説明

膜−電極アッセンブリー、その製造方法および膜−電極アッセンブリーにおいて組み合わせるべき膜の製造方法

【解決手段】 膜−電極アッセンブリーで組み合わせるべき膜の製造方法において、イオン伝導性膜中の溶剤含有量を制御しながら、イオン伝導性膜を少なくとも1種類の溶剤を含む液中でまたは少なくとも1種類の溶剤の蒸気相を含む雰囲気で膨潤させる段階を含むことを特徴とする、上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
膜−電極アッセンブリーの製造方法および膜−電極アッセンブリーにおいて組み合わせるべき膜の製造方法に関する。更に本発明は膜−電極アッセンブリーにも関する。
【背景技術】
【0002】
最適化したインターフェースを有する膜−電極アッセンブリー(MEAs)を製造する速やかで簡単な方法が望まれている。Huslage等によって論じられている通り(J.Huslage、T.Rager, B.SchnyderおよびA. Tsukadaの“Radiation-grafted membrane/electrode assemblies with improved interface”, Electrochim. Acta 48 (2002) 247-254)、放射線照射でグラフト反応し架橋された膜を有するかゝる最適化インターフェースの製法はこの分野では長期に亙る定常的な問題を有して来た。特にそれらは、電気化学的インターフェース形成に欠陥があり、燃料電池性能が不安定であり、安定状態の性能が達成されるまでの作動時間が長く、そして延長された燃料電池試験の後では膜と電極との間の接着が不足しているということが判っている。それ故に、膜−電極アッセンブリーの電気化学的インターフェースの最適化が燃料電池用途で高い性能を得る時に非常に重要であることは明らかである。例えば、このインターフェースの最適化が、同じ燃料電池成分、例えば膜および電極等を用いて、より良好な電池極性性能およびより高い出力密度を得ることを可能とする。Huslage等によって論じられている通り、低いグラフト水準の放射線照射でグラフト反応した架橋膜を含有するMEAsにおいて最適な電気化学的インターフェースを得ることは特に困難である。このインターフェースの問題は、Huslage等およびその後のKuhn等(H.Kuhn, L.Gubler, T.J.Schmidt, G.G.Schmidt, H.-P. Brack, K.Simbek, T. Rager および F.Geiger、“MEA Based on Radiation-Grafted PSI-Membrane: Durability and Degradation Mechanisms”, Proceedings of the 2nd European PEFC Form, 2-6 July, 2003, ISBN 3-905592-13-4, 69-77頁)の両方がかゝる膜が燃料電池中で固定状態条件で数千時間の間燃料電池の出力に損失を見ることなくまたは膜の劣化または電池の性質または性能の低下を観察することなく運転できることを実証しているので、解決するのが非常に重要である。
【0003】
放射線照射でグラフト反応したかゝる膜の代表的な製法は、Huslage等によって上述の刊行物においてまたは例えばヨーロッパ特許第0,667,983号明細書(B1)において説明されている。しばしばこれらはFEPベースポリマーの25μmの厚さのフィルムから、約10容量%の架橋剤DVB含有のモノマー溶液を用いて製造される。これらの膜は一般に約18〜20質量%のグラフト水準を有しそしてその分光分析特性およびグラフト成分の異性体比がBrack等によって報告されている(H.-P. Brack, D.Fischer, M.Slaski, G.Peterおよび Guenther G. Scherer, “Crosslinked Radiation-Grafted Membranes, Proceedings of the 2ndEuropean PEFC Forum, 2-6 July, 2003, ISBN 3-905592-13-4, 127-136頁)。
【0004】
Huslage等は、膜の機械的性質がグラフト水準をこのようにむしろ低い値に限定することによって改善されることおよび低いグラフト水準での導電性の相応する損失が膜/電極-インターフェースにおける改善によって相殺できることを報告している。
