説明

脂肪酸アルキルエステルの製造方法

【課題】粗食用油や廃食用油を出発原料として、デイーゼル燃料油としての品質を満足し得る脂肪酸アルキルエステルの製造方法の提供。
【解決手段】油脂中の遊離脂肪酸とアルコールとのエステル化反応工程、油脂とアルコールとのエステル交換反応工程、及び精製工程を有する脂肪酸アルキルエステルの製造方法であって、(a)強酸性微粒子からなる触媒を担持してなるか、又は強酸性に変性してなる樹脂発泡体を使用し、油脂中の遊離脂肪酸とアルコールとのエステル化反応を行う工程、(b)アルカリ性微粒子からなる触媒を担持してなる樹脂発泡体を使用し、油脂とアルコールとのエステル交換反応を行う工程、及び(c)エステル交換反応後の反応混合物を樹脂発泡体と接触させて不純物を吸着除去し、脂肪酸アルキルエステルを精製する工程のいずれかにより行う脂肪酸アルキルエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸アルキルエステルの製造方法に関する。さらに詳しくは、植物等由来の油脂、又はこれを利用するレストラン、食品工場、一般家庭などから廃棄される廃食用油を原料として、アルコールとのエステル交換反応により脂肪酸アルキルエステルを安価に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸アルキルエステルは、油脂化学工業において油脂製品、例えば各種界面活性剤等の原料として重要である。したがって、その製造プロセスは油脂化学工業における川上プロセスとして最も重要なプロセスの1つである。
【0003】
一方、脂肪酸アルキルエステルは、バイオマス由来のデイーゼル燃料として使用可能なことから、石油代替の新エネルギーとして注目されている。
【0004】
レストラン、食品工場、一般家庭等で使用されて廃棄される食用油(廃食用油)は、凝固剤により処理して土中に埋めたり、家庭用ごみとしてそのまま捨てられ、焼却する等の方法により処理されるのが一般的であったが、近年、地球環境浄化の理念の高まりに伴い、これら廃食用油についても有効再利用の動きが活発化し始めている。その一つとして、メタノールとのエステル交換反応により脂肪酸メチルエステルを得て、デイ−ゼル燃料に適した油を製造する試みが始まっている。
【0005】
すなわち、食用油に用いられる植物油からの脂肪酸メチルエステルは、粘度、比重などの物性や、燃焼性が軽油に類似しており、エンジンの改造をしなくても使用できるバイオデイーゼル燃料としての可能性が古くから指摘されていたが、最近、リサイクル可能なバイオ燃料として脚光を浴び、とくに米国や欧州で広く利用されている。
【0006】
しかしながら、欧米では、主として新しい食用油由来の脂肪酸メチルエステルが利用されていて、軽油に比べてコスト高のために、主に軽油との混合系で使用されている。食用油には、約3重量%程度の遊離脂肪酸が含まれており、アルカリ処理を施し、脂肪酸石鹸として遊離脂肪酸を除去する必要から高価となっている。また廃食用油を使用する場合でも、劣化して通常、遊離脂肪酸が0.5〜2重量%程度含まれている。いずれにしても安価な原料油脂を使用するためには、この遊離脂肪酸の問題を解決する必要がある。従来技術ではNaOHやKOHの均一アルカリ触媒を用いて脂肪酸石鹸として収率及び触媒を犠牲にして脂肪酸アルキルエステルが製造されており、コスト高の一因となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、従来技術では、均一アルカリ触媒が、副生成物のグリセリンに殆どすべて含まれ、当該グリセリンを有効利用するために、その精製に多大のコストがかかっている。
【0008】
反応後の脂肪酸アルキルエステルにしても微量のアルカリ、グリセリンなどが含まれており、これを除去しないと燃料としての優良な品質にはならない。このために、多量の水で水洗するのが一般的で、操作が複雑で排水の処理にもコストがかかっている。
【0009】
上記のように、従来技術では、デイーゼル燃料用の脂肪酸アルキルエステルの製造方法として、安価な原料を用い、しかも加工費も安価である方法はなかった。
【特許文献1】特開平6−313188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、食用油等で遊離脂肪酸を除去する前の安価な粗食用油やさらに安価な廃食用油を出発原料として用いる、デイーゼル燃料油としての品質を満足し得、かつ製造プロセスの簡素化と排出物を低減若しくは実質的に不発生にすることで、結果として加工費を安く抑え、軽油代替燃料として普及しやすい安価な脂肪酸アルキルエステルの効率的な製造方法の提供を目的とする。かかる方法の提供は、油脂化学工業の川上プロセスとして、より合理的な革新的プロセスを提供することにもなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、(1)油脂原料中の遊離脂肪酸を簡便な前処理反応でアルコールにより効率的にエステル化し得ること、具体的には、強酸性微粒子からなる触媒を担持してなるか、又は強酸性に変性してなる樹脂発泡体を用いてエステル化反応を行うことで酸触媒の比表面積の増大を図り反応効率を向上させて遊離脂肪酸のエステル化を効率化し得ること、(2)油脂とアルコールとのエステル交換反応において、元来、エステル交換反応に対して高活性とされるアルカリ性のアルコール不溶性微粒子からなる触媒を所定の樹脂発泡体に担持させて用いてアルカリ触媒の比表面積の増大を図ることで飛躍的に反応効率を向上させ得ること、しかも反応生成物中にアルカリ触媒が混入せず、精製工程が簡略化され得ること、(3)エステル交換反応後に行われる過剰アルコールの除去およびグリセリンを主成分とする重液を分層分離した後に得られる軽液(粗脂肪酸アルキルエステル)に含まれる微量のグリセリンなど親水性の不純物を親水性の樹脂発泡体で吸着除去できること、しかも樹脂発泡体の再生では、多量のアルコールで吸着したグリセリンなどの洗浄除去(脱着)が可能で、この洗浄後回収されるアルコールが反応に再使用できること、の大きく3つの点を見出し本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
〔1〕 油脂中の遊離脂肪酸とアルコールとのエステル化反応工程、油脂とアルコールとのエステル交換反応工程、及び脂肪酸アルキルエステルの精製工程を有する脂肪酸アルキルエステルの製造方法であって、前記3つの工程の少なくともいずれか1つの工程を、
(a)強酸性微粒子からなる触媒を担持してなるか、又は強酸性に変性してなる樹脂発泡体と油脂及びアルコールとを接触させて、油脂中の遊離脂肪酸とアルコールとのエステル化反応を行う工程、
(b)アルカリ性微粒子からなる触媒を担持してなる樹脂発泡体と油脂及びアルコールとを接触させて、油脂とアルコールとのエステル交換反応を行う工程、及び
(c)エステル交換反応後の反応混合物を樹脂発泡体と接触させて不純物を吸着除去し、脂肪酸アルキルエステルを精製する工程、
のうちの対応する工程により行う、脂肪酸アルキルエステルの製造方法、
〔2〕 工程(a)の触媒が樹脂微粒子にスルホン酸基を導入してなるものである前記〔1〕記載の製造方法、
〔3〕 工程(a)の触媒微粒子の平均粒径が0.1〜100μmである前記〔1〕又は〔2〕記載の製造方法、
