説明

腰壁

【課題】床の縁部に沿って備えられる腰壁の当該床に面した側に必要かつ十分な換気能力を備える換気手段を設ける。
【解決手段】腰壁Bが屋外床Cに面している側に開口される縦向きに長い換気装置Aを備えており、この換気装置Aが、換気装置Aの開口側から腰壁Bの内奥側に向けて傾斜状に起立される複数枚の上下に面を向けた傾斜プレート42を所定間隔毎に備えており、互いに隣り合う傾斜プレート42間を換気通路43としてあると共に、傾斜プレート42の上端部を上面側に反転させた湾曲部42bとして当該換気通路43を狭めるようにしてあり、かつ、換気通路43の開口43aの開口縦寸法を15mm以内としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
屋外に設置される腰壁内に生ずる湿気を確実に除去し、必要に応じて天井裏の換気等をもなし得る換気能力を備える安全で、意匠性に優れた腰壁を提供する。
【背景技術】
【0002】
バルコニーなどの屋外床や当該屋外床に備えられる腰壁等は、設置環境が苛酷であり、内部に雨水等が漏れ入ったり、しみ入ったりする可能性が高く、また、結露を生ずる等、当該腰壁内が湿潤状態におかれる不具合等を解消する有効な対策が必要とされている。
【0003】
かかる点から、屋根裏に換気口を開口させたり、腰壁の屋外側にガラリ等の換気装置を設けて、天井懐や、腰壁等の壁内の換気が試みられている。
【0004】
しかしながら、建造物の外観の意匠性を損なうことなく、適切な位置に、適切な換気能力を備える換気装置を設けることは難しく、屋根裏換気と腰壁の換気装置をバルコニー等の床の縁部に沿って起立されている腰壁の床に面している側に設け、当該バルコニーを含めた建物における屋外側の意匠性を損なうことなく必要かつ十分な換気装置を設けることが試みられている。
【0005】
かかるバルコニーの床に面している側の腰壁部分に換気能力の大きな換気装置を構成した場合、バルコニーの内側から観た際の意匠性を損なうことがあり、また、当該設置換気装置におけるガラリ等を足掛かりとして幼児や児童等が腰壁によじ登り得ない構造が検討された。
【0006】
かかる点から、上部に笠木を設け、かつ外装材の裏側に該外装材と腰壁下地材に囲まれた通気層と、小屋裏空間に連通する前後の腰壁下地材に囲まれた換気通路とを順に前後に有する腰壁の換気構造に於いて、底部が閉鎖されかつ上部が開放された箱の一側面下部に換気口が開口されると共に、複数のパンチング板が箱の相互に所定の間隙を保って下層から順に積層された換気ボックスを前記換気通路内に取付け、さらに換気ボックスの前記換気口を通気層内に開口して構成した換気口を外装材で覆った腰壁の換気構造が提案されている。(例えば、特許文献1)。
【0007】
また、表面と裏面とが屋外空間に面し、上端面に笠木部材が取り付けられた壁体であって、該壁体は、屋外空間と壁体内空間とを区画する仕上部材と、前記仕上部材の裏側に配設されて前記仕上部材との間に壁体内通気路を形成する下地部材と、を備えると共に、前記壁体内通気路に前記下地部材側から接続された通気空間と、前記通気空間と屋外空間とを連通する通気口とを有して構成され、
前記通気口は、前記壁体の表面または裏面のうち、前記壁体内通気路よりも前記通気空間側に位置する面であって、かつ、前記笠木部材に覆われていない部位に設けられた壁体が、この通気口を下部側の外壁仕上材の上端部に、上部側の外壁仕上材の下端部を所定寸法分だけ重なるように設けるようにした手摺壁が提案されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2007−170042公報(図5及び図6)
【特許文献2】特開2006−37679公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、バルコニー等の床の縁部に沿って備えられる腰壁の、当該バルコニー等の床に面している側の腰壁面に、当該腰壁内や、軒裏空間等の必要かつ十分な換気能力を備える換気装置を、当該腰壁の意匠性を高める手段として活用したものは無かった。
【0009】
かかる点から、バルコニー等の床の縁部に沿って備えられている腰壁における当該床に面している側の腰壁部分に、必要かつ十分な換気能力を備え、かつ、意匠性に優れ、しかも、安全な換気装置の設置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、この発明は、屋外床の縁部に沿って備えられる腰壁であって、この腰壁が前記床に面している側に開口される縦向きに長い換気装置を備えており、
