説明

腎臓神経調節装置

【課題】鬱血性心不全、腎不全、高血圧症、および/または、それ以外の心腎疾患を、腎臓神経調節および/または腎臓神経除去により治療する装置を提供すること。
【解決手段】近位端および遠位端が設けられているカテーテルを有しており、更に、
該遠位部の近位にある配備可能なバスケットを有しており、該配備可能なバスケットは被検体の腎血管内に設置されるよう意図されており、該拡張可能な遠位部は、配備されると、腎血管の血管壁の内面と接触するように構成されており、該カテーテルは腎血管の近位で腎神経において神経信号発生を調節するためのエネルギーを供給するように構成されている腎臓神経調節装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願との相互参照>
本願は2004年10月5日出願の米国特許仮出願連続番号第60/616,254号と2004年11月2日出願の米国特許仮出願連続番号第60/624,793号のそれぞれの出願日の優先権を主張するものであり、引例に挙げることにより両出願の開示内容はその全体が本明細書の一部を成しているものとする。更に、本願は2003年4月8日出願の同時係属中の米国特許出願連続番号第10/408,665号の部分継続出願であり、かかる出願は2003年11月20日に米国特許公開2003/0216792号として公開されており、また、かかる出願は2002年4月8日出願の米国特許仮出願連続番号第60/370,190号、2002年10月3日出願の第60/415,575号、2003年1月29日出願の第60/442,970号の出願日の優先権を主張するものであり、引例に挙げることによりこれら出願は全てその全体が本明細書の一部を成すものとする。
【0002】
<引例による開示内容の組み込み>
本明細書に言及されている刊行物や特許出願は全て、個々の刊行物または特許出願の内容が詳細かつ個別的に言及されることにより本明細書の文書内容の一部を構成している場合と同じ程度に、タイトルまたは番号に言及するだけで本明細書の一部を構成しているものとする。
【0003】
本発明は腎臓神経調節法およびその装置に関するものである。特に、本発明は、拍動式の電界および/または電気穿孔法もしくは電気融着法により、腎臓の神経調節を達成する方法をよい装置に関連している。
【背景技術】
【0004】
鬱血性心不全(CHF)は、心臓が損傷を受けた場合に発生して体器官へ送られる血流を低減してしまう症状をいう。血流が相当に低減してしまうと、腎機能は機能不全となり、体液停滞、ホルモン分泌異常、血管狭窄の増大を生じる結果となる。このような結果は心臓の作業負荷を増大し、腎臓および循環系を介して血液を汲み上げる心臓の能力を更に減退させる。
【0005】
このように減退された能力は腎臓におくる血流を更に低減し、これが更に心臓の能力を低下させることになる。腎臓の灌流を漸進的に減少させることが心臓病に因らない主たる原因となって鬱血性心不全の下降螺旋を恒常化させると思われる。更に、流体過負荷とこれに付随する、上述のような生理学的変化の結果として起こる臨床症候が支配的原因となって、鬱血性心不全には度を越えた入院費、生活の質のひどい低下、健康管理システムに要する圧倒的な費用が必要となる。
【0006】
多数の異なる疾病が初期的に心臓に損傷を及ぼすものの、鬱血性心不全は、ひとたび起こってしまうと、2種類に分離される。すなわち、慢性鬱血性心不全と急性(または、代償不全慢性)鬱血性心不全に分かれる。慢性鬱血性心不全は長期的かつ緩進行性の変成疾患である。何年かで、慢性鬱血性心不全は心不全を引き起こす。慢性鬱血性心不全を臨床的に分類する場合は、患者の運動する能力または患者の日常生活を行う能力(例えば、ニューヨーク心臓協会機能分類(New York Heart Association Functional Class)によって規定されている能力)に基づいて分類される。慢性鬱血性心不全の患者は、通常、通院で管理され、薬物を使うのが最もありふれている。
【0007】
慢性鬱血性心不全患者は、突然のひどい心臓機能低下を経験することがあるが、これは急性鬱血性心不全と呼ばれ、心臓は生体の活動する器官を養うのに十分な血流と血圧を維持することができなくなる。このような急性鬱血性心不全による機能低下が起こるのは、余分な圧迫(感染や過剰な流体の過負荷など)が安定した慢性鬱血性心不全患者の心臓にかかる作業負荷を著しく増大させた時である。慢性鬱血性心不全の段階的で衰退気味の進行に比べて、急性鬱血性心不全を患っている患者は鬱血性心不全の最も早期の段階からすでに機能低下を起こし、ひどい血流急落に至る。更に、急性鬱血性心不全は、心臓の筋肉に対する唐突かつ回復不能な損傷で「心臓発作」と広く呼ばれている急性心筋梗塞(AMI)の数時間後または数日後の内に起こることがある。
【0008】
上述のように、腎臓は慢性腎不全(CRF)、末期腎不全(ESRD)、高血圧症(病理学的に高い血圧)、それ以外の各種心腎疾患の進行に重要な役割を果たしているばかりか、鬱血性心不全(CHF)の進行にも重要な役割を果たしている。腎臓の諸機能は3つの広い範疇に基づいて概略説明することができ、その3つの範疇とはすなわち、血液濾過および肉体の代謝作用によって生成された老廃物の放出、塩と水分と電解質と酸−塩基平衡の調節と、活動する器官の血流維持のためのホルモン分泌である。適切に機能している腎臓がなければ、患者は水分停滞、尿の流れの低下、血中および体内における有害老廃物の蓄積に罹る。腎機能低下または腎疾患(腎不全)が原因で起こるこのような諸症状は心臓の作業負荷を増大させると考えられている。鬱血性心不全患者では、機能低下した腎臓のせいで水分が蓄積して越中有害物質が累積すると、腎不全により心臓は更に機能低下し、延いては、心臓に更に危害を及ぼす。
【0009】
尿生成に関与する腎臓の主要機能単位は「ネフロン」と呼ばれる。腎臓は1個あたり約100万個のネフロンから構成されている。ネフロンは糸球体およびその複数細管から作られており、これらは多数の部分に区分けされ、すなわち、近位細管、中位係蹄(ヘンレの係蹄)、および、遠位細管に分離される。ネフロンは各々が、幾つかの物質およびホルモン(例えば、レニン、エリスロポイエチンなど)を分泌する能力を備えている複数の互いに異なる種類の細胞によって包囲されている。血液から血漿水を濾過して糸球体に流し込むことで始まる複雑なプロセスの結果として、尿が生成される。糸球体の壁は水と分子に対して十分な透過性があるが、蛋白質分子と大型分子についてはほぼ不透過性を示す。従って、健康な腎臓では、濾過後の液には、事実上、蛋白質が皆無であり、細胞要素も含まれていない。最終的に尿になる濾過された液は細管を通って流れる。尿の最終化学成分は、生体恒常性を維持するのに必要な尿中へ分泌し、そのような尿から物質を再吸収した後で測定される。
【0010】
心送血量の約20%を受取ったとして、2個の腎臓は1分あたり約125ミリリットルの血漿水を濾過する。濾過が起こる原因は、糸球体膜にかかる圧力勾配である。腎動脈内の圧力が血漿水を糸球体の中に押込み、濾過を生じる。糸球体濾過率(GFR)を比較的一定に保つために、糸球体内の圧力は、導入動脈および導出動脈、すなわち、糸球体に入るまたは糸球体から出る筋性の壁で囲われた血管の収縮または拡張によって一定に保たれる。
【0011】
鬱血性心不全(CHF)患者では、心臓は徐々に衰え、血流と血圧は患者の循環系内で降下する。急性心不全の最中は、短期補償作用が働いて、血流が長く低下するのに耐えられない脳や心臓のような重要な器官に潅流を維持する。しかしながら、急性心不全の最中に生存への闘いを初期的に補佐する、これと同じ反応が、慢性心不全の最中には有害な反応となる。
【0012】
複数の複雑なメカニズムが組み合わされることが一因となって、鬱血性心不全(CHF)の有害な流体過負荷が起こる。心臓が機能不全となって血圧が降下すると、腎臓は、潅流を得るには血圧が不十分となるせいで働くことができず、機能不全となる。腎機能がこのような機能不全状態になった結果、最終的には尿出量が減少する。十分な尿出量が無ければ、肉体は体液を溜め込み、その結果として生じる体液過負荷が原因となって、多数の望ましくない症状の中でもとりわけ、末梢組織の浮腫(脚部のむくみ)、息切れ(肺の中の体液を原因とする)、および、腹部内の体液鬱滞が患者に起こる。
【0013】
更に、心送血量の減少により腎臓血流が低下し、神経ホルモン刺激が増大し、腎臓の傍糸球体装置からホルモンレニンが放出されることになる。この結果、ナトリウムの大量停留を生じ、従って、体積膨張を生じる。レニンが増大した結果、アンギオテンシン、すなわち、強力な血管収縮物質を生成する。心不全とその結果として生じる血圧低下も、腎臓ではなくむしろ他の体内器官内の血流と潅流圧を低減する。このような体内の器官は、血圧が低下すると、低酸素症となり、結果的に代謝酸毒症を起こし、これが薬理学治療の効果を低下させ、突然死の危険が増大する。
【0014】
心不全患者について医者が観察するところの上述のような機能低下の悪循環の少なくとも一部に、レニン−アンギオテンシンシステムとして周知の心臓機能と腎臓機能との微妙な相互作用の働きが介在していると思われる。心臓の血液圧出機能の障害は、心送血量の低減と血流の減少とを生じる結果となる。この血流減少に対して腎臓は総血液量が減少してしまったかのように反応するが、そういった場合でも、実際には、測定された血液量は正常であるか、むしろ増大している。これにより腎臓による体液鬱滞やむくみの形成が起こり、それにより、体液過負荷や心臓にかかる圧迫が増大する。
【0015】
体系的には、鬱血性心不全(CHF)は異常に上昇した末梢血管抵抗に付随し、交感神経系機能の激しい障害が原因で起こる血行の変性を特徴とする。交感神経系の活動が上昇することで、動脈血管収縮が増進(血液流に対して血管抵抗が増大)した後に心送血量が更に低下するという、衰退に向かう悪循環に拍車がかかり、生きている器官に流れ込む血液流の量を一層減少させてしまいさえする。
【0016】
先に説明した血管収縮のメカニズムによる鬱血性心不全では、心臓と循環系は腎臓に送る血液流を劇的に低下させている。鬱血性心不全の間、腎臓は神経経路とホルモン伝令とにより、より高位の神経中枢から指令を得て、体内に体液とナトリウムを停滞させる。心臓にかかる圧迫に応答して、神経中枢は濾過機能を低下させるように腎臓に指令を出す。短期間のうちならば、このような指令も有効であるかもしれないが、このような指令が数時間や数日間に亘って続くと人命を脅かしかねず、または、腎臓機能を終焉させてしまうことで生存のために人工腎臓に頼らざるを得ないようにしてしまう恐れがある。
【0017】
腎臓が血液を十分に濾過しない場合、大量の体液が体内に鬱滞し、この結果として鼓脹(組織内の体液鬱滞)を生じ、心臓の作業負荷を増大させてしまう。体液が肺の中に浸透することもあり、患者は息切れを起こす。この奇妙で自己破壊的現象を説明するには、出血といったような一時的障害の兆候として鬱血性心不全(CHF)の慢性的低血圧を認知しきれない肉体の正常な補償メカニズムの効果をもってするのが最もよさそうである。
【0018】
深刻な事態では、肉体は最も敏活な器官、すなわち、脳と心臓を酸素欠乏の危険から保護しようとする。指令は神経経路とホルモン経路と伝令とによって発せられる。このような指令は脳と心臓に対して血圧を維持するという目標に向けて出される。脳と心臓はちょっとした期間でも低潅流にも持ちこたえることができない。これらの器官に対する血圧が容認できないレベルまで低下してしまうと、発作または心臓発作が生じる結果となる。それ以外の器官で、例えば腎臓などは、虚血期間がもっと長くても幾分か持ちこたえることができて、長期損傷を被らずに済む。従って、肉体はこれら腎臓のような器官への血液供給を犠牲にして、脳と心臓の存命を図る。
【0019】
鬱血性心不全(CHF)が原因で起こる血流力学的障害は、レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系、交感神経副腎系などのような幾つかの神経ホルモン系を活性化させ、ヴァソプレシン放出を促す。腎臓の血管収縮が増進すると、糸球体濾過率(GFR)が降下し、循環系におけるナトリウム負荷が増える。同時に、腎臓の傍糸球体からより多量のレニンが放出される。腎機能低下の複合効果には、糸球体ナトリウム負荷の低下、アルドステロンが仲介するナトリウムの細管再吸収、体内におけるナトリウムおよび水分の鬱滞などが含まれる。このような効果はやがて、腎臓における体液およびナトリウムの鬱滞を根本原因とする心臓腫脹、心収縮期壁圧迫の増大、心筋酸需要の増大、むくみの形成などを含む鬱血性心不全症状の幾つかの兆候および症候に至る。従って、腎臓血流において持続する鬱滞と血管収縮の直接責任は、鬱血性心不全に付随する体液鬱滞の発生にある。
【0020】