〔4〕 工程(b)の触媒微粒子が、アルコール不溶性の、アルカリ土類金属を含む水酸化物、酸化物及び複合酸化物、並びにアルコール不溶性固体に固定化された、アルカリ金属の水酸化物、酸化物、複合酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるものである、前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載の製造方法、
〔5〕 工程(a)のエステル化反応及び/又は工程(b)のエステル交換反応を油脂100重量部に対してアルコール10〜80重量部の割合で行い、その際、反応温度を50〜120℃とする前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載の製造方法、
〔6〕 (d)工程(c)で不純物が吸着した樹脂発泡体をアルコールで洗浄し、洗浄後のアルコールを工程(a)でのエステル化反応及び/又は工程(b)でのエステル交換反応に供する工程を、さらに有する前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載の製造方法、
〔7〕 樹脂発泡体が、比重が0.005〜0.2であって、連続細孔を有する親水性かつ塩基性の樹脂発泡体である前記〔1〕〜〔6〕いずれか記載の製造方法、
〔8〕 工程(a)の強酸性に変性してなる樹脂発泡体がスルホン化されたベンゼン環を有する架橋性樹脂からなるものである前記〔1〕及び〔4〕〜〔7〕いずれか記載の製造方法、
〔9〕 樹脂発泡体がメラミン樹脂発泡体である前記〔1〕〜〔7〕いずれか記載の製造方法、
〔10〕 工程(b)の樹脂発泡体が触媒微粒子をメラミン樹脂発泡体に有機酸性微粒子及び/又は無機酸性微粒子を介して担持してなるものである前記〔9〕記載の製造方法、並びに
〔11〕 工程(b)の触媒微粒子の平均粒径が0.1〜10μm、有機酸性微粒子の平均粒径が0.1〜100μm、無機酸性微粒子の平均粒径が10〜100nmである前記〔10〕記載の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安価に高品質のデイーゼル燃料用脂肪酸アルキルエステルを製造することができるので、バイオ燃料の一層の普及が可能となる、と同時に油脂化学工業における川上プロセスである脂肪酸アルキルエステルの製造プロセスが革新され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の脂肪酸アルキルエステルの製造方法は前記の通りの構成を有するものであるが、かかる発明は前記(1)〜(3)の知見を具現化したものであり、(1)の点については工程(a)により、(2)の点については工程(b)により、(3)の点については工程(c)(及び工程(d))により、それぞれ達成され得る。
【0015】
すなわち(1)で安価な原料を低コストで使いこなすことを可能にする。(1)及び(2)にかかわる反応の効率は、反応様式が固液の異相系反応であり、総括の反応速度が化学反応律速ではなく拡散律速であるので、原料はより多くの触媒点と接触し得るのが好ましく、例えば、触媒微粒子として平均粒径が数10μm以下のものを用いることで反応の効率は飛躍的に向上する。本発明の樹脂発泡体としては、親水性でしかも塩基性の樹脂発泡体が好ましく、経済的に製造が有利なメラミン樹脂発泡体がより好ましい。
【0016】
(3)にかかる粗脂肪酸エステルの不純物の除去については、不純物のほとんどは副生物のグリセリンなど親水性のものなので、従来、水洗法が採用されているのであるが、大量の排水の発生の問題が残っている。本発明では所定の樹脂発泡体にエステル交換反応後の反応混合物を接触させ、親水性のグリセリンなどを吸着除去する。なお、(3)においてもメラミン樹脂発泡体を用いるのがより好ましい。主成分のエステルは疎水性で吸着しにくいが、親水性のグリセリンなどは吸着除去され得、再生については、大量のアルコールで吸着物の洗浄除去(脱着)ができ、このアルコールは、反応に再使用できるので排水の全く出ないプロセスとすることが可能である。(3)は、特に、デイーゼル燃料用脂肪酸アルキルエステルの品質を満足させるための脂肪酸アルキルエステルの製造にとって重要である。
【0017】
本発明の方法は、各工程で所定の樹脂発泡体を用いることを1つの大きな特徴とする。かかる樹脂発泡体は各工程で同一のものであっても異なるものであってもよい。脂肪酸アルキルエステルの品質向上にとっては、特に工程(c)による脂肪酸アルキルエステルの精製が有効である。
【0018】
本発明の脂肪酸アルキルエステルの製造方法は、従来の脂肪酸アルキルエステルの製造方法と同様、油脂中の遊離脂肪酸とアルコールとのエステル化反応工程、油脂とアルコールとのエステル交換反応工程、及び脂肪酸アルキルエステルの精製工程を有する。本発明の工程(a)、(b)及び(c)はそれぞれ前記3つの工程に対応しており、本発明の方法では、前記3つの工程の少なくともいずれか1つの工程を工程(a)、(b)及び(c)のうちの対応する工程により行う。より高品質な脂肪酸アルキルエステルをより安価に製造する観点からは、前記工程(a)〜(c)からより多くの工程を採用して脂肪酸アルキルエステルを製造するのが好ましい。
【0019】
なお、本発明の方法において実施する工程(a)〜(c)のいずれか以外の操作、条件等は公知の脂肪酸アルキルエステルの製造方法のものに従えばよく、例えば、成書(油脂化学入門、黒崎富裕ら、産業図書、1997)を参照すればよい。
【0020】
デイーゼル燃料用などの脂肪酸アルキルエステルの製造においては、油脂とアルコールとの間のエステル交換反応が主反応である。原料となる油脂としては、具体的には、菜種油、ごま油、大豆油、とうもろこし油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、やし油、紅花油などの1種またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。すなわち、本発明の油脂とは、通常、炭素数が8〜22程度の不飽和もしくは飽和の脂肪族アルキル基を有する脂肪酸のトリグリセライドの混合物である。
【0021】
デイーゼル燃料用脂肪酸アルキルエステルに適した油脂原料としては、脂肪酸アルキルエステルとしたときに液状である、炭素数が10〜18程度の不飽和もしくは飽和の脂肪族アルキル基を有する脂肪酸のトリグリセライドを多く含むものが好ましい。より好ましいものは、炭素数が12〜18程度の不飽和もしくは飽和の脂肪族アルキル基を有する脂肪酸のトリグリセライドを多く含むものである。
【0022】
そのような意味で、原料油脂としては、菜種油、ごま油、大豆油、とうもろこし油、パーム油からなる群より選択される1種または2種以上の混合物が特に好ましく用いられる。
【0023】
なお、油脂化学工業では、牛脂などの動物油も、きわめて重要であるので、本発明は、所望により動物油由来のトリグリセライドにも適用できる。
【0024】
従来、植物系油脂原料を食用油として用いる場合、あらかじめ油脂中に含まれる遊離脂肪酸をアルカリ水溶液で中和して生じた石鹸を分離し、遊離脂肪酸を除去して用いているため、高価になっている。一方、本発明においては、通常、遊離脂肪酸を3重量%前後含む植物油などを直接使用してデイーゼル燃料用の脂肪酸アルキルエステルを効率的に得ることができ、経済的に非常に有利である。
【0025】
本発明の原料油脂は、未使用の清浄なものに限らず廃食用油であってもよく、経済面、社会的要請面からすると、廃食用油を原料油脂とするのが望ましい。廃食用油は劣化しており、通常、0.5〜2重量%の遊離脂肪酸を含んでいる。
