説明

肥満及び糖尿病を含む心臓血管障害を治療するために有用なカンナビノイド受容体アンタゴニスト/インバ−スアゴニスト

本発明は、カンナビノイド受容体アンタゴニスト及びその医薬組成物として有用な新規ピラゾ−ル並びに肥満、糖尿病、及び/又は心臓代謝障害を治療するために前記のものを使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビノイド受容体アンタゴニスト/インバ−スアゴニスト及びその医薬組成物及び肥満、糖尿病、及び/又は心臓代謝障害を治療するために前記のものを使用する方法を提供する。本発明は、ピラゾリンを使用する肥満、糖尿病、及び/又は心臓代謝障害を治療するために前記のものを使用する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、35U.S.C.§119(e)のもとに2006年5月5日出願の米国特許仮出願第60/798,001号の優先権を主張する。本開示はこの出願を参照により本明細書中に組み込む。
【0003】
肥満は、脂肪組織の総量(即ち、体脂肪)、特に腹部に局在する脂肪組織における増加に関連する。米国では肥満が蔓延しいる。肥満者数は、年を経るにしたがい全ての人種及び民族の間で着実に増加してきている。米国疾病予防管理センタ−及び国立健康統計センタ−からのごく最近の大部分のデ−タは、成人人口の66%が過体重(BMI、25.0〜29.9)、31%が肥満(BMI、30〜39.9)、及び5%が極端に肥満(BMI、≧40.0)と報告している。6歳から19歳までの小児の間で、32%が過体重、17%が肥満と報告されている。これは、1億2千4百万人のアメリカ人が医学的に過体重であり、また4千4百万人のアメリカ人が肥満であるらしいと解釈される。肥満は、米国における年間300,000人を超える死亡の原因であり、また予防可能であった死亡の主要な原因の一つである。肥満は、2型糖尿病、心臓血管疾患、炎症性疾患、早老、及び幾つかの形態の癌を含む多数の危険な共存症の直接の原因となる慢性疾患である。2型糖尿病は、深刻な生命を脅かす障害であって、成人及び小児両方の人口で罹患率が増大し、現在米国における7番目の主要な死因である。2型糖尿病患者の80%超が過体重であるから、肥満は、2型糖尿病を発生させる最大の危険因子である。増加する臨床的証明は2型糖尿病を制御する最良の方法は体重を減少させることであることを示している。
【0004】
肥満治療のための最も一般的な店頭薬、フェニルプロパノ−ルアミン及びエフェドリン、及び最も一般的な処方薬、フェントフルラミンは、安全性の懸念の結果として、市場から除外された。肥満の長期治療のために最近承認された薬剤は、2つの分類に入る:(a)シブトラミンなどのCNS食欲抑制剤、及び(b)オルリスタットなどの腸リパ−ゼ阻害剤。CNS食欲抑制剤は、脳中の「満腹中枢」の活性化及び/又は脳中の「空腹中枢」の阻害により摂食行動を低下させる。腸リパ−ゼ阻害剤は、胃腸(GI)管からの食事性脂肪の吸収を減少させる。シブトラミン及びオルリスタットは非常に異なった機構によって作用するが、それらは共通して、全身的循環に達するカロリ−量を減少させることにより体重を減少させるという同じ全体的目標を共有する。残念ながら、これらの間接療法は、中程度の初期体重減少を生ずるだけで(プラセボに比較して約5%)、それは通常維持されない。1又は2年治療の後、大部分の患者は、彼らの初めの体重に戻るか又はそれを越える。それに加えて、大部分の承認された抗肥満療法は、治療を複雑化して患者の生活の質を妨げ得る、望ましくない且つしばしば危険な副作用を生ずる。
【0005】
治療有効性の欠如は、急増する肥満の蔓延と相まって、「肥満治療」を最大且つ最も緊急の未だ対処されていない医学的必要性の一つと位置づける。したがって、肥満を治療又は予防する改良された薬物療法の開発に対する現実の且つ継続する必要性が存在する。
【0006】
カンナビノイド受容体(CB1及びCB2)及びそれらの内在性リガンド(例えば、アナンダミド、2−AG)からなる内在性カンナビノイド系は、食物摂取及びエネルギ−代謝の制御において突出した役割を演ずる。CB1受容体は皮質、海馬、扁桃体、下垂体及び視床下部を含む脳中で広く発現している。CB1受容体は、甲状腺、副腎、生殖器官、脂肪組織、肝臓、筋肉、及び胃腸管を含む多数の末梢器官及び組織中でも同定されている。CB2受容体は、殆ど免疫及び血液細胞中だけに局在している。EndOcrine Reviews 2006,27,73を参照されたい。
【0007】
植物由来のカンナビノイドアゴニスト、マリフアナの主要な向精神成分Δ−テトラヒドロカンナビノ−ル(Δ−THC)は、CB1及びCB2受容体の両者に結合する。Δ−THCは、ヒト及び動物で食欲及び食物摂取を増大させる(過食症)と広く報告されている。この食欲亢進効果は、選択的CB1受容体アンタゴニスト/インバ−スアゴニスト、例えば[リモナバント(SR141716A、Acomplia(登録商標)]での前処置により大いに抑止され、CB1受容体活性化がΔ−THCの食欲亢進効果を媒介するという確信を強く支持する。Endocrine Reviews 2006,27,73を参照されたい。
【0008】
リモナバントは、ヒトで肥満患者における臨床的に有意の体重減少を生ずる。患者は、トリグリセリドレベルの減少を含む糖尿病及び関連心臓代謝危険因子における改善も経験する。リモナバントは、糖尿病及び心疾患の危険因子として知られる腹部の脂肪沈着における大きな減少も生ずる。体脂肪蓄積、糖尿病、及び心臓代謝危険因子におけるこれらの改善が一緒になって、メタボリック症候群の有症率の全体的減少をもたらす。Lancet 2005,365,1389−97及びNEJM 2005,353,2121を参照されたい。
【0009】
高血圧及びトリグリセリドの上昇したレベルなどの糖尿病及び心臓代謝の危険因子に対するリモナバントの有益な効果は、食事制限及び体重減少だけでは説明できない。例えば、20mgのリモナバントを受ける患者では、トリグリセリド、空腹時インスリン値、及びインスリン抵抗性に対する有益な効果の約50%を体重減少によって説明することができるだけである。これらの結果は、CB1アンタゴニスト/インバ−スアゴニストのグルコ−ス及び脂質代謝に対する直接の薬学的効果と、それに加えて、食欲減退に媒介される体重減少による、代謝に対する間接的効果を示唆する。Science 2006,311,323及びJAMA 2006,311,323を参照されたい。
【0010】
CB1受容体は、哺乳動物の脳中に最も豊富な且つ広く分布するGタンパク質結合受容体の1つである。CB1アンタゴニスト/インバ−スアゴニストの食欲抑制特性は、視床下部(食物摂取の調節)及び中脳辺縁領域(食物の報酬特性(rewarding properties))中のCB1受容体との相互作用により媒介されると信じられている。しかしながら、CB1受容体は、脳中にもっとはるかに広く分布しており(例えば、新皮質、海馬、視床、小脳、及び下垂体)、一方、CB1アンタゴニストは、視床下部及び中脳辺縁領域中の標的とされたCB1受容体と相互作用して、食欲制御にたとえあったとしても少ししか役割を持たない非標的CB1受容体に容易に到達する。標的でない受容体への結合は、しばしばCNS薬の望ましくない副作用をもたらす可能性がある[Endocrine Reviews 2006,27:73]。CB1アンタゴニスト/インバ−スアゴニストであるリモナバントは、向精神及び神経系副作用を生ずる。これらは、憂うつ感、不安感、過敏、不眠症、めまい感、及び頭痛を含む。これらの副作用は、用量に関係しており、リモナバントの最も有効な体重減少用量で最も顕著である(JAMA 2006,311,323)。同じ用量範囲での治療上の有効性(食欲抑制)及び副作用の出現は、両方の効果が、「標的とされた」及び「標的とされていない」脳領域の両方のCB1受容体の同時発生的拮抗作用により媒介されることを強く示唆している。脳侵入性CB1アンタゴニストは、有効な脳領域中のCB1受容体を選択的には標的としないが、一方副作用脳領域中のCB1受容体を無視する。
【0011】
CB1アンタゴニスト/インバ−スアゴニストであるリモナバントの、体重、脂肪症、糖尿病、並びに高血圧及びトリグリセリドの上昇したレベルなどの心臓代謝危険因子に対する有益な効果は、CNS媒介食欲抑制から来る体重減少だけでは説明できない。JAMA2006,311,323を参照されたい。CNSによらない利益の約50%は、代謝で活性な役割を演じることが知られている末梢組織中のCB1受容体との相互作用に由来するらしい。これらは、脂肪組織、肝臓、筋肉、及び胃腸管を含む。
【0012】
上記の観点から、憂うつ感を含むCNS副作用の限られた又はそれがない効果的且つ高選択性CB1受容体アンタゴニスト/インバ−スアゴニストを見出すことが非常に望ましい。特に、末梢組織(例えば、脂肪組織、肝臓、筋肉、及び胃腸管)中のCB1受容体を優先して標的とするが、脳中のCB1受容体には害を加えない化合物を発見することが望ましい。このように、末梢で媒介されるCB1アンタゴニスト/インバ−スアゴニストの有益な効果は維持されながら、CNS副作用は減少又は排除されるべきである。これは、肥満、糖尿病、及び心臓代謝疾患(例えば、高血圧及び脂質代謝異常)の予防又は治療のためのより安全な薬剤を開発する新しい機会を提供するであろう。
【発明の開示】
【0013】
それゆえ、1態様において、本発明は、CB1受容体アンタゴニストである新規なピラゾリン又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0014】
他の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体及び治療的有効量の少なくとも1つの本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩形を含む新規医薬組成物を提供する。
【0015】
他の態様において、本発明は、それを必要とする患者に、治療的有効量の少なくとも1つの本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩形を投与することを含む、肥満、糖尿病、及び/又は心臓代謝障害(例えば、高血圧及び脂質代謝異常)を治療する新規な方法を提供する。
【0016】
他の態様において、本発明は新規化合物を調製する方法を提供する。
【0017】
他の態様において、本発明は、治療において使用するための新規化合物又は薬学的に許容される塩を提供する。
【0018】
他の態様において、本発明は、肥満、糖尿病、及び/又は心臓代謝障害を治療するための医薬を製造するための新規化合物の使用を提供する。
【0019】
次の詳細な説明の中で明らかになるであろうこれらの及び他の目的は、本発明において請求した化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩形が有効なCB1受容体アンタゴニストであると期待されるという本発明者らの発見により達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書中に挙げた全ての引用文献は、それらの全体を参照により本明細書中に組み込む。
【0021】
本発明は、CNS媒介の食欲抑制による体重減少だけでは説明することができない、体重、体脂肪蓄積、糖尿病、並びに高血圧及び脂質代謝異常などの心臓代謝危険因子に対して、CB1受容体アンタゴニストが、有益な効果を有し、また、この効果は少なくとも部分的には、末梢受容体における相互作用により媒介されるという発見に基づく。この目的のために、本発明は、末梢組織(例えば、脂肪組織、肝臓、筋肉、及び胃腸管)中のCB1受容体を優先的に標的とするが、脳中のCB1受容体には害を与えないように設計された化合物を提供する。末梢で媒介されるCB1アンタゴニストの有益な効果は維持されながら、CNS副作用は減少又は排除されるべきである。
【0022】
本発明の化合物は、それらが血液脳関門(BBB)に侵入する能力がないか若しくは限られていることにより、又はそれらが能動輸送系に関与することにより、CNSとの接触が減少し、その結果中枢で媒介される副作用、多くの抗肥満及び抗糖尿病剤による問題の可能性を減ずるように設計されている。本発明の末梢に限定された化合物は、CNS効果がないか又は非常に限定されるであろうということが期待される。したがって、それらの末梢で媒介されるCB1拮抗特性は、初期の末梢に限定された作用剤のクラスで以前に示されたように、より安全な治療剤を提供するはずである。
【0023】
その上、肥満、糖尿病、及び/又は心臓代謝障害(例えば、高血圧及び異脂肪血症)の治療に使用される薬剤の最大用量が、CNS副作用(例えば、癲癇、抑鬱感、不安感、運動障害、及び機能亢進)の結果として制限されるならば、そのような薬剤中への末梢限定群の組み込みは、薬剤の全身循環中の濃度に対する脳中の濃度を低下させ、それにより末梢障害を治療するために使用される用量を増大させる機会を与えるであろう。増大した用量は、より大なる治療有効性、並びに治療作用のより急速な開始を提供することができる。
【0024】
1態様において、本発明は、新規化合物AA又は立体異性体又は薬学的に許容されるそれらの塩を提供する:
「化1」

