値・カーブ下面積を肝臓領域全体についても算出し、肝臓領域全体での値に対する各小領域での値の比率を評価値としてもよい。また、腹部大動脈と各肝区域の各々における画素値の時系列的変化を求め、これらの時系列変化をデコンボリューション法で解析することによって得られた評価値を用いてもよい(Hun-Kyu Ryeom, et al.、“Quantitative Evaluation of Liver Function with MRI Using Gd-EOB-DTPA”、Korean Journal of Radiology、韓国、The Korean Radiological Society、2004年12月31日、Vol.5(4), pp. 231-239参照)。さらに、CT画像を対象とした公知の灌流解析で用いられる評価値を転用することも考えられる。さらにまた、肝機能評価値の算出の際に、他の臓器、例えば、EOB造影剤の取り込みが生じる脾臓領域に対する比率を用いてもよい(図13参照)。MRIによる画像の場合、信号の絶対値には意味はなく、他の領域との相対的な関係に意味があるので、このように他の臓器を基準領域として肝機能評価値を算出することにより、より適切な機能評価が可能になる。なお、この場合、脾臓領域の抽出は、前述の肝臓領域の抽出方法と同様の方法を適用することが可能である。
【0076】
また、本変形例では、全体画像生成部33は、複数のフェーズの肝臓造影画像V[1],V[2],・・・,V[8]、および、算出された肝機能評価値LFに基づいて、全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を生成する。具体的には、所定の表示対象フェーズTにおける関心領域VOI[T]の中心位置を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による全体断面画像(形態断面画像)を生成するとともに、各小領域での肝機能評価値LFを3次元の機能画像と捉えて、上記中心位置を通るアキシャル・コロナル・サジタル断面による断面画像(機能断面画像)を生成し、生成された両画像を重ね合わせた画像を生成することが考えられる。図10は、このようにして生成された画像を表示制御部36によって表示装置37に表示させた例である。図に示したように、肝機能評価値LFが算出された肝臓領域では、形態断面画像の上に機能断面画像が重畳的に表示される。また機能断面画像中の画素値である肝機能評価値については、肝機能評価値の範囲毎に異なる色を割り当てることによって、肝臓領域内の肝機能レベルの相違を視覚的に識別可能な態様でマップ画像化している。なお、局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]については、上記の実施形態と同様である。
【0077】
このように、本変形例によれば、肝臓領域抽出部38および肝機能解析部39で得られた肝臓領域の機能評価値LFをさらに用いて、全体画像生成部33が全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]を生成するので、肝機能を表す機能画像と関心領域を表す局所形態画像とを同時に表示させることができ、診断効率の向上に資する。
【0078】
上記変形例では、肝臓領域内を比較的小さい領域に分割して肝機能評価値LFを算出したが、肝臓領域全体を8分割するクイノーの肝区域のように、肝臓を比較的大きい範囲に分割してもよい。肝臓の画像診断や手術においては、このように、肝動脈、門脈、肝静脈の支配領域によって分類された肝臓中の区域を単位として行われることが一般的であり、肝臓の画像診断によって切除手術の対象領域を決定するような場合には、肝臓の区域を単位として決定する必要があるので、各区域の機能レベルを表す全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]と、肝臓中の病変候補である関心領域を表す局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]とを同時に表示することにより、上記のような医療現場のニーズにより的確に応えることができる。
【0079】
なお、肝区域の分割の具体的方法としては、図11に示したように、ユーザがポインティングデバイス等を操作して、1つの肝臓領域を表す画像(例えば、肝細胞造影相の肝臓領域を表すボリュームレンダリング画像)内の複数の肝区域の境界となる平面または曲面(図11では線分L1およびL2)を指定することにより、肝臓領域内の複数の肝区域を特定する手動分割手法が挙げられる。ここで、特定された複数の肝区域は3次元の領域である。他のフェーズの肝臓領域については、上記と同様の方法を用いて各フェーズにおける肝区域を特定してもよいし、1つのフェーズの肝臓領域において特定された肝区域と座標値が一致する領域を、他の各フェーズにおける肝区域として特定してもよいし、前述の剛体または非剛体レジストレーション、または撮影部位認識処理等を用いた異なるフェーズ間の位置合わせの結果に基づいて、手動設定された肝区域の座標値を変換することによって、他のフェーズの対応する肝区域の位置を特定してもよい。また、肝区域の特定には、肝臓領域内の血管を抽出し、ボロノイ図(Voronoi diagram)を用いて、肝臓領域内の血管以外の領域(肝臓実質等)がどの血管の支配領域に属するかを特定することによって、各血管の支配領域を肝区域として特定する方法等(特開2003-033349号公報や、R Beichel et al.、“Liver segment approximation in CT data for surgical resection planning”、Medical Imaging 2004: Image Processing. Edited by Fitzpatrick, J. Michael; Sonka, Milan、2004年、Proceedings of the SPIE, Volume 5370, pp. 1435-1446等参照)、公知の自動分割方法を用いることもできる。