【0026】
本発明においてエステル化反応及びエステル交換反応に使用するためのアルコールとしては、例えば、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、プロピルアルコール(プロパノール)、ブチルアルコール(ブタノール)などの炭素数1〜4のアルキルアルコールからなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる。アルコールの純度に関しては、特に限定されないが、水分含有量の少ない方がより好ましい。また。炭素数1〜4のアルキルアルコールの中では、メチルアルコール、エチルアルコールが、特にメチルアルコールが、デイーゼル燃料油としてはより好ましい。
【0027】
本発明に用いる樹脂発泡体としては、本発明の所望の効果の発現に寄与し得るものであれば特に限定するものではないが、経済性、使用の簡便性等の観点から、通常、比重が0.005〜0.2であって、連続細孔を有する親水性かつ塩基性の樹脂発泡体が好適に用いられる。なお、樹脂発泡体の空隙率としては80〜99.5%であるのが好ましい。樹脂発泡体の比重は一定体積を有する樹脂発泡体(例えば、10cm四方の立方体)の重量を測定し、当該重量を体積で除することにより求められる。また、樹脂発泡体の空隙率は、該発泡体の比重の測定値と樹脂の真比重から、該発泡体の体積に対する樹脂の占める体積を計算することにより求めることができる。なお、本発明で使用する樹脂の真比重は、通常、1前後であるため、本明細書においては樹脂の真比重を1と仮定する。連続細孔とは、個々の細孔が完全に独立した形態で存在するのではなく、1又は複数箇所で個々の細孔が融合した形態で存在する連続的な細孔をいう。本発明に使用される樹脂発泡体の具体例については後述する。
【0028】
〔I〕油脂中の遊離脂肪酸のエステル化反応
本発明の工程(a)は、ある局面では高効率に油脂中の遊離脂肪酸をアルコールによりエステル化する触媒の形態化方法に関する。
【0029】
安価な油脂原料を使用する場合、油脂中の遊離脂肪酸をエステル原料と考えて、主反応のエステル交換反応以前の前処理としてエステル化反応で遊離脂肪酸をエステルに変換しておくことが、収率向上や、エステル交換反応で用いる高活性なアルカリ触媒との中和反応による石鹸発生の防止などの観点から必要になる。この遊離脂肪酸はアルコールで均一系の酸触媒の存在下に容易にエステル化される。
【0030】
従来、遊離脂肪酸のアルコールによるエステル化は、硫酸などの酸触媒で行われているが、次工程のエステル交換反応に使う触媒のアルカリと中和して、アルカリ触媒の損失や、塩の生成があり、不都合である。現在、油脂化学工業では、強酸性型のイオン交換樹脂を固定触媒とする方法が実用化されている。かかるイオン交換樹脂触媒は、一般に0.5〜1mmの平均粒径の微粒子からなる、細孔を有する多孔質触媒ではあるが、その細孔径は高々数十nmである。油脂の液相反応では、非極性で分子の大きい油脂は拡散抵抗が大きいので、該反応に対し細孔での活性表面はそれほど貢献せず、反応は主として油脂と接触し得る外部表面で生ずる。従って、イオン交換樹脂触媒の活性比表面積は小さくなり、反応効率において問題が残っている。例えば、65℃での反応で、遊離脂肪酸(通常、3重量%程度含有)をエステル化するのに油脂100重量部に対してアルコール10重量部の大過剰量を用いても、例えば、イオン交換樹脂触媒をカラムに充填し流通系で反応させ、遊離脂肪酸の95%程度をエステル化するのに滞留時間として、およそ90分もの時間が必要であり、単位触媒量当たりの反応速度は小さく(バイオマスハンドブック p.138 社団法人日本エネルギー学会編 2002年)、さらなる反応効率の向上が望まれる。
【0031】
活性比表面積を増大させるためには、触媒の粒径を小さくすればよいと考えられる。例えば、触媒の平均粒径を2〜20μmとすれば、0.5mm粒径のものと比べて、比表面積(先に述べたごとく、油脂の反応に対して有効なのは外部比表面積)は25〜250倍となる。しかしながら、このような小さい粒子を充填した触媒塔では、圧力損失などで実際には操作不可能になったり、懸濁状態で使用する場合には、反応後のろ過などによる触媒分離が困難になる。そこで、本発明においては、強酸性微粒子からなる触媒(強酸性触媒微粒子又は触媒微粒子という場合がある)を担持してなるか、又は強酸性に変性してなる樹脂発泡体を用いて遊離脂肪酸のエステル化反応を行う。ここで、強酸性とは、水中で実質的に完全に電離し得る酸としての性質をいい、具体的には、硫酸の酸性度の前後の強い酸性度のことをいう。
【0032】
本発明の工程(a)で使用する触媒としては、油脂中の遊離脂肪酸とアルコールとのエステル化反応を触媒し得るものであれば特に限定されないが、当該反応の均一系触媒としては一般的に、硫酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが最も高効率の触媒であるので、ポリスチレン系樹脂やセルロースなどからなる樹脂微粒子に強酸性のスルホン酸基(−SOH)、スルホエチル基(−(CHSOOH)を導入してなる有機酸性の微粒子、中でも、微粒子化が容易という観点から、ポリスチレン系樹脂にスルホン酸基を導入してなる有機酸性の微粒子を用いるのが好ましい。なお、ポリスチレン系樹脂とは、スチレンと他のモノマー、例えばメタクリル酸メチルなどとの共重合樹脂をいい、特にスチレンとジビニルベンゼンの架橋した共重合樹脂が好適であり、公知の樹脂を用いることができる。そのような有機酸性の微粒子は、例えば、乳化重合、懸濁重合法その他の方法で樹脂粒子を作製し、その後、熱濃硫酸などでスルホン化することにより得られる。あるいは、市販の強酸性のイオン交換樹脂粒子を粉砕して用いるのも簡便な方法である。
【0033】
工程(a)で使用する触媒を構成する強酸性微粒子の候補としては、上記のほかに、フッ素化スルホン樹脂、耐水性超強酸のWO/ZrOなどからなる微粒子も推奨できるものである。コストが許されれば使用できる。
【0034】
上記触媒微粒子の平均粒径としては、特に限定はないが、製造コスト、比表面積の増大による反応効率の向上、及び流体流れに対する抵抗のバランスを考慮すると、0.1〜100μmが樹脂発泡体への担持(すなわち、本発明では吸着固定化の操作)に適切であり好ましく、0.5〜50μmであることがより好ましい。なお、粒子が大きくなると流体流れの抵抗が大きくなり、粒子の他物質への結合力が相対的に小さくなることが知られている(新体系化学工学“微粒子工学”、奥山喜久夫ら、p.174、(株)オーム社、平成4年)が、後述の機械的な作用による固定化を行うことでそのような問題は解決可能である。
【0035】
本明細書における平均粒径は、電子顕微鏡写真により、定方向径の個数平均径として求められる。
【0036】
工程(a)で使用する触媒微粒子は強酸性であることから、それを担持させる樹脂発泡体としては塩基性の樹脂発泡体を採用するのが好ましい。その理由は、酸―塩基相互作用(文献:“わかりやすいコーテイング技術 原崎勇次著 p.20 理工出版社 平成6年:分子間力の解説項)を利用して、触媒を容易に樹脂発泡体の表面に担持させることができるためである。なお、酸―塩基相互作用との語は、化学的結合力に対してではなく、水素結合、ファンデルワールス力などの物理的結合力に対して用いられる。すなわち、本明細書において担持とは、樹脂発泡体に対し、そのような物理的結合力を介して吸着固定化することをいう。
