説明

脊髄性筋萎縮症の治療およびその他用途のための化合物

脊髄性筋萎縮症の治療または他の用途に有用な化合物、ならびにSMNの発現を増強させる、EAAT2の発現を増強させる、または変異またはフレームシフトによって生じる翻訳終止コドンをコードする核酸の発現を増強させる、当該化合物の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、乳児および小児の麻痺疾患であり、しばしば致命的な疾患となる。現在まで、SMAに有効な治療はない。この疾患は、生存運動ニューロンタンパク質(survival motor neuron protein;SMN)のレベルが低下する変異によって引き起こされ、結果として、中枢神経系における運動ニューロン喪失を生じさせる。SMNの発現増強剤は、SMAの予防および治療に有用であると期待される。培養細胞における従来の研究により、以前に市販された非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であるインドプロフェンが、未知の機構を介して、SMNタンパク質の発現レベルを増強させることが示されている(Lunn et al.,Chem. & Biol., 11, 1489−1493(2004))。インドプロフェンを、子宮に投与した場合、SMAモデルマウス胎児の生存率が増加することも示されている。試験されたNSAIDの全てがSMNの発現を増強させるわけではないので、SMNの発現の制御機構が、インドプロフェンのNSAID活性と関係があるとは考えられない。SMNタンパク質のレベルが、ナンセンス終止コドンの翻訳リードスルーを引き起こす薬剤によって改善され得ることが示されているので、1つの可能性のある作用機構は、タンパク質の翻訳を増強させることである(Wolstencroft et al., Hum. Mol. Genet., 14, 1199−210 (2005))。しかしながら、インドプロフェンはSMNの発現増強において弱い活性を有するにすぎず、十分なレベルで脳に導入されず、かつ、少なくとも一部はそのシクロオキシゲナーゼ(Cox)阻害活性により致命的な副作用を有するので、インドプロフェンはSMAに有用な薬剤ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
従って、これらの問題のいくつかを対処することができる新規な化合物、組成物および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の要旨
本発明は、式IまたはIIの化合物を提供する:
【0004】
【化1】

【0005】
本発明はまた、関連する化合物、ならびに本発明化合物の製造方法、1以上の本発明化合物および担体を含む組成物、特に医薬組成物を提供する。
【0006】
本発明は更に、本発明化合物を、SMN2をコードする核酸を含む細胞に投与し、それによってSMNの発現を増強させることを含む、細胞のSMNの発現増強方法を提供する。
【0007】
本発明は加えて、本発明化合物を、興奮性アミノ酸トランスポーター(EAAT2)をコードする核酸を含む細胞に投与し、それによってEAAT2の発現を増強させることを含む、EAAT2の発現を細胞内で増強させる方法を提供する。
【0008】
本発明はまた、本発明化合物を、翻訳終止コドンをコードする核酸を含む細胞に投与し、それによって核酸の発現を増強させることを含む、翻訳終止コドンをコードする核酸の発現を細胞内で増強させる方法を提供する。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、式IまたはIIの化合物を提供する:
【0010】
【化2】

【0011】
[式中、
W は、C(O)、C(S)およびCH2からなる群から選択され;
B は、CH2 または CH(CnH2n+1)(n は、1 から 8の整数である。)であり;
C は、縮合チオフェン環、縮合ピリジン環およびシクロヘキサン環からなる群から選択され、それらはいずれも、飽和であってもよく、あるいは1または2個の非共役二重結合を含んでいてもよく;
R1 および R2 は、H および C1−C3アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはR1 と R2 が、それらの結合する炭素原子と共に、C3−C6 シクロアルキル環またはカルボニル基を形成してもよく;
R3 は、H、ハロゲン、C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、CN、NO2、ヘテロアリールおよび1から5個のハロゲン、NO2、CN、C1−C4アルキル、C1−C4ハロアルキルまたはC1−C4アルコキシの任意の組み合わせで任意に置換されるフェニルからなる群から選択され;
R4、R5、R6および R7 は、H、ヒドロキシル、ハロゲン、CN、NO2、スルホンアミド、C1−C8アルキル、C3−C6 シクロアルキル、C1−C6 アルコキシ、C1−C6ハロアルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C2−C8 アルケニル、アミノ、C1−C4ジアルキルアミノ、C1−C4 アルキルアミノ、C1−C6 シクロアルキルアミノ、モルホリン、ヘテロアリール(チエニル、ピリジルおよびピリミジニルを含むが、これに限られない。)、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、フェニル、C(O)R’、NR’(COR’’)、NR’SO2R’’ および NR’(CONR’’R’’’)
(R’、R’’ および R’’’ は、独立してH、C1−C6 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。フェニルは、ハロゲン、NO2、CN、C1−C4アルキル、C1−C4 ハロアルキルおよびC1−C4 アルコキシからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)
からなる群から独立して選択されるか、あるいはR4 と R5、R5 と R6、またはR6 と R7が、それらの結合する炭素原子と共に環を形成し;
X は、
H;
CN;
C(O)OR8(R8 は、HまたはC1−C6アルキルであり、かつC1−C8 アルキルはC1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、フェニルおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。);
C(O)NR9R10 または CH2NR9R10(R9および R10 は、H および C1−C6アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはR9 と R10 が、それらの結合する窒素原子と共に、C5−C6シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);
CH2OR11(R11は、H、C1−C8 アルキル(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)またはC1−C6 シクロアルキルである。);
CH2Z(Z はハロゲンである。);
C(O)NHOH;
C(O)NHCN;
C(O)N(R1)SO2R13(R13は、C1−C4 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。);
C1−C4アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C1−C8アルキル;および
C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C2−C8アルケニル
からなる群から選択される(但し、当該化合物が式Iの化合物であり、R4、R5、R6 および R7 がそれぞれHであるとき、X はC(O)OHではない。)。]。
【0012】
本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「アルキル」は、指定された炭素原子数(例えば、C1−C20、C1−C10、C1−C4など)を有する、直鎖状または分枝鎖状の飽和非環式炭化水素を意味する。代表的な直鎖状の飽和アルキルは、−メチル、−エチル、−n−プロピル、−n−ブチル、−n−ペンチル、−n−ヘキシル、−n−ヘプチル、−n−オクチル、−n−ノニルおよび−n−デシルを含む;一方、代表的な分枝鎖状の飽和アルキルは、−イソプロピル、−sec−ブチル、−イソブチル、−tert−ブチル、−イソペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルヘキシル、2,4−ジメチルヘキシル、2,5−ジメチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,2−ジメチルヘキシル、3,3−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルヘキシル、4,4−ジメチルヘキシル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、2−メチル−2−エチルペンチル、2−メチル−3−エチルペンチル、2−メチル−4−エチルペンチル、2−メチル−2−エチルヘキシル、2−メチル−3−エチルヘキシル、2−メチル−4−エチルヘキシル、2,2−ジエチルペンチル、3,3−ジエチルヘキシル、2,2−ジエチルヘキシル、3,3−ジエチルヘキシルなどを含む。アルキル基は、非置換でも置換されていてもよい。
【0013】
本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「シクロアルキル」は、炭素原子と水素原子を含み、炭素−炭素多重結合を有しない、単環式または多環式飽和環を意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルならびに飽和環式および二環式テルペンが含まれるがこれに限られない。シクロアルキル基は、置換されていなくてもよく置換されていてもよい。シクロアルキル基は、単環式環または二環式環が好ましい。
【0014】
本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「アルケニル基」は、指定された炭素原子数(例えば、C2−C20、C2−C10、C2−C4など)を有する、直鎖状または分枝鎖状の非環式炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分枝鎖状のアルケニルは、−ビニル、−アリル、−1−ブテニル、−2−ブテニル、−イソブチレニル、−1−ペンテニル、−2−ペンテニル、−3−メチル−1−ブテニル、−2−メチル−2−ブテニル、−2,3−ジメチル−2−ブテニル、−1−ヘキセニル、−2−ヘキセニル、−3−ヘキセニル、−1−ヘプテニル、−2−ヘプテニル、−3−ヘプテニル、−1−オクテニル、−2−オクテニル、−3−オクテニル、−1−ノネニル、−2−ノネニル、−3−ノネニル、−1−デセニル、−2−デセニル、−3−デセニルなどを含む。アルケニル基の二重結合は、他の不飽和基と共役していなくてもよく、共役してもよい。アルケニル基は、置換されていなくてもよく置換されていてもよい。
【0015】
本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「アルキニル基」は、指定された炭素原子数(例えば、C2−C20、C2−C10、C2−C6など)を有し、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む、直鎖状または分枝鎖状の非環式炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分枝鎖状のアルキニルは、−アセチレニル、−プロピニル、−1−ブチニル、−2−ブチニル、−1−ペンチニル、−2−ペンチニル、−3−メチル−1−ブチニル、−4−ペンチニル、−1−ヘキシニル、−2−ヘキシニル、−5−ヘキシニル、−1−ヘプチニル、−2−ヘプチニル、−6−ヘプチニル、−1−オクチニル、−2−オクチニル、−7−オクチニル、−1−ノニニル、−2−ノニニル、−8−ノニニル、−1−デシニル、−2−デシニル、−9−デシニルなどを含む。アルキニル基の三重結合は、他の不飽和基と共役しなくてもよく、共役してもよい。アルキニル基は、置換されていなくてもよく置換されていてもよい。
【0016】
本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。更に、特に断りのない限り、用語「ハロアルキル」は、1以上のハロゲンで置換されるアルキルを意味する(アルキルおよびハロゲンは上記と同意義である。)。
【0017】
本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「アルコキシ」は、−O−(アルキル)(アルキルは上記と同意義である。)を意味する。さらに、本明細書で用いるとき、用語「ハロアルコキシ」は、1以上のハロゲンで置換されるアルコキシ(アルコキシおよびハロゲンは上記と同意義である。)を意味する。
【0018】
本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、窒素、酸素または硫黄から独立して選択される1から3個のヘテロ原子)を含む5から14個の環原子を含む、炭素環式芳香環を意味する。ヘテロアリール環構造は、単環式、二環式または三環式化合物のような1以上の環構造、ならびに縮合へテロ環式部分を有する化合物を含む。代表的なヘテロアリールは、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリジル、フラニル、ベンゾフラニル、チオフェニル、チアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ベンゾキナゾリニル、アクリジニル、ピリミジル、オキサゾリル、ベンゾ[1,3]ジオキソ−ルおよび2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシンである。ヘテロアリール基は、置換されていなくてもよく置換されていてもよい。
【0019】
本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「アルキルアミノ」は、−NH(アルキル)または−N(アルキル)(アルキル)(アルキルは上記と同意義である。)を意味する。本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「アミノアルキル」は、−(アルキル)−NH2(アルキルは上記と同意義である。)を意味する。
【0020】
本明細書で用いるとき、特に断りのない限り、用語「置換される」は、 アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アロイル、ハロ、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ハロアルコキシ(例えば、トリフルオロメトキシ)、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオエーテル、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、オキソ、アルカノイル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクロ、アリールオキシ、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、モノおよびジ置換アミノ(アミノ基における2個の置換基は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルから選択される。)、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ(aralkanoylamino)、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ(aralkanoylamino)、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アリールアルキルチオ、シクロアルキルチオ、ヘテロシクロチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アリールアルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アリールアルキルスルホニル、スルホンアミド(例えば、SO2NH2)、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル(例えば、CONH2)、置換カルバミル(例えば、CONH−アルキル、CONH−アリール、CONH−アリールアルキル、または窒素上にアルキルまたはアリールアルキルから選択される2個の置換基がある場合)、アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジノ、置換または非置換のヘテロシクロアルキル、置換または非置換のヘテロアリール(例えば、インドリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、チアゾリル、ピロリジル、ピリジル、ピリミジルなど)のような、1から4またはそれ以上の置換基で置換される基を意味する。
【0021】
構造中の原子数の範囲(例えば、C1−C8、C1−C6、C1−C4またはC1−C3 アルキル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルケニルなど)が示されたときはいつでも、示された範囲に含まれるいかなるより小さい範囲または個々の炭素原子数を用いてもよいことが特に意図されている。従って例えば、本明細書記載のいずれかの化学基(例えば、アルキル、ハロアルキル、アルキルアミノ、アルケニルなど)に関して用いられる限り、1−8個の炭素原子(例えば、C1−C8)、1−6個の炭素原子(例えば、C1−C6)、1−4個の炭素原子(例えば、C1−C4)、1−3個の炭素原子(例えば、C1−C3)または2−8個の炭素原子(例えば、C2−C8)の範囲には、詳述すると、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子、ならびに適切であればそれらのより小さい範囲(例えば、適切であれば、1−2個の炭素原子、1−3個の炭素原子、1−4個の炭素原子、1−5個の炭素原子、1−6個の炭素原子、1−7個の炭素原子、1−8個の炭素原子、2−3個の炭素原子、2−4個の炭素原子、2−5個の炭素原子、2−6個の炭素原子、2−7個の炭素原子、2−8個の炭素原子、3−4個の炭素原子、3−5個の炭素原子、3−6個の炭素原子、3−7個の炭素原子、3−8個の炭素原子、4−5個の炭素原子、4−6個の炭素原子、4−7個の炭素原子、4−8個の炭素原子、5−6個の炭素原子、5−7個の炭素原子、5−8個の炭素原子、6−7個の炭素原子または6−8個の炭素原子)が包含され、また特に挙げられる。
【0022】
本発明は、式IおよびIIに記載の全ての化合物を包含するが、これに限られない。しかしながら、更なる説明のために、本発明の好適な態様および要素を本明細書に記載する。
【0023】
式IおよびIIに関して、WはC(O)、C(S)および CH2からなる群から選択されるいずれかであってよい。本発明のある好適な態様によれば、特に式Iの化合物に関して、W はC(O)である。BはCH2またはCH(CNH2N+1)である(nは1から8の整数である)。
【0024】
R1 および R2 は、同一または異なっていてもよく、HおよびC1−C3アルキルからなる群から選択されるか、あるいは R1 と R2がそれらの結合する炭素原子と共に、C3−C5 またはC3−C6 シクロアルキル環またはカルボニル基を形成してもよい。R1 および R2 は、H またはC1−C3 アルキルであることが好ましい。R1 がH であり、R2がCH3のようなC1−C3アルキルであることが更に好ましい。
【0025】
R3 は、H、ハロゲン、C1−C4アルキル、C1−C4 アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、CN、NO2、ヘテロアリールおよび1から5個のハロゲン、NO2、CN、C1−C4アルキル、C1−C4 ハロアルキルまたはC1−C4 アルコキシの任意の組み合わせで任意に置換されるフェニルからなる群から選択されるいずれかの置換基であってもよい。しかしながら、R3 はHであることが好ましい。
【0026】
本発明の1つの好適な態様によれば、R4、R5、R6およびR7 の少なくとも1つはHではない。従って、本発明の当該態様に関して、R4、R5、R6 およびR7の少なくとも1つ、好ましくはR5、R6および/またはR7は、ヒドロキシル、ハロゲン、CN、NO2、スルホンアミド、C1−C8アルキル、C3−C6 シクロアルキル、C1−C6 アルコキシ、C1−C6ハロアルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C8 アルケニル、アミノ、C1−C4ジアルキル アミノ、C1−C4 アルキルアミノ、C1−C6シクロアルキルアミノ、モルホリン、ヘテロアリール、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、フェニルおよびC(O)R’、NR’(COR’’)、NR’SO2R’’および NR’(CONR’’R’’’)からなる群から選択される(R’、R’’およびR’’’は、独立してH、C1−C6 アルキル、フェニルまたは置換フェニル、およびフェニルである。C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。フェニルは、ハロゲン、NO2、CN、C1−C4アルキル、C1−C4 ハロアルキルおよびC1−C4 アルコキシまたはそれらのサブグループまたはサブコンビネーションのいずれかからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)。
【0027】
本発明の当該態様によれば、R5 もしくは R6の一方または両方がH でないことが更に好ましい。従って、R5 もしくはR6の一方または両方が、独立して上記のように選択されるか、あるいはハロゲン、C1−C8 アルキル、C3−C6シクロアルキル、C1−C6 アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、アミノ、C1−C4ジアルキルアミノ、C1−C4 アルキルアミノ、C1−C6シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から独立して選択される(C1−C8アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)。
【0028】
望ましくは、R5がHであり、R6が上記のように選択されるか、あるいはR6がハロゲン、C1−C3 アルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C4ジアルキルアミノおよびC1−C4 ハロアルキルからなる群から選択される。R6基に適した更なる具体例としては、クロロ、ブロモ、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、メトキシ、エートキシ、プロポキシ、i−プロポキシ、シクロヘキシルオキシ、ジメチルアミノおよびCF3が挙げられる。R6がHでないときは、R4、R5およびR7がそれぞれHであることが好ましい。
【0029】
R5 が Hでないときは、R5 は好適には、上記のように選択されるか、あるいはCN、ハロゲン、C1−C8 アルキル、C3−C6シクロアルキル、C1−C6 アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、アミノ、C1−C4ジアルキルアミノ、C1−C4 アルキルアミノ、C1−C6シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択されてもよい(C1−C8アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)。R5 基に適した具体例としては、メチル、エチル、プロピルまたはCNが挙げられる。R5 が Hでないときは、R4、R6および R7がそれぞれHであることが好ましい。
【0030】
R7 がHでないときは、R7は上記のように選択されるか、あるいはハロゲン、C1−C8 アルキル、C3−C6シクロアルキル、C1−C6 アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、アミノ、C1−C4ジアルキルアミノ、C1−C4 アルキルアミノ、C1−C6シクロアルキルアミノおよびモルホリン(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)からなる群から選択されてもよい。R7 基に適した更なる具体例としては、C1−C8 アルキル、アミノまたはC1−C4 アルキルアミノ基(例えば、メチル、エチル、プロピルまたはアミノなど)が挙げられる。R7 がHでないときはR4、R5および R6がHであることが好ましい。
【0031】
あるいは、または加えて、R4 と R5、R5 とR6またはR6 とR7が、それらの結合する炭素原子と共に、環、好ましくは5員または6員のヘテロ環を形成してもよい。環の例としては、ジオキサンまたはジオキソラン環が含まれるが、これに限られない。
【0032】
加えて、式 I の化合物は、R3、R4、R5、R6またはR7 の少なくとも1つが、ヒドロキシル、C1−C6 ハロアルコキシ、C1−C6アルケニル、またはアリールアミノもしくはアリールアルキルアミノで置換されるC1−C8アルキルである化合物であることが望ましい。R3、R4、R5、R6または R7 の少なくとも1つが、C1−C6 ハロアルコキシであることが好ましい。ハロアルコキシ基の例としては、−OCHF2が含まれるが、これに限られない。
【0033】
あるいは、または加えて、R3、R4、R5、R6またはR7 の少なくとも1つが、C(O)R’、NR’(COR’’)、NR’SO2R’’およびNR’(CONR’’R’’’)である(R’、R’’およびR’’’は、独立してH、C1−C6 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。)。当該基の例としては、ウレア(例えば、NH(CO)NH2)が含まれるが、これに限られない。
【0034】
X は、
H;
CN;
C(O)OR8(R8 は、H または C1−C8 アルキルであり、C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、フェニルおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。);
C(O)NR9R10(R9および R10 はH および C1−C6アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択されるか、あるいは R9 とR10がそれらの結合する窒素原子と共に、C5−C6 シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);
CH2OR11(R11は、H、C1−C8 アルキルまたはC1−C6 シクロアルキル(C1−C8アルキルはC1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)である。);
CH2NR9R10(R9および R10は上記と同意義である。);
CH2Z(Z はハロゲンである。);
C(O)NHOH;
C(O)NHCN;
C(O)N(R1)SO2R13(R13は C1−C4 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。);
C1−C4アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよび C1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C1−C8アルキル;および
C1−C4アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C1−C8 アルケニル
からなる群から選択されるいずれかの置換基でもよい。但し、当該化合物が式Iであり、R4、R5、R6および R7がそれぞれHであるとき、X はC(O)OHではない。
【0035】
X は上記のように選択されるが、Xは、
CN;
C(O)OR8(R8はフェニルで任意に置換されるC1−C6 アルキルである。);
C(O)NR9R10(R9および R10 はH および C1−C6アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいは R9 と R10がそれらの結合する窒素原子と共に、C5−C6 シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);
CH2OR11(R11は H、C1−C8 アルキルまたはC1−C6 シクロアルキル(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)である。);
CH2NR9R10(R9および R10 は上記と同意義である。);
CH2Z(Z はハロゲンである。);
C(O)NHOH;
C(O)NHCN;および
C(O)N(R1)SO2R13(R13はC1−C4 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。)
からなる群から選択されることがより好ましい。
【0036】
別の好適な態様によれば、Xは、
CN;
C(O)OR8(R8は、フェニルで任意に置換されるC1−C6 アルキルである。);
CH2OR11(R11は、H、C1−C8 アルキルまたは C1−C6 シクロアルキル(C1−C8アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)である。);
CH2NR9R10(R9および R10 はH および C1−C6アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいは R9 と R10がそれらの結合する窒素原子と共に、C5−C6シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);および
CH2Z(Z はハロゲンである。)
からなる群から選択される。X は好適にはC(O)OR8(R8は、フェニルで任意に置換されるC1−C6 アルキルである。)、またはCH2Z(Z はハロゲンである。)として選択されてもよい。さらにX 基に適した具体例としては、C(O)OR8(R8 は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチルまたはベンジルである。)が挙げられる。
【0037】
本発明の別の好適な態様によれば、Xが上記のように選択され、C(O)OHでないときは、R4、R5、R6および R7 はそれぞれHであってもよい。また、R4、R5、R6および R7 の少なくとも1つがHでなく、代わりに上記のように選択されるときは、Xは有利にC(O)OHとして選択されてもよい。本発明の当該態様は、特に式Iの化合物に適している。
【0038】
本発明の別の態様によれば、式I の化合物は、W がC(S) またはCH2であり、B がCH2であり、かつR1−R7が上記のように選択されるように選択される。
【0039】
本発明の化合物の特定の例を表1に示す。従って、本発明は、表1に示すそれぞれの化合物を包含する。表1に示すいずれかの化合物が式IまたはIIの範囲外にある程度まで、当該化合物は本発明の追加の態様と見なされる。表1の好適な化合物としては、ALB−116244、ALB−115069、ALB1113310およびALB 112355として識別される化合物が含まれる。
【0040】
当分野の通常の技術を有する者が理解し得るように、本明細書記載の分子の多くがキラル中心を含んでいてもよく、分子中に存在する1以上の立体異性体(例えば、ジアステレオマーまたはエナンチオマー)を有してもよい。構造または構造の部分の立体化学が(例えば太線または破線で)示されていない場合、当該構造または構造の部分は、その立体異性体のすべてを包含すると解釈される。本発明では特に、本明細書記載の化合物のいかなる個々の立体異性体(例えば、ジアステレオマーまたはエナンチオマー)ならびにそれらの混合物(例えば、ラセミ混合物)も意図されている。
【0041】
本明細書記載の本発明化合物は、いくつかの手法のいずれかによって調製されてもよい。発明を限定しない例として、フロー図1〜5に従って、または実施例記載のように、当該化合物は調整することができる。
【0042】
フロー図1に関して式(a)化合物は、市販品であるか、または常法を用いて容易に調製することができる。式(a)エステル(R = 低級アルキル)を、N−ブロモスクシンイミド(NBS)のようなハロゲン化剤と、フロー図1に示すように反応させて、式(b)化合物を調製することができる。次いで、式(b)化合物(ベンジルブロマイド)を式(c)化合物(例えば、アニリン)と反応させて、式(d)の環化生成物を得る。次いで、塩基性または酸性条件下で、式(d)のエステルを加水分解し、本発明の式(e)化合物を調製することができる。
フロー図1
【0043】
【化3】

