説明

腎不全を治療するための方法

本発明は、腎不全を予防又は治療するための方法に関する。詳細には本発明は、腎不全を予防又は治療するための方法であって、IL−6ファミリーのメンバーの可溶性受容体と結合したIL−6ファミリーのメンバー、又はそれをコードする単離ポリヌクレオチドを含む複合体、gp130介在シグナル経路を活性化することができる複合体を対象に投与し、それによって急性又は慢性腎不全を予防又は治療することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎不全を予防又は治療するための方法に関する。詳細には本発明は、腎不全を予防又は治療するための方法であって、IL−6ファミリーのメンバーの可溶性受容体と結合したIL−6ファミリーのメンバー、又はそれをコードする単離ポリヌクレオチドを含む複合体を対象に投与することを含む方法に関する。この複合体はgp130介在シグナル経路を活性化することができ、それによって急性又は慢性腎不全を予防又は治療する。
【背景技術】
【0002】
急性腎不全(ARF)は、依然として入院患者の罹病及び死亡の主な原因であり、病院への入院の5〜7%及び集中治療室への入院の30%までの経過を悪化させる。ARF症例の約40%は急性尿細管壊死(ATN)として定義される。ATNはさらに、非腎臓起源の疾患に罹患している患者における重度の腎機能障害(いわゆる腎前性及び腎後性腎不全)の最終的な一般経路である。
【0003】
インターロイキン−6(IL−6)は、白血病抑制因子(LIF)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、IL−11、及びオンコスタチンM(OSM)を含むサイトカインのファミリーのメンバーであり、広範に(ubiquitously)発現するシグナル伝達タンパク質、gp130の少なくとも1つのサブユニットを含む受容体複合体を介して作用する。
【0004】
標的細胞においてIL−6は、gp130を誘発し、ヤヌスキナーゼ(Jak)/シグナル伝達及び転写の活性化因子(signal transduction and activator of transcription)(STAT)シグナル経路の活性化、特にSTAT−3の活性化をもたらす、インターロイキン−6受容体(IL−6R)と称される特定の同種(cognate)受容体と結合することによって作用する。広範に発現するgp130と異なり、IL−6Rの細胞内分布は肝細胞、及び単核細胞、好中球、及び幾つかのT細胞及びB細胞を含む幾つかの白血球亜群を含めた数種の細胞型に限られている。しかしながらIL−6Rは、可溶形でも存在し(sIL−6R)、これはIL−6と共にgp130との直接の相互作用によって細胞を刺激する複合体を生成する。重要なことに、IL−6トランス−シグナリングと呼ばれるプロセスでは、IL−6/sIL−6R複合体は細胞型に対してアゴニストとして作用するが、それらはIL−6単独には本来応答しないはずであるgp130を発現する。
【0005】
柔軟なペプチド鎖によってsIL−6Rと結合したヒトIL−6からなる、Hyper−IL−6と呼ばれる組換え融合タンパク質は、スーパーアゴニスト設計サイトカインであることが示された(Fischer、M.、et al.Nat.Biotechnol.15:142〜145、1997)。Hyper−IL−6は、gp130発現細胞に対して非結合IL−6とsIL−6Rの組合せより活性があり、in vitroとin vivoの両方でスーパーアゴニスト効果を示すことが分かった(Peters、M.、et al.J.Immunol.161:3575〜3581、1998)。
【0006】
Galun et alの米国特許第5,919,763号は、IL−6/sIL−6R複合体、好ましくはHyper−IL−6を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象の肝臓に対する傷害を治療するための方法を開示している。
【0007】
Galun et alの国際出願公開番号WO99/62534は、IL−6/sIL−6R複合体、好ましくはHyper−IL−6を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、対象の肝臓に対する傷害を治療するための方法を開示している。WO99/62534はさらに、Hyper−IL−6キメラ遺伝子を有するベクターを対象に投与することを含む、対象の肝臓に対する傷害を治療するための遺伝子療法の方法を開示している。
【0008】
Axelrod et alの国際出願公開番号WO03/029281は、IL−6ファミリーの組合せ要素及び肝臓再生因子を含む治療用組成物を開示しており、IL−6ファミリーの組合せ要素はIL−6/sIL−6R複合体であることが好ましい。WO03/029281はさらに、IL−6ファミリーの組合せ要素及び肝臓再生因子を含む治療用組成物であって、プラスミドによってコードされるIL−6ファミリーの組合せ要素及び肝臓再生因子の少なくとも1つを投与する、治療用組成物を対象に投与することを含む、対象における病状を治療するための方法を開示している。列挙された病状の中で、腎不全を含めた腎臓疾患を示す。
【0009】
白血病抑制因子(LIF)及びLIF受容体のmRNA発現は、急性腎不全後の回復期中に著しく増大したことが示された(Yoshino、J.et al.、J.Am.Soc.Nephrol.14:3090〜3101、2003)。LIFのmRNA及びタンパク質の増大した発現は、近位尿細管のS3部分において最も顕著であった。LIFが実験的急性腎不全の後の尿細管再生に関与することが示唆された(Yoshino、J.、et al.同書)。しかしながら、ARF後にLIF単独又はLIF可溶性LIF受容体複合体によって腎臓再生を誘導するための、具体的な可能性又は指針は与えられていない。
【0010】
国際出願公開番号WO2005/113591は、可溶性IL−11受容体(sIL−11R)及びIL−11からなる融合ポリペプチド、並びに増殖疾患、細胞障害、放射線障害、IL−11依存性炎症傷害、IL−11依存性変性傷害、及びIL−11依存性又は介在性軟組織障害を治療するためのその使用を開示している。
【0011】
IL−6はグリセロール誘導型ARFを有するラットにおいて尿細管再生を刺激することが示された(Homsi、E.、et al.、Nephron92:192〜199、2002)。これらのラットに投与されたIL−6は、皮質及び髄質中で尿細管細胞増殖の相当な増大を引き起こしたが、これらのラットにおける腎機能の回復を促進させることはできなかった(Homsi、E.、et al.同書)。
【0012】
腎機能を維持するか或いは回復させそれによって腎不全によって引き起こされる死亡を減らす、腎不全を治療又は予防するための改善された方法を有することは、非常に有利であるはずである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、活性物質としてgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象における腎不全を治療又は予防するための新たな方法を提供する。本発明はさらに、活性物質としてgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、腎不全を治療又は予防するための方法を提供する。本発明はさらに、活性物質として、gp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含有する医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、腎不全を治療又は予防するための方法を提供する。
【0014】
本明細書でHyper−IL−6又はHIL−6と表すIL−6/可溶性IL−6受容体(sIL−6R)複合体、又はHyper−IL−6をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、急性腎不全(ARF)をもたらす急性尿細管壊死(ATN)の発症を予防することができることを、ここで初めて開示する。Hyper−IL−6を用いた試験動物の前処置は、ARFの発症から試験動物を保護し、したがって治療する動物の寿命を延ばす。
【0015】
さらに、Hyper−IL−6は腎臓尿細管を壊死から保護することができることを開示する。腎臓尿細管を壊死又は不全から保護することは、gp130介在シグナルカスケードと関係がある。予想外に、gp130介在シグナルカスケードの活性化及びARFの予防は、Hyper−IL−6などのサイトカイン/可溶性サイトカイン受容体複合体ポリペプチドを投与することによってだけでなく、Hyper−IL−6などのサイトカイン/可溶性サイトカイン受容体複合体をコードする単離ポリヌクレオチドを含むプラスミドを投与することによっても実施することができる。驚くことに、プラスミドの全身投与は、Hyper−IL−6などのサイトカイン/可溶性サイトカイン受容体複合体の保護又は予防効果を達成する点で非常に有効である。したがって本発明の方法は、尿細管壊死及びARFを予防するのに、腎不全に対して保護するのに、及び腎機能の全体的な維持に非常に有用である。
【0016】
一態様によれば本発明は、対象における腎不全を予防又は治療するための方法であって、活性物質としてgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチド、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を対象に投与し、それによって腎不全を治療又は予防することを含む方法を提供する。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、医薬組成物内の少なくとも1つのポリペプチドは、IL−11、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CTC)、及びこれらの生物活性類似体、変異体及び塩からなる群から選択されるIL−6ファミリーのメンバーである。
【0018】
他の実施形態によれば、少なくとも1つのポリペプチドは、IL−6ファミリーのメンバーの可溶性受容体と結合したIL−6ファミリーのメンバーを含む複合体である。幾つかの実施形態によれば、対象に投与する医薬組成物は、外来性肝臓再生因子を含まない前記複合体を活性物質として含む。他の実施形態によれば、対象に投与する医薬組成物は、外来性増殖因子を含まない前記複合体を活性物質として含む。他の実施形態によれば、対象に投与する医薬組成物は、外来性免疫グロブリン又はその断片を含まない前記複合体を活性物質として含む。
【0019】
他の実施形態によれば、複合体は、IL−6/可溶性IL−6受容体(sIL−6R)複合体、IL−11/可溶性IL−11受容体(sIL−11R)複合体、LIF/可溶性LIF受容体(sLIFR)複合体、OSM/可溶性OSM受容体(sOSMR)複合体、CNTF/可溶性CNTF受容体(sCNTFR)複合体、CT−1/可溶性CT−1受容体(sCT−1R)複合体、CTC/可溶性CTC受容体(sCTCR)複合体、及びこれらの生物活性類似体、変異体及び塩からなる群から選択される。一実施形態によれば、複合体はIL−6/sIL−6R複合体、好ましくはHyper−IL−6である。他の実施形態によれば、複合体はIL−11/sIL−11Rである。他の実施形態によれば、複合体はLIF/sLIFRである。さらに他の実施形態によれば、複合体はOSM/sOSMRである。さらに他の実施形態によれば、複合体はCNTF/sCNTFRである。他の実施形態によれば、複合体はCT−1/sCT−1Rである。他の実施形態によれば、複合体はCTC/sCTCRである。
【0020】
他の実施形態によれば、gp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドは、gp130に対するモノクローナル抗体、gp130に対するポリクローナル抗体、及びgp130介在シグナル経路を活性化することができる小さな合成分子からなる群から選択される。
【0021】
他の態様によれば本発明は、対象における腎不全を予防又は治療するための方法であって、活性物質として本発明の原理によりgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、及び薬剤として許容される担体を含有する医薬組成物を対象に投与することを含み、それによって腎不全を予防又は治療する方法を提供する。
