説明

膜を利用した色キャラクタライゼーション方法及びシステム

【課題】プリンタ、ディスプレイ等のカラー画像発生装置に関する特性調整に適した方法及びシステムを提供する。
【解決手段】面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を含む順方向色変換手段(10)を更新するため、アダプテーション用色入力値,計測値データセットに基づきパラメトリック色変換手段を適合的に改変し(20,26)、その結果と非パラメトリック色変換手段を用い第2色空間準拠の色予測値データセットを生成し(32)、その結果とアダプテーション用色入力値データセットに基づき第2色空間準拠の色予測誤差値データセットを生成し(34)、その結果に基づき膜利用順方向色変換手段を生成し(36)、非パラメトリック色変換手段及び改変版のパラメトリック色変換手段を用い順方向色変換手段を更新する(40)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラー画像発生装置、例えば画像やテキストを印刷又は表示するシステムにおける色キャラクタライゼーションに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ディスプレイ等のカラー画像発生装置(color reproduction device)では、その装置内で使用されるCMY、CMYK等の内部色空間(internal color space)から印刷物、画面等の上に現れるLa**色スペクトラム等の表出色空間(perceived print-out color space)へのマッピング、即ち順方向色変換(forward transform)が行われる。従って、その順方向色変換のキャラクタライゼーション(特性設定)は、色再現性をどのカラー画像発生装置でも同様にし、また個々のカラー画像発生装置における色再現性を維持する上で重要なことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5305119号明細書
【特許文献2】米国特許第5528386号明細書
【特許文献3】米国特許第5612902号明細書
【特許文献4】米国特許第5818960号明細書
【特許文献5】米国特許第6809837号明細書(B1)
【特許文献6】米国特許第2008/0239344号明細書(A1)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】GAURAV SHARMA, Digital Color Imaging Handbook, CRC Press.
【非特許文献2】SWATI BANDYOPADHYAY, TAPAN PAUL, TAPASI ROYCHOWDHURY AND SIVAJI BANDYOPADHYAY, "A New Model of Printer Characterization", IS&T's NIP20: 2004 International Conference on Digital Printing Technologies.
【非特許文献3】RAJA BALASUBRAMANIAN, "The Use of Spectral Regression in Modeling Halftone Color Printers, Journal of Electric Imaging, April 1999, Vol.8(2).
【非特許文献4】RAJA BALASUBRAMANIAN, "Colorimetric Modeling of Binary Color Printers", pp.1-4.
【非特許文献5】JON YNGVE HARDEBERG AND FRANCIS SCHMITT, "Color Printer Characterization Using a Computational Geometry Approach".
【非特許文献6】RAJA BALASUBRAMANIAN, "A Spectral Neugebauer Model for Dot-On-Dot Printers", pp.1-11.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際、内部色空間と表出色空間の対応関係は、カラー画像発生装置毎に違うはずであり、また同じカラー画像発生装置でも経時的に変化してくるはずである。温度、湿度、マーキング材の種類(インク等)、印刷媒体の種類(用紙の種類や厚み)、部品損耗の度合い、カラー画像装置製造時公差等といった物理的条件の影響を受けるためである。従って、どの製品系列でも同じ色再現性が得られるよう、また個々の製品における色再現性が経時的に保たれるよう、順方向色変換のキャラクタライゼーションを実行できるようにすることや、それを実行するためのカラー画像発生装置特性調整用制御アルゴリズムを提供することが、いま求められているといえよう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに、本発明の一実施形態に係るカラー画像発生装置キャラクタライゼーション方法及びシステムでは、スムーズな面に係る面部分順方向パラメトリック色変換手段及びより細かな部分に係る残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を含む順方向色変換手段を、アダプテーション用色入力値データセット及びアダプテーション用色計測値データセットに基づき面部分順方向パラメトリック色変換手段を適合的に改変すること、並びにアダプテーション用色入力値データセットに基づき残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を適合的に改変することによって更新する。これは、カラー画像発生装置の色特性に、印刷条件や表示条件の変化につれ経時的にドリフトするスムーズ面と、それ以外の概ね安定な部分(残余部分)とがあることに、鑑みたものである。それらのうちスムーズ面のキャラクタライゼーションは面部分順方向パラメトリック色変換手段、また残余部分のそれは残余部分順方向非パラメトリック色変換手段が実行する。ただ、面部分順方向パラメトリック色変換手段による色変換は装置色域全体に亘る変換であるため、面の局所変化、特にその面を表す多項式の低次(有効)成分に対応する変化を正確に記述できないことがある。即ち、色域の部位毎にドリフトの仕方が違うと、面を記述する多項式が正確でなくなってくる。本実施形態によれば、大域不均質且つ局所均質な形態でドリフトするよう局所的にスムーズな面を連ねたもの(膜面)によって残余部分の色変換手段を適合的に改変しているため、装置内色変換手段の特性を正確に調整することができる。サンプリング密度が高い色パッチを複数組生成して装置の経時変化パターンに対処する必要はない。しかも、多項式当てはめを初めとして、省情報処理的な面部分順方向パラメトリック色変換手段を用いることができる。
【0007】
