説明

脱塩システム及び方法

脱塩システムは、脱塩のために第1の流れを受容しイオン化するように構成された電気的分離装置及び結晶化装置を含んでいる。結晶化装置は、第2の流れを電気的分離装置に提供して第1の流れからのイオンを運び去るように構成されており、イオンの析出を促進するための結晶化ゾーンと、析出物の分離のために結晶化ゾーンと流体連通した固液分離ゾーンとを画成する。脱塩方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、脱塩システム及び方法に関する。具体的には、本発明は、電気的分離(E分離)要素を使用する脱塩システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業プロセスでは、塩水溶液のような大量の廃水が生成する。一般に、かかる塩溶液は家庭用又は工業用に直接消費するのに適していない。適格の水源が限られていることから、一般に脱塩といわれる廃水、海水又はかん水の脱イオン化又は脱塩が淡水製造の選択肢の一つとなっている。
【0003】
現在のところ、水源を脱イオン化又は脱塩するのに、蒸留、気化、逆浸透及び部分凍結のようないろいろな脱塩プロセスが使用されている。しかし、かかるプロセスでは効率が悪くエネルギー消費が高い可能性があり、そのため広く実施するのが阻まれ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6030535号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、廃水又はかん水の脱塩のための新しい改良された脱塩システムと方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態では、脱塩システムが提供される。この脱塩システムは、脱塩のために第1の流れを受容するように構成された電気的分離装置と結晶化装置を含む。結晶化装置は、第1の流れから除去されたイオンを運び去るために第2の流れを電気的分離装置に提供するように構成されており、イオンの析出を促進するための結晶化ゾーンを画成する。結晶化装置はさらに析出物の分離のための結晶化ゾーンと流体連通した固液分離ゾーンを画成する。
【0007】
本発明の別の実施形態では、脱塩方法が提供される。この脱塩方法は、第1の流れを脱塩のために電気的分離装置に通し、結晶化装置からの第2の流れを電気的分離装置に通して第1の流れから除去された塩を運び去ることを含んでいる。結晶化装置は、イオンの析出を促進するための結晶化ゾーンと、析出物の分離のために結晶化ゾーンと流体連通した固液分離ゾーンを画成する。
【0008】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、図面と併せて本発明の好ましくは実施形態に関する以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る脱塩システムの概略図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るスーパーキャパシタ脱塩(SCD)装置と結晶化装置を含む脱塩システムの概略図である。
【図3】図3は、本発明の別の実施形態に係る脱塩システムの概略図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る逆電気透析(EDR)装置と結晶化装置を含む脱塩システムの概略図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態に係る脱塩システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に関連して、本開示の好ましい実施形態について記載する。以下の記載では、不要な詳細により本開示を不明瞭にするのを避けるために周知の機能又は構成・構造について詳細には記載しない。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る脱塩システム10の概略図である。図示した例の場合、脱塩システム10は電気的分離(E分離)装置11及びE分離装置11と流体連通した結晶化装置12を含んでいる。
