説明

脂溶性または疎水性化合物の送達に有用なミセル系

本発明は、疎水性または脂溶性化合物、特に治療化合物の送達のための逆ミセル製剤を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2003年11月26日に提出された仮出願番号60/525,572、2004年2月2日に提出された60/541,389および2004年4月28日に提出された60/566,157に基づく優先権を主張し、それらの内容は参照することにより全体として本明細書に含まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は疎水性または脂溶性化合物、特に治療化合物の送達のための逆ミセル製剤を対象とする。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
疎水性または脂溶性治療化合物の経口バイオアベイラビリティを向上させる方法はかなり数多くある。溶解性増強、粒子サイズの縮小、浸透性増強、p−グリコプロテイン阻害、並びに改善された放出は、もっともよく用いられるアプローチのうちのいくつかである。
【0004】
例えば、水中油型マイクロエマルジョン系(o/wマイクロエマルジョン)において、通常、疎水性治療化合物は非常に小さな小滴として油相で可溶化され、界面活性剤によって熱力学的に安定化される。米国特許6,458,373を参照。自己乳化薬物送達系(SEDDS)において、疎水性/脂溶性治療化合物は「油性」溶媒および共溶媒中に乳化剤/界面活性剤と共に溶解するが、これは水中または体液中において希釈されるとエマルジョンまたはそれと似たような構造を形成する(S. A. Charman, W. N. Charman, M. C. Rogge, T. D. Wilson, F. J. DutkoおよびC. W. Pouton, Self-emulsifying drug delivery systems: formulation and biopharmaceutic evaluation of an investigational lipophilic compound, Pharm. Res. 9: 87-93、1992年1月)。
【0005】
薬物送達システムは疎水性治療化合物の経口バイオアベイラビリティを向上させるためにさらに吸収エンハンサーを含んでいてもよい。両親媒性分子(同じ分子中に親水性および疎水性部分の両方を有するもの)は界面活性の薬剤(界面活性剤)であり、溶解性エンハンサーおよび吸収エンハンサーとして広く用いられてきた。水との接触時に、両親媒性物質は、その固有の特性、両親媒性物質と水との比率および油などのその他の成分の存在といった要因によって様々な構造を形成する。水対両親媒性物質の比率が高いとミセルまたはエマルジョンが形成され得るのに対し、水対両親媒性物質の比率が低いと、いわゆるL2相または逆ミセルまたは油中水型マイクロエマルジョンが形成され得る。水または体液のような水性液体とある程度まで混合されると、逆ミセルは反転(inverse)され、ミセル、混合ミセル、エマルジョン、またはその他のより複雑な構造もしくはベシクルを形成し得る。逆ミセルの製剤がほとんど吸収されない水溶性薬物の経口バイオアベイラビリティを著しく向上させることは示されているが(P. P. Constantinides, L. Liang, D. Fast, S. Dagar, L. He, L. Li, K. Opeifa, Bioavailability Enhancement of Leuprolide upon Intraduodenal Administration in Dogs from Lipid Polymer Micelles (LPM、登録商標)、 2002 AAPS meeting, Toronto, Canada;および米国特許6,429, 200, Reverse Micelles for Delivery of Nucleic Acids)、これまで疎水性または脂溶性薬物の経口送達に広く用いられていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
疎水性/脂溶性治療化合物の効率的な送達および吸収について、当該技術分野における必要性が依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は、生物活性な疎水性および/または脂溶性治療化合物を動物へ送達するための製剤および方法を提供する。また、本発明は、生物活性な疎水性および/または脂溶性治療化合物の経口バイオアベイラビリティを向上させる製剤および方法を開示する。
【0008】
具体的には、本発明は、生物活性な疎水性および/または脂溶性治療化合物の溶解性を向上させ、また同時に前記治療化合物の経口吸収を向上させる製剤および方法を開示する。本発明はさらに、前記治療化合物の水溶性を上げる方法を開示する。
【0009】
組成物は逆ミセルの形態におけるものであり、該逆ミセルは、1つ以上の非イオン界面活性剤もしくは非イオンとイオン界面活性剤との混合物、1つ以上の親水性溶媒および/もしくは可溶化剤および/もしくは水性媒体から構成される親水相、ならびに1つ以上の治療効果のある疎水性薬剤からなる。
【0010】
さらに、組成物は、p−グリコプロテイン阻害剤、吸収エンハンサーもしくはプロモーター、タイトジャンクションモジュレータ(tight junction modulator)、脂質膜モビライザ(lipid membrane mobilizers)および抗酸化剤、ならびに、緩衝剤、フレーバラント(flavorants)などの一般的な薬学的に許容されるその他の賦形剤を含有していてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の詳細な説明
本発明の製剤は逆ミセル系であり、1つ以上の界面活性剤、連続相、親水相ならびに1つ以上の生物活性な疎水性および/または脂溶性治療化合物から構成されるものである。本明細書において、「逆ミセル」とは「逆ミセル溶液(L2)」、「逆異方性ネマチック(reverse anisortropic nematic)(N2)」または「逆ミセルキュービック(reverse micellar cubic(l2))」系を意味する。
【0012】
逆ミセル製剤は、製剤中および/または水もしくは体液中における、生物活性な疎水性および/または脂溶性治療化合物の溶解性を上げるため、可溶化剤を含有していてもよい。可溶化剤は、水または体液による希釈時において、疎水性および/または脂溶性治療化合物を可溶化するためのベース(base)をさらに提供することもできる。
【0013】
1つ以上の界面活性剤、連続相、親水相および1つ以上の前記治療化合物を含む逆ミセル系は、15%未満、好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満、そして最も好ましくは2%未満のトリグリセリドを含有する。
【0014】
逆ミセル系は、前記治療化合物の胃腸吸収を向上させるため、p−グリコプロテイン阻害剤などの、当技術分野で公知の阻害剤を含んでいてもよい(T. Chang, L. Z. Benet, M. F. Hebert, The effect of water-soluble vitamin E on cyclosporin pharmacokinetics in healthy volunteers, Clin. Pharmacol. Ther. 59 (3): 297-303、1996年3月)。
