説明

膜形成方法、発光装置の製造方法、及び発光装置、並びに有機EL装置の製造方法、及び有機EL装置

【課題】本発明は、膜全体において、その各部分の厚さが均一な機能膜を形成することができる、膜形成方法、発光装置の製造方法、及び有機EL装置の製造方法、並びに均一な膜厚を有する機能膜を備えた発光装置、及び有機EL装置を提供する。
【解決手段】本発明による膜形成方法は、平板状の部材の上に、機能膜形成領域と、機能膜形成領域に隣接した位置に液状材料を配置するための液溜領域と、を設定する領域設定工程と、機能膜形成領域を囲み、部材の面に略垂直な方向において機能膜形成領域より突出したバンクを形成する、バンク形成工程と、機能膜形成領域と、液溜領域とに、機能膜の材料を含有する液状材料を配置する液状材料配置工程と、配置された液状材料を乾燥させて機能膜を形成する乾燥成膜工程と、を有する。発光装置の製造方法、及び有機EL装置の製造方法は、当該膜形成方法を用いて、発光装置又は有機EL装置を構成する機能膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Organic Electro Luminescence:有機エレクトロルミネッセンス)装置の発光膜などのような機能膜を形成する膜形成方法、当該発光膜のような機能膜を有する発光装置の製造方法、及び当該機能膜を有する発光装置、並びに有機EL装置の製造方法、及び有機EL装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機EL装置の発光膜などの機能膜を形成する技術として、機能膜の材料を含む液状材料を塗布し、当該液状材料を乾燥させて機能膜を形成する技術が知られている。液状材料を機能膜を形成するべき位置に適切に配置することができる方法として、インクジェット方式やディスペンサを用いる方法などが知られている。機能膜は厚さによって特性が異なることから、有機EL装置の有機EL膜などのように、その各部において同一の特性が要求される機能膜は、当該機能膜の各部分の厚さが均一であることが求められる。特許文献1には、インクジェット方式を用いて、機能膜を形成する製造方法及びインク組成物が開示されている。特許文献2乃至4には、ディスペンサを用いて、所定の位置に所定量の機能液(塗布液、塗工液、光学層形成用途液)を配置する方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−323276号公報
【特許文献2】特開2001−189192号公報
【特許文献3】特開2003−217842号公報
【特許文献4】特開2004−130161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したように厚さが均一でなければならないにも拘わらず、配置された機能液が乾燥されて形成される機能膜は、乾燥条件によってその形状が異なるために、一定の量の機能液が配置されても、形成される機能膜の厚さ方向の形状は必ずしも一定ではないという課題があった。即ち、機能液が乾燥される際に発生する機能膜の厚さの不均一が発生し、それに起因して、必ずしも機能膜の適切な機能が実現されないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、膜全体において、その各部分の厚さが均一な機能膜を形成することができる、膜形成方法、発光装置の製造方法、及び有機EL装置の製造方法、並びに均一な膜厚を有する機能膜を備えた発光装置、及び有機EL装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による膜形成方法は、平板状の部材の上に設定された、機能膜を形成すべき機能膜形成領域に、機能膜を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで機能膜を形成する膜形成方法であって、部材の上に、機能膜形成領域と、機能膜形成領域に隣接した位置に液状材料を配置するための液溜領域と、を設定する領域設定工程と、少なくとも機能膜形成領域を囲み、部材の面に略垂直な方向において機能膜形成領域より突出したバンクを形成する、バンク形成工程と、機能膜形成領域と、液溜領域とに、液状材料を配置する液状材料配置工程と、配置された液状材料を乾燥させて機能膜を形成する乾燥成膜工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る膜形成方法によれば、機能膜形成領域と機能膜形成領域に隣接した位置に設定された液溜領域とに液状材料が配置される。機能膜形成領域に配置された液状材料は、機能膜形成領域を囲んでいる機能膜形成領域より突出したバンクによって、機能膜形成領域からの流出が阻止されて留まり、機能膜形成領域で乾燥して機能膜形成領域に機能膜が形成される。一般的に、部材上に配置された液体は、液体が接する大気中の蒸発した液体の濃度が液体の塊の端の方が薄いため、端の方が蒸発しやすい。このため、配置された一塊の液体の端の方と中央の方とでは乾燥に要する時間が異なる。溶媒と溶質とから成る液状体においては、乾燥に伴い溶媒の量が減ることにより、溶質の濃度が増加する。また、乾燥途中の液状体は、乾燥量が少ないために残りの液量が多い方から多く乾燥して液量がより減少した方に、流動する。従って、乾燥量が多い部分には多くの溶質が集まり、当該部分に堆積される溶質の量は、乾燥量が少ない部分における溶質の量より多くなる。このように、乾燥状態が一律でないことにより、形成された機能膜の膜厚が不均一になり易い。本発明に係る膜形成方法によれば、機能膜形成領域と機能膜形成領域に隣接した位置に設定された液溜領域とに液状材料を配置することにより、液溜領域に液状材料が配置されていない場合に比べて、機能膜形成領域上の液状材料が接する大気中の蒸発した液状材料の濃度がより均一になる。これにより、機能膜形成領域に配置された液状材料の乾燥条件を略均一にして、機能膜形成領域に略均一な膜厚を有する機能膜を形成することができる。
【0008】
本発明において、膜形成方法は、領域設定工程において、機能膜形成領域を、当該機能膜形成領域のアスペクト比が2以上である略方形又は略長円形形状に設定し、且つ、液溜領域の位置を、機能膜形成領域の略方形又は略長円形形状の長辺方向の両端に隣接した位置に設定することが好ましい。
【0009】
この膜形成方法によれば、細長い形状をした機能膜形成領域の長辺方向の両端に形成された液溜領域にも液状材料が供給される。細長い平面形状をした領域に供給された一塊の液体は、長辺方向において乾燥条件が一定になり難いため、長辺方向の端側の部分と中央側の部分とで乾燥状態が異なることに起因する膜厚の不均一が発生し易い。また、一塊の液体の乾燥は、塊の端の方が乾燥し易いため、長辺方向の端側の部分は、機能膜形成領域の短辺側からと二個所の長辺側からとよりの影響を受けることにより、膜厚が変動しやすく、不均一になり易い。一方、長辺方向の中央側の部分は、機能膜形成領域の二個所の長辺側からの影響のみを受けるため、中央側の部分においては、均一な膜厚を形成し易い。アスペクト比が2以上になると、このような膜厚の不均一が発生し易くなることが、本発明の発明者らによって確認されている。機能膜形成領域の長辺方向の両端に液溜領域を形成して、機能膜形成領域と同様に液状材料を供給することにより、機能膜形成領域に配置された液状材料は、配置された液状材料全体における略中央側の部分の液状材料となることから、機能膜形成領域に配置された液状材料の乾燥条件が略一定となる。これにより、機能膜形成領域に略均一な膜厚を有する機能膜を形成することができる。
【0010】
本発明において、膜形成方法は、バンク形成工程において、バンクを、当該バンクが機能膜形成領域及び液溜領域を囲むことで、機能膜形成領域と液溜領域とがバンクによって区画形成されるように、形成することが好ましい。
【0011】
この膜形成方法によれば、機能膜形成領域と液溜領域とがバンクによって区画形成される。これにより、当該バンクによって、液溜領域に配置された液状材料を、機能膜形成領域に配置された液状材料と同様に、当該液溜領域に保持することができる。
【0012】
本発明において、膜形成方法は、バンク形成工程において、バンクによって区画形成された液溜領域の機能膜形成領域の長辺方向に略直角な方向における幅は、機能膜形成領域の機能膜形成領域の長辺方向に略直角な方向における幅より大きくなるように、バンクを形成することが好ましい。
【0013】