【0005】
Huslage等による刊行物によれば、“膜と市販のガス拡散電極との間に改善されたインターフェースを有するMEAs”は膜をNafion(R)-コーティングしそしてホットプレス成形することによって得られる。
【0006】
残念ながらこれらの進歩は旨く再現できなかった。膜をNafion(R)-コーティングしそしてホットプレス成形することによって放射線照射でグラフトした膜から最適化したMEAsを製造することによるHuslage等の教えに従う加工は、(1)Nafion(R)-コーティングおよび(2)ホットプレス成形のこれらの二つの段階だけでは優れた電気化学的性質、例えば低い電気抵抗または電荷移動抵抗を有するかまたは燃料電池においての性能特性を有するMEAsを得ることを可能としないという全く驚くべき結果を導き出した。
【0007】
従来技術の研究において、Supramanium Srinivasanによって発刊された刊行物は、約4mg・cm−2から0.4mg・cm−2またはそれ以下にプラチナ担持量を10分の1の減少量にした時に得られる多大な進展を強調している。例えばS. SrinivasanおよびP. Costamagaはこの進展を“Quantum jumps in the PEMFC science and technology from the 1960s to the year 2000 Part I. Fundamental scientific aspects”、J. Power Sources, 102 (2001) 242-252頁において再検討している。彼はこの進展が(i)電気触媒のBET表面エネルギーの増加および(ii)電極中の三次元的電気化学的活性領域の、プロトン導体Nafion(R)−膜で含浸処理することによる拡張に起因すると考えている。この同じ刊行物において、S. Srinivasan等は、電極が“所望の条件の温度(130〜140℃)、圧力(2000psi)および時間(約1分)のもとで”膜にホットプレス成形されることを記述している。しかし残念ながらS. Srinivasan等はホットプレス成形の前の膜の予備処理または予備コンデショニング処理について何も記述していない。
【0008】
更にホットプレス成形をガラス転移温度に近付けるべきであるという教示が曖昧である。もしそれがホットプレス成形の間の膜形成でのガラス転移温度または予備処理された膜の何らかの別のタイプのそれを意味するのか明確でない。要するに“近付ける”という言葉が定義されておらず、一つの摂氏温度または多数の摂氏温度を意味し得る。ガラス転移温度以下、ガラス転移温度またはガラス転移温度より上でのホットプレスの間に相違または優位さが存在するのかどうか示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故に本発明の課題は、膜−電極アッセンブリーを製造するための方法およびそれに用いるための膜を製造する方法および接合、寿命および性能特性に関して向上をもたらす膜−電極アッセンブリーを提供することにある。
【0010】
一般的に言えば、本発明のコンセプトは、最適化されたMEAインターフェースおよび優れた電気化学的性質および燃料電池性能をもたらすのにホットプレス加工の間の膜の水含有量が重要であることが判ったので、このパラメータを制御することよりなる。本発明およびそれの色々な態様および変法は後述の通りであり、かつ添付の特許請求の範囲から知ることができる。
【0011】
それ故に膨潤した状態で比較的に高い表面エネルギーまたはこの材料に対する水との低い接触角に特徴のあるイオン伝導性膜を、高圧および/または高温の条件のもとで二つの電極と一緒に接合する。イオン伝導性膜の膨潤状態は、好都合なことに1種類または複数種の液状溶剤または1種類または複数種の溶剤の蒸気相を含む大気に曝すことによって変更される。膜膨潤法は特に限定されていない。