説明

膜を用いた2元給水システム

【課題】浄水場から供給される水道水を無駄にすることなく、かつ飲料水に適した水を利用者に安価に提供可能にする。
【解決手段】この高度浄水処理システム10は、集合住宅、オフィスビル等のユースポイント付近に設置され、浄水場から水道本管14にて送水された水道水を取り込み、この水道水を逆浸透膜モジュールによってろ過水と濃縮水とに分離する高度浄水処理を行う。高度浄水処理されたろ過水は、各世帯ごとに飲料水として供給され、逆浸透膜モジュールから排出された濃縮水は、各世帯ごとに生活用水(洗濯、風呂、トイレ等で使用する水)として供給される。これにより、水道水を無駄にすることがなく、また、飲料水に適した水(ろ過水)を、市販されている飲料水に比べて安価に提供できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜を用いた2元給水システムに係り、特に浄水場から水道本管で送水される水道水を更に処理する膜を用いた2元給水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オゾン処理と活性炭吸着とを組み合わせて原水を処理する高度浄水処理技術が知られているが、臭素酸の発生や原水中の有機物と塩素との反応による消毒副生成物(トリハロメタン類)の発生が懸念される。また、浄水場で処理された水道水は、老朽化した水道本管を通ることで再度汚染され、飲料水に適した水が得られない場合がある。
【0003】
この種の水道水を浄化する方法の一つとして、逆浸透膜(以下、「RO膜」という)やナノろ過膜(以下、「NF膜」という)を用いてろ過処理する方法がある(特許文献1)。
【0004】
RO膜やNF膜は、水中の無機イオン、低分子の不純物を除去することができ、市販されている飲料水と同等の清水を得ることができる。
【特許文献1】特開2007−167785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、RO膜やナノろ過膜によってろ過されるろ過水の回収率は、例えば50%程度であり、分離された濃縮水は排出されるため、浄水場で処理された水道水が無駄になるという問題がある。
【0006】
一方、ろ過水の回収率が高くなるように運転すると、ろ過膜への負荷が大きくなり、ろ過膜の寿命が短くなるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、浄水場から供給される水道水を無駄にすることなく、かつ飲料水に適した水を利用者に安価に提供することができる膜を用いた2元給水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1に係る膜を用いた2元給水システムは、集合住宅、オフィスビル等の所定の管理された施設内又はその近傍に設置され、浄水場から水道本管にて送水された水道水を取り込み、該水道水をろ過膜によってろ過水と濃縮水とに分離する浄水処理装置と、前記浄水処理装置によって処理されたろ過水を飲料水として前記施設に配水する第1の配水装置と、前記浄水処理装置によって処理された濃縮水を生活用水として前記施設に配水する第2の配水装置と、から構成されたことを特徴としている。
【0009】
請求項1に係る膜を用いた2元給水システムによれば、浄水場から老朽化した水道本管にて送水された水道水であっても、その水道水を実際に使用する施設内、又は施設近傍に設置された浄水処理装置によってろ過水と濃縮水とに分離し、ろ過水は飲料水として供給し、濃縮水は生活用水として供給するようにしたため、水道水を無駄にすることがなく、また、飲料水に適した水(ろ過水)を、市販されている飲料水に比べて安価に提供することができる。
【0010】
請求項2に示すように請求項1に記載の膜を用いた2元給水システムにおいて、前記第1の配水装置から配水されたろ過水と前記第2の配水装置により配水された濃縮水とを任意の比率で混合可能な混合水栓を備えたことを特徴としている。
【0011】
これにより、利用者は、用途に応じて水質を、飲料水(ろ過水)の水質から生活用水(濃縮水)の水質の範囲内で任意に変更することができる。
【0012】
請求項3に示すように請求項1又は2に記載の膜を用いた2元給水システムにおいて、前記施設内の戸別に、前記ろ過水と濃縮水との使用量を別々に計量する水道メータを設けたことを特徴としている。これにより、ろ過水の使用量と濃縮水の使用量に応じて水道料の徴収が可能になる。
【0013】
