説明

膜形成方法

【課題】 基板上に粒子を噴射して形成する膜の厚さの均一性を向上することができる成膜方法を提供する。
【解決手段】 成膜材料の粒子を多数含むエアロゾルを搬送管の一端から導入し、前記搬送管の他端から該他端に対向して配置された基板に向けて前記エアロゾルを噴射することで、前記基板上に前記成膜材料を成膜する膜形成方法において、前記搬送管の一端と他端との間から、粒子濃度が、前記エアロゾルの粒子濃度の10%以下であるガスを導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に膜を形成する成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアロゾルを、差圧を利用して搬送管中を搬送させて基板上に噴射し、該基板上にエアロゾル中に含まれる粒子を構成する材料からなる膜を形成する成膜方法が知られている。
【0003】
2種類の材料を含む膜を成膜するために、互いに異なる材料の粒子を含む2種類のエアロゾルを搬送管の途中で合流させる方法が、特許文献1に開示されている。
【0004】
また、比較的大きな面積の複合構造物を形成する際に基板上に堆積する膜を均一な厚さで形成することを目的に、搬送管の先端に取り付けられたノズルの、エアロゾルの通過空間の断面形状および断面積を制御することが特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開平6−158306号公報
【特許文献2】特開2003−247080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された構成によると、2種類のエアロゾルが混合する箇所において、粒子どうしが接触することで、最終的に搬送管の先端から噴射される粒子の、粒径のばらつきが大きくなる場合がある。これにより、基板上に形成される膜の厚さがばらつく場合がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された構成によると、そもそもノズルに導入されるエアロゾルの粒子濃度のばらつきが大きいと、ノズルから基板上に噴射される粒子濃度のばらつきも大きくなる。従って、基板上に厚さが均一な膜を形成することが困難な場合がある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、エアロゾルを用いて基板上に膜を形成する方法において、厚さのばらつきを低減した膜を形成することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、成膜材料の粒子を多数含むエアロゾルを搬送管の一端から導入し、前記搬送管の他端から該他端に対向して配置された基板に向けて前記エアロゾルを噴射することで、前記基板上に前記成膜材料を成膜する膜形成方法において、前記搬送管の一端と他端との間から、粒子濃度が、前記エアロゾルの粒子濃度の10%以下であるガスを導入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、搬送管内におけるエアロゾル中の粒子の濃度分布のばらつきを低減することができるため、基板上に形成される膜の厚さを均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態における成膜装置に関して説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、その相対配置などは、特に記載がない限りはこの発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
図1に、本発明の実施の形態における成膜装置の模式図を示す。図1において、1はエアロゾル生成室(第1のチャンバ−)、2は成膜室(第2のチャンバ−)、3は搬送管、4は粒子攪拌部、5はガス流入管、6はマスフローコントローラ、7はステージ、8は基板、9は排気装置、10は複数の粒子、13はガス導入管を示す。
【0012】
エアロゾル生成室1には、成膜材料の複数の粒子10が予め配置される。また、エアロゾル生成室1は、エアロゾル生成室1にガスを流入するガス流入管5を備える。ガス流入管5には、マスフローコントローラ6が備えられ、エアロゾル生成室1に流入するガスの量を調整することができる。また、エアロゾル生成室1から成膜室2にエアロゾルを搬送する搬送管3の一方の端部が、エアロゾル生成室1内に配置される。
【0013】
搬送管3の他方の端部は、成膜室2内に配置される。成膜室2内には、膜をその上に形成する基板8と基板8を移動させるステージ7とを備え、また成膜室2内のガスを排出する排気装置9を備える。
