説明

肥満防止剤及び食用組成物

【課題】本発明は、安全性に優れ、食生活に簡便に組み込むことが可能で、ヒトにおいても実効のある肥満防止剤及びこれを配合した食用組成物を提供することを課題とした。
【解決手段】アクチニジン、アクチニジン及びアスコルビン酸、又は、アクチニジン及びアスコルビン酸及び食物繊維を有効成分として含有してなる肥満防止剤が提供され、ここで前記有効成分はキウイフルーツから得られる抽出物を含み、前記有効成分のうち少なくともアクチニジンが親水系物質で被覆されたものが望ましい。又、前記肥満防止剤を含有してなる肥満防止用食用組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともアクチニジンを有効成分として含有してなる肥満防止剤及びこれを含んでなる食用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、我国においても肥満が健康上の重要な関心事となっている。肥満が注目される理由は、肥満者に心疾患、動脈硬化、高血圧、糖尿病等のいわゆる生活習慣病を発症する頻度が多く、死亡率が高いという事実が背景にある。肥満は糖尿病、高脂血症、高血圧、脂肪肝、動脈硬化症を誘発する大きな要因であることが知られている。日本人の主な死亡病因の順位は癌、心臓病、脳卒中であるが、心臓病と脳卒中は動脈硬化が主たる原因であることを考慮すれば、動脈硬化型疾患による死因が極めて多いことが理解できる。
【0003】
肥満の状態とは、一般的に、摂取エネルギーのうち運動等の諸活動によっても消費されない糖質や脂質等のエネルギー源が生体組織とくに皮下脂肪組織や臓器周辺組織に異常に蓄積された結果、体重が骨格系あるいは生理機能の限界を超えて増加した状態をいう。そして、エネルギー源が生体内に脂肪として蓄積される蓄積脂肪の分布状態について、これが前記各種疾病との関連において重要であることが明らかになり、とりわけ内蔵脂肪型肥満(内臓肥満、腹部肥満ともいう)に高血糖症、高血圧症、高脂血症のうち2つ以上を合併した状態をメタボリックシンドローム(代謝症候群)と呼び、各症状が軽度であっても、複数の症状が重なることにより相乗的に動脈硬化性疾患の発症頻度が高まるため、ハイリスク群としてこの予防と治療に注目が集まっている。
【0004】
肥満状態を判定する指標として、従来、標準体重との乖離度、BMI(ボディマスインデックス)、体脂肪率等が用いられてきたが、これらは肥満状態を外観的あるいは間接的にしか判断できない。このため、蓄積脂肪の分布状態をCT(コンピュータ断層撮影)装置を用いて測定し、その画像から蓄積脂肪面積を求め、これを基準として肥満を判定する方法が開発され、普及しつつある。
【0005】
ところで、肥満を防止するために、医療分野における治療や予防はもとより、日常的に摂取する食事や各種飲食品を通して肥満を予防する試みもこれまでに数多くなされてきた。例えば、摂取する脂質の代謝を調節したり、体脂肪の燃焼を促進したり蓄積を抑制することをねらった食用素材として、L−カルニチン又はこれを含む畜肉ペプチド(特許文献1、2及び3)、藻類の抽出物(特許文献4)、カロテノイド(特許文献5)、アントシアニジン類(特許文献6)、緑茶カテキン(特許文献7)、ポルフィラン改質低分子化合物(特許文献8)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの大部分は培養細胞又は実験動物の試験データをもってヒトへの適用の可能性を提案したものであり、実用面において実際にヒトが摂取した場合でも肥満防止効果を十分に発現するものは数少ないのが実状であった。したがって、実用面においても明確な肥満防止効果あるいは体脂肪蓄積抑制効果を奏する食用素材が求められていた。
【0007】
【特許文献1】特開平7−196485号公報
【特許文献2】特開平10−66515号公報
【特許文献3】特開2000−256200号公報
【特許文献4】特開2000−72642号公報
【特許文献5】特開2003−95930号公報
【特許文献6】特開2002−153240号公報
【特許文献7】特開2006−131512号公報
【特許文献8】特開2006−104100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
