肥満、インスリン関連疾患、及び高コレステロール血症を治療するための方法及び組成物
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、及び/又はベツリン酸を使用して、哺乳類の肥満、糖尿病、高コレステロール、及び関連疾患、即ち高血糖症、脂質障害、高グリセリド血症、異脂肪血症、及びアテローム性動脈硬化症を含めた疾患を、治療するための方法について記述する。これらの治療に適用される組成物についても記述する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年7月29日出願の、仮特許出願第60/591,806号の優先権に依拠するものである。
【0002】
本発明は、米国農務省資金提供(USDA Grant)No.2003−35504−13618に基づいて、資金提供された。米国政府は、本発明に対する確かな権利を有する。
【0003】
本発明は、インスリン関連疾患、肥満、糖尿病、高血糖症、脂質障害、高脂血症、又は低HDL、高コレステロール血症、高グリセリド血症、異脂肪血症、及びアテローム性動脈硬化症の治療に関する。本発明は特に、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、及びベツリン酸を使用する方法に関する。本発明は特に、生体内で細胞によるインスリン生成を増加させるための、ミズキ種(Cornus spp.)果実エキス、並びにチェリーやベリーなどのこれらの化合物を含有するその他の果実、又はこれらの混合物に関する。本発明は特に、関連疾患の治療において、生体内でのインスリン生成の増加をもたらすための方法に使用される組成物にも関する。本発明は特に、肥満を予防し、コレステロール及び体重を低下させるのに使用される組成物にも関する。
【背景技術】
【0004】
インスリンの機能は、肝臓からのグルコールの排出を抑制することによって、又はグルコースの摂取及びその代謝を刺激することによって、正常な血糖値を維持することである(Ross,S.A.;Gulve,E.A.;Wang,M.糖尿病の化学及び生化学(Chemistry and Biochemistry of diabetes.)Chem.Rev.2004,104,1255〜1282)。インスリンの不十分な放出、又は標的組織でのインスリン動作の低下は、グルコース及び脂質の異常な代謝を引き起こす。この結果、糖尿病の顕著な特徴として血液中のグルコース濃度が高くなる(Jovanovic,L.;Gondos,B.2型糖尿病:新ミレニアムの流行病(Type−2 diabetes:The epidemic of new millennium.)Ann.Clin.Lab.Sci.1999,29,33〜42)。2つのタイプの糖尿病、即ち1型(インスリン依存性糖尿病)と2型の糖尿病(非インスリン依存性糖尿病)がある。1型糖尿病は、インスリン不全をもたらす自己免疫破壊又はインスリンを分泌する膵臓β細胞の阻害によって生ずる。2型糖尿病はより一般的であり、β細胞が、遺伝的及び環境的要因によって確立されたインスリン抵抗性を克服すための十分な量のインスリンを分泌できないことによって生ずる(Henquin,J.C.グルコースによるインスリン分泌の調節の誘発及び増幅経路(Triggering and amplifying pathways of regulations of insulin secretion by glucose.)Diabetes 2000,49,1751〜1760)。インスリン抵抗性は、インスリンが、骨格筋及び脂肪内でグルコースの輸送を不適切に刺激し、肝臓グルコール生成を不適切に抑制する障害である。末梢インスリン抵抗性を克服するのに十分な量のインスリンのβ細胞による分泌が妨げられる、関係あるメカニズムは、確立されたままである。
【0005】
しかし、β細胞からのインスリン放出を直接刺激する経口血糖降下薬(例えば、参照により本明細書に援用されるJonesらの米国特許第6,852,738号に例示されるような、スルホニル尿素ベースの薬物)は、末梢インスリン抵抗性を克服するために且つ血糖値を正常にするために、2型糖尿病患者の小島からのインスリン分泌を十分高めることができることが示されている。スルホニル尿素ベースの薬物使用の欠点の1つは、これらの薬物では正常な血糖値を制御できないことである(Pfeiffer,A.F.H.経口血糖降下薬:スルホニル尿素及びメグリチナイド(Oral hypoglycemic agents:Sulfonylureas and meglitinides)B.J.Goldstein,D.Muller−Wieland(編),2型糖尿病の教科書(Text book of Type−2 Diabetes)Martin Dunitz Ltd.,London,2003,pp.77〜85)。これらの薬物は、β細胞がインスリンを分泌し且つ体重増加を引き起こす能力にも悪影響を及ぼす(Pfeiffer,A.F.H.経口血糖降下薬:スルホニル尿素及びメグリチナイド(Oral hypoglycemic agents:Sulfonylureas and meglitinides)B.J.Goldstein,D.Muller−Wieland(編),2型糖尿病の教科書(Text book of Type−2 Diabetes)Martin Dunitz Ltd.,London,2003,pp.77〜85)。したがって、伝統的な処方薬治療の他に、膵臓β細胞によって血糖値を調節することができ又はインスリン生成を誘発することができるという食品成分の役割がある。
【0006】
報告では、特にポリフェノールに富む果物及び野菜の摂取が、2型糖尿病の発生率を低下させることを示している(Anderson,R.A.;Polansky,M.M.,お茶で強化されたインスリン活性(Tea Enhanced Insulin Activity)J.Agric.Food Chem.2002,50,7182〜7186;Anderson,R.A.;Broadhurst,C.L.;Polansly,M.M.;Schmidt,W.F.;Khan,A.;Flanagan,V.P.;Schoene,N.W.;Graves,D.J.インスリン様生物活性を有するシナモンからのポリフェノールA型ポリマーの単離及び特徴付け(Isolation and Characterization of Polyphenol Type−A Polymers from Cinnamon with Insulin−like Biological Activity)J.Agric.Food Chem.2004,52,65〜70;Landrault,N.;Poucheret,P.;Azay,J.;Krosniak、M.;Gasc,F.;Jenin,C.;Cros,G.;Teissedre,P.糖尿病ラットにおけるポリフェノールに富むシャルドネ白ワインの作用(Effect of a Polyphenols−Enriched Chardonnay White Wine in Diabetic Rats)J.Agric.Food Chem.2003,51,311〜318)。また、食品中の抗酸化物は、グルコースによる酸化ストレスから膵臓β細胞を保護することも知られている。アントシアニンは、果物、野菜、及びワインやサイダー、お茶などの加工食品中に豊富に存在する。しかし、これが糖尿病を低減し又は予防する能力について、ほとんど知られていない。
【0007】
また、アントシアニンは無毒性であり、抗酸化、抗炎症、及び抗癌活性を持つことが報告されている(Wang,H.,Nair,M.G.,Strasburg,G.M.,Chang,Y.,Booren,A.M.Gray,J.I.,及びDeWitt,D.L.(1999)タルトチェリーからのアントシアニン及びそのアグリコン、シアニジンの、抗酸化及び抗炎症活性(Antioxidant and anti−inflammatory activities of anthocyanins and their aglycon,cyanidin,from tart cherries)J.Nat.Prod.62,294〜296;Tall,J.M.,Seeram,N.P.,Zhao,C.,Nair,M.G.,Meyer,R.A.,及びRaja,S.N.(2004)タルトチェリーのアントシアニンは、ラットにおける炎症による痛みの振舞いを抑制する(Tart cherry anthocyanins suppress inflammation−induced pain behavior in rat)Behav.Brain Res.153,181〜188;Kang,S.,Seeram,N.P.,Nair,M.G.,及びBourquin,L.D.(2003)タルトチェリーのアントシアニンは、ApcMinマウスの腫瘍の発達を阻害し、ヒト結腸癌細胞の増殖を低下させる(Tart cherry anthocyanins inhibit tumor development in ApcMin mice and reduce proliferation of human colon cancer cells)Canc.Lett.194,13〜19;Zhang,Y.,Vareed,S.K.,及びNair,M.G.(2005)無毒性アントシアニジン、果物及び野菜の色素によるヒト腫瘍細胞の成長阻害(Human tumor cell growth inhibition by nontoxic anthocyanidins,the pigments in fruits and vegetables)Life Sci.76,1465〜1472)。
【0008】
野菜、果物、及びハーブ中に存在する生物活性の天然産物は、癌や糖尿病、心臓血管疾患などのヒト変性障害の予防及び治療において、相当な関心を生じさせている。例えばナッツ、全粒穀物、果物、及び野菜は、ポリフェノールやテルペノイド、色素などの抗酸化物の豊富な源であり、これらの化合物は、いくつかの疾患状態の寛解に関連している。同様に、ニンニク、大豆、キャベツ、生姜、甘草、及びセリ科植物中に存在するフィトケミカルは、抗癌活性を有することで知られている(Rui,H.L.(2004)癌予防におけるフィトケミカルの潜在的相乗効果:動作メカニズム(Potential synergy of phytochemicals in cancer prevention:mechanism of action)J.Nutr.134,3479S〜3485S)。また、お茶に存在するポリフェノールは、抗糖尿病性を有することも報告されている(Vanessa,C.及びGary,W.(2004)生体内動物モデルにおける緑茶カテキンの健康への影響に関する検討(A review of the health effects of green tea catechins in vivo animal models)J.Nutr.134,3431S〜3440S,Mary E.W.,Xiaohui,L.W.,Brian,K.L.,Robert K.H.,Masao,N.,及びDaryl K.G.(2002)緑茶成分エピガロカテキンガレートは、肝臓グルコース生成を抑制する(Epigallocatechin gallate,a constituent of green tea,represses hepatic glucose production)J.Biol.Chem.277,34933〜34940)。
【0009】
脂肪が少なく抗酸化物が豊富な食品の摂取は、肥満及びインスリン抵抗性のリスクを低下させる(Blakely,S.;Herbert,A.;Collins,M.;Jenkins,M.;Mitchell,G.;Grundel,E.;O’Neill,K.R.;Khachik,F.ルテインは、メスZucker肥満ラットの酸化ストレスの生物マーカーを変化させるために、α−トコフェロールよりもアスコルビン酸とより頻繁に相互に作用する(Lutein interacts with ascorbic acid more frequently than with α−tocopherol to alter biomarkers of oxidative stress in female Zucker obese rats)J.Nutr.2003,133,2838〜2844)。
【0010】
アントシアニンは抗酸化ポリフェノールに属し、様々な食品及び飲料に存在する。アントシアニンの摂取は、アテローム性動脈硬化症や心臓血管疾患、癌、及び糖尿病などのいくつかの変性疾患のリスク低下に関係する(Jayaprakasam,B.;Strasburg,G.A.;Nair,M.G.ウィタニア(Withania somnifera)からの強力な脂質過酸化阻害剤(Potent lipid peroxidation inhibitors from Withania somnifera)Tetrahedron 2004,60,3109〜3121)。これらの化合物は、周知のフリーラジカル捕捉剤であり、潜在的な化学予防剤であると報告されている(Duthie,G.G.;Duthie,S.J.;Kyle,J.A.M.癌及び心臓疾患における植物ポリフェノール:食事性抗酸化物としての意味合い(Plant polyphenols in cancer and heart disease:implications as nutritional antioxidants)Nutr.Res.Rev.2000,13,79〜106)。例えば、血清の抗酸化物能力は、イチゴ、チェリー、及び赤ワインの摂取によって増加した(Kang,S.Y.;Seeram,N.P.;Nair,M.G.;Bourquin,L.D.タルトチェリーのアントシアニンは、ApcMinマウスの腫瘍発達を阻害し、ヒト結腸癌細胞の増殖を低下させる(Tart cherry anthocyanins inhibit tumor development in ApcMin mice and reduce proliferation of human colon cancer cells)Canc.Lett.2003,194,13〜19;Van Velden,D.P.;Mansvelt,E.P.G.;Fourie,E.;Rossouw,M.;Marais,A.D.ヒト血液化学的性質に対するワインの心保護効果(The cardioprotective effect of wine on human blood chemistry)Ann.New York Acad.Sci.2002,957,337〜340;Wang,H.;Nair,M.G.;Strasburg,G.M.;Chang,Y.C.;Booren,A.M.;Gray,I.J.;DeWitt,D.L.タルトチェリーからのアントシアニン及びそのアグリコン、シアニジンの、抗酸化物及び抗炎症活性(Antioxidant and anti−inflammatory activities of anthocyanins and their aglycone,cyanidin,from tart cherries)J.Nat.Prod.1999,62,294〜296)。最近の研究では、アントシアニン、シアニジン3−グルコシドが、高脂肪食により誘発されたマウスの肥満を低減させることを実証した(Espin,J.C.;Soler−Rivas,C.;Wichers,H.J.;Garcia−Viguera,C.アントシアニンをベースにした天然着色剤。食材に対する抗ラジカル活性の新たな源。(Anthocyanin−based natural colorants.A new source of antiradical activity for foodstuff.)J.Agri.Food Chem.2000,48,1588〜1592)。したがって、食品中に存在する天然着色剤は、その安全性、栄養的価値、及び治療的価値が原因で、消費者を惹きつけている(Millspaugh,C.F.American Medicinal Plants;Dover Publications:New York,1974;p.282)。アントシアニンは広く摂取されているので、これら化合物の追加の生物学的活性は、大きな関心を集めるものである。
【0011】
いくつかの研究は、脂肪が豊富で繊維が少ない食物が肥満をもたらすことを示唆している。肥満は、脂質の代謝を変化させ、それがインスリン抵抗性に繋がる。肥満条件下では、脂肪組織が大量の遊離脂肪酸(FFA)を生成する。次いでFFAは、グルコースの摂取、グリコーゲンの合成、及びグルコースの酸化を阻害し(Saltiel,A.R.及びKahn,C.R.(2001)インスリンのシグナル伝達と、グルコース及び脂質代謝の調節(Insulin signaling and the regulation of glucose and lipid metabolism)Nature 414,799〜806)、高血糖症及び2型糖尿病をもたらす。2型糖尿病は、益々一般的になりつつある障害であり、世界で約1億5千万人から3億人が罹患しており、次の25年間で2倍になることが予測される(King,H.,Aubert,R.E.,及びHerman,W.H.(1998)糖尿病の世界的負担、1995〜2025:罹患率、数値評価、及び予測(Global burden of diabetes,1995〜2025:prevalence,numerical estimates,and projections)Diabetes Care 21,1414〜1431)。最近、食物で誘発される体脂肪蓄積を予防するのに有利になり得る食品であって、糖尿病及び心臓疾患のリスクを低下させる可能性のある食品に、多くの関心が集まっている。
【0012】
食物摂取の制御に関わるいくつかの生化学的プロセスがある。グルカゴン様ペプチド−1及び−2(GLP−1&−2)を内分泌細胞で合成し、栄養摂取に応答して血液中に放出した。GLP−2は、粘膜上皮を広げることによって、栄養素の吸収を高める(Ahren,B.(1998)グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1):糖尿病治療で潜在的関心を集める消化管ホルモン(Glucagon−like peptide−1(GLP−1):a gut hormone of potential interest in the treatment of diabetes)BioEssays 20,642〜651、及びDrucker,D.J.(2002)グルカゴン様ペプチドの生物学的動作及び治療可能性(Biological action and therapeutic potential of glucagons like peptides)Gastroenterology 122,531〜544)。GLP−1は、主に消化管L細胞で発現し、これは、肝臓によるグルカゴンの分泌及び胃内容排出を阻害し、それによって食物摂取が阻害され、膵臓β細胞によるインスリンの生合成及び分泌が刺激される(Ahren,B.(1998)グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1):糖尿病治療で潜在的関心を集める消化管ホルモン(Glucagon−like peptide−1(GLP−1):a gut hormone of potential interest in the treatment of diabetes)BioEssays 20,642〜651、及びDrucker,D.J.(2002)グルカゴン様ペプチドの生物学的動作及び治療可能性(Biological action and therapeutic potential of glucagons like peptides)Gastroenterology 122,531〜544)。膵臓β細胞の主な機能は、身体の正常な生理学的グルコース濃度を保持するために、栄養素、ホルモン、及び神経の刺激に応答して生物活性のインスリンを分泌することである(Rohit,N.K.(2004)膵島β細胞(The islet β−cell)The Int.J.Biochem.Cell Biol.36,365〜371)。高い血糖値に応答して膵臓β細胞の機能が徐々に低下することにより、インスリンの欠乏が引き起こされ、それが2型糖尿病に繋がる。インスリン抵抗性と、肝臓、筋肉、及び脂肪組織が生理学的用量のインスリンに応答できなくなることによっても、2型糖尿病が引き起こされる(Pinget,M.,及びBoullu−Sanchis,S.(2002)インスリン分泌異常の生理学的基礎(Physiological basis of insulin secretion abnormalities)Diabet.Met.28(補遺6),4S21〜4S32)。インスリンの欠乏症及び抵抗性は、高脂血症やアテローム性動脈硬化症、及び高血圧症などの健康問題に繋がり(Saltiel,A.R.及びKahn,C.R.(2001)インスリンのシグナル伝達と、グルコース及び脂質代謝の調節(Insulin signaling and the regulation of glucose and lipid metabolism)Nature 414,799〜806)、しばしば不完全な糖質及び脂質の代謝に結び付けられる(Brosche,T.(2001)糖質又は脂質代謝が不完全な患者からの血清と、正常な代謝値を有する高齢被験者の血清の、プラスマロゲン濃度(Plasmalogen levels in serum from patients with impaired carbohydrate or lipid metabolism and in elderly subjects with normal metabolic values)Arch.Gerontol.Geriatrics 32,283〜294)。これらの対照系は、複雑な経路で相互に作用し、遺伝的、環境的、及び社会的要因による任意の変化によって、肥満及び糖尿病が引き起こされる(Ross,S.A.Gulve,E.A.及びWang,M.(2004)2型糖尿病の化学及び生化学(Chemistry and biochemistry of type 2 diabetes)Chem.Rev.104,1255〜1282)。しかし、社会的及び環境的要因から生ずる合併症のいくつかは、運動及び適正な食事によって遅延させ又は予防することができる(Christian,K.R.,及びBarnard,R.J.(2005)慢性糖尿病に対する運動及び食事の影響(Effects of exercise and diet on chronic disease)J.Appl.Physiol.98,3〜30)。疫学的研究では、果物及び野菜が豊富な食事によって、癌、心臓血管疾患、糖尿病、白内障、及び炎症性疾患の罹患率が低下することが示された(World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research(1997)食品、栄養、及び癌の予防:世界的展望(Food,nutrition and the prevention of cancer:A global perspective)1997,American Institute for Cancer Research Wachington,DC.;U.S.Department of Agriculture,U.S.Department of Health and Human Services(1995)栄養及びあなたの健康:アメリカ人に対する食事指針(Nutrition and Your Health:Dietary Guidelines for Americans)1995,U.S.Government Printing Office Washington,DC.;American Heart Association(1996)健康なアメリカ成人に対する食事指針:栄養委員会からの保健専門家に対する声明(Dietary guidelines for healthy American adults:A statement for health professionals from the nutrition committee),American Heart Association.Circulation 94,1795〜1800;American Cancer Society(1996)食事、栄養、及び癌予防に関する指針:健康な食品の選択及び身体活動による癌のリスクの低減(Guidelines on diet,nutrition,and cancer prevention:reducing the risk of cancer with healthy food choices and physical activity)Cancer J.Clin.46,325〜341;World Health Organization(1990)食事、栄養、及び慢性糖尿病の予防(Diet,Nutrition and the prevention of chronic diseases):Report of a WHO study group,Technical Report Series 797,WHO Geneva,Switzerland;Willett,W.C.(1999)2000年における栄養の目的(Goals for nutrition in the year 2000)Cancer J.Clin.49,331〜352,及びWillett,W.C.(1998)栄養疫学(Nutritional Epidemiology)1998,Press:Oxford University,New York,NY,USA)。
