説明

腫瘍中のERBB2の変化を特定するための方法

本発明は、ERBB2のいずれかの側から1メガベース未満以内に位置するERBB2の増幅産物の少なくとも3の遺伝子、ひいては、Affymetrix プローブセット 234046_at(配列番号31)に対応する遺伝子の発現の分析に基づく、腫瘍(特に癌)中のERBB2(HER2とも命名される)の変化の特定のための方法に関する。本発明は、さらに、上記遺伝子を検出するためのポリヌクレオチド配列を含む癌の分子キャラクタリゼーションにおいて有用なポリヌクレオチドライブラリー、および上記ライブラリーを含むキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織試料中のポリヌクレオチド配列の過剰発現または過小発現の分析に基づき、腫瘍(特に癌)中のERBB2の変化を特定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染色体17のERBB2領域の増幅は、ERBB2(「HER2」とも命名される)癌遺伝子タンパク質の構成的過剰発現をもたらし、乳腺腫瘍のうちおよそ15〜30%における制御できない腫瘍増殖を刺激する。現在、ERBB2は、原発性および転移性の腫瘍の両方において、ERBB2タンパク質に対するモノクローナル抗体であるトラスツズマブ、またはHerceptin(登録商標)についての臨床的有用性に対する予測マーカーであると考えられている。しかし、現在の試験方法は、20%もの症例において不正確であり、これによって、一部の患者においてHerceptin(登録商標)治療の有用性を逃してしまう可能性があり、または、一方で、別の患者においては不必要な治療を処方してしまう可能性がある。
【0003】
現在、腫瘍は、下記の2つの主要な相補的な技術を用いて、ERBB2について試験される:腫瘍細胞中に発現したERBB2タンパク質を特定する免疫組織化学(IHC)、および、細胞染色体中のERBB2 DNAのコピー数を定量化するin situ ハイブリダイゼーション(ISH)。ERBB2 mRNAの量を定量化するいくつかのRT−PCRアッセイもまた、近年開発されてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
頑強性、特異性および感受性の観点から、より高い性能を示す、腫瘍(特に癌)中のERBB2の変化を特定するための癌のシグネチャーに対するニーズが存在する。
【0005】
出願人は、今回、ERBB2の状態を予測する新規なシグネチャーを特定した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、今回、全く予想外なことに、細胞膜レベルでHER2タンパク質の発現と相関する、ERBB2の状態を予測するシグネチャーを発見した。試験を、一連の152の腫瘍について行い、152の腫瘍を総計した3つの別個のデータセットにおいて検証した。当該試験は、症例のうち96%においてIHC法と相関し、あいまいなIHC症例のうち95%を解決した。
【0007】
驚いたことに、発明者らは、いくつかの遺伝子が、ERBB2 IHCと強力に相関することを見出した。
【0008】
これらの遺伝子によって、IHC法を行った後にFISHスコアを行うことを要求する方法等の従来の2段階の方法と比較して改善され、網羅的な性能(感受性、特異性、頑強性等)を有する、1段階での、ERBB2の状態を予測するシグネチャーを得ることができる。
【0009】
さらに、これらの遺伝子は、患者のエストロゲン受容体(ER)の状態と無関係である。そのため、本発明の遺伝子について試験を行う前に、ER試験を行う必要がない。
【0010】
最終的に、発明者らは、これらの遺伝子がERBB2の増幅産物中に位置し、DNA増幅についての情報をとらえることを見出した。
【0011】
本発明の方法はまた、タンパク質レベル、RNAレベルおよびDNAレベルの情報を調整する。換言すると、本発明の方法の使用によって得られる情報は、ゲノムレベル、トランスクリプトームレベル、およびプロテオミクスレベルでの状況を反映する。
【0012】
そのため、本発明は、組織試料中の遺伝子の過剰発現または過小発現の分析に基づく腫瘍(特に癌)中のERBB2の変化を特定するための方法に関し、上記分析は下記の工程を含む:
− ERBB2の増幅産物の少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8の遺伝子(これらの遺伝子はERBB2のいずれかの側から1メガベース未満以内に位置する)を含む遺伝子群の発現の検出、あるいは
− ERBB2の増幅産物の少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8の遺伝子(これらの遺伝子はERBB2のいずれかの側から1メガベース未満以内に位置する)および配列番号31に対応する遺伝子を含む遺伝子群の発現の検出、あるいは
− ERBB2の増幅産物の少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8の遺伝子(これらの遺伝子はERBB2のいずれかの側から1メガベース未満以内に位置する)からなる遺伝子群の発現の検出、あるいは
− ERBB2の増幅産物の少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8の遺伝子(これらの遺伝子はERBB2のいずれかの側から1メガベース未満以内に位置する)および配列番号31に対応する遺伝子からなる遺伝子群の発現の検出。
【0013】
本発明の特定の態様では、遺伝子群の発現の検出方法は、下記の遺伝子:ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1、STARD3、CRKRS、FGFR2、ZRANB1から選択される少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8の遺伝子を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0014】
本発明の別の特定の態様では、遺伝子群の発現の検出方法は、下記の遺伝子:ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1、STARD3、CRKRS、FGFR2、ZRANB1および配列番号31に対応する遺伝子から選択される少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8の遺伝子を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0015】
本発明の特定の実施態様では、当該遺伝子群は、ERBB2、C17orf37およびGRB7を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0016】
別の本発明の特定の実施態様では、当該遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7および配列番号31に対応する遺伝子を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0017】
本発明の別の特定の態様では、当該遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7およびPERLD1を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0018】
本発明の別の特定の態様では、当該遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7およびPERLD1および配列番号31に対応する遺伝子を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0019】
本発明の別の特定の態様では、当該遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1およびSTARD3を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0020】
本発明の別の特定の態様では、当該遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1およびSTARD3および配列番号31に対応する遺伝子を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0021】
本発明の別の態様では、当該遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1、STARD3およびCRKRSを含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0022】
本発明の別の態様では、当該遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1、STARD3およびCRKRSおよび配列番号31に対応する遺伝子を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0023】
上記の遺伝子を検出できる配列は、いずれかの種類の核酸のものであってよく、当業者であれば組織試料中の特定の遺伝子を検出する方法を確実に知っている。
【0024】
本発明の特定の実施態様では、この検出は、上記遺伝子のcDNA全配列もしくはcDNAサブシーケンス、またはプライマー、または下記のポリヌクレオチド配列:配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32と、組織試料由来のポリヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0025】
別の本発明の特定の実施態様では、この検出は、下記の配列:配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号30、配列番号31、配列番号32のうちの少なくとも1、または少なくとも2、または少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7を含み、これらからなるポリヌクレオチド配列の群と、組織試料由来のポリヌクレオチド配列とのハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0026】
配列番号17〜配列番号32のポリヌクレオチド配列は、表1中に示される遺伝子の核酸試料と反応できるポリヌクレオチド配列(「プローブセット」とも呼ばれる)である。
【0027】
【表1−1】