【0044】
一部の例では、式(b)化合物を式(c)化合物とフロー図2に示すように反応させて、非環化中間体(非環化中間体を式(f)に示す)を生成させる。式(f)化合物である低級エステルを加水分解し、式(g)の酸を得る。式(g)の酸をカップリング試薬(例えば、EDC)で処理し、式(d)化合物を得る。次いで、式(d)化合物をフロー図1に示すように加水分解し、式(e)化合物を得ることができる。
フロー図2
【0045】
【化4】

【0046】
フロー図1または2に従って、R3、R4、R5、R6またはR7にハロゲン(例えば、ブロマイド)を有する式(d)化合物を調製する場合(例えば、出発物質として所望の位置にハロゲンを含む式(a)化合物を利用して)、式(d)化合物を慣用の方法でさらに誘導体化することができる。例えば、アリール、ヘテロアリール、アルキルおよびアミン誘導体は、Suzuki反応、Stille反応およびBuchwald反応などのようなクロスカップリング反応を利用して、調製することができる。
【0047】
フロー図1または2に従って、R3、R4、R5、R6またはR7にニトロ基を有する式(d)化合物を調製する場合(例えば、出発物質として所望の位置にニトロ基を含む式(a)化合物を利用して)、式(d)化合物を還元してアミンを得、慣用の方法でさらに誘導体化して二級アミン、三級アミン、アミドおよびスルホンアミドを得ることができる。
【0048】
フロー図1または2に従って、R3、R4、R5、R6またはR7にフェノール基を有する式(d)化合物を調製する場合(例えば、出発物質として所望の位置にフェノール基を含む式(a)化合物を利用して)、式(d)化合物を慣用の方法でさらに誘導体化し、エーテルおよびエステルを得ることができる。
【0049】
フロー図1または2に従って調製される式(e)化合物の酸性基を、従来法で誘導体化し、エステル、アミドおよびニトリルなどのような官能性酸誘導体を得ることができ、あるいはアシルスルホンアミド、ヒドロキサム酸などのような酸等価体に変換することができる。
【0050】
フロー図3に示すように、式(e)の酸を還元剤(例えば、ボラン)で還元し、式(h)化合物を得ることができる。式(h)化合物を従来法で誘導体化し、式(i)のエーテルを得ることができる。
フロー図3
【0051】
【化5】

【0052】
フロー図4に示すように、式(h)化合物を、トリフェニルホスフィン/四臭化炭素のような試薬を用いて、式(j)化合物に変換することができる。次いで、式(j)化合物を種々のアミンと反応させて式(k)化合物を得ることができる。
フロー図4
【0053】
【化6】

【0054】
あるいは、フロー図5に示されるように、式(l)化合物を式(b)化合物と環化して種々の酸修飾誘導体を調製し、式(m)化合物を得ることができる。
フロー図5
【0055】
【化7】