【0025】
式中、
【0026】
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”は、H、C1−6アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−6アルキル、NO、NR、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、CHO(CHCOR、CHOCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、CHO(CHPO(OR)、NR(CHCOR、NR(CHPO(OR)、NRCHCH=CHCOR、NRSOCH、NRCO(CHCOR、NRCO(CHCONR、O(CHCOR、O(CH(CHCOR、CHO(CHCOR、O(CHCONR、O(CH(CHCONH、O(CH−テトラゾ−ル、CHO(CHCONH、CHO(CH−テトラゾ−ル、O(CH(CH−テトラゾ−ル、NR(CHCOR、CHNR(CHCOR、NR(CHCONR、CHNR(CHCONR、NR(CH−テトラゾ−ル、CHNR(CH−テトラゾ−ル、C(NH)NH、(CHC(NH)NH、O(CHCONR、O(CHC(NH)NH、CHO(CHCONR、NR(CHCONR、OCHCH=CHCONH、CHOCHCH=CHCONR、NRCHCH=CHCONR、(CH−テトラゾ−ル、O(CH−テトラゾ−ル、O(CHCHO)R、NR(CHCHO)R、及びSONRCHから独立に選択され;
【0027】
Zは、H、C1−6アルキル、OH、O−C1−6アルキル、O(CHCHO)R、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、O(CHCONH、O(CHC(NH)NH、OCHCH=CHCONH、O(CH−フェニル−(CHCOR、及びO(CH−フェニル−(CH−テトラゾ−ルから選択され;
【0028】
Qは、H、C1−6アルキル、(CH−アリ−ル、(CH−ヘテロアリ−ル、(CH)−テトラゾ−ル、 CHA(CHCOR、CHA(CHCONR、(CH−フェニル−(CHCOR、(CH−フェニル−(CHCONH、及び(CH−フェニル−(CH−テトラゾ−ルから選択され;
【0029】
MはC=O又はSOであり;
【0030】
Rは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、及びC2−6アルキニルから独立に選択され;
【0031】
は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、及びC2−6アルキニルから独立に選択され;
【0032】
Aは、H、C1−6アルキル、(CH−C3−6−シクロアルキル、CHOH、CH(CH)OH、及び(CH−フェニルから選択され、ここでフェニルはH、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択された0ないし3個の基で置換されており;
【0033】
pは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12から選択され;
【0034】
mは0、1、2、及び3から選択され;
【0035】
nは、1、2、及び3から選択され;及び、
【0036】
X、Y、X’、Y’、X”、Y”、Z、又はQの少なくとも1つは、化合物AAのCNS(脳)レベルを減少させるか若しくは制限することができる基になるように適当に改変されているか又はそのような基により置換されている基である。
【0037】
[1]1態様において、本発明は、式Iの新規化合物又はそれらの立体異性体若しくは薬学的に許容されるそれらの塩を提供する:
「化2」