【0028】
【表1−2】

【0029】
上記の配列は、下記のものである。
【0030】
【表2−1】

【0031】
【表2−2】

【0032】
【表2−3】

【0033】
【表2−4】

【0034】
【表2−5】

【0035】
【表3−1】

【0036】
【表3−2】

【0037】
【表3−3】

【0038】
【表3−4】

【0039】
【表4−1】

【0040】
【表4−2】

【0041】
【表4−3】

【0042】
【表5】

【0043】
【表6−1】

【0044】
【表6−2】

【0045】
【表7−1】

【0046】
【表7−2】

【0047】
【表7−3】

【0048】
【表8−1】

【0049】
【表8−2】

【0050】
【表9−1】

【0051】
【表9−2】

【0052】
【表9−3】

【0053】
【表9−4】

【0054】
【表9−5】

【0055】
【表9−6】

【0056】
【表9−7】

【0057】
【表10−1】

【0058】
【表10−2】

【0059】
【表10−3】

【0060】
【表10−4】

【0061】
【表10−5】

【0062】
【表10−6】

【0063】
【表10−7】

【0064】
【表11−1】

【0065】
【表11−2】

【0066】
【表11−3】

【0067】
【表11−4】

【0068】
【表12−1】

【0069】
【表12−2】

【0070】
【表12−3】

【0071】
【表12−4】

【0072】
【表13−1】

【0073】
【表13−2】

【0074】
【表13−3】

【0075】
【表13−4】

【0076】
【表14】

【0077】
【表15】

【0078】
【表16】

【0079】
【表17】

【0080】
【表18】

【0081】
【表19】

【0082】
【表20】

【0083】
【表21】

【0084】
【表22】

【0085】
【表23】

【0086】
【表24】

【0087】
【表25】

【0088】
【表26】

【0089】
【表27】

【0090】
【表28】

【0091】
【表29】

【0092】
これらのプローブセットは、AFFYMETRIX(HG−U133_PLUS_2)プローブである(http://www.affymetrix.com/products services/arrays/specific/hgu133plus.affx)。
【0093】
配列番号1および2は、ERBB2遺伝子の2つのアイソフォームを示す。これらの2つのアイソフォームは、プローブセット配列番号17と対応する。
【0094】
配列番号5および6は、GRB7遺伝子の2つのアイソフォームを示す。これらの2つのアイソフォームは、プローブセット配列番号20と対応する。
【0095】
配列番号8および9は、CRKRS遺伝子の2つのアイソフォームを示す。これらの2つのアイソフォームは、プローブセット配列番号25と対応する。
【0096】
配列番号10および11は、FGFR2遺伝子の2つのアイソフォームを示す。これらの2つのアイソフォームは、プローブセット配列番号27と対応する。
【0097】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20を含む、またはそれらからなるポリヌクレオチド配列群のハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0098】
本発明の別の特定の実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20および配列番号31を含む、またはそれらからなるポリヌクレオチド配列群のハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0099】
本発明の別の特定の実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21,および配列番号22を含む、またはそれらからなるポリヌクレオチド配列群のハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0100】
本発明の別の特定の実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22および配列番号31を含む、またはそれらからなるポリヌクレオチド配列群のハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0101】
本発明の別の特定の実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23および配列番号24を含む、またはそれらからなるポリヌクレオチド配列群のハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0102】
本発明の別の特定の実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24および配列番号31を含む、またはそれらからなるポリヌクレオチド配列群のハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0103】
本発明の別の特定の実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号32を含む、またはそれらからなるポリヌクレオチド配列群のハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0104】
