説明

脱硫スラグを用いた粉体の造粒方法

【課題】本発明は、粉コークス、ダスト等の粉体を造粒後、長期間の養生を必要とすることなく、造粒後、早期に使用可能な強度を確保できる造粒方法を得ることを課題とする。
【解決手段】溶銑を予備処理した際に発生する脱硫スラグを水没して冷却した後、乾燥して得た石膏含有脱硫スラグ粉に、粉コークス、ダスト等の粉体を配合すると共に水分を添加してパンペレタイザーで造粒するに際して、前記石膏含有脱硫スラグ粉中の石膏が前記石膏含有脱硫スラグ粉と前記粉体の合計量に対して0.8〜3.0質量%となる様に、該石膏含有脱硫スラグ粉を配合する方法であり、そして、前記粉体に配合する石膏含有脱硫スラグ粉の粒度が0.5〜3.0mmで、更に、前記パンペレタイザーで造粒する造粒物の造粒径を1〜2mmすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶銑予備処理として行われる溶銑脱硫工程で発生する脱硫スラグをバインダーとして粉コークス、ダスト等の粉体を造粒する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶銑を精練する工程で発生する製鋼スラグは種々の用途に利用する試みがされている。しかし、製鋼スラグのなかでも、溶銑予備処理として行われる脱硫工程で発生する脱硫スラグについては、これに含まれる硫黄(S)の含有量が多く、利材化する上で大きな制約となっている。
【0003】
この様な、脱硫スラグの利材化方法として、例えば、特許文献1には、コークス炉で乾留した赤熱コークスを消火する乾式消火設備から発生する粒径が1mm以下の粉コークスに前記脱硫スラグを5〜20%を添加し、水分調整した後、ミキサーで1〜8mmの大きさに混合、造粒し、その造粒物を焼結鉱を製造する焼結工程の焼結用粒状燃料とする方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平02−294434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1は、脱硫スラグに含有されているCaOにより粉コークスに粘性を与えて造粒し、造粒後において所定の強度を得るのに脱硫スラグに含有されているT・Feを利用するものであるが、このT・Feにより強度を得るためには数日間の養生が必要となり、その設備及び作業工程が増加して好ましくなく、かつ、養生設備に搬送中に崩壊して粉化し、歩留まりの悪いものであった。
【0006】
本発明は、粉コークス、ダスト等の粉体を造粒後、長期間の養生を必要とすることなく、造粒後、早期に使用可能な強度を確保できる造粒方法を得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その特徴とする手段は、
(1)溶銑を予備処理した際に発生する脱硫スラグを水没して冷却した後、乾燥して得た石膏含有脱硫スラグ粉に、粉コークス、ダスト等の粉体を配合すると共に水分を添加してパンペレタイザーで造粒するに際して、前記石膏含有脱硫スラグ粉中の石膏が前記石膏含有脱硫スラグ粉と前記粉体の合計量に対して0.8〜3.0質量%となる様に、該石膏含有脱硫スラグ粉を配合する脱硫スラグを用いた粉体の造粒方法である。
(2)前記粉体に配合する前記石膏含有脱硫スラグ粉の粒度が0.5〜3.0mmである手段1に記載の脱硫スラグを用いた粉体の造粒方法である。
(3)前記パンペレタイザーで造粒した造粒物の粒径が0.8〜5.0mmである手段1または2に記載の脱硫スラグを用いた粉体の造粒方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、脱硫スラグをバインダーとして粉コークス、ダスト等の粉体を造粒するに際し、長期間養生することなく、早期に所望の強度を得ることが出来るので、養生するための設備及び作業工程が不必要となり、製造コストが安価となり、かつ、搬送中に崩壊することを抑制出来るので製造歩留まりを良好にすることが出来る等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明者等は、脱硫スラグが15〜40%のCaO(生石灰)と、0.5〜1.5%のS(硫黄)を含有していることから、この脱硫スラグを水中に漬ける、即ち水没させて冷却すると、脱硫スラグ中のSが水中に溶け出してCaOと反応して速硬性のある石膏となることが判明した。
【0010】
そして、石膏を含有した脱硫スラグを脱水した後、乾燥機で撹拌しつつ乾燥して石膏含有脱硫スラグ粉とし、これを前記粉コークスに配合すると共に水分調整してパンペレタイザーで造粒することにより、この脱硫スラグ粉中の石膏がバインダーの役目をして圧潰強度が高い粒状の造粒物を製造出来、更に、24時間程度経過すると更に硬い(圧潰強度:350〜600kpa)造粒物になることを見出した。
【0011】
そして、造粒する際の石膏含有脱硫スラグ粉の混合量は、該石膏含有脱硫スラグ粉とこれと混合する粉体の合計量に対して、石膏の比が0.8質量%以上とするのは、これ未満であるとバインダーとしての効果が小さく、これ以上になると造粒物の圧潰強度が急速に上昇するためである。
【0012】
そして、3.0質量%以下とするのは、圧潰強度の上昇も緩慢となり、しかも、配合する脱硫スラグ量が多くなり造粒物の品質に悪影響を生じ始めるためである。
【0013】
先ず、脱硫スラグの処理方法について図1を参照して説明する。
【0014】
溶銑鍋1より1000〜1200℃の高温状態にある脱硫スラグ3をスラグパン2に排滓する(A)。次に、このスラグパン2内に冷却水を供給して冷却を開始し、該脱硫スラグ3が冷却水中に水没した状態で15〜25時間程度維持して冷却を完了する(B)。この際、この脱硫スラグ2中のSが水中に溶出し、このSが溶出した水と脱硫スラグ2中のCaOがイオン反応する事により、石膏(CaSO4・2H2O)となると共に該脱硫スラグ2は粉化して泥状化する。
【0015】
