説明

胃瘻カテーテルの留置状態検出装置及び留置状態検出方法

【課題】検出手段を設けた挿入用コードを胃瘻カテーテルのカテーテルチューブ内に挿入して、この挿入用コードの方向を反転させたり、また曲げたりすることなく、胃瘻カテーテルが適正な状態に留置されているか否かを確認できるようにする。
【解決手段】胃瘻カテーテル1は、カテーテルチューブ2の先端部分の外面にバンパ3が設けられており、装着された胃瘻カテーテル1の留置状態を確認するために、カテーテルチューブ2内に挿入可能な挿入用コード10の先端部分にカテーテルチューブ2のバンパ3を設けた部位の外部を観察対象とするように、照明部12と観察部13とを設けた検出手段11が設けられており、挿入用コード10をカテーテルチューブ2の内部で軸回りに回転させることにより、この挿入用コード10を反転させたり、曲げたりすることなく、胃瘻カテーテル1の留置状態を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹壁から胃壁を通り、胃内への通路としての瘻孔を穿設し、薬剤や栄養剤を胃の内部に直接注入する等ために、この瘻孔に造設された後に、この胃瘻カテーテルが適正な状態に留置されているか否かを検出するための胃瘻カテーテルの留置状態検出装置及び留置状態検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、認知症の患者や口腔内や、咽喉部等を損傷した患者等のように、経口的に薬剤や栄養剤等の摂取を行えない患者に対しては胃瘻カテーテルを造設し、この胃瘻カテーテルを介して薬剤や栄養剤等の流動物を胃の内部に直接注入する手技が近年広く行われるようになってきている。胃瘻カテーテルは、基本的には流動物を注入するための通路としてのカテーテルチューブを備えるものであり、このカテーテルチューブの先端は胃の内部にまで挿入されており、基端部は体外に導き出される。カテーテルチューブを胃の内部に確実に、しかも安定的に留置するために、カテーテルチューブの先端外面にはバルーンやバンパ等のストッパ部材が設けられる。このストッパ部材はカテーテルチューブを瘻孔内に挿入する際には縮小させた状態とし、カテーテルチューブの先端部が胃内に進入した後に、膨出乃至拡径させることによって、抜け止め機能を発揮する。また、カテーテルチューブの基端部は体腔外に位置し、この基端側の所定の位置に外部ストッパが設けられ、さらに基端部は注入口部として開口しており、この開口は蓋体により施蓋される。
【0003】
以上のように構成することによって、カテーテルチューブの蓋体を脱着することによって、薬剤,栄養剤等の注入操作を容易に行うことができ、注入操作が終了した後は、蓋体を装着するだけで良いので、在宅でも操作が可能である等の利点がある。この胃瘻カテーテルは数カ月から半年程度は交換する必要はなく、長期間にわたって使用することができる点でも有利である。
【0004】
初期的に胃瘻カテーテルが造設され、また胃瘻カテーテルの留置状態が所定の期間経過すると、胃瘻カテーテルを交換するか、または洗浄を行った後に再装着する。このように、胃瘻カテーテルを造設、または造設後の再装着によって、所定の位置に留置したときに、最も注意を要するのは、カテーテルチューブの先端が確実に胃の内部にまで挿入されることである。ここで、瘻孔は腹壁から胃壁を経て胃の内部までの通路であるが、腹壁と胃壁とが乖離していると、カテーテルチューブの先端が腹壁と胃壁との間の空間に進入するおそれがある。この状態を見過ごすと、流動物を注入する際に、胃内に注入されず、腹腔に入り込んでしまう事態が発生する。また、ストッパ部材の全体が完全に胃の内部に位置していないと、体の動きによっては、カテーテルチューブが胃から逸脱してしまうこともある。
【0005】
前述したような事態が発生しないようにするために、胃瘻カテーテルの留置後にカテーテルチューブが正規の位置に配置されているか否かを検出する必要がある。胃瘻カテーテルは直線的な通路を構成するものであることから、カテーテルチューブ内に細径の内視鏡を挿入することができる。そこで、内視鏡により胃瘻カテーテルの胃内への留置状態を検出することができる。
【0006】