本発明の別の特定の実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32を含む、またはそれらからなるポリヌクレオチド配列群のハイブリダイゼーションによって実現されてもよい。
【0105】
有利には、本発明の方法は、下記の工程を含む:
a)核酸試料と上記のポリヌクレオチド配列群とを反応させる工程、および
b)工程(a)の反応生成物を検出する工程。
【0106】
有利には、当該核酸試料は、反応工程(a)の前に標識されていてもよい。
【0107】
有利には、当該ポリヌクレオチド試料の標識は、放射性標識、比色法標識、酵素標識(例えばビオチン標識)、分子増幅標識、生物発光標識または蛍光標識からなる群から選択されてもよい。
【0108】
有利には、当該組織は、固定され、パラフィン封入され、または新鮮であってもよく、または凍結されていてもよい。
【0109】
本発明の特定の態様の全てについて、組織試料中のポリヌクレオチド配列の発現は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によってRNA転写物(単数または複数)の発現レベルを測定することによって特定されてもよい。
【0110】
本発明の特定の態様の全てについて、当該方法は、対照ポリヌクレオチド試料を入手する工程、上記対照試料と上記ポリヌクレオチド配列とを反応させる工程、対照試料反応生成物を検出する工程および上記ポリヌクレオチド試料反応生成物の量と上記対照試料反応生成物の量とを比較する工程をさらに含んでいてもよい。
【0111】
有利には、当該方法における組織試料はヒト試料であってもよい。
【0112】
有利には、本発明の方法は、乳癌、肺癌、結直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、卵嚢癌、頭頸部癌、食道癌、多形神経膠芽腫、肝細胞癌、胃癌、子宮頸癌、肝癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎癌、細胞癌、黒色腫、および脳癌からなる群から選択される癌を検出できる。
【0113】
有利には、当該組織試料は乳癌試料でもよい。
【0114】
有利には、本発明の方法は、細胞膜レベルで上記ERBB2タンパク質の発現を特定できる。
【0115】
有利には、本発明の方法は、癌患者、例えば、乳癌患者におけるERBB2の免疫組織化学的(IHC)状態を特定できる。
【0116】
本発明の別の対象は、癌の検出、診断、病期分類、モニタリングまたは癌のステージもしくは悪性度の追跡のための本発明の方法の使用である。
【0117】
上記のポリヌクレオチド配列群のいずれも、本発明の使用のために使用してもよい。
【0118】
有利には、この使用は、乳癌、肺癌、結直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、卵嚢癌、頭頸部癌、食道癌、多形神経膠芽腫、肝細胞癌、胃癌、子宮頸癌、肝癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎癌、細胞癌、黒色腫、および脳癌からなる群から選択される癌、例えば、乳癌を有する患者の治療のモニタリングを可能にし、患者の癌組織、例えば乳癌の組織試料由来の核酸に対する、いずれかの態様における当該方法の実行を含む。
【0119】
有利には、本発明の方法の使用によって、乳癌におけるERBB2の過剰発現の特定のための免疫組織化学的(IHC)アッセイで、以前に明確に評価できなかった状態の患者、(例えば、HercepTest(商標)(Dako,Denmark,AS)において2+のスコアである患者)におけるERBB2遺伝子の発現状態の評価が可能である。
【0120】
換言すると、この方法の使用は、IHCアッセイについてあいまいな結果を示す患者のERBB2遺伝子の発現状態の評価を可能にする。
【0121】
実際、Herceptest(商標)から得られる2+のスコアによっては、ERBB2の状態を特定することはできない。
【0122】
有利には、当該モニタリングは、例えばHerceptin(商標)(トラスツズマブ)治療による抗ERBB2治療の臨床的な有効性に関する。
【0123】
有利には、当該方法の使用により、上記方法によって得られた遺伝子発現差異プロファイルの分析に基づき、癌(例えば乳癌)を有する患者または動物のための治療の特定が可能になる。
【0124】
本発明の別の対象は、上記で定義された遺伝子の検出のためのポリヌクレオチド配列を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい、癌、例えば乳癌の分子キャラクタリゼーションにおいて有用なポリヌクレオチドライブラリーである。
【0125】
有利には、当該ポリヌクレオチドライブラリーは、上記遺伝子のcDNA全配列またはcDNAサブシーケンスを含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0126】
有利には、当該ポリヌクレオチドライブラリーは、上記の遺伝子を検出できるプライマーを含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0127】
有利には、当該ポリヌクレオチドライブラリーは、上記のプローブセット群のうちのいずれかを含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0128】
有利には、当該ポリヌクレオチドライブラリーは、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号32を含んでいてもよく、またはこれらからなっていてもよい。
【0129】
これらの実現の方法の全てにおいて、当該ポリヌクレオチドライブラリーは、固形担体上に固定化されていてもよい。
【0130】
