肺による吸入のためのベンゾジアゼピンを含有したドライパウダー組成物
本発明は、薬学的組成物の製造に関するものである。本発明は、粒子に関するものであり、また、粒子の製造方法に関するものである。とりわけ、本発明は、肺による吸入によって薬学的に活性な材料を含有した複合活性粒子を製造するための方法に関するものである。本発明は、さらに、ジェットミリングプロセスを行うような方法に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入によって投与するための、特にベンゾジアゼピンからなるドライパウダー薬学的組成物といったような、ベンゾジアゼピンを含有したドライパウダー薬学的組成物に関するものであり、また、そのような組成物を投与するための吸入装置に関するものである。
【0002】
ベンゾジアゼピン類は、1960年に最初に紹介された鎮静催眠剤である。ベンゾジアゼピン類は、様々な状況において一般に使用されており、例えば、発作の制御や、不安症や、アルコール禁断症状や、不眠症や、薬剤に関連した興奮症状の制御、などにおいて使用されており、また、筋弛緩剤として、また、前麻酔薬として、使用されている。さらに、ベンゾジアゼピン類は、手術前における意識の鎮静化のために、他の薬剤と頻繁に組み合わせて使用されている。ベンゾジアゼピン類が広く出回っていることのために、このような薬剤は、乱用されるおそれがある。加えて、ベンゾジアゼピン類は、単独であるいは他の物質と組み合わせて、過剰服用され得ることが知られている。
【0003】
最も広く使用されているベンゾジアゼピン類には、クロバザムや、クロナゼパムや、ジアゼパムや、ロラゼパムや、ミダゾラム、がある。本発明においては、これら周知のベンゾジアゼピン類やまたそれほど一般的でないものも含めて、任意のベンゾジアゼピン類を使用することができる。
【0004】
クロバザムは、7−クロロ−1,5−ジヒドロ−1−メチル−5−フェニル−1,5−ベンゾジアゼピン−2,4(3H)−ジベンゾジアゼピンという化学名を有した1,5ベンゾジアゼピンである。クロナゼパムは、5−(2−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロ−7−ニトロ−1,4−ベンゾジアゼピン−2−ベンゾジアゼピンという化学名を有した1,4ベンゾジアゼピンである。ジアゼパムは、7−クロロ−1,3−ジヒドロ−1−メチル−5−フェニル−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−ベンゾジアゼピンという化学名を有したベンゾジアゼピンである。ロラゼパムは、7−クロロ−5−(2−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロ−3−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−ベンゾジアゼピンという化学名を有したベンゾジアゼピンである。ミダゾラムは、8−クロロ−6−(2−フルオロフェニル)−1−メチル−4H−イミザゾ[1,5−a][1,4]ベンゾジアゼピンという化学名を有したベンゾジアゼピンである。
【0005】
本発明の組成物においては、ベンゾジアゼピンは、好ましくは、クロバザムまたはクロナゼパムのいずれかとされる。クロバザムは、特に好ましい。その理由は、利用可能な文献によれば、このベンゾジアゼピンが、他のベンゾジアゼピンと比較して、副作用がより少ないと考えられるからである。例えば、非特許文献1を参照されたい。さらに、クロバザムが吸入によって肺へと投与された時には、副作用がさらに低減されると考えられている。
【背景技術】
【0006】
現在のところ、特にてんかんの治療を意図した場合、市販のベンゾジアゼピン類は、一般に、静脈注射によって投与するものや、あるいは、直腸から投与するもの、とされている。これら双方の投与態様は、ある状況下においては明らかに不便なものであり、患者にとって不快なものである。
【0007】
いくつかの経口投与型のベンゾジアゼピン類が利用可能であり、通常、錠剤という形態とされている。しかしながら、経口投与においては、静脈注射や直腸経由で投与する場合と比較して、同じ結果を達成するためには、明らかに大量のベンゾジアゼピン類を服用しなければならないという欠点を避けることができない。例えば、Rivotril(登録商標)(クロナゼパム)は、てんかんを治療するために使用され、静脈注射によって投与されるあるいは錠剤として経口投与される。ベンゾジアゼピンの推奨された服用量は、錠剤の場合には、1日あたり4〜8mgである。これに対し、静脈注射の場合には、1日あたり1mgである。その上、経口投与の場合には、投与と治療効果の兆候との間に比較的長い遅延時間が存在するという欠点を避けることができない。また、ベンゾジアゼピンの初回通過新陳代謝が、問題である。
【0008】
ベンゾジアゼピン類を投与するための他の態様が提案されているけれども、それらの成功度合いは、制限されている。鼻粘膜を介してのベンゾジアゼピンの投与が、特に睡眠の改良に関して、特許文献1(Goldberg氏)に開示されている。睡眠が引き起こされる際には、治療的活性薬剤の投与時の効果が迅速に現れることが望ましいことは、明らかである。ベンゾジアゼピンを含有した溶液や懸濁液や軟膏やゲルを含む組成物を、改良された持続時間にわたって催眠効果をもたらし得ることが、開示されている。この効果は、従来の態様と比較して、より効率的にかつより正確に制御される。特許文献2(SI Corporation社)には、鼻粘膜を介しての投与のための組成物が開示されている。特に、特許文献2には、例えばベンゾジアゼピンといったような薬剤を、脂肪族アルコールやエチレングリコールや水を含有した薬学的に許容可能な共溶媒システムと組み合わせて投与すること、さらに、これら組合せ物を、例えば胆汁酸塩またはレシチンといったような生物学的界面活性剤と組み合わせて投与すること、が開示されている。水性の共溶媒システムは、粘膜を介しての活性薬剤の浸透および吸収に関しての、速度および程度を制御して促進するものとされている。
【0009】
しかしながら、鼻を介しての投与は、特に所定期間にわたって定期的な投与が必要とされる場合には、患者にとってあまり快適なものではない。鼻腔内において凝集が起こる可能性があり、不快さを引き起こす。この投与態様は、さらに、ベンゾジアゼピン組成物の限られた容積しか投与し得ないという問題点を避けることができない。このため、組成物は、実際には、そのまま飲み込まれ、治療効果がほとんどないあるいは全くない。
【0010】
また、吸入によって、ベンゾジアゼピンを含有した組成物を投与することが、想定されている。特許文献3(Daniel氏)には、ベンゾジアゼピンを含有した組成物を吸入することによってパニック障害や発作性疾病を治療することが、開示されている。この治療は、主として応急処置を想定したものであり、患者に対してのベンゾジアゼピンの投与量は、あまりに精度を欠くものである。組成物は、推進剤を含有しており、例えばエアロゾル化された計量投薬ポンプや手動計量投薬ポンプや計量投薬スプレー生成スクイーズボトルといったような従来的装置を使用して、投与される。
【0011】
特許文献4(Alexza Molecular Delivery Corporation 社)には、エアロゾルという形態でのベンゾジアゼピンの吸入を開示している。この場合、ベンゾジアゼピンを含有した組成物を加熱することにより蒸気を形成し、その後、蒸気をエアロゾルへと凝集させる。そのような凝集エアロゾルは、少なくとも3つの構成部材を備えた吸入装置を必要とする。とりわけ、組成物を加熱して蒸気を形成するための部材と、蒸気を冷却し得る部材と、そのようにして形成されたエアロゾルの吸入を可能とし得る部材と、を備えた吸入装置を必要とする。この組成物および投与態様により、ベンゾジアゼピンのピーク血漿濃度が迅速に生成されることが、主張されている。しかしながら、エアロゾルを生成するというこの労力を要する手法は、比較的信頼性が低いものであって、実際に投与されるベンゾジアゼピンの量を予測することができない。このため、投与量が過剰となったりあるいは過小となったりし得る。いずれの場合も、望ましくないことは明らかであり、にに不適当で、患者の健康に対して危険性のあるリスクをもたらす。
【特許文献1】国際公開第90/02737号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,627,211号明細書
【特許文献3】米国特許第5,457,100号明細書
【特許文献4】国際公開第02/094244号パンフレット
【非特許文献1】Trimble et al, Benzodiazepines, page 5 (2000)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による吸入可能なベンゾジアゼピンドライパウダー組成物は、投与から15分以内に治療効果が得られるものと考えられる。これは、ベンゾジアゼピン組成物を経口で投与した場合や直腸経由で投与した場合と比較して、治療効果を得るに際して、著しく速い時間である。
【0013】
さらに、ベンゾジアゼピンは、初回通過新陳代謝が比較的大きいものとして知られており、このような代謝物質は、ベンゾジアゼピン自体と比較して、治療上有効ではない。肺ルート経由でベンゾジアゼピンを投与することにより、新陳代謝を起こさないより多くの薬剤が、体系的に供給される。このことは、経口ルートや直腸ルートの場合に必要とされる典型的な投与量と比較して、ベンゾジアゼピンの投与量を、小さなものとすることができる。例えば、Medhndiratta et al.,“Clobazam monotherapy in drug naive adult patients with epilepsy”,12 Seizures 226-228 (2003) においては、26人の患者に関する研究により、クロバザムの一日あたりの平均投与量が26.86mgであり、20mg〜80mgという範囲であることが示されている。Trimble et al.,“Benzodiazepines”at page 69 においては、6〜8時間おきにおける投与量が10mgであることに言及されている。
【0014】
本発明による吸入可能なクロバザム組成物の上記特性は、クロバザムに関しては薬学的悪影響相互作用の発生率が比較的小さいことと組み合わせると、付加的な治療に関して特に好適なものとすることができる。すなわち、例えば発作に関する他の薬物といったような他の薬物と組み合わせて治療することに関して特に好適なものとすることができる。本発明のいくつかの実施形態においては、付加的な治療のための組成物が提供される。この付加的な治療のための組成物は、主要な薬剤と、付加的な薬剤と、の組合せである。付加的な薬剤は、吸入によって投与されるものであって、好ましくはクロバザムといったようなベンゾジアゼピンを含有している。主要な薬剤は、クロナゼパムや、ethosuximideや、felbamateや、gabapentinや、lamotrigineや、levetiracetamや、oxcarbazepineや、 phenobarbitalや、phenytoinや、piracetamや、primidoneや、tigabineや、topiramateや、valproateや、vagabatrinや、acetazolmideや、副腎皮質刺激ホルモンや、mephytoinや、mesuximideや、nitrazepamや、薬学的に許容可能なこれらの塩類、とすることができる。
【0015】
発作性の疾病のための経口投薬を受けている患者は、発作を起こしそうであるような比較的長期にわたって(例えば、数日間にわたって)これら薬物を摂取する。これら経口投与薬剤の治療効果が生じるまでの時間が比較的長いことのために、患者は、例えば発作を引き起こしそうな事象といったような事象が発生するまで薬剤の摂取を待つということが、できない。これに対し、ベンゾジアゼピン類(特に、クロバザム)の肺投与の場合には、治療効果が生じるまでの時間がずっと速いものと考えられており、そのため、患者に対する投薬回数を極めて少なくすることができる。このことは、ベンゾジアゼピン類が副作用を示すことのために、また、吸入の場合には、必要とされる投薬回数を少なくすることができて、そのような副作用を低減し得ると考えられていることのために、重要な利点である。他のベンゾジアゼピン類と比較してより少ない副作用しか示さないことが既に判明しているクロバザムの場合には、投薬回数のさらなる低減化と、投薬量のさらなる低減化と、によって、吸入可能な組成物を特に有利なものとし得るものと考えられる。
【0016】
発作性の疾病の治療に際してベンゾジアゼピン類を肺投与することの他の利点は、患者の消化器系を通して投与する必要がないということである。このことは、発作時には患者の消化作用が機能しないかもしれないことのために、重要である。したがって、患者がちょうど発作の直前にうまく経口薬を飲み込んだにしても、実際には、発作自体が、薬剤の消化を妨害してしまい、そのため、所望の治療効果を得ることができない。これに対し、患者が吸入可能なベンゾジアゼピン組成物をうまく吸入し得る限りにおいては、薬剤は、効果的に吸収される。
【0017】
また、肺による吸入は、直腸や筋内に対する投与と比較して、患者にとって、より社会的に許容可能である。筋内投与の場合には、注射を行う。注射は、多くの患者にとって不快なものであり、特に、子供の患者にとっては不快である。また、直腸への投与は、不便であり不快なものである。さらに、多くの発作患者は、子供であって、学校でいる際に投薬が必要であるかもしれない。学校職員は、直腸投与薬剤注射を行うことには、抵抗がある。鼻への投与でさえ、多くの場合に鼻腔内において固まってしまって患者にとって不快であるという欠点を有している。
【0018】
したがって、本発明の第1見地によれば、吸入による投与のために、ベンゾジアゼピンを含有した薬学的組成物が提供される。本発明の1つの実施形態においては、組成物は、ドライパウダー組成物とされる。本発明の他の実施形態においては、組成物は、肺による吸入に適したものとされる。
【0019】
本発明の他の見地によれば、ベンゾジアゼピンを含有した薬学的組成物は、治療に際して使用される。特に、組成物は、てんかんの治療に際して使用される。組成物は、部分的に反復的なものや急性の反復的なものも含めて、一般に、発作の治療に際して有効である。また、組成物は、癲癇重積症と称される状況を治療するに際して使用することができる。癲癇重積症という用語は、任意の継続的なタイプの発作を表すものとして使用することができる。また、組成物は、急性パニック障害を治療するに際して使用することができる。また、本発明による組成物は、鎮静剤としてまた事前薬剤(手術前薬剤)として、使用することができる。
【0020】
本発明の他の実施形態においては、組成物は、発作性の疾病やパニック障害の治療には使用されない。
【0021】
本発明の吸入可能組成物は、加圧計量投与量吸入器(pMDI)あるいはドライパウダー吸入器(DPI)のいずれかを使用して、投与することができる。
【0022】
加圧計量投与量吸入器は、典型的には、2つの構成部材を備えている。第1に、薬剤粒子(この場合には、ベンゾジアゼピン)を懸濁液または溶液という形態で加圧状態で収容するキャニスター部材を備えている。第2に、キャニスターを保持し駆動させるために使用されるレセプタクル部材を備えている。典型的には、キャニスターは、複数回の投薬分量の組成物を収容する。しかしながら、キャニスターは、1回分の投薬分量の組成物を収容することもできる。キャニスター部材は、典型的には、キャニスターの内容物を放出させ得るバルブ付き出口を有している。エアロゾル薬剤は、キャニスター部材をレセプタクル部材内へと押圧しこれによりバルブ付き出口を開放しこれにより薬剤粒子をバルブ付き出口から放出させさらにはレセプタクル部材を通してレセプタクルの出口から放出させることによって、pMDIから放出される。キャニスターからの放出時には、薬剤粒子は、『霧化』され、これにより、エアロゾルが形成される。患者が、自身の吸入タイミングに対してエアロゾル化薬剤の投与を調和させることが意図されている。これにより、薬剤粒子を、患者の吸気流に乗せて、肺にまで搬送することができる。典型的には、pMDIsは、キャニスターの内容物を加圧するために、また、レセプタクル部材の出口から薬剤粒子を放出するために、推進材を使用する。pMDIにおいては、組成物は、液体の形態で提供され、推進材と一緒に容器内に留まる。推進材は、様々な形式をとることができる。例えば、推進材は、加圧ガスあるいは液化ガスとすることができる。
【0023】
ドライパウダー吸入器においては、投与される投与量は、加圧されていないドライパウダーの形態で収容され、吸入器の駆動時には、パウダーの粒子は、患者によって吸入される。ドライパウダー吸入器は、患者の呼吸が装置駆動のための唯一のガス供給源をなす『受動』型装置とすることができる。これに代えて、『能動』型装置においては、加圧ガスの供給源が使用される。本発明によるドライパウダー組成物は、能動型のDPIを使用してもまた受動型のDPIを使用しても、供給することができる。受動型の吸入装置としては、Rotahaler(登録商標)および Diskhaler(登録商標)(GlaxoSmithKline)、および、Turbohaler(登録商標)(Astra-Draco) がある。能動型吸入器の例としては、 Nektar Therapeutics 社による Inhance(登録商標)という商標名の吸入器や、同じく Nektar Therapeutics 社による Exubera(登録商標)という商標名のインシュリン吸入器や、 Vectura Limited 社による Aspirair 装置、がある。特に好ましい能動型ドライパウダー吸入器については、詳細に後述する。
【0024】
好ましい実施形態においては、本発明による組成物に関し、所望の治療効果を提供するのに必要な投与量は、ベンゾジアゼピンあるいはそれの薬学的に許容可能な塩として、約0.25mg〜約20mgである。好ましくは、投与量は、約0.5mg〜約10mgである。より好ましくは、投与量は、約1mg〜約7mgである。最も好ましくは、投与量は、ベンゾジアゼピンとして、約2mg〜約3mgである。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態においては、ベンゾジアゼピンを含有したドライパウダー組成物は、良好な薬剤効率を有したものとして、提供される。これにより、ドライパウダー組成物の肺投与に基づく利点と組み合わせて、投与すべきベンゾジアゼピンの量を、現在利用可能な組成物および現在利用可能な投与態様において必要された量と比較して、より少量とすることができる。
【0026】
投薬効率は、ベンゾジアゼピンを含有したドライパウダー組成物を最適化することにより、および/または、組成物を投与するために使用する装置を最適化することにより、得ることができる。
【0027】
良好な投薬効率は、多くの利点を有している。例えば、各投薬ごとにより多くの割合の活性薬剤を繰返し的にかつ信頼性高く供給し得ることにより、同じ治療効果を得つつも、投薬量を低減することができる。このことは、明らかに、非常に魅力的である。
【0028】
本発明の様々な実施形態によって達成されるような比較的少ない投薬量および比較的大きな再現性は、所定の投薬量によって得られる治療効果が、より予測可能であることおよびより一様であることを意味する。これは、従来的な装置や従来的なパウダーの場合に予期した以上にすなわち過剰に投薬してしまって実質的に過剰投与となってしまうというというリスクを、回避することができる。
【0029】
さらに、治療的に活性な薬剤の過剰投与は、長年にわたって、かなり大きな副作用の増大した発生率と関連してきた。したがって、本発明は、すべての患者に関し、投与量を低減することによって、副作用の発生率を低減することを補助することができる。
【0030】
当然のことながら、同じ治療効果を得るに際して必要とされる活性薬剤の量を低減することは、コスト的な意味でも、魅力的である。しかしながら、例えば米国FDAといったような取締機関によっても、ずっと安全なものであると考えられている。
【0031】
ドライパウダー組成物の計量投与量(MD)は、使用されている吸入装置によって提示された計量形態内に存在する活性薬剤の全重量である。例えば、MDは、Cyclohaler(登録商標)のためのカプセル内に存在するような、あるいは、Aspirair(登録商標)内におけるフォイルブリスタ内に存在するような、活性薬剤の質量とすることができる。
【0032】
放出された投与量(ED)は、駆動後に装置から放出された活性薬剤の全重量である。この量には、装置の内部に残っている材料や、装置の表面上に残っている材料は、含まれない。EDは、投与量一様サンプリング装置(DUSA)として頻繁に識別されるような装置内におけるデバイスから放出された全放出重量を収集することにより、正当化された定量的湿式化学分析によってこれを回収することにより、測定される。
【0033】
微粒投与量(FPD)は、駆動後に装置から放出された、所定の限界値よりも小さな空気力学的粒径を有した活性薬剤の全重量である。この限界値は、特に断らない限り、一般に5μmと考えられる。代替的な限界値は、例えば、3μmや、1μm、等である。FPDは、例えば twin stage impinger (TSI)や multi-stageimpinger (MSI)や Andersen Cascade Impactorや Next Generation Impactor (NGI) といったようなインパクターまたはインピンジャーを使用して測定される。各インパクターまたはインピンジャーは、ステージごとに、予め規定された空気力学的粒径収集カットポイントを有している。FPD値は、正当化された定量的湿式化学分析によって定量化されたステージごとの活性薬剤の回収を評価することによって、得られる。その場合、単純なステージカットを使用することによってFPDが決定される、あるいは、ステージごとの堆積に関するより複雑な数学的補間法を使用することによってFPDが決定される。
【0034】
微細粒子比率(FPF)は、通常、FPDをEDによって割算したものとして定義され、%を単位として表される。この場合、EDのFPFは、FPF(ED)と称され、FPF(ED)=(FPD/ED)×100%として計算される。
【0035】
微細粒子比率(FPF)は、また、FPDをMDによって割算したものとして定義することもでき、%を単位として表される。この場合、MDのFPFは、FPF(MD)と称され、FPF(MD)=(FPD/MD)×100%として計算される。
【0036】
FPF(MD)は、また、『投与効率』と称することもでき、供給装置から放出された際の、特定の空気力学的粒径よりも小さな薬学的ドライパウダー組成物の投与量である。
【0037】
患者の上部気道内における粒子の衝突が、いわゆる衝突パラメータによって予測し得ることは周知である。密着パラメータは、衝突速度と、空気力学的断面積と、の積として定義される。
【0038】
したがって、作用のターゲット部位に対しての上部エア通路領域を通しての粒子供給に関連した確率は、空気力学的断面積に関連する。したがって、より下部のエア通路への供給、すなわち、深い肺への供給は、空気力学的断面積に依存するものであり、より小さなエアロゾル粒子の方が、使用者の投与ターゲット部位にまで到達する可能性が高く、したがって、所望の治療効果を有することができる。
【0039】
5μm〜2μmという範囲の空気力学的直径を有している粒子は、一般に、呼吸細気管支内に堆積し、3μm〜0.05μmという範囲の空気力学的直径を有している粒子は、肺胞に堆積するであろう。したがって、例えば、肺胞をターゲットとした粒子の投薬効率は、そのようなターゲット部位にまで到達しやすいようより小さな粒子とされた3μm以下の粒子の投与のために、大きなものとなることが予測される。
【0040】
吸入によって組成物を深い肺にまであるいは血液流内へと到達させるため、組成物内の活性薬剤は、非常に微細な粒子という形態のものでなければならない。例えば、10μmよりも小さな質量メジアン空気力学的直径(MMAD)を有したものでなければならない。10μmよりも大きなMMADを有した粒子は、喉の壁に衝突しやすく、一般に、肺にまでは到達しないことは、広く証明されている。5μm〜2μmという範囲のMMADを有した粒子は、一般に、呼吸細気管支内に堆積するであろう。また、3μm〜0.05μmという範囲のMMADを有した粒子は、肺胞内に堆積するであろうあるいは血液流内へと吸収されるであろう。
【0041】
したがって、本発明の好ましい実施形態においては、下部の呼吸器官へとすなわち深い肺へと投与し得るよう、活性粒子のMMADは、10μmよりも小さなものとされ、好ましくは、5μmよりも小さなものとされ、より好ましくは、3μmよりも小さなものとされ、1μmよりも小さなものとすることができる。理想的には、ドライパウダー組成物内における活性粒子のうち、重量で少なくとも90%のものは、10μmよりも小さなMMADを有しているべきであり、好ましくは、5μmよりも小さなMMADを有しているべきであり、より好ましくは、3μmよりも小さなMMADを有しているべきであり、最も好ましくは、2μmよりも小さなMMADを有しているべきである。
【0042】
ドライパウダーが従来的プロセスを使用して製造された場合には、活性粒子は、様々な粒径を有したものとされ、多くの場合、粒径のばらつきは、かなり大きなものとなり得る。これにより、活性粒子の十分に大きな割合のものを、正確なサイトへと投与するのに適したサイズのものとすることが、困難となる。したがって、ドライパウダー組成物は、活性粒子のできる限り小さなサイズ分布を有したものであることが望ましい。これにより、投薬効率および再現性が改良されることとなる。
【0043】
本発明の組成物は、好ましくは、薬学的活性薬剤の損失を低減し得るよう組成されている。大きな投薬効率を得ることができる。薬学的活性薬剤の損失という表現は、活性薬剤が供給装置によって供給されないことを意味しており、また、所望の治療効果が得られるよう活性粒子を堆積させるべき下部の呼吸器官に対してすなわち深い肺に対して到達するような態様で活性薬剤が供給されないことを意味している。
【0044】
特に、組成物内における微粒子の凝集は、活性薬剤の損失となる。活性薬剤の微粒子は、凝集する傾向がある。そして、供給装置の駆動時にこれら凝集物が分解しなければ、活性薬剤粒子は、肺の所望部位にまでは到達しないであろう。微細パウダー粒子の分解は、力制御薬剤の添加によって、また、粒子を調製するために使用される方法によって、大いに増強し得ることが判明している。力制御薬剤は、粒子結合を低減するものであり、これにより、凝集物の分解を容易なものとすることができる。
【0045】
微粒子は、すなわち、10μmよりも小さなMMADを有した粒子は、体積に対しての表面積の比が大きくこのため表面の自由エネルギーがかなり大きくて粒子どうしの凝集を促進するものであることのために、熱力学的に不安定である。吸入器においては、微粒子どうしの凝集および吸入器壁に対してのそのような粒子の付着は、様々な問題点を引き起こす。すなわち、微粒子どうしが大きくかつ安定な凝集物として吸入器から放出されたり、吸入器の内部に付着したまま吸入器から放出され得なかったり、あるいは、吸入器を閉塞させてしまったり、といったような問題点を引き起こす。
【0046】
吸入器の各駆動時の間における、あるいは、様々な吸入器どうしの間における、粒子の様々なバッチどうしの間における、粒子からなる安定な凝集物の形成の程度に関しての不確実性は、薬剤投与の再現性を悪いものとしてしまう。さらに、凝集物の形成は、活性粒子どうしの凝集によって活性粒子のMMADが大いに増大してしまい、肺の所望部位にまで到達しないことを意味する。
【0047】
微粒子が凝集するという傾向は、与えられた投与量のFPFが大いに予測不能となること、および、微粒子のうちの、肺へと到達する割合がすなわち肺の適切な部位へと到達する割合が、大いに変動すること、を意味する。
【0048】
この状況を改良してFPFおよびFPDを一様なものとする試みにおいては、ドライパウダー組成物は、多くの場合、添加剤を含有している。
【0049】
添加剤は、ドライパウダー組成物内における粒子どうしの間の結合を低減することを意図している。添加剤は、小さな粒子どうしの間における弱い結合力を妨害し、これにより、粒子どうしを分離状態に維持することを補助するとともに、それら粒子どうしが互いに付着することを低減させ、また、組成物内に他の粒子が存在している場合にはそのような他の粒子に対して付着することを低減させ、さらに、吸入装置の内表面に対して付着することを低減させる。粒子の凝集物が形成されている場合、添加剤粒子の添加することによって、凝集物の安定性を低減させる。これにより、凝集物は、粒子を放出するための吸入装置の駆動時に生成された乱流エア流内において分解されやすくなる。凝集物が分解した場合には、活性粒子は、それぞれ小さな個別の粒子という形態へと復帰し、下部の肺にまで到達することができる。
【0050】
従来技術においては、ドライパウダー組成物は、添加剤からなる個別粒子(一般に、活性微粒子のサイズと同等のサイズの粒子)を含有しているものとして、議論されている。いくつかの実施形態においては、添加剤は、活性粒子上におけるおよび/または任意のキャリア粒子上におけるコーティングという形態とすることができる、あるいは、一般的には、不連続なコーティングという形態とすることができる。
【0051】
