説明

脱臭性生地

【課題】コスト面の低減化をはかりながら、良好な脱臭効果を備えた脱臭性生地を提供する。
【解決手段】生地の地糸が、表糸と裏糸とパイル糸とから構成されているとともに、表糸とパイル糸とによって、ループ状に外方に突出するパイル群が形成され、表糸とパイル糸のうち少なくともパイル糸が脱臭性繊維糸から構成されており、生地の少なくとも表面に脱臭性繊維糸2が露出して空気に触れやすい状態にあるので、脱臭性繊維糸の脱臭効果を十分に活用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭性繊維糸を用いた脱臭性生地に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維糸においては、脱臭、抗菌、遠赤外線等の機能を付加した機能性繊維糸が作られるようになり、衣類、下着類、タオル類、シーツ類、カーテン類、敷物類等の多様な用途の生地に用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特願2000−204580号公報(第5,6頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような機能性繊維糸は一般的な繊維糸より高価であるので、製作コストや製品コストが割高になる問題がある。
また、生地には、用いられる用途に応じて厚さや密度で既存の使用領域が存在し、これを基準として製品化されているので、例えば、脱臭性繊維糸の持つ脱臭性が生かされる最適な密度に必ずしも対応するものではなく、必要以上の脱臭性繊維糸を用いて製品化されている場合もある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コスト面の低減化をはかりながら、良好な脱臭効果を備えた脱臭性生地を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1番目の脱臭性生地の特徴構成は、生地の少なくとも表面に脱臭性繊維糸が露出する点にある。
【0007】
このような構成によれば、生地の表面に脱臭効果が必要な用途には、生地の表面に脱臭性繊維糸が露出する脱臭性生地を製作して対応することができ、生地の表裏の両面に脱臭効果が必要な用途には、生地の表裏の両面に脱臭性繊維糸が露出する脱臭性生地を製作して対応することができる。
【0008】
従って、生地に用いた脱臭性繊維糸の脱臭機能を必要な面に利用することができるので、使用に無駄がなく使用品質の高い脱臭性生地を構築することができる。
【0009】
本発明の第2番目の脱臭性生地の特徴構成は、前記生地の地糸が、表糸と裏糸とから構成されているとともに、前記表糸をもってループ状に外方に突出するパイル群が編成され、前記表糸が脱臭性繊維糸から構成されている点にある。
【0010】
このような構成によれば、表糸を兼用構成されたパイル糸はループ状に外方に突出して糸表面が露出して空気に触れやすい状態にあるので、脱臭性繊維糸の脱臭効果を十分に活用することができる。
また、パイル糸は表糸が兼用構成されているので、パイル形成部位を除く生地表面においても脱臭効果を保持することができる。
しかも、裏面を形成する裏糸には脱臭性繊維糸を用いない構成になっているので、生地の表面側のみに脱臭効果を集中させる生地構造を形成することができる。
【0011】
従って、生地裏面側に脱臭性機能がなく生地表面側に脱臭性機能を持たせることができ、脱臭対象側に生地表面を対面使用することによって、地糸の全てに脱臭性繊維糸を用いるパイル生地に比べて、無駄のない脱臭効果が得られるとともに、一般的な繊維糸よりも高価な脱臭性繊維糸を地糸の全てに用いないですむので、コスト面で安価に製作することができる。
【0012】
本発明の第3番目の脱臭性生地の特徴構成は前記生地の地糸が、表糸と裏糸とパイル糸とから構成されているとともに、表糸とパイル糸とによって、ループ状に外方に突出するパイル群が形成され、表糸とパイル糸のうち少なくともパイル糸が脱臭性繊維糸から構成されている点にある。
【0013】
このような構成によれば、パイル糸のみが脱臭性繊維糸から構成されている場合より、パイル糸と表糸の両者が脱臭性繊維糸から構成されている場合の方が、脱臭効果を大きくすることができるので、脱臭効果が異なる脱臭性生地を形成することができる。
また、表糸とパイル糸のうち少なくともパイル糸が脱臭性繊維糸から構成されているので、パイル形成部位が露出して空気に触れやすい状態にあるので、脱臭性繊維糸の脱臭効果を十分に活用することができる。
また、パイル形成部位を除く生地表面においても、表糸とパイル糸のうち少なくともパイル糸が脱臭性繊維糸から構成された生地の表面に脱臭機能を形成することができる。