【0080】
また、上記実施形態において、図3の任意画像表示領域51Xには、他の撮影条件で得られた画像、例えば、造影剤投与前のT1強調画像やT2強調画像のコントラストの観察が肝腫瘍の鑑別において有用であるという知見に基づいてこれらの画像を表示させるようにしてもよい。具体的には、腺腫様過形成(dysplastic nodule)はT1強調画像で高信号、T2強調画像で低信号となり、高分化の肝腫瘍はT1強調画像で等信号からやや高信号、T2強調画像でやや等信号から低信号となり、中分化の肝腫瘍はT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号となることが知られており、任意画像表示領域51Xに表示されたEOB造影剤投与前のT1強調画像およびT2強調画像と、他の表示領域51A、51C、51Sに表示されたEOB造影剤投与後の肝臓造影画像とをあわせて観察することにより、より精度の高い肝臓の画像診断が可能になる。
【0081】
あるいは、他の画像処理によって生成された画像を図3の任意画像表示領域51Xに表示させるようにしてもよい。図12、13はその具体例である。両図とも、上記の方法で肝臓領域を複数の肝区域に分割して、肝区域毎に肝機能評価値を算出した後、算出された肝機能評価値を各肝区域内のすべての画素がその肝区域の評価値を画素値として有している3次元機能画像データとして捉え、この3次元機能画像データを入力として公知のボリュームレンダリングを行うことによって生成された画像である。評価値の範囲毎に異なる色を割り当てることによって、肝区域毎の機能レベルの相違を視覚的に識別可能な態様で画像化している。図12は、2つの肝区域が特定された場合のボリュームレンダリング画像の例である。一方、図13は、3つの肝区域が特定された場合のボリュームレンダリング画像の例であり、不透明度の設定を図12の画像例から変更し、肝臓実質部分の不透明度を低くして半透明化し、肝臓内の血管に対して色を割り当てることによって、各肝区域の色分け表示と血管部分の表示とを両立している。また、図13では、実際の機能評価値をテキスト情報としても表示している。このように、図6に示したような肝臓領域全体の形態を表す全体断面画像WIA[T]・WIC[T]・WIS[T]と、肝臓中の病変候補である関心領域の形態を表す局所断面画像LIA[1]・LIC[1]・LIS[1], LIA[2]・LIC[2]・LIS[2],・・・, LIA[8]・LIC[8]・LIS[8]とを表示するとともに、さらに、図12または図13に示したような肝区域毎の機能評価値を表す画像も同時に表示するようにすれば、関心領域の時系列的変化の観察と関心領域周辺の観察を同時に行えるとともに、前述のとおり、肝臓の画像診断上重要な肝区域単位での肝機能評価も同時に行うことができるので、医療現場での要求にさらに合致したものとなり、肝臓の画像診断の効率の向上にきわめて有効である。
【0082】
この他、上記の実施形態におけるシステム構成、処理フロー、モジュール構成等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0083】
例えば、上記の実施形態では、図2に示された各処理が1台の画像処理ワークステーション3で行われるように説明したが、複数台の画像処理ワークステーションに各処理を分散して協調処理するように構成してもよい。
【0084】
また、上記の実施形態はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。
【0085】
例えば、上記の実施形態で用いたEOB造影剤は、肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤の一例であり、同様の作用を生じさせる他の造影剤、すなわち、肝臓における血流および肝機能が画素値の高低として反映された肝臓造影画像を取得可能な他の造影剤であってもよい。
【0086】
また、上記の実施形態では、局所断面画像とともに全体断面画像を同時に表示させるようにしていたが、局所断面画像のみを表示させるようにしてもよいし、局所断面画像と図12、13に示した肝区域毎の機能画像とを同時に表示させるようにしてもよい。また、これらの表示態様を、自動的に、あるいは、ユーザの操作に基づいて切り替えて表示させるようにしてもよい。
【0087】
さらにまた、上記の実施形態では、全体断面画像と局所断面画像とで同じ断面位置で連動させていたが、異なる断面位置としてもよい。
【0088】
また、関心領域については、肝機能評価値の時系列的変化を視覚化して別途表示するようにしてもよい。視覚化の具体的態様としては、図9に示したような、各フェーズにおける関心領域内の平均画素値の時系列変化を表すグラフ等が挙げられる。
【0089】
[補足説明:肝臓領域抽出部38の詳細について]