【0022】
さらに他の態様によれば本発明は、対象における腎不全を予防又は治療するための方法であって、活性物質として本発明の原理によりgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を対象に投与することを含み、それによって腎不全を予防又は治療する方法を提供する。
【0023】
幾つかの実施形態によれば、発現ベクターは裸DNA分子又はRNA分子、プラスミド及びウイルスベクターからなる群から選択される。
【0024】
さらに他の態様によれば本発明は、対象における腎不全を予防又は治療するための方法であって、活性物質として本発明の原理によりgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクトした宿主細胞、及び薬剤として許容される担体を含有する医薬組成物を対象に投与することを含み、それによって腎不全を予防又は治療する方法を提供する。
【0025】
他の実施形態によれば、本発明の医薬組成物のいずれかを用いて治療する腎不全は、急性腎不全、慢性腎不全、及び末期腎不全からなる群から選択される。本発明の例示的な実施形態によれば、本発明の医薬組成物のいずれかを用いて治療する腎不全は、急性腎不全である。
【0026】
治療する急性腎不全は、抗生物質、抗真菌剤、放射性造影剤、造影剤、化学療法剤、金属、有機溶媒、及び四塩化炭素からなる群から選択される薬剤物質、診断用物質、又は毒性物質に対する対象の使用又は曝露から生じる可能性がある。
【0027】
他の実施形態によれば、本発明の医薬組成物のいずれかを用いて治療する急性腎不全は、ミオグロビン尿症横紋筋融解症、ヘモグロビン尿症、アテローム塞栓症、腎動脈閉塞、血管炎、溶血性尿毒症症候群、血栓溶解血小板減少性紫斑病、ヴェグナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、グッドパスチャー症候群、急性糸球体腎炎、急性過敏性間質性腎炎、高カルシウム血症、尿路閉塞、急性尿酸腎症、腎盂腎炎、乳頭壊死、肝腎障害症候群、高血圧、細菌性敗血症、全身性炎症ショック、真菌血症、急性ウイルス性疾患、重度の体液量減少、火傷、外科的処置、虚血再灌流、及び産後合併症からなる群から選択される疾患、障害、又は状態に関して生じる可能性がある。
【0028】
さらに他の実施形態によれば、慢性腎不全には慢性糖尿病性腎障害、糖尿病性糸球体症、糖尿病性腎肥大、高血圧性腎硬化、高血圧性糸球体硬化、腎形成異常、糸球体肥大、尿細管肥大、糸球体硬化及び尿細管間質硬化があるが、これらだけには限られない。
【0029】
幾つかの実施形態によれば、本発明の医薬組成物のいずれかを投与する経路は局所、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、及び経口投与経路からなる群から選択される。例示的な実施形態によれば、本発明の医薬組成物の投与は静脈内投与による投与である。
【0030】
本発明のこれら及び他の実施形態は、以下の図面、記載、実施例及び特許請求の範囲に関連してさらに理解されるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
急性腎不全は、腎機能の急な停止又は実質的な低下として定義し、90〜95%もの多くの症例において、外傷、外科手術又は他の急性の医学的状態に付随する可能性がある。急性腎不全は、前腎性の原因(例えば、低い心搏出量、血液量減少、変化した血管耐性)、或いは腎臓とは直接関係がなく、迅速に治療した場合、ネフロンの顕著な消失又は腎臓に対する他の傷害を伴わない後腎性の原因(例えば、尿管、膀胱又は尿道の閉塞又は狭窄)によることがある。或いは急性腎不全は、腎臓に対するより直接的な損傷又は傷害と関係があり、ネフロン又は他の腎臓構造に対する永続的な傷害を伴う可能性がある内因性の腎性の原因によることがある。急性腎不全の内因性の原因には、感染疾患(例えば、様々な細菌、ウイルス又は寄生虫感染)、炎症疾患(例えば、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス)、虚血(例えば、腎動脈閉塞症)、毒性症候群(例えば、重金属中毒、抗菌治療又は化学療法の副作用)、及び直接的外傷があるが、これらだけには限られない。
【0032】
慢性腎不全は、ネフロンの相当且つ連続的な消失による糸球体濾過率(GFR)の進行的、永続的且つ相当な低下として定義することができる。慢性腎不全は典型的には、慢性的な腎機能不全(即ち、少なくとも50〜60%の腎機能の永続的な低下)が、腎臓組織に対する何らかの損傷を生じネフロン単位の相当な消失を引き起こした時点から始まる。初期の損傷は急性腎不全の発病に附随することも附随しないこともある。ネフロンは累進的に消失しGFRは累進的に低下するので、初期の損傷の性質とは無関係に、慢性腎不全は徴候及び症状の「最終共通経路」を示す。
【0033】
慢性腎不全の初期段階は、典型的には、GFRが正常の約3分の1(例えば、平均的なヒト成人に関して30〜40ml/分)まで低下すると始まる。相当なネフロンの消失の結果として、少ないネフロンでの全体のGFRを保つための見かけ上の「試み」において、1ネフロンの平均GFR(SNGFR)は、構造レベルと機能レベルの両方で残存ネフロンを適合させることによって増大する。バイオプシーサンプルの顕微鏡による検査によって容易に検出することができる、この適合の1つの構造的兆候は、腎臓の糸球体と尿細管の両方の「代償性肥大」、糸球体及び尿細管の文字通りの肥大によりそれぞれ残存ネフロンによって生成され得る濾液の体積を、文字通り増大させるプロセスである。同時に、通常排出される溶質の低下した吸収又は増大した分泌などの、残存ネフロンの機能的変化があり、これらは身体中の他の場所のホルモン又はパラクリンの変化(例えば、血清中のカルシウム及びリン酸レベルの変化に応じた副甲状腺ホルモン(PTH)のレベルの増大)に対する応答であると思われる。
【0034】
初期段階の慢性腎不全におけるこれらの適合は、GFR又は腎機能の他のパラメータを完全に回復させることはできず、実際に、残存ネフロンが消失する危険を増大する。例えば、SNGFRの増大は、高血圧及び過灌流による糸球体に対する機械的ストレスと関係がある。メサンギウム、上皮及び内皮細胞における増殖効果、並びにコラーゲン及び他のマトリクスタンパク質の沈着の増大も観察される。糸球体と尿細管の両方の硬化は肥大ネフロンの他の一般的な症状であり、糸球体における凝固の危険が増大する。特に、残存ネフロンのこれらの適合は、SNGFRをその通常レベルよりかなり超えて押し上げることによって、水、溶質、又は酸充填の急な変化に応答する残りのネフロンの能力を実際に低下させるため、さらなるネフロン消失の可能性を実際に増大する。
【0035】
慢性腎不全が進行し、GFRが正常の10%未満(例えば、5〜10ml/分)まで低下し続けると、対象は末期腎不全(ESRD)に突入する。この段階中、有用な生成物を保持し体液と電解質のバランスを保ちながら、残りのネフロンが血液から老廃物を適切に除去できないことは、多くの器官系、特に心臓血管系が衰え始める可能性がある急速な衰弱をもたらす。例えば、血中尿素窒素(BUN)及びクレアチニンレベルが上昇する可能性があり、60〜100mg/dlのBUNレベル及び8〜12mg/dlの血清中クレアチニンレベルで、腎臓が窒素代謝の最終産物をもはや除去することができない尿毒症性症候群を、典型的に発症する。この時点で、対象が腎代償療法(即ち、慢性血液透析、連続的な腹膜透析、又は腎臓移植)を受けない限り、腎不全が急速に進行して死に至る。
【0036】
したがって本発明は、対象における腎不全を予防又は治療するための方法であって、活性物質としてgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドを含有する医薬組成物を対象に投与することを含み、それによって腎不全を治療又は予防する方法を提供する。本発明は、活性物質が本発明の少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、前記少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター、又は本発明の発現ベクターでトランスフェクトした宿主細胞である医薬組成物を含む。
【0037】
本発明によれば、gp130介在シグナル経路を活性化することができるポリペプチドには、gp130介在シグナル経路を活性化することができるIL−6ファミリーのメンバー、例えばIL−11、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CTC)、及びこれらの生物活性類似体、断片、又は塩などがあるが、これらだけには限られない。本明細書においてIL−6が、腎不全を予防するのに有用ではないことが示されていることは理解されるべきである(後述の実施例を参照)。
【0038】
本発明の原理によれば、gp130介在シグナル経路を活性化することができるポリペプチドは、IL−6ファミリーのメンバーの可溶性受容体と結合したIL−6ファミリーのメンバーを含む複合体も含む。IL−6ファミリーのメンバー及び対応する可溶性サイトカイン受容体の複合体が、gp130介在シグナル経路を活性化することができることは当技術分野で知られているので、本発明は、IL−6/可溶性IL−6受容体(sIL−6R)、IL−11/sIL−11R、LIF/sLIFR、OSM/sOSMR、CNTF/sCNTFR、CT−1/sCT−1R、CLC/sCLCR、及びgp130介在シグナル経路を活性化することができるこれらの生物活性類似体、断片、又は塩を含む複合体を企図するがこれらには限られない。
【0039】
用語「gp130介在シグナル経路」は、例えばJak/Statシグナル経路、特にSTAT−3、Ras−MAPKシグナル経路などの細胞内経路の活性化をもたらすgp130を含む受容体複合体の形成を指す。如何なる理論にも縛られずに、gp130を含む受容体複合体の形成は、gp130がIL−6ファミリーの任意のメンバーの受容体との受容体複合体中で二量体又はヘテロ二量体として存在しようとしまいと、当技術分野で知られている細胞内経路の活性化をもたらすgp130の立体配座の変化を伴う可能性がある。
【0040】
用語「生物活性」は、gp130シグナル経路を活性化して細胞内経路の活性化をもたらす本発明の任意のポリペプチドの能力を指す。したがって、用語「生物活性」と「gp130シグナル経路の活性化」は、本明細書を通じて交換可能である。
【0041】
本発明の原理を、IL−6/可溶性IL−6Rポリペプチド複合体によって本明細書で以下に例示する。しかしながら、本発明の医薬組成物は、その対応する可溶性受容体と結合したIL−6ファミリーのメンバーを含む任意のポリペプチド複合体であって、その複合体がgp130シグナル経路を活性化させ、それによって腎不全を治療又は予防することができる複合体を含むことを明らかに意図する。
【0042】
用語「IL−6/sIL−6R複合体」は、IL−6タンパク質と可溶性IL−6受容体(SIL−6R)タンパク質の両方を特徴とする二分子タンパク質複合体、及び以前に記載されたのと実質的に同様の(完全に述べるが如く参照として本明細書に組込まれる、国際特許出願公開番号WO97/32891;WO99/62534;WO03/02981;Fischer、M.、et al.Nat.Biotechnol.15:142〜147、1997;及びPeters、M.、J.Imnunol.161:3575〜3581、1998を参照)柔軟なリンカーと結合した、IL−6及びsIL−6R、好ましくはIL−6及びsIL−6Rの生物活性部分を含む単分子タンパク質、並びにこれらの任意の生物活性類似体又は断片を指す。IL−6に関するアクセッション番号はM14584(GenBankタンパク質配列データベース)であり、且つ可溶性IL−6受容体に関してはM57230、M20566、及びX12830である。
【0043】