鬱血性心不全(CHF)は進行性であり、今現在のところ、治癒不能である。薬物治療の限界と、薬物治療しても鬱血性心不全患者の機能低下を快方に向かわせることが不可能なばかりか、機能低下を完全阻止してしまうことさえ不可能なのは明白である。外科手術治療は場合によっては効果があるが、付随する危険と経費のせいで、末期段階の患者集団に限定されている。更に、鬱血性心不全患者の機能低下について腎臓が果たす劇的役割は、現在の外科手術治療によっては適切に扱われない。
【0021】
自律神経系は、血液流バランスと血圧を維持するのに重要な肉体諸機能の調節を司る信号を制御するのに重要な経路であると認識されている。自律神経系は、圧受容器(血液の圧力と体積に応答する)や化学受容器(血液の各種化学成分に反応する)のような肉体の生物学的センサーから神経系の感覚線維を介して中枢神経系に信号の形態を呈している情報を伝送する。自律神経系はまた、血管系の多様な神経分布成分を運動神経線維を介して制御する中枢神経系からの指令信号を伝送する。
【0022】
人間の腎臓移植に関する経験は、腎臓機能における神経系の役割のはしりとなる証拠を提示していた。移植後も、全ての腎臓神経が全面的に断ち切られても、腎臓は水とナトリウムの排出を増進させていた。このような現象は、腎臓神経が切断された場合や、化学的に破壊されてしまった場合の動物でも観察された。この現象は「神経除去性利尿」と呼ばれるが、それは、神経除去が腎臓に利尿薬と類似する作用をもたらしたからである。後に、「神経除去性利尿」は、腎臓を流れる血液流の増進をもたらす腎臓動脈系の血管拡張に付随するものであることが分かった。このような観察は、腎臓に血圧低下を起こすことで「神経除去性利尿」の作用を後退させるという動物実験における観察によって確認された。
【0023】
移植外科手術が成功裡に終わってから数ヵ月後に、移植被験者の「神経除去性利尿」が呈しして腎機能が正常に戻ったということも観察された。元来、「腎臓利尿」は過渡現象であり、中枢神経系から腎臓に信号を伝送する神経は腎臓機能に不可欠なものではないと思われていた。その後の発見が暗示するものは、腎臓神経が再生する深甚な能力を備えており、「神経除去性利尿」の作用を打ち消してしまうことが一因となって、必要な刺激を与えれば腎臓に新生神経線維を成長させることができるという点であった。
【0024】
また別な一連の研究は、腎臓によってホルモンレニンの分泌を神経制御するという役割に注目している。先に述べたように、レニンは心不全患者における血管収縮と水およびナトリウムの鬱滞の「悪循環」の原因となるホルモンである。腎臓の交感神経活動を増進または後進させることで、腎臓によるレニン分泌率の増大および減少がそれぞれ平行して実現されたことが示された。
【0025】
要約すると、臨床経験と大量の動物実験から、腎臓の交感神経活動の増進が腎臓に供給する血液血管の血管収縮の原因となり、腎臓の交感神経活動の後進が体内からの水とナトリウムの排出量低減とレニン分泌の上昇の原因となっているのが分かった。例えば神経除去などによって腎臓の交感神経活動を低下させることで、上述のプロセスを逆転させることができる。
【0026】
心不全の症状の結果として腎臓の交感神経刺激の異常高騰が起こることが、動物モデルで確認されている。このような現象を追跡した結果、圧受容体から中枢神経系に信号を伝送する感覚神経が原因であると突き止められた。圧受容体は血管系の複数の異なる部位に存在している。頸動脈の圧受容体(脳に動脈血を供給する)と腎臓への交感神経刺激の間には強力な関係が存在する。心不全を患う実験動物で動脈血圧が突然低下すると、交感神経の調子が上がる。それにも関わらず、慢性の鬱血性心不全(CHF)患者では、正常な圧反射が単独で腎臓神経活動の上昇の原因となることはなさそうである。長時間に亘って動脈血圧レベルが低下すると、圧受容体は通常は「リセット」され、すなわち、活動の基準レベルに戻り、新たな障害が導入されるまでそのままである。よって、鬱血性心不全患者では、血圧の制御と腎臓機能の神経制御の責任を負う自律神経系の構成要素は正常でなくなると思われている。この異常性の原因となる厳密なメカニズムは十分には理解されてはいないが、鬱血性心不全患者の全体的症状に及ぼす効果は甚大に有害である。
【0027】
末期腎不全(ESRD)は、腎臓神経活動によって少なくとも一部が制御されているまた別な症候である。糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、および、コントロールの効かない高血圧のせいで、末期腎不全を患っている患者数が劇的に増大している。慢性腎不全(CRF)がゆっくりと進行して末期腎不全になる。慢性腎不全は末期腎不全の進行におけるきわどい段階を表している。慢性腎不全の兆候と症候は初期的には軽症であるが、2年から5年を経過すると、進行性となり回復の見込みが無くなる。末期腎不全に向かう病気の進行と闘ったり末期腎不全の合併症と闘う際に何らかの進展があっても、既存の介在処置の臨床的効果は限られたままである。
【0028】
広範な病因(高血圧、感染、外傷、自己免疫疾患など)の腎不全が原因となって、全身性高血圧症、蛋白尿症(血液から尿中に濾過して出される蛋白過剰症)、糸球体濾過率(GFR)の漸進的下落を特徴とする慢性腎不全(CRF)症候が生じ、その結果として最終的に末期腎不全(ESRD)になることが、ここ数十年で分かってきている。このような観察が暗示しているのは、共通するメカニズム経路を辿っての慢性腎不全の進行と、このような共通経路を抑止する治療介在処置とが初発的原因とは無関係に慢性腎不全の進行速度を低下させるのに成功するかもしないということである。
【0029】
慢性腎不全(CRF)の悪循環の手始めに、腎臓に対する初期傷害が或る量のネフロンの喪失を引き起こす。正常な糸球体濾過率(GFR)を維持するために、残余のネフロンに過剰濾過の状態を引き起こす結果となる補償腎臓メカニズムと補償全身性メカニズムの活動がある。しかし、最終的には、過剰濾過によって「働きすぎ」で損傷を受けたより多くのネフロンが喪失される。或る時点で、十分な数のネフロンが喪失されて、正常な糸球体濾過率はもはや維持され得なくなる。このような慢性腎不全の病理学的変化が全身性高血圧症の悪化を生み、従って、糸球体内高圧症と過剰濾過の増進を生じる。慢性腎不全で糸球体の過剰濾過が進み、透過率が増大すると、より多量の蛋白が血液から糸球体を介して腎臓の細管内に押出される。このような蛋白は細管にとって直接有害となり、ネフロンを更に喪失させ、慢性腎不全の進行速度を高める。更にネフロンが喪失されたのに伴って糸球体濾過率が低下しても、このような慢性腎不全の悪循環が継続し、過剰濾過が更に進んで最終的に末期腎不全(ESRD)を起こし、透析の必要が生じる。臨床的には、高血圧症と過剰蛋白濾過は慢性腎不全の末期腎不全へ至る進行速度の2つの主要な判定因子であることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
先に臨床的に分かっていたことではあるが、高血圧症、蛋白尿症、ネフロン喪失と慢性腎不全(CRF)の間の生理学的結びつきが初めて認識されたのは1980年代になってからであった。1990年代には、交感神経系活動の役割が解明された。機械受容体と化学受容体の活動のせいで損傷した腎臓から発生して入ってきた信号が、血圧制御を司る脳の領域を刺激する。これに反応して、脳は全身レベルで交感神経刺激を増大させ、その結果として、主として血管の収縮により血圧が上昇する。交感神経の刺激の上昇が導出側の交感神経線維によって腎臓に達すると、腎臓は2つの形式の深刻な有害効果を生じる。腎臓は、高血圧とは無関係に、腎臓の交感神経伝達物質(例えば、ノルエピネフリンなど)の放出による直接的な腎臓毒性によって損傷を受ける。更に、アンギオテンシンIIを活性化させるレニンの分泌が増大し、これにより、全身性血管収縮を増進するとともに、高血圧を激化させる。
【0031】
時間経過とともに、腎臓に対する損傷は腎臓から脳へ送る導出側の交感神経信号を更に増長させる。上昇したアンギオテンシンIIは神経伝達物質が腎臓内で放出されるのを更に促進する。よって、フィードバックループが閉じて、これが腎臓の機能低下を加速させる。
【0032】
前述の事柄に鑑みて、鬱血性心不全、腎不全、高血圧症、および/または、それ以外の心腎疾患を、腎臓神経調節および/または腎臓神経除去により治療する方法およびその装置を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、パルス出力電界(PEF)を利用した腎臓神経調節法(例えば、神経除去法)およびその装置を提供する。本発明の幾つかの局面がパルス出力電界を付与することで、腎臓神経や腎臓神経機能に寄与する神経線維やそれ以外の神経線維に電気穿孔および/または電気溶融を実施する。本発明の幾つかの実施形態は、腎臓神経調節を誘導する血管内装置である。本明細書に記載されている装置と方法は、神経除去などの神経調節を達成し、かつ/または、それ以外の方法で電気穿孔効果および/または電気溶融効果をもたらす好適な電気信号パラメータまたは電界パラメータを利用することができる。例えば、電気信号は、電気穿孔を実施する目的でナノ秒パルス出力電界(nsPEF)および/またはパルス出力電界(PEF)を組み入れることができる。特殊な一実施形態は、第1の経路のパルス出力電界による電気穿孔術を施したのに続いて第2の経路のナノ秒パルス出力電界による電気穿孔術を施し、パルス出力電界の後に細胞がどれも無傷のままアポプトーシスで自滅するのを誘発する工程、または、電気穿孔術を施す順番を逆にしただけの同じ工程を含んでいる。代替の実施形態は、電気衝撃を遂行する神経の能力を低減または除去することが期待されるような態様でパルス出力電界を付与することにより、神経細胞を溶融する工程を含んでいる。このような方法および装置は腎臓の神経線維および/または腎臓の神経機能に寄与するそれ以外の神経線維に適用された場合の本発明は、鬱血性心不全、高血圧症、腎臓系各種疾患、それ以外の腎臓障害を防止または治療する態様で、尿排出量が増大し、かつ/または、血圧が抑制される。
【0034】
特定の実施形態の幾つかの局面は、パルス出力電界および/またはナノ秒パルス出力電界に好適なパラメータを選択することにより、上述のような結果を達成することができる。パルス出力電界の各種パラメータには、電界強度、パルス幅、パルスの形状、パルスの数、および/または、パルス間隔(例えば、デューティーサイクル)などがあるが、これらに限定されない。好適な電界強度には、例えば、1センチメートルあたり約1万ボルト(10,000 V/cm)までの各レベルの強度が含まれる。好適なパルス幅には、例えば、約1秒までの各種長さの幅が含まれる。パルス波形の好適な形状には、例えば、直流波形、正弦波、余弦波、正弦波と余弦波の組合せ、直流波形、直流シフトされた交流波形、高周波波形、方形波、台形波、指数関数的減衰波、これらの組合せなどが含まれる。好適なパルス数としては、例えば、少なくとも1個である。好適なパルス間隔としては、例えば、約10秒未満の間隔である。所望に応じて、これらパラメータをどのように組合せて利用してもよい。このようなパラメータは例示を目的として提示されているのであって、決して限定すると解釈するべきではない。これ以外の代替の波形パラメータは自明である。
【0035】
幾つかの実施形態は、長期持続する神経除去を施して急性心筋梗塞(AMI)の拡大を最小限に抑え、かつ、鬱血性心不全に付随する組織形態の変化の発現を阻止するのを助ける経皮経管システムを目的としている。例えば、本発明の一実施形態は、例えば、心臓血管形成術および/またはステント設置術などによって患者の梗塞形成を治療する工程と、経動脈パルス出力電界による腎臓神経除去処置をX線透視ガイダンスの元で実施する工程とを含んでいる。これに代わる例として、パルス出力電界治療は、急性心筋梗塞部が安定した直後の別な期間に行うことができる。腎臓神経調節はまた、腎臓外科手術処置の補足治療として採用されてもよい。このような実施形態では、腎臓のパルス出力電界治療によって供与される尿排出量および/または血圧抑制の予測される増進によって、梗塞の拡大を抑止するとともに鬱血性心不全を阻止するために心臓にかかる負荷を低減することが期待される。
【0036】
本件に記載されている経管パルス出力電界システムの幾つかの実施形態は、梗塞直後または梗塞後なんどきでも、腎臓神経系の神経除去を行い、または、腎臓神経系の活動を低下させることができるにも関わらず、患者の体内に恒久的に移植片を残存させなくてもよい。このような実施形態は、患者の心臓が治癒に向かう期間である数ヶ月の間、尿排出量を増大させ、かつ/または、血圧を抑制すると期待される。このような治癒期間の後に反復神経調節および/または長期神経調節が有益であると判断された場合には、腎臓パルス出力電界治療は必要に応じて繰り返されてもよい。
【0037】
急性心筋梗塞(AMI)を効果的に治療するのに加えて、本件に記載されているシステムの幾つかの実施形態はまた、鬱血性心不全(CHF)、高血圧、腎不全、それ以外の、腎臓交感神経活動の影響や作用による腎臓疾患や心腎疾患などを治療するものとも期待される。例えば、血管構造を通して治療部位までパルス出力電界システムを進入させてから治療部位にパルス出力電界治療を行うことにより、いつでも鬱血性心不全を治療するために本件の各種システムを利用することができる。これは、例えば、流体負荷除去のレベルを調節することができる。
