説明

脚式移動ロボットの制御装置

【課題】対象物の目標姿勢の変化パターンに適した該対象物の移動を行なう移動ロボットの成制御装置を提供する。
【解決手段】腕体7,7の先端部を対象物Wの一端寄りの部位Wbに接触させた状態で、対象物Wの代表点の位置と対象物の姿勢とをそれぞれ目標位置軌道、目標姿勢軌道に追従させるように対象物Wを移動させる作業を行う移動ロボット1の制御装置であって、対象物Wをヨー軸方向で見たときの該対象物Wの代表点の対象物座標系での位置を、少なくとも目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化に応じて可変的に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕体の先端部のハンドにより台車などの対象物を把持し、該対象物の位置および姿勢を目標軌道に追従させるように該対象物を移動させる作業を行う脚式移動ロボットの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に見られるように、移動ロボットの腕体の先端部を台車などの対象物の一端部の所定部位に接触させた状態で、該対象物を移動させる作業を該移動ロボットに行なわせる技術が本願出願人により提案されている。この技術では、対象物の代表点の位置と該対象物の姿勢とを、それぞれ対象物の移動計画を基づく目標位置軌道、目標姿勢軌道に追従させるように、移動ロボットとしての2足移動ロボットの動作を制御する。
【特許文献1】特開2007−160428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のこの種の技術では、対象物の目標位置軌道に追従させるべき対象物の代表点は、該対象物に対して固定的に設定されているため、次のような不都合があった。
【0004】
例えば、図5(a),(b)に示すように、ロボット101がその腕体102,102の先端部(ハンド)によって、対象物としての台車200の一端部の取っ手101を把持した状態で、該ロボット101により台車200を押して移動させる場合を想定する。なお、図5(a),(b)は、ロボット101および台車200の移動途中のある時刻でのロボット101および台車200を上方から見た平面図である。
【0005】
ここで、台車200の代表点202の目標位置軌道により規定される空間的な目標経路203が、現在のロボット101および台車200の進行方向前方において、比較的大きな曲がり度合いで曲がっているとする。また、目標経路203上での台車200の目標姿勢(ヨー軸方向で見た台車200の目標姿勢)は、該台車200の前後方向が目標経路203の接線方向(目標経路203上での台車200の代表点202の移動速度ベクトルの向きと同方向)となるような姿勢であるとする。なお、「ヨー軸」は、ロボット1および台車200の移動環境の床面に垂直な方向の軸、または鉛直方向の軸を意味する。
【0006】
このような場合において、ロボット101は、台車200の代表点202を目標経路203上の目標位置に追従させつつ、該代表点202を支点として、ヨー軸まわりに台車200を回転させることで、台車200の姿勢を目標姿勢(図5(a),(b)に二点鎖線で示す台車200の姿勢)に追従させようとする。
【0007】
この場合、台車200の代表点202が、図5(a)に示すように、ロボット101寄りの端部に設定されている場合には、台車200の代表点202から離れた部位(ロボット101寄りの端部と反対側の端部)のヨー軸まわりの移動量が大きくなる。このため、台車200を比較的狭い通路で移動させるような場合のように目標経路の側方に障害物が存在するような場合に、該台車200と該障害物との衝突が生じる恐れがある。また、代表点202を通るヨー軸まわりの台車200の慣性モーメントが比較的大きい。このため、移動ロボット1から台車200に作用する力の変動に対する台車200の姿勢の安定性は高いものの、該台車200の目標姿勢の急変に対して、台車200の姿勢を短時間で目標姿勢に追従させることが難しい。そして、このような場合には、ロボット101と台車200との位置・姿勢関係の制約などの影響で、台車200の実際の移動経路と目標経路とのずれが生じやすい。
【0008】
一方、台車200の代表点202が、図5(b)に示すように、ロボット101側の端部と反対側の端部側に該ロボット101から離れた位置(図示例では、概ね台車200の中心位置)に設定されている場合には、台車200の姿勢を目標姿勢に向かって変化させるときの、台車200の代表点202から離れた部位の移動量は図5(a)の場合よりも小さくなり、また、該代表点202を通るヨー軸まわりの台車200の慣性モーメントも図5(a)の場合よりも小さくなる。
【0009】
しかるに、この場合には、台車200の慣性モーメントが小さくなることから、対象物の目標姿勢を一定にして、該対象物を直線的に移動させようとする場合であっても、移動ロボット100から台車200に作用する力のわずかな変動によって台車200の姿勢変化が生じやすい。また、移動ロボット100から台車200に作用する力の変動や外乱などの影響で台車200の姿勢が目標姿勢に対してずれを生じた場合に、ロボット101と台車200との間の適切な位置・姿勢関係を保ちつつ、該台車200の姿勢のずれを解消するために、ロボット101が目標経路203に対して横方向(目標経路203とほぼ直交する方向)に動かなければならない場合が多い。そのため、目標経路203がほぼ直線状の経路であっても、ロボット101が横方向に動かなければならない機会が多くなる。ひいては、ロボット101および台車200の移動速度を高めることが困難となる。