以下、特願2008-50615の明細書を引用して、肝臓領域の抽出方法の詳細について説明するが、説明を簡潔にするために、まず2次元画像からの抽出方法について説明した後で、3次元画像からの抽出方法を説明する。
【0090】
図14に示すように、肝臓領域抽出部38は、医用画像Pから肝臓領域を抽出するものであって、基準点検出部110、点設定部120、領域設定部130、輪郭らしさ算出部140、領域抽出部150などを備えている。
【0091】
基準点検出部110は、肝臓領域の輪郭上に存在し、かつ近傍領域の画素値分布に基づいて特定可能な基準点が既知である複数のサンプル画像中の、基準点を表す画素および基準点以外の点を表す画素のそれぞれについて、近傍領域の画素値分布を予め機械学習し、その機械学習の結果に基づいて医用画像P中の基準点を検出するものであって、識別器取得部111と、検出部112とを有する。
【0092】
ここで、基準点は、入力画像から抽出したい対象領域の種類に応じて定められるものであり、その数に制限はない。本実施の形態では、たとえば、図15に示すように、全体的になめらかな曲線からなる肝臓領域の輪郭における、角ばった箇所に存在する点Aおよび点Bのいずれかまたは両方を基準点として用いる。
【0093】
識別器取得部111は、たとえば特開2006−139369号公報に記載されているように、肝臓領域を含む複数のサンプル画像を用意し、サンプル画像中の、基準点を表す画素および基準点以外の点を表す画素のそれぞれについて、近傍領域の画素値分布を予め機械学習することにより、サンプル画像中の各画素が基準点を示す画素であるか否かをその画素の近傍領域の画素値分布に基づいて識別する識別器Dを取得するものである。これにより取得した識別器Dは、任意の医用画像中の各画素が基準点を示す画素であるかどうかを識別する場合に適用することができる。なお、2以上の基準点(たとえば基準点A、B)を用いて肝臓領域を抽出する場合には、それぞれの基準点について識別器Dを取得する。
【0094】
ここで、各画素の近傍領域は、その近傍領域の内の各画素における画素値が変化する方向、その変化の大きさなどの、近傍領域の画素値分布に基づいてその画素が基準点であるか否かを識別できる程度の大きさの領域であることが望ましい。また、この近傍領域は、その画素を中心とした領域であってもよいし、その画素を中心から外れた位置に有する領域であってもよい。
【0095】
なお、図15に、基準点A、Bの近傍領域RA,RBの一例を示す。ここでは、近傍領域が矩形の領域である場合について例示しているが、近傍領域は円形、楕円形等、種々の形状の領域であってもよい。また、その近傍領域内の一部の画素の画素値分布のみを上記機械学習に用いるようにしてもよい。
【0096】
また、この識別器Dを取得する処理には、アダブースティングアルゴリズム(Adaboosting Algorithm)、ニューラルネットワーク(Neural Network)、SVM(Support Vector Machine)等を用いることができる。
【0097】
検出部112は、医用画像P上に識別器取得部111において取得した識別器Dを走査させることにより、医用画像P中の基準点A、Bを検出するものである。なお、この検出部21による基準点の検出より先に、後述する領域設定部130において対象領域の全体を含むと思われる判別領域Tが設定されている場合には、医用画像P全体のうち、設定された判別領域Tあるいはその判別領域Tを含む一部の領域上にのみ識別器Dを走査させることにより、医用画像P中の基準点を検出するようにしてもよい。
【0098】
点設定部120は、医用画像P中の肝臓領域内に任意の点C(シード点)を設定するものであって、たとえば、肝臓領域抽出部38に備えるキーボードやポインティングデバイス等による、操作者の入力に基づいて指定された医用画像P上の位置をその任意の点として設定するものであってもよいし、従来の対象領域検出方法により自動検出された肝臓領域内の各点に一定の質量が与えられているとし、その領域の重心位置をその任意の点として設定するものであってもよい。
【0099】
また、この点設定部120による任意の点Cの設定より先に、基準点検出部110において基準点A、Bが検出されている場合には、肝臓領域と基準点A、Bの解剖学的な位置関係により、下記の式(1)により、基準点A(xA、yA)と基準点B(xB、yB)を用いて任意の点C(xC、yC)を設定するようにしてもよい。
【数1】
【0100】
なお、この任意の点Cは、肝臓領域のおおまかな中心に設定されたものであってもよいし、肝臓領域の中心から外れた位置に設定されたものであってもよい。
【0101】
領域決定部30は、医用画像P中に、肝臓領域の全体を含むと思われる判別領域Tを設定するものであって、たとえば、肝臓領域抽出部38に備えるキーボードやポインティングデバイス等による、操作者の入力に基づいて指定された医用画像P上の領域をその判別領域Tとして設定するものであってもよいし、点設定部120において設定された点Cを中心とした、肝臓領域のありうる大きさ以上の大きさの領域を判別領域Tとして自動的に設定するものであってもよい。これにより、全体の医用画像Pから注目する領域の範囲を限定でき、以降の処理を高速化することができる。
【0102】
なお、判別領域Tは、その周縁形状として矩形、円形、楕円形等、種々の形状を採用することができる。
【0103】