【0013】
最近は、毒性が低く且つ副作用がより少ないと考えられることから、一般に安全であると見なされる(GRAS)植物、果物、及び野菜から得られた天然の血糖降下化合物に対する関心が高まっている。食品中に存在するこれらの生物活性化合物は、遺伝子発現及び細胞現象を変化させることができ(Milner,J.A.(2004)生物活性食品成分の分子標的(Molecular targets for bioactive food components)J.Nutr.134,2492S〜2498S)、その結果、タンパク質及びその機能が変化する。いくつかの研究では、果物及び野菜に存在するフィトケミカルが、有害な健康リスクを改善するのに有益であることを示唆しているが、その事例的な保護効果は十分理解されていない。
【0014】
サンシュユ(Cornus fruits)は、「八味丸」などの、抗糖尿病の伝統的漢方薬に使用される(Yamahara,J.;Mibu,H.;Sawada,T.;Fujimura,H.;Takino,S.;Yoshikawa,M.;Kitagawa,I.粗製薬物の生物学的に活性な因子。ストレプトゾトシンによって誘発される実験的糖尿病での、サンシュユの抗糖尿病因子。(Biologically active principles of crude drugs.Anti−diabetic principles of corni fructus in experimental diabetes induced by streptozotocin.)薬学雑誌1981,101,86〜90)。本発明者らは、最近、ミズキ(Cornus spp.)果実中のアントシアニンの定量化について報告した(Seeram,N.P.;Schutzki,R.;Chandra,A.;Nair,M.G.ミズキ種のアントシアニンの特徴付け、定量化、及び生物活性(Characterization,Quantification,and Bioactivities of Anthocyanins in Cornus Species)J.Agri.Food Chem.2002,50,2519〜2523)。
【0015】
ミズキ種の果実は、アントシアニンの豊富な供給源である。西洋及び東洋のコーネリアンチェリー(Cornelian cherry)としても知られるコルヌスマスL.(Cornus mas L.)の果実は、欧州では飲料の調製に使用されている(Kim,D.K.;Kwak,J.H.コルヌスオフィシナリス(Cornus officinalis)からのフラン誘導体(A Furan derivative from Cornus officinalis)Arch.Pharm.Res.1998,21,787〜789)。伝統的な医薬では、コルヌスオフィシナリス(Cornus officinalis)の果実は、その鎮痛及び利尿活性で知られている(Yamahara,J.;Mibu,H.;Sawada,T.;Fujimura,H.;Takino,S.;Yoshikawa,M.;Kitagawa,I.粗製薬物の生物学的に活性な因子。ストレプトゾトシンによって誘発される実験的糖尿病での、サンシュユの抗糖尿病因子。(Biologically active principles of crude drugs.Anti−diabetic principles of corni fructus in experimental diabetes induced by streptozotocin.)薬学雑誌1981,101,86〜90)。サンシュユは、アジアの国々では、いくつかの抗糖尿病生薬の主成分の1つでもある(Seeram,N.P.;Schutzki,R.;Chandra,A.;Nair,M.G.ミズキ種のアントシアニンの特徴付け、定量化、及び生物活性(Characterization,Quantification,and Bioactivities of Anthocyanins in Cornus Species)J.Agri.Food Chem.2002,50,2519〜2523)。C.マス(C.mas)及びC.オフィシナリス(C.officinalis)に関するより早期の調査では、どちらも高レベルのアントシアニンを含有することが明らかにされた(Beckwith,A.G.;Zhang,Y.;Seeram,N.P.;Cameron,A.C.;Nair,M.G.ペニセツムセタセウムCvs.ルブラム及びレッドライディングフット(Pennisetum setaceum Cvs.Rubrum and Red Riding Hood)における光量とアントシアニン生成の関係(Relationship of Light Quantity and Anthocyanin Production in Pennisetum setaceum Cvs.Rubrum and Red Riding Hood)J.Agric.Food Chem.2004,52,456〜461)。
【0016】
C.マス(C.mas)植物は、タルトチェリー(P.cerasus)に類似した果実を付ける。これは、ミズキ科(Cornaceae)に属し、欧州及び西アジアを原産とする落葉樹である(Millspaugh,C.F.アメリカ薬用植物(American Medicinal Plants);Dover Publications:New York,1974;p282)。この種の果実は、いくつかの調合物を作製するためにトルコで使用されてきた。より早期の研究では、コルヌスオフィシナリス(Cornus officinalis)のアルコール抽出物が、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)ラットでのGLUT 4 mRNA発現、グルコース輸送体を増加させることを実証した(Qian,D.,及びZhu,Q.(2001)ハルコガネバナ(Cornus officinalis Sieb.et Zucc)のアルコール抽出物が、2型(非インスリン依存性)糖尿病ラットの骨格筋でのGLUT4発現に及ぼす影響(Effect of alcohol extract of Cornus officinalis Sieb.et Zucc on GLUT4 expression in skeletal muscle in type 2(non−insulin−dependent)diabetes mellitus rats)Zhongguo Zhongyao Zazhi 26,859〜862)。サンシュユは、同様に漢方医学で周知であり、中国ではこの種の果実を使用して、糖尿病を治療する。しかし、抗糖尿病活性を担う活性化合物は、特徴付けられていない。ミシガンで生育したいくつかのミズキ種からの果実に関する、より早期の研究では、C.マス(C.mas)が、高濃度のアントシアニンを含有することが明らかにされた(Seeram,N.P.;Schutzki,R.;Chandra,A.;及びNair,M.G.(2002)ミズキ種のアントシアニンの特徴付け、定量化、及び生物活性(Characterization,quantification,and bioactivities of anthocyanins in Cornus species)J.Agric.Food Chem.2002,50,2519〜2523)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、インスリン生成、高コレステロール、及び体重に関連した障害の治療に有用な、組成物及び方法を提供することである。詳細には、本発明の目的は、生体内でインスリン生成を増加させるための方法及び組成物を提供することである。他の目的は、下記の記述及び図面から明らかにされよう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、肥満の治療を必要とする哺乳動物患者の肥満を制御するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法に関する。本発明は特に、ミズキ(Cornus)並びに果実中に天然に存在する酸及び糖を実質的に含まないその他の果実からのサプリメントに関する。
【0019】
本発明は、糖尿病であり且つ糖尿病の処方薬で治療しているヒト患者の肥満を治療するための方法であって、処方薬と併せてアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む有効量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。この組成物は、サプリメント又は医薬品製剤であることが好ましい。
【0020】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、果実、野菜、及び花から単離することが好ましい。アントシアニンは、シアニジン−3−グリコシド、デルフィンジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。「グリコシド」は、炭水化物分子(糖)を含有する任意の化合物であり、特に、植物中に存在して加水分解により糖及び非糖成分(アグリコン)に変換可能であり、具体的には、含有される糖にちなんでグルコシド(グルコース)、ペントシド(ペントース)、フルクトシド(フルクトース)などと呼ばれるような任意の天然産物である。アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、コルヌスマス(Cornus mas)から単離することが好ましい。アントシアニジン、或いはアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物は、単離され精製されることが好ましい。
【0021】
本発明は、糖尿病を制御するために、糖尿病の治療を必要とする哺乳動物患者の糖尿病を治療するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0022】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、果実、野菜、及び花から単離することが好ましい。アントシアニンは、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、コルヌスマス(Cornus mas)から単離することが好ましい。しかしアントシアニンは、チェリーやベリーなどの果実から得ることができる。
【0023】
本発明は、高血糖症の治療を必要とする哺乳動物患者の高血糖症を治療し又は制御するための方法であって、アントシアニン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして投与するステップを含む方法にも関する。
【0024】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、果実、野菜、及び花から単離することが好ましい。アントシアニンは、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、コルヌスマス(Cornus mas)から単離することが好ましい。アントシアニジン、アントシアニン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物は、単離され精製されることが好ましい。
【0025】
本発明は、疾患として、肥満、糖尿病、又は高血糖症の治療に使用される組成物であって、ある期間にわたる前記疾患の治療のための日用量単位のアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸、或いはこれらの混合物と、医薬品担体とを含む組成物にも関する。
【0026】
アントシアニンは、シアニジン−3−グルコシド、デルフィニジン−3−グルコシド、ペラルゴニジン−3−グルコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択することが最も好ましい。アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、果実、野菜、又は花から単離することが好ましい。アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、コルヌスマス(Cornus mas)から単離することが好ましい。
【0027】
本発明は、脂質障害、高脂血症、又は低HDLを治療する必要のある哺乳動物患者の、脂質障害、高脂血症、又は低HDLを治療し又は制御するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0028】
本発明は、高コレステロール血症の治療を必要とする哺乳動物患者の、高コレステロール血症を治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0029】
本発明は、高グリセリド血症の治療を必要とする哺乳動物患者の、高グリセリド血症を治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0030】
本発明は、異脂肪血症及び/又は低HDLコレステロールの治療を必要とする哺乳動物患者の、異脂肪血症及び/又は低HDLコレステロールを治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0031】
本発明は、アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする哺乳動物患者のアテローム性動脈硬化症を治療するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0032】
化合物は、コルヌスマス(Cornus mas)であることが最も好ましい。アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物は、この果実又はその他の果実から単離され精製されることが好ましい。
【0033】
治療上活性な本発明の化合物の代謝産物は、特許請求の範囲に記載される親化合物の範囲内である。患者に投与されるとき又は患者に投与された後に、特許請求の範囲に記載される化合物に変換される化合物であるプロドラッグも、特許請求の範囲に記載される活性化合物の範囲内にある。
【0034】
投与及び用量範囲
哺乳類、特にヒトに、有効用量の本発明の化合物を提供するために、任意の適切な投与経路を用いることができる。例えば、経口、直腸、局所、非経口、肺、鼻などを用いることができる。剤形には、錠剤、トローチ、分散体、懸濁体、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどが含まれる。化合物は、経口投与することが好ましい。
【0035】
用いられる有効投薬量の活性成分は、用いられる特定の化合物、投与形態、治療される状態、及び治療される状態の重症度に応じて変えることができる。そのような投薬量は、当業者が容易に確認することができる。
【0036】
肥満、糖尿病、及び/又は高血糖症、或いはその他の疾患を治療し又は予防する場合、本発明の化合物を、動物の体重の1kg当たり約0.1mgから約100mgの日用量で投与したときに、好ましくはこの用量を1日1回与えるものとして、又はこの用量を1日2回から6回に分けて与えるものとして、或いは徐放性剤形として投与したときに、一般に満足のいく結果が得られる。ほとんどの大型哺乳類では、全日用量が約1.0mgから約1000mgであり、好ましくは約1mgから約50mgである。70kgの成人の場合、全日用量は、一般に約7mgから約350mgになる。この投薬計画は、最適な治療応答が得られるように調節することができる。
【0037】
本発明の別の態様は、医薬品組成物、及び医薬品として許容される担体を提供する。本発明の医薬品組成物は、特許請求の範囲に記載された化合物、又は医薬品として許容される塩、又はそのプロドラッグを活性成分として、並びに医薬品として許容される担体、及び任意選択でその他の治療成分を含む。「医薬品として許容される塩」という用語は、無機塩基又は酸と有機塩基又は酸を含めた医薬品として許容される無毒性の塩基又は酸から調製された塩を指す。
【0038】
組成物には、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)、眼球(眼)、肺(鼻又は頬側吸入)、又は鼻投与に適した組成物が含まれるが、任意の所与の場合に最も適切な経路は、治療される状態の性質及び重症度に、また活性成分の性質に左右されることになる。これらは、単回剤形で都合良く与えることができ、薬学分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
【0039】
実用の際には、従来の医薬品配合技法に従い、これらの化合物を、均質混合物の活性成分として、医薬品担体と組み合わせることができる。担体は、投与、例えば経口又は非経口(静脈内を含む)に望まれる製剤の形に応じて、広く様々な形をとることができる。経口剤形用組成物の調製では、例えば懸濁体やエリキシル、及び溶液などの経口液体製剤の場合、例えば水やグリコール、油、アルコール、香料、保存剤、着色剤などの通常の医薬品媒体のいずれかを用いることができ、或いは、例えば粉末や、硬質及び軟質カプセル、錠剤などの経口固体製剤の場合には、デンプンや糖、微結晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を用いることができ、液体製剤よりも固体経口製剤が好ましい。
【0040】
このような投与形態のため、固体医薬品担体が明らかに用いられる錠剤及びカプセルが、最も有利な経口単位剤形になる。望みに応じて、錠剤を、標準的な水性又は非水性技法によりコーティングすることができる。そのような組成物及び製剤は、活性化合物を少なくとも0.1%含有すべきである。これらの組成物中の活性化合物のパーセンテージは、当然ながら変えることができ、単位重量の約2%から約60%の間であることが好都合である。そのような治療上有用な組成物中の、活性化合物の量は、有効投薬量が得られるような量である。活性化合物は、例えば液滴又はスプレーのように、鼻腔内投与することもできる。
【0041】
錠剤、丸薬、カプセルなどは、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチやジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及びマルトデキストリンやラクトース、又はサッカリンなどの甘味剤を含有してもよい。単位剤形がカプセルである場合は、上述のタイプの材料の他に、脂肪油などの液体担体を含有することができる。
【0042】
様々なその他の材料を、コーティングとして、又は剤形の物理的形態を変化させるために含めることができる。例えば錠剤は、シェラック、糖、又はこの両方でコーティングすることができる。シロップ又はエリキシルは、活性成分の他に、甘味剤としてスクロースを、保存剤としてメチル及びプロピルパラベンを、またチェリーやオレンジ風味の香料を含有することができる。
【0043】
化合物は、非経口投与することもできる。これら活性化合物の溶液又は懸濁液は、ヒドロキシル−プロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散液は、油中において、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物中で調製することもできる。貯蔵及び使用の通常の条件下、これらの製剤は、微生物の成長を妨げるために保存剤を含有する。
【0044】
注射可能な使用に適した医薬品形態には、滅菌水溶液又は分散液と、滅菌注射液又は分散液の即時製剤用の滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、この形態は滅菌状態になければならず、注射針から容易に出て行く程度に流動的でなければならない。この形態は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌や真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、これらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体にすることができる。