この泥状化した脱硫スラグ5を脱水場に搬送して野積または脱水機で含水率が15〜20%になるまで脱水した後(C)、撹拌羽根(図示せず)を有する乾燥機6に供給して、乾燥機6内の温度を200〜150℃にして含水率が1%以下になるまで加熱乾燥する(この際、前記石膏(CaSO4・2H2OはCaSO4・1/2H2Oとなると推定される)(D)。この加熱乾燥した脱硫スラグを篩7により3mm以下とそれ超に篩分け(E)、その篩下である3mm以下の乾燥脱硫スラグを他の粉体(例えば、粉コークス、ダスト)と配合し、この配合物9をパンペレタイザー8に供給しつつ水分を添加して造粒して含水率12質量%の造粒物とする(F)。この際、乾燥脱硫スラグ粉中の石膏(CaSO4・1/2H2O)は吸水して半水石膏(CaSO4・2H2O)になりバインダー効果を発揮するものと推定される。
【0016】
また、前記粉体と混合する前記乾燥脱硫スラグ粉の粒径を0.5〜3.0mmとするのが好ましい。これは、前記スラグパン2で水没して得られた脱硫スラグ5の粒径の殆どが0.5〜3.0mmであり、特に、破砕設備等を必要としないためである。また、3.0mm超になるとバインダー効果が低下するためである。これは、脱硫スラグ内部のCaOが石膏化していなかったり、石膏化していてもバインダーとしての役目を充分に果たさないためである。
【0017】
更に、パンペレタイザーで造粒する造粒物の粒径が1〜5mmであることが好ましい。これは、造粒後における造粒物の硬化が早いことから、搬送中の崩壊が少なく歩留まりが良好となる。
【0018】
また、これに加えて、粉体が50質量%以上の粉コークスを含有する場合には、焼結機の焼結燃料として使用することが可能となるためである。
【実施例】
【0019】
本実施例に用いた石膏含有脱硫スラグ粉は図1において、溶銑鍋1よりスラグパン2に1100℃の脱硫スラグ3を受け、これに冷却水を供給して20時間水没して冷却したものである。また、乾燥機6に於ける乾燥時間は1分で、該乾燥機6の出口での乾燥脱硫スラグ粉の温度は110℃である。更に、造粒機としてのパンペレタイザー10の回転数は10rpmであり、かつ、造粒原料の含水率が12%になる様に水分を添加して水分調整をおこなったものである。
【0020】
さらに、本実施例に用いたバインダーとしての石膏含有脱硫スラグ粉及び造粒対象の原料である粉コークス、集塵ダストの粒度分布を表1に示す。
【0021】
この石膏含有脱硫スラグ粉をバインダーとして粉コークス、集塵ダストをパンペレタイザーで造粒した結果を表2に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
表2に示す本発明例1、2は、表1の粉コークスに石膏含有脱硫スラグ粉を混合して造粒した例であり、本発明例3、4は、表1の集塵ダストに石膏含有脱硫スラグ粉を混合して造粒した例であり、何れも、石膏含有脱硫スラグ粉中の石膏量が本発明の範囲内になる様に、該石膏含有脱硫スラグ粉量を調整したものであり、パンペレタイザーで造粒後の造粒物の圧潰強度が3時間経過後で320kpa以上、24時間経過後で390kpa以上となった。
【0025】
これに対し、比較例1は、表1の粉コークスに石膏含有脱硫スラグ粉を混合して造粒した例であるが、石膏含有脱硫スラグ粉の混合割合が不足して、前記石膏量が本発明の範囲を下回ったために、圧潰強度が大幅に低くなったものである。
【0026】
また、比較例2は表1の粉コークスに生石灰を混合して造粒した例であり、石膏が無く圧潰強度が比較例1より更に低くなったものである。
【0027】
比較例3は、表1の集塵ダストに石膏含有脱硫スラグ粉を混合して造粒した例であるが、比較例1と同様に石膏含有脱硫スラグ粉の混合割合が不足して、前記石膏量が本発明の範囲を下回ったために、圧潰強度が大幅に低くなったものである。
【0028】
比較例4は比較例1と同様に粉コークスに石膏含有脱硫スラグ粉を混合して造粒した例であるが、石膏含有脱硫スラグ粉中の含有石膏量が少なく、前記石膏量が本発明の範囲を下回ったために、圧潰強度が大幅に低くなったものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】脱硫スラグの処理工程を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0030】
1:溶銑鍋 2:スラグパン 3:脱硫スラグ 4:冷却水 5:泥状脱硫スラグ
6:乾燥機 7:篩 8:パンペレタイザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶銑を予備処理した際に発生する脱硫スラグを水没して冷却した後、乾燥して得た石膏含有脱硫スラグ粉に、粉コークス、ダスト等の粉体を配合すると共に水分を添加してパンペレタイザーで造粒するに際して、前記石膏含有脱硫スラグ粉中の石膏が前記石膏含有脱硫スラグ粉と前記粉体の合計量に対して0.8〜3.0質量%となる様に、該石膏含有脱硫スラグ粉を配合することを特徴とする脱硫スラグを用いた粉体の造粒方法。
【請求項2】
前記粉体に配合する前記石膏含有脱硫スラグ粉の粒度が0.5〜3.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の脱硫スラグを用いた粉体の造粒方法。
【請求項3】
前記パンペレタイザーで造粒した造粒物の粒径が0.8〜5.0mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の脱硫スラグを用いた粉体の造粒方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−95167(P2008−95167A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281349(P2006−281349)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】