【0037】
塩基性の樹脂発泡体としては、アミノ樹脂のメラミン樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂や、ナイロン、ポリウレタンなどの発泡体が挙げられる。このうち、耐熱性、耐薬品性に優れる点で、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ナイロン、ポリウレタンの発泡体が好ましい。塩基性が強く製造容易または入手容易なメラミン樹脂発泡体(例えば、市販品として、台所用研磨材として安価に販売されている)は、耐薬品性も大きく機械的強度も高いので特に好ましい。
【0038】
メラミン樹脂発泡体は、10〜1000μmの細孔径を有し、それらの細孔は互いに貫通部分を有している連続細孔である。また、乾燥状態では、比重は0.005〜0.05で、空隙率は95〜99%である。圧縮すると、その見かけの体積は数分の1になる。この特徴を利用すれば、常圧で、例えば、樹脂微粒子水分散液を含浸させ、ついで、乾燥、圧縮すると、細孔径が見かけ上小さくなり、比較的大きな径の微粒子を機械的に固定化できることになる。すなわち、比較的小さな樹脂微粒子は上記の酸―塩基相互作用により、比較的大きな樹脂微粒子はこのような機械的な作用により、それぞれ固定化でき、メラミン樹脂発泡体には広い範囲の径の樹脂微粒子を担持させることができる。
【0039】
前記触媒微粒子を樹脂発泡体に担持させる、経済的な、触媒の形態化方法を具体的に説明する。
【0040】
例えば、50μm以下の平均粒径を持つスルホン化ポリスチレン微粒子の懸濁液(溶媒として水、またはアルコールを用いる)に、メラミン樹脂発泡体の小片(例えば5〜10mmの大きさを持つ球または角片)を加え、撹拌下、十分な時間をかけて当該微粒子をメラミン樹脂発泡体に浸透させる。余分な液をろ過した後、メラミン樹脂発泡体に含有された液を、十分な時間をかけて緩慢に乾燥除去する。この乾燥メラミン樹脂発泡体を、原料油脂のエステル化を行う反応器に圧縮しながら充填する。
【0041】
本発明における触媒の形態化では、前記ポリスチレン微粒子の分散液の粒子濃度を20体積%とし、ろ過後のメラミン樹脂発泡体には同様の濃度の液が充満していると仮定すると、乾燥後には、メラミン樹脂発泡体中にも20体積%の微粒子が含有される。この発泡体を1/2に圧縮すると、発泡体には50μm以下の微粒子が反応器体積に対して40体積%で充填されることになる。
【0042】
平均粒径500μmの粒子を、そのまま反応器に充填する場合と比較すると、触媒活性(反応器の容積効率、すなわち反応器単位容積あたりの活性を言う)は、粒径の比による比表面積の向上で、およそ(粒径比:10以上)×0.4=4倍以上である。細孔の影響が多少あると考えられ計算通りとはならないが、数倍の活性向上が期待できる。
【0043】
従って、触媒微粒子の平均粒径を小さくするほど活性は向上するが、スルホン化ポリスチレンの平均粒径を小さくすることは技術的、経済的に困難であるので、微粒子の平均粒径としては、前記の通りの範囲とするのが好適である。
【0044】
本発明においては、上記の通りの強酸性微粒子からなる触媒を担持してなる樹脂発泡体を遊離脂肪酸のエステル化に使用するが、それは触媒の形態化が経済的に脂肪酸アルキルエステルの製造を行う上で最も重要であるとの着想に基づいている。本発明では触媒微粒子を担持させてなる樹脂発泡体の他、強酸性に変性してなる樹脂発泡体も用いられるが、後者の場合も、触媒微粒子を樹脂発泡体に担持させて用いる態様と同様な効果を奏し得る。
【0045】
強酸性に変性してなる樹脂発泡体とは、詳しくは、強酸性の官能基を導入した樹脂発泡体をいう。かかる発泡体は、例えば、ポリスチレン系樹脂からなる発泡体をスルホン化することにより調製することができる。耐薬品性及び機械的強度などの点を考慮すれば、強酸性に変性してなる樹脂発泡体としてはスルホン化されたベンゼン環を有する架橋性樹脂からなるものが好ましい。かかる発泡体は、例えば、フェノール樹脂や前記ベンゾグアナミン樹脂の発泡体中のベンゼン環にスルホン酸基を導入することにより調製することができる。
【0046】
耐薬品性、機械的強度、製造コストなどの点を総合的に考えると、本発明の工程(a)は、強酸性に変性してなる樹脂発泡体を用いるよりも、強酸性微粒子からなる触媒を担持してなる樹脂発泡体を用いて行うのが、より好ましい。
【0047】
続いて、工程(a)におけるエステル化反応の操作について説明する。本発明における油脂中の遊離脂肪酸のアルコールによるエステル化反応の反応条件は、常法の条件に従えばよい。触媒や担体の耐熱性を考慮すると反応温度としては120℃以下が好ましいが、それ以外はとくに限定されない。アルコールの沸点以下での反応では、反応器が“圧力容器”の法規制を受けないので経済的に操業できる、という観点からも、反応温度としては50〜120℃が好ましい。特に、アルコールがメタノールの場合は、55〜64℃が特に好ましい。
【0048】
油脂原料と反応させるアルコールは、油脂100重量部に対して10〜80重量部の割合が好ましく、13〜40重量部の割合がより好ましい。これらは次工程のエステル交換反応と同様に設定すればよい。すなわち、エステル化反応で遊離脂肪酸をエステル化した後、エステル交換反応にそのまま供せられるのが有利であるからである。次工程のエステル交換反応は、エステル化反応と触媒の種類を変更(すなわち、酸触媒からアルカリ触媒に変更)する以外は同条件で連続して操作するのが好ましい。なお、酸触媒であっても、触媒活性が大きく、多くの触媒を用いれば、エステル交換反応を進めることもできる。従って、本発明は、エステル化反応とエステル交換反応とで触媒を変更しない態様を排除するものではない。
【0049】
総じて、工程(a)におけるエステル化反応の条件としては、油脂100重量部に対してアルコール10〜80重量部の割合で用い、その際、反応温度を50〜120℃とするのが好適である。
【0050】
〔II〕油脂とアルコールとの間でのエステル交換反応
本発明の工程(b)は、ある局面ではアルカリ固体触媒の形態を最適化することにより、実用的に、エステル交換反応の反応効率を高いレベルに持ち上げること、また、その形態化を経済的に行うことに関する。工程(b)においては、エステル交換反応を、樹脂発泡体に担持させてなる、アルカリ性微粒子からなる触媒(アルカリ性触媒微粒子、触媒微粒子又はアルカリ性触媒という場合がある)の存在下に行うが、該エステル交換反応は、具体的には、油脂に含まれるエステル(主としてトリグリセライド)とアルコールとの間で進行する。
【0051】
油脂(トリグリセライド)とアルコールとのエステル交換反応は、現在、油脂化学工業およびバイオデイーゼル燃料製造に実用化されているプロセスでは、NaOHあるいはKOHなどのアルコール溶解性のアルカリ触媒を使用して行われている。これらのアルカリ物質は、反応後、分層分離して得られる副生グリセリン層に含まれる。グリセリン自体は、化学品として付加価値があり、精製して化学品用途に供したいところであり、その精製コストに費用がかかることを容認して精製されている。また、目的の脂肪酸アルキルエステル中にもアルカリ物質が微量含まれる。燃料としての用途から、これを除去する必要があり、水洗水などの排水が発生する方法が採用されている。この排水処理においてもコストがかかる。