【0012】
本発明の様々な実施形態では、E分離装置11は、(図1に示すように)脱塩のために液体源(図示せず)からの塩その他の不純物のような荷電種を有する第1の流れ13を受容するように構成されている。従って、E分離装置11から出る希薄な液体であり得る出力流(生成物流)14は、流れ13よりも低い濃度の荷電種を有し得る。幾つかの例では、出力流14は、さらなる脱塩のために、E分離装置11内に循環させるか又は他のE分離装置内に送られてもよい。
【0013】
結晶化装置12は、第1の流れ13の脱塩中又はその後、入力流13から除かれた荷電種(陰イオン及び陽イオン)をE分離装置11から運ぶようにE分離装置11内に循環される液体15を提供するように構成されている。従って、流出流(濃縮流)16は結晶化装置12からE分離装置11内に入る第2の流れ17よりも高濃度の荷電種を有し得る。液体15の循環が続くにつれて、塩その他の不純物の濃度は液体15中で飽和又は過飽和になるように連続的に増大する。その結果、飽和又は過飽和の程度は、析出が起こり始める点に達し得る。
【0014】
幾つかの応用において、初期の(第1の)流れ13及び初期の(第2の)流れ17は同じ塩又は不純物を含んでいてもいなくてもよく、また、同じ濃度の塩又は不純物を有していてもいなくてもよい。他の例では、最初の(第2の)流れ内の塩又は不純物の濃度は飽和でも過飽和でもよい。
【0015】
幾つかの実施形態では、E分離装置11はスーパーキャパシタ脱塩(SCD)装置を含み得る。用語「SCD装置」は、一般に、海水の脱塩又は他のかん水の脱イオン化で、塩その他のイオン化された不純物の量を家庭用及び産業用途に許容されるレベルまで低減するために使用されるスーパーキャパシタを示し得る。
【0016】
ある種の応用において、スーパーキャパシタ脱塩装置は1以上のスーパーキャパシタ脱塩セル(図示せず)を含み得る。公知のように、非限定例では、各々のスーパーキャパシタ脱塩セルは、少なくとも、一対の電極、スペーサー及びそれぞれの電極に取り付けられた一対の集電器を含み得る。互いに積み重ねた2以上のスーパーキャパシタ脱塩セルを使用する場合、各一対の隣接するSCDセル間に複数の絶縁セパレーターを配置し得る。
【0017】
本発明の様々な実施形態では、集電器は、それぞれ電源(図示せず)の正及び負の端子に接続し得る。電極はそれぞれの集電器と接触しているので、電極はそれぞれアノード及びカソードとして機能し得る。
【0018】
スーパーキャパシタ脱塩装置11の充電状態の間、電源からの正負の電荷がそれぞれアノード(複数でもよい)及びカソード(複数でもよい)の表面に蓄積する。従って、第1の流れ13(図1に示されている)のような液体が脱塩のためにSCD装置11を通るとき、正負の電荷がイオン化された第1の流れ13中の陰イオン及び陽イオンを引き付けてそれぞれアノード(複数でもよい)とカソード(複数でもよい)の表面に吸着させる。アノード(複数でもよい)とカソード(複数でもよい)上への電荷の蓄積の結果として、出力流14のような流出流は第1の流れ13よりも低い塩分濃度を有し得る。幾つかの例ではは、この希薄な流出流を別のSCD装置に供給することによって再び脱イオン化に付してもよい。
【0019】
