説明

育毛を促進する組成物および方法

【課題】本発明は、15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物をその活性成分として含む、哺乳類における育毛を促進する方法および組成物を提供する。
【解決手段】 下記式(II)で示される化合物:


[式中、各記号は、明細書に記載の通りである。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は哺乳類対象において育毛を促進する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抜け毛または脱毛症は、遺伝因子、加齢、局所または全身疾患あるいは癌などの症状の緩和用に開発された特定の医薬に起因する可能性がある。脱毛の予防または低減および/または育毛の促進のための様々な製品、例えば、血行の促進、毛根の機能の増強、頭皮の保湿および男性ホルモン機能の阻害を行うことが出来る女性ホルモン; 5α-レダクターゼ阻害剤;またはミノキシジル、トリコサッカライド等を主成分として含む製品が提案されている。しかしながらこれらによって示される育毛促進効果は十分ではなく、なかには性機能障害といった副作用の問題を引き起こすものもある。
【0003】
副作用が無く、効果に優れた育毛促進剤の開発が強く望まれている。
【0004】
プロスタグランジン類(以後プロスタグランジンはPGとして示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般的に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】

【0005】
一方天然PG類の幾つかの合成アナログは修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和の数と位置によって以下の3タイプに分類される。
(下付1)...13,14−不飽和−15−OH
(下付2)...5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
(下付3)...5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
【0006】
さらに、PGF類は9位および11位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。
【0007】
15位に2つのヘテロ原子を有する特定のプロスタグランジン化合物は当該技術分野で知られている。米国特許第4088775号は特定の15-エチレンジオキシ-プロスタン酸を開示している。さらに、米国特許第4870104号は15位にエチレンジオキシメチレン基を有していてもよい11ハロプロスタグランジンおよびその胃酸分泌阻害剤としての使用を開示している。さらに、米国特許第6353014号は、高眼圧症および緑内障の処置に有用なプロスタグランジンF類の特定の15-ケタールアナログを開示している。
【0008】
これら従来技術は15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物が育毛の刺激に有用であり得ることを開示も示唆もしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4088775号
【特許文献2】米国特許第4870104号
【特許文献3】米国特許第6353014号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、哺乳類対象における育毛を促進する組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、哺乳類対象における育毛を促進する方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、哺乳類対象における育毛の促進に有用な新規化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を活性成分として含む哺乳類対象における育毛を促進する組成物に関する。
【0014】
さらに、本発明は、必要とする対象に15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物を局所投与することを含む哺乳類対象における育毛を促進する方法に関する。
【0015】
さらに、本発明は、哺乳類対象における育毛を促進する組成物の製造のための15位に2つのヘテロ原子を有するプロスタグランジン化合物の使用に関する。
【0016】
また、本発明は、15位に2つのヘテロ原子を有する新規プロスタグランジン化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のPG化合物の命名に際しては、前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。
【0018】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、式(A)においてPG化合物の基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向かって順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消して命名する。炭素数がα鎖上で増加する場合、カルボキシル基(C−1)の代わりに2位において対応する置換基を有する置換化合物として命名する。同様に炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から順次番号を抹消して命名する。また、炭素数がω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特に断りのない限り、上記基本骨格(A)の有する立体配置に従うものとする。
【0019】
また、例えばPGD、PGE、PGFは、9位および/または11位に水酸基を有するPG化合物をいうが、本発明では、9位および/または11位の水酸基に代えて他の基を有するものも包含する。これらの化合物を命名する場合、9−デヒドロキシ−9−置換−PG化合物あるいは11−デヒドロキシ−11−置換−PG化合物の形で命名する。なお、水酸基の代わりに水素を有するPG化合物は、単に9−あるいは11−デヒドロキシ−PG化合物と称する。
【0020】
前述のように、PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、上記化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちα鎖の骨格炭素数が9であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−PG化合物と命名する。同様に、α鎖の骨格炭素数が11であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10であるPG化合物は、20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0021】
アナログ(置換体を含む)または誘導体の例は、上記PG類のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、α鎖が延長された化合物、それらの生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9位および/または11位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
【0022】
本発明において3位、17位、18位および/または19位の好適な置換基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ、特にメチル基、エチル基が挙げられる。16位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。17位の好適な置換基としては、メチル、エチル等の低級アルキル、ヒドロキシ、塩素、フッ素等のハロゲン原子、およびトリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシが挙げられる。20位の好適な置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の好適な置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の好適な置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9位および/または11位にヒドロキシ基、低級アルキルまたはヒドロキシ(低級)アルキル置換基を有する場合のPG類の立体配置はα、βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
【0023】
さらに、上記アナログまたは誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有する化合物であってもよい。
【0024】
本発明において用いられる好適なプロスタグランジン化合物は下記式(I)で表される:
【化2】