かかる実情に鑑み、本発明は、安全性に優れ、食生活に簡便に組み込むことが可能で、ヒトにおいても実効のある肥満防止剤及びこれを配合した食用組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明者らは、肥満症状とこれを改善するための素材について鋭意検討を重ねた結果、意外にもアクチニジンが内臓脂肪及び/又は皮下脂肪の蓄積を顕著に改善し得ること、肥満症状の改善に有効であること、及びこれを飲食品等の食用組成物に有効利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、アクチニジンを有効成分として含有してなることを特徴とする肥満防止剤が提供される。
【0011】
本発明の肥満防止剤は、アクチニジン及びアスコルビン酸を有効成分として含有してなるものがより望ましく、更には、アクチニジン及びアスコルビン酸及び食物繊維を有効成分として含有してなるものがより一層望ましい。
【0012】
本発明の肥満防止剤において、前記の有効成分、すなわち、アクチニジン、アクチニジン及びアスコルビン酸、及び、アクチニジン及びアスコルビン酸及び食物繊維、はキウイフルーツを原料として得られるものが望ましく、キウイフルーツの望ましい態様はキウイフルーツの果肉、果汁又はこれらの抽出物あるいは精製物である。
【0013】
本発明の肥満防止剤の有効成分は、少なくともアクチニジンが親水系物質で被覆され又は親水系物質に吸着された形態のものであることが望ましい。
【0014】
なお、本発明の肥満防止剤における肥満防止は、体脂肪の低減によるものであることが好適である。又、体脂肪の低減は内臓脂肪の蓄積を抑制すること及び/又は皮下脂肪の蓄積を抑制することであるものが望ましく、更に望ましくは内臓脂肪蓄積抑制によるものである。
【0015】
本発明によれば、又、前記肥満防止剤のいずれかを含有してなる食用組成物が提供され、該食用組成物は飲食品であることが望ましい。更には、この食用組成物は、前記肥満防止剤のいずれかを含有してなるものであって、肥満防止である旨、体脂肪低減である旨、内臓脂肪蓄積抑制である旨、又は、皮下脂肪蓄積抑制である旨のうち少なくとも1の表示を付したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の肥満防止剤は、従来から食用に供せられ食経験の豊富な原料から得られる物質を使用するために安全性が優れており、ヒトが摂取することによって体重、内臓脂肪及び皮下脂肪を顕著に低減させる効果を奏し、肥満症状を効果的に改善し得る。又、本発明の肥満防止剤は、これを単独で経口摂取して肥満改善用の栄養補助食品として利用することができ、通常の食事メニューの加工食品としても摂取することができる。ヒト以外の動物、例えば、家畜やペットの餌料や経口摂取物の形態でも利用することも可能である。更に、本発明の肥満防止剤は、肥満症状の発現を予防する効果も期待できる。したがって、本発明の肥満防止剤及びこれを含有する食用組成物は生活習慣病やメタボリックシンドロームに対応した経口摂取物として適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。先ず、本発明の肥満防止剤はアクチニジンを有効成分として含有してなることを特徴とする。
【0018】
アクチニジンは、分子量が約24kDaの蛋白質分解酵素の一種で、システインプロテアーゼに分類される(EC3.4.22.14)。キウイフルーツ、マタタビ、サルナシ等のマタタビ属(Actinidia)に属する植物の果実に含まれ、食品添加物として使用され、ゼラチンのゲル化抑制、食肉の軟化及び分解促進、舌苔の除去等の作用が知られている。本発明の肥満防止剤では、かかるアクチニジンを単独で又は以下に述べる特定原料成分とともに有効成分として含有せしめる。
【0019】
本発明に係るアクチニジンの態様は、前記マタタビ属植物の果実、果汁、これらの乾燥物、抽出物及び精製物からなる群から選択される1種又は2種以上とすることができるが、取り扱い性、製品安定性、製造コストの面から抽出物が好適である。該抽出物は、前記マタタビ属植物の果実全体あるいは外皮及び/又は果芯部を除いた果肉を適当に細断し又は圧搾して果汁となし、これに等重量ないし約50倍重量の水又は含水エタノールを加えて十分に混合した後、不溶物を濾過あるいは遠心分離等により除去して抽出液を採取し、前記抽出溶媒を減圧乾燥や凍結乾燥等によって除去することにより得ることができる。