この換気装置が、当該換気装置の開口側から当該腰壁の内奥側に向けて傾斜状に起立される複数枚の上下に面を向けた傾斜プレートを所定間隔毎に備えており、互いに隣り合う傾斜プレート間を換気通路としてあると共に、
前記傾斜プレートの上端部を上面側に反転させた湾曲部として当該換気通路を狭めるようにしてあり、しかも、前記換気通路の開口の縦幅を15mm以内としてあることを特徴とする腰壁としてある。
【0011】
このように腰壁の床に面している側に開口される縦向きに長い換気装置では、当該腰壁や軒裏空間等を都合よく換気し得る必要かつ十分な換気装置を、当該腰壁に容易に設置できると共に、設置された換気装置がバルコニー等の腰壁の意匠性を高めるように機能する。
【0012】
また、このように構成される縦向きに長い換気装置では、当該換気装置の開口を上下に面を備えた横寸法の短い傾斜プレートで換気通路を構成していることから、傾斜プレートは、当該プレートの組み付け時における姿勢に維持されており、組み付け構成された換気装置における当該傾斜プレートの中央部分に外力が付加された際にも、変形を生じ難い構成とされている。
【0013】
また、換気装置を構成する換気通路が腰壁の内奥側に向けて傾斜状に起立する傾斜プレートで構成してあり、しかも、当該換気通路の開口の縦幅を15mm以内としてあることから、この傾斜プレートを足掛かりとして、幼児がバルコニー側から当該腰壁をよじ登る不具合を避けることができ、複数の換気通路を備える縦向きに長い換気装置をバルコニー等の床に面している側の腰壁部分に開口するように確実に設けることができる。
【0014】
また、このように構成される換気装置は、換気通路で構成されていると共に、当該換気通路の内奥側で、換気通路を構成する傾斜プレートの上端部を上面側に反転させた湾曲部としてあって、換気プレートにそって吹き込まれた雨水が当該湾曲部で反転されて、その流れの向きが当該換気プレートにそって下降する向きに変更され、しかも、当該換気通路と同一の向きに吹き込まれる雨水を、当該湾曲部で換気通路を狭めることで効果的に防ぐことができる。
【0015】
また、前記請求項1に記載の腰壁であって、前記換気装置が、縦向きに長く開口する長方形状の開口部を備える筒状体と、この筒状体の開口部側から当該筒状体の内奥側に向けて傾斜状に起立される上下を面とし、かつ、前記筒状体の両側板部間にわたるように所定間隔毎に備えられる複数枚の傾斜プレートとを備えており、当該互いに隣り合う傾斜プレート間が換気通路としてあると共に、
前記傾斜プレートの上端部を上面側に反転させた湾曲部として当該換気通路を狭めるようにしてあり、しかも、前記換気通路の開口の開口縦寸法を15mm以内としてあることを特徴とする腰壁にあっては、前記特長を備える腰壁を、確実に、かつ容易に構成することができる。
【0016】
また、前記請求項1又は請求項2に記載の腰壁にあって、前記腰壁に組み付けられる換気装置の上部側に物干し用の棹掛けが組み付けてあることを特徴とする腰壁にあっては、換気装置を腰壁に備え付けると同時に物干し用の棹掛けを備え付けることができ、棹掛けを備えた換気装置を備えた腰壁を、確実、かつ、容易に、構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る腰壁は、バルコニー等を含む建物の外観の意匠性を損なうことなく、風雨等の吹き込みを効果的に防止できると共に、当該腰壁に必要とされる換気容量を備える換気装置を容易に設けることができ、しかも、当該換気装置の換気通路を構成する傾斜プレートを足掛かりとして幼児等が腰壁にはい上がる不具合を避けることのできる換気装置を備える腰壁を効率よく構成できる特長を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明を実施するための最良の形態に係る典型的な腰壁Bについて説明する。
【0019】
図1〜図5は、この発明を実施するための最良の形態に係る腰壁Bであって、図1は、典型的な換気装置Aを備えた腰壁Bの典型例の要部を斜め上方から見て、図2は、その要部を縦向きに断面して側方から見て、図3は、典型的な換気装置Aの一例を棹掛け50を組み付ける前の状態で斜め上方から見て、図4は、この典型的な換気装置Aを腰壁Bに組み付ける状態の要部を斜め上方から見て示している。また、図5は換気装置Aの要部の断面を拡大して示している。
【0020】
この発明を実施するための最良の形態に係る腰壁Bは、屋外床Cの縁部に沿って備えられる腰壁Bであって、この腰壁Bが前記床Cに面している側に開口される縦向きに長い換気装置Aを備えており、
