説明

脱色素剤の形の、ニコチン酸またはニコチン酸アミドと関連したスフィンゴイド塩基の使用

本発明は、脱色素剤の形の、少なくとも1種のニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との連合を含んでなる組成物の使用に関する。
本発明の組成物を使用することにより、皮膚美白を促進すると同時に、任意の性質および起源の局所的皮膚色素沈着過度を制御することが可能になる。
関連する美容処置法、および色素沈着過度を制御するための皮膚用製剤を調製するための少なくとも1種のニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との連合の使用もまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との組合せを含んでなる組成物の新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の全体的な美白のため、または色素沈着を伴う局所的な問題から生じたシミの消失または減少のために、種々の状況下で皮膚の脱色素が望まれることがある。
【0003】
皮膚の色素沈着は、表皮および真皮内のメラニンの存在によって決定される。メラニンは、主に基底層に位置するメラニン形成細胞によって産生される。これらのメラニン形成細胞は、角膜実質細胞間のいたるところに樹枝状突起を出す。メラニンを産生するには、酵素、チロシナーゼの存在が必要である。この生合成は、メラニン形成とも呼ばれ、現在、比較的よく知られている複雑な過程である。
【0004】
従って、色素沈着は通常均一である。しかし、色素沈着は、局所的に過剰となることがあり、これは一般に色素沈着過度と呼ばれている。皮膚の色素沈着過度には、雀斑、老年性黒子、黒皮症、加齢斑、日焼けによる色素沈着、擦過傷、熱傷、創傷、昆虫刺傷、皮膚炎による炎症後色素沈着過度、および他の小さな局所的色素性病変を含む皮膚欠損または皮膚疾患を含めることができる。
【0005】
色素沈着過度に対する美容処置法は多数存在するが、完全に満足できるものはない。実際には、化学的スクラビングをはじめとするスクラビング法があり、また別法として、脱色素剤を利用してメラニン形成に影響を及ぼす方法もある。
【0006】
一般的に使用されている脱色素剤は、メラニン形成が行われる表皮メラニン形成細胞の活力に直接作用し、かつ/またはメラニン形成に関与する酵素の1つを阻害することによるか、もしくはメラニン合成連鎖の化合物の1つの構造的類似体として介在し、その結果、この連鎖が遮断され、したがって、確実に脱色素できることのいずれかによって、メラニン生合成段階の1段階を妨げる。
【0007】
脱色素剤は、いくつかのグループに分類できる:
−フェノール性化合物(これらのものには、特に以下の化合物が含まれる:
・ヒドロキノンおよびモノベンジルエーテルなどのそのエーテル、
・4−メトキシフェノール、
・4−イソプロピルカテコール、
・4−ヒドロキシアニソール、ならびに
・N−アセチル−4−S−シスタミニルフェノール(N-acetyl-4-S-cystaminylphenol))、
−非フェノール性化合物(これらのものには、特に以下の化合物が含まれる:
・コルチコステロイド、
・トレチノイン、
・アゼライン酸、
・N−アセチルシステイン(NAC)、
・アスコルビン酸およびL−アスコルビル−2−リン酸塩などの誘導体、ならびに
・コウジ酸)、
−これらの化合物の組合せ(これらとしては、Kligmanの処方、Pathakの処方またはWesterhofの処方が挙げられる)。
【0008】
さらに、ニコチンアミドまたはナイアシンアミドは、ビタミンPP、ビタミンB3またはナイアシンとも呼ばれ、脱色素特性についても知られている。国際公開99/47114号パンフレットには、皮膚の脱色素を目的とするのではなく皮膚の保湿のみを目的として使用される、ニコチン酸またはニコチンアミドとセラミドの中間体または前駆体とを本質的に含んでなる組成物も記載されている。
【0009】
さらに、セラミド前駆体であるフィトスフィンゴシンやスフィンゴシンのようなスフィンゴイド塩基がヒト皮膚に存在していることが分かっており、研究によって、これらの分子がプロテインキナーゼCに対して阻害特性を有し、表皮角化細胞の分化に関与している可能性が高いことがわかっている。また、表皮の角質層や他の層に存在するスフィンゴシンが特定の望ましくない微生物の増殖を阻害することも観察されている。
【0010】