請求項4に示すように請求項1から3のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システムにおいて、前記水道水とろ過水と濃縮水との単位使用量当たりの使用料金は、
ろ過水>水道水≧濃縮水
の関係となるように設定されていることを特徴としている。
【0014】
即ち、ろ過水の使用料金は、水道水よりも高いが、市販の飲料水よりも十分に安価に設定することができる。一方、濃縮水の使用料金は、水道水以下とすることができる。
【0015】
請求項5に示すように請求項1から4のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システムにおいて、前記浄水処理装置に使用されるろ過膜は、逆浸透膜又はナノろ過膜であることを特徴としている。
【0016】
請求項6に示すように請求項1から5のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システムにおいて、前記浄水処理装置は、前記ろ過膜に供給する水道水のペーハー(pH)を制御するpH制御手段を備え、前記ろ過水に含まれる残留塩素濃度を制御することを特徴としている。
【0017】
請求項7に示すように請求項1から6のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システムにおいて、前記浄水処理装置によって軟水化されたろ過水に、ミネラル分を添加するミネラル添加手段を更に設けたことを特徴としている。これにより、人体に必要なミネラル分を補給することができるとともに、味の良い飲料水にすることができる。
【0018】
請求項8に示すように請求項1から7のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システムにおいて、前記浄水処理装置は、前記浄水場から送水される水道水を加圧する供給ポンプと、前記加圧された水道水を分離するためのろ過膜を備えた分離手段と、前記分離されたろ過水を貯留するろ過水貯留タンクと、前記分離された濃縮水を貯留する濃縮水貯留タンクと、前記ろ過水貯留タンク内のろ過水の水位を計測する第1の水位センサと、前記濃縮水貯留タンク内の濃縮水の水位を計測する第2の水位センサと、前記供給ポンプの前段に配設された第1の弁と、前記分離手段と濃縮水貯留タンクとの間の配管に配設され、該分離手段によって分離されるろ過水の回収率を可変にするための第2の弁と、前記第1、第2の水位センサの計測値に基づいて前記供給ポンプの駆動及び前記第1、第2の弁の開閉を制御する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
これにより、施設全体で使用されるろ過水と濃縮水の使用量、及びその比率に合わせてろ過水と濃縮水を供給できるようにしている。
【0020】
請求項9に示すように請求項8に記載の膜を用いた2元給水システムにおいて、前記浄水場から送水される水道水を前記濃縮水貯留タンクに直接供給する配管に配設された第3の弁を更に備え、前記制御手段は、前記第1、第2の水位センサの計測値に基づいて前記供給ポンプの駆動、及び前記第1、第2、第3の弁の開閉を制御することを特徴としている。
【0021】
これにより、濃縮水が短時間に大量に使用される場合であっても、濃縮水貯留タンクを必要以上に大きくすることなく対応できるようにしている。
【0022】
請求項10に示すように請求項8又は9に記載の膜を用いた2元給水システムにおいて、前記濃縮水貯留タンク内の濃縮水の電気伝導度を計測する電気伝導度計を更に備え、前記制御手段は、前記第1、第2の水位センサの計測値、前記電気伝導度計の計測値に基づいて前記供給ポンプの駆動、及び前記第1、第2の弁の開閉を制御することを特徴としている。これにより、濃縮水貯留タンク内の濃縮水の電気伝導度(水質)を、生活用水として使用可能な最小限のレベルに維持することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、浄水場から老朽化した水道本管にて送水された水道水であっても、ユースポイント付近に設置された浄水処理装置によってろ過水と濃縮水とに分離し、ろ過水は飲料水として供給し、濃縮水は生活用水として供給するようにしたため、浄水場から供給される水道水を無駄にすることなく、かつ飲料水に適した水を利用者に安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明に係る膜を用いた2元給水システムの好ましい実施の形態について説明する。