この膜形成方法によれば、液溜領域の幅が機能膜形成領域の幅より大きくなる。これにより、機能膜形成領域の長さ方向の長さの増大を抑制しつつ、液溜領域の面積を大きくして、液溜領域に配置できる液状材料の量を多くすることができる。液溜領域に多くの液状材料を配置することにより、機能膜形成領域に配置された液状材料が、配置された液状材料全体において均一に乾燥し易い部分である、略中央側の部分の液状材料となる状態を実現し易くなる。
【0014】
本発明において、膜形成方法は、バンク形成工程において、機能膜形成領域と液溜領域との境界、又は液溜領域内に、液溜領域と機能膜形成領域とに配置された液体の、一方の領域から他方の領域への流動を抑制する抑制バンクをさらに形成することが好ましい。
【0015】
この膜形成方法によれば、抑制バンクによって、液溜領域と機能膜形成領域とに配置された液体の、一方の領域から他方の領域への流動が抑制される。液溜領域に配置された液状材料が機能膜形成領域に流入することを抑制することで、機能膜形成領域に余分に流入した液状材料によって、機能膜形成領域に形成される機能膜の厚さが影響を受けることを抑制することができる。また、機能膜形成領域に配置された液状材料が機能膜形成領域から流出することを抑制することで、機能膜形成領域に適切な量が配置された液状材料が流出することによって、機能膜形成領域に形成される機能膜の厚さが影響を受けることを抑制することができる。
【0016】
本発明において、膜形成方法は、バンク形成工程において、機能膜形成領域と液溜領域との境界領域に、機能膜形成領域と液溜領域とを分離する分離バンクをさらに形成することが好ましい。
【0017】
この膜形成方法によれば、機能膜形成領域と液溜領域とが分離バンクによって互いに分離されているため、液溜領域に配置された液状材料が機能膜形成領域に流入することを防止することで、機能膜形成領域に余分に流入した液状材料によって、機能膜形成領域に形成される機能膜の厚さが影響を受けることを抑制することができる。また、機能膜形成領域に配置された液状材料が機能膜形成領域から流出することを防止することで、機能膜形成領域に適切な量が配置された液状材料が流出することによって、機能膜形成領域に形成される機能膜の厚さが影響を受けることを抑制することができる。
【0018】
本発明において、膜形成方法は、領域設定工程において、バンクの長辺に臨む位置に第一の液溜領域をさらに設定し、バンク形成工程において、第一の液溜領域を囲む第一のバンクをさらに形成し、液状材料配置工程において、機能膜形成領域と、液溜領域と、第一の液溜領域とに、液状材料を配置することが好ましい。
【0019】
この膜形成方法によれば、機能膜形成領域の長手方向の両端近くに形成した液溜領域と、第一の液溜領域とで、機能膜形成領域の周囲の略全体を囲むことができる。これにより、機能膜形成領域に在る液状材料が接する大気における蒸発した液状材料の濃度を、第一の液溜領域を設けない場合に比べて、より均一にすることができる。
【0020】
本発明において、膜形成方法は、液状材料配置工程において、液溜領域及び機能膜形成領域への液状材料の配置を、当該液溜領域に配置する液状材料の単位面積あたりの量が、機能膜形成領域に配置する液状材料の単位面積あたりの量より多くなるように行うことが好ましい。
【0021】
この膜形成方法によれば、機能膜形成領域と液溜領域とで、配置される単位面積当りの液状材料の量が等しい場合に比べて、液溜領域に配置される液状材料の量が多くなる。液溜領域に多くの液状材料を配置することにより、機能膜形成領域に配置された液状材料が、配置された液状材料全体において均一に乾燥し易い部分である、略中央側の部分の液状材料となる状態を実現し易くなる。
【0022】
本発明において、膜形成方法は、液状材料配置工程が、液溜領域に対する液状材料の配置を開始することで液状材料配置工程を開始するステップと、機能膜形成領域に対する液状材料の配置を行うステップと、液溜領域に対する液状材料の配置を完了することで液状材料配置工程を終了するステップと、を有することが好ましい。
【0023】
この膜形成方法によれば、液状材料配置工程は、最初に液溜領域に対する液状材料の配置を開始することで開始し、最後に液溜領域に対する液状材料の配置を終了する。液状材料を配置する装置の稼働状態が安定し難い開始時と終了時には、液溜領域への液状材料の配置を実行することで、機能膜形成領域には、配置する装置の稼働状態が安定し易い状態で、液状材料の配置を実行することができる。
【0024】
本発明において、膜形成方法は、液状材料配置工程において、ディスペンサを用いて液状材料を配置することが好ましい。
【0025】
この膜形成方法によれば、ディスペンサを用いることにより、任意の位置に任意の量の液状体を配置することができる。これにより、適切な位置に適切な量の液状材料を配置することが可能となり、スピンコートのように液状材料が不要な位置にも配置される方法に比べて、液状材料の無駄な消費を抑制することができる。
【0026】
本発明による発光装置の製造方法は、上記した膜形成方法を用いて、発光膜を形成すべき発光領域に、発光膜を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで発光膜を形成することを特徴とする。
【0027】
本発明に係る発光装置の製造方法によれば、均一な膜厚を有する機能膜を形成することができる膜形成方法を用いて発光膜を形成するため、適切な発光を実現できる均一な膜厚の発光膜を形成して、好適な発光装置を製造することができる。
【0028】
本発明による発光装置は、上記した膜形成方法を用いて、発光膜を形成すべき発光領域に、発光膜を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで形成された発光膜を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る発光装置によれば、均一な膜厚を有する機能膜を形成することができる膜形成方法を用いて形成された発光膜を有する。均一な膜厚の発光膜は、適切な発光を実現し易いため、好適な発光装置を実現することができる。
【0030】
本発明による有機EL装置の製造方法は、上記した膜形成方法を用いて、有機EL層を形成すべき領域に、当該有機EL層を構成する正孔輸送層、発光層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層の少なくとも一つを形成することを特徴とする。
【0031】
本発明に係る有機EL装置の製造方法によれば、均一な膜厚を有する機能膜を形成することができる膜形成方法を用いて、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層の少なくとも一つを形成するため、適切な発光を実現できる均一な膜厚の発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層を形成して、好適な有機EL装置を製造することができる。
【0032】
本発明による有機EL装置は、上記した膜形成方法を用いて、有機EL層を形成すべき領域に、当該有機EL層を構成する正孔輸送層、発光層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで形成された発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層の少なくとも一つを備えることを特徴とする。
【0033】
本発明に係る有機EL装置によれば、均一な膜厚を有する機能膜を形成することができる膜形成方法を用いて形成された発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層の少なくとも一つを有する。均一な膜厚の発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層は、有機EL装置の適切な発光を実現し易いため、好適な有機EL装置を実現することができる。
【0034】
本発明による発光装置は、平板状の部材の上に設定された発光領域に液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることによって形成された発光膜と、部材の上に、少なくとも発光領域を囲む位置に、部材の面に略垂直な方向において発光領域の面より突出したバンクと、発光領域に隣接した位置に設定された液溜領域に、発光膜と同様の形成方法で、且つ実質的に同時に形成された液溜発光膜と、を備えることを特徴とする。
