説明

脱着型触媒充填装置の固定方法およびそれを固定した装置

【課題】ケース内での脱着性、使用時の安全性の両方を満足する脱着可能な触媒充填装置(触媒カートリッジ)の固定方法、およびそれを固定した装置を提供する。
【解決手段】脱着可能な触媒充填装置を、スペーサーを内側に配置したケース内に固定する際に、該触媒充填装置とスペーサーとの間に少なくとも該触媒充填装置がスムースに脱着できる離隔(最小1mm、最大10mm)を設けて固定する方法、および固定された装置。この装置は各種化学反応に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱着型触媒充填装置の固定方法およびそれを固定した装置に関し、詳細にはマイクロ波反応に好適な脱着型触媒充填装置の固定方法およびそれを固定した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB等の有機塩素化合物を無害化する方法として、有機塩素化合物に反応用薬剤を添加し、触媒存在下で脱塩素化する方法が知られている(特許文献1,2等参照)。この場合、反応溶液中に触媒を分散させ、触媒反応をバッチ式で行う方法(特許文献1)と、触媒が充填された装置に反応溶液を流通させ、触媒反応を連続式で行う方法(特許文献2)があるが、多量の触媒を使用でき使用後の触媒回収も容易であることから、後者が実用上有利と考えられている。
【0003】
しかしながら、従来は触媒充填装置をマイクロ波発振装置と一体として取付けていたため、触媒交換に手間がかかるという問題があった。そこで、触媒槽をカートリッジ化し脱着可能にし、触媒の入替を容易にすることが考えられるが、マイクロ波反応に利用することを勘案すると、使用前後のカートリッジの脱着が容易であること、使用時の反応溶液の流通がスムースで反応効率が良好であること、使用時にマイクロ波がスパークして火花が飛ばないことなどの課題をクリアーする必要がある。
【特許文献1】特開平8−266888号公報
【特許文献2】特開2007−61594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、触媒カートリッジを固定するケース内側にスペーサーを配置し、スペーサーで触媒カートリッジを強固に支持すると脱着性が不良となる。一方、スペーサーの支持が緩いと触媒カートリッジが傾斜してケースとカートリッジの間で火花が飛ぶ可能性があり、安全性に問題がある。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、ケース内での脱着性、使用時の安全性の両方を満足する、脱着可能な触媒充填装置(以下、「触媒カートリッジ」と称することがある。)の固定方法、およびそれを固定した装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、触媒カートリッジとスペーサーとの間に離隔を設ければよく、離隔の最小要件は触媒カートリッジがスムースに設置できる程度の遊びがあること、離隔の最大要件は触媒カートリッジが傾斜した場合でもカートリッジ上部とケースとの間隔がマイクロ波により火花が飛ばない程度の離隔を確保できること、であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)脱着可能な触媒充填装置を、内側にスペーサーを配したケースに固定する際に、該触媒充填装置とスペーサーとの間に、少なくとも該触媒充填装置がスムースに脱着できる離隔を設けることを特徴とする触媒充填装置の固定方法。
(2)前記離隔の最大間隔は、触媒充填装置が傾斜した場合でも、該触媒充填装置とケースとの間にマイクロ波により火花が飛ばない安全な最小間隔を確保できる間隔である、前記(1)に記載の触媒充填装置の固定方法。
(3)前記離隔の最小間隔は1mmである、前記(1)または(2)に記載の触媒充填装置の固定方法。
(4)前記離隔の最大間隔は10mmである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の触媒充填装置の固定方法。
(5)前記スペーサーを円周方向に少なくとも3箇所設置する、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の触媒充填装置の固定方法。
(6)脱着可能な触媒充填装置とスペーサーとの間に、少なくとも該触媒充填装置がスムースに脱着できる離隔が設けられてケース内に固定されていることを特徴とする装置。
(7)前記離隔の最大間隔は、触媒充填装置が傾斜した場合でも、該触媒充填装置とケースとの間にマイクロ波により火花が飛ばない安全な最小間隔を確保できる間隔である、前記(6)に記載の装置。
