説明

腸で機能させる酵素配合顆粒、及び、該酵素配合顆粒を用いた酵素配合食品

【課題】酵素と脂溶性物質を胃液に曝すことなく腸まで到達させる。
【解決手段】脂溶性物質であるCoQ10の含有油液2を、ゼラチン被膜3に内包させてなるシームレス核1を形成し、その表面に、酵素含有コーティング被膜4を設けて酵素配合顆粒5を形成する。酵素配合顆粒5を、ハードカプセル6に充填して封入し、カプセル表面全体をツェイン7でコーティングして酵素配合食品8とする。酵素配合食品8を飲み込むと、ツェイン7のコーティング層の存在により胃液で溶解されることなく胃を通過して腸に達し、腸内にて、ツェイン7のコーティング層、ハードカプセル6が順次崩壊した後、酵素配合顆粒5の酵素含有コーティング被膜4に配合されていた酵素が、腸内に放出される。更に、このコーティング被膜4の崩壊によって露出されるシームレス核1のゼラチン被膜3が崩壊することで、CoQ10含有油液2も腸内に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物由来、植物由来、微生物由来等の酵素を腸内で機能させるようにすると同時に、所要の脂溶性有効成分を腸内に放出できる酵素配合顆粒、及び、該酵素配合顆粒を用いた酵素配合食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人の肉体的、精神的活動を支えているエネルギーは、いくつかの酵素の複合体(複合酵素)により食べ物を消化し、体内で代謝することで生み出されている。したがって、各種の消化酵素や代謝酵素が非常に重要な働きを担っているが、これらの酵素のうち、消化酵素の働きによって、食べたものが良く消化されなければ、それらに含まれている栄養素を体内へ吸収することができず、したがって、体内での代謝にも利用することができなくなる。
【0003】
ところで、個人差はあるが、一般に、老化や加齢に伴い、体内の酵素全体の量が次第に減少していくときには、体内での代謝に関わる代謝酵素に重点が置かれるため、消化酵素にまで対応することができなくなって、消化や吸収は衰える傾向にあり、そのために、蛋白質、脂肪、糖質がうまく分解できなくなることがある。たとえば、年々、歳とともに、嗜好する食材が、肉を中心としたものから魚や野菜を中心としたものに変わるのは、肉を消化するために使用される酵素の量が、加齢により減少することに伴うためと考えられる。そこで、各種の酵素を外部より食品として取ることで、体内の酵素を補うことが考えられる。
【0004】
ところで、従来提案されている酵素食品としては、たとえば、麦胚芽、大豆胚芽、米胚芽、玄米胚芽を蒸して、麹菌、酵母、イースト菌等で発酵させるようにしたものを、粉末、顆粒、錠剤の形で経口摂取できるようにしたものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
なお、栄養補助食品等の機能性を有する食品の形状(剤形)としては、錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、顆粒が広く一般的に用いられている。
【0006】
又、食品を顆粒状に成形する場合において、粒度の揃った顆粒を製造するために、真球度が高く且つシャープな粒度分布を備えた砂糖の球形粒子を核として、その表面に所望する成分をコーティングする手法が従来知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0007】
更に、同軸二重ノズルを用いた滴下法により、所要の油液をゼラチン等のカプセル被膜の中に内包させて形成してなるシームレスカプセルは従来知られている(たとえば、特許文献3参照)。
【0008】