【0052】
以上の背景で問題解決のため、固体触媒の使用がいくつか提案されている。エステル交換反応は、酸触媒でも進行することが知られているので、無機及び有機の固体酸触媒が種々提案されている。しかしながら、その活性は、アルカリ触媒に比して格段に小さく、酸触媒を採用した場合、反応工程だけで、エステル水洗およびグリセリン精製を採用する場合と同等かあるいはそれ以上のコストがかかりその経済的意味がなくなり、実用化に至っていない。一方、活性が大きいアルカリ固体触媒の提案も2〜3開示されている。しかしながら、アルコール不溶性のアルカリ土類酸化物、あるいは不溶性の固体担体に固定化されたアルカリ金属塩の親水性物質がペレット化して用いられており、非極性の油脂の液相反応系であるので油脂の細孔内拡散抵抗が大きく、触媒活性はほとんどその表面に限られるので、その活性は、実用化レベルには不十分である。
【0053】
物理的な方法による固体触媒活性の向上は、粒径を小さくして、比表面積を大きくすることであると考えられる。通常2〜3mm程度の大きさのペレットから、2〜3μmにすることにより、比表面積は1000倍となり、したがって活性は1000倍になるといえる。ここでも、エステル化反応で述べたのと同じく、触媒の細孔の影響は小さいと推定され、外部表面積で評価できる。現実の操作では、このような小さい粒子を充填した触媒塔では、圧力損失などで実際には操作不可能になったり、懸濁状態で使用する場合には、反応後のろ過などによる触媒分離が困難になる。そこで、本発明においては、アルカリ性微粒子からなる触媒を所定の樹脂発泡体に担持して用いる。ここで、アルカリ性とは、アルカリ土類金属およびアルカリ金属を含有してなる化合物の塩基性のことをいう。
【0054】
本発明ではアルカリ性微粒子からなる触媒を用いるので、簡便に樹脂発泡体の表面に担持させ得ることから、当該発泡体としては酸性の表面を有する樹脂発泡体が好適である。その理由は前記した酸−塩基相互作用で担持させ得るからである。
【0055】
該樹脂発泡体としては、塩素化樹脂などでもよいのであるが、これらは酸―塩基相互作用が小さい。さらに酸性の強い、カルボキシル基変性のポリマーが候補として挙げられるが、カルボキシル基はエステル交換反応中にアルコールと反応してエステル化されてしまう恐れがある。好適な樹脂発泡体としては、フッ素化スルホン樹脂も良好な候補として挙げられるが、製造コストの点で実用的ではない。
【0056】
工程(b)に使用される樹脂発泡体としては、前記〔I〕で記載した強酸性に変性してなる種々の樹脂発泡体を用いてもよい。例えば、ポリスチレン系樹脂からなる発泡体をスルホン化してなる樹脂発泡体が挙げられる。工程(b)においても、やはり耐薬品性及び機械的強度に優れた樹脂発泡体を用いるのが好ましく、かかる観点からはスルホン化されたベンゼン環を有する架橋性樹脂からなるもの、例えば、フェノール樹脂や前記ベンゾグアナミン樹脂の発泡体中のベンゼン環にスルホン酸基を導入することにより調製した樹脂発泡体が好適である。しかしながら、これらの樹脂発泡体も製造コストの点で実用的ではない。
【0057】
以上のことから、アルカリ性触媒微粒子を直接担持させうる“より経済的な”樹脂発泡体が望まれる。樹脂発泡体を用いない態様では、市販の強酸性イオン交換樹脂への担持が採用され得るが、市販の強酸性のイオン交換樹脂は数十nmの細孔しかなく、これにアルカリ性触媒微粒子を担持させると、外部表面への担持のみとなり、活性比表面積を大きくする上では、2mmペレット表面から0.5mm粒子表面への効果であって、4倍程度の効率向上となる。また、樹脂発泡体の代わりとしては無機系酸性物質も候補となる。例えば、シリカ、あるいはシリカ/アルミナが担体としての候補である。しかしながら、樹脂発泡体と同様の構造をもつこれらの材料の製作はコストがかかり現時点では経済性の観点から実用的でない。
【0058】
そこで、本発明の最も好適な態様では、先に述べたエステル化反応で触媒を担持させるのに好適に使用されるメラミン樹脂発泡体に、有機酸性微粒子及び/又は無機酸性微粒子を介してアルカリ性微粒子からなる触媒を担持させたものを用いる。すなわち、メラミン樹脂発泡体の表面に予め有機酸性微粒子及び/又は無機酸性微粒子をコーティングしておき、前記した酸―塩基相互作用により該発泡体にアルカリ性触媒微粒子を担持させる。
【0059】
酸―塩基相互作用による触媒微粒子の吸着固定化の利点としては、油脂及びアルコールと、触媒微粒子とが接触した際に、触媒微粒子が崩壊して酸性微粒子から剥がれようとも、再度、容易に他の酸性微粒子に吸着固定化され得、エステル交換反応後の反応混合物中に触媒微粒子が混入する危険性が非常に低いことが挙げられる。また、樹脂発泡体への、例えば、触媒微粒子水分散液の通液により、触媒を新しいものに置換して容易に再生可能な点も利点として挙げられる。
【0060】
有機酸性微粒子としては、例えば、スルホン化ポリスチレン、スルホエチル化セルロースからなる微粒子が、無機酸性微粒子としては、例えば、シリカ超微粒子、シリカ/アルミナ超微粒子が、それぞれ挙げられる。
【0061】
メラミン樹脂発泡体の表面への有機酸性微粒子及び/又は無機酸性微粒子のコーティングは、それらの微粒子を用いて該発泡体の表面を物理的及び/又は化学的に修飾することにより行うことができる。物理的な修飾は、例えば、前記〔I〕において強酸性微粒子からなる触媒をメラミン樹脂発泡体に担持させるのと同様にして行えばよい。一方、化学的に修飾する場合は、修飾に使用する有機酸性微粒子及び/又は無機酸性微粒子に応じ、メラミン樹脂との反応性を考慮して、適切な化学反応形式を選択し、当該反応を実施することにより行えばよい。
【0062】
その際、使用するアルカリ性触媒微粒子、有機酸性微粒子及び無機酸性微粒子の平均粒径は特に限定されるものではないが、アルカリ性触媒微粒子はその粒径が小さければ小さいほど触媒効率がよい点、その他製造効率、経済性等の点を考慮すると、該触媒の平均粒径としては0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmであり、有機酸性微粒子の平均粒径としては0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは0.5〜50μmであり、無機酸性微粒子の平均粒径としては10〜100nmが好ましい。無機酸性微粒子としてシリカを使用する場合、市販の10〜50nmの平均粒径を有するシリカゾルが好適に用いられる。
【0063】
続いてアルカリ性触媒微粒子を樹脂発泡体に担持させる、経済的な、触媒の形態化方法を具体的に説明する。
【0064】
例えば、スルホン化ポリスチレン微粒子及び/又はシリカ超微粒子で表面をコーティングしたメラミン樹脂発泡体をカラムに充填した後に、例えば、1μmの平均粒径を持つアルカリ性触媒微粒子の懸濁液(溶媒として水、またはメタノールを用いる)を通液する。1μmとしたのは、比較的安価に製造可能な微粒子であるからである。メラミン樹脂発砲体にアルカリ性触媒微粒子が吸着していくので、カラム出口では、初期、透明な液が観察されるが、吸着飽和に達すると、濁った液が出はじめる。これで、吸着終了とする。次に、十分な水またはメタノールで洗浄した後に乾燥する。アルカリ性触媒微粒子の担持量としては、発泡体中の吸着面積やアルカリ性触媒微粒子の粒径で決まるが、平均粒径1μmの場合は、発泡体中、ほぼ0.5〜10体積%の範囲に入る。担持量1〜5体積%の担持が可能であるとすると、触媒の活性比表面積は、2mmペレットに比べて、およそ、(2000(粒径比)×0.01〜0.05)/2(半分は吸着面)=10〜50倍となる。計算通りとはならないが、10倍程度の活性向上が期待できる。
