説明

育毛剤用添加剤及び育毛剤組成物

【課題】十分な育毛効果を維持しつつ、薬効成分の使用量を少なくすることにより、副作用の恐れの少ない安価な育毛剤用添加剤及びそれを配合した育毛剤組成物を提供する。
【解決手段】一般式(II)で表される育毛剤用添加剤およびそれを配合した育毛剤組成物など。
【化1】


(式中、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基またはアリール基であり、Rは炭素原子数6〜30のアルキル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛剤用添加剤及び育毛剤組成物に関し、さらに詳しくは、特定のシリコーン系化合物からなり、育毛剤に添加することにより、従来よりも薬効成分の使用量を減少させても十分な育毛効果が得られるため、副作用を減らすことができる育毛剤用添加剤及びそれを配合した育毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、禿や脱毛の原因を取り除く、あるいは、軽減するために、各種薬効成分を配合した養毛剤が知られ、広く使用さている。しかし、育毛剤中の薬効成分は副作用が発生する可能性のあるものが多い。例えば、近年広く使用される様になったミノキシジル(2,4−ジアミノ−6−ピペリジノピリミジン−3−オキサイド)は、本来、高血圧の治療薬として開発された医薬なので、育毛剤として使用する場合は、逆にミノキシジルの本来の薬効である血圧降下作用が好ましくない作用として問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、十分な育毛効果を維持しつつ、薬効成分の使用量を少なくすることにより、副作用の恐れの少ない安価な育毛剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、育毛剤組成物に特定の構造のシリコーン系化合物を配合することにより、薬効成分の使用量を減らしても十分な育毛作用が得られることを見出した。そして、本発明は、この知見に基づいて完成に至ったものである。
【0005】
すなわち、本発明によれば、次の一般式(II)で表される育毛剤用添加剤が提供される。
【0006】
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基またはアリール基であり、Rは炭素原子数6〜30のアルキル基である。)
【0007】
また、本発明によれば、薬効成分と、組成物全量基準で0.01〜0.2重量%の上記の育毛剤用添加剤を含有することを特徴とする育毛剤組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、組成物全量基準で、上記薬効成分であるミノキシジルの含有量が0.05〜2重量%であり、上記育毛剤用添加剤の含有量が0.02〜2重量%であることを特徴とする上記の育毛剤組成物が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の育毛剤用添加剤を添加することにより、育毛剤中の薬効成分を減らしても十分な発毛効果が得られるという利点を有する。そのため、本発明の育毛剤用添加剤およびそれを配合した育毛剤組成物は産業上非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の育毛剤用添加剤は、次の一般式(I):
【0010】
【化2】

(式中、Rは炭素原子数1〜30のアルキル基、アリール基、(RSiO−で表される基又は−YO(CO)(CO)で表される基を表すが、但し、Rの一つ以上は炭素原子数6〜30のアルキル基又は−YO(CO)(CO)で表される基であり、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基またはアリール基であり、Rは水素原子あるいは炭素数1〜6のアルキル基又はアセトキシ基を表し、Yは炭素−ケイ素結合を介して隣接ケイ素原子に、そして酸素原子を介してポリオキシアルキレンブロックに結合している2価の有機基を表し、mは平均で1〜50、a及びbはそれぞれ平均で0〜50の数を示すが、但しa+b≧2である。)で表される化合物である。
上記一般式(I)の式中、Rの一つ以上は炭素原子数6〜30のアルキル基又は−YO(CO)(CO)で表される基であることが必須である。残りのRの好ましいものはメチル基、エチル基、フェニル基又は(RSiO−で表される基であるが、特に好ましくはメチル基または(CHSiO−である。
は炭素原子数1〜5のアルキル基またはアリール基を表すが、好ましくは炭素原子数1〜3のアルキル基であり、特にはメチル基である。
は水素原子あるいは炭素数1〜6のアルキル基又はアセトキシ基を表すが、好ましくは水素原子、メチル基、ブチル基である。
Yの好ましい例としては−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−が挙げられ、特には−CHCHCH−が好ましい。
mは平均で1〜50であることが必須であるが、好ましくは1〜5である。
a及びbはそれぞれ平均で0〜50の数を示し、a+b≧2であるが、好ましくはaは2〜20、bは0〜10である。
【0011】
上記一般式(I)で表される化合物の中でも、特に下記一般式(II):
【0012】
【化3】

(式中、Rは炭素原子数6〜30のアルキル基又は−YO(CO)(CO)で表される基を表し、R、R、Y、a及びbは上記化学式(I)で定義したのと同じ意味を表す。)
で表されるものが好ましい。
具体的には下記式で表される化合物1〜化合物3が好ましいものとして挙げられる。
化合物1
【0013】
【化4】