【0014】
搬送管3には、ガス導入管13が結合されており、ガス導入管13から搬送管3内へガス(攪拌ガス)が導入される。ガス導入管13から導入される攪拌ガスは、膜を形成するための成膜材料を含む粒子を含んでもよい(即ちエアロゾルであってもよい)。しかし、該ガスに含まれる粒子の濃度を、エアロゾル生成室1から搬送管3に導入されるエアロゾルの濃度(エアロゾル中に含まれる粒子濃度)の10%以下とする。これにより、噴射されるエアロゾル中の粒子の平均粒径が大きくなることを防ぎ、形成する膜の厚さのばらつきを抑えることができる。
【0015】
この導入される攪拌ガスにより、エアロゾル生成室1から成膜室2に搬送される複数の粒子は、粒子攪拌部4における搬送管3とガス導入管13との結合部(搬送管3の攪拌ガスが導入される部分)を通過するときに攪拌される。
【0016】
図1に示す本発明に係る成膜装置は、搬送管3にガス導入管13を介して攪拌ガスを流入することにより搬送管3内を通るエアロゾルを攪拌させ、搬送管3の断面における粒子濃度の分布のばらつきを低減する。これにより、成膜室2内に位置する搬送管3の端部の形状によらず、基板8の表面上に形成する膜の厚さのばらつきを低減することができる。
【0017】
次に、本発明の実施の形態における成膜装置を用いた膜の形成方法を説明する。
【0018】
(工程A)
予め、成膜材料の複数の粒子10を、エアロゾル生成室1内に用意する。
【0019】
予め用意する複数の粒子10の各々の粒径は、1nm以上10μm以下が好ましいが、基板8上に膜厚の均一性に優れた膜を形成するためには、1nm以上100nm以下がより好ましい。複数の粒子10の材料としては、Be、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Al、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Pd等の金属またはこれらの組み合わせによる合金材料が挙げられる。また、MgO、TiO2、Al、CuO、PZT等の金属酸化物、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WC等の炭化物、HfB、ZrB、LaB、CeB、YB、GdB等の硼化物、TiN、ZrN、HfN等の窒化物も用いることができる。更に、Si、Ge等の半導体、グラファイト、アモルファスカーボン等の炭素等を用いてもよい。複数の粒子10の材料は、上記の材料の組み合わせであってもよい。
【0020】
(工程B)
次に、エアロゾル生成室1にガス流入管5を介してガスを流入し、複数の粒子10を浮遊させてエアロゾルを生成する。
【0021】
エアロゾル生成室1に導入するガスとしては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、窒素−水素混合ガス、空気を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、エアロゾル中の粒子濃度の実用的な範囲としては、10個/cm以上1010個/cm以下であることが好ましい。
【0022】
尚、図1では、予め用意した粒子からエアロゾルを生成する成膜装置を示したが、本発明に係る成膜装置には、成膜材料をアーク放電等の加熱手段を用いて蒸発させ、気体中で粒子化することでエアロゾルを生成する、蒸発法を適用することもできる。
【0023】
図2に、蒸発法を適用した成膜装置を示す。図1中の部材と同じ部材には同じ符号を用いている。図2中の、11は加熱手段、12は蒸発源を示す。
【0024】
まず、蒸発源12には、基板8上に形成する膜の材料と同じ材料または該材料を含む材料を用意する。形成する膜を2種以上の元素で構成するときは、異なる元素からなる複数の蒸発源12を用意することもできる。そして、エアロゾル生成室1内において、蒸発源12を加熱手段11により加熱する。同時にエアロゾル生成室1内にガス流入管5からガスを導入する。そして、加熱された蒸発源12の材料は蒸発して、導入されたガスで冷やされて粒子化することにより、エアロゾルが生成される。
【0025】
(工程C)
エアロゾル生成室1内の圧力を成膜室2内の圧力より高くなるように調整する。これによりエアロゾル生成室1と成膜室2との間に差圧が発生する。その結果、エアロゾル生成室1内で生成されたエアロゾルは、搬送管3の一端から粒子攪拌部4を通って成膜室2内に搬送される。
【0026】