輪郭らしさ算出部140は、領域設定部130において設定された判別領域T内の各画素の輪郭らしさを、その画素の近傍画素の画素値情報に基づいて算出するものであって、評価関数取得部141と、算出部142とを有する。
【0104】
評価関数取得部141は、肝臓領域を含む複数のサンプル画像を用意し、サンプル画像中の、輪郭上の点を表す画素および前記輪郭以外の点を表す画素のそれぞれについて、近傍画素の画素値情報をその画素における特徴量として予め機械学習することにより、サンプル画像中の各画素が輪郭を示す画素であるかどうかをその特徴量に基づいて評価する評価関数Fを取得するものである。
【0105】
具体的には、たとえば特開2007−307358号公報に記載されているように、各画素の近傍画素の画素値情報、たとえば、その画素を中心とする水平方向5画素×垂直方向5画素の領域内のそれぞれ異なる複数の画素の画素値値の組み合わせを用いて、その画素が輪郭を示す画素であるか否かの判別を行う複数の弱判別器を、その弱判別器全てを組み合わせた評価関数Fがサンプル画像中の各画素が輪郭を示す画素であるかどうかを所望の性能で評価できるようになるまで逐次生成する。
【0106】
これにより取得した評価関数Fは、任意の医用画像中の各画素が肝臓領域の輪郭を示す画素であるかどうかを評価する場合に適用することができる。
【0107】
また、この評価関数Fを取得する処理にも、アダブースティングアルゴリズム(Adaboosting Algorithm)、ニューラルネットワーク(Neural Network)、SVM(Support Vector Machine)等の機械学習の手法を用いることができる。
【0108】
算出部142は、判別領域T内の各画素の特徴量に基づいて、各画素の輪郭らしさ、つまりその画素が輪郭を示す画素であるかどうかの評価値を、評価関数Fを用いて算出するものである。
【0109】
領域抽出部150は、任意の点C、基準点S、および各画素の輪郭らしさを用いて判別領域Tから肝臓領域を抽出するものであって、たとえば、Yuri Y. Boykov, Marie-Pierre Jolly, “Interactive Graph Cuts for Optimal Boundary and Region Segmentation of Objects in N-D images”, Proceedings of “International Conference on Computer Vision”, Vancouver, Canada, July 2001 vol.I, p.105-112.や、米国特許第6973212号明細書等に記載されているグラフカット法(Graph Cuts)により判別領域Tを肝臓領域と背景領域とに分割する際、肝臓領域と背景領域の境界が肝臓領域の輪郭上に存在する点である基準点A、Bを必ず通るようにして、判別領域Tから肝臓領域を抽出する。
【0110】
具体的には、まず、図16に示すように、判別領域T中の各画素を表すノードNij(i=1,2,…、j=1,2,…)と各画素が取り得るラベル(本実施の形態では、肝臓領域または背景領域)をそれぞれ表すノードS、Tと、隣接する画素のノード同士をつなぐリンクn-linkと、各画素を表すノードNijと肝臓領域を表すノードSをつなぐリンクs-linkと、各画素を表すノードNijと背景領域を表すノードTをつなぐリンクt-linkとから構成されるグラフを作成する。
【0111】
ここで、n-linkには、判別領域中の各画素を表すノードNij毎にそのノードから四方の隣接するノードへ向かう4本のリンクが存在し、各隣接するノード間には互いのノードに向かう2本のリンクが存在する。ここで、各ノードNijから四方の隣接するノードへ向かう4本のリンクは、そのノードが示す画素が四方の隣接する画素と同一領域内の画素である確からしさを表すものであり、その確からしさはその画素の輪郭らしさに基づいて求められる。具体的には、そのノードNijが示す画素の輪郭らしさが設定しきい値以下である場合には、それらの各リンクに確からしさの所定の最大値が設定され、輪郭らしさが設定しきい値以上である場合は、その輪郭らしさが大きいほど、小さい値の確からしさが各リンクに設定される。たとえば、確からしさの最大値を1000とした場合、ノードNijが示す画素の輪郭らしさが設定しきい値(ゼロ)以下である場合には、そのノードから四方の隣接するノードへ向かう4本のリンクに1000という値が設定され、輪郭らしさが設定しきい値(ゼロ)以上である場合は、次式(1000−(輪郭らしさ/輪郭らしさの最大値)×1000)により算出された値をそれらの各リンクに設定することができる。ここで、輪郭らしさの最大値は、算出部142により判別領域T内の各画素において算出した全ての輪郭らしさのうち最大の値を意味する。
【0112】
また、各画素を表すノードNijと肝臓領域を表すノードSをつなぐs-linkは、各画素が肝臓領域に含まれる画素である確からしさを表すものであり、各画素を表すノードNijと背景領域を表すノードTをつなぐt-linkは、各画素が背景領域に含まれる画素である確からしさを表すものであり、それらの確からしさは、その画素が肝臓領域又は背景領域のいずれかを示す画素であるかの情報がすでに与えられている場合、その与えられた情報に従って設定される。
【0113】