この換気装置Aが、当該換気装置Aの開口側から当該腰壁Bの内奥側に向けて傾斜状に起立される複数枚の上下に面を向けた傾斜プレート42を所定間隔毎に備えており、互いに隣り合う傾斜プレート42間を換気通路43としてあると共に、
前記傾斜プレート42の上端部を上面側に反転させた湾曲部42bとして当該換気通路43を狭めるようにしてあり、しかも、前記換気通路43の開口43aの開口縦寸法を15mm以内としてある。
【0021】
なお、ここで腰壁Bは、屋上に備えられるバルコニーの床Cの縁部に沿って備えられる場合は勿論のこと、上階と下階間を連続する外壁から、屋外側に持ち出されるように、例えば、上階の床の延長面に床を備えるように備えられるバルコニー等の床Cの縁部に沿って備えられる等、建物の屋外に備えられる各種の床Cの縁部に沿って備えられる全ての腰壁Bを対象としている。
【0022】
また、この換気通路43に備えられる湾曲部42bは、傾斜プレート42の上端部を上面側に反転させて構成してあればよく、これによって、傾斜プレート42の面に付着しながら吹き上げられた雨水が当該湾曲部42bで進行向きを換気通路43の入り口側に反転されれば、いかなる形状に設けてあってもよい。また、当該湾曲部42bは、換気通路43から吹き込まれる雨水等が、傾斜プレート42や当該湾曲部42bに突き当たることなく、当該換気通路43から腰壁B内に直接侵入するのを極力防止し得る程度に当該湾曲通路を狭めてあることが好ましい。
【0023】
このように腰壁Bに縦向きに長く開口するように備えられる換気装置Aでは、当該腰壁Bや軒裏空間30等を都合よく換気し得るに必要かつ十分な換気装置Aを、当該腰壁Bに容易に設置できると共に、設置された換気装置Aがバルコニー等の腰壁Bの意匠性を高めるように機能する。
【0024】
また、このように構成される換気装置Aでは、縦向きに長い開口を上下に面を備えた横寸法の短い傾斜プレート42で換気通路43を構成していることから、傾斜プレート42は、当該プレート42の組み付け時における姿勢に維持されており、組み付け構成された換気装置Aにおける当該傾斜プレート42の中央部分に外力が付加された際にも、変形を生じ難い構成とされている。
【0025】
また、換気装置Aを構成する換気通路43が腰壁Bの内奥側に向けて傾斜状に起立する傾斜プレート42で構成してあり、しかも、当該換気通路43の開口43aの開口縦寸法を15mm以内としてあることから、この傾斜プレート42を足掛かりとして、幼児がバルコニー側から当該腰壁Bをよじ登る不具合を避けることができ、複数の換気通路43を備える縦向きに長く開口する換気装置Aをバルコニー等の床Cに面している側の腰壁B部分に確実に設けることができる。
【0026】
また、このように構成される換気装置Aは、換気通路43で構成されていると共に、当該換気通路43の内奥側で、換気通路43を構成する傾斜プレート42の上端部を上面側に反転させた湾曲部42bとしてあって、傾斜プレート42にそって吹き込まれた雨水が当該湾曲部42bで反転されて、その流れの向きが当該傾斜プレート42にそって下降する向きに変更され、しかも、当該換気通路43と同一の向きに吹き込まれる雨水を、当該湾曲部42bで換気通路43を狭めることで効果的に防ぐことができる。
【0027】
また、前記構成からなる腰壁Bであって、前記換気装置Aが、縦向きに長く開口する長方形状の開口部を備える筒状体40’と、この筒状体40’の開口部側から当該筒状体40’の内奥側に向けて傾斜状に起立される上下を面とし、かつ、前記筒状体40’の両側板部間にわたるように所定間隔毎に備えられる複数枚の傾斜プレート42とを備えており、当該互いに隣り合う傾斜プレート42間が換気通路43としてあると共に、
前記傾斜プレート42の上端部を上面側に反転させた湾曲部42bとして当該換気通路43を狭めるようにしてあり、しかも、前記換気通路43の開口の開口縦寸法を15mm以内としてある腰壁Bにあっては、前記特長を備える腰壁Bを、確実に、かつ容易に構成することができる。
【0028】
また、前記構成からなる腰壁Bにあって、前記腰壁Bに組み付けられる換気装置Aの上部側に物干し用の棹掛け50が組み付けてある腰壁Bにあっては、換気装置Aを腰壁Bに備え付けると同時に物干し用の棹掛け50を備え付けることができ、棹掛け50と換気装置Aを備えた腰壁Bを、確実、かつ、容易に、構成することができる。
【0029】
ついで、図1〜図5に示される典型的な図示例に係る腰壁Bについて具体的に説明する。
【0030】
この図示例に係る腰壁Bは、屋外床Cの縁部に沿って備えられる腰壁Bであって、この腰壁Bが前記床Cに面している側に開口される縦向きに長い換気装置Aを備えており、
