説明

脂肪酸アルキルエステル組成物の製造方法及び油脂類の処理方法

【課題】
原料の前処理工程や煩雑な精製工程等を必要とせず、高効率に油脂類から脂肪酸アルキルエステル組成物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】
脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を少なくとも含む油脂類から脂肪酸アルキルエステルを製造する方法であって、
前記脂肪類とジアルキルカーボネートとを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることを特徴とする脂肪酸アルキルエステルの製造方法とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を少なくとも含む油脂類から脂肪酸アルキルエステル組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物油、動物油及びそれらの使用済油脂の主成分であるモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド(以下、総称して脂肪酸グリセリドと称する)をアルキルアルコールとエステル交換反応させることによって、脂肪酸アルキルエステルが得られることは以前から知られている(例えば、「有機化学ハンドブック」技報堂出版1988,p.1407〜p.1409)。また、この反応を利用して、油脂類からディーゼル燃料油として使えるアルキルエステルを得る製造技術についても、これまでに様々な検討がなされてきた。
【0003】
脂肪酸グリセリドから脂肪酸エステルを工業的に製造する方法としては、無水条件下、脂肪酸トリグリセリドをアルカリ金属触媒の存在下に常圧で低級アルコールの沸点近傍又は常温にてエステル交換反応させる方法が一般的に用いられている。しかしながら、この反応では反応溶液中にアルカリ金属触媒を溶解した状態で使用されるものであるため、アルカリ金属触媒は生成物の溶液中に溶解することとなり、その分離、回収が困難であるという問題がある。
【0004】
さらに、廃油などには水が含まれている場合が多く、前記アルカリ金属触媒法の使用にあたっては、原料中の水分除去が前処理として不可欠である。また、天然の油脂には遊離脂肪酸が含有されているのが一般的であり、遊離脂肪酸が多量に含まれた状態でアルカリ金属触媒を用いると、アルカリセッケンが副生し、アルカリ金属触媒が過剰に必要となると共に、副生したアルカリセッケンのために脂肪酸エステル層とグリセリン層との分離が困難になる等の問題が生じる。こうしたことから、脂肪酸グリセリドのエステル交換反応をアルカリ金属触媒の存在下で行う場合には、遊離脂肪酸を除去するための前処理工程が必要となる。
【0005】
このような問題を回避するという観点から、本発明者らは、超臨界メタノールを用いた無触媒でのバイオディーゼル燃料製造技術(一段階法(Saka法)及び二段階法(Saka−Dadan法))を開発している(非特許文献1、2参照)。
【0006】
【非特許文献1】Saka S, Kusdiana D. Biodiesel fuel from rapeseed oil as prepared in supercritical methanol. Fuel 2001;80:225-31.
【非特許文献2】Kusdiana D, Saka S. Two-step preparation for catalyst-free biodiesel fuel production: hydrolysis and methyl esterification Appl Biochem Biotechnol 2004;115:781-91.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、原料の前処理工程や煩雑な精製工程等を必要とせず、高効率に油脂類から脂肪酸アルキルエステル組成物を製造する方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、ジアルキルカーボネートを用い、所定の条件下で反応させることにより、原料の前処理工程や煩雑な精製工程を必要とせず、高効率に脂肪酸アルキルエステルが得られることを見いだし、本発明に至った。
即ち、本発明は、脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を少なくとも含む油脂類から脂肪酸アルキルエステルを製造する方法であって、
前記油脂類とジアルキルカーボネートとを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることを特徴とする、脂肪酸アルキルエステルの製造方法を提供する。前記油脂類とジアルキルカーボネートとを共存させ、ジアルキルカーボネート温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることにより、高収率で脂肪酸アルキルエステルを得ることができる。