【0038】
本件に記載されている経管パルス出力電界システムの各種実施形態は、当該技術で周知である血管形成カテーテルまたは電気生理学的カテーテルと同様に用いることができる。例えば、標準的なセルジンガー技術により、動脈接近を行うことができるが、任意で、動脈鞘部材を設置してカテーテル接近を施すようにしてもよい。ガイドワイヤを血管を通して患者の腎臓動脈内に進入させた後に、このガイドワイヤの上を伝って、さらに/または、鞘部材の中を経管パルス出力電界システムに前進させ、腎臓動脈内に侵入させるようにしてもよい。任意で、パルス出力電界カテーテルを挿入する前に鞘部材を設置してもよいし、または、パルス出力電界カテーテルと一緒に鞘部材を前進させて、鞘部材の一部または全部がカテーテルを被覆するようにしてもよい。これに代わる例として、パルス出力電界カテーテルは、ガイドワイヤを使用せずに血管を通して直接進入させられてもよいし、かつ/または、鞘部材無しで血管内に導入して前進させられてもよい。
【0039】
動脈設置に加えて、パルス出力電界システムは静脈内部に設置することもできる。静脈接近は、例えば、頸部接近法により達成することができる。パルス出力電界システムは、例えば、腎臓動脈内で利用したり、腎臓静脈内で利用したり、または、腎臓動脈と腎臓静脈の両方の内部で利用して、より完全な神経除去を促進することができる。
【0040】
パルス出力電界カテーテルは、標的ニューロンに相関的に血管内の所望の位置に設置された後で、血管内で安定した状態にされ(例えば、血管壁に鎹で留められる)てから、標的神経または標的ニューロンにエネルギーが伝達される。一変形例では、パルス出力高周波エネルギーが標的部位に伝達されて、非熱的な神経遮断部を設け、神経信号発信を低減し、または、それ以外の態様で神経活動を調節する。これに代わる例として、または、これに加えて、低温化、極低温化、熱高周波、熱マイクロ波または非熱マイクロ波、指向式超音波または非指向式超音波、熱直流または非熱直流のほかに、これらの各種組合せを採用して、神経信号発信を低減し、または、それ以外の態様で神経信号発信を制御するようにしてもよい。
【0041】
本発明のまた別な実施形態では、神経構造体に加えて、または、腎臓神経構造体の代わりに、腎臓以外の他の神経構造体を標的として、腎臓動脈導管または静脈導管の内側から接近するようにしてもよい。例えば、パルス出力電界カテーテルは大動脈または大静脈を通して操舵され、多様な神経構造体と並置されて、上記以外の諸症状を治療し、または、各種心腎障害の治療に着手することができる。例えば、腰交感神経連鎖群にこのような態様で接近し、調節し、遮断し、融除し、または、それ以外の処置を行うことができる。
【0042】
パルス出力電界システムの幾つかの実施形態は標的神経構造体を完全に遮断または神経除去することができ、またそうでなければ、パルス出力電界システムは腎臓神経活動を調節することができる。神経除去のような完全な神経遮断とは異なり、これ以外の神経調節は、腎臓(一方または両方)と肉体の残りの部分との間の腎臓神経活動のレベルに完全ではない変化を生じる。従って、パルス出力電界パラメータを変動させることで、神経活動に複数の異なる効果を生じることになる。
【0043】
経管パルス出力電界システムの一実施形態では、装置は1個以上の電極を備えており、これら電極はパルス出力電界を設けるために腎臓血管の標的領域に物理的に接触する配置になっている。例えば、装置は、拡張可能な螺旋部と該螺旋部の1個以上の電極部とを備えているようにすることができる。カテーテルは、低プロファイル構成を呈したまま腎臓血管内に設置される。次いで、拡張可能部が拡張状態となって、血管壁の内面に接触することができる。代替例として、カテーテルが1個以上の拡張可能な螺旋電極部を備えているようにしてもよい。例えば、第1の拡張可能電極部と第2の拡張可能電極部は血管内で互いから所望の距離を隔てて設置され、活性電極と帰還電極を設けることができる。拡張可能電極部としてはそれぞれが、形状記憶部材、膨張可能バルーン、拡張可能メッシュ材、連結システム、それ以外のタイプの、抑制された態様で拡張することのできる装置などであればよい。好適な拡張可能連結システムには拡張可能バスケットがあり、これは複数の形状記憶ワイヤまたはスロットが設けられた複数のハイポチューブ、および/または、複数の拡張可能リングを備えている。これに加えて、拡張可能電極は、カテーテルのバルーン部に沿って配置された点接触電極であってもよい。
【0044】
パルス出力電界の別な実施形態は、血管壁に物理的に接触しない電極を備えている。高周波エネルギー、すなわち、従来型の熱エネルギーと比較的非熱性のパルス出力高周波エネルギーの両方が、治療を施すべき組織それ自体から短距離だけ離隔した位置から組織に伝達することができるパルス出力電界の具体例である。これ以外のタイプのパルス出力電界も、電極が血管壁に物理的に接触しない状況で使うことができる。このように、電極接点と血管壁またはそれ以外の組織との間の物理的接触により、直接的に神経にパルス出力電界を付与することができ、または、電極接点を血管壁に物理的に接触させずに、間接的に神経にパルス出力電界を与えることができる。従って、「神経接触」という語は、システム素子が神経および/または神経の近位の組織と物理的接触することを含んでいるとともに、神経または組織と物理的に接触せずに電気接触するだけのことも含んでいる。パルス出力電界を間接付与するために、装置は中心決め部材を備えており、かかる素子は血管の中央領域に電極を設置するよう構成されているか、またそうでなければ、血管壁から電極を離隔させる構成になっている。中心決め装置は、例えば、バルーンまたは拡張可能バスケットを備えている。1個以上の電極が中心決め部材の中央シャフト上に搭載されるが、この場合、素子と長軸線方向に整列状態になるか、または、素子のどちらであれ片側に設置されるか、いずれかである。バルーンカテーテルを利用した場合、膨張状態のバルーンが増大したインピーダンスの絶縁体として作用し、所望の電気流路に沿ってパルス出力電界を配向させる、すなわち、方向づけることができる。
【0045】
このシステムのまた別な実施形態では、組合せ装置は経管カテーテルを備えており、このカテーテルの第1電極は血管壁と物理的接触する構成であり、その第2電極は血管壁の内側に設置されるものの血管壁から離隔される構成である。例えば、拡張可能な螺旋電極は中央に配置された電極と組合せて使用されて、上述のようなバイポーラ電極対を設けるようにしてもよい。
【0046】
また別な実施形態では、1個以上の電極の、血管壁に対する放射線方向位置はダイナミックに変動させることで、電極によって生み出されたパルス出力電界に指向性を持たせることができる。また別な変形例では、電極は血管壁の一部または全部を横断するよう構成されていてもよい。例えば、電極(単数または複数)は腎静脈の内側に設置されてから、腎静脈の壁を横断させられて血管内周の空間に添うようにし、パルス出力電界を設ける前に、電極の少なくとも一部が腎動脈および/または腎静脈の内周を廻るように配置してもよい。
【0047】
本発明のバイポーラ式実施形態は、活性電極と接地電極の間の間隔に相対しダイナミックな動きまたは動作をすることで所望距離、所望体積、または、それ以外の所望寸法にわたって治療を達成するよう構成されていてもよい。例えば、複数の電極は、バイポーラ電極対が互いに対して長軸線方向に移動することで電極間の離隔距離を調節し、かつ/または、治療部位を変動させるように配置してもよい。或る特殊な実施形態は、カテーテルに連結された第1電極と、カテーテルの管腔の中を移動することのできる可動第2電極とを備えている。代替の実施形態では、第1電極はカテーテルに装着することができ、第2電極は血管内を搬送される装置に装着することができるため、第1電極と第2電極が互いに相関的に位置整復されることで、電極間の離隔距離を買えることができるようになっている。このような実施形態は、多様な腎臓血管の解剖学的構造の治療を容易にする。
【0048】
本件に記載されている本発明の実施形態はいずれも、任意で、エネルギー供与前、エネルギー供与中、または、エネルギー供与後に治療領域に薬剤を注入するような構成になっていてもよい。注入薬剤は選択によりエネルギー供与の神経調節効果を向上または変更することができる。このような薬剤はまた、標的ではない細胞を保護したり一時的に退避させることができ、かつ/または、視認化を促進することができる。
【0049】
本発明の幾つかの実施形態は、治療のために位置の識別を容易にし、かつ/または、治療の成功を判断または確認する検出装置またはそれ以外の素子を備えていてもよい。例えば、システムは刺激波形を発生させて人層真剣の刺激に反応することが分かっている生理学的パラメータを監視するよう構成されていてもよい。監視されたパラメータの結果に基づいて、システムは腎臓神経の位置を判断し、かつ/または、神経除去が起こったか否かを判断することができる。このような生理学的反応を監視する検出装置には、例えば、ドップラー素子、熱電対、圧力センサー、画像物理療法術(例えば、X線透視術、経管超音波術など)などが含まれる。これに代わる例として、電気穿孔は、例えば電気インピーダンス断層撮像法(EIT)またはそれ以外の電気インピーダンス測定法を利用して、直接的に監視されるようにしてもよい。また別な監視技術と監視素子も自明である。このような検出装置はパルス出力電界システムと一体型であってもよいし、或いは、別個の素子であってもよい。
【0050】
また別な特殊な実施形態は、電界を標的細胞の長いほうの寸法と整列させる構成の電極を備えている。例えば、腎臓細胞は細長い構造であって、縦の長さが横方向寸法(例えば、直径)を遥かに越える傾向がある。電界の伝搬の指向性が細胞の横側面ではなく細胞の縦側面に優先的に影響を及ぼすように電界を整列させることにより、より低い電界強度を利用し標的細胞を殺す、または、機能停止させることができることが予期される。これにより、移植可能な装置の電池寿命を保ち、隣接する構造体に及ぼす付帯的効果を低減し、そうでなくても、標的細胞の神経活動を調節する能力を向上させることが期待される。
【0051】
本発明のまた別な実施形態は、神経の上に位置する組織、または、神経の下に位置する組織の細胞の縦長寸法が神経細胞の縦長寸法に関して横断方向にある(例えば、直交する、または、直角以外の或る角度をなす)応用例を目的とする。このような実施形態の別な局面は、パルス出力電界が標的細胞の長いほうの寸法および非標的細胞の短いほうの寸法と整列するように、パルス出力電界の指向性整列させることである。より具体的に説明すると、動脈平滑筋細胞は、通例は、概ね螺旋状の配向で動脈周囲を包囲する細長い細胞であるため、それぞれの長いほうの寸法は動脈の長軸線方向に沿って延びているよりはむしろ周方向に延びている。他方で、腎臓血管脈叢の神経は動脈の外側に沿って概ね動脈の長軸線方向に延びている。よって、動脈の長軸線方向に概ね整列状態になるパルス出力電界を付与することで、標的神経細胞に電気穿孔を優先的に起こしながらも、非標的の動脈平滑筋細胞の少なくとも或る部分に同程度の影響を与えることが無いようにするものと予期される。これにより、血管外膜または周辺領域の神経細胞(標的細胞)の神経細胞(標的細胞)に対する優先的な神経除去を経管装置から行い、望ましくない程度まで血管の平滑筋細胞に影響を及ぼすことがないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】人間の腎臓の解剖学的構造を例示する斜視図である。
【図2】腎動脈に相対的な腎臓神経の位置を例示した概略詳細図である。
【図3A】腎臓神経に選択的に影響を及ぼす目的である電流の流れの方向を例示した概略側面図である。
【図3B】腎臓神経に選択的に影響を及ぼす目的である電流の流れの方向を例示した概略端面図である。
【図4】本発明の位置実施形態による、複数の電極を設けた経管カテーテルの部分断面概略側面図である。
【図5】本発明の別な実施形態による、1対の拡張する螺旋状電極が互いから所望の距離だけ離隔されて配置された経管装置の部分断面概略側面図である。
【図6】本発明のまた別な実施形態による、第1電極が拡張可能バルーン上に設けられるとともに第2電極がカテーテルシャフト上に設けられている経管装置の部分断面概略側面図である。
【図7】本発明のまた別な実施形態による、拡張する第1電極がカテーテルの管腔の中を搬送されるとともに第1電極と相補的な第2電極がカテーテルに搭載されて運ばれる経管装置の部分断面概略側面図である。
【図8】本発明のまた別な実施形態による、拡張可能バスケットとバスケット付近に設けられた複数の電極を備えている経管装置の部分断面概略側面図である。