また、本発明の他の実施形態に係る画像発生装置は、第1色空間準拠の色入力値データ(CMYデータ、CMYKデータ等)に従い可視画像を発現させるレンダリングシステムと、そのレンダリングシステムに色入力値データを供給するシステムコントローラと、その可視画像を表す第2色空間準拠の色計測値データ(La**データ等)を生成するセンサと、それらシステムコントローラ及びセンサと連携するキャラクタライゼーションシステムと、を備える。そのキャラクタライゼーションシステムは、そのレンダリングシステム用に、面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を含む順方向色変換手段を準備した上で、第1色空間準拠のアダプテーション用色入力値データセット及び第2色空間準拠のアダプテーション用色計測値データセットに基づき面部分順方向パラメトリック色変換手段を適合的に改変し、得られた改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を用い第2色空間準拠の色予測値データセットを生成し、アダプテーション用色入力値データセット及び色予測値データセットに基づき第2色空間準拠の色予測誤差値データセットを生成し、色予測誤差値データセットに基づき膜利用順方向色変換手段を生成し、そして改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段に従い順方向色変換手段を更新する。
【0008】
キャラクタライゼーションシステムにおける色予測値データセットの生成は、例えば、アダプテーション用色入力値データセット内のポイント毎に面部分順方向パラメトリック色変換手段,残余部分順方向非パラメトリック色変換手段それぞれの値を求め、面部分順方向パラメトリック色変換手段の値と残余部分順方向非パラメトリック色変換手段の値をアダプテーション用色入力値データセット内のポイント毎に加算することによって実行する。キャラクタライゼーションシステムにおける色予測誤差値データセットの生成は、例えば、アダプテーション用色計測値データセットにおけるデータ値から色予測値データセットにおけるデータ値を減ずることによって実行する。キャラクタライゼーションシステムにおける膜利用順方向色変換手段の生成は、例えば、断片化されているスムーズ面の連なりを色予測誤差値データセットに当てはめることにより実行する。
【0009】
本発明の他の実施形態に係るカラー画像発生装置キャラクタライゼーション方法は、面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を含む順方向色変換手段をそのカラー画像発生装置向けに準備するステップと、第1色空間準拠のアダプテーション用色入力値データセットに基づきそのカラー画像発生装置で複数個の可視アダプテーションテスト画像を生成するステップと、可視アダプテーションテスト画像に対する計測によって第2色空間準拠のアダプテーション用色計測値データセットを生成するステップと、アダプテーション用色入力値データセット及びアダプテーション用色計測値データセットに基づき面部分順方向パラメトリック色変換手段を適合的に改変して改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段を生成するステップと、改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を用い第2色空間準拠の色予測値データセットを生成するステップと、アダプテーション用色入力値データセット及び色予測値データセットに基づき第2色空間準拠の色予測誤差値データセットを生成するステップと、色予測誤差値データセットに基づき膜利用順方向色変換手段を生成するステップと、アダプテーション用色入力値データセットに基づき残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を適合的に改変するステップと、改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段に従い順方向色変換手段を更新するステップと、を有する。
【0010】
色予測値データセットを生成するステップは、例えば、アダプテーション用色入力値データセット内のポイント毎に面部分順方向パラメトリック色変換手段の値を求めるサブステップと、アダプテーション用色入力値データセット内のポイント毎に残余部分順方向非パラメトリック色変換手段の値を求めるサブステップと、面部分順方向パラメトリック色変換手段の値と残余部分順方向非パラメトリック色変換手段の値をアダプテーション用色入力値データセット内のポイント毎に加算して色予測値データセットを生成するサブステップと、を含む。色予測誤差値データセットを生成するステップは、例えば、アダプテーション用色計測値データセットにおけるデータ値から色予測値データセットにおけるデータ値を減ずるサブステップを含む。膜利用順方向色変換手段を生成するステップは、例えば、膜面を表す多項式を色予測誤差値データセットに当てはめるサブステップを含む。順方向色変換手段を更新するステップは、例えば、(改変版)面部分順方向パラメトリック色変換手段の値、残余部分順方向非パラメトリック色変換手段の値及び膜利用順方向色変換手段の値を加算するサブステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るカラー画像発生装置キャラクタライゼーション方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明を実施可能なカラー画像発生装置の概略を示すシステムレベル模式図である。
【図3】図2に示したカラー画像発生装置の一例をより詳細に示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるカラー画像発生装置内初期キャラクタライゼーションプロセスを示すフローチャートである。
【図5A】本発明の一実施形態におけるカラー画像発生装置内アダプテーションプロセスを示すフローチャートである。
【図5B】その続きを示す図である。
【図6】図2及び図3に示したカラー画像発生装置におけるキャラクタライゼーションシステムの詳細を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態に関し別紙図面を参照して説明する。なお、当該図面は本発明の技術的範囲を限定する趣旨のものではない。また、本発明の構成要素は様々な部材及びその配置、或いは様々なステップ及びその連鎖によって構成されうるものである。
【0013】
それらの図から読み取れるように、本発明に係るキャラクタライゼーション方法及びシステムでは、順方向色変換手段を適合的に改変する処理を、経時的にドリフトしがちなスムーズ面に係る面部分順方向パラメトリック色変換と、概ね安定な部分に係る残余部分順方向非パラメトリック色変換とに分けて行うようにしている。カラー画像発生装置における順方向色変換をパラメトリック成分と非パラメトリック成分とに分解するやり方であるので、従来のデータ当てはめ法よりも推定精度が高まり、情報処理効率が高まり、アダプテーション(適合的な改変)に必要な色空間内データサンプル数が顕著に削減され、更にノイズや印刷条件変動に対するロバスト性も高まる。ただ、発明者の知見によれば、スムーズ面をパラメトリックなモデルで表現することで情報処理は効率化するものの、このやり方ではスムーズ面に生じる局所的な変化をモデル上に正確に反映させるのが難しい。この問題に対策するため、本願記載の諸実施形態では、大域不均質且つ局所均質な形態でドリフトするようスムーズな膜を形成し、その膜を利用して欠点を緩和乃至解消するようにしている。従って、印刷システム、カラーディスプレイ等のカラー画像発生装置を対象に本発明を実施することで、その装置の色変換特性を表すモデルを省情報処理な形態で作成することができ、また装置特性上に生じる局所変化(装置色域内の部位毎に様々な装置特性経時ドリフト)を、装置特性のモデルへと的確に反映させることができる。以下、本明細書では、インク、トナー等のマーキング材を印刷媒体に付着させるマーキング部を幾つかと、その表示画面上に可視画像を発現させる表示装置と、を備える印刷システムを例に、本発明の諸実施形態に係るキャラクタライゼーション方法及びシステムについて説明することにする。但し、本発明の発想による特性調整は、可視画像を発生させることが可能なカラー画像発生装置であればどのようなものにも適用することができる。