ここで、マタタビ属植物としてはキウイフルーツが入手容易であるため好適であり、アクチニジンの活性低下を防止するために、含水エタノールはエタノール濃度が約10重量%以下であることが望ましく、又、前記各処理は約60℃以下、より好ましくは30℃以下で操作するのがよい。なお、本発明に係るアクチニジンの起源はマタタビ属植物に限定されることはなく、又、アクチニジンは前記抽出物を分別、分画、カラムクロマトグラフィー等の公知の手段によって更に高純度に精製したものでもよい。本発明に係るアクチニジン及びこの含有物は、本発明の目的に鑑み、経口摂取時の胃中におけるアクチニジン活性の低下を抑制するために、硬化油脂、ロウ、固形パラフィン等の疎水性物質やセルロース、セルロース誘導体、化工デンプン等の親水性物質を用いて公知の方法で被覆処理し、粒状物あるいは粉末物に加工することが望ましい。
【0020】
本発明の肥満防止剤のより望ましい態様は、アクチニジン及びアスコルビン酸を有効成分として含有してなることを特徴とする。
【0021】
この態様において、アクチニジンは前述のものを使用することができる。アスコルビン酸は、アスコルビン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の塩類、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸とのエステル類、アスコルビン酸鉄化合物、アスコルビン酸二リン酸等を含めて、公知のものを用いることができる。アクチニジンを基準とするときのアスコルビン酸の比率(重量基準。以下同様)は、アクチニジン:アスコルビン酸=1:0.01〜10、より好ましくは1:0.05〜5、更に望ましくは1:0.1〜3である。本発明においては、アクチニジンとアスコルビン酸を併用することによって、アクチニジンのみを有効成分とする場合に比べて、より強力な肥満防止効果を発現させることができる。両者の比率が前記範囲の下限値を下回って少ないと併用による所望効果が発現し難くなり、前記範囲の上限値を超えて多く併用しても更なる所望効果を期待できない。
【0022】
本発明の肥満防止剤の更に望ましい態様は、アクチニジン及びアスコルビン酸及び食物繊維を有効成分として含有してなることを特徴とする。
【0023】
この態様において、アクチニジン及びアスコルビン酸は前述のものを使用することができる。食物繊維は、我国では、「ヒトの消化酵素では消化されない食品中の難消化性成分の総体」(「五訂日本食品標準成分表」(科技庁資源調査会編))と定義され、ほとんど全ての食品や食品原料に含まれており、その生理作用として大腸機能の改善(便通や大腸内環境の改善)、血糖値の改善、血中コレステロールの改善等が知られている。一般的に不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分類され、前者には主に植物細胞壁を構成する成分であるセルロース、ヘミセルロース、ペクチン等の多糖類やリグニン、キチン等があり、後者には植物細胞質中のペクチン、海藻多糖類(アルギン酸、ラミナリン、フコイダン等)、グルコマンナン、グアーガム、アラビアガム、アカシアファイバー、ガラクトマンナン、微生物多糖類(キサンタンガム、カードラン、プルラン等)、化学的処理物(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、化工デンプン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等)、オリゴ糖等がある。
【0024】
本発明の肥満防止剤において、アクチニジンと併用する食物繊維は前述の例示に限定されることなく公知のものを使用することができる。アクチニジンと食物繊維との比率は、アクチニジン:食物繊維=1:0.1〜100、より好ましくは1:1〜50、更に望ましくは1:2〜30である。アクチニジンとアスコルビン酸との比率は前記と同様のものでよい。本発明においては、アクチニジン及びアスコルビン酸及び食物繊維を併用することによって、アクチニジンのみを有効成分とする場合やアクチニジン及びアスコルビン酸を有効成分とする場合に比べて、更に一層顕著な肥満防止効果を発現させることができる。これら三成分の比率が前記範囲の下限値を下回ると併用による所望効果が低下する傾向があり、前記範囲の上限値を超過して併用しても更なる所望効果を期待できない。
【0025】