この場合、当該担体は、ナイロン(登録商標)膜、ニトロセルロース膜、ガラススライド、ガラスビーズ、ガラス担体上の膜またはシリコンチップを含む群から選択されてもよい。
【0131】
本発明の別の対象は、上記で定義された本発明の遺伝子(単数または複数)および/または配列(単数または複数)の発現を検出できるポリヌクレオチド配列、例えば、プライマーおよびプローブを含むキットである。
【0132】
本発明の特定の実施態様では、当該キットは、上記のポリヌクレオチドライブラリーを含む。
【0133】
上記のポリヌクレオチド配列群のいずれかを本発明のキットにおいて使用してもよい。
【0134】
当該キットは、本発明の方法を実施するために適した(1)核酸抽出バッファー/試薬および手順;(2)逆転写バッファー/試薬および手順;および(3)qPCRバッファー/試薬および手順のうちの1以上を含んでいてもよい。
【0135】
当該キットはまた、1)データ検索および/または分析ソフトウェアを含んでいてもよい。
【0136】
当該キットは、研究室において、または医師が使用してもよく、高い再現性の試料処理を保証するため、試料の試験(例えば、Affymetrix GeneChip(登録商標)Systems 3000D×2(GCS3000D×2)上で、DNAVision SA(ベルギー、Gosselies)のISO−17025 MapQuant Dx(商標)Lab Services)のために研究室に送付してもよい。
【0137】
本発明の別の態様は、被験者から得られた癌細胞中のRNA転写物またはその発現産物の基準化された発現レベルの概要を含む報告に関し、上記RNA転写物は、上記の群のうちの1つから選択される遺伝子セットのRNAである。
【0138】
本発明の別の態様は、被験者から得られた癌細胞中のRNA転写物またはその発現産物の基準化された発現レベルの特定であって、上記RNA転写物は、上記の遺伝子群のRNA転写物である特定に基づく、抗ERBB2治療(例えばERBB2抗体)による治療に対する被験者の反応の予測を含む報告に関する。
【0139】
本発明の別の対象は、上記被験者から入手した癌細胞を含む生物学的試料中の1以上のRNA転写物またはその発現産物の発現レベルを特定する工程であって、上記RNA転写物は、染色体17q12−17q21.1上のERBB2遺伝子のいずれかの側から1メガベース未満以内に位置する遺伝子群から選択される少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8またはより大きな遺伝子群のものである工程を含む、染色体17q12−17q21.1上のERBB2遺伝子座位の増幅を定量するための方法である。
【0140】
当該方法において、当該遺伝子(単数または複数)は、ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1、STARD3およびCRKRSから選択される。有利には、当該方法は、配列番号31のポリヌクレオチド配列と組織試料とのハイブリダイゼーションをさらに含む。
【0141】
本発明の別の対象は、上記被験者から入手した癌細胞を含む生物学的試料中の1以上のRNA転写物またはその発現産物の発現レベルを特定する工程であって、上記RNA転写物は、ERBB2および染色体17q12−17q21.1上のERBB2の近くに位置する遺伝子、特に上記の遺伝子群、とりわけ表1の遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子のものである工程を含む、ERBB2阻害剤による治療に対してERBB2陽性の癌と診断された被験者の反応を予測するための方法である。
【0142】
この方法は、配列番号31の発現を検出する工程をさらに含んでいてもよい。
【0143】
特段の記載がない限り、技術用語は、従来の用法に従って使用される。
【0144】
本発明の様々な実施態様の概説を容易にするために、特定の用語についての下記の説明が与えられる。
【0145】
「ポリヌクレオチド配列の過剰発現」とは、特定のポリヌクレオチド配列の発現レベルが参照ポリヌクレオチド配列の発現レベルよりも高いことを意味する。
【0146】
「ポリヌクレオチド配列の過小発現」とは、特定のポリヌクレオチド配列の発現レベルが参照ポリヌクレオチド配列の発現レベルよりも低いことを意味する。
【0147】
核酸配列についての定量的または相対的なデータを収集する方法は数多く存在し、分析的方法論は、乳癌を患っているメスの哺乳類の臨床成績についての評価における核酸配列の発現の有用性に影響しない。生物学的試料中の核酸の発現量を定量するための方法は、当業者に周知である。このような方法の例として、ノーザンブロット法、cDNAアレイ、オリゴアレイ、定量的逆転写PCR、例えばリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を挙げることができる。
【0148】
本発明において、用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖であり、任意に、合成の、非天然の、または変化したヌクレオチド塩基を含むRNAまたはDNAのポリマーを指す。DNAのポリマーの形態であるポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1以上の断片で構成されていてもよい。
【0149】
検出は、好ましくは、各核酸配列についての相対的な発現(転写)レベルの算出/定量化を含む。
【0150】
「ERBB2の増幅産物」は、本発明の意味において、染色体17q12−17q21.1上の広い領域の増幅を意味し、これは、乳腺腫瘍中で頻繁に増幅される多くの遺伝子を含む。この増幅産物は、特にERBB2遺伝子を含む。
【0151】