エアロゾル生成室1と成膜室2は、気密性を有する容器であり、エアロゾル生成室1に導入されるガスの導入量と成膜室2から排出されるガスの排出量とを調整することによりそれぞれの室内の圧力を調整することができる。すなわち、エアロゾル生成室1側のマスフローコントローラ6と排気装置9とで調整することができる。エアロゾル生成室1に導入されるガスの流入量は、実用的な範囲として、1L/min以上100L/min以下であることが好ましい。また、成膜室2から排出されるガスの流出量は、実用的な範囲として、1L/min以上100L/min以下であることが好ましい。エアロゾルをエアロゾル生成室1から成膜室2に搬送し、基板8上に厚さの均一性に優れた膜を形成するためには、エアロゾル生成室1内の圧力と成膜室2内の圧力との差が、30kPa以上200kPa以下であることが好ましい。
【0027】
また、搬送管3の内径としては、安定してエアロゾルを搬送できる範囲として、0.5mm以上30mm以下とすることができる。
【0028】
搬送管3のエアロゾル生成室1側の端部と成膜室2側の端部との間、すなわち搬送管3の一端と他端の間に粒子攪拌部4が配置される。
【0029】
粒子攪拌部4では、搬送管3内を通過するエアロゾルに攪拌ガスを導入させて、エアロゾルに対して搬送管3の断面方向の力を印加することにより、エアロゾルを攪拌させる。即ち、攪拌ガスによりエアロゾル中の粒子が攪拌される。これにより、搬送管3の断面における粒子濃度のばらつきを低減させることができる。
【0030】
尚、搬送管3とガス導入管13との結合部と、搬送管3の成膜室2側の端部と、の間は、粒子攪拌部4の効果を十分に得るために、20cm以上離れていることが好ましい。これにより、攪拌ガスが十分に混ざり合ったエアロゾルが、搬送管3の成膜室2側の端部に層流となって到達し、粒子濃度のばらつきが小さいエアロゾルを基板上に噴射することができる。
【0031】
本発明の実施の形態における成膜装置の粒子攪拌部4について、図3を用いてより詳細に説明する。
【0032】
図3は、図1における粒子攪拌部4の断面を拡大した模式図である。図3中の13はガス導入管である。また、図3における搬送管3内の実線の矢印は、エアロゾル生成室1から成膜室2に搬送されるエアロゾルの流れを示す。図3におけるガス導入管13内の破線の矢印は、ガス導入管13から導入される攪拌ガスの流れを示す。
【0033】
エアロゾル生成室1で生成したエアロゾルは、エアロゾル生成室1内の圧力と成膜室2内の圧力との差圧により、成膜室2に向かって搬送管3内を移動する。粒子攪拌部4に到達したエアロゾルは、搬送管3に結合したガス導入管13から導入される攪拌ガスにより、搬送管3内のエアロゾルの流れる方向に対して交差する方向または相対する方向の外力を受ける。そして、エアロゾルは攪拌ガスと混ざり合い、エアロゾル中の粒子が搬送管3とガス導入管13との結合部付近で攪拌される。ここで、エアロゾルの攪拌とは、エアロゾル中の複数の粒子がそれぞれ外力を受けて移動し、搬送管3内の粒子濃度の分布のばらつきを低減することをいう。本発明では、搬送管3内を移動するエアロゾルに対して、搬送管3の断面方向の外力を与えて攪拌することで、搬送管3の断面における粒子濃度の分布のばらつきを低減することが重要となる。攪拌ガスと混ざり合って一体となったエアロゾルは、成膜室2に向かって搬送される。
【0034】
攪拌ガスとしては、エアロゾル生成室1に導入するガスと同様のガスが好ましい。また、攪拌ガスには粒子が含まれないことが好ましい。攪拌ガスに含まれる粒子濃度が高くなると、エアロゾル生成室1から搬送管3に導入されたエアロゾルに含まれる粒子の粒径の変動が生じる。これにより、搬送管3の成膜室2側の端部から噴出されるエアロゾル中の粒子の平均粒径が大きくなる。従って、厚さのばらつきが小さい膜を形成するために、攪拌ガスに含まれる粒子の濃度は、エアロゾル生成室1から搬送管3に導入されるエアロゾル中の粒子の濃度の10%以下であることが好ましい。
【0035】
また、エアロゾル中の粒子を効果的に攪拌するために、搬送管3とガス導入管13とがなす角度であってエアロゾル生成室1側の角度θとしては、70度より大きく180度以下であることが好ましく、135度以上180度以下がより好ましい。また、上記角度は、エアロゾルが流れる方向と、攪拌ガスが導入される方向と、の間の角度ということもできる。図3は、θを90度としたときの例である。また、ガス導入管13と搬送管3との結合部にガス導入管13を介して流入する攪拌ガスの流速は、搬送管3のエアロゾル生成室1側の端部から該結合部に流れるエアロゾルの流速の10%より大きいことが好ましく、40%以上がより好ましい。
【0036】
図4は、搬送管3とガス導入管13とがなす角度であってエアロゾル生成室1側の角度θを180度としたときの粒子攪拌部4の断面を拡大した模式図である。エアロゾルの流れ(実線矢印)と攪拌ガスの流れ(破線矢印)とが正面から衝突し、エアロゾルが攪拌される。攪拌ガスと混ざり合って一体となったエアロゾルは、エアロゾル生成室1内の圧力より成膜室2内の圧力の方が低いため、成膜室2に向かって搬送される。