【0014】
ここでは、まず、図1〜図3及び図6を参照して本発明の一実施形態に係るカラー画像発生装置キャラクタライゼーション方法2及びその対象となるカラー画像発生装置の例たるカラー印刷装置100について説明する。それらのうち図1に示されている方法2は、図2、図3及び図6中の装置100、特にそのシステムコントローラ122及びキャラクタライゼーションシステム124によって実行されるものである。この方法2は図示の通り幾つかの動作乃至事象(ステップ)が継起する形態で実現されている。この点は後掲の図4〜図5Bに示すプロセス200,300も同様である。本発明に係る方法乃至プロセスは、この形態とはステップ順が異なる形態を含め、様々な形態で実施乃至実行することができる。即ち、特に明示がない限り、諸ステップが図示例とは異なる順序で継起する形態、複数のステップが同時に生起する形態、一部のステップが省略された形態等でも、本発明に係る方法乃至プロセスを実施乃至実行することができる。更に、図中の方法2やプロセス200,300に限らず、本発明に係る諸方法乃至プロセスは、ハードウェア的な形態、プロセッサでソフトウェアを実行する形態、その組合せ等、様々な形態で実施乃至実行することができる。カラー印刷装置、カラー表示装置等といったカラー画像発生装置の特性調整を、単体のキャラクタライゼーションシステムで実行する形態でも、複数の部材乃至システムで連携して実行する分散的な形態でもかまわない。実施環境となりうるカラー画像発生装置は、コンピュータ、デスクトップ型又はネットワーク型のプリンタ、スタンドアロン複写機、ファクシミリ機、プリンタ・複写・ファクシミリ複合機、高速印刷システム、高速出版システム、ディジタル製版機、ディジタルカメラ等を始め数多くある。本発明は、本願で例示した用途乃至実施形態に限定されるものではない。
【0015】
方法2では、最初に、第1色空間から第2色空間への色マッピングに適用される順方向色変換手段125をそのカラー印刷装置100向けに準備する(図1;ステップ10)。図6に例示するように、この色変換手段125は面部分順方向パラメトリック色変換手段(parametric surface forward color transform)125a及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段(non-parametric residual forward color transform)125bを含んでおり、それらの色変換手段125a,125bを準備するステップ10、即ち初期キャラクタライゼーションプロセスは、様々なやり方で実行することができる。この例の場合、まず、第1色空間準拠の初期キャラクタライゼーション用色入力値データセット(input initial characterization data set)122aに基づき、且つ図2,図3中の装置100又は123によって、アダプテーションテスト画像162を複数個発現させる。第1色空間は例えばシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)各色成分の強度値で色を表現する色空間であり、データセット122aは例えばそのCMYK色空間に準拠した装置依存性のデータセットであり(図6参照)、テスト画像162は図2に示すテストページ160(少なくとも1枚)に印刷され又は同図中のカラー表示装置123で表示される。次いで、それらテスト画像162を対象とした計測を通じ、第2色空間準拠の初期キャラクタライゼーション用色計測値データセット(measured initial characterization data set)124aを生成する。画像162の計測は例えば図2,図3中のスキャナ126による読み取りであり、第2色空間は例えばL,a*,b*各成分の強度値で色を表現するCIE(Commission Internationale de L'eclairage)色空間であり、データセット124aはそのCIE色空間に準拠した装置非依存性のデータセット(図6参照)である。更に、それら初期キャラクタライゼーション用のデータセット122a,124aに基づき、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aを生成する。例えば、データセット122a,124aに面を表す二次又は三次の多項式を当てはめることで、複数の多項式パラメタ乃至係数(図6参照)を求め、キャラクタライゼーションシステム124内にそれを色変換手段125aの値として保存する。次に、その面部分順方向パラメトリック色変換手段125aを用いデータセット122a内データの値を変換することで、初期キャラクタライゼーション用色推定値データセット(estimated initial characterization data set)124bを生成する。それが済んだら残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bの生成である。例えば、データセット124a内データの値からデータセット124b内データの値を減ずることで、色変換手段125bの値たる差分値(図6参照)を導出する。そして、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aの値と残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bの値の加算等によって、このステップ10で準備すべき装置100向け順方向色変換手段125を生成する。
【0016】
次に、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aを適合的に改変する(図1;ステップ20)。そのため、まず第1色空間準拠のアダプテーション用色入力値データセット(input adaptation data set)122bに基づき、且つ装置100での印刷又は表示により、パッチ状等の可視アダプテーションテスト画像162を複数個生成する(ステップ22)。次いで、それらのテスト画像162をスキャナ126等で計測することにより、図6に示す第2色空間準拠のアダプテーション用色計測値データセット(measured adaptation data set)124cを生成する(ステップ24)。そして、それらのデータセット122b及び124cに基づき、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aを適合的に改変乃至修正する(ステップ26)。これは、例えばアダプテーション用の面を表す多項式をデータセット122b,124cに当てはめることで実行する。なお、スキャナ126を初めとする計測手段を、特性調整の対象となる装置100と一体なインライン型の装置にすれば、アダプテーションに関わるステップ20及び30を自動実行にしてユーザの介在を不要化することができる。