種々の刊行物には、化粧料用および皮膚用組成物におけるスフィンゴシンの使用やフィトスフィンゴシンの使用が記載されている。例えば、国際公開第95/03028号パンフレットには、スフィンゴシンが記載されており、特定のα−ヒドロキシ酸の刺激効果を低減するために、5に近いpHで組成物に使用されている。欧州特許出願公開第940.140号明細書には、α−ヒドロキシ酸とセラミドまたはフィトスフィンゴシンなどのセラミド前駆体とを組み合わせた化粧料用組成物が記載されている。しかし、現在まで、スフィンゴイド塩基が脱色素剤として有効であることは見出されていなかった。
【0011】
欧州特許出願公開第919.226号明細書は、ニキビ抑制特性と、シワ取り特性と、皮膚美白特性とを有し得る、サリチル酸フィトスフィンゴシンをベースとする化粧料用組成物に関する。この組成物には、それらの周知の特性に従って使用されるビタミンA、CおよびEなどの当技術分野では一般的な種々の成分も含まれ得る。
【0012】
さらに、国際公開WO02/085362号パンフレットから、ニコチン酸またはニコチン酸アミドとスフィンゴイド塩基とを本質的に含んでなる組成物を、ヒトまたは動物の皮膚科学において角化状態の治療に使用できることが分かっている。とりわけ、この組合せ、特にビタミンPPなどのニコチン酸アミドとスフィンゴイド塩基との組合せは、座瘡、特に尋常性座瘡の治療やアトピー性皮膚炎の治療において有用であると記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、化粧品学分野において、色素沈着過度を処置するための別法を見出すこと、そのため脱色素特性を有する化合物を同定することがますます必要になっている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願者によって実施された研究によって、同じ組成物内にニコチン酸またはビタミンPPなどのニコチン酸アミドとスフィンゴイド塩基とを組み合わせることにより、脱色素に対する相乗作用が示された。
【0015】
よって、本発明の対象は、脱色素剤として、少なくともニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との組合せを含んでなる組成物の使用である。
【0016】
また、本発明の対象はまた、皮膚を脱色素する方法であり、この方法は少なくともニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との組合せを含んでなる組成物を露出部に塗布することにある。
【0017】
文献において、化粧品分野で使用できる化合物に皮膚に対する「美白特性」があると記載されていることがあるが、本発明の関連では、「脱色素特性」には、色素沈着過度を制御する特性に加えて、これらの「美白特性」も含まれる。
【0018】
それゆえに、本発明の対象は、さらに詳しくは、皮膚美白を促進するための少なくともニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との組合せの使用、および関連する美容処置法である。
【0019】
よって、本発明の対象はまた、さらに詳しくは、皮膚の色素沈着過度を制御するための少なくともニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との組合せの使用、および関連する美容処置法でもある。
【0020】
言い換えれば、本発明はまた、脱色素または美白作用を提供することによる、色素沈着斑を減じ、消失させまたは防止することを目的とする皮膚の美容処置法であって、少なくともニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との組合せを含んでなる組成物を露出部に塗布することである方法に関する。
【0021】
最後に、本発明の対象は、色素沈着過度を制御することを目的とする皮膚用組成物を調製するための、少なくともニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との組合せの使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
ニコチン酸アミドは、ニコチンアミドまたはビタミンPPであり得ることが好ましい。スフィンゴイド塩基は、スフィンゴシン、スフィンガニン、フィトスフィンゴシン、サリチロイルフィトスフィンゴシン、サリチル酸フィトスフィンゴシン、テトラアセチルフィトスフィンゴシン、N−アセチルフィトスフィンゴシンおよび塩酸フィトスフィンゴシンから選択できる。本発明によれば、好ましいスフィンゴイド塩基は、フィトスフィンゴシン、サリチロイルフィトスフィンゴシン(N−サリチロイルフィトスフィンゴシン)または塩酸フィトスフィンゴシンである。
【0023】
