説明

肺癌治療剤

【課題】 ヒトASH1 mRNAを特異的に分解するsiRNA(small interfering RNA)を利用して肺癌の増殖を抑制する医薬組成物を提供する。
【解決手段】 神経内分泌分化を示す肺癌の増殖を抑制するための医薬組成物であって、ヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNA配列からの連続する19〜25ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含むsiRNAをコードするDNA配列をプロモーターの調節下に含む発現ベクターを、医薬上許容可能な担体と組み合わせて含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経内分泌分化を制御するbasic−HLH(elix−oop−elix)型の転写因子ASH1(achaete−scute complex−like 1 (ASCL1とも称する))の遺伝子を、肺癌治療の分子標的とすることに関する。具体的には、本発明は、ヒトASH1 mRNAを特異的に分解するsiRNA(small interfering RNA)を利用して肺癌の増殖を抑制するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肺癌は小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分類され、肺癌の中で特に悪性度が高いと認められている小細胞肺癌は神経内分泌分化という特殊な分化傾向をもつことが知られている。小細胞肺癌は進行性が高く、通常、診断の時点で散在性を示す。この癌は最初、化学療法に反応性であるが、殆どの場合やがて耐性型に戻るため、5年生存率は5%を下回る。小細胞肺癌は進行性挙動と劣悪な治療結果のために、その全身治療に対する新しい治療方法が高く求められている。一方、非小細胞肺癌は神経内分泌分化を示すことは少ないが、非小細胞肺癌のなかでも大細胞肺癌はこの神経内分泌分化を示すことが比較的多く、そのような癌はやはり予後不良とされる。又、大細胞肺癌以外の非小細胞肺癌も神経内分泌分化傾向を示すことが少数ながら認められ、やはり予後不良とされる。したがって、この神経内分泌分化が肺癌の悪性度と関連している可能性が強く示唆される。
【0003】
神経内分泌分化の誘導は神経細胞系の分化と相似し、特殊なASH1の関与がショウジョウバエ、マウス等の種を用いて基礎的研究から解明されてきている。上記の神経内分泌分化を有する肺癌ではASH1の発現が亢進していることが知られている(D.W. Ball et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993), 90:5648−5652 (非特許文献1); H. Chen et al., Cell Growth & Differentiation (1997), 8:677−686(非特許文献2))。これに対して、非小細胞肺癌やヒト成人正常組織ではヒトASH1転写体が検出されないことが示されている(B.A. Westerman et al., Clin. Cancer Res. (2002), 8:1082−1086(非特許文献3))。
【0004】
ASH1の遺伝子破壊により、気道上皮の神経内分泌細胞が消失することから、ASH1は特に気道上皮における神経内分泌分化に重要な役割を果たしている可能性が指摘されている(R.I. Linnoila et al., Cancer Research (2000), 60:4005−4009(非特許文献4))。トランスジェニックマウスの実験では、ASH1トランスジーンは、単独では癌を発症させないが、SV40−largeT トランスジェニックマウスと掛け合わせることで、癌遺伝子SV40−largeTの造腫瘍能を増強し、神経内分泌腫瘍を発生させる。また、前立腺神経内分泌癌細胞系でマウスASH1(mASH1)発現をRNA干渉(RNAi)法によってノックダウンすることによって、mASH1のDNA結合部位と、神経内分泌細胞増殖、分化及び生存を調節するシグナル伝達ネットワークの成分が提案されている(Y. Hu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2004), 101:5559−5564(非特許文献5))。さらに、ASH1は甲状腺癌でも見出されている(R.S. Sippel et al., Surgery (2003), 134:866−871(非特許文献6))。
【0005】
RNAiは、二本鎖RNA(dsRNA)によってその配列特異的にmRNAが分解されて遺伝子の発現が抑制される現象をいう(多比良和誠ら、実験医学(2004)22巻4号450−500頁(非特許文献7))。dsRNAが細胞内のダイサー(Dicer)によってプロセシングされた約21塩基のsiRNAは、RNA−ヌクレアーゼ複合体の形成を誘導し、そのsiRNA配列に相補的な配列をもつmRNAを選択的に分解する(S.M. Hammond et al., Nature (2000), 404:293−296(非特許文献8))。RNAiは線虫、ショウジョウバエ、植物など多くの真核生物で確認されており、またsiRNA oligoを細胞内導入することで哺乳類細胞でもRNAi効果が得られることが知られている。さらにまた、U6 プロモーター等の特殊なプロモーターをもつベクターにshort hairpin oligoを挿入し、short hairpin RNAを発現させることでも同様にRNAiが誘導されることが報告されている。RNAiの医療への応用のための基礎研究が急速に進行しており、そのターゲットとしてウイルス性疾患、癌、遺伝性疾患などに注目が集まっている(多比良和誠ら、実験医学(2004)上記;米国特許出願公開第2004/0180357号(特許文献1);米国特許出願公開第2004/0181821号(特許文献2))。
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0180357号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0181821号
【非特許文献1】D.W. Ball et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993), 90:5648−5652
【非特許文献2】H. Chen et al., Cell Growth & Differentiation (1997), 8:677−686
【非特許文献3】B.A. Westerman et al., Clin. Cancer Res. (2002), 8:1082−1086
【非特許文献4】R.I. Linnoila et al., Cancer Research (2000), 60:4005−4009
【非特許文献5】Y. Hu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2004), 101:5559−5564
【非特許文献6】R.S. Sippel et al., Surgery (2003), 134:866−871
【非特許文献7】多比良和誠ら、実験医学(2004)22巻4号450−500頁
【非特許文献8】S.M. Hammond et al., Nature (2000), 404:293−296
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ASH1が、マウスによる実験により神経内分泌分化を有する肺癌でASH1の発現が亢進していることは知られていた。しかし、ASH1の発現を抑えるとき肺癌の増殖が抑制されうるという知見は報告されていない。
【0008】
本発明の目的は、神経内分泌分化を示す肺癌の増殖をRNAi法を利用して抑制するための医薬組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、上記肺癌の増殖を抑制するsiRNA、該siRNAをコードするDNA、及び該siRNAを発現するベクターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ヒトASH1に対するRNAiで使用可能なベクターを作製し、それらがヒトASH1の発現を非常に強く抑制することを見出した。また、この増殖抑制はin vitroの培養細胞の実験だけでなく、アデノウイルス−RNAiベクターを用いて、ヒト肺癌を移植した担癌マウスでのin vivo治療実験という、より臨床の癌治療に近いところで実験を行い、同様に肺癌の増殖を抑制し得ることを確認し、本発明を完成させた。本発明により、ヒトASH1がヒト肺癌治療において特異性の高い分子標的となり得ることが示された。