本発明の肥満防止剤には、公知の肥満改善作用、体重低減作用、ダイエット作用、食事性脂質吸収阻害作用、体脂肪燃焼促進作用等を有する成分やその含有素材を併用してもよい。これらの例として、緑茶カテキン、大豆油不けん化物、大豆イソフラボン、α−リポ酸、カルニチン、コエンザイムQ10、ファセオラミン、カフェ酸、ジヒドロキシカルコン類、分岐アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)、アントシアニジン、レバン、ベタイン、エラジタンニン、低分子化キトサン、ロスマリン酸及びそのエステル、共役ポリエン酸、クルクミン、レスベラトロール、フォルスコリン、ベルゲニン、スクレロチオリン、ジアシルグリセロール、ポルフィランの低分子化合物、クロロゲン酸、カロテノイド(リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン等)、ギムネマ酸、ヒドロキシクエン酸、アスチルビン、加熱改質アラビアガム、ヘスペリジン、分子量5万〜15万の低分子化ペクチン、ビール酵母産生マンナン、ウリジン、オレアノール、オレアノール酸、オイゲノール、テアフラビン、大豆サポニン、フェニル−O−D−グルコース、3,4,6−トリメトキシ−O−D−グルコース、イタコン酸及びその塩、ヒドロキシプロリン及びそのN−アシル誘導体、α化澱粉とショ糖脂肪酸エステルとの結合物、プロシアニジン、重合度3〜19の環状及び鎖状ポリ乳酸、α−メチル−D−キシロシド、キシロオリゴ糖、L−アラビノース、難消化性デキストリン、バロネア酸及びその配糖体、カプサイシン、ポリフェノール、サラシノール、ガノデリン酸、大豆ペプチド、ホエーペプチド、牛肉ペプチド、ふすま、米糠、サイリウム種皮、分離大豆蛋白等を挙げることができる。
【0026】
又、次に掲げる植物、海藻、茸類等の各部位の乾燥物、それらの水又は低級アルコール抽出物を例示できる。すなわち、グアバ葉、ギムネマシルベスタ葉、ガルシニアカンボジア果皮、シソ葉又は種子、月見草種子、キラヤ樹皮、ユーカリ葉、シャクヤク花、トチュー葉、黒米、ピーナッツ渋皮、ウーロン茶葉、バナナ果皮、イタドリ茎、ブドウ種子又果皮、カシス果実、キキョウ根、黄杞葉、オリーブ葉、ケイヒ樹皮、アスナロ全草、栗渋皮、クマザサ葉、シラカバ樹皮、アムラ果実、クワ葉、ヒヨコマメ、アカショウマ根、コレウス・フォルスコリ根、カワラケツメイ葉又はサヤ、ウコン根、海藻、クローブ蕾、オレガノ全草、アカメガシワ樹皮、ウラジロガシ樹皮、オトギリソウ全草、サラシアレティキュラータ根、エビスグサ全草、アロエ葉肉、エゾウコギ根、霊芝・マイタケ・エノキタケ・カバノアナタケ等の子実体、脱脂米胚芽、ケール葉等である。尚、本発明の肥満防止剤はこれらの例示によって制限されるものではない。
【0027】
本発明の肥満防止剤は、必須原料成分としてのアクチニジンを該剤全量に対して約0.01重量%〜100重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約80重量%とし、又、アスコルビン酸及び食物繊維はアクチニジンに対する前述の各比率の範囲内で適宜に選択し、これらとともに必要に応じて前記の肥満防止に関連する作用を有する公知の成分やその含有素材、経口摂取するために通常利用される公知の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、湿潤剤、流動化剤、保存剤、界面活性剤、安定剤、希釈剤、溶解剤、等張化剤、殺菌剤、防腐剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、香料等の添加物質を適宜に併用して、常法により調製することができる。該剤の形態は、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤等の経口用製剤のほか、一般加工飲食品へ配合した形態の組成物とすることができる。
【0028】
本発明の肥満防止剤が有用性を有する特徴は、これが体重低減はもとより、体脂肪の低減、より詳しくは内臓脂肪の蓄積抑制や皮下脂肪の蓄積抑制に関して顕著な効果を発揮することにある。したがって、本発明の肥満防止剤は体脂肪の低減のために、更には内臓脂肪蓄積抑制のために及び/又は皮下脂肪蓄積抑制のために好適に適用される。
【0029】
