説明

膜分離デバイスおよび膜分離方法

【課題】 マイクロ流体デバイス内で物質の膜分離が可能で、かつ、透過速度の違いで分離する系や分離膜の分離能が小さい系においても、高度の分離が可能な膜分離デバイス及び膜分離方法を提供すること。
【解決手段】 流体に含まれる二以上の物質を相互に分離するデバイスであって、流体を流入させる流入口を有し、第一物質と第二物質に対する分離特性が互いに異なる第一分離膜と第二分離膜がそれぞれ流路壁に設けられてなり、且つ、第一分離膜と第二分離膜との膜表面間の平均距離が1〜200μmの範囲にある供給側流路と、第一分離膜を介して供給側流路1と接合され、第一分離膜を透過する流体を流出させる第一流出口を有する第一透過側流路と、第二分離膜を介して供給側流路と接合され、第二分離膜を透過する流体を流出する第二流出口を有する第二透過側流路とからなる分離ユニットを一以上有する膜分離デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体に含まれる物質を分離することのできる膜分離デバイス、および流体に含まれる物質を分離する膜分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、化学反応の高速化、複生成物の減少、条件検討の高速化、等が図れる上、省エネ、省資源、減廃棄物などの時代の要求に沿った技術であるため、今後の化学反応装置として期待されている。
【0003】
マイクロ流体デバイスの用途の多くにおいて物質の分離が必要になるが、マイクロ流体デバイスに組み込める分離手段は限られていた。マイクロ流体デバイスに適用可能な分離手段の一つに膜分離があり、組み込むことの出来る分離膜としては、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、透析膜、気体分離膜などが知られている(特許文献1)。また、マイクロ流体デバイスに適用出来る膜分離方式としては、分離膜の一次側に導入された流体を全て透過させ、非透過物質のみを一次側に残す全濾過方式と、一次側に導入された流体を膜面に平行に流し、その一部を透過させ、易透過性物質が濃縮された流体を透過側の流出口から取り出すと共に、非(難)透過物質が濃縮された流体を一次側に設けられた流出口から連続的に取り出すクロスフロー方式が知られている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、例えば気体分離のように透過速度の違いで分離する系や、分離膜の分離能(例えば阻止率)が小さい系の分離は、全濾過方式では分離できず、クロスフロー式でも一回の分離では分離が不十分であるため、多段膜分離を必要とした。しかし、多段膜分離システムは各段毎に加圧のためのポンプが必要となるため、マイクロ流体デバイスに組み込むことは相当に困難であり、非効率であった。
【0005】
さらに、既知の分離膜や膜分離方式では、例えば異なる塩基配列を持つDNAの分離や光学分割は、膜分離による分離能が非常に低いため、膜分離は実用化されていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2000-237556
【特許文献2】特開2000-262871
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、マイクロ流体デバイス内で物質の膜分離が可能で、かつ、透過速度の違いで分離する系や分離膜の分離能が小さい系においても、高度の分離が可能で、さらに、多数の加圧ポンプを必要としない膜分離デバイス及び膜分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、膜の一次側に導入される流体を、特定の間隔で設けられた互いに分離特性の異なる2つの分離膜のいずれかを透過させる方式により、高効率な分離が可能なこと、及び、上記の分離機構を多段に接続した多段膜分離システムを構築することによって、各段に加圧ポンプを必要としないことを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、流体に含まれる第一物質および第二物質を相互に分離するデバイスであって、
前記流体を流入させる流入口6を有し、前記第一物質と前記第二物質に対する分離特性が互いに異なる第一分離膜2と第二分離膜3がそれぞれ流路壁に設けられてなり、且つ、前記第一分離膜2と前記第二分離膜3との膜表面間の平均距離が1〜200μmの範囲にある供給側流路1と、
前記第一分離膜2を介して前記供給側流路1と接合され、前記第一分離膜2を透過する流体を流出させる第一流出口7を有する第一透過側流路4と、
前記第二分離膜3を介して前記供給側流路1と接合され、前記第二分離膜3を透過する流体を流出する第二流出口8を有する第二透過側流路5と、
からなる分離ユニットを一以上有することを特徴とする膜分離デバイスを提供する。
【0010】
また、本発明は、流体に含まれる第一物質および第二物質を相互に分離する分離方法であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載の膜分離デバイスの流入口6に分離すべき流体を導入し、前記第一流出口7から前記第一物質が濃縮された流体を取り出し、前記第二流出口8から前記第二物質が濃縮された流体を取り出すことを特徴とする分離方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の膜分離デバイス及び膜分離方法は、マイクロ流体デバイス内において膜分離が可能であり、特に、透過速度の違いで分離する系や、分離膜の分離能が小さい系においても高度の分離が可能である。また、上記の分離ユニットを特定の様式で多段接続することによって、各段に加圧ポンプを必要とせず、高い収率で高度に分離することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の膜分離デバイスおよび膜分離方法は、流体に含まれる二種の物質、即ち第一物質と第二物質を相互に分離することが出来る。第一物質と第二物質は、例えば互いに混合している二種の気体(但し、本明細書に於いて「気体(ガス)」は「蒸気」を含むものとする。)、溶質と溶媒、分散質と分散媒であって良い。第一物質と第二物質が、液体の溶質と溶媒である例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの水溶性有機液体と水との混合物が挙げられる。第一物質と第二物質が固体の溶質と溶媒である例としては、ポリ(オリゴ)ヌクレオチド、糖鎖、ポリ(オリゴ)ペプチドなどの生化学物質の水溶液、種々の化学物質の水溶液や有機溶剤溶液などが挙げられる。上記の物質のどちらを第一物質とするかは任意である。
【0013】
前記第一物質と第二物質はまた、互いに混合している三種類以上の物質から成る流体中の二種類の物質であり得る。このような例としては、気体(キャリアガス)中に含まれる、キャリアガス以外の二種の気体、共通の溶媒に含まれる二種類の溶質が挙げられる。二種類の溶質の例としては、塩基配列の異なるポリ(又はオリゴ)ヌクレオチド、互いに構造の異なる糖鎖、アミノ酸配列の異なるポリ(又はオリゴ)ペプチドなどの生化学物質、光学異性体、溶媒中での合成反応の生成物と副生成物が挙げられる。
【0014】
しかしながら、本明細書に於いては説明の煩雑化を避けるため、特に断りのない限り、流体が液体の場合であって、溶液に含まれる2種類の溶質を第一物質および第二物質とする場合を例にして説明する。
【0015】
[膜分離デバイス(分離ユニット)の基本構成]
図1は本発明の膜分離デバイスの基本構成の概念図である。本膜分離デバイス100は、内部に供給側流路1が形成され、該供給側流路1に面して2つの分離膜、即ち第一分離膜2および第二分離膜3が形成され、前記第一分離膜2を介して前記供給側流路11と接合された第一透過側流路4、及び、前記第二分離膜3を介して前記供給側流路11と接合された第二透過側流路5が形成されている。また、供給側流路1には流入口6が設けられ、第一透過側流路4には第一流出口7が設けられ、第二透過側流路5には第二流出口8が設けられている。即ち、本膜分離デバイス100の流入口6に原液を導入すると、該原液は供給側流路1に入り、その一部は第一分離膜2を透過し、第一透過側流路4を経て第一流出口7から流出し、また、一部は第二分離膜2を透過し、第二透過側流路5を経て第二流出口8から流出する。ここで、第一分離膜2と第二分離膜3は、後述のように、分離対象物質に対して異なる分離特性を有する。
【0016】
本膜分離デバイス100を構成する素材は任意であり、例えば、ガラス、ステンレススチールなどの金属、シリコンなどの半導体、石英などの結晶、セラミック、炭素、有機重合体などが使用できる。その有機重合体には、ポリジメチルシロキサンやSNポリマーのように、厳密には無機重合体に分類される場合もあるが通常は有機重合体として扱うものも含まれる。これらの材料にはそれぞれ長短があり、目的の分離系に応じて好適なものを選択すればよい。特に有機重合体は、後述の流路内壁を親水性や溶質の吸着防止性に調節する自由度が高いため、耐熱性や耐有機溶剤性に問題がない系では好ましい。耐熱性や耐有機溶剤性が必要な場合には、ガラスを選択することが好ましい。
【0017】
膜分離デバイス100の外形は任意であり、例えば板状(直板状、曲板状を含む)、シート(フィルム、ベルト、リボンなどを含む)状、棒状、塊状などであって良い。これらの中で、板状又はシート状であることが、製造の容易性から好ましく、また他のマイクロ流体デバイスと一体化することの容易性からも好ましい。膜分離デバイス100内における供給側流路1、第一分離膜2、第二分離膜3、第一透過側流路4、第二透過側流路5などの配置は任意であり、後述の実施態様のように、例えば平面型や立体型に配置できる。
【0018】
(供給側流路)
供給側流路1の流路壁には第一分離膜2と第二分離膜3が形成されている。第一分離膜2と第二分離膜3が形成される壁面は任意であり、供給側流路1の断面の周上において異なる範囲を占めていればよいが、供給側流路1の互いに対向した面に形成されていることが、分離能を向上させ易く、製造も容易であるため好ましい。本発明の膜分離デバイスは、供給側流路1の第一分離膜2と第二分離膜3間の平均距離(以後、「膜間距離」と称する場合がある。)が1〜200μmであり、5〜150μmが好ましく、10〜100μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと、特に流体が液体である場合に、圧力損失が大きくなると共に製造が困難となり、この範囲を越えると分離能が低下する。即ち、この上限以下とすることによって、供給側流路1内において拡散混合による濃度の均一化が計られ、膜透過に起因する濃度分極が抑えられる結果、高い分離効率が得られる。