この換気装置Aが、当該換気装置Aの開口側から当該腰壁Bの内奥側に向けて傾斜状に起立される複数枚の上下に面を向けた傾斜プレート42を所定間隔毎に備えており、互いに隣り合う傾斜プレート42間を換気通路43としてあると共に、
前記傾斜プレート42の上端部を上面側に反転させた湾曲部42bとして当該換気通路43を狭めるようにしてあり、しかも、前記換気通路43の開口43aの開口縦寸法を15mm以内としてある。
【0031】
なお、説明の便宜上、腰壁Bであって、前記床Cに面している側の背面側、すなわち、前記床Cに面していない側を、単に、腰壁Bの床Cに面していない側として説明する。
【0032】
かかる腰壁Bは、屋上や中間階に備えられる各種の屋外床Cの縁部、例えば、バルコニー床Cの縁部、ベランダ床Cの縁部等に備えられる腰壁B等として構成される。
【0033】
図示例は、その典型例として建物本体(図示省略)から、例えば、持ち出し梁等の支持材11で、当該建物本体の外側に持ちだした態様にバルコニーを構成したものであって、この持ち出し梁等の支持材11にバルコニー梁12等を掛け渡して、このバルコニー梁12に柱、間柱等を立設すると共に、当該柱、間柱等の上部に笠木下地14を横架状態に設け、また、下方に腰壁Bの下端部を構成するための水平下地材15を備え付けるようにして腰壁Bの骨組み下地を構成するようにしてある。
【0034】
かかる腰壁Bは、当該腰壁Bに要請される換気量、あるいは、この腰壁Bと当該腰壁Bに連通される軒裏等に要請される換気量に対応した換気装置Aを備えて構成されるものであって、この換気に必要とされる換気装置Aを備え付けるための取付部を前記腰壁Bの骨組み材や腰壁B下地材で構成する。
【0035】
この図示例では、腰壁Bの防水立ち上がり位置の間柱13、13間に横架状に下部側フレーム下地材17bを組み付け、このフレーム下地材17bの上方に換気装置Aの枠状体40を納め入れ得る空間を構成し得るように上部側フレーム下地材17aを当該間柱13、13間に横架状に組み付けると共に、前記間柱13との間で前記枠状体40を挟み込むように当該各フレーム下地材17a、17b間にわたって縦フレーム下地材17cを組み付けて、一体に構成されている棹掛け50と換気装置Aの組み込み空間Hを構成してある。
【0036】
なお、この図示例に係る一体に構成されている棹掛け50及び換気装置Aの嵌め込み状の組み付けに用いられる組み込み空間Hを構成する間柱13及び各フレーム下地材17a、17b、17cにおける床Cに面している側にある面は、いずれも面一の状態に構成してある。また、当該組み込み空間Hを構成する各フレーム下地材17a、17b、17cは、当該間柱13の奥行き幅よりも短い奥行き幅に構成してある。この結果、当該組み込み用空間Hを構成する各フレーム下地材17a、17b、17cの内奥側端面と、腰壁Bの床Cに面していない側の壁面材の腰壁内側面との間が、当該組み込み用空間Hと腰壁Bの腰壁内空間26とを連通する間隙26’とされている。
【0037】
この図示例にあっては、一体に構成されている枠状体40の上部側が棹掛け50の組み付け開口部45を備える組み付け部としてあり、当該枠状体40の下部側が換気装置Aを構成する筒状体40’としてある。
【0038】
より、具体的には、当該枠状体40は、一対の同寸、同形の長方形の側板40a、40aと、この側板40a、40aの上端と下端とを連結して長方形の枠状体40を構成する同寸、同形の四角形の上板40b及び下板40cとを備えた構成としてあり、上部側に棹掛け50を容易かつ確実に組み入れ得るように、各側板40a、40a間にわたるように仕切り板40dを当該側板40aに直交するように組み付けてあり、この仕切り板40dから上方を取付側板部40a”、40a”及び上板40b並びに当該仕切り板40dからなる組み付け開口部45とし、
この仕切り板40dから下方を筒状体構成側板部40a’、40a’及び下板40c並びに当該仕切り板40dからなる換気装置Aを構成する筒状体40’としてある。
【0039】
すなわち、この図示例に係る換気装置Aを構成する筒状体40’は、互いに面を向き合い、かつ、平行な同寸、同形の長方形をなす前記取付側板部40a”、40a”及び、当該取付側板部40a”、40a”に直交するように当該取付側板部40a”、40a”の上端と下端とを連結する仕切り板40d並びに下板40cによって構成されており、この筒状体40’を構成する取付側板部40a”、40a”にわたるように所定間隔毎に、上下を面とする傾斜プレート42を備え付けて換気装置Aを構成してある。
【0040】
