説明

脚部付き建材

【課題】横方向ラップ部を有する脚部付き建材において、側面に印字された製品情報の読み取りが容易で、保管や運搬を効率良く行える建材を提供する。
【解決手段】長方形の平板部2と、該平板部2の一方の短辺側より平板部に平行に突出し、表面が該平板部2の裏面の高さに位置する横方向ラップ部4と、該平板部2の一方の長辺より垂下する垂部3と、他方の長辺近傍であって平板部2の裏面に複数の脚部7を有し、該脚部7の少なくとも一対が横方向ラップ部4を含む長手方向の中心から左右等距離の位置となるように該脚部7を付設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根や外壁、内壁に用いられる建材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根材や外壁の外装部材、内壁の内装部材として、特許文献1に開示された脚部付きの屋根材が知られている。従来の脚部付きの建材は、図10に示すように、長方形の平板部2と、該平板部2の一方の短辺側より突出する横方向ラップ部4と、一方の長辺より垂下する垂部3と、平板部2の裏面側において、他方の長辺近傍に位置する複数の脚部7を有している。図中、(a)はかかる建材を裏面から見た図、(b)は脚部7を備えた長辺側から見た図である。また、(c)は2枚の建材を裏面同士を相対して重ね合わせた状態の側面図であり、便宜上、垂部3を省略している。
【0003】
図10(a)に示されるように、従来の脚部付き建材においては、平板部2の長手方向の中心から左右に等しい距離(D,E)にそれぞれ脚部7を有していた。
【0004】
【特許文献1】特開2002−276079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図10の示した従来の脚部付き建材は、垂部3同士をつき合わせるように2枚の建材を裏面同士を相対して外周を一致させて重ねた際に、横方向ラップ部4の長さだけ長手方向にずれが生じるため、図10(c)に示すように、脚部7の位置が互い違いになり、この2枚一組の状態で複数組を積み上げようとすると、図11に示すように、荷姿が直方体状にならず、保管や運搬の際に不便であった。
【0006】
例えば、図10(c)の状態でバンド掛けしたものを梱包単位として、保管場所や運搬荷台上に並べると、梱包単位間に無駄な空間が生じ、保管や運搬の効率が悪かった。また、梱包単位の上面が傾斜しているため、梱包単位の上にさらに別の梱包単位を載せることができず、載せたとしても図11の如く上面の傾斜が増すだけであり、極めて不安定であった。また、図12に示すように梱包単位を脚部の位置が順次逆になるように、平面方向で180°回転させながら積み重ねた場合、積層作業や開梱作業が繁雑になる上、どの側面においても梱包単位毎に向きが逆になるため、側面に印字された製品情報を読み取りにくいという問題があった。
【0007】
さらに、図13に示すように、建材を全て同じ向きで積み重ねた場合には直方体状に梱包することが可能であるが、脚部や垂部の下端が下方の建材の平板部表面に接触するため、建材間に合紙などを挟んだとしても該平板部の表面に傷が付きやすいという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、横方向ラップ部を有する脚部付き建材において、側面に印字された製品情報の読み取りが容易で、保管や運搬を効率良く行える建材を提供することにあり、具体的には、2枚の建材を垂部同士をつき合わせるように裏面同士を相対して重ねて直方体状に梱包することが可能な脚部付き建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長方形の平板部と、該平板部の一方の短辺側より平板部に平行に突出し、表面が該平板部の裏面の高さと等しいかそれよりも低い横方向ラップ部と、該平板部の一方の長辺より垂下する垂部と、他方の長辺近傍であって平板部の裏面に複数の脚部を有し、該脚部の少なくとも一対が横方向ラップ部を含む長手方向の中心から左右等距離の位置にあることを特徴とする脚部付き建材である。
【0010】
