説明

膜厚検出センサの接続構造及び接続方法

【課題】同軸ケーブルの交換を容易にさせると共に、膜厚検出センサ間の信号の干渉を抑制することができる膜厚検出センサの接続構造及び接続方法を提供する。
【解決手段】潤滑油の油膜の厚さを検出するセンサヘッド1と、センサヘッド1と電気的に接続される内導体2a及び内導体2aの周りに絶縁体を介して配される外導体2bを備える同軸ケーブル2との接続構造であって、センサヘッド1には、内導体2aと電気的に接続されるセンサ電極1aの周りに絶縁体1bを介してセンサケース1cが設けられており、センサヘッド1と同軸ケーブル2とは、センサ電極1aと内導体2aとを電気的に接続させると共に、外導体2bとセンサケース1cとを電気的に接続させ、且つ、センサヘッド1と同軸ケーブル2とを着脱自在とさせる同軸コネクタ10を介して接続されているという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚検出センサの接続構造及び接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンダライナに沿ってピストンが往復移動する内燃機関のエンジンシリンダにおいて、シリンダライナのピストンが摺動する摺動面に潤滑油を供給することにより、シリンダライナとピストンとの間隙に所定の厚さの油膜を形成し、シリンダライナとピストンとの摺動を円滑にさせると共に、ピストンの焼き付き、シリンダライナの磨耗等の発生を回避させることがなされている。
【0003】
エンジンシリンダにおいて、潤滑油の油膜の厚さは焼き付き等の発生のし易さの指標となるため、当該油膜の厚さを検出する膜厚検出センサをシリンダライナに設けて、ピストンと対向させることにより油膜厚さを検出させ、当該検出結果に基づいて潤滑油の供給量を調節等する装置が設けられるものが知られている。
このような膜厚検出センサとして例えば特許文献1には、シリンダライナに設けられたセンサヘッド取付孔に圧入され、ピストンリング摺動面と面一に設けられて、センサ電極とピストンのピストンリングと対向させ、センサ電極とピストンとの間の静電容量を検出することにより、シリンダライナとピストンとの間隙に形成された油膜の厚さを計測するものが開示されている。
【特許文献1】特開2007−107947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、膜厚検出センサは一般に寸法が小さいため、膜厚検出センサと電気的に接続される信号線である同軸ケーブルは、先端部に内導体を半田付けした圧着端子を設けて、該圧着端子と膜厚検出センサとをネジ及びナットで締結して固着することで電気的導通をとっていた。また、膜厚検出センサの電気的接地は、同軸ケーブルの外導体を介してエンジンシリンダの外側でなされる構成であり、複数の膜厚検出センサの電気的接地を各膜厚検出センサから離れた同一の場所で行っていた。
【0005】
しかし、このような接続構造を有する膜厚検出センサは、シリンダライナに設けられた後、何らかの影響で同軸ケーブルが断線した場合に、断線した同軸ケーブルの交換が困難であるという問題があった。すなわち、膜厚検出センサが取り付けられるセンサヘッド取付孔は、膜厚検出センサの寸法に応じて形成され、且つ、シリンダライナの強度の問題を考慮して小径で設計されているため、作業者がセンサヘッド取付孔内に手を挿入して上記ネジ及びナットの締結を解除し、同軸ケーブルを取り外すことは困難であった。
【0006】
また、膜厚検出センサの電気的接地を各膜厚検出センサから離れた同一の場所で行っていることで、例えば、特定の膜厚検出センサがピストンと金属接触した場合に、他のセンサが、当該接触した信号の干渉を受けるという現象が発生することがあり、膜厚検出センサの検出精度に影響を与えるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、同軸ケーブルの交換を容易にさせると共に、膜厚検出センサ間の信号の干渉を抑制することができる膜厚検出センサの接続構造及び接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、シリンダライナに設けられ、上記シリンダライナに沿って往復移動自在なピストンと上記シリンダライナとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する膜厚検出センサと、上記膜厚検出センサと電気的に接続される内導体及び上記内導体の周りに絶縁体を介して配される外導体を備える同軸ケーブルとの接続構造であって、上記膜厚検出センサには、上記内導体と電気的に接続されるセンサ電極の周りに絶縁体を介してセンサケースが設けられており、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとは、上記センサ電極と上記内導体とを電気的に接続させると共に、上記外導体と上記センサケースとを電気的に接続させ、且つ、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとを着脱自在とさせる連結部材を介して接続されているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、同軸ケーブルの外導体とセンサケースとが電気的に接続されるため、膜厚検出センサの直近で各々個別に電気的接地をとることが可能となる。また、膜厚検出センサと同軸ケーブルとが着脱自在となるため、同軸ケーブルの交換を容易とさせることができる。
【0009】
また、本発明では、上記連結部材は、互いに着脱自在な一対のコネクタ部材を備えて、上記コネクタ部材の一方は、上記膜厚検出センサ及び上記同軸ケーブルのいずれか一方と接続され、且つ、上記着脱方向に延びる軸周りに形成された螺旋溝及び上記螺旋溝に嵌合するロックピンのいずれか一方を有し、上記コネクタ部材の他方は、上記膜厚検出センサ及び上記同軸ケーブルの他方と接続され、且つ、上記螺旋溝及び上記ロックピンの他方を有し、上記コネクタ部材の一方を、上記コネクタ部材の他方に対し上記軸周りに回転することで上記螺旋溝と上記ロックピンとを嵌合/嵌合解除させて、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとを着脱自在とさせるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、一対のコネクタ部材を着脱方向に延びる軸周りに相対的に回転させることで、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとを着脱自在とさせることができる。
【0010】
また、本発明では、シリンダライナに設けられ、上記シリンダライナに沿って往復移動自在なピストンと上記シリンダライナとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する膜厚検出センサと、上記膜厚検出センサと電気的に接続される内導体及び上記内導体の周りに絶縁体を介して配される外導体を備える同軸ケーブルとの接続方法であって、上記膜厚検出センサには、上記内導体と電気的に接続されるセンサ電極の周りに絶縁体を介してセンサケースが設けられており、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとを、上記センサ電極と上記内導体とを電気的に接続させると共に、上記外導体と上記センサケースとを電気的に接続させ、且つ、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとを着脱自在とさせる連結部材を介して接続するという接続方法を採用する。
このような接続方法を採用することによって、本発明では、同軸ケーブルの外導体とセンサケースとが電気的に接続されるため、膜厚検出センサの直近で各々個別に電気的接地をとることが可能となる。また、膜厚検出センサと同軸ケーブルとが着脱自在となるため、同軸ケーブルの交換を容易とさせることができる。
【0011】
また、本発明では、上記連結部材は、互いに着脱自在な一対のコネクタ部材を備えて、上記コネクタ部材の一方は、上記膜厚検出センサ及び上記同軸ケーブルのいずれか一方と接続され、且つ、上記着脱方向に延びる軸周りに形成された螺旋溝及び上記螺旋溝に嵌合するロックピンのいずれか一方を有し、上記コネクタ部材の他方は、上記膜厚検出センサ及び上記同軸ケーブルの他方と接続され、且つ、上記螺旋溝及び上記ロックピンの他方を有し、上記コネクタ部材の一方を、上記コネクタ部材の他方に対し上記軸周りに回転することで上記螺旋溝と上記ロックピンとを嵌合/嵌合解除させて、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとを着脱自在とさせるという接続方法を採用する。
このような接続方法を採用することによって、本発明では、一対のコネクタ部材を着脱方向に延びる軸周りに相対的に回転させることで、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとを着脱自在とさせることができる。
【0012】
また、本発明では、上記コネクタ部材の一方の形状に応じて形成された治具に上記コネクタ部材の一方を嵌合させ、上記コネクタ部材の一方が嵌合した上記治具を上記軸周りに回転させて、上記螺旋溝と上記ロックピンとの嵌合/嵌合解除を行うという接続方法を採用する。
