説明

肝障害予防剤

【課題】 かんきつ類由来のリモノイド含有物を有効成分とする肝障害予防剤を提供する。
【解決手段】本発明の肝障害予防剤は、かんきつ類由来のリモノイド含有物を有効成分としている。すなわち、かんきつ類から抽出分離されたリモノイド含有物で、主要成分はリモニン、デアセチルノミリン、イチャンゲンシンである。抽出溶媒にはクロロホルムが好適である。かんきつ類の種類は問わないが、部位はリモノイドが多量に含まれている種子が望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝障害予防剤、特にかんきつ類に広く分布する天然由来の肝障害予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肝炎の中で、ウイルスを原因とするウイルス性肝炎が最も多く、ウイルス性肝炎は、肝臓にウイルスが定着することによって引き起こされる。特にB型肝炎とC型肝炎は、肝硬変や肝臓がんへの移行率が極めて高いことが知られている。
【0003】
現在、肝障害、特に肝炎に関しては、治療剤は数多く知られているものの、予防剤は少ない。たとえば、大麦焼酎蒸留残液を原料とする物質が知られている(特許文献1)。
【0004】
一方、かんきつ類のリモノイドは、腫瘍予防剤として知られている(特許文献2)。また、血清脂質代謝改善剤としても知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-221342号公報
【特許文献2】特開平2-100650号公報
【特許文献3】特開2004-72684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、優れた肝障害予防機能を有する肝障害予防剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このかんきつ類リモノイドについて、生理活性を詳細に検討した結果、これまでに全く知られていなかった肝障害予防作用があることを見出して、この発明に至った。
【0008】
本明細書の開示によれば、かんきつ類由来のリモノイド含有物を有効成分とする肝障害予防剤が提供される。前記有効成分は、リモニン、デアセチルノミリン及びイチャンゲンシンを含むことが好ましい。また、前記かんきつ類種子から採取される前記リモノイド含有物を有効成分としてもよい。さらに、前記かんきつ類はカボス及びユズから選択されてもよい。また、前記予防剤は、血中AST及びALTのいずれか又は一方を低下させるためのものであってもよい。
【0009】
本明細書の開示によれば、肝障害予防剤の生産方法であって、かんきつ類種子を水及び有機溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒で抽出する工程と、前記抽出工程において前記溶媒中に抽出された成分を回収する工程とを備える方法が提供される。前記回収工程は、前記溶媒を留去した残留物を回収する工程であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に開示される肝障害予防剤によれば、肝炎などの肝障害におけるAST及びALTの上昇を抑制することができる。したがって、肝障害に先だつ服用により肝障害を予防することができる。また、本肝障害予防剤は、肝障害を軽減又は改善する目的においても有効である。さらには、肝障害治療剤としても用いることができる。
【0011】
かんきつ類の品種は特に問わず、一般に食用とされるかんきつ類、例えば、カボス、ユズ、ウンシュウミカン、レモン、ポンカンなどを利用することができる。原料となる部位は、果実の果皮、果汁、種子、じょうのう、またはこれらの混合物でもよいが、リモノイドが多量に含まれている種子が最適である。
【0012】
リモノイド含有物を抽出する際の溶媒としては、水、熱水(50℃以上、好ましくは90℃以上)、ヘキサン、アセトン、ジエチルエーテル、クロロホルムなどが適しているが、特にクロロホルムが好適である。
【0013】
抽出方法は特に限定されず、原料を抽出溶媒に浸漬し、あるいは必要に応じてこれを室温、加温下あるいは冷却下で抽出し、ろ過などによって固形分を除去して抽出物を得ることができる。抽出物はそのまま用いることもできるが、必要により濃縮あるいは乾固することもできる。さらに必要に応じてカラムなどを用いた通常の精製手段を用いて精製することもできる。