【0037】
尚、上述した成膜装置においては、1本のガス導入管13を搬送管3に結合する構成を示したが、複数本のガス導入管13を搬送管3に結合し、各ガス導入管13に攪拌ガスを導入することで、より一層、エアロゾルの攪拌効果を得ることができる。
【0038】
図5は、搬送管3に、ガス導入管13が2本結合しており、結合部が対向するように配置された粒子攪拌部4の断面を拡大した模式図である。搬送管3と各々のガス導入管13との結合部のエアロゾル生成室1側の角度は、それぞれ90度である。図5に示す粒子攪拌部4では、ガス導入管13から導入される攪拌ガス(破線の矢印)の流れが対向するように構成される。したがって、搬送管3内を流れるエアロゾルに、搬送管3の断面に対して水平方向に逆向きの力を印加することができ、搬送管3の断面における粒子の濃度分布のばらつきを効果的に低減することができる。また、図5では、ガス導入管13から導入される攪拌ガスの流れが対向するように配置したが、各々のガス導入管13と搬送管4との結合部が対向せずにずれていてもよい。
【0039】
(工程D)
そして、成膜室2において、搬送管3の端部からエアロゾルが基板8に向けて噴射され、基板8の表面上にエアロゾルに含まれる粒子を構成する材料からなる膜が形成される。
【0040】
基板8上に制御性良く膜を形成するためには、基板8上に噴射される粒子の広がりを小さくすることが好ましい。搬送管3の成膜室2側の端部の内径を十分小さくすることにより、噴射される粒子の広がりを抑えることができる。上述したように、搬送管3の成膜室2側の端部から基板8上にエアロゾルを噴射する構成を示したが、搬送管3の成膜室2側の端部にノズルを設けて、該ノズルの噴出口からエアロゾルを噴出するように構成しても良い。エアロゾルの導入口よりも噴出口の開口面積の狭いノズルを用いることにより、より精細な膜を形成することが可能となる。ノズルの噴出口の形状は円形状でも矩形状でもよく、ノズルの噴射口の開口面積としては、実用的な範囲として、0.01mm以上5mm以下であることが好ましい。また、搬送管3の成膜室2側の端部にノズルを設ける場合には、形成する膜の厚さのばらつきを抑制するために、搬送管3とガス導入管13との結合部と、ノズルの噴射口と、の間の長さが、20cm以上であることが好ましい。
【0041】
基板8はステージ7に固定されており、該ステージ7を動かすことで、エアロゾルを基板8上に噴射する位置を調整することができる。したがって、基板8の移動速度や移動量を調節して、基板8上に所望の形状の膜を形成することができる。
【0042】
本発明においては、搬送管3の一部に粒子攪拌部4を設けるため、搬送管3の成膜室2側の端部に到達するエアロゾル中の粒子の濃度のばらつきを抑えることができる。したがって、搬送管3の成膜室2側の端部から基板8上に均一性高くエアロゾルを噴射でき、膜厚のばらつきを低減した膜を基板8上に形成することができる。
【0043】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、本発明の目的を達成するものであれば各構成要素が代用物や均等物に置換されたものであってもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
本実施例においては、図4に示す構造の搬送管3を有する成膜装置を用いて、ガス導入管13に導入する攪拌ガスにおける粒子の濃度が、表1に示す濃度となるようにして、試料1から試料6を作成した。エアロゾルの粒子の濃度は、微分型電気移動度測定(DMA)で計測した。1cmあたりの粒子の平均個数をエアロゾル中の粒子(ガス中の粒子)の濃度とした。
【0046】
また、本実施例では、搬送管3の成膜室2側の端部にはノズルを設け、エアロゾルをノズルの噴出口から基板8に噴射して、基板8上に膜を形成した。以下に、本実施例における成膜装置を説明する。
【0047】
先ず、エアロゾル生成室1、成膜室2、および搬送管3内の圧力が10−2Pa以下になるまで排気装置10により排気した。次に、エアロゾル生成室1内に、ガス流入管5よりヘリウムガスを供給し、成膜室2内の圧力を133kPaとした。この時、成膜室2内を排気装置9により減圧し、成膜室2内の圧力が200Paとなるように調整した。この段階でエアロゾル生成室1内の圧力と成膜室2内の圧力とに差圧を生じさせ、ヘリウムガスがエアロゾル生成室1から搬送管3を通じ、成膜室2へ安定的に流れるようにヘリウムガスの供給量を調整した。このとき、ガス流入管5より供給するヘリウムガスの流量は、4L/minであった。