本発明において、用いられるジアルキルカーボネートの種類は特に限定されないが、ジメチルカーボネートとするのが好適である。
また、本発明において、前記油脂類に対するジアルキルカーボネートの量は特に限定されないが、前記油脂類に含まれる脂肪酸グリセリド1モルに対して前記ジアルキルカーボネートが3.0モル〜126モルとするのが好適である。また、前記油脂類に含まれる脂肪酸1モルに対して前記ジアルキルカーボネートが1.0モル〜42モルとするのが好適である。
本発明で得られる前記脂肪酸アルキルエステルの用途は特に限定されないが、例えばディーゼル燃料油として好適に使用することができる。
そして、本発明は、脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を少なくとも含む油脂類を処理する方法であって、
前記油脂類とジアルキルカーボネートとを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることを特徴とする、油脂類の処理方法を提供する。
【0009】
本発明において用いられる用語について、以下に説明する。
【0010】
本発明において、「油脂類」とは、上述の通り脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を含むものであって、一般にいう脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリドを主として含むものの他、脂肪酸、及びこれらの混合物をいう。即ち、「油脂類」とは、脂肪酸グリセリドを含まず脂肪酸のみを含むものをも広く包含するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原料の前処理工程や煩雑な精製工程等を必要とせず、高効率に油脂類から脂肪酸アルキルエステル組成物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
本発明に係る脂肪酸アルキルエステル組成物の製造方法は、油脂類とジアルキルカーボネートとを共存させ、ジアルキルカーボネートの温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることを特徴の一とする。
【0014】
本発明で用いられるジアルキルカーボネートは、下記一般式(1)で示される化合物である。ジアルキルカーボネートの一例であるジメチルカーボネートの物理的及び熱力学的物性を表1に示す。
【0015】
【化1】


【0016】
【表1】

【0017】
上記表1からわかるように、本発明における反応温度240℃〜400℃、反応圧力2.0MPa〜100MPaは、ジアルキルカーボネートの臨界条件又は亜臨界条件に相当する。
【0018】
ジアルキルカーボネートの原料は、バイオマスの熱力学的処理により得られる合成ガスに由来するものであり、ジアルキルカーボネート自体が環境に優しい材料であるといえる。従って、油脂類とジアルキルカーボネートから得られるバイオディーゼルは、真の意味で環境に優しいバイオ燃料ということができる。
【0019】
本発明に用いられるジアルキルカーボネートの種類は特に限定されないが、ジメチルカーボネートを用いるのが好適である。ジメチルカーボネートを用いることにより、バイオディーゼルとして好適な脂肪酸メチルエステルが得られるため好適である。
【0020】
本発明において用いられる油脂類は、脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を少なくとも含むものであれば特に限定されず、例えば、植物油、動物油、廃油等を用いることができる。
【0021】
植物油の具体例としては、例えば、ナタネ油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、ダイズ油、菜種油、ヒマシ油、オリーブ油、ナンヨウアブラギリからのクルカス油等が挙げられる。
【0022】
動物油の具体例として、例えば、イワシ油、サバ油、ニシン油、ラード油、バター油、牛脂、馬脂、豚脂、サメ油、鯨油等が挙げられる。
【0023】
はじめに、本発明において脂肪酸グリセリドから脂肪酸アルキルエステルを得る方法について以下に説明する。
【0024】
脂肪酸グリセリドにジアルキルカーボネートを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることにより、脂肪酸アルキルエステルが得られる(式(2)参照)。
【0025】
【化2】

【0026】
なお、式(2)において、ジアルキルカーボネートの二つのアルキル基は同一のものとして記載しているが、それぞれのアルキル基を異なるものとしてもよい。
【0027】