【0019】
第一分離膜2と第二分離膜3が互いに平行に設けられている場合、供給側流路1の、前記分離膜が形成された平面に直角で、かつ流れ方向に直角方向の寸法(以後、供給側流路1の「幅」と称する。)は、任意であるが、供給側流路1の厚み以上であることが、処理量を増すことが出来るため好ましい。上限は特に定める必要はないが、マイクロ流体デバイスとしての特徴を失わない範囲が好ましく、例えば10cm以下が好ましく、5cm以下がさらに好ましい。
【0020】
供給側流路1は直線状の他、任意の形状であって良く、曲線、渦巻き、ジグザグ(折りたたみ状)、分岐部と合流部を有しその間が平行線状の形状、あるいは櫛形などであってよい。供給側流路1の幅が広い場合には、膜間距離を一定に保つために、供給側流路1の中に、柱や壁などのスペーサーとなる構造を設けることも好ましい。
【0021】
また、供給側流路1は、常態では分離膜に非接着状態で接触していて間隙がゼロであるが、供給側流路1に流体を導入するとその圧力で分離膜との間に間隙が出来、それが原液型流路1となっても良い。
【0022】
供給側流路1の長さは任意であるが、100μm〜100mmが好ましく、200μm〜30mmがより好ましく、300μm〜10mmがさらに好ましい。この範囲とすることによって、低い圧力損失と十分な処理量が得られる。
【0023】
(流入口6)
供給側流路1には流入口6が設けられている。供給側流路1に対する流入口6の位置は任意であり、供給側流路1の長手方向の一端であっても途中であっても良い。流入口6は本膜分離デバイス100に設けられた流入口6に接続されてもよいし、本膜分離デバイス100が反応槽などの機構を有するマイクロ流体デバイスと一体化されていて、それらの機構に接続されていてもよい。また後述のように、膜分離デバイス100は、本基本構成を分離ユニットとする多段接続型である場合には、前段の第一流出口7及び/又は第二流出口8に接続されていても良い。
【0024】
流入口6は、分離デバイスの外部に開口していてもよいし、配管が接続されていても良い。流入口6が分離デバイスの外部に開口している場合には、どの部材側に開口するかは任意である。
【0025】
(第一分離膜および第二分離膜)
第一分離膜2と第二分離膜3(以下、両者を併せて、「分離膜」又は単に「膜」と称する場合がある)は、第一物質と第二物質に対する分離特性が互いに異なる分離膜であれば良い。例えば、(1)第一分離膜2は第一物質に対して第二物質より高い透過性を示し、第二分離膜3は第二物質に対して第一物質より高い透過性を示す場合、(2)第一分離膜2は第一物質に対して第二物質より高い透過性を示し、第二分離膜3は第一物質と第二物質に対して選択透過性を示さない場合、(3)第一分離膜2は第一物質に対して第二物質より高い透過性を示し、第二分離膜3は第一物質に対して第二物質より高い透過性を示すが、その程度は第一分離膜2より低い場合、が挙げられる。
【0026】
ここで、「より高い透過性を示す」とは、任意の分離方法によって、選択的により多く透過させることが出来ることを意味し、例えば定常条件において、より高い透過速度を示すことの他、後述の温度を周期的に変化させる分離方法において、低温条件と高温条件における膜への吸着量の差がより大きいこと等が含まれる。
【0027】
なお、以下、特に断らない限り、第一分離膜2は第一物質に対して第二物質より高い透過性を示し、かつ第二分離膜3は、第一物質に対して第二物質より低い透過性を示すか、同等の透過性を示すか、若しくは前記第一物質に対して第二物質より高い透過性を示すがその程度は第一分離膜2より低いものとして説明する。
【0028】
定常条件において第一物質に対して第二物質より高い透過速度を示す分離膜の例としては、気体分離膜、浸透気化膜、透析膜、水/エタノール分離に於けるエタノール濃縮膜として使用するフッ素系多孔質膜、水/エタノール分離に於ける水濃縮膜として使用するポリイオン多孔質膜、光学分割に使用する光学異性体の一方の透過速度が他方より速い多孔質膜又は透析膜、特定塩基配列のDNAの透過速度が高い多孔質膜又は透析膜、特定構造の蛋白や糖鎖の透過速度が高い多孔質膜又は透析膜、イオン性物質分離における荷電膜を例示できる。なお、ここで言う「多孔質膜」とは、孔径にかかわらず、膜表裏を細孔が連絡している膜一般をいい、例えば、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜を例示できる。
【0029】
低温条件と高温条件における第一物質の分離膜への吸着量の差が第二物質より大きい膜としては、特定塩基配列のDNAをより多く吸着する多孔質膜や透析膜、特定構造の蛋白や糖鎖などの生化学物質をより多く吸着する多孔質膜や透析膜、イオン性物質分離における荷電膜を例示できる。このような吸着特性を付与する方法としては、例えば、膜表面に吸着すべき物質と親和性の強いプローブを固定した分離膜を例示できる。このような親和性は、分離対象が生化学物質の場合には、例えば抗原と抗体、酵素と基質、ポリ(オリゴ)ヌクレオチドの対立鎖等であり得る。また、分離すべき物質が化学物質などの場合には、水素結合、疎水結合、カチオン性/アニオン性等に基づく親和性であり得る。なお、第一物質及び/又は第二物質と第一分離膜との間の親和性と、第一物質及び/又は第二物質と第二分離膜との間の親和性とは、種類が異なっていても良い。
【0030】
また、第一分離膜2と第二分離膜3の選択透過特性の関係について、前記(1)の「第一分離膜2は前記第一物質に対して第二物質より高い透過性を示し、第二分離膜3は第二物質に対して第一物質より高い透過性を示す場合」としては、例えばイオン性の溶質と溶媒の分離の場合や、互いに塩基配列の異なるポリ(オリゴ)ヌクレオチドの分離、水と水溶性有機溶媒の分離等の場合に実施し得る。前記(2)の「第一分離膜2は前記第一物質に対して第二物質より高い透過性を示し、第二分離膜3は第一物質と第二物質に対して選択透過性を示さない場合」としては、例えば水/エタノールの分離の場合に実施し得る。前記(3)「第一分離膜2は前記第一物質に対して第二物質より高い透過性を示し、第二分離膜3は第一物質に対して第二物質より高い透過性を示すが、その透過性は第一分離膜より低い場合」としては、例えば第一分離膜2と第二分離膜3が共に気体分離膜の場合に実施し得る。
【0031】
前記第一分離膜2及び第二分離膜3として使用しうる分離膜の種類は任意であり、気体分離膜や浸透気化膜などの非多孔質膜、精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、およびこれらの表面修飾膜のような多孔質膜、透析膜のようなゲル膜であり得る。これらの中で多孔質膜が、圧力損失が小さいため好ましく、なかでも、精密濾過膜、限外濾過膜、およびこれらの表面修飾膜が、特に圧力損失が小さいため好ましい。第一分離膜と第二分離膜は種類が異なっても良いが、圧力損失がほぼ同じであることが好ましく、孔径が同じ程度の多孔質膜であることが好ましい。
【0032】
第一分離膜2及び第二分離膜3の素材は任意であり、例えば酸化珪素、アルミナ、ガラス、セラミック、炭素、金属、有機重合体(ポリマー)等から好適な素材を選択すればよい。これらの中で、有機重合体は、多孔質体の形成が容易であり、表面特性の制御も容易であるために好ましい。その中でも、活性エネルギー線硬化性樹脂が、微小な多孔質体の形成が容易であるため特に好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂による多孔質体及びその製造方法は、例えば本発明者等の出願による特開平7−316336号に記載のものを使用できる。この方法は、まず多孔質体を形成すべき供給側流路の壁面に、エネルギー線重合性化合物と、該化合物は溶解するがその重合体は溶解又は膨潤させない貧溶剤との混合物を塗布する。次に、該塗膜に紫外線などの活性エネルギー線を照射し、エネルギー線重合性化合物を重合硬化させると同時に相分離させて多孔質体と成し、さらに非照射部分の未硬化の該化合物を洗浄除去するものである。エネルギー線重合性化合物としては、例えばアクリロイル基やマレイミド基を有するモノマー又はオリゴマーを好適に使用することができる。また、前記多孔質体の素材が活性エネルギー線硬化性樹脂以外の物である場合には、例えば、ゾルゲル法、湿式相分離法、乾式相分離法、共連続ミクロ相分離体の一方の成分の溶出除去法、粉体の焼結法など、各素材に応じた公知の方法を使用できる。
【0033】
また、第一分離膜2及び第二分離膜3は必要な透過性を持たせたり、溶質の吸着を抑えたりするために表面処理を行っても良い。第一分離膜2及び第二分離膜3の素材や表面処理は互いに異なっていて良い。
【0034】
分離の処理量を大きくするためには、供給側流路1の膜間距離に対して、分離膜の面積を大きくすることが好ましい。また、膜分離デバイス100を板状又はシート状とし、該板面又はシート面と平行に供給側流路1の流線を配置して、なおかつ、第一分離膜2および第二分離膜3を該板面又はシート面と平行に形成した構造(即ち、後述の立体型)が、膜面積を大きくして処理量を増すことが容易で、製造も容易なため最も好ましい。次いで、第一分離膜2および第二分離膜3を該板面又はシート面に垂直に設けた構造(即ち、後述の平面型)が、微小な膜分離デバイスを形成することが容易で、多段型の製造も比較的容易であるため好ましい。本発明の膜分離デバイス100が多段型である場合には、供給側流路1毎、或いは段毎に、第一分離膜2および第二分離膜3の形成面が異なっていても良い。
【0035】
第一分離膜2および第二分離膜3の厚みは任意であるが、好ましくは10〜1000μm、さらに好ましくは20〜300μm、最も好ましくは30〜200μmである。この範囲とすることで、取り扱い性の容易さ、重分な強度、圧力損失の過大化の防止、及び、膜分離デバイス100のコンパクト化が図れる。
【0036】
第一分離膜2および第二分離膜3が多孔質膜である場合や多孔質支持層を有する分離膜である場合には、流体が該多孔質部の細孔を膜面に平行に流れて分離膜側面から漏洩することを防ぐため、該分離膜の周囲部の細孔を閉塞(目止め)することが好ましい。前記周囲部の目止めは、例えば、分離膜の周囲側面の目止めであってもよいし、分離膜の面内において供給側流路1及び透過側流路を含む領域を囲む部分の細孔の目止めであってもよいし、分離膜の面内において供給側流路1及び透過側流路を含む領域以外の部分の細孔の目止めであってもよいし、分離膜の面内において供給側流路1又は透過側流路と面する部分以外の部分の細孔の目止めであってもよい。