【0048】
次に、エアロゾル生成室1内に、複数の粒子10として、Alからなる複数の粒子を用意し、ヘリウムガスの気流によりAlの粒子をエアロゾル生成室1内に分散させて、エアロゾルを生成した。複数の粒子10の平均粒径は20nmであった。
【0049】
エアロゾル生成室1で生成したエアロゾルは、搬送管3を通じて成膜室2へ搬送された。搬送管3とガス導入管13との結合部に流入するエアロゾルの流速は、4.5m/sであった。ここで、エアロゾルの流速は、熱線流速計で計測し、搬送管3内を流れるエアロゾルの平均速度を、エアロゾルの流速とした。尚、搬送管3に導入するエアロゾル中の粒子の濃度は1.0×10個/cmであった。
【0050】
同時にガス導入管13に、Alからなる複数の粒子を含むヘリウムガスを攪拌ガスとして流入させた。搬送管3とガス導入管13との結合部に流入するヘリウムガスの流速を4.5m/sとした。ガス導入管13に導入するヘリウムガス中の粒子濃度は、表1に示す濃度となるように調整した。尚、試料1の作成時の、ガス導入管13に導入するヘリウムガス中の粒子の濃度は、本実施例で用いた粒子濃度の測定装置の検出限界値以下であった。
【0051】
成膜室2へ搬送されたエアロゾルを、連続してノズルから基板8に向かって噴射しつつ、ノズルを固定してステージ7により基板8を移動させて、基板8上にAlからなるライン状の膜を形成した。エアロゾルを基板8に向かって噴射したとき、同時に基板8を100℃になるように加熱した。基板8にはガラス基板を用いた。また、基板8の移動速度は、5mm/sとした。
【0052】
続いて、基板8上に形成した膜の厚さを接触式の膜厚計で測定し、膜厚の平均値と、膜厚の平均値に対する膜厚のばらつきを算出した。算出した結果を、表1に示す。尚、平均膜厚は1μmであった。
【0053】
本実施例において、搬送管3の内径は4.35mm、搬送管3とガス導入管13との結合部とノズルの先端との間の長さは25cm、ノズルの噴射口の形状は矩形であり0.5mm×5mmであった。
【0054】
本実施例においては、ガス導入管13に導入するヘリウムガス中のAlからなる粒子の濃度を1.0×10個/cm以下として作成した試料1乃至試料3で、基板8上に形成した膜の厚さのばらつきの十分な抑制効果を得ることができた。
【0055】
【表1】

【0056】
(実施例2)
本実施例においては、図1に示す成膜装置を用いて、搬送管3とガス導入管13との間の角度を変えて、6個の試料を作成した。搬送管3とガス導入管13との間の角度を変えた以外は実施例1と同様の構成とした。尚、ガス導入管13に導入するヘリウムガス中の粒子の濃度を、粒子濃度の測定装置の検出限界値以下とした。
【0057】
基板8上に形成した膜の厚さを接触式の膜厚計で測定し、膜厚の平均値と、膜厚の平均値に対する膜厚のばらつきを算出した。算出した結果を、表2に示す。尚、平均膜厚は1μmであった。
【0058】
本実施例においては、搬送管3とガス導入管13とがなす角度であってエアロゾル生成室1側の角度を70度より大きくして作成した試料3乃至試料6で基板8上に形成した膜の厚さのばらつきの抑制効果を得ることができた。更に、搬送管3とガス導入管13との間の角度を135度以上として作成した試料5および試料6において基板8上に形成した膜の厚さのばらつきを十分に低減することができた。
【0059】
【表2】

【0060】
(実施例3)
本実施例においては、図4に示す構造の搬送管3を有する成膜装置を用いて、搬送管3とガス導入管13との結合部と、搬送管3の成膜室2側の端部と、の間の長さを変えて、5個の試料を作成した。該長さを変えた以外は実施例1と同様の構成とした。尚、ガス導入管13に導入するヘリウムガス中の粒子の濃度を、粒子濃度の測定装置の検出限界値以下とした。
【0061】
基板8上に形成した膜の厚さを接触式の膜厚計で測定し、膜厚の平均値と、膜厚の平均値に対する膜厚のばらつきを算出した。算出した結果を、表3に示す。尚、平均膜厚は1μmであった。
【0062】
本実施例においては、搬送管3の成膜室2側の端部と結合部との間の長さを20cm以上として作成した試料4および試料5で、基板8上に形成した膜の厚さのばらつきの十分な抑制効果を得ることができた。
【0063】
【表3】

【0064】
(実施例4)
図4に示す構造の搬送管3を有する成膜装置を用いて、ガス導入管13から導入する攪拌ガスの流速を変えて、7個の試料を作成した。ガス導入管13から導入する攪拌ガスの流速を変えた以外は実施例1と同様の構成とした。尚、ガス導入管13に導入するヘリウムガス中の粒子の濃度を、粒子濃度の測定装置の検出限界値以下とした。