【0017】
次に、局所的にスムーズな膜(125c)を生成し(図1;ステップ30)、改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段125a及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bに従い順方向色変換手段125を更新する(ステップ40)。膜を生成するステップ30では、まず、改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段125a及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bを用い第2色空間準拠の色予測値データセット(prediction data set)124dを生成する(ステップ32)。例えば、アダプテーション用色入力値データセット122b内のポイント毎に色変換手段125a及び125bの値を求め、両者の値を同データセット122b内のポイント毎に加算することで、色予測値データセット124dを生成する。
【0018】
次に、アダプテーション用色入力値データセット122b及び色予測値データセット124dに基づき第2色空間準拠の色予測誤差値データセット(prediction error data set)124eを生成する(ステップ34)。例えば、アダプテーション用色入力値データセット122b内のポイント毎にデータセット124d内データの値をアダプテーション用色計測値データセット124c内データの値から減ずることで、これを実行する。更に、色予測誤差値データセット124eに基づき膜利用順方向色変換手段(membrane forward color transform)125cを生成する(ステップ36)。これは、例えば、局所的にスムーズな面を連ねた膜面を色予測誤差値データセット124eに当てはめることで実行する。そして、改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段125aの値、残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bの値及び膜利用順方向色変換手段125cの値の総和等を通じ、順方向色変換手段125を更新する(ステップ40)。
【0019】
これらの動作はカラー画像発生装置、例えば図2、図3及び図6に示すカラー印刷装置100にて実行される。この装置100は、電子写真ステーション102複数個によるレンダリングシステムと、カラー表示装置123によるレンダリングシステムとを有しており、それらのうち少なくとも一方は、色入力値データセット122a,122bに基づき可視画像162を発現させうるように構成されている。色入力値データセット122a,122bは内部色表現に係る第1色空間(CMYK色空間等)に準拠するデータセットであり、装置100に備わるシステムコントローラ122は、それらをプリントジョブ118に従い相応のレンダリングシステムに供給する。供給を受けたレンダリングシステムは、そのデータセット122a又は122bに基づき画像162を印刷又は表示する。装置100に備わるセンサ例えばスキャナ126は、テストページ160等に印刷等された画像162を読み取り、発現中の色乃至スペクトラムを表す色計測値データセット124a,124cを生成する。そのデータセット124a,124cは第2色空間(La**形式をとるCIE色空間等)に準拠するデータセットである。スキャナ126は、テストページ160上に印刷された画像162をインラインで自動スキャンできるよう、レンダリングシステム内に組み込むのが望ましい。また、図2に示した装置100はタンデム型の文書用カラー印刷装置であり、コントローラ122から供給される制御信号乃至データに従い個々のステーション102を独立して稼働させること、ひいてはトナー等のマーキング材151〜154を媒介媒体104上に付着乃至転写させることができる。更に、図中の媒介媒体104は共有型の中間転写ベルト(ITB)であり、諸ステーション102を反時計回りで巡るよう設けられている。この媒体104はフォトレセプタであってもよいしそうでなくてもよい。これに代わる中間転写媒体として円筒形のドラムを使用し、そのドラムの周りに幾つかのマーキングステーションを配し、それらのステーションでそのドラム上にマーキング材を部位選択的に付着乃至転写させるようにしてもよい。なお、電子写真ステーションはマーキングエンジン、マーキング部材、マーキングステーション等と呼ばれることもある。
【0020】
このカラー画像発生装置、例えばタンデム型の文書用カラー印刷装置100は、図3の如くカラー画像発生システム100Aに組み込むことができる。組み込まれている装置100は、共有型のITB104及びそれに沿って配された4個の電子写真ステーション102を備えるほか、図2の如く転写ステーション106、最終印刷媒体源108及びフューザ110を備えている。このシステム100Aを稼働させる場合は、まず内部ジョブ源、外部ジョブ源又はその双方からプリントジョブ118を受け入れ、それをシステムコントローラ122にて実行するのが普通である。内部ジョブ源とは図2に示したインライン型又は外付け型のスキャナ126等のことであり、外部ジョブ源とは、幾つかのネットワーク124及び付随するケーブル120乃至無線接続を介しこのシステム100Aに接続される何台かのコンピュータ116等のことである。ジョブ118を実行すると、そのジョブ118によって指定されたテキスト、ライングラフィクス、画像、MICR(磁気インク文字認識)文字等が、1ページ分又は複数ページ分の印刷媒体、例えば紙シートの表側、裏側又はその双方に印刷される。印刷媒体の片面がブランクのまま残されるジョブ118もあれば、カラー印刷と白黒印刷が混用されるジョブ118もあろう。更に、ジョブ118のなかには、印刷だけでなく印刷が済んだ媒体に物理的な処置、例えばページ順揃え、折込、ステープル止め、パンチ孔開け、綴じ等といった仕上げを施すものもある。こうしたシステム100Aは、スタンドアロンプリンタだけでなくプリンタクラスタでも利用可能である。プリンタクラスタとは、ネットワーク経由か否かはさておき、複数個のプリンタを論理結合させたもののことである。個々のプリンタは、例えば、媒体源108、複数の媒体出口を有する仕上げ部材、消耗印刷材補給システム等といった部材を自分用に備える構成である。また、このシステム100Aは、複数個の電子写真ステーション102並びにそれを共有する1個の媒体源108及び複数個の仕上げ部材を備えるプリンタでも利用可能である。それら仕上げ部材同士の関係は、縦続的な関係でもよいし、媒体送り経路と媒体仕上げ経路が分離並走する並列的な関係でもよい。
【0021】
そのシステムコントローラ122には、図2、図3及び図6に示す如くキャラクタライゼーションシステム124が機能的に接続(例えば内蔵)されている。このシステム124は例えばプロセッサ、メモリ等の部材を備えるプロセッサベースのシステムであり、特性調整方法2等の諸機能を本願記載の通り実行できるよう構成乃至設定されている。このシステム124は、図6に示すように、装置100用の順方向色変換手段125として面部分順方向パラメトリック色変換手段125a、残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125b及び膜利用順方向色変換手段125cを準備する。
【0022】