【0014】
リモノイド含有物には、リモニン、デアセチルノミリン及びイチャンゲンシンを含むことができる。これらのリモノイドは、特に、カボスやユズの種子において効果的に採取される。これらのリモノイドの組成比は特に限定しないが、例えば、リモニン:デアセチルノミリン:イチャンゲンシン=20〜80:20〜80:10〜20等とすることができる。
【0015】
こうして得られた抽出物は、溶液、ペースト、粉末等の各種形態を有するが、いずれの形態であっても肝障害予防作用を有することができる。
【0016】
本発明の肝障害予防剤は、ヒトあるいは非ヒト動物の肝障害に対する予防目的で投与あるいは摂取される形態の用途に好ましく用いられる。肝障害としては、特に限定されないが、たとえばウイルス性肝炎、急性肝炎、慢性肝炎などの肝炎、アルコール性肝障害、薬物性肝障害等が挙げられる。特に本肝障害予防剤は、食品因子由来であるため、持続的に投与あるいは摂取される形態の用途に好ましく用いられる。
【0017】
したがって、本肝障害予防剤は、研究用途のほか、医薬品、医薬部外品、食品、飲料、栄養補助食品(サプリメント)、食品添加物、飼料および動物用医薬品あるいはこれらの原材料として有用である。
【0018】
(組成物)
本肝障害予防剤を含有する組成物は、用途に応じた各種の形態を備えることができる。
(医薬組成物)
本肝障害予防剤によれば、医薬組成物が提供される。本肝障害予防剤を含有する医薬組成物によれば、ヒトあるいは非ヒト動物の予防薬が提供される。
【0019】
本医薬組成物は、本肝障害予防剤と許容される公知の医薬用担体とを組み合わせて製剤化することにより得ることができる。製剤化は、本肝障害予防剤を薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と配合し、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合材、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、懸濁剤、乳剤、注射剤等の液剤とすることにより達成される。また、使用時において適当な添加によって液状となし得る用時溶解性の固形品とすることができる。
【0020】
医薬用担体は、本医薬組成物の投与形態及び剤型に応じて選択することができる。経口剤の場合は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシルメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が利用される。また経口剤の調製に当たっては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を配合することもできる。一方、非経口剤の場合は、常法に従い、本肝障害予防剤を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等に溶解ないし、懸濁させ、必要に応じ、殺菌剤、安定剤、当張化剤、無痛化剤等を加えることにより調製することができる。あるいは、用時においてこれらの希釈剤によって溶解可能な用時溶解の注射剤等の非経口剤として提供することもできる。
【0021】
本医薬品組成物を投与する場合の投与量は、その製剤形態、投与方法及び適用されるヒトの年齢、体重などによって適宜設定され、一定ではないが一般には製剤中に含有される本発明で使用される肝障害予防剤の量(抽出物の乾燥固形分)として、成人1日あたり好ましくは0.01〜400mg/kg体重であり、より好ましくは0.2〜200mg/kg体重である。投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
【0022】
なお、これらの本医薬品組成物の形態は、飲料形態の経口剤等を含む医薬部外品の各種形態に適用される。
【0023】
(食品組成物)
本肝障害予防剤は、食用あるいは栄養補給用として摂取させるための食品組成物とすることができる。本食品組成物によれば、容易に持続的に本肝障害予防剤を摂取することができる。
【0024】