尚、本発明の肥満防止剤においては、有効成分のうち少なくともアクチニジンが親水系物質で被覆されている形態あるいは親水系物質に吸着又は混合されている形態のものを用いることが好ましい。このような被覆物、吸着物又は混合物となすことにより、アクチニジンの酸化等による活性低下を抑制し安定性を増強させることが可能となり、飲料等の水系組成物に配合し易くなる。ここで、親水系物質とは、水性物質と親和性を有する物質であり、望ましくは被覆膜形成能のあるものをいい、具体例として多糖類(キサンタンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム等)、澱粉及び化工澱粉、酵母細胞壁成分、グルカン、マンナン、シェラック、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カラギーナン、プルラン、カルボキシメチルセルロース等の各種セルロース誘導体、大豆たん白、ホエーたん白、ツェイン等を挙げることができる。より好適には多糖類、澱粉、酵母細胞壁成分、シェラック、ゼラチン、大豆たん白、ツェイン及びマンナンからなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくは酵母細胞壁成分及びシェラックである。かかる親水系物質を被覆するには、前記親水系物質を適宜に水、エタノール、その他の溶媒に溶解させた液状物となし、これをアクチニジン又はアクチニジン含有物に付着、乾燥して親水系物質の被覆膜を形成させることができる。又、シクロデキストリン(α型、β型、γ型、δ型等)を用いて包接物となすことも望ましい態様である。
【0030】
本発明の肥満防止剤は、アクチニジン、より好ましくはアクチニジン及びアスコルビン酸、更に好ましくはアクチニジン及びアスコルビン酸及び食物繊維を必須成分として含有してなるものであり、これ自体を飲食品、医薬品、飼料、化粧料、その他産業分野の様々な製品とすることができ、又、これら各種製品の配合原料の一部として使用する態様でも利用できる。食用組成物等の経口用途に適用することができ、とりわけ飲食品用途が好適である。この例を以下に述べるが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
【0031】
飲食品の具体例として、野菜ジュース、果汁飲料、清涼飲料、茶等の飲料類、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、ふりかけ、味噌、醤油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、植物性クリーム、味噌、焼肉用たれや麺つゆ等の調味料、麺類、うどん、蕎麦、スパゲッティ、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ハンバーグ、コロッケ、ふりかけ、佃煮、ジャム、牛乳、クリーム、バター、スプレッドやチーズ等の粉末状、固形状又は液状の乳製品、マーガリン、パン、ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディー、グミ、ガム等の各種一般加工食品のほか、粉末状、顆粒状、丸剤状、錠剤状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、ペースト状又は液体状の栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品、健康食品、濃厚流動食や嚥下障害用食品の治療食等を挙げることができる。尚、本発明の食用組成物においては、該食用組成物が肥満防止のためのものである旨、体脂肪低減のためのものである旨、内臓脂肪蓄積抑制のためのものである旨、又は、皮下脂肪蓄積抑制のためのものである旨のうち少なくとも1の表示を付した態様とすることができる。
【0032】
これらの飲食品を製造するには、公知の原材料及び本発明の肥満防止剤を用い、あるいは公知の原材料の一部を本発明の肥満防止剤で置き換え、常法によって製造すればよい。例えば、本発明の肥満防止剤を、必要に応じてグルコース(ブドウ糖)、デキストリン、乳糖、澱粉又はその加工物、セルロース粉末等の賦形剤、ビタミン、ミネラル、動植物や魚介類の油脂、たん白(動植物や酵母由来の蛋白質、その加水分解物等)、糖質、色素、香料、酸化防止剤、界面活性剤、その他の食用添加物、各種栄養機能成分を含む粉末やエキス類等の食用素材とともに混合して粉末、顆粒、ペレット、錠剤等の形状に加工したり、常法により前記例の一般食品に加工処理したり、これらを混合した液状物をゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の被覆剤で被覆してカプセルに成形したり、飲料(ドリンク類)の形態に加工して、栄養補助食品や健康食品として利用することは好適である。とりわけ錠剤、カプセル剤やドリンク剤が望ましい。