かゝる溶剤の限定されない例には水、エチレングリコール、プロピルアミン、プロパノール、プロピオン酸およびプロピオンアルデヒド、アセトン、アセトニトリル、N−ブチルグリコレート、N,N’−ジ−n−ブチルアセトアミド、ジエトキシエタン、ジエチルカルボナート、1,3−ジオキロラン、ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルブチルアミド、ジメチルカルボナート、N,N’−ジメチルデカンアミド、ジメトキシエタン、ジメチルエタンスルホンアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルフィット、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、酢酸エチル、2−エトキシエチルアセテート、エチレンカルボナート(1,3−ジオキソラン−2−オン)、エチルグリコレート、CHOC、CFCFCFOCF(CF)CFOCHFCF、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)−1,3−ジオキソラン、メタノール、蟻酸メチル、メチルグリコレート、メチル第三ブチルエーテル、N−ブチルアミン、N−メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレンカルボナート、ポリ(エチレングリコール)、4−(1−プロペニロキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、スルホラン、テトラブチルアンモニウム、トリエチルホスファート、テトラヒドロフラン、および3−メチルシドノンが含まれる。一つの実施態様においてはイオン交換膜は約4または5時間、約80℃の温度で脱イオン水で処理する。
【0012】
本発明で使用される膜の種類は特に限定されない。興味の持てる運転温度でプロトンを移送する能力のあるあらゆる有機系または無機系または有機/無機系または複合膜が適している。有機成分は自然状態でポリマーでもよい。膜の組成および化学的構造も限定されない。膜は一般に膜に対する所望の性質に従って、例えば伝導性、寸法安定性、ガス分離性、メタノール不浸透性または機械的性質に従って選択する。イオノマー膜の幾種類かの限定されない膜には弗素化モノマーのコポリマー、例えばテトラフルオロエチレンとイオン伝導性または酸性モノマーまたはそれらの前駆体とのコポリマーがある。かゝるポリマーの限定されない例にはパーフルオロスルホン酸(PFSA)、ポリマーのNafion(R)膜(製造元:DuPont)または旭硝子社(Flemion膜)、Asahi ChemicalまたはDowの関連した材料がある。かゝるイオン性膜材料は複合体の状態で使用してもよく、例えばGore社のPRIMEA(R)MEAで見られる複合体ミクロ強化膜の場合の様なものがある。膜の組成、形状および状態は特に限定されない。かゝる過フッ化膜はしばしば掃除されそして強酸性溶液で短時間処理することによってMEA組立の前に十分に酸性状態にされる。一つの実施態様においては、該膜は膨潤する前に1時間の間、約35重量%濃度硝酸溶液で処理する。酸処理の後に膜を水で、濯いだ水が中性になるまで濯ぐことによって膜から酸を除く。
【0013】
幾つかの場合にMEAおよび燃料電池の電気化学的性能は、三次元的電気化学的活性領域の容積を拡張するかまたはMEA製造において膜の表面特性または結合特性を改善するために、他のイオン伝導性ポリマー相を膜に含浸させることによって向上させることができる。この含浸処理は従来技術で知られた手段、例えばイオン伝導性ポリマー、例えばNafion(R)ポリマーまたは他の過弗素化、特に弗素かイオノマーまたは非弗素化イオノマーを膜に噴霧するかまたはそれらに膜を浸漬することによって実施することができる。含浸処理法が完了した後に、残留溶剤を除きそしてイオノマーを不安定な固体状態に移行させるために、電極を高温で、特にNafion(R)ポリマーの場合には100〜140℃で乾燥してもよい。
【0014】
一つの実施態様においては、膜は放射線照射でグラフト反応した膜である。放射線照射でグラフト反応した膜の組成および構造は特に限定されない。一般にグラフト水準は膜材料の元の量を規準として10〜40モル%の範囲内にある。例えば放射線照射でグラフト反応した膜は、フルオロポリマー、例えばPTFE、およびそれのFEP、ETFEまたはPVDF含有コポリマー、またはポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびそれらのコポリマーを含む種々のベースポリマーフィルムから製造できる。膜の製造に使用される放射線の種類は特に限定されないが、紫外線またはX−線の様な電磁放射線または電子線のような粒子放射線がある。幾つかの場合には、ベースポリマーの分解を最小限にするために減圧または不活性の放射線照射雰囲気が選択される。フィルムは放射線照射工程だけで同時にグラフトされうるかまたは後の照射段階でグラフト反応を行ってもよい。