このような接続方法を採用することによって、本発明では、例えば、作業者の手が入らない狭く長いセンサヘッド取付孔の奥側に膜厚検出センサが配置されている場合であっても、当該治具により嵌合/嵌合解除が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シリンダライナに設けられ、上記シリンダライナに沿って往復移動自在なピストンと上記シリンダライナとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する膜厚検出センサと、上記膜厚検出センサと電気的に接続される内導体及び上記内導体の周りに絶縁体を介して配される外導体を備える同軸ケーブルとの接続構造であって、上記膜厚検出センサには、上記内導体と電気的に接続されるセンサ電極の周りに絶縁体を介してセンサケースが設けられており、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとは、上記センサ電極と上記内導体とを電気的に接続させると共に、上記外導体と上記センサケースとを電気的に接続させ、且つ、上記膜厚検出センサと上記同軸ケーブルとを着脱自在とさせる連結部材を介して接続されているという構成を採用することによって、同軸ケーブルの外導体とセンサケースとが電気的に接続されるため、膜厚検出センサの直近で各々個別に電気的接地をとることが可能となる。また、膜厚検出センサと同軸ケーブルとが着脱自在となるため、同軸ケーブルの交換を容易とさせることができる。
したがって、本発明は、同軸ケーブルの交換を容易にさせると共に、膜厚検出センサ間の信号の干渉を抑制することができる膜厚検出センサの接続構造を提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるエンジンシリンダ装置Eの機能構成図である。この図に示すように、エンジンシリンダ装置Eは、エンジンシリンダSと、膜厚計測装置Mとを有する構成となっている。
このエンジンシリンダSは、例えば船舶等に設けられる大型の2サイクルエンジンのシリンダであり、図示するように、ピストンP、シリンダライナs1、クランクシャフトKとを有する。
【0015】
ピストンPは、クランクシャフトKとピストンロッドp2を介して接続され、シリンダライナs1に沿って往復移動自在な構成となっている。また、ピストンPは、ピストンリングp1を有しており、ピストンリングp1がピストン摺動面s3に沿って摺動する構成となっている。なお、本実施形態では、説明の容易化のためにピストンリングp1を一つ有する構成となっているが、ピストンリングp1が複数ある構成であっても良い。
シリンダライナs1は、センサヘッド取付孔s2、ピストン摺動面s3を有する構成となっている。
クランクシャフトKは、基端部が図1において紙面垂直方向に延びる回転軸周りに回転自在であり、先端部が同方向に延びる回転軸周りに回転自在にピストンロッドp2に接続されている。
【0016】
膜厚計測装置Mは、センサヘッド(膜厚検出センサ)1、同軸ケーブル2、静電容量検出部3、シリンダ内圧力検出部4、クランク角度検出部5及び信号処理部6から構成されている。このような膜厚計測装置Mは、エンジンシリンダSにおけるシリンダライナs1とピストンPとの間隙、より詳しくは、シリンダライナs1の内壁面(ピストン摺動面s3)とピストンリングp1との間隙に形成されている潤滑油の油膜の厚さを計測するものである。
【0017】
センサヘッド1は、ピストンリングp1と対向した場合に、当該ピストンリングp1を対向電極とし、油膜を誘電体とするコンデンサ(計測コンデンサ)を形成するものでありシリンダライナs1に複数設けられる。このセンサヘッド1は、同軸ケーブル2を介して静電容量検出部3(具体的には静電容量検出アンプ3a)に接続されている。
【0018】
静電容量検出部3は、静電容量検出アンプ3a、電圧/電流変換器3b、AC/DC電源3c及びシールドケース3dから構成されている。
静電容量検出アンプ3aは、同軸ケーブル2を介してセンサヘッド1に定電流を供給し、当該定電流によって充電される計測コンデンサの充電電圧の変化に基づいて上記計測コンデンサの静電容量を検出し、当該静電容量を示す電圧信号d1(アナログ信号)を電圧/電流変換器3bに出力する。電圧/電流変換器3bは、上記静電容量検出アンプ3aから入力される電圧信号d1を電流信号d2に変換して信号処理部6(具体的には電流/電圧変換器6a)に出力する。
【0019】
AC/DC電源3cは、外部より供給されるAC電源を直流変換して上記静電容量検出アンプ3a及び電圧/電流変換器3bに供給する。なお、このAC/DC電源3cのコモン端子はシールドケース3dと接続されている。シールドケース3dは、上記静電容量検出アンプ3a、電圧/電流変換器3b及びAC/DC電源3cを収納する電磁遮蔽用筐体であり、外部接地されている。