【0056】
従って本発明は、1以上の上記工程(例えば、フロー図1〜5)を含む式IまたはIIの化合物、ならびに例えば式IまたはIIの化合物の調製において中間体として有用な式(a)〜(m)のいずれかの化合物の製造法を提供する。
【0057】
本明細書記載の1以上の本発明化合物を、本発明化合物および担体、特に医薬上許容される担体を含む医薬組成物のような組成物として形成してもよい。当該医薬組成物は、1以上の本発明化合物を含んでいてもよい。あるいは、または加えて、当該医薬組成物は、他の医薬活性薬剤または薬物と組み合わせて、1以上の本発明化合物を含んでいてもよい。1以上の本発明化合物と組み合わせて用いるのに適した他の当該医薬活性薬剤または薬物の実施例としては、翻訳リードスルー促進剤(例えば、WO 2004/009558、ゲンタマイシンまたは他のアミノグリコシド系抗生物質)、1以上のヒストン脱アセチル化酵素そを阻害する薬物(例えば、バルプロ酸、フェニルブチレートまたはヒドロキシウレア)、または他の機構を介したSMNの発現増強剤が含まれる。また本発明化合物は、抗癌剤または他の抗生物質と組み合わせて、投与され、または処方されてもよい。好適な抗癌剤は、アルキル化剤、ナイトロジェンマスタード、葉酸拮抗薬、プリン拮抗薬、ピリミジン拮抗薬、紡錘体毒、トポイソメラーゼ阻害剤、アポトーシス誘発剤、血管新生阻害剤、ポドフィロトキシン、ニトロソウレア、シスプラチン、カルボプラチン、インターフェロン、アスパラギナーゼ、タモキシフェン、リュープロリド、フルタミド、メゲストロール、マイトマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イリノテカンおよびタキソールを含むがこれに限られない。他の抗生物質は、マクロライド(例えば、トブラマイシン)、セファロスポリン(例えば、セファレキシン、セフラジン、セフロキシム、セフプロジル、セファクロル、セフィキシムまたはセファドロキシル)、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン(例えば、ペニシリン V)およびキノロン(例えば、オフロキサシン、シプロフロキサシンまたはノルフロキサシン)を含む。
【0058】
当該組成物は、さらに担体を含む。当該担体は、いかなる好適な担体であってもよい。当該担体は、医薬上許容される担体であることが好ましい。医薬組成物に関して、当該担体は、従来用いられているいかなる担体であってもよく、活性化合物との溶解性および反応性のないことのような生理化学的考察および投与ルートによってのみ制限される。下記医薬組成物に加えて、本発明方法の化合物および阻害剤は、シクロデキストリン包接複合体のような包接複合体またはリポソームとして処方されてもよいということが、当業者に理解されるだろう。
【0059】
本明細書記載の医薬上許容される担体(例えば、溶媒、アジュバント、賦形剤および希釈剤)は、当業者に周知であり、公衆が容易に利用できるものである。医薬上許容される担体は、活性薬剤に対して化学的に不活性であり、用いる条件下で有害な副作用または毒性を有しないものが好ましい。
【0060】
担体の選択は、本発明の特定の化合物および他の用いられる活性薬剤または薬物によって、ならびに当該化合物および/または阻害剤を投与するために用いられる特定の方法によって、部分的に決定されるだろう。従って、本発明方法の医薬組成物の好適な製剤形態は、種々存在する。経口、エアロゾル、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、ふくまく腹腔内、直腸内および膣投与のための下記製剤形態は、代表的なものであり、これに限られるものでは全くない。当業者は、本発明化合物のこれらの投与ルートが公知であり、1以上のルートが特定の化合物の投与に用いられ得るけれども、特定のルートが別のルートよりも即効性があり有効な反応を提供し得ると理解するだろう。
【0061】
注射製剤形態は、これらの製剤形態の中で、本発明に好適な製剤形態である。注射組成物の医薬上許容される担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B. Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds., 238−250頁(1982)およびASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed., 622−630頁(1986)参照)。
【0062】
局所製剤形態は、当業者に周知である。当該製剤形態は、本発明との関連で特に皮膚投与するのに適している。
【0063】
経口投与に適した製剤形態は、
(a) 液状溶液剤(例えば、阻害剤の有効量が水、生理食塩水またはオレンジジュースのような希釈剤に溶解しているものなど);
(b)固形製剤または顆粒剤としてそれぞれ所定量の有効成分を含む、カプセル剤、小袋、錠剤、ロゼンジおよびトローチ剤;
(c) 散剤;
(d) 適当な液体中の懸濁化剤;および
(e) 適当なエマルジョン剤
からなってもよい。
液体製剤形態は、医薬上許容される界面活性剤を添加してまたは添加しないで、水およびアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコールおよびポリエチレンアルコール)のような希釈剤を含んでもよい。カプセル剤の形態は、界面活性剤、滑沢剤および例えば、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウムおよびコーンスターチのような不活性賦形剤を含む、通常の硬質または軟質ゼラチンタイプであってもよい。錠剤の形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤(buffering agents)、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、香料および薬理学的に適合する賦形剤の1以上を含んでもよい。ロゼンジの形態は、香料(通常、スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガント)中に有効成分を含んでいてもよく、同様に不活性基剤(例えば、ゼラチンとグリセリン、またはスクロースとアラビアゴムなど)中に有効成分を含むトローチ、有効成分に加えて当技術分野で公知の賦形剤を含むエマルジョン、ゲルなどを含んでもよい。
【0064】
本発明化合物は、単独でまたは他の好適な成分と併用して、吸引投与用のエアロゾルとして製剤化されてもよい。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される噴射剤中に含ませることができる。また、それらはネブライザーまたはアトマイザのような非加圧製剤のための医薬品として処方されてもよい。当該スプレー製剤形態は、粘膜に噴霧するために用いられてもよい。
【0065】
非経口投与に適した製剤形態は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および所定の投与対象者の血液と等張の製剤形態を提供する溶質を含んでもよい、水溶性および非水溶性の無菌等張注射溶液を含む。ならびに当該製剤形態は、懸濁化製剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤および保存剤を含んでもよい、水溶性および非水溶性の無菌懸濁液を含む。本発明化合物は、生理学的に許容される希釈剤、医薬上許容される担体、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖および関連する糖の水溶液を含む無菌溶液または混合液など、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールまたはヘキサデシルアルコールなど)、グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど)、ジメチルスルホキシド、グリセロールケタール(例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールなど)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)400など)、油、脂肪酸、脂肪酸エステルもしくはグリセリド、またはアセチル化脂肪酸グリセリド中で投与されてもよい。これらは、医薬上許容される界面活性剤(例えば、石鹸または界面活性剤など)、懸濁化剤(例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなど)、または乳化剤および他の医薬上許容されるアジュバントを添加してまたは添加しないで、投与されてもよい。
【0066】
非経口製剤形態で用いられ得る油は、石油、動物油、植物油または合成油を含む。油の具体例としては、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ワセリンおよび鉱物油が挙げられる。非経口製剤形態で用いるのに適した脂肪酸は、オレイン酸、ステアリン酸およびイソステアリン酸を含む。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。
【0067】
非経口製剤形態で用いるのに適した石鹸は、脂肪酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩およびトリエタノールアミン塩を含み、それに適した界面活性剤は、
(a) 例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハロゲン化物およびアルキルピリジニウムハロゲン化物のようなカチオン界面活性剤、
(b) 例えば、アルキル、アリールおよびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテルおよびモノグリセリドスルフエート、およびスルホスクシネート(sulfosuccinates)のようなアニオン界面活性剤、
(c) 例えば、脂肪酸のアミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミドおよびポリオキシエチレンポリプロピレン共重合体のような非イオン性界面活性剤、
(d) 例えば、アルキル−b−アミノプロピオネートおよび2−アルキル−イミダゾリン四級アンモニウム塩のような両性界面活性剤、ならびに
(e) それらの混合物
を含む。
【0068】
非経口製剤形態は、典型的に、約0.5重量%から約25重量%の有効成分を溶液中に含む。保存剤および緩衝剤が用いられてもよい。注射部位の刺激を最小化または除去するために、当該組成物は、約12から約17までの親水性−親油性バランス(HLB)を有する1以上の非イオン性界面活性剤を含んでもよい。当該製剤形態中の界面活性剤の量は、典型的に約5重量%から約15重量%の範囲であってよい。好適な界面活性剤は、ソルビタンモノオレイン酸エステルおよびプロピレングリコールとプロピレンオキサイドの縮合によって形成される疎水性基剤を伴ったエチレンオキサイド高分子量付加体のような、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む。非経口製剤形態は、アンプルやバイアルのような容器に1回服用量または複数回服用量で封入されていてもよいし、注射に用いる直前に例えば水のような無菌液体賦形剤を添加するだけでよい凍結乾燥状態で保存されてもよい。注射溶液および懸濁液は、前記のような無菌の散剤、顆粒剤および錠剤から即時調製されてもよい。
【0069】
更に、本発明化合物または当該化合物を含む組成物は、乳化基剤または水溶性基剤のような種々の基剤と混合して坐薬に製剤化されてもよい。膣投与に適した製剤形態は、有効成分に加えて当技術分野で好適であると知られている担体を含む、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ぺースト剤、発泡性剤または噴霧剤の形態であってもよい。
【0070】
本明細書記載の本発明化合物が、その化合物の治療効果を向上させるために、あらゆる方法で改変されてもよいということが、当業者に容易に理解されるだろう。例えば、化合物または阻害剤が、直接的にまたは間接的にリンカーを介してターゲッティング部分(targeting moiety)と結合してもよい。ターゲッティング部分と化合物または阻害剤が結合する実例は、当技術分野で公知である。本明細書中で用いられる用語「ターゲッティング部分」とは、細胞表面レセプターを特異的に認識しそれに結合するいずれかの分子または薬剤をいう。ターゲッティング部分は、表面にレセプターが発現している細胞群に対して、化合物または阻害剤を送達するよう指示するものである。ターゲッティング部分としては、抗体またはそれらのフラグメント、ペプチド、ホルモン、成長因子、サイトカインおよび他の天然または非天然に存在する、細胞表面レセプターに結合するリガンドが挙げられるが、これに限られない。本明細書中で用いられる用語「リンカー」は、化合物または阻害剤をターゲッティング部分と架橋するいずれかの薬剤または分子をいう。化合物または阻害剤の部位であって、化合物または阻害剤の機能に必要でない部位が、一旦化合物または阻害剤と結合したリンカーおよび/またはターゲッティング部分が化合物または阻害剤の機能を妨げないことを条件として、リンカーおよび/またはターゲッティング部分と結合するのに理想的な部位であることが、当業者に認識されている。
【0071】
あるいは、本明細書記載の本発明化合物は、本発明化合物が投与された体内に放出される様式が、体内における時間と場所に関して制御される徐放性製剤形態に加工されてもよい(例えば、米国特許第4,450,150号参照)。化合物または阻害剤の徐放性製剤形態は、例えば、化合物または阻害剤を含む移植可能な組成物、および化合物または阻害剤が多孔性材料に封入され、またはそれを通して拡散される高分子のような多孔性材料であってもよい。徐放性製剤が体内の所望の場所に移植され、多孔性材料を通して拡散することにより化合物または阻害剤が所定の速度でインプラントから放出される。
【0072】
ある状況では、本発明化合物はくも膜下腔内への送達を可能にする移植されたポンプを経由して有利に投与されてもよい。そのような送達方法は、投与された薬物がそうしなければ血液脳関門を十分に透過しない場合に、薬物をCNSへ送達するのに特に有用である。
【0073】
本明細書記載の本発明化合物は、インビトロで細胞に投与されてもよい。本明細書で用いるとき、用語「インビトロで」とは、細胞が生物内にないことを意味する。また、本発明化合物は生体内で細胞に投与されてもよい。本明細書で用いるとき、用語「生体内で」とは、細胞が生物の一部であるか、自体が生物であることを意味する。 更に、本発明化合物は、生体内または生体外で宿主に投与されてもよい。用語「生体外で」とは、本明細書で用いるとき、試験管内の細胞または細胞群に化合物を投与し、続いて細胞または細胞群を宿主に投与することをいう。
【0074】
更に、本発明化合物または1以上の当該化合物を含む組成物は、単体で投与されてもよいし、または本発明化合物の有効性を増強する薬剤と併せて投与されてもよい。当該薬剤は、例えば、本明細書中で医薬組成物に関して記載した他のいずれかの活性剤を含んでもよい。その活性剤は、本発明化合物を含む組成物から分離した組成物で投与されてもよい。
【0075】
本発明化合物の投与量は、妥当な期間にわたって宿主に治療または予防反応をもたらすのに十分な量でなければならない。適当な投与量は、治療または予防する疾患または病状の性質および重症度、ならびに他の因子によるだろう。例えば、投与量は、また特定の化合物または阻害剤の投与に伴う有害な副作用の存在、性質および程度によって決定されるだろう。最終的に主治医が、年齢、体重、全身的な健康状態、食事、性別、投与される阻害剤、投与ルートおよび治療する症状の重症度のような種々の因子を考慮して、個々の患者を治療するための本発明化合物または阻害剤の投与量を決定するだろう。典型的な投与量は、例えば1日0.1 mgから1 g、1日5 mg から500 mgであってもよい。
【0076】
本発明化合物は、細胞に、好ましくは宿主の細胞に投与され得る。宿主は、例えば、バクテリア、酵母、真菌類、植物および哺乳類を含む。宿主は哺乳類であることが好ましい。本発明において、哺乳類はマウスのようなげっ歯目およびウサギのようなウサギ目を含むが、これに限られない。哺乳類は、ネコ(Felines (cats))およびイヌ(Canines (dogs))を含む食肉目であることが好ましい。哺乳類は、ウシ(Bovines (cows))およびブタ(Swines (pigs))を含む偶蹄目、またはウマ(Equines (horses))を含む奇蹄目であることが更に好ましい。哺乳類は、霊長目(Primates)、サル(Ceboids、or Simoids (monkeys))、またはヒトおよび類人猿(Anthropoids(humans and apes))であることが最も好ましい。特に好ましい哺乳類はヒトである。更に宿主は、前述のいずれかの宿主(特に哺乳類またはヒト)の胎児であってもよい。この場合、子宮内で、宿主または宿主細胞が選別され、あるいは宿主または宿主細胞へ化合物が投与されてもよい。
【0077】
当該化合物は、疾患または状態の治療、予防または診断、疾患または状態の治療、予防または診断に用いられる化合物の選別、あるいは、例えば疾患または状態の治療、予防または診断方法の開発に用いられる、疾患または状態の根底にある機構または原因の研究を含む目的で用いられてもよいし、これに限られない目的で用いられてもよい。特定の理論に捉われなければ、本発明化合物が、生存運動ニューロンタンパク質(SMN)の低発現を含む疾患および状態、翻訳終止コドン(例えば、UAA、UAG、UGA;正常に自然に発生する終止コドンと、変異により生じる終止コドンの両方を含む。)の調節によって改善し得る疾患および状態、ならびに中枢神経系(CNS)のグルタミン酸レベルの上昇と関係がある疾患および状態、および/またはEAAT2の発現の増強によって改善し得る疾患および状態に、特に有用であると考えられている。
【0078】
好適な本発明化合物は、SMN2遺伝子を含む細胞、特にSMN1遺伝子を含まないか、SMN1遺伝子の欠損または欠失を含む細胞のSMNの発現を増強させるために用いられてもよい。従って、本発明の一態様として、SMN2をコードする核酸を含む細胞、望ましくはSMN1遺伝子の欠損または欠失を含む細胞に本発明化合物を投与し、それによってSMNの発現を増強させることを含む、細胞のSMNの発現増強方法が提供される。
【0079】
SMN1およびSMN2は、それぞれがSMNタンパク質をコードするが1つの塩基対が異なる、2個の異なる遺伝子をいう。SMN2における当該塩基対の変化は、エクソン7の欠損した不安定なタンパク質をもたらす選択的なスプライシング機構によって、SMNの発現を低下させる。結果として、SMN2転写物は、典型的に適切に発現されず、SMNタンパク質はSMN1によって主に生成される。SMNの低発現を示す患者のほとんどが、SMN1遺伝子が欠損または欠失しているが、未変化のSMN2遺伝子を有している。特定の理論に捉われなければ、本発明化合物は転写後の機構を経由して、おそらく翻訳を促進させることによって、またはSMN2転写物の不適当なスプライシングによって生じる翻訳終止コドンの効果を抑制することによって、SMN2の発現を増強させると考えられる。
【0080】
本発明化合物投与後のSMNの発現の増強は、本発明化合物の非存在下での当該細胞のSMNの発現レベルと比較したいくらかの増強であってもよい。本発明化合物の非存在下では、当該細胞は典型的にSMN1タンパク質が欠損または変異しており、および/またはSMNタンパク質の発現レベルが低下しているだろう。増強したSMNの発現を検出および測定する方法、特にSMN2の発現を介した方法、が当技術分野で公知であり、本明細書に記載される。
【0081】
本発明化合物が投与される細胞は、宿主内にあることが好ましい。好適な宿主は、本明細書中に上記したとおりである。宿主は、哺乳類、特にヒトであることが望ましい。本発明のこの態様の方法は、SMNの低発現に関係するような疾患に罹患した、またはそのような疾患を発症する危険性がある宿主と併せて用いるのに最も適している。当該疾患は、例えば脊髄性筋萎縮症(SMA)を含む。本発明化合物を投与した後に、1以上の疾患症状が、予防され、減少し、または除去されて、それによって少なくともある程度まで有効に疾患が治療または予防されることが好ましい。
【0082】
関連する態様において、本発明は、細胞内の翻訳終止コドンをコードする核酸の発現を増強させる方法を提供する。終止コドンは、正常に発生している終止コドン、または変異またはフレームシフトによって生じる終止コドン、特にナンセンス終止コドン、であってもよい。当該方法は、翻訳終止コドンをコードする核酸を含む細胞に本発明化合物を投与し、それによって核酸の発現を増強させることを含む。特定の理論に捉われなければ、本発明化合物が、終止コドン、特に変異またはフレームシフトによって生じる終止コドンの翻訳(リボソームの)リードスルー、を可能にすると考えられる。本発明の好適な態様によれば、終止コドンは、変異またはフレームシフトによって生じるものであり、本発明化合物は、好ましくは通常の終止コドン(例えば、変異またはフレームシフトによって生ずるものではない終止コドンであって、全長タンパク質の生成を妨げないもの)の効果を妨げることなく、終止コドンの翻訳リードスルーを可能にする。従って、当該化合物は、そのような核酸のタンパク質生成物の発現を増強させる。また本発明化合物は、自然に発生する終止コドンへの影響を通して遺伝子の発現を調節してもよい。
【0083】
本明細書で用いるとき、用語「変異またはフレームシフトによって生じる翻訳終止コドン」は、中途でまたは異常に翻訳を終止させ、その結果切断された遺伝子産物またはタンパク質を生成させる、いずれかの終止コドンを意味する。変異またはフレームシフトによって生じる翻訳終止コドンは、例えば、安定性を減少させ、または通常の全長タンパク質生成物と比較して活性を減少させる(または活性がない)、あるいはタンパク質生成物の減少または完全な欠損をもたらす、遺伝子産物をもたらすものを含む。また、変異またはフレームシフトによって生じる翻訳終止コドンは、例えば、ナンセンス変異依存RNA分解(nonsense−mediated RNA decay)の標的であるmRNAをもたらすものを含む。翻訳終止コドンは、いかなるタイプの細胞のDNAまたはRNAに存在してもよく、いかなるタイプの変異誘発またはフレームシフト現象によって生じてもよい。例えば、翻訳終止コドンをコードする核酸は、欠損したSMN1遺伝子、欠損したもしくは正常なSMN2遺伝子、またはそれらの転写物のいずれであってもよいが、これに限られない。特に、SMNのエクソン7の欠失をもたらすSMN2の発現中に生じる選択的スプライシング現象はまた、ナンセンス終止コドンを作り出す。終止コドンを含む核酸は、細胞に内在されていてもよく、または例えばウイルスによって細胞に導入される核酸であってもよい。特定の理論に捉われなければ、ナンセンス終止コドンの効果を抑制することによって、おそらく終止コドンの翻訳リードスルーを許可することによって、あるいは、ナンセンス変異依存mRNA分解(nonsense−mediated mRNA decay)を抑制することによって、本発明化合物はSMNの発現を増強し得ると考えられる。
【0084】
細胞または宿主が、変異またはフレームシフトによって生じる翻訳終止コドンをコードする核酸を含むかを決定するために、適当なスクリーニングが利用されてもよい。例えば、ナンセンス変異が存在するかを決定するために、細胞(例えば、宿主または宿主に対して病原性を持つ生物の細胞)のDNAまたはRNAの配列を決定する、またはサザンブロット法、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、ショートタンデムリピート(STR)の利用または制限酵素断片長多型(RFLP)分析に供することができる。あるいは、細胞(例えば、宿主の細胞)が核酸でコードされるタンパク質を異常なレベルで発現するかを、ウエスタンブロット法または他の免疫測定法を用いて、決定することができる。中途翻訳終止コドンをコードする核酸かどうか決定する他の方法も利用できる。
【0085】
本発明化合物が投与される細胞は、宿主内にあることが好ましい。好適な宿主は、本明細書中に上記したものである。宿主は、哺乳類、特にヒトであることが望ましい。
【0086】
本発明のこの態様の方法は、変異またはフレームシフトによって生じる翻訳終止コドンに関係する疾患に罹患した、または疾患を発症する危険性がある宿主と併せて用いられることが最も好ましい。変異またはフレームシフトによって生じる翻訳終止コドンに関係する疾患の種類、中途翻訳終止および/またはナンセンス変異依存mRNA分解(nonsense−mediated mRNA decay)を抑制することで改善し得る症状は、遺伝性疾患、自己免疫疾患、血液疾患、膠原病、糖尿病、神経変性疾患、増殖性疾患、循環器疾患、肺疾患、炎症性疾患、中枢神経系疾患、感染症(細菌性およびウイルス性)、癌(腫瘍および他の癌を含む。)、特にp53変異に関係する癌を含むが、これらに限られない。
【0087】
遺伝子疾患の具体例としては、SMA、アミロイド症、血友病、アルツハイマー病、テイ・サックス病、ニーマン・ピック病、アテローム性動脈硬化、巨人症、小人症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、老化、肥満、パーキンソン病、ハンチントン病、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー症、心臓病、腎臓結石、毛細血管拡張性運動失調症、家族性高コレステロール血症、網膜色素変性症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症およびマルファン症候群が挙げられるが、これに限られない。
【0088】
炎症性疾患および自己免疫疾患の具体例としては、関節炎、リウマチ性関節炎、変形性関節炎および移植片対宿主病が挙げられるが、これに限られない。血液疾患の具体例としては、血友病、フォンウィルブランド病、毛細血管拡張性運動失調症、サラセミア(例えば、β−サラセミア)および腎臓結石が挙げられるが、これに限られない。
【0089】
血液疾患の具体例としては、血友病、フォンウィルブランド病、毛細血管拡張性運動失調症、サラセミア(例えば、β−サラセミア)および腎臓結石が挙げられるが、これに限られない。
【0090】
膠原病の具体例としては、骨形成不全症および肝硬変が挙げられるが、これに限られない。
【0091】
中枢神経系疾患の具体例としては、多発性硬化症、筋ジストロフィー症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、アルツハイマー病、ハンチントン病、テイ・サックス病、遅発乳児型神経セロイドリポフスチン症(LINCL)、レーバー遺伝性視神経萎縮症およびパーキンソン病が挙げられるが、これに限られない。
【0092】
感染症の具体例としては、HIV/AIDS、ウイルス性肝炎、HPV感染症および緑膿菌感染症(Pseduomonas aeruginosa infection)が挙げられるが、これに限られない。
【0093】
癌の具体例としては、頭頚部癌、眼癌、皮膚癌、口腔癌、咽頭癌、食道癌、胸部癌、骨癌、肺癌、結腸癌、S状結腸癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌、脳癌、小腸癌、心臓癌または副腎癌が挙げられる。さらに特に、癌は、固形腫瘍、肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮腫肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫肉腫(lymphangioendothelio sarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮腫瘍、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、カポジ肉腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜腫(menangioma)、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽細胞腫、血液由来腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、B細胞性急性リンパ芽球性白血病、T細胞性急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性単芽球性白血病、急性赤白血病(acute erythroleukemic leukemia)、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ球性白血病(acutenonlymphocyctic leukemia)、急性未分化性白血病(acute undifferentiated leukemia)、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病または多発性骨髄腫を含む。例えば「Harrison's Principles of Internal Medicine, Eugene Braunwald et al., eds., pp.491 762 (15th ed. 2001)」参照。
【0094】
癌のような、翻訳終止コドンをもたらすp53変異に関係する疾患としては、下記の疾患および変異が挙げられるが、これに限られない。Masuda et al., Tokai J Exp Clin Med. 25 (2): 69−77 (2000); Oh et al., Mol Cells 10 (3): 275−80 (2000); Li et al., Lab Invest. 80 (4): 493−9 (2000); Yang et al., Zhonghua Zhong Liu Za Zhi 21 (2):114−8 (1999); Finkelstein et al., Mol Diagn. 3(1): 37−41 (1998); Kajiyama et al., Dis Esophagus. 11 (4): 279−83 (1998); Kawamura et al., Leuk Res. 23 (2): 115−26 (1999); Radig et al., Hum Pathol. 29 (11): 1310−6 (1998); Schuyer et al., Int J Cancer 76 (3): 299−303 (1998); Wang−Gohrke et al., Oncol Rep. 5(1): 65−8 (1998); Fulop et al., J Reprod Med. 43 (2): 119−27 (1998); Ninomiya et al., J Dermatol Sci. 14 (3):173−8 (1997); Hsieh et al., Cancer Lett. 100 (1− 2): 107−13 (1996); Rall et al., Pancreas. 12(1): 10−7 (1996); Fukutomi et al., NipponRinsho 53 (11): 2764−8 (1995); Frebourg et al., Am J Hum Genet. 56 (3): 608−15 (1995); Dove et al., Cancer Surv. 25: 335−55 (1995); Adamson et al., Br J Haematol. 89(1): 61−6 (1995); Grayson et al., Am J Pediatr Hematol Oncol. 16 (4): 341−7 (1994); Lepelley et al., Leukemia 8 (8): 1342−9 (1994); McIntyre et al., J Clin Oncol. 12 (5): 925−30 (1994); Horio et al., Oncogene. 9 (4): 1231−5 (1994); Nakamura et al., Jpn J Cancer Res. 83 (12): 1293−8 (1992); Davidoff et al., Oncogene. 7(1): 127−33 (1992);およびIshioka et al., Biochem Biophys Res Commun. 177 (3): 901−6 (1991)。
【0095】
本発明化合物を投与した後に、1以上の疾患症状が予防され、減少し、または除去されて、それによって少なくともある程度まで有効に疾患が治療または予防されることが好ましい。従って、本発明の方法は、そのような疾患を治療または予防するために用いられてもよい。
【0096】
なお別の関連態様において、本発明は、興奮性アミノ酸トランスポーター(EAAT2)をコードする核酸を含む細胞に本発明化合物を投与し、それによってEAAT2の発現を増強させることを含む、細胞のEAAT2の発現増強方法を提供する。特定の疾患(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびてんかん)およびその他の状態(例えば、脳卒中または他のCNSの外傷など)は、有毒で脳損傷または死すら引き起こし得るCNSのグルタミン酸レベルの上昇と関係がある。細胞によるEAAT2トランスポーターを介したグルタミン酸の取り込みが、CNS内の低いグルタミン酸レベルを適切に維持することに、少なくとも一部は関与する。特定の理論に捉われなければ、本発明化合物は、EAAT2の発現を活性化または増強し、それによってCNS内のグルタミン酸レベルを有利に低下させると考えられる。増強したEAAT2の発現を検出および測定する方法は、当技術分野で公知であり、例えばRothstein et al., Nature, 43(3), 73−7 (2005)に記載されている。
【0097】
本発明化合物が投与される細胞は、宿主内にあることが好ましい。好適な宿主は、本明細書中に上記したとおりである。宿主は、哺乳類、特にヒトであることが望ましい。本発明のこの態様の方法は、EAAT2の発現の低下またはCNS内のグルタミン酸レベルの上昇に関係する疾患または状態に罹患した、あるいはそのような疾患または状態を発症する危険性がある宿主と併せて用いるのに最も適している。当該疾患および状態としては、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん、脳卒中および他の種類のCNSの外傷が挙げられる。本発明化合物を投与した後に、1以上の疾患または状態の症状が予防され、減少し、または除去されて、それによって少なくともある程度まで有効に疾患または状態が治療または予防されることが好ましい。従って、本発明の方法は、そのような疾患または状態を治療または予防するために用いられてもよい。
【0098】
上記の特徴に加えて、好適な本発明化合物は、治療有効量で蓄積するように血液脳関門を透過することができ、有意なシクロオキシゲナーゼ(Cox)阻害活性を有していない(例えば、中毒レベル未満のCox阻害活性を有する。)化合物である。
【0099】
【表1−1】