かかる枠状体40は、説明の便宜上、間柱13及び各フレーム下地材17a、17b、17cで構成される組み込み空間Hに組み込まれて内奥側に位置づけられる側を当該枠状体40の奥側部と称し、当該組み込み空間Hの入り口側に位置づけられる部分を手前側部と称し、同様に、筒状体40’の組み込み空間Hに組み込まれて内奥側に位置づけられる側を当該筒状体40’の奥側部と称し、当該組み込み空間Hの入り口側に位置づけられる部分を手前側部と称する。
【0041】
また、説明の便宜上、各筒状体構成側板部40a’、40a’と仕切り板40d及び下板40cで囲まれる当該手前側部の開口部を前面側開口部44’と称し、当該筒状体40’の奥側部にある各筒状体構成側板40a’、40a’と仕切り板40d及び下板40cで囲まれた開口部を内奥側開口部44”と称する。
【0042】
かかる枠状体40には、当該枠状体40の外周を周回するように鍔41が設けてある。この枠状体40に備えられる鍔41は、当該枠状体40における比較的手前側部の側板40a、上板40b、下板40cの外周面から直角に起立した状態で、一連に連続し、しかも、同一面内に鍔面を位置づけるように設けてある。
【0043】
かかる枠状体40に備えられる鍔41は、当該鍔41を換気装置Aの前記組み込み空間Hを構成する間柱13及び各フレーム下地材17a、17b、17cにおける床Cに面した側の面に密着するように重ね合わせて、当該鍔41の孔41aを用いて、釘、ビス等で当該鍔41を間柱13、フレーム下地材17a、17b、17c等に止着して腰壁Bに組み付け得るようにしてある。
【0044】
なお、雨仕舞の都合や意匠性等から、間柱13、フレーム下地材17a、17b、17c等に止着した鍔41の面を、腰壁Bにおける床Cに面している側の壁面材で覆った際に、枠状体40における側板40a、上板40b、下板40cの手前側端部が当該壁面材から僅かに突き出し得る位置に鍔41を設けておくことが好ましい。
【0045】
かかる枠状体40に備えられる筒状体40’を構成する筒状体構成側板部40a’、40a’及び、仕切り板40d並びに下板40cによって前後に開口している縦長の空間に、傾斜プレート42によって換気通路43を構成してある。
【0046】
かかる換気通路43は、筒状体構成側板部40a’と筒状体構成側板部40a’との間にわたるように、上下に面を向けた状態で、所定間隔を離して、複数枚の傾斜プレート42〜42を平行に組み付けることによって構成される。また、この傾斜プレート42は当該傾斜プレート42の板面と、筒状体構成側板部40a’の面とは、直角に組み付けてある。この結果、当該換気装置Aにあっては、一対の平行に備えられる筒状体構成側板部40a’に直交する向きで縦断面した際に、各傾斜プレート42、42間に矩形の空間が構成される。
【0047】
この換気通路43を構成する傾斜プレート42は、筒状体40’の前面開口部44’側から、腰壁Bの内奥側、この図示例にあっては当該筒状体40’における内奥側開口部44”側に向けて漸次傾斜状に起立するように設けてある。なお、この図示例にあっては、当該傾斜プレート42が筒状体40’における筒状体構成側板部40a’、40a’及び、仕切り板40d並びに下板40cで構成され空間内に都合よく納まるように構成してある。
【0048】
この図示例において換気通路43を構成する傾斜プレート42は、筒状体40’の前面側開口部44’から腰壁Bの内奥側、この図示例にあっては当該筒状体40’における内奥側開口部44”に向けて傾斜状に起立するように設けてある板状をなす平板状部42aと、当該前面側開口部44’に沿って当該平板状部42aの手前側端から下方に垂れるように延設されている垂設部42cと、前記内奥側開口部44”に向けて傾斜状に漸次起立するように設けてある平板状部42aの上端部、すなわち、奥側部を上面側に反転させた湾曲部42bとしてある。このように、当該傾斜プレート42を構成することによって、換気通路43に吹き込まれる雨水の腰壁B内側に向けた侵入を極力防ぐことができる。
【0049】
また、この図示例に係る換気通路43は、当該換気通路43の手前側部に備えられている互いに隣り合う傾斜プレート42、42間の開口の開口縦寸法を15mm以内とし、互いに隣り合う傾斜プレート42、42間に構成される換気通路43の通路内の上下寸法よりも狭めに構成してある。より具体的には、上側に位置づけられている傾斜プレート42の垂設部42cの下端42c’と、当該傾斜プレート42の下方に位置づけられている傾斜プレート42の平板状部42aと垂設部42cの屈曲縁42dとの間に構成される換気通路43の開口43aの開口縦寸法を、幼児が足先を差し入れて足掛かりとして腰壁Bをよじ登り得ない15mm以内となるように、傾斜プレート42から必要幅の垂設部42cを一連に屈曲構成してある。なお、この図示例にあっては、平板状部42aから垂設される垂設部42cの垂下幅を均一にしていることから、この垂設部42cの下端42c’と、当該傾斜プレート42の下方に組み付けられる傾斜プレート42の屈曲縁42dとは平行とされ、互いに平行とされている各筒状体構成側板部40a’との間に矩形の開口43aが構成され、この横長の矩形開口43aの短辺側である当該開口縦寸法が15mm以内となるように構成してある。