【0011】
本発明は以下の特徴を有する。
即ち、本発明は、第1の態様において、神経内分泌分化を示す肺癌の増殖を抑制するための医薬組成物であって、ヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNA配列からの連続する19〜25ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含むsiRNA又はその前駆体をコードするDNA配列をプロモーターの調節下に含む発現ベクターを、医薬上許容可能な担体と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0012】
前記DNA配列の1つの例は、ヘアピン型RNAをコードするDNA配列を含むものである。ここで、前記DNA配列はヘアピン型RNAをコードする配列を含み、該ヘアピン型RNAが前記センス鎖配列、前記アンチセンス鎖配列、及び前記センス鎖配列と前記アンチセンス鎖配列との間を共有結合によって結合する一本鎖ループ配列を含み、該ヘアピン型RNAが細胞内RNアーゼであるDicerによってプロセシングされてsiRNAが形成されるものである。
【0013】
本発明において、前記DNA配列は、オーバーハングとして又は転写停止配列としてその3'末端にポリT配列を含むことが好ましい。前記ポリT配列は、1〜6個、好ましくは1〜5個であり、転写停止シグナル配列として4〜5個のチミジン(T)が連結されることが好ましい。
【0014】
前記DNA配列の別の例は、タンデム型配列を含むものであり、ここで該タンデム型配列が前記センス鎖をコードするDNA配列と前記アンチセンス鎖をコードするDNA配列とを5'→3'方向に連続して含み、各鎖の5'末端にプロモーターが、また各鎖の3'末端にポリT配列がそれぞれ連結された配列からなり、細胞内で転写後、センスRNAとアンチセンスRNAとがハイブリダイズしてsiRNAを形成するものである。ここでポリT配列は上記と同義である。
【0015】
本発明の実施形態において、前記ヒトASH1 mRNAは、配列番号1に示されるヒトASH1核酸配列によってコードされる配列を含む。即ち、前記RNA配列は、前記核酸配列において、すべてのTをウラシル(U)に読み替えた配列に相当する。
【0016】
本発明の実施形態において、前記ヘアピン型RNAをコードするDNA配列の例は、配列番号2又は配列番号3に示される配列を含むものである。
【0017】
本発明の別の実施形態において、前記タンデム型DNA配列の例は、配列番号4に示される配列を含むものである。
【0018】
前記発現ベクターの例は、プラスミド又はウイルスベクターである。プラスミドの例は、pU6-siASH1L1−puro又はpU6-siASH1L2−puroである(図12)。またウイルスベクターの例は、ASH1−RNAi−adenovirusである(図13)。
【0019】
前記プラスミドは、遺伝子導入の際に、リポフェクタミン、リポフェクチン、セルフェクチン及びその他の正電荷リポソームから選択されるリポソームと複合体形成されるのが好ましい。
【0020】
前記ウイルスベクターの例は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターである。
前記プロモーターの例は、哺乳類、特にマウス又はヒトU6又はH1プロモーターである。
【0021】
本発明はまた、第2の態様において、ヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNA配列からの連続する19〜25ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含むsiRNA又はその前駆体をコードするDNAを提供する。
【0022】
前記DNAの例は、ヘアピン型RNAをコードする配列を含むDNAであり、ここでヘアピン型RNAは前記センス鎖配列、前記アンチセンス鎖配列、及び前記センス鎖配列と前記アンチセンス鎖配列との間を共有結合によって結合する一本鎖ループ配列からなり、該ヘアピン型RNAが細胞内RNアーゼであるDicerによってプロセシングされてsiRNAが形成されるものである。好ましくは、ヘアピン型RNAはその3'末端にポリU配列を含む。
【0023】
前記DNAの別の例は、タンデム型DNA配列を含むものであり、ここで該タンデム型配列が前記センス鎖をコードするDNA配列と前記アンチセンス鎖をコードするDNA配列とを5'→3'方向に連続して含み、各鎖の5'末端にプロモーターが、また各鎖の3'末端にポリT配列がそれぞれ連結された配列からなり、細胞内で転写後、センスRNAとアンチセンスRNAとがハイブリダイズしてsiRNAを形成するようなものである。
前記ヒトASH1 mRNAの特定の例は、配列番号1に示されるヒトASH1 核酸配列によってコードされる配列を含むものである。
【0024】
本発明のDNAの例は、配列番号2〜4に示されるいずれかの配列を含むものである。
本発明はさらに、第3の態様において、上に定義のDNAによってコードされるsiRNA又はその前駆体を提供する。
【0025】
本発明の実施形態により、配列番号1に示される核酸配列によってコードされるヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNA配列からの連続する19〜25ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含むsiRNAを提供する。特に制限はされないが、本発明のsiRNAの例は、配列番号5に示されるセンス鎖配列を含む下記の二本鎖RNA配列である。
GCCCAAGCAAGUCAAGCGACAG (センス鎖)
CGGGUUCGUUCAGUUCGCUGUC (アンチセンス鎖)
【0026】
本発明はさらにまた、第4の態様において、上に定義のDNAをプロモーターの調節下に含むベクターを提供する。プロモーターの例は、哺乳類、特にマウス又はヒトU6又はH1プロモーターである。
【0027】
ベクターの特定の例は、pU6-siASH1L1−puro、pU6-siASH1L2−puro又はASH1−RNAi−adenovirus(図12及び図13)である。
【0028】
本発明のベクターは、癌の増殖抑制のために使用することができる。癌の例は、肺癌、甲状腺癌又は前立腺癌である。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、神経内分泌分化を示すヒト肺癌においてヒトASH1の発現レベルが強く抑制されること、及び肺癌の増殖がin vivoで腫瘍特異的に抑制されることから、本発明はヒト肺癌の治療に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、神経内分泌分化を示す、或いは神経内分泌型の、ヒト肺癌を治療するために有効である。本発明の標的である肺癌の例は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌に分類される大細胞肺癌、などである。これらの肺癌では、ASH1の発現が異常亢進しており、一般に悪性度が高く予後が不良であることが特徴である。
【0031】
ASH1は、basic−helix−loop−helix型の転写因子であり、ゲノムDNAのEボックス(5'-CANNTG-3')に結合することによって転写を活性化する。ヒトASH1遺伝子はヒト12番染色体12q22−q23に位置し、その核酸配列は配列番号1に示される1635ヌクレオチドからなる。433〜1149番目に転写因子活性が存在し、また796〜948番目にbasic helix−loop−helixドメインが存在する。
【0032】
本発明によれば、特にヒト肺癌細胞内のASH1の発現を強く抑制し、その結果癌細胞の増殖を抑制する。また、肺癌に加えて、ASH1の存在が確認される前立腺癌、甲状腺癌を含むヒト神経内分泌型癌に対しても同様の増殖抑制を示すことが期待される。
【0033】