ここで、内視鏡の観察視野は主に挿入部の前方であり、この挿入部をカテーテルチューブ内に挿入したときには、挿入方向の前方が観察視野となる。従って、挿入部の方向を反転させなければ、カテーテルチューブが適正な留置状態となっているか否かを確認することはできない。内視鏡の挿入部には、通常、先端硬質部の基端側に湾曲部が設けられており、この湾曲部は180度乃至それ以上の角度湾曲することができるようにしたものもある。従って、湾曲部を備えた挿入部を有する内視鏡として構成すれば、挿入部において、内視鏡観察手段を設けた先端部をカテーテルチューブへの挿入方向に対して反対の方向を向かせることができる。ただし、内視鏡の挿入部に湾曲部を設けるように構成すると、構成が複雑になり、またカテーテルチューブの内部に挿通されることから、挿入部を細径化する必要があるが、細径の挿入部に先端部を180度反転させるには、湾曲部が長尺化することになり、かつ構成が複雑になるから、胃瘻カテーテルの留置状態を確認するための内視鏡として構成するものとしては、極めて高価なものとなってしまう。
【0007】
以上のことから、挿入部に湾曲部を設けない内視鏡を用いて胃瘻カテーテルの造設後における留置状態を確認する構成としたものが、特許文献1に記載されている。この特許文献1では、曲げ方向に可撓性を有する挿入部の先端にワイヤを連結して設け、このワイヤを所定の長さ分だけ挿入部の外部に導出させて、途中位置から挿入部内に導入するようになし、挿入部の基端部近傍で外部に導出させる構成としている。従って、ワイヤの基端部を牽引すると、先端側の外部に導出させている部位に張力が作用して、挿入部の先端部分が弓なりに湾曲することになる。その結果、挿入部の先端部が反転するようになって、この挿入部の先端に設けた内視鏡観察手段はカテーテルチューブの胃壁内への導入部分を視野に収めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−131470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1の挿入部内には、照明光を伝送するためのライトガイドと、観察像を伝送するための光学手段としてのイメージガイドとを設けるようにしており、これらライトガイドやイメージガイドは極細の光ファイバから構成されることから、これらの光ファイバに外力が作用すると容易に断線してしまうことになる。挿入部の先端部分を湾曲させるためのワイヤは全長ではないにしろ、部分的に挿入部の内部を通るようになっており、従って挿入部の先端部分を湾曲操作したときに、ワイヤの動きによりライトガイドやイメージガイドが圧迫されて、断線のおそれがある。従って、光ファイバを保護するために、ワイヤはガイドスリーブ等に挿通させる構成としなければならない。このために、少なくともワイヤ及びそのガイドスリーブを装着する分だけ挿入部は太径化することになる。内視鏡の挿入部の外径は、カテーテルチューブの内径寸法により制約されるので、カテーテルチューブ内に挿通可能なように細径化するためには、ライトガイドやイメージガイドの本数を少なくしなければならず、そうすると内視鏡観察手段による体内像の鮮明度が低下するという問題点が生じる。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、胃瘻カテーテルのカテーテルチューブ内に検出手段を設けた挿入用コードを挿入して、この挿入用コードの方向を反転させたり、また曲げたりすることなく、胃瘻カテーテルが適正な状態に留置されているか否かを確認できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明は、カテーテルチューブと、前記カテーテルチューブの先端部分の外面に設けたストッパ部材とからなる胃瘻カテーテルと、前記カテーテルチューブ内に挿入可能なものであり、かつ前記カテーテルチューブの外側の留置状態を前記カテーテルチューブを通して検出する検出手段を先端に設けた検出用コードとを備えることをその特徴とするものである。
【0012】
また、先端部分にストッパ部材を設けたカテーテルチューブを備えた胃瘻カテーテルが装着された後に、その留置状態を確認する方法の発明としては、カテーテルチューブに、先端に検出手段を設けた挿入用コードを挿入し、この挿入用コードの検出手段を前記カテーテルチューブのストッパ部材が装着されている部位に配置して、前記検出手段により前記カテーテルチューブのストッパ部材の装着部を含み、このカテーテルチューブの全周にわたって検出対象を検出することを特徴としている。
【0013】