具体的には、任意の点Cは肝臓領域内に設定された画素であるので、図16に示すように、その点Cを示すノードN33と肝臓領域を表すノードSとをつなぐs-linkに大きい値の確からしさを設定する。また、肝臓領域内に設定された任意の点を基準として、その肝臓領域を含むように設定した判別領域Tは、通常、肝臓領域及びその肝臓領域の周囲に存在する背景領域を含むようになっていることから、判別領域TT2の周縁の各画素を、背景領域を示す画素であろうと想定し、それらのその各画素を示すノードN11、N12、…、N15、N21、N25、N31、、と背景領域を表すノードTとをつなぐt-linkに大きい値の確からしさを設定する。
【0114】
また、図17に示すように、点設定部120において設定された点Cから基準点A、Bをそれぞれ通る方向に延びた各線分全体のうち、基準点Aと点Cとの間、基準点Bと点Cとの間の部分に位置する各画素は肝臓領域の内部に存在する画素であると判断することができるので、それらの各画素を示すノードと肝臓領域を表すノードSとをつなぐs-linkに大きい値の確からしさを設定し、基準点Aから点Cとは反対側に延びた部分、および基準点Bから点Cとは反対側に延びた部分に位置する各画素は肝臓領域の外部に存在する画素であると判断することができるので、それらの各画素を示すノードと肝臓領域を表すノードTとをつなぐt-linkに大きい値の確からしさを設定する。
【0115】
そして、肝臓領域と背景領域は互いに排他的な領域であるので、たとえば図18に点線で示すように、全てのn-link、s-link、およびt-linkのうち適当なリンクを切断してノードSをノードTから切り離すことにより、判別領域Tを肝臓領域と背景領域に分割して、肝臓領域を抽出する。ここで、切断する全てのn-link、s-link、およびt-linkにおける確からしさの合計が最も小さくなるような切断を行うことにより、最適な領域分割をすることができる。
【0116】
なお、ここでは、グラフカット法(Graph Cuts)を用いて肝臓領域を抽出する場合について例示しているが、それに代えて、たとえば特開2007−307358号公報に記載されているような動的計画法を用いて肝臓領域の輪郭を決定する等他の手法を用いて肝臓領域を抽出してもよい。
【0117】
次いで、上記の構成により、医用画像Pから肝臓領域を抽出する際に行われる処理の一例について説明する。
【0118】
まず、検出部112が、識別器取得部111により予め取得した、任意の医用画像中の各画素が基準点A、Bのいずれかを示す画素であるかどうかを識別できる識別器DA、BBを用いて、医用画像P中の基準点A、Bを検出する。次に、点設定部120が、上記の式(1)により、基準点A(xA、yA)と基準点B(xB、yB)を用いて、医用画像P中の対象領域内に任意の点C(xC、yC)(シード点)を設定する。次に、領域設定部130が、医用画像P中に、対象領域の全体を含むと思われる判別領域Tを設定する。次に、算出部142が、評価関数取得部141により予め取得した、任意の医用画像中の各画素が肝臓領域の輪郭を示す画素であるかどうかを評価できる評価関数Fを用いて、判別領域T内の各画素の輪郭らしさを算出する。最後に、領域抽出部150が、たとえばグラフカット法(Graph Cuts)により、設定された任意の点Cおよび算出された各画素の輪郭らしさに基づいて、かつ、肝臓領域の輪郭が基準点A、Bを必ず通るようにして、判別領域Tから対象領域を抽出し、処理を終了する。
【0119】
上記実施の形態によれば、入力画像中の対象領域内に任意の点を設定し、入力画像中に、対象領域の全体を含むと思われる判別領域を設定し、設定された判別領域内の各画素の輪郭らしさを、その画素の近傍画素の画素値情報に基づいて算出し、設定された任意の点および算出された各画素の輪郭らしさに基づいて、入力画像から対象領域を抽出する際に、その対象領域と同種の対象領域の輪郭上に存在し、かつ近傍領域の画素値分布に基づいて特定可能な基準点が既知である複数のサンプル画像中の、基準点を表す画素および基準点以外の点を表す画素のそれぞれについて、近傍領域の画素値分布を予め機械学習し、その機械学習の結果に基づいて入力画像中の基準点を検出し、その検出結果にさらに基づいて対象領域の抽出を行うようにしているので、対象領域の内部または外部に輪郭のような画素値分布が存在する場合であっても、対象領域の正しい輪郭上に存在する点として検出した基準点を確実に通るように、対象領域の輪郭を決定することができ、対象領域の抽出性能をより向上させることができる。
【0120】
なお、上記実施の形態においては、本発明の肝臓領域抽出部38を2次元の入力画像から対象領域を抽出するものに適用した場合について説明したが、3次元の入力画像から対象領域を抽出するものに適用することもできる。
【0121】
たとえば、3次元の医用画像中の肝臓領域の輪郭を決定する場合、2次元の医用画像から肝臓領域を抽出するときと同様に、全体的になめらかな曲面からなる肝臓領域の輪郭の角ばった箇所に存在する点を基準点として用いる。
【0122】
識別器取得部111が、肝臓領域を含む複数の3次元のサンプル画像を用意し、それらのサンプル画像中の、基準点を表すボクセルおよび基準点以外の点を表すボクセルのそれぞれについて、近傍領域の画素値分布を予め機械学習することにより、サンプル画像中の各ボクセルが基準点を示すボクセルであるか否かをそのボクセルの近傍領域の画素値分布に基づいて識別する識別器を取得する。ここで、各ボクセルの近傍領域は、その近傍領域の内の各ボクセルにおける画素値が変化する方向、その変化の大きさなどの、近傍領域の画素値分布に基づいてそのボクセルが基準点であるか否かを識別できる程度の大きさの3次元領域であることが望ましい。検出部112が、3次元の医用画像上に識別器取得部111において取得した識別器を走査させることにより、その医用画像中の基準点を検出する。