実稼働中、このキャラクタライゼーションシステム124は、アダプテーション用色入力値データセット122b及びアダプテーション用色計測値データセット124cに基づき面部分順方向パラメトリック色変換手段125aを適合的に改変する。このシステム124は、更に、改変した色変換手段125aに加え残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bを用いて色予測値データセット124dを生成する。例えば、色変換手段125a,125bそれぞれの値をアダプテーション用色入力値データセット122b内のポイント毎に求め、それらの値同士を同データセット122b内のポイント毎に加算することで、色予測値データセット124dを生成する。
【0023】
キャラクタライゼーションシステム124は、図示の通り、アダプテーション用色入力値データセット122b及び色予測値データセット124dに基づき色予測誤差値データセット124eを生成する。例えば、アダプテーション用色入力値データセット122b内のポイント毎にアダプテーション用色計測値データセット124c内データの値から色予測値データセット124dを減ずることで、色予測誤差値データセット124eを生成する。このシステム124は、次いで、そのデータセット124eに基づき膜利用順方向色変換手段125cを生成することによって、残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bを適合的に改変する。これは、例えば、色予測誤差値データセット124eに対し膜面を当てはめることによって行う。そして、このシステム124は、共に適合的な改変が施されている面部分順方向パラメトリック色変換手段125a及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bに従い、順方向色変換手段125を更新する。例えば、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aの値、残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bの値及び膜利用順方向色変換手段125cの値の総和によって、順方向色変換手段125を更新する。
【0024】
次に、図4〜図5Bを参照し、カラー印刷装置100で実行される初期キャラクタライゼーションプロセス200及びその結果を踏まえたアダプテーションプロセス300についてより詳細に説明する。まず、装置100の色再現性は、第1色空間準拠の色表現から第2色空間準拠の色表現へのマッピング、即ち順方向色変換によって決定づけられる。この例では、色入力値データセット122a,122bが準拠する第1色空間がC,M,Y,K四元の色空間、装置非依存性の第2色空間がL,a*,b*三元のCIE色空間であるので、順方向色変換とは、第2色空間内のポイント毎に三種類一組の関数値
L=fL(C,M,Y,K)
*=fa*(C,M,Y,K)
*=fb*(C,M,Y,K)
を求める色推定操作のことである(以下、引数部分のC,M,Y,Kを単にCMYKとも表すこととする)。この順方向色変換の逆変換を導出するようシステムコントローラ122を構成することもできるので、プリントジョブ118で与えられる色入力値データを逆方向色変換により修正して出力画像(印刷画像や表示画像)の装置間色差や経時的な色変化を抑えることもできる。
【0025】
そのための順方向色変換手段125は、図6に示す通り二種類の要素、即ち面部分順方向パラメトリック色変換手段125aと残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bに分割されている。その分はスケーラビリティが高まるため、この装置100では多数の教師サンプルを使用する必要がない。同じ理由で情報処理効率も高まるため、この装置100では校正が短時間で済み、アダプテーションが容易で、しかもノイズや印刷条件変動に対するロバスト性が高まる。加えて、この変換手段分割では、順方向色変換値fL,fa*,fb*をもたらす全マッピングが、パラメトリック推定その他のデータ当てはめ手法に従いスムーズ面(低周波成分)をパラメトリックな関数でモデル化する手段125aと、残りの高周波成分をより柔軟な非パラメトリックな表現でモデル化する手段125bとに分割されている。印刷システム全般に共通することであるが、発明者の知見によれば、変換対象となる二種類の成分は互いに異なる性質のものであり、その経時変化パターンも互いに異なるものである。なかでも、色変換手段125aによってモデル化されるスムーズ面は温度、トナーの質量対電荷比等といった経時変化性の物理特性に関わる面である。従って、スムーズ面のモデルである面部分順方向パラメトリック色変換手段125aは、本発明の諸実施形態に係るキャラクタライゼーションシステム124を利用しその値fsurfをゆっくりとドリフトさせることで、スムーズ面の経時変化に適合させることができる。他方、それ以外のより細かな部分のモデルである残余部分非パラメトリック色変換手段125bは大まかには装置構成及び外部条件により決まるものであり、その値fresidualは例えば中間調パターンや印刷媒体の別(光沢紙か非光沢紙かの別、重量紙か標準紙かの別等)に依存するのみであるので、全体としては安定に維持される。
【0026】
発明者の知見によれば、上掲の変換手段分割によって、情報処理効率が高いアダプテーション方式を実現することができる。即ち、スムーズ面部分を表す低周波モデルである面部分順方向パラメトリック色変換手段125aの値fsurfと、残余部分を表す高周波モデルである残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bの値fresidualとが、個別的乃至経時的に且つ適合的に改変される方式が得られる。これは、一つには、残余部分モデルが本来的に安定であるため、その初期構築に少々手間がかかるが事後的なアダプテーションが不要であるからである。また一つには、スムーズ面モデルが面を多項式で表現するモデルであり且つそのパラメタ数が割合に少ないため、特性の経時的ドリフトに応じモデルを経時的且つ適合的に改変する処理を迅速に且つ省力で実行できるからである。例えば、スムーズ面モデルの更新を1日に1回、1時間に1回、或いは起動毎に1回といった高頻度で行うことができる。また、発明者の更なる知見によれば、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aのみでは経時ドリフトによる装置特性の局所的な変化を全面的に反映させることができないが、その色変換手段125に膜利用順方向色変換手段125cを組み入れることにより、大域不均質且つ局所均質な経時的特性変動が反映されるよう、また変換手段125の全体的な情報処理効率に対し大きな影響を及ぼすこと無しに、色変換手段125aの経時ドリフト追従性を向上させることができる。
【0027】
図示したプロセスのうち図4中の初期キャラクタライゼーションプロセス200は、装置特性のモデルを初期的に作成するプロセスの例である。このプロセス200では、その開始(ステップ202)後にまずCMYK色空間準拠の初期キャラクタライゼーション用色入力値データセット122aを提供する(ステップ202)。例えば、CMYKの各次元が0〜125値をとりうる8ビットCMYK色空間に準拠の16×16×16×16(16レベル均一)サイズデータグリッドを、データセット122aとして印刷システムに供給する。次に、そのデータセット122aに基づき、図2に示した1枚又は複数枚のテストページ160上にパッチ状のテスト画像162を印刷する(ステップ206)。更に、そのテスト画像162をスキャナ126で読み取ることで、La**形式の初期キャラクタライゼーション用色計測値データセット124aを生成する(ステップ208)。