胃瘻カテーテルが適正に留置されていると、そのカテーテルチューブにおいては、ストッパ部材の基端側端部より基端側に胃壁が位置しているはずである。そこで、胃瘻カテーテルの留置状態を確認するために、ストッパ部材の位置におけるカテーテルチューブの検出対象の状態を検出する。従って、留置状態検出観察装置の構成としては、先端に検出手段を設けた挿入用コードが用いられる。挿入用コードは瘻孔内に挿入されているカテーテルチューブに挿入され、この挿入用コードの先端に設けた検出手段によって、カテーテルチューブの内部からこのカテーテルチューブを通してその外面に設けられているストッパ部材の基端側端部と検出対象、つまり胃壁との位置関係を検出する。そして、挿入用コードを軸回りに回転させて、カテーテルチューブのほぼ全周にわたってストッパ部材の基端側端部と胃壁との位置関係を検出する。要するに、ストッパ部材が胃の内部に位置しているか否かを検出することである。ここで、胃瘻カテーテルにおけるカテーテルチューブは流動物を胃内に供給するものであり、流入口側を基端部とし、流出口側を先端部としたときに、ストッパ部材はカテーテルチューブの軸線方向の途中位置に固定して設けられている。従って、このストッパ部材のカテーテルチューブへの基端側固定部の位置が検出できなければならない。また、胃内壁がこのストッパ部材の基端側固定部より基端側の位置にあることを確認しなければならない。ただし、ストッパ部材の基端側固定部と胃内壁とを同時に検出することが要件ではない。挿入用コードをカテーテルチューブの軸線方向に移動させることによって、ストッパ部材の基端側固定部の位置と胃内壁の位置とを検出できれば良い。
【0014】
胃瘻カテーテルがバルーン式であれ、バンパ式であれ、ストッパ部材はカテーテルチューブの外面に固定される。検出手段ではストッパ部材の基端側端部と、それより基端側固定端とを、つまり挿入用コードの挿入方向の手前側の部位を検出するが、この検出は挿入用コードをカテーテルチューブの内部に位置した状態で行われる。従って、胃瘻カテーテルの留置状態を確認するために、挿入用コードをカテーテルチューブの先端から導出させて反転させる必要はないのはもとより、曲げ可能である必要もない。このために、挿入用コードは可撓性を有するものであっても良く、また硬質部材で構成しても良い。
【0015】
挿入用コードに設けられる検出手段は、光学的検出手段とすることができる。即ち、挿入用コードに、好ましくはその先端部乃至先端近傍の側面部に照明部と観察部とを設ける。このように、光学的検出手段を用いるには、カテーテルチューブは透光性を有する部材で構成されていなければならない。即ち、カテーテルチューブの全体を透明にすることもできるが、少なくともカテーテルチューブにおけるストッパ部材の基端側固定端の位置から基端側に向けての所定の幅分(例えば2cm)、具体的にはストッパ部材の基端部が観察部の観察視野の挿入用コードの挿入方向の前方側の端部に位置したときに、少なくともこの観察視野に入る部位は透光性部材で形成されておれば良い。ここで、カテーテルチューブの外部に位置する検出対象を観察するのであるから、透光性部材における透明度をできるだけ高くする方が望ましい。具体的には、可視光領域である400nm〜800nm程度の波長範囲において、光の透過率は80%以上、より好ましくは95%以上とする。そして、バルーンであれ、バンパであれ、ストッパ部材は着色されているか、または光の透過率が低いものとし、カテーテルチューブとのコントラストを高くするのがより望ましい。
【0016】
カテーテルチューブには、その基端部に注入口部が形成されており、この注入口部からストッパ部材の基端側端部までは所定の間隔となっている。そこで、挿入用コードに注入口部の口径より大径の部材からなる係止部材を設けるようになし、この係止部材をカテーテルチューブの注入口部に当接させたときに、この係止部材から検出手段の装着部までの長さをカテーテルチューブの注入口部からストッパ部材の基端側端部までの間隔とほぼ一致させるように設定することができる。
【0017】
このように、係止部材を設けることによって、挿入用コードをカテーテルチューブの内部に挿入したときに、係止部材が注入口部で係止した位置まで挿入用コードが挿入されると、カテーテルチューブの留置状態の確認が可能な位置まで挿入されたことになる。しかも、挿入用コードをカテーテルチューブの内部に保持するストッパとして機能することから、胃の内壁に当接するおそれがなく、挿入用コードを細径の硬質部材で形成しても安全に操作を行うことができるようになる。ただし、カテーテルチューブの注入口部からストッパ部材の基端側端部までの間隔は、種類により、また製品により異なってくることがある。そこで、係止部材を挿入用コードの軸線方向に位置調整可能とすることによって、胃瘻カテーテルのカテーテルチューブの長さに応じて挿入用コードのカテーテルチューブ内への挿入長さの調整が可能になる。
【0018】