さらに、裏面を形成する裏糸には脱臭性繊維糸を用いない構成になっているので、生地の表面側のみに脱臭効果を集中させる生地構造を形成することができる。
【0014】
従って、生地裏面側に脱臭性機能がなく生地表面側に脱臭性機能を持たせることができ、脱臭対象側に生地表面を対面使用することによって、地糸の全てに脱臭性繊維糸を用いるパイル生地に比べて、無駄のない脱臭効果が得られるとともに、一般的な繊維糸よりも高価な脱臭性繊維糸を地糸の全てに用いないですむので、コスト面で安価に製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の防音・遮音材の一実施例を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
この実施形態の脱臭性生地は、ニット編みからなる網地1にパイル糸2でパイル起毛したパイル生地Aから構成されている。
【0016】
このパイル生地Aを構成する地糸は、図1に示すように、一本の20番ないし30番の綿糸又は綿アクリル混紡糸あるいは20番ないし30番の毛糸又は毛アクリル混紡糸からなる表糸1aと、20デニールのポリウレタンと70デニールのナイロンとからなる一本の裏糸1bとしての弾性糸(FTY)から構成されているとともに、前記パイル糸2は、表糸1aでもって兼用構成され、表糸1aと同様に、一本の20番ないし30番の綿糸又は綿アクリル混紡糸あるいは20番ないし30番の毛糸又は毛アクリル混紡糸から構成されている。表糸1aをループ状に外方に突出させることにより、パイルP群を形成してある。
【0017】
また、この実施形態のパイル生地Aに脱臭性繊維糸が占める割合、つまり、混率は、約25%〜約40%程度の構成になっている。脱臭性繊維糸には一般に公知のものを使用している。
【0018】
このパイル生地Aは、裏面を形成する裏糸には脱臭性繊維糸を用いない構成になっているので、生地の表面側のみに脱臭効果を集中させる生地構造になっている。
【0019】
ここで、パイル生地Aにおいて、全ての地糸に脱臭性繊維糸を用いた場合、生地の脱臭性繊維糸が占める割合である混率は100%となり、裏糸に脱臭性繊維糸を用いた場合や、パイル起毛部位であるパイル形成部位の突出の大小等のパイル生地Aの編成の在り方によっても混率が変り、また、パイルP群の編成間隔の大小、表糸1aや裏糸1bの各々の使用本数や糸太さ等によって混率は変わる。
【0020】
このような構成によれば、パイル生地Aから脱臭性生地が構成され、パイル糸2に脱臭性繊維糸が用いられ、このパイル糸2はループ状に外方に突出して糸表面が露出する状態になるので、脱臭性繊維糸の脱臭効果を十分に活用することができる。
また、パイル糸2は表糸1aによって兼用構成されているので、パイル形成部位を除く編地部位においても脱臭効果を機能することができる。
【0021】
このようなパイル生地Aの使用例としては、例えば、下着類、失禁用下着類、肌着類、パジャマ類、靴下類、タオル類、ハンカチ類、スカーフ類、運動ウェアー類、シーツ類、マスク類、製品内張り材類、衣服芯材類等に好適に採用することが可能である。
[第2実施形態]
この第2実施形態の脱臭性生地は、上記第1実施形態と異なる点を説明し、同様の構成箇所には同符号を付してその詳細は省略する。
【0022】
この実施形態の脱臭性生地は、ニット編みからなる網地1に表糸1aとパイル糸2とでパイル起毛したパイル生地Aから構成されている。
【0023】
このパイル生地Aを構成する地糸は、図2に示すように、一本の20番ないし30番の綿糸又は綿アクリル混紡糸あるいは20番ないし30番の毛糸又は毛アクリル混紡糸を糸素材とする脱臭性繊維糸からなる表糸1aと、20デニールのポリウレタンと70デニールのナイロンとからなる一本の裏糸1bとしての弾性糸(FTY)から構成されているとともに、前記パイル糸2は、表糸1aと同様に、一本の20番ないし30番の綿糸又は綿アクリル混紡糸あるいは20番ないし30番の毛糸又は毛アクリル混紡糸を糸素材とする脱臭性繊維糸から構成されている。パイル生地Aを構成する地糸である表糸1aとパイル糸20の各パイル形成部位をループ状に外方に突出させることにより、パイルP群を形成してある。ここで、この実施形態では、パイルPを構成する表糸とパイル糸とが同じ糸素材を用いた脱臭性繊維糸を使用した例を説明しているが、例えば、表糸よりも太い糸素材を用いてパイルP群をボリュームのある構成にしたものであってもよい。
【0024】
また、表糸1aとパイル糸2とに脱臭性繊維糸が用いられ、これら表糸1aとパイル糸20はループ状に外方に突出して糸表面が露出する状態になるので、脱臭性繊維糸の脱臭効果を十分に活用することができる。
【0025】
さらに、表糸1aとパイル糸20は、パイル形成部位を除く編地部位に編成されているので、生地表面に脱臭機能を形成することができる。