又、経口摂取物を胃液に接触させないで腸内に到達させるための手法として、経口摂取物を内包させたハードカプセルを、とうもろこしから抽出、精製された難胃溶性で且つ腸溶性を備えたツェイン(ツェン、ゼイン)で腸溶性コーティングした腸溶性コーティング食品も従来提案されている(たとえば、特許文献4参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2001−120203号公報
【特許文献2】特開平5−229961号公報
【特許文献3】特開平7−196478号公報
【特許文献4】特開2001−309756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1に記載された酵素食品は、麦胚芽、大豆胚芽、米胚芽、玄米胚芽に含まれる蛋白質、脂肪、糖分において体内でうまく分解できないものを、予め、麹菌、酵母、イースト菌等で発酵させることにより、消化、吸収され易い状態としてから粉末、顆粒、錠剤として経口摂取できるようにしたものに過ぎず、加齢と共に体内、特に腸内で不足しがちになる消化酵素を外部から補うことができるものとはなっていない。
【0011】
したがって、腸内で不足する消化酵素を外部から補うことができるようにした酵素配合食品は、従来は特に提案されていないというのが実状である。
【0012】
ところで栄養補助食品等の機能性を有する食品に広く用いられている各種剤形のうち、錠剤は、飲み込み易く、所望する成分をコンパクトにまとめることが可能であり、更に、糖衣錠としたり、フィルムコートすることにより、異味、異臭成分をマスキングすることも可能であるが、上記所望する成分を均一に混合するための賦形剤、及び、押し固めるための結合剤が必要とされることから、添加物が多量となって、主成分の配合率が低くなってしまうという問題がある。又、通常、錠剤に配合できるのは、水溶性物質のような粉末化、固形化が容易な成分に限られており、脂溶性物質は、一旦粉末化できるものであれば、配合することが可能であるが、液状のままでは配合することが困難である。
【0013】
ソフトカプセルは、脂溶性物質を油に溶かした状態で内包させることができるものであるため、カプセル内容物の空気酸化に対する安定度が高く、又、製造工程においては、40℃以上の加温、加熱工程や加圧工程がなく、内容成分が空気と接触する時間が少ないため、品質劣化要因や人的加工要因が少ないという利点があると共に、大きさや、内容成分の含有量のばらつきが少なく、内溶液の均一性を高めたり、異味、異臭成分をマスキングすることができ、更には、内容物は油脂であり、被膜の水分活性が低いため、微生物汚染され難く、しかも、嚥下し易いという利点はある。しかし、最小でも一粒当り200mg程度の大きさとしてあり、そのうちカプセル被膜は重量比で約30%となっているため、残部の約70%が内包させる油性の成分(油液)となっており、脂溶性有効成分のほかに、必要量以上の食用油が配合されている。すなわち、たとえば、コエンザイムQ10(CoQ10)を1カプセル当り30mg程度として配合したい場合であっても、そのほかに110mg程度の食用油を配合する必要が生じることから、過剰な油を摂取しなければならないという問題が懸念される。又、水溶性物質を配合するには、界面活性剤を使用して油脂に溶かす必要があるため、加工し難く、又、その配合量も制限されてしまう。更に、この配合量が少なく制限されてしまう水溶性物質である有効成分の摂取量を、一日摂取所望量に到達させるには、5〜6錠のソフトカプセルを飲むことが必要とされることがあり、このような場合は、油の摂取量が更に多くなってしまう。しかも、従来、ソフトカプセルのカプセル被膜は、通常、ゼラチン被膜としてあるため、長期保管していると、ソフトカプセル同士が癒着し易くなる虞も懸念される。
【0014】