【0038】
(式中:
【0039】
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”は、H、C1−6アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−6アルキル、NO、NR、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、CHO(CHCOR、CHOCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、CHO(CHPO(OR)、NR(CHCOR、NR(CHPO(OR)、NRCHCH=CHCOR、NRSOR、NRCO(CHCOR、NRCO(CHCONR、O(CHCOR、O(CH(CHCOR、CHO(CHCOR、O(CHCONR、O(CH(CHCONR、O(CH−テトラゾ−ル、CHO(CHCONR、CHO(CH−テトラゾ−ル、O(CH(CH−テトラゾ−ル、NR(CHCOR、CHNR(CHCOR、NR(CH(CHCOR、NR(CHCONR、CHNR(CHCONR、NR(CH(CHCONR、NR(CH−テトラゾ−ル、CHNR(CH−テトラゾ−ル、NR(CH(CH−テトラゾ−ル、C(NH)NR、(CHC(NH)NR、O(CHCONR、O(CHC(NH)NR、CHO(CHCONR、NR(CHCONR、OCHCH=CHCOR、CHOCHCH=CHCONR、NRCHCH=CHCONR、(CH−テトラゾ−ル、O(CH−テトラゾ−ル、O(CHCHO)R、NR(CHCHO)R、及びSONHCH;から独立に選択され;
【0040】
Zは、H、C1−6アルキル、OH、O−C1−6アルキル、O(CHCHO)R、OC(O)−C1−6アルキル、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、O(CHCONH、O(CHC(NH)NH、OCHCH=CHCONH、O(CH−フェニル−(CHCOR、及びO(CH−フェニル−(CH−テトラゾ−ルから選択され;
【0041】
Qは、H、C1−6アルキル、(CH−アリ−ル、(CHCHO)R、(CH−ヘテロアリ−ル、(CH−テトラゾ−ル、−CHA(CHC(O)NR、CHA(CHCOR、(CH−フェニル−(CHCOR、(CH−フェニル−(CHCONH、及び(CH−フェニル−(CH−テトラゾ−ルから選択され、ここで、ヘテロアリ−ル、フェニル、及びアリ−ルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択される0ないし3個の基により置換されており;
【0042】
Mは、C=O又はSOであり;
【0043】
Rは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、及びC2−6アルキニルから独立に選択され;
【0044】
は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、及びC2−6アルキニルから独立に選択され;
【0045】
Aは、H、C1−6アルキル、(CH3−6−シクロアルキル、CHOH、CH(CH)OH、及び(CH−フェニルから選択され、ここで、フェニルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択される0ないし3個の基で置換されており;
【0046】
pは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12から選択され;
【0047】
mは、0、1、2、及び3から選択され;及び
【0048】
nは、1、2、及び3から選択され;
【0049】
ただし、次のうち少なくとも1つは満足されている:
(a)X、Y、X’、Y’、X”、及びY”の少なくとも1つは、H、C1−6アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−6アルキル、NO、及びNR以外のものであり;
(b)Zは、H、C1−6アルキル、OH、O−C1−6アルキル、アセチルオキシ、及びプロピオニルオキシ以外のものであり;又は、
(c)Qは、H、C1−6アルキル、(CH−ヘテロアリ−ル、及び(CH−アリ−ル以外のものである)。
【0050】
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”の少なくとも1つが、H、C1−6アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−6アルキル、NO、及びNR以外のものであることは、望ましい可能性がある。
【0051】
[2]他の態様において、本発明は、式Iの式中、
【0052】
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”の少なくとも1つは、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、CHO(CHCOR、CHOCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、CHO(CHPO(OR)、NR(CHCOR、NR(CHPO(OR)、NRCHCH=CHCOR、NRCO(CHCO(CH)NR、NRSOCH、NRCO(CHCOR、O(CHCOR、O(CH(CHCOR、 CHO(CHCO、O(CHCONH、O(CH(CHCONR、O(CH−テトラゾ−ル、CHO(CHCONH、CHO(CH−テトラゾ−ル、O(CH(CH−テトラゾ−ル、NR(CHCOR、CHNR(CHCOR、NR(CH(CHCOR、NR(CHCONR、CHNR(CHCONR、NR(CH(CHCONR、NR(CH−テトラゾ−ル、CHNR(CH−テトラゾ−ル、NR(CH(CH−テトラゾ−ル、C(NH)NR、(CHC(NH)NR、O(CHCONR、O(CHC(NH)NH、CHO(CHCONR、NR(CHCONH、OCHCH=CHCONR、CHOCHCH=CHCONR、NRCHCH=CHCONR、(CH−テトラゾ−ル、O(CH−テトラゾ−ル、O(CHCHO)R、NR(CHCHO)R、及びSONHCHから独立に選択され;
【0053】
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”の他のものは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、NO、及びNRから独立に選択され;
【0054】
Rは、H、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、及びC2−4アルキニルから独立に選択され;
【0055】
は、H、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、及びC2−4アルキニルから独立に選択され;
【0056】
Zは、H、C1−4アルキル、OH、O−C1−4アルキル、アセチルオキシ、及びプロピオニルオキシから選択され;
【0057】
Qは、H、C1−4アルキル、(CHCHO)R、(CH)−ヘテロアリ−ル、及び(CH−アリ−ルから選択され、ここで、ヘテロアリ−ル及びアリ−ルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択される0ないし3個の基で置換されており;
【0058】
Mは、C=O又はSO
【0059】
pは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12から選択され;
【0060】
mは、0、1、2、及び3から独立に選択され;及び
【0061】
nは、1、2、及び3から独立に選択される;
【0062】
[3]他の態様において、本発明は、新規化合物又はそれらの立体異性体又は薬学的に許容される塩を提供する。式Iの式中、
【0063】
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”は、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、NO、O(CHCHO)R、NR(CHCHO)R、及びNRから独立に選択され;
【0064】
Zは、O(CHCHO)R、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、O(CHCONH、O(CHC(NH)NH、OCHCH=CHCONH、O(CH−フェニル−(CHCOR、及びO(CH−フェニル−(CH−テトラゾ−ルから選択され;
【0065】
Qは、H、C1−4アルキル、(CHCHO)R(CH−ヘテロアリ−ル、及び(CHアリ−ルから選択され、ここで、ヘテロアリ−ル及びアリ−ルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択される0ないし3個の基で置換されており;
【0066】
Mは、C=O又はSOであり;
【0067】
Rは、H、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、及びC2−4アルキニルから独立に選択され;
【0068】
pは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12から選択され;
【0069】
mは、0、1、2、及び3から独立に選択され;及び、
【0070】
nは1、2、及び3から独立に選択される;
【0071】
[4]他の態様において、本発明は、新規化合物又はそれらの立体異性体若しくは薬学的に許容される塩を提供する。式Iの式中、
【0072】
X、Y、X’、Y、X”、及びY”が、次のもの:
H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、NO、O(CHCHO)R、NR(CHCHO)R、及びNR
から個別に選択され;
【0073】
Zは、H、C1−4アルキル、OH、O−C1−4アルキル、アセチルオキシ、及びプロピオニルオキシから選択され;
【0074】
Qは、−(CH−テトラゾ−ル、−CHA(CHC(O)NHR、CHA(CHCOR、(CH−フェニル−(CHCOR、(CH−フェニル−(CHCONH、(CHフェニル−(CH−テトラゾ−ル、及び(CHCHO)Rから選択され;
【0075】
Mは、C=O又はSOであり;
【0076】
Aは、H、C1−4アルキル、(CH−C3−6−シクロアルキル、CHOH、CH(CH)OH、(CH−フェニルから選択され、ここで、フェニルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択される0ないし3個の基で置換されており;
【0077】
Rは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、及びC2−6アルキニルから独立に選択され;
【0078】
pは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12から選択され;
【0079】
mは、0、1、2、及び3から独立に選択され;及び
【0080】
nは、1、2、及び3から独立に選択される;
【0081】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体及び治療的有効量の本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩形を含む新規医薬組成物を提供する。
【0082】
別の態様において、本発明は、それが必要な患者に、治療的有効量の本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩形を投与することを含み、疾患は肥満、糖尿病、心臓代謝障害、及びそれらの組み合わせから選択される、疾患を治療する新規な方法を提供する。
【0083】
別の態様において、糖尿病障害は、1型糖尿病、2型糖尿病、不十分な糖耐性及びインスリン抵抗性から選択される。
【0084】
別の態様において、心臓代謝障害は、脂質代謝異常、(例えば、トリグリセリドの高レベル、低密度リポタンパク質(「悪玉」コレステロール)の高レベル、又は高密度リポタンパク質(「善玉」コレステロール)の低レベル及び高血圧から選択される。
【0085】
別の態様において、本発明は、それが必要な患者に、治療的有効量の本発明の化合物又は薬学的に許容されるその塩形投与することを含む、肥満の合併症を治療する新規な方法を提供する。
【0086】
別の態様において、合併性は、糖尿病、メタボリック症候群、認知症、及び心疾患から選択される。
【0087】
別の態様において、合併性は、高血圧;胆嚢疾患;胃腸疾患;生理不順;変形性関節症;うっ血性静脈潰瘍;換気過少症候群;睡眠時無呼吸;いびき;冠動脈疾患;動脈硬化性疾患;偽脳腫瘍;事故多発性;手術時のリスク増大;骨関節炎;高コレステロール;及び卵巣、子宮頸部、子宮、乳房、前立腺、及び胆嚢の悪性腫瘍発生率増大から選択される。
【0088】
別の態様において、本発明は、哺乳動物における脂肪組織の沈着を、本発明の化合物の投与により、予防又は逆転させる方法も提供する。脂肪組織の沈着を予防又は逆転させることにより、本発明の化合物は、肥満の発生率又は重症度を減少させ、それにより、関連する合併症の発生率又は重症度を軽減すると期待される。
【0089】
別の態様において、本発明は、治療において使用するための本発明の化合物を提供する。
【0090】
別の態様において、本発明は、肥満、糖尿病、心臓代謝障害、及びそれらの組み合わせを治療する医薬を製造するための、本発明の化合物の使用を提供する。
【0091】
本発明は、その意図又は本質的特徴から離れることなく、他の特定の形態で具体化することができる。本発明は、本明細書中に記載した局面の全ての組み合わせを包含する。本発明の任意の及び全ての態様は、任意の他の1つ又は複数の態様と併せてさらなる態様を記述できることが理解される。態様の個々の要素は、それ自体独立の態様として、個別に受け取ることが意図されていることも理解される。さらに、態様の任意の要素は、任意の態様からの任意の及び全ての要素と組み合わせてさらなる態様を記述することが意図されている。
【0092】
本出願中に存在する説明で提供される例は、特に断らない限り、包括的ではない。それらは、挙げられた例を含むが、それに限定されない。
【0093】
本明細書中に記載された化合物は、不斉中心、幾何学中心(例えば、二重結合)、又はそれら両方を有することができる。特定の立体化学又は異性形態が示されていない限り、全てのキラル、ジアステレオ異性、ラセミ形態及び全ての幾何異性構造形態が意図されている。非対称的に置換された原子を含む本発明の化合物は、光学活性又はラセミ型で単離することができる。ラセミ型の分割、光学活性出発材料からの合成、又はキラルな補助剤の使用などにより、光学活性型を調製する方法は、当技術分野において周知である。オレフィンの幾何異性体、C=N二重結合又は他の型の二重結合が、本明細書に記載する化合物中に存在してよく、全てのそのような安定な異性体は、本発明に含まれる。特に、本発明の化合物のcis及びtrans幾何異性体も存在することができ、異性体混合物として又は分離された異性体型として単離することができる。本発明で作製された本発明の化合物及び中間体を調製するために使用された全てのプロセスは、本発明の一部であると見なされる。示された又は記載された化合物の全ての互変異性体も、本発明の一部であると見なされる。
【0094】
「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有する分岐及び直鎖両方の鎖状飽和脂肪族炭化水素基を含む。C1−6アルキルは、例えば、C、C、C、C、C、及びCアルキル基を含む。アルキルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル及びs−ペンチルが挙げられる。
【0095】
「アルケニル」は、鎖に沿った任意の安定点に現れてよい1つ以上の不飽和炭素−炭素結合を有する、直鎖又は分岐配置のいずれかの特定数の炭化水素原子を含み、例えば、エテニル及びプロペニルなどである。C2−6アルケニルC、C、C、C、及びCアルケニル基を含む。
【0096】
「アルキニル」は、鎖に沿った任意の安定点に現れてよい1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する、直鎖又は分岐配置のいずれかの特定数の炭化水素原子を含み、C2−6アルキニルは、C、C、C、C、及びCアルキニル基を含む。
【0097】
「シクロアルキル」は、飽和環状の特定の数の炭化水素原子を含み、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルなどである。C3−8シクロアルキルは、C、C、C、C、C、及びCシクロアルキル基を含む。
【0098】
「環状アミン」は、環の1つの炭素原子が窒素原子により置き換えられた炭化水素環である。環状アミンは、不飽和、部分的不飽和、又は完全に不飽和であってもよい。環状アミンは、二環式、三環式、及び多環式でもよい。環状アミンの例には、ピロリジン及びピペリジンが挙げられる。
【0099】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。
【0100】
「対イオン」は、塩化物イオン、臭化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン及び硫酸イオンなどの小さい負に荷電した種を表すのに使用される。
【0101】
「C」基はフェニレンを表す。
【0102】
「アリール」は、1つ以上の環が存在する場合に少なくとも1つの環が芳香族である、任意の安定な6、7、8、9、10、11、12、又は13員単環式、二環式、又は三環式環を表す。アリ−ルの例には、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチル、及びテトラヒドロナフチルが挙げられる。
【0103】
「ヘテロアリ−ル」は、炭素原子とN、O、及びSからなる群から独立に選択された、1、2、3、又は4個のヘテロ原子とからなり、芳香族である任意の安定な5、6、7、8、9、10、11、又は12員単環式、二環式、又は三環式ヘテロ環式環を指す。ヘテロアリ−ル基が二環式又は三環式であれば、その場合は、2つ又は3つの環の少なくとも1つがヘテロ原子を含まなければならないが、両方又は3つの環の全てが各々1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロアリ−ル基が二環式又は三環式であれば、その場合環の1つだけが芳香族でなければならない。N基は、選択された環に依存して、N、NH、又は、置換基が挙げられていればN−置換基であってもよい。窒素及びイオウヘテロ原子は、場合により酸化されていてもよい(例えば、S、S(O)、S(O)、及びN−O)。ヘテロアリ−ル環は、その懸垂基に、安定な構造を生ずる任意のヘテロ原子又は炭素原子で結合していてもよい。本明細書に記載したヘテロアリ−ル環は、生ずる化合物が安定であれば、炭素又は窒素原子上で置換されていてもよい。
【0104】
ヘテロアリ−ルの例には、アクリジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−l,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリル、lH−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラゾリル、6H−l,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、及びキサンテニルが挙げられる。
【0105】
「哺乳動物」及び「患者」は、通常は医学的ケアの下にある温血哺乳動物(例えば、ヒト及び家畜)を全て含む。例には、ヒトだけでなく、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、及びヒトが挙げられる。
【0106】
「治療すること」又は「治療」は、哺乳動物における疾患状態の治療を全て含み、(a)疾患状態が哺乳動物で、特にそのような哺乳動物疾患にかかりやすい状態にあるが、それに罹っていると未だ診断されていないときに、それが起こるのを予防すること、(b)疾患状態を阻止すること、即ちそれが発生することを止めること;及び/又は(c)疾患状態を軽減すること、即ち、疾患状態の退行を所望の目標に達するまで起こさせることを含む。
【0107】
「薬学的に許容される塩」は、親化合物が、それらの酸又は塩基との塩をつくることにより改変された、本明細書で開示された化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例には、アミンなどの塩基性残基の無機若しくは有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ又は有機塩等が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、例えば無毒性の無機又は有機酸により形成された、親化合物の通常の無毒性の塩又は第4級アンモニウム塩を含む。例えば、そのような通常の無毒性の塩は、1,2−エタンスルホン酸、2−アセトキシ安息香酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、セバチン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、及びトルエンスルホン酸から選択される無機及び有機酸から誘導される塩を含むが、これらに限定されない。
【0108】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により塩基性又は酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般的に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基型と化学量論量の適当な塩基又は酸とを、水中又は有機溶媒中又はそれら二者の混合物中で反応させることにより調製することができるが、一般には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水系媒質が有用である。適当な塩のリストは、その開示を参照により本明細書に組み込む、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing Company, Easton,PA,1990, p1445、中に見出される。
【0109】
「治療的有効量」は、肥満又は本明細書で挙げた別の適応症を治療するために、単独で又は組み合わせて投与されたときに有効な、本発明の化合物の量を含む。「治療的有効量」は、所望の適応症を治療するために有効な、特許請求された化合物の組み合わせの量も含む。化合物の組み合わせは、相乗的な組み合わせにすることができる。相乗作用は、例えば、Chou及びTalalay,Adv.Enzyme Regul.1984,22:27−55により述べられているように、組み合わせて投与されたときの化合物の効果が、単独薬剤として単独に投与されたときの化合物の相加効果よりも大であるときに現れる。一般的に、相乗効果は、化合物の最適濃度より下で最も明確に現れる。相互作用は、個々の成分に比較して、組み合わせの、より低い細胞毒性、増大した効果、又は何らかの他の有益な効果の見地からのものであってよい。
【0110】
肥満は、30以上の肥満度指数(BMI)を有する場合として定義される。この指数は、個人の身長に対する体重の尺度である。BMIは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割ることにより計算される。正常且つ健康な体重は、20と24.9の間のBMIを有する場合として定義される。過体重は、BMI>25の場合と定義される。米国において、肥満は、4千4百万人の肥満アメリカ人、及びそれに加わる医学的に過体重と思われる8千万人の異常発生率に達している。
【0111】
肥満は、脂肪組織,特に腹部に局在する脂肪組織の過剰な蓄積の結果生ずる状態と特徴づけられる疾患である。彼らの脂肪組織の量を減少させて、それにより彼らの全体重を彼らの性及び身長に対して正常な範囲内に減少させることにより、過体重又は肥満の患者を治療することが望ましい。このようにして、糖尿病及び心臓血管疾患などの合併症に対する彼らのリスクは減少するであろう。正常体重の個人でそれに加わる過剰脂肪組織が蓄積することを防止し、彼らの体重をBMI<25に効果的に維持して合併症の発症を予防することも望ましい。肥満を制御し、過体重及び肥満の個人でそれに加わる過剰脂肪組織が蓄積することを効果的に防止して、彼らの合併症をさらに悪化させるリスクを低下させることも望ましい。
【0112】
カンナビノイド受容体は、甲状腺、副腎、生殖器官、脂肪組織、肝臓、筋肉、及び胃腸管を含む多くの末梢(非CNS)組織に局在する。肥満及び喫煙休止治療のために開発されているカンナビノイド受容体アンタゴニスト/インバ−スアゴニストは、投与経路に関わらず、全身循環からCNSに入る。全身循環中に存在しても、そのような薬剤は末梢組織への通路を有する。当業者は、肥満及び喫煙休止治療のために全身循環からCNSへ入ることを意図されたカンナビノイド受容体アンタゴニストも、末梢組織中のカンナビノイド受容体に達することを認識している。したがって、本発明のために有用なカンナビノイド受容体アンタゴニストは、全身循環からCNSへの何らかの通路を有し得る。
【0113】