次に、スーパーキャパシタ脱塩装置11の放電状態において、吸着された陰イオンと陽イオンがそれぞれアノード(複数でもよい)とカソード(複数でもよい)の表面から分離する。従って、第2の流れ17のような液体がSCD装置11を通るとき、脱着された陰イオンと陽イオンはSCD装置11から運び去られ得、その結果流出流16のような出力液体は第2の流れ17よりも高い塩分濃度を有し得る。液体を循環させて放電状態のSCD装置に通すと、液体15中の塩その他の不純物の濃度は析出を生じるように増大する。SCD装置の放電が終わったら、次の放電の準備のためにSCD装置を一定期間充電状態にする。すなわち、第1の流れ13と第2の流れ17をそれぞれ処理するためにSCD装置の充電と放電を交互に行う。幾つかの例では、放電状態で放出されたエネルギーは、電球のような電気装置(図示せず)を駆動させるのに使用できるし、或いは双方向のDC−DC変換器のようなエネルギー回収セルを用いて回収し得る。
【0020】
他の非限定例では、互いに積み重ねたSCDセルと同様に、スーパーキャパシタ脱塩装置11は、充電状態で第1の流れ13を、そして放電状態で第2の流れ17を処理するために、一対の電極、それぞれの電極に取り付けられた一対の集電器、一対の電極間に配置された1以上の双極性電極及び各対の隣接する電極間に配置された複数のスペーサーを含み得る。各双極性電極はイオン不透過性層で分離された正の面と負の面を有する。
【0021】
幾つかの実施形態では、集電器は、プレート、メッシュ、フォイル又はシートとして構成され得、金属又は合金から形成され得る。金属としては、例えばチタン、白金、イリジウム又はロジウムが挙げられる。合金としては、例えばステンレス鋼が挙げられる。他の実施形態では、集電器はグラファイト又はポリエチレンを始めとし得るポリオレフィンのようなプラスチック材料からなり得る。幾つかの応用において、プラスチック集電器には、一定のレベルの導電性を得るために導電性カーボンブラック又は金属粒子を混合し得る。
【0022】
電極及び/又は双極性電極は熱伝導性であってもなくてもよい電気伝導性材料を含み得、小さめの大きさと大きな表面積の粒子を有し得る。幾つかの例では、電気伝導性材料には1種以上の炭素材料が含まれ得る。炭素材料の非限定例としては、活性炭粒子、多孔質炭素粒子、炭素繊維、炭素エーロゲル、多孔質メソカーボンマイクロビーズ又はこれらの組合せがある。他の例では、電気伝導性材料には、マンガン若しくは鉄若しくは両者の酸化物又はチタン、ジルコニウム、バナジウム、タングステン若しくはこれらの組合せの炭化物のような導電性複合材が含まれ得る。
【0023】
さらに、スペーサーは一対の電極を分離するために膜及び多孔質及び非多孔質材料を含めていかなるイオン透過性で電子的に非伝導性の材料からなってもよい。非限定例では、スペーサーは処理用の液体が一対の電極間を通るための流路を形成する空間を有し得るか又は自身がそのような空間であり得る。
【0024】
幾つかの例では、電極、集電器及び/又は双極性電極は、互いに平行に配置されて積み重ねた構造体を形成するプレートの形態であり得る。他の例では、電極、集電器及び/又は双極性電極はシート、ブロック又はシリンダーのような様々な形状を有し得る。さらに、電極、集電器及び/又は双極性電極は様々な構成で配列され得る。例えば、電極、集電器及び/又は双極性電極は螺旋状で連続的な空間を間に有する同心円状に配置され得る。スーパーキャパシタ脱塩装置のその他の説明は米国特許出願公開第20080185346号(援用によりその全体が本明細書の一部をなす)に見ることができる。
【0025】
ある種の配列の場合、E分離装置11は逆電気透析(EDR)装置(図示せず)を含み得る。用語「EDR」は、イオン交換膜を使用してイオン又は荷電種を水及びその他の流体から除く電気化学分離プロセスを示し得る。
【0026】
公知のように、幾つかの非限定例では、EDR装置はそれぞれアノード及びカソードとして機能するように構成された一対の電極を含む。アノードとカソードとの間に複数の交互の陰イオン及び陽イオン透過膜を配置して複数の交互の希薄及び濃縮チャンネルをその間に形成する。陰イオン透過膜(複数でもよい)は陰イオンが通過できるように構成されている。陽イオン透過膜(複数でもよい)は陽イオンが通過できるように構成されている。また、EDR装置はさらに、各一対の膜の間及び電極と隣接する膜との間に配置された複数のスペーサーを含み得る。
【0027】