本発明においては、平板部表面から垂部下端までの長さと、平板部表面から脚部下端までの長さが等しいことが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、上記横方向ラップ部を含む長手方向の中心から左右等距離の位置にある一対の脚部の、上記長手方向中心からの距離が該長手方向の長さの1/4以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2枚の建材を垂部同士をつき合わせるように裏面同士を相対して重ね合わせて直方体状の梱包単位を構成することができるため、保管や輸送を効率良く行うことができ、また、複数の梱包単位を安定して積み重ねることができる上、積み重ねた梱包単位の全ての建材の側面に印字された製品情報が同じ方向を向くため、製品管理も容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に本発明の脚部付き建材1の好ましい実施形態の斜視図を、図2(a)に平面図を、図2(b)に裏面図を、図2(c)に脚部側から見た側面図をそれぞれ示す。本発明の建材1は、図1、図2に示すように、長方形の平板部2と、該平板部2の一方の短辺側より突出する横方向ラップ部4と、該平板部2の一方の長辺より垂下する垂部3と、他方の長辺近傍であって平板部2の裏面に設けられた複数の脚部7を有している。尚、図1においては、横方向ラップ部4を、平板部2の左側に設けているが、右側に設けてもよい。
【0014】
横方向ラップ部4は、平板部2に平行に突出しており、横方向ラップ部4の表面が平板部2の裏面の高さに等しいかそれよりも低い位置に位置するように、平板部2の厚さ分以上低い位置に設けられている。よって、かかる建材1を屋根或いは壁面に取り付ける際には、建材の長手方向に隣接する2枚の建材において、一方の建材の横方向ラップ部4が他方の建材の平板部2の下方の空間に入り込んで、該横方向ラップ部4と平板部2の端部とが重なり合う。
【0015】
本例は横方向ラップ部4の表面が平板部2の裏面の高さに等しい形態であり、図14(a)に示すように、隣接する2枚の建材の隣接部分においては、紙面左側の建材の平板部2bが紙面右側の建材の横方向ラップ部4aの上に重なり合う。本発明においては、特にこの形態に限定されるものではなく、例えば、図14(b)に示すように、平板部2aに連結されている側の横方向ラップ部4aの表面が平板部2aの裏面の高さよりも低くなるように形成し、該横方向ラップ部4aの平板部2aに連結されていない側(紙面左側)の端部に上端が平板部2aの裏面の高さに相当する突出部を、さらに平板部2b(2aも同様)の、横方向ラップ部(不図示)が連結されていない側(紙面右側)の端部に下端が横方向ラップ部4aの表面に相当する突出部を、それぞれ形成することにより、隣接する2枚の建材の平板部2bの端部と横方向ラップ部4aとが、所定の空間をあけて重なり合う形態としても良い。この場合、いずれか一方が他方より離れる方向にずれたとしても、上記突出部が互いに係合して完全に離脱する恐れが無くなり、施工作業上好ましい。また、横方向ラップ部4aの端部の突出部により、互いに隣接する屋根材の平板部2aと2bの境界から侵入した雨水が屋根材の下方に流れ込むのを堰き止めて、該雨水を軒側に排出することができる。
【0016】
本発明の建材1においては、平板部2の裏面の垂部3がない側の長辺近傍に付した複数の脚部7のうち少なくとも一対の脚部7が、横方向ラップ部4を含む長辺側の中心から左右等距離の位置にあり、図2の例においては、横方向ラップ部4を含む長手方向の中心から左右等距離(A,B)の位置にそれぞれ1個、合計で2対の脚部7を有する。また、図2の例では、横方向ラップ部4を含む長手方向の中心にも脚部7を有する。
【0017】
図3は図1の建材1を横方向ラップ部4がない側の平板部2の短辺側から見た側面図であるが、本発明においては図3に示されるように、平板部2の表面から垂部3の下端までの距離t1が平板部2の表面から脚部7の下端までの距離t2に等しいことが望ましい。
【0018】
