説明

腐食防止組成物

水性又は半水性ストリッピング組成物、クリーニング組成物、研磨剤ラッピング組成物、及び研磨剤スラリー組成物においてにおいて、フィルム形成性ポリマー状キレート化剤と一緒にベース金属と5、6、7、又は8員のキレート環を形成する腐食防止剤を使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、酸素又は高いイオン活性の水性又は半水性溶液の存在下での金属及び金属合金のための腐食防止組成物に関する。より特に、水性及び/又は有機溶媒と一緒に使用されるフィルム形成性のポリマー状キレート化剤とともに、鉄及び鉄合金、例えば、スチール、を含むベース金属と5〜8員環のキレート構造を形成するモノマー状のキレート化剤を含む腐食防止組成物が提供される。
【背景技術】
【0002】
腐食防止剤は、種々の金属、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、チタン/タングステン、タングステン、銅等が使用される半導体産業において使用されるクリーニング及びストリッピングのための組成物において一般的に見出される。
【0003】
腐食防止剤化合物が分類されるところの種々の機能の分類は以下の通りに分類されることができる。
1.キレート化剤
2.還元剤
3.酸素捕捉剤
4.フィルム形成剤
5.保護フィルム、典型的には金属酸化物の保護フィルム、を形成する酸化剤
【0004】
上記の腐食防止剤のタイプのうち、腐食のすべてのメカニズム又はすべての金属又は金属合金に効果的であるものはない。酸素捕捉剤は、高いイオン性の水性溶液の存在下において、特に、鉄又はその合金の酸素に誘起される腐食を退けることにおいて効果的でない。キレート化剤又は酸素捕捉剤である、半導体産業において使用される先行技術の腐食防止剤は、いずれも、水、酸素又は高いイオン活性水性又は半水性溶液の存在下での鉄又は炭素鋼の腐食を防止するのに有効ではない。
【0005】
Settineriらへの特許第3,996,147号は、金属の表面、特に水性の酸性溶液における第一鉄及び第一銅の金属の表面、の腐食を、単独で又は他のキレート化剤例えばアミノカルボン酸、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と組み合わせて、防止するスルホニウム腐食防止剤の使用を開示する。
【0006】
Leeらへの特許第5,334,332号は、参照することにより本明細書に取り込まれ、本発明の防止剤と一緒に使用されることができるキレート化剤及び溶媒系を開示する。該文献は、フィルム形成性のポリマー状キレート化剤を開示しない。
【0007】
特許第5,707,947号及び5,753,601号は、参照することにより本明細書に取り込まれ、中性(ゼロ価)の金属上に吸着する又は該金属へと吸収するフェノール誘導体及び/又は酸化されたカチオン性金属表面によるそれらのアニオンのキレート化(該キレート化が、酸化された表面の溶解速度を減少させる)を開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、腐食防止組成物、並びに鉄及び鉄合金の表面を含む1価又は多価の安定な状態に酸化可能である遷移金属と5、6、7、又は8員環構造を形成するフィルム形成性ポリマー状キレート化剤を含む該防止剤組成物の使用方法に関する。該フィルム形成性ポリマー状キレート化剤は約中性又は苛性のpHに中和される。
【0009】
任意的に、モノマー状のキレート化剤が含まれる。
【0010】
モノマー状キレート化剤:フィルム形成剤の比は、約5:1〜1:5である。
【0011】
有利に、中和剤は立体的に障害のあるアミン又は非金属の水酸化物である。そのような立体的に障害のあるアミンは、所望されるpHを得るために金属水酸化物塩基と組み合わせて使用されることもできる。金属水酸化物塩基のみの使用は本発明の組成物より劣る腐食保護を与える。
【0012】
さらに、有効な酸素捕捉剤を腐食防止組成物において含むことが有利である。
【0013】
多種多様な金属表面において使用されることのできる腐食防止組成物を提供することが本発明の一般的な目的である。
【0014】
原子又は表面金属元素又は合金と5、6、7又は8員のキレート化環を形成するキレート化剤を含む腐食防止組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0015】