【0033】
かかる飲食品に配合する本発明の肥満防止剤の比率は、飲食品の形態、本発明の肥満防止剤中のアクチニジン、アスコルビン酸、食物繊維の含量、他の配合原料の種類や成分等のちがいにより一律に規定しがたいが、飲食品中のアクチニジン含量が約0.01重量%〜約90重量%、より望ましくは約0,1重量%〜約50重量%となるように、アクチニジン、その含有物を用い、食物繊維を併用する場合は、アクチニジン:食物繊維=1:0.1〜100、より好ましくは1:1〜50、更に望ましくは1:2〜30の比率で食物繊維を用い、又、食物繊維及びアスコルビン酸を併用する場合は、アクチニジンに対する食物繊維の比率は前記同様とし、かつアクチニジン:アスコルビン酸=1:0.01〜10、より好ましくは1:0.05〜5、更に望ましくは1:0.1〜3の比率でアスコルビン酸を用い、これらに適宜にその他の飲食品製造用原料を組み合わせて処方を設計し、常法に従い目的とする飲食品を調製すればよい。アクチニジン含量が約0.01重量%を下回るような飲食品ではアクチニジンによる所望効果を期待するために多量の当該飲食品を摂取しなければならず、一方、約90重量%が本発明の飲食品中の実用的な最大量である。本発明の飲食品は、ヒト(成人)の場合、1日あたりのアクチニジン摂取量の目安を約10mg〜約1000mg、望ましくは約20mg〜約500mg、さらに望ましくは約50mg〜約200mgとして任意の方法、例えば、経口摂取、経管投与等の方法で体内に取り込むことができる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。各例において、%、部及び比率はいずれも重量基準である。
【0035】
製造例1(アクチニジンの精製物)
市販のニュージーランド産キウイフルーツ(ヘイワード種)2個210gの果皮を取り除いた果肉を圧搾して搾汁を得、該搾汁を遠心分離(4℃、10,000rpm、10分)して上清を分取した。この上清に5モル水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH6.0に調整した後、Brocklehurst等の方法(Brocklehurst K,et.al.、The Biochemical Journal、第197巻、第739頁〜第746頁、1981年)により、硫安沈殿処理してアクチニジン含有画分を得た。次いで、この画分をチオプロピル−セファロース6B(GEヘルスケア バイオサイエンス社)カラムを用いたコバレントクロマトグラフィーにより精製し、アクチニジンをほぼ単一成分とする精製アクチニジン含有液を分取し、凍結乾燥して精製アクチニジン(試料1)49mgを調製した。このものは、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)法による分析からほぼ純品のアクチニジン(分子量:約24kDaの単一バンド)であった。
【0036】
製造例2(アクチニジン及びアスコルビン酸の混合物)
試料1とアスコルビン酸(DSMニュートリションジャパン(株)製、微粉末)とを混合して、試料1:アスコルビン酸=1:2の混合組成物(試料2)を調製した。
【0037】
製造例3(アクチニジン及びアスコルビン酸及び食物繊維の混合物)
試料1とアスコルビン酸(DSMニュートリションジャパン(株)製、微粉末)と、食物繊維として難消化性デキストリン(松谷化学工業(株)製、ファイバーソル2(登録商標))とを混合して、試料1:アスコルビン酸:食物繊維=1:0.5:15の混合組成物(試料3)を調製した。
【0038】
製造例4(アクチニジン含有抽出物)