【0015】
本発明の逆ミセル系は、吸収エンハンサーもしくはプロモーター、タイトジャンクションモジュレータ、脂質膜モビライザ、抗酸化剤、保存剤、緩衝剤、香料(flavorants)または当技術分野で公知な薬学的に許容される添加剤のようなその他の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0016】
界面活性剤
通常、本発明の製剤中に含まれる界面活性剤は、非イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤とイオン界面活性剤との組み合わせから選ぶことができる。非イオン界面活性剤としては、1つ以上の脂肪酸エステルまたはそのアミドもしくはエーテル類似物、あるいはそれらの親水性誘導体(例えば、モノエステルもしくはジエステル、またはそれらの親水性誘導体、あるいはそれらの混合物;モノグリセリドもしくはジグリセリド、またはそれらの親水性誘導体、あるいはそれらの混合物;濃縮モノ−もしくは/およびジグリセリド、またはその親水性誘導体を有する混合物;その他アルコールのモノエステルもしくはジエステルもしくは複合エステル、ポリオール、糖類もしくはオリゴ糖類もしくは多糖類、オキシアルキレンオリゴマーもしくはポリマーもしくはブロックポリマー、またはそれらの親水性誘導体、あるいはそれらのアミド類似体;ならびにアミン、ポリアミン、ポリイミン、アミノアルコール、アミノ糖、ヒドロキシアルキルアミン、ヒドロキシポリイミン、ペプチド、ポリペプチドまたはそれらのエーテル類似体の脂肪酸誘導体)が挙げられるが、それらに限定されない。このクラスにおいて好ましいのは、6〜12個の炭素原子、より好ましくは6〜8、6〜10、6〜12、8〜10もしくは8〜12個の炭素原子を有する脂肪酸部分を含むか、またはその中で濃縮された界面活性剤である。本明細書における用語「親水性誘導体」とは、親水性成分で誘導体化された界面活性剤、すなわち付加的な親水性部分が界面活性剤分子または界面活性剤分子の部分構造に加えられているようなものを意味する。界面活性剤の親水性誘導体としては、さらに、部分的に誘導体化された界面活性剤であって、界面活性剤とその親水性誘導体との混合物であるものが挙げられる。そのようなものとして、油、アルコールおよびその他の界面活性剤を、PEG、ポリプロピレングリコール、糖類、オリゴ糖類、多糖類およびポリオールとエステル交換した生成物、あるいは類似の方法で変換した生成物が、本発明に含まれる。
【0017】
その他のクラス、例えば、脂肪酸塩、胆汁塩、硫酸塩、スルホン酸塩、スルホコハク酸塩、カルボン酸塩、ラクチレート(lactylates)、リン脂質および誘導体、第4級アンモニウム塩、アミン塩、ポリエトキシ化アンモニウム塩(polyethoxylated ammonium salts)、ならびにそれらの混合物などのイオン界面活性剤または両性イオン界面活性剤から、界面活性剤を選んでもよい。このような界面活性剤の親水性誘導体(PEG-リン脂質など)も、本発明に含まれる。
【0018】
本発明の組成物は、1つ以上の非イオン界面活性剤、または1つ以上の非イオン界面活性剤と1つ以上のイオン界面活性剤との組み合わせを含有する。該組み合わせにおいて、非イオン界面活性剤のイオン界面活性剤に対する比率は約99.99:0.01〜約10:90である。非イオン界面活性剤のHLB値は(hydrophilic-lipophilic-balance)好ましくは4より大きく、より好ましくは約5〜20のHLB値を有している。
【0019】
界面活性剤は、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、そして最も好ましくは2重量%未満のトリグリセリドを含有する。
【0020】
本発明の製剤中の界面活性剤量は、約0.001と約99.8重量%の間である。
【0021】
界面活性剤の例示としては、油およびアルコールの中鎖エステル交換生成物;モノグリセリドもしくはジグリセリドもしくはその混合物;ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルもしくはジエステルもしくはその混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールアルキルエーテル;プロピレングリコール脂肪酸モノエステルもしくはジエステルもしくはその混合物;POE-POPブロックコポリマー脂肪酸モノエステルもしくはジエステルもしくはその混合物;糖エステル;胆汁塩;脂肪酸塩;ビスアルキルスルホコハク酸塩(bisalkyl sulfosuccinate salts);リン脂質;リン脂質の親水性誘導体;ポリアミンもしくはポリイミンもしくはアミノアルコールもしくはアミノ糖もしくはペプチドもしくはポリペプチドの脂肪酸誘導体;または上記界面活性剤の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
より具体的な界面活性剤の例示としては、PEG-8 カプリル/カプリングリセリド(Labrasol, Acconon MC-8)、PEG-6 カプリル/カプリングリセリド(Softgen 767, Acconon CC-6)、PEG-12 カプリル/カプリングリセリド(Acconon CC-12)、PEG-35 ヒマシ油(Cremophor EL)、PEG-40 ヒマシ油(Cremophor RH)、PEG-60 コーングリセリド(corn glycerides)(Crovol M70)、;ラウロイル マクロゴール32グリセリド(lauroyl macrogol-32 glycerides)(Gelucire 44/14)、PEG-23 ラウリルエーテル(Brij 35)、PEG-8 ラウレート(MAPEG 400 ML)、ビタミンE TPGS、PEG-20 モノオレイン酸ソルビタン(Tween 80)、PEG-ジパルミトイル ホスファチジルエタノールアミン、PEG-ジステアロイル ホスファチジルエタノールアミン、胆汁酸および胆汁塩、CTAB、DODABならびにビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムがある。
【0023】
連続相
連続相は界面活性剤もしくは可溶化剤、または界面活性剤と可溶化剤との組み合わせを含む。治療化合物の一部または全てが連続相中に溶解している。
【0024】
本発明の逆ミセル系中のその他の成分は、連続相中に可溶化されていてもよいし、されていなくてもよい。その他の可溶化剤が用いられない場合、界面活性剤の大部分が連続相かつ可溶化剤として機能する。連続相の量は、製剤中の50〜99.9重量%である。
【0025】
可溶化剤(任意)
界面活性剤は可溶化剤として機能することができ、その中に治療化合物が可溶化されている。しかしながら、前記界面活性剤に加え、以下の材料の1つ以上を可溶化剤として製剤に加えることができる:
両親媒性化合物:アルコール、アミノアルコール、グリコール、ポリオール、糖類もしくはオリゴ糖類もしくは多糖類、オキシアルキレンオリゴマーもしくはポリマーもしくはブロックポリマー、アミン、ポリイミン、ヒドロキシアルキルアミン、ヒドロキシポリイミン、ペプチド、ポリペプチド、またはそれらの親水性誘導体の脂肪酸エステル、エーテルあるいはアミド;ならびに脂肪酸、ポリグリセリル化(polyglycerized)脂肪酸の親水性誘導体など。
【0026】