挿入用コードに設けられる検出手段としては、前述の光学的検出手段以外にも、例えば超音波検出手段を用いることも可能である。即ち、挿入用コードの先端に超音波トランスデューサを設けることによって、カテーテルチューブの外部物体の検出を行うことができる。この場合には、カテーテルチューブを透明部材で構成する必要はない。また、超音波トランスデューサはラジアル走査式またはリニア走査式のものとすることができ、さらにメカニカル走査を行うものまたは電子走査を行うものとする。ただし、超音波検出手段では、検出幅は狭いことから、検出時には挿入用コードを上下方向に所定の範囲で移動させながら、リニア走査を行う必要がある。
【発明の効果】
【0019】
胃瘻カテーテルのカテーテルチューブ内に挿入用コードを挿入して、このカテーテルチューブの先端から導出させることなく検出手段により検出対象を検出することにより、胃瘻カテーテルが適正な状態に留置されているか否かを確認でき、挿入部を曲げ操作する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】留置状態観察装置が装着される胃瘻カテーテルの外観斜視図である。
【図2】胃瘻カテーテルが正規の状態に造設されている状態を示す正面図である。
【図3】胃瘻カテーテルが留置不良情状態で造設されている状態を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の一形態を示すものであって、胃瘻カテーテルの留置状態観察装置を構成する挿入用コードの正面図である。
【図5】図4の挿入用コードの先端部分の断面図である。
【図6】胃瘻カテーテルのバンパを縮径させた状態の断面図である。
【図7】胃瘻カテーテルの留置状態観察装置の作動説明図である。
【図8】胃瘻カテーテルが適正な状態で留置されている場合に検出手段で得られる画像の説明図である。
【図9】胃瘻カテーテルが留置不良となっている場合に検出手段で得られる画像の説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態を示す胃瘻カテーテルの外観斜視図である。
【図11】図10の胃瘻カテーテルに留置状態観察装置を組み込んだ状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1及び図2に胃瘻カテーテルの全体構成を示す。この胃瘻カテーテルはバンパを有するものであって、ボタンタイプのものである。なお、バンパはストッパ部材として用いられるものであり、ストッパ部材はバンパだけでなく、後述するように、バルーンから構成したものもある。また、ボタンタイプは注入口部に装着される蓋部材であり、ボタンタイプのものだけでなく、チューブを接続したチューブタイプのものも用いられる。
【0022】
胃瘻カテーテル1は、薬剤や栄養剤等の流動物を注入する通路を有するカテーテルチューブ2を有するものであり、このカテーテルチューブ2の先端にはバンパ3が設けられ、また基端側である注入口部2aにはボタン4が着脱可能に装着される。バンパ3は、カテーテルチューブ2の先端に4箇所連結したバンパ構成体5からなるものであり、これらバンパ構成体5の各々の一端部はカテーテルチューブ2の先端に固着されるか、またはカテーテルチューブ2と一体に形成されており、この固着部から90度毎に放射方向に向けて突出させ、カテーテルチューブ2の外面から所定量突出した状態から内向きに折り返されている。そして、バンパ構成体5の他端はカテーテルチューブ2に摺動可能に挿嵌させた内筒6に固定されている。
【0023】
バンパ構成体5は拡径して中間部分が突出する図1の状態に癖付けられており、このときには内筒6はカテーテルチューブ2に所定の長さ挿嵌されている。そこで、内筒6をカテーテルチューブ2の先端から押し出す方向に押動すると(図6参照)、バンパ構成体5は直線化するように変形して、バンパ3が縮径状態となる。また、内筒6に対する押圧力を解除すると、バンパ構成体5が突出状態に復元することになって、拡径状態に復帰する。なお、このときには内筒6はカテーテルチューブ2の内部を基端側に向けて摺動することになる。バンパ3が拡径した状態がストッパ部材として機能する作動状態であり、バンパ3を縮径させると、瘻孔に対して挿脱できる挿脱可能状態となる。
【0024】
ボタン4は、カテーテルチューブ2から延在させた軟性部材からなる連結帯片7に設けられている。従って、連結帯片7を折り返して、ボタン4を注入口部2aに嵌合させることによって、カテーテルチューブ2の基端部が施蓋される。また、カテーテルチューブ2の注入口部2aを設けた部位には半径方向の外方に向けて突出する一対のフランジ部8,8が設けられている。これによって、カテーテルチューブ2の全体が体内に入り込んでしまうことが防止される外部ストッパ部材として機能するものである。一方、バンパ3は胃の内部側でのストッパ機能を発揮するものであり、内部ストッパ部材である。