本食品組成物は、各種形態をとることができる。すなわち、従来公知の各種食品(加工食品を含む)、飲料、調味料等の形態あるいはその原材料の形態をとることができる他、散剤、粒剤、錠剤、カプセル剤、エキス剤、液剤(飲料を含む)など主として経口栄養剤であるサプリメント形態あるいはその原材料、チューブ等を介して胃や腸、血管に供給する経管栄養剤形態あるいはその原材料をとることができる。
【0025】
本食品組成物における本肝障害予防剤の含有量(抽出物の乾燥固形分)は特に限定されないが、好ましくは、0.000001重量%以上、より好ましくは0.00001〜100重量%とすることができる。また、本食品組成物は、好ましくはそれらに含有される有効成分が、例えば成人1日あたり好ましくは0.0001〜100mg/kg体重、より好ましくは0.001〜10mg/kg体重となるように摂取されうる。なお、摂取量は、種々の条件によって変動するので、上記摂取量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは上記範囲を超えて必要な場合もある。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
カボス成熟種子を水洗し、果汁・果肉などの異物を除去したものを40℃で24時間乾燥し粉砕した。次に、粉末サンプル100gを三角フラスコに入れ、蒸留水1000mlを加えてスターラーで攪拌しながら1時間抽出し、冷却後106μmのメッシュを通した。この濾液を遠心分離し、さらに上清を減圧濾過した。また濾過残渣を同様に再抽出し、これを繰り返し、3回分の濾液を得て混合した。さらに100gの粉末サンプルについても同様に作業を行い、計200gの粉末サンプルから水抽出液を得た。この抽出液を棚温40℃で凍結乾燥、その後60℃で通風乾燥して、42.6gの水抽出物を得た。
【0027】
粉末サンプル100gに蒸留水1000mlを加え、穏やかに沸騰させながら1時間抽出し、冷却後106μmのメッシュを通した。この濾液を遠心分離し、さらに上清を減圧濾過した。また濾過残渣を同様に再抽出し、これを繰り返し、3回分の濾液を得て混合した。さらに100gの粉末サンプルについても同様に作業を行い、計200gの粉末サンプルから熱水抽出液を得た。この抽出液を棚温40℃で凍結乾燥、その後60℃で通風乾燥して、41.8gの熱水抽出物を得た。
【0028】
粉末サンプル100gにクロロホルム1000mlを加えて1時間攪拌抽出し、濾過した。濾過残渣を同様に再抽出し、これを繰り返し、3回分の濾液を得て混合した。さらに100gの粉末サンプルについても同様に作業を行い、200gからクロロホルム抽出液を得た。この抽出液をロータリーエバポレーターで溶媒を除去後、棚温40℃で凍結乾燥し、さらに60℃で通風乾燥して、49.1gのクロロホルム抽出物を得た。
【0029】
粉末サンプル100gにヘキサン1000mlを加え1時間攪拌抽出し、濾過した。濾過残渣を同様に再抽出し、これをもう一度繰り返し、3回分の濾液を得て混合した。さらに100gの粉末サンプルについても同様に作業を行い、計200gからヘキサン抽出液を得た。この抽出液をロータリーエバポレーターで溶媒を除去後、棚温40℃で凍結乾燥し、さらに60℃で通風乾燥して、46.5gのヘキサン抽出物を得た。
【0030】
4週令のWistar系雄性ラットを用い、対照食を与えた対照群、5%のカボス成熟種子に相当する水抽出物を添加した飼料を与えた群(以下水抽出物群)、5%の種子に相当する熱水抽出物を添加した飼料を与えた群(以下熱水抽出物群)、5%の種子に相当するクロロホルム抽出物を添加した飼料を与えた群(以下クロロホルム抽出物群)、5%の種子に相当するヘキサン抽出物を添加した飼料を与えた群(以下ヘキサン抽出物群)に分けた。飼料組成を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
飼育11日目の午後0時にD−ガラクトサミンの投与量を体重1kgあたり350mgとなるように生理食塩水に溶解し投与量2mL/kg体重となるように腹腔内投与した。D−ガラクトサミン注射前後の絶食は行わず、翌日午前10時より断頭屠殺して採血し、血清AST値、ALT値を測定した。実験結果は、すべて平均値±標準誤差にて表した。統計処理には、SPSS統計ソフトを用い、一元配置分散分析を行なった後、Tukeyの多重検定法で検定した。危険率が5%未満のとき有意とみなした。その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