イオンまたは両性イオン界面活性剤:脂肪酸塩、胆汁塩、硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、ラクチレート、リン脂質およびそれらの誘導体、ならびに第4級アンモニウム塩など。
【0027】
錯化剤:電荷錯化剤(charge-complex agents)(例えば、脂肪酸、有機酸およびキレート剤);および包接錯化剤(inclusion complexing agents)(例えば、シクロデキストリンおよび誘導体)など。
【0028】
溶媒/共溶媒:疎水性または親水性溶媒/共溶媒など。
【0029】
エステル、エーテル、アルコール、脂肪アルコール、芳香族アルコール、ポリオール、オキシアルキレンオリゴマーもしくはポリマーもしくはブロックポリマー、アミン、アミド、脂肪酸または水。
【0030】
あるいは、上記可溶化剤の混合物を用いることができる。
【0031】
可溶化剤は、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、そして最も好ましくは2重量%未満のC−C25脂肪酸トリグリセリドを含有すべきである。
【0032】
本発明の製剤中の可溶化剤の量は、0〜99.8重量%である。
【0033】
このような可溶化剤のいくつかの例示としては、グリコールの脂肪酸モノエステルまたはジエステルまたはそれらの混合物(例えば、エチレングリコールもしくはプロピレングリコールもしくはブチレングリコールなど);モノグリセリドもしくはジグリセリドもしくはその混合物;ポリグリセリル化脂肪酸、ポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルもしくはジエステルもしくはその混合物;POE-POPブロックコポリマー脂肪酸モノエステルもしくはジエステルもしくはその混合物;ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;エチレングリコールもしくはジエチレングリコールもしくはトリエチレングリコールもしくはポリエチレングリコールアルキルエーテル;リン脂質もしくはその誘導体;PEG-リン脂質;PEGs;アルコール;脂肪アルコール;脂肪酸;ならびに前述の可溶化剤の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
可溶化剤のより詳細ないくつかの例示としては、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(Captex 200)、モノカプリル酸プロピレングリコール(Capmul PG-8)、カプリル酸/カプリン酸プロピレングリコール(Labrafac PG)、ジカプリル酸プロピレングリコール(Captex 100)、ジエチルヘキサン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール(Capmul PG-12)、カプリル酸/カプリン酸グリセリル(Capmul MCM)、モノカプリル酸グリセリル(Capmul MCMC-8、Imwitor 308)、モノオレイン酸グリセリル(Capmul GMO)、カプリン酸モノグリセリド(Imwitor 312)、PEG-6 コーン油(Labrafil M 2125)、モノオレイン酸ソルビタン(Span 80);
ラウリル硫酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルグリセロール、ポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ラウリルベタイン;
オレイン酸、カプリル酸、カプリン酸;
クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、EDTA;
シクロデキシトリン(その様々な形態および誘導体);ならびに
アセチルトリエチルシトレート、トリエチルシトレート、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、トリアセチン;テトラヒドロフルフリルアルコール PEGエーテル(グリコフロール)、m−PEG、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル;エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体;ポリエチレングリコール(PEG400など)、ポリプロピレングリコール、POE-POPブロックポリマー;ピロリドン、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン(N-hydroxyalkylperrolidones)、N-メチルピロリドン、ピペリドン、N-アルキルピペリドン、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0035】
阻害剤
必要に応じて、本発明の製剤は、酵素阻害剤およびP−グリコプロテイン阻害剤などの阻害剤をさらに含むこともできる。これらの阻害剤の濃度は当該技術分野の知識に従うものとする。
【0036】
その他の添加剤
製剤は当該技術分野で公知のその他の添加剤をさらに含有していてもよい。このような添加剤は、例えば、吸収性浸透勾配剤(グルコースおよびスクロースなど);緩衝剤;抗酸化剤;保存剤、またはその他の薬学的に許容される添加剤;公知の吸収プロモーターもしくはエンハンサー;タイトジャンクションモジュレータ(パルミトイルカルニチンなど)、および脂質膜モビライザ(腸管上皮の細胞脂質膜に組み込まれ、膜の表面張力を下げて脂溶性分子の細胞間通過を容易にする脂質もしくは界面活性剤もしくはコレステロールなど)である。
【0037】
親水相
本発明の製剤中の親水相は、1つ以上の親水性溶媒および/または可溶化剤および/または水性媒体を含有する。水が親水相中に存在していてもよいし、存在していなくてもよい。親水相は製剤の約0.1〜50重量%を構成する。その他の成分(例えば、可溶化剤、水混和性溶媒、水溶性界面活性剤、イオン界面活性剤、錯化剤、およびその他の添加剤など)が、親水相中に存在していてもよい。
【0038】
治療化合物
用語「治療化合物(therapeutic compounds)」または「薬物(drug)」または「(薬学的に)活性剤(pharmaceutically active agent)」は、本明細書および特許請求の範囲において、治療上、栄養上または診断目的に有用なあらゆる化合物を意味して用いられている。さらに、当該用語は、1つ以上のそういった化合物、または1つ以上のそういった化合物をその他の(非疎水性)活性剤と配合したものを包含する。さらに本発明は、このような薬剤を動物に、好ましくはほ乳類に、最も好ましくはヒトに送達するのに有用である。
【0039】
本発明の逆ミセル系は、あらゆる疎水性もしくは脂溶性治療化合物の経口または粘膜送達に適用できる。本製剤中には、2つ以上の前記疎水性薬物が存してもよいし、またはその他の薬剤(疎水性か否かは問わない)と組み合わせて前記薬物が存してもよい。
【0040】