【0010】
このように、対象物の代表点を固定的に設定する従来の技術では、対象物の目標姿勢軌道の変化パターンによって、対象物の姿勢の目標姿勢への追従性が低下したり、対象物の移動速度を高めることが困難となるような状況が発生するというような不都合があった。
【0011】
そこで、本発明は、対象物の目標姿勢の変化パターンに適した該対象物の移動を行なうことを可能とする移動ロボットの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の移動ロボットの制御装置は、かかる目的を達成するために、腕体の先端部を対象物の一端寄りの所定の部位に接触させた状態で、該対象物の代表点(該対象物の空間的位置を代表する点)の位置と該対象物の姿勢とをそれぞれ目標位置軌道、目標姿勢軌道に追従させるように該対象物を移動させる作業を行う移動ロボットの制御装置であって、前記対象物をヨー軸方向で見たときの該対象物の代表点の、該対象物に対して固定された対象物座標系での位置を、少なくとも前記目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化に応じて可変的に設定する対象物代表点設定手段を備えたことを特徴とする(第1発明)。
【0013】
なお、本発明において、対象物の代表点の「目標位置軌道」は、該代表点の空間的な目標位置の時系列を意味する。また、対象物の「目標姿勢軌道」は、対象物の空間的な向きの目標の時系列を意味する。また、「ヨー軸」は、移動ロボットおよび対象物の移動環境における床面に垂直な方向の軸、または、鉛直方向の軸を意味する。この場合、「垂直な方向」または「鉛直方向」は厳密な意味での垂直な方向または鉛直方向である必要はなく、当該厳密な意味での垂直な方向、または鉛直方向に対して若干のずれを生じていてもよい。
【0014】
かかる第1発明によれば、前記対象物をヨー軸方向で見たときの該対象物の代表点の、該対象物に対して固定された対象物座標系での位置が、少なくとも前記目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化に応じて可変的に設定される。これにより、対象物の代表点の位置を、該対象物の目標姿勢の変化パターンに適した位置に可変的に設定することができる。そして、このように可変的に設定される対象物の代表点の位置と、該対象物の姿勢とがそれぞれ目標位置軌道および目標姿勢軌道に追従するように移動ロボットの動作が制御される。
【0015】
これにより、対象物の目標姿勢の変化パターンに適した該対象物の移動を行なうことができる。
【0016】
かかる第1発明では、より具体的には、前記対象物代表点設定手段は、前記目標位置姿勢軌道により規定される前記対象物の代表点の空間的な目標経路のうち、前記目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が所定量以下となる第1の区間では、該対象物の一端寄りの位置に該対象物の代表点を設定することが好ましい(第2発明)。
【0017】
この第2発明によれば、前記目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化量(例えば所定期間当たりの変化量)が所定量以下となる第1の区間、すなわち、対象物の目標姿勢が一定もしくはほぼ一定に保たれる区間では、前記対象物の所定の部位の近く、すなわち、前記移動ロボットに比較的近い位置に前記対象物の代表点が設定される。このため、該第1区間において、該代表点を通るヨー軸まわりの対象物の慣性モーメントが比較的大きくなり、該対象物の姿勢の安定性が高まる。また、移動ロボットが、対象物の姿勢を目標姿勢軌道に追従させるために、前記目標位置軌道により規定される対象物の代表点の空間的な目標経路に対して横方向に比較的大きく移動しなければならないような機会を少なくすることができる。ひいては、該移動ロボットおよび対象物の移動速度を高めることができる。
【0018】
この第2発明では、前記対象物代表点設定手段は、前記目標経路のうち、前記目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が所定量を超える第2の区間では、前記目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が所定量を超える第2の区間では、前記第1の区間で設定する前記対象物の代表点の位置と該対象物の他端との間で、前記第1の区間で設定する前記対象物の代表点の位置よりも前記移動ロボットから遠ざかる位置に該対象物の代表点の位置を設定することが好ましい(第3発明)。
【0019】
この第3発明によれば、前記第2の区間で設定される対象物の代表点を通るヨー軸まわりの該対象物の慣性モーメントを第1の区間よりも小さくできる。また、第2の区間での該代表点を中心にして前記移動ロボットおよび対象物の全体をヨー軸まわりに回転させた場合における該移動ロボットおよび対象物の全体の外郭の最大回転半径を、前記第1の区間での該代表点を中心にして前記移動ロボットおよび対象物の全体をヨー軸まわりに回転させた場合における該移動ロボットおよび対象物の全体の外郭の最大回転半径よりも小さくすることができる。