化合物2
【0014】
【化5】

化合物3
【0015】
【化6】

【0016】
本発明の育毛剤用添加剤は、育毛剤に添加することにより、その薬効成分の使用量を低減することが可能である。育毛剤は、限定されないが、従来公知の育毛剤が使用可能である。育毛剤とは、通常、薬効成分、溶剤、その他添加剤からなる。
【0017】
例えば、薬効成分として、賦形剤、血管拡張剤(ミノキシジル、塩化カルプロニウム、ニコチン酸ベンジル、センブリ抽出液、オタネニンジンエキス、ビタミンEアセテート、トウガラシチンキなど)、抗ヒスタミン剤(塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イソチペンジルなど)、抗炎症剤(グリチルレチン酸、グアイアズレンなど)、角質溶解剤(尿素、サリチル酸など)、殺菌剤(グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、第4級アンモニウム塩、ヒノキチオール、ピロクトンオラミンなど)、保湿剤(ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸など)、各種動植物(イチイ、ボタンピ、カンゾウ、オトギリソウ、附子、ビワ、カワラヨモギ、コンフリー、アシタバ、サフラン、サンシシ、ローズマリー、セージ、モッコウ、セイモッコウ、ホップ、プラセンタなど)の抽出物、ビタミン類(酢酸レチノール、塩酸ピリドキシン、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチンなど)が挙げられる。
【0018】
溶剤として、水、アルコール類(メタノール、エタノール、2−プロパノール、変性エタノール等)、環状シロキサン類(デカメチルシクロペンタシロキサン等)が挙げられる。これらの内、水、エタノール又は2−プロパノールが好ましい。
【0019】
その他添加剤として、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレートなど)、溶解補助剤(アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸エステル類、各種植物油、各種動物油、多価アルコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、炭化水素類、乳酸、水酸化ナトリウムなど)、代謝賦活剤(パンテノールなど)、界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、レシチン誘導体、高分子乳化剤など)、乳化安定剤(高級アルコールなど)、ゲル化剤(水溶性高分子など)、粘着剤、香料、清涼化剤(メントール、ハッカ油、カンフルなど)、染料などの通常使用される成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0020】
本発明の育毛剤用添加剤の添加量は、限定されないが、好ましくは育毛剤中に0.01〜2重量%、特に好ましくは0.02〜0.2重量%となる量を添加して使用できる。
【0021】
本発明の育毛剤用添加剤を育毛剤に添加する場合、添加方法は限定されず、通常の方法により混合して添加可能である。また、育毛剤に直接添加しても良いが、予め溶剤に溶解させてから使用することもできる。溶剤としては前記の育毛剤に使用されるものが使用可能である。また、市販の育毛剤は、保存安定性を考慮した処方となっているので、本発明の育毛剤用添加剤を添加すると系のバランスが崩れ、安定性が低下する場合がある。従って、本発明の育毛剤用添加剤又はその溶液を使用時に育毛剤に添加し混合して用いても良い。
上記の薬効成分、溶剤及び育毛剤用添加剤、更に必要に応じてその他添加剤からなる育毛剤組成物もまた、本発明の一形態である。
【0022】
薬効成分の配合量は、その種類により異なるが、例えばミノキシジルの場合は0.05〜2重量%であることが好ましく、塩化カルプロニウムの場合は0.25〜2重量%であることが好ましい。また、育毛剤用添加剤の配合量は上記の通りである。
【0023】
本発明の育毛剤用添加剤が作用するメカニズムは明らかでないが、従来の育毛剤中の薬効成分は主に頭皮から経皮吸収されて毛乳頭に作用していたのに対し、本発明の育毛剤用添加剤を配合すると、毛根と毛包の間の極めて狭い隙間に浸透しやすいため、経皮吸収に加えて直接毛乳頭に到達する事ができ、その結果、薬効成分が効率良く毛乳頭に作用し、薬効成分の少ない使用量でも十分な効果が発揮されるものと推察される。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により更に本発明を詳細に説明するが、本発明の主旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
【0025】
[育毛剤組成物の調製]
表1(実施例1、2は参考例)に示した処方で、ミノキシジルに、他の成分を配合し、無水エタノールおよび精製水で全量を100mlとし、撹拌溶解してローションタイプの外用剤を調製した。
【0026】
[発毛試験]
C3H系マウス(雄性、7週齢)10匹を一群とし、各群の動物について、その背部の2×3cmの範囲をバリカンで除毛し試験に供した。表1の処方の各々にそれぞれ個別の群の動物を割り当て、その除毛部に1日1回、0.2mlずつ20日間塗布した。
試験に使用した動物の体毛は黒色で、除毛部の皮膚の色は茶色であり、その毛の成長と共に灰色から黒色に色調が変化することから、毛の色の黒さの程度を肉眼により、0:発毛が全く認められない、1:発毛している、2:硬毛が生え揃っている、3:硬毛が正常の約50%生えている、4:硬毛が正常の約70%生えている、5:硬毛が正常のほぼ100%生えている、の6段階で評価した。結果を表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から明らかなように、本発明の育毛剤用添加剤を添加した育毛剤組成物は、配合しないものよりも薬効成分を減らしても十分な発毛効果が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(II)で表される育毛剤用添加剤。
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1〜5のアルキル基またはアリール基であり、Rは炭素原子数6〜30のアルキル基である。)
【請求項2】
薬効成分と、組成物全量基準で0.01〜0.2重量%の請求項1に記載の育毛剤用添加剤を含有することを特徴とする育毛剤組成物。
【請求項3】
組成物全量基準で、前記薬効成分であるミノキシジルの含有量が0.05〜2重量%であり、前記育毛剤用添加剤の含有量が0.02〜2重量%であることを特徴とする請求項2に記載の育毛剤組成物。

【公開番号】特開2009−191079(P2009−191079A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134744(P2009−134744)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【分割の表示】特願2000−101874(P2000−101874)の分割
【原出願日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】