【0065】
アルカリ性触媒としては、特に限定されるものではないが、アルコール不溶性の、アルカリ土類金属を含む水酸化物、酸化物及び複合酸化物、並びにアルコール不溶性固体に固定化された、アルカリ金属の水酸化物、酸化物、複合酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるものが好適に用いられる。そのような触媒としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、チタン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属化合物、および酸化鉄、ジルコニア、ゼオライトなどに固定化された水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、タングステン酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属化合物が挙げられる。
【0066】
本質的に活性の大きなアルカリ性触媒が好ましいのは言うまでもないが、例えば、比較的反応活性の小さいとされるアルカリ性触媒でも適用可能である。油脂とアルコールとの間でのエステル交換反応に使用されるアルカリ固体触媒に関して開示された特許文献(特開2002−294277号公報)によれば、酸化カルシウムは触媒活性が小さいとされている。しかし、本発明により提供される形態化によって、工業的用途に十分耐えられる反応効率が得られる。実験的確認によれば酸化カルシウムは、遊離脂肪酸の濃度が0.2重量%以下の場合には、これを吸着せずエステル化することが見出された。したがって、エステル交換反応中のエステルの分解により生ずる微量の遊離脂肪酸によっても失活することはないので、本発明においては酸化カルシウムを安価で好適な触媒の1つとして用い得る。
【0067】
前記したように、これらのアルカリ性触媒微粒子の平均粒径は0.1〜10μmが推奨されるが、製造コスト、触媒活性の向上、及び流体流れに対する抵抗のバランスを考慮すると、特に0.5〜3μmであることが望ましい。アルカリ性触媒微粒子の平均粒径は、例えば、ビーズミル、ボールミル、コロイドミルなどの微粉砕機で該粒子を粉砕することによりサブミクロンから数μm以下に調整することができる。
【0068】
工程(b)におけるエステル交換反応の操作について説明する。本発明における油脂とアルコールとの間でのエステル交換反応の反応条件は、常法の条件に従えばよい。触媒や担体の耐熱性を考慮すると反応温度としては120℃以下が好ましいが、それ以外はとくに限定されない。アルコールの沸点以下での反応では、反応器が“圧力容器”の法規制を受けないので経済的に操業できる、という観点からも、反応温度としては50〜120℃が好ましいのである。特に、アルコールがメタノールの場合は、55〜64℃が特に好ましい。
【0069】
油脂原料と反応させるアルコールは、油脂100重量部に対して10〜80重量部の割合が好ましく、13〜40重量部の割合がより好ましい。
【0070】
総じて、工程(b)におけるエステル交換反応の条件としては、油脂100重量部に対してアルコール10〜80重量部の割合で用い、その際、反応温度を50〜120℃とするのが好適である。
【0071】
〔III〕脂肪酸アルキルエステルの精製
本発明の工程(c)は、食用油等の油脂を原料とするデイーゼル燃料油の製造において、デイーゼル燃料油としての品質を満足させる方法に関する。また、本発明によれば、製造プロセスからの排出物を出さない方法をも提供することができ、それは、さらに工程(d)を実施することにより達成することができる。かかる方法は、製造コスト及び環境負荷を充分に低減可能なデイーゼル燃料用脂肪酸アルキルエステル、特に脂肪酸メチルエステルの製造方法であるといえる。
【0072】
工程(c)における、エステル交換反応後の反応混合物とは、具体的には、エステル交換反応後の反応液から過剰のアルコールを除去した後、分層分離して得られる上層、すなわち、軽液である粗脂肪酸アルキルエステルをいうが、かかる反応混合物は常法に従って得ればよい。工程(c)では脂肪酸アルキルエステルの精製を行うが、その理由は以下の通りである。
【0073】
脂肪酸アルキルエステル中には、副生物のグリセリンや反応中間体のモノグリセライド、ジグリセライド、未反応のトリグリセライドが残存する。しかし、これらの残存量が多いと燃料油としての品質を満足せず、可能な限り少なくすることが望まれる。未反応物や反応中間体は、油脂とアルコールとの間でのエステル交換反応の反応効率を上げることで問題ない程度に低減できるが、グリセリンは精製除去せざるを得ないので問題は大きい。
【0074】
例えば、脂肪酸メチルエステル単独系では、モノグリセライド、ジグリセライドの両親媒性物質により脂肪酸メチルエステルという油の中で可溶化されていた親水性のグリセリンが、貯蔵中の時間、温度などの環境変化で、分離して沈降する可能性がある。また軽油との混合系では、モノグリセライド、ジグリセライドは軽油中にも溶解し、グリセリンの可溶化の程度が減少して、分離、沈降する可能性が大きくなる。このような現象が貯蔵中および自動車の燃料配管系で起きれば、種々のトラブルが生じデイーゼル燃料として不適格である。もちろん、残存メタノールや水分を可能なかぎり低減しておく必要があるのは言うまでもない。
【0075】
以上のような理由から、欧米では、必然的に脂肪酸メチルエステルのデイーゼル燃料油としての品質規格が検討されており、現在、欧州(EU)統一規格が制定されている。グリセリン含有量は0.02重量%以下が求められている。また、米国(ASTM PS-121-99)でも同様に、グリセリン含有量が0.02重量%以下と規定されている。なお、現在、日本においても脂肪酸メチルエステルに燃料としての規格設定の動きがあり、自動車走行中のトラブルが起きないように欧州規格などを参考に議論されている。
【0076】
このような観点から、特にグリセリン含有量の低減を目的とした精製方法が要望されるのである。
【0077】
従来、油脂原料から脂肪酸アルキルエステルを製造する方法は公知である。例えば、酸またはアルカリ触媒の存在下で油脂(脂肪酸トリグリセライド)とアルコールとを反応させて脂肪酸アルキルエステルを得、これを精製して酸またはアルカリ触媒をはじめ、その他の水溶性物質を除くために水洗する方法がある。しかしながら、かかる方法では、水洗すると混合液が乳化しやすく、添加水を分離するためには一昼夜静置する必要がある場合がある。
【0078】
水洗精製方法の改良されたものとして、洗浄水をエステル交換反応後の反応液に添加し70〜90℃に加熱することを必須条件として乳化の回避および分層分離の迅速化を図る方法が開示されている(特開平7−310090号公報)。ただし、高温処理のために生ずる脂肪酸メチルエステルの加水分解を避ける目的で、反応に使用したアルカリの脂肪酸メチルエステル中の溶解分を酸で中和することを条件としている。この方法においては脂肪酸エステル100重量部に対して20重量部以上の洗浄水を添加し洗浄を2回繰り返すことにより洗浄効果が達成されるとしている。しかしながら、グリセリン含有量の低減は期待できるが、脂肪酸メチルエステルの純度については、高温処理のため加水分解が起こり(アルカリ触媒を酸で中和しているが、異相系のため正確な中和は困難でありアルカリ性または酸性下での高温処理となる)、その純度低下が懸念される。さらには、なお多量の排水処理を行わなければならない。