【0025】
<システムの概念>
図1は本発明に係る膜を用いた2元給水システムの概念図である。
【0026】
この膜を用いた2元給水システム(以下、「2元給水システム」という)10は、マンション、団地等の集合住宅、オフィスビル、大規模なコミュニティ施設等の所定の管理された施設内又はその近傍(ユースポイント付近)に設置され、浄水場12から水道本管14を通して送水された水道水を、ろ過膜モジュール(この実施の形態では、RO膜モジュール(逆浸透膜モジュール))にてろ過水と濃縮水とに分離し、高度浄水処理されたろ過水は、飲料水として供給し、RO膜モジュールから排出された濃縮水は、生活用水(洗濯、風呂、トイレ等で使用する水)として供給する。
【0027】
これにより、浄水場12から供給される水道水に不純物が含まれ、また、長距離にわたって埋設されている水道本管14の老朽化によって水道水が再度汚染され、飲料に適した水道水が得られない場合であっても、ユースポイント付近に設置された2元給水システム10によって水道水を高度浄水処理することにより、飲料に適したろ過水(飲料水)と、濃縮水(生活用水)とを供給することができる。
【0028】
尚、RO膜モジュールによって膜ろ過されたろ過水は、市販されている飲料水と同等の水質となる。
【0029】
また、ろ過水の使用量は、濃縮水の使用量に比べて非常に少ないことが予想されるため、ろ過水の回収率は低くする。これによれば、濃縮水中の不純物の濃度が水道水に比べて大幅に増加せず、誤って飲用しても支障がないようにすることができる。また、ろ過水の回収率を低くして2元給水システム10を運転すると、RO膜への負荷が小さくなり、RO膜の寿命を延ばすことができる。
【0030】
<水道使用方法>
図2は上記2元給水システム10から供給される集合住宅でのろ過水と濃縮水の使用方法を示す図である。
【0031】
2元給水システム10によって高度浄水処理されたろ過水は、第1の配管20を通して集合住宅の各世帯ごとに配水され、同様に濃縮水は、第2の配管22を通して集合住宅の各世帯ごとに配水される。
【0032】
ろ過水及び濃縮水は、風呂、洗濯、トイレ等において、別々に使用することができるとともに、ろ過水と濃縮水とを混合して使用することができる。
【0033】
ろ過水と濃縮水とを混合して使用する場合には、図3に示すような混合水栓24を使用する。混合水栓は、通常、水道水と給湯器からの湯水とが供給されるようになっているが、この混合水栓24は、ろ過水と濃縮水とが供給されるようになっている。
【0034】
また、混合水栓24のレバー24Aの左右方向の回転角度を調整することで、混合比を変えることができ、利用者は、使用用途、使用料金に応じて水質を適宜選択することができる。
【0035】
一方、図2に示すように、第1の配管20及び第2の配管22には、各世帯ごとに、ろ過水と濃縮水との使用量を別々に計量する水道メータ30、及び32が設けられている。
【0036】
また、浄水場12から2元給水システム10に供給される水道水の使用量を計量する水道メータ34が設けられている。
【0037】
ここで、水道水に対して、ろ過水と濃縮水との単位使用量当たりの使用料金は、以下の関係になるように設定される。
【0038】
ろ過水>水道水≧濃縮水
即ち、ろ過水は、コストをかけて高度浄水処理されているため、水道水よりも高く設定する。ただし、ペットボトル等によって市販されている飲料水よりも十分に安価(例えば、100分の1程度)に設定することができる。
【0039】
一方、濃縮水は、水質が水道水以下であるため、その使用料金は、水道水以下に設定する。
【0040】
水道局は、水道メータ34によって計量した水道水の使用量に基づいて2元給水システム10の管理者、又は2元給水システム10を利用している集合住宅の管理者(管理組合)に対して水道料金を徴収する。
【0041】
一方、2元給水システム10の管理者、又は集合住宅の管理者は、各世帯ごとに水道メータ30、及び32によって計量した使用量、及びろ過水と濃縮水別に設定された単位使用量当たりの使用料金に基づいて算出された使用料金を徴収する。
【0042】
これにより、各世帯ごとに徴収される水道料金の合計は、水道局に支払う水道料金よりも高くすることができ、その差額は、浄水処理装置(RO膜モジュール)のメンテナンスに運用することができる。
【0043】