【0020】
このため、前記第2の区間での対象物のヨー軸回りの姿勢を目標姿勢に追従させるための該対象物の姿勢の変化を容易に行なうことができると共に、第2の区間における対象物と移動ロボットとの全体の移動領域の幅を小さくできる。ひいては、狭い通路で対象物を旋回させるような場合であっても、対象物や移動ロボットと目標経路の側方の障害物との衝突を避けつつ、対象物を移動させることができる。
【0021】
この第3発明では、前記対象物代表点設定手段は、前記対象物の一端寄りの位置にあらかじめ設定された第1の点と、該第1の点と該対象物の他端との間で該第1の点よりも前記移動ロボットから遠ざかる位置にあらかじめ設定された第2の点とを結ぶ線分上で、前記対象物の代表点の位置を設定すると共に、前記第1の区間では、該対象物の代表点の位置を前記第1の点の位置に設定し、前記第2の区間では、該対象物の代表点の位置が前記ヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が大きいほど、前記第2の点の位置に近くなるように、該目標姿勢の変化量に応じて該対象物の代表点の位置を設定する手段であり、前記第2の点は、前記線分上の点のうち、その点を中心として、前記移動ロボットおよび対象物の全体をヨー軸まわりに回転させた場合における該移動ロボットおよび対象物の外郭の最大回転半径が最小となる点であることが好ましい(第4発明)。
【0022】
この第4発明によれば、前記第2の区間での対象物のヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が比較的大きい場合には、対象物の代表点が前記第2の点またはそれに近い点に設定されるので、対象物と移動ロボットとの全体の移動領域の幅をできるだけ小さくしつつ、該対象物のヨー軸まわりの姿勢を変化させることができる。また、第2の区間での対象物のヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が比較的小さい場合には、対象物の代表点が前記第1の点に近い点に設定されるので、目標姿勢の変化量が比較的大きい場合よりも、対象物の姿勢の安定性や移動速度を高めることができる。
【0023】
前記第1〜第4発明では、前記対象物代表点設定手段は、前記対象物の代表点の位置を変化させるとき、該代表点の位置を徐々に変化させることが好ましい(第5発明)。
【0024】
この第5発明によれば、移動ロボットの動作が急激に変化するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一実施形態を図1〜図4を参照して説明する。図1は本実施形態の移動ロボットと対象物との外観斜視図、図2は本実施形態の移動ロボットの動作制御に関するシステム構成を示すブロック図、図3は本実施形態の移動ロボットに備えた制御装置の処理を示すフローチャート、図4は本実施形態の作動を説明するための図である。
【0026】
図1を参照して、本実施形態の移動ロボット1は、2足移動ロボット(人型ロボット)である。この2足移動ロボット1は、その基体としての上体3と、該上体3の下端部から延設された左右一対の脚体5,5と、該上体3の上部の両側部から延設された左右一対の腕体7,7と、該上体3の上端部に搭載された頭部9とを有する。
【0027】
各脚体5は、第1脚リンク11、第2脚リンク13、および足平15を上体3側から順に連接した構造のものであり、各脚体5の先端部が接地部としての足平15により構成されている。この場合、各脚体5の第1脚リンク11は3軸まわりの回転自由度を有する股関節17を介して上体3に連結され、第2脚リンク13は、1軸まわりの回転自由度を有する膝関節19を介して第1脚リンク11に連結され、足平15は、2軸まわりの回転自由度を有する足首関節21を介して第2脚リンク13に連結されている。そして、各脚体5は、各関節17,19,21の回転動作によって、人間の脚と同様の運動が可能となっている。この場合、例えば、脚体5,5の一方の脚体5(支持脚側の脚体5)を移動ロボット1の移動環境の床に接地させた状態で、他方の脚体5(遊脚側の脚体5)を空中に持上げて動かし、さらに着地させるという運動を両脚体5,5について交互に行なうことにより、移動ロボット1の移動を行なうことが可能である。
【0028】
各腕体7は、第1腕リンク23、第2腕リンク25、およびハンド27を上体3側から順に連接した構造のものであり、各腕体7の先端部がハンド27により構成されている。この場合、各腕体7の第1腕リンク23は3軸まわりの回転自由度を有する肩関節29を介して上体3の連結され、第2腕リンク25は、1軸まわりの回転自由度を有する肘関節31を介して第1腕リンク23に連結され、ハンド27は、3軸まわりの回転自由度を有する手首関節33を介して第2腕リンク25に連結されている。そして、各腕体7は、各関節29,31,33の回転動作によって、ハンド27を物体に接触させるなど、人間の腕と同様の運動が可能となっている。また、ハンド27は、複数の指を備え、その各指の関節の動作(各指の屈伸動作など)によって、物体を把持するなどの作業を行なうことが可能となっている。
【0029】