好ましくは、添加剤は、付着防止材料とされる。これは、粒子どうしの間の結合を低減する傾向があり、また、微粒子が吸入装置の内表面に対して付着することを防止する傾向がある。有利には、添加剤は、摩擦防止剤あるいはglidant とされる、これは、吸入器内における薬学的組成物のより良好な流れをもたらす。このようにして使用されている添加剤は、必ずしも付着防止剤あるいは摩擦防止剤として通常的に称されるものではないかもしれない。しかしながら、それらは、粒子どうしの間の結合を低減させる効果、あるいは、パウダーの流動性を改良する効果、を有したものである。添加剤は、多くの場合、力制御薬剤(force control agent,FCA)と称され、通常、投与量に関するより良好な再現性と、大きな微粒子比率と、をもたらす。
【0052】
したがって、FCAは、本明細書においては、粒子の表面上におけるその存在によって、他の粒子の存在時に各粒子が受ける付着表面力および結合表面力を変更し得るような物質である。一般に、FCAの機能は、付着力と結合力との双方を低減させることである。
【0053】
一般に、ドライパウダー組成物内に含有されるべき添加剤の最適量は、添加剤の化学的組成および他の特性と、活性材料の化学的組成および他の特性と、存在する場合には例えばキャリア粒子といったような他の粒子の性質と、に依存する。一般に、添加剤の効率は、組成物の微粒子比率という観点から測定される。
【0054】
添加剤は、必ずしも肺へと到達するものではないけれども、公知の添加剤は、通常、薬学的に許容可能な材料から構成される。例えば、添加粒子が、キャリア粒子の表面に対して取り付けられたものとされる場合には、添加粒子は、一般に、使用者の喉の背面のところにおいて、キャリア粒子と一緒に堆積することとなる。
【0055】
したがって、本発明の好ましい実施形態においては、組成物は、さらに添加剤を含有している。
【0056】
ドライパウダー組成物内において使用するに際して好ましい添加剤には、アミノ酸や、ペプチドや、0.25〜1000kDaという分子量を有したポリペプチドや、これらの派生物や、例えば両性イオンといったような二極性イオンや、例えばレシチンといったようなリン脂質や、例えばステアリン酸マグネシウムといったような金属ステアリン酸塩や、ナトリウムステアリルヒューメイトや、コロイド状二酸化シリコン、がある。
【0057】
本発明の一実施形態においては、ドライパウダー組成物は、1つまたは複数のFCAを、約0.1%〜約40%という重量比率でもって、好ましくは、約0.15%〜約10%という重量比率でもって、より好ましくは約0.2%〜約50%という重量比率でもって、最も好ましくは約0.5%〜約2%という重量比率でもって、含有することができる。
【0058】
FCAがアミノ酸またはリン脂質とされている場合には、FCAは、好ましくは約0.1%〜約10%という重量比率でもって、より好ましくは約0.5%〜約5%という重量比率でもって、最も好ましくは約2%という重量比率でもって、含有される。好ましくは、微粉化したアミノ酸またはリン脂質の少なくとも95重量%は、150μmよりも小さな粒径を有しており、より好ましくは100μmよりも小さな粒径を有しており、最も好ましくは50μmよりも小さな粒径を有している。
【0059】
FCAが金属ステアリン酸塩またはナトリウムステアリルヒューメイトとされている場合には、FCAは、好ましくは約0.05%〜約10%という重量比率でもって、より好ましくは約0.15%〜約2%という重量比率でもって、最も好ましくは約0.15%〜約0.5%という重量比率でもって、含有される。
【0060】
ドライパウダー組成物の粒子の粒径について言及する場合、特に断らない限り、粒径が、容積加重粒径とされていることを理解されたい。粒径は、レーザー回折方法によって計算することができる。粒子が、さらに、粒子の表面上にインジケータ材料を含有している場合には、コーティングされた状態での粒径が、コーティング無しの粒子に関する特定された好ましい粒径範囲の中に位置していることが、有利である。
【0061】
本発明のある種の実施形態においては、ベンゾジアゼピン組成物は、『キャリアの無い』組成物とされる。すなわち、ベンゾジアゼピンと、1つまたは複数の添加剤と、だけを含有している。このような実施形態においては、パウダー組成物は、好ましくはクロバザムまたはクロナゼパムとされたベンゾジアゼピンと、添加剤と、を含有している。パウダーは、パウダーの重量に対して、少なくとも60重量%のベンゾジアゼピンを含有している。有利には、パウダーは、パウダーの重量に対して、少なくとも70重量%の、より好ましくは少なくとも80重量%の、ベンゾジアゼピンを含有している。最も有利には、パウダーは、パウダーの重量に対して、少なくとも90重量%の、より好ましくは少なくとも95重量%の、ベンゾジアゼピンを含有している。
【0062】
特に所望の治療効果を生成し得るよう患者に対して投与されるべき活性薬剤以外の材料に関しては、肺に対してできるだけ少量のパウダーしか導入しないことは、生理学的に有利であると考えられている。したがって、ドライパウダー組成物に含有される添加剤の量は、好ましくは、できるだけ少ないものとされる。最も好ましいパウダー組成物は、したがって、ベンゾジアゼピンを、99重量%よりも多く含有している。
【0063】
このような『キャリアの無い』組成物においては、パウダー粒子の少なくとも90重量%は、20μmよりも小さいような、好ましくは10μmよりも小さいような、より好ましくは5μmよりも小さいような、粒径を有している。上述したように、パウダーのベンゾジアゼピン粒子のサイズは、下部の肺への有効な投与のためには、0.1μm〜5μmという範囲内であるべきである。添加剤が、材料粒子という形態のものとされている場合には、添加剤粒子が、下部の肺へと供給し得るような上記好ましい粒径範囲内にあることが有利である。
【0064】
添加剤が、アミノ酸を含有したものとされていることが、特に有利であると考えられる。ドライパウダー組成物内において添加剤として存在する場合、アミノ酸は、活性材料の吸入比率を大きなものとし得ること、および、パウダーの流動特性を増強し得ること、が判明している。好ましいアミノ酸は、ロイシンであり、特に、L−ロイシンである。ここでは、L−形式とされたアミノ酸が好ましいものとして説明しているけれども、D−形式やDL−形式のものも、使用することができる。添加剤は、ロイシン、イソロイシン、リジン、バリン、メチオニン、システイン、および、フェニルアラニン、の中の1つまたは複数のアミノ酸とすることができる。好ましくは、パウダーは、パウダーの重量に対して、少なくとも80重量%の、好ましくは少なくとも90重量%の、ベンゾジアゼピン(あるいは、それの薬学的に許容可能な塩類)を含有している。好ましくは、パウダーは、パウダーの重量に対して、8重量%を超えないような、好ましくは5重量%を超えないような、添加剤を含有している。上述したように、ある種の場合には、パウダーは、約1重量%という添加剤を含有していることが有利である。添加剤は、また、ステアリン酸マグネシウムや、コロイド状二酸化シリコン、とすることができる。
【0065】
組成物内における粒子の分解を補助してFPFおよびFPDを一様なものとするという試みにおいては、ドライパウダー組成物は、多くの場合、活性材料からなる微粒子と混合されたような、賦形剤からなる粗いキャリア粒子を含有している。微粒子どうしが互いに付着するのではなく、活性微粒子は、吸入装置内において、粗いキャリア粒子の表面に対して付着する傾向がある。この場合、活性微粒子は、微細な懸濁液を形成し得るよう解放可能に支持されており、供給装置の駆動時には、吸入によって、呼吸気管内へと供給されるようになっている。粗いキャリア粒子は、好ましくは、40μmよりも大きなMMADを有している。
【0066】
粗いキャリア粒子を含有していることは、また、活性薬剤の供給量が非常に少ないものとされている場合に、非常に魅力的である。ごく少量のパウダーを正確にかつ再現性よく供給することは、非常に困難なことであり、また、パウダーが主成分として活性粒子を含有している場合には、パウダーの供給量がわずかに変動しただけでも、活性薬剤の投与量が大きく変わってしまう。したがって、賦形剤粒子という形態での希釈剤の追加は、投薬量を、より再現性の良いものかつより正確なものとする。
【0067】
キャリア粒子は、任意の許容可能な賦形剤材料あるいは材料の組合せとすることができる。例えば、キャリア粒子は、糖アルコール、多価アルコール、および、結晶砂糖、の中から選択された1つまたは複数の材料から構成することができる。他の適切なキャリアとしては、例えば塩化ナトリウムや炭酸カルシウムといったような無機塩類や、例えば乳酸ナトリウムといったような有機塩類や、例えば多糖やオリゴ糖といったような他の有機化合物、がある。有利には、キャリア粒子は、多価アルコールからなるものとされる。特に、キャリア粒子は、例えばマンニトールやブドウ糖やラクトースといったような結晶砂糖からなる粒子することができる。好ましくは、キャリア粒子は、ラクトースからなるものとされる。
【0068】
したがって、さらなる好ましい実施形態においては、本発明の組成物は、さらに、キャリア粒子を含有している。
【0069】
有利には、実質的にすべて(重量による)のキャリア粒子は、10μm〜1000μmというようなより好ましくは50μm〜1000μmといったような直径を有している。
【0070】
好ましくは、実質的にすべて(重量による)のキャリア粒子は、355μmよりも小さいようなより好ましくは20μm〜250μmといったような直径を有している。
【0071】
好ましくは、キャリア粒子の少なくとも90重量%は、60μm〜1000μmという直径を有している。キャリア粒子の直径が比較的大きいことは、キャリア粒子の表面に対しての他の小さな粒子の付着機会を増大させ、活性粒子の流動性および搬送特性を良好なものとし、エア通路内における活性粒子の放出性を改良し、これにより、肺下部内への活性粒子の堆積を増大させる。
【0072】
キャリア粒子(存在する場合)と複合活性粒子との混合比率は、当然のことながら、使用されている吸入装置のタイプや、使用されている活性粒子のタイプや、必要とされた投与量、に依存する。キャリア粒子は、複合活性粒子とキャリア粒子との合計重量に対して、少なくとも50%という重量比率でもって、より好ましくは少なくとも70%という重量比率でもって、有利には少なくとも950%という重量比率でもって、最も好ましくは少なくとも95%という重量比率でもって、含有される。
【0073】
活性微粒子からなる組成物に対して粗いキャリア粒子を添加する際には、さらなる困難さに遭遇する。この困難さとは、供給装置の駆動時に、大きな粒子の表面からどのようにして微粒子を確実に脱離させるかということである。
【0074】
吸入時に、活性粒子を、他の活性粒子から、および存在する場合にはキャリア粒子から、脱離させ、これにより、活性微粒子からなるエアロゾルを形成するというステップは、肺内の所望の吸収部位にまで到達する活性材料の投与量の比率を決定するに際して、重要である。そのような分散効率を改良し得るよう、組成物内に、上述した特性を有したFCAを含む添加剤を添加することが、公知である。活性微粒子および添加剤を含有した組成物は、国際公開第97/03649号パンフレットおよび国際公開第96/23485号パンフレットに開示されている。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態においては、パウダー組成物は、さらに、賦形剤からなる微粒子を含有することができる。そのような賦形剤は、例えば、キャリア材料として使用することが適切であるものとして上記において言及した様々な材料のうちの1つとすることができる。この観点において特に有効なものは、例えばブドウ糖やラクトースといったような結晶砂糖のような材料である。双方のタイプの粒子が存在する場合には、微細な賦形剤粒子は、キャリア粒子と同じ材料とすることができる、あるいは、キャリア粒子とは異なる材料とすることができる。
【0076】
微細な賦形剤の粒径は、一般に、30μmを超えないものとされ、好ましくは、20μmを超えないものとされる。いくつかの状況においては、例えば、任意のキャリア粒子および/または任意の微細な賦形剤粒子が、それ自体が口腔咽頭領域に感覚を引き起こし得る材料とされている状況においては、キャリア粒子および/または微細な賦形剤粒子は、インジケータ材料を構成することができる。例えば、キャリア粒子および/または任意の微細な賦形剤粒子は、マンニトールを含有したものとすることができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態においては、吸入のためのパウダーは、パウダーの構成成分どうしを混合することにより、調製することができる。例えば、パウダーは、活性材料の粒子と、キャリア材料の粒子と、添加剤の粒子と、を互いに混合することにより、調製することができる。使用される設備のタイプは、使用されている特定の組成物に依存する。例えば、ある種の組成物については、例えば Inversina Variable Tumbler Mixer といったような比較的剪断力が小さなミキサーを使用することができる。他の組成物については、例えば Retch Grindomix mixerといったような比較的剪断力が小さなミキサーが、好適である。さらに他の組成物については、例えば Hosokawa Mechano-Fusion mill のような機械溶融システムを使用し得る。場合によっては、球状化(すなわち、spheronisation)を有利なものすることができる。
【0078】
本発明によるドライパウダー組成物においては、吸入装置の駆動時に、微粒子比率が少なくとも35%であるようにして生成されることが、好ましい。微粒子比率が50%以上であることが、より好ましい。微粒子比率が60%以上であることが、特に好ましい。微粒子比率が70%以上であことが、とりわけ好ましい。微粒子比率が80%以上であることが、最も好ましい。本明細書においては、微粒子比率という用語は、装置によって供給される全活性材料のうち、5μmよりも小さな直径を有している活性材料の比率を表すために使用されている。装置によって供給される全活性材料は、一般に、装置内で計量された活性材料の量よりも、あるいは、装置内において事前計量された投与量内に存在する活性材料の量よりも、少ない。
【0079】
したがって、本発明のある実施形態においては、ベンゾジアゼピンドライパウダー組成物は、吸入装置において使用するものとして提供される。そのような組成物は、好ましくは、さらに、キャリア材料を含有している。パウダーは、好ましくは、吸入装置の駆動時には、少なくとも35%といったような、好ましくは少なくとも50%といったような、より好ましくは少なくとも60%といったような、最も好ましくは少なくとも70%といったような、微粒子比率を生成する。
【0080】
供給装置の駆動時には、パウダー組成物は、装置内において(能動的にあるいは受動的に)生成されたエア流に乗って搬送される。パウダーがこのエア流に乗って搬送される態様、および、その後に、装置から放出される態様は、できるだけ多くの活性薬剤を確実に放出するという観点から、重要である。
【0081】
エア流内にできるだけ多くのパウダーを乗せて搬送することは、単純な問題ではない。加えて、搬送は、装置から放出されるパウダープルームが、喉内に堆積する活性薬剤量を最小化し得るようなものであるべきである。最後に、パウダーがエア流に乗って搬送される際に、パウダー内のすべての凝集物が分解されることが、さらに望ましい。
【0082】
この分解は、パウダー組成物がエア流に乗って搬送される際にパウダー組成物に対して剪断力が印加され得るようにエア流が制御されている場合に、可能である。これら剪断力は、凝集した粒子を分解するように機能することができ、これにより、パウダーのFPFおよびFPDを増強する。
【0083】
供給装置内におけるパウダーのエア流に乗せての搬送時に、ドライパウダー組成物内の凝集物の分解を行い得るための1つの手法は、エア流がパウダーに対して剪断力を印加することができこれにより凝集物を分解し得るように、エア流を構成することである。
【0084】
分解に加えて、エア流に乗せてのパウダーの搬送をできるだけ効率的なものとしてパウダーの残留量をできるだけ少ないものとすることも、また、非常に重要である。最後に、他の考慮は、パウダーが供給装置から放出される際の、パウダーの動力学である。この場合にも、エア流に乗せてのパウダーの搬送が関連する。
【0085】
当然のことながら、エア流に乗せてのドライパウダー組成物の搬送は、組成物自体の特性によって、また、使用されている装置によって、影響される。例えば、微細パウダー(の搬送は、すなわち、例えばキャリア粒子といったようなより大きな粒子を含有していないパウダーの搬送は、大きな粒子と微細な粒子との組合せからなるパウダーの搬送と比較して、より困難である。しかしながら、装置自体の構成も、また、パウダー搬送に影響を与える。特に、分解やパウダー搬送やパウダー速度等を決定するものは、パウダーを通って装置から導出されるエア流の経路である。
【0086】
本発明の一見地によれば、ガス流に乗せて凝集粒子を搬送するための方法が、提供される。この方法においては、1つまたは複数の表面上に凝集粒子を堆積させ、ガス流を介して、凝集粒子に対して剪断力を印加し、これにより、凝集粒子を分解させる。
【0087】
『乱流度合いの大きな吸入装置』とは、装置内において比較的大きな乱流を生成し得るよう構成されているような、および/または、内表面上へのパウダーの衝撃発生率が比較的大きなものとされているような、および/または、装置内に障害物が存在するような、吸入装置を意味するものとして、理解されたい。これにより、装置の使用時には、凝集したパウダー粒子の効率的な分解を行うことができる。
【0088】
本発明のパウダー組成物が一般的に使用されるドライパウダー吸入装置には、例えば
Rotahaler(登録商標)や Inhaler(登録商標)や Diskhaler(登録商標) といったような『一回投与』型の装置がある。このような一回投与型の装置においては、パウダー組成物の1回分の投与量が、例えばカプセルやブリスタ内において、装置へと導入される。また、例えば Turbohaler(登録商標) といったような『複数回投与』型の装置を、使用することもできる。複数回投与型の装置においては、吸入器の駆動時に、装置内に収容されたパウダー材料のリザーバから1回分のパウダーが取り出される。
【0089】
上述したように、ある種のパウダー組成物の場合には、大きな乱流を促進する装置の形態が、他の形態とされた装置の場合よりも大きな微粒子比率が得られるという点において、利点をもたらす。そのような装置には、例えば、Turbohaler(登録商標)や Novolizer(登録商標)がある。このような装置は、パウダーのエアロゾル化クラウドの生成を患者の吸入によって駆動する種類の装置とすることも、また、吸入のためのパウダーのエアロゾル化クラウドの生成を引き起こすようなあるいは補助するような分散デバイスを有した種類の装置とすることも、できる。
【0090】
一実施形態として、本発明による方法においては、渦流チャンバのうちの、実質的に円形断面形状とされた入口ポートからのガス流ストリームに乗せてパウダー状物質を搬送する。この方法においては、さらに、渦流チャンバ内にわたってガス流を接線方向に案内し;パウダー組成物をエアロゾル化し得るようにして、渦流チャンバ内にわたってガス流を案内し;パウダー組成物を乗せたガス流を、渦流チャンバの外部へと、出口ポートを通して軸方向に導出する。好ましくは、出口ポートから300mm離間した外部のところにおけるガス流の速度は、入口ポートにおけるガス流の速度よりも小さいものとされている。
【0091】
他の実施形態として、本発明による方法においては、渦流チャンバの入口ポートよりも上流側において、ガス流内へと、凝集粒子を含有したパウダー状組成物を乗せる。この実施形態においては、さらに、入口ポートを通して渦流チャンバ内へとガス流を案内し;渦流チャンバの1つまたは複数の壁上へと、凝集粒子を堆積させ;渦流チャンバ内を流通するガス流によって、堆積した凝集粒子に対して剪断力を印加し、これにより、凝集粒子を分解し;分解した粒子を乗せたガス流を、渦流チャンバの外部へと導出し;出口ポートから300mm離間した外部のところにおけるガス流の速度を、入口ポートにおけるガス流の速度よりも小さいものとする。
【0092】
本発明は、さらに、パウダーを含有しているチャンバ内にわたってエア流を生成するための構成を提供する。これにより、パウダーは、エア流に乗せられ、出口ポートを介してチャンバの外部へと導出される。この際、チャンバ内にわたってエア流を案内する。チャンバは、軸線と、この軸線回りにおいて湾曲した壁と、を備えている。エアは、軸線回りに回転する。エア流は、また、チャンバの入口ポートを通して案内される。ここで、入口ポートを通して、エア流は、チャンバ壁に対する接線方向に案内される。出口ポートを通してのエア流の案内方向は、軸線に対して平行なものとされる。チャンバ内におけるエア流の断面積は、エア流に対して直交する平面内における断面積であって、入口ポートから離間するにつれて低減する。
【0093】
他の見地においては、吸入器は、エア流を供給して上述したような分解を行い得るものとして、提供される。そのような吸入器は、エアロゾル化デバイスを備えている。このエアロゾル化デバイスは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、実質的に軸方向を向いた出口ポートと、を有している。吸入器は、さらに、1つまたは複数の密封ブリスタ(あるいはカプセル)を備えている。ブリスタは、放出されるべき薬学的ドライパウダー組成物を収容している。吸入器は、さらに、複数のブリスタの中の1つを着脱可能に受領するための導入デバイスを備えている。駆動時には、吸入器は、接線方向を向いた入口ポートに対して、収容したブリスタ内のパウダー組成物を関連づける。
【0094】
エアロゾル化デバイスに関し、いくつかの実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、実質的に軸方向を向いた出口ポートと、を有している。好ましくは、出口ポートの直径に対しての、渦流チャンバの直径の倍率は、4〜12とされている。
【0095】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートを備えている。ここで、入口ポートは、外壁を有し、この外壁は、チャンバの径方向において、入口ポートの最大範囲を規定している。渦流チャンバの軸方向における外壁の範囲は、渦流チャンバの軸方向における入口ポートの最大範囲と実質的に同じとされている。外壁は、渦流チャンバの壁と実質的に平行とされている。
【0096】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートを備えている。底面が、軸方向における出口ポートからの渦流チャンバの最も遠い範囲を規定している。底表面は、また、出口ポートからの入口ポートの軸方向に最も遠い範囲を規定している。
【0097】
さらに他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、入口導管と、を備えている。入口導管は、使用時には、ガス流に乗せられたパウダー状組成物を入口ポートに対して供給し得るよう構成されている。入口導管の断面積は、渦流チャンバにむけて減少するものとされている。入口導管は、吸入器の駆動時には、収容されたブリスタ内のパウダー組成物に対して関連づけられる。
【0098】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、円弧状の入口導管と、を備えている。入口導管は、使用時には、ガス流に乗せられたパウダー状組成物を入口ポートに対して供給し得るよう構成されている。入口導管は、吸入器の駆動時には、収容されたブリスタ内のパウダー組成物に対して関連づけられる。
【0099】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、軸線を有しているとともに、軸線回りにおいて湾曲線を形成する壁によって、少なくとも部分的に、形成されている。渦流チャンバは、軸線によって拘束された平面内において、断面積を有している。また、その平面は、軸線に対する所定角度(θ)のところに、軸線から放射状をなす一方向に延在している。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、実質的に軸方向を向いた出口ポートと、を備えている。渦流チャンバの断面積は、入口ポートと出口ポートとの間のガス流通方向において、角度(θ)が増大するにつれて減少するものとされている。
【0100】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、軸線を有しているとともに、軸線回りにおいて湾曲線を形成する壁によって、少なくとも部分的に、形成されている。渦流チャンバは、さらに、ベースによって形成されている。このベースと、軸線に対して直交しておりかつベースとは反対側に位置した平面と、の間の距離(d)は、軸線に対する径方向位置(r)が増大するにつれて増大するものとされている。
【0101】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、渦流チャンバを具備している。渦流チャンバは、頂壁と、底壁と、側壁と、によって形成され、側壁は、軸線回りに湾曲しているとともに、頂壁および底壁と交差している。チャンバは、軸線と、頂壁と、底壁と、側壁と、によって形成された断面積を有しており、チャンバは、入口ポートおよび出口ポートを備えている。入口ポートは、側壁に対して接線方向を向いたものとされ、出口ポートは、軸線に対して同軸的なものとされ、断面積は、入口ポートを通してのガス流の流通方向において、入口ポートからの角度が増大するにつれて、減少するものとされている。
【0102】
さらに他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、チャンバを具備し、チャンバは、壁と、ベースと、入口ポートと、出口ポートと、を備えている。チャンバは、出口ポートと同軸的なものとされかつベースと交差する軸線を備えている。壁は、ベース回りにおいて湾曲している。入口ポートは、壁に対して接線方向を向いたものとされている。ベースと、出口ポートのところにおいて軸線に対して垂直な平面と、の間の高さは、軸線から入口ポートへと向かう径方向距離が増大するにつれて減少する。
【0103】
本発明のある種の見地においては、特に、機械溶融および/またはジェットミリングを行うプロセスを使用して組成物が調製されたような見地においては、本発明による薬学的組成物は、吸入によって投与し得るようなベンゾジアゼピンを含有している。本発明による組成物は、クロバザムだけを含有しているのではなく(つまり、単独の薬剤ではなく、実質的な単離されているものではない)、クロバザムと、ロイシンと、を含有している。および/または、クロバザムと、ステアリン酸マグネシウムと、を含有している。クロバザムは、薬学的に許容可能な塩の形態とすることができる。
【0104】
本発明のさらなる見地においては、本発明による薬学的組成物は、実質的にクロバザムだけを含有することができる、あるいは、クロバザムとロイシンとを含有することができる、あるいは、クロバザムとステアリン酸マグネシウムとを含有することができる。この最後の見地による薬学的組成物は、好ましくは、機械溶融および/またはジェットミリングによって、形成される。クロバザムは、薬学的に許容可能な塩の形態とすることができる。
【0105】
本発明のさらに他の見地においては、組成物は、スプレー乾燥や、制御された速度で移動する小滴を生成し得る手段を有したスプレー乾燥機を使用したスプレー乾燥や、あるいは、力制御薬剤との共スプレー乾燥、を行うプロセスを使用して調製され、本発明による薬学的組成物は、吸入によって投与し得るようなベンゾジアゼピンを含有している。しかしながら、クロバザムだけを含有しているのではない。代替可能な見地においては、薬学的組成物は、クロバザムを含有しており、スプレー乾燥や、制御された速度で移動する小滴を生成し得る手段を有したスプレー乾燥機を使用したスプレー乾燥や、あるいは、力制御薬剤との共スプレー乾燥、を行うプロセスを使用して調製される。クロバザムは、薬学的に許容可能な塩の形態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0106】
本発明の一実施形態に関し、添付図面を参照しつつ、単なる例示として、詳細に説明する。
【0107】
図1Aおよび図1Bは、患者に対して上述したパウダー組成物を投与するために使用し得る吸入器に関しての代替可能な実施形態を概略的に示している。図1Aは、呼吸によって駆動される実施形態を示しており、一方、図1Bは、手動で駆動される実施形態を示している。このタイプの吸入器は、共に2002年11月14日付けで公開された国際公開第02/089880号パンフレットおよび国際公開第02/089881号パンフレットに開示されている。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。図2〜図7は、国際公開第02/089880号パンフレットに記載された吸入器に対応しており、図12〜図21は、国際公開第02/089881号パンフレットに記載された吸入器に対応しており、さらに、図8〜図11は、任意の吸入器に関連して使用し得るような好ましい出口ポート構成を示している。
【0108】