【0037】
目止めの方法は任意であり、例えば、目止めする部分の分離膜を圧迫して細孔をつぶす方法、目止めする部分の分離膜を加熱して細孔をつぶす方法、目止めする部分の細孔に物質を充填する方法などを例示できる。細孔に充填する物質は、選択的硬化が可能な物質、選択的不溶化が可能な物質、選択的可溶化が可能な物質、又は選択的分解が可能な物質であれば良く、活性エネルギー線硬化泳樹脂、活性エネルギー線架橋性樹脂、活性エネルギー線分解性樹脂、熱硬化性樹脂、熱分解性樹脂、光硬化性ガラスなどを例示できる。
【0038】
(第一透過側流路および第二透過側流路)
第一透過側流路4は、前記第一分離膜2を介して前記供給側流路1と接合された流路であり、前記第一分離膜2を透過する流体を流し、第一流出口7から流出させる。また、第二透過側流路5は、前記第二分離膜3を介して前記供給側流路1と接合され、前記第二分離膜3を透過する流体を流し、第二流出口8から流出させる。
【0039】
第一透過側流路4、第二透過側流路5(以下、この二者を併せて、単に「透過側流路」と称する場合がある)は、それぞれ膜面から対向面までの距離は任意であるが、1〜1000μmが好ましく、10〜510μmがさらに好ましい。この範囲とすることによって、圧力損失が過剰に大きくならず、デッドボリュームが過大にならず、かつ本膜分離デバイス100をコンパクトにできる。
【0040】
透過側流路の形状は任意であり、上記供給側流路1と、膜を挟んで対象な形状の空洞とすることが好ましいが、必ずしも供給側流路1と同じ形状(又は対称形)にする必要はない。例えば、供給側流路1より広い面積を持つ形状でも、狭い面積を持つ形状でも良いし、焼結体などの、前記分離膜より孔径の大きい多孔質体の連通細孔であってもよい。また、運転圧力による分離膜の撓みを抑制するために、供給側流路1と膜を挟んで対象な形状の空洞の中に、柱、壁、分離膜より孔径の大きい多孔質体などを設けることも好ましい。
【0041】
(第一流出口7および第二流出口8)
第一透過側流路4に第一流出口7が、第二透過側流路5には第二流出口8が形成されており、各透過側流路へ透過した流体をそれぞれの流出口から流出させることが出来る。第一流出口7及び第二流出口8は、それぞれ、第一透過側流路4または第二透過側流路5の任意の位置に設けることができる。
【0042】
第一流出口7は後述の第一取出口52に接続されても良いし、本膜分離デバイスが多段型である場合には次段の分離ユニットの流入口6に接続されていても良い。第二流出口8についても、後述の第二取出口53に接続されても良いし、本膜分離デバイスが多段型である場合には次段の分離ユニットの流入口6に接続されていても良い。
【0043】
(第一取出口および第二取出口)
本発明の膜分離デバイスには、第一物質が濃縮分離された流体を取り出すための第一取出口52、および第二物質が濃縮分離された流体を取り出すための第二取出口53を設けることが出来る。第一取出口52および第二取出口53の形成位置や形状は任意であり、本膜分離デバイス100外への開口部であってよいし、接続配管が接続されていてもよいし、本膜分離デバイス100と一体化されたマイクロ流体デバイスの何らかの機構、例えば反応用流路や分析機構に接続されていても良い。
【0044】
[多段型膜分離デバイスの基本構成]
本膜分離デバイスにおいて、前記分離ユニットによる分離が不十分である場合には、上流から下流にかけて前記分離ユニットを複数段にわたって配置することができる。該多段配置の方式は任意であり、例えば、(1)特定の段において、該段以前の第一流出口7を最も多く通過した流路の第一流出口7のみを次段の流入口6に接続する方式、(2)最終段までの各段の分離ユニットの第一流出口7及び第二流出口8の全てをそれぞれ次段の分離ユニットの流入口6に接続する方式、などが挙げられる。
【0045】
好ましい態様の一つとしては、上流から下流にかけて上記分離ユニットが複数段にわたって配置され、
上流段における第一の分離ユニット又は二以上の分離ユニットが流入口6、第一流出口7及び第二流出口8を共有して並列に接続された分離ユニット団(以下、分離ユニット(団)と略記する。)の第一流出口7が、中流段における第二の分離ユニット(団)の流入口6に接続されるとともに、前記第一の分離ユニット(団)の前記第二流出口8が、中流段における第三の前記分離ユニット(団)の流入口6に接続され、
中流段における前記第二の分離ユニット(団)の前記第一流出口7が、下流段における第四の前記分離ユニット(団)の流入口6に接続されるとともに、前記第二の分離ユニット(団)の前記第二流出口8が、中流段における第五の前記分離ユニット(団)の流入口6に接続され、
中流段における前記第三の分離ユニット(団)の前記第二流出口6が、下流段における第六の前記分離ユニット(団)の流入口6に接続されるとともに、前記第三の分離ユニット(団)の前記第一流出口7が、前記第五の分離ユニット(団)の流入口6に接続された態様が挙げられる。
【0046】
該態様の好ましい具体例としては、図2に基本構成の概念図を示した構成、すなわち、上流から下流にかけて、上記分離ユニット(団)が複数段配置され、第一段(ここで、流体が流通する回数が同一となるユニット群を同一段とし、流体が最初に通過する段を第一段とする。)に並置(ここで、並置とは、同じ段に配される分離ユニット(団)が、各々異なる流入口を有して配置されていることをいう。)された分離ユニット(団)数が1以上であり、
第一段以降の任意の段における分離ユニット(団)数が直上流段よりも1つ多く並置され、直上流段の分離ユニット(団)の第一流出口7及び第二流出口8が直下流段の異なる分離ユニット(団)の流入口6に接続され、
最下段の分離ユニット(団)中の前記第一分離膜2の通過回数が最多となる流体が流出される第一流出口7が前記第一物質を取り出す第一取出口と接続され、且つ最下段の分離ユニット(団)中の前記第二分離膜3の通過回数が最多となる流体が流出される第二流出口8が前記第二物質を取り出す第二取出口と接続された態様が挙げられる。
【0047】
当該態様を、説明の簡便のため分離ユニットのみが配され且つ第一段に配される分離ユニット数が1である場合を例として、更に詳細に説明する。第一段の直下段である第二段においては分離ユニットが二つ並置される。ここで第一段と第二段との接続は、第一段分離ユニットにおける第一流出口7が、連絡流路42にて第二段第一番分離ユニットの流入口6に接続され、第一段分離ユニットの第二流出口8が、連絡流路43にて第二段第二番分離ユニットの流入口6に接続されている。
【0048】
さらに、本膜分離デバイスが3段以上の多段型である場合には、前記第二段第一番分離ユニットの第一流出口7が、連絡流路42にて第三段第一番分離ユニットの流入口6に接続され、前記第二段第一番分離ユニットの第二流出口8が、連絡流路43にて第三段第二番分離ユニットの流入口6に接続されている。また、前記第二段第二番分離ユニットの第一流出口7が、第三段第二番分離ユニットの流入口6に接続され、前記第二段第二番分離ユニットの第二流出口8が、第三段3番分離ユニットの流入口6に接続されている。
【0049】
上記のとおり、第n段第i番分離ユニット(但し、nは1〜kの整数、iは1〜nの整数、kは2以上の整数。以下同様)の第一流出口6は、第n+1段第i番分離ユニットの流入口6に接続され、第n段第i番分離ユニットの第二流出口8は第n+1段第i+1番分離ユニットの流入口6に接続される。
【0050】
そして、最終段(第k段とする)の分離ユニットの各流出口の中で、第一段分離ユニットの流入口6から最終段のいずれかの流出口に至るまでに、第一分離膜2を最も多数回透過した流体の流出口、即ち第k段第一番分離ユニットの第一流出口7が、連絡流路42にて第一取出口52に接続され、ここから第一物質が最も分離濃縮された溶液を取り出すことが出来る。また、最終段の分離ユニットの各流出口の中で、第一段分離ユニットの流入口6から最終段のいずれかの流出口に至るまでに、第二分離膜3を最も多数回透過した流体の流出口、即ち、最終段(第k段)第k番(kは同段でのiの最大値となる)分離ユニットの第二流出口8が、連絡流路43にて第二取出口53に接続され、ここから第二物質が最も分離濃縮された溶液を取り出すことができる。第k段の他の流出口から流出する試料の処置は任意であり、例えば、その中の幾つかを前記第一取出口52に接続し、その中の幾つかを前記第二取出口53に接続してもよいし、全てを前記第二取出口53に接続してもよいし、第三取出口54を設けてそこに接続してもよいし、第一段分離ユニットの流入口6に(ポンプを介して)リサイクルしてもよい。
【0051】
ここで、本態様の多段配置に於いては、第二段第一分離ユニットの第二流出口8と、第二段第二番分離ユニットの第一流出口7とが、第三段において異なる分離ユニットの流入口6に接続されているのではなく、共に第二段第二分離ユニットの流入口6に接続される。例えば、当初流体試料(試料A)に含まれる第一物質および第二物質の濃度をそれぞれ50%ずつと仮定する。その試料を第一段分離ユニットに通過させると、試料に含まれる第一物質が第一分離膜をより多く透過し、第二物質は第二分離膜3をより多く透過し、かつ、それぞれの膜の流体透過量は等しいとする。その結果、第一段分離ユニットの流出口6から流出する試料は、例えば第一物質の濃度が60%に上昇するとともに、第二物質の濃度が40%に下降する。一方、第一段分離ユニットの第二流出口8から流出する試料は、マテリアルバランスから第一物質の濃度が40%に下降するとともに、第二物質の濃度が60%に上昇する。
【0052】
これらの試料を第二段第一番分離ユニットの流入口6に流入させると、上記と同様に第一物質が第一分離膜2をより多く透過し、第二物質が第二分離膜3をより多く透過し、その結果、第二段第一番分離ユニットの第一流出口7から流出する試料は、例えば第一物質の濃度が70%に上昇するとともに、第二物質の濃度が30%に下降する。一方、第二段第一番分離ユニットの第二流出口8から流出する試料(試料B)は、例えば第一物質の濃度が50%に下降するとともに、第二物質の濃度が50%に上昇する。一方、第二段第二番分離ユニットの流入口6に流入された試料は、第二段第二番分離ユニットの第一流出口7から流出する試料(試料C)は、例えば第一物質の濃度が50%に上昇するとともに、第二物質の濃度が50%に下降する。一方、第二段第二番分離ユニットの第二流出口8から流出する試料は、例えば第一物質の濃度が30%に下降するとともに、第二物質の濃度が70%に上昇する。