尚、水道局は、各世帯ごとに設けられた水道メータ30、及び32によって計量した使用量の合計を水道料の使用量と見なして、各世帯ごとに水道料金を徴収するようにしてもよい。ただし、この場合には、2元給水システム10の管理者、又は集合住宅の管理者は、水道メータ30によって計量したろ過水の使用量に基づいて、各世帯ごとにろ過水の使用料金を別途徴収する。
【0044】
<浄水処理装置>
図4は本発明に係る2元給水システム10に適用される浄水処理装置40の実施の形態を示す装置構成図である。
【0045】
この浄水処理装置40は、供給ポンプP1と、pH制御装置41と、RO膜モジュール42と、ろ過水貯留タンク44と、濃縮水貯留タンク46と、水位センサLS1、LS2と、電気伝導度計EC1、EC2と、弁M1〜M4と、コントローラ48と、ミネラル添加装置50とから構成されている。
【0046】
浄水場12から供給される水道水は、弁M1、pH制御装置41及び供給ポンプP1を介してRO膜モジュール42に加えられるとともに、弁M3を介して濃縮水貯留タンク46に加えられる。
【0047】
pH制御装置41は、RO膜モジュール42に供給する水道水のペーハー(pH)を制御するもので、例えば、カセイソーダを注入することにより水道水のpHが高く(アルカリ性が強く)なるように制御し、塩酸や硫酸を注入することによりpHが低く(酸性が強く)なるように制御する。
【0048】
上記pH制御装置41によりRO膜モジュール42に供給する水道水のpHを制御することにより、ろ過水(処理水)の残留塩素濃度を制御するようにしている。
【0049】
図5は原水のpHと原水及び処理水の残留塩素濃度との関係を示すグラフである。同グラフに示すように、原水のpHが高いほど、処理水残留塩素濃度が低くなることが、実験結果によって確認された。
【0050】
また、原水のpHが高いほど、処理水残留塩素濃度が低くなる理由としては、以下の理由が考えられる。
【0051】
浄水場12から供給される原水(水道水)には、水道水の消毒のために、塩素系薬剤が注入されている。塩素系薬剤が水に溶解した時にできる次亜塩素酸は、pHに依存して、その存在状態が変化し、pHが高くなるにつれて塩素ガス(Cl2)、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)と存在状態が変化する。
【0052】
RO膜モジュール42では、次亜塩素酸イオン(ClO-)をより多く除去することができるため、pHの高い水道水(次亜塩素酸イオン(ClO-)が多く含まれる水道水)ほど、処理水の残留塩素濃度が低くなることが考えられる。
【0053】
弁M1を開き、供給ポンプP1を駆動(ON)することにより、水道水がRO膜モジュール42に圧送される。また、RO膜モジュール42の排水管に設けられた弁M2の開度を調整することにより、RO膜モジュール42に圧送される水道水の圧力(ろ過水の回収率)を調整することができるようになっている。
【0054】
尚、この実施の形態のように、RO膜モジュール42を使用する場合には、水道水の圧力を1MPa〜3MPaにする。また、NF膜モジュール(ナノろ過膜モジュール)を使用する場合には、水道水の圧力を0.35MPa〜2MPaにする。
【0055】
RO膜モジュール42によって高度浄水処理されたろ過水は、ミネラル添加装置50を経由してろ過水貯留タンク44に貯留される。
【0056】
RO膜モジュール42は、2価のイオンまで除去することができるため、ミネラルも除去される。そこで、ミネラル添加装置50は、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)をろ過水に添加し、バランスのよいミネラル水にする。尚、ナトリウムやカリウムも添加するようにしてもよい。これにより、人体に必要なミネラル分を補給することができるとともに、味のよい飲料水にすることができる。
【0057】
一方、RO膜モジュール42から排出された濃縮水は、弁M2を介して濃縮水貯留タンク46に貯留される。
【0058】
また、弁3を開くことにより、水道水を直接濃縮水貯留タンク46に送水することができる。例えば、濃縮水が短時間に大量に使用される場合には、RO膜モジュール42からの濃縮水のみでは、その需要に間に合わなくなるが、この場合には、弁3を開き、水道水を直接濃縮水貯留タンク46に送水する。これにより、濃縮水貯留タンク46を必要以上に大きくすることなく、濃縮水の大量使用に対応することができるようにしている。
【0059】