従って、EDR装置11に電流が流れる一方で、(図1に示すような)流れ13と17のような液体がそれぞれの交互の希薄及び濃縮チャンネルをそれぞれ通る。希薄チャンネル内では、第1の流れ13がイオン化される。第1の流れ13内の陽イオンは陽イオン透過膜を通ってカソードの方へ移行して隣接するチャンネル内に入る。陰イオンは陰イオン透過膜を通ってアノードの方へ移行して他の隣接するチャンネルに入る。希薄チャンネルの両側に位置する隣接チャンネル(濃縮チャンネル)では、電場によりそれぞれの電極に向かう力がイオンにかかっている(例えば、陰イオンはアノードの方へ引き寄せられる)にもかかわらず、陽イオンは陰イオン透過膜を通って移行し得ず、陰イオンは陽イオン透過膜を通って移行し得ない。従って、陰イオンと陽イオンは濃縮チャンネル内にとどまり、濃縮される。
【0028】
その結果、第2の流れ17が濃縮チャンネルを通って、濃縮された陰イオンと陽イオンをEDR装置11から運び、従って流出流16は入力流よりも高い塩分濃度を有し得る。EDR装置11内の液体15の循環後、塩その他の不純物の析出が結晶化装置12内で起こり得る。
【0029】
幾つかの例では、EDR装置11の電極の極性を、例えば15〜50分毎に逆転させて濃縮チャンネル内での陰イオンと陽イオンの汚れ傾向を低減し得る。従って、逆転させた極性状態において、通常の極性状態からの希薄チャンネルは第2の流れ17に対して濃縮チャンネルとして機能し得、通常の極性状態からの濃縮チャンネルは第1の流れ13に対して希薄チャンネルとして機能し得る。
【0030】
幾つかの応用において、電極は、熱伝導性であってもなくてもよい電気伝導性材料を含み得、小さめの大きさと大きな表面積の粒子を有し得る。スペーサーは膜及び多孔質及び非多孔質材料を含むいかなるイオン透過性で電子的に非伝導性の材料からなってもよい。非限定例では、陽イオン透過膜は第四アミン基を含み得る。陰イオン透過膜はスルホン酸基又はカルボン酸基を含み得る。
【0031】
液体を処理するためにE分離装置11はいかなる特定のスーパーキャパシタ脱塩(SCD)装置又はいかなる特定の逆電気透析(EDR)装置にも限定されないことに留意されたい。さらにまた、上記で使用した「(複数でもよい)」とは、通常、その用語の単数と複数の両方を含めて意味しており、従って1以上のその用語を含むものである。
【0032】
図2は、スーパーキャパシタ脱塩(SCD)装置100と結晶化装置12を含む脱塩システム10の概略図である。図1〜図5で同じ数字は同様要素を表し得る。
【0033】
図示した構成の場合、充電状態中、液体源(図示せず)からの第1の流れ13はバルブ110を通り、脱塩のためにSCD装置100中に入る。この状態で、入力流17のSCD装置への流路はバルブ110内で閉じられている。SCD装置100から流れ出、使用のためにバルブ111を通る希薄な流れ(生成物流)14は第1の流れ13よりも低い濃度の塩その他の不純物を有する。幾つかの例では、希薄な流れはさらに処理するために再度SCD装置11に導いてもよい。
【0034】
放電状態において、第2の流れ17はポンプ18によって結晶化装置12から送られ、フィルター19とバルブ110を通ってSCD装置100に入り、イオン(陰イオンと陽イオン)を運び、流出流16はSCD装置100から流れバルブ111を通り、第2の流れ17よりも高い濃度の塩その他の不純物を有する。この状態において、SCD装置への入力流13の流路はバルブ110で閉じられている。さらに、フィルター19は、幾らかの粒子をろ過してSCD装置100の目詰まりを避けるように構成されている。幾つかの応用において、フィルター19は設置しなくてもよい。
【0035】