【0053】
ここで、第二段第一番分離ユニットの第二流出口8から流出する試料Bの第一物質および第二物質の濃度は、第二段第二番分離ユニットの第一流出口75から流出する試料Cの濃度とほぼ等しくなっている。したがって、試料Bおよび試料Cを異なる分離ユニットで分離処理する利益はない。そこで、試料Bおよび試料Cを異なる供給側流路に流入させるのではなく、同一の第三段第二番分離ユニットの流入口6に流入させるのである。このとき、試料Bと試料Cの膜(第一分離膜2か第二分離膜3かは問わない)透過回数は同じであるため圧力低下もほぼ等しく、合流させることが可能である。
【0054】
即ち、本実施態様における分離ユニットの段階的配置は、1段毎に分離ユニットが一つずつ増える配置である。このような接続構造とすることによって、一つの分離ユニットがそれぞれ次段の互いに異なる二つの分離ユニットに接続された構造、即ち、1段毎に分離ユニット数が2倍になる構造に比べて分離ユニット数を少なくでき、スペースファクターが向上する。
【0055】
多段接続に於いて、第二段以降の各分離ユニットの構成要素である、流入口6、供給側流路1、第一分離膜2、第二分離膜3、第一流出口7、第二流出口8、の構造や寸法は全て同じである必要はなく、それぞれの分離ユニットで異なっていて良い。
【0056】
また上記は、第一段の分離ユニット数が一つの例であるが、複数設けられていてもよい。例えば第一段の分離ユニット数が二つである場合には、上記説明の第一段分離ユニットが無く、導入口51を、第二段の2つの分離ユニットの流入口6に接続した構造となる。
【0057】
分離ユニットの段数は、1段又は2段であってもよいが、3段以上が好ましい。多段構造とすることによって、単段での分離能が低い分離対象も良好に分離することができる。段数の上限は特に制限はないが、過大であると圧力損失が高くなり、高い運転圧力が必要となると共に、膜分離デバイスやその配管接続部の耐圧性を高くする必要が生じるため、30段以下が好ましく、20段以下が更に好ましく、10段以下が最も好ましい。
【0058】
本発明においては、上記の態様に於いても、また、1段増す毎に分離ユニット数が倍に成る方式に於いても、従来の多段型膜分離装置とは異なり、各段毎にポンプを要しないため構造が極めて単純となり、容易にマイクロ流体デバイス内に組み込むことができる。
【0059】
[濃縮溶液量を確保するための構成]
上記の多段型の膜分離デバイスにおいて、段数が多くなるにつれ、採取される濃縮溶液の量が減少し、処理量や収率が低下することになる。この不都合を回避する方法として下記の2つの方式を好ましく実施できる。
【0060】
(方式1)
第一の方式は、任意の二つの段において、好ましくは全段において、それぞれの段における前記第一分離膜の膜面積の総和を略同一にし、かつ、前記第二分離膜の膜面積の総和も略同一にする方式である。即ち、各段で分離ユニットの数が異なっても膜面積の総和を同じにする。これにより、最終段からの濃縮溶液の取出量の低下をなくすことが可能になる。
【0061】
例えば、総数がk−1個(但し、kは2以上の整数であり、k−1段は最終段より1つ上流の段)の分離ユニットで構成されている第k−1段の各分離ユニットの第一分離膜2の膜面積を、第k段(最終段)の各分離ユニットの第一分離膜2の膜面積のk/(k−1)倍にし、第二分離膜についてもk/(k−1)倍にすると、第k段と第k−1段の各膜面積の総和は等しくなる。同様にして、第一段の分離ユニットの第一分離膜2の膜面積を、第k段の各分離ユニットの第一分離膜2の膜面積のk倍にし、第二分離膜についてもk倍にすると、第一段と第k段の各膜面積の総和は等しくなる。そして、第一段の分離ユニットの流入口6に供給する原液の量をk倍とすることにより、全ての分離ユニットの膜面積が同じである場合に比べて、全膜面積の総和をk倍にすることなく、前記第一取り出し口及び第二取り出し口からの流出量をk倍にすることができる。
【0062】
分離ユニットの特定の段の膜面積を拡大する方法としては、例えば、(1)該段の分離ユニットを完全に並列に多数接続する、(2)供給側流路1(及び、分離膜、透過側流路)の幅を広げる、(3)供給側流路1(及び、分離膜、透過側流路)の長さを増す、(4)供給側流路1(及び、分離膜、透過側流路)を櫛形や樹枝形などの形状にする、といった方法を採ることが出来る。
【0063】
上記(1)の分離ユニットを完全に並列に多数接続する方法においては、分離ユニット団を使用すればよい。この場合、各分離ユニットの膜面積を全て同じと仮定すると、図3に4段構成の場合の概念図を示したように、第一段の分離ユニット団中の並列接続数を略(k/n)=(4/1)倍、即ち四つにし、また、第二段の分離ユニット団中の並列接続数を略(k/n)=(4/2)倍、即ち各々二つにする。但し、分離ユニット団中の並列接続数は自然数なので、例えば第三段のように、(k/n)=(4/3)の値が整数にならない場合には、それに近い整数値(この場合は1倍即ち四つ)にすればよい。
本方法は、立体型膜分離デバイス、平面型膜分離デバイスのいずれの場合にも容易に実施出来る。
【0064】
上記(2)の供給側流路1の幅を広げる方法の場合、膜間距離に対して流路の幅を大幅に広くすると、膜間距離を一定に保つことに困難が生じる。これを解決するために、供給側流路1内に膜間距離を一定に保つための支柱や壁を設けることが好ましい。本方法は、後述の立体型の膜分離デバイスの場合に好適である。この場合、分離ユニットにおける第一分離膜2と第二分離膜3との距離は供給側流路層の厚さによって固定され、供給側流路1の幅の拡大は容易に実施可能だからである。
【0065】
上記(3)の供給側流路1の長さを増す方法の場合には、該流路を例えばジグザグ状や渦巻き状などの形状にすることが好ましい。本方法は、立体型膜分離デバイスの場合にも、後述の平面型膜分離デバイスの場合に好適である。
【0066】
上記(4)の供給側流路1を櫛形や樹枝形などの形状にする方法も好ましい。本方法も、立体型膜分離デバイス、平面型膜分離デバイスのいずれの場合にも容易に実施出来る。
勿論、上記の(1)〜(4)は併用しても良い。これら方法により、処理量の低下を軽減又はなくすことが出来る。
【0067】
(方式2)
第二の方式は、特定の段以降において、各段の分離ユニット(団)数と流出口の接続方法を変える方式である。すなわち、上流から下流にかけて前記分離ユニット(団)が複数段配置され、第一段に並置された前記分離ユニット(団)が1以上であり、
第一段から任意の特定段までは、該段における分離ユニット(団)数が直上流段よりも1つ多く並置され、直上流段の分離ユニット(団)の第一流出口7及び第二流出口8が直下流段の異なる分離ユニット(団)の流入口6に接続され、
前記特定段及び前記特定段より下流側の偶数段においては、分離ユニット(団)数が前記特定段と同じ数だけ並置され、
これら段中の分離ユニット(団)における前記第一分離膜2の通過回数が最多となる流体が流出される第一流出口7が前記第一物質を取り出す第一取出口と接続され、最下段の分離ユニット(団)中の前記第二分離膜3の通過回数が最多となる流体が流出される第二流出口8が前記第二物質を取り出す第二取出口と接続され、その他の第一流出口7及び第二流出口8は下流段の分離ユニット(団)の流入口6に接続され、
前記特定段より下流側奇数段においては、分離ユニット(団)数が前記偶数段よりも1つ少なく並置され、該段中の分離ユニット(団)の第一流出口7及び第二流出口8が直下流段の異なる分離ユニットの流入口6に接続されている方式である。
【0068】
本方式に於いて、第一段から特定の段までの範囲は、図2に示した基本構成と同様の構成とされており、任意の特定段(前記基本構成の最終段)以降に、該特定段以降奇数番目の段の分離ユニット(団)数が前記特定段より1少なく、偶数番目の分離ユニット(団)数が前記特定段と同じであるような段を付加した構成となっている。そして、前記特定の段及び前記付加された段の範囲の偶数番目の段において、各段について第一分離膜の通過回数が最多となる流出口が合計されて第一取出口52に接続され、同じく第二分離膜の通過回数が最多となる流出口が合計されて第二取出口53に接続されている。それ以外の流出口は前記多段型分離デバイスの基本構成と同様に接続する。
【0069】
本方式を、分離ユニットのみを使用した場合を例として更に詳細に述べると、図4にその構成を例示したように、第一段から第k段(但し、kは正の整数)までの範囲では、前記の多段型分離デバイスの基本構成と同様に、1段下流へ進む毎に分離ユニットが1個増え、第k段ではk個となる配置とされている。そして、第k段より下流段においては、一段毎に分離ユニット数は交互に(k−1)個とk個が繰り返される。
【0070】
第k段より奇数段だけ下流の段、即ち第(k+2m−1)段(但し、mは正の整数。以下同様。)の分離ユニット数は、mの値にかかわらず全て(k−1)個とされ、第k段より偶数段だけ下流の段、即ち第(k+2m)段の分離ユニットの数は、mの値にかかわらず全てk個とされる。そして、各段の各流出口は次のように接続される。
【0071】
第k段は、該段中のk個の分離ユニットの第一流出口7のうち、該段に至るまでの第一分離膜の透過回数が最多となる第一流出口7、即ち、第k段第一番分離ユニットの第一流出口7、が連絡流祖42により第一取出口52に接続される。また、該段中のk個の分離ユニットの第二流出口8のうち、該段に至るまでの第二分離膜の透過回数が最多となる第二流出口8、即ち、第k段第k番分離ユニットの第二流出口8、が連絡流祖43により第二取出口53に接続されている。
【0072】
第k段のその他の流出口は次の様にして次段に接続される。即ち、第k段第(j+1)番[但し、j=1〜(k−1)。以下同様。]分離ユニットの第一流出口7は、次段の第j番分離ユニットの流入口6にそれぞれ接続され、第k段第j番分離ユニットの第二流出口8は、次段の第j番分離ユニットの流入口6にそれぞれ接続される。
【0073】
第(k+2m−1)段第j番[j=1〜(k−1)]分離ユニットの第一流出口7は、次段の第(k+2m)段第j番分離ユニットの流入口6に接続され、第(k+2m−1)段第j番分離ユニットの第二流出口8は、次段の第(k+2m)段第(j+1)番分離ユニットの流入口6に接続される。
【0074】
第(k+2m)段の各分離ユニットの接続方法は、該段が最終段でない場合には、前記本方式2に於ける第k段と同様である。該段が最終段である場合には、前記多段型膜分離デバイスの基本構成の第k段(最終段)と同様である。本方式2に於いては、第(k+2m)段、即ち、第k段より偶数段だけ下流の段を最終段とすることが好ましい。