【0050】
なお、この筒状体40’に備えられる傾斜プレート42は、筒状体40’の前面側開口部44’から内奥側開口部44”に向けて設けてあり、当該内奥側開口部44”からはみ出さないように備え付けてある。例えば、傾斜プレート42をほぼ150mmの板状材で構成し、平板状部42aの奥行き寸法を100mm、手前側部に10mmの垂設部42cを設け、奥側部の上端部に上面側に反転する湾曲部42bを40mmの範囲内で構成してある。
【0051】
かかる傾斜プレート42を、ほぼ700mm〜800mmの縦向きの筒状体40’内に、当該傾斜プレート42における平板状部42aが前面側開口部44’のなす仮想の垂直面に対して内奥側開口部44”に向けて、ほぼ135度以上の傾斜角を維持するように、当該平板状部42aの上下を板面とするように多段状に設け、この各傾斜プレート42、42間を、筒状体40’の前面側開口部44’に備えられる換気通路43の開口43aから当該筒状体40’の内奥側開口部44”に到る換気通路43としてある。すなわち、筒状体40’における前面側開口部44’のなす仮想の面Y−Y’と、135度以上の角度tで交叉する仮想の面X−X’に傾斜プレート42の平板状部42aが位置づけられるように、当該傾斜プレート42を筒状体40’の前面側開口部44’の側から、内奥側開口部44”の側に向けて漸次起立するように傾斜状態に設けてある。
【0052】
かかる換気通路43は、筒状体40’の手前側で、垂設部42cで狭められており、また、奥側部で湾曲部42bで狭められている傾斜状に設けてあることから、水平向きに吹き込まれる雨水は、この換気通路43を構成する傾斜プレート42の面に突き当たり、傾斜プレート42に突き当たった雨水が風圧で湾曲部42bに押し込まれるものの、当該湾曲部42bで、その流れの向きを反転されて当該傾斜プレート42より内奥側開口部44”に側に吹き入れられる不具合を生ずることは希である。
【0053】
この結果、換気手段の各傾斜プレート42、42間の換気通路43を通過した外気はおおむね雨水等を含まない状態で腰壁B内に案内される。
【0054】
なお、当該傾斜プレート42間の換気通路43を抜けて筒状体40’内に雨水が侵入した場合、当該筒状体40’の最下段に、前記各傾斜プレート42よりも、その奥側部分を内奥側開口部44”に近接させるようにした長目の平板状部42aを備える傾斜プレート42’設けておき、この最下段に備えられる長目の傾斜プレート42’で、予期せずに侵入する雨水等を受けるようにしてある。
【0055】
また、この筒状体40’の上部側において、傾斜プレート42を設置しようとする際に、当該設置予定傾斜プレート42の奥側部が仕切板40dに接触し、前記のように換気通路43を構成し難い部分には、仕切板40dから、この下方に位置づけられている傾斜プレート42の屈曲縁42dに向けて塞ぎプレート42eを垂設状態に設け、縦向き寸法が15mm以上の開口43aが筒状体40’の手前側部に生じないように構成してある。
【0056】
また、当該筒状体40’の上部側に枠状体40の取付側板部40”、40”と上板40cと仕切板40で構成される開口部45に、棹掛け50が組み付けてある。
【0057】
この棹掛け部50は、取付フレーム51とアーム52を備えており、この取付フレーム51は、前記開口部45に水密的に嵌め込まれて、当該開口部45の手前側部から雨水が奥側部にしみ込まないように構成された平面視でコ字状をなすフレーム本体51aの手前側部に縦向きに軸孔を備える軸受け部51bを備えており、この軸受け部51aの上部に縦向きに第一ストッパー溝51cと第二ストッパー溝51dを備えており、第一ストッパー溝51cが開口部45のなす面に直交する向きに、第二ストッパー溝51dが当該開口部45のなす面に、ほぼ平行に近い交叉状態に設けてある。
【0058】
物干し棹を受けるアーム52は、物干し棹の通し孔52aを備えていると共に、基部側の上下に軸受け鍔52b、52bを備え、当該軸受け鍔52b、52b間に前記軸受け部51bを位置づけるようにワッシャー52eを介して軸受け鍔52bの孔から軸受け部51bの孔にボルト52cを挿通して、当該アーム52を各ストッパー溝51c、51dから上方に引き上げて回動して他方のストッパー溝に落とし込み得るように緩やかにボルト52cで抜け止めを防止し得るようにしてある。