【0065】
基板8上に形成した膜の厚さを接触式の膜厚計で測定し、膜厚の平均値と、膜厚の平均値に対する膜厚のばらつきを算出した。算出した結果を、表3に示す。尚、平均膜厚は1μmであった。
【0066】
本実施例においては、攪拌ガスの流速を0.45m/sより大きくして作成した試料3乃至試料7において、基板8上に形成した膜の厚さのばらつきの抑制効果を得ることができた。更に、攪拌ガスの流速を1.8m/s以上として作成した試料6および試料7において、基板8上に形成した膜の厚さのばらつきを一層低減することができた。
【0067】
【表4】

【0068】
(実施例5)
本実施例では、図1に示す成膜装置を用いて、以下の4つの条件を組み合わせて実施例1と同様に試料を作成した。他の条件は実施例1と同じとした。
(1)ガス導入管13に導入するヘリウムガス中のAlからなる粒子の濃度を、1.0×10個/cm以下とした。
(2)搬送管3とガス導入管13との間の角度を、135度以上180度以下とした。
(3)搬送管3の成膜室2側の端部と結合部との間の長さを、20cm以上25cm以下とした。
(4)攪拌ガスの流速を、1.8m/s以上4.5m/s以下とした。
【0069】
基板8上に形成した膜の厚さを接触式の膜厚計で測定し、膜厚の平均値と、膜厚の平均値に対する膜厚のばらつきを算出した。尚、平均膜厚は1μmであった。
【0070】
本実施例においては、いずれの条件を組み合わせても、基板8上に形成した膜の厚さのばらつきを10%より小さくすることができ、膜厚のばらつきの抑制効果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に関わる成膜装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明に関わる成膜装置の構成を示す模式図である。
【図3】本発明に関わる成膜装置の粒子攪拌部の断面を示す模式図である。
【図4】本発明に関わる成膜装置の粒子攪拌部の断面を示す模式図である。
【図5】本発明に関わる成膜装置の粒子攪拌部の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0072】
1 エアロゾル生成室
2 成膜室
3 搬送管
4 粒子攪拌部
5 ガス流入管
6 マスフローコントローラ
7 ステージ
8 基板
9 排気装置
10 粒子
11 加熱手段
12 蒸発源
13 ガス導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料の粒子を多数含むエアロゾルを搬送管の一端から導入し、
前記搬送管の他端から該他端に対向して配置された基板に向けて前記エアロゾルを噴射することで、前記基板上に前記成膜材料を成膜する膜形成方法において、
前記搬送管の一端と他端との間から、粒子濃度が、前記エアロゾルの粒子濃度の10%以下であるガスを導入する
ことを特徴とする膜形成方法。
【請求項2】
前記搬送管の前記ガスが導入される部分において、前記エアロゾルが流れる方向と、前記ガスが導入される方向と、の間の角度が、70度よりも大きく180度以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の膜形成方法。
【請求項3】
前記搬送管の前記ガスが導入される部分において、前記エアロゾルが流れる方向と、前記ガスが導入される方向と、の間の角度が、135度以上180度以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の膜形成方法。
【請求項4】
前記搬送管の前記ガスが導入される部分において、前記ガスの流速が、前記エアロゾルの流速の10%よりも大きい
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜形成方法。
【請求項5】
前記搬送管の前記ガスが導入される部分において、前記ガスの流速が、前記エアロゾルの流速の40%以上である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の膜形成方法。
【請求項6】
前記搬送管の前記ガスが導入される部分と、前記搬送管の他端と、の間の長さが、20cm以上である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−61678(P2007−61678A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247665(P2005−247665)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】