【0015】
グラフト反応を後続の段階で行う場合には、反応性の場所が不安定であるならば、放射線照射された基体を低温でおよび/または不活性雰囲気で保存してもよい。グラフト反応のためのモノマーの物理的状態は基体または液体でもよく、モノマーは純粋な状態でもまたは溶剤または不活性物質で希釈されていてもおよび/または1種類以上の追加モノマーとの混合物としてでもよい。放射線活性のあらゆるモノマーとしては、ビニル系、スチレン系またはアクリル系モノマーを含めて使用できる。モノマーは膜に望まれる性質に従って選択できる。例えば膜がイオンを伝導することが所望の場合には、酸性、塩基性、塩性または両官能性を有するモノマーまたはそれらの前駆体を選択してもよい。酸性、塩基性、塩性または両官能性を有するモノマーの限定されていない例にはビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、3−[(2−アクリルアミド−2−メチルプロピル)ジメチルアモニオ]プロパンスルホナート、スチレンスルホン酸ナトリウム、N−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジンが含まれる。酸性、塩基性および両性基を導入するための前駆体として使用できるモノマーも使用してもよい。限定されていない例にはスチレン系モノマー、例えばスチレン、α,α,β−トリフルオロスチレン、α−フルオロスチレンおよびビニルベンジルクロライドおよびそれらの誘導体が包含される。従来技術において公知の架橋性モノマー、例えばジビニルベンゼンまたはビス(ビニルフェニル)エタンは膨潤性、ガスまたは液体のクロスオーバ特性、またはかゝる膜の安定性および耐久性を変更するのに使用することができる。グラフト反応用溶液中のかゝる架橋性モノマーの含有量は数%の範囲内にあるべきであり、25%を超えるべきでなく、好ましくは20%を超えるべきでない。この溶液はスチレンを添加して100%とされていてもよい。グラフト反応したポリスチレン鎖は従来技術から公知の方法を用いて後で誘導して、酸性、塩基性または両性機能を膜に与えてもよい。例えばアニオン交換性基をアミン化に続いて水酸化物水溶液でイオン交換することによって導入してもよく、カチオン交換性基は強酸、例えばハロゲン化溶剤中に溶解したクロロスルホン酸または硫酸または三酸化硫黄で処理することによって導入してもよい。かゝる膜の十分な酸性状態は一般に最初に塩基性溶液で処理し、次いで酸中で再生しそして最後に水で洗浄することによって得られる。一つの実施態様においては新鮮なスルホン化膜を最初に少なくとも約12時間、0.1MのNaOHで処理し、次いで約5時間、2MのHSOで処理する。
【0016】
電極の形状、状態、構造および組成は特に限定されない。一般にこれらは電子伝導性がありそして追加的にその上または中に存在する触媒を有していてもよい。これらはしばしばそれの構造の少なくともいくらかの領域をガス状または液状反応剤が移行または拡散することを許容する能力を有している。電極材料の限定されていない例にはカーボンクロス、カーボンペーパー、またはカーボンフェルトが包含される。燃料電池電極の場合には、電気化学的酸化反応または還元反応に触媒作用するために追加的な触媒を使用してもよい。触媒の限定されない例にはカーボンに担持したプラチナ、白金黒または他の金属、例えばルテニウムまたは金属酸化物との白金合金、およびカーボンブラックと一緒になっているラネーニッケルが包含される。これらの合金の幾種類かを、有利にも電極表面の毒性をCOおよび他の種で低減しそしてメタノール、他のアルコール種または炭化水素の酸化反応で触媒作用させるために適用してもよい。電極、MEAおよび燃料電池の電気化学的性能は、電極にイオン伝導性ポリマー相を含浸させることによって著しく向上させることができる。この含浸処理は従来技術で公知の手段、例えばイオン伝導性ポリマー、例えばNafion(R)ポリマーまたは他の過弗素化された、特に弗素化されたまたは弗素化されていないイオノマーの溶液を噴霧し、該溶液で浸漬または電極の表面を濡らすことによって実施することができる。含浸処理工程が完了した後に、残留溶剤を除去しそしてイオノマーを不安定な固体の状態に移すために電極を高温、Nafion(R)ポリマーの場合には一般に100〜140℃で乾燥する。