図1A、図1B、および、図2に示すように、吸入器は、渦流チャンバ1を備えたノズル3000を具備している。渦流チャンバ1は、パウダー組成物からなるエアロゾルを生成し得るよう、出口ポート2と入口ポート3とを備えている。渦流チャンバ1は、吸入器を使用している使用者が吸入を行っているマウスピース10の内部に配置されている。エア通路(図示せず)を、渦流チャンバ1とマウスピース10との間に形成することができる。これにより、使用者は、呼吸を行い得るとともに、パウダー状薬剤を吸入することができる。
【0109】
パウダー組成物は、支持体70と穿孔可能なフォイル蓋75とによって形成されたブリスタ60内に収容されている。図示のように、支持体70には、内部に、キャビティが形成されており、このキャビティ内に、パウダー組成物を保持することができる。キャビティの開放端部は、蓋75によってシールされている。渦流チャンバ1のエア入口導管7は、穿孔ヘッド(あるいは、ロッド)50を有している。穿孔ヘッド50は、穿孔可能なフォイル蓋75を穿孔する。リザーバ80が、通路78を介してブリスタ60に対して連結されている。制御されたエア供給90が、所定圧力値(例えば、1.5bar)にまで、リザーバ80内へとガス(例えば、この例においては、エア)を充填する。好ましくは、ブリスタは、1〜5mgというパウダー組成物を収容しており、より好ましくは、1、2、あるいは、3mg、というパウダー組成物を収容している。
【0110】
ある種の実施形態においては、支持体70も、また、フォイルから形成される。そのようなブリスタは、当該技術分野においては、通常、ダブルフォイルブリスタと称される。本発明の他の実施形態においては、支持体70は、ポリマーから形成されている。フォイル製支持体70は、ポリマー製支持体70と比較して、湿気および酸化に関して、より大きな保護をもたらすと考えられている。
【0111】
図1Aに示すように、使用者が吸入を行う際には、バルブ40が、呼吸駆動機構30によって開放される。これにより、加圧エアリザーバからのエアが、ブリスタ60を通して吸引され、この際、パウダー状組成物が、エア流内へと巻き込まれる。図1Bに示すような手動駆動吸入器においては、バルブ40を開放して上記エア流を生成するためには、ボタン12を押下する必要がある。いずれの実施形態においても、マウスピース10に対して付設されたフェイスマスク45と協働して、使用することができる。
【0112】
介助者が組成物を投与する場合には、図1Bの手動駆動型の実施形態が使用される。フェイスマスク45が、患者(図示せず)の鼻および口の上に配置され、駆動ボタン12を押下することによって、バルブ40を開放して、肺にまで組成物粒子を運ぶのに必要なエア流を生成することができる。このプロセスに関しては、後述する。
【0113】
双方の実施形態において、エア流は、渦流チャンバ1へとパウダー組成物を搬送する。その際、パウダー組成物とエアとからなる回転渦が、入口ポート2と出口ポート3との間に、生成される。連続的な態様で渦流チャンバを通過させるのではなく、エア流内に巻き込まれたパウダー状組成物は、まさに短時間(典型的には、0.3秒未満、好ましくは、20ms未満)でもって渦流チャンバ内に流入し、純粋な薬剤組成物の場合には(つまり、キャリアが使用されていない場合には)、パウダー組成物の一部が、渦流チャンバの壁に対して付着する。このパウダーは、その後、パウダーに隣接している境界層内に存在する大きな剪断力によってエアロゾル化される。渦流の作用によって、パウダー組成物の粒子が分解される。すなわち、薬剤とキャリアとを含有した組成物の場合には、キャリアから粒子が分離され、これにより、パウダー状組成物からなるエアロゾルが、出口ポート2を介して渦流チャンバ1から導出される。エアロゾルは、マウスピース10を通して、使用者によって吸入される。
【0114】
渦流チャンバ1は、2つの機能を行うと考えることができる。第1に、分解。すなわち、粒子クラスターを、吸引可能な個々の粒子へと、分解することができる。第2に、濾過。すなわち、好ましくは、あるサイズ以下へと粒子を微粉化して、出口ポート2から容易に導出することができる。分解により、パウダー状組成物からなる密着性クラスターを、吸引可能な粒子へと分解するとともに、ろ過によって、渦流チャンバ1内におけるクラスターの滞留時間を増大させ、これにより、分解を受ける時間を長くすることができる。分解は、渦流チャンバ1の中のエア流内における速度勾配に基づき、大きな剪断力を形成することによって、達成することができる。速度勾配は、渦流チャンバの壁に近い境界層において、最も大きい。
【0115】
図2により詳細に示すように、図2〜図7の渦流チャンバ1は、実質的に、円筒形チャンバという形態とされている。渦流チャンバ1は、出口ポート2の領域内において、円錐台形部分を有している。入口ポート3は、渦流チャンバ1の周縁に対して実質的に接線方向をなすものとされ、出口ポート2は、全体的に、渦流チャンバ1の軸線に対して同軸的なものとされている。したがって、ガスは、入口ポート3を通って渦流チャンバ1内へと接線方向から導入され、出口ポート2を通って軸方向に導出される。入口ポート3と出口ポート2との間において、渦流が形成される。渦流によって剪断力が生成され、これにより、薬剤粒子の分解が引き起こされる。出口ポート2の長さは、好ましくは、出口ポート2をなす壁上へと薬剤が堆積してしまうという可能性を低減させ得るよう、最小限のものとされる。図示の実施形態においては、渦流チャンバ1は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やアクリルやあるいは真鍮から機械加工される。しかしながら、様々な代替可能な材料を使用することができる。
【0116】
渦流チャンバの直径に対しての、出口ポートの直径の比率は、出口ポートから吐出される薬剤エアロゾルの微粒比率を最大化するに際して、重要なものとなり得る。したがって、出口ポートの直径に対しての、渦流チャンバの直径の比率は、4〜12とすることができる。比率を4〜12とした場合に、1〜3ミクロンという範囲の有効直径を有したパウダー状薬剤粒子の比率を最大化されることが、判明した。微粒比率を増大化し得るよう、比率は、好ましくは5よりも大きいものとされ、最も好ましくは6よりも大きいものとされ、また、好ましくは9よりも小さいものとされ、最も好ましくは8よりも小さいものとされる。好ましい構成においては、比率は7.1とされる。
【0117】
本発明のある種の実施形態においては、渦流チャンバの直径は、2〜12mmとされる。渦流チャンバの直径は、好ましくは4mmよりも大きいものとされ、最も好ましくは5mmよりも大きいものとされ、また、好ましくは8mmよりも小さいものとされ、最も好ましくは6mmりも小さいものとされる。好ましい実施形態においては、渦流チャンバの直径は、5mmとされる。これら実施形態においては、渦流チャンバの高さは、一般に、1〜8mmとされる。渦流チャンバの高さは、好ましくは、4mmよりも小さなものとされ、最も好ましくは、2mmよりも小さなものとされる。好ましい実施形態においては、渦流チャンバの高さは、1.6mmとされる。一般に、渦流チャンバは、実質的に円筒形とされる。しかしながら、渦流チャンバは、他の形態とすることができる。例えば、渦流チャンバは、円錐台形状のものとすることができる。渦流チャンバの直径あるいは出口ポートの直径が長手方向に沿って一定のものではない場合には、出口ポートの最小直径に対しての、渦流チャンバの最大直径の比率が、上記において特定された範囲内にあるべきである。例えば上述したように、エアロゾル化装置は、出口ポートを備えている。出口ポートの直径は、一般に、0.5〜2.5mmとされる。出口ポートの直径は、好ましくは0.6mmよりも大きなものとされ、また、好ましくは1.2mmよりも小さなものとされ、最も好ましくは1.0mmよりも小さなものとされる。好ましい実施形態においては、出口ポートの直径は、0.7mmとされる。
【0118】
【表1】
【0119】
図3および図4は、図1の吸入器の渦流チャンバの一般的な形態を示している。渦流チャンバの幾何学的形状は、表1に記載された寸法によって規定される。それら寸法に関する好ましい値が、また、表1に記載されている。チャンバの円錐形部分の高さhに関する好ましい値が0mmであることに注意されたい。その理由は、チャンバの頂部がフラットである場合には、渦流チャンバが最も有効に機能することが判明しているからである。
【0120】
表2に示すように、エアロゾル内における、渦流チャンバによって生成された6.8ミクロン未満という実効粒径を有している薬剤粒子の割合(6.8ミクロン粒子比率)は、チャンバの直径Dと、出口ポートの直径De と、の比に依存する。規格化された平均6.8ミクロン粒子比率とは、吸入器内に導入されたパウダー状薬剤の6.8ミクロン粒子比率によって割算された、放出された6.8ミクロン粒子比率、のことである。使用された薬剤は、純粋な Intal(登録商標)ナトリウムクロマグリケート(英国 Fisons 社)であった。
【0121】
【表2】
【0122】
上記表2により、チャンバの直径と出口ポートの直径との比率が4以上であれば、規格化された6.8ミクロン粒子比率が、85%を超えることがわかる。したがって、そのような比率がこの範囲にある場合には、渦流チャンバの分解効率は著しく改良される。7.1という好ましい比率においては、94.3%という規格化された6.8ミクロン粒子比率が、達成された。
【0123】
図5Aおよび図5Bは、入口ポート3が円形断面形状のものとされた渦流チャンバ1を示している。図5Bにおいて実線の矢印によって示されているように、入口ポート3を介して渦流チャンバ内へと流入するエア流の一部は、渦流チャンバ1の側壁12に追従する。したがって、このエア流に乗って搬送されるパウダーは、渦流チャンバ1の側壁12に対して隣接した境界層のところにおいてエア流内へと直接的に導入される。ここで、境界層のところにおいては、接線方向の速度勾配が最大である。この最大の速度勾配により、パウダー粒子の分解に関して最大の剪断力が得られる。したがって、最大の分解が得られる。
【0124】
しかしながら、図5Bにおいて破線の矢印によって示すように、入口ポート3を介して渦流チャンバ内へと流入するエア流の他の一部は、チャンバ壁12に追従するのではなく、チャンバ1を横断して、入口ポート3とは反対側のところにおいて、壁12に対して衝突する。このポイントにおいては、エア流が方向を急激に変更しなければならないことにより、乱流度合いが増大する。この乱流は、チャンバ1の壁12に隣接した境界層を妨害し、これにより、パウダーの分解効率を低減させる。
【0125】
図6Aおよび図6Bは、入口ポート3が矩形断面形状のものとされた渦流チャンバ1を示している。矩形断面形状は、入口ポートの周縁に関し、渦流チャンバ1の壁12に対応した長さを最大とする。これにより、渦流の境界層内へと、最大のエア流を導入することができる。同様に、矩形断面形状は、入口ポートの周縁に関し、渦流チャンバ1の底面13に対応した幅を最大とする。これにより、渦流がチャンバ1の全体を占領することのために、渦流チャンバ1内におけるパウダーの堆積を防止することができる。
【0126】
矩形断面形状を有していることに加えて、図6Aおよび図6Bの入口ポート3は、渦流チャンバ1に向けてテーパー形状(先細り形状)をなす入口導管7を備えている。ここで、入口導管7は、内壁14と外壁15とによって形成されている。外壁15は、渦流チャンバ1の壁12に対して実質的に接線方向をなすものとされている。外壁15と内壁14との間の間隔は、渦流チャンバ1に向けて減少するものとされている。これにより、内壁14は、エア流を、渦流チャンバ1内において境界層に向けて付勢することができる。
【0127】
さらに、入口導管7の横断面積が減少していることが、エア流の速度を増大させ、これにより、渦流チャンバ1内へと向かう途中でのパウダーの堆積を低減することができる。
【0128】
図6B内において実線の矢印と破線の矢印との双方によって示すように、入口ポート3を介して渦流チャンバ内へと流入するすべてのエア流は、渦流チャンバ1の壁12に追従する。したがって、このエア流に乗って搬送されるパウダーは、渦流チャンバ1の壁12に対して隣接した境界層のところにおいてエア流内へと直接的に導入される。これにより、分解が最大化される。
【0129】
渦流チャンバ1の上面16が、図1,3,5,6に示されているように円錐形とされるのではなく、図8〜図10に示されているようにフラットである場合には、より一層の改良を、達成することができる。したがって、この構成においては、渦流チャンバ1の上面16は、チャンバ1の壁12に対して、および、渦流の軸線に対して、実質的に垂直とされる。
【0130】
図8〜図11は、渦流チャンバ1の出口ポート2に関しての様々な選択肢を示している。エアロゾルの導出プルームの特性は、少なくとも部分的には、出口ポート2の構成によって決定される。例えば、エアロゾルが、2リットル/分の流速でもって1mmという直径の出口ポート2から導出される場合、出口ポート2のところにおける速度は、およそ40m/sとなる。この速度は、エアロゾルプルームの発散度合いを大きなものとすることによって、チャンバまたはノズルから数センチメートルのところにおいて、2m/sという典型的な吸入速度にまで、低減することができる。
【0131】
図8においては、出口ポート2は、渦流チャンバ1の上壁17を貫通して形成された単なるオリフィスとされている。しかしながら、上壁17の厚さが厚いことは、出口ポート2の長さが、出口ポート2の直径よりも大きいことを意味している。したがって、パウダーからなるエアロゾルが出口ポートから導出される際に、出口ポート内に堆積してしまうというリスクがある。さらに、チューブ状の出口ポートは、導出プルームの発散度合いを低減する傾向がある。これら問題点は、渦流チャンバ1の上壁17を出口ポート2に向けてテーパー形状とすることにより、図9の構成において解決される。この場合、出口ポート2は、無視できる厚さのナイフエッジによって形成されている。直径が1mmという出口ポート2については、2.3mmという出口ポートの長さは、60°というプルーム角度を与える。そして、出口ポートの長さを0.3mmにまで低減することにより、プルーム角度を90°にまで増大させることができる。
【0132】
図10においては、出口ポート2は、環状とされているとともに、ナイフエッジによって形成されている。この構成は、円形ジェットの場合と比較して、より急速に減速するような導出プルームを生成する。なぜなら、環状の出口ポートは、同じ直径の円形ポートと比較して、より長い周縁を有しており、周縁の静的なエアとより効果的に混合するジェットを生成するからである。図11においては、複数のオリフィスが、出口ポート2を形成している。この場合には、単一の大きなプルームと比較して、より短距離でもって減速して分解するような複数のより小さなプルームを生成する。
【0133】
図7は、入口導管7が円弧形状とされているとともに渦流チャンバ1に向けてテーパー形状とされているような渦流チャンバ1の実施形態を示している。図7において実線および破線の矢印によって示されているように、円弧形状とされた入口導管7は、入口導管7の外壁15に向けて、パウダー状組成物からなる搬送粒子を付勢する。この場合、パウダーが入口ポート3を介して渦流チャンバ1内へと流入する際には、パウダーは、渦流チャンバ1の壁12に対して隣接しているとともに剪断力が最大とされている境界層内へと、直接的に導入される。これにより、改良された分解が達成される。
【0134】
本発明の各種実施形態による吸入器は、大きな微細粒子比率を有しつつ比較的遅い速度で移動するエアロゾルを生成することができる。吸入器は、計量された量のパウダー状薬剤を完全にかつ再現性高くエアロゾル化し得るとともに、吸入流速以下という速度でもって患者の吸入流内へとエアロゾルを投与することができる。これにより、患者の口内における衝撃によって堆積を低減することができる。さらに、効率的なエアロゾル化システムは、エアロゾルを生成するに際して使用されるエネルギーが小さいことのために、単純なかつ小さなかつ低コストの装置を可能とする。エアロゾルを生成するのに必要とされる流体エネルギーは、圧力と流速との積を時間的に積算したものとして、規定することができる。このエネルギーは、典型的には、5ジュールよりも小さく、3ジュールという小さなものとすることができる。
【0135】
図12〜図21は、本発明の他の実施形態に基づく非対称な吸入器を示している。これら図においては、上記実施形態と同様の部材には、同じ符号を付している。
【0136】
まず最初に、これら実施形態と、図1〜図11に関して上述された実施形態と、の間における相違点が、図12〜図21の実施形態においては、渦流チャンバ1が非対称な形状のものとされていることに、注意されたい。
【0137】
図12に示す実施形態においては、渦流チャンバ1の壁12は、螺旋またはスクロールという形態のものとされている。入口ポート3は、渦流チャンバ1の周縁に対して実質的に接線方向をなすものとされている。出口ポート2は、渦流チャンバ1の軸線に対して全体的に同心的なものとされている。したがって、ガスは、入口ポート3を介して渦流チャンバ1内へと接線方向から流入し、出口ポート2を介して軸方向に導出される。出口ポート2の中心から測定した渦流チャンバ1の半径Rは、入口ポート3のところにおける最大半径Rmax から、最小半径Rmin まで、徐々に減少している。したがって、入口ポート3の位置からの角度θのところにおける半径Rは、k=(Rmax−Rmin)/Rmax としたときに、R=Rmax(1−2k/2B) によって与えられる。渦流チャンバ1の実効的な半径は、エア流と、このエア流に乗って搬送されている薬剤粒子とが、チャンバ1内を循環するにつれて、減少する。このように、エア流からみた場合の渦流チャンバ1の実効的断面積は、減少する。その結果、エア流が加速され、搬送されている薬剤粒子の堆積可能性が低減する。加えて、エア流が2Bラジアン(360°)の位置に到達した場合、エア流は、入口ポート3を通して流入してくるエア流と平行なものとなる。その結果、エア流どうしの衝突に基づく乱流発生可能性が低減される。
【0138】
入口ポート3と出口ポート2との間において、渦流が形成され、これにより、剪断力が生成され、これにより、パウダー状組成物からなる粒子が分解を受ける。上述したように、出口ポート2の長さは、好ましくは、できるだけ短いものとされている。これにより、出口ポート2の壁上における薬剤の堆積可能性が低減されている。図示の実施形態においては、渦流チャンバ1は、PEEKやアクリルやあるいは真鍮から機械加工される。しかしながら、様々な代替可能な材料を使用することができる。製造を容易なものとし得るよう、渦流チャンバ1の半径は、徐々に低減することに代えて、ステップ的に低減させることもできる。
【0139】
図13は、図12の吸入器の渦流チャンバの一般的な形態を示している。渦流チャンバの幾何形状は、表3に記載された寸法によって規定される。表3には、各寸法に関しての好ましい値も記載されている。チャンバの円錐形部分の高さhに関する好ましい値が0mmであることに注意されたい。その理由は、チャンバの頂部(屋根16)がフラットである場合には、渦流チャンバが最も有効に機能することが判明しているからである。
【0140】
【表3】
【0141】
図12の渦流チャンバ1によって生成されたエアロゾルの6.8ミクロン粒子比率は、図1〜図11の円形渦流チャンバの場合と比較して、改良される。
【0142】
図14〜図18は、本発明による他の非対称な吸入器を示している。この場合、渦流チャンバ1は、傾斜路20を備えている。この傾斜路20は、入口ポート3からの角度変位θが増大するにつれて、底部からの渦流チャンバ1の高さを低減させる。渦流チャンバ1の中心に位置した実質的に円形の領域21は、フラットなままである。
【0143】
傾斜路20の断面形状に対する様々な選択肢が、図19〜図21に示されている。図19に示すように、傾斜路20の断面形状は、例えば円錐曲線といったような湾曲線とすることができる。湾曲線の曲率半径(あるいは、複数の曲率半径)の値は、渦流チャンバ1の軸線回りにおける角度変位θにつれて増大することができる。
【0144】
好ましくは、図20に示すように、傾斜路20は、三角形断面形状を有したものとされ、傾斜路20のベースと上面との間の角度は、角度βとされている。この角度βは、角度変位θの関数とされている。すなわち、21 およびqを定数としたときに、β=q(2−21) である。
【0145】
図21に示すように、傾斜路20と渦流チャンバの壁12との間の連結部分、および、傾斜路20と渦流チャンバ1のベースとの間の連結部分は、例えばフィレット半径といったような態様で、湾曲している。これにより、この領域における望ましくない堆積を防止することができる。
【0146】
傾斜路20のうちの、傾斜路20が入口ポート3に対して遭遇するところに位置した鉛直方向面(ベースに対して垂直な面)は、高さが急激に変化することのために、堆積を起こしやすい。しかしながら、その面に(軸方向から見て)プロファイルを形成し、これにより、図17に示すように、入口ポート3の内側エッジに隣接させて、滑らかな導入部分を形成することにより、入口ポートから流入するエアは、その面上を滑るように進み、これにより、パウダーの堆積を防止することができる。
【0147】
1つの構成においては、プロファイルは、接線方向湾曲線を介して入口ポート壁に連結されかつ入口ポートの中心線に対して40°(図18における角度φ)をなす直線とされる。このプロファイルは、傾斜路の無い同様のノズルで見られるような堆積パターンに追従する。
【0148】
好ましい実施形態においては、プロファイルは、図17に示すように、径方向内側へと湾曲する湾曲線とされる。一端においては、湾曲線は、入口ポートの内壁に対して接線方向的に連結されている。他端においては、湾曲線は、傾斜路がベースに遭遇するポイントのところにおいて、傾斜路の内部湾曲に対して連接されている。
【0149】
「実験例」
「実験例1:ラクトースの調製」
レスピトース SV003(オランダ、DMV International Pharma社)ラクトースの分級部分を、バルク材料を63μmのふるいを通すことにより製造した。その後、この材料を、45μmスクリーンを通してふるいかけし、残った材料を収集した。図22Aおよび図22Bは、ラクトースの2つのバッチに関し、Malvern Instruments, Ltd.社(英国、Malvern)によって製造された Mastersizer 2000 を使用して行った粒径分析結果を示している。図示のように、ラクトースは、約50〜約55ミクロンという容積加重平均と、約4〜約10ミクロンというd10と、約50〜約55ミクロンというd50と、約85〜約95ミクロンというd90と、を有していた。ここで、d10,d50,d90は、それぞれ、分析されたラクトースの10%,50%,90%の直径を表している。
【0150】
「実験例2:1mgのベンゾジアゼピン−ラクトース組成物の調製」
ベンゾジアゼピン類の1つであるクロバザムを、微粉化し、これにより、粒子の90%を、5μmよりも小さな直径を有しているものとした。
【0151】
実験例1のラクトースの50グラムを、適切なミキサーの金属混合容器内へと投入した。その後、50グラムの微粉化したベンゾジアゼピンを添加した。その後、実験例1のラクトースのさらなる50グラムを、混合容器に添加した。得られた混合物を、15分間にわたって混合した。その後、得られた混合物を、150μmのスクリーンを通過させた。その後、分級後の混合物(つまり、スクリーンを通り抜けた混合物部分)を、15分間にわたって再混合した。
【0152】
あるバッチにおいては、使用されたミキサーは、Inversina(登録商標) 可変速タンブラーミキサーとされた。このミキサーは、剪断力の小さなものであって、英国 Gateshea 所在の Christison Scientific Equipment Ltd. 社によって市販されている。他のバッチにおいては、使用されたミキサーは、 Retch Grindomix(登録商標)ミキサーとされた。これは、剪断力の大きなものであって、同じく、Christison Scientific Equipment Ltd.社によって市販されている。分解が、混合プロセスの強度に敏感であることは、証明されている。しかしながら、例えば上述した Inversina(登録商標)ミキサーといったような、金属容器付きの低剪断ミキサーを使用することにより、一様な微粒比率(約60%)が得られる。
【0153】
「実験例3:ブリスタ内への組成物の収容」
実験例2の組成物を、次の方法によってブリスタ内へと収容した。すなわち、ベンゾジアゼピン−ラクトース組成物の3ミリグラムを、各ブリスタ内に配置した。図1に関して上述したように、各ブリスタのベースを、冷間形成されたアルミニウム製ブリスタとし、配向性ポリアミド(外層)と45μmのアルミニウム(中心層)とPVC(内層)とのラミネートから形成されたものとした。ブリスタの蓋は、ヒートシールラッカーを有しているような、ハードロールされた30ミクロンの蓋用フォイルから形成されたものとした。組成物をブリスタの内部に導入した後、ブリスタベース上に蓋を配置することによって、さらに、ヒートシールラッカーを介してベースに対して蓋をヒートシールすることによって、ブリスタをシールした。
【0154】
上記の例においては、3mgというブリスタの『充填重量』を使用しているけれども、これよりも大きな充填重量やあるいはこれよりも小さな充填重量を使用し得ることは、理解されるであろう。例えば、下記の実験例4,5においては、4mgや5mgという充填重量が使用されている。そのような充填重量でもってブリスタを充填するに際しては様々な技術を使用し得るけれども、1mgまたは2mgという充填重量のブリスタからなる市販品を、 Harro-Hoefliger Omnidose Drum Filler によって製造し得るものと考えられる。より小さな充填重量は、特に、1mgという程度の充填重量は、より大きな充填重量と比較して、優れた微粒比率をもたらすものと考えられる。
【0155】
1mgのベンゾジアゼピン−ラクトース組成物を収容しているを含んでいる上記ブリスタは、図23〜図29に示す吸入器の試作品を使用して試験することができる。図23および図24に示すように、吸入器は、加圧エアの供給を行うためのリザーバ80(図示せず)と、ベースブロック2000と、エア通路2004と、吸入を行うためのマウスピース10と、吸入器に対して投与を行うためのブリスタ導入器2010と、投与ブリスタを穿孔する(60〜70)ためのクランクアーム2015と、投与量をエアロゾル化するための渦流ノズル3000と、エアロゾル化された投与量をマウスピース10内へと放出するための出口バルブ2020と、を備えている。
【0156】
使用時には、使用者は、ブリスタ導入器2010上へとフォイルブリスタ(図示せず)を配置し、図23に示す位置となるようにブリスタ導入器を装置内へと挿入する。その後、使用者は、クランクアーム2015を休止位置から穿孔位置へと移動させることにより、ブリスタを穿孔し、さらに、クランクアーム2015を穿孔位置にロックする。その後、リザーバ80を、加圧エアライン(図示せず)によって加圧する。これにより、リザーバ80を、比較的低圧(典型的には、1.5barゲージ)でもって所定量の加圧エア(典型的には、15ml)を収容したものとする。加圧エアは、渦流ノズル3000に対する出口のところに位置したバルブ2020によって、装置から出ないものとされている。この時点で、装置は、投与量の薬剤を投与するための待受状態となっている。
【0157】
使用者がマウスピースを介して吸入を行った場合、呼吸駆動ベーン2025が駆動され、これにより、出口バルブ2020を開放し、リザーバ内の加圧エアを放出させる。エアは、ブリスタを通って流れ、この際、投与量のパウダーを流れに乗せて、その投与量のパウダーを渦流ノズル3000へと搬送する。ノズル内においては、パウダーは、大きな遠心力と大きな剪断力とを受ける。これにより、投与量のパウダーが分解される。分解されたパウダーは、その後、微細分散エアロゾルとして、マウスピース10を介して使用者に対して供給される。
【0158】
図25に示すように、渦流ノズル3000は、入口導管3と、渦流チャンバ1と、出口ポート2と、ノズルシール3010と、を備えている。使用時には、ブリスタ(図示せず)からの加圧ガスおよび巻き込まれたドライパウダー投与量が、入口チューブ7を介してさらには入口導管3を介して渦流チャンバ内へと流入し、出口ポート2を介してノズル3000から導出される。入口導管3が渦流チャンバ1に対して連結されているポイント3020のところにおいては、チャンバの外壁は、3.35mmという半径を有している。チャンバ1の壁に沿って反時計回りに180°にわたって移動する際には、チャンバの半径は、ポイント3025のところにおける2.5mmへと、線形的に減少する。その後、入口導管と交差するまで、チャンバの壁の半径は、反時計回りにおいて、2.5mmのまま一定とされている。渦流チャンバの高さは、1.6mmとされている。入口チューブ7は、1.22mmという内径を有しており、入口導管3へと供給を行っている。
【0159】
入口導管3は、入口チューブ7に対する連結箇所における1.22mmという直径から、渦流チャンバ1に対する連結箇所における最も細いところにまで、テーパー形状とされている。入口導管3は、高さが1.1mmとされ、幅が0.5mmとされている。そのため、入口導管3は、1.6mmという渦流チャンバの全高さにわたって延在していない。出口ポート2の直径は、0.7mmとされており、出口ポート2の厚さは、0.35mmとされている。
【0160】