[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、または−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
およびZは、酸素、窒素または硫黄;
およびRは置換されていてもよい低級アルキルであり、一緒につながって低級アルキレンを形成してもよい;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基または複素環オキシ基]。
【0025】
本発明において用いられるより好ましいプロスタグランジン化合物は、式(II)で表される:
【化3】

[式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CHまたは−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
およびZは、酸素、窒素または硫黄;
およびRは置換されていてもよい低級アルキルであり、一緒につながって低級アルキレンを形成してもよい;,
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;
は、単結合または低級アルキレン;そして、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ基]。
【0026】
上記式中、RおよびRaの定義における「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、1つまたはそれ以上の二重結合および/または三重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和結合は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和結合は両方の位置番号を表示して示す。
【0027】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素原子数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素原子数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、好ましくは炭素原子数1〜10、特に1〜8の炭化水素基である。
【0028】
「ハロゲン原子」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
【0029】
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0030】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0031】
「低級アルキレン」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝状の二価飽和炭化水素基を意味し、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
【0032】
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−基を意味する。
【0033】
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0034】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
【0035】
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基を意味し、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
【0036】
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−基を意味する。
【0037】
「アリール」の語は、非置換または置換の芳香族炭化水素環基を包含し、(好ましくは単環式基の)、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン原子、ハロ(低級)アルキル(ここで、ハロゲン原子および低級アルキルは前記の意味)が含まれる。
【0038】
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール)で示される基を意味する。
【0039】
「複素環基」の語としては、置換されていてもよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1〜4個、好ましくは1〜3個含む、5〜14員環、好ましくは5〜10員環の、単環式〜3環式、好ましくは単環式の複素環基が含まれる。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲン原子および低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
【0040】
「複素環オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
【0041】
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0042】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩;または有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0043】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル;およびベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
【0044】
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
【0045】
Aのアミドは、式−CONR’R''(式中、R’およびR''はそれぞれ水素、低級アルキル、アリール、アルキル−またはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニル)で示される基を意味し、例えばメチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキル−もしくはアリール−スルホニルアミド等が挙げられる。
【0046】
好ましいLおよびMの例は、ヒドロキシ、オキソを含み、特にMおよびLがヒドロキシであるいわゆるPGFタイプと称される5員環構造を有するものを含む。
【0047】
好ましいAは、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
【0048】
好ましいBは−CH−CH−であり、いわゆる13,14−ジヒドロタイプと称されるものである。
【0049】
好ましいXおよびXの例はフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称されるものである。
【0050】
好ましいRは、炭素原子数1〜10であり、特に好ましくは炭素原子数6〜10の炭化水素残基である。脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。
【0051】
の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる:
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−O−CH−、
−CH−CH=CH−CH−O−CH−、
−CH−C≡C−CH−O−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−CH−、および、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−。
【0052】
好ましいRaは、1−10炭素原子、より好ましくは1−8炭素原子を有する炭化水素である。Raは1の炭素原子を有する1または2の側鎖を有していてもよい。
【0053】
好ましいZおよびZは酸素である。
【0054】
およびRは好ましくは一緒につながってC2またはC3アルキレンを形成する。
【0055】
上記式(I)および(II)における環、および、α−および/またはω−鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然タイプの配置を有する化合物と非天然タイプの配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0056】
本発明においては、個々の互変異性体、その混合物または光学異性体、その混合物、ラセミ体、その他の立体異性体等の異性体も、同じ目的に使用することが可能である。
【0057】
本発明によると、上記のプロスタグランジン化合物を活性成分として含む育毛を促進する組成物は、育毛促進が必要である哺乳類対象に適用される。
【0058】
本明細書および特許請求の範囲における「毛」なる語は、哺乳類対象、特にヒト対象におけるあらゆる毛を含み、例えば、頭髪、脇毛、陰毛、睫毛、眉毛、まぶたの毛、口髭、顎髭、頬髭を含む顔の毛、胸毛、手足の毛が挙げられる。
【0059】
本明細書および特許請求の範囲における「育毛を促進する」なる語は、育毛を促進するだけでなく、発毛の促進および細毛を太くすることも含む。以下の実施例に示すように、本発明の組成物は、育毛の促進に加えて、毛を太くする効果を有する。
【0060】
本発明によると、組成物は例えば、医薬品、医薬部外品または化粧品として提供することが出来る。組成物は、育毛が望まれる皮膚、例えば、頭皮、顔、胸、頭、恥部、上唇、睫毛、眉毛およびまぶたの表面に育毛を促進する目的で局所投与すればよい。
【0061】
本発明の組成物におけるプロスタグランジン化合物の用量は化合物の種類、対象の種類、年令、組成物が適用される皮膚の部分、禿の進行度または所望の効果、投与体積および処置期間によって変動しうる。好適な濃度は所望により選択すればよいが、組成物が成人に局所投与される典型的な例において、0.0000001%〜10%、好ましくは0.00001%〜5%、より好ましくは0.0001%〜1%、特に好ましくは0.001−0.1%の活性成分を含む製剤を1日1〜6回、好ましくは1〜4回投与すればよい。
【0062】
本発明の組成物の剤形は既知の局所投与形態のいずれであってもよい。例えば、これらに限定されないが、ローション、トニック、乳濁液、外用クリーム、例えば、塗布薬および乳液、外用半固体製剤、例えば、軟膏、ペースト、ゼリーおよびスプレーが挙げられる。組成物はヘアシャンプーまたはヘアリンスとして製剤してもよい。
【0063】
本発明の組成物はさらに医薬上許容される添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤は本発明の化合物と併用される成分を含み、例えば、賦形剤、希釈剤、増量剤、溶剤、滑沢剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色剤、機能性素材(例えばシクロデキストリン、生体内分解高分子など)、安定剤が挙げられる。これらはさらに脂肪酸またはそのモノ、ジまたはトリグリセリドといった適当な溶媒に溶解してもよい。それらの添加剤は当該技術分野で周知であり、薬学または化粧品に関する一般書籍に記載されているものから適宜選択すればよい。
【0064】
本発明の組成物は本発明の目的を損なわない限りその他の成分をさらに含んでいてもよい。組成物は上記プロスタグランジン化合物を配合することによって所望の製剤を作るための常套方法によって調製すればよい。
【0065】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0066】
合成例1
13,14-ジヒドロ-15,15-トリメチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αイソプロピルエステル (5)
【化4】