【0045】
化合物は、疾患又は状態の治療、予防、抑制、又は寛解に役立てることもできるその他の薬物と併せて使用することができる。そのようなその他の薬物は、化合物と同時に又は逐次に、ある経路によって且つそれに一般に使用される量で、投与することができる。化合物を、1種又は複数のその他の薬物と同時に使用する場合、そのようなその他の薬物及び化合物を含有する単位剤形の医薬品組成物が好ましい。しかし併用療法には、式Iの化合物と、1種又は複数のその他の薬物とを、異なる重複スケジュールで投与する療法も含まれる。1種又は複数のその他の活性成分と併せて使用する場合、本発明の化合物及びその他の活性成分は、それぞれを単独で使用する場合よりも、低い用量で使用できるとも考えられる。したがって本発明の医薬品組成物は、化合物の他に1種又は複数のその他の活性成分を含有するものを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、アントシアニン、シアニジン−3−グルコシド、デルフィニジン−3−グルコシド、シアニジン−3−ガラクトシド、及びペラルゴニジン−3−ガラクトシダーゼ;アントシアンジン、シアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン、マルビジン、及びペツニジンが、生体外でげっ歯類膵臓β細胞(INS−1 813/32)を刺激できるかどうかについて開示し、実証している。化合物を、4及び10mMのグルコース濃度の存在下で試験した。シアニジン−3−グルコシド及びデルフィニジン−3−グルコシドは、4及び10mMのグルコース濃度で試験がなされたアントシアニン及びアントシアニジンの中で、最も有効なインスリン分泌促進物質であった。ペラルゴニジン−3−ガラクトシドは、主要アントシアニン及びそのアグリコン、ペラルゴニジンの1種であり、4mMのグルコース濃度でインスリン分泌に1.4倍の増加を引き起こした。試験がなされた残りのアントシアニン及びアントシアニジンは、4及び10mMのグルコース濃度でインスリンに対してごく僅かな効果を発揮した。
【実施例】
【0047】
インスリン刺激の例
材料及び方法
化学物質。ウシ胎児血清(FBS)及びRPMI−1640培地をInvitrogen(Grand Islad,NY)から得た。使用した全ての有機溶媒は、ACS試薬級であった。HEPES、ペニシリン−ストレプトマイシン、グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール、トリプシン−EDTA、BSA(ウシ、アルブミン;RIA級)、フォリン−シオカルト試薬、、及び緩衝液の調製に使用される化学物質は、Sigma−Aldrich Chemical Co.(St.Louise,MO)から購入した。アッセイで使用されるアントシアニン、シアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン、マルビジン、及びペツニジンは、Chromadex(Laguna Hills,CA)から購入した。
【0048】
アントシアニン。デルフィニジン−3−グルコシドを、C.オフィシナリス(C.officinalis)の果実から精製した。シアニジン−3−ガラクトシド及びペラルゴニジン−3−ガラクトシドは、C.マス(C.mas)の果実から単離した。本発明の研究で使用される純粋なシアニジン−3−グルコシドは、本発明者らが−20℃で貯蔵したものから得た。
【0049】
アントシアニンの単離及び精製。サンシュユを水(pH=3)とブレンドし、濾過した。濾液を、カラム内のXAD−16AMBERLITE樹脂に通し、吸着されたアントシアニンを含むこの樹脂を、水で繰り返し洗浄した。次いでXAD−16樹脂を酸性MeOH(pH=5)で溶離し、得られた溶液を減圧下で濃縮して、粗製アントシアニン画分を得た。この画分を、勾配条件下、MeOH:H2O(pH=3)を使用してMPLCカラム(C18)により精製した。アントシアニンをMeOH:H2O(65:35、v/v)溶媒系で溶離した。化合物の純度を、勾配条件下でCapcell C18分析カラムを使用して、HPLC(Waters Corp.)によりチェックした。使用した溶媒は、A:TFA:H2O(99.9:0.1;v/v)及びB:H2O:CH3CN:CH3COOH:TFA(50.4:48.5:1.0:0.1;v/v/v/v)であった。勾配は、0.8ml/分の流量で、26分で20%Bから60%Bに、30分で20%Bになった。ピークを、PDAを使用して520nmで検出した。
【0050】
インスリン分泌研究。INS−1 832/13細胞(Christopher Newgard博士、Duke大学、NCから善意で提供された)を、11.1mMグルコースを含有し且つ10%FBS(ウシ胎児血清)、10mM HEPES、100U/mlのペニシリン、100μg/ストレプトマイシン、4mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、及び50μM2−メルカプトエタノールで補われたRPMI1640培地において、37℃の5%CO2/空気中で日常的に培養した。細胞を、トリプシン−EDTAの脱離の後に、毎週植え次いだ。静的分泌研究では、細胞を、1ウェル当たり0.64×106細胞の密度で24ウェルプレート上に蒔き、24時間成長させた。次いでこれらの細胞を、4mMグルコース及び上述のサプリメントを含有するRPMI−1640で、さらに24時間培養した。次いで細胞を、4mMグルコース及び0.1%BSAを含有するクレブスリンガー重炭酸緩衝液(KRBB)中で30分間、2回インキュベートした。細胞を、KRBBで素早く洗浄し、4又は10mMグルコースを含有するKRBB中で、指示されるアントシアニン又はアントシアニジンと共に又は無しで、60分間インキュベートした。次いでインスリン放出を定量するために、培地を除去した。次いで細胞を、PBSで2回洗浄し、1M NaOHに溶解した。次いで細胞タンパク質濃度を、ローリーアッセイにより決定した。アントシアニン及びアントシアニジンをDMSOに溶解して、所望の濃度を得た。DMSOの最終濃度は0.1%であった。細胞によって培地に分泌されたインスリンは、ラジオイムノアッセイにより定量し、総細胞タンパク質量に対して規格化した。
【0051】
ラジオイムノアッセイ(RIA)。RIA用のキットを、LINCO Research Inc.(St Charles,MO)から購入し、このアッセイを、製造業者の指示に従い実施した。簡単に言うと、インスリン標準物質0.1〜10ng(100μl)を、12×75mmの試験管に添加した。同様に、インスリン分泌研究からのサンプル(25μl)も、試験管に添加した。この試験管に、一定分量(75μl)のアッセイ緩衝液を添加した。次いで125Iで標識したインスリン(100μl)を、各試験管に添加した。100μLの抗ラットインスリン抗体の一定分量を試験管に添加し、混合し、4℃で24時間インキュベートし、さらに1mlの一定分量の沈殿試薬と共に、4℃で20分間インキュベートして、抗体に結合したインスリンを沈殿させた。次いで試験管を遠心分離にかけ、γ計数器を使用して放射能を測定した。
【0052】
ローリータンパク質アッセイ。アッセイウェル内のタンパク質の量を、ローリー法によって決定した。ローリーアッセイ溶液は、ローリー溶液、CuSO4・5H2O(1%)、及び酒石酸ナトリム(1%)を一緒にすることによって調製した。簡単に言うと、タンパク質サンプル(100μl)とローリー混合物(1mL)とを試験管(12×75)内で混合した。フォリン−シオカルト試薬(100μl)をこれらの試験管に添加し、混合し、室温で30分間インキュベートした。得られる溶液の光学密度を、UV分光光度計を使用して700nmで読み取った。
【0053】
サンシュユの調査では、サンシュユ中の主な生物活性成分がシアニジン、デルフィニジン、及びペラルゴニジングリコシドであることが示された。したがって、抗糖尿病製剤でのサンシュユの事例的使用を実証するために、膵臓β細胞を使用したこれらアントシアニン及びそのアグリコンのインスリン分泌能力が、注目を集めた。ペツニジン、マルビジン、及びペオニジンアグリコンは、その他の果実で豊富であるので、このアッセイに含まれた。
【0054】
アントシアニンは水溶性化合物である。C.マス(C.mas)果実の水性抽出物は、糖、バイオフラボノイド、及びアントシアニンを含有し、したがってXAD−16樹脂により分画された。樹脂から溶離された、結果的に得られるアントシアニン画分を、MPLCにより精製して、純粋なアントシアニンを得た。INS−1 832/13細胞によるグルコース誘発性のインスリン生成を、4、10、及び16mMのグルコース濃度で決定し、インスリン分泌は、グルコース濃度10mMで誘導期に達したことが見出された(データは図示せず)。4mMレベルのグルコース濃度は、ヒトの正常なグルコース濃度を表している。10mMのグルコースでの、細胞によるタンパク質1mg当たりのインスリン分泌は、4mMのグルコース濃度でのインスリン分泌と比べた場合に3倍高かった。
【0055】
アントシアニン及びアントシアニジンを、細胞成長培地中で、4及び10mMのグルコース負荷で試験した。アントシアニン及びアントシアニジンは、最初に50μg/mLの濃度でアッセイにかけた。アントシアニン、シアニジン3−グルコシドは、タンパク質9ng/mgによって、グルコース4mMでインスリン分泌の増加を示したのに対し(1.3倍)、10mMのグルコース濃度では、1.43倍(119ng/mgタンパク質)だけインスリン分泌を高めた(図2A)。デルフィニジン−3−グルコシドは、試験がなされた最も活性なアントシアニンであり、4mMのグルコース濃度でインスリン分泌の1.8倍の増加(49ng/mgタンパク質)を示した。しかし10mMのグルコースでは、インスリン生成が、わずか1.4倍(113ng)の増加(図2A)であることが示された。このアッセイにおいて、4及び10mMのグルコース濃度で細胞により分泌されたインスリンは、それぞれタンパク質1mg当たりインスリンが27及び83ngであった。アントシアニン、シアニジン−3−ガラクトシド、及びペラルゴニジン−3−ガラクトシドは、4mMのグルコース濃度でインスリン分泌を増加させなかった。しかしシアニジン−3−ガラクトシドは、10mMのグルコース濃度で、17ng/mgタンパク質のインスリン増加(1.2倍)を示した(図3)。ペラルゴニジン−3−ガラクトシダーゼは、サンプルに限りがあるので1回だけ試験をした。
【0056】
アントシアニン、シアニジン−3−グルコシドについて、5、10、50、100、及び250μg/mL濃度での用量依存性インスリン分泌の評価をした。このアッセイで使用されるグルコース濃度は、ヒトの正常なグルコース濃度を表す4mMレベルであった。この濃度で、未処理の細胞は、33ngインスリン/mgタンパク質を分泌した。シアニジン−3−グルコシドで処理した細胞によって分泌されたインスリンは、5μg/mLで、タンパク質1mg当たりインスリン46ngであった。しかし、化合物1の濃度が10、50、100、及び250μg/mLでは、インスリン分泌に有意な差はなかった。用量依存性アッセイを実施するための、デルフィニジン−3−グルコシドの十分な供給はなかった。
【0057】
アントシアニジンを、50μg/mL濃度でアッセイにかけた。シアニジン−3−グルコシドのアグリコン、シアニジンは、グルコース4mMでインスリン分泌を1.5倍(29ng/mgタンパク質)高めたのに対し、グルコース10mMでは、88ng/mgタンパク質を分泌した(図2B)。このアッセイの組において、4及び10mMのグルコースでは、未処理の細胞が、それぞれ19及び83ngインスリン/mgタンパク質を分泌した。アグリコンデルフィニジンは、4mMのグルコース濃度で6ng/mgタンパク質だけインスリン分泌の増加を示したが、これは有意なものではなかった。デルフィニジンは、10mMのグルコースでは、グルコース誘導性のインスリン分泌を示さなかった(図2B)。ペラルゴニジンは、最も活性なアントシアニンであり、4及び10mMのグルコースでそれぞれ49(1.4倍)及び91(1.2倍)ngインスリン/mgタンパク質を分泌した(図3)。アグリコン、ペツニジンは、4mMのグルコース濃度で4ngインスリン/mgタンパク質だけ分泌を増加させた。しかしマルビジンは、未処理の細胞についてはインスリン分泌の増加を示さなかった。
【0058】
結果は、アントシアニンとアントシアニジンの両方が、インスリン分泌促進物質であることを示唆した。これらの中で、デルフィニジン−3−グルコシドが最も強力であり、未処理の細胞に比べ、4及び10mMのグルコース濃度でインスリン分泌を著しく誘発させた。シアニジン−3−グリコシドは、より低いグルコース濃度ではデルフィニジン−3−グルコシドよりも活性が低かったが、より高いグルコース濃度では、より活性であった。ガラクトシドの中でもペラルゴニジン−3−ガラクトシドは、研究された4及び10mMのグルコース濃度でインスリン分泌を誘発しなかったのに対し、シアニジン−3−ガラクトシドは、インスリン分泌の著しい増加を示した。研究されたアントシアニンがインスリンを分泌する能力は、その増大順に、デルフィニジン−3−グルコシド>シアニジン−3−グルコシド>ペラルゴニジン−3−ガラクトシドであった。これは、アントシアニンのB環のヒドロキシル基の数が、インスリンを分泌するその能力に重要な役割を演ずることを示した。試験をしたアントシアニンの中で、ペラルゴニジンは、4mMのグルコースのときに最も活性であった。その他のアグリコンは、研究された4又は10mMのグルコース濃度で著しいインスリンの分泌を可能にしなかった。
【0059】
結果は、果物及び野菜から単離され精製されたアントシアニン及びアントシアニジンが、糖尿病の治療に有用であることを示唆している。
【0060】
肥満の治療の実施例
C.マス(C.mas)果実からのアントシアニン(図9)、ウルソール酸、及びベツリン酸を精製し、高脂肪の食餌の摂取からもたらされる肥満及びインスリン抵抗性を予防する薬剤として、C57BL/6Jトランスジェニックマウスを使用することによりその効力を評価した。マウスには、最初に4週間にわたって高脂肪の食事を与え、次いで続く8週間は、試験化合物を含有する高脂肪の食餌に切り替えた。グルコース負荷試験(GTT)では、高脂肪の食餌の対照マウスがインスリン抵抗性を持ち、アントシアニン及びウルソール酸で治療したマウスはインスリン抵抗性を克服したことが明らかになった。治療期間中の、高脂肪の食餌(60% kcal)を与えた対照マウスの平均体重増加は、9.76±0.55gであるのに対し、アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸で治療したマウスは、それぞれ7.41±0.93g、7.73±0.44g、及び8.78±0.96gであった。アントシアニン及びベツリン酸で治療したマウスのコレステロール値は、対照動物よりも著しく低下した。アントシアニン及びベツリン酸で治療した動物の血漿インスリン濃度は、それぞれ567±32.36及び460.86±93.68ng/mLであるのに対し、ウルソール酸で治療した動物は、対照動物に比べて52.25±8.84ng/mLのインスリンを示した。この生体内研究では、アントシアニンが優れたインスリン分泌促進物質であり、総コレステロールを低下させることに加えて、肥満及びインスリン抵抗性の予防に有益となり得ることが確認された。
【0061】
実験手順
アントシアニンの精製:シアニジンガラクトシド、ペラルゴニジンガラクトシド、及びデルフィニジンガラクトシドを、既に開示したように、C.マス(C.mas)果実からのアントシアニンの純粋な混合物として単離した。簡単に言うと、種子を分離し、得られた果肉を水(pH=3)と混合し、濾過した。得られた濾液をXAD−16 AMBERLITE樹脂に吸着させ、水で繰り返し洗浄して、糖及びその他の有機酸を除去した。次いで吸着されたアントシアニンを、酸性MeOH(pH=3)で溶離した。このように得られたアントシアニン混合物を、勾配条件下でMeOH:H2O(pH=3)を使用する中圧液体クロマトグラフィ(MPLC)カラム(C18シリカ)により精製した。溶媒系MeOH:H2O(65:35、v/v)で溶離した画分を収集し、真空中で蒸発乾燥した。アントシアニンの純度は、Capcell C18分析カラムを使用してHPLC(Waters Corp.)により確認し、520nm(PDA、Waters Corp.)で検出した。
【0062】
ベツリン酸の単離:C.mas(C.マス)果実(5kg)からの種子(700g)を分離し、凍結乾燥し、n−ヘキサン(3×1L)、酢酸エチル(3×1L)、及びメタノール(3×1L)で続けて抽出した。EtOAc抽出物(3.0g)を、n−ヘキサン及びEtOAcを移動相として用いて勾配条件下でシリカゲルMPLCにより精製した。ヘキサン−EtOAc(7:3)溶離から収集された画分を蒸発乾燥し、MeOHからの結晶化によってベツリン酸(2.5g)が得られた。
【0063】
ウルソール酸の単離:凍結乾燥した果肉及び皮を、n−ヘキサン(3×1L)、EtOAc(3×1L)、及びMeOH(3×1L)で続けて抽出した。EtOAc(3.5g)抽出物を、n−ヘキサン及びEtOAc勾配を使用したカラムクロマトグラフィにより精製した。ヘキサン−EtOAc(7:3)溶離液を真空中で蒸発乾燥し、MeOHから得られた残留物の結晶化によって、ウルソール酸(2.2g)が得られた。ウルソール酸とベツリン酸の両方を、1H及び13C NMRスペクトル実験によって特徴付けた(Werner,S.,Nebojsa,S.,Robert,W.,Robert,S.,及びOlaf,K.(2003)オレアノール酸、18α−オレアノール酸、ウルソール酸、及びこれらの11−オキソ誘導体の、1H及び13C NMR共鳴の完全帰属(Complete assignments of 1H and 13C NMR resonances of oleanolic acid,18α−oleanolic acid,ursolic acid and their 11−oxo derivatives) Mag.Res.Chem.41、636〜638)。
【0064】
動物及び食餌:4週齢のオスC57BL/6Jマウスを、Jackson Laboratories(Bar Harbor,Maine,USA)から購入した。これらのマウスを個々に、制御温度下(70°F)で且つ12時間の明暗サイクルで収容した。マウス(n=40)は、5日間にわたり、水及び実験室用の精製されていない食餌を自由に摂ることができた。順化後、研究のために、マウスを無作為にグループ1〜5(n=8)に分けた。実験は、ミシガン州立大学(East Lansing,MI)の大学実験動物資源局(ULAR)の倫理指針に従って実施した。10%kcal(普通)及び60%kcal(高脂肪)の食餌はResearch Diets(New Brunswick、NJ)から購入した。食餌の組成を表1に示す。
表1.普通食(105kcal)及び高脂肪食(60%kcal)の組成
【表1】
【0065】
対照は、グループ1及び2であり、研究の全体を通してこれらに普通食(10%kcal)及び高脂肪食(60%kcal)をそれぞれ与えた。食物は、純粋なアントシアニン混合物1g、即ち高脂肪の食餌1kg当たりベツリン酸及びウルソール酸をそれぞれ500mg混合することによって、各治療ごとに別々に調製した。治療グループ3〜5には、最初に4週間にわたって高脂肪の食餌を与え、次いでアントシアニン、ベツリン酸、又はウルソール酸を含有する食餌に切り替えた。食物は、脂肪又は化合物の酸化を避けるために、3日おきに交換した。各動物ごとの、毎日の食物摂取量(図1)及び毎週の体重を、研究の全体を通して決定した(図2A〜C)。
【0066】
血清、肝臓、及び脂肪組織の収集。食餌の供給は、12週間後に停止した。次いで動物に、イソフルランを使用して麻酔をかけ、屠殺し、心臓穿刺によって血液をヘパリン化チューブに収集した。血漿を、4℃で10分間、1600×gでの遠心分離によって分離し、すぐに凍結して、使用まで−20℃で貯蔵した。肝臓及び精巣上体の白色脂肪組織(WAT)を、解剖学的標識に従って収集し、計量し、すぐに液体窒素中で凍結させた。四肢の筋肉も収集し、液体窒素中で凍結させた。膵臓を収集し、最適切断温度(O.C.T)で貯蔵し(Sakura Finetek,Inc.,CA)、液体窒素中で凍結させた。次いで全ての組織を液体窒素から移し、分析まで−80℃で貯蔵した。
【0067】
グルコース負荷試験(GTT)。グルコース負荷試験は、補充の6週間後に、各グループ(n=5)からの5匹の動物に対して行った。血糖値を、試験片(Free Style,TheraSense,Inc.,CA)を使用して、Free Style Flash(TheraSense,Inc.,CA)手持ち式グルコメータにより時間0(分)で測定した。GTTでは、体重1kg当たりグルコース2gを含有する滅菌溶液を、腹腔内(i.p.)注射した。尾静脈血を収集し、グルコース濃度を5、10、15、30、60、及び90分でそれぞれ測定した。血糖値を、時間に対してプロットした(図3)。
【0068】
ラジオイムノアッセイ(RIA)。血漿インスリン濃度を、LINCO Research Inc.(St Charles,MO)から購入したラットインスリンRIAキットで測定した。インスリン標準物質(100μlの一定分量)を、12×75mmの試験管にピペット分注した。0.1〜10ng/mLに及ぶ、合計で10種のインスリン濃度を使用して、標準曲線を決定した。血漿サンプル(一定分量1〜25μl)を試験管に添加し、アッセイ緩衝液を添加して、全サンプル体積を100μlにした。125Iで標識したインスリン及び抗ラットインスリン抗体(それぞれ100μL)を試験管に添加し、混合し、4℃でインキュベートした。24時間後、沈殿試薬(1mL)を添加し、再び4℃で20分間インキュベートして、抗体に結合したインスリンを沈殿させた。次いで試験管を、20分間3000gで遠心分離にかけ、デカントし、γ計数器を使用して放射能を測定した。
【0069】
血漿コレステロールの決定:総血漿コレステロールを、総コレステロールに関して確立された標準的な分析プロトコルに従って、ミシガン州立大学獣医学部、Diagnostic Center for Population and Animal HealthのClinical Pathology Laboratoryにより分析した。
【0070】
結果及び考察