【0075】
上記の構成により、第k段以降第(k+2m)段までの範囲で第一分離膜の通過回数が最多となる流体、即ち、上記第k段及び(k+2m)段の各段の第一番分離ユニットの第一流出口7から流出する流体が、全mについて合計されて第一取出口52から取り出され、第k段以降第(k+2m)段までの範囲で第二分離膜の通過回数が最多となる流体、即ち、上記第k段及び(k+2m)段の各段の第k番分離ユニットの第二流出口8から流出する流体が、全mについて合計されて第二取出口53から取り出される。
【0076】
第一取出口52と各第一流出口7とを結ぶ連絡流路42には、各段の第一流出口7の圧力と該段の他の流出口の圧力とを揃えるために、流量調節弁、圧力損失を生じるような流路部分、或いは、圧力損失を増すための分離膜を設けることが好ましい。この分離膜は、透過することにより圧力損失を生じるものであれば良く、分離能を有する必要はない。第二取出口53と各第二流出口8とを結ぶ連絡流路43についても同様である。
【0077】
本方式に於いては、第k段及び第(k+2m)段において取出口へ流れる量だけ、次段へ流れる流量が減少するから、第k段以降に付加する段数を多くする、即ち、前記mの値を大きくすると、第一段の流入口6に導入された液体の大部分が第一取出口52と第二取出口53から取り出されることになる。このように構成にすることによって、スペースファクターを高く維持しながら、分離液の収率を増すことが出来る。
【0078】
本方式2によって収率の低下を軽減又はなくすことが出来る。上記方式1と方式2は好ましく併用することが出来る。
【0079】
以上分離ユニットのみを使用した場合を例として説明したが、もちろん分離ユニットの代わりに分離ユニット団を使用することもできる。
【0080】
[その他の機構]
本発明の膜分離デバイス100は、その他の機構として、例えば以下ような構成を付加してもよい。各分離ユニットの第一分離膜2と第二分離膜3の圧力損失の違いを補正するために、各連絡流路の任意の部分に、可変型、半固定型、または固定型の流量調節バルブを設けることも可能である。また、周期的に温度を変える分離方法に使用する場合などの用途に好適な構造として、各流出口と次段の流入口6との間に、溶液を一次貯留しておくための貯留槽となる空洞を設けることも出来る。
【0081】
また、最終段における複数の流出口のうち、取出口に接続されていない流出口を、上流段の分離ユニットの流入口6にポンプを介して接続してもよい。具体的には、取出口に接続されていない流出口を第三取出口54に接続し、この第三取出口54をポンプを介して第一段分離ユニットの流入口6に接続する。なお、第一段以外の分離ユニットに接続することも可能であり、複数の分離ユニットに接続することも可能である。これにより、取出口に接続されていない流出口から流出した流体を、上流段の分離ユニットに還流させることが可能になり、試料を効率的に利用することができる。
【0082】
[実施態様]
以下、本発明の代表的な実施態様につき詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0083】
[実施態様1:立体型1段膜分離デバイス]
図5は立体型の態様に係る1段型膜分離デバイスの斜視分解図である。図5に描かれた姿勢で説明すると、本実施態様の膜分離デバイス100は、上面から下方に向かって、基材11、第一透過側流路4が形成された第一透過側流路層12、第一分離膜2が形成された第一分離膜層13、供給側流路1が形成された供給側流路層14、第二分離膜3が形成された第二分離膜層15、第二透過側流路5が形成された第二透過側流路層16、およびカバー層17がこの順に積層されて固着されている。第一透過側流路4、第一分離膜2、供給側流路1、第二分離膜3、及び第二透過側流路層16は全て同じ形状と寸法を持ち、互いに位置を合わせて積層されている。
【0084】
ここで、基板11と第一透過側流路層12は異なる二つの独立した部材として形成されているが、第一透過側流路4となる溝を有する一体化された部材であってもよく、カバー層117と第二透過側流路層16についても、第二透過側流路5となる溝を有する一体化された部材であってもよい。他の部材についても、複合化された部材であっても良い。
【0085】
基材11や上記の各層を構成する素材は任意であり、前述の本発明の分離デバイスを構成する材料を使用できる。例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物への活性エネルギー線のパターン照射による硬化法、活性エネルギー線分解性樹脂の活性エネルギー線のパターン照射とエッチング法、フォトリソグラフ法、レーザーアブレーションやX線アブレーション、3次元光造形法等により好ましく製造できる。
【0086】
(供給側流路)
供給側流路1は、図5に示された姿勢に於いて、両側面が供給側流路層14の流路壁、下面が第一分離膜層13の一部として形成された第一分離膜2、上面が第二分離膜層15の一部として形成された第二分離膜3を流路壁として形成されている。供給側流路1の第一分離膜2と第二分離膜3間の平均距離は1〜200μmの範囲とされている。
【0087】
(第一分離膜および第二分離膜)
第一分離膜層12の一部に第一分離膜2、第二分離膜層の一部に第二分離膜3が形成され、第一分離膜2と第二分離膜3は、供給側流路1を挟んで、実質的に平行に形成されている。第一分離膜層12は、第一分離膜2以外の部分、即ち、供給側流路1に面しない部分は活性エネルギー線硬化性樹脂で細孔が充填されて目止めされている。第二分離膜層15も同様である。
【0088】
(流入口、第一流出口、第二流出口)
供給側流路1が第一分離膜2及び第二分離膜3に面しなくなる部分が流入口6とされ、第一透過側流路4が第一分離膜2に面しなくなる部分が第一流出口7とされ、第二透過側流路5が第二分離膜3に面しなくなる部分が第二流出口8とされている。
【0089】
(導入口、第一取出口、第二取出口、連絡流路)
基材11の上面に導入口51、第一取出口52、及び第二取出口53が設けられており、導入口51と流入口6とは、基材11、第一透過側流路層12、および第一分離膜層13に開けられた孔状の部分と、供給側流路層14に設けられた線状の部分から成る連絡流路41でもって結ばれている。また、第一流出口7と第一取出口52とは、基材11に開けられた孔状の部分と、第一透過側流路層12に設けられた線状の部分から成る連絡流路42でもって結ばれている。さらに、第二流出口8と第二取出口5とは、基材11、第一透過側流路層12、および第一分離膜層13、供給側流路層14,および第二分離膜層15に開けられた孔状の部分と、第二透過側流路層に設けられた線状の部分から成る連絡流路43でもって結ばれている。
【0090】
導入口51、第一取出口52、及び第二取出口53は全て機材11に開口部として設けられているが、本膜分離デバイス100の任意の位置設けて良い。例えば、カバー層17に設けても良いし、膜分離デバイス100の側面に設けても良い。
【0091】
本態様は、第一分離膜2と第二分離膜3が異なる層として形成できるため、異なる透過特性を容易に付与することが出来る。又、膜面積の調節範囲の自由度も高い。
【0092】
[実施態様2:立体型多段膜分離デバイス]
本態様は、上述の立体型1段分離デバイスを分離ユニットとし、これを前記多段型膜分離デバイスの基本構成、方式1、及び方式2に述べたように多段配置して構築される。即ち、全分離ユニットの供給側流路1が供給側流路層14に、全分離ユニットの第一分離膜2が第一分離膜層13に、全分離ユニットの第二分離膜が第二分離膜層15に、全分離ユニットの第一透過側流路4が第一透過側流路層12に、及び全分離ユニットの第二透過側流路5が第二透過側流路16に形成され、例えば図2、図3、図4に示された様な形状に分離ユニットが配置される。連絡流路41、42、43は上記の任意の層中に適宜設けることが出来る。
【0093】
本態様は、全ての分離ユニットの第一分離膜2を一つの第一分離膜層13に形成でき、全ての分離ユニットの第二分離膜3を一つの第二分離膜層15に形成でき、かつ、第一分離膜2と第二分離膜3が異なる層として形成できるため、異なる透過特性を持つ分離膜の形成が容易である。
【0094】
[実施態様3:平面型1段膜分離デバイス]
図6は、平面型1段膜分離デバイスの態様の斜視分解図である。平面型の態様では、供給側流路1、第一分離膜2,第二分離膜3、第一透過側流路4、第二透過側流路5、及び、連絡流路41、42、43は全て中間層18に形成され、該層が基材11とカバー層17によって挟持されて形成されている。
本態様は、少ない部材数で構成できるため生産性が高い。
【0095】
[実施態様4:平面型多段膜分離デバイス]
本多段型膜分離デバイスの態様では、上述の平面型1段分離デバイスを分離ユニットとし、これを平面内で、前記多段型膜分離デバイスの基本構成、方式1、及び方式2に述べたように多段配置することで、立体型多段分離デバイスが構築される。即ち、各分離ユニットの供給側流路1、第一分離膜2,第二分離膜3、第一透過側流路4、第二透過側流路5、及び、連絡流路41、42、43は全て1つの中間層18に形成され、例えば図2、図3、図4に示された様な形状に分離ユニットが配置される。そして、該中間層18が基材11とカバー層17によって挟持されて形成されている。但し、前記方式2の膜分離デバイスの場合などには、連絡流路41、42、43の一部を、中間層18と基材1及び/又はカバー層17との間に他の層を設けて、そこに形成することも出来る。
本態様は、少ない部材数で多段型の膜分離デバイスが構成できるため生産性が高い。
【0096】
[膜分離方法]
本発明の分離方法は、流体に含まれる二種の物質、即ち第一物質と第二物質を相互に分離する方法であって、本発明の膜分離デバイスを使用し、その流入口6に分離すべき流体を導入し、第一取り出し口から第一物質濃縮成分を取りだし、第二取り出し口から第二物質濃縮成分を取りだ素ことによって分離する。分離対象は、本発明の膜分離デバイスの分離膜の項で述べたとおりである。
【0097】
本発明の分離方法において、分離する温度や流体の流速などの分離条件は任意であり、例えば、分離すべき溶液を連続的に注入し、定常状態で分離することも出来るし、温度を周期的に変動させて、分離膜への溶質の選択的吸脱着により分離することも出来る。又、流量を周期的に変動させて分離効率を上げることも出来る。
【0098】
[静的な方法]
本方法は、温度や流体の流速を一定に保つ方法であり、従来の膜分離で通常用いられる方法である。本方法は複雑な運転条件制御が不要であり、好ましい方法である。