【0017】
本発明に従う膜−電極アッセンブリーの製法は以下の通りに説明することができる:イオン伝導性膜を水の様な溶剤中で予備膨潤させる。膜を、MEA組み合わせ工程の間、増加した表面エネルギーおよびより親水性の表面に特徴のある膨潤し可塑性化した状態のままにするように注意する。膜の機械的および表面特性への膨潤の作用は溶剤の選択によって容易に変更することができる。
【0018】
例えば極性のおよび水素結合性溶剤はより良好に膨潤させそしてそれ故に極性のおよび水素結合性官能基、例えば酸性、塩基性または両性の基を含有する膜の機械的性質および表面特性に更に多大な影響を及ぼす。膜の膨潤の程度は、選択された溶剤の揮発性、溶剤への暴露時間およびその濃度、溶剤暴露の手段、膜が膨潤後に曝される雰囲気およびMEAのホットプレス加工の前のこの暴露時間を含めた従来技術で知られる方法によって容易に制御できる。一つの実施態様においては触媒のコーティングはMEA組立の前に噴霧、浸漬、スパッタリングまたは従来技術で知られた他の方法によって膜に行ってもよい。
【0019】
一般に膨潤状態の膜を次いで二つの電極と各側位で密接に接触する様に設置する。次にMEAスイッチを高圧高温で一定期間の間にホットプレス加工する。正確なホットプレス加工条件は特に限定されないが、最適な条件は膜および電極の性質、例えば堅さ、表面エネルギー、および機械的および化学的安定性にある程度左右される。温度、圧力および時間について条件の色々な組合せができる。例えば比較的高い温度を使用することが一般に、ある程度短いホットプレス加工時間または低い圧力を使用することを可能とする。別の場合には、比較的に高い圧力を用いることがある程度低い温度および短いホットプレス加工時間を使用することを可能とする。更に別の場合には、比較的に長いプレス加工時間を使用することが比較的に低い温度および圧力を使用することを可能とする。一般に約60〜約150℃のホットプレス加工温度を使用してもよい。一つの実施態様においては温度が約110℃である。一般に高過ぎる温度を用いると、膜の乾燥または特に酸素の存在下では分解さえもたらしうるので望ましくない。低過ぎる温度はMEA結合を弱くする。約2〜30MPaの一般的なホットプレス加工圧が適用できる。一つの実施態様においては適用する圧力は約5〜約18MPaである。再び、高過ぎる圧力は分解をもたらし、そして低過ぎる圧力は弱過ぎる結合をもたらし得る。ホットプレス加工処理の期間は約15秒〜約10分の間で変動し得る。一つの実施態様においては、期間は約3分である。
【0020】
これらのMEAsの応用は特に限定されない。これらのMEAsは種々の電気化学的プロセス、電池およびデバイス、例えば燃料電池、電解電池および蓄電池において使用できる。かゝる電気化学的電池は個別の電池においてまたは直列にまたは並列に連結された数個の電池のアッセンブリーにおいて使用することができる。燃料電池はガス状または液状で種々の燃料、例えば水素、メタノールを使用してまたは純粋な状態でも他の成分との混合状態でも出力することができる。燃料電池はガス状のまたは液状の種々の酸化剤、例えば酸素または空気を純粋の状態または他の成分との混合状態で使用して運転できる。
【0021】
本発明は第一に燃料電池群および電気化学の実験室の材料II群(これら両方は Paul Scherrer Institut, Villigen,スイス国にある)の協力で実施することを減少させた。これらは米国、オハイオ州、CirclevilleのDuPont社から購入した25μmの厚さのFEPフィルム(EFP 100A)から製造された。膜の厚さは5〜250μm、好ましくは20〜200μmの範囲内にあるべきであることを指摘する。この膜はHuslage等によって説明される方法に従って製造されそしてFEP−25膜とここでは記載する。3kGyの放射線照射および60℃で3.5時間の反応時間を使用した。グラフト反応用溶液はスチレンを基準として10容量%の架橋剤DVBを含有する。膜の酸性状態は脱イオン水浴中で80℃で約5時間膨潤させた。得られる膜のグラフト水準は18〜22質量%でありそしてイオン交換能は1.25〜1.35mEq/gである。
