説明

背負式作業機

【課題】 作業者が快適に作業をすることが可能な背負式作業機を提供すること。
【解決手段】 この背負式作業機1は、背負い枠4と、背負い枠4に設けられた左右一対の腰当て板6とを備える背負式作業機であって、腰当て板6は、背負い枠4に左右に移動可能に取り付けられているベース部11と、ベース部11の外側端部から前方に延びる腰当て部12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業等に用いられる動力噴霧機、動力散布機或いはブロア装置等の背負式作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動力散布機等の可搬型の背負式作業機としては、下記特許文献1のものが知られている。この背負式作業機には、作業者の両肩に当てられる肩ベルトと腰部に巻き付けられる腰ベルトとが設けられ、作業者が肩ベルトを用いて作業機を背負う際に腰ベルトを併せて装着することによって、背負い時の左右の安定感が得られるようになっている。そして、このような背負式作業機には、農作業等に必要とされる薬剤タンク、動力機、ポンプ等の機材が搭載される。
【特許文献1】実用新案公報昭60−41073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の背負式作業機においては、肩ベルトに加えて腰ベルトを備えることで作業者にとって作業機との一体感が向上する反面、作業機を安定して背負うためには作業者の体型に合わせてある程度の腰ベルトの締め付けが必要となる。そのため、腰ベルトを装着しない場合と比較すると、作業者に対して圧迫感を生じさせることがあった。
【0004】
また、腰ベルトは作業者の腰部の周囲に密着しているため、腰ベルトに薬剤、埃、土壌等の汚れが付着した場合には不快感を与えるおそれがあった。さらには、このような場合に、この腰ベルトは一般に革製や織物製であるため、いったん付着した汚れを除去するのに手間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、作業者が快適に作業をすることが可能な背負式作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の背負式作業機は、背負い枠(4)と、背負い枠(4)に設けられた左右一対の腰当て板(6)とを備える背負式作業機(1)において、腰当て板(6)は、背負い枠(4)に左右に移動可能に取り付けられているベース部(11)と、ベース部(11)の外側端部から前方に延びる腰当て部(12)とを有する。
【0007】
このような背負式作業機によれば、背負い枠(4)の左右から延びる腰当て板(6)の間隔を作業者の体型に合わせて移動させることによって、作業者は、背負い時に腰当て板(6)を腰部の両側に押し当てることができ、左右にふらつかせることなく安定して作業機(1)を背負うことができる。このとき、腰当て部(12)は作業者の前方において開放されているので、作業者の腹部付近における圧迫感が軽減される。
【0008】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において左、右、前、後、上、下等の方向を表す語は、作業者が背負式作業機(1)を背負って直立した状態を基準とし、作業者にとり前方を「前」と定める。
【0009】
また、ベース部(11)と背負い枠(4)とは、互いに摺動可能に係合する突起部(13,14)と溝状のガイド部(15,16)とにより、相対的に左右に移動可能となっていることが好ましい。簡易な構造であり、確実に動作するからである。
【0010】
また、ベース部(11)には、当該ベース部(11)の移動方向に沿って配列された複数の歯(18)が設けられており、背負い枠(4)は、歯(18)と係合する爪(17)を有し、歯(18)及び爪(17)は、腰当て板(6)の外側への移動を規制するが、腰当て板(6)の内側への移動を許容するように構成されていることも好ましい。かかる構成を備えれば、背負い時において左右の腰当て板(6)が広がらないので安定し、また、収納時や調整時において左右の腰当て板(6)の間隔を縮める際の操作が容易となる。
【0011】
また、腰当て板(6)の腰当て部(12)は、ベース部(11)に対して折り畳み可能となっていることも好ましい。かかる構成を採れば、部品の脱着等の面倒な作業なしに作業機(1)の収納スペースを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による背負式作業機によれば、腰当て板が作業者の腰部に接し作業機を安定させるので、作業者が快適に作業をすることが可能となる。また、腰当て板は、作業者を締め付けるものでもないので、圧迫感を与えない。更に、布製等の腰ベルトと異なり、清掃が容易であり、汚れによる不快感を作業者に与えることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る背負式作業機の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明による好適な一実施形態である背負式作業機1の斜視図、図2は、図1の背負式作業機1の背当て部を取り外した状態を示す分解斜視図である。背負式作業機1は、薬剤の噴霧作業に代表される農作業時に作業者が背負った状態で使用される装置である。