【図9】本発明のまた別な実施形態による、電極の一実施形態を例示した、図8の装置の概略詳細図である。
【図10】本発明のまた別な実施形態による、血管壁と任意の絶縁素子とを接触させるために拡張可能なリング電極を設けた経管装置の部分断面概略側面図である。
【図11】図10のリング電極のための複数の互いに異なる巻線の3種類の実施形態の概略詳細図である。
【図12】図10のリング電極を図11に例示された3種類の巻線と一緒に設けた経管装置の部分断面概略側面図である。
【図13】本発明のまた別な実施形態による、リング電極と血管内搬送される電極とを設けた経管装置の部分断面概略側面図である。
【図14】本発明のまた別な実施形態による、バルーンカテーテルと拡張可能な点接触電極とがバルーンより近位と遠位とに配置されている経管装置の部分断面概略側面図である。
【図15】本発明のまた別な実施形態による、バルーンカテーテルと電極とがバルーンより近位と遠位とに配置されている経管装置の概略側面図である。
【図16】(A)は、本発明の実施形態による、図15の装置を採用した方法の一工程段を例示した、部分断面概略側面図であり、(B)は、本発明の実施形態による、図15の装置を採用した方法の別な工程段を例示した、部分断面概略側面図である。
【図17】本発明のまた別な実施形態による、バルーンカテーテルと複数のダイナミックに動作可能な電極とを設けた経管装置の概略側面図である。
【図18】本発明のまた別な実施形態による、経管装置の遠位電極がバルーンカテーテルの管腔の中に配備されているのを例示した概略側面図である。
【図19A】図18に例示された経管装置を使い、多様な腎臓血管を有する患者の腎臓神経活動を調節する方法を例示した部分断面側面図である。
【図19B】図18に例示された経管装置を使い、多様な腎臓血管を有する患者の腎臓神経活動を調節する方法を例示した部分断面側面図である。
【図20】本発明のまた別な実施形態により、経管装置の複数の電極が中心決め部材のシャフト沿いで、尚且つ、中心決め部材と一列に配置されているのを例示した部分断面側面図である。
【図21】本発明のまた別な実施形態により、経管装置の電極がダイナミックに放射状の位置に整復されて、パルス出力電界に指向性を持たせるのを容易にするよう構成されているのを例示した部分断面側面図である。
【図22】本発明のまた別な実施形態により、経管装置に注入/吸引カテーテルが設けられているのを例示した部分断面側面図である。
【図23A】本発明の実施形態による、血管壁を少なくとも部分的に横断して電極を通すようにした構成の経管装置を使用する方法を例示した部分断面側面図である。
【図23B】図23Aの線A−Aに沿って破断された断面図である。
【図23C】図23Aの線A−Aに沿って破断された断面図である。
【図24A】本発明のまた別な実施形態による、経管装置に治療効果を測定または監視する検出装置が設けられているのを例示した部分断面側面図である。
【図24B】本発明のまた別な実施形態による、経管装置に治療効果を測定または監視する検出装置が設けられているのを例示した部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の幾つかの実施形態は、添付の図面と関連付けて理解されれば、後段の詳細な説明を思量すると明瞭となるが、添付図面では同一参照符号は全体を通して同一構成要素について言及している。
【0054】
<A. 概観>
本発明は、腎臓神経調節、および/または、それ以外の腎臓神経調節の方法および装置に関するものである。特に、本発明は、パルス出力電界を利用して電気穿孔または電気融合を実施する、腎臓神経調節の方法および装置に関連している。本件で使用されているように、電気穿孔および電気透過促進は、細胞膜または細胞内装置を操作する方法である。例えば、短い高エネルギーパルスは細胞膜に穿孔を開口させる。細胞膜の有孔率の程度(例えば、穿孔の寸法と数)および穿孔の持続期間(例えば、一時的または恒久的)は、電界強度、パルス幅、デューティーサイクル、電界配向、細胞種類、および、それ以外のパラメータの関数である。一般に、強度の低いほうの電界と幅が短いほうのパルスが終端すると、一般的に自発的に穿孔は閉じる(本件では、「可逆電気穿孔」と定義される)。細胞種類は各々が臨界閾を有しており、そのレベルを越えると穿孔は閉じず、穿孔形成が可逆的ではなくなるが、このような結果は「不可逆電気穿孔」、「不可逆ブレークダウン」、または、「不可逆損傷」と定義される。この時点で、細胞膜は破裂し、かつ/または、高い有孔率によって生じた不可逆化学不均衡が発生する。このような高い有孔率は1個の大きな孔、および/または、複数の小さな孔の結果である場合がある。腎臓神経調節で採用するのにも適切である、或る種の電気穿孔エネルギーパラメータは持続時間がサブマイクロ秒範囲の高電圧パルスであり(ナノ秒パルス出力電界、すなわち、nsPEF)、これにより細胞膜は無傷のままでありながら、細胞死または細胞破壊を引き起こす態様で細胞内装置または細胞の機能を変化させることができる。ナノ秒パルス出力電界の或る応用例が、急性的な細胞死ではなくアポプトーシスによる自滅を誘発することにより細胞死を引き起こすものであることは既に例示した。また、「(構成要素として)備えている、設けられている、含んでいる、〜から構成されている(comprising)」という語が本件全体で使用されているが、機能部分を列挙するにあたり、同じ機能部分の個数が多い場合、および/または、別なタイプの機能部分が追加される場合を排除せずに、少なくとも列挙した機能部分を含むことを意味する。
【0055】
本発明の幾つかの実施形態は、時間が経過すると消失する標的神経の一時的変化、神経機能への連続制御、および/または、神経除去などのような腎臓神経調節を誘発する経管装置を提供する。本件に記載されている装置および方法は、所望の神経調節(例えば、電気穿孔効果など)を達成する、電界(どんな電界であれ)などの好適な信号パラメータまたは電界パラメータを利用することができる。このような神経調節装置を利用する経管装置の構造およびそのような方法をより良く理解するために、人体の腎臓の解剖学的構造を理解するのが有用である。
【0056】
<B. 神経調節法の精選実施形態>
ここで図1を参照すると、人間の腎構造の腎臓Kには腎動脈RAにより酸素添加された血液が供給され、この腎動脈は腹部大動脈AAによって心臓に接続されている。脱酸素化された血液か腎臓を出て、腎静脈RVと下位大静脈IVCを通って心臓に流入する。図2は腎臓の解剖学的構造の一部をより詳細に例示している。より詳細に述べると、腎構造の腎臓神経RNは、一般的に動脈の血管外膜の内側で、腎動脈RAの長手寸法L沿いに長軸線方向に延びている。腎動脈RAは、動脈の角度軸θの周囲で、すなわち、動脈の周面の周囲で動脈の内周螺旋を包囲する平滑筋細胞SMCを含んでいる。従って、腎動脈の平滑筋細胞の長手寸法すなわち長い方の寸法は、腎動脈の長尺寸法に対して横断する方向(すなわち、平行な方向ではない)に延びている。腎臓神経の長尺部と平滑筋細胞の長尺部の不整列は、「細胞不整列」と定義される。
【0057】
図3を参照すると、腎臓細胞と平滑筋細胞の細胞不整列を活用することで、平滑筋細胞に及ぼされる効果を低減しながら腎臓神経細胞に選択的に影響を与えることができる。より詳細に説明すると、大きな細胞ほど電気穿孔の不可逆閾を超過するのに要するエネルギーが少なくて済むので、本発明の電極の幾つかの実施形態は、電極によって生成される電界の少なくとも一部を、影響を受けることになる細胞の長い方の寸法部と、または、概ねその長尺寸法部と整列させるように構成されている。特殊な実施形態では、経管装置の電極は、腎動脈RAの長尺寸法部と、または、概ねその長尺寸法部と整列状態になる電界を生じることで腎臓神経RNに作用するよう構成されている。電界を整列させて、細胞の直径方向すなわち放射方向ではなく、細胞の長軸線方向に優先的に電界を作用させることで、細胞を壊死させるのに使われる電界強度が少なくて済む。上述のように、これにより、消費電力を低減し、電界内にある標的ではない細胞に及ぼされる効果を低減することが予期される。
【0058】
同様に、標的神経の上に位置する組織、または、下に位置する組織の長尺寸法部すなわち長い方の寸法部は、神経細胞の長手寸法に対して垂直であるか、またそうでなければ、軸線が外れている(例えば、横断方向である)。従って、パルス出力電界を標的細胞の長尺寸法部すなわち長い方の寸法部と整列させることに加えて、パルス出力電界は標的ではない細胞の横寸法部すなわち短い方の寸法部に沿って伝搬する(すなわち、パルス出力電界は標的ではない平滑筋細胞SMCと少なくとも一部が不整列状態で広がる)。よって、図3で分かるように、伝播線Liが概ね腎動脈RAの長尺寸法部Lと整列している状態でパルス出力電界を付与することで、電気穿孔、電気融合、神経除去、または、標的腎臓神経RNの細胞における上記以外の神経調節を優先的に生じながら、尚且つ、標的ではない動脈の平滑筋細胞SMCには不都合に作用しないことが期待される。パルス出力電界は、腎動脈の長軸線沿いの一平面に広がるようにしてもよいし、または、0度から360度の範囲にわたる角度区分θに沿った長尺方向に伝搬するようにしてもよい。
【0059】
図3に例示されている方法の実施形態には、本発明の経管法および経管装置を利用した特定の応用例がある。例えば、腎動脈内に設置されるパルス出力電界カテーテルが伝搬する電界の長尺部は腎臓神経RNの領域の動脈と血管壁の平滑筋細胞SMCの長尺寸法部と整列して延在し、動脈の壁が少なくとも実質的に無傷のままでありながら、同時に、外側の神経細胞が破壊されるようにする。
【0060】
<C. 神経調節システムおよびその他の神経調節法の実施形態>
図4は、本発明による経管パルス出力電界装置200の1個以上の電極が腎臓血管内の標的領域に物理的に接触して、血管の壁を横断してパルス出力電界を加えている実施形態を例示している。装置200は患者の腎動脈RAの内部にあるように図示されているが、この装置はこれ以外の血管内部位(例えば、腎静脈)に設置されてもよい。装置200のこのような実施形態は経管カテーテル210を備えており、カテーテルには近位部211a、遠位部211b、遠位部211bの複数の遠位電極212が設けられている。近位部211aは通常はカテーテル210をパルス発生装置に連結する電極コネクタを有しており、この実施形態の遠位部211bは螺旋形状を有している。装置200は、患者の近位で体外に設置されたパルス出力電界発生装置100に電気接続されており、電極212はカテーテル210により電界発生装置に電気接続されている。電界発生装置100は、後段で説明されるような、所望の電界パラメータでパルス出力電界を加える本発明の実施形態のいずれと併用されてもよい。電界発生装置が各変形例に関して明瞭に図示または説明されていない場合でも、後段で説明する実施形態の電極を電界発生装置と接続することができるものと理解するべきである。
【0061】
カテーテル210の螺旋状の遠位部211bは、血管壁に並置され、電極212を血管外神経構造体に極めて近接させるような構成になっている。螺旋部のピッチを変動させることで、治療区域を長く設けることができ、または、互いに隣接し合う治療区域が周方向に重なり合うのを最小限に抑えることができるようにすることで、狭窄形成の危険を低減することができるように図っている。このピッチの変動を達成する手段として、互いに異なるピッチの複数のカテーテルを組合せること、内部引張りワイヤの使用によりカテーテル210のピッチを調節すること、カテーテルに挿入される心棒を調節すること、カテーテルの上に被せて設置される鞘部材を成形することなどの他に、ピッチの変動を装置設置位置でやる手段、または、体内導入前にやる手段の、いずれにせよ好適な手段がある。
【0062】
ピッチの長尺部に沿った電極212は個別の複数電極であってもよいし、1個の共通する区分けされた電極であってもよいし、或いは、1個の共通して切れ目無く連続する電極であってもよい。1個の共通する切れ目無く連続する電極は、例えば、カテーテル210の螺旋部の中に形成される導電コイル、または、螺旋部の上に被せて設置される導電コイルであってもよい。1個の共通する区分けされた電極は、例えば、カテーテルの螺旋部の上または中に嵌合するスロットが設けられた管材を設けることにより、または、一連の個別の複数電極を電気接続することにより形成されてもよい。
【0063】
個別の複数電極または電極群212はバイポーラ信号を供与する構成になっていてもよいし、または、全ての電極または一部電極群を患者の体外の別個の複数接地と連携して一緒に使用することで(例えば、接地パッドを患者の脚に取付けてもよい)モノポーラ式使用に付してもよい。電極212はダイナミックに割り振られて、どの電極間であれ、かつ/または、電極のうちのどれかと外部接地との間であれ、モノポーラ式のエネルギー伝達および/またはバイポーラ式のエネルギー伝達を容易に行えるようにすることができる。
【0064】