このような構成の建材1を2枚、互いの垂部3同士がつき合わさるように裏面同士を相対して外周を一致させて重ね合わせた状態を図4に示す。図4(a)は長手方向から、(b)は短辺側から見た側面図であり、図4(a)においては垂部3を、図4(b)においては横方向ラップ部4を、便宜上省略する。図4(a)に示すように、本発明の建材1を2枚重ね合わせると、互いの脚部7の下端同士がつき合わさる。また、上記したように、図3におけるt1=t2であると、図4(b)に示すように垂部3側と脚部7側の高さが一致するため、2枚一組で直方体状の梱包単位が構成される。
【0019】
かかる梱包単位は直方体状となり高さが一定であるため、図5に示すように、水平面上に同じ向きで且つ安定して積み重ねることができる。また、積み重ねた状態でも直方体状であり、この状態でいずれを上に向けても直方体状となるため保管や運搬を効率良く行うことができる。また、平板部2の損傷や汚染を防止するために、平板部2同士が相対するように2枚の建材を重ねた状態を梱包単位として複数の梱包単位を積み重ねることにより、最も外側の建材は脚部が外側に向くように配置しても良い。
【0020】
また、重なり合う建材間に合紙を挟むことにより、保管や運搬の際に互いに擦れることによる汚染や損傷を防止することができる。尚、合紙としては紙や段ボールなどの他、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ウレタンなどの樹脂シートが好ましく用いられる。
【0021】
尚、本発明の建材において、横方向ラップ部4を含む長手方向の中心から等距離にある脚部7は少なくとも一対であれば良く、また、かかる脚部7の少なくとも一対が、該中心から該長手方向の長さ(L1)の1/4以上の位置にあると、積み重ねたり、並べたりした際の荷姿の安定性が向上する。さらに、該脚部7を、平板部2の垂下する垂部3を有する長辺と対向する長辺の近傍に配置すると、積み重ねた際の荷姿の安定性が向上する。
【0022】
図6に、本発明の建材の別の実施形態の構成を示す。図中(a)は裏面図を、(b)に2枚の建材を重ね合わせた梱包単位の側面図を示す。尚、(b)においては便宜上垂部3を省略する。
【0023】
本例の建材においては、一対の脚部7が横方向ラップ部4を含む長手方向の中心から左右等距離の位置にあり、かかる距離Cにある脚部7以外の脚部7は長手方向の中心から反対側の等距離に位置する脚部7がないため、図6(b)に示すように2枚の建材を垂部3同士をつき合わせ、裏面同士を相対して重ね合わせた際に、上記距離Cにある脚部7同士はつき合わさるが、他の脚部7は浮いたままとなる。
【0024】
図2に示した例では、2対の脚部7が横方向ラップ部4を含む長手方向の中心から左右等距離の位置にあったが、本発明においては、図6に示されるように、横方向ラップ部4を含む長手方向の中心から左右等距離の位置にある脚部対は少なくとも1対あれば良い。脚部の数は建材の質量、寸法、強度、さらには施工中又は施工後の建材に働く外力、例えば風荷重や積雪荷重、施工中の積載荷重などを考慮して適宜設計すればよい。
【0025】
また、図6の如く横方向ラップ部4を含む長手方向の中心から左右等距離の位置にある脚部が一対の場合には、かかる一対の脚部の上記中心からの距離(C)が、上記したように、横方向ラップ部4を含む長手方向の長さ(L1)の1/4以上であることが好ましい。
【0026】
本発明の建材は、建物の屋根や外壁の外装部材や、内壁の内装部材として用いられるものであり、セメント系の素材を型を用いてプレス成形して得られるが、素材としては、瓦用の粘土、金属、合成樹脂などのいずれでも良く、型への流し込みによって成形しても良い。また、板金を折り曲げて立体的に成形したり、脚部や垂部、横方向ラップ部については、平板部とは別に成形して、ボルトやリベット、溶接などによって後付しても良い。また、板金の裏側に、発泡ポリスチレンや発泡ポリエチレン、発泡ウレタンなどの裏打ち材を敷設したものを用いても良い。さらに、平板部の表面は平滑でもよいが、意匠性を良くするために凹凸を有する模様をつけても良い。また、建材表面に塗装を施して意匠性を高めても良い。
【0027】
図7に本発明の建材1を屋根に取り付けた状態の部分斜視図を、図8にその状態での軒・棟方向の断面模式図を、図9に外壁に取り付けた状態の鉛直方向の断面模式図を示す。図中、8は屋根の野地板、9は外壁の下地材である。尚、屋根の野地板8や外壁の下地材9の上には防水シートが敷設される場合もある。
【0028】