図24,26a,26bに示すように、呼吸駆動機構は、渦流ノズルの出口ポートのところに配置されたバルブ2020と、このバルブを開放位置へと付勢するバルブスプリング2030と、使用者による吸入に応答して回転する呼吸駆動ベーン2040と、使用者がマウスピース10を通して吸入を行った際にエアを引き込むための吸入エア入口2035と、を備えている。バルブ2020は、バルブアーム2022に対して取り付けられた弾性バルブシール2023を有している。ここで、バルブアーム2022は、バルブアームピボット2021に対して回転可能に取り付けられている。バルブアーム2022が閉塞位置(図26a)にある場合、バルブシール2023は、渦流ノズルの出口ポート2をカバーしてシールしている。バルブアーム2022の開放位置(図26b)においては、渦流ノズルの出口ポート2が開放され、これにより、ノズル3000から投与量を導出することができる。
【0161】
呼吸駆動ベーン2040は、ベーンピボット2045に対して回転可能に取り付けられている。このベーン2040は、ベーン2045に対して回転可能に取り付けられかつ回転自由なものとされたベーンローラ2046と、ベーン2040を図26aに示す閉塞位置へと付勢するベーンリターンスプリング(図示せず)と、を有している。バルブ2040が閉塞位置にあるときには、バルブシール2023が押圧され、これにより、ノズル出口ポート2がシールされ、バルブアーム2022の他端が、ベーンローラ2046上に位置し、これにより、回転が防止される。
【0162】
使用者がマウスピース10を通して吸入を行った際には、吸入エア入口2035を介してエア通路内へとエアが流入する。このエア流によって、呼吸駆動ベーン2040を横断しての圧力降下が生じ、これにより、ベーン2040を、ピボット2045回りに回転させる。ベーンローラ2046は、バルブアーム2022の端部から逸れる向きに回転し、ベーン2040がさらに回転した時点では、バルブアーム2022とは係合しなくなる。これにより、これは、バルブアーム2022は、バルブスプリング2030の付勢力に基づいて回転することができる。これにより、図26bに示すように、出口ポート2(つまり、バルブの開口)からバルブシール2023を取り外し、これにより、ノズルから投与量を放出することができる。
【0163】
呼吸駆動機構は、次の投与量のためにリセットすることができる。リセットに際しては、バルブリセットレバー2050を、90°だけ回転させて、呼吸駆動機構を初期状態に戻す。リセットレバー2050は、バルブアーム2022に対して作用して、バルブを閉塞させる(バルブシール2023によって、出力ポート2をカバーさせる)とともに、呼吸駆動ベーン2040を、ベーンリターンスプリング(図示せず)の付勢力に基づいて、初期状態へと戻す。
【0164】
図27aは、閉塞状態とされた手動駆動機構を示している。この手動駆動機構は、ボタン12を備えている。ボタン12は、吸入エア入口2035を操作し得るものとされている。すなわち、ボタン12を押し込むことにより、ベーン2040をピボット2045回りに回転させることができ、これにより、図26aに関して上述したのと同じ態様でエア流を生成することができる。
【0165】
図27bは、手動駆動型の吸入器を示しており、この図においては、ボタン12が完全に押し込まれており、吸入器は、図26bの場合と同様の開放状態とされている。手動駆動機構は、呼吸駆動機構の場合と同じ態様でリセットされる。すなわち、バルブリセットレバー2050を、90°だけ回転させ、これにより、手動駆動機構を初期状態に戻す。
【0166】
後述するような吸入データを得るために、図23〜図27の吸入器を、3つの器具と組み合わせて使用することができる。すなわち、Multi-Stage Liquid Impinger (MSLI) (U.S.P. 26, chapter 601, Apparatus 4 (2003)) と、Anderson Cascade Impactor (ACI)(U.S.P. 26, chapter 601, Apparatus 3 (2003)) と、Dosage Unit Sampling Apparatus (DUSA) (U.S.P. 26 chapter 601, Apparatus B (2003)) と、と組み合わせて使用することができる。これらの装置の各々は、図23〜図27の吸入器のマウスピース10を受領するために入力部分を備えている。
【0167】
DUSAを使用することにより、吸入器から放出された薬剤の合計量を測定することができる。この装置からのデータを使用することにより、計量されて供給された投与量が得られる。供給された投与量は、吸入器から放出された薬剤量として規定される。この量は、DUSA装置のスロート部内の薬剤量と、DUSA装置の測定部内の薬剤量と、DUSA装置の後段側フィルタ内の薬剤量と、を含んでいる。ブリスタ内に残された薬剤量や、図23〜図27の吸入器の他の領域内に残された薬剤量を含んでいない。また、DUSA装置の測定プロセスで『失われた』薬剤をカウントしていない。計量された投与量は、ブリスタから放出されたすべての薬剤量である。
【0168】
MSLIは、ドライパウダー組成物の深い肺までの投与を評価するための装置である。MSLIは、5ステージの直列的インパクターであるとともに、USP 26, Chapter 601 Apparatus 4 (2003)に基づいて、ドライパウダー吸入器(DPI)の粒径(空気力学的なサイズ分布)を決定するために使用することができる。
【0169】
ACIは、ドライパウダー組成物の深い肺への投与を評価するための他の装置である。ACIは、マルチステージの直列的インパクターであるとともに、USP 26, Chapter 601 Apparatus 3 (2003) に基づいて、ドライパウダー吸入器(DPI)の粒径(空気力学的なサイズ分布)を決定するために使用することができる。
【0170】
MSLI試験装置およびACI試験装置を使用することにより、特に、微粒の投与量すなわちFPD(薬剤の量、例えば単位をマイクログラムとしたような薬剤の量、これは、試験装置のうちの、深い肺への投与と関連する部分において測定される)と、微粒比率すなわちFPF(試験装置のうちの、深い肺への投与と関連する部分において測定された計量投与量の比率)と、を決定することができる。
【0171】
「実験例4:4mgのブリスタ内における、ステアリン酸マグネシウムを含有した3mgの組成物の調製」
ステアリン酸マグネシウムを含有した2mgの組成物は、以下の成分を以下の量で含有している。
成分 量(μg) 比率
クロバザム 3000 75.00
ラクトース 990 24.75
ステアリン酸マグネシウム 10 00.25
合計 4000 100
【0172】
この組成物は、実験例2に関して上述した方法によって調製した。ただし、相違点は、混合物に対して、クロバザムと一緒にステアリン酸マグネシウムが添加されたことである。
【0173】
「実験例5:5mgのブリスタ内における、ロイシンを含有した4mgの組成物の調製」
ロイシンを含有した4mgの組成物は、以下の成分を以下の量で含有している。
成分 量(μg) 比率
クロバザム 4000 80
ラクトース 920 18
微粉化されたロイシン 80 2
合計 5000 100
【0174】
この組成物は、実験例2に関して上述した方法によって調製した。ただし、相違点は、混合物に対して、クロバザムと一緒にロイシンが添加されたことである。
【0175】
図28は、好ましくは微粉化されたロイシンに関し、Malvern Instruments, Ltd. 社(英国、Malvern)によって製造された Mastersizer 2000を使用して行った粒径分析結果を示している。図示のように、実験された微粉化ロイシンは、6μmよりも小さな容積加重平均粒径を有している。
【0176】
「実験例6:キャリアなしの4mgの組成物の調製」
ロイシンを含有した4mgの組成物は、以下の成分を以下の量で含有している。
成分 量(μg) 比率
クロバザム 4000 99.9
微粉化されたロイシン 40.4 0.1
合計 4040.4 100
【0177】
実験例5に記載した2gのロイシンを、2g、実験例2に記載した198gのクロバザムパウダーと一緒に、Turbula ミキサー内において混合した。得られたパウダーを、ミリング手法を使用して凝集させた。パウダーからなる50gのサンプルを、スチール製グラインディングボールを使用して、約150mmという直径を有しているポーセレン製(磁器製)ボールミル(Pascall Engineering Company 社によって製造された)の中で微粉化した。その後、4040.4mgの微粉化パウダーを、49個のブリスタの各々の中へと収容した。
【0178】
「実験例7:共ジェットミリングされた組成物と、機械的に溶融された組成物(クロボザム)と、の比較」
[試験方法]
すべての材料は、Next Generation Impactor(NGI)によって評価された。試験の詳細は、各々の場合ごとに説明する。
【0179】
組成物は、以下のものを使用して処理された。
1)Hosokawa Micron 社による MechanoFusion AMS Mini system。このシステムは、1mmという圧縮ギャップをもたらす新規な回転子を備えて動作する。
2)Hosokawa Micron 社による AS50 spiral jet mill。
【0180】
生体外での試験を、動的な吸入装置であるAspirair(登録商標)装置を使用して、行った。
【0181】
組成物は、1つまたは複数の以下の構成要素から構成された。
ステアリン酸マグネシウム(標準グレード)
Micron Technologies 社によってジェットミリングされたL−ロイシン(Ajinomoto社)
Sorbolac 400 ラクトース
微粉化したクロボザム
微粉化したラクトース
再凝結させたロイシン(“Aerocine”)
【0182】
以下は、共ジェットミリングされた活性粒子と添加材料とからなる2成分システムと、機械的に溶融された活性粒子と添加材料とからなる2成分システムと、に関しての比較である。
【0183】
1.01gの微粉化クロボザムを計量し、その後、金属へらの丸い面を使用して、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この組成物は、『3A』として記録した。
【0184】
その後、9.37gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gの微粉化したL−ロイシンと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理し、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で処理した。この材料を、『4A』として記録した。混合後に、このパウダーを、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『4B』として記録した。
【0185】
9.57gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gのステアリン酸マグネシウムと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理し、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で処理した。この材料を、『5A』として記録した。混合後に、このパウダーを、一晩にわたって寝かせ、その後、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『5B』として記録した。
【0186】
9.5gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gの微粉化したL−ロイシンと組み合わせた。材料を、5分間にわたって、比較的遅い速度に対応した20%というパワー設定値で処理した。この処理は、構成要素どうしを良好に混合することのみを意図したものである。この材料を、『6A』として記録した。
【0187】
約7barという注入圧力に設定されかつ約5barというグラインディング圧力に設定されたAS50スパイラルジェットミル内へと、約1g/minでもって、6.09gの『6A』を供給した。得られた材料を回収し、『6B』として記録した。
【0188】
ミリングの後に、このパウダーを、一晩にわたって寝かせ、その後、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『6C』として記録した。
【0189】
9.5gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gのステアリン酸マグネシウムと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理した。この材料を、『7A』として記録した。
【0190】
約7barという注入圧力に設定されかつ約5barというグラインディング圧力に設定されたAS50スパイラルジェットミル内へと、約1g/minでもって、6.00gの『7A』を供給した。得られた材料を回収し、『7B』として記録した。ミリングの後に、このパウダーを、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『7C』として記録した。
【0191】
1バッチ分の再凝結させたロイシン(“アエロイシン(Aerocine)”とも称される)を調製した。この調製に際しては、チューブ炉内においてロイシンのサンプルを蒸気へと昇華させ、この蒸気を冷却しつつ、微粒分散したパウダーとして再凝結させる。このバッチを、『8A』として識別した。
【0192】
9.5gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gのアエロイシンと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理し、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で処理した。この材料を、『8B』として記録した。混合後に、このパウダーを、一晩にわたって寝かせ、その後、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『8C』として記録した。
【0193】
9.5gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gのアエロイシンと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理した。その後、このパウダーの7.00gを、約7barという注入圧力に設定されかつ約5barというグラインディング圧力に設定されたAS50スパイラルジェットミル内へと、供給した。得られた材料を回収し、『9A』として記録した。
【0194】
ミリングの後に、このパウダーを、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『9B』として記録した。
【0195】
複数のフォイルブリスタを、約2mgの以下のクロボザム組成物によって充填した。
3A−ミリング無し、および、添加材料無し
4B−ロイシン、および、機械的溶融
5B−ステアリン酸マグネシウム、および、機械的溶融
6C−ロイシン、および、共ジェットミリング
7C−ステアリン酸マグネシウム、および、共ジェットミリング
8C−アエロイシン、および、共ジェットミリング
9B−アエロイシン、および、機械的溶融
【0196】
その後、これら組成物を、60l/mという流速でもってNGI内へと吸引装置を使用して吸引した。吸引装置は、各組成物に関し、2つの条件下で動作させた。すなわち、リザーバが、1.5barとされた15mlのエアを収容しているという条件下と、リザーバが、0.5barとされた30mlのエアを収容しているという条件下と、において動作させた。
【0197】
インパクターの試験結果を、表1,2,3に示す。
【0198】
【表4】
【0199】
【表5】
【0200】
【表6】
【0201】
これらの結果から、共ジェットミリング組成物が、活性ドライパウダー吸入装置を使用して投与された場合に、極めて優れたFPFを示すことがわかる。観察されたFPFは、機械的に溶融された組成物の場合と比較しても、また、添加材料を含有していない組成物の場合と比較しても、著しく良好である。この改良は、スロート部への堆積量の低減が大きな要因であると考えられる。すなわち、スロート部への堆積量は、共ジェットミリングの場合には8%よりも小さいものである。これに対して、薬剤だけの場合には、15%であり、また、機械溶融の場合には、最大で27%である。
【0202】
得られたFPFの再現性についても試験した。調製手法については上述したような主要な候補である6Cに関しての生体投与一様性について、30回の投与に関して、DUSAによって放出薬剤量を収集した。
【0203】
平均ED(放出薬剤量)は、1965μgであり、RSD(相対標準偏差)は、2.8%であった。したがって、この材料は、生体投与量に関して、優秀な再現性を示した。
【0204】
「実験例8:pMDI組成物の調製」
本発明によるさらなる組成物は、以下のようにして調製することができる。12.0gの例えばクロボザムといったような微粉化したベンゾジアゼピンと、4.0gのレシチンSPC−3(Lipoid GMBH 社)とを、ビーカー内において計量した。このパウダーを、蓋内における最大のポートに対して取り付けられている漏斗を介して、 Hosokawa AMS-MINI MechanoFusion system へと、装置を3.5%で動作させつつ、搬送した。ポートをシールし、冷却水を循環させた。設備を、5分間にわたって20%というパワー設定値で動作させ、その後、10分間にわたって50%というパワー設定値で動作させた。この装置を停止させ、分解し、そして、得られた組成物を回収した。
【0205】
[缶の調製]
缶内へと0.027gのパウダーを計量して投入し、缶に対して、50μlのバルブをクリンプし、さらに、缶内へと、12.2gのHFA 134aを充填した。
【0206】
「実験例9:受動装置内において使用するための機械溶融組成物の調製」
本発明によるさらなる組成物は、以下のようにして調製することができる。20%の例えばクロボザムといったような微粉化したベンゾジアゼピンと、78%の Sorbolac 400 ラクトースと、2%のステアリン酸マグネシウムと、を含有してなる20gの混合物を、計量して、蓋内における最大のポートに対して取り付けられた漏斗を介して、 Hosokawa AMS-MINI MechanoFusion system へと、装置を3.5%で動作させつつ、搬送した。ポートをシールし、冷却水を循環させた。設備を、5分間にわたって20%というパワー設定値で動作させ、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で動作させた。この装置を停止させ、分解し、そして、得られた組成物を機械的に回収した。
【0207】
「実験例10:受動装置内において使用するための2ステップでの機械溶融組成物の調製」
本発明によるさらなる組成物は、以下のようにして調製することができる。ステージ1においては、95%の例えばクロボザムといったような微粉化したベンゾジアゼピンと、5%のステアリン酸マグネシウムと、を含有してなる20gの混合物を、計量して、蓋内の最大のポートに対して取り付けた漏斗を介して、 Hosokawa AMS-MINI MechanoFusion system へと、装置を3.5%で動作させつつ、搬送した。ポートをシールし、冷却水を循環させた。設備を、5分間にわたって20%というパワー設定値で動作させ、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で動作させた。この装置を停止させ、分解し、そして、得られた組成物を機械的に回収した。ステージ2においては、99%の Sorbolac 400 ラクトースと、1%のステアリン酸マグネシウムと、を含有してなる20gの混合物を、計量して、蓋内における最大のポートに対して取り付けられた漏斗を介して、 Hosokawa AMS-MINI MechanoFusion system へと、装置を3.5%で動作させつつ、搬送した。ポートをシールし、冷却水を循環させた。設備を、5分間にわたって20%というパワー設定値で動作させ、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で動作させた。この装置を停止させ、分解し、そして、得られた組成物を機械的に回収した。その後、ステージ2に基づく16gのパウダーと、ステージ1に基づく4gのパウダーとを、小さな高剪断力のブレンダー内において組み合わせ、10分間にわたって混合させ、これにより、組成物を得る。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1A】本発明の一実施形態による吸入器およびブリスタを示す図とされている。
【図1B】本発明の一実施形態による吸入器およびブリスタを示す図とされている。
【図2】渦流ノズル(1)を示す平断面図とされている。
【図3】本発明の一実施形態による渦流チャンバを示す側断面図とされている。
【図4】図3の渦流チャンバにおけるB−B線に沿った矢視断面図とされている。
【図5A】円形の入口ポートを有した渦流チャンバを示す側面図とされている。
【図5B】図5Aの渦流チャンバにおけるD−D線に沿った矢視断面図とされている。
【図6A】矩形の入口ポートを有した渦流チャンバを示す側面図とされている。
【図6B】図6Aの渦流チャンバにおけるE−E線に沿った矢視断面図とされている。
【図7】円弧状の入口ポートを有した渦流チャンバを示す図とされている。
【図8】本発明による吸入器の出口ポートに関する様々な実施形態を詳細に示す図とされている。
【図9】本発明による吸入器の出口ポートに関する様々な実施形態を詳細に示す図とされている。
【図10】本発明による吸入器の出口ポートに関する様々な実施形態を詳細に示す図とされている。
【図11】本発明による吸入器の出口ポートに関する様々な実施形態を詳細に示す図とされている。
【図12】本発明の一実施形態による非対称な渦流チャンバを示す図とされている。
【図13】本発明の一実施形態による他の非対称な吸入器における渦流チャンバを示す断面図とされている。
【図14】図13の渦流チャンバを示す斜視図とされている。
【図15】図14の渦流チャンバを示す断面図とされている。
【図16】図14および図15の渦流チャンバの一部を詳細に示す斜視図とされている。
【図17】図16の一部を示す平面図とされている。
【図18】図17の一部に関する変形実験例を示す平面図とされている。
【図19】図13〜図18の実施形態による渦流チャンバにおいて、壁とベースとの間のインターフェイスに関する様々な変形実験例を示す図とされている。
【図20】図13〜図18の実施形態による渦流チャンバにおいて、壁とベースとの間のインターフェイスに関する様々な変形実験例を示す図とされている。
【図21】図13〜図18の実施形態による渦流チャンバにおいて、壁とベースとの間のインターフェイスに関する様々な変形実験例を示す図とされている。
【図22A】実験実験例1におけるラクトースの粒径分布を示す図とされている。
【図22B】実験実験例1におけるラクトースの粒径分布を示す図とされている。
【図23】吸入試験を行うに際して使用された吸入器の試作品を示す斜視図とされている。
【図24】図23の吸入器を示す図とされているとともに、カバーを取り外した状態で図示がなされており、これにより、呼吸駆動機構と渦流ノズルとを示している。
【図25】図24におけるA−A線に沿って、渦流ノズルを縦断して示す断面図とされている。
【図26A】図24におけるB−B線に沿った断面図であって、閉塞状態とされたノズルバルブを示している。
【図26B】図24におけるB−B線に沿った断面図であって、開放状態とされたノズルバルブを示している。
【図27A】図24におけるB−B線に沿った断面図であって、閉塞状態とされたノズルバルブを示している。
【図27B】図24におけるB−B線に沿った断面図であって、開放状態とされたノズルバルブを示している。
【図28】好ましい態様で微粉化されたロイシンに関する粒径分析結果を示す図とされている。
【符号の説明】
【0209】
1 渦流チャンバ
2 出口ポート
3 入口ポート
10 マウスピース
60 ブリスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入によって投与するための、特にベンゾジアゼピンからなるドライパウダー薬学的組成物といったような、ベンゾジアゼピンを含有したドライパウダー薬学的組成物に関するものであり、また、そのような組成物を投与するための吸入装置に関するものである。
【0002】
ベンゾジアゼピン類は、1960年に最初に紹介された鎮静催眠剤である。ベンゾジアゼピン類は、様々な状況において一般に使用されており、例えば、発作の制御や、不安症や、アルコール禁断症状や、不眠症や、薬剤に関連した興奮症状の制御、などにおいて使用されており、また、筋弛緩剤として、また、前麻酔薬として、使用されている。さらに、ベンゾジアゼピン類は、手術前における意識の鎮静化のために、他の薬剤と頻繁に組み合わせて使用されている。ベンゾジアゼピン類が広く出回っていることのために、このような薬剤は、乱用されるおそれがある。加えて、ベンゾジアゼピン類は、単独であるいは他の物質と組み合わせて、過剰服用され得ることが知られている。
【0003】
最も広く使用されているベンゾジアゼピン類には、クロバザムや、クロナゼパムや、ジアゼパムや、ロラゼパムや、ミダゾラム、がある。本発明においては、これら周知のベンゾジアゼピン類やまたそれほど一般的でないものも含めて、任意のベンゾジアゼピン類を使用することができる。
【0004】
クロバザムは、7−クロロ−1,5−ジヒドロ−1−メチル−5−フェニル−1,5−ベンゾジアゼピン−2,4(3H)−ジベンゾジアゼピンという化学名を有した1,5ベンゾジアゼピンである。クロナゼパムは、5−(2−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロ−7−ニトロ−1,4−ベンゾジアゼピン−2−ベンゾジアゼピンという化学名を有した1,4ベンゾジアゼピンである。ジアゼパムは、7−クロロ−1,3−ジヒドロ−1−メチル−5−フェニル−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−ベンゾジアゼピンという化学名を有したベンゾジアゼピンである。ロラゼパムは、7−クロロ−5−(2−クロロフェニル)−1,3−ジヒドロ−3−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−ベンゾジアゼピンという化学名を有したベンゾジアゼピンである。ミダゾラムは、8−クロロ−6−(2−フルオロフェニル)−1−メチル−4H−イミザゾ[1,5−a][1,4]ベンゾジアゼピンという化学名を有したベンゾジアゼピンである。
【0005】
本発明の組成物においては、ベンゾジアゼピンは、好ましくは、クロバザムまたはクロナゼパムのいずれかとされる。クロバザムは、特に好ましい。その理由は、利用可能な文献によれば、このベンゾジアゼピンが、他のベンゾジアゼピンと比較して、副作用がより少ないと考えられるからである。例えば、非特許文献1を参照されたい。さらに、クロバザムが吸入によって肺へと投与された時には、副作用がさらに低減されると考えられている。
【背景技術】
【0006】
現在のところ、特にてんかんの治療を意図した場合、市販のベンゾジアゼピン類は、一般に、静脈注射によって投与するものや、あるいは、直腸から投与するもの、とされている。これら双方の投与態様は、ある状況下においては明らかに不便なものであり、患者にとって不快なものである。
【0007】
いくつかの経口投与型のベンゾジアゼピン類が利用可能であり、通常、錠剤という形態とされている。しかしながら、経口投与においては、静脈注射や直腸経由で投与する場合と比較して、同じ結果を達成するためには、明らかに大量のベンゾジアゼピン類を服用しなければならないという欠点を避けることができない。例えば、Rivotril(登録商標)(クロナゼパム)は、てんかんを治療するために使用され、静脈注射によって投与されるあるいは錠剤として経口投与される。ベンゾジアゼピンの推奨された服用量は、錠剤の場合には、1日あたり4〜8mgである。これに対し、静脈注射の場合には、1日あたり1mgである。その上、経口投与の場合には、投与と治療効果の兆候との間に比較的長い遅延時間が存在するという欠点を避けることができない。また、ベンゾジアゼピンの初回通過新陳代謝が、問題である。
【0008】
ベンゾジアゼピン類を投与するための他の態様が提案されているけれども、それらの成功度合いは、制限されている。鼻粘膜を介してのベンゾジアゼピンの投与が、特に睡眠の改良に関して、特許文献1(Goldberg氏)に開示されている。睡眠が引き起こされる際には、治療的活性薬剤の投与時の効果が迅速に現れることが望ましいことは、明らかである。ベンゾジアゼピンを含有した溶液や懸濁液や軟膏やゲルを含む組成物を、改良された持続時間にわたって催眠効果をもたらし得ることが、開示されている。この効果は、従来の態様と比較して、より効率的にかつより正確に制御される。特許文献2(SI Corporation社)には、鼻粘膜を介しての投与のための組成物が開示されている。特に、特許文献2には、例えばベンゾジアゼピンといったような薬剤を、脂肪族アルコールやエチレングリコールや水を含有した薬学的に許容可能な共溶媒システムと組み合わせて投与すること、さらに、これら組合せ物を、例えば胆汁酸塩またはレシチンといったような生物学的界面活性剤と組み合わせて投与すること、が開示されている。水性の共溶媒システムは、粘膜を介しての活性薬剤の浸透および吸収に関しての、速度および程度を制御して促進するものとされている。