カテーテル210は、鞘部材150の内側で低プロファイルの搬送構成で腎動脈RAに搬送される。動脈内に設置されてしまうと、カテーテルは自己拡張することができ、または、例えば引張りワイヤやバルーンなどにより作動的に拡張されて動脈の内壁に接触することもできる。その後、パルス出力電界発生装置100によりパルス出力電界が生成され、カテーテル210により電極212に伝達され、更に、電極212により動脈の壁を横断して電界が加えられる。大半の応用例では、電極の配置は、パルス出力電界が動脈の長尺寸法部と整列させられて、腎臓神経沿いの神経活動を調節する(例えば、神経除去する)ように設定される。これを達成する手段として、例えば、不可逆電気穿孔、電気融合、および/または、神経細胞におけるアポプトーシスによる自滅の誘導などがある。
【0065】
図5は、本発明のまた別な実施形態による神経調節用装置220を例示している。装置220は1対のカテーテル222a、222bを備えており、これらカテーテルそれぞれの拡張可能な遠位部223a、223bには螺旋状電極224a、224bが設けられている。螺旋状電極224a、224bは患者の腎臓血管の内側で所望の距離だけ互いから離隔されている。電極224a、224bは、1個の電極が活性電極で、他方の電極が帰還電極となるようなバイポーラ様式で作動させることができる。電極と電極の間の距離は所望に応じて変動させることで、電界強度および/または電極によって調節される神経部分の長さを変動させることができる。拡張可能な螺旋状電極は形状記憶特性を備えており、これら特性により、例えば、鞘部材150の中に通した後の自己拡張を容易にすることができるようになり、或いは、電極は、例えば、膨張可能なバルーンにより、または、引張りワイヤなどにより、作動的に拡張させられて血管壁と接触することができるようになる。カテーテル222a、222bは、電極224a、224bの遠位螺旋部以外の領域では電気的に絶縁されるのが好ましい。
【0066】
図6は、装置230のバルーンカテーテル232が拡張可能バルーン234、バルーン234の周囲に配置された螺旋状電極、および、カテーテル232のシャフト上に取付けられたシャフト電極238を備えているのを例示している。シャフト電極238は図示のように拡張可能なバルーン234より近位に配置されてもよいし、或いは、シャフト電極238は拡張可能バルーン234より遠位に配置されてもよい。
【0067】
装置230が例えば腎動脈RAの内部の標的血管に搬送されると、拡張可能バルーン234と螺旋状電極236が低プロファイルの搬送形状に配置される。図6で分かるように、装置が所望に応じて設置されてしまうと、拡張可能なバルーン234が膨張されて、螺旋状電極236を駆動して血管の壁と物理的接触状態にする。この実施形態では、シャフト電極238が物理的に血管壁と接触することはない。
【0068】
従来の熱高周波エネルギー搬送技術と比較的非熱的なパルス出力高周波エネルギー搬送技術の両方の技術分野で、エネルギーを治療するべき組織に伝達するのに、組織そのものから少し距離を置いた位置から伝達することは周知である。従って、「神経接触」には、電気接触のみで物理的接触を欠いている接触のほかにシステム素子の物理的接触を含んでおり、或いは、これら2種類の接触を組合せた接触があることが分かる。任意で、中心決め部材が設けられて、電極を血管の中心領域に位置決めするようにしてもよい。中心決め部材には、例えば、装置230のバルーン234のような拡張可能バルーンや後段で説明される拡張可能バスケット部材がある。装置230のシャフト電極238がそうであるように、中心決め部材と長軸線方向に整列させた状態か、または、中心決め部材の片側または両側に設置した状態か、いずれかの態様で、1個以上の電極を中心決め部材の中央シャフト上に設置することができる。カテーテル232のようなバルーンカテーテルを利用した場合、膨張状態のバルーンはインピーダンスが増大した絶縁体として作用し、パルス出力電界を所望の電気の流路に沿った方向に指向性を持たせることができる。自明のことであるが、これに代わる各種絶縁部材を利用してもよい。
【0069】
図6で分かるように、螺旋状電極236が腎動脈RAの壁に物理的に接触すると、電界発生装置100がパルス出力電界を発生し、螺旋状電極236とシャフト電極238の間にバイポーラ様式で電流を通すようになる。パルス出力電界は線Liに沿って電極と電極の間で移動するが、この線Liは動脈の長尺寸法部に沿って延在するのが普通である。パルス出力電界が螺旋状電極とシャフト電極の間で血管壁の中を移動するように、バルーン234は局所的に絶縁状態となり、かつ/または、局所的に患者の血管内のインピーダンスを増大させる。これによりエネルギーに指向性が与えられ、例えば、不可逆電気穿孔により、患者の腎臓神経の神経除去を向上させ、かつ/または、それ以外の神経調節を向上させる結果となる。
【0070】
図7は、本発明のまた別な実施形態による、図4から図6に例示されている装置に類似している装置240を例示している。装置240のバルーンカテーテル242には拡張可能バルーン244とこのバルーンより近位に配置されたシャフト電極246とが設けられている。装置240の拡張可能な螺旋状電極248はカテーテル242のガイドワイヤ管腔243の中を搬送されるような形状になっている。図7に例示されている螺旋状電極248は自己拡張型である。
【0071】
図7で分かるように、カテーテル242を標的血管(例えば、腎動脈RA)に設置した後で、バルーン244は、血管の壁に接触して血管内の所望部位にシャフト電極246を保持し、血管の内部を絶縁する、または、血管内部のインピーダンスを増大させるまで膨張させられる。バルーン244は一般に、血管内でシャフト電極246を中心に置くように、またそうでなければ、所望の距離だけ血管壁からシャフト電極を離隔させるように構成される。バルーン244を膨張させた後で、螺旋状電極248は、カテーテルシャフトを越えて張出すまで、管腔243の中を押し通されてから、電極248は拡張し、またそうでなければ、血管壁に物理的に接触するような螺旋状の形状へ移行させられる。バイポーラ式のパルス出力電界が螺旋状電極248とシャフト電極246の間で線Liに沿って加えられる。例えば、螺旋状電極248が活性電極を備えているとともにシャフト電極246は帰還電極をそなえているようにしてもよいし、その逆であってもよい。
【0072】
ここで図8を参照しながら、複数の電極を有しており、拡張状態になると血管壁と接触することができる拡張可能バスケットを備えている装置を説明する。装置250は、複数周縁支柱または周縁部材から形成されている拡張可能な遠位バスケット254を有しているカテーテル252を備えている。複数の電極256はバスケット254の部材に沿って形成されている。バスケットの各部材は、腎動脈RAの壁またはそれ以外の所望の血管壁に接触するような形状のバイポーラ電極対を備えているのが例示されている。
【0073】
バスケット254は、例えば、ニチノール、バネスチール、エルギロイワイヤ、または、リボンなどのような、バスケット部材253を形成する複数の形状記憶ワイヤまたは形状記憶リボンから作成することができる。バスケット部材がリボンを含んでいる場合、血管壁に接触する表面積が増大するように、リボンを移動させることができる。バスケット部材253は、近位接続部材255aと遠位接続部材255bのそれぞれの位置でカテーテル252に連結される。このような形状では、バスケットは鞘部材150の内側を搬送されるように折畳まれた状態にすることができ、また、鞘部材から取り出す際には、自己拡張して動脈の壁に接触することができる。任意で、近位接続部材255aおよび/または遠位接続部材255bは、特定距離または不特定距離にわたってカテーテル252のシャフトに沿って並進させられるように構成されて、バスケットの拡張と収縮を容易にするように図ってもよい。
【0074】
これに代わる例として、バスケット254は、スロットが設けられ、かつ/または、レーザー切断されたハイポチューブから形成されていてもよい。このような構成では、カテーテル252は、例えば、互いに相関的に移動可能である内側シャフトおよび外側シャフトを備えていてもよい。バスケット254の遠位接続部材255bは内側シャフトに連結することができ、バスケットの近位接続部材255aは外側シャフトに連結することができる。カテーテル252の内側シャフトと外側シャフトを接近させることにより、バスケットの近位接続部材255aと遠位接続部材255bを接近させてバスケットを拡張させて、バスケット254は折畳まれた搬送形状から図8の配備形状まで拡張させられる。同様に、カテーテルの内側シャフトと外側シャフトを離隔させることにより、バスケットを収縮させることができる。
【0075】
図9で分かるように、個々の電極はバスケット支柱またはバスケット部材253に沿って配置される。一実施形態では、支柱は誘電素材で皮膜された導電材から形成されており、電極256は誘電体皮膜の領域を除去することにより形成される。任意で、絶縁材が部材の放射方向外側面に沿ってのみ除去されて、電極256がそれぞれの放射方向内面では絶縁性を保ったままになるようにしてもよいが、これにより、電流の流れを外向きにして血管壁中へ通すことが期待される。
【0076】
図9の製造技術に加えて、或いは、これに代わる例として、電極はバスケット254の支柱または部材の内面または外面に取り付けられてもよいし、或いは、それら支柱または部材の中に埋設されてもよい。支柱または部材の各々に沿って設置された電極には個別の複数電極が設けられていてもよいし、1個の共通する区分けされた電極が設けられていてもよいし、或いは、1個の共通する切れ目無く連続する電極が設けられていてもよい。個別の複数電極または電極群はバイポーラ信号を供与する構成にされてもよいし、或いは、全部の電極または一部電極群を患者の体外の接地と連携して一緒に作動させることでモノポーラ式使用に付してもよい。
【0077】
図8の実施形態に例示されているような血管壁に電極256を接触させる利点の1つとして、そうすることで拡張可能バルーンのような絶縁部材の必要を少なくして、腎臓神経除去またはそれ以外の神経調節を達成することが挙げられる。しかし、このような絶縁部材を設けて、例えば、バスケットの中で拡張させるようにしてもよいものと理解するべきである。更に、電極を血管壁に接触させることで電界の幾何学的形状を改善することができ、すなわち、電界を供与するのに、血管の長軸線との整列をより良好にすることができる。このような接触電極は、神経調節前、神経調節中、または、神経調節後の腎臓神経への刺激を促進し、治療前にカテーテル252の位置決めを改善することができ、或いは、治療の有効性を監視することができるようにもする。
【0078】
装置250の変形例では、電極256はカテーテル252の中央シャフトに沿って配置され、バスケット254は電極を血管内の中心に簡単に位置決めすることで、血管壁を横断してエネルギーを搬送する処理をより正確に行えるようにすることができる。この構成は、腎動脈を包囲している腎臓神経などのような血管組織または血管外組織のより正確な標的設定に誠に好適である。バスケットまたはそれ以外の対動脈中心決め部材の寸法を正確に設定することで、中心に置かれた電極と動脈壁との間に既に分かっている距離を設けて、それを利用して、所望するとおりに電界を方向づけ、かつ/または、電界を集束させることができる。このような構成は高強度指向性超音波またはマイクロ波の応用例で利用することができるが、所望に応じてこれ以外のエネルギー理学療法との併用に適するようにされてもよい。
【0079】
ここで図10を参照すると、腎動脈の壁との周縁接点を形成する電極がより完全な腎臓神経除去または腎臓神経調節に備えていることが予期される。図10には、リング電極を備えている本発明の変形例が例示されている。装置260のカテーテル262には、血管の壁に接触するような構成の拡張可能リング電極264a、264bが設けられている。これら電極は支柱266を介してカテーテル262のシャフトの取付けることができ、また、カテーテル262は鞘部材150の中を腎動脈RAまで低プロファイル形状で搬送されるよう構成される。支柱266は自己拡張型でもよいし、或いは、作動によりまたは機械的に拡張されてもよい。カテーテル262は、ガイドワイヤの上を伝って前進するように、ガイドワイヤ管腔263を備えている。カテーテル262はまた、任意の膨張可能なバルーン268を備えており、このバルーンは、インピーダンスを増大させた絶縁素子として作用して、動脈壁を横断して電極264と電極264の間を移動する電流に優先的に指向性を与えることができる。
【0080】
図11Aから図11Cは、リング電極264に対する多様な巻線電極を例示している。図示のように、リング電極は、例えば、コイル状に巻かれてもよいし(図11左)、ジグザグ上でもよいし(図11真中)、または、蛇行状でもよい(図11右)。巻線の周期性は所望に応じて指定されてもよい。更に、巻線の種類、すなわち周期性などは、電極の周縁に沿って変動していてもよい。