本発明は特定の活性剤のみに限られず、例えば、制御放出送達が望まれるあらゆる難水溶性化合物に適用できる。このような活性剤の限定されない例示としては、アルベンダゾール、アルブテロール、アシクロビル、アドリアマイシン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、アミオダロン、アムロジピン、アンフェタミン、アムホテリシンB、アトルバスタチン、アトバクオン、アジスロマイシン、バクロフェン、ビカルタミド、ブスルファン、ブテナフィン、カルシポトリエン、カルシトリオール、カンプトテシン、カプサイシン、カロテン、セレコキシブ、セリバスタチン、クロルフェニラミン、シメチジン、シプロフロキサシン、シサプリド、セチリジン、クラリスロマイシン、クレマスチン、コデイン、シクロスポリン、ダナゾール、ダントロレン、デクスクロルフェニラミン、ジゴキシン、ジリスロマイシン、ドネペジル、エファビレンツ、エプロサルタンおよびその他のサルタン、エトドラク、エトポシド、ファモチジン、フェンタニル、フィナステライド、フルコナゾール、フルルビプロフェン、フルバスタチン、フォスフェニトイン、フロバトリプタン、ガバペンチン、ゲムフィブロジル、グリベンクラミド、グリブリド、グリメピリド、グリセオフルビン、ハロファントリン、イブプロフェン、イリノテカン、イソトレチノイン、イトラコナゾール、イベルメクチン、ケトコナゾール、ケトロラク、ラモトリジン、アンギオテンシン変換酵素(ACE)もしくはNEP阻害剤、フェノフィブラートもしくはフィブリン酸誘導体、フェキソフェナジン、フルタミド、グリピザイド、グリブリド、イスラジピン、ロラタジン、ロバスタチン、メルファラン、ニフェジピン、レフルノミド、ロペラミド、リコペン、ミフェプリストン、メフロキン、メタドン、メトキサレン、メトロニダゾール、ミコナゾール、ミダゾラム、ミグリトール、ミトキサントロン、ナブメトン、ナルブフィン、ナラトリプタン、ネルフィナビル、ニルタミド、ニザチジン、オキサプロジン、パクリタキセル、ペンタゾシン、ピオグリタゾン、ピゾテフィン(pizotefin)、プラバスタチン、プロブコール、ピリドスチグミン、ラロキシフェン、ロフェコキシブ、レパグリニド、リファペンチン、リメキソロン、リザトリプタン、ロシグリタゾン、サクイナビル、シブトラミン、クエン酸シルデナフィル、シンバスタチン、シロリムス、スピロノラクトン、スマトリプタン、タクリン、タクロリムス、タモキシフェン、タムスロシン、ターグレチン、タザロテン、テニポシド、テルビナフィン、チアガビン、チザニジン、トピラメート、トポテカン、トレミフェン、トラマドール、トレチノイン、トログリタゾン、トロバフロキサシン、ベルテポルフィン、ビガバトリン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ザフィルルカスト、ジレウトン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾピクロン、プロトンポンプ阻害剤(ランソプラゾール、エソメプラゾール、オメプラゾールおよびラベプラゾールなど)、MAPキナーゼ阻害剤、ICE阻害剤(プラルナカサン(pralnacasan)など)、プソイドエフェドリン、インドメタシン、ナプロキセン、エストロゲン、テストステロン、ステロイド、フェニトイン、エルゴタミンおよびカンナビノイド、それらの薬学的に許容される塩、異性体、プロドラッグ(エステルなど)および誘導体、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0041】
好ましい疎水性活性剤としては、アルブテロール、アシクロビル、アドリアマイシン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン(oxcarbazepine)、トピラメート(topiramate)、エプロサルタン、シクロスポリン、グリセオフルビン、アンギオテンシン変換酵素(ACE)もしくはNEP阻害剤、フェノフィブラート、フェキソフェナジン、フルタミド、グリピザイド、グリブリド、イスラジピン、ロラタジン、ロバスタチン、メルファラン、ニフェジピン、プロトンポンプ阻害剤(ランソプラゾール、エソメプラゾール、オメプラゾールおよびラベプラゾールなど)、MAPキナーゼ阻害剤、プラルナカサン(pralnacasan)、プソイドエフェドリン、インドメタシン、ナプロキセン、エストロゲン、テストステロン、ステロイド、フェニトイン、スマトリプタン、エルゴタミンもしくはカンナビノイド、あるいはそれらの薬学的に許容される塩、異性体、またはプロドラッグもしくはその誘導体が挙げられる。より好ましくは、それらは、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、エプロサルタン、フェノフィブラートもしくはフィブリン酸誘導体、フェキソフェナジン、グリピザイド、トピラメート、シクロスポリン、ランソプラゾール、エソメプラゾールおよびラベプラゾール(rabeprozole)、あるいはそれらの薬学的に許容される塩、異性体、またはプロドラッグもしくは誘導体から選択される。本発明の逆ミセル組成物において最も好ましいものは、フェノフィブラートもしくはフィブリン酸誘導体、カルバマゼピン、トピラメート、エプロサルタンおよびシクロスポリンから選ばれる治療剤である。
【0042】
本製剤における薬物の濃度は、当然ながら、活性剤の所望用量によって決まる。当然のことながら、治療で用いるのに必要な本発明の化合物量は選択された特定の化合物によってのみ変化するのではなく、治療が必要な状況の性質、および所望の用法・用量によっても変化する。本発明のような延長または継続した放出制御製剤は、一日に取る服用の回数を減らすか、または所望の血漿中濃度を維持することを一般的に意図するものであることも当然のことである。さらに、用量中心(dosage core)のその他の成分を必要とするか、または所望することによって、薬物の最大割合に影響する。しかしながら、通常、本発明による投与単位の中心は約0.5重量%〜約90重量%、好ましくは約1〜約50重量%、そしてより好ましくは約1〜約10重量%の薬物を含有する。
【0043】
逆ミセル製剤
1つの実施態様において、本発明の逆ミセル系は、1つ以上の界面活性剤、連続相、親水相および1つ以上の前記治療化合物を含む。この実施態様によれば、連続相は、前記界面活性剤の大部分を含み、そのような界面活性剤は非イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤とイオン界面活性剤との組み合わせから選択される。さらに、逆ミセル系は、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、そして最も好ましくは2重量%未満のトリグリセリドを含む。親水相は、1つ以上の親水性溶媒、可溶化剤または水性媒体、あるいはその組み合わせを含む。相当量の治療化合物は連続相に可溶化されている。
【0044】
別の実施態様では、逆ミセル系は、1つ以上の脂肪酸エステルもしくはエーテルもしくはその親水性誘導体、連続相、親水相および1つ以上の前記治療化合物を含む。この実施態様によれば、連続相は前記エステルもしくはエーテルもしくはその親水性誘導体の大部分を含む。さらに、逆ミセル系は、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、そして最も好ましくは2重量%未満のトリグリセリドを含む。
【0045】