【0100】
【表1−2】

【0101】
【表1−3】

【0102】
【表1−4】

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【0287】
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【0288】
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【0289】
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【0290】
【表1−192】

【0291】
【表1−193】

【0292】
【表1−194】

【0293】
【表1−195】

【0294】
【表1−196】

【0295】
【表1−197】

【0296】
【表1−198】

【0297】
【表1−199】

【0298】
【表1−200】

【0299】
【表1−201】

【0300】
【表1−202】

【0301】
【表1−203】

【0302】
【表1−204】

【0303】
【表1−205】

【0304】
【表1−206】

【0305】
【表1−207】

【0306】
【表1−208】

【0307】
【表1−209】

【実施例】
【0308】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明するが、もちろん、それらは本発明の範囲を何ら限定するものとして解釈されるべきではない。「ALB」で始まる識別コードによって、いくつかの化合物を実施例に示す。これらのコードは、表1の分子構造と関連している。
【0309】
実施例1
本実施例は、2−(4−(6−クロロ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパン酸の調製を説明する。
【0310】
工程A: 中間体としてのtert−ブチル 2−(4−ニトロフェニル)プロパノエートの合成
【0311】
【化8】

【0312】
2−(4−ニトロフェニル)プロパン酸(15.0 g、76.9 mmol)、ジメチルアミノピリジン(4.70 g、38.4 mmol)およびtert−ブタノール(8.10 mL、84.6 mmol)の塩化メチレン(300 mL)中の混合物を、0 ℃で2時間撹拌した。その後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(17.0 g、84.6 mmol)を加え、反応混合物をさらに2時間撹拌した。氷浴を除去し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。その後、溶媒を減圧濃縮し、得られた固体を酢酸エチル(200 mL)に再度溶解した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(200 mL)、1 M クエン酸(200 mL)および食塩水(200 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル:ヘキサン=1:20)で精製し、tert−ブチル 2−(4−ニトロフェニル)プロパノエート(14.4 g、75%)を黄色油状物として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 8.19 (d,J = 9.2 Hz,2H),7.46 (d,J = 9.2 Hz,2H),3.73 (q,J = 7.1 Hz,1H),1.49 (d,J = 7.1 Hz,3H),1.40 (s,9H).
【0313】
工程B: 中間体としてのtert−ブチル 2−(4−アミノフェニル)プロパノエートの合成
【0314】
【化9】

【0315】
tert−ブチル 2−(4−ニトロフェニル)プロパノエート(14.4 g、57.3 mmol)と10%パラジウムカーボン(1.44 g、10重量%)のエタノール(150 mL)混合物を、水素雰囲気下40psiで2時間震盪した。その後、反応混合物を珪藻土濾過し、減圧濃縮して、tert−ブチル 2−(4−アミノフェニル)プロパノエート(12.5 g、99%)を橙色油状物として得た。
1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 7.07 (d,J = 9.1 Hz,2H),6.63 (d,J = 9.1 Hz,2H),3.60 (s,2H),3.49 (q,J = 7.1 Hz,1H),1.40 (d,3H),1.38 (s,9H); ESI MS m/z 222 [M+H]+.
【0316】
工程C: 中間体としてのエチル 5−クロロ−2−メチルベンゾエートの合成
【0317】
【化10】

【0318】
5−クロロ−2−メチル安息香酸(3.00 g、17.5 mmol)のエタノール(30 mL)混合物を0 ℃で氷冷し、チオニルクロライド(12.5 mL、105.5 mmol)を30分間かけて滴下した。その後、混合物を室温まで1時間加温して、オイルバスに移し、一晩70 ℃に加熱した。混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮した。得られた固体をジエチルエーテル(50 mL)に再度溶解し、1 N 水酸化ナトリウム(50 mL)、食塩水(50 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して、エチル 5−クロロ−2−メチルベンゾエートを透明油状物として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 7.88 (d,J = 2.5 Hz,1H),7.34 (dd,J = 8.5,2.5 Hz,1H),7.17 (d,J = 8.5 Hz,1H),4.36 (q,J = 7.5 Hz,2H),2.56 (s,3H),1.39 (t,J = 7.5 Hz,3H); ESI MS m/z 199 [M+H]+.
【0319】
工程D: 中間体としてのエチル 2−(ブロモメチル)−5−クロロベンゾエートの合成
【0320】
【化11】

【0321】
エチル 5−クロロ−2−メチルベンゾエート(3.20 g、16.1 mmol)、N−ブロモスクシンイミド(3.15 g、17.7 mmol)およびベンゾイルペルオキシド(0.39 g、1.61 mmol)の1,2−ジクロロエタン(90 mL)混合物を、75 ℃までオイルバスで4時間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、有機層を水(45 mL)および食塩水(45 mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル:ヘキサン=1:20)で精製し、エチル 2−(ブロモメチル)−5−クロロベンゾエート (3.09 g、68%)を透明油状物として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) 7.94 (d,J = 2.5 Hz,1H),7.46 (dd,J = 8.5,2.5 Hz,1H),7.40 (d,J = 8.0 Hz,1H),4.91 (s,2H),4.42 (q,J = 7.0 Hz,2H),1.43 (t,J = 7.0 Hz,3H); ESI MS m/z 279 [(M+2)+H]+.
【0322】
工程E: tert−ブチル 2−(4−(6−クロロ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエートの合成
【0323】
【化12】

【0324】
tert−ブチル 2−(4−アミノフェニル)プロパノエート(0.24 g、1.08 mmol)、エチル 2−(ブロモメチル)−5−クロロベンゾエート(0.25 g、0.901 mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.14 g、1.08 mmol)のエタノール(5 mL)混合物を、封管中で100 ℃で一晩加熱した。その後、混合物を氷冷し、固体を濾取し、tert−ブチル 2−(4−(6−クロロ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエート(0.18 g、55%)を白色固体として得た。
mp 169−171 ℃; 1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 7.89 (d,J = 2.5 Hz,1H),7.79 (d,J = 8.5 Hz,2H),7.56 (dd,J = 8.0,2.0 Hz,1H),7.45 (d,J = 8.0 Hz,1H),7.36 (d,J =8.5 Hz,2H),4.84 (s,2H),3.63 (m,1H),1.45 (d,J = 7.5 Hz,3H),1.41 (s,9H); ESI MS m/z 404 [M+H+CH3OH]+.
【0325】
工程F: 2−(4−(6−クロロ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパン酸の合成
【0326】
【化13】

【0327】
tert−ブチル 2−(4−(6−クロロ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエート(0.157 g、0.422 mmol)およびギ酸(15.7 mL)の混合物を、室温で一晩撹拌した。混合物を減圧濃縮し、ヘキサン(5 mL)に懸濁し、超音波処理し、固体を濾取し、2−(4−(6−クロロ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパン酸(0.118 g、89%)を白色固体として得た。
mp 235−248 ℃ (dec); 1H NMR (500 MHz,DMSO−d6) δ 12.35 (br s,1H),7.83 (d,J = 8.5 Hz,2H),8.44 (s,1H),7.78 (m,2H),7.51 (m,2H),5.02 (s,2H),3.69 (q,J = 7.0 Hz,1H),1.38 (d,J = 7.0 Hz,3H); ESI MS m/z 348 [M+H+CH3OH]+.
【0328】
実施例2
本実施例は、2−(4−(1−オキソ−6−プロピルイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパン酸の調製を説明する。
【0329】
工程A: 中間体としてのエチル 2−メチル−5−ニトロベンゾエートの合成
【0330】
【化14】

【0331】
2−メチル−5−ニトロ安息香酸(10.0 g、55.2 mmol)のエタノール(200 ml)混合物を、0 ℃まで氷冷し、チオニルクロライド(16.0 mL、220 mmol)を10分間かけて滴下した。その後、混合物を室温まで1時間加温して、オイルバスに移し、一晩加熱還流した。混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、エチル 2−メチル−5−ニトロベンゾエート(12.4 g、定量的)を淡黄色油状物として得た。
1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 8.76 (d,J = 2.5 Hz,1H),8.24 (dd,J = 8.5,2.5 Hz,1H),7.43 (d,J = 8.4 Hz,1H),4.42 (q,J = 7.2 Hz,2H),2.72 (s,3H),1.44 (t,J = 7.1 Hz,3H).
【0332】
工程B: 中間体としてのエチル 5−アミノ−2−メチルベンゾエートの合成
【0333】
【化15】

【0334】
エチル 2−メチル−5−ニトロベンゾエート(11.5 g、54 mmol)および10% Pd/C(1.2 g)のエタノール(200 mL)混合物を、水素雰囲気下40psiで18時間震盪した。その後、混合物を珪藻土濾過し、減圧濃縮して、エチル 5−アミノ−2−メチルベンゾエート(9.77 g、98%)を黄白色固体として得た。
1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 7.25 (d,J = 2.6 Hz,1H),7.02 (d,J = 8.1 Hz,1H),6.74 (d,J = 8.1 Hz,1H),4.33 (q,J = 7.2 Hz,2H),2.46 (s,3H),1.38 (t,J = 7.1 Hz,3H).
【0335】
工程C: 中間体としてのエチル 5−ブロモ−2−メチルベンゾエートの合成
【0336】
【化16】

【0337】
エチル 5−アミノ−2−メチルベンゾエート(1.50 g、8.3 mmol)の48% HBr(12 mL)および水(24 mL)の混合物を、15分間氷冷した。亜硝酸ナトリウム (0.59 g、8.6 mmol)を水(2 mL)溶液として滴下し、得られた混合物を5分間撹拌した。その後、反応混合物を、臭化銅(I)(1.40 g、9.90 mmol)の48% HBr(5 mL)および水(12 mL)中の氷冷混合物に加えた。得られた混合物を70 ℃まで1時間加熱した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、ジエチルエーテル(150 mL)で希釈した。有機層を1 N 塩酸(50 mL)、水(50 mL)および食塩水(50 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル1−10%濃度勾配)で精製し、エチル 5−ブロモ−2−メチルベンゾエート(1.4 g、69%)を透明油状物として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 8.03 (d,J = 2.2 Hz,1H),7.50 (dd,J = 8.2,2.2 Hz,1H),7.12 (dd,J = 8.2 Hz,1H),4.36 (q,J = 7.1 Hz,2H),2.54 (s,3H),1.40 (t,J = 7.2 Hz,3H); ESI MS m/z 404 [M+H]+.
【0338】
工程D: 中間体としてのエチル 5−ブロモ−2−(ブロモメチル)ベンゾエートの合成
【0339】
【化17】

【0340】
エチル 5−ブロモ−2−メチルベンゾエート(7.52 g、30.9 mmol)、N−ブロモスクシンイミド(6.05 g、34.0 mmol)およびベンゾイルペルオキシド(0.75 g、3.10 mmol)の四塩化炭素(150 ml)混合物を、70 ℃までオイルバスで18時間加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、固体を濾去した。濾液を減圧濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル/ヘキサン1−10%濃度勾配)で精製して、エチル 5−ブロモ−2−(ブロモメチル)ベンゾエート(7.57 g、76%)を透明油状物として得た。
1H NMR (300 MHz,CDCl3) 8.09 (d,J = 2.2 Hz,1H),7.61 (dd,J = 8.3,2.2 Hz,1H),7.33 (d,J = 8.2 Hz,1H),4.90 (s,2H),4.42 (q,J = 7.2 Hz,2H),1.43 (t,J = 7.1 Hz,3H).
【0341】
工程E: tert−ブチル 2−(4−(6−ブロモ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエートの合成
【0342】
【化18】

【0343】
エチル 5−ブロモ−2−(ブロモメチル)ベンゾエート(4.00 g、12.4 mmol)、tert−ブチル 2−(4−アミノフェニル)プロパノエート(3.4 g、15.4 mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.98 g、15.4 mmol)のエタノール(120 mL)混合物を、封管中で100 ℃で一晩加熱した。その後、混合物を氷冷し、固体を濾取し、tert−ブチル 2−(4−(6−ブロモ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエート(2.00 g、39%)を白色固体として得た。
mp 164−165 ℃: 1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 8.06 (d,J = 1.7 Hz,1H),7.81−7.77 (m,2H),7.71 (dd,J = 8.0,1.8 Hz,1H),7.40 (d,J = 8.4 Hz,1H),7.38−7.34 (m,2H),4.81 (s,2H),3.63 (q,J = 7.1 Hz,1H),1.46 (d,J = 7.2 Hz,3H),1.41 (s,9H); ESI MS m/z 448 [M+H+CH3OH]+.
【0344】
工程F: tert−ブチル 2−(4−(1−オキソ−6−(プロパ−1−エニル)イソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエートの合成
【0345】
【化19】

【0346】
tert−ブチル 2−(4−(6−ブロモ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエート(0.200 g、0.48 mmol)、cis−1−プロペン−1−ボロン酸(0.413 g、4.8 mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.554 g、0.48 mmol)および炭酸セシウム(0.470 g、1.44 mmol)の5:2 DME/水(7 mL)混合物を、マイクロ波反応器で20分間120 ℃で加熱した。混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(8 mL)で希釈した。反応混合物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル/ヘキサン1−20%濃度勾配)で精製して、tert−ブチル 2−(4−(1−オキソ−6−(プロパ−1−エニル)イソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエート(0.144 g、77%)を黄色固体として得た。
mp 125−130 ℃; 1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 7.96−7.80 (m,2H),7.75−7.65 (m,1H),7.54−7.34 (m,4H),6.53−6.33 (m,1H),5.93−5.87 (m,1H),4.84−4.80 (m,2H),3.66−3.60 (m,1H),1.94−1.91 (m,3H),1.47−1.45 (m,3H),1.41 (s,9H) [NMRで決定されるオレフィン異性体の6:4混合物]; ESI MS m/z 378 [M+H]+.
【0347】
工程G: tert−ブチル 2−(4−(1−オキソ−6−プロピルイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエートの合成
【0348】
【化20】

【0349】
tert−ブチル 2−(4−(1−オキソ−6−(プロパ−1−エニル)イソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエート(0.140 g、0.37 mmol)および10% Pd/C(140 mg)のエタノール(5 mL)混合物を、水素雰囲気下35psiで2時間震盪した。その後、混合物を珪藻土濾過し、減圧濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル/ヘキサン1−20%濃度勾配)で精製し、tert−ブチル 2−(4−(1−オキソ−6−プロピルイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエート (0.099 g、71%)を白色固体として得た。
mp 110−115 ℃; 1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 7.83 (d,J = 8.6 Hz,2H),7.74 (s,1H),7.41−7.37 (m,4H),4.81 (s,2H),3.77 (q,J = 7.1 Hz,1H),2.70 (t,J = 7.4 Hz,2H),1.73−1.65 (m,2H),1.54 (d,J = 7.2 Hz,3H),0.95 (t,J = 7.3 Hz,3H); ESI MS m/z 380 [M+H]+.
【0350】
工程H: 2−(4−(1−オキソ−6−プロピルイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパン酸の合成
【0351】
【化21】