ニコチン酸またはニコチン酸アミドは、組成物の総重量に対して0.1重量%〜15重量%、好ましくは1%〜10%の割合で使用できる。スフィンゴイド塩基含量は、使用される塩基に応じて変動し得るが、一般には0.01%〜5%の間、好ましくは0.05%〜2%の間である。
【0024】
本発明の組成物に使用されるニコチン酸およびニコチン酸アミド、特にビタミンPPとスフィンゴイド塩基は、概して市販されているが、既知方法によって種々の適当な供給源から得ることもできる。
【0025】
例えば、スフィンゴイド塩基は、自然源から得ることができるし、化学合成や発酵によっても得ることができる。それらはまた、動物組織または植物組織から、抽出と精製によって得ることもできる。本発明に使用されるスピンゴイド塩基(spingoid bases)は、例えば、ピチア・シフェリ(Pichia ciferii)などの酵母から微生物発酵により調製されることが好ましく、このようにして得られたフィトスフィンゴシンには、ヒトまたは動物の皮膚のフィトスフィンゴシンとよく似ているという利点がある。本発明の好ましい実施形態によれば、テトラアセチルフィトスフィンゴシンから脱アセチル化により得られたフィトスフィンゴシンをスフィンゴイド塩基として用いる。脱アセチル化反応は、化学反応により、例えば、塩基性媒質における加水分解によって実施でき、または酵素反応によっても実施できる。
【0026】
上記組成物の本発明に従う使用に関して実施された試験では、ビタミンPPとフィトスフィンゴシンとの間で最も著しく脱色素活性の増強を提供する相乗作用が実証された。
【0027】
ビタミンPPは、主に角化細胞へのメラニン輸送の阻害機構を介して作用すると考えられているが、フィトスフィンゴシンは、紫外線曝露後のNFκBの移動を阻害すると考えられている。
【0028】
その使用が本発明の対象となる組成物に、別の脱色素剤を組み込むことが可能であり、その例の一覧は、序文において先に提供した。角質剥離剤、特に乳酸を、本発明の組成物と組み合わせることも可能である。こういった組成物の変形はすべて本発明の一部である。
【0029】
本発明に従って組成物に使用できる賦形剤および担体は、化粧用製剤に一般的に使用されているものであり、選択される投与形に応じて選択される。一例として、ゲル化剤、乳化剤、増粘剤、防腐剤、軟化剤、また香料が挙げられる。
【0030】
乳化剤は、高分子量カルボキシビニルポリマー、例えばカーボポール(Carbopol)(登録商標)、ポリソルベート、例えば、商標ツイーン(Tween)20(登録商標)やツイーン(Tween)60(登録商標)の下で販売されているもの、ソルビタンエステル、例えば、ステアリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンまたはラウリン酸ソルビタン(例えば、アラセル(Arlacel)(登録商標))から選択できる。使用できる乳化剤としてはまた、ステアリン酸またはパルミチン酸の種々の誘導体、例えば、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸プロピレングリコール、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸PEG100(登録商標)、ステアレスまたはセテアレス、またセスキオレイン酸ポリグリセリル−2、ポリオキシエチレンセチルエーテル、シロキサンポリグルコシド、または乳化シリコーンが挙げられる。
【0031】
ゲル化剤および増粘剤は、組成物の流動性を向上させるために、組成物に組み込まれる。それらは、例えば、カーボポールタイプのポリアクリルアミド、アクリレート/アクリル酸共重合体、例えば、アキュリン(Aculyn)(登録商標)、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、例えば、クルーセル(Klucel)(登録商標)、植物ムコ多糖、蜜蝋などの蝋、粘土またはキサンタンガムなどの天然ガムから選択できる。
【0032】
軟化剤は、脂肪アルコールまたはエステル、例えば、商標ソーテックス(Soothex)(登録商標)およびラムノソフト(Rhamnosoft)(登録商標)の下で販売されているイソステアリルアルコールや多糖類ソルビトールをベースとする製品から選択できる。一般に、当技術分野では一般的な軟化剤が本発明において適したものであり得る。
【0033】