本発明によれば、ヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNAを分解するのに有効なsiRNAを、癌の増殖抑制のために使用することによって特徴付けられる。siRNAは、ヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNAの部分配列と相同の配列をもつセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列を含む二本鎖RNAである。本明細書中で使用されるsiRNAの「前駆体」は、センス鎖とアンチセンス鎖の各配列を含み、細胞内でsiRNAに変換される。センス及びアンチセンスの各鎖を構成するヌクレオチド数は、約18〜27であり、好ましくは約19〜25、さらに好ましくは20〜23である。細胞内に導入された、又は細胞内でその前駆体から形成された、siRNAは、RNA-ヌクレアーゼ複合体(RNA induced scilencing complex: RISC)の形成を誘導し、それによってヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNAが選択的に分解され、ASH1の発現が阻止又は抑制される。
【0034】
したがって、本発明のsiRNAは、ヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNA配列からの連続する19〜25ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含む。
【0035】
本明細書中で使用する「選択的スプライス型RNA」とは、転写によって形成されたmRNA前駆体が成熟mRNAにスプライシングされるときに、通常のスプライス部位と異なる部位での切断の結果生じるmRNAを意味する。本発明では、このような選択的スプライス型RNAを、通常の配列を有するヒトASH1 mRNAと区別している。
【0036】
本発明の実施形態によれば、ヒトASH1 mRNAは、配列番号1に示される核酸配列によってコードされるRNA配列である。即ち、該RNA配列は、該核酸配列中のすべてのTがUに読み替えられた配列に相当する。このRNA又は核酸配列から可能なsiRNA配列を決定する。該mRNAのターゲットサイトの選択のために公知の知識を使用することができる。例えば、(a)GC含量が約30〜約70%、好ましくは約50%である、(b)すべての塩基が均等であり、またGが連続していない、(c)アンチセンス鎖の5'末端の塩基がA、Uである、などの基準が参考になろう(D.M. Dykxhoorn et al., Nature Rev. Mol. Cell Biol. (2003), 77:7174−7181; A. Khvorova et al., Cell (2003), 115:209−216)。また、標的候補のmRNA配列部位とマイクロRNAの結合程度をRNA二次構造予測プログラムであるmfoldを用いて候補遺伝子を推定することもできる(J.A. Jaeger et al., Methods in Enzymology (1989), 183:281−306;D.H.Mathews et al.,J.Mol.Biol.(1999),288:911−940)。この二次構造予測において、ヒトASH1 mRNA構造のなかで常に同じ構造でかつ開放されている構造部分を選択した。本発明における選択されたsiRNAの特定のセンス鎖配列の例は、配列番号5に示される配列である。また本発明の別の可能なsiRNAのセンス鎖配列の例(ただし、DNAで示す。)は下記のものである。これらのセンス鎖配列(T→U)とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列を含むsiRNAのいずれも本発明に包含される。
【0037】
GGCCAACAAGAAGATGAGTAAG (配列番号6)
GCTGCAGCAGCTGCTGGACGAG (配列番号7)
CCGCGTCAAGTTGGTCAACCTG (配列番号8)
GCTCGCCGGTCTCATCCTACTC (配列番号9)
CAGCGCTCGTCTTCGCCCGAAC (配列番号10)
CGCGCTGCAGCAGCTGCTGGAC (配列番号11)
TGGTCAACCTGGGCTTTGCCAC (配列番号12)
CTCCAACGACTTGAACTCCATG (配列番号13)
GTCAGCGCCCAAGCAAGTCAAG (配列番号14)
CCGGCTCAACTTCAGCGGCTTT (配列番号15)
CACAAGTCAGCGCCCAAGCAAG (配列番号16)
TGGCTACAGCCTGCCGCAGCAG (配列番号17)
AGGAGCTTCTCGACTTCACCAA (配列番号18)
CGCGCAGCAGCAGCAGCAGCAG (配列番号19)
CGCCGGTCTCATCCTACTCGTC (配列番号20)
CCGCAACGAGCGCGAGCGCAAC (配列番号21)
CGGCTCGCCGGTCTCATCCTAC (配列番号22)
CGCCCGCAGCCTGTTTCTTTGC (配列番号23)
CCGCCCGCAGCCTGTTTCTTTG (配列番号24)
【0038】
本発明ではさらに、選択されたsiRNA配列について、標的mRNAの切断を可能にするかぎり、そのセンス鎖配列に1〜3個、好ましくは1〜2個までの変異を含むことができる。変異は、もしあれば、5'側にあるのが好ましく、中央から3'側での変異は失活の原因となりやすい。変異の例は、ヌクレオチドの置換、付加又は欠失を含む。あるいは、天然型の配列との相同率が85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であるような変異である。変異の導入は、例えば慣用の部位特異的突然変異法を使用することができる。
【0039】
選択されたsiRNAは、臨床使用の際にいわゆるoff−target効果を示さないことが望ましい。off−target効果とは、標的遺伝子以外に、使用したsiRNAに部分的にホモロジーのある別の遺伝子の発現を抑制する作用をいう。off−target効果を避けるために、候補siRNAについて、予めジーンチップなどを利用して交差反応がないことを確認するのがよい。
【0040】
本発明のsiRNAを生体内で使用するときには、siRNAを直接患部に注入するか、或いはsiRNAの発現が可能なベクターを使用することが好ましい。
siRNAを直接患部に注入する場合には、それらをリポソーム、たとえばリポフェクタミン、リポフェクチン、セルフェクチン及びその他の正電荷リポソームと複合体形成して注入することもできる。
【0041】
本発明で使用可能なヘアピン型RNAは、前記センス鎖配列、前記アンチセンス鎖配列、及び前記センス鎖配列と前記アンチセンス鎖配列との間を共有結合によって結合する一本鎖ループ配列を含むものであり、細胞内RNアーゼであるDicerによってプロセシングされてsiRNAが形成されるRNAである。siRNAをコードするヘアピン型DNAの3'末端には、転写停止シグナル配列として、或いはオーバーハングのために、1〜6個、好ましくは1〜5個のTからなるポリT配列、たとえば4個又は5個のTからなるTTTT又はTTTTTが連結される。ベクターDNAから転写されたsiRNA前駆体としてのshort hairpin RNA(shRNA)は、そのアンチセンス鎖の3'末端に2〜4個のUからなるオーバーハングを有することが望ましく(図1)、オーバーハングの存在によって、センスRNA及びアンチセンスRNAはヌクレアーゼによる分解に対して安定性を増すことができる。ヒトには内在性のDicerが1つ存在し、これが長鎖dsRNAや前駆体マイクロRNA(miRNA)をそれぞれsiRNAと成熟miRNAに変換する役割をもつ。本発明における前記ループ配列の例は、5'-CUUCCUGUCA-3'又は5'-UUCCAG-3'であるが、これらに限定されず公知のループ配列も使用できる。
【0042】
本発明の別のDNAの例は、タンデム型DNAであり、これは前記センス鎖をコードするDNA配列と前記アンチセンス鎖をコードするDNA配列とを5'→3'方向に連続して含み、各鎖の5'末端にプロモーターが、また各鎖の3'末端にポリT配列がそれぞれ連結された配列からなり、細胞内で転写後、同時に生成したセンスRNAとアンチセンスRNAとが一緒にハイブリダイズしてsiRNAを形成するようなDNAである。ポリT配列は、上記と同様に、転写停止シグナル配列としての1〜5個、特に4〜5個のTからなることが好ましい。また、ヘアピン型と同様に、生成するsiRNAは、センス及び/又はアンチセンス鎖の3'末端に2〜4個のUからなるオーバーハングを有していてもよい。