「遺伝子」は、本発明の意味において、ポリヌクレオチド配列、例えば、単離されたポリヌクレオチド配列(デオキシリボ核酸(DNA))および、適切な場合には、リボ核酸(RNA)等を意味する。この配列は、遺伝子の全配列、または当該全遺伝子配列と少なくとも90%、少なくとも95%同一であってもよい遺伝子のサブシーケンスであってもよく、本発明の分析の方法を行うのに適したものであってもよい。当業者は、日常的な実験にあてはめることによって遺伝子の位置および長さを選択してもよい。当該用語はまた、等価物として、ヌクレオチド類似体由来のRNAまたはDNAの類似体、ならびに、記載された実施態様で適用可能であるように、一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖のポリヌクレオチドを含むように理解されなければならない。EST、染色体、cDNA、mRNAおよびrRNAは、核酸と呼ばれ得る分子の代表的な例である。DNAは、上記核酸試料から得てもよく、RNAは上記DNAの転写によって得てもよい。さらに、mRNAは、上記核酸試料から単離されてもよく、cDNAは上記mRNAの逆転写によって得てもよい。
【0152】
「からなるポリヌクレオチド配列群」は、本発明の意味において、上記ポリヌクレオチド配列を正確に含み、かつ、ポリヌクレオチド配列が全く付加されておらず、また、ポリヌクレオチド配列群のポリヌクレオチド配列が欠けてもいないポリヌクレオチド配列群を意味する。
【0153】
「遺伝子のcDNA全配列」は、本発明の意味において、当該遺伝子をコードするDNA配列の転写から得られるcDNA配列を意味する。
【0154】
「遺伝子のcDNAサブシーケンス」は、本発明の意味において、ストリンジェントな条件下で特異的なハイブリダイゼーションが可能となる遺伝子のcDNA全配列の核酸の配列(例として、10ヌクレオチド超、好ましくは15ヌクレオチド超、最も好ましくは25ヌクレオチド超、例として、50ヌクレオチド超または100ヌクレオチド超)を意味する。
【0155】
被験者から単離され、工程(a)で入手されるポリヌクレオチド試料は、RNA、好ましくはmRNAであってもよい。患者から単離された上記ポリヌクレオチド試料はまた、mRNAの逆転写によって得られたcDNAまたはmRNAもしくはcDNAに対して特異的なプローブの特異的なハイブリダイゼーション後のライゲーションの生成物に対応していてもよい。
【0156】
配列番号17〜配列番号32の配列は、Affymetrix配列(以下、「プローブセット配列」とも呼ばれる)である。
【0157】
「核酸試料とポリヌクレオチド配列との反応」は、本発明の意味において、遺伝子のcDNA全配列またはcDNAサブシーケンスまたは遺伝子のプライマーまたはプローブセット配列と、対応する遺伝子のポリヌクレオチド配列と、のハイブリダイゼーションが可能な条件で、核酸試料と、ポリヌクレオチド配列と、を接触させることを意味する。
【0158】
動物は、ヒト、マウス、ラット、モルモット、サル、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、またはウシ等の動物、好ましくはヒト、最も好ましくは女性に対応する。
【0159】
生物学的試料は、細胞、組織試料、または乳癌からの生検等の全ての生物学的物質を意味する。
【0160】
本願明細書で使用される「対照」は、細胞、組織試料または乳房からの生検由来の1以上の生物学的試料に対応する。上記対照は、試験されるメスの哺乳類または被験者と同一であってもよく、または異なっていてもよい、試験されるものと同一のメスの哺乳類、または別のメス、好ましくは同一の種、またはメスの哺乳類、好ましくは同一の種の集団から得られていてもよい。上記対照は、細胞、細胞株、組織試料または乳房由来の生検からの生物学的試料に対応していてもよい。
【0161】
DNAアレイまたはRNAアレイは、固形担体または基材(ナイロン(登録商標)膜、ガラススライド、ガラスビーズまたはシリコンチップ等)上に規則正しい順序でスポットされた多数の各DNA分子またはRNA分子からなる。アレイ上の各DNAまたはRNAのスポットの大きさに応じて、DNAアレイまたはRNAアレイは、マイクロアレイ(各DNAまたはRNAのスポットは、250ミクロン未満の直径を有する)およびマクロアレイ(スポットの直径は300ミクロン超である)として分類できる。使用される固形基材の大きさが小さい場合、アレイは、DNAチップまたはRNAチップとも呼ばれる。使用されるスポット技術に応じて、ガラスマイクロアレイ上のスポットの数は何百から何千に及ぶ可能性がある。
【0162】
典型的に、DNAアレイまたはRNAアレイによる遺伝子発現のモニタリングの方法は下記の工程を含む:
a)被験者からポリヌクレオチド試料を得る工程、および
b)工程(a)において得られたポリヌクレオチド試料と、固形担体上に固定化されたプローブとを反応させる工程であって、上記プローブは、前述の核酸配列を有するポリヌクレオチドからなる工程、
c)工程(b)の反応生成物を検出する工程。
【0163】
本発明において、用語「担体上に固定化された」は、共有結合、水素結合、イオン相互作用、疎水性相互作用等による付着等の、直接的または間接的な担体への結合を意味する。
【0164】
好ましくは、工程(a)で得られたポリヌクレオチド試料は、工程(b)での、固形担体上に固定化されたプローブとのその反応の前に標識される。このような標識は、当業者に周知であり、放射性標識、比色法標識、酵素標識、例えばビオチン標識、分子増幅標識、生物発光標識、電気化学的標識または蛍光標識が挙げられるが、これらに制限されない。
【0165】
有利には、工程(c)の反応生成物は、対照試料に対する上記反応生成物のさらなる比較によって定量化される。
【0166】
検出は、好ましくは、各核酸配列についての相対的な発現(転写)レベルの算出/定量化を含む。
【0167】