【0020】
シリンダ内圧力検出部4は、エンジンシリンダSの燃焼室内の圧力を検出し、当該圧力を示す圧力信号を信号処理部6(具体的には膜厚演算部6c)に出力する。
クランク角度検出部5は、例えばエンコーダであり、クランクシャフトK、すなわちクランク軸の回転角度を検出し、当該回転角度を示す回転角信号を信号処理部6(具体的には膜厚演算部6c)に出力する。なお、このクランク軸の回転角度は、ピストンリングp1のピストン摺動方向に対する位置を示すものである。
【0021】
信号処理部6は、電流/電圧変換器6a、A/D変換器6b、膜厚演算部6c及び表示部6dから構成されている。
上記信号処理部6において、電流/電圧変換器6aは、静電容量検出部3の電圧/電流変換器3bから入力される電流信号d2を電圧信号d3に変換してA/D変換器6bに出力する。A/D変換器6bは、アナログ信号である上記電圧信号d3をデジタル信号d4に変換して膜厚演算部6cに出力する。
【0022】
膜厚演算部6cは、A/D変換器6bから入力されるデジタル信号d4(つまり静電容量)と、シリンダ内圧力検出部4から入力される圧力信号及びクランク角度検出部5から入力される回転角信号に所定の信号処理を施すことにより、ピストンリングp1とセンサヘッド1との間隙に形成された油膜の膜厚を算出し、当該膜厚を示す膜厚信号を表示部6dに出力する。表示部6dは、例えば液晶表示装置であり、上記膜厚信号に基づいて膜厚情報を表示する。
【0023】
続いて、このようなエンジンシリンダ装置Mに設けられるセンサヘッド1と同軸ケーブル2との接続構造について図2〜図5を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態におけるセンサヘッド1と同軸ケーブル2との接続構造を示す要部断面図である。
図3は、本発明の実施形態におけるセンサヘッド1の構成を説明する図である。
図4は、本発明の実施形態におけるセンサヘッド1と接続されるカップリング20の構成を説明する図である。
図5は、本発明の実施形態における同軸ケーブル2と接続されるカップリング30の構成を説明する図である。
【0024】
図2に示すように、センサヘッド1と同軸ケーブル2とは、同軸コネクタ(連結部材)10を介して接続されている。
センサヘッド1は、図3に示すように、円筒形状のセンサ電極1aを絶縁体1bで同心円状に被覆し、さらに絶縁体1bの外周を導電体のセンサケース1cによって同心状に被覆した構造となっている。センサケース1cは、センサ電極1aの軸方向において、漸次縮径するテーパ状に形成されており、縮径した端部には、雄ネジ1c1が形成されている。このようなセンサヘッド1は、図2に示すように、拡径した部位がピストン摺動面s3に対して面一となるようにセンサヘッド取付孔s2のテーパ孔s21に圧入されている。
同軸ケーブル2は、図2及び図5に示すように、内導体2aの周りに絶縁体を介して配される編組の外導体2bを有する。
【0025】
同軸コネクタ10は、着脱方向(図2において紙面左右方向)において互いに着脱自在な一対のカップリング(コネクタ部材)20、30を備えている。図1に示すように、カップリング20は、センサヘッド1に接続され、カップリング30は、同軸ケーブル2と接続される構成となっている。
【0026】
カップリング20は、図4に示すように、センサ電極1aと電気的に導通する凸コネクタピン21と、凸コネクタピン21の外周に絶縁体22を介して配されるシェル部23とを有する構成となっている。
シェル部23の一端部には、センサケース1cに形成された雄ネジ1c1と着脱方向において螺合可能な雌ネジ23aが形成されており、シェル部23の他端部には、外周面から半径方向に突出し、且つ、シェル部23の中心軸を挟んで対称的に配される一対のロックピン23bが形成されている。なお、シェル部23は、導電体である金属部材から形成される。
このような、カップリング20は、図2に示すように、雄ネジ1c1と雌ネジ23aとを螺合させることで、センサ電極1aと凸コネクタピン21とが電気的に接続され、センサケース1cとシェル部23とが電気的に接続される構成となっている。
【0027】
カップリング30は、図5に示すように、内導体2aと電気的に導通する凹コネクタピン31と、凹コネクタピン31の外周に絶縁体32を介して配されるシェル部33とを有する構成となっている。
凹コネクタピン31は、着脱方向において、凸コネクタピン21と嵌合して電気的に接続可能な構成となっている。