【0081】
図12を参照すると、装置260の変形例が例示されており、該装置のリング電極264'は図11Cに例示されている蛇行状巻線の実施形態では正弦波状巻線である。支柱266は正弦波形の各頂点に取付けられるものと例示されている。電極264'の巻線は電極264が提供する接触面積よりも血管壁沿いに広い接触面積を設けていながら、尚且つ、搬送および回収を目的として鞘部材150の内部に装置260を容易に納めることができるようにしている。
【0082】
図13は、装置260のまた別な変形例が近位リング電極264aを備えているのを例示しており、また更に、装置の遠位電極270がカテーテル262のガイドワイヤ管腔263の中を搬送されているのを更に例示している。遠位電極270は非拡張型であり、カテーテル262により血管内で中央に位置決めされる。遠位電極270は、パルス出力電界発生装置に接続されて電極として使用される標準ガイドワイヤであってもよい。しかしながら、これに代わる例として、電極270は拡張して血管壁と接触するような構成にされてもよく、例えば、リング電極または螺旋状電極を備えているようにしてもよいものと理解するべきである。
【0083】
カテーテル262の管腔の中を通して遠位電極を搬送することで、装置260の搬送プロファイルを低減し、かつ/または、装置の可撓性を向上させることができる。更に、ガイドワイヤ管腔の中を通して遠位電極を搬送することは、管腔263の内部に配置されたガイドワイヤを医療従事者がパルス出力電界を加える前に確実に取り出すようにする安全機能として作用する。これはまた、治療期間を患者ごとに個別設定することができるようにするばかりか、後段で説明されるように、傍系の血管分岐の中で治療を行うことができるようにもなる。
【0084】
リング電極264、264'は、任意で、それぞれの放射方向内面に沿って電気絶縁されると一方で、血管壁に接触するそれぞれの放射方向外面は電気に晒されるようにしてもよい。これにより、血栓形成の危険を低減するとともに、電界の指向性を血管の長軸線沿いに設定するのを改善または向上させることができる。これにより、神経線維を破裂させるのに必要な電界圧力の低減を促進することもできる。リング電極を少なくとも部分的に絶縁するために利用される素材と具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、クロロプレン、シリコーン、ウレタン、ペバックス(Pebax)などがある。図14を参照すると、装置260のまた別な変形例が例示されているが、ここでは、リング電極がポイント電極272に置き換えられており、支柱266の各端部に配置されている。ポイント電極は鞘部材150の中を搬送するために支柱と一緒に折畳むことができ、また、支柱と一緒に自己拡張して血管壁に接触することができる。図14では、カテーテル262には、バルーン268の両側に4個のポイント電極272が設けられているのが例示されている。しかし、所望数ならば何個の支柱およびポイント電極をカテーテル262の周縁付近に設けてもよいものと理解するべきである。
【0085】
図14では、装置260には、バルーン268の両側に4本の支柱266と4個のポイント電極272が設けられているのが例示されている。全ての遠位に配置された電極272bを活性電極として利用するとともに、全ての近位電極272aを帰還電極として利用することにより、または、その逆の態様で利用することにより、電界が沿線を伝搬する線Liは血管の長軸線と整列させることができる。線Liが血管の回転軸線沿いに重複する程度は、パルス出力電界のパラメータを特定することによってばかりか、カテーテルの周縁を中心としたポイント電極272の角度設定と密度を特定することによっても特定することができる。
【0086】
ここで図15を参照しながら、経管パルス出力電界カテーテルのまた別な変形例を説明する。装置280のカテーテル282には任意の膨張可能なバルーンまたは中心決め部材284と、カテーテルのシャフトに沿ってバルーンの両側に配置されたシャフト電極286a、286bとが設けられているほかにも、カテーテルのシャフトに沿って配置され、バルーンと一列に並ぶように例示されている任意の放射線不透過性マーカー288が設けられている。バルーン284は、先にも説明したように、電極286のための中心決め部材として、また、電界に指向性を持たせる電気絶縁部材として、これら両方の働きをする。
【0087】
装置280は所望の動脈または動脈外組織の正確な標的設定を達成するのに特に好適であるが、それは、標的動脈に対してバルーン284を適切に寸法設定することで中心に置かれた電極286と動脈壁の間に既に分かっている距離を置けるからであるが、この距離は、パルス出力電界のパラメータを指定する場合に利用することができる。これに代わる例として、電極286はカテーテルの中心シャフトではなくバルーン284に取付けられるが、その場合、電極が動脈の壁に接触するように取付けられる。このような変形例では、電極はバルーンの壁の内面に付着されてもよいし、外面に付着されてもよいし、或いは、バルーンの壁の中に埋設されてもよい。
【0088】
カテーテル282の長尺部に沿って配置されている電極286は個別の複数電極でもよいし、1個の共通する区分けされた電極でもよいし、または、1個の共通する切れ目無く連続する電極であってもよい。更に、電極286はバイポーラ信号を供与するような構成になっていてもよいし、或いは、電極286は別個の患者の体外の接地と連携して一緒にまたは個別に使用されることでモノポーラ式使用に付すこともできる。
【0089】
ここで図16を参照しながら、装置280を使って腎臓神経除去を達成する方法を説明する。図16Aで分かるように、カテーテル282は腎動脈RAの内部の所望部位に配置することができ、バルーンすなわち中心決め部材284は拡張させられることで電極286を中心位置に設置するとともに、任意で電気絶縁を施すことができ、更に、パルス出力電界は、例えば、近位電極286aと遠位電極286bの間でバイポーラ様式で加えることができる。パルス出力電界は治療区域1T1に沿って腎臓神経除去および/または腎臓神経調節を達成することが期待される。腎動脈の別な部位における神経活動を調節するのが望ましい場合は、バルーン284は少なくとも一部が拡張されればよく、また、カテーテルは、図16Bにあるように、第2の所望の治療区域T2に設置されればよい。医療従事者は、任意で、放射線不透過性マーカー288のX線透視画像化法を利用して、所望の部位でカテーテル282の配向を決めて治療できるようにすることができる。例えば、医療従事者はマーカーを使って、図示のように、治療区域T1と治療区域T2の間の重複領域Oを確保することができる。
【0090】
図17を参照しながら、複数のダイナミック制御可能な電極286がバルーン284の近位側に配置されている装置280の変形例を説明する。一変形例では、近位電極286aのうちの1個が遠位電極286bとバイポーラ様式でエネルギー投入され、活性電極と帰還電極の間の長軸線方向の距離をダイナミックに制御することができる。これにより、治療区域の寸法と形状を変える。また別な変形例では、一部の近位電極群286aのいずれも一緒に、近位電極286aと遠位電極286bの間に確立されたバイポーラ電界の活性電極または帰還電極としてエネルギー投入することができる。
【0091】
図17に例示されている装置280は3個の近位電極286aを備えているけれども、この個数に代えて、何個の近位電極を装置280が有しているようにしてもよい。更に、装置280は多数の近位電極に加えて、または、これら近位電極の代わりに、複数の遠位電極286bを有していてもよい。更に、1対の電極のうちの一方の電極をカテーテル282に接続し、他方の電極をカテーテルの管腔の中を通して搬送し、例えば、ガイドワイヤ管腔の中を通して搬送するようにしてもよい。カテーテルおよび経管搬送される電極は互いに相関的に位置が整復されて、電極と電極の間の離隔距離を変えることができる。このような変形例はまた、多様な腎臓血管解剖学的構造の治療を容易にする。
【0092】
これまで説明してきた装置280の変形例では、遠位電極286bはバルーン284より遠位でカテーテル282のシャフトに連結される。遠位電極はカテーテル282の内側の管腔を利用し、例えば、接地として作用するリードワイヤの経路設定を行うことができる。更に、バルーン284より遠位のカテーテル282の一部は遠位電極を収容するのに十分な長さがある。
【0093】
複数カテーテルはどれも共通して、金属製で、かつ/または、導電性のガイドワイヤの上を伝って搬送される。カテーテルに関与する多数の介入治療では、治療中はガイドワイヤは除去されない。装置280がパルス出力電界を加えるのに適した構成になっているので、ガイドワイヤが取り外されると、エネルギー伝搬中にガイドワイヤに接触した人に電気ショックを与える危険が生じる恐れがある。このような危険は、重合体皮膜されたガイドワイヤを使うことにより低減することができる。
【0094】
図18を参照しながら、装置280のまた別な変形例を説明するが、この場合、図16および図17の遠位電極286bは、図13に関して先に説明したようなカテーテルの管腔を通して移動させられるような構成の遠位電極270と置き換えられている。明らかに、これに代わる例として、近位電極286aを経管搬送される電極と置き換えて、電極286bと電極270がバイポーラ電極対を形成するようにしてもよい。電極270はカテーテル282の内部の別な管腔を利用する訳ではなく、そのことでプロファイルを低減することができる。更に、バルーンより遠位のカテーテルの長尺部は遠位電極の長尺部に相当する長さを提供する必要はなく、これにより可撓性を向上させることができる。更に、ガイドワイヤが治療前に電極270と交換されなければないが、これが不慮の電気ショックの危険を低減する。一変形例では、任意で、電極270をガイドワイヤとして使うことができるが、パルス出力電界を加える前にこのガイドワイヤ上を伝わせてカテーテル282を前進させることにより、ガイドワイヤを電極と交換する必要を無くする。これに代わる例として、標準的な金属製ガイドワイヤを電極270として使うことができるようにするのに、標準ガイドワイヤをパルス出力電界発生装置に接続するだけでよい。遠位電極270は、カテーテル282の遠位端を越えて所望の距離だけ延長させることができる。これにより、治療区域の長さをダイナミックに変えることができるようになる。更に、これにより、直径を減じた遠位血管内における治療を容易にすることができる。
【0095】
図19を参照すると、主要血管から延びている1本以上の傍系血管分岐の内部で治療を実施すること、具体的には、腎臓門の付近の腎動脈の分岐の内部で治療を実施するのが望ましいことがある。更に、少数の患者にしか見られる腎臓血管の異常分岐または普通ではない分岐の内部で治療を実施するのが望ましい場合がある。図19Aで分かるように、遠位電極270は腎動脈RAの上述のような分岐内に設置することができるが、カテーテル282は動脈の主要分岐の中に設置される。図19Bで分かるように、遠位電極270は多数設けられ、腎動脈の多様な普通の分岐または普通ではない分岐に設置されるが、カテーテルは主要動脈分岐内に留まる。
【0096】
図20を参照しながら、経管パルス出力電界カテーテルのまた別な変形例を説明する。装置290のカテーテル292には、中心決め部材296と一列に配置された複数のシャフト電極294が設けられている。中心決め部材296が、図8の既に説明済みの拡張可能なバスケット254などのような拡張可能バスケットを備えているのが例示されている。しかし、その代替例として中心決め阻止はバルーンまたはそれ以外のどんな中心決め部材を備えていてもよいものと理解するべきである。電極294はバイポーラ様式またはモノポーラ様式のいずれで利用されてもよい。
【0097】
ここで図21を参照しながら、本発明のまた別な変形例を説明するが、この装置の電極は血管壁に相関的に1個以上の電極の位置をダイナミックに放射方向に整復するような構成になっていることにより、電極により加えられるパルス出力電界に容易に指向性を持たせることができるようにしている。装置300のカテーテル302には、拡張可能な部材と一列に配置された電極が設けられている。入れ子式の拡張可能な部材は内側の拡張可能部材306と外側の拡張可能な中心決め部材308とを有している。電極304は内側拡張可能部材に沿って配置されているが、外側の拡張可能な中心決め部材は血管内で中心に配置されてカテーテル302を安定させるように構成されている。内側拡張可能部材306は医療従事者が所望するとおりに様々に変動して異なる程度で拡張させることで、電極304の放射方向位置をダイナミックに変えることができる。このダイナミックな放射方向の位置整復を利用して、標的組織にエネルギーを伝搬するように、電極304によって伝搬されるエネルギーに指向性を持たせることができる。
【0098】