【0059】
かかる棹掛け50を開口部45に対し、当該棹掛け50における平面視でコ字状をなすフレーム本体51aの互いに向き合っている片部間にある板部が前記開口部45の前面側を塞ぐように、前記互いに向き合っている片部を取付側板部40a”の内側面に密着させて水密状態に嵌め入れ、この状態で、当該棹掛け50を孔51eを用いてビス等で枠状体40に一体に組み付ける。
【0060】
このように構成される枠状体40を、床Cに面している側から腰壁Bに組み付けて、換気装置Aにおける開口が、床Cに面している側に位置づけられるようにする。
【0061】
また、筒状体40’の内奥側開口部44”が腰壁Bの壁面材との間に、腰壁Bの腰壁内空間26と換気装置Aの換気通路43とを連通するに必要かつ十分な間隙26’を構成し得るように、前記組み込み空間Hに枠状体40を組み入れ、鍔41をビス、釘等で当該組み込み空間Hを構成する間柱13,各フレーム下地材17a、17b、17cに止着する。
【0062】
このように換気装置Aの組み付けられた腰壁の骨組みに適宜の下地材を施し、壁面材を張り込んで、腰壁Bを構成する。
【0063】
かかる腰壁Bは、設置される場所や目的に対応した各種の構成の腰壁Bとして構成されるものであって、この図示例では、持ち出し梁等の支持材11、バルコニー梁12等を利用して床パネル31を張り込むと共に、当該床パネル31上に水勾配の施された断熱パネル32を張り込み、これを、絶縁シート33で覆うと共にFRP防水層34で、覆って構成した床Cの縁部に沿った腰壁Bを示している。
【0064】
かかる屋外床Cの床Cの縁部に沿って備えられる腰壁Bは、当該床Cに面した側に、当該床Cに連続するように防水を兼ねた壁面材を設けてある。この図示例にあっては、前記床パネル31上に、腰壁Bの柱、間柱13等の骨組み下地に沿って起立されたクロスパネル21(なお、ここでクロスパネルとは、所定間隔を離して並設した小幅板群に対して、交叉するように小幅板を所定間隔を離して並設し、両者の面を重ね合わせるようにして固定して構成したものであって、構成される小幅板間の空間が通気空間とされている壁下地材を云う。以下、単にクロスパネルと称する。)が腰壁Bの内側に透湿性シートを介在させて前記下部側フレーム下地材17b位置まで設けてあり、このクロスパネル21面を覆うようにサイジングボード24を前記床パネル31上に起立するように設け、さらに、枠状体40の下板40c面から床C部側に突設するように備えられる水切り金物25で上部を覆うように構成し、この水切り金物25と下板40cとの間に適宜シーリングを施すようにしてある。
【0065】
このように屋外床Cの勾配付き断熱パネル32と、当該床Cの縁部に備えられる腰壁Bのサイジングボード24面とに、床Cの防水構造となる、FRP防水を現場施工で施してFRP防水層34を設けてある。
【0066】
なお、屋外床Cを構成する床パネル31は、腰壁Bを構成するクロスパネル21とサイジングボード24の起立面から腰壁Bの内側に差し込まれる部分に、所定間隔毎に穴31aが設けてあり、軒裏空間30と当該腰壁内空間26とを連通状態とし、軒裏空間30の換気を当該穴31aを介して腰壁Bに備えられる換気装置Aで処理し得るようにしてある。なお、クロスパネル21は当該クロスパネルが確実に所定位置に起立維持されるように前記床パネル31に下地材16で固定してある。
【0067】
また壁面材の施された部分及び前記枠状体40における鍔41を止め付けた間柱13、各フレーム下地材17a、17b、17cで囲まれた組み付け空間Hを除く腰壁Bの各面を壁面材で覆って腰壁Bを構成する。
【0068】
まず、バルコニー梁12、間柱13、柱、笠木下地14、下地材15、各フレーム下地材17a、17b、17c等の各腰壁下地材に防湿性シートを被装し、これに前記クロスパネル21を止着すると共に防水シート22で覆って、ラス仕上げでモルタル層23を設けて、腰壁Bの床Cに面している側の面と、床Cに面していない側の面とを構成する。なお、このモルタル仕上げでは、モルタルと水切り金物や枠状体40の接合面に必要に応じてシーリングを施す。また、笠木下地14上には防水処理を施してブラケット18を組み付け、これを利用して手摺りバー19’を備える笠木19を設置する。また、腰壁Bの下端側の下地材15の軒天側に下地材を添装して、これに野縁35を止着して軒天井板36を張り込んで軒裏空間30を構成してあって、前記軒天井板36に到る部分まで、前記腰壁Bの床Cに面していない腰壁Bの壁面を構成している防水シート22を延設し、かつ、ラスを施したモルタル層23で仕上げてある。
