説明

脱色フコイダンの製造方法

【課題】フコイダンを安全で且つ簡便に脱色することのできる技術を提供すること。
【解決手段】フコイダンを含有する溶液に、オゾンを0.5〜20.0g/hで導入することを特徴とする脱色フコイダンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオゾンを利用した脱色フコイダンの製造方法および当該方法により得られる脱色フコイダンに関する。
【背景技術】
【0002】
フコイダンはモズク、ワカメ、コンブ等の褐藻類に含まれるフコースを主成分とする硫酸化多糖の総称である。このフコイダンはアポトーシス誘発(特許文献1)、抗潰瘍(特許文献2)、感染症予防(特許文献3)等の作用が知られているため、薬剤、飲食品、化粧品等への利用が期待されている。
【0003】
しかしながら、褐藻類より抽出した状態のフコイダンは褐色であり、この色が薬剤、飲食品、化粧品等への利用の妨げとなっていた。
【0004】
これまで、フコイダンを脱色するために様々な試みがなさられていたが、フコイダンの褐色の原因が不明であるため、脱色に複雑な工程が必要であったり、脱色された場合でも脱色に用いる薬剤の残留やフコイダンの分解がなどの問題が懸念されることがあった。
【特許文献1】WO97/47208号国際公開パンフレット
【特許文献2】特開平7−138166号公報
【特許文献3】特開平11−80003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明はフコイダンを安全で且つ簡便に脱色することのできる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、フコイダンを含有する溶液にオゾンを導入することにより、簡便に脱色できることおよび脱色前後でフコイダン含量に殆ど変化がないことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明はフコイダンを含有する溶液に、オゾンを0.5〜20.0g/hで導入することを特徴とする脱色フコイダンの製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は上記製造方法により得られる脱色フコイダンを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の脱色フコイダンの製造方法は、オゾンを利用して脱色しているため安全であり、且つ脱色前後でフコイダン含量に殆ど変化のないフコイダンを得ることのできる優れた方法である。
【0010】
また、本発明の脱色フコイダンの製造方法は、簡便な装置で行うことができるので、容易にスケールアップすることのできる工業的に優れた方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の脱色フコイダンの製造方法(以下、「本発明製法」という)は、フコイダンを含有する溶液(以下、単に「フコイダン溶液」という)を原料とし、これを脱色する方法である。
【0012】
原料となるフコイダン溶液は脱色されていないフコイダン、すなわち褐色を呈し、特有の海藻臭を有するフコイダンを含有するものであれば特に制限されないが、例えば、モズク、ワカメ、コンブ等の褐藻類、好ましくはオキナワモズクから常法により調製されるフコイダンを含有する粗抽出液や、その乾燥物を水等に再溶解したもの等を用いることができる。また、このフコイダン溶液はフコイダンを0.1〜20.0質量%程度、特に0.1〜5.0質量%含有するものであることが好ましい。
【0013】
上記のフコイダン溶液中のフコイダンを脱色するにはオゾンを0.5〜20.0g/h、好ましくは1.0〜3.0g/hで導入すればよい。オゾンの導入時間は、脱色の度合いを見て適宜選択すればよいが、5〜120分、好ましくは10〜20分程度である。また、オゾンの導入方法は特に限定されないが、例えば、フコイダン溶液中に直接吹き込むことが好ましい。
【0014】
斯くして得られる脱色フコイダンは、その1.0gを100mlの水に溶解した場合に、450nmの吸光度が0.15以下、好ましくは0.10以下で、520nmの吸光度が0.05以下、好ましくは0.03以下のものである。また、脱色前後でフコイダン含量に変化が認められないので、脱色による基本構造の変化はないものと考えられる。
【0015】
また、本発明製法には、電気透析、限外濾過等による不純物除去、噴霧乾燥、凍結乾燥等による乾燥、精密濾過等による無菌濾過、超高温殺菌等による殺菌等の工程を追加することができる。
【0016】
このようにして得られるフコイダンは、脱色されているため、着色を嫌う各種の組成物、例えば、薬剤、飲食品、化粧品等の様々な分野への利用が可能である。
【実施例】
【0017】
参 考 例 1
オキナワモズク抽出液の調製:
オキナワモズクの50kgを50lの水に浸漬し、95℃で60分間加熱攪拌抽出を行い粗抽出液を得た。次いで、この粗抽出液から、遠心分離により固液を分離し、その上清をオキナワモズク抽出液とした。このオキナワモズク抽出液はフコイダンを1.8質量%含有するものであり、その外観色は褐色であった。
【0018】
実 施 例 1
脱色フコイダンの製造(1):
参考例1で調製したオキナワモズク抽出液500mlに、オゾン処理装置(ON-3-2:日本オゾン(株)製)を用いてオゾンを2g/hで導入した。オゾン導入後0、1、2.5、5、7.5、10分の520nmおよび450nmの吸光度を分光光度計(V-350型:日本分光(株)製)で測定した。また、15分後の脱色率を下記の式により求めた。
【0019】
(式1)
脱色率(%)=100−((脱色後の吸光度/脱色前の吸光度)×100)
【0020】
【表1】