【0067】
トルエン (10.2ml)中の化合物 1 (510.0mg、1.273mmol)の溶液に、1,3-プロパンジオール (0.92ml、12.73mmol)および触媒量のp-トルエンスルホン酸を添加し、混合物を17時間還流下で加熱した。その後、反応を室温まで冷えるまで放置し、重炭酸ナトリウム飽和水溶液、および塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し(Merck 7734、ヘキサン: 酢酸エチル=3:2)、化合物 2 (581.3mg)を得た。
【0068】
トルエン (11.6ml)中の化合物 2 (580.0mg、1.265mmol)の溶液を-78℃に冷却し、1.5M-DIBAH (トルエン中、2.95ml、4.427mmol)をそれに滴下し、混合物を1時間撹拌し、次いで、メタノール (1.79ml)を結果として得られた混合物に滴下した。ロッシェル塩飽和水溶液(100ml)をそれに添加し、混合物を30分間激しく撹拌した。結果として得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(Merck 7734、ヘキサン: 酢酸エチル=1:9-0:10)、化合物3 (275.2mg、1からの収率 61.4%)を得た。
【0069】
THF (6ml)中の (4-カルボキシブチル)トリフェニル臭化ホスホニウム (1.346g、3.038mmol)の分散液に、0℃のTHF 中の1M- カリウムt-ブトキシド(6.07ml、6.07mmol)を添加した。反応を室温で1時間撹拌し、-20℃に冷却した。THF (7ml)中の化合物 3 (269.2mg、0.7594mmol)をそれに滴下し、-20-0℃で2時間撹拌した。氷冷水を反応に添加し、THFを減圧下でエバポレートして除いた。濃縮され残渣に、0℃で、氷冷 1N 塩酸水溶液を滴下し、溶液をpH 4に調整した。
【0070】
溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣にエーテルを添加し、17 時間室温で撹拌し、セライトでろ過した。ろ液を減圧下でエバポレートし、粗化合物 4を得た。
【0071】
アセトニトリル (7.6ml)中の化合物 4 (0.7594mmol)にDBU (0.45ml、3.038mmol)、ヨウ化イソプロピル (0.30ml、3.038 mmol) を添加し、4時間45℃で撹拌した。反応混合物を減圧下でエバポレートした。残渣に水を添加し、酢酸エチルで抽出した。有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(Merck 9385、ヘキサン : 酢酸エチル= 2:3)、727.2mgの目的生成物 (3からの収率 72.1%)を得た。こうして得られた化合物 4 (カルボン酸、259.0mg)を分取HPLCでさらに精製し、化合物 5 (イソプロピルエステル、240.3mg、HPLC 精製収率 92.8%)を得た。
化合物 51H-NMR スペクトル (200MHz,CDCl3):δ5.57-5.14(2H、m)、 5.01(1H、sept、J=6.2Hz)、4.17(1H、bs)、3.97(1H、bs)、4.00-3.78(4H、m)、2.76(1H、d、J=6.2Hz)、2.29(2H、t、J=7.5Hz)、 2.44-2.06 (5H、m,)、1.88(2H、bt,)、1.93-1.18(22H、m)、1.23(6H、d、J=6.2Hz)、0.89(3H、t、J=6.8Hz)
【0072】
合成例 2
13,14-ジヒドロ-15,15-ジメトキシ-20-エチル-PGF2αイソプロピルエステル (10)
【化5】