図1では図示を省略しているが、移動ロボット1には、その動作制御のためのシステム構成として、図2に示すように、脚体3および腕体4の各関節(ハンド27の指の関節を含む)をそれぞれ駆動する電動モータなどの複数の関節アクチュエータ35,35,…と、移動ロボット1の動作状態や周辺の環境情報を検出するための種々のセンサ37,37,…と、外部のサーバなどとの通信を行なうための通信装置39と、制御装置41とが搭載されている。
【0030】
センサ37は、例えば、各脚体3の足平15の接地時に該足平15に作用する床反力を検出する力センサ、各腕体4のハンド27を物体に接触させたときに該ハンド27に作用する反力を検出する力センサ、上体3の加速度を検出する加速度センサ、上体3の角速度を検出するレートセンサ、上体3の傾斜角度を検出する傾斜センサ、各関節の変位量(回転角度)を検出する関節変位センサ、移動ロボット1の前方などの周辺環境の映像を撮像する撮像カメラなどである。
【0031】
制御装置41は、マイクロコンピュータ、インターフェース回路、アクチュエータ駆動回路を含む電子回路ユニットである。この制御装置41は、各センサ37の検出データや、通信装置39を介して与えられる指令データを使用して、あらかじめ実装され、もしくは必要に応じてダウンロードされたプログラムにより規定される演算処理を実行することによって、各関節アクチュエータ35の操作量(例えば電動モータの指令電流)を逐次決定する。そして、そして、制御装置41は、その操作量に応じて各関節アクチュエータ35を制御することによって、移動ロボット1の動作を制御する。なお、制御装置41は、その演算処理により実現される機能として、本発明における対象物代表点設定手段としての機能を含んでいる。
【0032】
次に、以上説明した移動ロボット1によって、対象物を移動させる作業を行わせる場合の作動を説明する。なお、この作動説明では、対象物として、例えば図1に示す台車Wを移動させる場合を例に採って説明する。図1に示す対象物(台車)Wは、該対象物Wおよび移動ロボット1の移動環境の床面に接地する複数の車輪WRを備え、その車輪WRの転動によって、床面上を移動し得るようになっている。また、対象物Wの各車輪WRは、上下方向の軸まわりに回転し得るようになっており、その回転によって、対象物Wの方向転換が可能となっている。
【0033】
移動ロボット1により上記対象物(台車)Wを移動させる場合には、制御装置41は、まず、外部のサーバなどから通信装置39を介して入力される指令データに基づいて、移動ロボット1の腕体7などの関節アクチュエータ35を制御して、移動ロボット1の両腕体7,7のハンド27,27を対象物Wの長手方向の一端寄りの所定の部位に接触させる。
【0034】
例えば、図1に示すように、移動ロボット1を対象物Wの長手方向(前後方向)の一端側(後端側)に対向させて起立させた状態で、該対象物Wの後端部の上部に設けられたバーWbの両側部を左右のハンド27,27により把持させる。なお、この場合、移動ロボット1は、各腕体7,7が伸び切らず、また、上体3などが対象物Wと干渉しないような位置および姿勢で、対象物Wに対向して起立する。
【0035】
補足すると、移動ロボット1のハンド27,27により把持させる部位は、バーWbである必要はない。例えば、図1に示す台車Wの上部の載架板の両側部の後端部寄りの箇所をハンド27,27により把持するようにしてもよい。
【0036】
次いで、制御装置41は、図3のフローチャートに示す処理を所定の演算処理周期で逐次実行し、移動ロボット1に対象物Wを移動させる作業を行なわせる。
【0037】
この処理では、制御装置41は、外部のサーバなどから通信装置39を介して対象物Wの移動計画を取得する(STEP1)。該移動計画は、対象物Wをどのタイミングでどのように動かすべきかの要求指針である。そして、STEP1で取得する移動計画には、少なくとも現在時刻から将来の所定期間における対象物Wの移動計画が含まれる。該所定期間は、例えば、移動ロボット1の所定の複数歩数分の期間(3歩分の期間など)である。ただし、該所定期間は、例えば現在時刻から所定時間が経過するまでの期間、あるいは、対象物Wを現在位置から移動計画に従って移動させたときの該対象物Wの移動距離が所定距離に達するまでの期間などであってもよい。
【0038】
なお、STEP1の処理は、制御装置41の演算処理周期毎に行なう必要はなく、上記所定期間が経過する毎に行なうようにしてもよい。また、対象物Wの移動の出発地点から到着地点までの全行程にわたる対象物Wの移動計画を対象物Wの移動開始時もしくはその直前に取得したり、あるいは、対象物Wの全行程にわたる移動計画を制御装置41の記憶装置にあらかじめ記憶保持してもよい。
【0039】
次いで、制御装置41は、STEP1で取得した移動計画を基に、現在時刻から将来の対象物Wの目標位置軌道及び目標姿勢軌道を生成する(STEP2)。ここで、対象物Wの目標位置軌道は、該対象物Wの代表点(対象物Wの空間的位置を代表する点)の目標位置の時系列である。該代表点は、本実施形態では、後述するように可変的に設定される。また、対象物Wの目標姿勢軌道は、対象物Wの目標姿勢の時系列を意味する。なお、「姿勢」は空間的な向きを意味する。
【0040】