薬剤は、全身循環から血液脳関門(BBB)を越えることによりCNSに入る。BBBは、多くの有害の可能性がある物質の全身循環からCNS中への進入を防止することにより脳を保護する、高度に特殊化された「門番」である。BBBについて、及びそれを越えて輸送される化合物にとって必要とされる物理的化学的性質について、多くのことが知られている。
【0114】
BBBを越えてCNS中に入らないか又は輸送機構により容易に排除される薬剤が文献で知られており(J Clin Invest.97,2517(1996))、それらは薬理学的作用に必要な脳中レベルに達することができないので、CNS活性は低い。BBBは、CNS中に薬剤が蓄積するのに先立って除去する少なくとも1つの機構を有する。BBBの形質膜に局在するP−糖タンパク質(P−gp)は、膜を越える移動による、多くの薬剤の脳侵入及び薬理学的活性に影響し得る。幾つかの薬剤による脳中への蓄積の欠如は、BBBに所在するP−gpによる脳からのそれらの能動的除去により説明することができる。例えば、下痢止めとして臨床的に使用される典型的オピオイド薬剤であるロペラミドは、脳からP−gpにより能動的に除去され、このようにしてオピエイト様CNS効果の欠如を説明する。別の例は、P−gp輸送に関与するドーパミン受容体ブロッカーであるドンペリドンである(J Clin Invest.97,2517(1996))。BBBを越えるドーパミン受容体ブロッカーは、統合失調症を治療するために使用することができるが、容易に除去されるドンペリドンは、有害なCNS効果を多分生ずることなく、嘔吐を防止するために使用することができる。
【0115】
上記化合物に加えて、BBB侵入を遅延若しくは防止するか又は能動的排除過程における関与に貢献する、構造的特徴を有する作用剤が、種々の種類の治療剤で同定されている。これらは、抗ヒスタミン剤(Drug Metab.Dispos.,31,312(2003))、β−アドレナリン作動性受容体アンタゴニスト(Bブロッカー) (Eur.J.Clin.Pharmacol.28,Suppl:21−3(1985);Br.J.Clin.Pharmacol,11(6),549−553(1981))、非ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)(J.Pharm Sci,88(10)950−954(1999))、及びオピオイドアンタゴニストを含む。この後者の群を、胃腸管におけるそれらの活性に関して試験した。これらの末梢選択的オピオイドアンタゴニストは、種々の米国特許で哺乳動物における非CNS病状の治療、特に胃腸管の治療に有用であると記載されている(米国特許第5,260,542号;米国特許第5,434,171号;米国特許第5,159,081号;及び米国特許第5,270,238号を参照されたい)。
【0116】
他の種類の脳に侵入しない化合物は、分子内に電荷を創り出すことにより調製することができる。したがって、スコポラミン又はアトロピンという薬剤の第4級アミン官能基へのメチル基の付加は、親分子と違って、正電荷の存在によりBBBを越えるそれらの通過を防止する。しかしながら、この新規分子(メチル−スコポラミン及びメチル−アトロピン)は、それらの完全な抗コリン作用性の薬理学的作用を保持している。これらの薬剤も、それ自体、有害なCNS効果の懸念なしに、末梢の疾患を治療するために使用することができる。第4級アンモニウム化合物のメチルナルトレキソンも、オピオイド投与に伴ったオピオイド及び非オピオイド誘発の副作用の予防及び/又は治療のために使用される。
【0117】
カンナビノイド受容体アンタゴニストの抗肥満及び抗糖尿病活性は、一部非CNS機構により媒介され得るという発見は、本発明の化合物が末梢に限定されること、(即ち、BBBを越える能力がないか若しくは限定されている、又は能動輸送系により脳から容易に排除されること)、を有益にすることができる。本発明の化合物が末梢に限定されることは望ましいといってよく、その結果としてCNS効果はないか又は非常に限定されるであろう。末梢で媒介される抗肥満特性を提供する化合物は、初期のクラスの末梢に限定される作用剤で前に示されたように、安全性のより大きい治療剤になるはずである。本発明の化合物が、治療的有効量で投与されたときに、CNS効果がないか又は非常に限定されることは望ましいといえる。CNS効果の欠如が、治療的有効量で投与されたときに最小の脳内濃度になる、本発明の化合物の結果であることも望ましいといえる。この文脈で、最小脳内濃度は、CNS適応症の治療に治療的に有効であるには低すぎる、又は有意な若しくは有害な若しくは無視できない望ましくない副作用を惹起するには低すぎるレベルを意味する。
【0118】
SLV319(X及びX”が4−Clであり;X’、Y、Y’、Y”、及びZがHであり;QがCHであり;及びMがSOであるときの化合物I)は、BBBを越える薬剤であり、肥満の治療用と表示されている。SLV319は、CNS機構により肥満を治療するように作用すると考えられている。SLV319及び化合物AAに似た化合物が、J.Med.Chem.2004,47(3),627及び米国特許第6,476,060号を含む種々の刊行物に記載されている。化合物AAにおいて、X、Y、X’、Y’、X”、Y、Z又はQの1つは、化合物AAのCNS活性を低下させるか又は限定することができる基である。この低下した又は限定されたCNS活性は、SLV319に比較した、BBBを越える化合物AAの能力を限定するか又はSLV319を超える速度で脳から能動的に除去されることを可能にするかいずれかの基であるX、Y、X’、Y’、X”、Y、Z及びQの少なくとも1つにより現れる。脳に存在する化合物AAの量の例は、同じ用量で投与したとき、(a)SLV319より50から、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%低い、(b)SLV319より90から91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%低い、及び(c)SLV319より98から99、100%低い、量を含むことができる。
【0119】
本発明の化合物は、カンナビノイド受容体アンタゴニスト又はインバ−スアゴニストであると期待される。
【0120】
インバ−スアゴニストは、内在性アゴニストの受容体に対する作用を遮断するだけでなく、アゴニストにより示される作用と通常は反対であるそれ自体の活性も示す化合物である。インバ−スアゴニストは、ある種の受容体(例えば、あるヒスタミン受容体/GABA受容体)に対して有効であり、それはリガンドのそれらとの相互作用なしに固有の活性を有する(「本質的活性」とも称される)。
【0121】
肥満を治療する大抵の方法は、食物摂取の削減によるか(例えば、シブトラミン)又は脂肪吸収の阻害によるか(例えば、オルリスタット)のいずれかによるエネルギー取り込みの大きい減少に依存する。本発明において、食物摂取の目立った削減なしで脂肪組織が有意に減量されることは、望ましいといえる。体重減少は、本発明の結果として、食欲及び食物摂取とは殆ど独立に、CB1アンタゴニストによる治療に由来する。脂肪組織減量中の食物摂取レベルの例は、(a)食物摂取は維持され、増加され、又は本発明により治療されるより前の被験者の正常範囲(即ち、投与前レベル)の約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20%下;(b)食物摂取は、維持され、増加され、又は投与前レベルの約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15%下;(c)食物摂取は、維持され、増加され、又は投与前レベルの約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%下;及び(d)食物摂取レベルは、維持され、増加され、又は投与前レベルの約0、1、2、3、4、又は5%下である場合を含む。
【0122】
幾つかの場合、脂肪組織の減量は、同時に起こる除脂肪筋肉量の減少を伴い得る。これは、特に、脂肪組織及び除脂肪筋肉量を含む全身組織成分の消耗を示す癌患者において明白である。しかしながら、本発明において、体脂肪が、除脂肪体重の顕著な減少なしに有意に削減されることは望ましいといえる。脂肪組織の減量は、除脂肪体重の顕著な変化と独立に、CB1アンタゴニストによる治療により起こる。脂肪組織減量中の除脂肪体重のレベルの例は、(a)除脂肪体重は維持され、増大し、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30%だけ、本発明により治療される前の被験者の正常範囲(即ち、投与前レベル)より下であり、;(b)除脂肪体重は維持され、増大し、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15%だけ、投与前レベルより下であり;(c)除脂肪体重は維持され、増大し、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10%だけ、投与前レベルより下であり;及び(d)除脂肪体重は維持され、増大し、又は約1、2、3、4、若しくは5%だけ、投与前レベルより下である場合を含む。
【0123】
幾つかの場合、脂肪組織の減量は、同時に起こる水分量の減少を伴い得る。これは、特に、脱水を助長する食餌療法で明白である。本発明において、体脂肪が、水分量の顕著な減少なしに有意に削減されることは望ましいといえる。換言すれば、
脂肪組織減量は、水分量の顕著な変化と独立に、CB1アンタゴニストによる治療により起こる。脂肪組織減量中の水分量のレベルの例は、(a)水分量は、維持され、増大し、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30%だけ、本発明により治療される前の被験者の正常範囲(即ち、投与前レベル)より下であり;(b)水分量は、維持され、増大し、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15%以下だけ、投与前レベルより下であり;(c)水分量は、維持され、増大し、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10%だけ、投与前レベルより下であり;及び(d)水分量は、維持され、増大し、又は約1、2、3、4、若しくは5%だけ、投与前レベルより下である場合を含む。
【0124】
シブトラミン及びオルリスタットは、肥満の治療で使用するために現在上市さている。これら2つの化合物は、全く異なる機構により体重減少を達成する。CNS食欲抑制剤であるシブトラミンは、セロトニン及びノルアドレナリンの神経再取り込みを阻害する。オルリスタットは、摂取された脂肪の分解を担当する腸リパ−ゼ酵素を阻害する。
【0125】
カンナビノイド受容体アンタゴニスト/インバ−スアゴニストは、末梢カンナビノイド受容体の阻害により、並びに食欲抑制剤、腸リパ−ゼ阻害剤、及び同様な適応症に対する他の作用剤(例えば、セロトニンアゴニスト、レプチン、脂肪酸合成酵素阻害剤、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤)とは全く異なる機構により体重減少を促進することができる。カンナビノイド受容体アンタゴニスト/インバ−スアゴニストを、上記の適応症(例えば、肥満、糖尿病、心臓代謝障害、及びそれらの組み合わせ)を治療するために有用な1つ以上の他の作用剤と一緒に共投与することは、例えば、相加的又は相乗的いずれかの効果を生ずることにより、有益であると期待される。追加される薬剤の例には、食欲抑制剤、リパーゼ阻害剤、及びMAO阻害剤(例えば、MAO−B、及びMAO−A/Bの組み合わせ)が挙げられる。したがって、本発明は、本発明の化合物及び所望の適応症を治療するために有効な第2成分の治療的有効量を投与することを含む、肥満、糖尿病、及び/又は心臓代謝障害を治療する方法を提供する。
【0126】
第2成分の例には;l)成長ホルモン分泌促進物質;2)成長ホルモン分泌促進物質受容体アゴニスト/アンタゴニスト;3)メラノコルチンアゴニスト;4)Mc4r(メラノコルチン4受容体)アゴニスト;5)β−3アゴニスト;7)5HT2C(セロトニン受容体2C)アゴニスト;8)オレキシンアンタゴニスト;9)メラニン濃縮ホルモンアンタゴニスト;10)メラニン−濃縮ホルモン1受容体(MCH1R)アンタゴニスト;11)メラニン−濃縮ホルモン2受容体(MCH2R)アゴニスト/アンタゴニスト;12)ガラニンアンタゴニスト;13)CCKアゴニスト;14)CCK−A(コレシストキニン−A)アゴニスト;16)コルチコトレピン−放出ホルモンアゴニスト;17)NPY5アンタゴニスト;18)NPY1アンタゴニスト;19)ヒスタミン受容体−3(H3)調節剤;20)ヒスタミン受容体−3(H3)アンタゴニスト/インバ−スアゴニスト;21)β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ−1阻害剤(β−HSD−1);22)PDE(ホスホジエステラーゼ)阻害剤;23)ホスホジエステラーゼ−3B(PDE3B)阻害剤;24)NE(ノルエピネフリン)輸送阻害剤;25)シブトラミン、フェンテルミン、若しくはフェンフルラミンなどの非選択性セロトニン/ノルエピネフリン輸送阻害剤;26)グレリンアンタゴニスト;28)レプチン誘導体;29)BRS3(ボンベシン受容体サブタイプ3)アゴニスト;30)CNTF(毛様体神経栄養因子);31)アクソカイン(axokine)(レジェネロン)などのCNTF誘導体;32)ノモアミン再取り込み阻害剤;33)UCP−1(脱共役タンパク質−1)、2、若しくは3活性化剤;34)甲状腺ホルモンβアゴニスト;35)FAS(脂肪酸合成酵素)阻害剤;37)DGAT2(ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ2)阻害剤;38)ACC2(アセチル−coAカルボキシラーゼ−2)阻害剤;39)グルココルチコイドアンタゴニスト;40)アシル−エストロゲン類;41)オルリスタット(Xenical(登録商標))などのリパーゼ阻害剤;42)脂肪酸輸送体阻害剤;43)ジカルボキシラーゼ輸送体阻害剤;44)グルコ−ス輸送体阻害剤;45)リン酸輸送体阻害剤;46)セロトニン再取り込み阻害剤;47)メトホルミン(Glucophage(登録商標));48)トピラメート(Tropimax(登録商標));及び/又は49)MAO阻害剤;を含む抗肥満作用剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
MAO阻害剤の例には、モクロベニド;ブロファロミン;BWA616U;Ro41−1049;RS−2232;SR95191;ハルマリン;ハルマン;アミフラミン;BW1370U87;FLA688;FLA788;ビフェメラン;クロルジリン;LY51641;MDL72,394;5−(4−ベンジルオキシフェニル)−3−(2−シアノエチル)−(3H)−l,3,4−オキサジアゾール−2−オン;5−(4−アリールメトキシフェニル)−2−(2−シアノエチル)テトラゾ−ル;レザベミド;Ro16−6491;アルモキサトン;XB308;RS−1636;RS−1653;NW−1015;SL340026;L−セレギリン;ラサギリン;パルギリン;AGN1135;MDL72,974;MDL72,145;MDL72,638;LY54761;MD780236;MD240931;ビフェメラン;トロキサトン;シモキサトン;イプロニアジド;フェネルジン;ニアラミド;フェニルヒドラジン;1−フェニルシクロプロピルアミン;イソカルボキサジド;及びトラニルシプロミンが挙げられる。MAO阻害剤のさらなる例は、米国特許出願第60/696,067号;米国特許出願第60/686,585号;米国特許出願第第60/698,867号;及び米国特許出願第60/704,679号に見出すことができ、これらの内容は参照により本明細書に組み込む。
【0128】
糖尿病を治療するために有用な第2成分の例には、(a)(i)グリタゾンなどのPPAR−γアゴニスト(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン)、及びWO97/27857、97/28115、97/28137、及び97/27847で開示された化合物;及び(ii)メトホルミン及びフェンホルミンなどのビグアニド類を含むインスリン増感剤;(b)インスリン又はインスリン模倣体;(c)トルブタミド及びグリピジド若しくは関連物質などのスルホニル尿素類;(d)α−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース);(e)(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、フラスタチン、アトルスタチン、リバスタチン、及び他のスタチン)などのコレステロール低下剤、(ii)金属イオン封鎖剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はそれらの塩、(iv)PPAR−αアゴニスト(例えば、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート、及びベザフィブレートを含むフェノフィブリン酸誘導体)、(v)コレステロール吸収阻害剤(例えば、β−シトステロール)及びアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、メリナミド)、及び(vi)プロブコール;などのコレステロール低下剤(f)PPAR−α/γアゴニスト;(g)抗肥満化合物(既に記載した);(h)回腸胆汁酸輸送体阻害剤;及び(i)インスリン受容体活性化剤が挙げられる。
【0129】
本発明の化合物は、CB1受容体阻害剤/インバ−スアゴニストであると期待され、且つCB受容体により媒介される疾患を治療するために有用であると期待される。本発明の化合物は、Devane等,,Molecular Pharmacology,1988,34,605−613により記載されている実験条件下で、中枢及び/又は末梢カンナビノイド受容体に対してin vitroで親和性を有すると期待される。本発明による化合物は、電気的に刺激されて単離された器官の調製物上に存在するカンナビノイド受容体に対して親和性を有することも期待される。これらの試験は、モルモット回腸及びマウス輸精管で、Roselt等,Acta Physiologica Scandinavia 1975,94,142−144、及びNicolau等.,Arch.Int.Pharmacodyn,1978,236,131−136にしたがって実施することができる。
【0130】
CB1受容体親和性は、ヒトカンナビノイドCB1受容体が安定に移入されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の膜標本を、放射性リガンドとしての[3H]CP−55,940とともに使用して測定することができる(Biochem J.1991,279,129−134)。試験化合物を添加して又は添加せずに、新鮮に調製された細胞膜調製物を、[3H]放射性リガンドとともにインキュベーションした後、結合したリガンドと遊離のリガンドとの分離をガラス繊維フィルターにより実施する。フィルター上の放射能を、液体シンチレーション計数により測定する。IC50値は、少なくとも3回の独立の測定から決定することができる。
【0131】
本発明において、本発明の化合物は、任意の便利な方法で(例えば、経腸的に又は非経口的に)投与することができる。投与の方法の例には、経口的及び経皮的が挙げられる。当業者は、本発明の化合物を投与する経路が大きく変わり得ることを知っている。他の経口投与に加えて、徐放性組成物は好まれるといえる。他の許容される経路には、注射(例えば、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内);皮下埋め込み;及びバッカル、舌下、局所、直腸内、膣内、及び鼻内投与が含まれてよい。生体内分解性、及び非生体内分解性、生分解性、及び非生分解性系の投与も使用されてよい。経口剤形の例には、錠剤、被覆錠剤、硬質及び軟質ゼラチンカプセル、溶液剤、乳剤、及び懸濁液剤が挙げられる。
【0132】
錠剤の形態をした個体組成物が調製される場合、有効主成分は製薬賦形剤と混合することができ、賦形剤の例にはシリカ、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、及びタルクが挙げられる。錠剤は、スクロース若しくは他の適当な物質でコートすることができ、又はそれらは、抑えられた即ち遅延された活性を有するように、及び予め決められた量の有効成分を連続的に放出するように処理することもできる。。ゼラチンカプセルは、有効成分を希釈剤と混合して生じた混合物を軟質又は硬質ゼラチンカプセル中に組み込むことにより得ることができる。シロップ剤又はエリキシル剤は、有効成分を、好ましくはカロリーのない甘味剤、防腐剤(例えば、メチルパラベン及び/又はプロピルパラベン)、着香剤、及び適当な色素とともに含んでよい。水に分散性の散剤又は顆粒剤は、有効成分を、分散剤若しくは湿潤剤と又はポリビニルピロリドンなどの懸濁剤と並びに甘味剤又は調味料と混合して含むことができる。直腸内投与は、直腸内温度で融解する結合剤(例えば、ココアバター及び/又はポリエチレングリコール)を使用して調製された座剤を使用して実施することができる。非経口投与は、薬学的に適合性の分散剤及び/又は湿潤剤(例えば、プロピレングリコール及び/又はポリエチレングリコール)を含む水性懸濁液剤、等張性食塩溶液剤、又は注射用無菌溶液剤を使用して実施することができる。有効成分は、マイクロカプセル又はマイクロスフェアとして、場合により1つ以上の担体又は添加剤とともに剤形化することもできる。有効成分は、シクロデキストリン、例えばα−、β−、若しくはγ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、及び/又はメチル−β−シクロデキストリンとの複合体の形態で提供することもできる。
【0133】
毎日投与される本発明の化合物の用量は、個々の基準により変化するであろうし、また、ある程度まで、治療される疾患(例えば、肥満、糖尿病、及び心臓代謝障害)の重症度により決定することができる。投与される本発明の化合物の用量は、投与される化合物にも依存して変化するであろう。本発明の化合物の用量の例には、約0.01から0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、76、80、85、90、95、100mg/kg(哺乳動物体重)が挙げられる。化合物は、単回用量で又はある期間にわたる多くのより少ない用量で投与することができる。化合物が投与される期間の長さは、個々の基準により変化して、所望の結果(即ち体脂肪の削減、体脂肪増加の防止、低下したグルコ−スレベル、改善されたインスリン感受性)が得られるまで継続することができる。したがって、治療は、治療される被験者、所望の結果、及び被験者が本発明による治療にいかに早く応答するかに依存して、1日から数週間、数ヶ月、又はさらに数年継続し得る。
【0134】
本発明の錠剤の可能な例は、次の様である。
成分 mg/錠剤
有効成分 100
粉末ラクトース 95
白色コーンスターチ 35
ポリビニルピロリドン 8
カルボキシメチルナトリウムデンプン 10
ステアリン酸マグネシウム 2
錠剤重量 250
【0135】
本発明のカプセルの可能な例は、次の様である。
成分 mg/錠剤
有効成分 50
結晶性ラクトース 60
微結晶性セルロース 34
タルク 5
ステアリン酸マグネシウム 1
充填カプセル重量 150
【0136】
上記カプセルにおいて、有効成分は、適当な粒子サイズを有する。結晶性ラクトース及び微結晶性セルロースは、互いに均一に混合され、篩いにかけられ、その後タルク及びステアリン酸マグネシウムが混合される。最終混合物は、適当なサイズの硬質ゼラチンカプセル中に充填される。
【0137】
本発明の注射溶液剤の可能な例は、次のようである。
成分 mg/錠剤
有効物質 1.0mg
1N HCl 20.0μl
酢酸 0.5mg
NaCl 8.0mg
フェノール 10.0mg
1N NaOH 適量添加 pH5
O 適量添加 1 mL
【0138】
合成
本発明の化合物は、有機合成の当業者に知られた多くの方法により調製することができる(例えば、米国特許第6,476,060B2号,J Med Chem 2004,47,627を参照されたい)。本発明の化合物は、下記の方法を、合成有機化学の当技術分野で知られた合成方法と一緒に使用して、又は当業者に知られているその変形により合成することができる。好ましい方法は、下記の方法を含むが、これらに限定されない。反応は、使用される試薬及び原料に適し且つ行われる変換に適当な溶媒中で実施される。分子に存在する官能基は、企てられている変換に合わせたものであるべきことは有機合成の当業者により理解されるであろう。このことは、時により、所望の本発明の化合物を得るために、合成ステップの順序を改変するか又は1つの特定の工程を他の工程に変えて選択するか判断することを必要とするであろう。この分野における任意の合成経路の計画において主に考慮することは、本発明で記載した化合物中に存在する反応性官能基の保護に使用される保護基の適切な選択であることも認識されるであろう。熟練した施術者への多くの代替法を記載した権威ある説明は、Greene and Wuts(Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley and Sons, 1991)である。本明細書中で挙げた全ての引用文献は、それらの全体を参照により本明細書に組み込む。
【0139】
スキーム1
「化3」