フィルム形成性キレート化剤を含む腐食防止剤を含む、約中性又はアルカリ性のクリーニング用組成物、ストリッピング用組成物及び研磨剤ラッピング(abrasive lapping)のための組成物を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【0016】
ラッピング、(化学機械的ポリッシュ/平坦化におけるような)ポリッシュ、及び研磨剤スラリー及びクリーナーを使用するワイヤカッティング系のための腐食防止剤を提供することが本発明のさらに別の目的である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例えば鉄及び鉄合金の表面であるが、それに限定されない1価又は多価の安定な状態に酸化可能である遷移金属又は合金の金属原子又は表面の金属元素と5〜8員環を形成するフィルム形成性ポリマー状キレート化剤と組み合わせたモノマー状キレート化剤を含む腐食防止剤組成物が提供される。好ましいフィルム形成性ポリマー状キレート化剤は、好ましくは5、6、又は7の元素又は原子の安定なキレート環(そのような元素は典型的に金属基質、C、O、N及びその他を含むがそれらに限定されない)を形成するものである。使用されることができるフィルム形成性ポリマー状キレート化剤の例は、
1.ポリオルト−ジ又はトリヒドロキシ、カルボキシ又はスルホキシ芳香族化合物、例えばノボラック、ポリ o−ジ又はトリカルボン酸スチレン、レゾール、及び
2.水と混和可能であり、多くの極性溶媒と相溶性である、ポリアクリル酸及びそのコポリマー例えばポリアクリル−コ−マレイン酸(PACM)
を含む。
【0018】
モノマー状キレート化剤は、公知のマルチ(即ち1〜3)のヒドロキシフェノール(即ち、5又は6員環を形成するカテコール、ピロガロール、1,2又は1,8−ジ−ヒドロキシナフタレン等)、マルチ官能性の芳香族酸及びマルチ官能性の脂肪族カルボン酸又はアミノ酸、ヘミマリチック酸(hemi mallitic acid)及びトリマリチック酸(trimallitic acid)及びそれらのポリマー及びコポリマーを含む。上記のものに加えて、アルファ又はベーター二官能性脂肪酸のジアニオン、例えばマロン酸及びEDTAは、キレート化し、6、7、又は8員環を形成することができる。
【0019】
モノマー状キレート化剤:フィルム形成剤の比は5:1〜1:5である。
【0020】
芳香族キレート化剤は、没食子酸、ピロガロール、カテコール、o−ベンゾジカルボン酸、安息香酸、安息香酸アンモニウム、フタル酸無水物、マリチック酸、没食子酸テトラメチルアンモニウム、及びそれらの誘導体などを含む。
【0021】
他のキレート化剤は、8員環を形成するグルタール酸及び以下の一般式の化合物である。
1. HOC−(CH−CO
ここでnは0〜3である。
2. HOC−(NH−CO
ここでnは0〜3である。
3. HOC−(SH)−CO
ここでnは1〜3である。
4. HOC−CH−NH−(CH−CO
ここでnは0又は1である。
5. HN−(CHR)−CO
ここでnは1〜4であり、Rは水素原子、1〜4の炭素原子の
アルキル、1〜4の炭素原子のアルキレン、アリール又はベンゾ
である。
6. HO−(CHR)−SH−CO
ここでRは水素又はアルキルであり、nは1〜3である。
【0022】
多官能性脂肪族又は非芳香族の環状のキレート化剤は、マロン酸、EDTA、CDTA、イミノ二酢酸、マレイン酸、リンゴ酸、D,L−マレイン酸、シクロヘキサニル1,2−ジカルボン酸などを含み約中性又は苛性のpHにおいてベースの金属と6、7、又は8員環を形成する。好ましいモノマー状キレート化剤は、マロン酸であり、該酸もまたポリマー状キレート化フィルム形成剤と同じ方法で中和される。
【0023】
キレート化剤の中和は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属苛性物、例えばバリウム、マグネシウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物又は有機塩基で行われることができるが、最も強いキレート化は、中和ベースが立体的に障害のあるアミン又は非金属の水酸化物、例えばトリエタノールアミン(TEA)及びテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)又は他のアルカノールアミンであるとき起きる。この方法において、中和するベースの対の陽イオンは大きく嵩高く、負に帯電したポリマー又はモノマー状の剤への近くへの接近を許さない。これは、ポリマー又はモノマー状の剤の上の負の電荷が該陽の対イオンからより孤立していること及びベースの金属と強いキレート結合を形成するのにより利用可能であることを意味する。中和の好ましい方法は、アルカリ金属苛性例えばNaOH又はKOHで部分的に中和し、次に立体的に障害のあるアミン又は置換された水酸化アンモニウムで中和を完結することである。