これらの目標位置軌道および目標姿勢軌道は、基本的には、対象物Wの移動計画に従うように生成される。ただし、本実施形態の移動ロボット1は二足移動ロボットであるので、移動計画通りに対象物Wを移動させようとすると、移動ロボット1の姿勢の安定性が損なわれる場合もある。このため、本実施形態では、STEP2の処理において、制御装置41は、移動計画通りに対象物Wの目標位置軌道および目標姿勢軌道を仮生成した後に、その仮生成した目標位置軌道および目標姿勢軌道に従って対象物Wを移動させたとした場合の移動ロボット1の将来の動作を予測演算する。そして、制御装置41は、その予測演算した移動ロボット1の将来の動作が、移動ロボット1の姿勢の安定性を適切に保ち得る動作になるか否かを判断し、その判断結果が肯定的である場合には、仮生成した対象物Wの目標位置軌道および目標姿勢軌道をそれぞれ、そのまま、対象物Wの実際の目標位置軌道、目標姿勢軌道として得る。また、上記判断結果が否定的である場合には、仮生成した対象物Wの目標位置軌道および目標姿勢軌道のうちの一方または両者を修正し、その修正後の目標位置軌道および目標姿勢軌道をそれぞれ対象物Wの実際の目標位置軌道、目標姿勢軌道として得る。この場合、対象物Wの修正後の目標位置軌道および目標姿勢軌道が可能な限り、対象物Wの移動計画から乖離せず、且つ、その修正後の目標位置軌道および目標姿勢軌道に対応して予測される移動ロボット1の将来の動作が、該移動ロボット1の姿勢の安定性を適切に確保し得る動作となるように、目標位置軌道および目標姿勢軌道のうちの一方または両者の修正が行なわれる。
【0041】
例えば、対象物Wの移動計画が、移動ロボット1の直進時の最大移動速度もしくはこれに近い移動速度で該対象物Wを移動させるような移動計画である場合において、対象物Wの移動計画に基づく目標位置軌道に規定される対象物Wの目標経路が、その途中に比較的急激に曲がるような区間を有する場合には、その区間で、該対象物Wおよび移動ロボット1をその最大移動速度もしくはこれに近い速度で移動させながら、移動ロボット1の姿勢の安定性を確保することが困難となる場合が多い。このような場合には、例えば当該区間並びに、その直前および直後の区間において、対象物Wの移動速度が、移動計画に基づく移動速度よりも小さい速度となるように、対象物Wの目標位置軌道が修正される。
【0042】
このような対象物Wの目標位置軌道および目標姿勢軌道の生成は、例えば前記特許文献1に提案されている手法と同様の手法で行なうことができる。この場合、対象物Wの目標位置軌道および目標姿勢軌道は、移動ロボット1の両脚体5,5のうちの支持脚側の脚体5の足平15の接地面上の点を原点として設定される支持脚座標系で記述される。ただし、対象物Wの目標位置軌道および目標姿勢軌道を記述する座標系は、上記支持脚座標系に限られるものではなく、例えば、対象物Wおよび移動ロボット1を移動させる床に対して固定的に設定された座標系(絶対座標系)であってもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、対象物Wの目標姿勢軌道の目標姿勢は、該対象物Wの長手方向(台車Wの前後方向)が、目標位置軌道における対象物Wの代表点の目標位置の単位時間当たりのの変化ベクトルとしての該代表点の移動速度ベクトルと同方向になるような姿勢とされる。換言すれば、対象物Wの目標姿勢は、対象物Wをヨー軸方向で見たときに、対象物Wの長手方向が、目標位置軌道により規定される対象物Wの代表点の空間的な目標経路の接線方向に向くような姿勢とされる。なお、ヨー軸方向は、鉛直方向または床面に垂直な方向を意味する。ただし、必ずしも対象物Wの長手方向と対象物Wの代表点の移動速度ベクトルの方向とを同方向にする必要はない。例えば、対象物Wの目標姿勢における該対象物Wの長手方向と対象物Wの代表点の移動速度ベクトルのとの間にヨー軸まわりに角度差を持たせるようにしてもよい。
【0044】
また、対象物Wの目標位置軌道および目標姿勢軌道を決定するときに、目標位置軌道により規定される対象物Wの代表点の目標経路の周辺の障害物(設置物、壁など)と、対象物Wもしくは移動ロボット1との干渉の有無を考慮してもよい。
【0045】
上記のように対象物Wの代表点の目標位置軌道と該対象物Wの目標姿勢軌道とを生成した後、制御装置41は、次に、現在時刻から将来の所定期間における対象物Wのヨー軸まわりの目標姿勢の変化量を算出する(STEP3)。該所定期間は、例えば移動ロボット1の所定の複数歩数分の期間(3歩分の期間など)である。ただし、該所定期間は、例えば現在時刻から所定時間が経過するまでの期間、あるいは、対象物Wを現在位置から目標位置軌道に従って移動させたときの該対象物Wの移動距離が所定距離に達するまでの期間などであってもよい。また、STEP3で算出するヨー軸まわりの目標姿勢の変化量は、具体的には、現在時刻での対象物Wの目標姿勢により規定される該対象物Wの長手方向(前後方向)と、上記所定期間の終了時における対象物Wの目標姿勢より規定される該対象物Wの長手方向との間のヨー軸まわりの角度差である。
【0046】
次いで、制御装置41は、STEP3で算出した目標姿勢の変化量に応じて、対象物Wの代表点の位置を可変的に設定する(STEP4)。この場合、可変的に設定する代表的の位置は、ヨー軸方向で見たときの対象物Wの代表点の、該対象物Wに固定された対象物座標系での位置である。
【0047】