【0043】
本発明のDNAの特定例は、配列番号2〜4に示されるような配列を含む次のようなDNAである。
(a)5'-CCCAAGCAAGTCAAGCGACAGTTCCAGCTGTCGCTTGACTTGCTTGGGCTTTTT-3'(配列番号2)
(b)5'-CCCAAGCAAGTCAAGCGACAGCTTCCTGTCACTGTCGCTTGACTTGCTTGGGCTTTTT-3'(配列番号3)
(c)5'-(マウスU6プロモーター配列)-CCCAAGCAAGTCAAGCGACAGTTTTT-(マウスU6プロモーター配列)-CTGTCGCTTGACTTGCTTGGGCTTTTT-3'(配列番号4)
(下線はセンス又はアンチセンス鎖配列を示す。なお、配列番号4の配列中、1〜315及び342〜656は共にマウスU6プロモーター配列、316〜336はセンス鎖配列、657〜678はアンチセンス鎖配列、337〜341及び679〜683はともに転写停止シグナル配列であり、またベクターの合成の際には、プロモーター配列とセンス又はアンチセンス鎖配列との境界、或いは、プロモーター配列の5'末端、には制限部位を付加又は挿入することもできる。)
【0044】
また、本発明の上記定義のDNAにおいて、配列番号6〜24の各々のセンス配列が配列番号5のセンス配列と置換されたようなDNAも、本発明に包含される。
【0045】
本発明のDNAは、化学的に又は組換え的に周知の方法で合成することができる。ヌクレオチド数を考慮すると、慣用のDNA/RNA自動合成装置を使用して化学的に合成するのがよい。あるいは、siRNA関連の受託合成会社(たとえばフナコシ株式会社、Dharmacon社、Ambion社など)に合成を依頼することも可能である。
【0046】
本発明のDNAは、実際にベクター中に組み込まれ、適当なプロモーターの調節下でRNAに転写される。本発明で使用されるベクターには、プラスミド及びウイルスベクターが含まれる。
【0047】
プロモーターとしてpolIIIプロモーター、たとえばヒトもしくはマウスU6プロモーター及びH1プロモーター、及びサイトメガロウイルスプロモーターを使用することができる。
【0048】
プラスミドベクターは、後述の実施例に記載の手法又は文献記載の方法を用いて調製してもよいし、或いは市販のベクター系、たとえばpiGENETMU6系ベクター及びpiGENETMH1系ベクター(タカラバイオ株式会社)を利用することもできる(T.R. Brummelkamp et al., Science (2002), 296:550−553; N.S. Lee et al., Nature Biotech. (2002), 20:500−505;M. Miyagishi and K. Taira, Nat. Biotechnol. (2002), 20:497−500; P.J. Paddison et al., Genes & Dev. (2002), 16:948−958; T. Tusch, Nature Biotech (2002), 20:446−448; C.P. Paul et al., Nature Biotech.(2002), 20:505−508; 多比良和誠ら編、RNAi実験プロトコール、羊土社、2003年)。
【0049】
具体的には、pIRES−puro2 (clontech社)からIRES領域を含む不要な部分をHindIIIにて切断し、self−ligationさせて、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターから直接ピューロマイシン耐性遺伝子を発現するpCMV−puroベクターを作製し、このpCMV−puroのNruI−BglII 部位(CMVプロモーターの5’上流部位)に、オリゴ挿入部位として制限酵素ApaI及びEcoRI切断部位を3'にもつU6プロモーターを挿入する。この手法によって、U6プロモーターから細胞内でsiRNAになるshort hairpin RNA(shRNA)を発現し、同時にピューロマイシン耐性遺伝子を発現することができるプラスミドベクター、pU6−siASH1L1−puro又はpU6−siASH1L2−puroを得ることができる。
【0050】
プラスミドベクターは一般に、本発明のsiRNAをコードするDNA配列及びプロモーターの他に、薬剤耐性遺伝子(たとえばピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子)、転写停止配列、ユニーク制限部位もしくはマルチプルクローニングサイト、複製開始点、シャイン−ダルガルノ配列などを含むことができる。
【0051】
一方、ウイルスベクターは、たとえばアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター(白血病ウイルスベクターなど)、ヘルペスウイルスベクターなどを使用することができる。ウイルスベクターは、ヒトに使用する際に疾病を引き起こさないように例えば自己複製能を欠損したタイプのものが好ましい。たとえばアデノウイルスベクターの場合には、E1遺伝子及びE3遺伝子を欠失した自己複製能欠損型アデノウイルスベクター(例えばInvitrogen社のpAdeno−X)を使用することができる。ウイルスベクターの構築方法には、後述の実施例に記載の手法及び文献記載の方法を利用することができる(米国特許第5252479号、国際公開WO94/13788など)。
【0052】
具体的には、CMVプロモーターを含むAdeno−X 発現系を使用して目的のベクターを構築することができる。pShuttle2のCMV−MCS(multiple cloning sites)−polyA部位を切除し、上記例示のASH1−RNAiプラスミドベクターのASH1−shRNAを含むBamHI−EcoRV断片を挿入し、RNAi用のシャトルベクターに改変した後、制限酵素I−CeuI及びPI−Sce−Iで切断後、Adeno−XウイルスDNAと結合し、ASH1-RNAi-アデノウイルスベクターを得ることができる。このベクターDNAを、通常のアデノウイルス産生用細胞HEK293に遺伝子導入し、生じたプラークの中から、Northern blotで十分なASH1−siRNAの発現を認めたクローンを選択する。
【0053】
上記のようにして作製されたベクターは、神経内分泌分化を示すヒト癌、たとえば肺癌、前立腺癌及び甲状腺癌、好ましくは肺癌の治療のために使用することができる。
【0054】
プラスミドベクターは、リポフェクタミン、リポフェクチン、セルフェクチン及びその他の正電荷リポソームから選択されるリポソームと複合体を形成しカプセル化された状態で患部に直接注入することができる(中西守ら、蛋白質 核酸 酵素(1999)、44:1590−1596)。正電荷リポソームによる遺伝子導入では、DNAが細胞内にエンドサイトーシスされたのち、エンドソームと核膜との融合が起こり、ベクターが核へ移行する。
【0055】
一方、ウイルスベクターについては患部にベクターを直接注入し細胞感染させることによって細胞内に遺伝子導入することができる(L. Zender et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2003), 100:77797−7802; H. Xia et al., Nature Biotech. (2002), 20:1006−1010; X.F. Qin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2003), 100:183−188; G.M. Barton et al., Proc. Natl. Acad., Sci. USA (2002), 99:14943−14945; J.D. Hommel et al., Nature Med. (2003), 9:1539−1544)。特にアデノウイルスベクターは種々の細胞種に非常に高い効率で遺伝子導入可能であることが確認されており、また遺伝子治療のために実際に臨床応用されている。このベクターはまた、ゲノム中に組み込まれることがないため、その効果は一過的であり安全性も他のウイルスベクターと比べて高いと考えられる。