一例として、脂肪酸トリグリセリドとジメチルカーボネートとの反応式を図1に示す。脂肪酸トリグリセリド(TG)は、等モルのジメチルカーボネートと反応し、脂肪酸メチルエステル(FAME)と脂肪酸モノメチルカーボネートジグリセリド(MMCDG)を生成する(図1(a)参照)。脂肪酸モノメチルカーボネートジグリセリド(MMCDG)は、さらに等モルのジメチルカーボネートと反応し、脂肪酸メチルエステル(FAME)と脂肪酸ジメチルカーボネートモノグリセリド(DMCMG)を生成する(図1(b)参照)。脂肪酸ジメチルカーボネートモノグリセリド(DMCMG)は、等モルのジメチルカーボネートと反応し、脂肪酸メチルエステル(FAME)とグリセロールカーボネート(GC)及びシトラマル酸(CA)を生成する(図1(c)参照)。
【0028】
即ち、脂肪酸トリグリセリドは、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下において、三倍モルのジアルキルカーボネートと反応し、三倍モルの脂肪酸アルキルエステルを生成する。
【0029】
脂肪酸グリセリドとジメチルカーボネートとの反応において、副生成物として得られるグリセロールカーボネートは、無色の液体であり、工業的に有用な化合物である。グリセロールカーボネート及びその誘導体は、塗料、染料、接着剤その他高分子材料等の溶剤として注目されている。
【0030】
さらに、グリセロールカーボネートと同時に得られるシトラマル酸についても、高純度に精製することにより、医薬品の原料等としての利用が期待されるものである。また、シトラマル酸については、前記油脂類とジメチルカーボネートとの反応において、酸触媒として機能していると推測される。
【0031】
次に、本発明において脂肪酸から脂肪酸アルキルエステルを得る方法について以下に説明する。
【0032】
脂肪酸にジアルキルカーボネートを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaで反応させることにより、脂肪酸アルキルエステルが得られる(式(3)参照)。
【0033】
【化3】

【0034】
なお、式(3)において、ジアルキルカーボネートの二つのアルキル基が同一のものとして記載しているが、それぞれのアルキル基を異なるものとしてもよい。
【0035】
一例として、脂肪酸とジメチルカーボネートの反応を式(4)に示す。脂肪酸は、等モルのジメチルカーボネートと反応し、等モルの脂肪酸メチルエステルを生成する。さらに、副生成物として等モルのグリオキザールと水を生成する。
【0036】
【化4】

【0037】
脂肪酸とジメチルカーボネートとの反応における副生成物であるグリオキザールは、本発明の高温高圧の反応条件下においては、グリコール酸に変化する。このグリコール酸については、前記油脂類とジメチルカーボネートとの反応において、酸触媒として機能していると推測される。
【0038】
本発明に係る脂肪酸アルキルエステルの具体的製造方法は以下の通りである(図2参照)。まず、脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を少なくとも含む油脂類とジアルキルカーボネートとを反応器に添加する。そして、反応温度を240℃〜400℃、反応圧力を2.0MPa〜100MPaに設定し、反応を進行させる。
【0039】
反応終了後、未反応のジアルキルカーボネートを除去すると、脂肪酸アルキルエステルが上層に、副生成物が下層に、それぞれ分離した状態の反応液が得られる。この上層と下層を分離することにより、脂肪酸アルキルエステルを得ることができる。
【0040】
本発明において、用いられる反応器については特に限定されず、例えばバッチ式反応器や連続式槽型反応器、ピストンフロー型流通式反応器、塔型流通式反応器塔を用いることができる。
【0041】
かかる反応において、具体的反応条件は、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの範囲内であれば特に限定されないが、好適には270℃〜350℃、4.6MPa〜45MPaとするのが望ましい。かかる反応条件とすることにより、脂肪酸アルキルエステル組成物の分解が生じることなく、高収率で脂肪酸アルキルエステル組成物が得られるため望ましい。
【0042】
また、前記油脂類に対するジアルキルカーボネートの量は特に限定されないが、前記油脂類に含まれる脂肪酸グリセリド1モルに対して前記ジアルキルカーボネートを3.0モル〜126モルとするのが好適であり、より好適には21モル〜51モルの範囲とするのが望ましい。
【0043】
また、前記油脂類に含まれる脂肪酸1モルに対して前記ジアルキルカーボネートを1.0モル〜42モルとするのが好適であり、より好適には7モル〜17モルとするのが望ましい。
【0044】
反応時間は、前記油脂類がジアルキルカーボネートと反応し、脂肪酸アルキルエステルを生成するのに足る時間である。一般的には、反応時間は反応条件に応じて2分〜60分、より好ましくは3分〜20分である。