【0009】
しかしながら、鼻を介しての投与は、特に所定期間にわたって定期的な投与が必要とされる場合には、患者にとってあまり快適なものではない。鼻腔内において凝集が起こる可能性があり、不快さを引き起こす。この投与態様は、さらに、ベンゾジアゼピン組成物の限られた容積しか投与し得ないという問題点を避けることができない。このため、組成物は、実際には、そのまま飲み込まれ、治療効果がほとんどないあるいは全くない。
【0010】
また、吸入によって、ベンゾジアゼピンを含有した組成物を投与することが、想定されている。特許文献3(Daniel氏)には、ベンゾジアゼピンを含有した組成物を吸入することによってパニック障害や発作性疾病を治療することが、開示されている。この治療は、主として応急処置を想定したものであり、患者に対してのベンゾジアゼピンの投与量は、あまりに精度を欠くものである。組成物は、推進剤を含有しており、例えばエアロゾル化された計量投薬ポンプや手動計量投薬ポンプや計量投薬スプレー生成スクイーズボトルといったような従来的装置を使用して、投与される。
【0011】
特許文献4(Alexza Molecular Delivery Corporation 社)には、エアロゾルという形態でのベンゾジアゼピンの吸入を開示している。この場合、ベンゾジアゼピンを含有した組成物を加熱することにより蒸気を形成し、その後、蒸気をエアロゾルへと凝集させる。そのような凝集エアロゾルは、少なくとも3つの構成部材を備えた吸入装置を必要とする。とりわけ、組成物を加熱して蒸気を形成するための部材と、蒸気を冷却し得る部材と、そのようにして形成されたエアロゾルの吸入を可能とし得る部材と、を備えた吸入装置を必要とする。この組成物および投与態様により、ベンゾジアゼピンのピーク血漿濃度が迅速に生成されることが、主張されている。しかしながら、エアロゾルを生成するというこの労力を要する手法は、比較的信頼性が低いものであって、実際に投与されるベンゾジアゼピンの量を予測することができない。このため、投与量が過剰となったりあるいは過小となったりし得る。いずれの場合も、望ましくないことは明らかであり、にに不適当で、患者の健康に対して危険性のあるリスクをもたらす。
【特許文献1】国際公開第90/02737号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,627,211号明細書
【特許文献3】米国特許第5,457,100号明細書
【特許文献4】国際公開第02/094244号パンフレット
【非特許文献1】Trimble et al, Benzodiazepines, page 5 (2000)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による吸入可能なベンゾジアゼピンドライパウダー組成物は、投与から15分以内に治療効果が得られるものと考えられる。これは、ベンゾジアゼピン組成物を経口で投与した場合や直腸経由で投与した場合と比較して、治療効果を得るに際して、著しく速い時間である。
【0013】
さらに、ベンゾジアゼピンは、初回通過新陳代謝が比較的大きいものとして知られており、このような代謝物質は、ベンゾジアゼピン自体と比較して、治療上有効ではない。肺ルート経由でベンゾジアゼピンを投与することにより、新陳代謝を起こさないより多くの薬剤が、体系的に供給される。このことは、経口ルートや直腸ルートの場合に必要とされる典型的な投与量と比較して、ベンゾジアゼピンの投与量を、小さなものとすることができる。例えば、Medhndiratta et al.,“Clobazam monotherapy in drug naive adult patients with epilepsy”,12 Seizures 226-228 (2003) においては、26人の患者に関する研究により、クロバザムの一日あたりの平均投与量が26.86mgであり、20mg〜80mgという範囲であることが示されている。Trimble et al.,“Benzodiazepines”at page 69 においては、6〜8時間おきにおける投与量が10mgであることに言及されている。
【0014】
本発明による吸入可能なクロバザム組成物の上記特性は、クロバザムに関しては薬学的悪影響相互作用の発生率が比較的小さいことと組み合わせると、付加的な治療に関して特に好適なものとすることができる。すなわち、例えば発作に関する他の薬物といったような他の薬物と組み合わせて治療することに関して特に好適なものとすることができる。本発明のいくつかの実施形態においては、付加的な治療のための組成物が提供される。この付加的な治療のための組成物は、主要な薬剤と、付加的な薬剤と、の組合せである。付加的な薬剤は、吸入によって投与されるものであって、好ましくはクロバザムといったようなベンゾジアゼピンを含有している。主要な薬剤は、クロナゼパムや、ethosuximideや、felbamateや、gabapentinや、lamotrigineや、levetiracetamや、oxcarbazepineや、 phenobarbitalや、phenytoinや、piracetamや、primidoneや、tigabineや、topiramateや、valproateや、vagabatrinや、acetazolmideや、副腎皮質刺激ホルモンや、mephytoinや、mesuximideや、nitrazepamや、薬学的に許容可能なこれらの塩類、とすることができる。
【0015】
発作性の疾病のための経口投薬を受けている患者は、発作を起こしそうであるような比較的長期にわたって(例えば、数日間にわたって)これら薬物を摂取する。これら経口投与薬剤の治療効果が生じるまでの時間が比較的長いことのために、患者は、例えば発作を引き起こしそうな事象といったような事象が発生するまで薬剤の摂取を待つということが、できない。これに対し、ベンゾジアゼピン類(特に、クロバザム)の肺投与の場合には、治療効果が生じるまでの時間がずっと速いものと考えられており、そのため、患者に対する投薬回数を極めて少なくすることができる。このことは、ベンゾジアゼピン類が副作用を示すことのために、また、吸入の場合には、必要とされる投薬回数を少なくすることができて、そのような副作用を低減し得ると考えられていることのために、重要な利点である。他のベンゾジアゼピン類と比較してより少ない副作用しか示さないことが既に判明しているクロバザムの場合には、投薬回数のさらなる低減化と、投薬量のさらなる低減化と、によって、吸入可能な組成物を特に有利なものとし得るものと考えられる。
【0016】
発作性の疾病の治療に際してベンゾジアゼピン類を肺投与することの他の利点は、患者の消化器系を通して投与する必要がないということである。このことは、発作時には患者の消化作用が機能しないかもしれないことのために、重要である。したがって、患者がちょうど発作の直前にうまく経口薬を飲み込んだにしても、実際には、発作自体が、薬剤の消化を妨害してしまい、そのため、所望の治療効果を得ることができない。これに対し、患者が吸入可能なベンゾジアゼピン組成物をうまく吸入し得る限りにおいては、薬剤は、効果的に吸収される。
【0017】
また、肺による吸入は、直腸や筋内に対する投与と比較して、患者にとって、より社会的に許容可能である。筋内投与の場合には、注射を行う。注射は、多くの患者にとって不快なものであり、特に、子供の患者にとっては不快である。また、直腸への投与は、不便であり不快なものである。さらに、多くの発作患者は、子供であって、学校でいる際に投薬が必要であるかもしれない。学校職員は、直腸投与薬剤注射を行うことには、抵抗がある。鼻への投与でさえ、多くの場合に鼻腔内において固まってしまって患者にとって不快であるという欠点を有している。
【0018】
したがって、本発明の第1見地によれば、吸入による投与のために、ベンゾジアゼピンを含有した薬学的組成物が提供される。本発明の1つの実施形態においては、組成物は、ドライパウダー組成物とされる。本発明の他の実施形態においては、組成物は、肺による吸入に適したものとされる。
【0019】
本発明の他の見地によれば、ベンゾジアゼピンを含有した薬学的組成物は、治療に際して使用される。特に、組成物は、てんかんの治療に際して使用される。組成物は、部分的に反復的なものや急性の反復的なものも含めて、一般に、発作の治療に際して有効である。また、組成物は、癲癇重積症と称される状況を治療するに際して使用することができる。癲癇重積症という用語は、任意の継続的なタイプの発作を表すものとして使用することができる。また、組成物は、急性パニック障害を治療するに際して使用することができる。また、本発明による組成物は、鎮静剤としてまた事前薬剤(手術前薬剤)として、使用することができる。
【0020】
本発明の他の実施形態においては、組成物は、発作性の疾病やパニック障害の治療には使用されない。
【0021】
本発明の吸入可能組成物は、加圧計量投与量吸入器(pMDI)あるいはドライパウダー吸入器(DPI)のいずれかを使用して、投与することができる。
【0022】
加圧計量投与量吸入器は、典型的には、2つの構成部材を備えている。第1に、薬剤粒子(この場合には、ベンゾジアゼピン)を懸濁液または溶液という形態で加圧状態で収容するキャニスター部材を備えている。第2に、キャニスターを保持し駆動させるために使用されるレセプタクル部材を備えている。典型的には、キャニスターは、複数回の投薬分量の組成物を収容する。しかしながら、キャニスターは、1回分の投薬分量の組成物を収容することもできる。キャニスター部材は、典型的には、キャニスターの内容物を放出させ得るバルブ付き出口を有している。エアロゾル薬剤は、キャニスター部材をレセプタクル部材内へと押圧しこれによりバルブ付き出口を開放しこれにより薬剤粒子をバルブ付き出口から放出させさらにはレセプタクル部材を通してレセプタクルの出口から放出させることによって、pMDIから放出される。キャニスターからの放出時には、薬剤粒子は、『霧化』され、これにより、エアロゾルが形成される。患者が、自身の吸入タイミングに対してエアロゾル化薬剤の投与を調和させることが意図されている。これにより、薬剤粒子を、患者の吸気流に乗せて、肺にまで搬送することができる。典型的には、pMDIsは、キャニスターの内容物を加圧するために、また、レセプタクル部材の出口から薬剤粒子を放出するために、推進材を使用する。pMDIにおいては、組成物は、液体の形態で提供され、推進材と一緒に容器内に留まる。推進材は、様々な形式をとることができる。例えば、推進材は、加圧ガスあるいは液化ガスとすることができる。
【0023】
ドライパウダー吸入器においては、投与される投与量は、加圧されていないドライパウダーの形態で収容され、吸入器の駆動時には、パウダーの粒子は、患者によって吸入される。ドライパウダー吸入器は、患者の呼吸が装置駆動のための唯一のガス供給源をなす『受動』型装置とすることができる。これに代えて、『能動』型装置においては、加圧ガスの供給源が使用される。本発明によるドライパウダー組成物は、能動型のDPIを使用してもまた受動型のDPIを使用しても、供給することができる。受動型の吸入装置としては、Rotahaler(登録商標)および Diskhaler(登録商標)(GlaxoSmithKline)、および、Turbohaler(登録商標)(Astra-Draco) がある。能動型吸入器の例としては、 Nektar Therapeutics 社による Inhance(登録商標)という商標名の吸入器や、同じく Nektar Therapeutics 社による Exubera(登録商標)という商標名のインシュリン吸入器や、 Vectura Limited 社による Aspirair 装置、がある。特に好ましい能動型ドライパウダー吸入器については、詳細に後述する。
【0024】
好ましい実施形態においては、本発明による組成物に関し、所望の治療効果を提供するのに必要な投与量は、ベンゾジアゼピンあるいはそれの薬学的に許容可能な塩として、約0.25mg〜約20mgである。好ましくは、投与量は、約0.5mg〜約10mgである。より好ましくは、投与量は、約1mg〜約7mgである。最も好ましくは、投与量は、ベンゾジアゼピンとして、約2mg〜約3mgである。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態においては、ベンゾジアゼピンを含有したドライパウダー組成物は、良好な薬剤効率を有したものとして、提供される。これにより、ドライパウダー組成物の肺投与に基づく利点と組み合わせて、投与すべきベンゾジアゼピンの量を、現在利用可能な組成物および現在利用可能な投与態様において必要された量と比較して、より少量とすることができる。
【0026】
投薬効率は、ベンゾジアゼピンを含有したドライパウダー組成物を最適化することにより、および/または、組成物を投与するために使用する装置を最適化することにより、得ることができる。
【0027】
良好な投薬効率は、多くの利点を有している。例えば、各投薬ごとにより多くの割合の活性薬剤を繰返し的にかつ信頼性高く供給し得ることにより、同じ治療効果を得つつも、投薬量を低減することができる。このことは、明らかに、非常に魅力的である。
【0028】
本発明の様々な実施形態によって達成されるような比較的少ない投薬量および比較的大きな再現性は、所定の投薬量によって得られる治療効果が、より予測可能であることおよびより一様であることを意味する。これは、従来的な装置や従来的なパウダーの場合に予期した以上にすなわち過剰に投薬してしまって実質的に過剰投与となってしまうというというリスクを、回避することができる。
【0029】
さらに、治療的に活性な薬剤の過剰投与は、長年にわたって、かなり大きな副作用の増大した発生率と関連してきた。したがって、本発明は、すべての患者に関し、投与量を低減することによって、副作用の発生率を低減することを補助することができる。
【0030】
当然のことながら、同じ治療効果を得るに際して必要とされる活性薬剤の量を低減することは、コスト的な意味でも、魅力的である。しかしながら、例えば米国FDAといったような取締機関によっても、ずっと安全なものであると考えられている。
【0031】
ドライパウダー組成物の計量投与量(MD)は、使用されている吸入装置によって提示された計量形態内に存在する活性薬剤の全重量である。例えば、MDは、Cyclohaler(登録商標)のためのカプセル内に存在するような、あるいは、Aspirair(登録商標)内におけるフォイルブリスタ内に存在するような、活性薬剤の質量とすることができる。
【0032】
放出された投与量(ED)は、駆動後に装置から放出された活性薬剤の全重量である。この量には、装置の内部に残っている材料や、装置の表面上に残っている材料は、含まれない。EDは、投与量一様サンプリング装置(DUSA)として頻繁に識別されるような装置内におけるデバイスから放出された全放出重量を収集することにより、正当化された定量的湿式化学分析によってこれを回収することにより、測定される。
【0033】
微粒投与量(FPD)は、駆動後に装置から放出された、所定の限界値よりも小さな空気力学的粒径を有した活性薬剤の全重量である。この限界値は、特に断らない限り、一般に5μmと考えられる。代替的な限界値は、例えば、3μmや、1μm、等である。FPDは、例えば twin stage impinger (TSI)や multi-stageimpinger (MSI)や Andersen Cascade Impactorや Next Generation Impactor (NGI) といったようなインパクターまたはインピンジャーを使用して測定される。各インパクターまたはインピンジャーは、ステージごとに、予め規定された空気力学的粒径収集カットポイントを有している。FPD値は、正当化された定量的湿式化学分析によって定量化されたステージごとの活性薬剤の回収を評価することによって、得られる。その場合、単純なステージカットを使用することによってFPDが決定される、あるいは、ステージごとの堆積に関するより複雑な数学的補間法を使用することによってFPDが決定される。
【0034】
微細粒子比率(FPF)は、通常、FPDをEDによって割算したものとして定義され、%を単位として表される。この場合、EDのFPFは、FPF(ED)と称され、FPF(ED)=(FPD/ED)×100%として計算される。
【0035】
微細粒子比率(FPF)は、また、FPDをMDによって割算したものとして定義することもでき、%を単位として表される。この場合、MDのFPFは、FPF(MD)と称され、FPF(MD)=(FPD/MD)×100%として計算される。
【0036】
FPF(MD)は、また、『投与効率』と称することもでき、供給装置から放出された際の、特定の空気力学的粒径よりも小さな薬学的ドライパウダー組成物の投与量である。
【0037】
患者の上部気道内における粒子の衝突が、いわゆる衝突パラメータによって予測し得ることは周知である。密着パラメータは、衝突速度と、空気力学的断面積と、の積として定義される。
【0038】
したがって、作用のターゲット部位に対しての上部エア通路領域を通しての粒子供給に関連した確率は、空気力学的断面積に関連する。したがって、より下部のエア通路への供給、すなわち、深い肺への供給は、空気力学的断面積に依存するものであり、より小さなエアロゾル粒子の方が、使用者の投与ターゲット部位にまで到達する可能性が高く、したがって、所望の治療効果を有することができる。
【0039】
5μm〜2μmという範囲の空気力学的直径を有している粒子は、一般に、呼吸細気管支内に堆積し、3μm〜0.05μmという範囲の空気力学的直径を有している粒子は、肺胞に堆積するであろう。したがって、例えば、肺胞をターゲットとした粒子の投薬効率は、そのようなターゲット部位にまで到達しやすいようより小さな粒子とされた3μm以下の粒子の投与のために、大きなものとなることが予測される。
【0040】
吸入によって組成物を深い肺にまであるいは血液流内へと到達させるため、組成物内の活性薬剤は、非常に微細な粒子という形態のものでなければならない。例えば、10μmよりも小さな質量メジアン空気力学的直径(MMAD)を有したものでなければならない。10μmよりも大きなMMADを有した粒子は、喉の壁に衝突しやすく、一般に、肺にまでは到達しないことは、広く証明されている。5μm〜2μmという範囲のMMADを有した粒子は、一般に、呼吸細気管支内に堆積するであろう。また、3μm〜0.05μmという範囲のMMADを有した粒子は、肺胞内に堆積するであろうあるいは血液流内へと吸収されるであろう。
【0041】
したがって、本発明の好ましい実施形態においては、下部の呼吸器官へとすなわち深い肺へと投与し得るよう、活性粒子のMMADは、10μmよりも小さなものとされ、好ましくは、5μmよりも小さなものとされ、より好ましくは、3μmよりも小さなものとされ、1μmよりも小さなものとすることができる。理想的には、ドライパウダー組成物内における活性粒子のうち、重量で少なくとも90%のものは、10μmよりも小さなMMADを有しているべきであり、好ましくは、5μmよりも小さなMMADを有しているべきであり、より好ましくは、3μmよりも小さなMMADを有しているべきであり、最も好ましくは、2μmよりも小さなMMADを有しているべきである。
【0042】
ドライパウダーが従来的プロセスを使用して製造された場合には、活性粒子は、様々な粒径を有したものとされ、多くの場合、粒径のばらつきは、かなり大きなものとなり得る。これにより、活性粒子の十分に大きな割合のものを、正確なサイトへと投与するのに適したサイズのものとすることが、困難となる。したがって、ドライパウダー組成物は、活性粒子のできる限り小さなサイズ分布を有したものであることが望ましい。これにより、投薬効率および再現性が改良されることとなる。
【0043】
本発明の組成物は、好ましくは、薬学的活性薬剤の損失を低減し得るよう組成されている。大きな投薬効率を得ることができる。薬学的活性薬剤の損失という表現は、活性薬剤が供給装置によって供給されないことを意味しており、また、所望の治療効果が得られるよう活性粒子を堆積させるべき下部の呼吸器官に対してすなわち深い肺に対して到達するような態様で活性薬剤が供給されないことを意味している。
【0044】
特に、組成物内における微粒子の凝集は、活性薬剤の損失となる。活性薬剤の微粒子は、凝集する傾向がある。そして、供給装置の駆動時にこれら凝集物が分解しなければ、活性薬剤粒子は、肺の所望部位にまでは到達しないであろう。微細パウダー粒子の分解は、力制御薬剤の添加によって、また、粒子を調製するために使用される方法によって、大いに増強し得ることが判明している。力制御薬剤は、粒子結合を低減するものであり、これにより、凝集物の分解を容易なものとすることができる。
【0045】
微粒子は、すなわち、10μmよりも小さなMMADを有した粒子は、体積に対しての表面積の比が大きくこのため表面の自由エネルギーがかなり大きくて粒子どうしの凝集を促進するものであることのために、熱力学的に不安定である。吸入器においては、微粒子どうしの凝集および吸入器壁に対してのそのような粒子の付着は、様々な問題点を引き起こす。すなわち、微粒子どうしが大きくかつ安定な凝集物として吸入器から放出されたり、吸入器の内部に付着したまま吸入器から放出され得なかったり、あるいは、吸入器を閉塞させてしまったり、といったような問題点を引き起こす。
【0046】
吸入器の各駆動時の間における、あるいは、様々な吸入器どうしの間における、粒子の様々なバッチどうしの間における、粒子からなる安定な凝集物の形成の程度に関しての不確実性は、薬剤投与の再現性を悪いものとしてしまう。さらに、凝集物の形成は、活性粒子どうしの凝集によって活性粒子のMMADが大いに増大してしまい、肺の所望部位にまで到達しないことを意味する。
【0047】
微粒子が凝集するという傾向は、与えられた投与量のFPFが大いに予測不能となること、および、微粒子のうちの、肺へと到達する割合がすなわち肺の適切な部位へと到達する割合が、大いに変動すること、を意味する。
【0048】
この状況を改良してFPFおよびFPDを一様なものとする試みにおいては、ドライパウダー組成物は、多くの場合、添加剤を含有している。
【0049】
添加剤は、ドライパウダー組成物内における粒子どうしの間の結合を低減することを意図している。添加剤は、小さな粒子どうしの間における弱い結合力を妨害し、これにより、粒子どうしを分離状態に維持することを補助するとともに、それら粒子どうしが互いに付着することを低減させ、また、組成物内に他の粒子が存在している場合にはそのような他の粒子に対して付着することを低減させ、さらに、吸入装置の内表面に対して付着することを低減させる。粒子の凝集物が形成されている場合、添加剤粒子の添加することによって、凝集物の安定性を低減させる。これにより、凝集物は、粒子を放出するための吸入装置の駆動時に生成された乱流エア流内において分解されやすくなる。凝集物が分解した場合には、活性粒子は、それぞれ小さな個別の粒子という形態へと復帰し、下部の肺にまで到達することができる。
【0050】
従来技術においては、ドライパウダー組成物は、添加剤からなる個別粒子(一般に、活性微粒子のサイズと同等のサイズの粒子)を含有しているものとして、議論されている。いくつかの実施形態においては、添加剤は、活性粒子上におけるおよび/または任意のキャリア粒子上におけるコーティングという形態とすることができる、あるいは、一般的には、不連続なコーティングという形態とすることができる。
【0051】
好ましくは、添加剤は、付着防止材料とされる。これは、粒子どうしの間の結合を低減する傾向があり、また、微粒子が吸入装置の内表面に対して付着することを防止する傾向がある。有利には、添加剤は、摩擦防止剤あるいはglidant とされる、これは、吸入器内における薬学的組成物のより良好な流れをもたらす。このようにして使用されている添加剤は、必ずしも付着防止剤あるいは摩擦防止剤として通常的に称されるものではないかもしれない。しかしながら、それらは、粒子どうしの間の結合を低減させる効果、あるいは、パウダーの流動性を改良する効果、を有したものである。添加剤は、多くの場合、力制御薬剤(force control agent,FCA)と称され、通常、投与量に関するより良好な再現性と、大きな微粒子比率と、をもたらす。
【0052】
したがって、FCAは、本明細書においては、粒子の表面上におけるその存在によって、他の粒子の存在時に各粒子が受ける付着表面力および結合表面力を変更し得るような物質である。一般に、FCAの機能は、付着力と結合力との双方を低減させることである。
【0053】
一般に、ドライパウダー組成物内に含有されるべき添加剤の最適量は、添加剤の化学的組成および他の特性と、活性材料の化学的組成および他の特性と、存在する場合には例えばキャリア粒子といったような他の粒子の性質と、に依存する。一般に、添加剤の効率は、組成物の微粒子比率という観点から測定される。
【0054】
添加剤は、必ずしも肺へと到達するものではないけれども、公知の添加剤は、通常、薬学的に許容可能な材料から構成される。例えば、添加粒子が、キャリア粒子の表面に対して取り付けられたものとされる場合には、添加粒子は、一般に、使用者の喉の背面のところにおいて、キャリア粒子と一緒に堆積することとなる。
【0055】
したがって、本発明の好ましい実施形態においては、組成物は、さらに添加剤を含有している。
【0056】
ドライパウダー組成物内において使用するに際して好ましい添加剤には、アミノ酸や、ペプチドや、0.25〜1000kDaという分子量を有したポリペプチドや、これらの派生物や、例えば両性イオンといったような二極性イオンや、例えばレシチンといったようなリン脂質や、例えばステアリン酸マグネシウムといったような金属ステアリン酸塩や、ナトリウムステアリルヒューメイトや、コロイド状二酸化シリコン、がある。
【0057】
本発明の一実施形態においては、ドライパウダー組成物は、1つまたは複数のFCAを、約0.1%〜約40%という重量比率でもって、好ましくは、約0.15%〜約10%という重量比率でもって、より好ましくは約0.2%〜約50%という重量比率でもって、最も好ましくは約0.5%〜約2%という重量比率でもって、含有することができる。
【0058】
FCAがアミノ酸またはリン脂質とされている場合には、FCAは、好ましくは約0.1%〜約10%という重量比率でもって、より好ましくは約0.5%〜約5%という重量比率でもって、最も好ましくは約2%という重量比率でもって、含有される。好ましくは、微粉化したアミノ酸またはリン脂質の少なくとも95重量%は、150μmよりも小さな粒径を有しており、より好ましくは100μmよりも小さな粒径を有しており、最も好ましくは50μmよりも小さな粒径を有している。
【0059】
FCAが金属ステアリン酸塩またはナトリウムステアリルヒューメイトとされている場合には、FCAは、好ましくは約0.05%〜約10%という重量比率でもって、より好ましくは約0.15%〜約2%という重量比率でもって、最も好ましくは約0.15%〜約0.5%という重量比率でもって、含有される。
【0060】
ドライパウダー組成物の粒子の粒径について言及する場合、特に断らない限り、粒径が、容積加重粒径とされていることを理解されたい。粒径は、レーザー回折方法によって計算することができる。粒子が、さらに、粒子の表面上にインジケータ材料を含有している場合には、コーティングされた状態での粒径が、コーティング無しの粒子に関する特定された好ましい粒径範囲の中に位置していることが、有利である。
【0061】
本発明のある種の実施形態においては、ベンゾジアゼピン組成物は、『キャリアの無い』組成物とされる。すなわち、ベンゾジアゼピンと、1つまたは複数の添加剤と、だけを含有している。このような実施形態においては、パウダー組成物は、好ましくはクロバザムまたはクロナゼパムとされたベンゾジアゼピンと、添加剤と、を含有している。パウダーは、パウダーの重量に対して、少なくとも60重量%のベンゾジアゼピンを含有している。有利には、パウダーは、パウダーの重量に対して、少なくとも70重量%の、より好ましくは少なくとも80重量%の、ベンゾジアゼピンを含有している。最も有利には、パウダーは、パウダーの重量に対して、少なくとも90重量%の、より好ましくは少なくとも95重量%の、ベンゾジアゼピンを含有している。
【0062】
特に所望の治療効果を生成し得るよう患者に対して投与されるべき活性薬剤以外の材料に関しては、肺に対してできるだけ少量のパウダーしか導入しないことは、生理学的に有利であると考えられている。したがって、ドライパウダー組成物に含有される添加剤の量は、好ましくは、できるだけ少ないものとされる。最も好ましいパウダー組成物は、したがって、ベンゾジアゼピンを、99重量%よりも多く含有している。
【0063】
このような『キャリアの無い』組成物においては、パウダー粒子の少なくとも90重量%は、20μmよりも小さいような、好ましくは10μmよりも小さいような、より好ましくは5μmよりも小さいような、粒径を有している。上述したように、パウダーのベンゾジアゼピン粒子のサイズは、下部の肺への有効な投与のためには、0.1μm〜5μmという範囲内であるべきである。添加剤が、材料粒子という形態のものとされている場合には、添加剤粒子が、下部の肺へと供給し得るような上記好ましい粒径範囲内にあることが有利である。
【0064】