【0140】
スキーム1は、市販の2’−、3’−又は4’−メトキシ−2−フェニルアセトフェノンから、HBr/HOAc又はBBr/CHClを使用するO−脱メチル化及び生じたフェノールのt−ブチルブロモアセテートによるアルキル化により調製した2’−、3’−、又は4’−(カルボ−t−ブトキシメチル)−2−フェニルアセトフェノンを、塩基の存在下に、ピペリジンを含む37%ホルムアルデヒド水溶液中で還流下に対応するアクリロフェノンに転化させる方法(ステップa)を示す。エタノール中でのアクリロフェノンのヒドラジン水和物による処理は、3,4−ジアリ−ルピラゾリンを生成させることができる(ステップb)。ジアリ−ルピラゾリンは、対応するアリ−ルスルホンアミド、CS及びMeIから調製されたアリ−ルスルホニルジチオイミドカルボン酸メチルエステルにより、溶媒中(例えば、アセトニトリル)トリエチルアミンの存在で還流下にさらに処理して(J.Med Chem.,47,627(2004);Chem.Ber.1966,99,2885を参照されたい)、ピラゾール−1−カルボキシイミドチオン酸メチルエステルを生成させることができる(ステップc)。これらのイミノチオエーテルをメチルアミン水溶液及び塩化メチレンに室温でさらに触れさせると、ピラゾリン−1−カルボキサミジンを生ずることになる(ステップd)。このエステルのTFA/CHClを使用する加水分解はカルボン酸を生ずることになる(ステップe)。
【0141】
スキーム2
「化4」