セイヨウサンシュユとしても知られるコルヌスマス(Cornus mas)果実は、タルトチェリー(P.cerasus)に類似している。この植物のフィトケミカル試験は、主要なアントシアニンとして、ペラルゴニジンガラクトシド、シアニジンガラクトシド、及びデルフィニジンガラクトシドを(Seeram,N.P.,Schutzki,R.,Chandra,A.,及びNair,M.G.(2002)ミズキ(Cornus)種のアントシアニンの特徴付け、定量化、及び生物活性(Characterization,quantification,and bioactivities of anthocyanins in Cornus species)J.Agric.Food Chem.50,2519〜2523)、またウルソール酸やベツリン酸などのトリテルペノイドをもたらした。トランスジェニックモデルマウスは、代謝及び内分泌障害を研究するためのモデルとして定期的に用いる。使用したC57BL/6Jモデルマウスは、レプチン受容体変異にとって同種接合であり、過食症、肥満、高インスリン血症、及び高血糖症を発症する(Coleman,D.(1978)肥満及び糖尿病:マウスにおいて糖尿病−肥満症候群を引き起こす2つの変異遺伝子(Obese and diabetes:two mutant genes causing diabetes−obesitysyndromes in mice)Diabetologia 14,141〜148)。したがって、マウスには、C.マス(C.mas)から精製されたアントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸を与えて、食餌誘導性の肥満及びインスリン抵抗性を予防する際のその効力を評価した。動物には、高脂肪の食餌を4週間与え、その後に8週間、高脂肪の食餌に組み込んだ化合物での治療を行った。対照グループの動物には、普通食又は高脂肪食のいずれかを与えた。
【0071】
体重及び食物摂取量。グループ1の動物に関する食物摂取量は、最初の3週間が約4.5gであり、次いで1日当たり約3.5gに減少し(図1)、実験が終わるまで安定したままであった。グループ2の動物に関する食物摂取量は、実験全体を通して安定しており、1日当たり約2.8gであった(図1)。この結果から、試験化合物は、動物の食物摂取量に影響を及ぼさなかったことが明らかである。グループ3〜5の動物による食物摂取量も、実験全体を通して約2.8gであった(図1)。
【0072】
グループ1(普通食)及び2(高脂肪食)の動物の体重は著しく異なっており、その平均体重はそれぞれ31.5g及び36.91gであった。化合物1(グループ3)、2(グループ4)、及び3(グループ5)で処理した高脂肪の食餌の動物は、それぞれ34.19g、33.54g、及び34.89gの重さであった(図2A〜図2C)。グループ1及び2の動物に関する実験期間(12週間)中の全体重増加は、それぞれ13.94g及び18.98gであった。同様に、グループ3、4、及び5の動物は、それぞれ体重が15.91g、15.16g、及び17.45g増加した。治療期間中の、これらの動物により得られた体重増加は、それぞれ7.41g、7.73g、及び8.78グラムであるのに対し、グループ1及び2の対照は、体重増加がそれぞれ6.63g及び9.76gであることを示した。
【0073】
グルコース負荷試験。グルコース負荷試験(GTT)を、グルコース溶液(2g/kg)の腹腔内(i.p.)注射により実施した。グルコースを注射した動物の血糖値は、5、10、15、30、60、及び90分間隔で尾静脈から血液を引き出すことにより決定した。これらのグループの中で、0時間での血糖値は、ほとんど同一であった。低脂肪及び高脂肪の対照グループ(1及び2)の初期グルコース濃度は、それぞれ133.8±15.37mg/dL及び119.8±7.24mg/dLであった(図3)。化合物10〜13で治療した動物で決定された血糖値は、それぞれ123.4±4.65mg/dL、123.4±6.0mg/dL、及び113.5±15.5.16mg/dLであった。血糖濃度は、ウルソール酸で治療した動物を除き、全てのグループにおいて、グルコース注射後30分で最大に達した。またグルコース吸収は、このグループでは遅く、血糖濃度は60分で最大に達した。グルコース負荷の90分後、普通食及び高脂肪食を与えた動物の血糖値は、それぞれ190±6.31mg/dL及び363±19.76mg/dLであった。同様に、グループ3〜5の動物の血糖値は、それぞれ221±31.5、317.8±21.9、及び227±22.982であった。
【0074】
血漿インスリン濃度:血漿インスリンを、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用して測定した(Qian,D.,Zhu,Y.,及びZhu,Q.(2001)ハルコガネバナ(Cornus officinalis Sieb.et Zucc)のアルコール抽出物が、2型(非インスリン依存性)糖尿病ラットの骨格筋でのGLUT4発現に及ぼす影響(Effect of alcohol extract of Cornus officinalis Sieb.et Zucc on GLUT4 expression in skeletal muscle in type 2(non−insulin−dependent)diabetes mellitus rats)Zhongguo Zhongyao Zazhi 26,859〜862)。対照動物、グループ1及び2に関して測定したインスリン濃度は、それぞれ0.47±0.14ng/mL及び0.41±0.1ng/mLであるのに対し(図4)、アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸で治療した動物は、それぞれ567.98±32.36ng/mL、460±93.68ng/mL、及び52.25±8.84ng/mLのインスリンを示した。
【0075】
空腹時血糖:普通食及び高脂肪食の対照の、空腹時血糖を測定して、高脂肪の食餌を摂取した動物が糖尿病であるか否か決定した。動物に、食物を6時間与えず、尾静脈から収集した血液からグルコース濃度を決定した。普通食(n=8)及び高脂肪食(n=8)の動物のグルコース濃度は、それぞれ126.6±4.6mg/dL及び125±5.19mg/dLであった。
【0076】
血漿コレステロール:普通食及び高脂肪食の対照の血漿コレステロール濃度は、それぞれ120.5±10.61mg/dL及び156.4±8.26mg/dLであった。アントシアニン及びベツリン酸で治療した動物のコレステロールは、それぞれ134.2±15.5mg/dL及び126.5±14.01mg/dLであった(図5)。
【0077】
高脂肪食のみの動物及び試験化合物を含有する高脂肪食の動物の食物摂取量は、研究の全体を通して変化しなかった。普通食の対照動物が、高脂肪食の動物よりも多くの食物を摂取したことに注目することは興味深い。高脂肪食の対照及び治療グループによるカロリー摂取量が、1日当たり約14.56kcalであるのに対し、普通食の対照は、1日当たり13.3kcalを摂取した。
【0078】
アントシアニンを含有する食餌が与えられた動物は、高脂肪食の対照に比べて体重が著しく減少することを示した。アントシアニン及びベツリン酸を与えた動物で観察される体重減少は、それぞれ24%及び21%であった(図5A及び5B)。しかし、ウルソール酸を与えた動物で観察された体重減少は、高脂肪食の対照に比べて有意なものではなかった。アントシアニン及びベツリン酸で治療した動物の血漿は、高脂肪食の対照に比べて総コレステロールが著しく減少することを示した(図5)。ウルソール酸で治療した動物からの血漿は、総コレステロールアッセイを終了させるのに十分ではなかった。グループ2〜5の動物の食物摂取量は、研究の全体を通して類似しており、したがってアントシアニンを与えた動物で観察される体重減少は、アントシアニンを肥満の予防に利用できる可能性があることを示唆していた。
【0079】
グルコース負荷試験(GTT)を全ての動物に対して実施して、インスリン抵抗性を決定した(図6)。ウルソール酸が、治療した動物の体重を著しく減少させなかったとしても、このグループの全ての動物は、普通食を与えた対照グループ動物に類似したグルコース濃度を補正した。アントシアニンによる治療は、血糖濃度が30分で最大に達すること以外、GTTアッセイでのウルソール酸による治療の場合と同様の効果を示した。ウルソール酸で治療した動物の血糖値(グループ5)は60分で最大に達し、ウルソール酸がグルコース吸収を遅らせることができることを示している。したがってウルソール酸は、グルコースの吸収を遅らせることができるので、2型糖尿病患者に摂取される有用な生成物になり得る。90分で、アントシアニン及びウルソール酸で治療した動物の血糖値は、低脂肪食が与えられた対照グループと同様になった。しかし、ベツリン酸で治療した動物はGTTに応答せず、その結果は、高脂肪食が与えられた対照グループと同様であった。高脂肪食を与えた動物の場合、血糖濃度は30分で最大に達し、90分まで安定なままであったが、これは、これらの動物がインスリン抵抗性であることを示している。
【0080】
図9の化合物10〜15で治療した動物の血漿インスリン濃度は、普通食及び高脂肪食を与えた対照動物(図4)よりも著しく高かった。アントシアニンで治療した動物のインスリン分泌の増加は、数々の治療の中で最も大きかった。アントシアニンで治療した動物によるインスリン分泌は、ウルソール酸で治療した動物に比べて10倍以上であった(図7)。結論として、C.mas(C.マス)果実から単離したアントシアニンは、高脂肪食の動物の体重減少に関し、研究がなされた3種の化合物のうち最良のものであった。また、低血糖症を引き起こすことなく、膨大な量のインスリン分泌も誘発させた。
【0081】
アントシアニン及びアントシアニジンの分離及び生成のための方法は、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第6,194,469号;同第6,423,365号;同第6,623,743号;同第6,676,978号;及び同第6,656,914号と、2002年2月27日出願の米国特許出願第10/084,575号に記載されている。
【0082】
前述の内容は、本発明の単なる例示であり、本発明は、本明細書に添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】アントシアニン1〜4及びアントシアニジン5〜9の構造を示す図である。
【図2A】化合物1及び2によるタンパク質1mg当たりの分泌されたインスリンの量を示すグラフである。アッセイウェルでの最終DMSO濃度は0.1%であった。示される結果は、3回又は5回の独立した実験の平均であり、各サンプルについて重複してアッセイを行った。化合物1、2によるインスリン分泌は、t検定を使用してLSDにより決定されるように、*(95%又はp≦0.05)で著しかった。
【図2B】4mM及び10mMのグルコースの存在下、化合物5及び6によるタンパク質1mg当たりの分泌されたインスリンの量を示すグラフである。アッセイウェルでの最終DMSO濃度は0.1%であった。示される結果は、3回又は5回の独立した実験の平均であり、各サンプルについて重複してアッセイを行った。化合物5、6によるインスリン分泌は、t検定を使用してLSDにより決定されるように、**(99%又はp≦0.01)で著しかった。
【図3】4mM及び10mMのグルコース濃度で、化合物3、7〜9により分泌されたインスリンを示すグラフである。分泌されたインスリンの量を、mgタンパク質に対して規格化した。アッセイウェルでの最終DMSO濃度は0.1%であった。示される結果は、3回の独立した実験の平均であり、各サンプルについて重複してアッセイを行った。化合物3、7〜9によるインスリン分泌は、t検定を使用してLSDにより決定されるように、*(95%又はp≦0.05)で著しかった。
【図4】肥満に関する12週間の研究での、動物の食物摂取量(単位g)を示すグラフである。値は、平均±SEM、n=8である。食物摂取量を毎日測定し、毎週平均を出した。高脂肪(HF、60%kcal 脂肪)対照グループと治療グループとの間には、有意な差はなかった。治療グループは、高脂肪の食餌を4週間摂り、その後に試験化合物、高脂肪の食餌のアントシアニン(1.0g/kg)、ベツリン酸及びウルソール酸(それぞれ0.5g/kg)と混合した食餌に切り替えた。普通食は、10%kcalを含有していた。
【図5A】12週間食餌を与える間の、肥満研究中のC57BL/6Jマウスの体重変化を示すグラフである。普通食及び高脂肪食の対照は、実験中のこれらの食餌において、それぞれ10%及び60%kcalを摂った。アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸を別々に、それぞれ食物1kg当たり1.0、0.5、及び0.5gで高脂肪の食餌に混合した。化合物で治療したグループには、最初に高脂肪の食餌(60%kcal)を4週間与え、次いで適切な治療薬を含有する食餌に切り替えた。データは、平均±SEM、n=8を表す。
【図5B】12週間食餌を与える間の、肥満研究中のC57BL/6Jマウスの体重変化を示すグラフである。普通食及び高脂肪食の対照は、実験中のこれらの食餌において、それぞれ10%及び60%kcalを摂った。アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸を別々に、それぞれ食物1kg当たり1.0、0.5、及び0.5gで高脂肪の食餌に混合した。化合物で治療したグループには、最初に高脂肪の食餌(60%kcal)を4週間与え、次いで適切な治療薬を含有する食餌に切り替えた。データは、平均±SEM、n=8を表す。
【図5C】12週間食餌を与える間の、肥満研究中のC57BL/6Jマウスの体重変化を示すグラフである。普通食及び高脂肪食の対照は、実験中のこれらの食餌において、それぞれ10%及び60%kcalを摂った。アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸を別々に、それぞれ食物1kg当たり1.0、0.5、及び0.5gで高脂肪の食餌に混合した。化合物で治療したグループには、最初に高脂肪の食餌(60%kcal)を4週間与え、次いで適切な治療薬を含有する食餌に切り替えた。データは、平均±SEM、n=8を表す。
【図6】グルコース負荷後の90分にわたる、肥満研究におけるグルコース負荷試験の結果を示すグラフである。試験は、食餌を与えた第11週目に実施した。グルコースの水溶液(2g/kg体重)を腹腔内投与し、血糖値を、0、5、15、30、60、及び90分のときに測定した。血液を尾静脈から採取した。垂直な棒は、各データポイントn=5でのS.E.である。
【図7】食餌実験の終わりに決定された、C57BL/6Jマウスの血漿インスリン濃度を示すグラフである。低及び高脂肪の食餌の対照グループに関して決定された血漿インスリン濃度は、それぞれ0.47±0.14及び0.41±0.1ng/mLであった。血漿中のインスリンの定量化は、ラジオイムノアッセイ(RIA)により実施した。各サンプルについて二重にアッセイを行い、値は、n=8の場合の平均±SEMを表す。
【図8】食餌研究の終わりに採取された血漿における、マウスの血漿コレステロール濃度を示すグラフであり、単位をmg/dLで表す。ウルソール酸で治療した動物のコレステロール濃度に関しては、血漿サンプルの量が不十分であるので試験をしなかった。これらの値は、n=4又は5の場合の平均±SEMを表す。
【図9】10から12種のコルヌスマスL(Cornus mas L.)から単離された化合物である。
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年7月29日出願の、仮特許出願第60/591,806号の優先権に依拠するものである。
【0002】
本発明は、米国農務省資金提供(USDA Grant)No.2003−35504−13618に基づいて、資金提供された。米国政府は、本発明に対する確かな権利を有する。
【0003】
本発明は、インスリン関連疾患、肥満、糖尿病、高血糖症、脂質障害、高脂血症、又は低HDL、高コレステロール血症、高グリセリド血症、異脂肪血症、及びアテローム性動脈硬化症の治療に関する。本発明は特に、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、及びベツリン酸を使用する方法に関する。本発明は特に、生体内で細胞によるインスリン生成を増加させるための、ミズキ種(Cornus spp.)果実エキス、並びにチェリーやベリーなどのこれらの化合物を含有するその他の果実、又はこれらの混合物に関する。本発明は特に、関連疾患の治療において、生体内でのインスリン生成の増加をもたらすための方法に使用される組成物にも関する。本発明は特に、肥満を予防し、コレステロール及び体重を低下させるのに使用される組成物にも関する。
【背景技術】
【0004】
インスリンの機能は、肝臓からのグルコールの排出を抑制することによって、又はグルコースの摂取及びその代謝を刺激することによって、正常な血糖値を維持することである(Ross,S.A.;Gulve,E.A.;Wang,M.糖尿病の化学及び生化学(Chemistry and Biochemistry of diabetes.)Chem.Rev.2004,104,1255〜1282)。インスリンの不十分な放出、又は標的組織でのインスリン動作の低下は、グルコース及び脂質の異常な代謝を引き起こす。この結果、糖尿病の顕著な特徴として血液中のグルコース濃度が高くなる(Jovanovic,L.;Gondos,B.2型糖尿病:新ミレニアムの流行病(Type−2 diabetes:The epidemic of new millennium.)Ann.Clin.Lab.Sci.1999,29,33〜42)。2つのタイプの糖尿病、即ち1型(インスリン依存性糖尿病)と2型の糖尿病(非インスリン依存性糖尿病)がある。1型糖尿病は、インスリン不全をもたらす自己免疫破壊又はインスリンを分泌する膵臓β細胞の阻害によって生ずる。2型糖尿病はより一般的であり、β細胞が、遺伝的及び環境的要因によって確立されたインスリン抵抗性を克服すための十分な量のインスリンを分泌できないことによって生ずる(Henquin,J.C.グルコースによるインスリン分泌の調節の誘発及び増幅経路(Triggering and amplifying pathways of regulations of insulin secretion by glucose.)Diabetes 2000,49,1751〜1760)。インスリン抵抗性は、インスリンが、骨格筋及び脂肪内でグルコースの輸送を不適切に刺激し、肝臓グルコール生成を不適切に抑制する障害である。末梢インスリン抵抗性を克服するのに十分な量のインスリンのβ細胞による分泌が妨げられる、関係あるメカニズムは、確立されたままである。
【0005】
しかし、β細胞からのインスリン放出を直接刺激する経口血糖降下薬(例えば、参照により本明細書に援用されるJonesらの米国特許第6,852,738号に例示されるような、スルホニル尿素ベースの薬物)は、末梢インスリン抵抗性を克服するために且つ血糖値を正常にするために、2型糖尿病患者の小島からのインスリン分泌を十分高めることができることが示されている。スルホニル尿素ベースの薬物使用の欠点の1つは、これらの薬物では正常な血糖値を制御できないことである(Pfeiffer,A.F.H.経口血糖降下薬:スルホニル尿素及びメグリチナイド(Oral hypoglycemic agents:Sulfonylureas and meglitinides)B.J.Goldstein,D.Muller−Wieland(編),2型糖尿病の教科書(Text book of Type−2 Diabetes)Martin Dunitz Ltd.,London,2003,pp.77〜85)。これらの薬物は、β細胞がインスリンを分泌し且つ体重増加を引き起こす能力にも悪影響を及ぼす(Pfeiffer,A.F.H.経口血糖降下薬:スルホニル尿素及びメグリチナイド(Oral hypoglycemic agents:Sulfonylureas and meglitinides)B.J.Goldstein,D.Muller−Wieland(編),2型糖尿病の教科書(Text book of Type−2 Diabetes)Martin Dunitz Ltd.,London,2003,pp.77〜85)。したがって、伝統的な処方薬治療の他に、膵臓β細胞によって血糖値を調節することができ又はインスリン生成を誘発することができるという食品成分の役割がある。
【0006】
報告では、特にポリフェノールに富む果物及び野菜の摂取が、2型糖尿病の発生率を低下させることを示している(Anderson,R.A.;Polansky,M.M.,お茶で強化されたインスリン活性(Tea Enhanced Insulin Activity)J.Agric.Food Chem.2002,50,7182〜7186;Anderson,R.A.;Broadhurst,C.L.;Polansly,M.M.;Schmidt,W.F.;Khan,A.;Flanagan,V.P.;Schoene,N.W.;Graves,D.J.インスリン様生物活性を有するシナモンからのポリフェノールA型ポリマーの単離及び特徴付け(Isolation and Characterization of Polyphenol Type−A Polymers from Cinnamon with Insulin−like Biological Activity)J.Agric.Food Chem.2004,52,65〜70;Landrault,N.;Poucheret,P.;Azay,J.;Krosniak、M.;Gasc,F.;Jenin,C.;Cros,G.;Teissedre,P.糖尿病ラットにおけるポリフェノールに富むシャルドネ白ワインの作用(Effect of a Polyphenols−Enriched Chardonnay White Wine in Diabetic Rats)J.Agric.Food Chem.2003,51,311〜318)。また、食品中の抗酸化物は、グルコースによる酸化ストレスから膵臓β細胞を保護することも知られている。アントシアニンは、果物、野菜、及びワインやサイダー、お茶などの加工食品中に豊富に存在する。しかし、これが糖尿病を低減し又は予防する能力について、ほとんど知られていない。
【0007】