ハードカプセルは、内包物をマスキングでき、そのため、色素や染色性のある素材でも口内や歯、あるいは、容器を汚さないようにすることができ、又、製造工程においては、加温、加熱、加湿、乾燥、加圧工程がないため、錠剤に比して品質劣化の原因が極めて少ないという利点があると共に、添加物を少なくすることができて、主成分の配合率を高いものとすることが可能になるものであるが、配合できるのは、上記錠剤と同様に、水溶性物質のような粉末化や顆粒化等の固形化が容易な成分に限られており、脂溶性物質は、一旦粉末化する等、固形化する必要があり、液状のままでは配合が困難である。しかも、ハードカプセル自体は胃で溶けるため、内包物は胃で放出されてしまうこととなる。
【0015】
そこで、上記特許文献4に示されているように、ハードカプセルの内包物を胃液に接触させないで腸内に到達させることができるようにするために、ハードカプセルを、難胃溶性で且つ腸溶性を備えたツェインで腸溶性コーティングすることが従来考えられているが、この場合であっても、脂溶性物質の配合が困難であるという点を改善することができるものではない。
【0016】
上記特許文献2に示された真球度が高く粒度分布の揃った砂糖の球形粒子を核として、その表面に所望成分をコーティングして製造する顆粒状の食品は、粉末より飲み易く、早い吸収を促すことができるほか、賦形剤や結合剤等の添加物の量を少なくすることができると共に、真球度の高い顆粒とすることができるため、外観を向上させることができるとされているが、顆粒の製造のためには砂糖製の核が必要とされるため、糖の摂取量が多くなる虞が懸念される。又、上記顆粒に脂溶性物質を配合することは困難である。
【0017】
因みに、特許文献3に示されたシームレスカプセルは水溶性のため、その内包物は油液に限られ、よって、上述したソフトカプセルと同様に、脂溶性物質は配合できるが、水溶性物質の配合は困難である。又、ゼラチン製のシームレスカプセルは、そのまま摂取すると、胃に達する時点で速やかに溶解されるため、内包物は胃で放出されてしまい、胃液に触れさせずに腸まで到達させることは困難である。
【0018】
又、上記各特許文献2、3、4には、腸内で不足する消化酵素を外部から補う考えはない。
【0019】
そこで、本発明は、腸内で不足する消化酵素等の酵素を外部から腸内に到達させて補うことができるようにするために、動物由来、植物由来、微生物由来等の所要の酵素を腸内で放出させて機能させることができるようにすると同時に、所要の脂溶性有効成分をも一緒に腸内に放出させることができるようにする酵素配合顆粒、及び、該酵素配合顆粒を用いた酵素配合食品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、脂溶性有効成分を食用油に溶解してなる脂溶性有効成分含有油液を、ゼラチン被膜に内包させてシームレス核を形成し、該シームレス核の表面を、所要の酵素を含む酵素含有コーティング被膜で覆ってなる構成を有する腸で機能させる酵素配合顆粒とする。
【0021】
又、請求項2に対応して、脂溶性有効成分を食用油に溶解してなる脂溶性有効成分含有油液を、ゼラチン被膜に内包させてシームレス核を形成し、該シームレス核の表面を、所要の酵素を含む酵素含有コーティング被膜で覆って酵素配合顆粒を形成し、該酵素配合顆粒を、ハードカプセルに封入して、該ハードカプセルの表面を、胃難溶性で且つ腸溶性物質で全面に亘りコーティングしてなる構成を有する酵素配合食品とする。
【0022】
更に、上記酵素配合食品の構成における酵素配合顆粒のシームレス核を、脂溶性有効成分含有油液と、ゼラチン被膜形成用のゼラチン溶液を原料としてシームレスなカプセル状とし、且つ、上記シームレス核の表面に、所要の酵素と賦形剤を含んだ粉末原料を、所要のコーティング液を介し所要厚みで積層させて酵素含有コーティング被膜を形成して酵素配合顆粒とした構成とする。
【0023】