【0123】
また、点設定部120が、3次元の医用画像の肝臓領域内に、3次元座標系での任意の点Cを設定し、領域決定部30が、その3次元の医用画像中に、肝臓領域の全体を含むと思われる3次元の存在範囲を設定する。ここで、存在範囲は、その周縁形状として六面体、球体等、種々の形状を採用することができる。
【0124】
また、評価関数取得部141が、肝臓領域を含む複数の3次元のサンプル画像を用意し、それらのサンプル画像中の、輪郭上の点を表すボクセルおよび輪郭以外の点を表すボクセルのそれぞれについて、近傍ボクセルの画素値情報を予め機械学習することにより、任意の3次元の医用画像中の各ボクセルが肝臓領域の輪郭を示すボクセルであるかどうかを評価できる評価関数Fを取得する。ここで、近傍ボクセルの画素値情報としては、例えば、そのボクセルを中心とするX軸方向5ボクセル×Y軸方向5ボクセル×Z軸方向5ボクセルの立方体の領域内の異なる複数個のボクセルにおける画素値の組み合わせを用いることができる。次に、算出部142が、判別領域T内の各ボクセルの特徴量に基づいて、各ボクセルの輪郭らしさ、つまりそのボクセルが輪郭を示すボクセルであるかどうかの評価値を、評価関数Fを用いて算出する。
【0125】
領域抽出部150が、たとえば米国特許第6973212号明細書等に記載されている3次元のグラフカット法(Graph Cuts)により、3次元の判別領域Tを肝臓領域と背景領域とに分割する際、肝臓領域と背景領域の境界が、検出部112において検出された基準点を必ず通るようにして、判別領域Tから肝臓領域を抽出し、処理を終了する。
【符号の説明】
【0126】
31 入力装置
32 関心領域設定部
33 全体画像生成部
34 局所画像生成部
35 マーカー制御部
36 表示制御部
37 表示装置
38 肝臓領域抽出部
39 肝機能解析部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成する局所画像生成手段と、
生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記局所画像は縮小処理されていない画像であることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
各時相の前記肝臓造影画像は3次元画像であり、
前記関心領域は3次元領域であり、
前記局所画像生成手段は、前記関心領域を複数の方向から見た前記局所画像を前記注目時相毎に生成するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記複数の時相で取得された肝臓造影画像に基づいて、少なくとも肝臓全体を含む領域であって前記関心領域を含む領域を表す全体画像を生成する全体画像生成手段をさらに備え、
前記表示制御手段が、前記局所画像と前記全体画像とを同時に表示させるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記全体画像は、前記関心領域の位置を特定可能なように生成された画像であり、
前記全体画像中に前記関心領域を表すマーカーを重畳表示させるマーカー制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記マーカーは、ユーザが入力手段を用いて移動させることが可能なものであり、
前記関心領域設定手段は、該移動後のマーカーの位置を検出し、検出された前記マーカーの位置に基づいて、前記全体画像のもとになる前記肝臓造影画像中の前記関心領域を設定し、該関心領域が設定された前記肝臓造影画像以外の前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に対して、前記関心領域を設定するものであることを特徴とする請求項5に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記マーカー制御手段は、前記注目時相の各々における前記局所画像中の前記関心領域にも前記マーカーを重畳表示させるものであることを特徴とする請求項5または6に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
各時相の前記肝臓造影画像は3次元画像であり、
前記関心領域は3次元領域であり、
前記全体画像生成手段は、複数の方向から見た前記全体画像を生成するものであることを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記全体画像生成手段は、ユーザ操作によって選択された1つの前記注目時相の前記肝臓造影画像に基づいて前記全体画像を生成するものであることを特徴とする請求項4から8のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記肝臓造影画像から肝臓領域を抽出する肝臓領域抽出手段と、
前記肝臓領域内を分割して得られる複数の小領域のうちの少なくとも一部の小領域について、該小領域における肝機能を表す肝機能評価値を算出する肝機能解析手段とをさらに備え、