【0352】
tert−ブチル 2−(4−(1−オキソ−6−プロピルイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエート(0.084 g、0.22 mmol)およびギ酸(15 mL)の混合物を、室温で一晩撹拌した。混合物を減圧濃縮し、ヘキサン(5 mL)に懸濁させ、超音波処理し、固体を濾取して、2−(4−(1−オキソ−6−プロピルイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパン酸(0.041 g、57%)を白色固体として得た。
mp 175−177 ℃; 1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 7.83 (d,J = 8.6 Hz,2H),7.74 (s,1H),7.41−7.37 (m,4H),4.81 (s,2H),3.77 (q,J = 7.1 Hz,1H),2.70 (t,J = 7.4 Hz,2H),1.73−1.65 (m,2H),1.54 (d,J = 7.2 Hz,3H),0.95 (t,J = 7.3 Hz,3H); ESI MS m/z 324 [M+H]+.
【0353】
実施例3
本実施例は、tert−ブチル 2−(3−ブロモ−4−(1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエートの調製を説明する。
【0354】
工程A: 中間体としてのtert−ブチル 2−(4−アミノ−3−ブロモフェニル)プロパノエートの合成
【0355】
【化22】

【0356】
tert−ブチル 2−(4−アミノフェニル)プロパノエート(5.00 g、22.6 mmol)のDMF(15 mL)溶液に、N−ブロモスクシンイミド(4.22 g、23.7 mmol)のDMF(15 mL)溶液を、水浴で室温に維持しながら加えた。混合物を一晩撹拌し、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水で洗浄した後、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、濾過した。濃縮後、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、tert−ブチル 2−(4−アミノ−3−ブロモフェニル)プロパノエート(6.00 g、85%)を褐色油状物として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 7.34 (d,J = 1.6 Hz,1H),7.04 (dd,J = 8.1,1.7 Hz,1H),6.71 (d,J = 8.2 Hz,1H),4.01 (br s,2H),3.46 (q,J = 7.1 Hz,1H),1.39 (m,12H).
【0357】
工程B: 中間体としてのメチル 2−((2−ブロモ−4−(1−tert−ブトキシ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニルアミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【0358】
【化23】

【0359】
tert−ブチル 2−(4−アミノ−3−ブロモフェニル)プロパノエート(6.50 g、21.7 mmol)、メチル 2−(ブロモメチル)ベンゾエート(4.97 g、21.7 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(2.80 g、21.7 mmol)、およびエタノール(180 mL)の混合物を、バイアル瓶に密封して120 ℃で一晩加熱した。室温まで冷却した後、混合物を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=92:8)で精製して、メチル 2−((2−ブロモ−4−(1−tert−ブトキシ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニルアミノ)メチル)ベンゾエート(4.72 g、48%)を粘稠油状物として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 7.98 (m,1H),7.47 (m,2H),7.37−7.31 (m,2H),7.01 (dd,J = 8.4,2.0 Hz,1H),6.50 (d,J = 8.4 Hz,1H),5.03 (br t,J = 6.1 Hz,1H),4.75 (d,J = 6.2 Hz,2H),3.92 (s,3H),3.43 (q,J = 7.2 Hz,1H),1.38 (s,9H),1.37 (d,J = 7.2 Hz,3H); ESI MS m/z 450 [(M+2)+H]+.
【0360】
工程C: 中間体としての2−((2−ブロモ−4−(1−tert−ブトキシ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニルアミノ)メチル)安息香酸の合成
【0361】
【化24】

【0362】
メチル 2−((2−ブロモ−4−(1−tert−ブトキシ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニルアミノ)メチル)ベンゾエート(4.57 g、10.2 mmol)、水酸化リチウム(0.733 g、30.6 mmol)、テトラヒドロフラン(100 mL)、メタノール(20 mL)および水(30 mL)の混合物を、一晩撹拌した。混合物を水(200 mL)に注ぎ、その全量を2 N 塩酸で酸性にした。混合物を酢酸エチル(150 mL)で抽出し、有機層を食塩水(100 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。溶媒を留去し、減圧乾燥して、2−((2−ブロモ−4−(1−tert−ブトキシ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニルアミノ)メチル)安息香酸(4.40 g、99%)を粘稠油状物として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 8.14 (d,J = 7.6 Hz,1H),7.53 (m,2H),7.38 (m,2H),7.03 (dd,J = 8.4,2.0 Hz,1H),6.53 (d,J = 8.0 Hz,1H),4.80 (s,2H),3.44 (q,J = 7.1 Hz,1H),1.39 (s,9H),1.38 (d,J = 7.2 Hz,3H).
【0363】
工程D: tert−ブチル 2−(3−ブロモ−4−(1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエートの合成
【0364】
【化25】

【0365】
2−((2−ブロモ−4−(1−tert−ブトキシ−1−オキソプロパン−2−イル)フェニルアミノ)メチル)安息香酸(4.40 g、10.1 mmol)、1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(2.13 g、11.1 mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(0.617 g、5.05 mmol)の塩化メチレン(80 mL)混合物を、0 ℃で撹拌し、室温まで一晩加温しておいた。混合物を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して、tert−ブチル 2−(3−ブロモ−4−(1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパノエート(3.55 g、85%)を白色泡沫として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 7.96 (d,J = 7.6 Hz,1H),7.64−7.50 (m,4H),7.35 (d,J = 1.0 Hz,2H),4.79 (s,2H),3.63 (q,J = 7.2 Hz,1H),1.47 (d,J = 7.2 Hz,3H),1.44 (s,9H); ESI MS m/z 418 [(M+2)+H]+.
【0366】
実施例1(工程F)の方法に従って、ただし適当なt−ブチルエステルに代えて、表2の化合物を調製した。
【0367】
【表2】

【0368】
実施例4
本実施例は、6−メトキシ−2−(4−(1−メトキシプロパン−2−イル)フェニル)イソインドリン−1−オンの調製を説明する。
【0369】
工程A: 中間体としての2−(4−(1−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェニル)−6−メトキシイソインドリン−1−オンの合成
【0370】
【化26】

【0371】
2−(4−(6−メトキシ−1−オキソイソインドリン−2−イル)フェニル)プロパン酸(0.102 g、0.33 mmol)およびボラン−テトラヒドロフラン錯体(0.83 mL、1 Mテトラヒドロフラン溶液、0.83 mmol)のテトラヒドロフラン(2 mL)混合物を、0 ℃で3時間撹拌した。その後、反応混合物を水(5 mL)および酢酸エチル(5 mL)で希釈し、混合物を18時間室温で激しく撹拌した。水層を分離し、酢酸エチル(25 mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して、黄白色固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、2−(4−(1−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェニル)−6−メトキシイソインドリン−1−オン(0.081 g、84%)を白色固体として得た。
mp 135−138 ℃; 1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 7.81 (dd,J = 8.6,1.9 Hz,2H),7.41−7.39 (m,2H),7.31 (d,J = 8.6 Hz,2H),7.16 (dd,J = 8.4,2.4 Hz,1H),4.79 (s,2H),3.89 (s,3H),3.72 (d,J = 6.8 Hz,2H),2.98 (q,J = 6.9 Hz,1H),1.30 (d,J = 7.0 Hz,3H); ESI MS m/z 298 [M+H]+.
【0372】
工程B: 6−メトキシ−2−(4−(1−メトキシプロパン−2−イル)フェニル)イソインドリン−1−オンの合成
【0373】
【化27】

【0374】
2−(4−(1−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェニル)−6−メトキシイソインドリン−1−オン(0.042 g、0.14 mmol)、酸化銀(0.196 g、0.42 mmol)、ヨードメタン(0.070 mL)および4Åモレキュラーシーブ(0.050 g)のアセトニトリル(2 mL)混合物を、96時間室温で撹拌した。その後、混合物を水(10 mL)および酢酸エチル(10 mL)で希釈した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して、黄白色固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、6−メトキシ−2−(4−(1−メトキシプロパン−2−イル)フェニル)イソインドリン−1−オン(0.031 g、72%)を白色固体として得た。
mp 116−118 ℃; 1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 7.78 (dd,J = 8.7,2.0 Hz,2H),7.40−7.38 (m,2H),7.29 (dd,J = 8.6,1.9 Hz,2H),7.15 (dd,J = 8.3,2.4 Hz,1H),4.78 (m,2H),3.89 (s,3H),3.55−3.41 (m,2H),3.34 (s,3H),3.04 (q,J = 7.0 Hz,1H),1.29 (d,J= 7.0 Hz,3H); ESI MS m/z 312 [M+H]+.
【0375】
実施例5
本実施例は、6−クロロ−2−(4−イソプロピルフェニル)イソインドリン−1−オンの調製を説明する。
【0376】
【化28】

【0377】
エチル 2−(ブロモメチル)−5−クロロベンゾエート(0.553 g、1.99 mmol)、4−イソプロピルアニリン(0.269 g、1.99 mmol)およびナトリウムエートキシド(0.406 g、5.97 mmol)のエタノール(40 mL)混合物を、一晩還流加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮した。混合物を、1 N 塩酸および酢酸エチルで分液した。有機層を分離し、1 N 塩酸で洗浄した後、1:1 水/食塩水の溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。減圧濃縮し、酢酸エチルから再結晶して、6−クロロ−2−(4−イソプロピルフェニル)イソインドリン−1−オン(0.302 g、53%)を黄白色固体として得た。
m.p. 206−209 ℃; 1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 7.89 (d,J = 1.9 Hz,1H),7.73 (dt,J= 8.6,2.7 Hz,2H),7.55 (dd,J = 8.1,1.9 Hz,1H),7.45 (d,J = 8.0 Hz,1H),7.30 (dt,J = 8.5,2.5 Hz,2H),4.83 (s,2H),2.96−2.90 (m,1H),1.26 (d,6H); ESI MS m/z 286 [M+H]+.
【0378】
実施例6
本実施例は、2−(4−イソプロピルフェニル)−6−ニトロイソインドリン−1−オンの調製を説明する。
【0379】
【化29】

【0380】
エチル 2−(ブロモメチル)−5−ニトロベンゾエート(1.88 g、6.52 mmol)、4−イソプロピルアニリン(1.11 mL、7.83 mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.36 mL、7.83 mmol)のエタノール(75 mL)混合物を、封管中で110 ℃で一晩加熱した。その後、混合物を室温まで冷却し、固体を濾取して、2−(4−イソプロピルフェニル)−6−ニトロイソインドリン−1−オン(1.45 g、75%)を黄色固体として得た。
mp 225−227 ℃; 1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 8.77 (d,J = 2.0 Hz,1H) 8.48 (dd,J = 8.3,2.1 Hz,1H),7.76−7.69 (m,3H),7.32 (d,J = 8.6 Hz,2H),2.94 (sept,J = 6.9 Hz,1H),1.28 (d,J = 6.9 Hz,6H); ESI MS m/z 297 [M+H]+.
【0381】
【表3】

【0382】
実施例6の方法に従って、ただし適当なアニリンまたはベンジルブロマイドに代えて、表3の化合物を調製した。
【0383】
実施例7
本実施例は、中間体としてのエチル 5−ヒドロキシ−2−メチルベンゾエートの調製を説明する。
【0384】
【化30】

【0385】
エチル 5−アミノ−2−メチルベンゾエート(14.4 g、80.3 mmol)の5% 硫酸水溶液(300 mL)の混合物を、15分間氷冷した。亜硝酸ナトリウム(6.09 g、88.3 mmol)を、水(50 mL)溶液として滴下し、得られた混合物を0 ℃で30分間撹拌した。その後、得られた混合物を60 ℃まで18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(150 mL)で希釈した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル0−40%濃度勾配)で精製し、エチル 5−ヒドロキシ−2−メチルベンゾエート(12.48 g、86%)を赤褐色固体として得た。
1H NMR (300 MHz,CDCl3) δ 7.44 (d,J = 2.8 Hz,1H),7.10 (d,J = 8.3 Hz,1H),6.91 (dd,J = 8.3,2.8 Hz,1H),5.44 (s,1H),4.35 (q,J = 7.1 Hz,2H),2.50 (s,3H),1.38 (t,J = 7.1 Hz,3H); ESI MS m/z 181 [M+H]+.
【0386】
実施例8
本実施例は、中間体としてのエチル 5−(ジフルオロメトキシ)−2−メチルベンゾエートの調製を説明する。
【0387】
【化31】

【0388】
エチル 5−ヒドロキシ−2−メチルベンゾエート(3.29 g、18.2 mmol)の30% 水酸化ナトリウム水溶液(20 mL)およびイソプロピルアルコール(20 mL)の混合物を、高圧フラスコ内で20 psiのクロロジフルオロメタンをチャージして、室温で10分間撹拌した。その後、得られた混合物を50 ℃で0.5時間加熱した。その後反応混合物を室温まで冷却し、ジクロロメタン(50 mL)および水(200 mL)で希釈した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル0−7%濃度勾配)で精製し、エチル 5−(ジフルオロメトキシ)−2−メチルベンゾエート(2.50 g、59%)を透明油状物として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 7.67 (d,J = 2.5 Hz,1H),7.26−7.22 (m,1H),7.18−7.16 (m,1H),6.50 (t,J = 73.6 Hz,1H),4.37 (q,J = 7.0 Hz,2H),2.57 (s,3H),1.40 (t,J = 7.0 Hz,3H); ESI MS m/z 231 [M+H]+.
【0389】
実施例9
下記実施例は、中間体としてのエチル 7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−カルボキシレートの調製を説明する。
【0390】
工程A: 6−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシンの合成
【0391】
【化32】

【0392】
4−メチルベンゼン−1,2−ジオール(10.0 g、80.5 mmol)および炭酸カリウム(111.3 g、805.0 mmol)のアセトン(300 mL)混合物を、室温で1時間撹拌した。その後、1,2−ジブロモエタン(27.7 mL、322.0 mmol)を加え、反応混合物を5日間還流撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、固体を水(500 mL)で再度溶解させた。水層を酢酸エチル(200 mL)で3回抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル:ヘキサン=1:20)で精製し、6−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン(6.4 g、54%)を緑色油状物として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 6.74 (d,J = 8.5 Hz,1H),6.67 (d,J = 2.0 Hz,1H),6.63 (dd,J = 2.0,8.0 Hz,1H),4.22 (m,4H),2.24 (s,3H).
【0393】
工程B: 7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−カルバルデヒドの合成
【0394】
【化33】