シェル部33の一端部には、着脱方向に延びる軸周りに螺旋溝35がシェル部33の中心軸を挟んで対称に形成され、シェル部33の他端部には、六角形状を有する嵌合部36が形成されている。螺旋溝35は、ロックピン23bの形状に対応する幅を有する構成となっており、螺旋溝35の終端には、螺旋溝35の当該幅より拡径したロック穴35aが形成されている。より詳しくは、ロック穴35aは、カップリング20に向かう着脱方向側に拡径する構成となっている。なお、シェル部33は、導電体である金属部材から形成される。
このような、カップリング30は、不図示であるが内部において内導体2aと凹コネクタピン31とが電気的に接続され、さらに、外導体2bとシェル部33とが電気的に接続される構成となっている。
【0028】
続いて、図6及び図7を参照して、センサヘッド1と同軸ケーブル2との接続方法及び、その接続構造の作用について説明する。
図6は、本発明の実施形態におけるセンサヘッド取付孔s2内においてカップリング20とカップリング30とを嵌合/嵌合解除させる治具40の構成を説明する図である。
図7は、本実施形態におけるセンサヘッド1と同軸ケーブル2との接続方法を説明する図である。
【0029】
センサヘッド取付孔s2は、例えば本実施形態では、その径がセンサヘッド1の寸法と対応して約2センチメートル程度で形成され、その長さがシリンダライナs1の厚さと対応して約50センチメートル程度で形成される構成となっている。したがって、このような場合、作業者は、センサヘッド取付孔s2内に手を挿入することが困難であるため、以下に説明する治具40を用いて、カップリング20とカップリング30との嵌合/嵌合解除を行うこととなる。
【0030】
治具40は、図6に示すように、カップリング30の形状に応じて形成されたヘッド部41と、ヘッド部41に接続されるグリップ部42とを有する構成となっている。
ヘッド部41は、図6(a)に示すように、カップリング30の嵌合部36の六角形状に対応して、六角形状に形成された嵌合溝部41aを有する。グリップ部42は、図6(b)に示すように、センサヘッド取付孔s2の長さに対応する長さを有し、内部に同軸ケーブル2が挿通可能なケーブル逃がし孔42bが形成された円筒形状を有する。そして、嵌合溝部41aの底部は、ケーブル逃がし孔42bが連通する構成となっている。
【0031】
センサヘッド取付孔s2内においてカップリング20とカップリング30とを嵌合させる場合、図7(a)に示すように、先ず、作業者は、治具40に、同軸ケーブル2が接続されたカップリング30を嵌合させる。より詳しくは、同軸ケーブル2が接続されたカップリング30を、ヘッド部41内において、互いの六角形状を合わせ込むように嵌合部36と嵌合溝部41aとを嵌合させ、また、同軸ケーブル2を嵌合溝部41aの底部を介してケーブル逃がし孔42bを挿通させるようにして治具40に嵌合する。
そして、作業者は、センサヘッド1に接続されたカップリング20に向かう着脱方向に、カップリング30が嵌合した治具40をセンサヘッド取付孔s2内に挿入する。
【0032】
次に、作業者は、図7(b)に示すように、治具40を着脱方向に延びる軸周りに回転させて、カップリング20とカップリング30とを嵌合させることで、センサヘッド1と同軸ケーブル2とを連結させる。より詳しくは、作業者は、カップリング20に設けられたロックピン23bと、カップリング30に設けられた螺旋溝35とを着脱方向において合わせ込んだ後、治具40を軸周りに回転させることで、ロックピン23bを螺旋溝35に嵌合させる。そして、作業者は、ロックピン23bが螺旋溝35の終端においてロック穴35aにて係止されるまで治具40を回転させる。
【0033】
このとき、カップリング20とカップリング30とが着脱方向において嵌合されることで、図2に示すように、凸コネクタピン21と凹コネクタピン31とが嵌合され、センサ電極1aと内導体2aとが電気的に接続される。また、互いに接触するシェル部23及びシェル部33を介して、センサケース1cと外導体2bとが電気的に接続されるため、センサヘッド1の直近で電気的接地をとることが可能となる。
【0034】
カップリング20とカップリング30とを嵌合した後、作業者は、図7(c)に示すように、治具40を着脱方向において引き抜くことで、治具40とカップリング30との嵌合解除を行う。なお、このとき、ロックピン23bは、ロック穴35aの形状により着脱方向において係止されるため、治具40の引き抜きにより、カップリング20とカップリング30とが嵌合解除されることはない。
そして、作業者は、同軸ケーブル2の端部において治具40を引き抜くことで、センサヘッド1と同軸ケーブル2とが同軸コネクタ10を介して接続される接続構造が得られる。
【0035】