例えば、図4を参照して、対象物(台車)Wに対して、ヨー軸方向をZ軸方向(図4の紙面に垂直な方向)、対象物Wの長手方向(前後方向)をX軸方向、対象物Wの幅方向をY軸方向とする3軸直交座標系を対象物座標系として設定した場合を想定する。なお、図4は、ヨー軸方向で見たときの対象物Wの目標位置軌道により規定される目標経路が、同図の破線で示すような経路である場合における対象物Wおよび移動ロボット1の移動途中の瞬時的な動作状態(3種類の動作状態)を例示している。この図4では、対象物Wおよび移動ロボット1は模式的に図示している。
【0048】
この場合、制御装置41は、上記対象物座標系のXY平面上での代表点の位置を、図4に示すようにあらかじめ設定された点P1と点P2とを結ぶ線分上で可変的に設定する。点P1は、対象物Wの後端寄り(台車Wの移動ロボット1側の一端寄り)の点である。図示例では、点P1は、対象物Wの前記バーWbの両側部(移動ロボット1のハンド27,27により把持させる部位)の間の中央点、すなわち、対象物Wの後端部の幅方向における中央点である。
【0049】
また、点P2は、点P1と対象物Wの前端(他端)との間の点であって、点P1よりも移動ロボット1から対象物Wの前端側に遠ざかる点である。図示例では、点P2は、点P1から、対象物座標系のX軸方向で対象物Wの前端側に(移動ロボット1から遠ざかる方向に)所定距離だけ移動した点である。この場合、点P1,P2を結ぶ線分上の任意の点を中心にして、対象物Wおよび移動ロボット1の全体をヨー軸まわり(Z軸まわり)に回転させた場合を想定すると、該対象物Wおよび移動ロボット1の全体の外郭の最大回転半径(対象物Wおよび移動ロボット1の全体のうち、当該回転中心から最も離れた部分の回転半径)は、当該回転中心が、点P2に近いほど、小さくなる。従って、点P2は、点P1,P2を結ぶ線分上の点のうち、その点を中心にして、対象物Wおよび移動ロボット1の全体をヨー軸まわり(Z軸まわり)に回転させた場合に、該対象物Wおよび移動ロボット1の全体の外郭の最大回転半径が最も小さくなるような点である。本実施形態では、点P2は、上記線分上の点を含めたあらゆる点のなかで、当該最大回転半径が最小(最小に近い場合を含む)となるような点に設定されている。
【0050】
そして、STEP5の処理では、制御装置41は、STEP3で算出した対象物Wの目標姿勢の変化量が所定量以下である場合、すなわち、該変化量に係わる前記所定期間における目標位置軌道により規定される対象物Wの目標経路が直線もしくはそれに近い経路であって、該所定期間内での目標姿勢の変化量が微小である場合には、対象物Wの代表点の位置を前記点P1の位置に設定する。また、対象物Wの目標姿勢の変化量が、所定量を超える場合には、該変化量が大きいほど、対象物Wの代表点の位置を、前記点P2に近づけるように(移動ロボット1からX軸方向で遠ざけるように)、該目標姿勢の変化量に応じて対象物Wの代表点の位置を設定する。
【0051】
ただし、制御装置41は、対象物Wの代表点の位置を変化させる場合には、現在の代表点の位置から目標姿勢の変化量に応じた代表点の位置まで徐々に変化させるように該代表点の位置を設定する。
【0052】
このように対象物Wの代表点の位置を可変的に設定することにより、例えば図4に示す区間D1、D5のように、目標位置軌道により規定される対象物Wの目標経路が直線もしくはほぼ直線となる区間(目標姿勢の変化量が所定量以下となる区間)では、対象物Wの代表点の位置が、点P1の位置に設定される。また、図4に示す区間D3のように、目標経路が比較的急激に曲がる区間(目標姿勢の変化量が所定量を超える区間)では、対象物Wの代表点の位置が、点P1よりも、対象物Wの前端側に移動ロボット1から遠ざかる位置(ただし、前記点P1とP2とを結ぶ線分上の位置)に設定される。さらに、図4に示す区間D1とD3との間の区間D2において、対象物Wの代表点の位置が、点P1の位置(区間D1での位置)から区間D3での位置に向かって徐々に変化するように設定される。同様に、図4に示す区間D3とD5との間の区間D4において、対象物Wの代表点の位置が、区間D3での位置から区間D5での位置(点P1の位置)に向かって徐々に変化するように設定される。
【0053】
補足すると、以上説明したSTEP4の処理によって、本発明における対象物代表点設定手段が構成される。また、前記点P1,P2はそれぞれ、本発明における第1の点、第2の点に相当する。また、図4における区間D1,D5は、本発明における第1の区間に相当し、区間D3は、本発明における第2の区間に相当する。
【0054】
なお、図4では、対象物Wの目標経路がその途中で比較的大きく曲がる場合の例を示したが、目標経路の全体が直線もしくはそれに近い経路となる場合には、対象物Wの代表点の位置は、定常的に点P1の位置に設定される。また、対象物Wの目標経路がその途中に、対象物Wの代表点の目標位置がほぼ一定となり、且つ、目標姿勢が比較的大きく変化するような区間を有する場合、すなわち、対象物Wの位置をあまり動かさずに姿勢を変化させるような箇所を有する場合にはその箇所での対象物Wの代表点の位置は、点P2寄りの位置に設定される。
【0055】