【0026】
このパイル生地Aは、裏面を形成する裏糸1bには脱臭性繊維糸を用いない構成になっているので、編成された裏面には裏糸1bが露出し、表面には表糸1aとパイル糸20が露出することになり、生地の表面側のみに脱臭効果を集中させる生地構造を形成することができる。
【0027】
また、この実施形態のパイル生地Aに脱臭性繊維糸が占める割合、つまり、混率は、約50%程度の構成になっている。
【0028】
この実施形態のパイル生地Aを試験片として、これを100ppmのアンモニア濃度の密閉空間内に収容して、2時間後のアンモニア濃度を測定した実験をした結果、2時間後では、0.5ppm未満となる脱臭性が測定された。
【0029】
また、酢酸、イソ吉草酸についても同様の実験を実施し同様な良好な結果が測定された。
【0030】
このような構成によれば、パイルP群を形成するパイル糸20と表糸1aの両者が脱臭性繊維糸から構成されているので、生地に占める脱臭性繊維糸の割合(混率)が約50%となり、そのほとんどを生地の表面に集中する構成になっているので、脱臭対象に表面を対面状態に使用することによって、無駄のない脱臭効果が得られる。
【0031】
尚、この第2実施形態の脱臭性生地Aは、パイルPを構成する表糸1aとパイル糸20が脱臭性繊維糸によって構成されている例を説明したが、パイル糸20のみを脱臭性繊維糸によって構成してもよく、この場合、表糸1aとパイル糸20とが脱臭性繊維糸によって構成されている場合に比べて、混率を低くすることができ、大きな脱臭効果を必要としない用途に用いることができる。
また、混率が低くなる分、一般の繊維糸よりも高価な脱臭性繊維糸の使用量も少なくなるので、脱臭効果がありながら安価な脱臭性生地を形成することができる。
【0032】
[別実施形態]
1)上記実施形態のパイル生地Aでは、裏糸に脱臭性繊維糸を用いない構成の脱臭性生地について説明したが、本発明はこれに限らず、裏糸に脱臭性繊維糸を用いた構成の脱臭性生地であってもよい。
【0033】
2)上記実施形態ではパイル生地からなる脱臭性生地について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、一本の20番ないし30番の綿糸又は綿アクリル混紡糸あるいは20番ないし30番の毛糸又は毛アクリル混紡糸を糸素材とする脱臭性繊維糸からなる表糸1aと、20デニールのポリウレタンと70デニールのナイロンとからなる一本の裏糸1bとしての弾性糸(FTY)から構成されているジャージ生地である脱臭性生地であってもよい。
この場合においても、生地の裏面には裏糸が露出し、表面には表糸である脱臭性繊維糸が露出する。
【0034】
3)上記実施形態の脱臭性生地はパイル生地Aから構成されたものについて説明したが、本発明はこれに限らず、織物や不織布を構成する生地に脱臭性繊維糸を用いるものであってもよい。
前記織物の場合、例えば、織地に編成されるパイル糸に脱臭性繊維糸を用いてもよい。
前記不織布の場合、例えば、繊維糸を層状に積層して構成された表面側に積層される繊維糸に脱臭性繊維糸を用い、裏面側に積層される繊維糸に脱臭性繊維糸ではない繊維糸を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】パイル生地の組織説明図
【図2】パイル生地の組織説明図
【符号の説明】
【0036】
A 脱臭性生地
P パイル
1a 表糸
1b 裏糸
2 パイル糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地の少なくとも表面に脱臭性繊維糸が露出する脱臭性生地。
【請求項2】
前記生地の地糸が、表糸と裏糸とから構成されているとともに、前記表糸をもってループ状に外方に突出するパイル群が編成され、前記表糸が脱臭性繊維糸から構成されている請求項1記載の脱臭性生地。
【請求項3】
前記生地の地糸が、表糸と裏糸とパイル糸とから構成されているとともに、表糸とパイル糸とによって、ループ状に外方に突出するパイル群が形成され、表糸とパイル糸のうち少なくともパイル糸が脱臭性繊維糸から構成されている請求項1記載の脱臭性生地。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−38261(P2008−38261A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210246(P2006−210246)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(504033670)株式会社ライフリング (2)
【出願人】(500101117)有限会社桑原ニット (3)
【Fターム(参考)】