【0079】
水洗しない精製方法については、廃食用油からのディーゼル燃料油の製造方法について開示されたものがある(特開平10−245586号公報)。精製方法について脂肪酸アルキルエステルの活性白土などによる吸着精製方法が開示されている。かかる方法では、排水は発生しないが、反応に用いたアルカリ成分は吸着除去されるものの、グリセリンとモノグリセライド、ジグリセライドなどが除去され難く、ディーゼル燃料油としては不十分な品質の脂肪酸アルキルエステルしか得られない。
【0080】
最近開示された方法としては、廃棄物の最少化を達成する技術(国際公開第03/070859号パンフレット)がある。この技術によれば、少量の水で乳化しながら、水洗し、その後、吸水ポリマーで、水洗液およびそれに含まれる親水性物質を吸収し、解乳化を生じさせる。その後ポリマーゲルをろ過分離すればよい。廃水が出ず、したがって廃水処理が不要としている。しかしながら、吸水したポリマーゲルは、グリセリンなどを含んでいるので、乾燥脱水しても再使用ができないので、廃棄物として処理せねばならない。
【0081】
上記のように、従来の技術では、デイーゼル燃料油用の脂肪酸アルキルエステルの精製方法として、要求品質を達成しながら工程排出物を零にする精製方法は見当たらない。
【0082】
本発明の対象となる反応及び分層分離後の脂肪酸アルキルエステルに含まれる低減すべき不純物は、主として副生グリセリン、さらに反応中間体の両親媒性(親水部を持つ)のモノグリセライド及びジグリセライドである。本発明の反応混合物を前記工程(b)の操作により得た場合、当該混合物はアルカリ性触媒を実質的に含有していない。上記低減すべき物質は、親水性であり、脂肪酸アルキルエステルは、疎水性である。これらの不純物の特性を踏まえると、本発明においては工程(c)で脂肪酸アルキルエステルを精製するのが好ましい。
【0083】
すなわち、脂肪酸アルキルエステルは、疎水性ということもあるが、一方で、カルボニル基を持つので、酸−塩基相互作用の観点からは塩基性である。グリセリンやモノグリセライド、ジグリセライドは親水性ということもあるが、酸―塩基相互作用の観点からはアルコール性OH基を持っているので酸性である。そこで、親水性、疎水性の観点および酸−塩基相互作用の観点から、樹脂発泡体としては前記工程(a)及び(b)で好適に用いられる塩基性の樹脂発泡体が好適な不純物の選択的吸着の吸着剤となり得る。中でもメラミン樹脂発泡体が好適である。該発泡体は不純物の吸着能に関し高い比表面積を有しており、該発泡体をカラムに充填して吸着塔とし、粗脂肪酸アルキルエステルを通液して該発泡体と接触させることで、親水性のグリセリン、およびモノグリセライド、ジグリセライドを非常に効率的に吸着除去することができる。
【0084】
また、樹脂発泡体からなる吸着剤は再生することも可能である。粗脂肪酸アルキルエステルを液抜きした後、アルコールで洗浄すれば、吸着していたグリセリン、モノグリセライド、ジグリセライドは脱着される。なぜなら、樹脂発泡体とグリセリンなどの結合力は、親水性、疎水性に基づく弱い結合であり、また酸―塩基相互作用による結合であって、これは決して中和反応的な結合ではなく、あくまで物理的な結合であるからである。従って、親水性が比較的大きなアルコール、特にメタノールが大量にあれば、吸着平衡の関係で、ほとんどのグリセリン、モノグリセライド、ジグリセライドは脱着される。
【0085】
このグリセリン、モノグリセライド、ジグリセライドを含むメタノールは、その含有物が反応に何らかの悪影響を与えることはないので、遊離脂肪酸のエステル化反応、油脂とアルコールとのエステル交換反応に供して再使用できる。グリセリン、モノグリセライド、ジグリセライドは反応副生物、反応中間体であるので、再び副生物として分離されることや、触媒反応工程に給せられるので決して蓄積することはなく、かくして本発明の方法からは廃棄物の発生は全くないのである。よって、本発明においては、前記工程(a)〜(c)を行う場合、工程(c)で不純物が吸着した樹脂発泡体をアルコールで洗浄し、洗浄後のアルコールを工程(a)でのエステル化反応及び/又は工程(b)でのエステル交換反応に供する工程(d)を、さらに組み合わせて実施するのが特に好適である。
【0086】
工程(a)〜(c)に加えて工程(d)をさらに実施する本発明の製造方法によれば、例えば、デイーゼル燃料用脂肪酸メチルエステルは、燃料用として最も重要な品質項目であるグリセリン含有量が0.02重量%以下となるものを、排水処理設備を設けることなく製造することができる。
【実施例】
【0087】
実施例1
強酸型イオン交換樹脂(オルガノ製15DRY:スルホン酸基型、平均粒径0.6〜0.8mm、乾燥品)を粉砕し、270メッシュパス(50μm以下)の強酸性触媒微粒子を20g準備した。これを100mLメタノールに加えて、触媒微粒子分散液を得た。
【0088】
次に、この分散液に、メラミン樹脂発泡体(アズマ工業株式会社製:台所用研磨材、実測の空隙率99%)の小片(5mm角)を乾燥状態で20mL相当を加えて、数時間撹拌した。その後、ろ過、乾燥し、触媒担持メラミン樹脂発泡体を得た。ろ過液を乾燥し、その固形分重量を測定し、差分から樹脂に担持した触媒重量を求めた結果、2.9gであった。
【0089】
得られた発泡体の全量を円筒状の10mLカラムに圧縮充填した。カラムをメタノールで十分な時間洗浄し反応実験への準備を行った。
【0090】
次いで、原料を供給してエステル化反応(遊離脂肪酸の減少)を開始した。エステル化反応は、下記の条件で行った。
【0091】
(反応条件)油脂供給量:20g/h
(廃食用油、遊離脂肪酸1.8重量%含有)
メタノール供給量:2.6g/h
(油脂100重量部に対し13重量部)
(遊離脂肪酸に対し量論的に大過剰)
反応温度:60℃
反応圧力:常圧(0.1MPa)
【0092】
反応開始後、5時間経過して定常になってから、生成液をサンプリングしてサンプルの油層(メタノール層と油層に分かれる)をガスクロマトグラフィーで分析し、遊離脂肪酸の減少量を測定した。
【0093】
遊離脂肪酸量は、1.8重量%から0.1重量%まで減少し、反応率は94.4%を得た。
【0094】
以後、得られた反応液をエステル交換反応工程及び精製工程に供し、デイーゼル燃料としての品質を満足する脂肪酸アルキルエステルを得た。
【0095】
比較例1
カラム充填物質を、酸型イオン交換樹脂(オルガノ製15DRY:スルホン酸基型、平均粒径0.6〜0.8mm、乾燥品)10mLとした以外は、実施例1と同様にエステル化反応を行った。なお、この場合も実施例1と同様に、メタノールで十分な時間洗浄および浸漬する前処理を行った。
【0096】
エステル化反応の結果、遊離脂肪酸は、1.8重量%から1.0重量%までの減少で、反応率は44.4%であった。
【0097】
以後、実施例1と同様にして、得られた反応液をエステル交換反応工程に供したが、残存遊離脂肪酸によりアルカリ性触媒が石鹸化し、または該脂肪酸が吸着して被毒し、反応速度を著しく低下させた。脂肪酸アルキルエステルが効率的に得られず、ディーゼル燃料としての品質評価は行わなかった。
【0098】
実施例2