図2に描かれているように、結晶化装置12は、液体15(図1に示されている)を収容するために封じ込めゾーン(符号は付けてない)を画成するように構成された容器20と、封じ込めゾーンと流体連通してその内部に配置された結晶化ゾーン(符号は付けてない)を画成する結晶化要素21とを含んでいる。こうして、結晶化要素21と容器20の外壁との間に固液分離ゾーン200が固液分離のために画成されて、液体15が結晶化装置12からSCD装置100のようなE分離装置中に循環される前に、塩その他の不純物の析出粒子の一部が容器20の下部に沈殿することにより分離することができる。
【0036】
図示した実施形態では、容器20の底部は円錐形状である。結晶化要素21は中空円筒形状を有していて結晶化ゾーンを定めており、容器20と連通した下部開口201を含んでいる。幾つかの非限定例では、容器20は円筒状又は直方体形状のような他の形状を有し得る。同様に、結晶化要素21もまた、直方体又は円錐形状のような他の形状からなり得る。加えて、容器20と連通するために、結晶化要素21の下部開口201と連通した上部開口202を備えても備えなくてもよい。
【0037】
従って、図2に示すように、出力流16は結晶化要素21の上端(符号は付けてない)から結晶化ゾーン中に再度導かれ、その後固液分離及び循環のために、結晶化要素21の下部開口201及び/又は上部開口202から、結晶化要素21と容器20との間の固液分離ゾーン200中に分散させられる。SCD装置100と結晶化装置12との間に液体15を循環させることによって、結晶化装置12内でイオンの(により形成される)析出が起こり、時間と共に増大する。こうして、ある特定の直径よりも大きい直径を有する析出粒子は容器20の下部に沈降し得る。その間、特定の直径よりも小さい直径を有する他の析出粒子は液体15内に分散し得る。
【0038】
放電工程中の流れ27の析出速度とブローダウン速度の和が充電工程中の荷電種の除去速度と等しいと、SCD装置と結晶化装置との間を循環する濃縮流の飽和又は過飽和の程度が安定化され得、動的平衡が確立され得る。
【0039】
図示した実施形態の場合、閉じ込め要素22が備えられて閉じ込めゾーンを定めており、その少なくとも一部分は結晶化ゾーン内に配置され、結晶化ゾーン及び封じ込めゾーンと連通している。1つの例では、閉じ込め要素22は2つの開放端を含み得、中空円筒形状を有して閉じ込めゾーンを定め得る。或いは、閉じ込め要素22は直方体又は円錐形状のような他の形状を有し得る。
【0040】
さらに、閉じ込めゾーン内に延び込む撹拌機23を備えて、結晶化ゾーンと閉じ込めゾーン内の液体15の流れを促進し得る。撹拌機23で掻き混ぜられる液体15の流れ方向は頂部から底部へ(矢印102で示す)又は底部から頂部へ向かい得る。
【0041】
他の例では、ポンプを含む装置25も備えて、容器20の底部から液体15の一部分を導いて、バルブ26を通し結晶化ゾーン中に入らせて、結晶化ゾーンと閉じ込めゾーン内の液体15の流れを促進し得る。通常、バルブ26は放出(廃棄)流27の流路を遮断する。幾つかの例では、装置25はさらに、液体15の一部分の粒子を磨滅するのに使用し得る。
【0042】
装置25内での粒子の磨滅により、形成された析出粒子の一部分を液体15中に懸濁させて、粒子と塩又は不純物との接触面積を増大する種粒子として働かせ、形成された析出粒子の表面への析出量を増やすことができる。幾つかの例では、閉じ込め要素22は使用しなくてもよい。同様に、特定の例では、撹拌機23及び/又はポンプ25も備えなくてもよい。
【0043】
図2に示した構成では、結晶化ゾーンと固液分離ゾーンが両方とも同じ容器20内に画成されている。幾つかの非限定例では、結晶化ゾーンと固液分離ゾーンは空間的に互いに分離してもよい。
【0044】
図3は、本発明の別の実施形態に係る脱塩システムの概略図である。図を簡略化するために、幾つかの要素は描いてない。図示した構成の場合、結晶化装置12は結晶化ゾーンを画成する結晶化要素21と、結晶化要素21から空間的に分離され固液分離ゾーン200を画成する分離要素205とを含んでいる。
【0045】
従って、図2に示した構成と同様に、出力流16は塩その他の不純物の析出を促進するべく再度結晶化ゾーン内に導かれ、その後固液分離ゾーン200内に流れて析出物の一部を液体15から分離した後に、液体15がE分離装置11内に循環させられる。