【0022】
比較の目的のためにNafion(R)N−112膜をDuPont社から購入した。この膜材料を最初に濃厚HNO(65%濃度)を脱イオン水に1:1(容量/容量)で溶解した溶液中で90℃で1時間処理した。次にNafion(R)膜を、浴水が中性になるまで脱イオン水の数個の浴中で約95℃で数時間に亙って膨潤させることによって繰返処理した。この膜は約0.9mEq/gのイオン交換能および約20質量%の水膨潤性を有している。
【0023】
全ての膨潤した膜材料を、ホットプレス加工によってMEAsの製造で加工されるまで脱イオン水中に保存する。
【0024】
実施例中の電極は、カーボンクロスをベースとしそして0.6mg・cm−2のPt担持量のE−TEK社のELATタイプの電極であった。これらの電極は、0.5質量%のNafion溶液を噴霧し、次いで減圧下に約2時間130℃で乾燥することによってNafion被覆されている。適用されたNafionの量は約0.6〜0.7mg/cmである。
【0025】
Nafionを含浸した膜を減圧炉中で120℃で1時間乾燥した。この膜を次いで0.5重量%濃度のNafion(R)イオノマー溶液に浸漬した。1時間後にその膜を取り出し、表面の溶液を静かに振り落としそしてこのサンプルを室温で約1時間、燻蒸用棚で乾燥状態にした。次いでNafion(R)イオノマー被覆物を、この膜を減圧炉中で120℃で2時間架橋させることによって不溶性にした。次に湿った状態で電極に結合すべきこの膜を、サンプルを室温で水に浸漬することによって再膨潤させた。
【0026】
放射線照射でグラフト反応した膜を可溶性Nafion(R)イオノマーで含浸処理するための別の工程が、処理後に膜をあまり脆弱でなくさせる。このより穏やかな加工において膜を減圧炉中で60℃で少なくとも1時間、好ましくは数時間乾燥する。次にこの膜を0.5重量%のNafion(R)イオノマー溶液で夜通し含浸処理する。膜を取り出しそして過剰の溶液を静かに振り落とす。サンプルを室温で約2時間、燻蒸用棚で乾燥状態にした。次いでこの膜を減圧炉中で60℃で2時間架橋させる。
【0027】
FEP-25放射線照射でグラフト反応した膜をベースとする4種類のMEAsを性能について評価しそしてNafion(R)112よりなる標準のMEAに対して比較した。2種類のサンプルは比較用として使用した(Nafion(R)イオノマーで含浸処理されてないもの)。これらを膜製造後に水中に保存した。
【実施例1】
【0028】
実験V150において19.9%のグラフト水準のFEP−25膜を使用した。この膜は、ホットプレス加工前にNafion(R)イオノマーで含浸処理しなかった。この膜を、通常のホットプレス加工条件(120℃/18MPa/3分)を用いて膨潤した状態でホットプレス加工した(FEP−ホットプレス加工(湿潤))。このMEAを漏れについてチェックしそして次に後述の通りの水素/酸素−燃料電池試験標準で試験した。
【0029】
[比較例1]
実験V203において19.5%のグラフト水準のFEP−25膜を使用した。この膜も、ホットプレス加工前にNafion(R)イオノマーで含浸処理しなかった。この膜は、ホットプレス加工(FEP−hp(湿潤))前に60℃で1時間炉中で乾燥した(減圧せず)。他の全てのMEA製造条件は上述と同様であった。
【実施例2】
【0030】
実験V213において19.0%のグラフト水準のFEP−25膜を使用した。この膜は、上述の節に記載したようにNafion(R)イオノマーで含浸処理した。このサンプルは、室温で夜通し水中で再膨潤した湿った状態でホットプレス加工した(FEP−ni−hp(湿潤))。膜から水を直接的に除去しそして表面水をティシュで吸い取ることによって除いた。次いでこの膜を二つの電極と接触状態で設置した。次いでこのMEAサンドイッチ状物を速やかにホットプレス装置中に設置しそして、標準ホットプレス加工条件の使用下ではクラッキンが発生しやすいことが判ったので、穏やかな条件(110℃/5MPa/3分)で積層した。この穏やかな接合条件は積層物の品質の明らかな低下をもたらさなかった。
【0031】
[比較例2]