更に又、上記酵素配合食品の各構成における酵素含有コーティング被膜に、微生物由来、植物由来、動物由来の酵素と、上記微生物由来、植物由来、動物由来の酵素ごとに異なる色の色素とを個別に配合してなる3種の酵素配合顆粒を形成して、該3種の酵素配合顆粒を、1種ごと又は複数種を混合してハードカプセルに封入するようにした構成とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)脂溶性有効成分を食用油に溶解してなる脂溶性有効成分含有油液を、ゼラチン被膜に内包させてシームレス核を形成し、該シームレス核の表面を、所要の酵素を含む酵素含有コーティング被膜で覆ってなる構成を有する腸で機能させる酵素配合顆粒としてあるので、該酵素配合顆粒が腸内へ到達させて、酵素含有コーティング被膜を腸内で崩壊させると、該酵素含有コーティング被膜に含まれている酵素を腸内へ放出できて、該酵素の機能を腸内で発揮させることができるようになる。同時に、上記酵素含有コーティング被膜の崩壊に伴って露出されるシームレス核のゼラチン被膜が腸内で溶解することで、該ゼラチン被膜に内包されていた脂溶性有効成分含有油液に含まれる脂溶性有効成分をも、上記酵素と一緒に腸内へ放出することができるようになる。
(2)したがって、本来水溶性である酵素を乾燥状態で配合でき、しかも、一緒に脂溶性有効成分をも容易に配合可能な顆粒とすることができる。
(3)脂溶性有効成分を食用油に溶解してなる脂溶性有効成分含有油液を、ゼラチン被膜に内包させてシームレス核を形成し、該シームレス核の表面を、所要の酵素を含む酵素含有コーティング被膜で覆って酵素配合顆粒を形成し、該酵素配合顆粒を、ハードカプセルに封入して、該ハードカプセルの表面を、胃難溶性で且つ腸溶性物質で全面に亘りコーティングしてなる構成を有する酵素配合食品としてあるので、上記胃難溶性で且つ腸溶性物質の存在により、ハードカプセルの胃での崩壊を防止できて、該ハードカプセル内に封入されている酵素配合顆粒を、胃液との接触を防止した状態で確実に腸内へ到達させることができる。その後、上記酵素配合食品が腸内に達すると、上記胃難溶性で且つ腸溶性物質のコーティングが速やかに溶解されてハードカプセルが露出されることで、該ハードカプセルを崩壊させることができるため、該ハードカプセル内に封入されている酵素配合顆粒を腸内に放出させて、該酵素配合顆粒の酵素含有コーティング被膜を崩壊させることができる。これにより、上記酵素含有コーティング被膜に含まれていた酵素を、胃液との接触で失活する虞を未然に防止した状態で腸内に到達させて、腸内で該酵素の機能を腸内で発揮させるようにすることが可能となると共に、上記酵素含有コーティング被膜の崩壊に伴って露出されるシームレス核のゼラチン被膜が崩壊することにより、該ゼラチン被膜に内包されている脂溶性有効成分含有油液に含まれている脂溶性有効成分をも、胃液との接触を未然に防いだ状態で腸内に放出させることができるようになる。
(4)したがって、上記酵素配合食品は、所要の酵素と脂溶性有効成分を共に腸内に到達させる機能を有する食品とすることができる。
(5)酵素配合顆粒のシームレス核を、脂溶性有効成分含有油液と、ゼラチン被膜形成用のゼラチン溶液を原料としてシームレスなカプセル状とし、且つ、上記シームレス核の表面に、所要の酵素と賦形剤を含んだ粉末原料を、所要のコーティング液を介し所要厚みで積層させて酵素含有コーティング被膜を形成して酵素配合顆粒とした構成とすることにより、上記シームレス核を真球状で且つ粒径の揃った粒とすることができると共に、該シームレス核を中心核として形成する酵素配合顆粒を、真球状で且つ粒径の揃ったものとすることができる。これにより、該酵素配合顆粒を、その後、ハードカプセルに封入するための充填作業を行う際の充填量のコントロールが容易なものとすることができる。
(6)酵素含有コーティング被膜に、微生物由来、植物由来、動物由来の酵素と、上記微生物由来、植物由来、動物由来の酵素ごとに異なる色の色素とを個別に配合してなる3種の酵素配合顆粒を形成して、該3種の酵素配合顆粒を、1種ごと又は複数種を混合してハードカプセルに封入するようにした構成とすることにより、胃難溶性で且つ腸溶性物質で全面に亘りコーティングされているハードカプセルを通して観察される酵素配合顆粒の色から、本発明の酵素配合食品の1つのカプセルに配合されてる酵素が、微生物由来、植物由来、動物由来のいずれの酵素であるか、あるいは、微生物由来、植物由来、動物由来の酵素のうちの2種又は3種を含んでいるかを、容易に判断することが可能になるという外観上の訴求効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0026】