【0025】
胃瘻カテーテル1は、図2から明らかなように、体表皮から腹壁AWから胃壁SWを貫通して、胃内に至る瘻孔GPを設けて、この瘻孔GP内に挿入される。胃瘻カテーテル1の正規の留置状態はこの図2に示した状態である。腹壁AWと胃壁SWとの間には腹腔NAが存在しており、例えば図3の状態で留置されていると、留置不良の状態である。胃壁SWは柔軟なものであるので、図3のような極端ではないにしろ、胃壁SWの一部を胃の内部側に巻き込んだ状態にして胃瘻カテーテ1が留置されている場合もあり、これも留置不良である。そこで、胃瘻カテーテル1が造設された直後、若しくは遅くとも薬剤や栄養剤を注入する前の段階で、この胃瘻カテーテル1が正規の状態に留置されているか否かの確認を行う。
【0026】
この胃瘻カテーテル1の留置状態を確認する留置状態観察装置の構成としては、図4に示した挿入用コード10の先端に検出手段11を設ける構成としたものである。検出手段11は、照明部12と観察部13とを有する構成となっている。照明部12には、ライトガイドを臨ませるようにしても良いが、図5に示したように、発光素子14と、照明用拡散レンズ15とから構成する。ここで、発光素子14は、LED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)等を用いることができ、さらにはレーザ励起式発光素子を用いることができる。なお、発光素子14は観察部13を挟んで前後の位置に設けることもできる。
【0027】
観察部13は、対物レンズ16と、この対物レンズ16の結像位置に設けた固体撮像素子17とから構成される。発光素子14に接続した配線及び固体撮像素子17に接続した配線は挿入用コード10の内部に挿通されており、この挿入用コード10は検出手段11を設けた先端側の所定長さが硬質パイプや剛性のある高剛性コード部10aとなり、基端側は軟性コード部10bとなっており、その端部にはコネクタ部19が設けられている。コネクタ部19は、電源や、固体撮像素子17で生成した映像信号をモニタ画面に表示できるように処理を行うプロセッサ等を含む制御装置20の接続部20aに着脱可能に接続される。
【0028】
挿入用コード10における高剛性コード部10aは、カテーテルチューブ2の全長より十分長いものであって、この高剛性コード部10aには円環状の係止部材18が挿通されている。係止部材18は、カテーテルチューブ2内への挿入用コード10の挿入時に、注入口部2aに係止されるものであり、係止部18が注入口部2aに当接させたときに、挿入用コード10の先端に設けた検出手段11がカテーテルチューブ2におけるバンパ3の連結部が観察部13による観察視野内に位置し、この連結部が挿入方向の前方側の位置となるように位置調整されている。
【0029】
観察部13は、カテーテルチューブ2の外部を観察対象とするものであり、このためにカテーテルチューブ2は透光性部材、つまり透明部材で構成されている。ただし、カテーテルチューブ2の全体が透明である必要はなく、検出手段11の検査領域内の部位が透明になっておればよい。このカテーテルチューブ2の透明な部分は、可視光領域、つまり400nm〜800nmの波長範囲において、光の透過率は95%以上とする。ここで、観察対象は胃壁SWとバンパ3との位置関係である。従って、バンパ3は検出手段11で光学的に検出されるものであるから、このバンパ3は不透明な部材または着色した部材から構成されている。
【0030】
本実施の形態は以上のように構成されるものであって、胃瘻カテーテル1を造設するに当っては、まず体表皮から胃の内部に至る瘻孔GPを穿設する。そして、この瘻孔GP内に胃瘻カテーテル1のカテーテルチューブ2を挿入するが、このときには、安全確保の観点から、胃の内部に、例えばCOガス等の気腹ガスを胃の内部に供給して、胃を膨張させた状態とするのが望ましい。そして、図6に示したように、内筒押動部材9を用いて、内筒6をカテーテルチューブ2内で先端から押し出すように操作する。バンパ3を構成するバンパ構成体5をほぼ直線状態となるように引き伸ばした縮径状態とする。この状態で、カテーテルチューブ2を瘻孔GP内に挿入する。カテーテルチューブ2が所定の深さまで進入すると、内筒押動部材9をカテーテルチューブ2から引き抜いて、内筒6に対する押し込み力を解除する。その結果、バンパ3を構成する4箇所のバンパ構成体5が湾曲状態に復元すると共に、内筒6はカテーテルチューブ2の内部に向けて退入することになり、ストッパ機能を発揮する状態となる。