二分子タンパク質複合体は、IL−6及びsIL−6R又は任意の他のIL−6ファミリーのメンバー、及びその対応する可溶性受容体を任意のオーダーで、並びにその生物活性類似体又は断片を含む。用語「生物活性類似体」は、IL−6、IL−11、LIF、OSM、CNTF、CT−1、CLC、sCLCRだけには限られないがこれらを含めたIL−6ファミリーのメンバーと相同な(homologous)任意のポリペプチド、及びsIL−6R、sIL−11R、sLIFR、sOSMR、sCNTFR、sCT−1Rだけには限られないがこれらを含めたIL−6ファミリーのメンバーの可溶性受容体と相同的な任意のポリペプチドを指し、相同的なポリペプチドは元のポリペプチドの生物活性を保ちながら任意のアミノ酸置換、欠失、又は付加を含む。例えば、IL−6/sIL−6R複合体の生物活性類似体は、gp130として知られるIL−6/sIL−6R複合体の膜受容体又はgp130の下流シグナルの少なくとも1つの要素を直接活性化する能力を保っているはずである。本発明は本明細書で開示するポリペプチドの断片を含む、ただしそれらの断片はポリペプチドの元の生物活性を保っているものとする。
【0044】
用語「Hyper−IL−6」は、国際特許出願公開番号WO97/32891中に記載されたのと実質的に同様の、その参照文献中で「H−IL−6」と呼ばれる柔軟なリンカーと結合したIL−6及びsIL−6Rの生物活性部分を含む単分子タンパク質を指す。
【0045】
用語「リンカー」は、IL−6ファミリーの任意のメンバーとその対応する可溶性受容体を結合させるのに適した、任意の種類のリンカーを指す。このようなリンカーの例には二官能性、化学架橋剤、IL−6ファミリーのメンバーの第一アミノ酸と対応する可溶性受容体の第二アミノ酸を結合させるジスルフィド架橋、及びペプチド又はポリペプチドがあるが、これらだけには限られない。
【0046】
単分子タンパク質は融合ポリペプチドであってよい。例えば、IL−6及びsIL−6Rの生物活性部分を特徴とするポリペプチドは互いに融合させることができ、リンカーは2つのポリペプチドによって生成されるジスルフィド架橋であってよい。リンカーは、2つの他のポリペプチドを互いに結合させるポリペプチドであることが好ましい。これらの融合ポリペプチドは、例えばヒトIL−6Rの細胞外サブユニットとヒトIL−6−ポリペプチドであり、sIL−6RとIL−6が種々のポリペプチド−リンカーによって互いに結合している、ヒトsIL−6Rポリペプチドを含むことができる。IL−6に関するアクセッション番号はM14584(GenBankタンパク質配列データベース)であり、可溶性IL−6受容体に関してはM57230、M20566、及びX12830である。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態によれば、単分子タンパク質はsIL−6Rポリペプチドのアミノ酸114〜323及びヒトIL−6−ポリペプチドのアミノ酸29〜212を含む。sIL−6R−ポリペプチドのアミノ酸113〜323及びIL−6−ポリペプチドのアミノ酸29〜212からなる生物活性類似体も、本発明中に含まれる。他の単分子複合体、二分子複合体、類似体、断片、及びその組合せが本発明中に含まれる、ただしこれらの複合体、類似体、断片、及びその組合せはgp130又はgp130の下流シグナルの任意の要素を活性化する能力を保っているものとする。
【0048】
本発明は、腎不全を予防又は治療するための、gp130に対するモノクローナル又はポリクローナル抗体の使用を含む。例えば、樹状細胞に対してgp130を活性化させるために使用されるモノクローナル抗体、B−S12、gp130のアゴニスト(Wang、Y.D.、et al.、Int.Immunol.14:599〜603、2002を参照)は、腎不全を予防又は治療するために使用することができる。当技術分野で知られているgp130に対する他のポリクローナル又はモノクローナル抗体は、本発明を実施するのに有用であり得る。
【0049】
「ペプチド」は、ペプチドが50を超えないアミノ酸を含むことを意味する。「ポリペプチド」は、ポリペプチドが50を超えるアミノ酸残基を一般的に含むことを意味する。
【0050】
「アミノ酸置換」は、機能的に同等なアミノ酸残基が配列内の残基と置換され、サイレント変異をもたらすことを意味する。例えば、ポリペプチド配列内の1つ又は複数のアミノ酸残基は、機能的同等物として作用する類似の極性の他のアミノ酸によって置換し、サイレント変異をもたらすことができる。配列内のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば、無極性(疎水性)アミノ酸にはアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンがある。極性中性アミノ酸にはグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンがある。正に帯電した(塩基性)アミノ酸にはアルギニン、リシン及びヒスチジンがある。負に帯電した(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸がある。このような置換は保存的置換として知られている。さらに、ポリペプチド内の1つのアミノ酸が異なる極性又は疎水性のアミノ酸に置換される、非保存的置換も本発明内に含まれる、ただしそのポリペプチドは元の生物活性を保っているものとする。本発明はさらに、D−異性体形状で1つ又は複数のアミノ酸を有するポリペプチド、及び1つ又は複数の非天然アミノ酸を有するポリペプチドを含む。
【0051】
本発明は、少なくとも1つのアミノ酸が修飾されているポリペプチド類似体を含む。アミノ酸残基の修飾にはグリコシル化、酸化、永続的リン酸化、還元、ミリスチル化、硫化、アシル化、アセチル化、ADP−リボシル化、アミド化、環化、ジスルフィド結合形成、ヒドロキシル化、ヨウ化、メチル化、保護/ブロッキング基による誘導体化、又は当技術分野で知られている任意の他の誘導体化法があるが、これらだけには限られない。元のポリペプチドの生物活性を損ねずに維持又は改善する、このような修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、又はアミノ又はカルボキシル末端に含まれる類似体の配列に沿って任意の場所で生じ得る。
【0052】
IL−6ファミリーのポリペプチドメンバー、これら及びその対応する可溶性受容体を含む複合体、これらの類似体及び断片、例えばIL−6/sIL−6R複合体などは、天然供給源からの単離、合成生成又は組換え生成を含めた当技術分野で知られている様々な方法によって生成することができる。
【0053】
本発明のポリペプチドは、これに限られないが、血液及び尿を含む天然供給源から単離することができる。ポリペプチドは、合成生成によって生成することができる。ポリペプチドの合成産物は当技術分野でよく知られており、様々な会社から市販されている。IL−6/sIL−6R複合体などの本発明のポリペプチドは、(例えば、Bodanszky、1984、「ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis)」、Springer−Verlag、Heidelberg中に要約されたのと同様の)標準的直接的なペプチド合成法、固相合成(例えば、Merrifield、1963、J.Am.Chem.Soc.85:2149〜2154を参照)などを使用することによって合成することができる。
【0054】
本発明の範囲内に含まれるのは、そのアミノ又はカルボキシ末端で、或いはその側鎖の1つで、ペプチド結合を介してその対応する可溶性受容体、その断片又は類似体のアミノ酸配列と結合した、IL−6ファミリーのメンバー、その断片又は類似体を含むキメラ又は融合タンパク質である。タンパク質合成によって、例えばペプチド合成装置を使用することによって、又は当技術分野で知られている方法により、適切なコードフレームで、所望のアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を互いに連結させ、当技術分野で一般に知られている方法により融合タンパク質を発現させることによって、このような融合タンパク質を作製することができる。
【0055】
組換え体生成は、所望のポリペプチド、例えばIL−6/sIL−6R複合体、又はその類似体又は断片をコードする単離ポリヌクレオチド、このポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターと動作可能に連結した単離ポリヌクレオチドを使用することにより実施することができる。場合によっては、プロモーターの制御物質を加える。ポリペプチド又はその類似体又は断片をコードするポリヌクレオチド、プロモーター、及び場合によっては制御物質を含む構築体を、プラスミド、ウイルス又はファージベクターなどのベクター中に置くことができる。ベクターを使用して、宿主細胞、例えば細菌、酵母菌、昆虫、又は哺乳動物細胞をトランスフェクト又は形質転換することができる。
【0056】
用語「ポリヌクレオチド」は、任意の供給源から得ることができ、一本鎖又は二本鎖であってよく、且つDNA又はRNAポリマー中に取り込まれ得る、合成、非天然、又は改変ヌクレオチドを任意に含むことができる、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)のポリマーを意味する。
【0057】
「単離ポリヌクレオチド」は、本来存在する状態で隣接する配列から分離されたポリヌクレオチドセグメント又は断片、例えば通常はそれと隣接する配列、例えばそれが本来存在するゲノム中においてそれと隣接する配列から除去されたDNA断片を指す。この用語はさらに、他の成分(核酸、例えばRNA又はDNA、又はタンパク質を本来伴い、本来細胞中でそれらを伴う)から実質的に精製されたポリヌクレオチドに適用する。したがってこの用語は、例えばベクター中、自律的に複製するプラスミド又はウイルス中、原核生物又は真核生物のゲノムDNA中に取り込まれる組換えDNA、又は他の配列と独立した別個の分子として(例えば、PCR又は制限酵素による消化によって生成されたcDNA又はゲノム又はcDNA断片として)存在する組換えDNAを含む。
【0058】
用語「コードしている」は、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどの、単離ポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特異な配列の固有の性質を指し、ヌクレオチド(即ち、rRNA、tRNA及びmRNA)の規定された配列又はアミノ酸の規定された配列のいずれかと、それらによって生じる生物学的性質とを有し、生物学的プロセスにおける他のポリマー及びマクロ分子の合成用の鋳型として寄与する。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が、細胞又は他の生物系中でタンパク質を生成する場合、その遺伝子はそのタンパク質をコードしている。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり通常配列表中に与えられるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写用の鋳型として使用される非コード鎖の両方が、タンパク質又はその遺伝子又はcDNAの他の産物をコードしていると言うことができる。
【0059】
当業者は、いわゆる「ウォブルの法則」によって与えられるように、遺伝コードの縮重を鑑みてコドンの第三の位置における古典的塩基対形成の例外を許容して、2つ以上の核酸は任意の所与のタンパク質をコードすることができることを理解しているはずである。さらに、より多い又は少ないヌクレオチドを含むポリヌクレオチドが、同一又は同等のタンパク質をもたらすことができる。したがって、本発明は本発明のポリペプチド、例えばIL−6/sIL−6R、好ましくはHyper−IL−6をコードする全てのポリヌクレオチドを含むと企図される。
【0060】
本発明のポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドを含む宿主細胞が増殖する培地からそのポリペプチドが単離される場合輸送タンパク質として発現させることができ、或いはリーダー又は他のペプチドの欠失によって細胞内タンパク質として発現させてもよく、この場合ポリペプチドは宿主細胞から単離される。次いでこのようにして単離したポリペプチドを、当技術分野で知られているタンパク質精製法によって精製する。
【0061】
本発明のポリペプチドは、本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを細胞に移すことによって、目的とする組織に与えることができる。細胞はポリペプチドを生成及び分泌し、その結果腎臓尿細管内の細胞に適切に与えられてARFを予防又は治療する。