【0069】
このように構成される腰壁Bでは、前記腰壁骨組みや各種下地材に対して、腰壁Bの床に面している側と、この床に面していない側とに壁面材が備えられており、この壁面材間に腰壁内空間26を生ずるようにしてある。この腰壁内空間26は、必要に応じて軒裏空間30に連通するように構成してあり、この腰壁内空間26に換気装置Aの換気通路43が都合よく連通し得るように、各フレーム下地材17a、17b、17cで枠状体40の組み付け空間Hが構成されており、しかも、この組み付け空間Hに、当該枠状体40を、この腰壁内空間26に換気装置Aの換気通路43が都合よく連通し得るように組み付けてある。
より具体的には、各フレーム下地材17a、17b、17cで構成される枠状体40の組み付け空間Hにおける各フレーム下地材17a、17b、17cの当該枠状体40の組み込み側と反対側にある端面と、床Cに面していない側に備えられる壁面材のクロスパネル21との間、及び、筒状体40’の内奥側開口部44”や開口部45の内奥側にある枠状体40の端面と床Cに面していない側に備えられる壁面材のクロスパネル21との間に間隙26’を設けてあり、換気装置Aの換気通路43と腰壁内空間26とを連通状態にしてある。
【0070】
このように構成される腰壁Bでは、バルコニー等の床Cに面している側に縦長に開口する意匠性に優れた換気装置Aを、当該腰壁B、軒裏空間30等の換気に必要かつ十分な換気能力を有するものとして備え付けることができる。
【0071】
また、棹掛けを用いる場合、アーム52を上方に持ち上げ、当該アーム52に備えられているストッパー片52gを第二ストッパー溝51dから抜き出し、ほぼ90度回動させて当該アーム52を腰壁Bの床Cに面している側の面から直角に突き出させた位置で、第一ストッパー溝51cに落とし込み、当該アーム52を固定状態にして用いると共に、必要が無くなった際には、同様の操作でアーム52を腰壁Bの壁面に平行な状態に、ストッパー片52gを第二ストッパー溝51dに落とし込んで維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】典型的な腰壁の要部を示す斜視図
【図2】同要部断面図
【図3】同腰壁に組み付けられる換気装置と枠状体に棹掛けを組み付ける前の斜視図
【図4】同腰壁に換気装置と棹掛けを組み付ける状態の斜視図
【図5】同換気装置の要部の拡大断面図
【符号の説明】
【0073】
A 換気装置
B 腰壁
C 床
42 傾斜プレート
42b 湾曲部
43 換気通路
43a 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外床の縁部に沿って備えられる腰壁であって、この腰壁が前記床に面している側に開口される縦向きに長い換気装置を備えており、
この換気装置が、当該換気装置の開口側から当該腰壁の内奥側に向けて傾斜状に起立される複数枚の上下に面を向けた傾斜プレートを所定間隔毎に備えており、互いに隣り合う傾斜プレート間を換気通路としてあると共に、
前記傾斜プレートの上端部を上面側に反転させた湾曲部として当該換気通路を狭めるようにしてあり、しかも、前記換気通路の開口の開口縦寸法を15mm以内としてあることを特徴とする腰壁。
【請求項2】
前記換気装置が、縦向きに長く開口する長方形状の開口部を備える筒状体と、この筒状体の開口部側から当該筒状体の内奥側に向けて傾斜状に起立される上下を面とし、かつ、前記筒状体の両側板部間にわたるように所定間隔毎に備えられる複数枚の傾斜プレートとを備えており、当該互いに隣り合う傾斜プレート間が換気通路としてあると共に、
前記傾斜プレートの上端部を上面側に反転させた湾曲部として当該換気通路を狭めるようにしてあり、しかも、前記換気通路の開口の開口縦寸法を15mm以内としてあることを特徴とする請求項1に記載の腰壁。
【請求項3】
前記腰壁に組み付けられる換気装置における上部側に物干し用の棹掛けが組み付けてあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の腰壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−106629(P2010−106629A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281893(P2008−281893)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】