【0056】
したがって、本発明はさらに、上記発現ベクター又は上記siRNAを医薬上許容可能な担体と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0057】
本発明の医薬組成物に含まれるベクター中にコードされるsiRNA核酸の投与量は、特に限定されないが、0.1nM〜10μM、好ましくは1〜100nM、さらに好ましくは5〜50nMである。投与量は、治療有効量であり、また一定の時間的間隔で複数回投与することもできる。実際には、患者の状態、年齢、性別、重篤度などに応じて専門医の判断により投与量が決定されるべきである。
【0058】
本発明のベクターは、医薬上許容可能な担体、たとえば生理食塩水、緩衝液など、と一緒に患者に投与される。医薬組成物にはさらに、安定剤、保存剤、等張化剤などを含有させることができる。本発明の医薬組成物の投与方法については、特に制限はないが、局所投与又は非局所投与のいずれでも実施しうる。局所投与の場合、気管支鏡等の内視鏡下、或いは外科手術にて患部を露出し、癌組織に注射器等の手段で直接ベクターを投与することができる。非局所投与の場合、たとえば腫瘍栄養血管(たとえば気管支動脈)内投与で行うことができる。好ましくは、局所投与である。投与形態としては、たとえばウイルスベクター、又はプラスミドとリポソームの複合体、を医薬上許容可能な担体に懸濁させた形態で投与される。
【0059】
本発明により、肺癌のサイズが有意に、たとえば約60%以上縮小される。また、本発明により、同様に、ASH1の発現が知られる神経内分泌分化型の甲状腺癌及び前立腺癌に対しても本発明のベクターが有効であるはずである。
【0060】
本発明はしたがって、上記の医薬組成物を患者に投与することを含む、神経内分泌分化型のヒト癌、特に肺癌、甲状腺癌又は前立腺癌を治療する方法、特に前記癌の増殖を抑制する方法をも提供する。投与量及び投与方法は、上と同様である。
【0061】
下記の実施例の実験から判明した結果を以下に要約する。
1)肺癌細胞株A549にASH1発現ベクターとASH1−RNAiプラスミドとを、lipofectamine 2000(Invitrogen社)を用いて遺伝子導入し、ピューロマイシンを含む培地中で遺伝子導入された細胞だけを選択した。ピューロマイシン選択後に細胞抽出液を作製し、Western blotにて、ASH1蛋白の発現量を調べた。その結果、本発明のshort hairpin oligoによるASH1 RNAiは、強いRNAi作用を示し、ASH1の発現レベルを強く抑制した(図1〜5)。
【0062】
2)ASH1−RNAi−plasmid(pU6−siASH1L1−puro又はpU6−siASH1L2−puro)を、肺癌細胞株(ASH1陽性3株・陰性3株)に遺伝子導入し、ピューロマイシンにて遺伝子導入された細胞だけを選択し、コロニー形成能(細胞増殖能)解析及び一部の細胞でFACS解析を行った。コロニー形成能では、ASH1 short hairpin oligoの無い、empty RNAi−plasmidも同時に遺伝子導入を行い、ASH1−RNAi−plasmidと比較検討した。その結果、ASH1陰性肺癌細胞株3株は全例empty RNAi plasmidと比較して優位な差異を示さなかったが、一方、ASH1陽性3株では全例で、約60%〜約90%の抑制率で顕著な増殖抑制が認められた。ASH1(+)−肺腺癌(VMRC−LCD)でも増殖抑制が確認された(図6)。
【0063】
FACS解析を行ったところ、ASH1陽性細胞ではRNAi法によりASH1遺伝子の発現を阻害すると、G1/G2での細胞周期停止とsub−G1の増加(細胞死誘導)が見られた(図7)。この細胞周期停止は、RNAiの標的部位にsilent mutationを導入したASCL1を発現させることで解除され、RNAi部位特異的効果(即ち、off−targetでなくASH1に対する特異的RNAi効果)であることが確認された(図8)。
【0064】
3)作製されたASH1−RNAiアデノウイルスベクター(図9)を用いたin vitroでの細胞増殖抑制効果の検討では、ASH1陽性の肺癌LNM35では増殖の抑制が見られ、ASH1陰性のA549では無効であった。ASH1−RNAi−plasmidと同様に、ASH1−RNAi−アデノウイルスでもASH1発現特異的に増殖抑制が認められた(図10)。
【0065】
4)ASH1−RNAiアデノウイルスベクターによる、マウス移植肺癌でのin vivo抗腫瘍効果の検討では、ASH1陽性LNM35では増殖の抑制が見られ、ASH1陰性のACC−LC−176では無効であった。in vitroの検討と同様に、in vivoでもASH1発現特異的に増殖抑制が認められた(図11)。
【0066】
本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されないものとする。また、実施例及び図面で使用される細胞株の名称について、通称名と正式名は以下のとおりである。
(通称名) (正式名)
SK3: ACC−LC−172
YS: ACC−LC−91
KS: ACC−LC−176
【実施例1】
【0067】
ASH1mRNAターゲット部位の選択とRNAiベクターの作製
(1)ASH1 RNAi用のshort−hairpinオリゴ
記載される方法(D.H.Mathews et al.,J.Mol.Biol.(1999),288:911−940)を利用して、ヒトASH1 mRNAの二次構造からASH1 RNAiのターゲット部位を予測、選択し(図3)、次の2つの二重鎖オリゴを外部の合成委託会社に依頼して合成した。
pU6−siASH1L1−puroに挿入されるオリゴ1:
5’-CCCAAGCAAGTCAAGCGACAGTTCCAGCTGTCGCTTGACTTGCTTGGGCTTTTTTG-3’
3’-GGGTTCGTTCAGTTCGCTGTCAAGGTCGACAGCGAACTGAACGAACCCGAAAAAACTTAA-5’
(左端はbluntでApaI + T4 DNA polymeraseに対応し、右端はEcoRI断端に対応する)
pU6−siASH1L2−puroに挿入されるオリゴ2:
5’-CCCAAGCAAGTCAAGCGACAGCTTCCTGTCACTGTCGCTTGACTTGCTTGGGCTTTTTG-3’
3’-GGGTTCGTTCAGTTCGCTGTCGAAGGACAGTGACAGCGAACTGAACGAACCCGAAAAACTTAA-5’
(同様に左端はblunt、右端はEcoRI断端に対応する。)
上記配列中のセンス、アンチセンス、ループの位置は下記のとおりである。
(オリゴ1)
5'-GCCCAAGCAAGTCAAGCGACAGTTCCAGCTGTCGCTTG
(ASH1センス) (ループ)
ACTTGCTTGGGCTTTTTG-3'
(ASH1アンチセンス)
(オリゴ2)
5'-GCCCAAGCAAGTCAAGCGACAGCTTCCTGTCACTGTCG
(ASH1センス) (ループ)
CTTGACTTGCTTGGGCTTTTTG-3'
(ASH1アンチセンス)
(上記オリゴ1及びオリゴ2の配列中、TTTTTは転写停止シグナル配列である。)
【0068】
(2)ベクターの作製
I.RNAiプラスミドベクター
1)puromycin耐性遺伝子発現ベクターpCMV−puroの作製
pIRES−puro2 (clontech社)からIRES領域を含む不要な部分をHindIIIにて切断し、自己連結(self−ligation)させて、CMVプロモーターから直接ピューロマイシン耐性遺伝子を発現するpCMV−puroベクターを作製した。
【0069】
2)マウスU6プロモーター
ベクターによるRNAiとして、U6遺伝子プロモーターを用いることは公知であり(Guangchao Sui et al., ‘A DNA vector−based RNAi technology to suppress gene expression in mammalian cells’ PNAS(2002), 99:5515−5520)、それに従いRNAiマウスゲノムからU6遺伝子プロモーターを単離しpBSSK(Stratagene社)のBamHI−SmaI部位に挿入した。慣用のin vitro突然変異誘発法にてApaI切断部位を転写開始点に導入した。U6プロモーター転写開始点からApaI−EcoRI−EcoRVの制限部位構成となる(配列番号25)。