【0031】
胃瘻カテーテル1を造設した後に、この胃瘻カテーテル1が正規の状態に留置されているか否かを検出する。また、長期間にわたって胃瘻カテーテル1を使用した後には、この胃瘻カテーテル1を取り外して、新たな胃瘻カテーテル1と交換するか、または洗浄して再装着する。従って、留置状態の検出は、瘻孔GPを新たに開設してカテーテル1の造設を行う場合であれ、既に形成した瘻孔GPに胃瘻カテーテル1を装着する場合であれ、胃瘻カテーテル1を装着して留置が完了する毎に、その留置状態の検出が行われる。このために、図7に示したように、ボタン4を注入口部2aから取り外した状態で、挿入用コード10を注入口部2aに挿入して、この挿入用コード10の高剛性コード部10aに設けた係止部材18が注入口部2aに当接する位置まで進行させる。この位置は、挿入用コード10の先端に設けた検出手段11が、カテーテルチューブ2の外面において、バンパ3を構成するバンパ構成体5の基端側端部の連結部と対面する位置である。この位置で照明部12から照明光を照射して、観察部13から検出対象を観察する。
【0032】
今、胃瘻カテーテル1が図8(a)に示した状態に留置されていたとし、この胃瘻カテーテル1のカテーテルチューブ2内に挿入用コード10が挿入されているとし、このカテーテルチューブ2を、同図に矢印で示したように、仮想線で示した位置から実線で示した位置まで検出手段11を移動させると、検出手段11の観察部13からは、同図(b)に示した観察像V1−V2が得られる。カテーテルチューブ2の基端側、つまりバンパ構成体5の上面5aより上方に胃壁SWが位置している画像が得られる。その結果、バンパ3の上部に胃壁SWが位置し、また胃壁SWの上部位置に腹壁AWが位置し、その間に腹腔NAが存在していることが確認される。そこで、挿入用コード10を実線で示した位置として、高剛性コード部10aを軸回りに回転させると、同図(c)に展開して示した画像が得られる。この図8の状態では、胃瘻カテーテル1は適正な留置状態となっているので、カテーテルチューブ2が全周にわたって胃壁SWはバンパ3の上部位置にあることが検出され、従って胃瘻カテーテル1は適正な留置状態となっていることが判明する。
【0033】
一方、胃瘻カテーテル1が図9(a)に示したように、バンパ3が完全に胃内に位置することなく、胃壁SWと腹壁AWとの間の腹腔NAの位置で留置されていたとすると、観察部13による観察像V1−V2は、図9(b)となる。つまり、バンパ構成体5の下面5aより下方位置に胃壁SWが位置している画像となる。そして、挿入用コード10を実線で示した位置として、この挿入用コード10を回転させると、同図(c)の展開図で示した画像が得られる。この画像からは、バンパ3が胃壁SWと腹壁AWとの間の腹腔NAの位置にあることが検出されるようになる。このように、一部でも胃壁SWと腹壁AWとの間にバンパ3が位置している部位があると、胃瘻カテーテル1は留置不良状態であると判断される。そこで、この胃瘻カテーテル1は瘻孔GPから一度取り出して、再装着することになる。勿論、胃瘻カテーテル1の再装着後には、再び留置状態の確認を行うようにする。
【0034】
ところで、胃瘻カテーテルとしては、前述したボタンタイプのバンパストッパ式のものとしたが、他の構成の胃瘻カテーテルとしては、図10に示したチューブタイプでバルーンストッパ式の胃瘻カテーテル101を用いることもできる。同図において、102はカテーテルチューブであり、このカテーテルチューブ102の先端近傍には内部ストッパ部材としてのバルーン103が設けられており、またこのバルーン103の装着部より基端側の部位には外部ストッパ108が装着されている。
【0035】
そして、カテーテルチューブ102の基端部には接続部110が連設されており、この接続部110には、カテーテルチューブ102と同軸状態に栄養剤注入ポート111が設けられており、側部にはバルーン拡張用ポート112が設けられている。さらに、栄養剤と薬液とを同時に注入する際等の観点から、接続部110の側部に薬液注入ポート113が設けられている。そして、これら各ポート111,112,113はキャップ111a,112a,113aにより着脱可能に施蓋されるようになっている。
【0036】