【0062】
発現ベクターはプロモーターを含む。本発明の文脈では、プロモーターは細胞内でポリヌクレオチドの発現を誘導することができなければならない。これらだけには限られないが、レトロウイルスITR、LTR、即時型初期ウイルスプロモーター(IEp;ヘルペスウイルスIepなど、例えば、ICP4−IEp及びICPO−IEp及びサイトメガロウイルス(CMV)IEp)、後期ウイルスプロモーター、潜伏活性型プロモーター(LAP)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、及びマウス白血病ウイルス(MLV)プロモーターを含む多くのウイルスプロモーターが、このような発現カセット中で使用するのに適している。他の適切なプロモーターは、エンハンサー配列を含む真核生物プロモーター(例えば、ウサギβ−グロブリン制御要素)、構成的活性型プロモーター(例えば、β−アクチンプロモーター、ヒトα−アンチトリプシンプロモーターなど)、シグナル及び/又は組織特異的プロモーター(例えば、誘導的及び/又は抑制的プロモーター、TNF又はRU486に応答性があるプロモーターなど、メタロチオニンプロモーターなど)、及び腫瘍特異的プロモーターである。
【0063】
発現ベクター内では、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとプロモーターが、プロモーターがポリヌクレオチドの発現を誘導することができるように動作可能に連結している。この動作可能な連結が維持される限り、発現ベクターは2つ以上の遺伝子、内部リボソーム侵入部位(IRES)によって隔てられる多重遺伝子などを含むことができる。さらに、発現ベクターはスプライシング部位、ポリアデニル化配列、転写制御要素(例えば、エンハンサー、サイレンサーなど)、又は他の配列などの他の要素を場合によっては含むことができる。
【0064】
発現ベクターは、それらが中に含まれる本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを発現することができるような方法で、細胞中に導入しなければならない。任意の適切なベクターをそのように使用することができ、その多くは当技術分野で知られている。このようなベクターの例には裸DNA又はRNAベクター(オリゴヌクレオチド又はプラスミドなど)、アデノ関連ウイルスベクター(Berns et al.、1995、Ann.N.Y.Acad.Sci.772:95〜104)、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター(Fink et al.、1996、Ann.Rev.Neurosci.19:265〜287)、パッケージアンプリコン(Federoff et al.、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:1636〜1640)、パピローマウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター、ポリオーマウイルスベクター、レトロウイルスベクター、SV40ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、及び当技術分野で知られている他のベクターなどのウイルスベクターがある。目的とする発現ベクターに加え、ベクターは他の遺伝的要素、例えば選択可能なマーカー(例えば、β−gal又は毒素に対する耐性を与えるマーカー)をコードする遺伝子、薬理活性タンパク質、転写因子、又は他の生物活性物質なども含むことができる。
【0065】
単離ポリヌクレオチドを含むベクターを操作するための方法は当技術分野でよく知られており(例えば、Sambrook et al.、1989、「分子クローニング(Molecular Cloning)」:A Laboratory Manual、2d edition、Cold Spring Harbor Pressを参照)、直接的クローニング、リコンビナーゼを使用する部位特異的組換え、相同的組換え、及び組換えベクターを構築する他の適切な方法を含む。このようにして、発現ベクターは、それを任意の所望の細胞中で複製させ、任意の所望の細胞中で発現させることができるように、且つ任意の所望の細胞のゲノムに組込んだ状態にすることがさらに可能であるように構築することができる。
【0066】
本発明のポリペプチド、例えばIL−6/sIL−6R複合体、好ましくはHyper−IL−6をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、細胞中にDNAを移すのに適した任意の手段によって細胞中に導入する。このような方法の多くは当技術分野でよく知られている(Sambrook et al.、上記;Watson et al.、1992、「組換えDNA(Recombinant DNA)」Chapter12、2d edition、Scientific American Booksも参照)。真核生物細胞に関しては、例えばエレクトロポレーション、流体力学系トランスフェクションなどのトランスフェクション、感染、DNAコーティング微粒子銃又はプロトプラスト融合(例えば、Liu、F.et al.、1999、Gene Ther.6:1258〜1266を参照)を使用することによってベクターを導入することができる。
【0067】
必要な場合には、誘導性プロモーターの制御下でポリヌクレオチドをその中に移入した細胞を、一過性形質転換体として使用することができる。このような細胞自体を、その治療利点のために哺乳動物に移入させることができる。典型的にはこのような細胞を、哺乳動物中で発現されそこから分泌される本発明のポリペプチドが腎臓尿細管細胞と接触して腎不全を予防又は治療するような哺乳動物中の部位に移入する。或いは、特にベクターをin vitroで加えた細胞の場合、細胞に最初に数ラウンドのクローン選択を施して(ベクター中に選択可能なマーカー配列を使用することによって通常容易になる)、安定した形質転換体を選択することができる。このような安定した形質転換体は、その治療利点のために次いで哺乳動物に移入させる。
【0068】
本発明のポリペプチドは、本発明によるポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含むベクターを他の細胞群にトランスフェクトすることによって、上皮尿細管細胞に与えることもでき、ポリペプチドは前記他の細胞中で発現されそこから分泌される。次いで、このようにトランスフェクトした他の細胞群を、このように分泌されたポリペプチドが腎臓尿細管細胞と接触する哺乳動物中の部位に移動させて腎障害を予防又は治療する。他の細胞からのポリペプチドの発現及び分泌は、したがって腎臓尿細管細胞に対して利点がある。ポリペプチドをコードするDNAが細胞中に安定して組込まれることは必要ではない。ポリペプチドは、細胞中で非組込み又は組込みDNAから発現及び分泌され得る。
【0069】
細胞内では、細胞がポリペプチドを発現及び分泌するように、ポリヌクレオチドが発現される。ポリヌクレオチドの発現の成功は、標準的な分子生物学の技法(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、酵素イムノアッセイなど)を使用して評価することができる。トランスフェクト細胞からのポリヌクレオチドの発現及びポリペプチドの分泌を検出するための試薬は、技術分野で知られている(本明細書の以下の実施例も参照)。
【0070】
組換え技法によって生成される本発明のポリペプチドは、対象に投与するときポリペプチドが実質的に純粋であるように精製することができる。用語「実質的に純粋である」は、それを本来付随する成分から分離された化合物、例えばタンパク質又はポリペプチドを指す。典型的には、サンプル中の全物質の(体積によって、湿潤又は乾燥重量によって、或いはモルパーセント又はモル分率によって)少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも99%が当該の化合物であるとき、化合物は実質的に純粋である。純度は任意の適切な方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動又はHPLC分析によって測定することができる。ポリペプチドはまた、それが本来付随する成分を本質的に含まないとき、或いはその本来の状態で附随する天然の汚染物質から分離されるとき実質的に純粋である。
【0071】
医薬組成物及び投与経路
本発明は、活性物質としてgp130シグナル経路を活性化することができるポリペプチドを含む医薬組成物の使用を提供する。本発明はさらに、活性物質として本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、又はこの発現ベクターでトランスフェクトした細胞と、薬剤として許容される担体とを含む医薬組成物の使用を提供する。本発明の医薬組成物は、腎不全を予防又は治療するのに有用である。
【0072】
本発明は、ポリペプチドの薬剤として許容される塩を含む。薬剤として許容される塩には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、シュウ酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などから誘導される塩などの遊離アミノ基によって形成される塩、及びアルミニウム、アンモニア、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、亜鉛、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコースアミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどから誘導される塩などの遊離カルボキシル基によって形成される塩がある。
【0073】
用語「薬剤として許容される」は、連邦又は州政府の統制機関によって承認されていること、或いは米国薬局方又は動物、及びより詳細にはヒトに使用するための他の一般に認められている薬局方中に列挙されていることを意味する。用語「担体」は、活性物質と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は賦形薬を指す。このような医薬担体は、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの石油、動物、野菜又は合成起源の液体を含めた水及び油などの滅菌液であってよい。医薬組成物を静脈内投与するとき、水は好ましい担体である。生理食塩水溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液を、特に注射溶液用の液状担体として使用することもできる。適切な医薬賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、プロピレングリコール、水、エタノールなどがある。望むならば組成物は、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などを含むこともできる。ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの緊張性を調節するための物質も想定される。
【0074】
組成物は溶液、懸濁液、乳化液、錠剤、ピル、カプセル、粉末、座薬、持続放出性配合物などの形をとることができる。経口配合物は、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。適切な医薬担体の例は、E.W.Martinによる「レミングトンの薬剤科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」中に記載されている。このような組成物は、好ましくは実質的に精製された形で治療有効量の本発明の活性物質、及び適切な量の担体を含み、対象に適切に投与するための形をもたらすはずである。
【0075】