(8)前記離隔の最小間隔は1mmである、前記(6)または(7)に記載の装置。
(9)前記離隔の最大間隔は10mmである、前記(6)〜(8)のいずれかに記載の装置。
(10)前記スペーサーが円周方向に少なくとも3箇所設置されている、前記(6)〜(9)のいずれかに記載の装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の触媒充填装置の固定方法および装置によれば、触媒カートリッジとスペーサーとの間に最適な離隔を設けることにより、カートリッジの脱着性、使用時の安全性の両方を満足する装置を提供することができる。また、本発明の方法で触媒カートリッジを固定した装置は、触媒が劣化した場合でも触媒カートリッジを交換するだけで新しい触媒に取り替え可能であるため、長時間反応用の装置として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る触媒充填装置の固定方法およびそれを固定した装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る触媒充填装置の固定方法および装置の好ましい実施形態を示す概略図である。図1(a)は装置の側面図、図1(b)は装置の上面図であり、1は脱着可能な触媒充填装置(触媒カートリッジ)、7は触媒カートリッジを収容するケース、8はスペーサーである。
【0011】
触媒カートリッジ1には、5本のテフロン(登録商標)棒2が取付けられており、このテフロン(登録商標)棒2の周囲に、触媒3が充填されている。テフロン(登録商標)棒2は、マイクロ波を透過、伝達する機能を有しているので、触媒槽の表面に照射されたマイクロ波はテフロン(登録商標)棒を介して触媒槽の奥部まで浸透することが可能になる。触媒カートリッジ1の底面には、触媒槽に流入する反応溶液が上から下に流下できるように多数の流通孔4が設けられている。さらに、反応溶液のスムースな流下を補助すると共に、触媒槽の高さ調整が可能なように、架台5が取付けられている。架台5により触媒槽の高さ方向に、反応に最適な位置に保持することができる。
【0012】
触媒カートリッジ1を構成する材料は特に限定されないが、成形加工性、耐久性、耐薬品性に優れている点より、一般にはステンレス(SUS)が用いられる。
【0013】
なお、触媒充填装置に充填する触媒の形状は、特に限定されず、粉状、粒状、ペレット状、顆粒状、ハニカム状などの形状であってよい。目詰り防止の観点からはハニカム状などの成形品、あるいは、粒子径75μm〜10mmの形状でできるだけ粒子径のそろったものが好ましい。
【0014】
触媒の種類も特に限定されないが、例えば、ゼオライト等の複合金属酸化物;活性炭、グラファイト、カーボンナノチューブ(金属を含むものと含まないものの双方が含まれる)、フラーレン等の炭素結晶化合物;鉄、銀、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム等の金属を担持した金属担持炭素化合物(例えば、Pd/C、Ru/C、Pt/C);鉄、銀、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウム等の金属を担持したSiO、TiO、ZrO、Ai、ZnO、Cr、MgO等の金属担持酸化物あるいは金属担持複合金属酸化物等を挙げることができる。また、脱硝用、脱硫用、脱CO用あるいは各種の二元触媒、三元触媒、四元触媒の他、これらの触媒をFe、TiO、NiO、SiCなどのセラミック多孔体に担持させた触媒等を挙げることができる。
【0015】
図1には触媒カートリッジにテフロン(登録商標)製の円柱状の構造体を取付けた例を示したが、材料および形状はこれに限定されるものではなく、断面が円形、三角形、四角形、六角形の棒状あるいは管状の構造体が取付けられていてもよい。また、触媒カートリッジに取付けずに、ファイバー状、シート状、棒状、管状等の適宜の形状の構造体が触媒槽に挿設されていてもよい。
【0016】
構造体の材質としては、セラミック;テフロン(登録商標)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンサルフォン(PPSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリエステル(LCP)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル等の耐熱性樹脂;ガラス等の双極子を持たない材料或いは双極子モーメントが小さい材料;等を挙げることができる。
【0017】