【0015】
図1及び図2に示すように、背負式作業機1は、薬剤タンク2、内燃エンジン3等の機器が設置される背負い枠4を有し、背負い枠4の前面には作業者の背に当たる背当て部5が固定されている。背当て部5の左右両側には肩ベルト9(図1では一方のみ示す)が取り付けられ、これによって作業者は作業機1を背負うことができるようになっている。また、背負い枠4の左右には一対の腰当て板6が取り付けられている。
【0016】
背負い枠4は、背当て部5を垂直に支持する直立部7と、直立部7の下端から後方に延びる架台部8とが一体的に形成されてなるものであり、直立部7の上方には薬剤タンク2が配置されており、架台部8には内燃エンジン3等の機器が載置されている。直立部7は、略平板状の形状を有し、その前面には窪み部10が、左右に帯状に形成され、この窪み部10に左右一対の腰当て板6が左右対象の状態で嵌め込まれる。
【0017】
腰当て板6は、ベース部11と、その外側端部から前方に向けて延びる腰当て部12とからなり、それぞれ剛性を有する材料、例えばプラスチック材料によって一体的に形成されている。ベース部11は、窪み部10とほぼ同一の幅を有するように平板状に形成されており、窪み部10に収容される。なお、本実施形態では、腰当て部12は、作業者への装着安定性の面から前方に向かって次第に曲率が大きくなるように湾曲していることが好ましい。また、腰当て部12は、安全性の面からその先端において丸みを帯びた形状を有することも好ましい。
【0018】
また、腰当て板6のベース部11の上縁部及び下縁部には、左右に直線状に延びる突起部13,14がそれぞれ形成されている。このような構成の腰当て板6に対して、直立部7の窪み部10の上縁部及び下縁部には、それぞれ、直立部7の面に沿って左右に延びて突起部13,14と係合する溝状のガイド部15,16が形成されている。
【0019】
腰当て板6は、窪み部10に収容される際に突起部13,14をそれぞれガイド部15,16に沿って挿入させることにより、直立部7に対して左右に摺動可能に案内される。図3は、直立部7に腰当て板6bが収納された状態を示す縦断面図である。同図に示すように、ガイド部15は、窪み部10の上縁部から上方に窪んだ状態で形成され、ガイド部16は、窪み部10の下縁部から下方に窪んだ状態で形成されている。このようなガイド部15,16に、腰当て板6のベース部11に設けられた突起部13,14が挿入され、突起部13,14はガイド部15,16に沿って左右に(図3の紙面に垂直な方向に)移動可能とされる。
【0020】
また、背負い枠4と各腰当て板6との間には、腰当て板6の外側への移動は規制するが、内側への移動は許容するデテント機構(本実施形態ではいわゆるラチェット機構を利用したもの)が設けられている。
【0021】
より詳細に説明する。腰当て板6の上下方向中間部の水平断面図である図4に明示するように、腰当て板6のベース部11の裏面には、左右方向(移動方向)に配列された複数の歯18が形成されている。各歯18は、ベース部11の内側端部に向かって緩やかに傾斜する傾斜面21と、ベース部11の裏面に対して直角な垂直面22とからなる鋸歯状となっている。
【0022】
背負い枠4の直立部7には、腰当て板6の歯18と係合可能な爪17が設けられている。爪17は、板状部材であり、その一端が直立部7に軸支されている。この軸支部の軸線は上下方向に延び、従って板状部材は略水平面内で回転可能となっている。また、爪17の軸支部にはねじりコイルばね20が配置されており、これによって、爪17の他端(自由端部)が直立部7の内側、すなわち中心側に向けられ、かつ、腰当て板6のベース部11に向けて付勢されている。従って、通常時には、爪17の自由端部の端面が歯18の垂直面22に当接する。この状態では、腰当て板6の外側(図4においては右方)への移動が規制されることになる。一方、腰当て板6を内側(図4においては左方)に押すと、爪17の自由端部は、歯18の傾斜面21によって、ねじりコイルばね20のばね力に抗して図4においては時計方向に回動し、傾斜面21を乗り越えると、次の歯と歯の間の谷部に落ちる。このようにして、腰当て板6の内側への移動が可能となる。
【0023】
なお、爪17の軸支部には操作レバー19が一体的に形成されている。この操作レバー19をつまみ、外側(図4において時計方向)に回転させると、爪17の自由端部は歯18から離れるため、腰当て板6の外側への移動か可能となる。
【0024】
次に、以上説明した背負式作業機1の作用について、作業機の背負い手順とともに説明する。
【0025】
まず、背負式作業機1を背負うに当たっては、操作レバー19を操作して歯18と爪17との係合を解除することによって左右の腰当て板6を外側に十分に移動させる(腰当て板6の間隔を十分に広げる)。その後、作業者は、肩ベルト9を両肩に通すことによって作業機を背負う。この状態では、腰当て板6の腰当て部12は、作業者の腰部から左右に離れて位置することになる。そして、作業者は、左右の腰当て部12の外面を両手で挟み込んで内側に移動させることにより、腰当て部12を作業者の腰部に密着させる。この際、腰当て部12の外側への移動が規制されているので、左右の腰当て板6が広がらないようになっている。さらには、爪17と歯18とからなるラチェット機構により、左右の腰当て部6の調整の際にクリック感を得ることができので、腰当て部6の位置の把握が容易となり、作業者が作業機1を背負ったときの左右のバランスを適切に取ることができる。