紫外線から防御するための薬剤も、その使用が本発明の対象となる組成物に加えることができる。このような保護剤は、例えば、親水性または親油性のUV−AおよびUV−B日焼け止め剤であり、これらはベンゾフェノンもしくはベンゾフェノン誘導体、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(ユーソレックス(Eusolex)(登録商標)4360)、または桂皮酸のエステル、さらに詳しくはメトキシ桂皮酸オクチル(ユーソレックス(Eusolex)(登録商標)2292)、メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル(パーソル(Parsol)MCX(登録商標))、あるいはシアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、例えば、オクトクリレン(ユーソレックス(Eusolex)(登録商標)OCR)、4−メチルベンジリデンカンフル(ユーソレックス(Eusolex)6300(登録商標))、ならびにジベンゾイルメタン誘導体、例えば、4−イソプロピルジベンゾイルメタン(ユーソレックス(Eusolex)8020)、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン(パーソル(Parsol)1789(登録商標))および4−メトキシジベンゾイルメタンから選択できる。
【0034】
その使用が本発明の対象となる組成物には、紫外線遮断剤(anti-ultraviolet screen)を形成する顔料も加えることができ、これは、例えば、二酸化チタン(非晶質またはルチルまたはアナターゼ型の結晶)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、あるいは酸化アルミニウムから選択できる。特に5〜100nmの間の粒径を有する金属酸化物のナノ顔料を利用できる。
【0035】
また、有効成分の皮膚への浸透を促進できる、または改善できる溶媒を本発明の組成物に含めることが有利であり、例えば、非イオン性、両親媒性グリセロール誘導体、例えば、1,2−O−イソプロピリデングリセロール(ソルケタル(Solketal))を使用できる。
【0036】
本発明を実施するための組成物は、局所適用のために、皮膚科学的または化粧品学的適応症に適した通常の医薬剤形のいずれかで提供できる。
【0037】
それらは、例えば、水性、油性もしくは水性−アルコール性液剤、分散剤、漿剤、ゲル剤(水性、無水もしくは親油性)、ミセルローション剤、水性−アルコール性ローション剤、噴霧用液剤、懸濁剤、イオン性もしくは非イオン性気泡分散剤、液体もしくは半液体エマルション剤(例えば、乳剤)、または固体もしくは半固体エマルション剤の形で提供できる。エマルション剤は、水中油型(O/W)または油中水型(W/O)のもの、例えば、ゲルまたはクリームであり得る。
【0038】
その使用が本発明の対象となる組成物は、状態の持続期間に適した期間、1日1回以上の塗布という程度で、皮膚に直接塗布できる。例えば、50〜60歳の個体における中程度の強度の色素沈着斑の処置の場合では、6〜8週間の連続した期間、1日2回、本発明の組成物を塗布することにより好結果が得られる。
【0039】
次の実施例によって本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0040】
ボランティアに対する盲検試験を日照期間において実施した(1製品当たりボランティア8名)。この調査は、使用「前」対使用「後」の様式での手の背側皮膚の色のパラメーターの総括的評価に基づいている。手全体に製品を塗布し、その効果を、事前に選択した色素沈着斑と斑のない領域(《対照》部位と呼ぶ)において評価した。試験期間中の日照時間に関連して紫外線の影響を受けて現れやすい色素沈着過度の危険性を最小にするために、各ボランティアは手に日焼け防止クリームを使用した。
【0041】
次のパラメーターを調査した:
−斑の幾何学(大きさ)、
−斑および《対照》部位におけるメラニン指数、ならびに
−斑および《対照》部位における輝度(L)。
【0042】
この解析は、塗布された製品に関する調査の初日と最終日の間のパラメーターの漸進的変化に関する。
【0043】
調査した製品の組成は、以下のとおりである:
【0044】
【表1】

【0045】
このように、処方1はプラシーボ処方であり、処方2はビタミンPPを濃度5%にて含有する《活性ベース》をベースとし、それにスフィンゴイド塩基が添加されている。一方で処方3は同一用量のビタミンPPを含有するが、フィトスフィンゴシンは含まない。処方4および5は、記載された脱色素剤、すなわち、オクタデセン二酸(アラトンジオイック(Arlatone dioic))およびアミノエチルホスフィン酸(アルバチン(Albatin))を含有する市販の組成物である。
【0046】
得られた結果を示す:
−処方1、2および3については、斑の幾何学は経時的に有意には変化しない。