【0142】
スキーム2は、2−(2'−、3'−又は4'−カルボ−t−ブトキシメトキシフェニル)アセトフェノン(スキーム1と同様にして調製した)が、どのようにして対応するアクリロフェノンを生ずるかを記述するものである(ステップa)。アクリロフェノンをエタノール中ヒドラジン水和物で処理すると、3,4−ジアリ−ルピラゾリンを生成させることができる(ステップb)。ジアリ−ルピラゾリンは、アセトニトリルのような溶媒中トリエチルアミンの存在下で還流下にアリ−ルスルホニルジチオイミドカルボン酸メチルエステルによりさらに処理して、ピラゾール−1−カルボキシイミドチオン酸メチルエステルを生成させることができる(ステップc)。さらにこれらのイミノチオエーテルをメチルアミンと塩化メチレンとの水溶液に室温で触れさせると、ピラゾリン−1−カルボキサミジンを生ずる(ステップd)。TFA/CHClを使用するこのエステルの加水分解はカルボン酸を生ずる(ステップe)。
【0143】
スキーム3
「化5」

【0144】
スキーム3は、4’−クロロ−2−フェニルアセトフェノンの、37%ホルマリン水溶液及びピペリジン及び酢酸を含むMeOH中還流下におけるアクリロフェノンを生ずる転化を示す(J.Agric.Food Chem.1979,27(2),406)(ステップa)。アクリロフェノンをエタノール中でヒドラジン水和物により処理すると、3,4−ジアリ−ルピラゾリンを生成させることができる(ステップb)。ジアリ−ルピラゾリンは、アセトニトリルのような溶媒中トリエチルアミンの存在下に還流下で、さらにアリ−ルスルホニルジチオイミドカルボン酸メチルエステルで処理して、ピラゾール−1−カルボキシイミドチオン酸メチルエステルを生成させることができる(ステップc)。さらに、これらのイミノチオエーテルを、β−アラニンt−ブチルエステルにトリエチルアミンを含むエタノール及び塩化メチレン中で触れさせるとピラゾリン−エステルを生ずる(ステップd)。このエステルのTFA/CHClを使用する加水分解は、カルボン酸を生ずる(ステップe)。このエステルをメタノール中約0°ないし室温で無水アンモニアにより処理すると、カルボキサミド化合物を生成させることができる(ステップf)。あるいは、イミノチオエーテルは、他のアミノ酸エステルと結合して、付加物を生ずることができ(ステップg)、その付加物はカルボン酸に加水分解することができる(ステップh)。これらの酸は、ジクロロメタン中で塩化オキサリル続いて無水アンモニア、又はピリジン/THF中でBocO続いて無水アンモニアを使用して、カルボキサミドに転化させることができる(ステップi)。
【0145】
スキーム4
「化6」