触媒カートリッジ1を固定するケース7の内側には、支持用のスペーサーを少なくとも3個以上設置する。図1では、スペーサー8が円周状に4個設置されている例を示した。このスペーサーは、触媒カートリッジを支持することにより、カートリッジの転倒や傾斜を防止する働きをするので、ケース内面の所望の箇所に所望の数を設置するのがよいが、スペーサーが多すぎると脱着時の作業性が悪くなり、少なすぎると使用時に傾斜するなど不安定になる。脱着性および安全性を考慮すると、図1に示す様に円周状に3個以上設置することが好ましい。スペーサーの配置高さとしては、図1に示す様に触媒カートリッジの上部から中央部に、長さをカートリッジ高さの約1/8〜1/3とし、幅を約3cm〜5cmの大きさに設置するのがよい。スペーサーが長すぎるとカートリッジの脱着性が不良になり、短すぎると支持が緩くなりカートリッジが不安定になる。また、スペーサー位置が低すぎるとカートリッジ設置時にスペーサーに行き着くまでの間に壁にぶつかりやすいなどの操作しにくさが生じる。また、脱着性向上のために、スペーサー上部を図のように面取りしても良い。
【0018】
スペーサー形成材料としては、耐薬品、耐油、耐熱性のあるSUS、テフロン(登録商標)、シリコンなど、もしくは、発泡ポリウレタン、発泡ポリスチレン等の耐衝撃性に優れる樹脂が、好ましく用いられる。
【0019】
触媒カートリッジ1をケース7内に固定する場合は、該触媒カートリッジとスペーサーとの間に、少なくとも該触媒カートリッジがスムースに脱着できる離隔(ギャップ)を設ける必要がある。触媒カートリッジをスペーサーで強固に支持した場合は、カートリッジの脱着性が悪くなる。一方支持が緩いと、図2または図3に示すように、カートリッジが傾斜して反応時(即ち、マイクロ波照射時)にケースとカートリッジ上端部の間で火花が飛ぶおそれがあり、安全性に問題が生じる。図2は傾斜した触媒カートリッジがケース内面と接触する様子、図3は同様に上面材と接触する様子を概略的に示したものである。
【0020】
上記の離隔の最小は、触媒カートリッジがスムースに脱着できる間隔であればよいので、触媒カートリッジの大きさ(通常、外径30〜50cmのものが多用される)を考慮すると、1mmとすることが好ましい。また、離隔の最大は、触媒カートリッジ傾斜時の安全性を考慮すると、10mmとすることが好ましい。離隔の大きさを1mm〜10mmの範囲に設定し、この範囲に触媒カートリッジを固定することにより、カートリッジの脱着性および使用時の安全性の両方を満足する装置を提供することができる。
【0021】
また、ケース7に触媒カートリッジ1を固定した装置は、各種の反応装置に適宜な方法で取付けることにより、反応装置の一部として機能する。ケース7の上部は、上蓋などが配されることでマイクロ波が漏れない密閉構造になっていればよい。
【0022】
図4は、本発明に係る触媒充填装置の固定方法により固定した触媒カートリッジを用いて化学反応を行う一実施形態を示したものである。
【0023】
図4に示す実施形態では、図1の触媒カートリッジ1がケース7に固定、配置され、前記ケース7は反応槽11の上蓋12にフランジを介して取付けられている。上蓋12の近傍には小型マイクロ波発振装置15が配置され、SUS製の導波管を通して触媒槽にマイクロ波が照射されるように構成されている。このマイクロ波発振装置15は、温度計測ケーブルおよび電源・制御ケーブルによって、電源・計測・制御一体型装置16と接続され、かつ、反応槽内ならびに触媒充填槽および液面6の温度を計測する熱電対と接続されているので、反応槽内および触媒充填槽内の温度をほぼ一定に保持しながらマイクロ波を照射することが可能なように電気的に制御されている。
【0024】
上記のマイクロ波発振装置としては、マグネトロン、ジャイロトロン等のマイクロ波発生器を用いた装置や、固体素子を用いたマイクロ波発振器等が挙げられる。マイクロ波の出力は10W〜20kW、周波数は1〜300GHzが好ましい。
【0025】
液液系の化学反応を行う場合は、反応槽の上蓋12に取付けたケース7に触媒カートリッジを所定の離隔を設けて固定した後、反応溶液を反応槽11に導入する。次いで、反応溶液をポンプ13a,13b、および、配管14a,14bを介して循環させ、触媒カートリッジの上部から反応溶液を触媒槽に導入し、触媒槽の中を流下させた後、側面に設けた溢流口9から反応槽に戻す。触媒カートリッジの上方からマイクロ波が照射されることによって、反応が促進される。ケース7の下部側面にはドレン抜き10が設けられている。かかる装置を用いて化学反応を行う場合、反応温度は常温から400℃の間に設定することが可能であるが、50〜80℃の比較的低温の反応にも利用することができる。
【0026】