−処方2については、斑および《対照》領域において皮膚の輝度(L)が高まる(皮膚の色が明るくなる)。
−処方2については、斑および《対照》領域においてメラニン指数が低下する(存在するメラニンが少なくなる)。
【0047】
プラシーボ処方(処方1)およびビタミンPPを含有しているがフィトスフィンゴシンを含有していない処方3については、サンプロダクトを使用しているにもかかわらず、経時的に、メラニン指数が、同程度に、著しく上昇する。同じことが処方4および5にも言え、これらはメラニン指数および輝度に対して実質的な影響を及ぼさない。一方、処方2を使用した場合には、このメラニン指数の低下が観察される。観察される低下は、《対照領域》においてよりも色素沈着斑において強い。
【0048】
処方2について、ボランティアの63%(8名中5名)が、《はい、明らかに》と《はい、おそらくは》と評価される斑の色の軽減を指摘したことも強調しなければならない。
【0049】
概して、この調査により、脱色素剤として、ビタミンPPと0.1%サリチロイルフィトスフィンゴシンとの組合せの利点が確認される。
【0050】
さらに、抗チロシナーゼ活性の比較調査により、ビタミンPPとフィトスフィンゴシンとの組合せから生じる脱色素作用の増強を実証することが可能であった。
【0051】
抗チロシナーゼ活性は、組成物の脱色素活性のin vitroにおける指標として認識されている。
【0052】
2種類の市販されている既知脱色素処方(AおよびB)と本発明の処方(処方C)を比較することにより試験を実施した:
処方A:市販の組成物(トリオ(TRIO) D(登録商標))
処方B:市販の組成物(トリオ(TRIO) A(登録商標))
処方C:以下の実施例5と同一。
【0053】
トリオ(TRIO) Dは、乳酸アンモニウム、アスコルビン酸および濃度0.1%のグラブリジン(glabridine)をベースとする脱色素組成物である。トリオ(TRIO) Aは、同じ有効成分と濃度0.2%のグラブリジンとを含む。本発明の処方Cは、同じ濃度の、抗チロシナーゼ活性で知られている化合物であるフラブリジン(flabridine)を含有する。
【0054】
試験は従来の測定技術に従って実施し、組成物は、チロシン溶液500μlとチロシナーゼ溶液500μlを含むpH6.8の緩衝されたエタノール溶液中にあり、使用される対照は、脱色素剤を含まないことを除いて全く同じである。対照ブランクは、チロシナーゼを同量の水と置き換えたことを除いて対照と全く同じである。同様に、試験ブランクは、調べようとする処方の同じサンプルを用い、チロシナーゼを同量の水と置き換えて調製する。
【0055】
組成物を、暗所、37℃の水浴中で1時間インキュベートした後、調べられる処方を含む試験管を約18℃の冷水浴で冷却する。溶液の吸光度を10mmキュベットにおいて475nmで測定する。
【0056】
これらの結果を以下の表に示す:
【0057】
【表2】

【0058】
製品1mg量の平均阻害度は、製品1mg量に関連して各処方の測定値(1処方当たり3回の測定)の平均を計算して得た。
【0059】
したがって、本発明の処方Cが参照処方よりも著しく高い抗チロシナーゼ活性を示しており、その結果、より強力な脱色素能力がもたらされることに留意されたい。特に、同量のグラブリジンを含有する処方Bと比較して阻害度が2倍になっていることに留意されたい。このことにより、ビタミンPPとフィトスフィンゴシンとの組合せの脱色素に関する効果が実証される。
【0060】
以下の実施例は、その使用が本特許出願の対象となる組合せを含む処方に関する。成分名称は、INCI命名法に由来する。
【実施例2】
【0061】
脱色素エマルション
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド 5.00%
PPG−15ステアリルエーテル 5.00%
アラキジルアルコール(および)ベヘニルアルコール(および)アラキジルグルコシド
3.00%
サリチロイルフィトスフィンゴシン 0.10%
ステアリン酸PEG−100(および)ステアリン酸グリセリル 1.50%
セチルアルコール 1.00%
ジメチコン 1.00%
水 適量 100
キサンタンガム 0.30%
防腐剤 適量
香料 適量
ニコチンアミド 5.00%
乳酸 5.00%
塩基 適量 pH=4.5
【実施例3】
【0062】
脱色素エマルション
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド 5.00%
PPG−15ステアリルエーテル 5.00%
パルミチン酸イソプロピル 4.00%
サリチロイルフィトスフィンゴシン 0.10%
ステアレス−2 3.00%