【0073】
メタノール (2.4ml)中の化合物 1 (797.8mg、2.002mmol) の溶液に、触媒量の p-トルエンサルフェート、オルトギ酸メチル(2.19ml、20.02mmol)および無水硫酸マグネシウム (1.20g、10.01mmol)を添加し、還流下で4時間加熱した。反応を冷却し、炭酸水素ナトリウムを添加し、セライトでろ過した。ろ液を減圧下でエバポレートし、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(Merck 7734g、ヘキサン : 酢酸エチル = 3:2)、化合物 7 (884.3mg、収率 98.9%)を得た。
【0074】
トルエン(15.4ml)中の化合物 7 (767.5mg、1.719mmol) の溶液を-78℃に冷却し、1.5M-DIBAH (トルエン中、4.0ml、6.016mmol)をそれに滴下し、混合物を1時間撹拌した。次いで、メタノールを反応に滴下し、反応を室温まで加熱した。ロッシェル塩飽和水溶液(150ml)をそれに添加し、混合物を30分間激しく撹拌した。結果として得られた混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し(Merck 9385、ヘキサン: 酢酸エチル=1:9)、化合物 8 (415.8mg、収率 70.2%)を得た。
【0075】
THF中の(4-カルボキシブチル)トリフェニル臭化ホスホニウム(1.250g、2.819mmol)の分散液に、THF中の1M- カリウム t-ブトキシド(5.64ml、5.64mmol)を0℃ で添加した。反応を室温で1時間撹拌し、-20℃に冷却した。THF (4ml)中の化合物 8 (242.8mg、0.7048mmol)をそれに滴下し、-20-0℃で2時間撹拌した。氷冷水を反応に添加し、THFを減圧下でのエバポレーションによって除いた。残渣に0℃で、氷冷 1N 塩酸水溶液を滴下して溶液をpH 5に調整した。溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣にエーテルを添加し、17 時間室温で撹拌し、セライトでろ過した。ろ液を減圧下でエバポレートして粗化合物 9 (カルボン酸)を得た。
【0076】
アセトニトリル (7ml)中の化合物 9 (0.7048mmol)の溶液に、DBU (0.42ml、2.819mmol)、ヨウ化イソプロピル (0.28ml、2.819mmol)を添加し、混合物を16 時間45℃で撹拌した。反応混合物を減圧下でエバポレートした。残渣に水を添加し、酢酸エチルで抽出した。有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下でエバポレートした。残渣をシリカゲルカラム (Merck 9385、ヘキサン:酢酸エチル= 1:2)で精製し、化合物 10(268.0mg、8からの収率 80.8%)を得た。
【0077】
上記のようにして得た化合物 10 (合計370 mg)をさらに分取HPLCで精製し、純粋な化合物 10 (341.9mg、HPLC 精製収率 92.4%)を得た。
【0078】
化合物 10の1H-NMR スペクトル (200MHz,CDCl3):δ5.54-5.13(2H、m)、5.00(1H、sept、J=6.2Hz)、4.18(1H、bs)、3.95(1H、bs)、3.16(6H、s)、2.66(1H、d、J=6.4Hz)、2.29(2H、t、J=7.3Hz)、2.48-2.06(5H、m)、1.89(2H、bt)、1.79-1.17(20H、m)、1.23(6H、d、J=6.2Hz)、0.89(3H、t、J=6.8Hz)
【0079】
合成例 3
13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-17-フェニル-18,19,20-トリノール-PGF2α イソプロピルエステル (12)
化合物 12を合成例合成例 1と同様にして化合物 11から調製した。
【0080】
【化6】