このように対象物Wの代表点の位置を設定した後、制御装置41は、移動ロボット1の目標歩容を生成する(STEP5)。この場合、STEP4で設定した対象物Wの代表点の位置と、該対象物Wの姿勢とを、それぞれSTEP2で生成した目標位置軌道、目標姿勢軌道に追従させ、且つ、移動ロボット1の姿勢の安定性が保たれるように、移動ロボット1の目標歩容が生成される。このような目標歩容は、前記特許文献1に提案されている手法と同様の手法で生成することができる。この場合、該目標歩容は、各脚体5の足平15の目標位置姿勢軌道(足平15の目標位置および目標姿勢の時系列)、上体3の目標位置姿勢軌道(上体3の目標位置および目標姿勢の時系列)、目標ZMP軌道(いわゆるZMPの目標位置の時系列)、目標全床反力軌道(ロボット1に作用する全床反力の目標値の時系列)、各腕体7のハンド27の目標位置姿勢軌道(ハンド27の目標位置および目標姿勢の時系列)などから構成される。なお、ここでのZMPは、移動ロボット1に作用する重力と、該移動ロボット1の運動によって発生する慣性力と、該移動ロボット1が対象物Wから受ける反力との合力のモーメントが、その鉛直軸まわり成分を除いて0となるような床面上の点を意味する。
【0056】
次いで、制御装置41は、このように生成した移動ロボット1の目標歩容に応じて、移動ロボット1の脚体5,5および腕体7,7の各関節アクチュエータ35を制御する(STEP6)。具体的には、目標歩容に応じて脚体5,5および腕体7,7の各関節の目標変位量を決定し、その目標変位量に応じて、各関節アクチュエータ35の操作量を決定する。そして、その操作量に応じて各関節アクチュエータ35を制御する。
【0057】
以上説明したSTEP1〜6の処理が所定の演算処理周期で逐次実行される。これにより、対象物Wの代表点の位置と、対象物Wの姿勢とをそれぞれ目標位置軌道、目標姿勢軌道に追従させるように、移動ロボット1の動作が制御され、該移動ロボット1による対象物Wの移動作業が行われる。
【0058】
かかる本実施形態によれば、図4の区間D1,D5のように、対象物Wのヨー軸まわりの目標姿勢が一定もしくはほぼ一定に保たれる区間(所定期間あたりのヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が所定量以下となる区間)では、対象物Wの代表点の位置が対象物Wの移動ロボット1側の一端寄り(後端寄り)の点P1の位置に設定される。このため、該代表点を通るヨー軸まわりにおける対象物Wの慣性モーメントが比較的大きなものとなる。ひいては、対象物Wの姿勢の安定性が高まる。また、対象物Wのヨー軸まわりの姿勢が目標姿勢に対してずれを生じた場合に、そのずれを解消するための、移動ロボット1の横方向(対象物Wの目標経路にほぼ直交する方向)への移動量が微小で済む。
【0059】
このため、対象物Wの移動速度を高めつつ、対象物Wの姿勢を安定に目標姿勢軌道に追従させることができる。
【0060】
また、図4の区間D3のように、対象物Wのヨー軸まわりの目標姿勢が比較的大きく変化する区間(所定期間あたりのヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が所定量を超える区間)では、対象物Wの代表点の位置が、前記点P1から点P2側にずれた位置に設定される。このため、対象物Wの代表点を通るヨー軸まわりに対象物Wを回転させて、該対象物Wの姿勢を変化させる際に、対象物Wおよび移動ロボット1の全体の外郭の最大回転半径を小さくできる。ひいては、対象物Wおよび移動ロボット1の全体の移動領域の幅(対象物Wの目標経路に対して横方向の幅)を小さくすることができる。この結果、比較的狭い通路で、対象物Wを旋回させるような場合でも、該対象物Wや、移動ロボット1が対象物Wの目標経路の側方の障害物に衝突するのを回避することができる。さらに、対象物Wの代表点を通るヨー軸まわりの慣性モーメントを、該代表点が点P1の位置に設定される場合よりも小さくなるので、対象物Wの姿勢の変化を容易に行なうことができる。また、当該区間での対象物Wの代表点の位置は、対象物Wの目標姿勢の変化量が小さいほど、前記点P1に近い位置に設定されるので、目標姿勢の変化量がさほど大きくない区間では、対象物Wの姿勢が目標姿勢からずれた場合における移動ロボット1の横方向の移動量が比較的小さなもので済む。このため、対象物Wの移動速度の低下を必要最小限に留めることができる。
【0061】
また、対象物Wの代表点の位置を変化させるときには、その変化を徐々に行なうので、移動ロボットの動作が急激に変化するのを抑制できる。
【0062】
なお、本発明の実施形態は、以上説明した実施形態に限られるものではなく、種々の変形態様が可能である。以下にその変形態様の例をいくつか説明する。
【0063】
移動ロボットは二足移動ロボット以外の形態の移動ロボットであってもよい。例えば、3つ以上の脚体を有する脚式移動ロボットや、複数の回転自在な球体を床に接地させて、該球体の回転によって移動するような移動ロボットについても本発明を適用できる。移動ロボットは、その進行方向をヨー軸まわりに変更し得るものであればよい。
【0064】
また、移動ロボットは、3つ以上の腕体を有する移動ロボットや、1つの腕体だけを有する移動ロボットであってもよい。さらに、腕体は、その先端部だけが移動ロボットの基体に対して動き得るような腕体であってもよい。
【0065】
また、対象物の一端寄りの部位に接触させる移動ロボットの腕体の先端部は、必ずしも、該部位を把持するように構成されている必要はない。例えば、腕体の先端部が、対象物の一端寄りの面部に単に接触するように構成されていたり、あるいは、対象物の一端寄りの部位に嵌合するように構成されていてもよい。
【0066】