【0024】
鉄又は鉄合金の腐食を防止するために、有効なフィルム形成性キレート化化合物と強いモノマーのキレート化化合物の組み合わせが有効な腐食防止系を提供する。しかし、さらなる有効性は酸素捕捉剤の添加により達成される。キレート化剤には、酸素捕捉剤でもあるものもある。最も一般的な酸素捕捉剤は硝酸塩(nitrate)、亜硫酸塩(sulfite)、及びヒドロキノンである。酸素捕捉剤は、テトラメチルアミノサルファイト(TMAS)、テトラメチルアミノナイトライト、亜硫酸アルカリ金属塩例えば亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩例えば亜硝酸ナトリウム及び亜硝酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどを含む。他の公知のO捕捉剤は、アスコルビン酸、マルチヒドロキシ芳香族例えばカテコール、ピロガロール、ヒドロキノン、ヒドロキシル−N−ヘテロサイクリック、例えば8−ヒドロキシキノンその他を含む。最も好ましいのは、ヒドロキノンである。酸素捕捉剤は総防止剤組成物の約0.1〜50%の量で使用されることができる。
【0025】
本発明の腐食防止剤は、高いイオン性の水性媒体において先行技術の腐食防止剤より、特により有利であることが見出された。それらは従前の防止剤より鉄及びスチール製品に対して特により有利である。それらは好ましくは6.0〜11.0のpHを有する組成物において好ましく使用される。
【0026】
本発明の防止剤は、水性および半水性有機溶媒系を、組成物の約0.25〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%の量で配合されることができる。腐食防止剤がその中で使用される溶媒及び種々の共溶媒並びにクリーニング組成物は、例えば、Leeへの米国特許第5,334,332号、Wardらに発行された米国特許第4,395,479号;第 4,428,871号;及び第4,401748号、及びSchwartzkopfに発行された米項特許第5,308,745号に見られる。これらの公報は参照することにより本明細書に取り込まれる。上記特許における好ましい溶媒は、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)、種々のピロリジノン化合物、例えばN―メチルピロリジノン(NMP)、ガンマ−ブチロラクトン(BLO)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン(TEA)、2−アミノ−2−エトキシエタノール、極性溶媒例えばアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、エチレンジアミン、アルキル及びジアルキル脂肪族アミド例えばDMACなどの水溶液を含む。
【0027】
典型的なラッピング又はスラリー組成物は
インシチューで形成された水性又は半水性の水酸化アルミニウム、約1〜30重量%、
硫酸ナトリウム若しくはカリウム、硫酸テトラメチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウム、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫酸塩からなる群から選択された塩化合物、約1〜30重量%、
約1500以上のフィルム形成性平均分子量におけるポリアクリル−コ−マレイン酸及びマロン酸を含む腐食防止剤、約0.25〜10重量%、ここで該ポリアクリル−コ−マレイン酸及びマロン酸は5:1〜1:5の比で存在する、
研磨剤物質、約1〜50重量%、及び
残部である水
を含む。
【0028】
任意的に、酸素捕捉剤が含まれることができる。
【0029】
以下の実施例は本発明の実例であり、本発明の範囲を制限しない。
【実施例】
【0030】
実施例1
本発明の腐食防止剤組成物は以下を混合することにより製造された。