また、アントシアニンは無毒性であり、抗酸化、抗炎症、及び抗癌活性を持つことが報告されている(Wang,H.,Nair,M.G.,Strasburg,G.M.,Chang,Y.,Booren,A.M.Gray,J.I.,及びDeWitt,D.L.(1999)タルトチェリーからのアントシアニン及びそのアグリコン、シアニジンの、抗酸化及び抗炎症活性(Antioxidant and anti−inflammatory activities of anthocyanins and their aglycon,cyanidin,from tart cherries)J.Nat.Prod.62,294〜296;Tall,J.M.,Seeram,N.P.,Zhao,C.,Nair,M.G.,Meyer,R.A.,及びRaja,S.N.(2004)タルトチェリーのアントシアニンは、ラットにおける炎症による痛みの振舞いを抑制する(Tart cherry anthocyanins suppress inflammation−induced pain behavior in rat)Behav.Brain Res.153,181〜188;Kang,S.,Seeram,N.P.,Nair,M.G.,及びBourquin,L.D.(2003)タルトチェリーのアントシアニンは、ApcMinマウスの腫瘍の発達を阻害し、ヒト結腸癌細胞の増殖を低下させる(Tart cherry anthocyanins inhibit tumor development in ApcMin mice and reduce proliferation of human colon cancer cells)Canc.Lett.194,13〜19;Zhang,Y.,Vareed,S.K.,及びNair,M.G.(2005)無毒性アントシアニジン、果物及び野菜の色素によるヒト腫瘍細胞の成長阻害(Human tumor cell growth inhibition by nontoxic anthocyanidins,the pigments in fruits and vegetables)Life Sci.76,1465〜1472)。
【0008】
野菜、果物、及びハーブ中に存在する生物活性の天然産物は、癌や糖尿病、心臓血管疾患などのヒト変性障害の予防及び治療において、相当な関心を生じさせている。例えばナッツ、全粒穀物、果物、及び野菜は、ポリフェノールやテルペノイド、色素などの抗酸化物の豊富な源であり、これらの化合物は、いくつかの疾患状態の寛解に関連している。同様に、ニンニク、大豆、キャベツ、生姜、甘草、及びセリ科植物中に存在するフィトケミカルは、抗癌活性を有することで知られている(Rui,H.L.(2004)癌予防におけるフィトケミカルの潜在的相乗効果:動作メカニズム(Potential synergy of phytochemicals in cancer prevention:mechanism of action)J.Nutr.134,3479S〜3485S)。また、お茶に存在するポリフェノールは、抗糖尿病性を有することも報告されている(Vanessa,C.及びGary,W.(2004)生体内動物モデルにおける緑茶カテキンの健康への影響に関する検討(A review of the health effects of green tea catechins in vivo animal models)J.Nutr.134,3431S〜3440S,Mary E.W.,Xiaohui,L.W.,Brian,K.L.,Robert K.H.,Masao,N.,及びDaryl K.G.(2002)緑茶成分エピガロカテキンガレートは、肝臓グルコース生成を抑制する(Epigallocatechin gallate,a constituent of green tea,represses hepatic glucose production)J.Biol.Chem.277,34933〜34940)。
【0009】
脂肪が少なく抗酸化物が豊富な食品の摂取は、肥満及びインスリン抵抗性のリスクを低下させる(Blakely,S.;Herbert,A.;Collins,M.;Jenkins,M.;Mitchell,G.;Grundel,E.;O’Neill,K.R.;Khachik,F.ルテインは、メスZucker肥満ラットの酸化ストレスの生物マーカーを変化させるために、α−トコフェロールよりもアスコルビン酸とより頻繁に相互に作用する(Lutein interacts with ascorbic acid more frequently than with α−tocopherol to alter biomarkers of oxidative stress in female Zucker obese rats)J.Nutr.2003,133,2838〜2844)。
【0010】
アントシアニンは抗酸化ポリフェノールに属し、様々な食品及び飲料に存在する。アントシアニンの摂取は、アテローム性動脈硬化症や心臓血管疾患、癌、及び糖尿病などのいくつかの変性疾患のリスク低下に関係する(Jayaprakasam,B.;Strasburg,G.A.;Nair,M.G.ウィタニア(Withania somnifera)からの強力な脂質過酸化阻害剤(Potent lipid peroxidation inhibitors from Withania somnifera)Tetrahedron 2004,60,3109〜3121)。これらの化合物は、周知のフリーラジカル捕捉剤であり、潜在的な化学予防剤であると報告されている(Duthie,G.G.;Duthie,S.J.;Kyle,J.A.M.癌及び心臓疾患における植物ポリフェノール:食事性抗酸化物としての意味合い(Plant polyphenols in cancer and heart disease:implications as nutritional antioxidants)Nutr.Res.Rev.2000,13,79〜106)。例えば、血清の抗酸化物能力は、イチゴ、チェリー、及び赤ワインの摂取によって増加した(Kang,S.Y.;Seeram,N.P.;Nair,M.G.;Bourquin,L.D.タルトチェリーのアントシアニンは、ApcMinマウスの腫瘍発達を阻害し、ヒト結腸癌細胞の増殖を低下させる(Tart cherry anthocyanins inhibit tumor development in ApcMin mice and reduce proliferation of human colon cancer cells)Canc.Lett.2003,194,13〜19;Van Velden,D.P.;Mansvelt,E.P.G.;Fourie,E.;Rossouw,M.;Marais,A.D.ヒト血液化学的性質に対するワインの心保護効果(The cardioprotective effect of wine on human blood chemistry)Ann.New York Acad.Sci.2002,957,337〜340;Wang,H.;Nair,M.G.;Strasburg,G.M.;Chang,Y.C.;Booren,A.M.;Gray,I.J.;DeWitt,D.L.タルトチェリーからのアントシアニン及びそのアグリコン、シアニジンの、抗酸化物及び抗炎症活性(Antioxidant and anti−inflammatory activities of anthocyanins and their aglycone,cyanidin,from tart cherries)J.Nat.Prod.1999,62,294〜296)。最近の研究では、アントシアニン、シアニジン3−グルコシドが、高脂肪食により誘発されたマウスの肥満を低減させることを実証した(Espin,J.C.;Soler−Rivas,C.;Wichers,H.J.;Garcia−Viguera,C.アントシアニンをベースにした天然着色剤。食材に対する抗ラジカル活性の新たな源。(Anthocyanin−based natural colorants.A new source of antiradical activity for foodstuff.)J.Agri.Food Chem.2000,48,1588〜1592)。したがって、食品中に存在する天然着色剤は、その安全性、栄養的価値、及び治療的価値が原因で、消費者を惹きつけている(Millspaugh,C.F.American Medicinal Plants;Dover Publications:New York,1974;p.282)。アントシアニンは広く摂取されているので、これら化合物の追加の生物学的活性は、大きな関心を集めるものである。
【0011】
いくつかの研究は、脂肪が豊富で繊維が少ない食物が肥満をもたらすことを示唆している。肥満は、脂質の代謝を変化させ、それがインスリン抵抗性に繋がる。肥満条件下では、脂肪組織が大量の遊離脂肪酸(FFA)を生成する。次いでFFAは、グルコースの摂取、グリコーゲンの合成、及びグルコースの酸化を阻害し(Saltiel,A.R.及びKahn,C.R.(2001)インスリンのシグナル伝達と、グルコース及び脂質代謝の調節(Insulin signaling and the regulation of glucose and lipid metabolism)Nature 414,799〜806)、高血糖症及び2型糖尿病をもたらす。2型糖尿病は、益々一般的になりつつある障害であり、世界で約1億5千万人から3億人が罹患しており、次の25年間で2倍になることが予測される(King,H.,Aubert,R.E.,及びHerman,W.H.(1998)糖尿病の世界的負担、1995〜2025:罹患率、数値評価、及び予測(Global burden of diabetes,1995〜2025:prevalence,numerical estimates,and projections)Diabetes Care 21,1414〜1431)。最近、食物で誘発される体脂肪蓄積を予防するのに有利になり得る食品であって、糖尿病及び心臓疾患のリスクを低下させる可能性のある食品に、多くの関心が集まっている。
【0012】
食物摂取の制御に関わるいくつかの生化学的プロセスがある。グルカゴン様ペプチド−1及び−2(GLP−1&−2)を内分泌細胞で合成し、栄養摂取に応答して血液中に放出した。GLP−2は、粘膜上皮を広げることによって、栄養素の吸収を高める(Ahren,B.(1998)グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1):糖尿病治療で潜在的関心を集める消化管ホルモン(Glucagon−like peptide−1(GLP−1):a gut hormone of potential interest in the treatment of diabetes)BioEssays 20,642〜651、及びDrucker,D.J.(2002)グルカゴン様ペプチドの生物学的動作及び治療可能性(Biological action and therapeutic potential of glucagons like peptides)Gastroenterology 122,531〜544)。GLP−1は、主に消化管L細胞で発現し、これは、肝臓によるグルカゴンの分泌及び胃内容排出を阻害し、それによって食物摂取が阻害され、膵臓β細胞によるインスリンの生合成及び分泌が刺激される(Ahren,B.(1998)グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1):糖尿病治療で潜在的関心を集める消化管ホルモン(Glucagon−like peptide−1(GLP−1):a gut hormone of potential interest in the treatment of diabetes)BioEssays 20,642〜651、及びDrucker,D.J.(2002)グルカゴン様ペプチドの生物学的動作及び治療可能性(Biological action and therapeutic potential of glucagons like peptides)Gastroenterology 122,531〜544)。膵臓β細胞の主な機能は、身体の正常な生理学的グルコース濃度を保持するために、栄養素、ホルモン、及び神経の刺激に応答して生物活性のインスリンを分泌することである(Rohit,N.K.(2004)膵島β細胞(The islet β−cell)The Int.J.Biochem.Cell Biol.36,365〜371)。高い血糖値に応答して膵臓β細胞の機能が徐々に低下することにより、インスリンの欠乏が引き起こされ、それが2型糖尿病に繋がる。インスリン抵抗性と、肝臓、筋肉、及び脂肪組織が生理学的用量のインスリンに応答できなくなることによっても、2型糖尿病が引き起こされる(Pinget,M.,及びBoullu−Sanchis,S.(2002)インスリン分泌異常の生理学的基礎(Physiological basis of insulin secretion abnormalities)Diabet.Met.28(補遺6),4S21〜4S32)。インスリンの欠乏症及び抵抗性は、高脂血症やアテローム性動脈硬化症、及び高血圧症などの健康問題に繋がり(Saltiel,A.R.及びKahn,C.R.(2001)インスリンのシグナル伝達と、グルコース及び脂質代謝の調節(Insulin signaling and the regulation of glucose and lipid metabolism)Nature 414,799〜806)、しばしば不完全な糖質及び脂質の代謝に結び付けられる(Brosche,T.(2001)糖質又は脂質代謝が不完全な患者からの血清と、正常な代謝値を有する高齢被験者の血清の、プラスマロゲン濃度(Plasmalogen levels in serum from patients with impaired carbohydrate or lipid metabolism and in elderly subjects with normal metabolic values)Arch.Gerontol.Geriatrics 32,283〜294)。これらの対照系は、複雑な経路で相互に作用し、遺伝的、環境的、及び社会的要因による任意の変化によって、肥満及び糖尿病が引き起こされる(Ross,S.A.Gulve,E.A.及びWang,M.(2004)2型糖尿病の化学及び生化学(Chemistry and biochemistry of type 2 diabetes)Chem.Rev.104,1255〜1282)。しかし、社会的及び環境的要因から生ずる合併症のいくつかは、運動及び適正な食事によって遅延させ又は予防することができる(Christian,K.R.,及びBarnard,R.J.(2005)慢性糖尿病に対する運動及び食事の影響(Effects of exercise and diet on chronic disease)J.Appl.Physiol.98,3〜30)。疫学的研究では、果物及び野菜が豊富な食事によって、癌、心臓血管疾患、糖尿病、白内障、及び炎症性疾患の罹患率が低下することが示された(World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research(1997)食品、栄養、及び癌の予防:世界的展望(Food,nutrition and the prevention of cancer:A global perspective)1997,American Institute for Cancer Research Wachington,DC.;U.S.Department of Agriculture,U.S.Department of Health and Human Services(1995)栄養及びあなたの健康:アメリカ人に対する食事指針(Nutrition and Your Health:Dietary Guidelines for Americans)1995,U.S.Government Printing Office Washington,DC.;American Heart Association(1996)健康なアメリカ成人に対する食事指針:栄養委員会からの保健専門家に対する声明(Dietary guidelines for healthy American adults:A statement for health professionals from the nutrition committee),American Heart Association.Circulation 94,1795〜1800;American Cancer Society(1996)食事、栄養、及び癌予防に関する指針:健康な食品の選択及び身体活動による癌のリスクの低減(Guidelines on diet,nutrition,and cancer prevention:reducing the risk of cancer with healthy food choices and physical activity)Cancer J.Clin.46,325〜341;World Health Organization(1990)食事、栄養、及び慢性糖尿病の予防(Diet,Nutrition and the prevention of chronic diseases):Report of a WHO study group,Technical Report Series 797,WHO Geneva,Switzerland;Willett,W.C.(1999)2000年における栄養の目的(Goals for nutrition in the year 2000)Cancer J.Clin.49,331〜352,及びWillett,W.C.(1998)栄養疫学(Nutritional Epidemiology)1998,Press:Oxford University,New York,NY,USA)。
【0013】
最近は、毒性が低く且つ副作用がより少ないと考えられることから、一般に安全であると見なされる(GRAS)植物、果物、及び野菜から得られた天然の血糖降下化合物に対する関心が高まっている。食品中に存在するこれらの生物活性化合物は、遺伝子発現及び細胞現象を変化させることができ(Milner,J.A.(2004)生物活性食品成分の分子標的(Molecular targets for bioactive food components)J.Nutr.134,2492S〜2498S)、その結果、タンパク質及びその機能が変化する。いくつかの研究では、果物及び野菜に存在するフィトケミカルが、有害な健康リスクを改善するのに有益であることを示唆しているが、その事例的な保護効果は十分理解されていない。
【0014】
サンシュユ(Cornus fruits)は、「八味丸」などの、抗糖尿病の伝統的漢方薬に使用される(Yamahara,J.;Mibu,H.;Sawada,T.;Fujimura,H.;Takino,S.;Yoshikawa,M.;Kitagawa,I.粗製薬物の生物学的に活性な因子。ストレプトゾトシンによって誘発される実験的糖尿病での、サンシュユの抗糖尿病因子。(Biologically active principles of crude drugs.Anti−diabetic principles of corni fructus in experimental diabetes induced by streptozotocin.)薬学雑誌1981,101,86〜90)。本発明者らは、最近、ミズキ(Cornus spp.)果実中のアントシアニンの定量化について報告した(Seeram,N.P.;Schutzki,R.;Chandra,A.;Nair,M.G.ミズキ種のアントシアニンの特徴付け、定量化、及び生物活性(Characterization,Quantification,and Bioactivities of Anthocyanins in Cornus Species)J.Agri.Food Chem.2002,50,2519〜2523)。
【0015】
ミズキ種の果実は、アントシアニンの豊富な供給源である。西洋及び東洋のコーネリアンチェリー(Cornelian cherry)としても知られるコルヌスマスL.(Cornus mas L.)の果実は、欧州では飲料の調製に使用されている(Kim,D.K.;Kwak,J.H.コルヌスオフィシナリス(Cornus officinalis)からのフラン誘導体(A Furan derivative from Cornus officinalis)Arch.Pharm.Res.1998,21,787〜789)。伝統的な医薬では、コルヌスオフィシナリス(Cornus officinalis)の果実は、その鎮痛及び利尿活性で知られている(Yamahara,J.;Mibu,H.;Sawada,T.;Fujimura,H.;Takino,S.;Yoshikawa,M.;Kitagawa,I.粗製薬物の生物学的に活性な因子。ストレプトゾトシンによって誘発される実験的糖尿病での、サンシュユの抗糖尿病因子。(Biologically active principles of crude drugs.Anti−diabetic principles of corni fructus in experimental diabetes induced by streptozotocin.)薬学雑誌1981,101,86〜90)。サンシュユは、アジアの国々では、いくつかの抗糖尿病生薬の主成分の1つでもある(Seeram,N.P.;Schutzki,R.;Chandra,A.;Nair,M.G.ミズキ種のアントシアニンの特徴付け、定量化、及び生物活性(Characterization,Quantification,and Bioactivities of Anthocyanins in Cornus Species)J.Agri.Food Chem.2002,50,2519〜2523)。C.マス(C.mas)及びC.オフィシナリス(C.officinalis)に関するより早期の調査では、どちらも高レベルのアントシアニンを含有することが明らかにされた(Beckwith,A.G.;Zhang,Y.;Seeram,N.P.;Cameron,A.C.;Nair,M.G.ペニセツムセタセウムCvs.ルブラム及びレッドライディングフット(Pennisetum setaceum Cvs.Rubrum and Red Riding Hood)における光量とアントシアニン生成の関係(Relationship of Light Quantity and Anthocyanin Production in Pennisetum setaceum Cvs.Rubrum and Red Riding Hood)J.Agric.Food Chem.2004,52,456〜461)。
【0016】