【0070】
3)ピューロマイシン(puro)耐性RNAiベクター
1)のpCMV−puroのNruI−BglII部位(CMVプロモーターの5’上流部位)に、2)のBamHI−EcoRV断片(U6プロモーター−ApaI−EcoRI断片)を挿入した。これによりこの1個のベクターで、U6プロモーターから(細胞内でsiRNAになる)short hairpin RNA(shRNA)を発現し、同時にピューロマイシン耐性遺伝子を発現させることができる。
【0071】
ASH1−RNAi用のshRNA発現のために、図1のRNAi部位が逆方向に繰り返す二本鎖DNAオリゴをApaI(+T4 DNA poly処理)−EcoRI切断部位に挿入した。このようにして、pU6−siASH1−puroベクターとして、pU6−siASH1L1−puro及びpU6−siASH1L2−puroベクターを作製した(図12)。
【0072】
II.RNAi−adenovirusベクター
通常のCMVプロモーターから通常遺伝子を発現するAdeno−X発現系(Clontech社)を改変した。Adeno−X系では、発現させる遺伝子のcDNAを、pShuttle2ベクター(Clontech社)に挿入し、そのpShuttle2ベクターとAdeno−XウイルスDNAとを(ともに制限酵素I−CeuI及びPI−Sce−Iで切断後に)結合し、目的遺伝子発現adenovirus DNAとなる。今回はpShuttle2のCMV−MCS(multiple cloning sites)−polyA siteを切除し、上記IのASH1−RNAiプラスミドベクターの(ASH1−shRNAを含む)BamHI−EcoRV断片を挿入し、RNAi用のShuttleベクターに改変した。その後、型の通りに制限酵素I−CeuI及びPI−Sce−Iで切断後、Adeno−XウイルスDNAと結合し、ASH1に対するRNAi−adenovirusベクターとした(図13)。
【0073】
このベクターDNA(ASH1−RNAi−adenovirus)、空のU6−adenovirus、及び 通常のCMVプロモーターからLacZ遺伝子を発現するLacZ−adenovirusの3種のDNAを、通常のアデノウイルス産生用細胞HEK293に遺伝子導入し、アデノウイルスが産生され生じたプラークを多数単離した。この各プラークに由来しアデノウイルス粒子を含む培養上清(クローン)から、アデノウイルスを増幅した。ASH1−RNAi−adenovirusは、図9のようにノザンブロット(Northern blot)で十分なASH1−siRNAの発現を認めたクローンを1個選択し、大量のHEK293細胞に感染させ、通常のCsCl超遠心法にてアデノウイルス粒子を精製した。
【0074】
III.ASH1発現ベクター
ヒトASH1 cDNA(ORF全長)を、ヒト小細胞肺癌細胞株ACC−LC−170(通称SA)のcDNAからPCR法にて増幅した。PCRは、rTaq (Takara)を用いてDMSO5%存在下で、アニール温度55℃の3−step PCRを実施した。使用したプラーマーは以下のとおりである。
センスプライマー:5'-CCTGAATTCTATGGAAAGCTCTGCCAAGAT-3'
アンチセンスプライマー:5'-ACTTCACCAACTGGTTCTGACTCGAGCAG-3'
そのPCR産物を通常の遺伝子発現ベクターpcDNA3(Invitrogen社)に挿入した。ASH1蛋白に対する抗体の使用を容易にするため、ORF 5’にmyc−tagをつけた。
【実施例2】
【0075】
ベクターによる肺癌細胞の増殖抑制効果
(1)RNAiによる発現抑制(A549)
ASH1発現陰性の肺癌細胞株A549、約1x10 個に対し、ASH1発現ベクターとRNAi−プラスミドベクターを等量混合し、Lipofectamine2000(Invitrogen社)にて遺伝子導入した。その後ピューロマイシン(puromycin)(2μg/ml)を添加した牛胎児血清(FBS) 5%添加RPMI−1640培地中で37℃、48時間培養した。遺伝子導入された細胞だけが残るので、通常のSDS−lysis bufferで細胞溶解液を作製した。ウエスタンブロット(Western blot)し、9E10 myc tag抗体(Santa Cruz Biotechnology,Inc.)で、ASH1蛋白の発現を検討した。Western blotのバンドの濃度をデンシトメトリーで定量して、RNAi効果(つまり、発現抑制効果)を検討した。
【0076】
その結果、ASH1−RNAiは、ASH1 wild type(pcDNA3-ASH1 wt)の発現を、U6−siASH1L1が5%、U6−siASH1L2が7%の発現率まで顕著に抑制した。非常に良好なRNAi効果が得られた。RNAi抵抗性変異ASH1(pcDNA3−ASH1 mut:後述の(3)及び図5参照)の発現はASH1−RNAiにより全く影響を受けなかった(図2)。
なお、抗ASH1抗体でも同様の結果であった。
【0077】
(2)siRNAの発現/Northern blot解析
肺腺癌に由来する肺癌細胞株293T細胞、SK3(正式名ACC−LC−172)及びA549へ、pU6−puroベクター(U6−empty)或いはpU6−siASH1−puroベクター(U6−siASH1L1又はU6−siASH1L2)を、lipofectamine2000(Invitrogen社)と混和し、(製造業者の説明書に従って)遺伝子導入した。293Tは遺伝子導入後24時間後に、SK3及びA549に関してはピューロマイシン(2μg/ml)を含むFBS5%添加RPMI−1640培地中で37℃、48時間選択した後に、RNeasy kit(Qiagen社)にてRNA回収した。RNA(15μg)は15%ポリアクリルアミドゲル0.5xTBEバッファーにて電気泳動し、泳動後にナイロン膜Zeta−probe(Bio−Rad社)に電気転写した。得られたZeta−probe膜を、ASH1 RNAi部位のオリゴを32P−gamma−ATP・T4ポリヌクレオチドキナーゼにて放射能標識したプローブとハイブリダイズした。
【0078】
その結果、ASH1に対するsiRNAの強いシグナルが見られ、作製したshort hairpinオリゴ及びベクターがASH1−siRNA発現ベクターとして良好に作用していることが確認された(図4)。
【0079】
(3)RNAi抵抗性変異ASH1
ASH1発現ベクター中のASH1の配列の中のRNAi部位に、PfuTURBO polymerase−PCRを用いたin vitro突然変異誘発法(Papworth, C. et al., Strategies(1996),9(3):3-4に記載されるQuikChange(登録商標)Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)使用)にて、アミノ酸変異を起こさないDNA変異を導入しRNAi抵抗性ASH1発現vectorを作製した(図5)。図5中、上段の配列は正常(又は天然)DNA配列、下段は変異を導入したDNA配列をそれぞれ示す。
【0080】
(4)ASH1−RNAi(plasmid)のin vitro増殖抑制作用(作用特異性)
図6(A)に示される6種の肺癌細胞株に、pU6−puro(「empty」)或いはpU6−siASH1−puro(「siASH1」)をlipofectamine2000とともに遺伝子導入し、約18時間後からピューロマイシン(2μg/ml)を含むFBS5%添加RPMI−1640培地中で37℃、約2週間選択培養した。その後Tetracolor ONE(生化学工業)を加え吸光度測定し、生細胞数の定量を行った。図6(A)はpU6−puroの細胞数に対するpU6−siASH1−puroの細胞数の比率を示す。
【0081】
その結果、ASH1を発現している細胞のみに、ASH1−RNAiで強い増殖抑制が見られた(図6(A))。
【0082】
さらに、細胞数測定に使用した培養皿をギムザ染色し、生細胞のコロニーを測定した。その結果、ASH1を発現しているCalu6株では、ASH1−RNAiにてほとんどコロニーが見られなかった(図6(B))。
【0083】
(5)ASH1−RNAi(plasmid)の細胞周期停止・細胞死誘導作用