【0099】
[動的な方法]
本方法は、温度や流体の流速を変化させて分離する方法であり、分離膜の第一物質又は第二物質に対する吸着性の差を利用した分離に好ましく使用される。これは例えば、低温条件にて溶質を分離膜に吸着させ、高温条件で脱着させて、吸脱着量の差で分離を行う。本方法は従来の膜分離では分離が困難であった、生化学物質や光学分割に好ましく用いられる。
【0100】
本分離方法は、例えば、本膜分離デバイス100に特定の2つの温度間を周期的に変化させたときに、第一分離膜の第一物質に対する吸脱着量(即ち、吸着量と脱着量の差)が、第一物質に対する吸脱着量より大きく、また、第二分離膜は、前記第一物質に対して第二物質より低い吸脱着量を示すか、同等の吸脱着量を示すか、若しくは前記第一物質に対して第二物質より高い吸脱着量を示すがその程度は第一分離膜より低い場合に好ましく適用出来る。説明の簡略化のために、第一分離膜の第一物質に対する吸脱着量が、第二物質に対する吸脱着量より大きく、また、第二分離膜は、前記第一物質に対して第二物質より低い吸脱着量を示す場合について述べる。
【0101】
本膜分離デバイスに原液を流しつつ、特定の2つの温度間を周期的に変化させると、低温において、第一物質は第一分離膜により多く吸着され、第二物質は第二分離膜により多く吸着される。このとき、供給側流路の膜間距離を本発明の膜分離デバイスの様な値とすることによって、拡散混合が十分に行われ、第一物質、第二物質はそれぞれ吸着され易い分離膜に移動することが出来る。次に温度を上昇させると、吸着されていた物質は脱着し、透過側流路に流入し、流出口から流出する。上記の方法に於いて、低温時に流速を低く保ち或いは停止し、昇温時には流速を高くすることが好ましい。これにより、低温時に選択吸着するための十分な時間が与えられ、昇温による脱着時の逆混合が防止される。流速の最適条件は、昇降温の速度や各流路の容積などにより異なるが、簡単な条件検討により求めることが出来る。
【0102】
昇降温の周期は任意であるが、例えば、好ましくは0.5秒〜3分、更に好ましくは1秒〜2分、最も好ましくは3秒〜1分である。昇降温の方法は任意であり、膜分離デバイスに組み込んだ電気ヒーターによる周期的加熱、膜分離デバイスに組み込んだ加熱/冷却用流路への熱媒及び/又は冷媒の周期的導入、膜分離デバイス外からのレーザー光、赤外線、マイクロ波などの周期的な照射、温度の異なる媒体(固体、液体、または気体)との周期的接触等を採用しうる。
【0103】
他の動的な方法として、温度の周期的変化の代わりに、超音波やマイクロ波の周期的な照射/非照射により、吸脱着させる方法も使用しうる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例の範囲に
限定されるものではない。
【0105】
[紫外線硬化性の組成物(X1)の調製]
活性エネルギー線重合性化合物としてジシクロペンタニルジアクリレート「DCA−200」(大日本インキ化学工業株式会社製)80部および平均分子量約2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」(大日本インキ化学工業株式会社製)20部、光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部、及び、重合遅延剤として関東化学株式会社製2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.1部を均一に混合して紫外線硬化性の組成物(X1)を調製した。
【0106】
[紫外線硬化性の組成物(X2)の調製]
2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを添加しなかったこと以外は紫外線硬化性組成物(X1)と同様にして紫外線硬化性の組成物(X2)を調製した。
【0107】
[製膜液(Y1)の調製]
活性エネルギー線重合性化合物として、前記「DCA−200」を50部、および前記
「ユニディックV−4263」50部、アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロ−n−デシルエステル(和光純薬工業株式会社製)を0.5質量部、貧溶剤としてデカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を240質量部、紫外線重合開始剤として前記「イルガキュア184」を5質量部、均一に混合して、製膜液(Y1)を調製した。
【0108】
[製膜液(Y2)の調製]
前記アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプラデカフルオロ−n−デシルエステルを混合しなかったこと以外は、前記多孔質膜製膜液(Y1)と同様にして、製膜液(Y2)を調製した。
【0109】
[製膜液(Y3)の調製]
前記アクリル酸1H,1H,2H,2H−ヘプラデカフルオロ−n−デシルエステルを混合せず、その代わりにグリシジルメタクリレート(和光純薬株式会社製)以外は、前記多孔質膜製膜液(Y1)と同様にして、製膜液(Y3)を調製した。
【0110】
[紫外線の照射]
251W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト251Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用い、365nmにおける紫外線強度が51mW/cm2の紫外線を、特に指定が無い限り室温、大気中で照射した。
【0111】
[実施例1]
本実施例では、実施態様1で述べた立体型の1段膜分離デバイスの実施例である。図5は、実施例1の膜分離デバイスの斜視分解図である。本膜分離デバイスの構造は実施態様1で述べた構造と同じである。
【0112】
〔第一分離膜側部材の作製〕
厚さ1mmのアクリル板製の基材11上に、スピンコーターにて組成物(X1)を塗工し、フォトマスクを通して第一透過側流路4、及び連絡流路42となるべき部分以外の部分に紫外線照射を40秒行い、重合性官能基がまだ残存する程度に前記組成物(X1)が半硬化した第一透過側流路層12を形成し、非照射部分の未硬化の組成物(X1)を50質量%エタノール水溶液で洗浄除去して、該第一透過側流路層12の欠損部として、第一透過側流路4、及び連絡流路42となるべき溝を形成した。
【0113】
〔第一分離膜層の作製と接着〕
平均孔径0.2μmのポリ四フッ化エチレン(PTFE)製の多孔質膜(アドバンテック社)を組成物(X1)中に浸漬し、真空に減圧した後常圧に戻して、該多孔質膜の細孔中に組成物(X1)を充満させた。これを、厚さ60μmの二軸延伸ポリプロピレンシート(OPPシート)(二村化学社製)を一時的な支持体(図示略)としてその上に広げ、ガラス棒にて多孔質膜の細孔に含浸している部分以外の余剰の組成物(X1)を掻き取り、フォトマスクを通して第一透過側流路4に相当する部分以外の部分に紫外線を40秒間照射して照射部を半硬化状態とし、n−ヘキサンで洗浄して、未照射部分の未硬化の組成物(X1)を洗浄除去して、前記一時的な支持体(図示略)上に、第一透過側流路4に相当する部分が連通多孔質膜であり、他の部分の細孔には半硬化状態の組成物(X1)が充填された第一分離膜層13を形成した。
【0114】
次いで、前記第一分離膜層13を、前記第一透過側流路層12の上に、位置を合わせて積層し、その状態で紫外線を20秒間照射して接着した後、一時的な支持体(図示略)を剥離除去した。
【0115】
一方、前記と同様のOPPシートを一時的な支持体(図示略)として、その上に組成物(X1)をスピンコートし、フォトマスクを通して第一透過側流路4、連絡流路42、及び連絡流路22に相当する部分のみに紫外線を60秒間照射して照射部を硬化させ、位置を合わせて前記第一透過側流路層12上に積層した後剥離して、未硬化の組成物(X1)を第一透過側流路層12の第一透過側流路4、連絡流路42以外の部分に転写した(図示略)。
【0116】
以上のようにして、基材11の上に第一透過側流路層12と第一分離膜層13が積層された第一分離膜側部材を形成した。
【0117】
〔第二分離膜側部材の作製〕
別途、基材11の代わりに前記と同様の一時的な支持体(図示略)を用いたこと、PTFE多孔質膜の代わりに、平均孔径0.2μmの表面親水化ポリフッ化ビニリデン(PVDF)多孔質膜(アドバンテック社製)を用いたこと、以外は前記第一分離膜側部材の作製と同様にして、基材11が無く、第一透過側流路層12の代わりに第二透過側流路層15、第一分離膜層13の代わりに第二分離膜層15が形成された第二分離膜側部材を、前記一時的な支持体(図示略)の上に作製した。
【0118】
〔膜分離デバイスの作製〕
(供給側流路層の形成)
前記と同様の一時的な支持体(図示略)上にスピンコーターにて組成物(X1)を塗工し、フォトマスクを通して、供給側流路1及び連絡流路41と成す部分以外の部分に、紫外線ランプにより紫外線を40秒間照射して半硬化させ、紫外線の非照射部分に残された未硬化の組成物(X1)を50質量%エタノール水溶液により洗浄除去して、供給側流路1及び連絡流路41となる欠損部を有する供給側流路層14を形成した。
【0119】
(部材の接着)
先に作製した第一分離膜側部材に、供給側流路層14を位置を合わせて積層し、紫外線を40秒間照射して、接着剤層(図示略)を硬化させた後、前記供給側流路層14が乗っている一時的な支持体(図示略)を剥離除去した。
【0120】
次いで、該供給側流路層14の上に、第二分離膜側部材を位置を合わせて積層し、紫外線を120秒間照射して、接着剤層(図示略)を硬化させると共に、基材11上の全ての組成物(X1)を硬化させた後、前記第二分離膜側部材が乗っている一時的な支持体(図示略)を剥離除去し、膜分離デバイス100前駆体を作製した。
【0121】
(その他の構造の形成)
膜分離デバイス100前駆体のカバー層17側から、連絡流路41の端部、連絡流路42の端部、および連絡流路43の端部において、各連絡流路に届く直径0.5mmの孔をドリルで開け、導入口51、第一取出口52及び第二取出口53を形成し、各開口部に配管接続用のフィッティングを接着して膜分離デバイス100を得た。
【0122】
〔デバイスの構造観察〕