【0046】
幾つかの例では、液体15は初め結晶化要素21及び/又は分離要素25内に収容される。結晶化装置12はそれぞれ結晶化ゾーンと固液分離ゾーンを画成する2以上の空間的に分離した要素を含み得る。幾つかの例では、固液分離ゾーンを画成するための分離要素205の非限定例は、容器、ハイドロサイクロン、遠心分離機、フィルタープレス、カートリッジフィルター、精密ろ過及び限外ろ過装置を含み得る。
【0047】
幾つかの実施形態では、塩その他の不純物の析出は飽和又は過飽和の程度が極めて高くなるまで起こらない。例えば、CaSO4は析出が起こる前に500%の過飽和度に達するが、これはシステムにとって不利であり得る。従って、幾つかの例ではは、種粒子(図示せず)を容器20に加えて、低い過飽和度で塩その他の不純物の表面への析出を誘発し得る。加えて、容器20中の種粒子の懸濁を促進するために撹拌機23及び/又はポンプ25を備えてもよい。
【0048】
非限定例では、種粒子は約1〜約500μmの平均直径範囲を有し得、また結晶化ゾーン内の液体の重量の約0.1重量%〜約30重量%の重量範囲を有し得る。幾つかの例では、種粒子は約5〜約100μmの平均直径範囲を有し得、また結晶化ゾーン内の液体の重量の約1.0重量%〜約20重量%の重量範囲を有し得る。幾つかの応用において、種粒子は、限定されることはないが、析出を誘発するCaSO4粒子及びその水和物を始めとする固体粒子を含み得る。このCaSO4粒子は約10μm〜約100μmの平均直径範囲を有し得る。幾つかの例では、平衡CaSO4種粒子添加量は結晶化ゾーン内の液体の重量の約0.1重量%〜約2.0重量%の範囲であり得、その結果結晶化装置12内のCaSO4の過飽和はCaSO4析出が起こる作動中約100%〜約150%の範囲に制御され得る。
【0049】
他の例では、1種以上の添加剤24を流出流16中に添加して、ある種の化学種の飽和又は過飽和度を低下し得る。例えば、酸添加剤を流出流16中に添加して、CaCO3の飽和又は過飽和度を低下し得る。幾つかの例では、添加剤は第1の流れ13中に添加してもしなくてもよい。
【0050】
種粒子及び添加剤は特定の種粒子又は添加剤に限定されることはなく、いろいろな用途に基づいて選択し得ることに留意されたい。
【0051】
幾つかの例では、一定の量の流れ29を液体15から取り出して、一定の容積を維持し得及び/又は容器20内の幾つかの化学種の飽和又は過飽和程度を低下し得る。流れ29は、ポンプ25を用いて容器20の底部から取り出された流れ30と混合されて放出(廃棄)流27を形成し得る。
【0052】
幾つかの例では、流れ30は10重量%以上の析出物を含み得る。これらの例の場合、バルブ26は液体15の循環のための流路を遮断する。さらに、バルブ204も下部に配置して容器20の排出を促進し得る。
【0053】
図2に示した構成では、流れ16は容器20の上部から容器20中に供給される。代わりに、流出流16は容器20の下部から供給してもよい。脱塩システム10のその他の局面は既に引用した米国特許出願公開第20080185346に見ることができる。
【0054】
図4は、本発明の一実施形態に係る逆電気透析(EDR)装置101と結晶化装置12を含む脱塩システムの概略図である。図3の構成は図2の構成と同様である。図2と3の2つの構成はE分離装置がEDR装置101からなる点で異なっている。
【0055】
従って、EDR装置が正常な極性状態にあるとき、液体源(図示せず)及び容器20からの流れ13及び17は、実線33及び34で示すようにそれぞれの第1の入力パイプに沿って第1のバルブ31及び32を通過してEDR装置101に入る。希薄な流れ14及び流出流16は、第2のバルブ35及び36を通り、実線37及び38で示すようにそれぞれの第1の出力パイプ中に入る。
【0056】