図1(イ)(ロ)は本発明の酵素配合食品の実施の一形態を示すもので、以下のような構成としてある。
【0027】
すなわち、脂溶性有効成分として、たとえば、CoQ10を所要の食用油に所要濃度で溶解させて調整した脂溶性有効成分含有油液としてのCoQ10含有油液2を、膜厚が0.2〜0.4mmのゼラチン被膜3に内包させてなる直径0.7〜1.2mmのシームレスカプセル状のシームレス核1を形成し、該シームレス核1の表面を、酵素を含む酵素含有コーティング被膜4で覆って酵素配合顆粒5を製造する。更に、上記酵素配合顆粒5を、所要量ずつゼラチン製のハードカプセル6に封入すると共に、該ハードカプセル6の表面を、胃難溶性で且つ腸溶性物質としてのツェイン7で全面に亘りコーティングして本発明の酵素配合食品8とする。
【0028】
以下、上記酵素配合食品8の構成を、製造手順に沿って詳述する。
【0029】
上記酵素配合食品8を製造する場合は、先ず、脂溶性有効成分として、加齢に伴って減少し、且つ不足分を補うことで細胞の活性が活発になる効果が知られているCoQ10を、食用油として、たとえば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)に混合して溶解させてCoQ10含有油液2を製造する。この際、該CoQ10含有油液2中における上記CoQ10の濃度は、たとえば、最終的に製造される酵素配合食品8の1カプセル当りに封入されるすべての酵素配合顆粒5に内包されているCoQ10含有液2の合計量中に含まれるCoQ10の量が、約30mgとなるように調整するようにしておく。
【0030】
次に、上記CoQ10含有油液2と、ゼラチン被膜3形成用のゼラチン溶液とを用いて、製剤技術の1つとして広く知られている同軸二重ノズルを用いた滴下法により上記シームレス核1を形成する。具体的には、同心円状の二重ノズルの内側(中心側)の流路から、上記CoQ10含有油液2を、又、上記二重ノズルの外側(外周側)の流路から上記ゼラチン溶液を、それぞれ同時に吐出させることにより、表面張力(界面張力)を利用して上記CoQ10含有油液2を、上記ゼラチン溶液に内包させた後、このゼラチン溶液を固化させて上記所定膜厚のゼラチン被膜3を形成させる。これにより、中心部のCoQ10含有油液2を均一なゼラチン被膜3で被覆してなる構成を備えた上記所定直径の真球状のシームレス核1を製造する。
【0031】
次いで、上記シームレス核1を、たとえば、図示しないローターで回転させることによる遠心力と、スリットエアーを用いて遊星運動させるよう撹拌させ、所要のコーティング液(結合液)を定量的にスプレーしながら、所要の酵素と、賦形剤と、その他配合を所望する所要の添加剤とを含んだ粉末原料を、定量的に散布することにより、上記粉末原料を、上記シームレス核1の表面に所要の厚みで積層させて酵素含有コーティング被膜4を形成させる。これにより、図1(ロ)に示す如き上記真球状のシームレス核1の表面を均一な酵素含有コーティング被膜4で被覆してなる真球状で且つ粒度の揃った酵素配合顆粒5を製造する。
【0032】