【0021】
オゾン導入開始から、15分で約90%の脱色率が得られた。また、さらにオゾンの導入を続けるとほぼ無色にまで脱色することができた。
【0022】
実 施 例 2
脱色フコイダンの製造(2):
フコイダン((株)サウスプロダクト製)を0.1%、0.5%、1.0%含有する水溶液を調製し、これらに実施例1と同様にオゾンを2g/hで導入した。実施例1と同様に吸光度を測定し、脱色率を求めた。
【0023】
【表2】

【0024】
何れの濃度のフコイダン含有溶液においても褐色の溶液が、淡黄色もしくはほとんど無色となった。
【0025】
実 施 例 3
脱色フコイダンの製造(3):
フコイダン((株)サウスプロダクト製)を5%含有する水溶液を調製し、これに実施例1と同様にオゾンを2g/hまたは3g/hで導入した。実施例1と同様に吸光度を測定し、脱色率を求めた。
【0026】
【表3】

【0027】
フコイダンを5%含有する溶液については、何れのオゾン濃度でも時間経過と共に褐色の溶液が淡黄色に脱色され、脱色率はオゾン供給濃度が2g/hの場合20分で、3g/hでは15分で90%以上の脱色率となり、効率よく脱色されていることが確認された。
【0028】
実 施 例 4
脱色フコイダンの製造(4):
フコイダン((株)サウスプロダクト製)を5%含有する水溶液を調製し、これに実施例1と同様にオゾンを2g/hで導入した。実施例1と同様に吸光度を測定し、脱色率を求めた。また、脱色前後のフコイダン回収率をアンスロン硫酸法により求めた。
【0029】
【表4】

【0030】
脱色の間もフコイダンの含量はほとんど変化がなかった。
【0031】
実 施 例 5
脱色フコイダンの製造(5):
フコイダン((株)サウスプロダクト製)を5%含有する水溶液450mlに、オゾンを1g/hで30分間導入し、脱色標品を調製した。本標品の脱色率は85%であり、フコイダン回収率(%)は99.7%であった。次いで、この溶液に凍結乾燥処理を行い、海藻臭が除去され、淡黄色の脱色フコイダン粉末17.3gを得た。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の脱色フコイダンの製造方法によれば、脱色されたフコイダンを簡便に得ることができる。
【0033】
そして、上記方法により得られる脱色フコイダンは、従来の褐色のフコイダンと比較して、食品・飲料等に添加した場合に色の変化を抑えることができ、しかも、脱色前後でフコイダン含量に殆ど変化がないため、各種飲食品、化粧品、薬剤等の素材としての有利に使用することができるものであり、フコイダンの用途が広がり、フコイダン市場の拡大に繋がることが期待される。

以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコイダンを含有する溶液に、オゾンを0.5〜20.0g/hで導入することを特徴とする脱色フコイダンの製造方法。
【請求項2】
フコイダンを含有する溶液が、フコイダンを0.1〜20.0質量%含有するものである請求項第1項記載の脱色フコイダンの製造方法。
【請求項3】
フコイダンが、オキナワモズク由来である請求項第1項または第2項記載の脱色フコイダンの製造方法。
【請求項4】
請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の製造方法により得られる脱色フコイダン。


【公開番号】特開2006−143816(P2006−143816A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333404(P2004−333404)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(504426218)株式会社サウスプロダクト (15)
【Fターム(参考)】