EDR装置が逆極性状態にあるとき、流れ13及び17は破線39及び40で示されているそれぞれの第2の入力パイプに沿ってEDR装置101に入り得る。希薄な流れ14及び流出流16は破線41及び42で示されているそれぞれの第2の出力パイプに沿って流れ得る。こうして、入力流と出力流が交互にそれぞれのパイプに入ってスケール形成傾向を最小にし得る。
【0057】
流れ27の析出速度とブローダウン速度との和が荷電種の除去速度と等しい場合、EDR装置と結晶化装置の間を循環する濃縮流の飽和又は過飽和度は安定化し得、動的平衡が確立され得る。
【0058】
図5は、本発明の別の実施形態に係る脱塩システム10の概略図である。説明を容易にするために、幾つかの要素は描かれていない。図4に示すように、脱塩システム10はさらに、放出流27を蒸発させ結晶化させて流れの利用を改良しゼロ液体放出(ZLD)を達成するために蒸発器43と晶析装置44を含み得る。蒸発器43と晶析装置44は当業者が容易に実施し得る。1つの非限定例では、晶析装置44は乾燥機のような熱的晶析装置であり得る。幾つかの応用において、蒸発器43及び/又は晶析装置44は使用してもしなくてもよい。
【0059】
典型的な実施形態で本開示を例示し説明して来たが、いかなる意味でも本開示の思想から逸脱することなく様々な改変と置換をなすことができるので、示した詳細に限定されることはない。従って、当業者には、通常の実験の範囲内で、本明細書に開示したもののさらなる改変と等価物が自明であろう。また、かかる改変と等価物は全て、以下の特許請求の範囲に定義される本開示の思想と範囲内に入ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱塩のための第1の流れを受容するように構成された電気的分離装置と、
第1の流れからイオンを運び去る第2の流れを電気的分離装置に提供するように構成され、イオンの析出を促進するための結晶化ゾーンと析出物の分離のための結晶化ゾーンと流体連通した固液分離ゾーンとを画成する結晶化装置と
を備える脱塩システム。
【請求項2】
結晶化装置が結晶化ゾーンを画成する結晶化要素を含む、請求項1記載の脱塩システム。
【請求項3】
結晶化装置がさらに封じ込めゾーンを画成する容器を含み、結晶化ゾーンが封じ込めゾーン内でこれと流体連通して配置されていて、固液分離ゾーンが容器と結晶化要素との間に画成される、請求項2記載の脱塩システム。
【請求項4】
結晶化装置がさらに閉じ込め要素を含み、その少なくとも一部分が結晶化ゾーン内に配置されて、結晶化装置内での析出を促進するために結晶化ゾーンと流体連通した閉じ込めゾーンを画成する、請求項2記載の脱塩システム。
【請求項5】
第1及び閉じ込め要素の各々が円筒状の形状を有する、請求項4記載の脱塩システム。
【請求項6】
結晶化ゾーン及び固液分離ゾーンが互いに空間的に分離されている、請求項2記載の脱塩システム。
【請求項7】
結晶化装置が、結晶化要素から空間的に分離され固液分離ゾーンを画成する分離要素を含む、請求項6記載の脱塩システム。
【請求項8】
固液分離要素が、容器、沈殿器、カートリッジフィルター、フィルタープレス、精密ろ過装置、限外ろ過装置、ハイドロサイクロン及び遠心分離機の1以上を含む、請求項7記載の脱塩システム。
【請求項9】
電気的分離装置がスーパーキャパシタ脱塩装置又は逆電気透析装置からなり、スーパーキャパシタ脱塩装置は充電状態の間第1の流れを受容し、放電状態の間第2の流れを受容し、逆電気透析装置は第1の流れと第2の流れを同時に受容する、請求項1記載の脱塩システム。
【請求項10】
第2の流れが飽和した流れ又は過飽和した流れからなる、請求項1記載の脱塩システム。
【請求項11】
第2の流れが、電気的分離装置を通過した後結晶化ゾーンから結晶化装置中へ再度導かれて、電気的分離装置と結晶化装置との間で循環される、請求項1記載の脱塩システム。
【請求項12】
さらに、結晶化ゾーン中に延び込む撹拌機を含む、請求項1記載の脱塩システム。
【請求項13】