本発明の建材は、図7〜図9に示すように、長手方向を水平方向として横方向ラップ部に隣接する建材の平板部を重ね合わせて平板部が連続するように並べ、屋根の場合には軒・棟方向においては垂部を軒側に向け、該垂部を軒側に配置した建材の平板部の上に載せて並べる。また、壁に用いる場合には垂部を下方に向け、該垂部を下方に配置した建材の平板部の上に載せて並べる。かかる建材1は止着孔(図1の5)を介して釘やビスで野地板8や下地材9に固定される。
【0029】
本発明の建材1は脚部を有していることから、建材1と野地板8や下地材9との間に通気層が形成されるため、建材1や野地板8、下地材9の湿気による腐食を防ぐことができる。また、建材1の継ぎ目から建材1と野地板8や下地材9の間に雨水などが浸入しても、建材1で水を塞き止めることがなく、速やかに軒側に排出することができる。
【0030】
また、本発明の建材1は、垂部を有していることから建材の見かけの厚さを実際の素材の厚さ以上に見せることができる。例えば、平板部の厚さが4〜9mmであっても、垂部の高さ(図3のt1)を25mmにすれば、施工後の建材の見かけ上の厚さは25mmとなる。これにより、建材を軽量化すると同時に重量感を表現することができ、意匠上、有利である。
【0031】
本発明の建材は、屋根材として好ましく用いられるものであるが、さらに、表面に太陽電池パネルを搭載した形態でも好ましく用いられるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、建物の屋根や外壁、内壁に用いられる建材に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の脚部付き建材の斜視図である。
【図2】本発明の脚部付き建材の平面図、裏面図及び側面図である。
【図3】本発明の脚部付き建材の側面図である。
【図4】本発明の脚部付き建材の梱包単位の側面図である。
【図5】本発明の脚部付き建材を複数の梱包単位で積み重ねた状態を示す図である。
【図6】図1とは異なる構成の本発明の脚部付き建材を示す図である。
【図7】本発明の脚部付き建材を屋根に取り付けた状態を示す部分斜視図である。
【図8】本発明の脚部付き建材を屋根に取り付けた状態の断面模式図である。
【図9】本発明の脚部付き建材を外壁に取り付けた状態の断面模式図である。
【図10】従来の脚部付き建材を示す図である。
【図11】従来の脚部付き建材を複数の梱包単位で積み重ねた状態を示す図である。
【図12】従来の脚部付き建材を複数の梱包単位で積み重ねた状態を示す図である。
【図13】従来の脚部付き建材を複数積み重ねた状態を示す図である。
【図14】本発明の脚部付き建材2枚を水平方向に並べた際の横方向ラップ部と平板部との重合部分における断面模式図である。
【符号の説明】
【0034】
1 脚部付き建材
2、2a、2b 平板部
3 垂部
4、4a 横方向ラップ部
5 止着孔
6 空間
7 脚部
8 野地板
9 下地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の平板部と、該平板部の一方の短辺側より平板部に平行に突出し、表面が該平板部の裏面の高さと等しいかそれよりも低い横方向ラップ部と、該平板部の一方の長辺より垂下する垂部と、他方の長辺近傍であって平板部の裏面に複数の脚部を有し、該脚部の少なくとも一対が横方向ラップ部を含む長手方向の中心から左右等距離の位置にあることを特徴とする脚部付き建材。
【請求項2】
平板部表面から垂部下端までの長さと、平板部表面から脚部下端までの長さが等しい請求項1に記載の脚部付き建材。
【請求項3】
上記横方向ラップ部を含む長手方向の中心から左右等距離の位置にある脚部の少なくとも一対の、上記長手方向中心からの距離が該長手方向の長さの1/4以上である請求項1又は2に記載の脚部付き建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−127934(P2008−127934A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316868(P2006−316868)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】