入れ子式部材306、308はバルーンの中に別なバルーンを入れた配置、バスケットの中に別なバスケットを入れた配置、バルーンとバスケットとを如何様にか組合せた配置、または、これ以外の拡張可能な入れ子配置を取る。図21では、内側拡張可能部材306は拡張可能バスケットを備えているのが例示されており、外側の拡張可能な中心決め部材308は拡張可能バルーンを備えているのが例示されている。電極302は内側バルーン306の表面に沿って設置されている。
【0099】
本件に記載されている発明の変形例のいずれも、任意で、エネルギー供与前、エネルギー供与中、または、エネルギー供与後に治療領域に薬剤を注入することができるような構成にすることで、例えば、エネルギーの神経破壊効果または神経調節効果を向上または変動させ、標的ではない細胞を保護または一時的に変位し、かつ/または、視認化を容易にすることができる。注入された薬剤を追加して投与することも理解できる。所望されるのであれば、注入薬剤が存在している細胞に可逆電気穿孔を施すことにより、注入薬剤の細胞による摂取を向上させることができる。バルーンの中心決め部材が利用される場合には、注入は特に望ましい。注入剤としては、例えば、生理食塩水、ヘパリン投与整理食塩水、ポロクサマー188(Poloxamer-188)のような防護薬、増殖防止剤などがある。これに加えて、または、これに代わる例として、本発明の変形例は吸引するような構成になっていてもよい。例えば、注入ポートまたは注入口が中心決め装置に隣接してカテーテルシャフトに設けられていてもよいし、中心決め装置は有孔であってもよいし(例えば、「ウイーピング」バルーンなど)、或いは、バスケットの支柱が中空のハイポチューブから作成されたうえで、スロットまたは穿孔が設けられて注入または吸引が行えるようになっていてもよい。
【0100】
図22を参照しながら、注入/吸引用のパルス出力電界カテーテルを備えている本発明の変形例を説明する。装置310のカテーテル312には近位膨張可能バルーン314aと遠位膨張可能バルーン314bがそれぞれ設けられている。両バルーンの間でカテーテル312のシャフトに沿って近位シャフト電極316が配置されており、両バルーンよりも遠位でカテーテルシャフトに沿って遠位電極316bが配置されている。1個以上の注入用または吸引用の孔318がカテーテル312のシャフトに沿って両バルーンの間で近位電極316aに近接して配置されている。
【0101】
装置310は多様な方法で利用することができる。第1の使用法では、カテーテル312は、腎動脈RAなどのような標的血管内の所望部位に配置される。バルーン314の一方または両方が膨張させられてから、防護剤またはそれ以外の注入剤が両バルーンの間で電極316aに近接した位置の孔(単数または複数)318から注入される。可逆電気穿孔を施すのに好適なパルス出力電界が電極316を横断して加えられて、血管壁の内側の標的ではない細胞による注入剤の摂取を促進する。防護剤の搬送を向上させる手段として、まず第1に遠位バルーン314bを膨張させてから、血液を退避させる防護剤を注入し、その後に近位バルーン314aを膨張させる。
【0102】
任意で、残留注入剤を吸引させて、神経細胞に対する不可逆電気穿孔が開始された際にその後のパルス出力電界付与中には注入剤が利用できないようにしてもよい。吸引中に一方のバルーンのみを少なくとも部分的に収縮させることにより、吸引を達成することができる。これに代わる例として、吸引は両方のバルーンを膨張させた状態で達成されてもよく、例えば、吸引と連動させて生理食塩水を注入して膨張した両バルーンの間の血管部分を洗い流すことによって実施される。このような血液洗浄により、パルス出力電界付与中に近位電極316aに沿って血餅が形成される危険を低減することができる。更に、エネルギー供与中に洗浄を行うことで、電極を冷却し、かつ/または、動脈壁の細胞を低温化することができる。このような動脈壁細胞の低温化により不可逆電気穿孔による損傷から細胞を保護し、防護剤の注入の必要を低減することができるようになる。
【0103】
注入と任意吸引の後で、標的神経細胞に不可逆電気穿孔を開始するのに好適なパルス出力電界は、電極316を横断して加えられることにより神経除去を行い、或いは、神経活動を調節することができる。代替の方法では、防護剤の注入は、不可逆電気穿孔の開始中または開始後に行われて、標的ではない細胞を保護するように図ってもよい。防護剤は、例えば、不可逆電気穿孔により、標的ではない細胞に形成されている穿孔を塞ぐ、すなわち、空所を埋めることができる。
【0104】
これに代わる方法では、冷たくした(すなわち、体温より低温の)ヘパリン投与生理食塩水溶液を同時に注入して、膨張状態の両バルーンの間から吸引させ、両バルーンの間の領域を洗浄し、血管壁細胞の電気穿孔に対する感度を低下させることができる。これにより、不可逆電気穿孔を開始するのに好適なパルス出力電界を施している最中に更に細胞を保護することが期待される。このような洗浄は、任意で、パルス出力電界供与の最初から最後まで断続的に行ってもよい。任意で、熱電対またはそれ以外の温度センサーを両バルーンの間に設置して、冷えた注入剤の注入速度を調節しながら所望温度を維持することができるように図ってもよい。冷えた注入剤は、例えば腎臓神経などのような標的組織は低温化させないのが好ましい。ポロクサマー188などのような防護剤が任意で、更なる安全策として、治療後に注入されてもよい。
【0105】
これに代わる例として、ウイーピングバルーンカテーテルにより注入を達成してもよい。更にまた、少なくとも1個の電極が設けられた低温バルーンカテーテルを利用することができる。低温バルーンを血管部分の内部で膨張させて、血管部分の温度を局所的に低下させ、例えば、電界を加えている最中にその部分を保護し、かつ/または、血管壁の熱によるアポプトーシスを誘発させるように図ることができる。電界の具体例として、パルス出力電界、または、熱高周波電界などのようなパルス出力型ではない熱電界が含まれる。
【0106】
ここで図23を参照しながら、血管を少なくとも部分的に横断して電極(単数または複数)を通すような構成のパルス出力カテーテルの変形例を説明する。例えば、電極(単数または複数)を腎静脈の内側に設置してから、腎静脈の壁を横断させて電極を渡すことで、ジェロータ筋膜すなわち腎筋膜の腎動脈付近に、または、少なくとも部分的に腎動脈を取り巻いて配置されるようにすることができる。このような態様で、パルス出力電界を加える前に、標的腎臓神経線維に極めて近接した位置に電極(単数または複数)を設置することができる。
【0107】
図23Aで分かるように、装置320のカテーテル322にはニードルポート324と、図中では膨張バルーンとして例示されている中心決め部材326とが設けられている。カテーテル322はまた、任意で、放射線不透過性マーカー328が設けられていてもよい。ニードルポート324は、そこを貫いて針330を通すような構造にはっているが、針330は電極340を通すような構造になっている。
【0108】
腎静脈RVが腎動脈RAに平行に延びている。経管超音波のような画像化物理療法を利用して、腎静脈に対する腎動脈の位置を識別することができる。例えば、任意で、経管超音波部材はカテーテル322の中に統合されていてもよい。カテーテル322は、周知の経皮技術を利用して、腎静脈RVの内部に設置され、中心決め部材326を膨張させて、静脈内のカテーテルを安定させることができる。続いて、針330をカテーテル322に通してニードルポート324から外へ出すが、その際、針が腎静脈の壁を刺通してジェロータ筋膜すなわち腎筋膜Fの中に入るような態様で行われる。放射線不透過性マーカー328はX線透視で視認化され、針330の配備前にニードルポート324を適切に配向することができる。
【0109】
電極340は、図23Aおよび図23Bにあるように、針330の中を通して配備され、腎動脈RAを少なくとも部分的にとり囲むようになっている。電極を継続して前進させることで、図23Cに例示されているように、更に動脈をとり巻くことができる。電極が配備された状態で、刺激波形および/またはパルス出力電界電気穿孔波形が付与されて、腎臓神経の神経除去または調節を行う。針330は、任意で、一部または全部が治療前に後退させられているため、電極340は腎動脈の部分をより広範囲にとり巻くことになる。
【0110】
任意で、注入剤を針330から筋膜Fの中に注入し、電極設置用の空間を設けることにより、電極340の設置を容易にすることができる。注入剤には、例えば、流体、加熱液、冷やした液、空気、二酸化炭素、生理食塩水、造影剤、ゲル、導電液、それ以外の空間を占有できる材料であれば、気体でも、固体でも、液体でもどんな材料でも含まれる。ヘパリン投与生理食塩水が注入されてもよい。生理食塩水または高浸透性生理食塩水は両電極340の間の導電率を向上させることができる。これに加えて、または、これに代わる例として、薬物および/または薬物搬送部材を針の中を通して筋膜内に注入または設置するようにしてもよい。
【0111】
治療後は、電極340が針330の中に後退させられて、針330はニードルポート324を介してカテーテル322の中に後退させることができる。針330は、出血の発生を最小限に抑えるとともに、止血をかなり迅速に達成するのに十分な程度に細いのが好ましい。任意で、バルーン型の中心決め部材326は針330を回収した後も暫くの間は膨張したままで、血流を遮断し、血液凝固過程を促進するよう図ってもよい。代替例として、バルーンカテーテルは、装置320を取出した後で、腎静脈の中に進入させられて膨張させられてもよい。
【0112】
図24を参照しながら、治療効果を測定または監視する検出装置またはそれ以外の部材を備えている本発明の変形例を説明してゆく。本発明の変形例は、神経除去またはパルス出力電界の調節に加えて、刺激電界を加えるように構成されていてもよい。このような刺激電界を利用して、治療装置を適切に設置し、かつ/または、神経活動を調節する際に治療の効果を監視することができる。これは、腎臓神経を刺激することで影響があると分かっている生理学的パラメータの反応を監視することにより達成される。このようなパラメータの具体例には、レニン値、ナトリウム値、腎臓血流、血圧などが含まれている。刺激を利用して、治療効果を監視するために神経除去を吟味することもできる。すなわち、腎臓神経の神経除去をすると、刺激に対する事前に分かっている生理学的反応がこのような刺激への反応としてもはや生じなくなる。
【0113】
遠心性神経の刺激波形には、例えば、約1Hzから10 Hzの周波数が含まれているが、求心性神経の刺激波形には、例えば、約50 Hzまでの周波数が含まれている。波形振幅は、例えば、約50 Vまでの範囲におよび、パルス持続時間は、例えば、約20ミリ秒までの範囲におよぶ。本発明の幾つかの実施形態でそうであるように、神経刺激波形が経管伝搬される場合は、周波数、振幅、パルス持続時間などのような電解パラメータを調節することで、標的神経に向けて搬送するのに、血管の壁を貫いて波形を伝えるのが容易となる。更に、刺激波形の具体的パラメータを説明したが、これらに代わるパラメータを所望に応じて利用してもよいものと理解するべきである。
【0114】
本発明の前述の変形例のいずれかでパルス出力電界を加えるために使用される電極を利用して、腎臓血管に刺激波形を伝搬するようにしてもよい。これに代わるものとして、変形例は刺激を与える攻勢の独立した電極を備えているようにしてもよい。また別な代替例として、別個の刺激装置を設けるようにしてもよい。
【0115】
刺激を利用して腎臓神経を識別する方法の1つは、腎臓血液流に影響を与えるように神経を刺激すること、すなわち、腎臓神経が神経除去されていないのであれば、または、調節されていないのであれば腎臓血液流に影響を与えることになるように神経を刺激することである。刺激は腎臓血液流を低減するように作用し、このような反応は神経除去に伴い減衰され、または、皆無となる。従って、神経調節する前に刺激を与えると血流が低減すると予期されるが、神経刺激前と同じ刺激パラメータで同じ刺激部位を利用した場合には、神経調節した後で刺激を与えても同程度に血流が低減することは期待できない。このような現象を利用して、腎臓神経調節の程度を定量化することができる。本発明の変形例は、腎臓血流を監視する部材、または、腎臓刺激により影響を受けることが分かっている上記以外の生理学的パラメータのいずれかを監視する部材を含んでいるようにしてもよい。
【0116】
図24Aには、図16の、腎臓血液流を監視する部材を設けた装置280の変形例が例示されている。ドップラー超音波センサー352を備えているガイドワイヤ350にカテーテル282の管腔の中を前進させて、腎動脈RAの内部の血流を監視した。ドップラー超音波センサー352は、動脈の中を通る血流の速度を測定するよう構成されている。次に、次の公式に従って流量を算定することができる。
Q = VA (1)