前記全体画像生成手段が、前記肝臓造影画像および前記肝機能評価値に基づいて前記全体画像を生成するものであることを特徴とする請求項4から8のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記造影検査において肝臓造影画像が取得された複数の時相から前記2以上の注目時相を選択する注目時相選択手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記注目時相選択手段は、前記造影剤投与後の経過時間に応じて前記注目時相を選択するものであることを特徴とする請求項11に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
前記注目時相が、動脈相および肝細胞造影相を含むものであることを特徴とする請求項11または12に記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
前記関心領域設定手段が、前記注目時相の肝臓造影画像の内容的特徴に基づいて前記位置的に対応する関心領域を設定するものであることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項15】
前記局所画像は、前記注目時相間での前記関心領域のありうる変位の最大値よりも大きい範囲を表す画像であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項16】
前記関心領域における肝機能を表す肝機能評価値を前記注目時相毎に算出し、算出された肝機能評価値の前記注目時相間での時系列的変化を視覚化する手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項17】
前記肝臓造影画像は、肝臓における血流と肝機能が画素値の高低として反映された画像であることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項18】
前記造影剤は、肝臓における血流と肝機能とを異なるタイミングで画像に反映するものであることを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項19】
前記造影剤はガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)を有効成分とするものであり、
前記肝臓造影画像はMRIによって取得された画像であることを特徴とする請求項15または18に記載の医用画像診断装置。
【請求項20】
肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定するステップと、
前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成するステップと、
生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させるステップとを備えたことを特徴とする医用画像診断方法。
【請求項21】
コンピュータに、
肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定するステップと、
前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成するステップと、
生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させるステップとを実行させることを特徴とする医用画像診断プログラム。
【請求項1】
肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成する局所画像生成手段と、
生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記局所画像は縮小処理されていない画像であることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
各時相の前記肝臓造影画像は3次元画像であり、
前記関心領域は3次元領域であり、
前記局所画像生成手段は、前記関心領域を複数の方向から見た前記局所画像を前記注目時相毎に生成するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記複数の時相で取得された肝臓造影画像に基づいて、少なくとも肝臓全体を含む領域であって前記関心領域を含む領域を表す全体画像を生成する全体画像生成手段をさらに備え、
前記表示制御手段が、前記局所画像と前記全体画像とを同時に表示させるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記全体画像は、前記関心領域の位置を特定可能なように生成された画像であり、
前記全体画像中に前記関心領域を表すマーカーを重畳表示させるマーカー制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記マーカーは、ユーザが入力手段を用いて移動させることが可能なものであり、
前記関心領域設定手段は、該移動後のマーカーの位置を検出し、検出された前記マーカーの位置に基づいて、前記全体画像のもとになる前記肝臓造影画像中の前記関心領域を設定し、該関心領域が設定された前記肝臓造影画像以外の前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に対して、前記関心領域を設定するものであることを特徴とする請求項5に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記マーカー制御手段は、前記注目時相の各々における前記局所画像中の前記関心領域にも前記マーカーを重畳表示させるものであることを特徴とする請求項5または6に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