上記で作製したデバイスを、使用試験後に切断して走査型電子顕微鏡にてデバイス各部の寸法を測定したところ、基材11の厚みは1mm、第一透過側流路層13、及び第二透過側流路層16の厚みは105μm、供給側流路1の厚みは70μm、第一分離膜層13の厚みは約100μm、第二分離膜層15の厚みは約120μm、カバー層17の厚みは100μmであった。また、供給側流路1、第一分離膜2、第二分離膜3、第一透過側流路4、第二透過側流路5、及び連絡流路41、42、43の幅は1000μmであった。供給側流路1、第一分離膜2、第二分離膜3、第一透過側流路4、及び第二透過側流路5の長さは5cmであった。
【0123】
〔分離試験〕
マイクロシリンジポンプを用いて、導入口51からエタノール/水=0.5/0.5(質量比)混合溶液を20mm/分の流量で導入したところ、第一取出口52に接続したチューブから、約10.5mm/分の流量で透過液(第一透過液と称する)が流出し、第二取出口53に接続したチューブから、約9.5mm/分の流量で透過液(第二透過液と称する)が流出した。得られた溶液のNMR測定[(内部標準としたジメチルスルホキシドのメチル基(化学シフト2.5ppm)と、エタノールの末端メチル基(化学シフト0.9ppm)のピークの積分値の比較]の結果から、検量線を用いてエタノール/水の混合比を計算したところ、第一透過液は0.55/0.45、第二透過液は0.45/0.55であった。即ち、PTFE製の第一分離膜透過側にエタノールが濃縮され、親水化PVDF製の第二分離膜透過側に水が濃縮された。
【0124】
[実施例2]
供給側流路層14の厚さが150μmであること、従って、第一分離膜2と第二分離膜3との平均膜間距離が150μmであること以外は、実施例1と同様にして膜分離デバイスを作製した。
【0125】
この膜分離デバイス100を用いて、実施例1と同様の分離試験を行ったところ、第一透過液のエタノール/水の混合比は51/49、第二透過液は0.49/0.51であった。
【0126】
[比較例1]
供給側流路層14の厚さが260μmであること、従って、第一分離膜2と第二分離膜3との平均膜間距離が260μmであること以外は、実施例1と同様にして実施例1と同様の膜分離デバイスを作製した。
【0127】
この膜分離デバイスを用いて、実施例1と同様の分離試験を行ったところ、第一透過液のエタノール/水の混合比は50/50、第二透過液は50/50であり、分離されていなかった。
【0128】
[実施例3]
本実施例では、実施態様2で述べた立体型の多段膜分離デバイス(3段型)の実施例を示す。
【0129】
〔膜分離デバイスの作製〕
実施態様2の項で述べた様に、実施例1で作製した立体型1段分離デバイスを分離ユニットとし、これを前記多段型膜分離デバイスの基本構成において述べたように3段配置した。即ち、第一段の一つ、第二段の二つ、及び第三段の三つの計六つの分離ユニットについて、全ての供給側流路1を供給側流路層14に形成し、全第一分離膜2を第一分離膜層13に形成し、全第二分離膜3を第二分離膜層15に形成し、全第一透過側流路4を第一透過側流路層12に形成し、全第二透過側流路5を第二透過側流路16に形成し、これらを図2に示したように分離ユニットを配置した。
【0130】
また、連絡流路41は供給側流路層14に形成し、連絡流路42は第一透過側流路層12に形成し、連絡流路43は第二透過側流路層143に形成した。
【0131】
〔寸法の測定〕
実施例1と同様にして測定した各部の寸法は、全ての分離ユニットの形状と寸法は同じであり、供給側流路1、第一分離膜2、第二分離膜3、第一透過側流路4、及び第二透過側流路5の長さが2cmであること以外は、実施例1と同様であった。
【0132】
[実施例4]
本実施例では、実施態様3で述べた平面型の1段膜分離デバイスの実施例を示す。
図6は、実施例2の膜分離デバイスの斜視分解図である。本膜分離デバイスの構造は実施態様3で述べた構造と同じである。
【0133】
〔膜分離デバイスの作製〕
(中間層の作製)
実施例1で使用したと同じOPP製の一時的な支持体(図示略)に組成物(X1)を塗布し、供給側流路1、第一分離膜2,第二分離膜3、第一透過側流路4、第二透過側流路5、及び、連絡流路41、42、43となす部分以外の部分にフォトマスクを通して紫外線を40秒間照射し、照射部の組成物(X1)を半硬化状態とし、未詳社部の未硬化の組成物(X1)を50質量%エタノール水溶液で洗浄除去することによって、層の欠損部を有する中間層18となる樹脂層18を形成した。前記層の欠損部は、中間層18となる樹脂層18が一時的な支持体(図示略)上に形成されているため、凹部になっている。
【0134】
(分離膜の形成)
前記製膜液(Y1)を前記凹部の中に盛り上がる程度に注入し、第一分離膜2となす部分を紫外線を40秒間照射し、未照射部の未硬化製膜液(Y1)を50質量%エタノール水溶液にて洗浄除去し、第一分離膜2を形成した。
【0135】
次いで、前記製膜液(Y2)を前記凹部の中に盛り上がる程度に注入し、第二分離膜3となす部分のみを紫外線を40秒間照射し、n−ヘキサン、50質量%エタノール水溶液、及び蒸留水にて順次洗浄して、未照射部の未硬化製膜液(Y2)および、形成された第二分離膜3前駆体の細孔中の貧溶剤を除去した。その後、前記凹部に、スルホン酸ソーダエトキシメタクリレート(「アントクスMS−2N」、日本乳化剤株式会社製)の5質量%水溶液を満たし、10分静置後、前記第二分離膜3前駆体部分に紫外線を60秒間照射し、水洗して細孔の表面にスルホン基を導入し、第二分離膜3を形成した。
以上により、一時的な支持体(図示略)の上に中間層18を形成した。
【0136】
(部材の接着)
実施例1で使用したものと同じアクリル樹脂製の基板11に、スピンコーターにて組成物(X2)を塗布し、全体に紫外線を2秒間照射して、該組成物(X2)の塗膜を半硬化させ、この上に前記中間層18を積層し、紫外線を40秒管照射した後、中間層18から 一時的な支持体(図示略)を剥離した。
【0137】
一方、前記と同様のOPP製の一時的な支持体(図示略)に組成物(X1)を塗布し、全体に紫外線を40秒間照射して半硬化状態とし、これを基材上の中間層18に積層し、紫外線を更に90秒間照射して、全組成物を硬化させて、前記積層した層を接着し、膜分離デバイス100前駆対を得た。
【0138】
(その他の構造の形成)
膜分離デバイス100前駆体の基材11側から、連絡流路41の端部、連絡流路42の端部、および連絡流路43の端部において、各連絡流路に届く直径0.5mmの孔をドリルで開け、導入口51、第一取出口52及び第二取出口53を形成し、各開口部に配管接続用のフィッティングを接着した。
以上の操作によって、膜分離デバイス100を得た。
【0139】
〔デバイスの構造観察〕
前記で作製した膜分離デバイス100を、使用試験後に切断して走査型電子顕微鏡にてデバイス各部の寸法を測定したところ、基材11の厚みは1mm、中間層18の厚みは100μm、カバー層17の厚みは100μmであった。また、基材11側から見た供給側流路の幅、即ち、第一分離膜2と第二分離膜3との間の距離は80μm、第一分離膜2及び第二分離膜3の厚みはいずれも約150μm、また、第一透過側流路4、第二透過側流路5、及び連絡流路42、43、44の幅は100μmであった。供給側流路1、第一分離膜2、第二分離膜3、第一透過側流路4、及び第二透過側流路5の長さは5cmであった。
【0140】
〔分離試験〕
この膜分離デバイス100を用いて、導入口に導入する溶液の流量が5mm/分であること以外は実施例1と同様の分離試験を行ったところ、第一糖化液と第二糖化液の流量比は1.02/0.98であり、第一透過液と第二透過液のエタノール/水の混合比は、それぞれ53/47と47/53であった。
【0141】
[実施例5]
本実施例では、前記実施例4と同じ構造を有し、分離膜がDNA分離用の分離膜である分離デバイスの実施例を示す。
【0142】
〔膜分離デバイスの作製〕
(中間層の作製)
第一分離膜2、第二分離膜3共に、製膜液として製膜液(Y3)を使用したこと、第一分離膜2前駆体と第二分離膜3前駆体を一度の紫外線照射で形成したこと、以外は、実施例3と同様にして第一分離膜2前駆体、および第二分離膜3前駆体を形成した。
【0143】
(DNA固定用官能基の導入)
上記で作製した凹部の中に、5質量%ポリアリルアミン(分子量15100、日東紡株式会社製)水溶液を配し、60℃で1時間静置し、ポリアリルアミン中の一部のアミノ基を分離膜前駆体中のエポキシ基と反応させた。その後、流水で15分間洗浄して、細孔表面へのアミノ基の導入を行った。
【0144】
上記アミノ基を導入した分離膜前駆体を含む中間層18を、一時的な支持体(図示略)ごと5質量%のグルタルアルデヒド(和光純薬工業株式会社製)水溶液中に入れ、51℃で2時間静置して、ポリアリルアミン中のほぼ全てのアミノ残基をグルタルアルデヒド中の片方のアルデヒド基と反応させ、流水で10分洗浄して、細孔表面へのアルデヒド基の導入を行った。
【0145】
(プローブDNAの導入)
第二分離膜3をグリ−ス状の流動パラフィンで保護し、前記凹部に、5'末端アミノ基修飾DNA(No.1)(長さ20塩基、エスペックオリゴサービス株式会社製)の濃度51μM水溶液を2μL注入して、湿度100%、51℃にて15時間静置し、DNAの末端アミノ基を多孔質体2のアルデヒド基と反応させた。その後、0.2質量%のテトラヒドロ硼酸ナトリウム水溶液中による5分間の還元、0.2XSSC/0.1%SDS溶液による洗浄(但し、0.2XSSCは0.03MNaCl,3mMクエン酸ナトリウム水溶液であり、0.1%SDSは0.1質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液である)、0.2×SSCによる洗浄、蒸留水による洗浄、及び自然乾燥により、第一分離膜2前駆体の細孔表面にDNA(No.1)を固定し、第一分離膜2を得た。
【0146】
次いで、n−ヘキサン、エタノール及び蒸留水による洗浄により、第二分離膜を保護していた流動ラフィンを除去し、代わりに第一分離膜2を動パラフィンで保護し、DNAとしてDNA(No.1)とは塩基配列が一つだけ異なること以外はDNA(No.1)と同様のDNA(No.2)を第二分離膜3前駆体の細孔表面に固定し、第二分離膜3とした。
【0147】
その後、n−ヘキサン、エタノール及び蒸留水による洗浄により、第一分離膜を保護していた流動ラフィンを除去し、一時的な支持体(図示略)上に中間層18を得た。
【0148】
(デバイスの作製)
上記以外の工程については、実施例3と同様にして、分離膜の特性が異なること以外は実施例3で製作した膜分離デバイスを同じ構造を持つ膜分離デバイス100を作製した。
【0149】
[実施例6]
本実施例では、方式1の4段型多段膜分離デバイスであって、かつ、実施態様4で述べた平面型の膜分離デバイスの実施例を示す。
【0150】