【0028】
キャラクタライゼーションシステム124は、それらに基づき、面部分順方向パラメトリック色変換手段125a及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bを含む順方向色変換手段125を初期生成する(ステップ210〜216)。そのうち色変換手段125aの値fsurfは、CMYK色空間準拠の初期キャラクタライゼーション用色入力値データセット122a及びLa**形式の初期キャラクタライゼーション用色計測値データセット124aから導出する(ステップ210)。即ち、これらのデータセット122a及び124aに対し、面を表す二次、三次等々の次数の多項式を当てはめて回帰演算を行うことによって、スムーズ面モデルの値fsurfを導出する。導出される値fsurf即ちスムーズ面モデルを記述するパラメタの個数は、四次元CMYK色空間上の二次面なら15個、三次面なら45個となる。それらのパラメタ、即ち色変換手段125aの値fsurf(CMYK)=(fL,surf(CMYK),fa*,surf(CMYK),fb*,surf(CMYK))を得ることで、システム124は、あらゆるCMYK色入力値データについて、そのスムーズ面に係る色推定値データの値を求めることができるようになる。次いで、システム124は、そのデータセット122a内の個々のポイントについて色変換手段125aの値を求めることにより、16×16×16×16CMYK色データグリッド122a内のポイント毎に、図6に示すLa**形式の初期キャラクタライゼーション用色推定値データセット124b内データの値を求める(ステップ212)。
【0029】
キャラクタライゼーションシステム124は、共にLa**形式である初期キャラクタライゼーション用色計測値データセット124a・初期キャラクタライゼーション用色推定値データセット124b間の差を演算することで、残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bの値
L,residual(CMYK)=L(CMYK)−fL,surf(CMYK)
a*,residual(CMYK)=a*(CMYK)−fa*,surf(CMYK)
b*,residual(CMYK)=b*(CMYK)−fb*,surf(CMYK)
を求め(ステップ214)、得られた値をモデルたる色変換手段125bの値として保存する。ただ、これが行えるのは、そのLa**差分値fresidualが求まった点が、16×16×16×16サイズCMYK色データグリッド122aを組成している場合である。このグリッド122aを組成していないポイントについては上の処理でLa**差分値fresidualを求めることができないので、非パラメトリック補間等の距離加重補間法でLa**差分値を推定し、その結果を色変換手段125bの値として保存する。即ち、システム124は、まず、そのポイント(注目ポイント)を囲むCMYK色空間内部分データセット内で、そのポイントのすぐ隣にあるポイント(隣接ポイント)を幾つか特定する。次いで、それら隣接ポイントiにおけるLa**差分値fresidual(i)をそのデータセットから探し、見つかったLa**差分値fresidual(i)を次の式
residual(CMYK)=Σαiresidual(i)
に従い加重平均することで、注目ポイントにおけるLa**差分値fresidualを推定する。そして、その推定値fresidualをその注目ポイントにおける色変換手段125bの値として保存する。この式中、Σはi∈Nについての総和、Nは当該部分データセットにおける隣接ポイントの個数、iは当該部分データセットから見つかった隣接ポイント、fresidual(i)はその隣接ポイントiにおけるLa**差分値、αiはその隣接ポイントiに係る荷重である。荷重αiは、対応する隣接ポイントiまでのCMYK色空間内距離に反比例するよう、即ちCMYK色空間内距離が短い隣接ポイントほど荷重が重くなるよう設定する。このようにして導出されシステム124内に保存される差分値(色変換手段125bの値)群のグリッドは、それ以後は安定に維持される。
【0030】
キャラクタライゼーションシステム124は、第2色空間を形成する個々の次元L,a*,b*について、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aの値と残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bの値を加算することで、順方向色変換手段125の初期値
L(CMYK)=fL,surf(CMYK)+fL,residual(CMYK)
*(CMYK)=fa*,surf(CMYK)+fa*,residual(CMYK)
*(CMYK)=fb*,surf(CMYK)+fb*,residual(CMYK)
を求め(ステップ216)、装置100の初期キャラクタライゼーションを終了する(ステップ218)。なお、ここで述べた初期キャラクタライゼーションプロセス200中の諸タスクは、装置100内のシステム124で全て実行させるようにしてもよいし、一部又は全てを装置100内又は装置100外の他システムで実行させるようにしてもよい。
【0031】
また、図示したプロセスのうち図5A及び図5B中のアダプテーションプロセス300は、装置特性に対するアダプテーションを実行するプロセスの例である。キャラクタライゼーションシステム124は、このプロセス300の開始時に(図5A;ステップ310)、アダプテーション用色入力値データセット122bに基づき残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bを適合的に改変する(ステップ320)。この改変は、例えば、個々のカラー画像発生装置100上で毎稼働日に1回ずつ、或いはユーザからプリントジョブが与えられるたびに1回ずつ行う。システム124は、次いで、CMYK色空間準拠のアダプテーション用色入力値データセット122b、即ち面部分順方向パラメトリック色変換手段125aの値fL,surf,fa*,surf,fb*,surfを更新乃至アダプテーションするためのデータセットを、個々の装置100に供給する(ステップ322)。個々の装置100では、そのアダプテーション用色入力値データセット122bに基づき図2に示すパッチ状のテスト画像162を印刷等し(ステップ324)、それらをスキャナ126で読み取ることで図6に示すLa**形式のアダプテーション用色計測値データセット124cを生成する(ステップ326)。なお、このデータセット124cがユーザの介在無しで生成されるよう、システム124は装置100に内蔵させておくのが望ましい。そして、それらのデータセット122b及び124c(後者は例えば約1500個のデータポイントを含む)に対し面を表す多項式を当てはめることにより、改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段125aの値fLa*b*,adapt surf(CMYK)=(fL,adapt surf(CMYK),fa*,adapt surf(CMYK),fb*,adapt surf(CMYK))を求める(ステップ328)。