【0026】
また、腰当て板6に設けられた突起部13,14と、背負い枠4の直立部7に設けられたガイド部15,16とによって、腰当て板6は背負い枠4の直立部7に左右に摺動可能に取り付けられているので、簡易な構成で左右の腰当て板6の間隔が作業者の体型に合わせて伸縮自在にされている。
【0027】
以上説明したように、背負い時に腰当て板6の間隔を作業者の体型に合わせて調整することによって、作業者は、腰当て板6を腰部の両側に押し当てることができ、左右にふらつかせることなく安定して作業機を背負うことができる。その結果、作業者にとって作業機との一体感が増して快適に作業を行うことができる。また、このとき腰当て板6は作業者の前方において開放されているので、作業者の腹部付近における圧迫感が軽減される。
【0028】
さらに、作業後において作業者が背負式作業機1を肩から降ろした際には、両腰当て板6の間隔を最小限に狭めることによって、作業機の運搬スペースや収納スペースを小さくすることができる。
【0029】
またさらに、背負式作業機1の腰当て板6が作業によって汚れが付着した場合であっても、腰当て板6はプラスチック材料等の剛性材料で構成されているので、洗い流しや拭き取り等による簡単な作業により汚れを除去することができる。
【0030】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、腰当て板6の腰当て部12は、ベース部11に対して折り畳み可能となっていてもよい。図5は、本発明の変形例である腰当て板106を示す平面図である。同図に示すように、腰当て板106は、ベース部111と腰当て部112に2分割されており、ベース部111と腰当て部112とは上下方向に延びるヒンジ122によって結合されている。このような構成において、腰当て板106は、使用時においては腰当て板106を直立部7に取り付けた状態で腰当て部112をベース部111に対して外側(図5の反時計回り)に回転可能とされ、非使用時には、腰当て部112をベース部111の前面に向けて内側(図5の時計回り)に回転可能とされる。このような構成により、部品の脱着等の面倒な作業なしに作業機の収納スペースや運搬スペースを小さくすることができる。
【0031】
また、腰当て板6に溝状のガイド部を形成し、直立部7に突起部を設けて、腰当て板6を直立部7に対して左右に移動可能にしてもよいし、直立部7の前面に腰当て板6を左右に移動可能に案内するガイド部が設けられてもよい。
【0032】
さらに、上記実施形態の背負式作業機は動力噴霧機であるが、本発明は、ブロア装置、芝刈り装置等のその他の種類の背負式作業機にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による好適な一実施形態である背負式作業機の斜視図である。
【図2】図1の背負式作業機の分解斜視図である。
【図3】図2の直立部に腰当て板が収納された状態を示す縦断面図である。
【図4】図2の腰当て板の上下方向中間部の水平断面図である。
【図5】本発明の変形例である腰当て板を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…背負式作業機、4…背負い枠、6…腰当て板、11…ベース部、12…腰当て部、13,14…突起部、15,16…ガイド部、17…爪、18…歯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負い枠(4)と、前記背負い枠(4)に設けられた左右一対の腰当て板(6)とを備える背負式作業機(1)において、
前記腰当て板(6)は、前記背負い枠(4)に左右に移動可能に取り付けられているベース部(11)と、前記ベース部(11)の外側端部から前方に延びる腰当て部(12)とを有することを特徴とする背負式作業機。
【請求項2】
前記ベース部(11)と前記背負い枠(4)とは、互いに摺動可能に係合する突起部(13,14)と溝状のガイド部(15,16)とにより、相対的に左右に移動可能となっていることを特徴とする請求項1記載の背負式作業機。
【請求項3】
前記ベース部(11)には、当該ベース部(11)の移動方向に沿って配列された複数の歯(18)が設けられており、
前記背負い枠(4)は、前記歯(18)と係合する爪(17)を有し、
前記歯(18)及び前記爪(17)は、前記腰当て板(6)の外側への移動を規制するが、前記腰当て板(6)の内側への移動を許容するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の背負式作業機。
【請求項4】
前記腰当て板(6)の前記腰当て部(12)は、前記ベース部(11)に対して折り畳み可能となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の背負式作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−37428(P2007−37428A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223311(P2005−223311)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】