上記酵素含有コーティング被膜4を形成する際に配合する酵素としては、微生物由来、植物由来、動物由来の各種酵素を適宜選定して用いるようにすればよい。具体的には、微生物由来の酵素としては、たとえば、腸内でセルロースを分解させて腹部の膨満感やガスを減らす効果が期待できる菌由来のセルラーゼを用いたり、乳酸菌由来の各種酵素を含んでいて栄養素を体内に効率よく取り入れるために腸内環境を整える効果が期待できる乳酸菌代謝物等を用いることができる。又、植物由来の酵素としては、たとえば、蛋白質分解酵素であって消化を助ける効果が期待できるパパインや、蛋白質分解酵素であるアクチニジンを含み、更に、天然のビタミンCやビタミンEを含むキウイ果汁末等を用いることができる。又、動物由来の酵素としては、たとえば、菌の溶解作用が期待できる卵白リゾチームや、酵素に加えてアミノ酸や蛋白質を含むプラセンタエキス末等を用いることができる。
【0033】
又、上記酵素含有コーティング被膜4を形成させる際に配合する添加剤としては、たとえば、消費者に対する外観上の訴求効果を高めることを目的として、後工程でハードカプセル6に封入される酵素配合顆粒5を予め着色しておくための色素を含んだ添加剤を配合するようにしてもよい。この種の色素を含んだ添加剤としては、赤色の着色を目的とする場合には、たとえば、赤色の色素に加えて、コレステロールの低下効果が期待できるメビノリンを含んだ紅麹を用いるようにすればよい。又、緑色の着色を目的とする場合には、たとえば、緑色色素であって且つ鉄分不足を補う効果が期待できるクロロフィルを用いるようにすればよい。又、黄色の着色を目的とする場合には、たとえば、黄色物質であって且つ細胞の再生や生成を促進する効果が期待できるビタミンB等を用いるようにすればよい。
【0034】
更に、上記酵素配合顆粒5を、配合されている酵素の種類別に着色するようにしてもよい。具体的には、たとえば、上述したような微生物由来の酵素を含む酵素含有コーティング被膜4には紅麹を配合しておくことにより、該微生物由来の酵素を含む酵素配合顆粒5を赤色に着色し、又、植物由来の酵素を含む酵素含有コーティング被膜4にはクロロフィルを配合しておくことにより、該植物由来の酵素を含む酵素配合顆粒5を緑色に着色し、又、上記動物由来の酵素を含む酵素含有コーティング被膜4にはビタミンB6を配合しておくことにより、該動物由来の酵素を含む酵素配合顆粒5は黄色に着色するようにすれば、各酵素配合顆粒5に配合されている酵素が、微生物由来、植物由来、又は、動物由来のいずれであるかを顆粒の色から容易に判別できるという外観上の訴求効果も期待できる。
【0035】
その後、上記製造された酵素配合顆粒5を、ハードカプセル6に所要量ずつ充填して封入させる。この充填、封入作業の際、上記酵素配合顆粒5は、真球状で且つ粒度が揃っているため、ハードカプセル6への充填量を正確に且つ容易にコントロールすることが可能になる。
【0036】
更に、上記ハードカプセル6に酵素配合顆粒5を充填、封入する際、たとえば、上記したような微生物由来、植物由来、動物由来のそれぞれの酵素を個別に含むと共に該酵素の種類ごとに赤色、緑色、黄色に色分けされた酵素配合顆粒5を、2種類又は3種類混合して上記ハードカプセル6に充填、封入させるようにしてもよく、この場合には、上記酵素配合顆粒5が、真球状で且つ粒度が揃ったものとしてあるために、上記種類の異なる酵素を個別に含む2種類又は3種類の酵素配合顆粒5を、所定の混合比、たとえば、等量ずつとなるように混合量を正確にコントロールしてハードカプセル6に充填、封入することが可能になる。
【0037】
しかる後、上記酵素配合顆粒5を封入してなるハードカプセル6の表面の全面に、上記ツェイン7を、所要の厚み、具体的には、本発明の酵素配合食品8が胃を通過する間は該ツェイン7のコーティング層が胃液に曝されても溶解せず、且つ酵素配合食品8が腸に達した時点で上記ツェイン7のコーティング層が速やかに溶解するような所要の厚み寸法となるようにコーティングして、本発明の酵素配合食品8を形成するようにしてある。
【0038】