【0032】
キャラクタライゼーションシステム124は、こうして改変された面部分順方向パラメトリック色変換手段125aと残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bを併用し順方向色変換手段125を更新する(図5B;ステップ340)のに先立ち、アダプテーション用色入力値データセット122bに基づきスムーズ膜利用順方向色変換手段125cを生成する(ステップ330)。この色変換手段125cの生成に際しては、システム124は、まず、アダプテーション用色入力値データセット122b内のポイント毎に、面部分順方向パラメトリック色変換手段125a,残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125b双方の値を求め、それらの値をデータセット122b内のポイント毎に加算することによって、第2色空間に準拠する色予測値データセット124d内データの値
prediction(CMYK)=fL,adapt surf(CMYK)+fL,residual(CMYK)
*prediction(CMYK)=fa*,adapt surf(CMYK)+fa*,residual(CMYK)
*prediction(CMYK)=fb*,adapt surf(CMYK)+fb*,residual(CMYK)
を求める(ステップ332)。
【0033】
キャラクタライゼーションシステム124は、次いで、アダプテーション用色入力値データセット122b内のポイント毎に、色予測値データセット124d内データの値をアダプテーション用色計測値データセット124c内データの値から減ずることにより、色予測誤差値データセット124e内データの値
prediction error(CMYK)=L(CMYK)−Lprediction(CMYK)
*prediction error(CMYK)=a*(CMYK)−a*prediction(CMYK)
*prediction error(CMYK)=b*(CMYK)−b*prediction(CMYK)
を求める(ステップ334)。
【0034】
キャラクタライゼーションシステム124は、連続的で局所的にスムーズな膜面を色予測誤差値データセット124eに当てはめることにより、膜利用順方向色変換手段125cの値fL,membrane(CMYK),fa*,membrane(CMYK),fb*,membrane(CMYK)を求める(ステップ336)。
【0035】
この膜利用順方向色変換手段生成は相応の手法で実行すればよい。使用できる手法の例としては断片化スプライン当てはめ乃至ローパスフィルタリングがある。例えば、既知のメディアムフィルタリングをステップ336で用いるようにすれば、散発的なノイズに対するメディアンフィルタリングのロバスト性を活かすことができるほか、情報処理効率が高まり色変換手段125全体での情報処理効率も上昇する。それにより得られる膜利用順方向色変換手段125cは多項式係数乃至パラメタ群の集合であるので、システムコントローラ122内に保存しておき、例えばCMYK色空間に準拠した色入力値データセット122a,122bの処理に随時使用することができる。また、ステップ336における色変換手段125cの生成は、例えば、所与の計測値データセット{yi;i=1;2;…}に対する当てはめ操作によって、計測値データセット(yi}に対し最良に当てはまる関数f(x)を導出する、という形式の処理となる。この処理に対しては、fが十分にスムーズである、というスムーズ性条件が課される。そのスムーズ性条件が満たされるようにしながら当てはめ誤差||y−f(x)||2を最小化する手法としては、フィルタリング、スプライン当てはめ、正則化等、様々な既知手法を使用することができる。
【0036】
そして、キャラクタライゼーションシステム124は、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aの値、残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bの値及び膜利用順方向色変換手段125cの値の総和
L(CMYK)=fL,adapt surf(CMYK)+fL,residual(CMYK)+fL,membrane(CMYK)
*(CMYK)=fa*,adapt surf(CMYK)+fa*,residual(CMYK)+fa*,membrane(CMYK)
*(CMYK)=fb*,adapt surf(CMYK)+fb*,residual(CMYK)+fb*,membrane(CMYK)
を求めることにより、順方向変換手段125を更新する(ステップ340)。
【0037】
こうしてキャラクタライゼーションシステム124によるアダプテーションを実行することで、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aにおける平滑面の反映内容を更新することができ、また局所的な変化に対処するための調整を残余部分順方向非パラメトリック色変換手段125bに施すことができる。この点に関する発明者の知見によれば、La**形式の色計測値に基づくアダプテーション用のデータセット(例えば色予測値データセット124d)の導出が体系的であるため、使用するテスト画像162例えばカラーパッチが同様のCMYK値であれば色予測誤差値も同様の傾向となり、局所的なドリフトを予測することができる。また、発明者の更なる知見によれば、初期キャラクタライゼーション時の色予測誤差値に対しアダプテーション時のそれがかなり近くなることが多く、その色予測誤差値に基づくアダプテーションによって順方向色変換手段125の精度を成功裏に高めることができる。何か特定の理論によって拘束されているわけではないので、プリンタその他のカラー画像発生装置における物理特性の経時ドリフトがゆっくりであれば、実際のスムーズ面が多項式で表記可能な面でなくても、面部分順方向パラメトリック色変換手段125aでその面を簡便に表現することができる。ただ、面を多項式で表すモデルによるアダプテーションでは、実際のスムーズ面が多項式で表記可能な面でない場合、ドリフトを所望の精度でモデルに反映させることができないこともあり得る。上述した手法では、順方向色変換手段125に組み込まれたパラメトリックな膜利用順方向色変換手段125cを使用し局所変化に係る調整を行っているため、そうした状況下でも順方向色変換手段125の精度を確保することができる。そうした調整を行えるのは、装置非依存性のあるCMYK色空間内で概ね空間的連続性を呈する予測誤差値データセット124eに基づき生成されるため、膜利用順方向色変換手段125cが局所的にスムーズになるからである。
【0038】