さらに別の実施態様において、逆ミセル系は、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の可溶化剤、連続相、親水相および1つ以上の前記治療化合物を含む。本実施態様によれば、逆ミセル系は、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、そして最も好ましくは2重量%未満のトリグリセリドを含む。可溶化剤は、連続相、または親水相、または両相中において混和され得る。さらに、この系は2つ以上の可溶化剤を含有していてもよく、そのような可溶化剤のいくらかは連続相(または疎水/脂溶相)中に混和されてもよく、疎水性/脂溶性治療化合物の製剤への溶解性を上げる。その一方で、その他の可溶化剤は親水相に混和され、体液との混合時における前記治療化合物の水溶性を上げ得る。この実施態様によれば、逆ミセル系は、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、そして最も好ましくは2重量%未満のトリグリセリドを含む。
【0046】
さらに別の実施態様において、逆ミセル系は、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の可溶化剤、連続相、親水相、および1つ以上の前記治療化合物を含む。この実施態様によれば、可溶化剤は少なくとも1つの錯化剤を含有し、該錯化剤は治療化合物と錯体を形成し、治療化合物の水溶性を上げる。好ましい実施態様では、錯化剤はシクロデキストリンである。シクロデキストリンは前記治療化合物と包接錯体(inclusion complexes)を形成し得る。別の好ましい実施態様では、錯化剤はクエン酸またはオレイン酸のような酸である。この実施態様において、酸は1°、2°および3°アミン基を持つ治療化合物と電荷錯体を形成し得る。
【0047】
さらに別の実施態様において、逆ミセル系は、1つ以上の界面活性剤、1つ以上の可溶化剤、連続相、親水相、1つ以上の阻害剤および1つ以上の前記治療化合物を含む。この実施態様によれば、阻害剤は、p-グリコプロテイン阻害剤などの当業者に公知のものから選択され、治療化合物の吸収を向上させる。
【0048】
さらなる実施態様において、逆ミセル系は、吸収エンハンサーもしくはプロモーター、タイトジャンクションモジュレータ、脂質膜モビライザ、抗酸化剤、保存剤、緩衝剤、香料または当技術分野で公知な薬学的に許容されるその他の添加剤など、その他の添加剤をさらに含有している。
【0049】
さらに別の実施態様において、逆ミセル系は非イオン界面活性剤または非イオン界面活性剤とイオン界面活性剤との組み合わせを含む。ここで、非イオン界面活性剤は4より大きいHLB値を有するものである。好ましくは、非イオン界面活性剤のHLB値は5〜20の間であり、より好ましくは10〜20の間である。
【0050】
さらに、本発明のいずれの系も、治療化合物の水溶性を上げるため、および治療化合物の胃腸管における吸収を上げるために、シクロデキストリン、クエン酸、グルコース、スクロース、イオン界面活性剤、緩衝剤などの水溶性可溶化剤または添加物を1つ以上含んでいてもよい(ここで、そのような系とは、そうでなければ多くの界面活性剤または可溶化剤に溶解できず、ほとんどの自己乳化薬物送達システムにおいて使用に適さないものである)。また本発明の系は、前記治療化合物の溶解性を向上させるための両親媒性可溶化剤を提供し得る。すなわち、ここで述べた系は、経口または粘膜投与された治療剤のバイオアベイラビリティを著しく改善することができる。
【0051】
逆ミセル系はさらに、ゲル、半固体、固体分散物を形成するため、その他の薬学的に許容される賦形剤を含有することができる。この場合、逆ミセル系はそのような賦形剤の固形中に吸収される。本発明の系は、ゼラチンまたはHPMCなどの多くのカプセル化材料に適合である。逆ミセル系は当技術分野で公知のマイクロカプセル化技術によってカプセル化されるか、またはカプセル(硬もしくは軟ゼラチンカプセル、またはスターチなどその他の材料からなるカプセル)であるか、または腸溶性にコートされたカプセル(entrically coated capusles)であるか、または粉末放出制御のためのカプセルであるか、またはカシェ剤(cachets)であるか、あるいは錠剤または液剤剤形にされたものであってもよい。
【0052】
投与および治療
本発明はさらに本発明の逆ミセルを含有する剤形(dosage form)を動物に、好ましくはヒトに投与する方法を提供する。ここで述べた剤形(dosage form)は主に経口で投与される。所望の投与量は、便利にも単回投与か、または適切な間隔(例えば、一日に2回、3回、4回もしくはそれ以上の服用)で投与量を分割して与えられる。
【0053】
本発明の製剤は、異常な状態を治療するため、栄養補給を提供するため、および/または診断薬をほ乳類(好ましくはヒト)に必要に応じて送達するために用いられる。基本的に、そのような状態を治療する方法としては、本発明の逆ミセル製剤を含有する剤形(dosage form)を治療の必要な被験体に経口投与することを包含する。用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」は、状態または疾患の予防も含むことが意図される。
【0054】
好ましい実施態様として、フェノフィブラート、カルバマゼピンもしくはトピラメートを有効成分として含有している本発明の製剤は、患者の高血圧(フェノフィブラート)またはてんかん(カルバマゼピン、トピラメート)状態を当技術分野で公知の方法で治療するために用いられる。
【0055】
有効成分を、薬学的に許容される塩、遊離塩基、プロドラッグ(例えばエステル)または誘導体の形態で用いることができることは、当業者にとって当然のことである。また、キラル活性な成分の場合は、1つもしくは両方の光学異性体、幾何学異性体およびそれらの混合物(ラセミ混合物を含む)を用いることができる。
【0056】
別段に定義されていない場合、本明細書で用いられている全ての技術および科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で言及した全ての出版物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、参照することにより全体として本明細書に含まれる。争いが起こった場合、本明細書(定義を含む)に基づく。さらに、材料、方法および実施例は一例にすぎず、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
本発明を以下の例示的な実施例で詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下に例示された実施態様に限定されるものではなく、また限定されてはならないものである。
【0058】
実施例1:フェノフィブラート逆ミセル系
以下の表1に記載したような適量の界面活性剤および親水相を、均一に分散されるまで、短くボルテックス混合した。得られた逆ミセルに、適量のフェノフィブラートを加えてボルテックス混合し、フェノフィブラートが容易に可溶化しなかった場合は、混合物を暖めた。透明な液体が形成された。
【0059】
【表1】

【0060】
実施例2:親水性可溶化剤を含有するフェノフィブラート逆ミセル系
以下の表2に記載したような、親水性可溶化剤を用いる製剤においては、残りの成分と混合する前に、親水性可溶化剤を親水相中の他の成分と前もって混合した。透明な液体が形成された。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例3:界面活性剤混和性可溶化剤を含有するフェノフィブラート逆ミセル系