さらに、結晶化装置と流体連通しており、第2の流れの一部を結晶化装置から及び結晶化装置中に導くように構成された装置を含む、請求項1記載の脱塩システム。
【請求項14】
装置がさらに、第2の流れの一部内の粒子を磨滅するように構成されている、請求項13記載の脱塩システム。
【請求項15】
さらに、析出を誘発するために結晶化装置内に配置された複数の種粒子を含む、請求項1記載の脱塩システム。
【請求項16】
種粒子が約1μm〜約500μmの平均直径範囲を有する、請求項15記載の脱塩システム。
【請求項17】
種粒子が約5μm〜約100μmの平均直径範囲を有する、請求項15記載の脱塩システム。
【請求項18】
種粒子が結晶化ゾーン内の第2の流れの重量の約0.1重量%〜約30重量%の重量範囲を有する、請求項15記載の脱塩システム。
【請求項19】
種粒子が結晶化ゾーン内の第2の流れの重量の約1.0重量%〜約20重量%の重量範囲を有する、請求項15記載の脱塩システム。
【請求項20】
第1の流れを脱塩のために電気的分離装置に通し、
結晶化装置からの第2の流れを電気的分離装置に通して第1の流れからのイオンを運び去ることを含んでなり、結晶化装置が第2の流れを電気的分離装置に提供して第1の流れからのイオンを運び去るように構成されており、イオンの析出を促進するための結晶化ゾーン及び析出物の分離のために結晶化ゾーンと流体連通した固液分離ゾーンを画成する、脱塩方法。
【請求項21】
さらに、電気的分離装置を通過した後第2の流れを結晶化装置の結晶化ゾーン中に再度導いて、第2の流れを電気的分離装置と結晶化装置とに循環させることを含む、請求項20記載の脱塩方法。
【請求項22】
さらに、第2の流れが電気的分離装置を通過した後1以上の添加剤を第2の流れ中に提供して、第2の流れ内の1以上の化学種の濃度を低減することを含む、請求項21記載の脱塩方法。
【請求項23】
さらに、複数の種粒子を結晶化装置中に提供してイオンの析出を促進することを含む、請求項20記載の脱塩方法。
【請求項24】
種粒子が約1μm〜約500μmの平均直径範囲を有し、また種粒子が結晶化ゾーン内の第2の流れの重量の約0.1重量%〜約30重量%の重量範囲を有する、請求項23記載の脱塩方法。
【請求項25】
種粒子が約5μm〜約100μmの平均直径範囲を有し、また種粒子が結晶化ゾーン内の第2の流れの重量の約1.0重量%〜約20重量%の重量範囲を有する、請求項24記載の脱塩方法。
【請求項26】
種粒子がCaSO4粒子からなる、請求項23記載の脱塩方法。
【請求項27】
さらに、結晶化ゾーン内に種粒子を懸濁させることを含む、請求項23記載の脱塩方法。
【請求項28】
結晶化ゾーンが封じ込めゾーン内にこれと流体連通して配置されていて、容器と結晶化要素との間に固液分離ゾーンが画成される、請求項20記載の脱塩方法。
【請求項29】
電気的分離装置がスーパーキャパシタ脱塩装置又は逆電気透析装置からなり、スーパーキャパシタ脱塩装置は充電状態で第1の流れを受容し、放電状態で第2の流れを受容し、逆電気透析装置は第1の流れ及び第2の流れを同時に受容する、請求項20記載の脱塩方法。
【請求項30】
結晶化装置がさらに閉じ込め要素を含んでおり、その少なくとも一部分が結晶化ゾーン内に配置されていて封じ込めゾーン及び結晶化ゾーンと流体連通した閉じ込めゾーンを画成する、請求項20記載の脱塩方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−500157(P2013−500157A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522831(P2012−522831)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/037868
【国際公開番号】WO2011/014300
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】