【0035】
本発明に係る発光装置によれば、発光装置は、発光膜に隣接する位置に液溜発光膜を備えている。液溜発光膜は、発光膜と同様にして形成されるため、発光領域に液状材料が配置される際には、液溜領域にも液状材料が配置され、発光領域の液状材料が乾燥させられる際には、液溜領域の液状材料も乾燥させられる。発光領域と発光領域に隣接した位置に設定された液溜領域とに液状材料を配置することにより、配置された液状材料が乾燥させられる際に、発光領域に隣接した位置に液状材料が配置されていない場合に比べて、発光領域上の液状材料が接する大気中の蒸発した液状材料の濃度がより均一になる。これにより、発光領域に配置された液状材料の乾燥条件を略均一にできるため、発光領域に形成される発光膜を略均一な膜厚を有する発光膜にすることができる。
【0036】
本発明において、発光装置は、発光領域が、アスペクト比が2以上である略方形又は略長円形形状を有し、液溜発光膜は、発光領域の略方形又は略長円形形状の長辺方向の両端に隣接した位置に設定されている液溜領域に形成されていることが好ましい。
【0037】
この発光装置によれば、細長い形状の発光領域の長手方向の両端に隣接した位置に液溜領域が設定されており、発光領域に液状材料が配置される際には、発光領域の長手方向の両端に隣接した位置の液溜領域にも液状材料が配置され、発光領域の液状材料が乾燥させられる際には、一緒に乾燥させられる。細長い平面形状をした領域に供給された一塊の液体は、長辺方向において乾燥条件が一定になり難いため、長辺方向の端側の部分と中央側の部分とで乾燥状態が異なることに起因する膜厚の不均一が発生し易い。また、一塊の液体の乾燥は、塊の端の方が乾燥し易いため、長辺方向の端側の部分は、機能膜形成領域の短辺側からと二個所の長辺側からとよりの影響を受けることにより、膜厚が変動しやすく、不均一になり易い。一方、長辺方向の中央側の部分は、機能膜形成領域の二個所の長辺側からの影響のみを受けるため、中央側の部分においては、均一な膜厚を形成し易い。アスペクト比が2以上になると、このような膜厚の不均一が発生し易くなることが、本発明の発明者らによって確認されている。発光領域の長手方向の両端に隣接した位置の液溜領域にも液状材料が配置されることにより、発光領域に配置された液状材料は、配置された液状材料全体における略中央側の部分の液状材料となることから、発光領域に配置された液状材料の乾燥条件が略一定となる。これにより、発光領域に形成される発光膜を略均一な膜厚を有する発光膜にすることができる。
【0038】
本発明において、発光装置は、バンクが発光領域と液溜領域とを囲むことで、発光領域と液溜領域とがバンクによって区画形成されていることが好ましい。
【0039】
この発光装置によれば、発光領域と液溜領域とがバンクによって区画形成される。これにより、発光領域及び液溜領域に液状材料が配置される際には、当該バンクによって、液溜領域に配置された液状材料を、発光領域に配置された液状材料と同様に、当該液溜領域に保持することができる。
【0040】
本発明において、発光装置は、バンクよって区画形成された液溜領域の発光領域の長辺方向に略直角な方向における幅は、発光領域の長辺方向に略直角な方向における幅より大きいことが好ましい。
【0041】
この発光装置によれば、液溜領域の幅が発光領域の幅より大きくなっている。これにより、発光領域の長さ方向の長さの増大を抑制しつつ、液溜領域の面積を大きくして、発光領域及び液溜領域に液状材料が配置される際に液溜領域に配置できる液状材料の量を多くすることができる。液溜領域に多くの液状材料を配置することにより、発光領域に配置された液状材料が、配置された液状材料全体において均一に乾燥し易い部分である、略中央側の部分の液状材料となる状態を実現し易くなる。
【0042】
本発明において、発光装置は、発光領域と液溜領域との境界、又は液溜領域内に、発光領域と液溜領域とに配置された液体の、一方の領域から他方の領域への流動を抑制する抑制バンクをさらに備えることことが好ましい。
【0043】
この発光装置によれば、抑制バンクによって、発光領域と液溜領域とに配置された液体の、一方の領域から他方の領域への流動が抑制される。発光領域及び液溜領域に液状材料が配置された際に、抑液溜領域に配置された液状材料が発光領域に流入することを抑制することで、発光領域に余分に流入した液状材料によって、発光領域に形成される発光膜の厚さが影響を受けることを抑制することができる。また、発光領域に配置された液状材料が発光領域から流出することを抑制することで、発光領域に適切な量が配置された液状材料が流出することによって、発光領域に形成される発光膜の厚さが影響を受けることを抑制することができる。
【0044】
本発明において、発光装置は、発光領域と液溜領域との境界領域に、液溜領域と発光領域とを分離する分離バンクをさらに備えることが好ましい。
【0045】
この発光装置によれば、発光領域と液溜領域とが分離バンクによって互いに分離されているため、発光領域及び液溜領域に液状材料が配置された際に、抑液溜領域に配置された液状材料が発光領域に流入することを防止することで、発光領域に余分に流入した液状材料によって、発光領域に形成される発光膜の厚さが影響を受けることを防止することができる。また、発光領域に配置された液状材料が発光領域から流出することを防止することで、発光領域に適切な量が配置された液状材料が流出することによって、発光領域に形成される発光膜の厚さが影響を受けることを防止することができる。
【0046】
本発明において、発光装置は、バンクの長辺に臨む位置に設定されている第一の液溜領域と、当該第一の液溜領域を囲む第一のバンクと、をさらに備えることが好ましい。
【0047】
この発光装置によれば、発光領域の長手方向の両端近くに形成された液溜領域と、第一の液溜領域とで、発光領域の周囲の略全体を囲むことができる。これにより、発光領域及び液溜領域に配置された液状材料が乾燥させられる際に、発光領域に在る液状材料が接する大気中における蒸発した液状材料の濃度を、第一の液溜領域を設けない場合に比べて、より均一にすることができる。
【0048】
本発明において、発光装置は、液溜発光膜が、発光膜より厚いことが好ましい。
【0049】
この発光装置によれば、液溜発光膜の厚さを発光膜より厚くするために、発光領域及び液溜領域に液状材料が配置される際に、液溜領域には、発光領域に配置する単位面積あたりの液状材料の量より多い単位面積あたりの量の液状材料が配置される。液溜領域に多くの液状材料が配置されることにより、発光領域に配置された液状材料が、配置された液状材料全体において均一に乾燥し易い部分である、略中央側の部分の液状材料となる状態を実現し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明に係る膜形成方法、発光装置の製造方法、及び発光装置、並びに有機EL装置の製造方法、及び有機EL装置の一実施形態について図面を参照して、説明する。本発明の実施形態は、発光装置の一例である有機EL発光膜を有する光書き込みヘッドを製造する工程において、機能膜を形成する工程で用いられる膜形成方法を例に説明する。
【0051】
<光プリンタ>
最初に、光書き込みヘッドを備えた光プリンタ1の要部の構成について、図1を参照して説明する。以下に説明する光プリンタは、フルカラー表示が可能なタンデム方式の光プリンタである。
【0052】
図1は、光プリンタの要部の断面図である。図1に示すように、光プリンタ1は、光書き込みヘッド及び発光部ユニットとしてのブラック用有機EL露光ヘッド2K、シアン用有機EL露光ヘッド2C、マゼンダ用有機EL露光ヘッド2M、及びイエロ用有機EL露光ヘッド2Yを備えている。また、光プリンタ1は、各有機EL露光ヘッド2K,2C,2M,2Yの下方に、ブラック用感光ドラム3K、シアン用感光ドラム3C、マゼンダ用感光ドラム3M、イエロ用感光ドラム3Yをそれぞれ備えている。各感光ドラム3K,3C,3M,3Yは、互いに所定の間隔を隔てて配置されている。
【0053】
さらに、光プリンタ1は、駆動ローラ4、従動ローラ5、テンションローラ6、及び中間転写ベルト7を備える。中間転写ベルト7は、テンションローラ6によりテンションを加えられて駆動ローラ4と従動ローラ5とに張架されており、駆動ローラ4によって図1中反時計周り方向へ循環駆動される。各感光ドラム3K,3C,3M,3Yが、中間転写ベルト7に臨んで配置されている。