アルカリ性触媒として800℃で焼成した酸化カルシウム(CaO)を選択し、CaO5gを、メタノール200gに加え(分散剤としてアクリル酸オリゴマーを添加)、ビーズミルで平均粒径が0.5〜2μmになるように粉砕し、アルカリ性触媒微粒子分散液を調製した。
【0099】
次に、実施例1に示したのと同様の強酸型イオン交換樹脂の粉砕物(スルホン化ポリスチレン微粒子)をその表面にコーティングしてなるメラミン樹脂発泡体10mLを充填したカラムを準備した。このカラム内をメタノールで十分な時間浸漬した後に、上記触媒微粒子分散液を通液して、アルカリ性触媒微粒子を担持(吸着固定化)した。触媒微粒子の担持量は、分散液の使用前後の固形分測定でその差分によれば0.32gであった。カラムをメタノールで十分洗浄し反応実験への準備を行った。

【0100】
次いで、原料を供給してエステル交換反応を開始した。エステル化反応は、下記の条件で行った。なお、油脂は実施例1で遊離脂肪酸を除去した後のものを用いた。
【0101】
(反応条件)油脂供給量:20g/h
メタノール供給量:2.6g/h
(油脂100重量部に対し13重量部)
反応温度:60℃
反応圧力:常圧(0.1MPa)
【0102】
反応開始後、5時間経過して定常になってから、生成液をサンプリングしてサンプルのメチルエステル層(メチルエステル層とグリセリン層に分かれる)をガスクロマトグラフィーで分析しエステル生成率を測定した。脂肪酸メチルエステルの生成率は98.2%であった。
【0103】
以後、得られた反応混合物(粗脂肪酸メチルエステル)を常法に従って精製工程に供し、デイーゼル燃料としての品質を満足する脂肪酸アルキルエステルを得た。
【0104】
比較例2
触媒として酸化カルシウム(CaO)を800℃で焼成したものを2〜3mmに粉砕してカラムに10mL充填した以外は、実施例2と同様にしてエステル交換反応を行った。得られたエステル生成率は16.1%であった。また、実施例2と同様にして、得られた反応混合物を精製工程に供し、脂肪酸アルキルエステルを得た。該エステルは、反応が進んでいないので当然デイーゼル燃料としての品質を満足するものではなかった。
【0105】
実施例3
カラムに円筒状に成型したメラミン樹脂発泡体を充填し、粗脂肪酸メチルエステル(実施例2で得たもの)を通液しグリセリンの吸着除去の実験を行った。
【0106】
メラミン樹脂発泡体の体積は10mLであり、粗脂肪酸メチルエステルの通液量は20g/hとした。得られた脂肪酸メチルエステルには、ガスクロマトグラフィー測定では、グリセリンが2400ppm(0.24重量%)含まれていた。
【0107】
5時間連続運転して、カラム出口の液全量には、同じくガスクロマトグラフィー測定で、グリセリン40ppm(0.004重量%)が含まれていた。得られた脂肪酸メチルエステルはデイーゼル燃料としての品質を満足するものであった。
【0108】
吸着実験後、カラム内の液を追い出したのち、メタノール100gを通液し、グリセリンの洗浄除去を行った。回収メタノール中のグリセリン濃度は同様の分析で0.23重量%であった。すなわち、ほとんどのグリセリンが脱着されたことがわかった。したがって、回収メタノールはすべて、再使用可能で、排水処理負荷がないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、油脂化学工業における川上プロセスである脂肪酸アルキルエステルの製造プロセスを革新し得る、安価に高品質のデイーゼル燃料用脂肪酸アルキルエステルを製造することができる脂肪酸アルキルエステルの製造方法が提供される。かかる方法は、バイオ燃料の一層の普及に対し大きく寄与し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂中の遊離脂肪酸とアルコールとのエステル化反応工程、油脂とアルコールとのエステル交換反応工程、及び脂肪酸アルキルエステルの精製工程を有する脂肪酸アルキルエステルの製造方法であって、前記3つの工程の少なくともいずれか1つの工程を、
(a)強酸性微粒子からなる触媒を担持してなるか、又は強酸性に変性してなる樹脂発泡体と油脂及びアルコールとを接触させて、油脂中の遊離脂肪酸とアルコールとのエステル化反応を行う工程、
(b)アルカリ性微粒子からなる触媒を担持してなる樹脂発泡体と油脂及びアルコールとを接触させて、油脂とアルコールとのエステル交換反応を行う工程、及び
(c)エステル交換反応後の反応混合物を樹脂発泡体と接触させて不純物を吸着除去し、脂肪酸アルキルエステルを精製する工程、
のうちの対応する工程により行う、脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
【請求項2】
工程(a)の触媒が樹脂微粒子にスルホン酸基を導入してなるものである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程(a)の触媒微粒子の平均粒径が0.1〜100μmである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
工程(b)の触媒微粒子が、アルコール不溶性の、アルカリ土類金属を含む水酸化物、酸化物及び複合酸化物、並びにアルコール不溶性固体に固定化された、アルカリ金属の水酸化物、酸化物、複合酸化物及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるものである、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
【請求項5】
工程(a)のエステル化反応及び/又は工程(b)のエステル交換反応を油脂100重量部に対してアルコール10〜80重量部の割合で行い、その際、反応温度を50〜120℃とする請求項1〜4いずれか記載の製造方法。
【請求項6】
(d)工程(c)で不純物が吸着した樹脂発泡体をアルコールで洗浄し、洗浄後のアルコールを工程(a)でのエステル化反応及び/又は工程(b)でのエステル交換反応に供する工程を、さらに有する請求項1〜5いずれか記載の製造方法。
【請求項7】
樹脂発泡体が、比重が0.005〜0.2であって、連続細孔を有する親水性かつ塩基性の樹脂発泡体である請求項1〜6いずれか記載の製造方法。
【請求項8】
工程(a)の強酸性に変性してなる樹脂発泡体がスルホン化されたベンゼン環を有する架橋性樹脂からなるものである請求項1及び4〜7いずれか記載の製造方法。
【請求項9】
樹脂発泡体がメラミン樹脂発泡体である請求項1〜7いずれか記載の製造方法。
【請求項10】
工程(b)の樹脂発泡体が触媒微粒子をメラミン樹脂発泡体に有機酸性微粒子及び/又は無機酸性微粒子を介して担持してなるものである請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
工程(b)の触媒微粒子の平均粒径が0.1〜10μm、有機酸性微粒子の平均粒径が0.1〜100μm、無機酸性微粒子の平均粒径が10〜100nmである請求項10記載の製造方法。


【公開番号】特開2006−28270(P2006−28270A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206487(P2004−206487)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(500371112)株式会社レボインターナショナル (4)
【Fターム(参考)】