【0081】
化合物 111H-NMR スペクトル (200MHz、CDCl3):δ8.04-7.93(2H、m)、7.63-7.38(3H、m)、7.35-7.11(5H、m)、5.215.03(2H、m)、2.98-2.24(11H、m)、2.12-1.98(1H、m)、1.80-1.50(2H、m)
化合物 121H-NMR スペクトル (200MHz、CDCl3):δ7.35-7.12(5H,m)、5.56-5.35(2H、m)、5.00(1H、sept、J=6.2Hz)、4.15(1H、bs)、3.96(4H、s)、3.92(1H、bs)、3.18(1H、bd)、2.86(1H、bd)、2.75-2.63(2H、m)、2.28(2H、t、J=7.3Hz)、2.46-1.15(17H、m)、1.22(6H、d、J=6.2Hz)
【0082】
合成例 4
13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α エチルエステル (15)
【化7】

【0083】
メタノール (91.8 ml)中の化合物 13 (9.18 g、19.59 mmol)の溶液に、8N-水酸化ナトリウム水溶液 (24.49 ml)を0℃で添加した。反応混合物を3時間室温で撹拌し、0℃で6N-塩酸で酸性にした。混合物を酢酸エチル (100 ml + 50 ml) で抽出した。有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液 (100 ml x 2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。抽出物を減圧下でエバポレートし、粗酸 14を油として得た。
【0084】
アセトニトリル (60 ml)中の粗酸 14および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン(11.72 ml)の溶液に、ヨウ化エチル (6.27 ml)を0℃で滴下した。反応混合物を45℃で17 時間撹拌し、室温まで冷却し、エバポレートした。残渣に、水(100 ml)を添加した。混合物を酢酸エチル (100 ml x 2)で抽出した。有機層を0.1N-塩酸、重炭酸ナトリウム飽和水溶液 (100 ml)および塩化ナトリウム飽和水溶液 (100 ml)で洗浄した。抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレートした。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで2回精製し (Merck 7734、220 g、ヘキサン : 酢酸エチル= 2:3、-> BW-300、210g、ヘキサン:2-プロパノール=6:1)、エチルエステル 15 (8.60 g、18.92 mmol、13から96.6%)を無色油として得た。
【0085】
化合物151H-NMR (200MHz、CDCl3中、TMS = 0ppm):δ5.58-5.29(2H、m)、4.15(1H、brs)、4.13(2H、q、J=7.1Hz)、3.97(1H、brs)、3.94(4H、s)、2.80-2.70(1H、br)、2.49-2.36(1H、m)、2.32(2H、t、J=7.4Hz)、2.36-2.15 (4H、m)、1.90-1.83(2H、m)、1.83-1.12(20H、m)、1.26(3H、t、J=7.1Hz)、0.88(3H、t、J=6.5Hz)
【0086】
実施例 1
8週齡の雄性 C3H/HeN マウスを用いた。背中の毛を電気バリカンで剃り、剃った領域における毛を出来る限り除いた。剃毛3日後、目視によって傷が認められないマウスを選択し、本研究に用いた。各群は3匹の動物からなるものとした。群を割り当てた後、それら群を別々にアルミニウムケージで飼育した (3 動物/ケージ、180 mm W x 300 mm D x 130 mm H; Nippon Cage、Ltd.、Japan)。
【0087】
各被験化合物を70% (w/w) 水性エタノールに溶解した。被験化合物のそれぞれの用量剤形を、土曜日曜を除いて1日1回(100 μL/マウス) 30日間、剃った背部皮膚領域 (およそ2×4 cm)に、均一に局所投与した。対照群には同様にして等量の媒体を与えた。
【0088】
発毛の肉眼での観察を処理開始から14、16、18、21、23、25、28および30日目に行った。発毛は以下のスケールにしたがってスコア付けした:
-;発毛観察されず
±;発毛 剃毛面積の10%
+;発毛 -剃毛面積の10 - 40%
++;発毛 -剃毛面積の40 - 80%
+++;発毛 剃毛面積の80%。
【0089】
結果を表1に示す。媒体で処置した対照群においては、処置期間の間に発毛は観察されなかった。0.01%および0.1%の化合物 A-処置群では、用量依存的発毛がみられ、0.1% 化合物 Aで処置されたすべての動物は発毛を示した。この発毛は処置28および30日目に最高スコア(+++)に分類された。0.1% 化合物 B-処置群では、3匹の内2匹の動物が発毛スコア+++であり、残る1匹は処置期間の最後に++であった。0.1% 化合物 C-処置群では、発毛は3匹のうち1匹の動物で観察された。0.1% 化合物 D-処置群では、3匹の内2匹の動物で発毛が観察された。
【0090】
表1;化合物 A、B、CおよびDの局所投与の、C3H/HeN マウスにおける発毛に対する効果
【表1】