次いで、前述の各核酸配列の相対的な発現レベルの特定により、癌(例えば乳癌)を患っている被験者(すなわちメスの哺乳類)の臨床成績を、本発明の方法によって評価することができる。
【0168】
癌を患っている患者の臨床成績の評価方法は、さらに、生物学的試料、好ましくは 乳癌の組織または細胞を、患者から採取する工程を含んでいてもよい。サンプリングのこのような方法は、当業者に周知であり、例として、手術を挙げることができる。
【0169】
提供される方法はまた、in vitroの方法に対応していてもよく、これはこのようなサンプリングの工程を含まない。
【0170】
「発現差異プロファイル」は、本発明の意味において、対照組織、すなわち癌のない乳房組織中の遺伝子の発現レベルと、分析された試料中の同一の遺伝子の発現レベルとの差異を意味する。
【0171】
「癌の悪性度」は、本発明の意味において、例えば、癌の増殖率または転移する可能性を意味する。いわゆる「高悪性度の癌」は、迅速に増殖もしくは転移し、または、全体の健康状態および生活の質に顕著に影響する。
【0172】
「特異性」は、本発明の意味において、方法、特に診断方法についての、疾病(または健康問題)が実際に存在しない場合に、これを除外する能力を意味する。当該特異性は、方法または試験の結果が陰性である健康な人の割合であり、下記のように算出される:真陰性/(真陰性+偽陽性)。
【0173】
「感受性」は、本発明の意味において、方法、特に診断方法についての、疾病(または健康問題)が実際に存在する場合に、これを検出する能力を意味する。当該感受性は、方法についての結果が陽性である全ての病人の割合であり、下記のように算出される:真陽性/(真陽性+偽陰性)。
【0174】
「頑強性」は、本発明の意味において、手順または環境における変化に耐えられる質を意味する。これは、操作環境において、変化(予測できない変化である場合もある)について、良好に対処できる方法、または遺伝子群を定める。
【0175】
当該方法、および特に本発明のポリヌクレオチド配列群は、交差検定によって構築されたため、「頑強」である。これは、さらに、病理学者の主観的解釈とは無関係である。
【0176】
ERBB2+またはERBB2−の観点での患者の分類のために、当業者は、本発明の遺伝子の発現の測定を可能にする全ての方法を使用できる。例えば、当業者は、Vaknikら(Vapnik、1998、Statistical Learning Theory. V.N. Vapnik.Wiley Interscience)が記載したSVM法を使用することができる。この文献の内容は参照により本願明細書に組み入れられる。
【0177】
出願人によって行われた研究に関連して実施された実験研究についての記載(これは、本質的に制限するものとして解釈してはならない)を読むことで、本発明はより明確に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】「結果:HER2−」は、HER2スコアに応じたHER2の状態の可能性を示す。当該試験は、予測スコア(x軸)の関数として、HER2−またはHER2+の腫瘍を有するオッズ(y軸)を回帰する。オッズ曲線は、15%のHER2+を有する326腫瘍の対照セットを使用して較正した。3:1のオッズ比の閾値(灰色の領域の外側)を使用し、95%の2+IHCの腫瘍を明確に分類できた。
【図2】「品質:OK」は、HER2スコアの偏差を示す。品質管理は、品質指数(x軸)の関数として、HER2予測スコアの最大の予測される偏差(y軸)を回帰する。関数は、様々な条件にさらされた42の異なる乳腺腫瘍試料とハイブリダイスした138のマイクロアレイを使用して較正した。品質指数(p値)は、HER2予測モデルを構成する特に6のmRNAについてのチップ内の再現性を検定する。
【実施例】
【0179】
(実施例1)
(物質および方法)
当該試験は、Institut Paoli Calmettes(IPC)cancer Centerから得た152の腫瘍試料について行った:126 IHC 0、26 IHC 3+。これらの腫瘍を、Affymetrix platform、HG−U133 plus 2.0 GeneChip(登録商標)で特性付けた。
【0180】
HER2のシグネチャーは、RFE−SVM(Recursive Feature Elimination−Support Vector Machine)分類法(Guyonら、2002;Machine Learning、46、389−422)によって、試験(learning)セットとして所定のセットを使用することによって得た。
【0181】
R Magpie implementation package(Ambroise、McLachlan)を使用した。選択の頑強性を保証するため、交差検定の手順を使用した。最初に、非存在のプローブセット(全腫瘍セット上で発現レベルが5.5未満)および不変量(0.5未満の標準偏差)を選別した。これらの2つのプローブセットの分類は実際に分類にノイズをもたらす傾向があった。
【0182】
(結果)
RFE−SVMアルゴリズムは、16のプローブセット(表1の配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32)について最適なシグネチャーを与えた。
【0183】
ともに座位10q26上にあるZRANB1およびFGFR2以外は、この16のプローブセットは、17q12−17q21.1座位上に位置する。
【0184】
16のプローブセット(表1の配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号32)のうち、下記の14のプローブセットを選択した。
【0185】
最初に、性能を、腫瘍の3つの別個のセットについて、下記の臨床的基準に従って評価した。
【0186】
【表30】