各時相の前記肝臓造影画像は3次元画像であり、
前記関心領域は3次元領域であり、
前記全体画像生成手段は、複数の方向から見た前記全体画像を生成するものであることを特徴とする請求項4から7のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記全体画像生成手段は、ユーザ操作によって選択された1つの前記注目時相の前記肝臓造影画像に基づいて前記全体画像を生成するものであることを特徴とする請求項4から8のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記肝臓造影画像から肝臓領域を抽出する肝臓領域抽出手段と、
前記肝臓領域内を分割して得られる複数の小領域のうちの少なくとも一部の小領域について、該小領域における肝機能を表す肝機能評価値を算出する肝機能解析手段とをさらに備え、
前記全体画像生成手段が、前記肝臓造影画像および前記肝機能評価値に基づいて前記全体画像を生成するものであることを特徴とする請求項4から8のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記造影検査において肝臓造影画像が取得された複数の時相から前記2以上の注目時相を選択する注目時相選択手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記注目時相選択手段は、前記造影剤投与後の経過時間に応じて前記注目時相を選択するものであることを特徴とする請求項11に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
前記注目時相が、動脈相および肝細胞造影相を含むものであることを特徴とする請求項11または12に記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
前記関心領域設定手段が、前記注目時相の肝臓造影画像の内容的特徴に基づいて前記位置的に対応する関心領域を設定するものであることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項15】
前記局所画像は、前記注目時相間での前記関心領域のありうる変位の最大値よりも大きい範囲を表す画像であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項16】
前記関心領域における肝機能を表す肝機能評価値を前記注目時相毎に算出し、算出された肝機能評価値の前記注目時相間での時系列的変化を視覚化する手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項17】
前記肝臓造影画像は、肝臓における血流と肝機能が画素値の高低として反映された画像であることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項18】
前記造影剤は、肝臓における血流と肝機能とを異なるタイミングで画像に反映するものであることを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【請求項19】
前記造影剤はガドキセト酸ナトリウム(Gd-EOB-DTPA)を有効成分とするものであり、
前記肝臓造影画像はMRIによって取得された画像であることを特徴とする請求項15または18に記載の医用画像診断装置。
【請求項20】
肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定するステップと、
前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成するステップと、
生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させるステップとを備えたことを特徴とする医用画像診断方法。
【請求項21】
コンピュータに、
肝臓における血流および肝機能が画像に反映される造影剤を用いた造影検査において複数の時相で取得された肝臓造影画像のうちの2以上の注目時相の前記画像の各々に対して、各注目時相間で位置的に対応する肝臓中の関心領域を設定するステップと、
前記注目時相の前記肝臓造影画像の各々に基づいて、前記関心領域を表す局所画像を前記注目時相毎に生成するステップと、
生成された前記注目時相毎の局所画像を比較読影可能な態様で表示させるステップとを実行させることを特徴とする医用画像診断プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図19】
【公開番号】特開2011−92677(P2011−92677A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46361(P2010−46361)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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