添加剤が、アミノ酸を含有したものとされていることが、特に有利であると考えられる。ドライパウダー組成物内において添加剤として存在する場合、アミノ酸は、活性材料の吸入比率を大きなものとし得ること、および、パウダーの流動特性を増強し得ること、が判明している。好ましいアミノ酸は、ロイシンであり、特に、L−ロイシンである。ここでは、L−形式とされたアミノ酸が好ましいものとして説明しているけれども、D−形式やDL−形式のものも、使用することができる。添加剤は、ロイシン、イソロイシン、リジン、バリン、メチオニン、システイン、および、フェニルアラニン、の中の1つまたは複数のアミノ酸とすることができる。好ましくは、パウダーは、パウダーの重量に対して、少なくとも80重量%の、好ましくは少なくとも90重量%の、ベンゾジアゼピン(あるいは、それの薬学的に許容可能な塩類)を含有している。好ましくは、パウダーは、パウダーの重量に対して、8重量%を超えないような、好ましくは5重量%を超えないような、添加剤を含有している。上述したように、ある種の場合には、パウダーは、約1重量%という添加剤を含有していることが有利である。添加剤は、また、ステアリン酸マグネシウムや、コロイド状二酸化シリコン、とすることができる。
【0065】
組成物内における粒子の分解を補助してFPFおよびFPDを一様なものとするという試みにおいては、ドライパウダー組成物は、多くの場合、活性材料からなる微粒子と混合されたような、賦形剤からなる粗いキャリア粒子を含有している。微粒子どうしが互いに付着するのではなく、活性微粒子は、吸入装置内において、粗いキャリア粒子の表面に対して付着する傾向がある。この場合、活性微粒子は、微細な懸濁液を形成し得るよう解放可能に支持されており、供給装置の駆動時には、吸入によって、呼吸気管内へと供給されるようになっている。粗いキャリア粒子は、好ましくは、40μmよりも大きなMMADを有している。
【0066】
粗いキャリア粒子を含有していることは、また、活性薬剤の供給量が非常に少ないものとされている場合に、非常に魅力的である。ごく少量のパウダーを正確にかつ再現性よく供給することは、非常に困難なことであり、また、パウダーが主成分として活性粒子を含有している場合には、パウダーの供給量がわずかに変動しただけでも、活性薬剤の投与量が大きく変わってしまう。したがって、賦形剤粒子という形態での希釈剤の追加は、投薬量を、より再現性の良いものかつより正確なものとする。
【0067】
キャリア粒子は、任意の許容可能な賦形剤材料あるいは材料の組合せとすることができる。例えば、キャリア粒子は、糖アルコール、多価アルコール、および、結晶砂糖、の中から選択された1つまたは複数の材料から構成することができる。他の適切なキャリアとしては、例えば塩化ナトリウムや炭酸カルシウムといったような無機塩類や、例えば乳酸ナトリウムといったような有機塩類や、例えば多糖やオリゴ糖といったような他の有機化合物、がある。有利には、キャリア粒子は、多価アルコールからなるものとされる。特に、キャリア粒子は、例えばマンニトールやブドウ糖やラクトースといったような結晶砂糖からなる粒子することができる。好ましくは、キャリア粒子は、ラクトースからなるものとされる。
【0068】
したがって、さらなる好ましい実施形態においては、本発明の組成物は、さらに、キャリア粒子を含有している。
【0069】
有利には、実質的にすべて(重量による)のキャリア粒子は、10μm〜1000μmというようなより好ましくは50μm〜1000μmといったような直径を有している。
【0070】
好ましくは、実質的にすべて(重量による)のキャリア粒子は、355μmよりも小さいようなより好ましくは20μm〜250μmといったような直径を有している。
【0071】
好ましくは、キャリア粒子の少なくとも90重量%は、60μm〜1000μmという直径を有している。キャリア粒子の直径が比較的大きいことは、キャリア粒子の表面に対しての他の小さな粒子の付着機会を増大させ、活性粒子の流動性および搬送特性を良好なものとし、エア通路内における活性粒子の放出性を改良し、これにより、肺下部内への活性粒子の堆積を増大させる。
【0072】
キャリア粒子(存在する場合)と複合活性粒子との混合比率は、当然のことながら、使用されている吸入装置のタイプや、使用されている活性粒子のタイプや、必要とされた投与量、に依存する。キャリア粒子は、複合活性粒子とキャリア粒子との合計重量に対して、少なくとも50%という重量比率でもって、より好ましくは少なくとも70%という重量比率でもって、有利には少なくとも950%という重量比率でもって、最も好ましくは少なくとも95%という重量比率でもって、含有される。
【0073】
活性微粒子からなる組成物に対して粗いキャリア粒子を添加する際には、さらなる困難さに遭遇する。この困難さとは、供給装置の駆動時に、大きな粒子の表面からどのようにして微粒子を確実に脱離させるかということである。
【0074】
吸入時に、活性粒子を、他の活性粒子から、および存在する場合にはキャリア粒子から、脱離させ、これにより、活性微粒子からなるエアロゾルを形成するというステップは、肺内の所望の吸収部位にまで到達する活性材料の投与量の比率を決定するに際して、重要である。そのような分散効率を改良し得るよう、組成物内に、上述した特性を有したFCAを含む添加剤を添加することが、公知である。活性微粒子および添加剤を含有した組成物は、国際公開第97/03649号パンフレットおよび国際公開第96/23485号パンフレットに開示されている。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態においては、パウダー組成物は、さらに、賦形剤からなる微粒子を含有することができる。そのような賦形剤は、例えば、キャリア材料として使用することが適切であるものとして上記において言及した様々な材料のうちの1つとすることができる。この観点において特に有効なものは、例えばブドウ糖やラクトースといったような結晶砂糖のような材料である。双方のタイプの粒子が存在する場合には、微細な賦形剤粒子は、キャリア粒子と同じ材料とすることができる、あるいは、キャリア粒子とは異なる材料とすることができる。
【0076】
微細な賦形剤の粒径は、一般に、30μmを超えないものとされ、好ましくは、20μmを超えないものとされる。いくつかの状況においては、例えば、任意のキャリア粒子および/または任意の微細な賦形剤粒子が、それ自体が口腔咽頭領域に感覚を引き起こし得る材料とされている状況においては、キャリア粒子および/または微細な賦形剤粒子は、インジケータ材料を構成することができる。例えば、キャリア粒子および/または任意の微細な賦形剤粒子は、マンニトールを含有したものとすることができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態においては、吸入のためのパウダーは、パウダーの構成成分どうしを混合することにより、調製することができる。例えば、パウダーは、活性材料の粒子と、キャリア材料の粒子と、添加剤の粒子と、を互いに混合することにより、調製することができる。使用される設備のタイプは、使用されている特定の組成物に依存する。例えば、ある種の組成物については、例えば Inversina Variable Tumbler Mixer といったような比較的剪断力が小さなミキサーを使用することができる。他の組成物については、例えば Retch Grindomix mixerといったような比較的剪断力が小さなミキサーが、好適である。さらに他の組成物については、例えば Hosokawa Mechano-Fusion mill のような機械溶融システムを使用し得る。場合によっては、球状化(すなわち、spheronisation)を有利なものすることができる。
【0078】
本発明によるドライパウダー組成物においては、吸入装置の駆動時に、微粒子比率が少なくとも35%であるようにして生成されることが、好ましい。微粒子比率が50%以上であることが、より好ましい。微粒子比率が60%以上であることが、特に好ましい。微粒子比率が70%以上であことが、とりわけ好ましい。微粒子比率が80%以上であることが、最も好ましい。本明細書においては、微粒子比率という用語は、装置によって供給される全活性材料のうち、5μmよりも小さな直径を有している活性材料の比率を表すために使用されている。装置によって供給される全活性材料は、一般に、装置内で計量された活性材料の量よりも、あるいは、装置内において事前計量された投与量内に存在する活性材料の量よりも、少ない。
【0079】
したがって、本発明のある実施形態においては、ベンゾジアゼピンドライパウダー組成物は、吸入装置において使用するものとして提供される。そのような組成物は、好ましくは、さらに、キャリア材料を含有している。パウダーは、好ましくは、吸入装置の駆動時には、少なくとも35%といったような、好ましくは少なくとも50%といったような、より好ましくは少なくとも60%といったような、最も好ましくは少なくとも70%といったような、微粒子比率を生成する。
【0080】
供給装置の駆動時には、パウダー組成物は、装置内において(能動的にあるいは受動的に)生成されたエア流に乗って搬送される。パウダーがこのエア流に乗って搬送される態様、および、その後に、装置から放出される態様は、できるだけ多くの活性薬剤を確実に放出するという観点から、重要である。
【0081】
エア流内にできるだけ多くのパウダーを乗せて搬送することは、単純な問題ではない。加えて、搬送は、装置から放出されるパウダープルームが、喉内に堆積する活性薬剤量を最小化し得るようなものであるべきである。最後に、パウダーがエア流に乗って搬送される際に、パウダー内のすべての凝集物が分解されることが、さらに望ましい。
【0082】
この分解は、パウダー組成物がエア流に乗って搬送される際にパウダー組成物に対して剪断力が印加され得るようにエア流が制御されている場合に、可能である。これら剪断力は、凝集した粒子を分解するように機能することができ、これにより、パウダーのFPFおよびFPDを増強する。
【0083】
供給装置内におけるパウダーのエア流に乗せての搬送時に、ドライパウダー組成物内の凝集物の分解を行い得るための1つの手法は、エア流がパウダーに対して剪断力を印加することができこれにより凝集物を分解し得るように、エア流を構成することである。
【0084】
分解に加えて、エア流に乗せてのパウダーの搬送をできるだけ効率的なものとしてパウダーの残留量をできるだけ少ないものとすることも、また、非常に重要である。最後に、他の考慮は、パウダーが供給装置から放出される際の、パウダーの動力学である。この場合にも、エア流に乗せてのパウダーの搬送が関連する。
【0085】
当然のことながら、エア流に乗せてのドライパウダー組成物の搬送は、組成物自体の特性によって、また、使用されている装置によって、影響される。例えば、微細パウダー(の搬送は、すなわち、例えばキャリア粒子といったようなより大きな粒子を含有していないパウダーの搬送は、大きな粒子と微細な粒子との組合せからなるパウダーの搬送と比較して、より困難である。しかしながら、装置自体の構成も、また、パウダー搬送に影響を与える。特に、分解やパウダー搬送やパウダー速度等を決定するものは、パウダーを通って装置から導出されるエア流の経路である。
【0086】
本発明の一見地によれば、ガス流に乗せて凝集粒子を搬送するための方法が、提供される。この方法においては、1つまたは複数の表面上に凝集粒子を堆積させ、ガス流を介して、凝集粒子に対して剪断力を印加し、これにより、凝集粒子を分解させる。
【0087】
『乱流度合いの大きな吸入装置』とは、装置内において比較的大きな乱流を生成し得るよう構成されているような、および/または、内表面上へのパウダーの衝撃発生率が比較的大きなものとされているような、および/または、装置内に障害物が存在するような、吸入装置を意味するものとして、理解されたい。これにより、装置の使用時には、凝集したパウダー粒子の効率的な分解を行うことができる。
【0088】
本発明のパウダー組成物が一般的に使用されるドライパウダー吸入装置には、例えば
Rotahaler(登録商標)や Inhaler(登録商標)や Diskhaler(登録商標) といったような『一回投与』型の装置がある。このような一回投与型の装置においては、パウダー組成物の1回分の投与量が、例えばカプセルやブリスタ内において、装置へと導入される。また、例えば Turbohaler(登録商標) といったような『複数回投与』型の装置を、使用することもできる。複数回投与型の装置においては、吸入器の駆動時に、装置内に収容されたパウダー材料のリザーバから1回分のパウダーが取り出される。
【0089】
上述したように、ある種のパウダー組成物の場合には、大きな乱流を促進する装置の形態が、他の形態とされた装置の場合よりも大きな微粒子比率が得られるという点において、利点をもたらす。そのような装置には、例えば、Turbohaler(登録商標)や Novolizer(登録商標)がある。このような装置は、パウダーのエアロゾル化クラウドの生成を患者の吸入によって駆動する種類の装置とすることも、また、吸入のためのパウダーのエアロゾル化クラウドの生成を引き起こすようなあるいは補助するような分散デバイスを有した種類の装置とすることも、できる。
【0090】
一実施形態として、本発明による方法においては、渦流チャンバのうちの、実質的に円形断面形状とされた入口ポートからのガス流ストリームに乗せてパウダー状物質を搬送する。この方法においては、さらに、渦流チャンバ内にわたってガス流を接線方向に案内し;パウダー組成物をエアロゾル化し得るようにして、渦流チャンバ内にわたってガス流を案内し;パウダー組成物を乗せたガス流を、渦流チャンバの外部へと、出口ポートを通して軸方向に導出する。好ましくは、出口ポートから300mm離間した外部のところにおけるガス流の速度は、入口ポートにおけるガス流の速度よりも小さいものとされている。
【0091】
他の実施形態として、本発明による方法においては、渦流チャンバの入口ポートよりも上流側において、ガス流内へと、凝集粒子を含有したパウダー状組成物を乗せる。この実施形態においては、さらに、入口ポートを通して渦流チャンバ内へとガス流を案内し;渦流チャンバの1つまたは複数の壁上へと、凝集粒子を堆積させ;渦流チャンバ内を流通するガス流によって、堆積した凝集粒子に対して剪断力を印加し、これにより、凝集粒子を分解し;分解した粒子を乗せたガス流を、渦流チャンバの外部へと導出し;出口ポートから300mm離間した外部のところにおけるガス流の速度を、入口ポートにおけるガス流の速度よりも小さいものとする。
【0092】
本発明は、さらに、パウダーを含有しているチャンバ内にわたってエア流を生成するための構成を提供する。これにより、パウダーは、エア流に乗せられ、出口ポートを介してチャンバの外部へと導出される。この際、チャンバ内にわたってエア流を案内する。チャンバは、軸線と、この軸線回りにおいて湾曲した壁と、を備えている。エアは、軸線回りに回転する。エア流は、また、チャンバの入口ポートを通して案内される。ここで、入口ポートを通して、エア流は、チャンバ壁に対する接線方向に案内される。出口ポートを通してのエア流の案内方向は、軸線に対して平行なものとされる。チャンバ内におけるエア流の断面積は、エア流に対して直交する平面内における断面積であって、入口ポートから離間するにつれて低減する。
【0093】
他の見地においては、吸入器は、エア流を供給して上述したような分解を行い得るものとして、提供される。そのような吸入器は、エアロゾル化デバイスを備えている。このエアロゾル化デバイスは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、実質的に軸方向を向いた出口ポートと、を有している。吸入器は、さらに、1つまたは複数の密封ブリスタ(あるいはカプセル)を備えている。ブリスタは、放出されるべき薬学的ドライパウダー組成物を収容している。吸入器は、さらに、複数のブリスタの中の1つを着脱可能に受領するための導入デバイスを備えている。駆動時には、吸入器は、接線方向を向いた入口ポートに対して、収容したブリスタ内のパウダー組成物を関連づける。
【0094】
エアロゾル化デバイスに関し、いくつかの実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、実質的に軸方向を向いた出口ポートと、を有している。好ましくは、出口ポートの直径に対しての、渦流チャンバの直径の倍率は、4〜12とされている。
【0095】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートを備えている。ここで、入口ポートは、外壁を有し、この外壁は、チャンバの径方向において、入口ポートの最大範囲を規定している。渦流チャンバの軸方向における外壁の範囲は、渦流チャンバの軸方向における入口ポートの最大範囲と実質的に同じとされている。外壁は、渦流チャンバの壁と実質的に平行とされている。
【0096】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートを備えている。底面が、軸方向における出口ポートからの渦流チャンバの最も遠い範囲を規定している。底表面は、また、出口ポートからの入口ポートの軸方向に最も遠い範囲を規定している。
【0097】
さらに他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、入口導管と、を備えている。入口導管は、使用時には、ガス流に乗せられたパウダー状組成物を入口ポートに対して供給し得るよう構成されている。入口導管の断面積は、渦流チャンバにむけて減少するものとされている。入口導管は、吸入器の駆動時には、収容されたブリスタ内のパウダー組成物に対して関連づけられる。
【0098】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、実質的に円形断面形状からなる渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、円弧状の入口導管と、を備えている。入口導管は、使用時には、ガス流に乗せられたパウダー状組成物を入口ポートに対して供給し得るよう構成されている。入口導管は、吸入器の駆動時には、収容されたブリスタ内のパウダー組成物に対して関連づけられる。
【0099】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、軸線を有しているとともに、軸線回りにおいて湾曲線を形成する壁によって、少なくとも部分的に、形成されている。渦流チャンバは、軸線によって拘束された平面内において、断面積を有している。また、その平面は、軸線に対する所定角度(θ)のところに、軸線から放射状をなす一方向に延在している。渦流チャンバは、実質的に接線方向を向いた入口ポートと、実質的に軸方向を向いた出口ポートと、を備えている。渦流チャンバの断面積は、入口ポートと出口ポートとの間のガス流通方向において、角度(θ)が増大するにつれて減少するものとされている。
【0100】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、渦流チャンバという形態のものとされている。渦流チャンバは、軸線を有しているとともに、軸線回りにおいて湾曲線を形成する壁によって、少なくとも部分的に、形成されている。渦流チャンバは、さらに、ベースによって形成されている。このベースと、軸線に対して直交しておりかつベースとは反対側に位置した平面と、の間の距離(d)は、軸線に対する径方向位置(r)が増大するにつれて増大するものとされている。
【0101】
他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、渦流チャンバを具備している。渦流チャンバは、頂壁と、底壁と、側壁と、によって形成され、側壁は、軸線回りに湾曲しているとともに、頂壁および底壁と交差している。チャンバは、軸線と、頂壁と、底壁と、側壁と、によって形成された断面積を有しており、チャンバは、入口ポートおよび出口ポートを備えている。入口ポートは、側壁に対して接線方向を向いたものとされ、出口ポートは、軸線に対して同軸的なものとされ、断面積は、入口ポートを通してのガス流の流通方向において、入口ポートからの角度が増大するにつれて、減少するものとされている。
【0102】
さらに他の実施形態においては、エアロゾル化デバイスは、チャンバを具備し、チャンバは、壁と、ベースと、入口ポートと、出口ポートと、を備えている。チャンバは、出口ポートと同軸的なものとされかつベースと交差する軸線を備えている。壁は、ベース回りにおいて湾曲している。入口ポートは、壁に対して接線方向を向いたものとされている。ベースと、出口ポートのところにおいて軸線に対して垂直な平面と、の間の高さは、軸線から入口ポートへと向かう径方向距離が増大するにつれて減少する。
【0103】
本発明のある種の見地においては、特に、機械溶融および/またはジェットミリングを行うプロセスを使用して組成物が調製されたような見地においては、本発明による薬学的組成物は、吸入によって投与し得るようなベンゾジアゼピンを含有している。本発明による組成物は、クロバザムだけを含有しているのではなく(つまり、単独の薬剤ではなく、実質的な単離されているものではない)、クロバザムと、ロイシンと、を含有している。および/または、クロバザムと、ステアリン酸マグネシウムと、を含有している。クロバザムは、薬学的に許容可能な塩の形態とすることができる。
【0104】
本発明のさらなる見地においては、本発明による薬学的組成物は、実質的にクロバザムだけを含有することができる、あるいは、クロバザムとロイシンとを含有することができる、あるいは、クロバザムとステアリン酸マグネシウムとを含有することができる。この最後の見地による薬学的組成物は、好ましくは、機械溶融および/またはジェットミリングによって、形成される。クロバザムは、薬学的に許容可能な塩の形態とすることができる。
【0105】
本発明のさらに他の見地においては、組成物は、スプレー乾燥や、制御された速度で移動する小滴を生成し得る手段を有したスプレー乾燥機を使用したスプレー乾燥や、あるいは、力制御薬剤との共スプレー乾燥、を行うプロセスを使用して調製され、本発明による薬学的組成物は、吸入によって投与し得るようなベンゾジアゼピンを含有している。しかしながら、クロバザムだけを含有しているのではない。代替可能な見地においては、薬学的組成物は、クロバザムを含有しており、スプレー乾燥や、制御された速度で移動する小滴を生成し得る手段を有したスプレー乾燥機を使用したスプレー乾燥や、あるいは、力制御薬剤との共スプレー乾燥、を行うプロセスを使用して調製される。クロバザムは、薬学的に許容可能な塩の形態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0106】
本発明の一実施形態に関し、添付図面を参照しつつ、単なる例示として、詳細に説明する。
【0107】
図1Aおよび図1Bは、患者に対して上述したパウダー組成物を投与するために使用し得る吸入器に関しての代替可能な実施形態を概略的に示している。図1Aは、呼吸によって駆動される実施形態を示しており、一方、図1Bは、手動で駆動される実施形態を示している。このタイプの吸入器は、共に2002年11月14日付けで公開された国際公開第02/089880号パンフレットおよび国際公開第02/089881号パンフレットに開示されている。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。図2〜図7は、国際公開第02/089880号パンフレットに記載された吸入器に対応しており、図12〜図21は、国際公開第02/089881号パンフレットに記載された吸入器に対応しており、さらに、図8〜図11は、任意の吸入器に関連して使用し得るような好ましい出口ポート構成を示している。
【0108】
図1A、図1B、および、図2に示すように、吸入器は、渦流チャンバ1を備えたノズル3000を具備している。渦流チャンバ1は、パウダー組成物からなるエアロゾルを生成し得るよう、出口ポート2と入口ポート3とを備えている。渦流チャンバ1は、吸入器を使用している使用者が吸入を行っているマウスピース10の内部に配置されている。エア通路(図示せず)を、渦流チャンバ1とマウスピース10との間に形成することができる。これにより、使用者は、呼吸を行い得るとともに、パウダー状薬剤を吸入することができる。
【0109】
パウダー組成物は、支持体70と穿孔可能なフォイル蓋75とによって形成されたブリスタ60内に収容されている。図示のように、支持体70には、内部に、キャビティが形成されており、このキャビティ内に、パウダー組成物を保持することができる。キャビティの開放端部は、蓋75によってシールされている。渦流チャンバ1のエア入口導管7は、穿孔ヘッド(あるいは、ロッド)50を有している。穿孔ヘッド50は、穿孔可能なフォイル蓋75を穿孔する。リザーバ80が、通路78を介してブリスタ60に対して連結されている。制御されたエア供給90が、所定圧力値(例えば、1.5bar)にまで、リザーバ80内へとガス(例えば、この例においては、エア)を充填する。好ましくは、ブリスタは、1〜5mgというパウダー組成物を収容しており、より好ましくは、1、2、あるいは、3mg、というパウダー組成物を収容している。
【0110】
ある種の実施形態においては、支持体70も、また、フォイルから形成される。そのようなブリスタは、当該技術分野においては、通常、ダブルフォイルブリスタと称される。本発明の他の実施形態においては、支持体70は、ポリマーから形成されている。フォイル製支持体70は、ポリマー製支持体70と比較して、湿気および酸化に関して、より大きな保護をもたらすと考えられている。
【0111】
図1Aに示すように、使用者が吸入を行う際には、バルブ40が、呼吸駆動機構30によって開放される。これにより、加圧エアリザーバからのエアが、ブリスタ60を通して吸引され、この際、パウダー状組成物が、エア流内へと巻き込まれる。図1Bに示すような手動駆動吸入器においては、バルブ40を開放して上記エア流を生成するためには、ボタン12を押下する必要がある。いずれの実施形態においても、マウスピース10に対して付設されたフェイスマスク45と協働して、使用することができる。
【0112】
介助者が組成物を投与する場合には、図1Bの手動駆動型の実施形態が使用される。フェイスマスク45が、患者(図示せず)の鼻および口の上に配置され、駆動ボタン12を押下することによって、バルブ40を開放して、肺にまで組成物粒子を運ぶのに必要なエア流を生成することができる。このプロセスに関しては、後述する。
【0113】
双方の実施形態において、エア流は、渦流チャンバ1へとパウダー組成物を搬送する。その際、パウダー組成物とエアとからなる回転渦が、入口ポート2と出口ポート3との間に、生成される。連続的な態様で渦流チャンバを通過させるのではなく、エア流内に巻き込まれたパウダー状組成物は、まさに短時間(典型的には、0.3秒未満、好ましくは、20ms未満)でもって渦流チャンバ内に流入し、純粋な薬剤組成物の場合には(つまり、キャリアが使用されていない場合には)、パウダー組成物の一部が、渦流チャンバの壁に対して付着する。このパウダーは、その後、パウダーに隣接している境界層内に存在する大きな剪断力によってエアロゾル化される。渦流の作用によって、パウダー組成物の粒子が分解される。すなわち、薬剤とキャリアとを含有した組成物の場合には、キャリアから粒子が分離され、これにより、パウダー状組成物からなるエアロゾルが、出口ポート2を介して渦流チャンバ1から導出される。エアロゾルは、マウスピース10を通して、使用者によって吸入される。
【0114】
渦流チャンバ1は、2つの機能を行うと考えることができる。第1に、分解。すなわち、粒子クラスターを、吸引可能な個々の粒子へと、分解することができる。第2に、濾過。すなわち、好ましくは、あるサイズ以下へと粒子を微粉化して、出口ポート2から容易に導出することができる。分解により、パウダー状組成物からなる密着性クラスターを、吸引可能な粒子へと分解するとともに、ろ過によって、渦流チャンバ1内におけるクラスターの滞留時間を増大させ、これにより、分解を受ける時間を長くすることができる。分解は、渦流チャンバ1の中のエア流内における速度勾配に基づき、大きな剪断力を形成することによって、達成することができる。速度勾配は、渦流チャンバの壁に近い境界層において、最も大きい。
【0115】
図2により詳細に示すように、図2〜図7の渦流チャンバ1は、実質的に、円筒形チャンバという形態とされている。渦流チャンバ1は、出口ポート2の領域内において、円錐台形部分を有している。入口ポート3は、渦流チャンバ1の周縁に対して実質的に接線方向をなすものとされ、出口ポート2は、全体的に、渦流チャンバ1の軸線に対して同軸的なものとされている。したがって、ガスは、入口ポート3を通って渦流チャンバ1内へと接線方向から導入され、出口ポート2を通って軸方向に導出される。入口ポート3と出口ポート2との間において、渦流が形成される。渦流によって剪断力が生成され、これにより、薬剤粒子の分解が引き起こされる。出口ポート2の長さは、好ましくは、出口ポート2をなす壁上へと薬剤が堆積してしまうという可能性を低減させ得るよう、最小限のものとされる。図示の実施形態においては、渦流チャンバ1は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やアクリルやあるいは真鍮から機械加工される。しかしながら、様々な代替可能な材料を使用することができる。
【0116】