更に、濃縮水の濃度が高くなりすぎた場合に、弁3を開くことで、濃縮水を水道水で希釈することができる。また、濃縮水の濃度が高くなりすぎた場合に、弁M4を開き、ろ過水によって濃縮水を希釈することもできるようになっている。
【0060】
水位センサLS1は、ろ過水貯留タンク44に貯留されたろ過水の水位を計測し、その計測値をコントローラ48に出力し、同様に、水位センサLS2は、濃縮水貯留タンク4に貯留された濃縮水の水位を計測し、その計測値をコントローラ48に出力する。
【0061】
また、電気伝導度計EC1は、ろ過水貯留タンク44に貯留されたろ過水の電気伝導度(水中の電解質の量)を計測し、その計測値をコントローラ48に出力し、同様に、電気伝導度計EC2は、濃縮水貯留タンク4に貯留された濃縮水の電気伝導度を計測し、その計測値をコントローラ48に出力する。尚、電気伝導度が高いほど、水中に電解質の量(不純物等)が多くなるため、電気伝導度計EC1,EC2からの計測値に基づいて水質を把握することができる。
【0062】
コントローラ48は、水位センサLS1、LS2からの計測値、及び電気伝導度計EC1、EC2からの計測値に基づいて供給ポンプP1、及び弁M1〜M4を制御することにより、ろ過水貯留タンク44に貯留されるろ過水の水量(水位)、濃縮水貯留タンク46に貯留される濃縮水の水量(水位)、及び水質を制御する。尚、このコントローラ48による浄水処理装置40の運転制御の詳細については、後述する。
【0063】
ろ過水貯留タンク44に貯留されたろ過水は、供給ポンプP2によって加圧され、第1の配管20を通して各世帯へ飲料水として配水され、また、濃縮水貯留タンク46に貯留された濃縮水は、供給ポンプP3によって加圧され、第2の配管22を通して各世帯へ生活用水として配水される(図2参照)。
【0064】
<2元給水システムの運転フロー>
図6は図4に示した浄水処理装置40の運転内容を示すフローチャートである。
【0065】
コントローラ48は、水位センサLS1から入力する計測値に基づいてろ過水貯留タンク44に貯留されたろ過水の水位が、予め設定された最低水位L1よりも低いか否かを判別する(ステップS10)。
【0066】
ろ過水の水位が最低水位L1以上である(No)と判別されると、コントローラ48は、水位センサLS2から入力する計測値に基づいて濃縮水貯留タンク46に貯留された濃縮水の水位が、予め設定された最低水位L2よりも低いか否かを判別する(ステップS12)。
【0067】
濃縮水の水位も最低水位L2以上(No)と判別されると、コントローラ48は、運転を停止状態に維持する。
【0068】
ステップS10において、ろ過水の水位が最低水位L1よりも低い(Yes)判別されると、コントローラ48は、弁M1を開くとともに、弁M2を最大回収率の開度に開き(ステップS14)、供給ポンプP1を駆動(ON)する(ステップS16)。尚、この実施の形態では、ろ過水の最大回収率を50%としている。
【0069】
続いて、コントローラ48は、電気伝導度計EC2から入力する計測値に基づいて濃縮水貯留タンク46に貯留された濃縮水の電気伝導度が、予め設定された最大値H2(濃縮水の不純物の許容値)よりも低いか否かを判別する(ステップS18)。
【0070】
濃縮水の電気伝導度が最大値H2よりも低い(Yes)と判別されると、コントローラ48は、濃縮水の水位が予め設定された最高水位H2よりも低いか否かを判別する(ステップS20)。
【0071】
濃縮水の水位が最高水位H2よりも低い(Yes)と判別されると、コントローラ48は、ろ過水の水位が予め設定された最高水位H1よりも高いか否かを判別する(ステップS22)。
【0072】
ステップS20において、濃縮水の水位が最高水位H2以上(No)と判別され、又はステップS22において、ろ過水の水位が最高水位H1よりも高い(Yes)と判別されると、コントローラ48は、供給ポンプP1の駆動を停止(OFF)するとともに、弁M1及び弁M2を閉じる(ステップS24、S26)。これにより、2元給水システムの運転は停止させられる。
【0073】
一方、ステップS20において、濃縮水の水位が最高水位H2よりも低い(Yes)と判別され、かつステップS22において、ろ過水の水位が最高水位H1以下(No)と判別されると、ステップS14に戻り、ろ過水の最大回収率の運転が継続される。
【0074】
ろ過水の最大回収率の運転中に、ステップS18において、濃縮水の電気伝導度が最大値H2以上(No)と判別されると、コントローラ48は、濃縮水の水位が最高水位H2よりも低いか否かを判別する(ステップS28)。
【0075】