以上の構成としてある本発明の酵素配合食品8を飲み込むと、該酵素配合食品8は、最外層に形成してあるツェイン7のコーティング層の存在により、胃でのハードカプセルの崩壊が防止されることから、該ハードカプセル内に封入された酵素配合顆粒は、胃液との接触が防止された状態で胃を通過される。その後、腸内に達すると、上記ツェイン7のコーティング層が速やかに溶解するためハードカプセル6が露出され、次いで、該ハードカプセル6が崩壊して内部の酵素配合顆粒5が腸内に放出される。更に、上記酵素配合顆粒5の酵素含有コーティング被膜4が崩壊されることで、該酵素含有コーティング被膜4に配合されていた微生物由来、植物由来、動物由来等の酵素が腸内に放出されて、該酵素の機能が腸内で発揮されると共に、酵素含有コーティング被膜4に配合されていた酵素、添加剤等の水溶性の物質の腸での吸収が図られる。
【0039】
更に、上記酵素含有コーティング被膜4の崩壊に伴ってシームレス核1が露出されると、該シームレス核1における外層のゼラチン被膜3が崩壊することにより、該ゼラチン被膜3に内包されていたCoQ10含有油液2が腸内に放出されて、該油液2に配合されている脂溶性有効成分であるCoQ10の腸での吸収が図られるようになる。
【0040】
このように、本発明の酵素配合食品8によれば、配合されている酵素を、胃液による分解を受けることなく腸内に到達させて、該腸内で酵素の機能を発揮させることができて、腸内で不足する消化酵素等の酵素を補うことが可能になる。更に、上記酵素配合食品8には、本来水溶性である上記酵素を乾燥状態で配合できると共に、脂溶性の物質であるCoQ10をも一緒に且つ容易に配合することができるため、脂溶性有効成分としてのCoQ10も胃液に曝すことなく腸内に到達させて放出することができて、腸内での吸収に供することができる。
【0041】
又、上記真球度が高く且つ粒度の揃った酵素配合顆粒5は、CoQ10含有油液2をゼラチン被膜3に封入してなるシームレスカプセル状のシームレス核1を中心核として、その周りを酵素含有コーティング被膜4で被覆して形成させるようにしてあるため、従来、真球度の高い顆粒を製造するために特許文献2に記載された手法で用いられていたような砂糖の球形粒子を核とする必要がないことから、糖の摂取量を削減することが可能になる。
【0042】
更に、上記脂溶性物質であるCoQ10を配合するための油は、各シームレス核1にてゼラチン被膜3に内包されているCoQ10含有油液2のみであるため、従来、脂溶性物質を配合するための剤形として用いられているソフトカプセルに比して、油の使用量を低減させることができて、油の摂取量を削減することも可能になる。
【0043】
上記酵素配合顆粒5は、滴下法で製造することで真球度が高く且つ粒度が揃ったシームレスカプセル状のシームレス核1を中心核として、その周りを酵素含有コーティング被膜4で被覆することで、それ自体を、真球度が高く且つ粒度が揃った顆粒とすることができる。そのため、ハードカプセル6への充填する際の充填量を正確に且つ容易にコントロールすることができ、又、微生物由来、植物由来、動物由来のそれぞれの酵素を個別に含む酵素配合顆粒5を、2種類又は3種類混合して上記ハードカプセル6に充填、封入させる場合であっても、上記種類の異なる酵素を個別に含む2種類又は3種類の酵素配合顆粒5を、所定の混合比となるように混合量を正確にコントロールすることができる。
【0044】
更に又、上記微生物由来、植物由来、動物由来のそれぞれの酵素を個別に含む酵素配合顆粒5を、赤色、緑色、黄色に色分けするようにしておけば、ハードカプセル6を通して観察される上記酵素配合顆粒5の色から、消費者が、本発明の酵素配合食品8に配合されてる酵素が、微生物由来、植物由来、動物由来のいずれであるかを、容易に判断することが可能になる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、酵素含有コーティング被膜4に配合する酵素は、食品に配合が可能で且つ腸内に到達させることが望まれる酵素であれば、上記実施の形態で例示した以外のいかなる酵素を用いるようにしてもよい。
【0046】