【0045】
本発明に係る製造方法において、ジアルキルカーボネートを除去する具体的方法は特に限定されず、例えば、反応混合物を蒸留塔に導入し、蒸留によってジアルキルカーボネートを塔頂から除去する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明に係る脂肪酸アルキルエステルの製造方法によって製造された脂肪酸アルキルエステルは、その用途は特に限定されないが、ディーゼル燃料油として好適に使用することができる。
【0047】
また、脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を少なくとも含む油脂類にジアルキルカーボネートを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることにより、極めて簡便な方法で脂肪酸アルキルエステルが得られる。
【0048】
また、前記脂肪酸グリセリドとジメチルカーボネートとの反応において、工業的に有用な化合物であるグリセロールカーボネート及びシトラマル酸を得ることができる。すなわち、本発明に係る油脂類の処理方法は、グリセロールカーボネート及びシトラマル酸の製造方法として用いられ得るものである。
【0049】
本発明によれば、触媒を使用することなく、簡便な製造工程及び精製工程で、油脂類から脂肪酸アルキルエステルを得ることができる。さらに、従来技術である超臨界メタノール法と同等の収率で脂肪酸アルキルエステルを得ることができる。加えて、ジアルキルカーボネート自体が天然物から得られうるものであり、環境に優しい製造方法であるといえる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>
本発明に係る製造方法によって、油脂類から脂肪酸メチルエステル組成物が得られることを検証した。
【0052】
Inconel(登録商標)−625で作製された5mLの反応容器に、菜種油(ナカライテスク社製)1.08mLと液体ジメチルカーボネート(ナカライテスク社製)3.92mLを導入した。両者のモル比は1:42である。
反応容器を溶融状態の錫浴に浸し、反応温度を350℃とした。反応時間として3分間、6分間、9分間、12分間、15分間保持した後、反応を停止するために反応容器を水浴に浸した。
反応液を90℃、20分間エバポレートし、ジメチルカーボネートを留去した。得られた液体は上下2層に分離した状態であった。
得られた上層について、カラム(Codenza CD−C18)と屈折率測定器(Shimadzu,RID−10A)からなる高速液体クロマトグラフィー(Shimadzu,LC−10AT)及び紫外線検出器(Shimadzu,SPD−10Avp,λ=205nm)と屈折率測定器及びAsahipak GF310−HQカラムを備えたゲル浸潤クロマトグラフィー(GPC)を使用して分析を行った。クロマトグラムの解析は、各種標準物質と保持時間を比較することにより行った。
得られた下層についても、上記ゲル浸潤クロマトグラフィー(GPC)を用いて分析を行った。
【0053】
実施例1の上層のHPLCクロマトグラム及びGPCクロマトグラムをそれぞれ図3、図4に示す。また、下層のGPCクロマトグラムを図5に示す。
【0054】
上層のHPLCクロマトグラム(図3)より、菜種油とジメチルカーボネートを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることにより、パルミチン酸メチル(C16−0)、ステアリン酸メチル(C18−0)、オレイン酸メチル(C18−1)、リノール酸メチル(C18−2)、リノレン酸メチル等から構成される脂肪酸メチルエステルが得られることを確認した。また、上層のGPCクロマトグラム(図4)より、菜種油とジメチルカーボネートとの反応において、中間体としてメチルカーボネートジクリセリド(MCDG)及びジメチルカーボネートモノグリセリド(DMCMG)が生じることを確認した。
【0055】
さらに、下層のHPLCクロマトグラム(図5)より、副生成物として、グリセロールカーボネート及びシトラマル酸が生成することを確認した。
【0056】
<比較例1>
Inconel(登録商標)−625で作製された5mLの反応容器に、菜種油(ナカライテスク社製)1.1mLとメタノール(ナカライテスク社製)3.9mLを導入した。両者のモル比は1:42である。
反応容器を溶融状態の錫浴に浸し、反応温度を350℃、43MPaとした。反応時間として3分間、6分間、9分間、12分間、15分間保持した後、反応を停止するために反応容器を水浴に浸した。
反応液を90℃、20分間エバポレートし、メタノールを留去した。得られた液体は上下2層に分離した状態であった。
得られた上層の脂肪酸メチルエステルについて、カラム(Codenza CD−C18)と屈折率測定器(Shimadzu,RID−10A)からなる高速液体クロマトグラフィー(Shimadzu,LC−10AT)を使用して分析を行った。クロマトグラムの解析は、各種標準物質と保持時間を比較することにより行った。