渦流チャンバの直径に対しての、出口ポートの直径の比率は、出口ポートから吐出される薬剤エアロゾルの微粒比率を最大化するに際して、重要なものとなり得る。したがって、出口ポートの直径に対しての、渦流チャンバの直径の比率は、4〜12とすることができる。比率を4〜12とした場合に、1〜3ミクロンという範囲の有効直径を有したパウダー状薬剤粒子の比率を最大化されることが、判明した。微粒比率を増大化し得るよう、比率は、好ましくは5よりも大きいものとされ、最も好ましくは6よりも大きいものとされ、また、好ましくは9よりも小さいものとされ、最も好ましくは8よりも小さいものとされる。好ましい構成においては、比率は7.1とされる。
【0117】
本発明のある種の実施形態においては、渦流チャンバの直径は、2〜12mmとされる。渦流チャンバの直径は、好ましくは4mmよりも大きいものとされ、最も好ましくは5mmよりも大きいものとされ、また、好ましくは8mmよりも小さいものとされ、最も好ましくは6mmりも小さいものとされる。好ましい実施形態においては、渦流チャンバの直径は、5mmとされる。これら実施形態においては、渦流チャンバの高さは、一般に、1〜8mmとされる。渦流チャンバの高さは、好ましくは、4mmよりも小さなものとされ、最も好ましくは、2mmよりも小さなものとされる。好ましい実施形態においては、渦流チャンバの高さは、1.6mmとされる。一般に、渦流チャンバは、実質的に円筒形とされる。しかしながら、渦流チャンバは、他の形態とすることができる。例えば、渦流チャンバは、円錐台形状のものとすることができる。渦流チャンバの直径あるいは出口ポートの直径が長手方向に沿って一定のものではない場合には、出口ポートの最小直径に対しての、渦流チャンバの最大直径の比率が、上記において特定された範囲内にあるべきである。例えば上述したように、エアロゾル化装置は、出口ポートを備えている。出口ポートの直径は、一般に、0.5〜2.5mmとされる。出口ポートの直径は、好ましくは0.6mmよりも大きなものとされ、また、好ましくは1.2mmよりも小さなものとされ、最も好ましくは1.0mmよりも小さなものとされる。好ましい実施形態においては、出口ポートの直径は、0.7mmとされる。
【0118】
【表1】
【0119】
図3および図4は、図1の吸入器の渦流チャンバの一般的な形態を示している。渦流チャンバの幾何学的形状は、表1に記載された寸法によって規定される。それら寸法に関する好ましい値が、また、表1に記載されている。チャンバの円錐形部分の高さhに関する好ましい値が0mmであることに注意されたい。その理由は、チャンバの頂部がフラットである場合には、渦流チャンバが最も有効に機能することが判明しているからである。
【0120】
表2に示すように、エアロゾル内における、渦流チャンバによって生成された6.8ミクロン未満という実効粒径を有している薬剤粒子の割合(6.8ミクロン粒子比率)は、チャンバの直径Dと、出口ポートの直径De と、の比に依存する。規格化された平均6.8ミクロン粒子比率とは、吸入器内に導入されたパウダー状薬剤の6.8ミクロン粒子比率によって割算された、放出された6.8ミクロン粒子比率、のことである。使用された薬剤は、純粋な Intal(登録商標)ナトリウムクロマグリケート(英国 Fisons 社)であった。
【0121】
【表2】
【0122】
上記表2により、チャンバの直径と出口ポートの直径との比率が4以上であれば、規格化された6.8ミクロン粒子比率が、85%を超えることがわかる。したがって、そのような比率がこの範囲にある場合には、渦流チャンバの分解効率は著しく改良される。7.1という好ましい比率においては、94.3%という規格化された6.8ミクロン粒子比率が、達成された。
【0123】
図5Aおよび図5Bは、入口ポート3が円形断面形状のものとされた渦流チャンバ1を示している。図5Bにおいて実線の矢印によって示されているように、入口ポート3を介して渦流チャンバ内へと流入するエア流の一部は、渦流チャンバ1の側壁12に追従する。したがって、このエア流に乗って搬送されるパウダーは、渦流チャンバ1の側壁12に対して隣接した境界層のところにおいてエア流内へと直接的に導入される。ここで、境界層のところにおいては、接線方向の速度勾配が最大である。この最大の速度勾配により、パウダー粒子の分解に関して最大の剪断力が得られる。したがって、最大の分解が得られる。
【0124】
しかしながら、図5Bにおいて破線の矢印によって示すように、入口ポート3を介して渦流チャンバ内へと流入するエア流の他の一部は、チャンバ壁12に追従するのではなく、チャンバ1を横断して、入口ポート3とは反対側のところにおいて、壁12に対して衝突する。このポイントにおいては、エア流が方向を急激に変更しなければならないことにより、乱流度合いが増大する。この乱流は、チャンバ1の壁12に隣接した境界層を妨害し、これにより、パウダーの分解効率を低減させる。
【0125】
図6Aおよび図6Bは、入口ポート3が矩形断面形状のものとされた渦流チャンバ1を示している。矩形断面形状は、入口ポートの周縁に関し、渦流チャンバ1の壁12に対応した長さを最大とする。これにより、渦流の境界層内へと、最大のエア流を導入することができる。同様に、矩形断面形状は、入口ポートの周縁に関し、渦流チャンバ1の底面13に対応した幅を最大とする。これにより、渦流がチャンバ1の全体を占領することのために、渦流チャンバ1内におけるパウダーの堆積を防止することができる。
【0126】
矩形断面形状を有していることに加えて、図6Aおよび図6Bの入口ポート3は、渦流チャンバ1に向けてテーパー形状(先細り形状)をなす入口導管7を備えている。ここで、入口導管7は、内壁14と外壁15とによって形成されている。外壁15は、渦流チャンバ1の壁12に対して実質的に接線方向をなすものとされている。外壁15と内壁14との間の間隔は、渦流チャンバ1に向けて減少するものとされている。これにより、内壁14は、エア流を、渦流チャンバ1内において境界層に向けて付勢することができる。
【0127】
さらに、入口導管7の横断面積が減少していることが、エア流の速度を増大させ、これにより、渦流チャンバ1内へと向かう途中でのパウダーの堆積を低減することができる。
【0128】
図6B内において実線の矢印と破線の矢印との双方によって示すように、入口ポート3を介して渦流チャンバ内へと流入するすべてのエア流は、渦流チャンバ1の壁12に追従する。したがって、このエア流に乗って搬送されるパウダーは、渦流チャンバ1の壁12に対して隣接した境界層のところにおいてエア流内へと直接的に導入される。これにより、分解が最大化される。
【0129】
渦流チャンバ1の上面16が、図1,3,5,6に示されているように円錐形とされるのではなく、図8〜図10に示されているようにフラットである場合には、より一層の改良を、達成することができる。したがって、この構成においては、渦流チャンバ1の上面16は、チャンバ1の壁12に対して、および、渦流の軸線に対して、実質的に垂直とされる。
【0130】
図8〜図11は、渦流チャンバ1の出口ポート2に関しての様々な選択肢を示している。エアロゾルの導出プルームの特性は、少なくとも部分的には、出口ポート2の構成によって決定される。例えば、エアロゾルが、2リットル/分の流速でもって1mmという直径の出口ポート2から導出される場合、出口ポート2のところにおける速度は、およそ40m/sとなる。この速度は、エアロゾルプルームの発散度合いを大きなものとすることによって、チャンバまたはノズルから数センチメートルのところにおいて、2m/sという典型的な吸入速度にまで、低減することができる。
【0131】
図8においては、出口ポート2は、渦流チャンバ1の上壁17を貫通して形成された単なるオリフィスとされている。しかしながら、上壁17の厚さが厚いことは、出口ポート2の長さが、出口ポート2の直径よりも大きいことを意味している。したがって、パウダーからなるエアロゾルが出口ポートから導出される際に、出口ポート内に堆積してしまうというリスクがある。さらに、チューブ状の出口ポートは、導出プルームの発散度合いを低減する傾向がある。これら問題点は、渦流チャンバ1の上壁17を出口ポート2に向けてテーパー形状とすることにより、図9の構成において解決される。この場合、出口ポート2は、無視できる厚さのナイフエッジによって形成されている。直径が1mmという出口ポート2については、2.3mmという出口ポートの長さは、60°というプルーム角度を与える。そして、出口ポートの長さを0.3mmにまで低減することにより、プルーム角度を90°にまで増大させることができる。
【0132】
図10においては、出口ポート2は、環状とされているとともに、ナイフエッジによって形成されている。この構成は、円形ジェットの場合と比較して、より急速に減速するような導出プルームを生成する。なぜなら、環状の出口ポートは、同じ直径の円形ポートと比較して、より長い周縁を有しており、周縁の静的なエアとより効果的に混合するジェットを生成するからである。図11においては、複数のオリフィスが、出口ポート2を形成している。この場合には、単一の大きなプルームと比較して、より短距離でもって減速して分解するような複数のより小さなプルームを生成する。
【0133】
図7は、入口導管7が円弧形状とされているとともに渦流チャンバ1に向けてテーパー形状とされているような渦流チャンバ1の実施形態を示している。図7において実線および破線の矢印によって示されているように、円弧形状とされた入口導管7は、入口導管7の外壁15に向けて、パウダー状組成物からなる搬送粒子を付勢する。この場合、パウダーが入口ポート3を介して渦流チャンバ1内へと流入する際には、パウダーは、渦流チャンバ1の壁12に対して隣接しているとともに剪断力が最大とされている境界層内へと、直接的に導入される。これにより、改良された分解が達成される。
【0134】
本発明の各種実施形態による吸入器は、大きな微細粒子比率を有しつつ比較的遅い速度で移動するエアロゾルを生成することができる。吸入器は、計量された量のパウダー状薬剤を完全にかつ再現性高くエアロゾル化し得るとともに、吸入流速以下という速度でもって患者の吸入流内へとエアロゾルを投与することができる。これにより、患者の口内における衝撃によって堆積を低減することができる。さらに、効率的なエアロゾル化システムは、エアロゾルを生成するに際して使用されるエネルギーが小さいことのために、単純なかつ小さなかつ低コストの装置を可能とする。エアロゾルを生成するのに必要とされる流体エネルギーは、圧力と流速との積を時間的に積算したものとして、規定することができる。このエネルギーは、典型的には、5ジュールよりも小さく、3ジュールという小さなものとすることができる。
【0135】
図12〜図21は、本発明の他の実施形態に基づく非対称な吸入器を示している。これら図においては、上記実施形態と同様の部材には、同じ符号を付している。
【0136】
まず最初に、これら実施形態と、図1〜図11に関して上述された実施形態と、の間における相違点が、図12〜図21の実施形態においては、渦流チャンバ1が非対称な形状のものとされていることに、注意されたい。
【0137】
図12に示す実施形態においては、渦流チャンバ1の壁12は、螺旋またはスクロールという形態のものとされている。入口ポート3は、渦流チャンバ1の周縁に対して実質的に接線方向をなすものとされている。出口ポート2は、渦流チャンバ1の軸線に対して全体的に同心的なものとされている。したがって、ガスは、入口ポート3を介して渦流チャンバ1内へと接線方向から流入し、出口ポート2を介して軸方向に導出される。出口ポート2の中心から測定した渦流チャンバ1の半径Rは、入口ポート3のところにおける最大半径Rmax から、最小半径Rmin まで、徐々に減少している。したがって、入口ポート3の位置からの角度θのところにおける半径Rは、k=(Rmax−Rmin)/Rmax としたときに、R=Rmax(1−2k/2B) によって与えられる。渦流チャンバ1の実効的な半径は、エア流と、このエア流に乗って搬送されている薬剤粒子とが、チャンバ1内を循環するにつれて、減少する。このように、エア流からみた場合の渦流チャンバ1の実効的断面積は、減少する。その結果、エア流が加速され、搬送されている薬剤粒子の堆積可能性が低減する。加えて、エア流が2Bラジアン(360°)の位置に到達した場合、エア流は、入口ポート3を通して流入してくるエア流と平行なものとなる。その結果、エア流どうしの衝突に基づく乱流発生可能性が低減される。
【0138】
入口ポート3と出口ポート2との間において、渦流が形成され、これにより、剪断力が生成され、これにより、パウダー状組成物からなる粒子が分解を受ける。上述したように、出口ポート2の長さは、好ましくは、できるだけ短いものとされている。これにより、出口ポート2の壁上における薬剤の堆積可能性が低減されている。図示の実施形態においては、渦流チャンバ1は、PEEKやアクリルやあるいは真鍮から機械加工される。しかしながら、様々な代替可能な材料を使用することができる。製造を容易なものとし得るよう、渦流チャンバ1の半径は、徐々に低減することに代えて、ステップ的に低減させることもできる。
【0139】
図13は、図12の吸入器の渦流チャンバの一般的な形態を示している。渦流チャンバの幾何形状は、表3に記載された寸法によって規定される。表3には、各寸法に関しての好ましい値も記載されている。チャンバの円錐形部分の高さhに関する好ましい値が0mmであることに注意されたい。その理由は、チャンバの頂部(屋根16)がフラットである場合には、渦流チャンバが最も有効に機能することが判明しているからである。
【0140】
【表3】
【0141】
図12の渦流チャンバ1によって生成されたエアロゾルの6.8ミクロン粒子比率は、図1〜図11の円形渦流チャンバの場合と比較して、改良される。
【0142】
図14〜図18は、本発明による他の非対称な吸入器を示している。この場合、渦流チャンバ1は、傾斜路20を備えている。この傾斜路20は、入口ポート3からの角度変位θが増大するにつれて、底部からの渦流チャンバ1の高さを低減させる。渦流チャンバ1の中心に位置した実質的に円形の領域21は、フラットなままである。
【0143】
傾斜路20の断面形状に対する様々な選択肢が、図19〜図21に示されている。図19に示すように、傾斜路20の断面形状は、例えば円錐曲線といったような湾曲線とすることができる。湾曲線の曲率半径(あるいは、複数の曲率半径)の値は、渦流チャンバ1の軸線回りにおける角度変位θにつれて増大することができる。
【0144】
好ましくは、図20に示すように、傾斜路20は、三角形断面形状を有したものとされ、傾斜路20のベースと上面との間の角度は、角度βとされている。この角度βは、角度変位θの関数とされている。すなわち、21 およびqを定数としたときに、β=q(2−21) である。
【0145】
図21に示すように、傾斜路20と渦流チャンバの壁12との間の連結部分、および、傾斜路20と渦流チャンバ1のベースとの間の連結部分は、例えばフィレット半径といったような態様で、湾曲している。これにより、この領域における望ましくない堆積を防止することができる。
【0146】
傾斜路20のうちの、傾斜路20が入口ポート3に対して遭遇するところに位置した鉛直方向面(ベースに対して垂直な面)は、高さが急激に変化することのために、堆積を起こしやすい。しかしながら、その面に(軸方向から見て)プロファイルを形成し、これにより、図17に示すように、入口ポート3の内側エッジに隣接させて、滑らかな導入部分を形成することにより、入口ポートから流入するエアは、その面上を滑るように進み、これにより、パウダーの堆積を防止することができる。
【0147】
1つの構成においては、プロファイルは、接線方向湾曲線を介して入口ポート壁に連結されかつ入口ポートの中心線に対して40°(図18における角度φ)をなす直線とされる。このプロファイルは、傾斜路の無い同様のノズルで見られるような堆積パターンに追従する。
【0148】
好ましい実施形態においては、プロファイルは、図17に示すように、径方向内側へと湾曲する湾曲線とされる。一端においては、湾曲線は、入口ポートの内壁に対して接線方向的に連結されている。他端においては、湾曲線は、傾斜路がベースに遭遇するポイントのところにおいて、傾斜路の内部湾曲に対して連接されている。
【0149】
「実験例」
「実験例1:ラクトースの調製」
レスピトース SV003(オランダ、DMV International Pharma社)ラクトースの分級部分を、バルク材料を63μmのふるいを通すことにより製造した。その後、この材料を、45μmスクリーンを通してふるいかけし、残った材料を収集した。図22Aおよび図22Bは、ラクトースの2つのバッチに関し、Malvern Instruments, Ltd.社(英国、Malvern)によって製造された Mastersizer 2000 を使用して行った粒径分析結果を示している。図示のように、ラクトースは、約50〜約55ミクロンという容積加重平均と、約4〜約10ミクロンというd10と、約50〜約55ミクロンというd50と、約85〜約95ミクロンというd90と、を有していた。ここで、d10,d50,d90は、それぞれ、分析されたラクトースの10%,50%,90%の直径を表している。
【0150】
「実験例2:1mgのベンゾジアゼピン−ラクトース組成物の調製」
ベンゾジアゼピン類の1つであるクロバザムを、微粉化し、これにより、粒子の90%を、5μmよりも小さな直径を有しているものとした。
【0151】
実験例1のラクトースの50グラムを、適切なミキサーの金属混合容器内へと投入した。その後、50グラムの微粉化したベンゾジアゼピンを添加した。その後、実験例1のラクトースのさらなる50グラムを、混合容器に添加した。得られた混合物を、15分間にわたって混合した。その後、得られた混合物を、150μmのスクリーンを通過させた。その後、分級後の混合物(つまり、スクリーンを通り抜けた混合物部分)を、15分間にわたって再混合した。
【0152】
あるバッチにおいては、使用されたミキサーは、Inversina(登録商標) 可変速タンブラーミキサーとされた。このミキサーは、剪断力の小さなものであって、英国 Gateshea 所在の Christison Scientific Equipment Ltd. 社によって市販されている。他のバッチにおいては、使用されたミキサーは、 Retch Grindomix(登録商標)ミキサーとされた。これは、剪断力の大きなものであって、同じく、Christison Scientific Equipment Ltd.社によって市販されている。分解が、混合プロセスの強度に敏感であることは、証明されている。しかしながら、例えば上述した Inversina(登録商標)ミキサーといったような、金属容器付きの低剪断ミキサーを使用することにより、一様な微粒比率(約60%)が得られる。
【0153】
「実験例3:ブリスタ内への組成物の収容」
実験例2の組成物を、次の方法によってブリスタ内へと収容した。すなわち、ベンゾジアゼピン−ラクトース組成物の3ミリグラムを、各ブリスタ内に配置した。図1に関して上述したように、各ブリスタのベースを、冷間形成されたアルミニウム製ブリスタとし、配向性ポリアミド(外層)と45μmのアルミニウム(中心層)とPVC(内層)とのラミネートから形成されたものとした。ブリスタの蓋は、ヒートシールラッカーを有しているような、ハードロールされた30ミクロンの蓋用フォイルから形成されたものとした。組成物をブリスタの内部に導入した後、ブリスタベース上に蓋を配置することによって、さらに、ヒートシールラッカーを介してベースに対して蓋をヒートシールすることによって、ブリスタをシールした。
【0154】
上記の例においては、3mgというブリスタの『充填重量』を使用しているけれども、これよりも大きな充填重量やあるいはこれよりも小さな充填重量を使用し得ることは、理解されるであろう。例えば、下記の実験例4,5においては、4mgや5mgという充填重量が使用されている。そのような充填重量でもってブリスタを充填するに際しては様々な技術を使用し得るけれども、1mgまたは2mgという充填重量のブリスタからなる市販品を、 Harro-Hoefliger Omnidose Drum Filler によって製造し得るものと考えられる。より小さな充填重量は、特に、1mgという程度の充填重量は、より大きな充填重量と比較して、優れた微粒比率をもたらすものと考えられる。
【0155】
1mgのベンゾジアゼピン−ラクトース組成物を収容しているを含んでいる上記ブリスタは、図23〜図29に示す吸入器の試作品を使用して試験することができる。図23および図24に示すように、吸入器は、加圧エアの供給を行うためのリザーバ80(図示せず)と、ベースブロック2000と、エア通路2004と、吸入を行うためのマウスピース10と、吸入器に対して投与を行うためのブリスタ導入器2010と、投与ブリスタを穿孔する(60〜70)ためのクランクアーム2015と、投与量をエアロゾル化するための渦流ノズル3000と、エアロゾル化された投与量をマウスピース10内へと放出するための出口バルブ2020と、を備えている。
【0156】
使用時には、使用者は、ブリスタ導入器2010上へとフォイルブリスタ(図示せず)を配置し、図23に示す位置となるようにブリスタ導入器を装置内へと挿入する。その後、使用者は、クランクアーム2015を休止位置から穿孔位置へと移動させることにより、ブリスタを穿孔し、さらに、クランクアーム2015を穿孔位置にロックする。その後、リザーバ80を、加圧エアライン(図示せず)によって加圧する。これにより、リザーバ80を、比較的低圧(典型的には、1.5barゲージ)でもって所定量の加圧エア(典型的には、15ml)を収容したものとする。加圧エアは、渦流ノズル3000に対する出口のところに位置したバルブ2020によって、装置から出ないものとされている。この時点で、装置は、投与量の薬剤を投与するための待受状態となっている。
【0157】
使用者がマウスピースを介して吸入を行った場合、呼吸駆動ベーン2025が駆動され、これにより、出口バルブ2020を開放し、リザーバ内の加圧エアを放出させる。エアは、ブリスタを通って流れ、この際、投与量のパウダーを流れに乗せて、その投与量のパウダーを渦流ノズル3000へと搬送する。ノズル内においては、パウダーは、大きな遠心力と大きな剪断力とを受ける。これにより、投与量のパウダーが分解される。分解されたパウダーは、その後、微細分散エアロゾルとして、マウスピース10を介して使用者に対して供給される。
【0158】
図25に示すように、渦流ノズル3000は、入口導管3と、渦流チャンバ1と、出口ポート2と、ノズルシール3010と、を備えている。使用時には、ブリスタ(図示せず)からの加圧ガスおよび巻き込まれたドライパウダー投与量が、入口チューブ7を介してさらには入口導管3を介して渦流チャンバ内へと流入し、出口ポート2を介してノズル3000から導出される。入口導管3が渦流チャンバ1に対して連結されているポイント3020のところにおいては、チャンバの外壁は、3.35mmという半径を有している。チャンバ1の壁に沿って反時計回りに180°にわたって移動する際には、チャンバの半径は、ポイント3025のところにおける2.5mmへと、線形的に減少する。その後、入口導管と交差するまで、チャンバの壁の半径は、反時計回りにおいて、2.5mmのまま一定とされている。渦流チャンバの高さは、1.6mmとされている。入口チューブ7は、1.22mmという内径を有しており、入口導管3へと供給を行っている。
【0159】
入口導管3は、入口チューブ7に対する連結箇所における1.22mmという直径から、渦流チャンバ1に対する連結箇所における最も細いところにまで、テーパー形状とされている。入口導管3は、高さが1.1mmとされ、幅が0.5mmとされている。そのため、入口導管3は、1.6mmという渦流チャンバの全高さにわたって延在していない。出口ポート2の直径は、0.7mmとされており、出口ポート2の厚さは、0.35mmとされている。
【0160】
図24,26a,26bに示すように、呼吸駆動機構は、渦流ノズルの出口ポートのところに配置されたバルブ2020と、このバルブを開放位置へと付勢するバルブスプリング2030と、使用者による吸入に応答して回転する呼吸駆動ベーン2040と、使用者がマウスピース10を通して吸入を行った際にエアを引き込むための吸入エア入口2035と、を備えている。バルブ2020は、バルブアーム2022に対して取り付けられた弾性バルブシール2023を有している。ここで、バルブアーム2022は、バルブアームピボット2021に対して回転可能に取り付けられている。バルブアーム2022が閉塞位置(図26a)にある場合、バルブシール2023は、渦流ノズルの出口ポート2をカバーしてシールしている。バルブアーム2022の開放位置(図26b)においては、渦流ノズルの出口ポート2が開放され、これにより、ノズル3000から投与量を導出することができる。
【0161】
呼吸駆動ベーン2040は、ベーンピボット2045に対して回転可能に取り付けられている。このベーン2040は、ベーン2045に対して回転可能に取り付けられかつ回転自由なものとされたベーンローラ2046と、ベーン2040を図26aに示す閉塞位置へと付勢するベーンリターンスプリング(図示せず)と、を有している。バルブ2040が閉塞位置にあるときには、バルブシール2023が押圧され、これにより、ノズル出口ポート2がシールされ、バルブアーム2022の他端が、ベーンローラ2046上に位置し、これにより、回転が防止される。
【0162】
使用者がマウスピース10を通して吸入を行った際には、吸入エア入口2035を介してエア通路内へとエアが流入する。このエア流によって、呼吸駆動ベーン2040を横断しての圧力降下が生じ、これにより、ベーン2040を、ピボット2045回りに回転させる。ベーンローラ2046は、バルブアーム2022の端部から逸れる向きに回転し、ベーン2040がさらに回転した時点では、バルブアーム2022とは係合しなくなる。これにより、これは、バルブアーム2022は、バルブスプリング2030の付勢力に基づいて回転することができる。これにより、図26bに示すように、出口ポート2(つまり、バルブの開口)からバルブシール2023を取り外し、これにより、ノズルから投与量を放出することができる。
【0163】
呼吸駆動機構は、次の投与量のためにリセットすることができる。リセットに際しては、バルブリセットレバー2050を、90°だけ回転させて、呼吸駆動機構を初期状態に戻す。リセットレバー2050は、バルブアーム2022に対して作用して、バルブを閉塞させる(バルブシール2023によって、出力ポート2をカバーさせる)とともに、呼吸駆動ベーン2040を、ベーンリターンスプリング(図示せず)の付勢力に基づいて、初期状態へと戻す。
【0164】
図27aは、閉塞状態とされた手動駆動機構を示している。この手動駆動機構は、ボタン12を備えている。ボタン12は、吸入エア入口2035を操作し得るものとされている。すなわち、ボタン12を押し込むことにより、ベーン2040をピボット2045回りに回転させることができ、これにより、図26aに関して上述したのと同じ態様でエア流を生成することができる。
【0165】
図27bは、手動駆動型の吸入器を示しており、この図においては、ボタン12が完全に押し込まれており、吸入器は、図26bの場合と同様の開放状態とされている。手動駆動機構は、呼吸駆動機構の場合と同じ態様でリセットされる。すなわち、バルブリセットレバー2050を、90°だけ回転させ、これにより、手動駆動機構を初期状態に戻す。
【0166】
後述するような吸入データを得るために、図23〜図27の吸入器を、3つの器具と組み合わせて使用することができる。すなわち、Multi-Stage Liquid Impinger (MSLI) (U.S.P. 26, chapter 601, Apparatus 4 (2003)) と、Anderson Cascade Impactor (ACI)(U.S.P. 26, chapter 601, Apparatus 3 (2003)) と、Dosage Unit Sampling Apparatus (DUSA) (U.S.P. 26 chapter 601, Apparatus B (2003)) と、と組み合わせて使用することができる。これらの装置の各々は、図23〜図27の吸入器のマウスピース10を受領するために入力部分を備えている。
【0167】
DUSAを使用することにより、吸入器から放出された薬剤の合計量を測定することができる。この装置からのデータを使用することにより、計量されて供給された投与量が得られる。供給された投与量は、吸入器から放出された薬剤量として規定される。この量は、DUSA装置のスロート部内の薬剤量と、DUSA装置の測定部内の薬剤量と、DUSA装置の後段側フィルタ内の薬剤量と、を含んでいる。ブリスタ内に残された薬剤量や、図23〜図27の吸入器の他の領域内に残された薬剤量を含んでいない。また、DUSA装置の測定プロセスで『失われた』薬剤をカウントしていない。計量された投与量は、ブリスタから放出されたすべての薬剤量である。
【0168】
MSLIは、ドライパウダー組成物の深い肺までの投与を評価するための装置である。MSLIは、5ステージの直列的インパクターであるとともに、USP 26, Chapter 601 Apparatus 4 (2003)に基づいて、ドライパウダー吸入器(DPI)の粒径(空気力学的なサイズ分布)を決定するために使用することができる。
【0169】
ACIは、ドライパウダー組成物の深い肺への投与を評価するための他の装置である。ACIは、マルチステージの直列的インパクターであるとともに、USP 26, Chapter 601 Apparatus 3 (2003) に基づいて、ドライパウダー吸入器(DPI)の粒径(空気力学的なサイズ分布)を決定するために使用することができる。