市販のニュージーランド産キウイフルーツ(ヘイワード種)10個980gを剥皮した果肉を圧搾して搾汁を得、この搾汁に5重量倍の水を加えて混合し、不溶物を濾別した後、凍結乾燥及び粉砕して粉末状のアクチニジン含有抽出物(試料4)を調製した。これには、アクチニジンが3.7%、アスコルビン酸が0.9%及び水溶性食物繊維が9.4%含まれていた。なお、アクチニジン含量は西山等の文献(西山一朗等、日本食品科学工学会誌、第49巻、第401頁〜第408頁、2002年)に記載の方法により求めた。すなわち、試料1を標品物質、牛血清アルブミン(シグマ社、試薬)を内部標準として、12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGE法により得られた電気泳動像をゲル撮影装置及び画像解析システム(アトー(株)製、AE−6940V−FXデンシトグラフ)で定量分析した。
【0039】
製造例5(アクチニジンの被覆物)
製造例1に記載の方法で別途調製した試料1の30gと酵母細胞壁7.5%を含む分散液(キリンビール(株)製、商品名:イーストラップ(登録商標))100mLとを混合した後、凍結乾燥させてアクチニジン精製物の被覆物(試料5)を調製した。
【0040】
製造例6(アクチニジン及びアスコルビン酸の混合物の被覆物)
製造例2に記載の方法で別途調製した試料2の200gと酵母細胞壁7.6%を含む分散液(キリンビール(株)製、商品名:イーストラップ(登録商標))900mLとを混合した後、凍結乾燥させてアクチニジン精製物及びアスコルビン酸の混合物の被覆物(試料6)を調製した。
【0041】
製造例7(アクチニジン含有物の吸着物)
製造例4に記載の方法で別途調製した試料4の10gを含む水溶液50mLと微結晶セルロース(研光通商(株)製)4.5gとを混合した後、10℃で乾燥させて、アクチニジン含有物の吸着物(試料7)を調製した。
【0042】
試験例1(肥満防止作用)
本発明の肥満防止剤が肥満症状の回復、改善に及ぼす影響を以下の方法で調べた。すなわち、本発明に係る試料1〜試料7の各々155mgを充填したゼラチンハードカプセルを調製した。なお、比較試料として、試料1を80℃で30分間加熱処理したものを同様にハードカプセルに充填した(試料8)。医師の指導下、各試料につき、BMIが25以上である者を含むボランティア(男性5名及び女性5名の合計10名、年齢:20歳〜77歳)に前記カプセルを1日2回、食事前に2〜3カプセル/回、5カプセル/日の目安で3週間摂取してもらった。この試験期間中、摂取開始時及び3週間後に、身長及び体重測定、BMI算出、X線CT装置を用いて臍周辺腹部断層撮影を行い、内臓脂肪面積及び皮下脂肪面積を測定した。この結果の一部を表1〜表2に示す。各表中の数値はいずれも平均値である。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
表1及び表2のデータから、本発明に係る試料1〜試料7を摂取した場合はいずれも、摂取開始と比較して3週間後の体重、BMI、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積及び体脂肪総面積が減少することが明らかになった。これらの減少率は、体重が1.3%〜2.7%、BMIが4.3%〜9.4%、内臓脂肪面積が12.9%〜23.0%、皮下脂肪面積が11.1%〜20.0%、体脂肪総面積が13.0%〜18.7%であった。これに対して試料9(比較試料)を摂取した場合の前記の評価指標の減少率は、体重が0.6%、BMIが1.5%、内臓脂肪面積が6.7%、皮下脂肪面積が5.8%、体脂肪総面積が6.2%にとどまった。このことから、アクチニジンを摂取することにより、体重及びBMIを低下させ、体脂肪の蓄積を低減させて抑制し、とりわけ前記各種疾患との因果関係が大きい内臓脂肪の蓄積を低減かつ抑制させることが可能であり、ヒト対象の実用面において有用な肥満防止効果を奏することが確認された。この効果は、アクチニジンとともにアスコルビン酸を併用した場合(試料2)やアスコルビン酸及び食物繊維を併用した場合(試料3)に顕著なものであり、これらの被覆物(試料5〜試料7)の場合でも同様であった。更に、これらの試料はいずれも毎食事前に摂取していることから、肥満症状の改善効果とともに予防効果も十分期待できる。
【0046】
(実施例1:飲食品)
本発明の肥満防止剤としてのアクチニジン精製物(試料1)、アクチニジン精製物及びアスコルビン酸の混合物(試料2)、アクチニジン精製物及びアスコルビン酸及び食物繊維の混合物(試料3)、アクチニジン含有抽出物(試料4)、アクチニジン精製物の被覆物(試料5)、アクチニジン精製物及びアスコルビン酸の混合物の被覆物(試料6)及びアクチニジン含有抽出物の吸着物(試料7)のうちいずれか1種をカプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が150mgのゼラチン被覆ハードカプセル製剤を試作した。その他の試料についても同様に処理して7種類のゼラチン被覆ハードカプセル製剤を試作した。これらのカプセル製剤は経口摂取できる栄養補助食品として利用できる。