実験V211において、MEAを17.9%のグラフト水準のFEP−25膜から製造した。この膜は、Nafion(R)イオノマーで含浸処理しそして、Nafion被覆物を120℃で架橋させた後に、架橋段階の炉からサンプルを上述の通り取り出した後にこの比較例の膜を乾燥状態で接合したことを除いて、MEAを実施例2の方法(V213)に従って製造した。
【0032】
[比較例3]
実験V208において、MEAをNafion(R)112から湿った状態で製造した(N112−hp(湿潤))。
【0033】
製造したMEAsを表1に総括掲載する:
表1:0.6mgpt・cm−2を有するETEK電極を用い、製造した膜をMEAsとする。
【0034】
【表1】

【0035】
これらのMEAsを燃料電池群の標準試験でPSIで試験した。燃料電池試験は30cmの活性領域を有する単一電池で実施した。これらの電池を純粋のHおよびOを用いて、電池電流によって必要とされる量の1.5倍のガス流速を用いて運転した。電池温度は80℃であった。出口での反応ガスの圧力は1barであった。水素を80℃の温度で泡だてながら水に通して湿らせ、酸素は湿らせることなく電池に供給した。開始の間、約5Wの出力が得られるまで電池を0.05Ωの一定の内部抵抗で運転した。次いで運転モードに切り換えて、14.6A(500mA・cm−2)の一定電流とした。
【0036】
MEAsのその場での特徴:
MEAsを始動後に状態調整しそして安定な電力を得たら、MEAsの性質は極性実験および電気化学的インピーダンス分光法によってその場で示される。種々のMEAsのための一般的な電池極性曲線を図1に示す。極性実験のために電池電流密度は開放回路電圧から最大電流密度に段階的に変化する。各点での平衡時間は20秒であった。電気化学的インピーダンス分光法は Zahner Elektrik社(Kronach, ドイツ国)のインピーダンス-キットを用いて500mA・cm−2の一定電池電流密度で実施した。摂動周波数は一般に100mHzから25kHzに変動した。実施例および比較例に記載したMEAsの特徴についての結果を図2に示す。電気化学的インピーダンス分光法によってその場で測定されたΩおよび電荷移動抵抗を表2に総括掲載する。
【0037】
結果の総括:
図1は実施例および比較例のMEAsを含有する燃料電池の一般的な電池極性曲線を示している。放射線照射でグラフト反応した膜をベースとするMEAs含有電池の極性は、膜が膨潤状態にある間にMEAがホットプレス加工された場合に著しく改善される。この改善は、膜がホットプレス加工前にNafion(R)イオノマーで含浸処理されているかまたはされていないかが重要である(実施例2と比較例2との比較、および実施例1と比較例1との比較)。
【0038】
【表2】

【0039】
表1:電気化学的インピーダンス分光法によってその場で測定した実施例および比較例のMEA抵抗の総括
【0040】
図1は、実施例および比較例に記載した種々のMEAsを有する燃料電池の代表的な電池極性曲線を示している。測定はMEAsを始動後に状態調整しそして適当な出力を得た後(一般に約100〜150時間)に行った。一般に約100〜150時間。V150(EFP25−hp(湿潤))は実際には約2,350時間後に測定したが、このMEAで更に早期に測定したのに対して性能において減少しなかった。
【0041】
図2は、実施例および比較例に記載した種々のMEAsを有する燃料電池の代表的な電池極性曲線を示している。測定はMEAsを始動後に状態調整しそして適当な出力を得た後(一般に約100〜150時間)に行った。V150(EFP25−hp(湿潤))は実際には約2,350時間後に測定したが、このMEAで更に早期に測定したのに対して性能においてと減少しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例および比較例に記載した種々のMEAsを有する燃料電池の代表的な電池極性曲線を示す。
【図2】実施例および比較例に記載した種々のMEAsを有する燃料電池の代表的な電池極性曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜−電極アッセンブリーで組み合わせるべき膜の製造方法において、イオン伝導性膜中の溶剤含有量を制御しながら、イオン伝導性膜を少なくとも1種類の溶剤を含む液中でまたは少なくとも1種類の溶剤の蒸気相を含む雰囲気で膨潤させる段階を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