【0054】
各感光ドラム3K,3C,3M,3Yは、中間転写ベルト7の駆動と同期して図1中時計周り方向へ回転駆動されるようになっている。そして、各有機EL露光ヘッド2K,2C,2M,2Yは、各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの外周面を各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの回転に同期して順次ライン走査することで、描画データに応じた静電潜像を対応する各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に形成する。
【0055】
また、各感光ドラム3K,3C,3M,3Yに臨んで、該感光ドラム3K,3C,3M,3Yの各外周面を一様に帯電させるコロナ帯電器8K,8C,8M,8Yが設けられている。一様に帯電した各感光ドラム3K,3C,3M,3Yのそれぞれの外周面に、対応する各有機EL露光ヘッド2K,2C,2M,2Yによって光を照射することにより、光が照射された部分の電位を変化させて、静電潜像を各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に形成する。静電潜像は、電位の違いとして形成された画像であって、不可視画像である。
【0056】
また、光プリンタ1は、ブラック用感光ドラム3Kの近傍にブラック用現像装置9Kを、シアン用感光ドラム3Cの近傍にシアン用現像装置9Cを、マゼンダ用感光ドラム3Mの近傍にマゼンダ用現像装置9Mを、イエロ用感光ドラム3Yの近傍にイエロ用現像装置9Yをそれぞれ備えている。この各現像装置9K,9C,9M,9Yは、対応する各有機EL露光ヘッド2K,2C,2M,2Yによって各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に形成された静電潜像に対応する色の現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)を形成するものである。例えば、シアン用現像装置9Cは、シアン用有機EL露光ヘッド2Cによってシアン用感光ドラム3C上に形成された静電潜像にシアン色のトナーを付与して可視像(トナー像)を形成する。
【0057】
より詳細には、各現像装置9K,9C,9M,9Yは、例えば、トナーとして非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を、例えば供給ローラで現像ローラへ供給し、現像ローラ表面に付着させる。現像ローラ表面に付着したトナーは、その膜厚を規制ブレードで規制する。膜厚が一定に規制されたトナーが付着した現像ローラを各感光ドラム3K,3C,3M,3Yに接触又は押圧させることにより、各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に形成された静電潜像の電位レベルに応じてトナー(現像剤)を付着させて可視像(トナー像)として現像する。
【0058】
さらに、光プリンタ1は、各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの周囲に、各現像装置9K,9C,9M,9Yで現像された可視像(トナー像)を一次転写対象である中間転写ベルト7に順次転写するための一次転写ローラ10K,10C,10M,10Yを備えている。また、光プリンタ1は、各感光ドラム3K,3C,3M,3Yの周囲に、クリーニング装置11K,11C,11M,11Yを備えている。クリーニング装置11K,11C,11M,11Yは、一次転写の後に、対応する感光ドラム3K,3C,3M,3Yの表面に残留しているトナーを除去するためのものである。
【0059】
また、光プリンタ1は、中間転写ベルト7とで二次転写部を形成する二次転写ローラ18、及び二次転写後に中間転写ベルト7の表面に残留しているトナーを除去するクリーニングブレード19を備えている。さらに、光プリンタ1は、多数枚の記録媒体Pを保持する給紙カセット15、該給紙カセット15から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ16a、二次転写ローラ18の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ16b、記録媒体Pを排出する排紙ローラ16c、及び排出された記録媒体Pを受けるための排紙トレイ14を備えている。
【0060】
各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に形成されたブラック、シアン、マゼンタ、イエロの各可視像(トナー像)は、一次転写ローラ10K,10C,10M,10Yによって中間転写ベルト7上に順次一次転写される。この一次転写により中間転写ベルト7上で順次重ね合わされてフルカラーとなった可視像(トナー像)は、二次転写ローラ18によって用紙等の記録媒体P上に二次転写され、一対の定着ローラ12を通ることで記録媒体P上に定着される。可視像(トナー像)が定着した記録媒体Pは、排紙ローラ16cによって案内されて光プリンタ1の上部に形成された排紙トレイ14上へ排出される。
【0061】
<有機EL露光ヘッド>
次に、各有機EL露光ヘッド2K,2C,2M,2Yの詳細について、図2を参照して説明する。なお、ブラック用有機EL露光ヘッド2K、シアン用有機EL露光ヘッド2C、マゼンダ用有機EL露光ヘッド2M、及びイエロ用有機EL露光ヘッド2Yは、全て同じ構造をしているため、説明の便宜上、ブラック用有機EL露光ヘッド2Kについてのみ説明し、他の有機EL露光ヘッド2C,2M,2Yについては、その詳細な説明を省略する。
【0062】
図2(a)は、ブラック用有機EL露光ヘッドとブラック用感光ドラムとの外観斜視図である。図2(a)に示すように、ブラック用有機EL露光ヘッド2Kは、一方向、即ち中間転写ベルト7の搬送方向に対して略直交する方向に延在するように配設された箱体21と、箱体21とブラック用感光ドラム3Kとの間に位置するように箱体21に支持固定された光学部材23とを備えている。箱体21は、ブラック用感光ドラム3K側に開口部を有しており、静電潜像を対応する感光ドラムであるブラック用感光ドラム3K上に形成するための光を射出する発光素子アレイ22が、箱体21の開口部から光学部材23に向かって光を射出するように箱体21に固定されている。
【0063】
図2(b)は、ブラック用有機EL露光ヘッドとブラック用感光ドラムとの模式断面図である。図2(b)に示すように、発光素子アレイ22と対向する位置に設けられている光学部材23は、内部に複数のレンズ231を備えている。発光素子アレイ22に形成された有機EL素子24から射出された光は、レンズ231に入射して集光され、ブラック用感光ドラム3Kの表面に照射される。上述したように、光が照射された部分の電位が変化して、ブラック用感光ドラム3K上に、静電潜像が形成される。
【0064】
<発光素子アレイ>
次に、発光素子アレイ22の構成について説明する。図3は、発光素子アレイの概略構成を示す模式図である。図3(a)は、発光素子アレイの模式平面図であり、図3(b)は、図3(a)にA−Aで示した部分の断面図である。
【0065】
図3(a)に示すように、発光素子アレイ22は、基板S上に発光素子としての有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と表記する。)24を複数個配列している。本実施形態の発光素子アレイ22は、縦一列に等ピッチに配列された複数個(本図では、大きく図示するために8個のみ表示した。)の有機EL素子24が2列配列されている。そして、各有機EL素子24は、隣接する他の列の有機EL素子24と縦方向に半ピッチだけずれるようにして配置されている。つまり、各有機EL素子24は、千鳥格子状に配列されている。
【0066】
基板S上には、バンク25が形成されている。バンク25は、有機EL素子24を構成する素子膜28が形成された素子膜領域26を区画形成している。素子膜領域26の中央側部分において複数の有機EL素子24が形成された領域を、発光領域26aと表記する。素子膜領域26において、細長い形状の発光領域26aの長手方向の両端に隣接した領域を調整領域26bと表記する。発光領域26aの両側のバンク25を、バンク25aと表記し、調整領域26bを囲むバンク25を、バンク25bと表記する。バンク25は、発光素子アレイ22の長手方向に直角な方向において、調整領域26bの方が発光領域26aより広くなるように、バンク25bとバンク25aとが配置されて、形成されている。発光領域26aが、機能膜形成領域に相当し、調整領域26bが、液溜領域に相当する。