また、気気系の化学反応を行う場合は、反応槽の上蓋12に取付けたケース7に触媒カートリッジを所定の離隔を設けて固定した後、反応用気体を反応槽11に導入する。次いで、反応用気体をポンプ13a,13b、および、配管14a,14bを介して循環させ、触媒カートリッジの上部から反応用気体を触媒槽に導入し、触媒槽の中を流下させた後、側面に設けた溢流口9から反応槽に戻す。触媒カートリッジの上方からマイクロ波が照射されることによって、反応が促進される。かかる装置を用いて化学反応を行う場合、反応温度は常温から400℃の間に設定することが可能であるが、100〜400℃の比較的高温の反応にも利用することができる。
【0027】
以上、本発明に係る触媒充填装置の固定方法およびそれを固定した装置の実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る装置は、触媒カートリッジのケース内での脱着性に優れ、使用時の安全性も良好であるため、ポリ塩化ビフェニール(PCB)およびダイオキシン類の無害化処理に好適に利用できる他、マイクロ波を用いた各種の化学反応、例えば、自動車の排ガス処理、排水処理、難分解性有機物、汚水処理、汚泥処理などにも幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る触媒充填装置の一実施形態を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)は上面図である。
【図2】本発明に係る触媒充填装置の一実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明に係る触媒充填装置の一実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明に係る触媒充填装置を用いた反応例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0030】
1 触媒充填装置(触媒カートリッジ)
2 テフロン(登録商標)棒
3 触媒
4 流通孔
5 架台
6 液面
7 ケース
8 スペーサー
9 溢流口
10 ドレン抜き
11 反応槽
12 上蓋
13a,13b 循環ポンプ
14a,14b 配管
15 マイクロ波発振器
16 電源・計測・制御一体型装置
17 熱電対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱着可能な触媒充填装置を、内側にスペーサーを設置したケースに固定する際に、該触媒充填装置とスペーサーとの間に、少なくとも該触媒充填装置がスムースに脱着できる離隔を設けることを特徴とする触媒充填装置の固定方法。
【請求項2】
前記離隔の最大間隔は、触媒充填装置が傾斜した場合でも該触媒充填装置とケースとの間に、マイクロ波により火花が飛ばない安全な最小間隔を確保できる間隔である、請求項1に記載の触媒充填装置の固定方法。
【請求項3】
前記離隔の最小間隔は1mmである、請求項1または2に記載の触媒充填装置の固定方法。
【請求項4】
前記離隔の最大間隔は10mmである、請求項1〜3のいずれかに記載の触媒充填装置の固定方法。
【請求項5】
前記スペーサーを円周方向に少なくとも3箇所設置する、請求項1〜4のいずれかに記載の触媒充填装置の固定方法。
【請求項6】
脱着可能な触媒充填装置とスペーサーとの間に、少なくとも該触媒充填装置がスムースに脱着できる離隔が設けられてケース内に固定されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
前記離隔の最大間隔は、触媒充填装置が傾斜した場合でも、該触媒充填装置とケースとの間にマイクロ波により火花が飛ばない安全な最小間隔を確保できる間隔である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記離隔の最小間隔は1mmである、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記離隔の最大間隔は10mmである、請求項6〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記スペーサーが円周方向に少なくとも3箇所設置されている、請求項6〜9のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−178656(P2009−178656A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20120(P2008−20120)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】