イオン伝導性膜が放射線照射でグラフト反応した膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グラフト水準が5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
グラフト反応用溶液が架橋剤モノマーを含有し、その架橋剤モノマーの含有量がスチレンを規準として5〜25%の範囲内、好ましくは20%より少ないことを特徴とする、請求項2または3に記載の上記方法。
【請求項5】
膨潤段階の前に
(a)イオン伝導性膜を強酸溶液中で10分〜120分の範囲に亙って処理し;そして
(b)そうして処理されたイオン伝導性膜を、好ましくは濯ぎ水が中性になるまで濯ぐ
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
イオン伝導性膜を、好ましくは含浸させて、イオン導電性ポリマー相で被覆する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
イオン伝導性膜、即ち上述の請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法に従って製造されたイオン伝導性膜を使用して膜−電極アッセンブリーを製造する方法において、
a) 予備膨潤した状態でイオン伝導性膜を提供し;
b) 該イオン伝導性膜をその両側で電極層で被覆して、サンドウイッチ状物を形成し;そして
c) このサンドイッチ状物をホットプレス成形して、サンドイッチ状物の上述の各層のイオン伝導性接合物を形成することを特徴する、上記膜−電極アッセンブリーの製造方法。
【請求項8】
電極層とイオン伝導性膜との間で且つ該イオン導電性膜の両側に触媒活性層を析出させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
電極層としてカーボンクロス、カーボンペーパー、またはカーボンフェルトよりなる群の一つを使用し、好ましくは例えば極性のおよび水素結合性溶剤の如き親水性液の状態で適用する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
ホットプレス加工条件を、以下の条件
a)70〜150℃の範囲内の、好ましくは90〜120℃の範囲内の温度;
b)2〜30MPa、好ましくは5〜18MPaの範囲内の圧力;および
c)15〜400秒、好ましくは60〜240秒の範囲内のホットプレス加工処理の期間
の少なくとも1つを選択する、項7〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
触媒活性層が白金、ルテニウム、ロジウム、レニウム、ニッケル、希土類および遷移金属およびそれらの化合物よりなる群から選択される少なくとも1種類を含有する、請求項7〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一つに従って製造された膜−電極アッセンブリーにおいて、ホットプレス加工したサンドイッチ状物が電極層、イオン伝導性膜および電極層よりなり、その際にイオン伝導性膜がホットプレス加工の以前に予備膨潤された状態で使用されることを特徴とする、上記膜−電極アッセンブリー。
【請求項13】
イオン伝導性膜の厚さが5〜250μm、好ましくは20〜200μmの範囲内にある、請求項12に記載の膜−電極アッセンブリー。

【公表番号】特表2007−507067(P2007−507067A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527309(P2006−527309)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010252
【国際公開番号】WO2005/031906
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(501494414)パウル・シェラー・インスティトゥート (19)
【Fターム(参考)】