【0067】
図3(b)に示すように、発光素子アレイ22は、基板S上に設定された発光領域26aにおいて、基板Sの一方の表面上に形成された複数のスイッチング素子31と、スイッチング素子31を覆うように形成された絶縁層32と、絶縁層32上に形成されており、導通層27aを介してスイッチング素子31と導通している複数の画素電極27と、を有している。上記したように、バンク25によって区画された素子膜領域26には、正孔輸送層28aと、正孔輸送層28a上に積層して形成された発光層28bと、発光層28bを覆うように設けられた対向電極29と、を有している。正孔輸送層28aと発光層28bとが、上記した素子膜28である。有機EL素子24は、一個の画素電極27と、対向電極29の当該画素電極27に略対向する部分と、画素電極27と該画素電極27に略対向する対向電極29の部分とに挟まれた正孔輸送層28a及び発光層28bと、で構成されている。対向電極29やバンク25などの上面には、基板S上の全面を覆うように封止部材30が形成されている。正孔輸送層28a及び発光層28bが、機能膜に相当する。
【0068】
正孔輸送層28a及び発光層28bの膜厚は発光領域26a内全域に渡って略均一になっている。従って、各画素電極27上には略均一な膜厚の正孔輸送層28a及び発光層28bが形成されている。また、任意の画素電極27上に形成されている正孔輸送層28a及び発光層28bの膜厚と、他の画素電極27上に形成される正孔輸送層28a及び発光層28bの膜厚とも略均一である。他の有機EL露光ヘッド2C,2M,2Yも同様に、その各発光素子アレイ22に設けられた有機EL素子24の正孔輸送層28a及び発光層28bの膜厚は、均一になっている。
【0069】
図示省略した駆動回路を用いて、任意のスイッチング素子31を選択的に駆動させることにより、駆動させられたスイッチング素子31に対応する有機EL素子24が発光する。各有機EL露光ヘッド2K,2C,2M,2Yから射出される光は、その光学部材23から対応する各感光ドラム3K,3C,3M,3Yに向かって射出される。そして、各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上の電位レベルが出射された光に応じて変化することでトナーの付着力が制御されて各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に前記描画データ信号に基づいた可視像(トナー像)が現像される。このとき、各有機EL露光ヘッド2K,2C,2M,2Yに設けられた各有機EL素子24の発光層28bの膜厚は、均一になっているので、各感光ドラム3K,3C,3M,3Y上に現像される可視像(トナー像)は、輝度ムラ等の表示ムラの無い可視像(トナー像)が形成される。
【0070】
<ディスペンサ装置>
次に、発光層28bなどを形成するための液状材料を配置するのに用いるディスペンサ装置50について図4を参照して説明する。図4は、ディスペンサ装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【0071】
図4に示すように、ディスペンサ装置50は、液状体を吐出するディスペンサ61を有するディスペンサ機構部52と、ディスペンサ61から吐出された液状体の吐出対象であるワーク70を載置するワーク載置台72を有するワーク機構部53と、ディスペンサ61への液状体の供給を行う液状体供給部54と、ディスペンサ61の保守を行うためのメンテナンス装置部55と、を備えている。また、これら各機構部等を総括的に制御するディスペンサ装置制御部56を備えている。
【0072】
さらに、ディスペンサ装置50は、床上に設置された複数の支持脚58と、支持脚58の上側に設置された定盤59とを備えている。定盤59の上側には、ワーク機構部53が定盤59の長手方向(X軸方向)に延在するように配設されている。ワーク機構部53の上方には、定盤59に固定された2本の支持柱で支持されているディスペンサ機構部52が、ワーク機構部53と直交する方向(Y軸方向)に延在するように配設されている。また、定盤59の傍らには、ディスペンサ機構部52のディスペンサ61に連通する供給管を有する液状体供給部54の液状体タンクなどが配置されている。ディスペンサ機構部52の一方の支持柱の近傍には、メンテナンス装置部55がワーク機構部53と並んでX軸方向に配設されている。さらに、定盤59の下側に、ディスペンサ装置制御部56が収容されている。
【0073】
ディスペンサ機構部52は、ディスペンサ61を有するディスペンサユニット62と、ディスペンサユニット62を図示省略したZ軸移動機構を介してZ軸方向に移動可能に支持するディスペンサキャリッジ64とを有する。ディスペンサ機構部52は、ディスペンサキャリッジ64をY軸方向に移動させることで、ディスペンサ61をY軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。ワーク機構部53は、ワーク載置台72をX軸方向に移動させることで、ワーク載置台72に載置されたワーク70をX軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。
【0074】
このように、ディスペンサ61は、Y軸方向の吐出位置まで移動して停止し、下方にあるワーク70のX軸方向の移動に同調して、液状体を吐出する。X軸方向に移動するワーク70と、Y軸方向に移動するディスペンサ61とを相対的に制御することにより、ワーク70上の任意の位置に液状体を供給することで、所望する描画などを行うことが可能である。
【0075】
<有機EL素子の形成>
次に、発光素子アレイ22における有機EL素子24を構成する正孔輸送層28a及び発光層28bの形成工程について図5及び図6を参照して説明する。図5は、正孔輸送層及び発光層の形成工程を示すフローチャートあり、図6(a)、(b)、(c)は正孔輸送層及び発光層の形成工程を示す模式断面図である。
【0076】
図5のステップS1では、図6(a)に示すように、スイッチング素子31と、絶縁層32と、導通層27aと、画素電極27と、が形成された基板Sの表面において、発光領域26aと調整領域26bとから成る素子膜領域26を区画するように、バンク25bとバンク25aとから成るバンク25を形成する。調整領域26bの位置及び形状は、発光領域26aなどを設定する設計段階において、図3を参照して説明したような位置及び形状に、予め設定されている。発光領域26aや調整領域26bの位置及び形状を予め設定する工程が、領域設定工程に相当する。
【0077】
バンク25は、例えば、画素電極27などが形成された基板Sの表面にバンク25の材料を含む液状材料を塗布し、当該液状材料を乾燥させてバンク膜を形成し、フォトエッチングなどで発光領域26a及び調整領域26bなどの部分を取り除くことで、形成する。基板Sが、機能膜を形成する平板状の部材に相当する。ステップS1のバンク25を形成するステップが、バンク形成工程に相当する。
【0078】
ここで、バンクの形状、並びにバンクによって区画される調整領域の形状及び配置について説明する。図7は、バンクの平面形状の例を示す模式平面図である。図7(a)に示すバンク25は、上述したステップS1を実行して形成されたバンクであって、図3を参照して説明した発光素子アレイ22を構成するバンクである。図3を参照して説明したように、バンク25は、発光素子アレイ22の長手方向に直角な方向において、調整領域26bの方が発光領域26aより広くなるように、バンク25bとバンク25aとが配置されて、形成されている。
【0079】
図7(b)に示したバンク75は、基板S1上に形成されている。バンク75を構成するバンク75aは、画素電極27などが形成された発光領域76aと調整領域76bとから成る素子膜領域76を囲むように形成されている。発光領域76aと調整領域76bとの境界には、バンク75aから素子膜領域76側に膨出した突出バンク75bが4個所に形成されている。突出バンク75bが、抑制バンクに相当する。
【0080】