C.マス(C.mas)植物は、タルトチェリー(P.cerasus)に類似した果実を付ける。これは、ミズキ科(Cornaceae)に属し、欧州及び西アジアを原産とする落葉樹である(Millspaugh,C.F.アメリカ薬用植物(American Medicinal Plants);Dover Publications:New York,1974;p282)。この種の果実は、いくつかの調合物を作製するためにトルコで使用されてきた。より早期の研究では、コルヌスオフィシナリス(Cornus officinalis)のアルコール抽出物が、非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)ラットでのGLUT 4 mRNA発現、グルコース輸送体を増加させることを実証した(Qian,D.,及びZhu,Q.(2001)ハルコガネバナ(Cornus officinalis Sieb.et Zucc)のアルコール抽出物が、2型(非インスリン依存性)糖尿病ラットの骨格筋でのGLUT4発現に及ぼす影響(Effect of alcohol extract of Cornus officinalis Sieb.et Zucc on GLUT4 expression in skeletal muscle in type 2(non−insulin−dependent)diabetes mellitus rats)Zhongguo Zhongyao Zazhi 26,859〜862)。サンシュユは、同様に漢方医学で周知であり、中国ではこの種の果実を使用して、糖尿病を治療する。しかし、抗糖尿病活性を担う活性化合物は、特徴付けられていない。ミシガンで生育したいくつかのミズキ種からの果実に関する、より早期の研究では、C.マス(C.mas)が、高濃度のアントシアニンを含有することが明らかにされた(Seeram,N.P.;Schutzki,R.;Chandra,A.;及びNair,M.G.(2002)ミズキ種のアントシアニンの特徴付け、定量化、及び生物活性(Characterization,quantification,and bioactivities of anthocyanins in Cornus species)J.Agric.Food Chem.2002,50,2519〜2523)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、インスリン生成、高コレステロール、及び体重に関連した障害の治療に有用な、組成物及び方法を提供することである。詳細には、本発明の目的は、生体内でインスリン生成を増加させるための方法及び組成物を提供することである。他の目的は、下記の記述及び図面から明らかにされよう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、肥満の治療を必要とする哺乳動物患者の肥満を制御するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法に関する。本発明は特に、ミズキ(Cornus)並びに果実中に天然に存在する酸及び糖を実質的に含まないその他の果実からのサプリメントに関する。
【0019】
本発明は、糖尿病であり且つ糖尿病の処方薬で治療しているヒト患者の肥満を治療するための方法であって、処方薬と併せてアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む有効量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。この組成物は、サプリメント又は医薬品製剤であることが好ましい。
【0020】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、果実、野菜、及び花から単離することが好ましい。アントシアニンは、シアニジン−3−グリコシド、デルフィンジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。「グリコシド」は、炭水化物分子(糖)を含有する任意の化合物であり、特に、植物中に存在して加水分解により糖及び非糖成分(アグリコン)に変換可能であり、具体的には、含有される糖にちなんでグルコシド(グルコース)、ペントシド(ペントース)、フルクトシド(フルクトース)などと呼ばれるような任意の天然産物である。アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、コルヌスマス(Cornus mas)から単離することが好ましい。アントシアニジン、或いはアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物は、単離され精製されることが好ましい。
【0021】
本発明は、糖尿病を制御するために、糖尿病の治療を必要とする哺乳動物患者の糖尿病を治療するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0022】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、果実、野菜、及び花から単離することが好ましい。アントシアニンは、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、コルヌスマス(Cornus mas)から単離することが好ましい。しかしアントシアニンは、チェリーやベリーなどの果実から得ることができる。
【0023】
本発明は、高血糖症の治療を必要とする哺乳動物患者の高血糖症を治療し又は制御するための方法であって、アントシアニン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして投与するステップを含む方法にも関する。
【0024】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、果実、野菜、及び花から単離することが好ましい。アントシアニンは、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、コルヌスマス(Cornus mas)から単離することが好ましい。アントシアニジン、アントシアニン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物は、単離され精製されることが好ましい。
【0025】
本発明は、疾患として、肥満、糖尿病、又は高血糖症の治療に使用される組成物であって、ある期間にわたる前記疾患の治療のための日用量単位のアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸、或いはこれらの混合物と、医薬品担体とを含む組成物にも関する。
【0026】
アントシアニンは、シアニジン−3−グルコシド、デルフィニジン−3−グルコシド、ペラルゴニジン−3−グルコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択することが最も好ましい。アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、果実、野菜、又は花から単離することが好ましい。アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸は、コルヌスマス(Cornus mas)から単離することが好ましい。
【0027】
本発明は、脂質障害、高脂血症、又は低HDLを治療する必要のある哺乳動物患者の、脂質障害、高脂血症、又は低HDLを治療し又は制御するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0028】
本発明は、高コレステロール血症の治療を必要とする哺乳動物患者の、高コレステロール血症を治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0029】
本発明は、高グリセリド血症の治療を必要とする哺乳動物患者の、高グリセリド血症を治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0030】
本発明は、異脂肪血症及び/又は低HDLコレステロールの治療を必要とする哺乳動物患者の、異脂肪血症及び/又は低HDLコレステロールを治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0031】
本発明は、アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする哺乳動物患者のアテローム性動脈硬化症を治療するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、特にサプリメントとして、前記患者に投与するステップを含む方法にも関する。
【0032】
化合物は、コルヌスマス(Cornus mas)であることが最も好ましい。アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物は、この果実又はその他の果実から単離され精製されることが好ましい。
【0033】
治療上活性な本発明の化合物の代謝産物は、特許請求の範囲に記載される親化合物の範囲内である。患者に投与されるとき又は患者に投与された後に、特許請求の範囲に記載される化合物に変換される化合物であるプロドラッグも、特許請求の範囲に記載される活性化合物の範囲内にある。
【0034】
投与及び用量範囲
哺乳類、特にヒトに、有効用量の本発明の化合物を提供するために、任意の適切な投与経路を用いることができる。例えば、経口、直腸、局所、非経口、肺、鼻などを用いることができる。剤形には、錠剤、トローチ、分散体、懸濁体、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどが含まれる。化合物は、経口投与することが好ましい。
【0035】
用いられる有効投薬量の活性成分は、用いられる特定の化合物、投与形態、治療される状態、及び治療される状態の重症度に応じて変えることができる。そのような投薬量は、当業者が容易に確認することができる。
【0036】
肥満、糖尿病、及び/又は高血糖症、或いはその他の疾患を治療し又は予防する場合、本発明の化合物を、動物の体重の1kg当たり約0.1mgから約100mgの日用量で投与したときに、好ましくはこの用量を1日1回与えるものとして、又はこの用量を1日2回から6回に分けて与えるものとして、或いは徐放性剤形として投与したときに、一般に満足のいく結果が得られる。ほとんどの大型哺乳類では、全日用量が約1.0mgから約1000mgであり、好ましくは約1mgから約50mgである。70kgの成人の場合、全日用量は、一般に約7mgから約350mgになる。この投薬計画は、最適な治療応答が得られるように調節することができる。
【0037】
本発明の別の態様は、医薬品組成物、及び医薬品として許容される担体を提供する。本発明の医薬品組成物は、特許請求の範囲に記載された化合物、又は医薬品として許容される塩、又はそのプロドラッグを活性成分として、並びに医薬品として許容される担体、及び任意選択でその他の治療成分を含む。「医薬品として許容される塩」という用語は、無機塩基又は酸と有機塩基又は酸を含めた医薬品として許容される無毒性の塩基又は酸から調製された塩を指す。
【0038】
組成物には、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)、眼球(眼)、肺(鼻又は頬側吸入)、又は鼻投与に適した組成物が含まれるが、任意の所与の場合に最も適切な経路は、治療される状態の性質及び重症度に、また活性成分の性質に左右されることになる。これらは、単回剤形で都合良く与えることができ、薬学分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
【0039】
実用の際には、従来の医薬品配合技法に従い、これらの化合物を、均質混合物の活性成分として、医薬品担体と組み合わせることができる。担体は、投与、例えば経口又は非経口(静脈内を含む)に望まれる製剤の形に応じて、広く様々な形をとることができる。経口剤形用組成物の調製では、例えば懸濁体やエリキシル、及び溶液などの経口液体製剤の場合、例えば水やグリコール、油、アルコール、香料、保存剤、着色剤などの通常の医薬品媒体のいずれかを用いることができ、或いは、例えば粉末や、硬質及び軟質カプセル、錠剤などの経口固体製剤の場合には、デンプンや糖、微結晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を用いることができ、液体製剤よりも固体経口製剤が好ましい。
【0040】
このような投与形態のため、固体医薬品担体が明らかに用いられる錠剤及びカプセルが、最も有利な経口単位剤形になる。望みに応じて、錠剤を、標準的な水性又は非水性技法によりコーティングすることができる。そのような組成物及び製剤は、活性化合物を少なくとも0.1%含有すべきである。これらの組成物中の活性化合物のパーセンテージは、当然ながら変えることができ、単位重量の約2%から約60%の間であることが好都合である。そのような治療上有用な組成物中の、活性化合物の量は、有効投薬量が得られるような量である。活性化合物は、例えば液滴又はスプレーのように、鼻腔内投与することもできる。
【0041】
錠剤、丸薬、カプセルなどは、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチやジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及びマルトデキストリンやラクトース、又はサッカリンなどの甘味剤を含有してもよい。単位剤形がカプセルである場合は、上述のタイプの材料の他に、脂肪油などの液体担体を含有することができる。
【0042】
様々なその他の材料を、コーティングとして、又は剤形の物理的形態を変化させるために含めることができる。例えば錠剤は、シェラック、糖、又はこの両方でコーティングすることができる。シロップ又はエリキシルは、活性成分の他に、甘味剤としてスクロースを、保存剤としてメチル及びプロピルパラベンを、またチェリーやオレンジ風味の香料を含有することができる。
【0043】
化合物は、非経口投与することもできる。これら活性化合物の溶液又は懸濁液は、ヒドロキシル−プロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散液は、油中において、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物中で調製することもできる。貯蔵及び使用の通常の条件下、これらの製剤は、微生物の成長を妨げるために保存剤を含有する。
【0044】
注射可能な使用に適した医薬品形態には、滅菌水溶液又は分散液と、滅菌注射液又は分散液の即時製剤用の滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、この形態は滅菌状態になければならず、注射針から容易に出て行く程度に流動的でなければならない。この形態は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌や真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、これらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体にすることができる。
【0045】
化合物は、疾患又は状態の治療、予防、抑制、又は寛解に役立てることもできるその他の薬物と併せて使用することができる。そのようなその他の薬物は、化合物と同時に又は逐次に、ある経路によって且つそれに一般に使用される量で、投与することができる。化合物を、1種又は複数のその他の薬物と同時に使用する場合、そのようなその他の薬物及び化合物を含有する単位剤形の医薬品組成物が好ましい。しかし併用療法には、式Iの化合物と、1種又は複数のその他の薬物とを、異なる重複スケジュールで投与する療法も含まれる。1種又は複数のその他の活性成分と併せて使用する場合、本発明の化合物及びその他の活性成分は、それぞれを単独で使用する場合よりも、低い用量で使用できるとも考えられる。したがって本発明の医薬品組成物は、化合物の他に1種又は複数のその他の活性成分を含有するものを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、アントシアニン、シアニジン−3−グルコシド、デルフィニジン−3−グルコシド、シアニジン−3−ガラクトシド、及びペラルゴニジン−3−ガラクトシダーゼ;アントシアンジン、シアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン、マルビジン、及びペツニジンが、生体外でげっ歯類膵臓β細胞(INS−1 813/32)を刺激できるかどうかについて開示し、実証している。化合物を、4及び10mMのグルコース濃度の存在下で試験した。シアニジン−3−グルコシド及びデルフィニジン−3−グルコシドは、4及び10mMのグルコース濃度で試験がなされたアントシアニン及びアントシアニジンの中で、最も有効なインスリン分泌促進物質であった。ペラルゴニジン−3−ガラクトシドは、主要アントシアニン及びそのアグリコン、ペラルゴニジンの1種であり、4mMのグルコース濃度でインスリン分泌に1.4倍の増加を引き起こした。試験がなされた残りのアントシアニン及びアントシアニジンは、4及び10mMのグルコース濃度でインスリンに対してごく僅かな効果を発揮した。
【実施例】
【0047】
インスリン刺激の例
材料及び方法
化学物質。ウシ胎児血清(FBS)及びRPMI−1640培地をInvitrogen(Grand Islad,NY)から得た。使用した全ての有機溶媒は、ACS試薬級であった。HEPES、ペニシリン−ストレプトマイシン、グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、2−メルカプトエタノール、トリプシン−EDTA、BSA(ウシ、アルブミン;RIA級)、フォリン−シオカルト試薬、、及び緩衝液の調製に使用される化学物質は、Sigma−Aldrich Chemical Co.(St.Louise,MO)から購入した。アッセイで使用されるアントシアニン、シアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン、マルビジン、及びペツニジンは、Chromadex(Laguna Hills,CA)から購入した。
【0048】
アントシアニン。デルフィニジン−3−グルコシドを、C.オフィシナリス(C.officinalis)の果実から精製した。シアニジン−3−ガラクトシド及びペラルゴニジン−3−ガラクトシドは、C.マス(C.mas)の果実から単離した。本発明の研究で使用される純粋なシアニジン−3−グルコシドは、本発明者らが−20℃で貯蔵したものから得た。
【0049】
アントシアニンの単離及び精製。サンシュユを水(pH=3)とブレンドし、濾過した。濾液を、カラム内のXAD−16AMBERLITE樹脂に通し、吸着されたアントシアニンを含むこの樹脂を、水で繰り返し洗浄した。次いでXAD−16樹脂を酸性MeOH(pH=5)で溶離し、得られた溶液を減圧下で濃縮して、粗製アントシアニン画分を得た。この画分を、勾配条件下、MeOH:H2O(pH=3)を使用してMPLCカラム(C18)により精製した。アントシアニンをMeOH:H2O(65:35、v/v)溶媒系で溶離した。化合物の純度を、勾配条件下でCapcell C18分析カラムを使用して、HPLC(Waters Corp.)によりチェックした。使用した溶媒は、A:TFA:H2O(99.9:0.1;v/v)及びB:H2O:CH3CN:CH3COOH:TFA(50.4:48.5:1.0:0.1;v/v/v/v)であった。勾配は、0.8ml/分の流量で、26分で20%Bから60%Bに、30分で20%Bになった。ピークを、PDAを使用して520nmで検出した。
【0050】
インスリン分泌研究。INS−1 832/13細胞(Christopher Newgard博士、Duke大学、NCから善意で提供された)を、11.1mMグルコースを含有し且つ10%FBS(ウシ胎児血清)、10mM HEPES、100U/mlのペニシリン、100μg/ストレプトマイシン、4mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、及び50μM2−メルカプトエタノールで補われたRPMI1640培地において、37℃の5%CO2/空気中で日常的に培養した。細胞を、トリプシン−EDTAの脱離の後に、毎週植え次いだ。静的分泌研究では、細胞を、1ウェル当たり0.64×106細胞の密度で24ウェルプレート上に蒔き、24時間成長させた。次いでこれらの細胞を、4mMグルコース及び上述のサプリメントを含有するRPMI−1640で、さらに24時間培養した。次いで細胞を、4mMグルコース及び0.1%BSAを含有するクレブスリンガー重炭酸緩衝液(KRBB)中で30分間、2回インキュベートした。細胞を、KRBBで素早く洗浄し、4又は10mMグルコースを含有するKRBB中で、指示されるアントシアニン又はアントシアニジンと共に又は無しで、60分間インキュベートした。次いでインスリン放出を定量するために、培地を除去した。次いで細胞を、PBSで2回洗浄し、1M NaOHに溶解した。次いで細胞タンパク質濃度を、ローリーアッセイにより決定した。アントシアニン及びアントシアニジンをDMSOに溶解して、所望の濃度を得た。DMSOの最終濃度は0.1%であった。細胞によって培地に分泌されたインスリンは、ラジオイムノアッセイにより定量し、総細胞タンパク質量に対して規格化した。
【0051】
ラジオイムノアッセイ(RIA)。RIA用のキットを、LINCO Research Inc.(St Charles,MO)から購入し、このアッセイを、製造業者の指示に従い実施した。簡単に言うと、インスリン標準物質0.1〜10ng(100μl)を、12×75mmの試験管に添加した。同様に、インスリン分泌研究からのサンプル(25μl)も、試験管に添加した。この試験管に、一定分量(75μl)のアッセイ緩衝液を添加した。次いで125Iで標識したインスリン(100μl)を、各試験管に添加した。100μLの抗ラットインスリン抗体の一定分量を試験管に添加し、混合し、4℃で24時間インキュベートし、さらに1mlの一定分量の沈殿試薬と共に、4℃で20分間インキュベートして、抗体に結合したインスリンを沈殿させた。次いで試験管を遠心分離にかけ、γ計数器を使用して放射能を測定した。
【0052】
ローリータンパク質アッセイ。アッセイウェル内のタンパク質の量を、ローリー法によって決定した。ローリーアッセイ溶液は、ローリー溶液、CuSO4・5H2O(1%)、及び酒石酸ナトリム(1%)を一緒にすることによって調製した。簡単に言うと、タンパク質サンプル(100μl)とローリー混合物(1mL)とを試験管(12×75)内で混合した。フォリン−シオカルト試薬(100μl)をこれらの試験管に添加し、混合し、室温で30分間インキュベートした。得られる溶液の光学密度を、UV分光光度計を使用して700nmで読み取った。