酵素配合顆粒を着色する場合の色は、上記実施の形態で例示した以外のいかなる色に設定してもよく、該着色に用いるための色素を含んだ添加物としては、食品に配合が可能であって且つ該酵素配合顆粒5に配合される酵素等の他の成分や、シームレス核1のゼラチン被膜3と反応する虞のないものであれば、いかなる色素を含んだ添加物を用いるようにしてもよい。
【0047】
脂溶性有効成分含有油液に配合する脂溶性有効成分としては、食品に配合可能で且つ摂取が望まれる脂溶性有効成分であれば、CoQ10以外のいかなる脂溶性有効成分を用いるようにしてもよい。又、CoQ10含有油液2を製造するためにCoQ10を溶解させる食用油としては、MCT以外のいかなる食用油を使用するようにしてもよい。
【0048】
シームレス核1の製造は、CoQ10含有油液2を均一なゼラチン被膜3に内包させることができれば、上記実施の形態で説明した以外の手法を採用してもよい。又、酵素配合顆粒5の製造は、上記シームレス核1の表面に、所要の厚みで酵素含有コーティング被膜4を形成させることができれば、上記実施の形態で説明した以外の手法を採用してもよい。その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の酵素配合食品の実施の一形態を示すもので、(イ)はハードカプセルの中心軸に沿って切断した状態を示す概略図、(ロ)は酵素配合顆粒の一粒を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 シームレス核
2 CoQ10含有油液(脂溶性物質配合油液)
3 ゼラチン被膜
4 酵素含有コーティング被膜
5 酵素配合顆粒
6 ハードカプセル
7 ツェイン(胃難溶性で且つ腸溶性物質)
8 酵素配合食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂溶性有効成分を食用油に溶解してなる脂溶性有効成分含有油液を、ゼラチン被膜に内包させてシームレス核を形成し、該シームレス核の表面を、所要の酵素を含む酵素含有コーティング被膜で覆ってなる構成を有することを特徴とする腸で機能させる酵素配合顆粒。
【請求項2】
脂溶性有効成分を食用油に溶解してなる脂溶性有効成分含有油液を、ゼラチン被膜に内包させてシームレス核を形成し、該シームレス核の表面を、所要の酵素を含む酵素含有コーティング被膜で覆って酵素配合顆粒を形成し、該酵素配合顆粒を、ハードカプセルに封入して、該ハードカプセルの表面を、胃難溶性で且つ腸溶性物質で全面に亘りコーティングしてなる構成を有することを特徴とする酵素配合食品。
【請求項3】
酵素配合顆粒のシームレス核を、脂溶性有効成分含有油液と、ゼラチン被膜形成用のゼラチン溶液を原料としてシームレスなカプセル状とし、且つ、上記シームレス核の表面に、所要の酵素と賦形剤を含んだ粉末原料を、所要のコーティング液を介し所要厚みで積層させて酵素含有コーティング被膜を形成して酵素配合顆粒とした請求項2記載の酵素配合食品。
【請求項4】
酵素含有コーティング被膜に、微生物由来、植物由来、動物由来の酵素と、上記微生物由来、植物由来、動物由来の酵素ごとに異なる色の色素とを個別に配合してなる3種の酵素配合顆粒を形成して、該3種の酵素配合顆粒を、1種ごと又は複数種を混合してハードカプセルに封入するようにした請求項2又は3記載の酵素配合食品。

【図1】
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【公開番号】特開2008−109910(P2008−109910A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296290(P2006−296290)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(599027518)
【出願人】(599027529)
【出願人】(503418623)
【Fターム(参考)】