ASH1陽性肺癌細胞株YS(正式名ACC−LC−91)に、pU6−puro(「U6blank」又は「U6b」)或いはpU6−siASH1−puro(「siASH1L1」又は「siASH1L2」)をlipofectamine2000とともに遺伝子導入し、約18時間後からピューロマイシン(2μg/ml)を含むFBS5%添加RPMI−1640培地中で37℃、48時間選択培養した。界面活性剤Igepal CA−630(Sigma)0.5%にて細胞融解し、抽出された核をヨウ化プロピジウム(Sigma社)で染色し、FACScan(Becton Dickinson社)にて細胞周期解析を行った。
【0084】
その結果、ASH1−RNAiによりS期・G1期の低下及びG2M期の増加が誘導され、細胞周期のG2Mでの停止が起こることが示された(図7(A))。又、いわゆるsub−G1 populationと呼ばれる細胞死が誘導された細胞群もASH1−RNAiで検出され、細胞死誘導も引き起こされていることが示唆された(図7(B))。したがって、肺癌細胞の細胞死の結果、図6の強い増殖抑制が起こることが示された。
【0085】
(6)RNAi抵抗性変異ASH1によるASH1−RNAiの作用抑制(標的特異性の検討)
(5)と同様にASH1陽性肺癌細胞株YS(正式名ACC−LC−91)に、pU6−puro(「U6-blank」)或いはpU6−siASH1−puro(「U6−siASH1L1」又は「U6−siASH1L2」)をlipofectamine2000とともに遺伝子導入するが、この際に、空の発現ベクター(pcDNA3)或いはRNAi抵抗性変異ASH1発現ベクター(pcDNA3−ASH1mut)も同時に遺伝子導入し、約18時間後からピューロマイシン(2μg/ml)を含むFBS5%添加RPMI−1640の培地中で37℃、48時間選択培養した。(5)と同様にFACScan(Becton Dickinson)にて細胞周期解析を行った。
【0086】
その結果、空の発現ベクターを同時遺伝子導入した群では、(5)と同様に、ASH1−RNAiによりS期・G1期の低下及びG2M期の増加が誘導され、細胞周期のG2Mでの停止が起こることが示された。しかし、RNAi抵抗性変異ASH1発現vectorを同時導入した群では細胞周期の停止傾向が減弱した。したがって、ASH1−RNAiの細胞周期停止効果は、実際にASH1が標的となって起こっていることが示唆された(図8)。
【0087】
(7)ASH1−RNAi adenovirusベクター
RNAi−plasmidをHEK293細胞に遺伝子導入し、約48時間後にRNAを回収して、Northern blotで解析した。一方、アデノウイルス(「RNAi−Adeno」)はHEK293細胞に感染させて約48時間後にRNAを回収し、Northern blotで解析した。
【0088】
さらに、RNAi−plasmidをHEK293細胞にASH1発現ベクターと同時に遺伝子導入し、48時間後に細胞融解し蛋白サンプルを得、これをWestern blot解析で解析した。アデノウイルス(「RNAi−Adeno」)は、まずASH1発現ベクターを遺伝子導入し、その約18時間後にアデノウイルスを感染させて、48時間後に細胞融解し蛋白サンプルを得て、同様に解析した。このとき、ASH1発現ベクターに挿入してあるmyc−tagに対する抗体9E10を用いて各サンプルをWestern blot解析した。
【0089】
その結果、Northern blot分析では、ASH1−RNAi−adenovirusを感染させると、pU6−siASH1−puro(「siASH1」)と同様に豊富なASH1−siRNAの発現が見られた(図9(A))。またWestern blotでも、ASH1−RNAi−adenovirusによってASH1の発現の抑制が見られた(図9(B))。図中、「empty」はsiASH1を含まない対照である。
【0090】
(8)ASH1−RNAi adenovirusによる肺癌細胞株のin vitro 増殖抑制
FBS5%添加RPMI−1640培地中のASH1陽性肺癌細胞株NCI−H460−LNM35或いはASH1陰性肺癌細胞株A549の培養液中に、ASH1−RNAi−adenovirus(「Ad−siASH1」)或いはAdenovirus−LacZ(「Adeno(empty)」又は「Ad」)を添加し感染させた。添加後図10のグラフに示す日数ごとにTetraColor One(生化学工業)にて生細胞数を定量した。
【0091】
その結果、A549細胞株ではASH1−RNAi−adenovirusによってごく弱い非特異的と思われる増殖の抑制が見られただけであったが(図10(B))、NCI−H460−LNM35細胞株では非常に強い増殖抑制が見られ、細胞数はほとんど増加せず、むしろ減少傾向がみられた(図10(A))。ASH1−RNAi−adenovirusでも細胞周期停止・細胞死誘導が引き起こされていることが示唆された。
【0092】
(9)ASH1−RNAi adenovirusによるマウス移植肺癌腫瘍のin vivo増殖抑制
ASH1陽性肺癌細胞株NCI−H460−LNM35(2x10個)或いはASH1陰性肺癌細胞株ACC−LC−176(1x10個)をSCIDマウスの背中の皮下に注入し腫瘍を形成させた。その約1週間後に腫瘍径が約5mmとなったところで、ASH1−RNAi-adenovirus(「Ad−siASH1」)或いはAdenovirus−LacZ(「Ad」)を腫瘍内に注射器にて直接注入した(4x10 ifu、隔日2回)。最初の注入から1週間後にマウスを安楽死させ、皮下腫瘍を摘出し、重量を測定し、病理標本を作製した。
【0093】
その結果、NCI−H460−LNM35では強い増殖抑制が見られ、腫瘍重量に差異が認められたが(図11(A))、ACC−LC−176では、腫瘍重量は殆ど差異が認められなかった(図11(B))。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】ヒトASH1に対するshort hairpin RNAを示す。
【図2】RNAiによる発現抑制(肺癌細胞株A549)を示す。ここで、pcDN A3-ASH1wtは正常ASH1発現ベクターを、pcDNA3-ASH1mutはRNAi抵抗性変異ASH1発現ベクターを、U6−blankは対照ベクターをそれぞれ示す。U6−blankは、以下のように、両端がApaI部位とEcoRI部位に対応し、EcoRV部位(oligoが挿入されたことを確認するための部位)と停止シグナルをもつオリゴを挿入した陰性対照用のベクターである。 5’-CGATATCTTTTTTG-3’3’-CCGGGCTATAGAAAAAACTTAA-5’
【図3】ASH1-RNAiによるヒトASH1 mRNA構造の標的部位を示す。標的部位は、図に示すような開放した構造を示す。
【図4】作製したプラスミドによるsiRNAの発現を示す。ここで、U6−emptyはオリゴ未挿入のベクターを、shRNAはshort hairpin RNAをそれぞれ示す。上記のU6−blankは停止シグナルを入れてあるので非常に短いRNAが転写されるのに対して、U6−emptyは、ASH1−RNAi oligoを挿入する前のものであり、停止シグナルもなく、ベクター由来のRNAが発現する。
【図5】RNAi抵抗性変異ASH1の配列(mut)を示す。
【図6】ASH1−RNAiプラスミド(pU6−siASH1L2)のin vitro増殖抑制作用(作用特異性)を示す。ここで、Calu6は大細胞肺癌由来のASH1陽性肺癌細胞株を、(Ad),(Sq),(Sm)及び(La)はそれぞれ腺癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、大細胞肺癌を示す。
【図7】ASH1−RNAiプラスミドの細胞周期停止、細胞死誘導作用(ACC−LC−91)を示す。
【図8】RNAi抵抗性変異ASH1によるASH1−RNAiの作用抑制(標的特異性の検討)を示す。
【図9】ASH1−RNAi adenovirus vectorによるsiRNAの発現を示す。
【図10】ASH1−RNAi adenovirusによる肺癌細胞株のin vitro増殖抑制を示す。ここで、MOIは、multiplicity/multiplicities of infectivity(細胞1個に対するアデノウイルス力価の比)を示す。
【図11】ASH1−RNAi adenovirusによるマウス移植肺癌腫瘍のin vivo増殖抑制を示す。ここで、Bufferは透析液を、Adはadeno−LacZを示す。(アデノウイルス精製時にCsCl超遠心後に透析してCsClを除去するが、最終的にアデノウイルスは透析液中に保存される。)