腎障害又は不全を予防又は治療する際に有効であるはずである、本発明のポリペプチド、又はポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、又は前記ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、又はポリペプチドを発現する細胞の量は、腎障害の性質に依存するはずであり、標準的な臨床技法によって測定することができる。例えば、in vitroアッセイを場合によっては使用して、最適用量範囲の同定を手助けすることができる。代替的或いは追加的に、腎不全の動物モデルを用いたin vivoアッセイを実施して、最適用量範囲を決定することができる(本明細書の以下の実施例を参照)。配合物中に使用する正確な用量は、投与の経路、及び腎障害の重度にも依存するはずであり、当業者の判断及び各患者の状況に従い決定されるはずである。in vitro又は動物モデル試験バイオアッセイ又はシステムから誘導した用量応答曲線から、有効用量を推定することができる。
【0076】
本発明のポリペプチドの供給源(即ち、本明細書で前に記載した、gp130シグナル経路を活性化することができるポリペプチド、又はポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、又は前記ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、又はポリペプチドを発現する細胞)を含む組成物は全身循環中に導入することができ、それによってポリペプチドの供給源が腎臓組織中に分配されるはずである。或いは、ポリペプチドの供給源を含む組成物を、腎臓組織に局所施用することができる(例えば、組織内への注射或いはボーラスとして)。
【0077】
本発明のポリペプチドの供給源を含む医薬組成物の導入法には、局所、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路があるが、これらだけには限られない。化合物は任意の好都合な経路によって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、他の治療活性物質と共に投与することができる。投与は局所であってよいが、投与は全身性であってよい。
【0078】
本発明の医薬組成物は、治療の必要がある腎臓組織に局所的に投与することが望ましいことがあり、これは、非制限的に、例えば外科手術中の局所注入(例えば外科手術後の創傷被覆材を用いた局所施用)によって、注射によって、カテーテルによって、或いは多孔質、非多孔質、又はゼラチン状材料であるインプラントによって実施することができる。幾つかの実施形態によれば、投与は例えば腎障害の部位への注射器を介した直接注射による投与、又は静脈内注入による投与であってよい。
【0079】
幾つかの実施形態によれば、本発明のポリペプチドの供給源を皮膚に施用することができる。担体は非制限的に例えば軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、エアロゾル、座薬、パッド又はゲルスティックの形態であってよい。
【0080】
直接的内部施用のため、医薬組成物は錠剤又はカプセルの形態であってよく、類似の性質の以下の成分又は化合物のいずれかを含むことができる:微結晶セルロース、トラガカントガム又はゼラチンなどの結合剤;デンプン又はラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル、又はコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;又はコロイド二酸化ケイ素などの流動促進剤。単位剤形がカプセルであるとき、それは前に列挙した成分以外に、脂肪油などの液状担体を含むことができる。さらに、単位剤形は用量単位の物理的な形を変える様々な他の物質、例えば糖、セラック、又は他の腸溶性物質のコーティングを含むことができる。
【0081】
本発明のポリペプチドは、制御放出系中で送達することができる。一実施形態では、注入ポンプを使用してポリペプチドを投与することができる。或いは、本発明のポリペプチドは、腎臓組織で制御時間ポリペプチドを放出する生分解性、生体適合性ポリマーインプラントと組合せて投与することができる。好ましいポリマー物質の例には、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレン酢酸ビニル、これらのコポリマー及び混合物がある(「制御放出の医学用途(Medical applications of controlled release)」、Langer and Wise(eds.)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Flaを参照)。
【0082】
組成物の使用
本発明は、対象における腎不全を予防又は治療するための方法を提供する。これらの方法は、活性物質として治療有効量の本発明のポリペプチドの供給源及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明によるポリペプチドの供給源は、gp130シグナル経路を活性化することができるポリペプチド、本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクトした宿主細胞を指す。
【0083】
本明細書で使用する用語「治療すること」、「治療する」又は「治療」は、予防(例えば、予防的)、軽減及び治癒的治療を含む。したがって、本発明の方法は、腎不全の状態であるか或いはその危険がある対象において、腎機能を改善するのに有用である。一実施形態によれば、対象は哺乳動物である。他の実施形態によれば、哺乳動物はヒトである。
【0084】
「治療有効量」とは、過度の生理的悪影響又は副作用なしで、腎障害又は腎不全を治療又は予防するのに有効な量を意味する。本発明の幾つかの実施形態によれば、治療する腎不全は急性腎不全(ARF)である。他の実施形態によれば、治療する腎不全は慢性腎不全である。
【0085】
急性腎不全(ARF)は、重度且つしばしば急激に生命を脅かす状態である。ARFの発病の原因であることが知られている多くのメカニズムが存在する。これらは腎動脈の閉塞、糸球体疾患(1つは糸球体腎炎)、感染(敗血症)、播種性血管内凝固(通常腎臓の皮質壊死を伴う)、腫瘍による尿流の閉塞又は他の閉塞、急性尿細管腎炎(虚血性又は毒性)、及びその他を含む。
【0086】
本発明によれば、急性腎不全には、アミノグリコシドだけには限られないがこれを含めた抗生物質、アンホテリシンBだけには限られないがこれを含めた抗真菌剤、塩化第二水銀だけには限られないがこれを含めた金属、有機溶媒、四塩化炭素、放射性造影剤、造影剤、及びシスプラチンなどの化学療法剤からなる群から選択される薬剤物質、診断用物質、又は毒性物質の使用又はそれへの曝露から生じる急性腎不全があるが、これらだけには限られない。
【0087】
本発明によれば、急性腎不全はミオグロビン尿症横紋筋融解症、ヘモグロビン尿症、アテローム塞栓症、腎動脈閉塞、血管炎、溶血性尿毒症症候群、血栓溶解血小板減少性紫斑病、ヴェグナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、グッドパスチャー症候群、急性糸球体腎炎、急性過敏性間質性腎炎、高カルシウム血症、尿路閉塞、急性尿酸腎症、腎盂腎炎、乳頭壊死、肝腎障害症候群、高血圧、細菌性敗血症、産後虚血、全身性炎症ショック、真菌血症、急性ウイルス性疾患、重度の体液量減少、輸血反応、産後合併症、火傷、虚血再灌流、及び外科的処置からなる群から選択される疾患、障害、又は状態から生じる急性腎不全をさらに含むが、これらだけには限られない。
【0088】
本発明の方法は、腎臓移植中に腎障害又は腎不全を予防するのに、特に有用であることは理解されよう。したがって、生存中又は産後、腎臓の外科手術による除去の前又はそれと同時であろうと、本発明のポリペプチドの供給源をドナーに投与することができる。代替的或いは追加的に、腎臓移植の前、それと同時或いはその後に、本発明のポリペプチドの供給源をレシピエントに投与することができる。
【0089】
慢性腎不全には慢性糖尿病性ネフロパシー、糖尿病性糸球体症、糖尿病性腎肥大、高血圧性腎硬化、高血圧性糸球体硬化、腎形成異常、糸球体肥大、尿細管肥大、糸球体硬化及び尿細管間質硬化があるが、これらだけには限られない。
【0090】
したがって、本発明の方法は、急性又は腎不全用の治癒又は予防治療を提供する。
【0091】
本発明のポリペプチドの供給源は単独、或いは例えばエリスロポイエチン(EPO)などの他の化合物と共に、或いは他の治療法で投与することができる。
【実施例】
【0092】
試薬
全ての化学物質は、他に述べない限りSigma−Aldrich Chemicals(USA)から購入した。組換えヒトIL−6は、PeproTech Inc.(Rocky Hill、N.J.、USA)からのものであった。Sn(IV)Mesoporphyrin IXジクロリド(SnMP)は、Frontier Scientific Inc.(Logan UT、USA)から購入した。
【0093】
組換えHyper−IL−6タンパク質
Hyper−IL−6(HIL−6)は、欧州特許EP−B1 0888384によって定義される、柔軟なペプチドリンカーによって可溶性IL−6R(sIL−6R)と共有結合したヒトIL−6からなるタンパク質複合体である。組換えHyper−IL−6タンパク質は、Hyper−IL−6遺伝子カセットを有する遺伝子工学処理したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養物上清から単離した(参照によりその全体を本明細書に組込む、Fischer、M.、et al.、Nat.Biotechnol.15:142〜145、1997を参照)。Hyper−IL−6は、以前に記載されたのと同様に精製した(Fischer、M.、et al.、同書)。Hyper−IL−6(HIL−6)は−80℃で保存した。新たな等分試料は各実験用に使用した。
【0094】
動物
オスBALB/c及びC57BL/6マウス(体重18〜23グラム)は、Harlan Laboratories Ltd.、エルサレムから購入し、定期的な微生物スクリーニングによって評価したSPF条件下において、12時間の明暗サイクル中に〜23℃の温度で動物用機器中に保った。マウスには市販のげっ歯類用の餌及び水を任意に与え、使用前に少なくとも4日間順化させた。実験手順は、Institutional Animal Care and Use Committeeが承認した動物治療プロトコル(ライセンス番号OPRR−A01−5011)に従い行った。
【0095】
HgCl誘導型ARF
急性腎不全(ARF)は、以前に記載されたのと同様に(Nava、M.、et al.Amer.J.Physiol.Renal Physiol.279:F910〜918、2000)、水に溶かしたHgClの腹腔内(i.p)注射によって誘導した(6〜8mg/kg;Sigma−Aldrich Chemicals USA)。HgCl投与の4時間前にHyper−IL−6(8μg)、IL−6(20μg)、又は正常生理食塩水(担体)の150μl体積中の静脈内注射によってマウスを治療した。示した実験では、HgCl投与後5時間でHyper−IL−6(4μg)の追加投与によってマウスを治療した。第二用量のHyper−IL−6の投与は、後の実験において防御効果には不要であったことが示された。
【0096】
グリセロール誘導型ARF及びヘムオキシゲナーゼ活性の阻害
BALB/cマウスはIsoflurane(登録商標)で麻酔処理し、8m1/体重1kgの合計用量で50%グリセロール水溶液を注射し、半分の用量は各後足の前腿筋に注射した。Tin Mesoprotoporphyrin IXジクロリド(SnMP)、ヘムオキシゲナーゼの特異的阻害剤は、0.1NのHClを用いてpH8.0に調節した0.1NのNaOHを含む最終体積の3分の1に溶かし、正常生理食塩水を用いて3mg/mlにして、グリセロール投与の1.5時間前、及びグリセロール投与後5時間及び20時間で、20μmol/体重1kgの用量で投与した。同じ実験のSnMPを投与しなかった平行群中のマウスには、同じ時間地点で等体積の正常生理食塩水を与えた(i.p.)。
【0097】
プラスミドDNA構築体