図7(c)に示したバンク77は、基板S2上に形成されている。バンク77を構成するバンク77aは、画素電極27などが形成された発光領域78aと調整領域78bとから成る素子膜領域78を囲むように形成されている。発光領域78aと調整領域78bとの境界には、発光領域78aと調整領域78bとを分離するバンク77bが、2個所に形成されている。バンク77bは、バンク77aと一体に形成されている。バンク77bが、分離バンクに相当する。
【0081】
図7(d)に示したバンク79は、基板S3上に形成されている。バンク79を構成するバンク79aは、上述したバンク77aと同様に、画素電極27などが形成された発光領域80aと調整領域80bとから成る素子膜領域80を囲むように形成されている。発光領域80aと調整領域80bとの境界には、発光領域80aと調整領域80bとを分離するように、上記のバンク77bと同様のバンク79bが2個所に形成されている。また、バンク79aの発光領域80aを区画している部分の外側、即ちバンク79aを挟んで発光領域80aの反対側には、バンク79cが2個所形成されている。2個所のバンク79cは、バンク79aと1個所のバンク79cとで、発光領域80aの長手方向に延在する調整領域80cを区画形成して、2個所のバンク79cとバンク79aとで区画形成された2個所の調整領域80cが、発光領域80aの両側に延在するように形成されている。調整領域80cが、第一の液溜領域に相当し、調整領域80cを区画形成しているバンク79cとバンク79aとが第一のバンクに相当する。
【0082】
次に、図5のステップS2では、正孔輸送層28aの材料を含む液状材料128aを、上述したディスペンサ61から吐出することにより、図6(a)に二点鎖線で示したように、バンク25によって囲まれた素子膜領域26に、液状材料128aを配置する。最初に、バンク25が形成された基板Sを、上述したディスペンサ装置50のワーク載置台72(図4参照)にセットする。ディスペンサ機構部52及びワーク機構部53(図4参照)によって、ワーク載置台72とディスペンサ61とを相対移動させることで、ディスペンサ61を、基板Sに形成されたバンク25に対して図8に二点鎖線で示したディスペンサ61aのように、一方の調整領域26bに臨む状態に位置させる。図8は、素子膜領域とディスペンサとの位置関係を示す説明図である。当該位置でディスペンサ61からの液状材料128aの吐出を開始し、当該吐出を継続すると共に、素子膜領域26に対してディスペンサ61を矢印aの方向に相対移動させることで、素子膜領域26に液状材料128aを配置する。ディスペンサ61が、図8に二点鎖線で示したディスペンサ61bのように、吐出を開始した際にディスペンサ61が臨んでいた一方の調整領域26bとは異なるもう一方の調整領域26bに臨む位置に達したところで、ディスペンサ61からの液状材料128aの吐出を停止する。
【0083】
なお、上述したバンク75又はバンク77のようなバンクを有する素子膜領域76又は素子膜領域78に液状材料128aを配置する場合に、ディスペンサ61が突出バンク75b又はバンク77b付近に臨んでいる際は、液状材料128aの吐出を中断しても良い。あるいは、吐出を継続して、突出バンク75b又はバンク77bの頂部に配置された液状材料128aが流動して、調整領域76b又は調整領域78bなどに流入するようにしても良い。また、上述したバンク79のようなバンクを有する素子膜領域80に液状材料128aを配置する場合には、二個所の調整領域80cの一方の端から液状材料128aの吐出を開始し、調整領域80b、発光領域80a、調整領域80b、もう一方の調整領域80cの順で液状材料128aを配置する。
【0084】
発光領域26aの長手方向の全域に渉って均一に液状材料128aを配置するために、ディスペンサ61が発光領域26aに臨んでいる際のディスペンサ61の発光領域26a(素子膜領域26)に対する相対移動の速度は、略一定速度を維持する。ディスペンサ61が調整領域26bに臨んでいる際のディスペンサ61の素子膜領域26に対する相対移動の速度は、ディスペンサ61が発光領域26aに臨んでいる際の相対移動の速度より小さくする。これにより、調整領域26bに配置する単位面積当りの液状材料128aの量を、発光領域26aに配置する単位面積当りの液状材料128aの量より多くする。
【0085】
なお、素子膜領域26に液状材料128aを充填し易くするために、バンク25が形成された基板Sを表面処理してもよい。例えば、バンク25に囲まれた素子膜領域26の底部と、バンク25の側面とが、液状材料128aに対して親液性となるように処理し、バンク25の頂部は液状材料128aに対して撥液性となるように処理する。この処理によって、素子膜領域26に充填されるべく配置された液状材料128aが素子膜領域26に馴染み易くなると共に、素子膜領域26から溢れ出し難くなる。
【0086】
次に、図5のステップS3では、素子膜領域26に配置された液状材料128aを乾燥させて、正孔輸送層28aを形成する。乾燥方法は、自然乾燥や、減圧環境下での減圧乾燥や、加熱することによる強制乾燥など、どのような乾燥方法を用いてもよいが、発光領域26aに形成される正孔輸送層28aの膜厚が発光領域26aの全域に渉って均一になり易い方法を用いる。調整領域26bに配置された単位面積当りの液状材料128aの量が、発光領域26aに配置された単位面積当りの液状材料128aの量より多いため、図6(b)に示したように、調整領域26bに形成された正孔輸送層28aの厚さの方が、発光領域26aに形成された正孔輸送層28aの厚さより、厚くなっている。液状材料128aを乾燥させて、正孔輸送層28aを形成するステップが、乾燥成膜工程に相当する。
【0087】
次に、ステップS4では、ステップS2における液状材料128aの配置と同様に、発光層28bの材料を含む液状材料128bを、上述したディスペンサ61から吐出して、図6(b)に二点鎖線で示したように、バンク25によって囲まれた素子膜領域26に、液状材料128bを配置する。ステップS4を実行する前に、正孔輸送層28aに対して液状材料128bが馴染み易くなるようにするために、正孔輸送層28aの表面を液状材料128bに対して親液性となるような処理を実行してもよい。
【0088】
次に、ステップS5では、素子膜領域26に配置された液状材料128bを乾燥させて、発光層28bを形成する。乾燥方法は、自然乾燥や、減圧環境下での減圧乾燥や、加熱することによる強制乾燥など、どのような乾燥方法を用いてもよいが、発光領域26aに形成される発光層28bの膜厚が発光領域26aの全域に渉って均一になり易い方法を用いる。調整領域26bに配置された単位面積当りの液状材料128bの量が、発光領域26aに配置された単位面積当りの液状材料128bの量より多いため、図6(c)に示したように、調整領域26bに形成された発光層28bの厚さの方が、発光領域26aに形成された発光層28bの厚さより、厚くなっている。液状材料128bを乾燥させて、発光層28bを形成するステップが、乾燥成膜工程に相当する。
【0089】
図6(c)に示したように、調整領域26bに発光層28bを形成して、有機EL素子24を構成する正孔輸送層28a及び発光層28bを形成する工程を終了する。
【0090】
さらに、発光層28bの上に対向電極29を形成し、形成された対向電極29やバンク25を覆うように有機EL素子24が射出する光に対して透過性を有する封止部材30を形成して、図3を参照して説明したような発光素子アレイ22を構成する。
【0091】
なお、発光素子アレイ22を量産する際には、基板Sを複数形成できるようなマザー基板SAを加工することが効率的である。マザー基板SAにおいて、一個の基板Sに相当する領域に、発光素子アレイ22一個分のスイッチング素子31と、絶縁層32と、導通層27aと、画素電極27と、を形成する。これらが形成されたマザー基板SAの表面において、上述したステップS1からステップS5の各ステップを実行する。さらに、対向電極29を形成し、封止部材30を形成する。最後にマザー基板SAを分割して、個別の発光素子アレイ22を形成する。
【0092】
以下、本実施形態の効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)発光領域26aと調整領域26bとを区画形成するバンク25を形成し、液状材料128a又は液状材料128bをバンク25内に配置して乾燥させる。発光領域26aに配置された液状材料128a又は液状材料128bは、調整領域26bに配置された液状材料128a又は液状材料128bの間に在るため、発光領域26aに配置された液状材料128a又は液状材料128bの乾燥条件が、発光領域26a全体に亘って均一になり易い。これにより、発光領域26aに形成される正孔輸送層28a及び発光層28bの膜厚を均一にすることができる。