【図12】RNAiプラスミドpu6−siASH1L1−puro及びpU6−siASH1L2−puroの構造を示す。
【図13】ASH1−RNAiアデノウイルスベクターの構造を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0095】
配列番号2: ヘアピン型RNAをコードするDNA配列。
配列番号3: ヘアピン型RNAをコードするDNA配列。
配列番号4: タンデム型DNA配列。
配列番号25: U6プロモーター プラス ApaI-EcoRI-EcoRV配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経内分泌分化を示す肺癌の増殖を抑制するための医薬組成物であって、ヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNA配列からの連続する19〜25ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含むsiRNA又はその前駆体をコードするDNA配列をプロモーターの調節下に含む発現ベクターを、医薬上許容可能な担体と組み合わせて含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記DNA配列がヘアピン型RNAをコードする配列を含み、ここで該ヘアピン型RNAが前記センス鎖配列、前記アンチセンス鎖配列、及び前記センス鎖配列と前記アンチセンス鎖配列との間を共有結合によって結合する一本鎖ループ配列を含み、該ヘアピン型RNAが細胞内RNアーゼであるダイサー(Dicer)によってプロセシングされてsiRNAが形成される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記DNA配列が、その3'末端にポリT配列を含む、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ポリT配列が1〜6個のTからなる、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記DNA配列がタンデム型配列を含み、ここで該タンデム型配列が前記センス鎖をコードするDNA配列と前記アンチセンス鎖をコードするDNA配列とを5'→3'方向に連続して含み、各鎖の5'末端にプロモーターが、また各鎖の3'末端にポリT配列がそれぞれ連結された配列からなり、細胞内で転写後、センスRNAとアンチセンスRNAとがハイブリダイズしてsiRNAを形成する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ポリT配列が1〜6個のTからなる、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ヒトASH1 mRNAが配列番号1に示される核酸配列によってコードされる配列を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記DNA配列が配列番号2又は配列番号3に示される配列を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記DNA配列が配列番号4に示される配列を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記発現ベクターがプラスミド又はウイルスベクターである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記プラスミドがpU6-siASH1L1−puro又はpU6-siASH1L2−puroである、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ウイルスベクターがASH1−RNAi−adenovirusである、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記プラスミドがリポフェクタミン、リポフェクチン、セルフェクチン及びその他の正電荷リポソームから選択されるリポソームと複合体形成される、請求項10又は11記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ウイルスベクターがアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターである、請求項10又は12記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記プロモーターがU6又はH1プロモーターである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNA配列からの連続する19〜25ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含むsiRNA又はその前駆体をコードするDNA。
【請求項17】
前記DNAがヘアピン型RNAをコードする配列を含み、ここで該ヘアピン型RNAが前記センス鎖配列、前記アンチセンス鎖配列、及び前記センス鎖配列と前記アンチセンス鎖配列との間を共有結合によって結合する一本鎖ループ配列を含み、該ヘアピン型RNAが細胞内RNアーゼであるダイサー(Dicer)によってプロセシングされてsiRNAが形成されるものである、請求項16記載のDNA。
【請求項18】
その3'末端にポリT配列を含む、請求項17記載のDNA。
【請求項19】
前記DNAがタンデム型配列を含み、ここで該タンデム型配列が前記センス鎖をコードするDNA配列と前記アンチセンス鎖をコードするDNA配列とを5'→3'方向に連続して含み、各鎖の5'末端にプロモーターが、また各鎖の3'末端にポリT配列がそれぞれ連結された配列からなり、細胞内で転写後、センスRNAとアンチセンスRNAとがハイブリダイズしてsiRNAを形成するものである、請求項16記載のDNA。
【請求項20】
前記ヒトASH1 mRNAが配列番号1に示される核酸配列によってコードされる配列を含む、請求項16〜19のいずれか1項に記載のDNA。
【請求項21】
配列番号2〜4に示されるいずれかの配列を含む、請求項16〜20のいずれか1項に記載のDNA。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれか1項に記載のDNAによってコードされるsiRNA又はその前駆体。
【請求項23】
配列番号1に示される核酸配列によってコードされるヒトASH1 mRNA又はその選択的スプライス型RNA配列からの連続する19〜25ヌクレオチドのセンス鎖配列とその相補的配列であるアンチセンス鎖配列とを含むsiRNA。
【請求項24】
前記センス鎖配列が配列番号5に示される配列を含む、請求項23記載のsiRNA。
【請求項25】
請求項16〜21のいずれか1項に記載のDNAをプロモーターの調節下に含むベクター。
【請求項26】
前記プロモーターがU6又はH1プロモーターである、請求項25記載のベクター。
【請求項27】
pU6-siASH1L1−puro、pU6-siASH1L2−puro又はASH1−RNAi−adenovirusから選択される、請求項25又は26記載のベクター。
【請求項28】
癌の増殖抑制のために使用される、請求項25〜27のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項29】
前記癌が肺癌、甲状腺癌又は前立腺癌である、請求項28記載のベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−101707(P2006−101707A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288979(P2004−288979)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:第63回日本癌学会学術総会 会場:福岡国際会議場 福岡サンパレス マリンメッセ福岡 発表日:平成16年10月1日 刊行物名:第63回日本癌学会学術総会記事 発行者:日本癌学会 掲載頁:429頁 刊行物発行年月日:平成16年8月25日
【出願人】(304031427)愛知県 (36)
【Fターム(参考)】