【0187】
16のプローブセットを使用して、性能はすでに非常に良好である(表2)。
【0188】
【表31】

【0189】
ZRANB1およびFGFR2の役割を理解するために、増幅産物の14のプローブセットを試験することを選択した。その際に、性能を包括的に改善し、14のプローブセットの群のシグネチャーを検証した。
【0190】
【表32】

【0191】
この遺伝子の収集物は、CRKRSからGRB7のERBB2の増幅産物を網羅しているため、特に関連がある。
【0192】
14のプローブセットのシグネチャーと、先行技術のシグネチャーまたは1つだけのARNmとを比較した場合、感受性、特異性および頑強性の観点で改善されていることが認められた。
【0193】
【表33】

【0194】
(結論)
本発明の方法は、17q12座位の6の遺伝子および、17q座位の配列の1つの未知の配列に対応する14のプローブセットの発現に基づく、SVMモデルである。
【0195】
当該試験は、152の腫瘍について行い、152の腫瘍の3つの別個のセットについて検証した。当該試験は、96%の症例においてIHC法と相関し、95%の症例においてあいまいな症例(IHC2+)を解決した。91%超の症例におけるFISHとの一致も認められたが、限られた数の腫瘍(n=11)におけるものだった。
【0196】
(実施例2)
(物質および方法)
下記の臨床的基準に従い、腫瘍の5の別個のセットについて、14のプローブセットのシグネチャーを検証した。
【0197】
【表34】

【0198】
これらの5の別個のセットから、282の腫瘍を、Affymetrix(GeneChip(登録商標)Expression Analysis Technical Manual、2004)によって定められ、当該技術分野において一般的に利用されている基準(平均的バックグラウンド、平均的ノイズ、尺度因子、存在する割合、gapdh、β−アクチンおよびRNAの分解の勾配)に従い、高品質なゲノムの特性に基づいて選択した。閾値として、2つの標準偏差(分布が正規である場合、5%のαをもたらす)を、各基準について選択した。
【0199】
これらの腫瘍の全てについて、詳細なIHC情報を得た:189 IHC 0、22 IHC 1+、20 IHC 2+、51 IHC 3+。
【0200】
さらに、IHC2+について、陽性または陰性として表現されたFISHスコアを得た。
【0201】
【表35】

【0202】
14のプローブセットのシグネチャーと、先行技術のシグネチャー、または1つのみのARNmとを比較した場合、282の選択された腫瘍を代表する5の別個のセットについて、良好な全体相関だけでなく、感受性および特異性の点でも良好であることを認めた。
【0203】
【表36】