ステップS28において、濃縮水の水位が最高水位H2よりも低い(Yes)と判別されると、コントローラ48は、弁M2を最小回収率の開度に調整し(ステップS30)、ステップS18に遷移させる。これにより、2元給水システムを最小回収率で運転する。
【0076】
尚、この実施の形態では、ろ過水の最大回収率を10%としている。従って、最小回収率の運転が継続されると、濃縮水貯留タンク46に貯留された濃縮水の電気伝導度は徐々に低くなる。
【0077】
一方、ステップS28において、濃縮水の水位が最高水位H2以上(No)と判別されると、コントローラ48は、ろ過水の水位が最低水位L1よりも高いか否かを判別する(ステップS32)。
【0078】
ろ過水の水位が最低水位L1以下(No)と判別されると、コントローラ48は、ステップS14に遷移させ、最大回収率の運転を継続させる。この場合、濃縮水は、最高水位H2以上となり、濃縮水貯留タンク46からオーバーフローする場合もある。
【0079】
ステップS32において、ろ過水の水位が最低水位L1以上である(Yes)と判別されると、コントローラ48は、ステップS24に遷移させ、運転を停止させる。
【0080】
一方、ステップS10において、ろ過水の水位が最低水位L1以上である(No)と判別され、かつステップS12において、濃縮水の水位が最低水位L2よりも低い(Yes)と判別されると、コントローラ48は、ろ過水の水位が最高水位H1よりも低いか否かを判別する(ステップS34)。
【0081】
ろ過水の水位が最高水位H1よりも低い(Yes)と判別されると、コントローラ48は、弁M2を最小回収率の開度に開き(ステップS36)、供給ポンプP1を駆動(ON)する(ステップS38)。即ち、ろ過水の水位は、最低水位L1以上になっているため、最小回収率で運転し、濃縮水の排出量が多くなるようにしている。
【0082】
ろ過水の最小回収率の運転中に、ステップS34において、ろ過水の水位が最高水位H1以上(No)と判別されると、コントローラ48は、供給ポンプP1の駆動を停止(OFF)するとともに、弁M1及び弁M2を閉じ(ステップS40、S42)、弁M3を開く(ステップS44)。
【0083】
弁M3を開くことにより、水道水が直接濃縮水貯留タンク46に供給される。これにより、濃縮水貯留タンク46に貯留される濃縮水の水位を上昇させることができるとともに、濃縮水を希釈することができる。
【0084】
続いて、コントローラ48は、濃縮水の水位が最高水位H2よりも高いか否かを判別する(ステップS46)。そして、濃縮水の水位が最高水位H2以下(No)と判別されると、コントローラ48は、ステップS34に遷移させ、水道水の濃縮水貯留タンク46への供給を継続させる。一方、濃縮水の水位が最高水位H2よりも高い(Yes)と判別されると、コントローラ48は、ステップS34に遷移させ、弁M3を閉じ、水道水の濃縮水貯留タンク46への供給を停止する。
【0085】
尚、この実施の形態では、ミネラル添加装置50により、ろ過水にミネラル分を添加し、ろ過水の付加価値を高めるようにしたが、ミネラル添加装置50を設置するか否かは、ろ過水の料金設定との関係で、適宜選択できるようにしてもよい。
【0086】
また、本発明に係る2元給水システムに使用するろ過膜は、RO膜に限らず、NF膜等の他のろ過膜を使用してもよい。
【0087】
更に、2元給水システムの運転方法は、この実施の形態の運転フローに示した方法に限定されず、要は、ろ過水と濃縮水とを過不足なく供給できるように運転する方法であれば、如何なる方法でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は本発明に係る膜を用いた2元給水システムの概念図である。
【図2】図2は膜を用いた2元給水システムから供給される集合住宅でのろ過水と濃縮水の使用方法を示す図である。
【図3】図3はろ過水と濃縮水とを混合する混合水栓の一例を示す図である。
【図4】図4は本発明に係る膜を用いた2元給水システムに適用される浄水処理装置の実施の形態を示す装置構成図である。
【図5】図5は原水のpHと原水及び処理水の残留塩素濃度との関係を示すグラフである。
【図6】図6は図4に示した浄水処理装置の運転内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