以下の表3に記載したような、界面活性剤混和性可溶化剤が用いられる製剤においては、その他の成分と混合する前に、界面活性剤混和性可溶化剤を治療化合物と前もって混合した。フェノフィブラートが容易に可溶化しなかった場合は、混合物を暖めた。透明な液体が形成された。
【0063】
【表3】

【0064】
実施例4:親水性および界面活性剤混和性可溶化剤の両方を含有するフェノフィブラート逆ミセル系
以下の表4、5および6に記載したような、親水性および界面活性剤混和性可溶化剤の両方が用いられる製剤においては、残りの成分と混合する前に、界面活性剤混和性可溶化剤を治療化合物と前もって混合し、また親水性可溶化剤を親水相中のその他の成分と前もって混合した。透明な液体が形成された。
【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
実施例5:Caco-2細胞モデルにおけるフェノフィブラート輸送試験
逆ミセルを水または体液による希釈で反転させた。よって、フェノフィブラートを含有するLabrasol溶液(10%)は反転された逆ミセル系の模倣(mimic)である。フェノフィブラートの輸送に対する逆ミセル系の効果を対照と比べて測定し、表7に示すように、%増強(% enhancement)で表した。比較のため、いくつかの可溶化剤も表7に含めた。
【0069】
本実施例では、Caco-2細胞を腸側(apical side、AP)および血漿(basolateral、BL)側を有するチャンバー中に取り付けた透過性支持体上にコンフルエンスまで増殖させた。フェノフィブラート含有逆ミセルを腸チャンバーに加え、濃度を0.2mg/mLにした。透過係数はYazdaniaらによって既に報告されたような方法で測定できる(Yazdanian M, Glynn, SI, Wright JL,ら、Correlating partitioning and Caco-2 permeability of structurally diverse small molecular weight compounds. Pharm Res 15: 1490-1494、1998年)。簡潔には、Labrasol溶液中のフェノフィブラートを公知の最終濃度に調製した。APからBLへの実験のため、溶液を細胞の腸側にセットして、サンプルを血漿側から取った。サンプルをHPLCで分析する。輸送率(J)を、透過した薬物の累計量をプロットすることにより、時間関数で測定する。あるいは、関連する増強比を用いる。結果は、Caco-2輸送モデルにおいて、逆ミセル製剤がフェノフィブラートの可溶化剤溶液よりもはるかに優れていることを示し、インビボでのバイオアベイラビリティを非常に向上させることを示唆している。
【0070】
表7はCaco-2輸送試験で計算した関連する増強比を示す。
【0071】
【表7】

【0072】
実施例6:フェノフィブラート逆ミセル系の安定性
安定性試験のため、ICHガイドラインに沿って、PD0106-92製剤をゼラチンカプセル(LiCaps, CAPSUGEL)中にセットした。他の全てのサンプルは安定性チャンバーに25℃にて湿度コントロールなしでセットした。表8にまとめたように、どのサンプルにおいても、結晶成長も相分離も観察されなかった。カプセルは無傷であった。
【0073】
【表8】

【0074】
実施例7:カルバマゼピンを含有する逆ミセル系
以下の表9に記載したような、親水性および界面活性剤混和性可溶化剤の両方が用いられるカルバマゼピン製剤においては、残りの成分と混合する前に、界面活性剤混和性可溶化剤を治療化合物と前もって混合し、また親水性可溶化剤を親水相中のその他の成分と前もって混合した。透明な液体が形成された。
【0075】
【表9】

【0076】
実施例8:トピラメートを含有する逆ミセル系
以下の表10に記載したような、親水性および界面活性剤混和性可溶化剤の両方が用いられるトピラメート製剤においては、残りの成分と混合する前に、界面活性剤混和性可溶化剤を治療化合物と前もって混合し、また親水性可溶化剤を親水相中のその他の成分と前もって混合した。透明な液体が形成された。
【0077】
【表10】

【0078】
実施例9:バイオアベイラビリティ改善および食物影響減少のための水不溶性薬物用逆ミセル系
逆ミセルおよび自己乳化薬物送達システムは、市販製品と比べて、絶食状態の犬におけるフェノフィブラートの経口バイオアベイラビリティを446%まで増大させた。食物の影響は大いに減少したか、またはほとんど排除された。
【0079】
本実施例において、安定な逆ミセル(RM)ならびに安定な自己乳化薬物送達システム(SEDDS)は、水不溶性薬物の経口/粘膜送達のためのプラットフォーム技術として開発された。
【0080】
カルバマゼピンおよびトピラメートの逆ミセル製剤を実施例7および8に従い作製した。フェノフィブラートの逆ミセル製剤およびフェノフィブラートの自己乳化製剤を、表11および12のように調製した。製剤を硬ゼラチンカプセルサイズ00に充填した。充填したカプセルの安定性をICHガイドラインに沿って試験した。
【0081】
【表11】

【0082】
【表12】

【0083】
犬科におけるフェノフィブラート逆ミセルおよび自己乳化製剤の交差薬物動態試験を、市販製品TriCor(登録商標)タブレットを対照として用いて行った。全ての犬(n=6)に試験カプセル製剤およびTriCor(登録商標)タブレット(全てフェノフィブラート投与量で54mg)それぞれを餌与および絶食状態で7日間の休薬期間を経て与えた。それぞれの投与後、PKサンプルを投与前、0.25、0.5、1.0、1.5、2、3、4、6、9、15および24時間の時点で取り出した。有効なLC/UV方法を用いてフェノフィブリン酸について分析した。
【0084】
フェノフィブラート、カルバマゼピンおよびトピラメートの逆ミセル製剤ならびにフェノフィブラートの自己乳化製剤は室温で安定である。3ヶ月安定性試験(25℃/60%RHおよび40℃/75%RH)により、RMおよびSEDDS製剤が安定であり、ゼラチンカプセルに適合することが示された。逆ミセル製剤とDI水もしくは模擬腸液との1:20混合物においてフェノフィブラートの結晶は2日目まで観察されず、これは逆ミセルの反転後においても、フェノフィブラートが混合物(透明)に溶解されたままであることを示している。
【0085】
この犬科における逆ミセルおよび自己乳化製剤の交差薬物動態試験の結果を表13ならびに図1および2にまとめる。犬試験において、逆ミセル(PD0106-121)、自己乳化製剤(PD0106-122)およびTriCor(登録商標)群のAUCは、それぞれ、絶食状態で37.9、33.1および8.5μg/時間/mL、餌与状態で29.2、35.9および25.2μg/時間/mLである。絶食状態では、逆ミセルおよび自己乳化群のAUCはTriCor(登録商標)群のものよりも著しく優れていた(446%および389%)。餌与と絶食状態の間のAUC変化は、TriCor(登録商標)群よりも逆ミセルおよび自己乳化群においてずっと小さかった。これは、著しい食物影響の減少および経口バイオアベイラビリティの改善を表している。
【0086】
すなわち、犬の絶食状態において、逆ミセル製剤はTriCor(登録商標)対照と比較して、食物影響を著しく減らし、フェノフィブラートの経口バイオアベイラビリティを改善したことが示されている。
【0087】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施例9のフェノフィブラート犬科試験の平均PK曲線(絶食状態)。