【0204】
(結論)
152の腫瘍について以前に行った試験で、282の選択された腫瘍を代表する5の別個のセットについて検証した。当該試験は、広範囲な感受性および特異性(それぞれ78%および98%)で、94%の症例において、IHC法と相関した。当該試験は、282中271の腫瘍(96%)の分類に役立った。当該試験はまた、95%の症例(19/20)において、あいまいな症例(IHC2+)を解決するのにも役立った。95%の症例(n=19)において、FISHと一致することも見出した。
【0205】
従って、IHC法を行った後にFISHスコアを実施することが要求される等の従来の2段階の試験と比較して、性能(感受性、特異性)を包括的に改善する14のプローブセットのシグネチャーを使用する1段階の試験に成功した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料中の遺伝子の過剰発現または過小発現の分析に基づく腫瘍(特に癌)中のERBB2の変化を特定するための方法であって、前記分析は下記の工程を含む方法:
− ERBB2の増幅産物の少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8の遺伝子(これらの遺伝子はERBB2のいずれかの側から1メガベース未満以内に位置する)を含む、またはそれらからなる遺伝子群の発現の検出、あるいは
− ERBB2の増幅産物の少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8の遺伝子(これらの遺伝子はERBB2のいずれかの側から1メガベース未満以内に位置する)および配列番号31に対応する遺伝子を含む、またはそれらからなる遺伝子群の発現の検出。
【請求項2】
前記遺伝子群は、下記の遺伝子:ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1、STARD3、CRKRS、FGFR2、ZRANB1から選択される少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8の遺伝子を含む、またはそれらからなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7およびPERLD1を含む、またはそれらからなる請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1およびSTARD3を含む、またはそれらからなる請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1、STARD3およびCRKRSを含む、またはそれらからなる請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子群は、ERBB2、C17orf37、GRB7、PERLD1、STARD3、CRKRSおよび配列番号31に対応する遺伝子を含む、またはそれらからなる請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記検出は、前記遺伝子のcDNA全配列もしくはcDNAサブシーケンス、または下記のポリヌクレオチド配列:配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32を有する組織試料由来のポリヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションによって実現される請求項1〜6いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記検出は、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号32を含む、またはこれらからなるポリヌクレオチド配列群を有する組織試料由来のポリヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションによって実現される請求項1〜7いずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
a)核酸試料と請求項7または8記載のポリヌクレオチド配列とを反応させる工程、および
b)工程(a)の反応生成物を検出する工程
を含む請求項1〜8いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記核酸試料は、反応工程(a)の前に標識されている請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチド試料の標識は、放射性標識、比色法標識、酵素標識、分子増幅標識、生物発光標識または蛍光標識からなる群から選択される請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記標識は酵素標識、例えば、ビオチン標識である請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記組織は、固定され、パラフィン封入され、または新鮮であり、または凍結されている請求項1〜12いずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記発現は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によってRNA転写物(単数または複数)の発現レベルを測定することによって特定される請求項1〜13いずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
対照ポリヌクレオチド試料を入手する工程、前記対照試料と前記ポリヌクレオチド配列とを反応させる工程、対照試料反応生成物を検出する工程、および前記ポリヌクレオチド試料反応生成物の量と前記対照試料反応生成物の量とを比較する工程をさらに含む請求項9〜14いずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記組織試料はヒト試料である請求項1〜15いずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記癌は、乳癌、肺癌、結直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、卵嚢癌、頭頸部癌、食道癌、多形神経膠芽腫、肝細胞癌、胃癌、子宮頸癌、肝癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎癌、細胞癌、黒色腫、および脳癌からなる群から選択される請求項1〜16いずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
組織試料は乳癌試料である請求項17記載の方法。
【請求項19】
細胞膜レベルでの前記ERBB2タンパク質の発現を特定するための請求項1〜18いずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
癌患者、例えば、乳癌患者におけるERBB2の免疫組織化学的(IHC)状態を特定するための請求項1〜19いずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20いずれか1項に記載の方法の使用であって、前記方法は、癌の検出、診断、病期分類、モニタリングまたは癌のステージもしくは悪性度の追跡のために使用される使用。
【請求項22】
患者の癌組織、例えば乳癌の組織試料由来の核酸に対する請求項1〜7いずれか1項に記載の方法の実行を含む、乳癌、肺癌、結直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、卵嚢癌、頭頸部癌、食道癌、多形神経膠芽腫、肝細胞癌、胃癌、子宮頸癌、肝癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎癌、細胞癌、黒色腫、および脳癌からなる群から選択される癌、例えば、乳癌を有する患者の治療をモニタリングするための請求項21記載の使用。
【請求項23】
乳癌におけるERBB2の過剰発現の特定のための免疫組織化学的(IHC)アッセイで、以前に状態が評価された患者(例えば、HercepTest(商標)(Dako,Denmark,AS)において2+のスコアである患者)におけるERBB2遺伝子の発現状態の評価のための請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
前記モニタリングは、例えばHerceptin(商標)(トラスツズマブ)治療による抗ERBB2治療の臨床的な有効性に関する請求項21または22に記載の使用。
【請求項25】
前記方法によって得られた遺伝子発現差異プロファイルの分析に基づく、癌(例えば乳癌)を有する患者または動物のための治療を決定するための請求項1〜20いずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項26】
請求項1〜6のいずれか1項で定義された遺伝子を検出するためのポリヌクレオチド配列群からなる、癌、例えば乳癌の分子キャラクタリゼーションにおいて有用なポリヌクレオチドライブラリー。
【請求項27】
前記遺伝子のcDNA全配列またはcDNAサブシーケンスからなる請求項26記載のポリヌクレオチドライブラリー。
【請求項28】
下記の配列からなる請求項26記載のポリヌクレオチドライブラリー:配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号31、配列番号32。
【請求項29】
下記の配列からなる請求項26記載のポリヌクレオチドライブラリー:配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32。
【請求項30】
固形担体上に固定化された、請求項26〜29いずれか1項に記載のポリヌクレオチドライブラリー。
【請求項31】
前記担体は、ナイロン(登録商標)膜、ニトロセルロース膜、ガラススライド、ガラスビーズ、ガラス担体上の膜またはシリコンチップを含む群から選択される請求項26〜30いずれか1項に記載のポリヌクレオチドライブラリー。
【請求項32】
請求項26〜31いずれか1項に記載のポリヌクレオチドライブラリーを含むキット。
【請求項33】
染色体17q12−17q21.1上のERBB2遺伝子座位の増幅を特定するための方法であって、前記被験者から入手した癌細胞を含む生物学的試料中の1以上のRNA転写物またはその発現産物の発現レベルを特定する工程を含み、前記RNA転写物は、染色体17q12−17q21.1上のERBB2のいずれかの側から1メガベース未満以内に位置する遺伝子群から選択される遺伝子の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8、またはより大きな遺伝子群のものである方法。
【請求項34】
前記遺伝子(単数または複数)は、請求項6記載のものである請求項33記載の方法。
【請求項35】
ERBB2阻害剤による治療に対してERBB2陽性の癌と診断された被験者の反応を予測するための方法であって、前記被験者から入手した癌細胞を含む生物学的試料中の1以上のRNA転写物またはその発現産物の発現レベルを特定する工程を含み、前記RNA転写物は、ERBB2および染色体17q12−17q21.1上のERBB2の近くに位置する遺伝子からなる群から選択される1以上の遺伝子のものである方法。
【請求項36】
前記1以上の遺伝子は、表1の遺伝子から選択される1、2、3、4、5、6、7または8の遺伝子の群である請求項35記載の方法。
【請求項37】
配列番号31の発現を検出する工程をさらに含む請求項36記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−511323(P2012−511323A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540309(P2011−540309)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055625
【国際公開番号】WO2010/067316
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(510179179)
【出願人】(507042442)インサーム (インスティテュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ ルシェルシェ メディカル) (4)
【出願人】(510178493)インスティテュート パオリ−カルメテス (3)
【Fターム(参考)】