【0053】
サンシュユの調査では、サンシュユ中の主な生物活性成分がシアニジン、デルフィニジン、及びペラルゴニジングリコシドであることが示された。したがって、抗糖尿病製剤でのサンシュユの事例的使用を実証するために、膵臓β細胞を使用したこれらアントシアニン及びそのアグリコンのインスリン分泌能力が、注目を集めた。ペツニジン、マルビジン、及びペオニジンアグリコンは、その他の果実で豊富であるので、このアッセイに含まれた。
【0054】
アントシアニンは水溶性化合物である。C.マス(C.mas)果実の水性抽出物は、糖、バイオフラボノイド、及びアントシアニンを含有し、したがってXAD−16樹脂により分画された。樹脂から溶離された、結果的に得られるアントシアニン画分を、MPLCにより精製して、純粋なアントシアニンを得た。INS−1 832/13細胞によるグルコース誘発性のインスリン生成を、4、10、及び16mMのグルコース濃度で決定し、インスリン分泌は、グルコース濃度10mMで誘導期に達したことが見出された(データは図示せず)。4mMレベルのグルコース濃度は、ヒトの正常なグルコース濃度を表している。10mMのグルコースでの、細胞によるタンパク質1mg当たりのインスリン分泌は、4mMのグルコース濃度でのインスリン分泌と比べた場合に3倍高かった。
【0055】
アントシアニン及びアントシアニジンを、細胞成長培地中で、4及び10mMのグルコース負荷で試験した。アントシアニン及びアントシアニジンは、最初に50μg/mLの濃度でアッセイにかけた。アントシアニン、シアニジン3−グルコシドは、タンパク質9ng/mgによって、グルコース4mMでインスリン分泌の増加を示したのに対し(1.3倍)、10mMのグルコース濃度では、1.43倍(119ng/mgタンパク質)だけインスリン分泌を高めた(図2A)。デルフィニジン−3−グルコシドは、試験がなされた最も活性なアントシアニンであり、4mMのグルコース濃度でインスリン分泌の1.8倍の増加(49ng/mgタンパク質)を示した。しかし10mMのグルコースでは、インスリン生成が、わずか1.4倍(113ng)の増加(図2A)であることが示された。このアッセイにおいて、4及び10mMのグルコース濃度で細胞により分泌されたインスリンは、それぞれタンパク質1mg当たりインスリンが27及び83ngであった。アントシアニン、シアニジン−3−ガラクトシド、及びペラルゴニジン−3−ガラクトシドは、4mMのグルコース濃度でインスリン分泌を増加させなかった。しかしシアニジン−3−ガラクトシドは、10mMのグルコース濃度で、17ng/mgタンパク質のインスリン増加(1.2倍)を示した(図3)。ペラルゴニジン−3−ガラクトシダーゼは、サンプルに限りがあるので1回だけ試験をした。
【0056】
アントシアニン、シアニジン−3−グルコシドについて、5、10、50、100、及び250μg/mL濃度での用量依存性インスリン分泌の評価をした。このアッセイで使用されるグルコース濃度は、ヒトの正常なグルコース濃度を表す4mMレベルであった。この濃度で、未処理の細胞は、33ngインスリン/mgタンパク質を分泌した。シアニジン−3−グルコシドで処理した細胞によって分泌されたインスリンは、5μg/mLで、タンパク質1mg当たりインスリン46ngであった。しかし、化合物1の濃度が10、50、100、及び250μg/mLでは、インスリン分泌に有意な差はなかった。用量依存性アッセイを実施するための、デルフィニジン−3−グルコシドの十分な供給はなかった。
【0057】
アントシアニジンを、50μg/mL濃度でアッセイにかけた。シアニジン−3−グルコシドのアグリコン、シアニジンは、グルコース4mMでインスリン分泌を1.5倍(29ng/mgタンパク質)高めたのに対し、グルコース10mMでは、88ng/mgタンパク質を分泌した(図2B)。このアッセイの組において、4及び10mMのグルコースでは、未処理の細胞が、それぞれ19及び83ngインスリン/mgタンパク質を分泌した。アグリコンデルフィニジンは、4mMのグルコース濃度で6ng/mgタンパク質だけインスリン分泌の増加を示したが、これは有意なものではなかった。デルフィニジンは、10mMのグルコースでは、グルコース誘導性のインスリン分泌を示さなかった(図2B)。ペラルゴニジンは、最も活性なアントシアニンであり、4及び10mMのグルコースでそれぞれ49(1.4倍)及び91(1.2倍)ngインスリン/mgタンパク質を分泌した(図3)。アグリコン、ペツニジンは、4mMのグルコース濃度で4ngインスリン/mgタンパク質だけ分泌を増加させた。しかしマルビジンは、未処理の細胞についてはインスリン分泌の増加を示さなかった。
【0058】
結果は、アントシアニンとアントシアニジンの両方が、インスリン分泌促進物質であることを示唆した。これらの中で、デルフィニジン−3−グルコシドが最も強力であり、未処理の細胞に比べ、4及び10mMのグルコース濃度でインスリン分泌を著しく誘発させた。シアニジン−3−グリコシドは、より低いグルコース濃度ではデルフィニジン−3−グルコシドよりも活性が低かったが、より高いグルコース濃度では、より活性であった。ガラクトシドの中でもペラルゴニジン−3−ガラクトシドは、研究された4及び10mMのグルコース濃度でインスリン分泌を誘発しなかったのに対し、シアニジン−3−ガラクトシドは、インスリン分泌の著しい増加を示した。研究されたアントシアニンがインスリンを分泌する能力は、その増大順に、デルフィニジン−3−グルコシド>シアニジン−3−グルコシド>ペラルゴニジン−3−ガラクトシドであった。これは、アントシアニンのB環のヒドロキシル基の数が、インスリンを分泌するその能力に重要な役割を演ずることを示した。試験をしたアントシアニンの中で、ペラルゴニジンは、4mMのグルコースのときに最も活性であった。その他のアグリコンは、研究された4又は10mMのグルコース濃度で著しいインスリンの分泌を可能にしなかった。
【0059】
結果は、果物及び野菜から単離され精製されたアントシアニン及びアントシアニジンが、糖尿病の治療に有用であることを示唆している。
【0060】
肥満の治療の実施例
C.マス(C.mas)果実からのアントシアニン(図9)、ウルソール酸、及びベツリン酸を精製し、高脂肪の食餌の摂取からもたらされる肥満及びインスリン抵抗性を予防する薬剤として、C57BL/6Jトランスジェニックマウスを使用することによりその効力を評価した。マウスには、最初に4週間にわたって高脂肪の食事を与え、次いで続く8週間は、試験化合物を含有する高脂肪の食餌に切り替えた。グルコース負荷試験(GTT)では、高脂肪の食餌の対照マウスがインスリン抵抗性を持ち、アントシアニン及びウルソール酸で治療したマウスはインスリン抵抗性を克服したことが明らかになった。治療期間中の、高脂肪の食餌(60% kcal)を与えた対照マウスの平均体重増加は、9.76±0.55gであるのに対し、アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸で治療したマウスは、それぞれ7.41±0.93g、7.73±0.44g、及び8.78±0.96gであった。アントシアニン及びベツリン酸で治療したマウスのコレステロール値は、対照動物よりも著しく低下した。アントシアニン及びベツリン酸で治療した動物の血漿インスリン濃度は、それぞれ567±32.36及び460.86±93.68ng/mLであるのに対し、ウルソール酸で治療した動物は、対照動物に比べて52.25±8.84ng/mLのインスリンを示した。この生体内研究では、アントシアニンが優れたインスリン分泌促進物質であり、総コレステロールを低下させることに加えて、肥満及びインスリン抵抗性の予防に有益となり得ることが確認された。
【0061】
実験手順
アントシアニンの精製:シアニジンガラクトシド、ペラルゴニジンガラクトシド、及びデルフィニジンガラクトシドを、既に開示したように、C.マス(C.mas)果実からのアントシアニンの純粋な混合物として単離した。簡単に言うと、種子を分離し、得られた果肉を水(pH=3)と混合し、濾過した。得られた濾液をXAD−16 AMBERLITE樹脂に吸着させ、水で繰り返し洗浄して、糖及びその他の有機酸を除去した。次いで吸着されたアントシアニンを、酸性MeOH(pH=3)で溶離した。このように得られたアントシアニン混合物を、勾配条件下でMeOH:H2O(pH=3)を使用する中圧液体クロマトグラフィ(MPLC)カラム(C18シリカ)により精製した。溶媒系MeOH:H2O(65:35、v/v)で溶離した画分を収集し、真空中で蒸発乾燥した。アントシアニンの純度は、Capcell C18分析カラムを使用してHPLC(Waters Corp.)により確認し、520nm(PDA、Waters Corp.)で検出した。
【0062】
ベツリン酸の単離:C.mas(C.マス)果実(5kg)からの種子(700g)を分離し、凍結乾燥し、n−ヘキサン(3×1L)、酢酸エチル(3×1L)、及びメタノール(3×1L)で続けて抽出した。EtOAc抽出物(3.0g)を、n−ヘキサン及びEtOAcを移動相として用いて勾配条件下でシリカゲルMPLCにより精製した。ヘキサン−EtOAc(7:3)溶離から収集された画分を蒸発乾燥し、MeOHからの結晶化によってベツリン酸(2.5g)が得られた。
【0063】
ウルソール酸の単離:凍結乾燥した果肉及び皮を、n−ヘキサン(3×1L)、EtOAc(3×1L)、及びMeOH(3×1L)で続けて抽出した。EtOAc(3.5g)抽出物を、n−ヘキサン及びEtOAc勾配を使用したカラムクロマトグラフィにより精製した。ヘキサン−EtOAc(7:3)溶離液を真空中で蒸発乾燥し、MeOHから得られた残留物の結晶化によって、ウルソール酸(2.2g)が得られた。ウルソール酸とベツリン酸の両方を、1H及び13C NMRスペクトル実験によって特徴付けた(Werner,S.,Nebojsa,S.,Robert,W.,Robert,S.,及びOlaf,K.(2003)オレアノール酸、18α−オレアノール酸、ウルソール酸、及びこれらの11−オキソ誘導体の、1H及び13C NMR共鳴の完全帰属(Complete assignments of 1H and 13C NMR resonances of oleanolic acid,18α−oleanolic acid,ursolic acid and their 11−oxo derivatives) Mag.Res.Chem.41、636〜638)。
【0064】
動物及び食餌:4週齢のオスC57BL/6Jマウスを、Jackson Laboratories(Bar Harbor,Maine,USA)から購入した。これらのマウスを個々に、制御温度下(70°F)で且つ12時間の明暗サイクルで収容した。マウス(n=40)は、5日間にわたり、水及び実験室用の精製されていない食餌を自由に摂ることができた。順化後、研究のために、マウスを無作為にグループ1〜5(n=8)に分けた。実験は、ミシガン州立大学(East Lansing,MI)の大学実験動物資源局(ULAR)の倫理指針に従って実施した。10%kcal(普通)及び60%kcal(高脂肪)の食餌はResearch Diets(New Brunswick、NJ)から購入した。食餌の組成を表1に示す。
表1.普通食(105kcal)及び高脂肪食(60%kcal)の組成
【表1】
【0065】
対照は、グループ1及び2であり、研究の全体を通してこれらに普通食(10%kcal)及び高脂肪食(60%kcal)をそれぞれ与えた。食物は、純粋なアントシアニン混合物1g、即ち高脂肪の食餌1kg当たりベツリン酸及びウルソール酸をそれぞれ500mg混合することによって、各治療ごとに別々に調製した。治療グループ3〜5には、最初に4週間にわたって高脂肪の食餌を与え、次いでアントシアニン、ベツリン酸、又はウルソール酸を含有する食餌に切り替えた。食物は、脂肪又は化合物の酸化を避けるために、3日おきに交換した。各動物ごとの、毎日の食物摂取量(図1)及び毎週の体重を、研究の全体を通して決定した(図2A〜C)。
【0066】
血清、肝臓、及び脂肪組織の収集。食餌の供給は、12週間後に停止した。次いで動物に、イソフルランを使用して麻酔をかけ、屠殺し、心臓穿刺によって血液をヘパリン化チューブに収集した。血漿を、4℃で10分間、1600×gでの遠心分離によって分離し、すぐに凍結して、使用まで−20℃で貯蔵した。肝臓及び精巣上体の白色脂肪組織(WAT)を、解剖学的標識に従って収集し、計量し、すぐに液体窒素中で凍結させた。四肢の筋肉も収集し、液体窒素中で凍結させた。膵臓を収集し、最適切断温度(O.C.T)で貯蔵し(Sakura Finetek,Inc.,CA)、液体窒素中で凍結させた。次いで全ての組織を液体窒素から移し、分析まで−80℃で貯蔵した。
【0067】
グルコース負荷試験(GTT)。グルコース負荷試験は、補充の6週間後に、各グループ(n=5)からの5匹の動物に対して行った。血糖値を、試験片(Free Style,TheraSense,Inc.,CA)を使用して、Free Style Flash(TheraSense,Inc.,CA)手持ち式グルコメータにより時間0(分)で測定した。GTTでは、体重1kg当たりグルコース2gを含有する滅菌溶液を、腹腔内(i.p.)注射した。尾静脈血を収集し、グルコース濃度を5、10、15、30、60、及び90分でそれぞれ測定した。血糖値を、時間に対してプロットした(図3)。
【0068】
ラジオイムノアッセイ(RIA)。血漿インスリン濃度を、LINCO Research Inc.(St Charles,MO)から購入したラットインスリンRIAキットで測定した。インスリン標準物質(100μlの一定分量)を、12×75mmの試験管にピペット分注した。0.1〜10ng/mLに及ぶ、合計で10種のインスリン濃度を使用して、標準曲線を決定した。血漿サンプル(一定分量1〜25μl)を試験管に添加し、アッセイ緩衝液を添加して、全サンプル体積を100μlにした。125Iで標識したインスリン及び抗ラットインスリン抗体(それぞれ100μL)を試験管に添加し、混合し、4℃でインキュベートした。24時間後、沈殿試薬(1mL)を添加し、再び4℃で20分間インキュベートして、抗体に結合したインスリンを沈殿させた。次いで試験管を、20分間3000gで遠心分離にかけ、デカントし、γ計数器を使用して放射能を測定した。
【0069】
血漿コレステロールの決定:総血漿コレステロールを、総コレステロールに関して確立された標準的な分析プロトコルに従って、ミシガン州立大学獣医学部、Diagnostic Center for Population and Animal HealthのClinical Pathology Laboratoryにより分析した。
【0070】
結果及び考察
セイヨウサンシュユとしても知られるコルヌスマス(Cornus mas)果実は、タルトチェリー(P.cerasus)に類似している。この植物のフィトケミカル試験は、主要なアントシアニンとして、ペラルゴニジンガラクトシド、シアニジンガラクトシド、及びデルフィニジンガラクトシドを(Seeram,N.P.,Schutzki,R.,Chandra,A.,及びNair,M.G.(2002)ミズキ(Cornus)種のアントシアニンの特徴付け、定量化、及び生物活性(Characterization,quantification,and bioactivities of anthocyanins in Cornus species)J.Agric.Food Chem.50,2519〜2523)、またウルソール酸やベツリン酸などのトリテルペノイドをもたらした。トランスジェニックモデルマウスは、代謝及び内分泌障害を研究するためのモデルとして定期的に用いる。使用したC57BL/6Jモデルマウスは、レプチン受容体変異にとって同種接合であり、過食症、肥満、高インスリン血症、及び高血糖症を発症する(Coleman,D.(1978)肥満及び糖尿病:マウスにおいて糖尿病−肥満症候群を引き起こす2つの変異遺伝子(Obese and diabetes:two mutant genes causing diabetes−obesitysyndromes in mice)Diabetologia 14,141〜148)。したがって、マウスには、C.マス(C.mas)から精製されたアントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸を与えて、食餌誘導性の肥満及びインスリン抵抗性を予防する際のその効力を評価した。動物には、高脂肪の食餌を4週間与え、その後に8週間、高脂肪の食餌に組み込んだ化合物での治療を行った。対照グループの動物には、普通食又は高脂肪食のいずれかを与えた。
【0071】
体重及び食物摂取量。グループ1の動物に関する食物摂取量は、最初の3週間が約4.5gであり、次いで1日当たり約3.5gに減少し(図1)、実験が終わるまで安定したままであった。グループ2の動物に関する食物摂取量は、実験全体を通して安定しており、1日当たり約2.8gであった(図1)。この結果から、試験化合物は、動物の食物摂取量に影響を及ぼさなかったことが明らかである。グループ3〜5の動物による食物摂取量も、実験全体を通して約2.8gであった(図1)。
【0072】
グループ1(普通食)及び2(高脂肪食)の動物の体重は著しく異なっており、その平均体重はそれぞれ31.5g及び36.91gであった。化合物1(グループ3)、2(グループ4)、及び3(グループ5)で処理した高脂肪の食餌の動物は、それぞれ34.19g、33.54g、及び34.89gの重さであった(図2A〜図2C)。グループ1及び2の動物に関する実験期間(12週間)中の全体重増加は、それぞれ13.94g及び18.98gであった。同様に、グループ3、4、及び5の動物は、それぞれ体重が15.91g、15.16g、及び17.45g増加した。治療期間中の、これらの動物により得られた体重増加は、それぞれ7.41g、7.73g、及び8.78グラムであるのに対し、グループ1及び2の対照は、体重増加がそれぞれ6.63g及び9.76gであることを示した。
【0073】
グルコース負荷試験。グルコース負荷試験(GTT)を、グルコース溶液(2g/kg)の腹腔内(i.p.)注射により実施した。グルコースを注射した動物の血糖値は、5、10、15、30、60、及び90分間隔で尾静脈から血液を引き出すことにより決定した。これらのグループの中で、0時間での血糖値は、ほとんど同一であった。低脂肪及び高脂肪の対照グループ(1及び2)の初期グルコース濃度は、それぞれ133.8±15.37mg/dL及び119.8±7.24mg/dLであった(図3)。化合物10〜13で治療した動物で決定された血糖値は、それぞれ123.4±4.65mg/dL、123.4±6.0mg/dL、及び113.5±15.5.16mg/dLであった。血糖濃度は、ウルソール酸で治療した動物を除き、全てのグループにおいて、グルコース注射後30分で最大に達した。またグルコース吸収は、このグループでは遅く、血糖濃度は60分で最大に達した。グルコース負荷の90分後、普通食及び高脂肪食を与えた動物の血糖値は、それぞれ190±6.31mg/dL及び363±19.76mg/dLであった。同様に、グループ3〜5の動物の血糖値は、それぞれ221±31.5、317.8±21.9、及び227±22.982であった。
【0074】
血漿インスリン濃度:血漿インスリンを、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用して測定した(Qian,D.,Zhu,Y.,及びZhu,Q.(2001)ハルコガネバナ(Cornus officinalis Sieb.et Zucc)のアルコール抽出物が、2型(非インスリン依存性)糖尿病ラットの骨格筋でのGLUT4発現に及ぼす影響(Effect of alcohol extract of Cornus officinalis Sieb.et Zucc on GLUT4 expression in skeletal muscle in type 2(non−insulin−dependent)diabetes mellitus rats)Zhongguo Zhongyao Zazhi 26,859〜862)。対照動物、グループ1及び2に関して測定したインスリン濃度は、それぞれ0.47±0.14ng/mL及び0.41±0.1ng/mLであるのに対し(図4)、アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸で治療した動物は、それぞれ567.98±32.36ng/mL、460±93.68ng/mL、及び52.25±8.84ng/mLのインスリンを示した。
【0075】
空腹時血糖:普通食及び高脂肪食の対照の、空腹時血糖を測定して、高脂肪の食餌を摂取した動物が糖尿病であるか否か決定した。動物に、食物を6時間与えず、尾静脈から収集した血液からグルコース濃度を決定した。普通食(n=8)及び高脂肪食(n=8)の動物のグルコース濃度は、それぞれ126.6±4.6mg/dL及び125±5.19mg/dLであった。
【0076】
血漿コレステロール:普通食及び高脂肪食の対照の血漿コレステロール濃度は、それぞれ120.5±10.61mg/dL及び156.4±8.26mg/dLであった。アントシアニン及びベツリン酸で治療した動物のコレステロールは、それぞれ134.2±15.5mg/dL及び126.5±14.01mg/dLであった(図5)。
【0077】
高脂肪食のみの動物及び試験化合物を含有する高脂肪食の動物の食物摂取量は、研究の全体を通して変化しなかった。普通食の対照動物が、高脂肪食の動物よりも多くの食物を摂取したことに注目することは興味深い。高脂肪食の対照及び治療グループによるカロリー摂取量が、1日当たり約14.56kcalであるのに対し、普通食の対照は、1日当たり13.3kcalを摂取した。
【0078】
アントシアニンを含有する食餌が与えられた動物は、高脂肪食の対照に比べて体重が著しく減少することを示した。アントシアニン及びベツリン酸を与えた動物で観察される体重減少は、それぞれ24%及び21%であった(図5A及び5B)。しかし、ウルソール酸を与えた動物で観察された体重減少は、高脂肪食の対照に比べて有意なものではなかった。アントシアニン及びベツリン酸で治療した動物の血漿は、高脂肪食の対照に比べて総コレステロールが著しく減少することを示した(図5)。ウルソール酸で治療した動物からの血漿は、総コレステロールアッセイを終了させるのに十分ではなかった。グループ2〜5の動物の食物摂取量は、研究の全体を通して類似しており、したがってアントシアニンを与えた動物で観察される体重減少は、アントシアニンを肥満の予防に利用できる可能性があることを示唆していた。
【0079】