カボス種子抽出物の投与により、血清AST値およびALT値が顕著に低下した。水抽出物、熱水抽出物、およびクロロホルム抽出物の効果が強く、ヘキサン抽出物の効果はこれらより若干劣った。
【実施例2】
【0035】
焙煎したユズ種子100gに蒸留水500ml加え、穏やかに沸騰させながら30分間抽出し、冷却後濾過した。この濾過残渣を同様に再抽出し、これを繰り返し、3回分の濾液を得て混合した。さらに100gの粉末サンプルについても同様に作業を行い、計200gの粉末サンプルから熱水抽出液を得た。この抽出液を棚温40℃で凍結乾燥、その後60℃で通風乾燥して、33.4gの熱水抽出物を得た。
【0036】
粉末サンプル100gにクロロホルム1000mlを加えて1時間攪拌抽出し、濾過した。濾過残渣を同様に再抽出し、これを繰り返し、3回分の濾液を得て混合した。さらに100gの粉末サンプルについても同様に作業を行い、200gからクロロホルム抽出液を得た。この抽出液をロータリーエバポレーターで溶媒を除去後、棚温40℃で凍結乾燥し、さらに60℃で通風乾燥して、抽出物51.8gのクロロホルム抽出物を得た。
【0037】
粉末サンプル100gにヘキサン1000mlを加え1時間攪拌抽出し、濾過した。濾過残渣を同様に再抽出し、これを繰り返し、3回分の濾液を得て混合した。さらに100gの粉末サンプルについても同様に作業を行い、計200gからヘキサン抽出液を得た。この抽出液をロータリーエバポレーターで溶媒を除去後、棚温40℃で凍結乾燥し、さらに60℃で通風乾燥して、47.8gのヘキサン抽出物を得た。
【0038】
4週令のWistar系雄性ラットを用い、対照食を与えた対照群、5%の種子に相当する熱水抽出物を添加した飼料を与えた群(以下熱水抽出物群)、5%の種子に相当するクロロホルム抽出物を添加した飼料を与えた群(以下クロロホルム抽出物群)、5%の種子に相当するヘキサン抽出物を添加した飼料を与えた群(以下ヘキサン抽出物群)に分けた。飼料組成を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
飼育11日目の午後0時にD−ガラクトサミンの投与量を体重1kgあたり350mgとなるように生理食塩水に溶解し投与量2mL/kg体重となるように腹腔内投与した。D−ガラクトサミン注射前後の絶食は行わず、翌日午前9時より断頭屠殺して採血し、血清AST値、ALT値を測定した。実験結果は、すべて平均値±標準誤差にて表した。統計処理には、SPSS統計ソフトを用い、一元配置分散分析を行なった後、Tukeyの多重検定法で検定した。危険率が5%未満のとき有意とみなした。その結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
ユズ種子抽出物の投与により、血清AST値およびALT値が顕著に低下した。クロロホルム抽出物の効果が最も強かった。
【実施例3】
【0043】
カボス種子乾燥粉末1.81kgに5Lのクロロホルムを加えてスターラーで攪拌しながら24時間抽出した。この操作を3回繰り返して、578.74gの抽出物を得た。抽出物537.85gをシリカゲルクロマトグラフィーに適用し、n−ヘキサン:クロロホルム:メタノール溶液を混合比率1:0:0から5:5:1の濃度勾配になるように抽出物を分離して、9画分に分けた。13.54gの画分6を得た。
【0044】
5週令のWistar系雄性ラットを用い、対照食を与えた対照群、画分6を飼料1kg中に95mg添加した飼料を与えた群(以下95ppm群)、画分6を飼料1kg中に190mg添加した飼料を与えた群(以下190ppm群)、画分6を飼料1kg中に380mg添加した飼料を与えた群(以下380ppm群)に分けた。飼料組成を表5に示す。
【0045】
【表5】

【0046】
飼育11日目の午後1時にガラクトサミンの投与量を体重1kgあたり350mgとなるように生理食塩水に溶解し、投与量2mL/kg体重となるように腹腔内投与した。ガラクトサミン注射前後の絶食は行わず、翌日午前11時より断頭屠殺して採血し、血清AST値、ALT値を測定した。実験結果は、すべて平均値±標準誤差にて表した。統計処理には、SPSS統計ソフトを用い、一元配置分散分析を行なった後、Tukeyの多重検定法で検定した。危険率が5%未満のとき有意とみなした。その結果を表6に示す。
【0047】
【表6】

【0048】