【0170】
MSLI試験装置およびACI試験装置を使用することにより、特に、微粒の投与量すなわちFPD(薬剤の量、例えば単位をマイクログラムとしたような薬剤の量、これは、試験装置のうちの、深い肺への投与と関連する部分において測定される)と、微粒比率すなわちFPF(試験装置のうちの、深い肺への投与と関連する部分において測定された計量投与量の比率)と、を決定することができる。
【0171】
「実験例4:4mgのブリスタ内における、ステアリン酸マグネシウムを含有した3mgの組成物の調製」
ステアリン酸マグネシウムを含有した2mgの組成物は、以下の成分を以下の量で含有している。
成分 量(μg) 比率
クロバザム 3000 75.00
ラクトース 990 24.75
ステアリン酸マグネシウム 10 00.25
合計 4000 100
【0172】
この組成物は、実験例2に関して上述した方法によって調製した。ただし、相違点は、混合物に対して、クロバザムと一緒にステアリン酸マグネシウムが添加されたことである。
【0173】
「実験例5:5mgのブリスタ内における、ロイシンを含有した4mgの組成物の調製」
ロイシンを含有した4mgの組成物は、以下の成分を以下の量で含有している。
成分 量(μg) 比率
クロバザム 4000 80
ラクトース 920 18
微粉化されたロイシン 80 2
合計 5000 100
【0174】
この組成物は、実験例2に関して上述した方法によって調製した。ただし、相違点は、混合物に対して、クロバザムと一緒にロイシンが添加されたことである。
【0175】
図28は、好ましくは微粉化されたロイシンに関し、Malvern Instruments, Ltd. 社(英国、Malvern)によって製造された Mastersizer 2000を使用して行った粒径分析結果を示している。図示のように、実験された微粉化ロイシンは、6μmよりも小さな容積加重平均粒径を有している。
【0176】
「実験例6:キャリアなしの4mgの組成物の調製」
ロイシンを含有した4mgの組成物は、以下の成分を以下の量で含有している。
成分 量(μg) 比率
クロバザム 4000 99.9
微粉化されたロイシン 40.4 0.1
合計 4040.4 100
【0177】
実験例5に記載した2gのロイシンを、2g、実験例2に記載した198gのクロバザムパウダーと一緒に、Turbula ミキサー内において混合した。得られたパウダーを、ミリング手法を使用して凝集させた。パウダーからなる50gのサンプルを、スチール製グラインディングボールを使用して、約150mmという直径を有しているポーセレン製(磁器製)ボールミル(Pascall Engineering Company 社によって製造された)の中で微粉化した。その後、4040.4mgの微粉化パウダーを、49個のブリスタの各々の中へと収容した。
【0178】
「実験例7:共ジェットミリングされた組成物と、機械的に溶融された組成物(クロボザム)と、の比較」
[試験方法]
すべての材料は、Next Generation Impactor(NGI)によって評価された。試験の詳細は、各々の場合ごとに説明する。
【0179】
組成物は、以下のものを使用して処理された。
1)Hosokawa Micron 社による MechanoFusion AMS Mini system。このシステムは、1mmという圧縮ギャップをもたらす新規な回転子を備えて動作する。
2)Hosokawa Micron 社による AS50 spiral jet mill。
【0180】
生体外での試験を、動的な吸入装置であるAspirair(登録商標)装置を使用して、行った。
【0181】
組成物は、1つまたは複数の以下の構成要素から構成された。
ステアリン酸マグネシウム(標準グレード)
Micron Technologies 社によってジェットミリングされたL−ロイシン(Ajinomoto社)
Sorbolac 400 ラクトース
微粉化したクロボザム
微粉化したラクトース
再凝結させたロイシン(“Aerocine”)
【0182】
以下は、共ジェットミリングされた活性粒子と添加材料とからなる2成分システムと、機械的に溶融された活性粒子と添加材料とからなる2成分システムと、に関しての比較である。
【0183】
1.01gの微粉化クロボザムを計量し、その後、金属へらの丸い面を使用して、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この組成物は、『3A』として記録した。
【0184】
その後、9.37gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gの微粉化したL−ロイシンと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理し、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で処理した。この材料を、『4A』として記録した。混合後に、このパウダーを、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『4B』として記録した。
【0185】
9.57gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gのステアリン酸マグネシウムと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理し、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で処理した。この材料を、『5A』として記録した。混合後に、このパウダーを、一晩にわたって寝かせ、その後、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『5B』として記録した。
【0186】
9.5gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gの微粉化したL−ロイシンと組み合わせた。材料を、5分間にわたって、比較的遅い速度に対応した20%というパワー設定値で処理した。この処理は、構成要素どうしを良好に混合することのみを意図したものである。この材料を、『6A』として記録した。
【0187】
約7barという注入圧力に設定されかつ約5barというグラインディング圧力に設定されたAS50スパイラルジェットミル内へと、約1g/minでもって、6.09gの『6A』を供給した。得られた材料を回収し、『6B』として記録した。
【0188】
ミリングの後に、このパウダーを、一晩にわたって寝かせ、その後、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『6C』として記録した。
【0189】
9.5gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gのステアリン酸マグネシウムと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理した。この材料を、『7A』として記録した。
【0190】
約7barという注入圧力に設定されかつ約5barというグラインディング圧力に設定されたAS50スパイラルジェットミル内へと、約1g/minでもって、6.00gの『7A』を供給した。得られた材料を回収し、『7B』として記録した。ミリングの後に、このパウダーを、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『7C』として記録した。
【0191】
1バッチ分の再凝結させたロイシン(“アエロイシン(Aerocine)”とも称される)を調製した。この調製に際しては、チューブ炉内においてロイシンのサンプルを蒸気へと昇華させ、この蒸気を冷却しつつ、微粒分散したパウダーとして再凝結させる。このバッチを、『8A』として識別した。
【0192】
9.5gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gのアエロイシンと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理し、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で処理した。この材料を、『8B』として記録した。混合後に、このパウダーを、一晩にわたって寝かせ、その後、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『8C』として記録した。
【0193】
9.5gの微粉化したクロボザムを、機械的溶融システム内において、0.50gのアエロイシンと組み合わせた。材料を、5分間にわたって20%というパワー設定値で処理した。その後、このパウダーの7.00gを、約7barという注入圧力に設定されかつ約5barというグラインディング圧力に設定されたAS50スパイラルジェットミル内へと、供給した。得られた材料を回収し、『9A』として記録した。
【0194】
ミリングの後に、このパウダーを、へらを使用することによって、300μmの金属ふるいを通してゆっくりと押圧した。この材料を、『9B』として記録した。
【0195】
複数のフォイルブリスタを、約2mgの以下のクロボザム組成物によって充填した。
3A−ミリング無し、および、添加材料無し
4B−ロイシン、および、機械的溶融
5B−ステアリン酸マグネシウム、および、機械的溶融
6C−ロイシン、および、共ジェットミリング
7C−ステアリン酸マグネシウム、および、共ジェットミリング
8C−アエロイシン、および、共ジェットミリング
9B−アエロイシン、および、機械的溶融
【0196】
その後、これら組成物を、60l/mという流速でもってNGI内へと吸引装置を使用して吸引した。吸引装置は、各組成物に関し、2つの条件下で動作させた。すなわち、リザーバが、1.5barとされた15mlのエアを収容しているという条件下と、リザーバが、0.5barとされた30mlのエアを収容しているという条件下と、において動作させた。
【0197】
インパクターの試験結果を、表1,2,3に示す。
【0198】
【表4】
【0199】
【表5】
【0200】
【表6】
【0201】
これらの結果から、共ジェットミリング組成物が、活性ドライパウダー吸入装置を使用して投与された場合に、極めて優れたFPFを示すことがわかる。観察されたFPFは、機械的に溶融された組成物の場合と比較しても、また、添加材料を含有していない組成物の場合と比較しても、著しく良好である。この改良は、スロート部への堆積量の低減が大きな要因であると考えられる。すなわち、スロート部への堆積量は、共ジェットミリングの場合には8%よりも小さいものである。これに対して、薬剤だけの場合には、15%であり、また、機械溶融の場合には、最大で27%である。
【0202】
得られたFPFの再現性についても試験した。調製手法については上述したような主要な候補である6Cに関しての生体投与一様性について、30回の投与に関して、DUSAによって放出薬剤量を収集した。
【0203】
平均ED(放出薬剤量)は、1965μgであり、RSD(相対標準偏差)は、2.8%であった。したがって、この材料は、生体投与量に関して、優秀な再現性を示した。
【0204】
「実験例8:pMDI組成物の調製」
本発明によるさらなる組成物は、以下のようにして調製することができる。12.0gの例えばクロボザムといったような微粉化したベンゾジアゼピンと、4.0gのレシチンSPC−3(Lipoid GMBH 社)とを、ビーカー内において計量した。このパウダーを、蓋内における最大のポートに対して取り付けられている漏斗を介して、 Hosokawa AMS-MINI MechanoFusion system へと、装置を3.5%で動作させつつ、搬送した。ポートをシールし、冷却水を循環させた。設備を、5分間にわたって20%というパワー設定値で動作させ、その後、10分間にわたって50%というパワー設定値で動作させた。この装置を停止させ、分解し、そして、得られた組成物を回収した。
【0205】
[缶の調製]
缶内へと0.027gのパウダーを計量して投入し、缶に対して、50μlのバルブをクリンプし、さらに、缶内へと、12.2gのHFA 134aを充填した。
【0206】
「実験例9:受動装置内において使用するための機械溶融組成物の調製」
本発明によるさらなる組成物は、以下のようにして調製することができる。20%の例えばクロボザムといったような微粉化したベンゾジアゼピンと、78%の Sorbolac 400 ラクトースと、2%のステアリン酸マグネシウムと、を含有してなる20gの混合物を、計量して、蓋内における最大のポートに対して取り付けられた漏斗を介して、 Hosokawa AMS-MINI MechanoFusion system へと、装置を3.5%で動作させつつ、搬送した。ポートをシールし、冷却水を循環させた。設備を、5分間にわたって20%というパワー設定値で動作させ、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で動作させた。この装置を停止させ、分解し、そして、得られた組成物を機械的に回収した。
【0207】
「実験例10:受動装置内において使用するための2ステップでの機械溶融組成物の調製」
本発明によるさらなる組成物は、以下のようにして調製することができる。ステージ1においては、95%の例えばクロボザムといったような微粉化したベンゾジアゼピンと、5%のステアリン酸マグネシウムと、を含有してなる20gの混合物を、計量して、蓋内の最大のポートに対して取り付けた漏斗を介して、 Hosokawa AMS-MINI MechanoFusion system へと、装置を3.5%で動作させつつ、搬送した。ポートをシールし、冷却水を循環させた。設備を、5分間にわたって20%というパワー設定値で動作させ、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で動作させた。この装置を停止させ、分解し、そして、得られた組成物を機械的に回収した。ステージ2においては、99%の Sorbolac 400 ラクトースと、1%のステアリン酸マグネシウムと、を含有してなる20gの混合物を、計量して、蓋内における最大のポートに対して取り付けられた漏斗を介して、 Hosokawa AMS-MINI MechanoFusion system へと、装置を3.5%で動作させつつ、搬送した。ポートをシールし、冷却水を循環させた。設備を、5分間にわたって20%というパワー設定値で動作させ、その後、10分間にわたって80%というパワー設定値で動作させた。この装置を停止させ、分解し、そして、得られた組成物を機械的に回収した。その後、ステージ2に基づく16gのパウダーと、ステージ1に基づく4gのパウダーとを、小さな高剪断力のブレンダー内において組み合わせ、10分間にわたって混合させ、これにより、組成物を得る。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1A】本発明の一実施形態による吸入器およびブリスタを示す図とされている。
【図1B】本発明の一実施形態による吸入器およびブリスタを示す図とされている。
【図2】渦流ノズル(1)を示す平断面図とされている。
【図3】本発明の一実施形態による渦流チャンバを示す側断面図とされている。
【図4】図3の渦流チャンバにおけるB−B線に沿った矢視断面図とされている。
【図5A】円形の入口ポートを有した渦流チャンバを示す側面図とされている。
【図5B】図5Aの渦流チャンバにおけるD−D線に沿った矢視断面図とされている。
【図6A】矩形の入口ポートを有した渦流チャンバを示す側面図とされている。
【図6B】図6Aの渦流チャンバにおけるE−E線に沿った矢視断面図とされている。
【図7】円弧状の入口ポートを有した渦流チャンバを示す図とされている。
【図8】本発明による吸入器の出口ポートに関する様々な実施形態を詳細に示す図とされている。
【図9】本発明による吸入器の出口ポートに関する様々な実施形態を詳細に示す図とされている。
【図10】本発明による吸入器の出口ポートに関する様々な実施形態を詳細に示す図とされている。
【図11】本発明による吸入器の出口ポートに関する様々な実施形態を詳細に示す図とされている。
【図12】本発明の一実施形態による非対称な渦流チャンバを示す図とされている。
【図13】本発明の一実施形態による他の非対称な吸入器における渦流チャンバを示す断面図とされている。
【図14】図13の渦流チャンバを示す斜視図とされている。
【図15】図14の渦流チャンバを示す断面図とされている。
【図16】図14および図15の渦流チャンバの一部を詳細に示す斜視図とされている。
【図17】図16の一部を示す平面図とされている。
【図18】図17の一部に関する変形実験例を示す平面図とされている。
【図19】図13〜図18の実施形態による渦流チャンバにおいて、壁とベースとの間のインターフェイスに関する様々な変形実験例を示す図とされている。
【図20】図13〜図18の実施形態による渦流チャンバにおいて、壁とベースとの間のインターフェイスに関する様々な変形実験例を示す図とされている。
【図21】図13〜図18の実施形態による渦流チャンバにおいて、壁とベースとの間のインターフェイスに関する様々な変形実験例を示す図とされている。
【図22A】実験実験例1におけるラクトースの粒径分布を示す図とされている。
【図22B】実験実験例1におけるラクトースの粒径分布を示す図とされている。
【図23】吸入試験を行うに際して使用された吸入器の試作品を示す斜視図とされている。
【図24】図23の吸入器を示す図とされているとともに、カバーを取り外した状態で図示がなされており、これにより、呼吸駆動機構と渦流ノズルとを示している。
【図25】図24におけるA−A線に沿って、渦流ノズルを縦断して示す断面図とされている。
【図26A】図24におけるB−B線に沿った断面図であって、閉塞状態とされたノズルバルブを示している。
【図26B】図24におけるB−B線に沿った断面図であって、開放状態とされたノズルバルブを示している。
【図27A】図24におけるB−B線に沿った断面図であって、閉塞状態とされたノズルバルブを示している。
【図27B】図24におけるB−B線に沿った断面図であって、開放状態とされたノズルバルブを示している。
【図28】好ましい態様で微粉化されたロイシンに関する粒径分析結果を示す図とされている。
【符号の説明】
【0209】
1 渦流チャンバ
2 出口ポート
3 入口ポート
10 マウスピース
60 ブリスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物であって、
ベンゾジアゼピンを含有しており、
肺による吸入によって投与し得るよう、ドライパウダーとされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1記載の薬学的組成物において、
ベンゾジアゼピンが、ベンゾジアゼピンからなる自由な塩基または薬学的に許容可能な塩のいずれかの形態とされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の薬学的組成物において、
ベンゾジアゼピンが、クロバザムまたはクロナゼパムとされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、少なくとも50%といったような、好ましくは70〜99%といったようなまたは80〜99%といったような、微細粒子比率(<5μm)を有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、50%〜90%といったような、好ましくは60〜70%といったような、微細粒子比率を有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
ベンゾジアゼピン粒子と、力制御薬剤と、を含有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項7】
請求項6記載の薬学的組成物において、
前記力制御薬剤が、アミノ酸またはペプチド、あるいは、それらの派生物、あるいは、リン脂質、あるいは、金属ステアリン酸塩、とされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項8】
請求項7記載の薬学的組成物において、
前記力制御薬剤が、ロイシン、リジン、システイン、あるいは、これらの混合物、とされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項9】
請求項6記載の薬学的組成物において、
前記力制御薬剤が、最大でも50%w/wという含有量でもって、好ましくは、10%w/wよりも小さな含有量でもって、より好ましくは5%w/wよりも小さな含有量でもって、含有されていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、10μmよりも小さなMMADを有したベンゾジアゼピン粒子を含有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項11】
請求項10記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、2〜5μmといったようなあるいは2μmよりも小さなMMADを有したベンゾジアゼピン粒子を含有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、キャリア粒子を含有し、
好ましくは、このキャリア粒子が、少なくとも20μmという粒径を有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
治療に使用することを特徴とする薬学的組成物。
【請求項14】
請求項13記載の薬学的組成物において、
発作の治療に際して使用することを特徴とする薬学的組成物。
【請求項15】
請求項13記載の薬学的組成物において、
前記発作が、部分的に反復的なもの、あるいは、急性の反復的なもの、とされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項16】
請求項13記載の薬学的組成物において、
急性パニック障害の治療に際して使用することを特徴とする薬学的組成物。
【請求項17】
請求項13記載の薬学的組成物において、
鎮静剤としてまたは事前薬剤として使用することを特徴とする薬学的組成物。
【請求項18】
発作を治療するための方法であって、
発作の治療が必要とされた患者に対して、請求項1〜12のいずれか1項に記載された薬学的組成物を、治療効果を有した分量だけ投与することを特徴とする方法。
【請求項19】
急性パニック障害を治療するための方法であって、
急性パニック障害の治療が必要とされた患者に対して、請求項1〜12のいずれか1項に記載された薬学的組成物を、治療効果を有した分量だけ投与することを特徴とする方法。
【請求項20】
患者を鎮静化させるあるいは患者に対して事前投薬するための方法であって、
鎮静化させるあるいは事前投薬することが必要とされた患者に対して、請求項1〜12のいずれか1項に記載された薬学的組成物を、治療効果を有した分量だけ投与することを特徴とする方法。
【請求項1】
薬学的組成物であって、
ベンゾジアゼピンを含有しており、
肺による吸入によって投与し得るよう、ドライパウダーとされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1記載の薬学的組成物において、
ベンゾジアゼピンが、ベンゾジアゼピンからなる自由な塩基または薬学的に許容可能な塩のいずれかの形態とされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の薬学的組成物において、
ベンゾジアゼピンが、クロバザムまたはクロナゼパムとされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、少なくとも50%といったような、好ましくは70〜99%といったようなまたは80〜99%といったような、微細粒子比率(<5μm)を有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、50%〜90%といったような、好ましくは60〜70%といったような、微細粒子比率を有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
ベンゾジアゼピン粒子と、力制御薬剤と、を含有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項7】
請求項6記載の薬学的組成物において、
前記力制御薬剤が、アミノ酸またはペプチド、あるいは、それらの派生物、あるいは、リン脂質、あるいは、金属ステアリン酸塩、とされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項8】
請求項7記載の薬学的組成物において、
前記力制御薬剤が、ロイシン、リジン、システイン、あるいは、これらの混合物、とされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項9】
請求項6記載の薬学的組成物において、
前記力制御薬剤が、最大でも50%w/wという含有量でもって、好ましくは、10%w/wよりも小さな含有量でもって、より好ましくは5%w/wよりも小さな含有量でもって、含有されていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、10μmよりも小さなMMADを有したベンゾジアゼピン粒子を含有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項11】
請求項10記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、2〜5μmといったようなあるいは2μmよりも小さなMMADを有したベンゾジアゼピン粒子を含有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
前記組成物が、キャリア粒子を含有し、
好ましくは、このキャリア粒子が、少なくとも20μmという粒径を有していることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の薬学的組成物において、
治療に使用することを特徴とする薬学的組成物。
【請求項14】
請求項13記載の薬学的組成物において、
発作の治療に際して使用することを特徴とする薬学的組成物。
【請求項15】
請求項13記載の薬学的組成物において、
前記発作が、部分的に反復的なもの、あるいは、急性の反復的なもの、とされていることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項16】
請求項13記載の薬学的組成物において、
急性パニック障害の治療に際して使用することを特徴とする薬学的組成物。
【請求項17】
請求項13記載の薬学的組成物において、
鎮静剤としてまたは事前薬剤として使用することを特徴とする薬学的組成物。
【請求項18】
発作を治療するための方法であって、
発作の治療が必要とされた患者に対して、請求項1〜12のいずれか1項に記載された薬学的組成物を、治療効果を有した分量だけ投与することを特徴とする方法。
【請求項19】
急性パニック障害を治療するための方法であって、
急性パニック障害の治療が必要とされた患者に対して、請求項1〜12のいずれか1項に記載された薬学的組成物を、治療効果を有した分量だけ投与することを特徴とする方法。
【請求項20】
患者を鎮静化させるあるいは患者に対して事前投薬するための方法であって、
鎮静化させるあるいは事前投薬することが必要とされた患者に対して、請求項1〜12のいずれか1項に記載された薬学的組成物を、治療効果を有した分量だけ投与することを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26(a)】
【図26(b)】
【図27(a)】
【図27(b)】
【図28】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26(a)】
【図26(b)】
【図27(a)】
【図27(b)】
【図28】
【公表番号】特表2007−505832(P2007−505832A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525904(P2006−525904)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003942
【国際公開番号】WO2005/025541
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(504085521)ベクトゥラ・リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003942
【国際公開番号】WO2005/025541
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(504085521)ベクトゥラ・リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
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