10…膜を用いた2元給水システム、12…浄水場、14…水道本管、20…第1の配管、22…第2の配管、24…混合水栓、30、32、34…水道メータ、40…浄水処理装置、41…pH制御装置、42…RO膜モジュール、44…ろ過水貯留タンク、46…濃縮水貯留タンク、48…コントローラ、50…ミネラル添加装置、P1、P2、P3…供給ポンプ、M1、M2、M3、M4…弁、LS1,LS2…水位センサ、EC1、EC2…電気伝導度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅、オフィスビル等の所定の管理された施設内又はその近傍に設置され、浄水場から水道本管にて送水された水道水を取り込み、該水道水をろ過膜によってろ過水と濃縮水とに分離する浄水処理装置と、
前記浄水処理装置によって処理されたろ過水を飲料水として前記施設に配水する第1の配水装置と、
前記浄水処理装置によって処理された濃縮水を生活用水として前記施設に配水する第2の配水装置と、
から構成されたことを特徴とする膜を用いた2元給水システム。
【請求項2】
前記第1の配水装置から配水されたろ過水と前記第2の配水装置により配水された濃縮水とを任意の比率で混合可能な混合水栓を備えたことを特徴とする請求項1に記載の膜を用いた2元給水システム。
【請求項3】
前記施設内の戸別に、前記ろ過水と濃縮水との使用量を別々に計量する水道メータを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の膜を用いた2元給水システム。
【請求項4】
前記水道水とろ過水と濃縮水との単位使用量当たりの使用料金は、
ろ過水>水道水≧濃縮水
の関係となるように設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システム。
【請求項5】
前記浄水処理装置に使用されるろ過膜は、逆浸透膜又はナノろ過膜であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システム。
【請求項6】
前記浄水処理装置は、前記ろ過膜に供給する水道水のペーハー(pH)を制御するpH制御手段を備え、前記ろ過水に含まれる残留塩素濃度を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システム。
【請求項7】
前記浄水処理装置によって軟水化されたろ過水に、ミネラル分を添加するミネラル添加手段を更に設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システム。
【請求項8】
前記浄水処理装置は、
前記浄水場から送水される水道水を加圧する供給ポンプと、
前記加圧された水道水を分離するためのろ過膜を備えた分離手段と、
前記分離されたろ過水を貯留するろ過水貯留タンクと、
前記分離された濃縮水を貯留する濃縮水貯留タンクと、
前記ろ過水貯留タンク内のろ過水の水位を計測する第1の水位センサと、
前記濃縮水貯留タンク内の濃縮水の水位を計測する第2の水位センサと、
前記供給ポンプの前段に配設された第1の弁と、
前記分離手段と濃縮水貯留タンクとの間の配管に配設され、該分離手段によって分離されるろ過水の回収率を可変にするための第2の弁と、
前記第1、第2の水位センサの計測値に基づいて前記供給ポンプの駆動及び前記第1、第2の弁の開閉を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の膜を用いた2元給水システム。
【請求項9】
前記浄水場から送水される水道水を前記濃縮水貯留タンクに直接供給する配管に配設された第3の弁を更に備え、
前記制御手段は、前記第1、第2の水位センサの計測値に基づいて前記供給ポンプの駆動、及び前記第1、第2、第3の弁の開閉を制御することを特徴とする請求項8に記載の膜を用いた2元給水システム。
【請求項10】
前記濃縮水貯留タンク内の濃縮水の電気伝導度を計測する電気伝導度計を更に備え、
前記制御手段は、前記第1、第2の水位センサの計測値、前記電気伝導度計の計測値に基づいて前記供給ポンプの駆動、及び前記第1、第2の弁の開閉を制御することを特徴とする請求項8又は9に記載の膜を用いた2元給水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−74279(P2009−74279A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242835(P2007−242835)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】