なお、以上の実施形態説明で示した構成は本発明の実施に当たり使用可能な構成の例である。本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)にはご理解頂けるように、本願明細書及び図面の記述を参照して別の実施形態、より優れた形態に想到することもできよう。また、上掲の構成では、アセンブリ、装置、システム、回路等といった部材で種々の機能を実現している。それを表すのに「手段」なる語を用いるか否かを問わず、また特に明示がない限り、それらの機能はどのような部材でも実現することができる。ハードウェアか、ソフトウェアか、それらの組合せかといった形態の別は問わない。その部材で実現すべき機能を実現可能な、即ちその機能に関し均等な形態であれば、どのような形態でもかまわない。本願明細書又は図面に記載の例でその機能を担っている要素に対し、構造的に均等である必要もない。更に、本願明細書及び図面では、いずれかの実施形態に関する説明中で言及した構成部材について、一部、ほかの実施形態に係る説明中の言及を省いているが、そうした構成部材を他の実施形態中の他の構成部材(群)と随意に組み合わせ、目的用途における効果を強めることも可能である。また、本願明細書及び特許請求の範囲では、「備える」「有する」「含む」「持つ」「伴う」等といった表現を使用しているが、これらは「備える」の通例に倣い開放的な、即ち排外的でない意味で使用されているのでその点を了解されたい。そして、上述した種々の部材乃至機能や、それらの部材乃至機能と均等なその他の部材乃至機能は、目的とするシステム構成や用途に応じ、随意に組み替えて使用することができる。本願明細書又は図面に記載の構成に対し代替、改変、修正乃至改良に該当する現在未発見乃至未想到の構成のうち、いわゆる当業者が本願明細書又は図面の記載に基づき想到しうるものも、別紙特許請求の範囲で定義される技術的範囲に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0039】
2 カラー画像発生装置キャラクタライゼーション方法、10〜40,202〜218,310〜350 ステップ、100 カラー印刷装置、100A カラー画像発生システム、102 電子写真ステーション、104 媒介媒体、106 転写ステーション、108 最終印刷媒体源、110 フューザ、116 コンピュータ、118 プリントジョブ、120 ケーブル、121 ネットワーク、122 システムコントローラ、122a 初期キャラクタライゼーション用色入力値データセット、122b アダプテーション用色入力値データセット、123 カラー表示装置、124 キャラクタライゼーションシステム、124a 初期キャラクタライゼーション用色計測値データセット、124b 初期キャラクタライゼーション用色推定値データセット、124c アダプテーション用色計測値データセット、124d 色予測値データセット、124e 色予測誤差値データセット、125 順方向色変換手段、125a 面部分順方向パラメトリック色変換手段、125b 残余部分順方向非パラメトリック色変換手段、125c 膜利用順方向色変換手段、126 スキャナ、151,152,153,154 マーキング材、160 テストページ、162 可視アダプテーションテスト画像、200 初期キャラクタライゼーションプロセス、300 アダプテーションプロセス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像発生装置内での色表現に係る第1色空間から発現する色に関し目処を提供する第2色空間への色マッピングに適用され、面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を含む順方向色変換手段を、そのカラー画像発生装置向けに準備するステップと、
第1色空間準拠のアダプテーション用色入力値データセットに基づきそのカラー画像発生装置で複数個の可視アダプテーションテスト画像を生成するステップと、
可視アダプテーションテスト画像に対する計測によって第2色空間準拠のアダプテーション用色計測値データセットを生成するステップと、
アダプテーション用色入力値データセット及びアダプテーション用色計測値データセットに基づき面部分順方向パラメトリック色変換手段を適合的に改変して改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段を生成するステップと、
改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を用い第2色空間準拠の色予測値データセットを生成するステップと、
アダプテーション用色入力値データセット及び色予測値データセットに基づき第2色空間準拠の色予測誤差値データセットを生成するステップと、
色予測誤差値データセットに基づき膜利用順方向色変換手段を生成するステップと、
改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段に従い順方向色変換手段を更新するステップと、
を有するカラー画像発生装置キャラクタライゼーション方法。
【請求項2】
請求項1記載のカラー画像発生装置キャラクタライゼーション方法であって、順方向色変換手段を更新するステップにて、面部分順方向パラメトリック色変換手段、残余部分順方向非パラメトリック色変換手段及び膜利用順方向色変換手段に従い順方向色変換手段を更新するカラー画像発生装置キャラクタライゼーション方法。
【請求項3】
第1色空間準拠の色入力値データに従い可視画像を発現させるレンダリングシステムと、
プリントジョブに従いそのレンダリングシステムに色入力値データを供給するシステムコントローラと、
その可視画像を表す第2色空間準拠の色計測値データを生成するセンサと、
それらシステムコントローラ及びセンサと連携するキャラクタライゼーションシステムと、
を備え、キャラクタライゼーションシステムが、
レンダリングシステムにおける色表現に係る第1色空間から発現する色に関し目処を提供する第2色空間への色マッピングに適用され、面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を含む順方向色変換手段を、そのレンダリングシステム向けに準備した上で、
第1色空間準拠のアダプテーション用色入力値データセット及び第2色空間準拠のアダプテーション用色計測値データセットに基づき面部分順方向パラメトリック色変換手段を適合的に改変し、得られた改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段を用い第2色空間準拠の色予測値データセットを生成し、アダプテーション用色入力値データセット及び色予測値データセットに基づき第2色空間準拠の色予測誤差値データセットを生成し、色予測誤差値データセットに基づき膜利用順方向色変換手段を生成し、改変版面部分順方向パラメトリック色変換手段及び残余部分順方向非パラメトリック色変換手段に従い順方向色変換手段を更新するカラー画像発生装置。
【請求項4】
請求項3記載のカラー画像発生装置であって、上記キャラクタライゼーションシステムが、アダプテーション用色入力値データセット内のポイント毎に面部分順方向パラメトリック色変換手段の値を求め、アダプテーション用色入力値データセット内のポイント毎に残余部分順方向非パラメトリック色変換手段の値を求め、面部分順方向パラメトリック色変換手段の値と残余部分順方向非パラメトリック色変換手段の値とをアダプテーション用色入力値データセット内のポイント毎に加算することにより、色予測値データセットを生成するカラー画像発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−61797(P2011−61797A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202633(P2010−202633)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】