ヒトIL−6及びHyper−IL−6をそれぞれコードする発現プラスミドDNA、phAAT−IL6及びphAAT−HIL6を、ヒトIL−6及びHIL−6cDNAをそれぞれコードするHindIII(充填型)−NotI制限断片をpCI(Promega、Madison、WI、USA)のSmaI−NotI部位に連結させることによって構築した。CMVプロモーターはBglII及びHindIIIを用いた消化によって除去し、HindIII部位に充填し、(Dr.Katherine Ponder、ワシントン大学、セントルイス、MO、USAによって好意的に与えられた)ヒトα−アンチトリプシンプロモーターを含むBglII−NotI(充填型)DNA断片と交換した。高圧尾部静脈注射によるin vivo投与用に、Qiagen Endotoxin−FreeプラスミドMaxiキット(Qiagen、ドイツ)
を使用してプラスミドDNAを精製した。
【0098】
In vivoDNAトランスフェクション
示した実験では、phAAT−IL6(10μg)、phAAT−HIL6(2.5μg)、又は対照プラスミド、pGEM−7(20μg)のいずれかによる流体力学系in vivoプラスミドDNAトランスフェクション(参照によりその全体を本明細書に組込む、Liu、F.、et al.、1999、Gene Ther.6:1258〜1266)によって動物を治療した。注射用の全てのプラスミドDNA溶液はエンドトキシンの試験をした正常生理食塩水中で調製し、対照プラスミドDNA(pGEM−7)を用いて1.8mlの最終体積中で20μgDNAに統一した。プラスミドphAAT−IL−6及びphAAT−HIL6の流体力学系in vivoトランスフェクション2日後の血清中IL−6及びHIL−6レベルは、ヒトIL−6のELISAにより測定して、それぞれ約50ng/ml及び5ng/mlであった。
【0099】
血中尿素窒素の測定
ARFの誘導後示した時間期間で尾部静脈出血によって血液サンプルを得た。血中尿素窒素レベル(BUN)を、Reflotron(登録商標)システム及び尿素試験片(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim、ドイツ)を使用してヘパリン処理血清において測定した。
【0100】
組織分析
HgCl投与後24〜48時間で外科手術によって腎臓を除去した。腎臓組織サンプルは4%緩衝ホルムアルデヒド、次に80%エタノール中に固定し、パラフィン切片中に包埋した。2〜4ミクロンの厚さの組織切片はヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色した。
【0101】
ウエスタンブロット分析
pSTAT3、FLIP、Bcl−2、Bcl−xLの分析用のタンパク質抽出物を、1mlの全細胞溶解バッファー(1%のNP−40、10mMのトリスpH7.8、150mMのNaCl、40mMのEDTA、10mMのピロリン酸ナトリウム、10mMのNaF、1mMのPMSF、4mMのオルトバナジウム酸、ペプスタチンA1ug/ml、ロイペプチン2ug/ml)中での均質化によって組織サンプル(〜100mg)から調製した。IL−6Rの分析用のタンパク質抽出物は、製造者の教示書に従いm−PERバッファー(Pierce)中での均質化によって調製した。タンパク質サンプル(50μg)はポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ウエスタンブロット分析に施した。ネズミIL−6Rの分析用に、ウエスタンブロット試料をヤギ抗マウスIL−6R抗体(R&Dカタログ番号AF1830)、次にウサギ抗ヤギ抗体(Zymed)及び抗ウサギHRPポリマー(DAKO)でプローブ処理し、ECL−Plusウエスタンブロッティング検出システム(Amersham)を使用して発色させた。pSTAT3及びSTAT3の分析用に、ウエスタンブロット試料を、モノクローナル抗リン酸化STAT3(sc−8059)及びモノクローナル抗STAT3(sc−8019)(Santa Cruz)でそれぞれプローブ処理した。FLIP、Bcl−2及びBcl−xLの分析用に、ウエスタンブロット試料を、マウスモノクローナル抗ヒトFLIP(sc−5276)、マウスモノクローナル抗ヒトBcl−2(sc−7382)及びマウスモノクローナル抗ヒトBcl−xL(sc−8392)(Santa Cruz)でそれぞれプローブ処理した。充填対照として、ブロット試料を0.1MのグリシンpH2.8で切断し、モノクローナル抗−β−アクチン抗体、クローンAC−74(Sigma)で再度プローブ処理し、抗マウスHRP Envisionキット(DAKO)を用いて発色させた。
【0102】
RNA抽出及びRT−PCR分析
Polytron高速ホモジェナイザーを使用し次にDNA−free DNAse(Abion)を用いた処理によって、製造者の教示書に従いトリゾール試薬(Invitrogen)中での均質化によって、約100mgの急速凍結組織からRNAサンプルを調製した。合計細胞RNAサンプル(0.5μg)は、Reverse−iT(商標)1ステップRT−PCRキット(Abgene)を使用してRT−PCRに施した。使用したプライマー配列は以下の通りであった:
【化1】

【0103】
統計分析
統計上有意であると考えられるP≦0.05で生存分布の一様性を比較するためのカプラン−マイヤー生存曲線手順及びログランク(Mantel−Cox)検定を使用して、死亡率データを比較した。全ての他の比較値は、統計上有意であると考えられるP≦0.05でスチューデントのt−検定に施した。
【0104】
(実施例1:HgCl誘導型障害後の血清中IL−6タンパク質及び局部的STAT3シグナル増大)
塩化第二水銀(HgCl)などの水銀含有化合物の投与は、ネフロトキシン誘導型急性腎不全(ARF)の研究用の、充分に確立されており広く使用されているモデルである。マウスへの毒性用量のHgClの投与は、血清中IL−6タンパク質レベルの急速且つ相当な上昇をもたらし、これは投与の1時間以内に観察された(図1A)。IL−6レベルの大きな変動はHgCl投与後10時間で明らかであり、これはマウスにおけるHgClの様々な毒性と関係がある可能性が最も高く、数匹のマウスは急速に回復し、一方他のマウスは重度の病的状態を示した。IL−6のmRNAのRT−PCR分析(図1B)によって、HgCl投与後のIL−6遺伝子発現は腎臓中で強く誘導されたことを示し、血清中IL−6レベルの上昇は部分的には腎臓中でのIL−6発現の局所誘導によるものであることを示した。IL−6のmRNAは肝臓中でも誘導され、脾臓中で適度に誘導される。IL−6レベルの上昇と同時に、腎臓中のpSTAT3(Tyr705)レベルの有意な増大及びSOCS3のmRNAの上方制御、HgCl誘導型障害後のgp130シグナルの誘導を示唆する(図1C及び1D)。
【0105】
(実施例2:腎臓中にIL−6Rが存在しないことによって、IL−6介在型の保護応答がなくなる)
急性肝不全などの臓器不全のモデルでは、IL−6は多面的効果を有し、投与の時間に応じて炎症プロセスと組織保護の両方と関係があることが示されてきている。
【0106】
IL−6を用いた予備治療が、HgCl誘導型ARFからマウスを保護することができる可能性を調べた。HgClの投与前に4時間IL−6で治療したマウスは、対照マウスのそれらと類似した血中尿素窒素(BUN)レベル及び死亡率を示した(図2A及び2B)。IL−6発現プラスミド(phAAT−IL6)の流体力学系in vivoDNAトランスフェクションによるIL−6に対する長期の曝露も、HgCl誘導型ARFのレベルに影響を与えず、IL−6誘導型の影響の欠如は不充分な生物学的利用能によるものではなかったことが示された。したがって、IL−6を用いた予備治療は、HgCl誘導型腎障害を軽減することも悪化させることもなかった。
【0107】
IL−6に対する応答性は、標的細胞におけるIL−6Rの発現又はsIL−6R介在トランスシグナルのいずれかに依存する。IL−6を用いたマウスの予備治療はHgCl誘導型ARFの結果に影響を与えなかったので、腎臓柔組織中のIL−6Rの発現を調べた。正常及びHgCl治療マウス由来の組織抽出物のウエスタンブロット及びRT−PCR分析によって、IL−6Rタンパク質及びmRNAは実際、陽性対照として使用した肝臓と比較して、正常マウスの腎臓中では非常に低いレベルで発現されることを示した(図2C及び2D)。HgClを用いた治療後6時間、わずかではあるが明らかなIL−6RのmRNAの増大が明白であったが、しかしながら、IL−6Rタンパク質のレベルの変化はこの時間では明らかではなかった(図2C及び2D)。したがって、腎臓中にIL−6Rが存在しないことによって、HgCl誘導型障害に対するIL−6介在型の保護応答がなくなる。
【0108】
(実施例3:IL−6/sIL−6R融合タンパク質を用いた治療は、マウスを急性腎不全から保護する)
腎臓中にIL−6Rが存在しなかったので、IL−6/sIL−6R複合体によってgp130シグナルを刺激することがSTAT3を活性化し、且つ結果としてHgCl誘導型ATNから腎臓を保護する可能性を調べた。マウスにIL−6/sIL−6R融合タンパク質、Hyper−IL−6(HIL−6)(Fischer、M.、et al.、同書)を注射して、HgCl投与前に腎臓中のgp130を直接刺激した。HIL−6はgp130発現細胞において完全に活性状態であり、in vitroとin vivoの両方でgp130スーパーアゴニストとして作用する。HIL−6がマウス腎臓中でgp130シグナルを刺激することができるかどうかを測定するために、STAT3活性化を誘導するHIL−6の能力を分析した。マウスへのHIL−6の注射は、腎臓中でSTAT3リン酸化の強い刺激をもたらした(図3A)。STAT3のαイソ型とβイソ型の両方が腎臓中で発現され、両者はHIL−6への曝露後に等しくリン酸化されるようである(図3A)。対照的に、IL−6は腎臓中のSTAT3のリン酸化に対してほとんど影響がなく、IL−6Rの不十分な発現と釣りあっている(図3A)。これらの結果は、腎臓中のgp130シグナル伝達経路を刺激する際のHIL−6の有効性を実証する。
【0109】
ARFの進行に対するHIL−6の影響を評価するために、HgCl投与前に4時間HIL−6タンパク質でマウスを治療し、腎障害の進行を調べた。対照群とは対照的に、HIL−6で治療したマウスはHgCl誘導型ARFに対して劇的に耐性があり、血中尿素レベルの非常にわずかな増大を示した(図3B)。顕著なことに、対照治療マウスが相当な死亡率を示した一方で、HIL−6で治療したマウスはいずれも生存した(ログランク検定、P<0.007)(図3C)。ATNの誘導後24時間で得た対照マウス由来の腎臓サンプルの組織検査によって、近位尿細管の壊死、タンパク質物質の管腔内蓄積、好中球の移動を示す膨張した尿細管及び尿細管周辺毛細血管の密集を示した(図3D)。対照的に、HIL−6で治療したマウスは、ごくわずかな尿細管膨張及び時折アポトーシス上皮細胞を示した(図3E)。
【0110】
(実施例4:HIL−6は腎臓中で抗酸化因子を誘導する)
HgCl誘導型ATNのメカニズムは、近位尿細管の上皮細胞のアポトーシス及び壊死をもたらす酸化ストレスの増大と関係がある。それによってgp130シグナルが腎臓を保護するメカニズムを解明するために、抗アポトーシス及び酸化ストレス関連因子の発現に対するHIL−6治療の影響を調べた。腎臓RNAのRT−PCR分析によって、gp130のmRNAは腎臓中で構成的に発現され、HIL−6、IL−6を用いた治療、腎障害の誘導によって影響を受けなかったことが明らかになった(図4A)。HIL−6又はIL−6を用いた治療後4時間で得た腎臓のRNAサンプルの分析によって、SOCS3のmRNAはIL−6によってではなくHIL−6によって強く誘導されたことが明らかになり(図4A)、腎臓中のgp130タンパク質の存在とIL−6Rの相対的不在の両方を再度確認した。SOCS3のmRNA発現はHgCl投与直後に強く上方制御されたが、HgCl投与前のHIL−6治療によってさらに増大することはなかったことを再度観察した(図4A)。対照的に、いずれの試験治療後でも抗アポトーシス因子Bcl−2、Bcl−xL、又はFLIPのmRNA又はタンパク質レベルの実質的な変化は確認されなかった(図4A及び4B)。したがって、HIL−6治療の保護効果は、腎臓中でのこれらの抗アポトーシス因子の即時型上方制御によって介在されないようである。
【0111】