【0093】
(2)バンク25は、調整領域26bの幅の方が発光領域26aの幅より広くなるように形成されている。このため、調整領域26bにより多くの液状材料128a又は液状材料128bを配置することが可能となり、発光領域26aに配置された液状材料128a又は液状材料128bの両側に配置された液状材料128a又は液状材料128bの量が多くなる。これにより、発光領域26aに配置された液状材料128a又は液状材料128bの乾燥条件が、発光領域26a全体に亘ってより均一になり易くなることから、発光領域26aに形成される正孔輸送層28a及び発光層28bの膜厚をより均一にすることができる。
【0094】
(3)調整領域26bに配置する単位面積当りの液状材料128a又は液状材料128bの量を、発光領域26aに配置する単位面積当りの液状材料128a又は液状材料128bの量より多くしている。このため、発光領域26aに配置された液状材料128a又は液状材料128bの両側に配置された液状材料128a又は液状材料128bの量が多くなる。これにより、発光領域26aに配置された液状材料128a又は液状材料128bの乾燥条件が、発光領域26a全体に亘ってより均一になり易くなることから、発光領域26aに形成される正孔輸送層28a及び発光層28bの膜厚をより均一にすることができる。
【0095】
(4)ディスペンサ装置50による液状材料128a又は液状材料128bの配置は、調整領域26bから開始して、調整領域26bで終了する。これにより、ディスペンサ装置50の吐出状態が安定しない可能性がある稼働開始時と稼働終了時は調整領域26bに向けての配置を実行し、吐出状態が安定している状態で発光領域26aへの液状材料128a又は液状材料128bの配置を実行することができる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、前記実施形態に限らない。本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0097】
(変形例1)前記実施形態においては、バンク25などの平面形状は角部を有する方形状であり、調整領域26bなどの平面形状も角部を有する方形状であったが、バンクや調整領域の形状が方形状であることは必須ではない。方形状とは異なる多角形であってもよいし、略円形など曲線で構成された形状であってもよい。
【0098】
(変形例2)前記実施形態においては、ディスペンサ61による液状材料128a又は128bの単位面積当りの配置量は、ディスペンサ61の素子膜領域26に対する相対移動の速度を変えることによって調節していたが、配置量の調節を相対移動速度によることは必須ではない。ディスペンサから液状材料を吐出させるために印加する圧力を変えたり、ディスペンサの吐出口のバルブの開口面積を変えたりすることで、単位時間当りの吐出量を変えることによって単位面積当りの配置量を調節してもよい。
【0099】
(変形例3)前記実施形態においては、ディスペンサ61を有するディスペンサ装置50を用いて、液状材料128a又は128bを配置する例について説明したが、液状材料を配置するために使用する装置は、ディスペンサを用いる装置に限らない。例えば、液状材料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット方式の液滴吐出装置を用いてもよい。
【0100】
(変形例4)前記実施形態においては、発光領域78aと調整領域78bとを、又は発光領域80aと調整領域80bと調整領域80cとを分離して区画形成する、バンク77又はバンク79は、それぞれ一体に形成されたバンクであったが、発光領域と調整領域とを分離して区画形成するバンクが一体であることは必須ではない。発光領域を区画するバンクと調整領域を区画するバンクとは異なるバンクであってもよい。
【0101】
(変形例5)前記実施形態においては、有機EL素子24を有する発光素子アレイ22における正孔輸送層28aと発光層28bとの形成を例に説明したが、本発明の膜形成方法の適用は有機EL装置の有機EL膜の形成に限らない。均一な厚さの膜を形成することが好ましい装置の膜を、液状材料を任意の位置に配置して形成する場合であれば、どのような膜の形成においても適用することができる。
【0102】
(変形例6)前記実施形態においては、有機EL素子24は、正孔輸送層28aと発光層28bとが、画素電極27と対向電極29とに挟まれた構成であったが、有機EL素子は、このような構成に限らない。有機EL素子は、発光層のみが画素電極と対向電極とに挟まれた構成のものや、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とが挟まれた構成のものや、正孔輸送層と発光層と電子輸送層と正孔注入層とが挟まれた構成のものや、正孔輸送層と発光層と電子輸送層と正孔注入層と電子注入層とが挟まれた構成のものなどが知られている。本発明の膜形成方法は、これらの電子輸送層や正孔注入層や電子注入層の形成にも適用することができる。
【0103】
(変形例7)前記実施形態においては、突出バンク75bは、バンク75aから素子膜領域76側に膨出して形成されていたが、抑制バンクに相当するバンクが素子膜領域を区画形成するバンクに連なっていることは必須ではない。例えば、素子膜領域を区画形成するバンク間に、当該バンクとは独立したバンクを形成してもよい。
【0104】
(変形例8)前記実施形態においては、有機EL素子24を有する発光素子アレイ22における正孔輸送層28aと発光層28bの両方とも本発明の膜形成方法を適用して形成していたが、装置を構成する機能膜の全てに、本発明の膜形成方法を適用して機能膜を有する装置を形成することは必須ではない。均一な膜厚が形成し難い機能膜の形成のみに、本発明の膜形成方法を適用するなど、一部の機能膜の形成に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】光プリンタの要部の断面図。
【図2】(a)は、ブラック用有機EL露光ヘッドとブラック用感光ドラムとの外観斜視図。(b)は、ブラック用有機EL露光ヘッドとブラック用感光ドラムとの模式断面図。
【図3】発光素子アレイの概略構成を示す模式図。
【図4】ディスペンサ装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図5】正孔輸送層及び発光層の形成工程を示すフローチャート。
【図6】正孔輸送層及び発光層の形成工程を示す模式断面図。
【図7】バンクの平面形状の例を示す模式平面図。
【図8】素子膜領域とディスペンサとの位置関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0106】
1…光プリンタ、2C…シアン用有機EL露光ヘッド、2K…ブラック用有機EL露光ヘッド、2M…マゼンダ用有機EL露光ヘッド、2Y…イエロ用有機EL露光ヘッド、21…箱体、22…発光素子アレイ、24…有機EL素子、25,25a,25b…バンク、26…素子膜領域、26a…発光領域、26b…調整領域、27…画素電極、27a…導通層、28…素子膜、28a…正孔輸送層、28b…発光層、29…対向電極、30…封止部材、31…スイッチング素子、32…絶縁層、50…ディスペンサ装置、61,61a,61b…ディスペンサ、75,75a,77,77a,77b,79,79a,79b,79c…バンク、75b…突出バンク、76,78,80…素子膜領域、76a,78a,80a…発光領域、76b,78b,80b,80c…調整領域、128a,128b…液状材料、S,S1,S2,S3…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の部材の上に設定された、機能膜を形成すべき機能膜形成領域に、前記機能膜を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで前記機能膜を形成する膜形成方法であって、
前記部材の上に、前記機能膜形成領域と、前記機能膜形成領域に隣接した位置に前記液状材料を配置するための液溜領域と、を設定する領域設定工程と、