また、移動ロボットに移動させる対象物は、車輪を備えるものでなくてもよい。該対象物は、例えば、底面の平坦部分が床面に直接的に接触するような物体(例えば、単なる箱状の物体)であってもよい。さらに、対象物を床面に接触させずに、移動させるようにしてもよい。例えば、長尺な板などの物体の一端寄りの部位を移動ロボットの腕体により保持し、該物体の全体を床から持上げた状態で、該物体を移動させるような場合にも本発明を適用できる。本発明は、特に、移動ロボットの腕体の先端部を接触させる一端寄りの部位と、他端との間の長さが比較的長いものとなるような物体を移動させる場合に好適である。
【0067】
また、3つ以上の脚体を有する移動ロボットや、複数の回転自在な球体を床に接地させて移動する移動ロボットのように、安定性の高い移動ロボットにより対象物を移動させる場合には、該対象物の移動を開始する前に、その移動の全行程における対象物の目標位置軌道および目標姿勢軌道を作成しておいてもよい。その作成は、移動ロボットの外部のサーバなどで行なうようにしてよい。さらに、このように、対象物の移動の全行程における対象物の目標位置軌道および目標姿勢軌道を対象物の移動開始前に作成する場合、対象物の移動開始前に、その移動の全行程における対象物の代表点の位置をあらかじめ設定しておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態の移動ロボットと対象物との外観斜視図。
【図2】実施形態の移動ロボットの動作制御に関するシステム構成を示すブロック図。
【図3】実施形態の移動ロボットに備えた制御装置の処理を示すフローチャート。
【図4】実施形態の作動を説明するための図。
【図5】図5(a),(b)は従来の課題を説明するための図。
【符号の説明】
【0069】
1…移動ロボット、7…腕体、27…ハンド(腕体の先端部)、W…対象物、Wb…バー(対象物の所定の部位)、41…制御装置、STEP4…対象物対象点設定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕体の先端部を対象物の一端寄りの所定の部位に接触させた状態で、該対象物の代表点の位置と該対象物の姿勢とをそれぞれ目標位置軌道、目標姿勢軌道に追従させるように該対象物を移動させる作業を行う移動ロボットの制御装置であって、
前記対象物をヨー軸方向で見たときの該対象物の代表点の、該対象物に対して固定された対象物座標系での位置を、少なくとも前記目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化に応じて可変的に設定する対象物代表点設定手段を備えたことを特徴とする移動ロボットの制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の移動ロボットの制御装置において、前記対象物代表点設定手段は、前記目標位置姿勢軌道により規定される前記対象物の代表点の空間的な目標経路のうち、前記目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が所定量以下となる第1の区間では、該対象物の一端寄りの位置に該対象物の代表点を設定することを特徴とする移動ロボットの制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の移動ロボットの制御装置において、前記対象物代表点設定手段は、前記目標経路のうち、前記目標姿勢軌道におけるヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が所定量を超える第2の区間では、前記第1の区間で設定する前記対象物の代表点の位置と該対象物の他端との間で、前記第1の区間で設定する前記対象物の代表点の位置よりも前記移動ロボットから遠ざかる位置に該対象物の代表点の位置を設定することを特徴とする移動ロボットの制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の移動ロボットの制御装置において、前記対象物代表点設定手段は、前記対象物の一端寄りの位置にあらかじめ設定された第1の点と、該第1の点と該対象物の他端との間で該第1の点よりも前記移動ロボットから遠ざかる位置にあらかじめ設定された第2の点とを結ぶ線分上で、前記対象物の代表点の位置を設定すると共に、前記第1の区間では、該対象物の代表点の位置を前記第1の点の位置に設定し、前記第2の区間では、該対象物の代表点の位置が前記ヨー軸まわりの目標姿勢の変化量が大きいほど、前記第2の点の位置に近くなるように、該目標姿勢の変化量に応じて該対象物の代表点の位置を設定する手段であり、前記第2の点は、前記線分上の点のうち、その点を中心として、前記移動ロボットおよび対象物の全体をヨー軸まわりに回転させた場合における該移動ロボットおよび対象物の外郭の最大回転半径が最小となる点であることを特徴とする移動ロボットの制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の移動ロボットの制御装置において、前記対象物代表点設定手段は、前記対象物の代表点の位置を変化させるとき、該代表点の位置を徐々に変化させることを特徴とする移動ロボットの制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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