なお、同軸ケーブル2が断線等した際は、治具40を用いて、今度はカップリング30を、嵌合する場合と逆方向に回転させ、カップリング20との嵌合を解除させて引き抜くことで、センサヘッド1と同軸ケーブル2との連結を解除し互いに分離させる。そして、断線した同軸ケーブル2を、新しい同軸ケーブル2と交換した後、再びセンサヘッド1と連結させることとなる。
【0036】
したがって、上述の本実施形態によれば、シリンダライナs1に設けられ、シリンダライナs1に沿って往復移動自在なピストンPとシリンダライナs1との間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出するセンサヘッド1と、センサヘッド1と電気的に接続される内導体2a及び内導体2aの周りに絶縁体を介して配される外導体2bを備える同軸ケーブル2との接続構造であって、センサヘッド1には、内導体2aと電気的に接続されるセンサ電極1aの周りに絶縁体を介してセンサケース1cが設けられており、センサヘッド1と同軸ケーブル2とは、センサ電極1aと内導体2aとを電気的に接続させると共に、外導体2bとセンサケース1cとを電気的に接続させ、且つ、センサヘッド1と同軸ケーブル2とを着脱自在とさせる同軸コネクタ10を介して接続されているという構成を採用することによって、同軸ケーブル2の外導体2bとセンサケース1cとが電気的に接続されるため、センサヘッド1の直近で各々個別に電気的接地をとることが可能となる。また、センサヘッド1と同軸ケーブル2とが着脱自在となるため、同軸ケーブル2の交換を容易とさせることができる。
したがって、本実施形態は、同軸ケーブル2の交換を容易にさせると共に、センサヘッド1間の信号の干渉を抑制することができるセンサヘッド1の接続構造を提供することができる効果がある。
【0037】
また、本実施形態では、同軸コネクタ10は、互いに着脱自在な一対のカップリング20、30を備えて、カップリング30は、同軸ケーブル2と接続され、且つ、着脱方向に延びる軸周りに形成された螺旋溝35を有し、カップリング20は、センサヘッド1と接続され、且つ、螺旋溝35に嵌合するロックピン23bを有し、カップリング30を、カップリング20に対し上記軸周りに回転することで螺旋溝35とロックピン23bとを嵌合/嵌合解除させて、センサヘッド1と同軸ケーブル2とを着脱自在とさせるという構成を採用することによって、一対のカップリング20、30を着脱方向に延びる軸周りに相対的に回転させることで、センサヘッド1と同軸ケーブル2とを着脱自在とさせることができる。また、このような構成を採用することで同軸ケーブル2に引っ張り力が加わった場合において、カップリング20とカップリング30とが簡単に嵌合解除されることを防止することができる。
【0038】
また、本実施形態では、カップリング30の形状に応じて形成された治具40にカップリング30を嵌合させ、カップリング30が嵌合した治具40を上記軸周りに回転させて、螺旋溝35とロックピン23bとの嵌合/嵌合解除を行うという接続方法を採用することによって、例えば、作業者の手が入らない狭く長いセンサヘッド取付孔s2の奥側にセンサヘッド1が配置されている場合であっても、当該治具40により嵌合/嵌合解除が可能となる。
【0039】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0040】
例えば、本実施形態では、ケーブル逃がし孔42bは、嵌合溝部41aの底部と連通してグリップ部42内部に形成されると説明したが、上記構成に限定されるものでは無く、嵌合溝部41aの側部からヘッド部41外部に貫通するように設けられる構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態におけるエンジンシリンダ装置の機能構成図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるセンサヘッドと同軸ケーブルとの接続構造を示す要部断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるセンサヘッドの構成を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるセンサヘッドと接続されるカップリングの構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態における同軸ケーブルと接続されるカップリングの構成を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるセンサヘッド取付孔内においてカップリングとカップリングとを嵌合/嵌合解除させる治具の構成を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるセンサヘッドと同軸ケーブルとの接続方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0042】