【0146】
スキーム4は、4’−クロロ−2−フェニルアクリロフェノンを、塩化メチレン中でm−クロロ過安息香酸により酸化すると、いかにしてエポキシドを生じるかということ(ステップa)、それをヒドラジン水和物によりエタノール溶液中約35−40℃で処理すると3,4−ジアリ−ルピラゾリンアルコールを生ずることができる(ステップb)ことを図示する。ピラゾリンは、ジ−t−ブチル−ジカーボネート(t−Boc無水物)を使用して保護し、塩基の存在下でN−t−Boc−ピラゾリンを生ずることができる(ステップc)。このカルバメートアルコールは、次にDMFのような溶媒中における水素化ナトリウムの使用で脱プロトン化され、続いて4−ブロモクロトン酸エチルエステルでアルキル化されて、エステルを生ずることができる(ステップd)。t−BOC基の除去は、TFAでの処理により達成することができる(ステップe)。次に、ピラゾリンは、アセトニトリルのような溶媒中トリエチルアミンの存在下で還流下に、アリ−ルスルホニルジチオイミドカルボン酸メチルエステルと反応させて、ピラゾール−1−カルボキシイミドチオ酸メチルエーテルを生ずることができる(ステップf)。さらに、これらのイミノチオエーテルを、メチルアミンと塩化メチレンの水溶液に室温で触れさせるとピラゾリン−1−カルボキサミジンを生ずることができ(ステップg)、そしてこのエステルをLiOHを使用してTHF溶液中で加水分解すると、カルボン酸を生成させることができる(ステップh)。カルボキサミドは、このエステルをアルコール中−20℃ないし外界温度で無水アンモニア処理することにより調製することができる(ステップi)。
【0147】
スキーム5
「化7」

【0148】
スキーム5は、3,4−ジアリ−ルピラゾリン及びS−メチルイソチオ尿素のピリジン中の溶液を加熱することによりピラゾリン−1−カルボキサミジンを形成させることができることを示す(ステップa)。このアミジンを4−シアノベンゼンスルホニルクロリドとアセトニトリル中N,N−ジメチル−4−アミノピリジン及びトリエチルアミンの存在下で処理すると、カルボキサミジン結合スルホンアミド誘導体を生ずることができる(ステップb)。このニトリルのフェニルカルボキサミジンへの転化は、MeOH中0℃ないし室温でHCl(気体)、続いて炭酸アンモニウムを使用して、又はMeOH中約0℃ないし室温で無水アンモニアを使用して達成することができる(ステップc)。
【0149】
スキーム6
「化8」

【0150】
スキーム6は、4−クロロベンゾイルクロリドとイソシアン酸アンモニウムとから作製された4−クロロベンゾイルイソチオシアネート(J Heterocycl.Chem.1991,28,1645を参照されたい。)と3,4−ジアリ−ルピラゾリンとの新鮮に調製された無水アセトニトリル溶液を冷却して攪拌する反応が、ピラゾリン付加物を生成させることができることを示す(ステップa)。このチオカルボキサミドを、HgClの存在下でエチルβ−アラニンなどのアミノ化合物により処理すると、ベンゾイルグアニジンを生成させることができる(ステップb)。このエステルのLiOHを使用するTHF水溶液中の加水分解は、カルボン酸を生ずることができる(ステップc)。さらに、この酸の酸塩化物への転化とそれに続く無水アンモニア処理は、カルボキサミドを生ずる(ステップd
)。
【0151】
スキーム7
「化9」

【0152】
スキーム7は、37%ホルマリン水溶液とピペリジン及び酢酸を含むMeOHとの中の4’−ニトロ−2−フェニルアセトフェノン溶液の縮合が、還流下における加熱後、対応するアクリロフェノンを生ずることを示す(ステップa)。アクリロフェノンをエタノール中でヒドラジン水和物により処理すると、3,4−ジアリ−ルピラゾリンを生成させることができる(ステップb)。次にこのピラゾリンは、アセトニトリルのような溶媒中トリエチルアミンの存在下で還流下に、アリ−ルスルホニルジチオイミドカルボン酸メチルエステルと反応させると、対応するピラゾール−1−カルボキシイミドチオ酸メチルエステルを生ずることができる(ステップc)。ニトロ基は、塩基性水溶液中で亜ジチオン酸ナトリウムを使用して還元し、アニリン化合物を生成させることができる(ステップd)。塩基の存在下でのエチルマロニルクロリドによるアニリンのアシル化は、アミドを生ずる(ステップe)。このアミドエステルの、メタノール又は塩化メチレンなどの溶媒中0度ないし室温での、メチルアミン又は無水アンモニアなどのアミンによる処理は、末端カルボキサミド基を有するピラゾール−1−カルボキサミジンを生ずる(ステップf)。あるいは、アニリン化合物は、メタンスルホニルクロリドで処理されて、スルホンアミドを生ずることができ(ステップg)、それは、メチルアミン水溶液及び塩化メチレンに室温で触れさせると、ピラゾリン−1−カルボキサミジンを生ずる(ステップh)。
【0153】
スキーム8
「化10」

【0154】
スキーム8は、4’−シアノ−2−フェニルアクリロフェノンのヒドラジン水和物によるエタノール中における処理が、3,4−ジアリ−ルピラゾリンを生成させるであろうことを示す(ステップa)。このピラゾリンは、次に、1当量のナトリウムアジドと1当量のトリ−n−ブチル錫クロリドとの反応によりin situで便利に調製されるトリ−n−ブチル錫アジド(J.Med.Chem.1991,56,2395を参照されたい)と、還流するトルエン又はキシレン中で反応させて、トリ−n−ブチル錫−テトラゾ−ル付加物を生成させることができる(ステップb)。トリ−n−ブチル錫付加物は、1当量の水酸化ナトリウム水溶液及び1当量のトリチルクロリドにより室温で処理することにより、トリチル−テトラゾ−ル付加物に転化することができる(ステップc)。この付加物とアリ−ルスルホニルジチオイミドカルボン酸メチルエステルとの、アセトニトリルのような溶媒中トリエチルアミン存在下での還流下における反応は、ピラゾール−1−カルボキシイミドチオン酸メチルエステルを生ずる(ステップd)。このイミノチオエーテルのメチルアミン水溶液及び塩化メチレンによる室温での処理は、ピラゾール−1−カルボキサミジンを生ずる(ステップe)。THF中室温で水性TFAを使用するトリチル基の除去は、保護基のないテトラゾ−ルを生ずる(ステップf)。
【0155】
スキーム9
「化11」

【0156】
スキーム9は、市販の2’−、3’−又は4’−メトキシ−2−フェニルアセトフェノンから、HBr/HOAc又はBBr/CHClを使用するO−脱メチル化及び生じたフェノールの、Nuclear Medicine and Biology,32,799(2005)に記載されたようにして調製されたアルキルキャップ又はTBDMSキャップハロゲン化物を使用したアルキル化により、調製された2−フェニルアセトフェノンの2’−、3’−、又は4’−ポリエトキシル化類似体を転化させる方法を示す。これらのポリエーテルケトンの、ピペリジンを含む37%ホルムアルデヒド水溶液中における還流下の処理は、対応するアクリロフェノンを生ずる(ステップa)。アクリロフェノンのヒドラジン水和物によるエタノール中での処理は、3,4−ジアリ−ルピラゾリンを生成させることができる(ステップb)。ジアリ−ルピラゾリンは、さらに対応するアリ−ルスルホンアミド、CS及びMeIから調製されたアリ−ルスルホニルジチオイミドカルボン酸メチルエステル(J.Med Chem.,47,627(2004);Chem.Ber.1966,99,2885を参照されたい)で、溶媒中(例えば、アセトニトリル)トリエチルアミンの存在下で還流下に処理して、ピラゾール−1−カルボキシイミドチオ酸メチルエステル生成させることができる(ステップc)。さらにこれらのイミノチオエーテルをメチルアミンと塩化メチレンの水溶液に室温で触れさせると、ピラゾリン−1−カルボキサミジンを生ずる(ステップd)。THF中における無水テトラブチルアンモニウムフルオリドを使用するTBDMSキャップ基の除去は、ヒドロキシル−PEGアナログを生ずる(ステップe)。
【0157】
本発明の化合物の1つの立体異性体は、1つ又は複数のその対応物よりも強力なカンナビノイド受容体アンタゴニストである可能性がある。したがって、立体異性体は本発明に含まれる。必要なときに、ラセミ体の分離は、キラルなカラムを使用するHPLCにより、又は、Wilen,S.H. Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions 1972,308に記載されたものなどの分割剤を使用する、若しくは鏡像異性的に純粋な酸及び塩基を使用する光学分割により達成することができる。キラルな本発明の化合物は、キラルな触媒又はキラルなリガンドを使用して(例えば、Jacobsen,E.Ace.Chem.Res.2000,33,421−431)、又は不斉合成の当業者に知られている他の鏡像異性−及びジアステレオ異性選択的反応及び試薬を使用して直接合成することもできる。立体異性体の例には、下に示す式Ia及びIbの化合物が挙げられる
「化12」