0.5〜5重量%の腐食防止剤が、中和する塩基でもあるトリエタノールアミン(TEA)を含んでいてもよい、水性の研磨剤スラリー組成物、ラッピング組成物、ストリッピング組成物、及びクリーニング組成物に添加されることができ、溶解された塩は高いイオン強度の水性混合物を作る。
【0031】
実施例2
炭素鋼を使用し、酸素捕捉剤なしで、腐食防止系の効果を視覚的に及び光学顕微鏡により測定して試験が行われた。組成物は、腐食防止剤を1.0Nの水酸化ナトリウムで部分的に中和し次にTEAで8.5のpHに至らせることにより製造された。スプリング炭素鋼の複数の試料細片の半分が、中和された硫酸アルミニウムの15%の塩の溶液を含む試験媒体に6時間環境温度においてぶら下げられた。その時間の最後に、該試験片は脱イオン水ですすがれ、窒素で風乾された。結果は以下の通りである。
【0032】

【0033】
実施例3
フォトレジストのためのストリッピング組成物及びクリーニング組成物が、実施例1の腐食防止剤で以下のように製造され、実施例2に従って試験された。
【0034】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性又は半水性溶媒系における使用のための腐食防止剤において、
a)多官能性の芳香族の酸、多官能性の芳香族酸無水物、多官能性の脂肪族の酸、多官能性の脂肪族の酸無水物、芳香族又は脂肪族のアミノ酸、芳香族又は脂肪族のジ又はトリアミンからなる群から選択されたモノマー状キレート化剤及び
b)1価又は多価の安定な状態に酸化可能である遷移金属の金属表面と5、6、又は7員のキレート環を形成する、酸性のフィルム形成性ポリマー状キレート化剤
とからなり、該腐食防止剤が中和され又は部分的に中和されており、それにより、該腐食防止剤が該金属表面と5〜7員のキレート環を形成する、
前記腐食防止剤。
【請求項2】
酸素捕捉剤を含む、請求項1に記載の腐食防止剤。
【請求項3】
該酸素捕捉剤が、8−ヒドロキシキノン、アスコルビン酸、脂肪族アルカノールアミン、N,N−ジアルキルヒドロキシルアミン、ヒドロキノン、o―ジヒドロキシ又はo―トリヒドロキシ置換芳香族化合物、亜硫酸アルカリ金属塩、亜硝酸アルカリ金属塩、及び亜硫酸又は亜硝酸テトラメチルアンモニウムからなる群から選択される、請求項2に記載の腐食防止剤。
【請求項4】
該モノマー状キレート化剤が、マロン酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸、o―アミノ安息香酸、没食子酸、フタル酸、オキサミン酸、安息香酸アンモニウム、カテコール、ピロガロール及びイミノ二酢酸からなる群から選択される、請求項1に記載の腐食防止剤。
【請求項5】
該フィルム形成性ポリマー状キレート化剤が、o−ジ又はトリヒドロキシル、カルボキシ、又はスルホキシ芳香族化合物のポリマー又はコポリマー、ポリo−ジ又はトリカルボン酸スチレン及びアクリル酸及びマレイン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の腐食防止剤。
【請求項6】
該フィルム形成性ポリマー状キレート化剤がノボラックである、請求項5に記載の腐食防止剤。
【請求項7】
該フィルム形成性ポリマー状キレート化剤がポリアクリル酸−コ−マレイン酸又はポリアクリル酸又はポリマレイン酸である、請求項1に記載の腐食防止剤。
【請求項8】
立体的に障害のあるアミン又はテトラアルキルアンモニウムヒドロキサイドで中和されている、請求項1に記載の腐食防止剤。
【請求項9】
アルカリ金属ヒドロキサイドで部分的に中和されている、請求項8に記載の腐食防止剤。
【請求項10】
ストリッピング組成物、クリーニング組成物、ラッピング組成物、又は研磨剤スラリー懸濁物組成物において、請求項1の腐食防止剤約1〜10重量%を含む組成物。

【公表番号】特表2012−519234(P2012−519234A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552005(P2011−552005)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/001197
【国際公開番号】WO2010/098734
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(500483873)ピーピーティー リサーチ,インク. (3)
【Fターム(参考)】