1…センサヘッド、1a…センサ電極、1b…絶縁体、1c…センサケース、2…同軸ケーブル、2a…内導体、2b…外導体、10…同軸コネクタ(連結部材)、20…カップリング(コネクタ部材)、23b…ロックピン、30…カップリング(コネクタ部材)、35…螺旋溝、40…治具、P…ピストン、s1…シリンダライナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダライナに設けられ、前記シリンダライナに沿って往復移動自在なピストンと前記シリンダライナとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する膜厚検出センサと、前記膜厚検出センサと電気的に接続される内導体及び前記内導体の周りに絶縁体を介して配される外導体を備える同軸ケーブルとの接続構造であって、
前記膜厚検出センサには、前記内導体と電気的に接続されるセンサ電極の周りに絶縁体を介してセンサケースが設けられており、
前記膜厚検出センサと前記同軸ケーブルとは、前記センサ電極と前記内導体とを電気的に接続させると共に、前記外導体と前記センサケースとを電気的に接続させ、且つ、前記膜厚検出センサと前記同軸ケーブルとを着脱自在とさせる連結部材を介して接続されていることを特徴とする膜厚検出センサの接続構造。
【請求項2】
前記連結部材は、互いに着脱自在な一対のコネクタ部材を備えて、
前記コネクタ部材の一方は、前記膜厚検出センサ及び前記同軸ケーブルのいずれか一方と接続され、且つ、前記着脱方向に延びる軸周りに形成された螺旋溝及び前記螺旋溝に嵌合するロックピンのいずれか一方を有し、
前記コネクタ部材の他方は、前記膜厚検出センサ及び前記同軸ケーブルの他方と接続され、且つ、前記螺旋溝及び前記ロックピンの他方を有し、
前記コネクタ部材の一方を、前記コネクタ部材の他方に対し前記軸周りに回転することで前記螺旋溝と前記ロックピンとを嵌合/嵌合解除させて、前記膜厚検出センサと前記同軸ケーブルとを着脱自在とさせることを特徴とする請求項1に記載の膜厚検出センサの接続構造。
【請求項3】
シリンダライナに設けられ、前記シリンダライナに沿って往復移動自在なピストンと前記シリンダライナとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する膜厚検出センサと、前記膜厚検出センサと電気的に接続される内導体及び前記内導体の周りに絶縁体を介して配される外導体を備える同軸ケーブルとの接続方法であって、
前記膜厚検出センサには、前記内導体と電気的に接続されるセンサ電極の周りに絶縁体を介してセンサケースが設けられており、
前記膜厚検出センサと前記同軸ケーブルとを、前記センサ電極と前記内導体とを電気的に接続させると共に、前記外導体と前記センサケースとを電気的に接続させ、且つ、前記膜厚検出センサと前記同軸ケーブルとを着脱自在とさせる連結部材を介して接続することと特徴とする膜厚検出センサの接続方法。
【請求項4】
前記連結部材は、互いに着脱自在な一対のコネクタ部材を備えて、
前記コネクタ部材の一方は、前記膜厚検出センサ及び前記同軸ケーブルのいずれか一方と接続され、且つ、前記着脱方向に延びる軸周りに形成された螺旋溝及び前記螺旋溝に嵌合するロックピンのいずれか一方を有し、
前記コネクタ部材の他方は、前記膜厚検出センサ及び前記同軸ケーブルの他方と接続され、且つ、前記螺旋溝及び前記ロックピンの他方を有し、
前記コネクタ部材の一方を、前記コネクタ部材の他方に対し前記軸周りに回転することで前記螺旋溝と前記ロックピンとを嵌合/嵌合解除させて、前記膜厚検出センサと前記同軸ケーブルとを着脱自在とさせることを特徴とする請求項3に記載の膜厚検出センサの接続方法。
【請求項5】
前記コネクタ部材の一方の形状に応じて形成された治具に前記コネクタ部材の一方を嵌合させ、前記コネクタ部材の一方が嵌合した前記治具を前記軸周りに回転させて、前記螺旋溝と前記ロックピンとの嵌合/嵌合解除を行うことを特徴とする請求項4に記載の膜厚検出センサの接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−270994(P2009−270994A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123255(P2008−123255)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】