水銀の腎毒性は主に、過酸化水素などの活性酸素種(ROS)を腎臓が生成することに原因がある。酸化障害に応答して、哺乳動物細胞はヘムオキシゲナーゼ(HO−1)及び多機能性核タンパク質、アプリニックエンドヌクレアーゼ/酸化還元エフェクター因子(Ref1)を含めた幾つかの酸化還元応答性遺伝子を上方制御することが知られている。これらの発見と一致して、HgCl投与後のHO−1のmRNAの強い誘導を観察した(図4A)。HO−1の発現はHIL−6治療によってさらに強く上方制御され、HgCl治療前にHIL−6を投与したマウスではさらに強く上方制御された(図4A)。我々の予想に反して、腎臓中のRef−1のmRNAレベルは、HgCl投与後に著しく低下した(図4A)。しかしながら、HIL−6を用いた治療はRef−1のmRNA発現を実質的に増大させ、HgCl投与前のHIL−6を用いた治療はRef−1のmRNAを正常レベルに保った(図4A)。これらの結果は、Ref−1はHgCl誘導型ATNに対するHIL−6誘導型保護における重要因子であり得ることを示唆する。
【0112】
HO−1の誘導がHIL−6投与後に観察した保護に貢献したかどうかを測定するために、HO−1活性の特異的競合阻害剤、スズメソプロトポルフィリン(SnMP)の存在下でのHIL−6の影響を試験した。しかしながら、SnMPの投与がHgCl誘導型ARFに対するHIL−6生成型耐性を予防することはなかった(24時間でのBUN=103±43、47±10及び44±10mg/dl(n=8)、それぞれ生理食塩水治療、HIL−6治療及びHIL−6+SnMP治療マウス中、HIL−6及び生理食塩水に関してP<0.003、及びHIL−6及びHIL−6+SnMPに関してP=0.54)。
【0113】
次にHIL−6治療が、HO−1活性が障害耐性に必要であるグリセロール誘導型突然性横紋筋融解症を予防する確率を調べた。グリセロール誘導型ARFは、毒性近位尿細管細胞の損傷、低酸素症の尿細管の損傷、炎症応答、及び尿細管閉塞による血管収縮と関係がある複雑な病態生理プロセスによって引き起こされる。グリセロール誘導型ARF前のHIL−6タンパク質の一回注射は、相反する統計的有意性の適度な保護効果のみをもたらし(表1)、グリセロール誘導型障害に対する耐性を生み出すために、HIL−6の多量又は長期の用量レジメンが必要とされる可能性があることを示唆した。
【表1】

【0114】
HIL−6投与を延長するために、グリセロール注射の2日前にHIL−6発現プラスミド、phAAT−HIL6でマウスをトランスフェクトした。図5中に示すように、phAAT−HIL6でトランスフェクトしたマウスはグリセロール誘導型ARFに劇的に耐性があったが、SnMPによるHO−1活性の阻害はHIL−6の保護効果を有意に阻害し、障害後48時間でプラスミドDNA対照群のそれと同等なARFレベルをもたらした(図5)。対照プラスミドトランスフェクトマウスのSnMP治療は腎障害をさらに強烈に悪化させたが、SnMP自体は腎毒性ではなかった。これは、腎臓中でのHO−1発現の誘導は、HgCl誘導型ARFではなく、グリセロール誘導型ARFに対するHIL−6生成型耐性には必要であることを示す。如何なる作用機構にも縛られることを望まずに、これらの結果は、HgCl誘導型ARFに対するHIL−6誘導型保護は、酸化ストレスを改善するメカニズムによって主に介在されることを示すことができる。
【0115】
結論
IL−6を用いたマウスの予備治療は、HgClによって引き起こされるARFの発症、又は関連死を予防しなかった。本発明の発見は、IL−6予備治療がグリセロール誘導型ARFの発症を予防できなかったことを報告している、Homsi et.alの発見(Homsi、E.、et al.2002、「ネフロン(Nephron)」92:192〜199)と類似している。この観察結果の説明として、本発明の試験は、正常な腎臓中でのIL−6R発現の顕著な不足を実証し、尿細管上皮細胞に対するIL−6の直接の生理的影響を排除する。それにもかかわらず、STAT3活性化及びSOCS3のmRNAの上方制御の有意な増大を観察し、腎障害後の有意なgp130シグナルの存在、及びgp130シグナル経路の活性化は腎障害に対する固有の生理的応答であることが示唆された。実際、IL−6、IL−11及び白血病抑制因子(LIF)を含めた様々なgp130活性化サイトカインのmRNA及びタンパク質の強い誘導も、虚血再灌流誘導型腎障害後に観察されている(Lemay、S.、et al.、2000、「移植(Transplantation)」69:959〜963)。特に、LIFとLIFRの両方の発現を、LIF又はLIFRが通常発現されない外側髄質の近位尿細管細胞中で観察した。
【0116】
本発明の試験は、腎臓中でのgp130シグナルの活性化はAREを改善する、最初の直接的証拠を与える。2つの独立した異なるARFのモデルにおいて観察した同様の発見は、様々な形の腎障害に対する広範囲の保護応答の誘導は、腎臓柔組織中のgp130シグナルの主要機能であることを示唆する。
【0117】
酸化ストレスはHgCl誘導型腎障害のメカニズムにおける主な要因であり、HO−1を含めた酸化還元感受性遺伝子の強い上方制御をもたらす。HIL−6の投与はHO−1遺伝子の発現も強く誘導し、HO−1遺伝子はHIL−6及びHgClの逐次投与によってさらに一層上方制御された。HO−1の誘導はグリセロール誘導型腎障害に対する保護応答における重要な要因であるが、HO−1の誘導自体がHgCl誘導型障害に対する保護を与えることはできない。これらの観察結果と一致して、本発明の試験は、HO−1活性の阻害はHgCl誘導型腎障害ではなく、グリセロール誘導型障害に対するHIL−6の保護効果を有意に阻害したことを示す。したがって、gp130シグナルは、多数の因子の誘導によって腎障害の様々な原因に対する全体的な保護応答を生み出すことが示唆される。Ref−1は、1つのこのような因子であるようである。
【0118】
Ref−1は、塩基除去修復経路におけるエンドヌクレアーゼとして、及びNF−kBを含めた多くの酸化還元感受性転写因子のDNA結合活性を助長する還元剤の両方として、相互排他的に作用する核タンパク質である。Ref−1は細胞内ROS生成をもたらす刺激、及び過酸化水素を含めた酸化剤そのものに応じて上方制御され、Ref−1の発現はSTAT3によって制御される。Ref−1の誘導は、HgClに曝すとin vitro及びin vivoで腎臓上皮細胞によって多量に生じる過酸化水素に対する、細胞の適応耐性の増大と関係がある。全体として本発明の結果は、腎障害に対するgp130介在保護は、酸化ストレスを改善するメカニズムによって主に介在されることを示す。HIL−6又はHgClのいずれかの投与後の初期における抗アポトーシス因子の関与は観察されなかったが、これら又は他の抗アポトーシス因子がARFの進行中の後期に役割を果たす可能性は、現在排除することはできない。
【0119】
この試験は、HIL−6による治療戦略は障害から腎臓を保護し、ストレス中の腎機能の全体的維持をもたらすのに有用である可能性があるという結論を直接支持する。
【0120】
本発明は本明細書で前に詳細に示し記載してきたことに限られないことは、当業者によって理解されるはずである。そうではなく本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1A】HgCl治療後のIL−6の発現を示す図である。HgClで治療したマウスから得た血清サンプル中の、IL−6レベルを示す図である。結果は平均±SEMとして表す。
【図1B】HgCl治療後のIL−6の発現を示す図である。HgClを用いた治療後6時間でマウスから採取した肝臓、腎臓及び脾臓組織サンプル中のIL−6のmRNAのRT−PCR分析を示す図である。
【図1C】HgCl治療後のIL−6の発現を示す図である。HgCl誘導型傷害前後の腎臓中のリン酸化STAT3(p−STAT;Tyr705)及びSTAT3のウエスタンブロット分析を示す図である。
【図1D】HgCl治療後のIL−6の発現を示す図である。HgCl誘導型傷害後のSOCS3のmRNA誘導のRT−PCR分析を示す図である。
【図2A】ネズミ腎臓中のIL−6R発現の不在を示す図である。外来性ヒトIL−6タンパク質を用いた予備治療(20μg、静脈内)は、マウスにおいて測定したBUNレベルによって示されるように、HgCl誘導型ARFからマウスを保護することができないことを示す図である。対照マウスには、HgClの投与前に4時間生理食塩水のみを注射した。結果は生存マウスの平均±SEMとして表す。
【図2B】ネズミ腎臓中のIL−6R発現の不在を示す図である。図2Aのマウスの生存率のカプラン−マイヤーのプロットを示す図である。
【図2C】ネズミ腎臓中のIL−6R発現の不在を示す図である。正常なネズミ肝臓及び腎臓由来のIL−6Rのウエスタンブロット分析の図である。ブロット試料を除去し、対照としてβ−アクチンタンパク質用に再度プローブ処理した。
【図2D】ネズミ腎臓中のIL−6R発現の不在を示す図である。HgCl投与後6時間の正常な肝臓、正常な腎臓、及び腎臓組織由来のRNA抽出物のRT−PCRによるIL−6のmRNAの分析の図である。β−アクチンmRNAのRT−PCR分析を比較用に示す。
【図3A】マウスにおけるHgCl誘導型ARFからのHIL−6治療の保護効果を示す図である。PBS、IL−6(20μg)、又はHIL−6(4μg)で治療した後の腎臓中のp−STAT3(Tyr705)及びSTAT3のウエスタンブロット分析の図である。
【図3B】マウスにおけるHgCl誘導型ARFからのHIL−6処理の保護効果を示す図である。HgClの投与の4時間前にHIL−6又は通常の生理食塩水で治療したマウス中の腎機能の図である。結果は平均±SEMとして表す。*P<0.002及び**P<0.005。
【図3C】マウスにおけるHgCl誘導型ARFからのHIL−6処理の保護効果を示す図である。図3Bのマウスの生存率のカプラン−マイヤーのプロットを示す図である。
【図3D】マウスにおけるHgCl誘導型ARFからのHIL−6処理の保護効果を示す図である。HgClの投与の4時間前に通常の生理食塩水又はHIL−6(8μg、静脈内)を用いて予備治療したマウスにおける、HgCl投与後24時間の組織変化の図である。パラフィン包埋腎臓切片のH&E染色。生理食塩水で予備治療したマウスは、尿細管上皮細胞の大量壊死(黒矢印)、尿細管内腔の膨張及びタンパク質物質の蓄積(星印)、並びに尿細管周辺毛細血管中の好中球の蓄積(矢じり)を示す。HIL−6で予備治療したマウスは、わずかな尿細管傷害及び時折アポトーシス尿細管上皮細胞(矢じり)を示す。元の倍率、×200及び×400(高倍率領域、挿入図)。
【図3E】マウスにおけるHgCl誘導型ARFからのHIL−6処理の保護効果を示す図である。
【図4A】正常及びHgCl治療マウスにおける、抗アポトーシス及び酸化ストレス応答遺伝子の発現に対するHIL−6及びIL−6の影響を示す図である。腎臓mRNAのRT−PCR分析の図である。
【図4B】正常及びHgCl治療マウスにおける、抗アポトーシス及び酸化ストレス応答遺伝子の発現に対するHIL−6及びIL−6の影響を示す図である。抗アポトーシス因子のウエスタンブロット分析の図である。HIL−6を用いた4時間の予備治療有り又は無しのマウスにおいて、IL−6(20μg、静脈内)又はHIL−6(8μg、静脈内)を用いた治療後4時間、或いはHgCl(6mg/kg)の投与後6時間でマウスから腎臓を回収した。