画分6の投与量に依存して、血清AST値およびALT値が低下した。
【実施例4】
【0049】
4.5gの画分6をシリカゲルクロマトグラフィーで分離することにより、0.324gのイチャンゲンシン、1.320gのリモニン、および1.080gのデアセチルノミリンを得た。
【0050】
5週令のWistar系雄性ラットを用い、対照食を与えた対照群、イチャンゲンシンを添加した飼料を与えた群(以下イチャンゲンシン群)、リモニンを添加した飼料を与えた群(以下リモニン群)、デアセチルノミリンを添加した飼料を与えた群(以下デアセチルノミリン群)とに分けた。飼料組成を表7に示す。それぞれのサンプルの添加量は、カボス種子粉末5%添加に相当する量とした。
【0051】
【表7】

【0052】
飼育11日目の午後0時にD−ガラクトサミンの投与量を体重1kgあたり350mgとなるように生理食塩水に溶解し、投与量2mL/kg体重となるように腹腔内投与した。D−ガラクトサミン注射前後の絶食は行わず、翌日午前10時より断頭屠殺して採血し、血清AST値、ALT値を測定した。実験結果は、すべて平均値±標準誤差にて表した。その結果を表8に示す。
【0053】
【表8】



【0054】
イチャンゲンシン、リモニン、デアセチルノミリンのいずれにおいても血清AST値およびALT値が低下した。
【実施例5】
【0055】
5週令のWistar系雄性ラットを用い、対照食を与えた対照群、画分6を添加した飼料を与えた群(以下画分6群)、イチャンゲンシン、リモニンおよびデアセチルノミリンの3種類のリモノイド混合物を添加した飼料を与えた群(以下リモノイド混合物群)に分けた。飼料組成を表9に示す。画分6およびリモノイド混合物の飼料中への添加量は、カボス種子粉末5%添加に相当する量とした。
【0056】
【表9】

【0057】
飼育11日目の午後4時にD−ガラクトサミンの投与量を体重1kgあたり350mgとなるように生理食塩水に溶解し、投与量2mL/kg体重となるように腹腔内投与した。D−ガラクトサミン注射前後の絶食は行わず、翌日午後2時より断頭屠殺して採血し、血清AST値、ALT値を測定した。実験結果は、すべて平均値±標準誤差にて表した。統計処理には、SPSS統計ソフトを用い、一元配置分散分析を行なった後、Tukeyの多重検定法で検定した。危険率が5%未満のとき有意とみなした。その結果を表10に示す。
【0058】
【表10】

【0059】
画分6およびリモノイド混合物のいずれの投与によっても血清AST値およびALT値が低下した。画分6の効果とリモノイド混合物の効果はほぼ等しかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かんきつ類由来のリモノイド含有物を有効成分とする肝障害予防剤。
【請求項2】
前記有効成分は、リモニン、デアセチルノミリン及びイチャンゲンシンを含む、請求項1に記載の肝障害予防剤。
【請求項3】
前記かんきつ類種子から採取される前記リモノイド含有物を有効成分とする、請求項1又は2に記載の肝障害予防剤。
【請求項4】
前記かんきつ類はカボス及びユズから選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の肝障害予防剤。
【請求項5】
血中AST及びALTのいずれか又は一方を低下させる、請求項1〜4のいずれかに記載の肝障害予防剤。
【請求項6】
肝障害予防剤の生産方法であって、かんきつ類種子を水及び有機溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒で抽出する工程と、前記抽出工程において前記溶媒中に抽出された成分を回収する工程と、を備える方法。
【請求項7】
前記回収工程は、前記溶媒を留去した残留物を回収する工程である、請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2012−180309(P2012−180309A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44830(P2011−44830)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(594137982)
【出願人】(504295773)
【出願人】(511055441)
【Fターム(参考)】