【0158】
本発明の他の特徴は、本発明の例示のために与えられた、本発明を限定することは意図しない典型的態様の次の説明の過程で明らかになるであろう。
【実施例】
【0159】
表1a及び2は、本発明の化合物の代表的な例を示す。各表中の各例は、本発明の個々の種を表わす。
【0160】
【表1a】







【0161】
【表1b】







【0162】
【表1c】




【0163】
【表1d】




【0164】
【表2】









【0165】
【表3】




【0166】
本発明の多数の改変及び変形が、上記の教示に照らして可能である。それゆえ、本発明は、本明細書中の具体的な記載とは異なるように、付記した請求項の範囲内で実施することができることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

式中、
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”は、H、C1−6アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−6アルキル、NO、NR、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、CHO(CHCOR、CHOCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、CHO(CHPO(OR)、NR(CHCOR、NR(CHPO(OR)、NRCHCH=CHCOR、NRSOR、NRCO(CHCOR、NRCO(CHCONR、O(CHCOR、O(CH(CHCOR、CHO(CHCOR、O(CHCONR、O(CH(CHCONR、O(CH−テトラゾ−ル、CHO(CHCONR、CHO(CH−テトラゾ−ル、O(CH(CH−テトラゾ−ル、NR(CHCOR、CHNR(CHCOR、NR(CH(CHCOR、NR(CHCONR、CHNR(CHCONR、NR(CH(CHCONR、NR(CH−テトラゾ−ル、CHNR(CH−テトラゾ−ル、NR(CH(CH−テトラゾ−ル、C(NH)NR、(CHC(NH)NR、O(CHCONR、O(CHC(NH)NR、CHO(CHCONR、NR(CHC0NR、OCHCH=CHCOR、CHOCHCH=CHCONR、NRCHCH=CHCONR、(CH−テトラゾ−ル、O(CH−テトラゾ−ル、O(CHCHO)R、NR(CHCHO)R、及びSONHCH;から独立に選択され;
Zは、H、C1−6アルキル、OH、O−C1−6アルキル、O(CHCHO)R、OC(O)−C1−6アルキル、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、O(CHCONH、O(CHC(NH)NH、OCHCH=CHCONH、O(CH−フェニル−(CHCOR、及びO(CH−フェニル−(CH−テトラゾ−ルから選択され;
Qは、H、C1−6アルキル、(CH−アリ−ル、(CHCHO)R、(CH−ヘテロアリ−ル、(CH−テトラゾ−ル、−CHA(CHC(O)NR、CHA(CHCOR、(CH−フェニル−(CHCOR、(CH−フェニル−(CHCONH、及び(CH−フェニル−(CH−テトラゾ−ルから選択され、ここで、ヘテロアリ−ル、フェニル、及びアリ−ルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択される0ないし3個の基により置換されており;
Mは、C=O又はSOであり;
Rは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、及びC2−6アルキニルから独立に選択され;
は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、及びC2−6アルキニルから独立に選択され;
Aは、H、C1−6アルキル、(CH3−6−シクロアルキル、CHOH、CH(CH)OH、及び(CH−フェニルから選択され、ここで、フェニルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択される0ないし3個の基で置換されており;
pは、2ないし12から選択され;
mは、0、1、2、及び3から選択され;及び
nは、1、2、及び3から選択され;
ただし、次のうち少なくとも1つは満足されている:
(a)X、Y、X’、Y’、X”、及びY”の少なくとも1つは、H、C1−6アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−6アルキル、NO、及びNR以外のものであり;
(b)Zは、H、C1−6アルキル、OH、O−C1−6アルキル、アセチルオキシ、及びプロピオニルオキシ以外のものであり;又は、
(c)Qは、H、C1−6アルキル、(CH−ヘテロアリ−ル、及び(CH−アリ−ル以外のものである)
又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、
前記式中、
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”の少なくとも1つは、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、CHO(CHCOR、CHOCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、CHO(CHPO(OR)、NR(CHCOR、NR(CHPO(OR)、NRCHCH=CHCOR、NRCO(CHCONR、NRSOCH、NRCO(CHCOR、O(CHCOR、O(CH(CHCOR、CHO(CHCOR、O(CHCONH、O(CH(CHCONR、O(CH−テトラゾ−ル、CHO(CHCONH、CHO(CH−テトラゾ−ル、O(CH(CH−テトラゾ−ル、NR(CHCOR、CHNR(CHCOR、NR(CH(CHCOR、NR(CHCONR、CHNR(CHCONR、NR(CH(CHCONR、NR(CH−テトラゾ−ル、CHNR(CH−テトラゾ−ル、NR(CH(CH−テトラゾ−ル、C(NH)NR、(CHC(NH)NR、O(CHCONR、O(CHC(NH)NH、CHO(CHCONR、NR(CHCONH、OCHCH=CHCONR、CHOCHCH=CHCONR、NRCHCH=CHCONR、(CH−テトラゾ−ル、O(CH−テトラゾ−ル、O(CHCHO)R、NR(CHCHO)R、及びSONHCHから独立に選択され;
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”の他のものは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、NO、及びNRから独立に選択され;
Rは、H、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、及びC2−4アルキニルから独立に選択され;
は、H、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、及びC2−4アルキニルから独立に選択され;
Zは、H、C1−4アルキル、OH、O−C1−4アルキル、アセチルオキシ、及びプロピオニルオキシから選択され;
Qは、H、C1−4アルキル、(CHCHO)R、(CH−ヘテロアリ−ル、及び(CH−アリ−ルから選択され、ここで、ヘテロアリ−ル及びアリ−ルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択される0ないし3個の基で置換されており;
Mは、C=O又はSO
pは、2ないし12から選択され;
mは、0、1、2、及び3から独立に選択され;及び
nは、1、2、及び3から独立に選択される;
化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、
式中、
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”は、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、NO、O(CHCHO)R、NR(CHCHO)R、及びNRから独立に選択され;
Zは、O(CHCHO)R、O(CHCOR、OCHCH=CHCOR、O(CHPO(OR)、O(CHCONH、O(CHC(NH)NH、OCHCH=CHCONH、O(CH−フェニル−(CHCOR、及びO(CH−フェニル−(CH−テトラゾ−ルから選択され;
Qは、H、C1−4アルキル、(CHCHO)R,(CH−ヘテロアリ−ル、及び(CHアリ−ルから選択され、ここで、ヘテロアリ−ル及びアリ−ルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNOから選択される0ないし3個の基で置換されており;
Mは、C=O又はSOであり;
Rは、H、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、及びC2−4アルキニルから独立に選択され;
pは、2ないし12から選択され;
mは、0、1、2、及び3から独立に選択され;及び、
nは1、2、及び3から独立に選択される;
化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物であって、
式中、
X、Y、X’、Y’、X”、及びY”が、次のもの:H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、NO、O(CHCHO)R、NR(CHCHO)R、及びNR、から個別に選択され;
Zは、H、C1−4アルキル、OH、O−C1−4アルキル、アセチルオキシ、及びプロピオニルオキシから選択され;
Qは、−(CH−テトラゾ−ル、−CHA(CHC(O)NHR、CHA(CHCOR、(CH−フェニル−(CHCOR、(CH−フェニル−(CHCONH、(CHフェニル−(CH−テトラゾ−ル、及び(CHCHO)Rから選択され;
Mは、C=O又はSOであり;
Aは、H、C1−4アルキル、(CH−C3−6−シクロアルキル、CHOH、CH(CH)OH、(CH−フェニルから選択され、ここで、フェニルは、H、C1−4アルキル、ハロゲン、CF、O−C1−4アルキル、及びNO、から選択される0ないし3個の基で置換されており;
Rは、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、及びC2−6アルキニルから独立に選択され;
pは、2ないし12から選択され;
mは、0、1、2、及び3から独立に選択され;及び
nは、1、2、及び3から独立に選択される;
化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
表1a、1b、1c、1d、2、及び3の化合物から選択される請求項1に記載の化合物又はそれらの立体異性体若しくは薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項7】
肥満、糖尿病、心臓代謝障害、及びそれらの組み合わせから選択される疾患を治療する方法であって、それが必要な哺乳動物に、治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項8】
心臓代謝障害が、高血圧及び脂質代謝異常から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
異脂肪血症が、高密度リポタンパク質の低レベル、低密度リポタンパク質の高レベル、トリグリセリドの高レベルから選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
肥満の合併性を治療する方法であって、それが必要な哺乳動物に治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項11】
合併性が、糖尿病、メタボリック症候群、認知症、及び心疾患から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
合併性が、高血圧;胆嚢疾患;胃腸疾患;生理不順;変形性関節症;うっ血性静脈潰瘍;換気過少症候群;睡眠時無呼吸;いびき;冠状動脈疾患;動脈硬化疾患;偽脳腫瘍;事故多発性;手術時リスク増大;骨関節炎;高コレステロール;及び卵巣、子宮頸部、子宮、乳房、前立腺、及び胆嚢の悪性腫瘍の増大した発生率から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
糖尿病障害が、1型糖尿病、2型糖尿病、不十分な耐糖性、及びインスリン抵抗性から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項14】
肥満、糖尿病、心臓代謝障害、及びそれらの組み合わせから選択される疾患を治療する方法であり、第2の治療剤が疾病の治療に有用であって、それが必要な哺乳動物に、治療的有効量の
a.請求項1に記載の化合物;及び
b.該疾患の治療に有用な第2の治療剤;
を投与することを含む方法。
【請求項15】
第2成分が、食欲抑制剤シブトラミン及び腸リパ−ゼ阻害剤オリルスタットから選択される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2成分が、糖尿病を治療するために有用なものである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物の、治療のための使用。
【請求項18】
肥満、糖尿病、心臓代謝障害又はそれらの組み合わせを治療するための医薬製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−536221(P2009−536221A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510118(P2009−510118)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/068342
【国際公開番号】WO2007/131219
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(507396910)
【Fターム(参考)】