グルコース負荷試験(GTT)を全ての動物に対して実施して、インスリン抵抗性を決定した(図6)。ウルソール酸が、治療した動物の体重を著しく減少させなかったとしても、このグループの全ての動物は、普通食を与えた対照グループ動物に類似したグルコース濃度を補正した。アントシアニンによる治療は、血糖濃度が30分で最大に達すること以外、GTTアッセイでのウルソール酸による治療の場合と同様の効果を示した。ウルソール酸で治療した動物の血糖値(グループ5)は60分で最大に達し、ウルソール酸がグルコース吸収を遅らせることができることを示している。したがってウルソール酸は、グルコースの吸収を遅らせることができるので、2型糖尿病患者に摂取される有用な生成物になり得る。90分で、アントシアニン及びウルソール酸で治療した動物の血糖値は、低脂肪食が与えられた対照グループと同様になった。しかし、ベツリン酸で治療した動物はGTTに応答せず、その結果は、高脂肪食が与えられた対照グループと同様であった。高脂肪食を与えた動物の場合、血糖濃度は30分で最大に達し、90分まで安定なままであったが、これは、これらの動物がインスリン抵抗性であることを示している。
【0080】
図9の化合物10〜15で治療した動物の血漿インスリン濃度は、普通食及び高脂肪食を与えた対照動物(図4)よりも著しく高かった。アントシアニンで治療した動物のインスリン分泌の増加は、数々の治療の中で最も大きかった。アントシアニンで治療した動物によるインスリン分泌は、ウルソール酸で治療した動物に比べて10倍以上であった(図7)。結論として、C.mas(C.マス)果実から単離したアントシアニンは、高脂肪食の動物の体重減少に関し、研究がなされた3種の化合物のうち最良のものであった。また、低血糖症を引き起こすことなく、膨大な量のインスリン分泌も誘発させた。
【0081】
アントシアニン及びアントシアニジンの分離及び生成のための方法は、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第6,194,469号;同第6,423,365号;同第6,623,743号;同第6,676,978号;及び同第6,656,914号と、2002年2月27日出願の米国特許出願第10/084,575号に記載されている。
【0082】
前述の内容は、本発明の単なる例示であり、本発明は、本明細書に添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】アントシアニン1〜4及びアントシアニジン5〜9の構造を示す図である。
【図2A】化合物1及び2によるタンパク質1mg当たりの分泌されたインスリンの量を示すグラフである。アッセイウェルでの最終DMSO濃度は0.1%であった。示される結果は、3回又は5回の独立した実験の平均であり、各サンプルについて重複してアッセイを行った。化合物1、2によるインスリン分泌は、t検定を使用してLSDにより決定されるように、*(95%又はp≦0.05)で著しかった。
【図2B】4mM及び10mMのグルコースの存在下、化合物5及び6によるタンパク質1mg当たりの分泌されたインスリンの量を示すグラフである。アッセイウェルでの最終DMSO濃度は0.1%であった。示される結果は、3回又は5回の独立した実験の平均であり、各サンプルについて重複してアッセイを行った。化合物5、6によるインスリン分泌は、t検定を使用してLSDにより決定されるように、**(99%又はp≦0.01)で著しかった。
【図3】4mM及び10mMのグルコース濃度で、化合物3、7〜9により分泌されたインスリンを示すグラフである。分泌されたインスリンの量を、mgタンパク質に対して規格化した。アッセイウェルでの最終DMSO濃度は0.1%であった。示される結果は、3回の独立した実験の平均であり、各サンプルについて重複してアッセイを行った。化合物3、7〜9によるインスリン分泌は、t検定を使用してLSDにより決定されるように、*(95%又はp≦0.05)で著しかった。
【図4】肥満に関する12週間の研究での、動物の食物摂取量(単位g)を示すグラフである。値は、平均±SEM、n=8である。食物摂取量を毎日測定し、毎週平均を出した。高脂肪(HF、60%kcal 脂肪)対照グループと治療グループとの間には、有意な差はなかった。治療グループは、高脂肪の食餌を4週間摂り、その後に試験化合物、高脂肪の食餌のアントシアニン(1.0g/kg)、ベツリン酸及びウルソール酸(それぞれ0.5g/kg)と混合した食餌に切り替えた。普通食は、10%kcalを含有していた。
【図5A】12週間食餌を与える間の、肥満研究中のC57BL/6Jマウスの体重変化を示すグラフである。普通食及び高脂肪食の対照は、実験中のこれらの食餌において、それぞれ10%及び60%kcalを摂った。アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸を別々に、それぞれ食物1kg当たり1.0、0.5、及び0.5gで高脂肪の食餌に混合した。化合物で治療したグループには、最初に高脂肪の食餌(60%kcal)を4週間与え、次いで適切な治療薬を含有する食餌に切り替えた。データは、平均±SEM、n=8を表す。
【図5B】12週間食餌を与える間の、肥満研究中のC57BL/6Jマウスの体重変化を示すグラフである。普通食及び高脂肪食の対照は、実験中のこれらの食餌において、それぞれ10%及び60%kcalを摂った。アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸を別々に、それぞれ食物1kg当たり1.0、0.5、及び0.5gで高脂肪の食餌に混合した。化合物で治療したグループには、最初に高脂肪の食餌(60%kcal)を4週間与え、次いで適切な治療薬を含有する食餌に切り替えた。データは、平均±SEM、n=8を表す。
【図5C】12週間食餌を与える間の、肥満研究中のC57BL/6Jマウスの体重変化を示すグラフである。普通食及び高脂肪食の対照は、実験中のこれらの食餌において、それぞれ10%及び60%kcalを摂った。アントシアニン、ベツリン酸、及びウルソール酸を別々に、それぞれ食物1kg当たり1.0、0.5、及び0.5gで高脂肪の食餌に混合した。化合物で治療したグループには、最初に高脂肪の食餌(60%kcal)を4週間与え、次いで適切な治療薬を含有する食餌に切り替えた。データは、平均±SEM、n=8を表す。
【図6】グルコース負荷後の90分にわたる、肥満研究におけるグルコース負荷試験の結果を示すグラフである。試験は、食餌を与えた第11週目に実施した。グルコースの水溶液(2g/kg体重)を腹腔内投与し、血糖値を、0、5、15、30、60、及び90分のときに測定した。血液を尾静脈から採取した。垂直な棒は、各データポイントn=5でのS.E.である。
【図7】食餌実験の終わりに決定された、C57BL/6Jマウスの血漿インスリン濃度を示すグラフである。低及び高脂肪の食餌の対照グループに関して決定された血漿インスリン濃度は、それぞれ0.47±0.14及び0.41±0.1ng/mLであった。血漿中のインスリンの定量化は、ラジオイムノアッセイ(RIA)により実施した。各サンプルについて二重にアッセイを行い、値は、n=8の場合の平均±SEMを表す。
【図8】食餌研究の終わりに採取された血漿における、マウスの血漿コレステロール濃度を示すグラフであり、単位をmg/dLで表す。ウルソール酸で治療した動物のコレステロール濃度に関しては、血漿サンプルの量が不十分であるので試験をしなかった。これらの値は、n=4又は5の場合の平均±SEMを表す。
【図9】10から12種のコルヌスマスL(Cornus mas L.)から単離された化合物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満の治療を必要とする哺乳動物患者の肥満を制御するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
糖尿病であり且つ糖尿病の処方薬で治療しているヒト患者の肥満を治療するための方法であって、前記処方薬と併せてアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む有効量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項3】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、果物、野菜、及び花から単離される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アントシアニンが、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、コルヌスマス(Cornus mas)から単離される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
アントシアニジン、又はアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物を、単離し、精製する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
自然源から得られ、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
糖尿病を制御するために、糖尿病の治療を必要とする哺乳動物患者の糖尿病を治療するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項9】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、果物、野菜、及び花から単離される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アントシアニンが、シアニジン−3−グリコシド、デルフィンジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、コルヌスマス(Cornus mas)から単離される請求項8に記載の方法。
【請求項12】
組成物が、自然源から得られ、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項8に記載の方法。
【請求項13】
糖尿病が1型である請求項8に記載の方法。
【請求項14】
糖尿病が2型である請求項8に記載の方法。
【請求項15】
高血糖症の治療を必要とする哺乳動物患者の高血糖症を治療し又は制御するための方法であって、アントシアニン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項16】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、果物、野菜、及び花から単離される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アントシアニンが、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、コルヌスマス(Cornus mas)から単離される請求項15に記載の方法。
【請求項19】
アントシアニジン、アントシアニン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物を、単離し、精製する請求項15に記載の方法。
【請求項20】
組成物が、自然源から得られ、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項15に記載の方法。
【請求項21】
疾患としての、肥満、糖尿病、又は高血糖症の治療に使用される組成物であって、
(a)ある期間にわたる前記疾患の治療のための、日用量単位のアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸、或いはこれらの混合物と、
(b)医薬品担体と
を含む組成物。
【請求項22】
アントシアニンが、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、果物、野菜、又は花から単離される請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、コルヌスマス(Cornus mas)から単離される請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
自然源から単離され、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
脂質障害、高脂血症、又は低HDLの治療を必要とする哺乳動物患者の、脂質障害、高脂血症、又は低HDLを治療し又は制御するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項27】
高コレステロール血症の治療を必要とする哺乳動物患者の高コレステロール血症を治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項28】
高グリセリド血症の治療を必要とする哺乳動物患者の高グリセリド血症を治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項29】
異脂肪血症及び/又は低HDLコレステロールの治療を必要とする哺乳動物患者の、異脂肪血症及び/又は低HDLコレステロールを治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項30】
アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする哺乳動物患者のアテローム性動脈硬化症を治療するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項31】
化合物が、コルヌスマス(Cornus mas)由来である請求項26、27、28、29、又は30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物を、単離し、精製する請求項26、27、28、29、又は30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
組成物が、自然源から得られ、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項26、27、28、又は29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
肥満の治療を必要とする哺乳動物患者の肥満を制御するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
糖尿病であり且つ糖尿病の処方薬で治療しているヒト患者の肥満を治療するための方法であって、前記処方薬と併せてアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む有効量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項3】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、果物、野菜、及び花から単離される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アントシアニンが、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、コルヌスマス(Cornus mas)から単離される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
アントシアニジン、又はアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物を、単離し、精製する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
自然源から得られ、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
糖尿病を制御するために、糖尿病の治療を必要とする哺乳動物患者の糖尿病を治療するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項9】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、果物、野菜、及び花から単離される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アントシアニンが、シアニジン−3−グリコシド、デルフィンジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、コルヌスマス(Cornus mas)から単離される請求項8に記載の方法。
【請求項12】
組成物が、自然源から得られ、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項8に記載の方法。
【請求項13】
糖尿病が1型である請求項8に記載の方法。
【請求項14】
糖尿病が2型である請求項8に記載の方法。
【請求項15】
高血糖症の治療を必要とする哺乳動物患者の高血糖症を治療し又は制御するための方法であって、アントシアニン、ウルソール酸、ベツリン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項16】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、果物、野菜、及び花から単離される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アントシアニンが、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、コルヌスマス(Cornus mas)から単離される請求項15に記載の方法。
【請求項19】
アントシアニジン、アントシアニン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物を、単離し、精製する請求項15に記載の方法。
【請求項20】
組成物が、自然源から得られ、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項15に記載の方法。
【請求項21】
疾患としての、肥満、糖尿病、又は高血糖症の治療に使用される組成物であって、
(a)ある期間にわたる前記疾患の治療のための、日用量単位のアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸、或いはこれらの混合物と、
(b)医薬品担体と
を含む組成物。
【請求項22】
アントシアニンが、シアニジン−3−グリコシド、デルフィニジン−3−グリコシド、ペラルゴニジン−3−グリコシド、及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、果物、野菜、又は花から単離される請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
アントシアニン、ウルソール酸、又はベツリン酸が、コルヌスマス(Cornus mas)から単離される請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
自然源から単離され、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
脂質障害、高脂血症、又は低HDLの治療を必要とする哺乳動物患者の、脂質障害、高脂血症、又は低HDLを治療し又は制御するための方法であって、アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項27】
高コレステロール血症の治療を必要とする哺乳動物患者の高コレステロール血症を治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項28】
高グリセリド血症の治療を必要とする哺乳動物患者の高グリセリド血症を治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項29】
異脂肪血症及び/又は低HDLコレステロールの治療を必要とする哺乳動物患者の、異脂肪血症及び/又は低HDLコレステロールを治療し又は制御するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項30】
アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする哺乳動物患者のアテローム性動脈硬化症を治療するための方法であって、単離されたアントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物からなる群から選択された化合物を含む治療上有効な量の組成物を、前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項31】
化合物が、コルヌスマス(Cornus mas)由来である請求項26、27、28、29、又は30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
アントシアニン、アントシアニジン、ウルソール酸、ベツリン酸、又はこれらの混合物を、単離し、精製する請求項26、27、28、29、又は30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
組成物が、自然源から得られ、前記自然源中に存在する糖及び酸を本質的に含まない請求項26、27、28、又は29のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2008−508284(P2008−508284A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523680(P2007−523680)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/026220
【国際公開番号】WO2006/031293
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(594114134)ミシガン ステイト ユニバーシティー (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/026220
【国際公開番号】WO2006/031293
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(594114134)ミシガン ステイト ユニバーシティー (22)
【Fターム(参考)】
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