【0057】
<実施例2>
本発明に係る製造方法によって、脂肪酸から脂肪酸メチルエステルが得られることを検証した。
【0058】
Inconel(登録商標)−625で作製された5mLの反応容器に、オレイン酸(ナカライテスク社製)1.06mLと液体ジメチルカーボネート(ナカライテスク社製)3.94mLを導入した。両者のモル比は1:14である。
反応容器を溶融状態の錫浴に浸し、反応温度を300℃、反応圧力を9MPaとした。反応時間として4分間、6分間、8分間保持した後、反応を停止するために反応容器を水浴に浸した。
反応液を90℃、20分間エバポレートし、ジメチルカーボネートを留去した。
得られた液体について、カラム(Codenza CD−C18)と屈折率測定器(Shimadzu,RID−10A)からなる高速液体クロマトグラフィー(Shimadzu,LC−10AT)を使用して分析を行った。
【0059】
実施例2の生成物のHPLCクロマトグラムを図6に示す。オレイン酸とジメチルカーボネートを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることにより、脂肪酸メチルエステルが得られることが確認された。
【0060】
実施例1、2及び比較例1における脂肪酸メチルエステル組成物の収率の経時的推移を図7に示す。
【0061】
実施例1における脂肪酸メチルエステルの収率は、比較例1のメタノール法を使用した場合と比較してほぼ同等の収率であることを確認した。
また、オレイン酸を用いた実施例2についても、実施例1及び比較例1と比較して低温、低圧条件にもかかわらず、8分間の反応時間で収率90%と、高い収率で脂肪酸メチルエステルが得られることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】脂肪酸トリグリセリドとジメチルカーボネートとの反応式を表す図である。
【図2】本発明に係る脂肪酸メチルエステル組成物の製造方法のフロー図である。
【図3】実施例1で得られた上層のHPLCクロマトグラムである。
【図4】実施例1で得られた上層のGPCクロマトグラムである。
【図5】実施例1で得られた下層のGPCクロマトグラムである。
【図6】実施例2で得られた生成物のHPLCクロマトグラムである。
【図7】実施例1、2及び比較例1における脂肪酸メチルエステル組成物の収率の経時的推移を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を少なくとも含む油脂類から脂肪酸アルキルエステルを製造する方法であって、
前記油脂類とジアルキルカーボネートとを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることを特徴とする脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
【請求項2】
前記ジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネートであることを特徴とする請求項1記載の脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
【請求項3】
前記油脂類に含まれる脂肪酸グリセリド1モルに対して前記ジアルキルカーボネートが3.0モル〜126モルであることを特徴とする請求項1又は2記載の脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
【請求項4】
前記油脂類に含まれる脂肪酸1モルに対して前記ジアルキルカーボネートが1.0モル〜42モルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
【請求項5】
前記脂肪酸アルキルエステルがディーゼル燃料油として使用される、請求項1〜4のいずれか1項記載の脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
【請求項6】
脂肪酸グリセリド及び/又は脂肪酸を少なくとも含む油脂類を処理する方法であって、
前記油脂類とジアルキルカーボネートとを共存させ、温度240℃〜400℃、圧力2.0MPa〜100MPaの条件下で反応させることを特徴とする、油脂類の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−37239(P2010−37239A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200282(P2008−200282)
【出願日】平成20年8月2日(2008.8.2)
【出願人】(599006203)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【Fターム(参考)】