この場合、Qは流量に等しく、Vは流速に等しく、Aは断面積に等しい。腎臓血液流の基準は、刺激波形の伝搬前にセンサー352からの測定値により判定することができ、刺激は、好ましくはバルーン284が収縮された状態で、両電極286の間を伝達される。腎臓血液流の基準からの変動、すなわち、血液流の不足をセンサー352を使って監視することで、腎臓神経の神経刺激および/または神経除去の最適部位を識別することができる。
【0117】
図24Bは図24Aの装置の変形例を例示しており、ここでは、ドップラー超音波センサー352がカテーテル282のシャフトに接続されている。センサー352はバルーン284より近位に配置されているように例示されているが、これに代わる例として、センサーはバルーンより遠位に配置されていてもよいものと理解するべきである。
【0118】
ドップラー超音波により腎臓血液流を経管監視することに加えて、または、これに代わるものとして、このような監視は、任意で、患者の体外から実施されてもよく、それにより、腎臓血液流は皮膚を通して視認化される(例えば、超音波変換装置を利用する)。また別な変形例では、1個以上の経管圧力変換装置を使用して、腎臓血液流を示す局所圧力変化を検知するようにしてもよい。また別な代替例として、血流速度を判定するにあたり、例えば、予め離隔距離が分かっている2点間を経管温度入力が推移する時間遅延を測定することによる温度希釈法で実施されてもよい。
【0119】
例えば、熱電対を各々の電極286に組み入れて、または、その近位に設けて、冷えた(すなわち、体温よりも低い)流体または生理食塩水を両熱電対よりも近位に注入する。温度減少が熱電対と熱電対の間で伝わる時間遅延を利用して、流れ特性を量化することができる。腎臓神経を刺激する前に興味のある流れ特性(単数または複数)の基準推定値を判定しておき、刺激を与えた後に判定された特性の第2の推定値と比較するとよい。
【0120】
任意で、市場で購入できる装置を利用して治療を監視するようにしてもよい。かかる装置の具体例には、米国カリフォルニア州ランチョコルドヴァのヴォルカノ・セラピューティクス(Volcano Therapeutics Inc.)から入手できるスマートワイヤ(SmartWire:商標)装置、フロワイヤ(FloWire:商標)装置、および、ウエーヴワイヤ(WaveWire:商標)装置のほかに、スゥエーデン国ウプサラのRADIメディカル・システムズ(RADI Medical Systems AB)から入手できるプレッシャワイヤ(PressureWire:商標)がある。これら以外に市場で購入できる装置は明らかである。上記に加えて、または、上記に代えて、電気穿孔の程度を監視するにあたり、電気インピーダンス断層撮影法(EIT)またはこれ以外の電気インピーダンス測定法で、例えば、電気インピーダンス指数などを利用して、直接監視してもよい。
【0121】
本発明の好ましい具体的な変形例を先に述べたが、本発明から逸脱せずにこれら変形例に多様な変更や修正を施すことができることは、当業者には明らかである。例えば、これら変形例は主としてパルス出力電界と連携した用途を説明してきたが、これ以外の電界を所望に応じて加えることができるものと理解するべきである。本発明の真の精神と範囲に入るこれら変形および修正は全て添付の特許請求の範囲が含んでいるものと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎臓神経調節装置であって、該装置は、
近位端および遠位端が設けられているカテーテルを有しており、更に、
該遠位部の近位にある配備可能なバスケットを有しており、
該配備可能なバスケットは被検体の腎血管内に設置されるよう意図されており、
該拡張可能な遠位部は、配備されると、腎血管の血管壁の内面と接触するように構成されており、
該カテーテルは腎血管の近位で腎神経において神経信号発生を調節するためのエネルギーを供給するように構成されている、腎臓神経調節装置。
【請求項2】
該カテーテルは、低温エネルギー、パルス電界、熱高周波電流、非熱高周波電流、熱直流、非熱直流、電氣的刺激波形、超音波、高強度集束超音波のうちの少なくとも1つを被検体の腎神経に供給するよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該配備可能なその直径を拡大させてバスケットは血管壁の内面に接触するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
該配備可能なバスケットは、少なくとも1本のワイヤから、少なくとも1本のリボンから、または、その両方から形成されている複数の支柱を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
該ワイヤ、該リボン、または、その両方は、少なくとも一部が絶縁材で被膜された導電材から構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの電極が少なくとも1本の支柱上に設置されている、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
該配備可能なバスケットとしては、レーザー切断された管が挙げられる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
該配備可能なバスケットには近位端および遠位端が設けられており、該近位端および該遠位端は互いに相関的に並進して該バスケットを容易に拡張させ、容易に収縮させ、または、容易に拡張収縮させることができるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
該配備可能なバスケットは少なくとも1個の電極を有している、請求項9に記載の装置。
【請求項10】
該配備可能なバスケットは、配備されると、該少なくとも1つの電極を血管壁と接触状態に設置するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
該装置は中心シャフトを更に有しており、該少なくとも1つの電極は該中心シャフト上に設置される、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
該配備可能なバスケットの少なくとも一部が腎血管内に設置されると、該少なくとも1つの電極はエネルギーを腎臓神経に供給するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
該配備可能なバスケットが腎血管内に設置されると、該少なくとも1つの電極はエネルギーを腎臓神経に供給することで腎臓神経に沿って神経信号発生を低減するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
該配備可能なバスケットが腎血管内に設置されると、該少なくとも1つの電極はエネルギーを腎臓神経に供給することで腎臓神経に沿って神経信号発生を促進するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
該少なくとも1つの電極は、単独電極、共通電極、分割電極、連続電極、および、これらの各種組合せからなるグループから選択される、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
該少なくとも1つの電極としては、モノポーラ電極が挙げられる、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
該少なくとも1つの電極は第1電極および第2電極から成り、双極式電極対を形成するよう構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項18】
該少なくとも1つの電極はまた別な複数の動的制御可能電極を有しており、該複数の動的制御可能電極は発生器に電気接続されている、請求項9に記載の装置。
【請求項19】
該カテーテルは、該少なくとも1つの電極を腎血管の血管壁に関して半径方向に制御自在に移動させるように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項20】
該少なくとも1つの電極は、互いに双極式電極対を形成している活性電極と帰電極から成り、更に、活性電極と帰電極のうちの少なくとも一方をダイナミックに移動させることで、双極式電極対を成している活性電極から帰電極までの長軸線方向の離隔距離を変動させるよう構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項21】
該少なくとも1つの電極に電気接続された発生器を更に有している、請求項9に記載の装置。
【請求項22】
該発生器は、パルス電界、熱高周波電流、非熱高周波電流、熱直流、非熱直流、電氣的刺激波形などの形態のうち1つ以上を発生するよう構成されている、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
該発生器は熱電界を発生するよう構成されている、請求項21に記載の装置。
【請求項24】
該熱電界により少なくとも部分的な腎臓除神経を実施するよう構成されている、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
該熱電界により少なくとも1本の腎臓神経の少なくとも部分的な融除を実施するよう構成されている、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
該発生器に指令を出して該少なくとも1つの電極に電気エネルギーを供給する制御器を更に有しており、該制御器は該発生器を支配する複数の指令がプログラムに組み込まれている、請求項21に記載の装置。
【請求項27】
腎血管の血管壁を横断して薬剤を注入するように構成された注入部材を更に有している、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
該配備可能なバスケットは腎血管内を移動するように嵩を減じた搬送用形状に配置される構成である、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
該配備可能なバスケットは、腎血管内に設置されると自己拡張するよう構成されている、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
該配備可能なバスケットは、腎血管内の標的部位に達すると敏活に拡張するよう構成されている、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
該配備可能なバスケットはバルーンと一緒に敏活に拡張するよう構成されている、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
該配備可能なバスケットは引張りワイヤにより敏活に拡張するよう構成されている、請求項30に記載の装置。
【請求項33】
該カテーテルはガイドワイヤの上を伝って通されるよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項34】
該カテーテルは、注入カテーテル又は吸引カテーテルであるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項35】
該カテーテルは、腎臓神経への処置に対する少なくとも1つの生理学的パラメータの応答を監視するための部材を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項36】
該部材は、ドップラー超音波センサ、温度センサ、圧力センサ及びこれらの組合せからなるグループから選択される、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
該カテーテルは、さらに、温度を監視するための熱電対を有する、請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図24A】
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【図24B】
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【公開番号】特開2012−135630(P2012−135630A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−47200(P2012−47200)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【分割の表示】特願2012−20266(P2012−20266)の分割
【原出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(507029764)メドトロニック アーディアン ルクセンブルク ソシエテ ア レスポンサビリテ リミテ (12)
【Fターム(参考)】