【図2】実施例9のフェノフィブラート犬科試験の平均PK曲線(餌与状態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆ミセル形態の組成物であって、1つ以上の界面活性剤を含有する連続相、親水相、および1つ以上の生物活性疎水性治療剤を含むものであり、前記1つ以上の界面活性剤が非イオン界面活性剤または非イオンとイオン界面活性剤との組み合わせである、組成物。
【請求項2】
15重量%未満のトリグリセリドを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2重量%未満のトリグリセリドを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1つ以上の界面活性剤が非イオン界面活性剤から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
非イオン界面活性剤が4より高いHLB値を有するものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
1つ以上の界面活性剤が、脂肪酸エステルもしくはそのアミドまたはエーテル類似体(ether analogues)、あるいはそれらの親水性誘導体であり、それらが、
モノエステルもしくはジエステル、またはその親水性誘導体、あるいはそれらの混合物;
モノグリセリドもしくはジグリセリド、またはその親水性誘導体、あるいはそれらの混合物;
濃縮モノ−もしくは/およびジグリセリドまたはその親水性誘導体、その他のアルコールのモノエステルもしくはジエステルもしくは複合エステル、ポリオール、糖類もしくはオリゴ糖類もしくは多糖類、オキシアルキレンオリゴマーもしくはポリマーもしくはブロックポリマーまたはそれらの親水性誘導体、あるいはそれらのアミド類似体を有する混合物;
ならびに、アミン、ポリアミン、ポリイミン、アミノアルコール、アミノ糖、ヒドロキシアルキルアミン、ヒドロキシポリイミン、ペプチド、ポリペプチドまたはそれらのエーテル類似体の脂肪酸誘導体
から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
1つ以上の界面活性剤が、PEG-8 カプリル/カプリングリセリド(Labrasol, Acconon MC-8)、PEG-6 カプリル/カプリングリセリド(Softgen 767, Acconon CC-6)、PEG-12 カプリル/カプリングリセリド(Acconon CC-12)、PEG-35 ヒマシ油(Cremophor EL)、PEG-40 ヒマシ油(Cremophor RH)、PEG-60 コーングリセリド(corn glycerides)(Crovol M70)、ラウロイル マクロゴール32グリセリド(lauroyl macrogol-32 glycerides)(Gelucire 44/14)、PEG-23 ラウリルエーテル(Brij 35)、PEG-8 ラウレート(MAPEG 400 ML)、ビタミンE TPGS、PEG-20 モノオレイン酸ソルビタン(Tween 80)から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
1つ以上の界面活性剤が、6〜12個の炭素原子を有する脂肪酸部分から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
界面活性剤が非イオンとイオン界面活性剤の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
非イオン界面活性剤のイオン界面活性剤に対する比率が約99.99:0.01〜約10:90である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
イオン界面活性剤が、PEG-ジパルミトイル ホスファチジルエタノールアミン、PEG-ジステアロイル ホスファチジルエタノールアミン、胆汁酸および胆汁酸塩(bile salts)、CTAB、DODAB、ならびにビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムから選択される請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
さらに1つ以上の可溶化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
可溶化剤が、両親媒性化合物、イオンもしくは両性イオン界面活性剤、錯化剤、溶媒/共溶媒、またはそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
可溶化剤が、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール(Captex 200)、モノカプリル酸プロピレングリコール(Capmul PG-8)、カプリル酸/カプリン酸プロピレングリコール(Labrafac PG)、ジカプリル酸プロピレングリコール(Captex 100)、ジエチルヘキサン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール(Capmul PG-12)、カプリル酸/カプリン酸グリセリル(Capmul MCM)、モノカプリル酸グリセリル(Capmul MCMC-8、Imwitor 308)、モノオレイン酸グリセリル(Capmul GMO)、カプリン酸モノグリセリド(Imwitor 312)、PEG-6 コーン油(Labrafil M 2125)、オレイン酸、カプリル酸、カプリン酸、アセチルトリエチルシトレート、トリエチルシトレート、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、トリアセチン;テトラヒドロフルフリルアルコール PEGエーテル(グリコフロール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル;ベンジルアルコール、ポリビニルアルコール、POE-POPブロックポリマー、ピロリドン、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン(N-hydroxyalkylperrolidones)、N-メチルピロリドン、ピペリドン、N-アルキルピペリドン、ポリビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、レシチン、リゾレシチン、ホスファチジルグリセロール、ポリエチレングリコール−ホスファチジルエタノールアミン、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ラウリルベタイン、またはそれらの混合物から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
可溶化剤が0〜約99.8重量%の量で存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
親水相が約0.1〜50重量%の組成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
可溶化剤が、治療化合物と錯体を形成する錯化剤を少なくとも1つ含有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