【図5】HO−1活性の阻害剤によって阻害される、マウスにおけるグリセロール誘導型ARFからHIL−6の保護効果を示す図である。50%グリセロール(複数回)で治療したマウスにおけるBUNレベルによって測定した腎機能は、ARFの誘導48時間前にHIL−6発現プラスミド(phAAT−HIL6)による流体力学系in vivoDNAトランスフェクションによって治療したマウス(中実線)、対照プラスミドDNA(pGEM−7)トランスフェクトマウス(斜交線)、正常生理食塩水処理マウス(中空線)、HO−1阻害剤、SnMPで処理した対照プラスミドトランスフェクトマウス(水平方向線)、及びSnMPで治療したphAAT−HIL6トランスフェクトマウス(まだら線)において評価した。結果は平均±SDとして表す。*P<0.001とpGEM−7、**P<0.01とpGEM−7、***P<0.001とphAAT−HIL−6、#P=nsと生理食塩水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における腎不全を予防又は治療するための方法であって、活性物質としてgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチド、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を対象に投与することを含み、それによって腎不全を予防又は治療する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、IL−11、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CTC)、及びこれらの生物活性類似体、断片、又は塩からなる群から選択されるIL−6ファミリーのメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、IL−6ファミリーのメンバーの可溶性受容体と結合したIL−6ファミリーのメンバーを含む複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複合体が、IL−6/可溶性IL−6受容体(sIL−6R)複合体、IL−11/可溶性IL−11受容体(sIL−11R)複合体、LIF/可溶性LIF受容体(sLIFR)複合体、OSM/可溶性OSM受容体(sOSMR)複合体、CNTF/可溶性CNTF受容体(sCNTFR)複合体、CT−1/可溶性CT−1受容体(sCT−1R)複合体、CTC/可溶性CTC受容体(sCTCR)複合体、及びこれらの生物活性類似体、断片、又は塩からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記IL−6/sIL−6R複合体がHyper−IL−6である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、gp130に対するモノクローナル抗体、gp130に対するポリクローナル抗体、及びgp130介在シグナル経路を活性化することができる小さな合成分子からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記腎不全が、急性腎不全、慢性腎不全、及び末期腎不全からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記急性腎不全が、抗生物質、抗真菌剤、放射性造影剤、造影剤、化学療法剤、金属、有機溶媒、及び四塩化炭素からなる群から選択される薬剤物質、診断用物質、又は毒性物質の使用又はそれへの曝露から生じる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記急性腎不全が、ミオグロビン尿症横紋筋融解症、ヘモグロビン尿症、アテローム塞栓症、腎動脈閉塞、血管炎、溶血性尿毒症症候群、血栓溶解血小板減少性紫斑病、ヴェグナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、グッドパスチャー症候群、急性糸球体腎炎、急性過敏性間質性腎炎、高カルシウム血症、尿路閉塞、急性尿酸腎症、腎盂腎炎、乳頭壊死、肝腎障害症候群、高血圧、細菌性敗血症、全身性炎症ショック、真菌血症、急性ウイルス性疾患、重度の体液量減少、火傷、虚血再灌流、産後合併症、及び外科的処置からなる群から選択される疾患、障害、又は状態から生じる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物を投与する経路が、局所、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口投与経路からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
対象における腎不全を予防又は治療するための方法であって、活性物質としてgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を対象に投与することを含み、それによって腎不全を予防又は治療する方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、IL−11、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CTC)、及びこれらの生物活性類似体、断片、又は塩からなる群から選択されるIL−6ファミリーのメンバーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、IL−6ファミリーのメンバーの可溶性受容体と結合したIL−6ファミリーのメンバーを含む複合体である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記複合体がIL−6/可溶性IL−6受容体(sIL−6R)複合体、IL−11/可溶性IL−11受容体(sIL−11R)複合体、LIF/可溶性LIF受容体(sLIFR)複合体、OSM/可溶性OSM受容体(sOSMR)複合体、CNTF/可溶性CNTF受容体(sCNTFR)複合体、CT−1/可溶性CT−1受容体(sCT−1R)複合体、CTC/可溶性CTC受容体(sCTCR)複合体、及びこれらの生物活性類似体又は断片からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記IL−6/sIL−6R複合体がHyper−IL−6である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、gp130に対するモノクローナル抗体、及びgp130介在シグナル経路を活性化することができるgp130に対するポリクローナル抗体からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記腎不全が急性腎不全、慢性腎不全、及び末期腎不全からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記急性腎不全が、抗生物質、抗真菌剤、放射性造影剤、造影剤、化学療法剤、金属、有機溶媒、及び四塩化炭素からなる群から選択される薬剤物質、診断用物質、又は毒性物質の使用又はそれへの曝露から生じる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記急性腎不全が、ミオグロビン尿症横紋筋融解症、ヘモグロビン尿症、アテローム塞栓症、腎動脈閉塞、血管炎、溶血性尿毒症症候群、血栓溶解血小板減少性紫斑病、ヴェグナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、グッドパスチャー症候群、急性糸球体腎炎、急性過敏性間質性腎炎、高カルシウム血症、尿路閉塞、急性尿酸腎症、腎盂腎炎、乳頭壊死、肝腎障害症候群、高血圧、細菌性敗血症、全身性炎症ショック、真菌血症、急性ウイルス性疾患、重度の体液量減少、火傷、外科的処置、虚血再灌流、及び産後合併症からなる群から選択される疾患、障害、又は状態から生じる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬組成物を投与する経路が局所、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口投与経路からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記投与の経路が静脈内投与による経路である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対象における腎不全を予防又は治療するための方法であって、活性物質としてgp130介在シグナル経路を活性化することができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を対象に投与することを含み、それによって腎不全を予防又は治療する方法。
【請求項23】
前記発現ベクターが、裸DNA分子、RNA分子、プラスミド及びウイルスベクターからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、IL−11、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CTC)、及びこれらの生物活性類似体又は断片からなる群から選択されるIL−6ファミリーのメンバーである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、IL−6ファミリーのメンバーの可溶性受容体と結合したIL−6ファミリーのメンバーを含む複合体である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記複合体が、IL−6/可溶性IL−6受容体(sIL−6R)複合体、IL−11/可溶性IL−11受容体(sIL−11R)複合体、LIF/可溶性LIF受容体(sLIFR)複合体、OSM/可溶性OSM受容体(sOSMR)複合体、CNTF/可溶性CNTF受容体(sCNTFR)複合体、CT−1/可溶性CT−1受容体(sCT−1R)複合体、CTC/可溶性CTC受容体(sCTCR)複合体、及びこれらの生物活性類似体又は断片からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記IL−6/sIL−6R複合体がHyper−IL−6である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、gp130に対するモノクローナル抗体、及びgp130介在シグナル経路を活性化することができるgp130に対するポリクローナル抗体からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記腎不全が、急性腎不全、慢性腎不全、及び末期腎不全からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記急性腎不全が、抗生物質、抗真菌剤、放射性造影剤、造影剤、化学療法剤、金属、有機溶媒、及び四塩化炭素からなる群から選択される薬剤物質、診断用物質、又は毒性物質の使用又はそれへの曝露から生じる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記急性腎不全が、腎動脈閉塞、血管炎、溶血性尿毒症症候群、血栓溶解血小板減少性紫斑病、ヴェグナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、グッドパスチャー症候群、急性糸球体腎炎、急性過敏性間質性腎炎、高カルシウム血症、尿路閉塞、急性尿酸腎症、腎盂腎炎、乳頭壊死、肝腎障害症候群、高血圧、細菌性敗血症、全身性炎症ショック、真菌血症、急性ウイルス性疾患、重度の体液量減少、火傷、外科的処置、虚血再灌流、及び産後合併症からなる群から選択される疾患、障害、又は状態から生じる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物を投与する経路が、局所、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口投与経路からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記投与が静脈内投与による投与である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
対象における腎不全を予防又は治療するための方法であって、活性物質としてgp130介在シグナル経路を活性化することができるポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクトした宿主細胞、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を対象に投与することを含み、それによって腎不全を予防又は治療する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−546681(P2008−546681A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516504(P2008−516504)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000698
【国際公開番号】WO2006/134601
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(501412072)ハダジット メディカル リサーチ サービシズ アンド ディベラップメント リミテッド (4)
【Fターム(参考)】