【0047】
(実施例2:飲食品)
本発明の肥満防止剤としてのアクチニジン含有抽出物(試料4)30部、センナ茎抽出物(ビーエイチエヌ(株)製)0.5部、コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製)105部、リン酸三カルシウム(米山化学工業(株)製)50部及びリボフラビン(DSMニュートリション・ジャパン(株)製)7部を混合機に仕込み、10分間攪拌混合した。この混合物を直打式打錠機に供して直径7mm、高さ4mm、重量150mg/個の素錠を作成し、ついでコーティング機でシェラック被膜を形成させて錠剤形状の食品を試作した。
【0048】
(実施例6:飲食品)
市販のオレンジジュース1Lに本発明の肥満防止剤としてのアクチニジン精製物及びアスコルビン酸の混合物の被覆物(試料6)15gを加えて十分に混合し均質なオレンジ風味飲料を試作した。これは冷蔵庫で3週間保存しても外観及び風味に異状及び違和感は認められなかった。尚、本品は、肥満防止のためのものである旨、体脂肪低減のためのものである旨、内臓脂肪蓄積抑制のためのものである旨、又は、皮下脂肪蓄積抑制のためのものである旨のうち少なくとも1つの表示を付することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の、アクチニジン、アクチニジン及びアスコルビン酸、アクチニジン及びアスコルビン酸及び食物繊維を有効成分として含有してなる肥満防止剤は、これを経口摂取することにより肥満症状を改善する作用を有するため、肥満症状を改善・予防するための飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等に有効利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチニジンを有効成分として含有してなる肥満防止剤。
【請求項2】
アクチニジン及びアスコルビン酸を有効成分として含有してなる肥満防止剤。
【請求項3】
アクチニジン及びアスコルビン酸及び食物繊維を有効成分として含有してなる肥満防止剤。
【請求項4】
有効成分がキウイフルーツを原料として得られるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の肥満防止剤。
【請求項5】
キウイフルーツがキウイフルーツの果肉、果汁又はこれらの抽出物あるいは精製物である請求項4に記載の肥満防止剤。
【請求項6】
有効成分のうち少なくともアクチニジンが親水系物質で被覆又は親水系物質に吸着されたものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の肥満防止剤。
【請求項7】
肥満防止が体脂肪の低減によるものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の肥満防止剤。
【請求項8】
体脂肪の低減が内臓脂肪蓄積抑制及び/又は皮下脂肪蓄積抑制である請求項7に記載の肥満防止剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の肥満防止剤を含有してなる食用組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の肥満防止剤を含有してなる、肥満防止である旨、体脂肪低減である旨、内臓脂肪蓄積抑制である旨、又は、皮下脂肪蓄積抑制である旨のうち少なくとも1の表示を付した食用組成物。

【公開番号】特開2008−120772(P2008−120772A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331167(P2006−331167)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(500081990)ビーエイチエヌ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】