錯化剤が、シクロデキストリン、クエン酸またはオレイン酸から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
さらに、1つ以上の吸収エンハンサー、タイトジャンクションモジュレータ(tight junction modulator)、および/または脂質膜モビライザ(lipid membrane mobilizers)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
さらに1つ以上のP-グリコプロテイン阻害剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
治療剤が以下:
アルベンダゾール、アルブテロール、アシクロビル、アドリアマイシン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、アミオダロン、アムロジピン、アンフェタミン、アムホテリシンB、アトルバスタチン、アトバクオン、アジスロマイシン、バクロフェン、ビカルタミド、ブスルファン、ブテナフィン、カルシポトリエン、カルシトリオール、カンプトテシン、カプサイシン、カロテン、セレコキシブ、セリバスタチン、クロルフェニラミン、シメチジン、シプロフロキサシン、シサプリド、セチリジン、クラリスロマイシン、クレマスチン、コデイン、シクロスポリン、ダナゾール、ダントロレン、デクスクロルフェニラミン、ジゴキシン、ジリスロマイシン、ドネペジル、エファビレンツ、エプロサルタン、エルゴタミン、エトドラク、エトポシド、ファモチジン、フェンタニル、フィナステライド、フルコナゾール、フルルビプロフェン、フルバスタチン、フォスフェニトイン、フロバトリプタン、ガバペンチン、ゲムフィブロジル、グリベンクラミド、グリブリド、グリメピリド、グリセオフルビン、ハロファントリン、イブプロフェン、イリノテカン、イソトレチノイン、イトラコナゾール、イベルメクチン、ケトコナゾール、ケトロラク、ラモトリジン、アンギオテンシン変換酵素(ACE)もしくはNEP阻害剤、フェノフィブラートもしくはフィブリン酸誘導体、フェキソフェナジン、フルタミド、グリピザイド、グリブリド、イスラジピン、ロラタジン、ロバスタチン、メルファラン、ニフェジピン、レフルノミド、ロペラミド、リコペン、ミフェプリストン、メフロキン、メタドン、メトキサレン、メトロニダゾール、ミコナゾール、ミダゾラム、ミグリトール、ミトキサントロン、ナブメトン、ナルブフィン、ナラトリプタン、ネルフィナビル、ニルタミド、ニザチジン、オキサプロジン、パクリタキセル、ペンタゾシン、ピオグリタゾン、ピゾテフィン(pizotefin)、プラバスタチン、プロブコール、ピリドスチグミン、ラロキシフェン、ロフェコキシブ、レパグリニド、リファペンチン、リメキソロン、リザトリプタン、ロシグリタゾン、サクイナビル、シブトラミン、クエン酸シルデナフィル、シムバスタチン、シロリムス、スピロノラクトン、スマトリプタン、タクリン、タクロリムス、タモキシフェン、タムスロシン、ターグレチン、タザロテン、テニポシド、テルビナフィン、チアガビン、チザニジン、トピラメート、トポテカン、トレミフェン、トラマドール、トレチノイン、トログリタゾン、トロバフロキサシン、ベルテポルフィン、ビガバトリン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ザフィルルカスト、ジレウトン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、ゾピクロン、プロトンポンプ阻害剤(ランソプラゾール、エソメプラゾール、オメプラゾールおよびラベプラゾールなど)、MAPキナーゼ阻害剤、ICE阻害剤、プソイドエフェドリン、インドメタシン、ナプロキセン、エストロゲン、テストステロン、ステロイド、フェニトイン、エルゴタミンおよびカンナビノイド、それらの薬学的に許容される塩、異性体、プロドラッグおよび誘導体から選ばれる1つ以上のものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
治療剤が以下:
アルブテロール、アシクロビル、アドリアマイシン、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、シクロスポリン、エプロサルタン、グリセオフルビン、アンギオテンシン変換酵素(ACE)もしくはNEP阻害剤、フェノフィブラートもしくはフィブリン酸誘導体、フェキソフェナジン、フルタミド、グリピザイド、グリブリド、イスラジピン、ロラタジン、ロバスタチン、メルファラン、ニフェジピン、プロトンポンプ阻害剤、MAPキナーゼ阻害剤、プラルナカサン(pralnacasan)、プソイドエフェドリン、インドメタシン、トピラメート、ナプロキセン、エストロゲン、テストステロン、ステロイド、フェニトイン、スマトリプタン、エルゴタミンもしくはカンナビノイド、あるいはそれらの薬学的に許容される塩、異性体、またはプロドラッグもしくは誘導体から選ばれる1つ以上のものである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
治療剤が以下:
カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、エプロサルタン、フェノフィブラートもしくはフィブリン酸誘導体、フェキソフェナジン、グリピザイド、トピラメート、シクロスポリン、ランソプラゾール、エソメプラゾールおよびラベプラゾール、あるいはそれらの薬学的に許容される塩、異性体、またはプロドラッグもしくは誘導体から選ばれる1つ以上のものである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
治療剤が、フェノフィブラートもしくはフィブリン酸誘導体、カルバマゼピン、トピラメート、エプロサルタン、およびシクロスポリンから選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
逆ミセルが、マイクロカプセル化技術によってカプセル化されるか、またはカプセル(硬もしくは軟ゼラチンカプセル、またはスターチなどその他の材料からなるカプセル)であるか、または腸溶性にコートされたカプセル(entrically coated capusles)であるか、または粉末放出制御のためのカプセルであるか、またはカシェ剤(cachets)であるか、あるいは錠剤または液剤剤形である、請求項1〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれかに記載の組成物を経口投与することを含む、治療を必要としている被験体における状態または疾患を治療するための方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−512373(P2007−512373A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541711(P2006−541711)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039567
【国際公開番号】WO2005/053612
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(506339316)スパーナス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】