〔膜分離デバイスの作製〕
実施態様4の項で述べた様に、実施例4で作製した平面型1段分離デバイスを分離ユニットとし、これを平面内で、前記多段型膜分離デバイスの方式1において述べたように4段配置することで、平面型4段分離デバイスを構築した。即ち、図3のように、第一段には4つの分離ユニット、第二段には4つの分離ユニット、第三段には3つの分離ユニット、第四段には4つの分離ユニットが配置され、各分離ユニットの供給側流路1、第一分離膜2,第二分離膜3、第一透過側流路4、第二透過側流路5、及び、連絡流路41、42、43は全て1つの中間層18に形成され、該層が基材11とカバー層17によって挟持されて形成されている。但し、導入口51と第一段の流入口を結ぶ連絡流路41、第三段分離ユニットから第一取り出し口52に連絡する連絡流路42、及び、第三段分離ユニットから第一取り出し口52に連絡する連絡流路43は、カバー層17に開けられた孔をその一部としている。
【0151】
〔寸法の測定〕
実施例4と同様にして測定した各部の寸法は、全ての分離ユニットの形状と寸法は同じであり、全ての供給側流路1、第一分離膜2、第二分離膜3、第一透過側流路4、及び第二透過側流路5の長さが1cmであること以外は、実施例4と同様であった。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】膜分離デバイスの基本構造の概念図である。
【図2】多段型の膜分離デバイスの概念図である。
【図3】方式1の多段型膜分離デバイスの概念図である。
【図4】方式2の多段型膜分離デバイスの概念図である。
【図5】実施態様及び実施例に示される立体型膜分離デバイスの斜視分解図である。
【図6】実施態様及び実施例に示される平面型膜分離デバイスの斜視分解図である。
【符号の説明】
【0153】
1 供給側流路
2 第一分離膜
3 第二分離膜
4 第一透過側流路
5 第二透過側流路
6 流入口
7 第一流出口
8 第二流出口
11 基材
12 第一透過側流路層
13 第一分離膜層
14 供給側流路層
15 第二分離膜層
16 第二透過側流路層
17 カバー層
18 中間層
41、42、43 連絡流路
51 導入口
52 第一取出口
53 第二取出口
54 第三取出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に含まれる第一物質および第二物質を相互に分離するデバイスであって、
前記流体を流入させる流入口6を有し、前記第一物質と前記第二物質に対する分離特性が互いに異なる第一分離膜2と第二分離膜3がそれぞれ流路壁に設けられてなり、且つ、前記第一分離膜2と前記第二分離膜3との膜表面間の平均距離が1〜200μmの範囲にある供給側流路1と、
前記第一分離膜2を介して前記供給側流路1と接合され、前記第一分離膜2を透過する流体を流出させる第一流出口7を有する第一透過側流路4と、
前記第二分離膜3を介して前記供給側流路1と接合され、前記第二分離膜3を透過する流体を流出する第二流出口8を有する第二透過側流路5と、
からなる分離ユニットを一以上有することを特徴とする膜分離デバイス。
【請求項2】
前記第一分離膜は前記第一物質に対して前記第二物質より高い透過性を示し、前記第二分離膜は前記第二物質に対して前記第一物質より高い透過性を示すものである請求項1に記載の膜分離デバイス。
【請求項3】
上流から下流にかけて前記分離ユニット又は二以上の前記分離ユニットが流入口6、第一流出口7及び第二流出口8を共有して並列に接続された分離ユニット団が複数段にわたって配置され、
上流段における第一の前記分離ユニット又は分離ユニット団の前記第一流出口7が、中流段における第二の前記分離ユニット又は分離ユニット団の流入口6に接続されるとともに、前記第一の分離ユニット又は分離ユニット団の前記第二流出口8が、中流段における第三の前記分離ユニット又は分離ユニット団の流入口6に接続され、
中流段における前記第二の分離ユニット又は分離ユニット団の前記第一流出口7が、下流段における第四の前記分離ユニット又は分離ユニット団の流入口6に接続されるとともに、前記第二の分離ユニット又は分離ユニット団の前記第二流出口8が、中流段における第五の前記分離ユニット又は分離ユニット団の流入口6に接続され、
中流段における前記第三の分離ユニット又は分離ユニット団の前記第二流出口6が、下流段における第六の前記分離ユニット又は分離ユニット団の流入口6に接続されるとともに、前記第三の分離ユニット又は分離ユニット団の前記第一流出口7が、前記第五の分離ユニット又は分離ユニット団の流入口6に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜分離デバイス。
【請求項4】
上流から下流にかけて前記分離ユニット又は分離ユニット団が複数段配置され、第一段に並置された分離ユニット又は分離ユニット団数が1以上であり、
第一段以降の任意の段における分離ユニット又は分離ユニット団数が直上流段よりも1つ多く並置され、直上流段の分離ユニット又は分離ユニット団の第一流出口7及び第二流出口8が直下流段の異なる分離ユニット又は分離ユニット団の流入口6に接続され、
最下段の分離ユニット又は分離ユニット団中の前記第一分離膜2の通過回数が最多となる流体が流出される第一流出口7が前記第一物質を取り出す第一取出口と接続され、且つ最下段の分離ユニット又は分離ユニット団中の前記第二分離膜3の通過回数が最多となる流体が流出される第二流出口8が前記第二物質を取り出す第二取出口と接続されている請求項3に記載の膜分離デバイス。
【請求項5】
上流から下流にかけて前記分離ユニット又は分離ユニット団が複数段配置され、第一段に並置された前記分離ユニット又は分離ユニット団数が1以上であり、
第一段から任意の特定段までは、該段における分離ユニット又は分離ユニット団数が直上流段よりも1つ多く並置され、直上流段の分離ユニット又は分離ユニット団の第一流出口7及び第二流出口8が直下流段の異なる分離ユニット又は分離ユニット団の流入口6に接続され、
前記特定段及び前記特定段より下流側の偶数段においては、分離ユニット又は分離ユニット団数が前記特定段と同じ数だけ並置され、
これら段中の分離ユニット又は分離ユニット団における前記第一分離膜2の通過回数が最多となる流体が流出される第一流出口7が前記第一物質を取り出す第一取出口と接続され、最下段の分離ユニット又は分離ユニット団中の前記第二分離膜3の通過回数が最多となる流体が流出される第二流出口8が前記第二物質を取り出す第二取出口と接続され、その他の第一流出口7及び第二流出口8は下流段の分離ユニット又は分離ユニット団の流入口6に接続され、
前記特定段より下流側奇数段においては、分離ユニット又は分離ユニット団数が前記偶数段よりも1つ少なく並置され、該段中の分離ユニット又は分離ユニット団の第一流出口7及び第二流出口8が直下流段の異なる分離ユニットの流入口6に接続されている請求項3に記載の膜分離デバイス。
【請求項6】
前記分離ユニットが2段以上の多段に接続された膜分離デバイスであって、任意の二つの段において、それぞれの上流段における複数の前記分離用流路の断面積前記第一分離膜の膜面積の総和は、下流段における複数の前記分離用流路の断面積の総和と各段毎に略同一に形成され、かつ、前記第二分離膜の膜面積の総和も各段毎に略同一に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の膜分離デバイス。
【請求項7】
前記分離用ユニット中の第一分離膜と第二分離膜が設けられた流路壁面が一対の平行面を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の膜分離デバイス。
【請求項8】
板状又はシート状である請求項1〜7のいずれかに記載の膜分離デバイス。
【請求項9】
前記分離膜が、連通孔を有する多孔質膜である請求項1〜8のいずれかに記載の膜分離デバイス。
【請求項10】
前記第一分離膜がエタノールよりも水に対して高い透過性を有し、且つ前記第二分離膜が水よりもエタノールに対して高い透過性を有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の膜分離デバイス。
【請求項11】
前記第一分離膜が光学異性体の一方に対して高い親和性を有し、且つ前記第二分離膜が他方の光学活性体に対して高い親和性を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の膜分離デバイス。
【請求項12】
流体に含まれる第一物質および第二物質を相互に分離する分離方法であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載の膜分離デバイスの流入口6に分離すべき流体を導入し、前記第一流出口7から前記第一物質が濃縮された流体を取り出し、前記第二流出口8から前記第二物質が濃縮された流体を取り出すことを特徴とする分離方法。
【請求項13】
前記供給側流路1、前記第一分離膜2、及び前記第二分離膜3を含む領域の温度を周期的に変動させる請求項12に記載の分離方法。
【請求項14】
前記温度の周期的変動に同期させて前記流体の前記流入口6への流入速度を周期的に変動させる請求項13に記載の分離方法。
【請求項15】
前記流体が溶液であり、前記第一物質と第二物質が、前記溶液に含まれる2種類の溶質である請求項11〜14のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項16】
前記第一物質と第二物質が光学異性体であり、前記分離すべき流体がこれらの溶液であるである請求項15に記載の膜分離デバイス。
【請求項17】
前記流体が溶液であり、前記第一物質が溶質であり、前記第二物質が溶媒である請求項11〜16のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項18】
前記第一物質と前記第二物質が共に液体である請求項16に記載の分離方法。
【請求項19】
前記第一物質がエタノールであり、前記第二物質が水であり、前記分離すべき流体がエタノール/水混合溶液である請求項18に記載の膜分離デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−212512(P2006−212512A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26307(P2005−26307)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】