この胃瘻カテーテル101において、ストッパ部材を構成するバルーン103は、胃瘻GPに挿入される前の段階では、縮小させた状態に保持し、所定のカテーテルチューブ102が所定の深さまで挿入されると、バルーン拡張ポート112から加圧エアを供給して膨張させることによって、内部ストッパ部材として機能させる。そこで、胃瘻カテーテル101の留置後に、バルーン103が胃壁SWの内部に位置するように適正な状態で留置されているか否かの確認が行われる。前述した検出対象の状態を観察するに当っては、光学的な検出手段11と同様の構成とすることもできるが、図11に示したように、超音波検出手段を用いても確認を行うことができる。即ち、同図に示したように、挿入用コード120の先端に検出手段121として、多数の超音波振動子を円環状に配列した超音波トランスデューサ130を装着したものから構成とする。また、この超音波トランスデューサ130を設けた部位には、超音波伝達用バルーン131が装着される。
【0037】
従って、挿入用コード120を胃瘻カテーテル101のカテーテルチューブ102内に挿入して、このカテーテルチューブ102の先端をストッパ部材としてのバルーン103が設けられている部位まで挿入した状態で、超音波トランスデューサ130による電子ラジアル超音波走査が行われる。このときには、超音波伝達用バルーン131内には超音波伝達媒体を封入して膨出させて、この超音波伝達用バルーン131をカテーテルチューブ102の内面に密着させるようにする。
【0038】
そして、挿入用コード120をカテーテルチューブ102から引き抜く方向に移動させながら、超音波ラジアル走査を行わせる。これによって、カテーテルチューブ102のストッパ部材としてのバルーン103の装着部を含めて、そのカテーテルチューブ102の前後の部位の超音波断層像に関する情報を取得できるので、前述した第1の実施形態と同様に、胃瘻カテーテル101の留置状態が適正であるか否かの確認を行うことができる。このように、超音波走査を行うことから、カテーテルチューブ102は透明部材で形成する必要はない。
【符号の説明】
【0039】
1,101 胃瘻カテーテル 2,102 カテーテルチューブ
3 バンパ 10,120 挿入用コード
11,121 検出手段 12 照明部
13 観察部 14 発光素子
15 照明用拡散レンズ 16 対物レンズ
17 固体撮像素子 18 係止部材
130 超音波トランスデューサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルチューブと、前記カテーテルチューブの先端部分の外面に設けたストッパ部材とからなる胃瘻カテーテルと、
前記カテーテルチューブ内に挿入可能なものであり、かつ前記カテーテルチューブの外側の留置状態を前記カテーテルチューブを通して検出する検出手段を先端に設けた検出用コードと
を備えることを特徴とする胃瘻カテーテル留置状態検出装置。
【請求項2】
前記検出手段は照明部と観察部とからなり、前記カテーテルチューブの、前記ストッパ部材の内側に相当する部分及び前記ストッパ部材の基端部に相当する部分は透光性部材で形成したことを特徴とする請求項1記載の胃瘻カテーテルの留置状態検出装置。
【請求項3】
前記検出手段はラジアル超音波検出手段であることを特徴とする請求項1記載の胃瘻カテーテルの留置状態検出装置。
【請求項4】
先端部分にストッパ部材を設けたカテーテルチューブを備えた胃瘻カテーテルの留置状態を確認する方法であって、
前記カテーテルチューブに、先端に検出手段を設けた挿入用コードを挿入し、
この挿入用コードの検出手段を前記カテーテルチューブのストッパ部材が装着されている部位に配置し、
前記検出手段により前記カテーテルチューブのストッパ部材の装着部を含み、このカテーテルチューブの全周にわたって検出対象を検出する
ことを特徴とする胃瘻カテーテルの留置状態検出方法。
【請求項5】
前記カテーテルチューブは、その長さ方向において、少なくとも前記ストッパ部材の連結部より基端側の部位を透光性部材で構成し、前記検出手段を照明部と観察部とを備えるものであって、前記照明部から前記カテーテルチューブの検出対象に向けて照明光を照射して、観察部で前記ストッパ部材の連結部より基端側の部位の光学像を取得することを特徴とする請求項4記載の胃瘻カテーテルの留置状態検出方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−136006(P2011−136006A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297371(P2009−297371)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】