【0395】
6−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン(6.4 g、42.8 mmol)および1,2−ジクロロエタン(250 mL)の混合物を、0 ℃まで冷却し、1時間撹拌した。その後、ジクロロメチルメチルエーテル(11.5 mL、128.5 mmol)を加え、反応混合物を1時間撹拌し、塩化スズ(IV)(7.52 mL、64.3 mmol)を反応混合物に3時間かけて少しずつ加え、反応混合物を室温まで一晩加温した。その後、反応混合物を3 N 塩酸(150 mL)に注ぎ、有機層をジクロロメタン(100 mL)で3回抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して、7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−カルバルデヒド(4.8 g、79%)を黄白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz,CDCl3) δ 10.07 (s,1H),7.33 (s,1H),6.72 (s,1H),4.28 (m,4H),2.55 (s,3H).
【0396】
工程C: 7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−カルボン酸の合成
【0397】
【化34】

【0398】
7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−カルバルデヒド (2.0 g、11.2 mmol)の水(100 mL)混合溶液を、70 ℃まで加熱し、1時間撹拌した。過マンガン酸カリウム(2.3 g、14.6 mmol)の水(50 mL)溶液を、4時間かけて少しずつ加えた。その後、混合物を室温まで冷却し、10% 水酸化カリウム(50 mL)を加えた。固体を濾去し、水(100 mL)で洗浄し、塩基性溶液を2 N 塩酸で酸性にした。沈殿物を濾取し、水で洗浄し、真空乾燥器で一晩乾燥し、7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−カルボン酸(1.7 g、78%)を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz,DMSO−d6) δ 12.49 (s,1H),7.33 (s,1H),6.76 (s,1H),4.25 (m,4H),2.40 (s,3H).
【0399】
工程D: エチル 7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−カルボキシレートの合成
【0400】
【化35】

【0401】
7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−カルボン酸(1.72 g、8.8 mmol)のエタノール(100 mL)混合物を、0 ℃まで冷却し、1時間撹拌した後、チオニルクロライド(3.9 mL、53.2 mmol)を1時間かけて滴下した。その後、混合物を室温まで1時間加温し、オイルバスに移し、70 ℃まで一晩加熱した。混合物を室温まで冷却し、2 N 塩酸(50 mL)をゆっくり加え、続いてジエチルエーテル(50 mL)を加えた。水層をジエチルエーテル(50 mL)で2回抽出し、合わせた有機層を食塩水 (100 mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して、エチル 7−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン−6−カルボキシレート(1.7 g、89%)を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.51 (s, 1H)、6.70 (s, 1H)、4.30 (q, J = 7.0, 7.5 Hz, 2H), 4.26 (m, 4H), 2.49 (s, 3H), 1.36 (t, J = 7.0, 7.5 Hz, 3H).
【0402】
実施例10
本実施例は、本発明化合物の子宮頸癌細胞株におけるSMNの発現増強能を示す。
【0403】
上記のとおり、SMN1はSMA患者に欠失している遺伝子である;SMN2遺伝子は、SMA患者および正常な患者ともに未変化のままである。それゆえに、SMN2は、SMA患者のSMNの生産を増強させるのに有望な手段を提供し、従って、SMAの治療を発展させるターゲットとなる。SMN2は、遺伝子発現の低下をもたらす1つの塩基対の変化を除いて、SMN1と同一である。この低下は、エクソン7の欠失を有する不安定なタンパク質を生産する、選択的にスプライシングされたRNAが作られることに基づく。全長SMNおよびエクソン7の欠失したSMNは共に、SMN2遺伝子によって選択的RNAスプライシングを経由して生産されるが、主な生産物は不安定な欠失体である。
【0404】
子宮頸癌細胞株を、SMN2連結ルシフェラーゼ・レポーター遺伝子コンストラクト(SMN2−linked luciferase−reporter gene construct)で形質転換した。当該レポーターは、SMN2配列の選択的なスプライシングにおけるシフトを検出するように、設計されている。特に当該レポーターは、SMN2遺伝子およびルシフェラーゼ遺伝子の配列を選択的にスプライシングしたものの融合として構築されている。SMN2配列が、安定なSMNタンパク質の翻訳をもたらす正常なSMN1機構(例えば、エクソン7を含むスプライシング)に従ってスプライシングされたときのみ、ルシフェラーゼ配列は正しい翻訳読み枠(translational reading frame)にある。化合物を前記細胞株に投与し、ルシフェラーゼ活性の増強を検出する試験法で当該化合物を試験した。当該試験法は、Zhang et al.,Gene Ther.,8,1532−8 (2001) により詳細に記載されている。化合物を、Lunn et al,Chem. & Biol,11,1489−1493 (2004)に記載されたように投与した。
【0405】
試験化合物とその結果を表1に示す。結果は、試験化合物を用いないときの形質転換細胞のベースラインリーディング(baseline reading)に対する、増加倍数(fold−increase)として示す。また、いくつかの化合物のEC50 値も表1に示す。
【0406】
インドプロフェンは、本試験法でのルシフェラーゼ活性を増加させる。本試験法は、SMN2のスプライシング異常の修正を検出するよう設計されているけれども、インドプロフェンはスプライシングへの効果を介して、本試験法でのルシフェラーゼ発現を増加させるのではないということが知られている。にもかかわらず、本試験法で検出されたインドプロフェンの効果は、SMA患者の線維芽細胞における内在性SMN2遺伝子からのSMNの生産を増加させることにまで及ぶと示されている。
【0407】
試験化合物の多くが、当該試験法でのルシフェラーゼ活性を増加させており、本発明化合物が内在性SMN2遺伝子からのSMNの発現を増加させるために用いられ得ることを示している。
【0408】
実施例11
本実施例は、本発明化合物のSMA患者の繊維芽細胞におけるGEMs増強能を示す。
【0409】
SMNタンパク質は、「ジェム(gems)」と呼ばれる点状核粒子(punctate nuclear particles)の中に発見され得る(Liu and Dreyfuss、EMBO J. 15(14): 3555−3565 (1996))。SMA患者由来の線維芽細胞におけるジェムの数は、次のとおり疾患の重症度に相当する:
重症のタイプ1の患者は、100個の核あたり約5個のジェムを有し;
軽症のタイプ3の患者は、100個の核あたり20−50個のジェムを有し;
正常な個体は、100個の核あたり約100−150個のジェムを有する(Coovert et al.,Hum Mol Genet 6(8): 1205−1214 (1997)、Young et al.,Exp Cell Res 265(2): 252−261 (2001))。
【0410】
ジェムは免疫組織化学的検査によって検出でき、患者の線維芽細胞のジェムの数は、化合物のSMNタンパク質レベルの増強能を試験するために用いられる(Mattis et al.,Hum Genet 120:589−601 (2006))。これらの方法に従って、タイプ1のSMA患者由来の綿維芽細胞(3813 cells、Coriell Cell Repositories)を、表2(参照番号−構造相関を、表1に示す。)に示す化合物で48時間処理した。当該細胞を固定し、SMNに対するモノクローナル抗体とともに培養した(4B7,Wolstencroft et al., Hum Mol Genet 14:1199−1210 (2005))。FITC−結合型抗マウス二次抗体を、標識ジェムを可視化するために用いた。これらの実験のポジティブコントロールに、1000 μM バルプロ酸で処理した同患者由来の線維芽細胞を用いた。結果を表4に示す。
【0411】
表4の結果に示すように、各化合物を用いた細胞の処理により、患者の線維芽細胞におけるSMN含有ジェムの数は増加した。
【0412】
【表4】

【0413】
実施例12
下記実施例は、本発明化合物がグルタミン酸トランスポータープロモーター活性を増強させ得ることを示す。
【0414】
アストログリアのグルタミン酸トランスポーターであるGLT−1/EAAT−2が、脳および脊髄におけるグルタミン酸輸送の原因の大部分である。EAAT−2発現誘導能力がある化合物を同定するために、ルシフェラーゼレポーターの発現を制御するヒトGLT−1/EAAT−2プロモーターの2.7 Kbフラグメントを含むプラスミドを用いて安定的に形質移入されたCOS−7細胞からなる、セルベースレポーターアッセイ(cell−based reporter assay)を用いた(Rothstein et al.,Nature 433:73−77 (2005))。用いられた細胞分離株は、Cos7 pE2P−GL3 (clone 4)と命名される。細胞を化合物とともに指定濃度で48時間培養した後、Bright−Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Bright−Glo Luciferase Assay System:プロメガ)を用いてルシフェラーゼレポーター活性を測定した。発光をWallac Triluxマイクロプレートルミノメーターを用いて測定した。それぞれのプレートの結果を、DMSOで処理したコントロールウェルを標準として比較し、誘導倍数(fold−induction)として表した。EC50 値をGraphPad Prismソフトウェアを用いて算出した。結果を表5に示す。
【0415】
結果から、いくつかの試験化合物が、グルタミン酸トランスポータープロモーター活性を著しく増強させることが示された。
【0416】
【表5】

【0417】
実施例13
本実施例は、終止コドンの翻訳リードスルーを促進させる本発明化合物の利用について示す。
【0418】
このアッセイは、WO 01/44516 A2に詳細に記載されている。これは、ルシフェラーゼをコードしている配列内に翻訳終止コドンを挿入することを通して翻訳リードスルーを検出するよう設計される、セルベースルシフェラーゼレポーターアッセイ(cell−based reporter assay)である。翻訳終止コドンの翻訳リードスルーを促進する化合物の存在下で、活性ルシフェラーゼが生成され、化学発光を通して検出される。我々は、インドプロフェン類似体が、このアッセイの2つのバージョン(UGA終止コドンを含むバージョンとUAG終止コドンを含むバージョン)において、活性があることを示した。表のデータは、UAG終止コドンを含むルシフェラーゼレポーターからのものである。これは、ヒトSMN2転写物におけるエクソン6と8の間の不適当なスプライシングジャンクションの下流にある最初の終止コドンである。結果を表6に示す。
【0419】
【表6】

【0420】
実施例14
本実施例は、本発明化合物の血漿および脳における薬物動態を示す。
【0421】
化合物は、Lee et al.,Int. J. Pharmaceutics,253: 111−119 (2003)に記載のように、コソルベンシー(cosolvency)の方法を用いて溶液に処方した。生後約5週間のFVBまたはCD−1マウスに、指示濃度で一回用量の化合物を投与した。静脈内に投与したALB−116638およびALB−117573以外は、化合物を経口投与した。3から5匹のマウスを投与後15分から24時間の間の様々な時点で安楽死させ、脳および血漿を回収した。組織を、アセトニトリル中でホモジナイズし、アジレント1100シリーズ液体クロマトグラフ(Agilent 1100 series liquid chromatograph)と連結したAPI 4000 LC/MS/MS systemで分析した。すべての薬物動態分析は、Microsoft Excel 2000を用いて算出する脳/血漿 比を除いて、WinNonlin(Version 4.01; Pharsight,Palo Alto,CA)を用いて行った。AUC値は、ゼロ時点から最終測定時点までの濃度−時間曲線下面積である。半減期の値(half life values)は、投与後4時間未満でとられる3〜4つの時点から推定される。
【0422】
【表7】

【0423】
実施例15
ウエスタンブロット(Westerns blots)法は、Mattis et al.,Hum Genet 120:589−601 (2006)の方法を用いて行った。SMAタイプI線維芽細胞 (3813 cells; Coriell Cell Repositories)は、化合物を用いて48時間処理した。抗SMNモノクローナル抗体4B7(Wolstencroft et al.,Hum Mol Genet 14:1199−1210 (2005))を、SMNを同定するために用いた。アクチンを内部基準として用い、抗アクチンポリクローナルウサギ抗体(anti−actin polyclonal rabbit antibody:シグマアルドリッチ)を用いて検出した。トブラマイシンをポジティブコントロール化合物処理のために用いた。DMSOが未処理のネガティブコントロールである。結果を表8に示す。値をSMNおよびアクチンから得られたシグナル比として示す。
【0424】
【表8】

【0425】
本明細書中に引用された刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、参照することにより各参考文献が組み込まれると個々に特に述べ、そしてその全体を本明細書で説明したのと同程度に、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0426】
本発明の記載に関して(特に添付の特許請求の範囲に関して)「a」および「an」および「the」および同様の指示語の使用は、本明細書中に特に記載がない限り、または明らかに文脈で矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」は、特に記載がない限り、非制限的用語(即ち「含むがこれに限られない」という意味である。)として解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の記載は、本明細書中に特に記載がない限り、範囲内に入るそれぞれの個別の値を個々に言及するのを省略して表現する方法としての役割を果たすことを単に意図し、それぞれ個別の値は本明細書中で個々に記載されたかのように組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書中に特に記載がない限り、または明らかに文脈で矛盾しない限り、いかなる適当な順序で実施されてもよい。本明細書中のいかなるすべての例または例示的な語(例えば、「のような(such as)」)の使用は、本発明をより良く説明することを単に意図するものであり、特許請求の範囲に記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の言語は、本発明の実施に不可欠ないかなる請求されていない要素も示すと解釈すべきではない。
【0427】
本発明の好適な態様は、本明細書に記載されており、本発明を実施するために発明者が知っている最良の形態を含む。種々のこれらの好適な態様は、上記の記述を読んで当業者に明らかになるだろう。発明者は当業者がそのように適当に変形して利用することを想定し、発明者は発明が本明細書に特に記載されたのとは別の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるように添付の特許請求の範囲に記載された対象を変更したもの、およびこれに均等なもののすべてを含む。さらに、それらの可能な変形のすべてにおける上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に特に記載がない限り、または明らかに文脈で矛盾しない限り、本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IまたはIIの化合物:
【化1】