ステアレス−21 2.00%
ステアリン酸PEG−100(および)
ステアリン酸グリセリル 1.00%
セチルアルコール 1.00%
ジメチコン 1.00%
水 適量 100
キサンタンガム 0.30%
防腐剤 適量
香料 適量
グラブリジン 0.20%
ニコチンアミド 5.00%
ウンデシラノイルフェニルアラニン
(undecylanoyl phenylalanine) 2.00%
酸/塩基 適量 pH=4.5
【実施例4】
【0063】
アルコール性ゲル
アルコール 適量 100
シクロペンタシロキサン 13.00%
プロピレングリコール 16.00%
ニコチンアミド 4.00%
C12/15アルキル安息香酸塩 12.00%
グラブリジン 0.20%
サリチロイルフィトスフィンゴシン 0.20%
【実施例5】
【0064】
溶液
カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド 12.00%
ソルケタール 48.00%
フィトスフィンゴシン 0.10%
ニコチンアミド 5.00%
アルコール 適量 100

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱色素剤として、少なくともニコチン酸またはニコチン酸アミドと少なくとも1種のスフィンゴイド塩基との組合せを含んでなる組成物の使用。
【請求項2】
スフィンゴイド塩基がスフィンゴシン、スフィンガニン、フィトスフィンゴシン、サリチロイルフィトスフィンゴシン、サリチル酸フィトスフィンゴシン、テトラセチルフィトスフィンゴシン、N−アセチル−フィトスフィンゴシンおよび塩酸フィトスフィンゴシンから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
スフィンゴイド塩基がフィトスフィンゴシン、サリチロイルフィトスフィンゴシンまたは塩酸フィトスフィンゴシンから選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ニコチン酸アミドがニコチンアミドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
組成物中のスフィンゴイド塩基含量が組成物の総重量に対して0.01%〜5%の間である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
スフィンゴイド塩基含量が組成物の総重量に対して0.05%〜2%の間である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
組成物中のニコチン酸含量またはニコチン酸アミド含量が組成物の総重量に対して0.1重量%〜15重量%の間である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
組成物中のニコチン酸含量またはニコチン酸アミド含量が組成物の総重量に対して1重量%〜10重量%の間である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
皮膚美白を促進するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
色素沈着過度を制御するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
脱色素作用を提供することによる、色素沈着斑を減じ、消失させまたは防止することを目的とする皮膚の美容処置法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を露出部に塗布することである方法。
【請求項12】
皮膚美白を促進することを目的とする、請求項11に記載の美容処置法。
【請求項13】
皮膚の色素沈着過度を制御することを目的とする、請求項11に記載の美容処置法。
【請求項14】
色素沈着過度を制御することを目的とする皮膚用組成物を調製するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2007−532521(P2007−532521A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506814(P2007−506814)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000864
【国際公開番号】WO2005/102337
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(503128814)
【Fターム(参考)】