【0091】
化合物 A: 13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステル
化合物 B: 13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-17-フェニル-18,19,20-トリノール-PGF2αイソプロピルエステル
化合物 C: 13,14-ジヒドロ-15,15-トリメチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αイソプロピルエステル
化合物 D: 13,14-ジヒドロ-15,15-ジメトキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステル
【0092】
実施例 2
8週齡の雄性 C3H/HeN マウスを用いた。背中の毛を電気バリカンで剃り、剃った領域における毛をできるかぎり除いた。剃った後3日目に、目視によって傷が見えないマウスを選択し、本研究に用いた。各群は3匹の動物からなるものとした。群分けの後、それら群をアルミニウムケージ(3 動物/ケージ、180 mm W x 300 mm D x 130 mm H; Nippon Cage、Ltd.、Japan)で別々に飼育した。
【0093】
被験化合物を75% 水性エタノールに溶解した。被験化合物 (化合物 E)の製剤を1日1回土曜日曜を除いて23日間、背部剃毛領域の皮膚(およそ2×4 cm)に均一に局所塗布した(100 μL/マウス)。対照群には同様にして等量の媒体を与えた。
【0094】
発毛の肉眼での観察を処置の開始から14、16、18、21および23日目に行った。発毛を上記のスケールに従ってスコア付けした。結果を表2に示す。0.1% 化合物 E-処置群において、発毛は3匹の内3匹の動物で観察された。
【0095】
表2;化合物Eの局所投与の、C3H/HeN マウスにおける発毛に対する効果
【表2】

【0096】
化合物 E: 13,14-ジヒドロ-15,15-エチレンジオキシ-20-エチル-PGF2αエチルエステル
【0097】
実施例 3
実施例 1にて行った処置の開始の31日後、処置された領域において発毛した毛と非処置領域 (即ち非剃毛領域)における毛をそれぞれ集めた。集めた毛の拡大顕微鏡写真を撮った。無作為に選んだそれぞれ10本の毛の太さを測定し、平均値を計算した。
【0098】
結果を表3に示す。結果は、本発明の特定のプロスタグランジンでの処理により生えた毛は、非処置群のものよりも太いことを示した。
【0099】
表3.化合物AおよびBの局所投与の、C3H/HeN マウスにおいて生えた毛の太さに対する効果
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)で示される化合物:
【化1】

[式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ここでLおよびMの少なくとも1つは水素以外の基であり、五員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、または−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
およびZは、酸素、窒素または硫黄;
およびRは置換されていてもよい低級アルキルであり、一緒につながって低級アルキレンを形成してもよい;
は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された飽和または不飽和二価低〜中級脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい;そして、
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
は、単結合または低級アルキレン;そして、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基]
但し、
(1)ZおよびZがともに酸素であり、RおよびRが一緒につながってエチレンを形成し、XおよびXがともに水素である化合物;
(2)下記式(i):
【化2】

[式中、2つのRはともにメチルであるか、或いは一緒につながって−CHCHCH−または−CHC(CHCH−である]で示される化合物;および
(3)下記式(ii):
【化3】

で示される化合物を除く。
【請求項2】
該化合物が13,14-ジヒドロ-15,15-トリメチレンジオキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステルである請求項1の化合物。
【請求項3】
該化合物が13,14-ジヒドロ-15,15-ジメトキシ-20-エチル-PGF2α イソプロピルエステルである請求項1の化合物。

【公開番号】特開2011−12076(P2011−12076A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226217(P2010−226217)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【分割の表示】特願2006−519266(P2006−519266)の分割
【原出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(592060271)株式会社アールテック・ウエノ (22)
【Fターム(参考)】