少なくとも前記機能膜形成領域を囲み、前記部材の面に略垂直な方向において前記機能膜形成領域より突出したバンクを形成する、バンク形成工程と、
前記機能膜形成領域と、前記液溜領域とに、前記液状材料を配置する液状材料配置工程と、
配置された前記液状材料を乾燥させて前記機能膜を形成する乾燥成膜工程と、を有することを特徴とする膜形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の膜形成方法であって、
前記領域設定工程において、前記機能膜形成領域を、当該機能膜形成領域のアスペクト比が2以上である略方形又は略長円形形状に設定し、且つ、前記液溜領域の位置を、前記機能膜形成領域の略方形又は略長円形形状の長辺方向の両端に隣接した位置に設定することを特徴とする膜形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の膜形成方法であって、
前記バンク形成工程において、前記バンクを、当該バンクが前記機能膜形成領域及び前記液溜領域を囲むことで、前記機能膜形成領域と前記液溜領域とが前記バンクによって区画形成されるように、形成することを特徴とする膜形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の膜形成方法であって、
前記バンク形成工程において、前記バンクによって区画形成された前記液溜領域の前記機能膜形成領域の長辺方向に略直角な方向における幅は、前記機能膜形成領域の前記略直角な方向における幅より大きくなるように、前記バンクを形成することを特徴とする膜形成方法。
【請求項5】
請求項3に記載の膜形成方法であって、
前記バンク形成工程において、前記機能膜形成領域と前記液溜領域との境界、又は前記液溜領域内に、前記液溜領域と前記機能膜形成領域とに配置された液体の、一方の領域から他方の領域への流動を抑制する抑制バンクをさらに形成することを特徴とする膜形成方法。
【請求項6】
請求項3に記載の膜形成方法であって、
前記バンク形成工程において、前記機能膜形成領域と前記液溜領域との境界領域に、前記機能膜形成領域と前記液溜領域とを分離する分離バンクをさらに形成することを特徴とする膜形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の膜形成方法であって、
前記領域設定工程において、前記バンクの長辺に臨む位置に第一の液溜領域をさらに設定し、
前記バンク形成工程において、前記第一の液溜領域を囲む第一のバンクをさらに形成し、
前記液状材料配置工程において、前記機能膜形成領域と、前記液溜領域と、前記第一の液溜領域とに、前記液状材料を配置することを特徴とする膜形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の膜形成方法であって、
前記液状材料配置工程において、前記液溜領域及び前記機能膜形成領域への前記液状材料の配置を、当該液溜領域に配置する前記液状材料の単位面積あたりの量が、前記機能膜形成領域に配置する前記液状材料の単位面積あたりの量より多くなるように行うことを特徴とする膜形成方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の膜形成方法であって、
前記液状材料配置工程は、
前記液溜領域に対する前記液状材料の配置を開始することで前記液状材料配置工程を開始するステップと、
前記機能膜形成領域に対する前記液状材料の配置を行うステップと、
前記液溜領域に対する前記液状材料の配置を完了することで前記液状材料配置工程を終了するステップと、を有することを特徴とする膜形成方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の膜形成方法であって、
前記液状材料配置工程において、ディスペンサを用いて前記液状材料を配置することを特徴とする膜形成方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の膜形成方法を用いて、発光膜を形成すべき発光領域に、前記発光膜を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで前記発光膜を形成することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の膜形成方法を用いて、発光膜を形成すべき発光領域に、前記発光膜を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで形成された前記発光膜を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の膜形成方法を用いて、有機EL層を形成すべき領域に、当該有機EL層を構成する正孔輸送層、発光層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで、前記発光層、前記正孔輸送層、前記電子輸送層、前記正孔注入層、又は前記電子注入層の少なくとも一つを形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の膜形成方法を用いて、有機EL層を形成すべき領域に、当該有機EL層を構成する正孔輸送層、発光層、電子輸送層、正孔注入層、又は電子注入層を形成するための材料を含有する液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることで形成された前記発光層、前記正孔輸送層、前記電子輸送層、前記正孔注入層、又は前記電子注入層の少なくとも一つを備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項15】
平板状の部材の上に設定された発光領域に液状材料を配置し、当該液状材料を乾燥させることによって形成された発光膜と、
前記部材の上に、少なくとも前記発光領域を囲む位置に、前記部材の面に略垂直な方向において前記発光領域の面より突出したバンクと、
前記発光領域に隣接した位置に設定された液溜領域に、前記発光膜と同様の形成方法で、且つ実質的に同時に形成された液溜発光膜と、を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項16】
請求項15に記載の発光装置であって、
前記発光領域は、アスペクト比が2以上である略方形又は略長円形形状を有し、
前記液溜発光膜は、前記発光領域の略方形又は略長円形形状の長辺方向の両端に隣接した位置に設定されている前記液溜領域に形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の発光装置であって、
前記バンクが前記発光領域と前記液溜領域とを囲むことで、前記発光領域と前記液溜領域とが前記バンクによって区画形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項18】
請求項17に記載の発光装置であって、
前記バンクよって区画形成された前記液溜領域の前記発光領域の長辺方向に略直角な方向における幅は、前記発光領域の前記長辺方向に略直角な方向における幅より大きいことを特徴とする発光装置。
【請求項19】
請求項17に記載の発光装置であって、
前記発光領域と前記液溜領域との境界、又は前記液溜領域内に、
前記発光領域と前記液溜領域とに配置された液体の、一方の領域から他方の領域への流動を抑制する抑制バンクをさらに備えることを特徴とする発光装置。
【請求項20】
請求項17に記載の発光装置であって、
前記発光領域と前記液溜領域との境界領域に、前記液溜領域と前記発光領域とを分離する分離バンクをさらに備えることを特徴とする発光装置。
【請求項21】
請求項20に記載の発光装置であって、
前記バンクの長辺に臨む位置に設定されている第一の液溜領域と、当該第一の液溜領域を囲む第一のバンクと、をさらに備えることを特徴とする発光装置。
【請求項22】
請求項15乃至21のいずれか一項に記載の発光装置であって、
前記液溜発光膜は、前記発光膜より厚いことを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−181678(P2008−181678A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12269(P2007−12269)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】