[式中、
W は、C(O)、C(S)およびCH2からなる群から選択され;
B は、CH2 または CH(CnH2n+1)(n は、1 から 8の整数である。)であり;
C は、縮合チオフェン環、縮合ピリジン環およびシクロヘキサン環からなる群から選択され、それらはいずれも、飽和であってもよく、あるいは1または2個の非共役二重結合を含んでいてもよく;
R1 および R2は、H および C1−C3 アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいは R1 と R2 が、それらの結合する炭素原子と共に、C3−C6 シクロアルキル環またはカルボニル基を形成してもよく;
R3 は、H、ハロゲン、C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、CN、NO2、ヘテロアリールおよび1から5個のハロゲン、NO2、CN、C1−C4アルキル、C1−C4ハロアルキルまたはC1−C4アルコキシの任意の組み合わせで任意に置換されるフェニルからなる群から選択され;
R4、R5、R6および R7 は、H、ヒドロキシル、ハロゲン、CN、NO2、スルホンアミド、C1−C8アルキル、C3−C6 シクロアルキル、C1−C6 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C2−C8 アルケニル、アミノ、C1−C4 ジアルキルアミノ、C1−C4アルキルアミノ、C1−C6 シクロアルキルアミノ、モルホリン、ヘテロアリール、アリールアミノ(aryrl amino)、アリールアルキルアミノ、フェニルおよびC(O)R’、NR’(COR’’)、NR’SO2R’’ および NR’(CONR’’R’’’)
(R’、R’’ および R’’’ は、独立してH、C1−C6 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。C1−C8 アルキルは、C1−C4アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。フェニルは、ハロゲン、NO2、CN、C1−C4アルキル、C1−C4 ハロアルキルおよびC1−C4 アルコキシからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)
からなる群から独立して選択されるか、あるいはR4 と R5、R5 と R6、またはR6 と R7が、それらの結合する炭素原子と共に環を形成し;
X は、
H;
CN;
C(O)OR8(R8は、H または C1−C6 アルキルであり、かつC1−C8 アルキルはC1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、フェニルおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。);
C(O)NR9R10または CH2NR9R10(R9および R10 は、H および C1−C6 アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはR9 と R10 が、それらの結合する窒素原子と共に、C5−C6 シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);
CH2OR11(R11は、H、C1−C8 アルキル(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)またはC1−C6 シクロアルキルである。);
CH2Z(Z はハロゲンである。);
C(O)NHOH;
C(O)NHCN;
C(O)N(R1)SO2R13(R13は、C1−C4 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。);
C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C1−C8 アルキル;および
C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C2−C8 アルケニル
からなる群から選択される(但し、当該化合物が式Iの化合物であり、R4、R5、R6および R7 がそれぞれHであるとき、X はC(O)OHではない。)。]。
【請求項2】
W が、C(O)、C(S) および CH2からなる群から選択され;
B が、CH2であり;
C が、縮合チオフェン環、縮合ピリジン環およびシクロヘキサン環からなる群から選択され、それらはいずれも、飽和であってもよく、あるいは1または2個の非共役二重結合を含んでいてもよく;
R1 および R2が、H および C1−C3アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはR1 と R2 が、それらの結合する炭素原子と共に、C3−C5 シクロアルキル環またはカルボニル基を形成してもよく;
R3 が、H、ハロゲン、C1−C4アルキル、C1−C4 アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、CN、NO2、ヘテロアリール、および1から5個のハロゲン、NO2、CN、C1−C4アルキル、C1−C4 ハロアルキルまたはC1−C4 アルコキシの任意の組み合わせで任意に置換されるフェニルからなる群から選択され;
R4、R5、R6および R7 が、H、ハロゲン、CN、NO2、スルホンアミド、C1−C8アルキル、C3−C6 シクロアルキル、C1−C6 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、アミノ、C1−C4 ジアルキルアミノ、C1−C4 アルキルアミノ、C1−C6シクロアルキルアミノ、モルホリン、ヘテロアリールおよびフェニル(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。フェニルは、ハロゲン、NO2、CN、C1−C4アルキル、C1−C4 ハロアルキルおよびC1−C4 アルコキシからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)からなる群から独立して選択され;
Xが、
CN;
C(O)OR8(R8は、H または C1−C6 アルキルである。C1−C8 アルキル はC1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、フェニルおよびモルホリンからなる群から独立して選択される1以上の置換基で任意に置換される。);
C(O)NR9R10 または CH2NR9R10(R9および R10 は、H および C1−C6 アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはR9 と R10が、それらの結合する窒素原子と共に、C5−C6 シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);
CH2OR11(R11は、H、C1−C8 アルキル(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)またはC1−C6 シクロアルキルである。);
CH2Z(Z はハロゲンである。);
C(O)NHOH;
C(O)NHCN;
C(O)N(R1)SO2R13(R13は、C1−C4 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。);
C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C1−C8アルキル;および
C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C2−C8 アルケニル
からなる群から選択される(但し、当該化合物が式Iの化合物であり、R4、R5、R6および R7 がそれぞれHであるとき、X はC(O)OHではない。)、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R4、R5、R6および R7 の少なくとも1つが、CN、NO2、スルホンアミド、C3−C6シクロアルキル、C1−C6 アルコキシ、アミノ、C1−C4 ジアルキルアミノ、C1−C4アルキルアミノ、C1−C6 シクロアルキルアミノ、モルホリン、ヘテロアリール、アリールアミノ(aryrlamino)、アリールアルキルアミノおよびC(O)R’、NR’(COR’’)、NR’SO2R’’およびNR’(CONR’’R’’’)
(R’、R’’ および R’’’は、独立してH、C1−C6 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。フェニルは、ハロゲン、NO2、CN、C1−C4アルキル、C1−C4 ハロアルキルおよびC1−C4 アルコキシからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)
からなる群から独立して選択されるか、あるいはR4 と R5、R5 と 56または R6 と R7 が、それらの結合する炭素原子と共に環を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Xが、
CN;
C(O)NR9R10または CH2NR9R10(R9および R10 は、H および C1−C6 アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはR9 と R10 がそれらの結合する窒素原子と共にC5−C6 シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);
CH2OR11(R11は、 H、C1−C8 アルキル(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)または C1−C6 シクロアルキルである。);
CH2Z(Z はハロゲンである。);
C(O)NHOH;
C(O)NHCN;
C(O)N(R1)SO2R13(R13は、C1−C4 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。)
C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C1−C8 アルキル;および
C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C2−C8アルケニル
からなる群から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
化合物が式 Iの化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
W がC(O)である請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
B がCH2である請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R1 および R2がH および C1−C3アルキルからなる群から独立して選択される請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R1 がHであり、 R2がCH3である請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Xが、
CN;
C(O)OR8(R8は、H または C1−C6 アルキルである。);
CH2OR11(R11は、H、C1−C8 アルキル(C1−C8アルキルは、C1−C4アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)または C1−C6 シクロアルキルである。);
CH2NR9R10(R9および R10 は、H および C1−C6 アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはR9 と R10 が、それらの結合する窒素原子と共に、C5−C6シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);および
CH2Z(Z はハロゲンである。)
からなる群から選択される請求項1〜3または5〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
X がC(O)OHである請求項10記載の化合物。
【請求項12】
R3、R4 および R7 がHである請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
R5 および R6が、H、ハロゲン、C1−C8アルキル(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C6ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)、C3−C6 シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、アミノ、C1−C4 ジアルキルアミノ、C1−C4アルキルアミノ、C1−C6 シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から独立して選択される請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
R5 が Hである請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
R6 が、ハロゲン、C1−C8アルキル(C1−C8 アルキルは、 C1−C4 アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C6ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)、C3−C6 シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、アミノ、C1−C4 ジアルキルアミノ、C1−C4アルキルアミノ、C1−C6 シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
R6がハロゲン、C1−C3アルキル、C1−C6 アルコキシ、C1−C4 ジアルキルアミノおよびC1−C4ハロアルキルからなる群から選択される請求項15記載の化合物。
【請求項17】
R6 がクロロ、ブロモ、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i−プロポキシ、シクロヘキシルオキシ、ジメチルアミノおよびCF3からなる群から選択される請求項16記載の化合物。
【請求項18】
R3、R4、R5 および R6 がHである請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
R7 がハロゲン、C1−C8アルキル(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C6ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)、C3−C6 シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、アミノ、C1−C4 ジアルキルアミノ、C1−C4アルキルアミノ、C1−C6 シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される請求項1〜11および18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
R7 が C1−C8 アルキル、アミノまたはC1−C4 アルキルアミノである請求項19記載の化合物。
【請求項21】
R7 がメチル、エチル、プロピルまたはアミノである請求項20記載の化合物。
【請求項22】
R3、R4、R6 および R7 がHである請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
R5がCN、ハロゲン、C1−C8アルキル(C1−C8 アルキルは、C1−C4 アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C6ジアルキルアミノ、C1−C6 アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)、C3−C6 シクロアルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、アミノ、C1−C4 ジアルキルアミノ、C1−C4アルキルアミノ、C1−C6 シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される請求項1〜11および22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
R5 がメチル、エチル、プロピルまたはCNである請求項23記載の化合物。
【請求項25】
R3、R4、R5、R6または R7 の少なくとも1つが、ヒドロキシル、C1−C6ハロアルコキシ、C1−C8 アルケニル、C(O)R’、NR’(COR’’)、NR’SO2R’’およびNR’(CONR’’R’’’)(R’、R’’ および R’’’ が独立してH、C1−C6 アルキル、フェニルもしくは置換フェニルである。)、またはアリールアミノもしくはアリールアルキルアミノで置換されるC1−C8 アルキルである請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
R3、R4、R5、R6またはR7 の少なくとも1つがC1−C6 ハロアルコキシである請求項25記載の化合物。
【請求項27】
ハロアルコキシが−OCHF2である請求項26記載の化合物。
【請求項28】
R4 とR5、R5 と R6、または R6 と R7の少なくとも1組の基が、それらの結合する炭素原子と共に環を形成する請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
当該環が5員または6員の複素環である請求項28記載の化合物。
【請求項30】
当該環がジオキサンまたはジオキソラン環である請求項29記載の化合物。
【請求項31】
X が、
CN;
C(O)OR8(R8は、フェニルで任意に置換されるC1−C6 アルキルである。);
C(O)NR9R10(R9および R10 は、H および C1−C6 アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはR9 と R10 が、それらの結合する窒素原子と共に、C5−C6 シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);
CH2OR11(R11は、H、C1−C8 アルキル(C1−C8アルキル は、C1−C4アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)またはC1−C6 シクロアルキルである。);
CH2NR9R10(R9および R10 は上記と同意義である。);
CH2Z(Z はハロゲンである。);
C(O)NHOH;
C(O)NHCN;および
C(O)N(R1)SO2R13(R13は、C1−C4 アルキル、フェニルまたは置換フェニルである。)
からなる群から選択される請求項1〜3、5〜9および12〜30のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
X が、
CN;
C(O)OR8(R8は、フェニルで任意に置換されるC1−C6 アルキルである。);
CH2OR11(R11は、H、C1−C8 アルキル(C1−C8アルキルは、C1−C4アルコキシ、C1−C4 ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノ、C1−C6アルキルアミノ、シクロアルキルアミノおよびモルホリンからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される。)または C1−C6 シクロアルキルである。);
CH2NR9R10(R9および R10 は、H および C1−C6 アルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいはR9 とR10 が、それらの結合する窒素原子と共に、C5−C6 シクロアルキル環またはモルホリンのようなヘテロ環を形成する。);および
CH2Z(Z はハロゲンである。)
からなる群から選択される請求項31記載の化合物。
【請求項33】
X が C(O)OR8(R8は、フェニルで任意に置換されるC1−C6 アルキルである。)であるか、X がCH2Z(Zはハロゲンである。)である請求項32記載の化合物。
【請求項34】
X が C(O)OR8であり、R8 がメチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチルまたはベンジルである請求項33記載の化合物。
【請求項35】
Xが、
C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C1−C8 アルキル;および
C1−C4 アルコキシ、C1−C4ハロアルキル、C1−C6 ジアルキルアミノおよびC1−C6 アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で任意に置換される、C1−C8 アルケニル
からなる群から選択される請求項1〜3、5〜9および12〜30のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項36】
X がC1−C6 アルキルである請求項35記載の化合物。
【請求項37】
X がメチルである請求項36記載の化合物。
【請求項38】
X がHである請求項1〜3、5〜9および12〜30のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項39】
R3、R4、R5、R6 および R7 が Hである請求項1、2、4〜9および31〜38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項40】
表1記載の化合物。
【請求項41】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の化合物のエナンチオマーのラセミ混合物。
【請求項42】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の化合物、または請求項41記載のラセミ混合物、および担体を含む組成物。
【請求項43】
担体が医薬上許容される担体である請求項42記載の化合物。
【請求項44】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の化合物を、SMN2をコードする核酸を含む細胞であって、宿主内に任意に存在する細胞に投与し、それによってSMNの発現を増強させることを含む、細胞のSMNの発現増強方法。
【請求項45】
宿主が哺乳類である請求項44記載の方法。
【請求項46】
哺乳類がSMNの低発現と関係する疾患に罹患したヒトである請求項45記載の方法。
【請求項47】
疾患がSMAである請求項46記載の方法。
【請求項48】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の化合物を、翻訳終止コドンをコードする核酸を含む細胞であって、宿主内に任意に存在する細胞に投与し、それによって核酸の発現を増強させることを含む、翻訳終止コドンをコードする核酸の発現を細胞内で増強させる方法。
【請求項49】
翻訳終止コドンが変異またはフレームシフトによって生じている請求項48記載の方法。
【請求項50】
宿主が哺乳類である請求項49記載の方法。
【請求項51】
哺乳類が変異またはフレームシフトによって生じる翻訳終止コドンと関係する疾患に罹患したヒトである請求項50記載の方法。
【請求項52】
疾病が癌、糖尿病、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー症である請求項51記載の方法。
【請求項53】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の化合物を、興奮性アミノ酸トランスポーター(EAAT2)をコードする核酸を含む細胞であって、宿主内に任意に存在する細胞に投与し、それによってEAAT2の発現を増強させることを含む、EAAT2の発現を細胞内で増強させる方法。
【請求項54】
宿主が哺乳類である請求項53記載の方法。
【請求項55】
哺乳類が中枢神経系のグルタミン酸のレベルが上昇しているヒトである請求項54記載の方法。
【請求項56】
哺乳類が脳卒中または中枢神経系領域の外傷を受けたヒトである請求項54記載の方法。
【請求項57】
哺乳類が神経変性疾患であってもよい疾患に罹患したヒトである請求項54記載の方法。
【請求項58】
疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、ハンチントン病またはてんかんである請求項57記載の方法。

【公表番号】特表2009−530306(P2009−530306A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500525(P2009−500525)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/006772
【国際公開番号】WO2007/109211
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(304048296)アメリカ合衆国 (18)
【出願人】(503168441)アルバニー モレキュラー リサーチ インコーポレイテッド (2)
【出願人】(500089996)サイエンス アプリケーションズ インターナショナル コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】