膨化菓子の製造方法
【課題】油で揚げずにサクサク感のある膨化菓子を製造する。
【解決手段】ペレット成形工程S1において、ジャガイモのペレットを成形し、ペレット乾燥工程S2において、ペレットを一旦乾燥させ、ペレット含水率調整工程S3において、ペレットの含水率を14〜23重量%に調整し、油分噴霧工程S4において、ペレットに油分を噴霧し、膨化工程S5において、ペレットを加圧及び加熱により膨化させ、シーズニング工程S6において、油分を噴霧した後に調味料を付着させ、焼成工程S7において遠赤外線により焼成して、膨化菓子を製造する。このように、ペレット含水率調整工程S3において、膨化前に含水率を14〜23重量%に調整することで、膨化時の形状歪みを抑制することができるとともに、形状保持性を向上させることができ、サクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【解決手段】ペレット成形工程S1において、ジャガイモのペレットを成形し、ペレット乾燥工程S2において、ペレットを一旦乾燥させ、ペレット含水率調整工程S3において、ペレットの含水率を14〜23重量%に調整し、油分噴霧工程S4において、ペレットに油分を噴霧し、膨化工程S5において、ペレットを加圧及び加熱により膨化させ、シーズニング工程S6において、油分を噴霧した後に調味料を付着させ、焼成工程S7において遠赤外線により焼成して、膨化菓子を製造する。このように、ペレット含水率調整工程S3において、膨化前に含水率を14〜23重量%に調整することで、膨化時の形状歪みを抑制することができるとともに、形状保持性を向上させることができ、サクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガイモを膨化させて膨化菓子を製造する膨化菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャガイモの菓子として、ジャガイモを薄くスライスして油で揚げたものや、細かくカットしたジャガイモカット片を接着して成形した後に油で揚げたものが、広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−329123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年の健康志向の高まりで、油で揚げない所謂ノンフライの菓子が望まれるようになってきた。このノンフライの菓子は、一般に、ジャガイモのスライス片やジャガイモの成形品に調味料を塗布したのち、遠赤外線などで焼成して乾燥させている。しかしながら、このノンフライの菓子は、硬すぎたり焦げ付いたりするため、食する人に良好なサクサク感を感じさせることが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、油で揚げずにサクサク感のある膨化菓子を製造することができる膨化菓子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膨化菓子の製造方法は、所定形状に形成されたジャガイモのペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する含水率調整工程と、含水率調整工程により含水率が調整されたペレットを所定圧力で加圧するとともに所定温度で加熱することにより膨化させる膨化工程と、膨化工程により膨化させた後に遠赤外線で焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る膨化菓子の製造方法によれば、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整してから所定圧力及び所定温度で膨化させることで、膨化時の形状歪みを抑制することができるとともに、膨化菓子の形状保持性を向上させることができる。そして、このようにして膨化した後に遠赤外線で焼成することで、油で揚げることなくサクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【0008】
この場合、上記含水率調整工程は、水分を噴霧することによりペレットの含水率を調整することが好ましい。この膨化菓子の製造方法によれば、含水率調整工程において、水分を噴霧することで含水率を調整することで、ペレット全体に均等な水分を与えることができるため、ペレット内における含水率の偏りを低減することができる。
【0009】
また、上記膨化工程は、含水率が4.9重量%〜7.0重量%となるようにペレットを膨化することが好ましい。この膨化菓子の製造方法によれば、膨化工程において、含水率が4.9重量%〜7.0重量%となるようにペレットを膨化することで、ペレットの膨化を十分に促進させることができ、含水率を十分に減らすとともに焦げ付きを防止することができる。しかも、膨化工程で含水率を4.9重量%〜7.0重量%に下げておくことで、後工程の焼成工程において含水率を低下させる度合いが小さくなるため、焼成工程における焼成時間を短縮することができる。
【0010】
また、上記焼成工程は、含水率が2重量%〜4重量%となるように焼成することが好ましい。この膨化菓子の製造方法によれば、焼成工程において、遠赤外線の照射時間及び遠赤外線の照射温度などの調整により含水率を2重量%〜4重量%に下げることで、サクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【0011】
そして、上記膨化工程と上記焼成工程との間に、調味料を塗布する調味料塗布工程を更に有することが好ましい。この膨化菓子の製造方法によれば、膨化工程と焼成工程との間に調味料塗布工程を行うことで、調味料の定着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、油で揚げずにサクサク感のある膨化菓子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る膨化菓子の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】表2に示す膨化前、膨化後、遠赤後の含水率の測定結果をグラフで示した図である。
【図3】表3に示す硬さの測定結果をグラフで示した図である。
【図4】表4に示す硬さの測定結果をグラフで示した図である。
【図5】表5に示す膨化後、遠赤後の比重の算出結果をグラフで示した図である。
【図6】表6に示す遠赤後の形状の算出結果をグラフで示した図であり、(a)は、短径及び長径の平均値及び標準偏差を示しており、(b)は、長径に対する短径の割合の平均値をグラフで示している。
【図7】外観の官能試験の結果をグラフで示した図である。
【図8】サクサク感の官能試験の結果をグラフで示した図である。
【図9】食感の官能試験の結果をグラフで示した図である。
【図10】おいしさの官能試験の結果をグラフで示した図である。
【図11】総合評価の官能試験の結果をグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る膨化菓子の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る膨化菓子の製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、まず、ペレット成形工程S1を行う。ペレット成形工程S1では、ジャガイモを略直方体にカットして、ジャガイモのペレットを成形する。ペレットの形状は、例えば、縦19mm×横19mm×高さ9mmの略直方体とする。なお、ペレットに成形するジャガイモは、剥皮したものを用いてもよく、剥皮しないものを用いてもよい。なお、ペレットの縦(mm)×横(mm)×高さ(mm)のサイズは、膨化菓子の所望サイズに応じて適宜設定することができる。ただし、縦及び横のサイズについては、膨化菓子の外観を良好にするため(すなわち、短径/長径の比率を1に近づけるため)に、それぞれ同一寸法に設定することが好ましい。また、高さのサイズについては、後述する膨化工程S5において、下側鉄板に載置するペレットの向きを一定にして、ペレットに対する加圧方向を一定するという観点から、5mm〜12mmが好ましく、6mm〜10mmがより好ましい。
【0016】
次に、ペレット乾燥工程S2を行う。ペレット乾燥工程S2では、ペレットを乾燥させて、含水率を12重量%〜16重量%に調整する。すなわち、ペレット乾燥工程S2は、ペレット成形工程S1で成形したペレットを保存・保管するためにペレットを乾燥させる工程である。このため、ペレットを保存・保管する必要がない場合は、ペレット乾燥工程S2を省略することができる。一方、ペレットを保存・保管する場合は、ペレットを乾燥させた後、冷蔵保存又は冷凍保存しておく。なお、本発明において含水率とは、重量基準の含水率を示している。
【0017】
次に、ペレット含水率調整工程S3を行う。ペレット含水率調整工程S3では、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する。好ましくは、ペレットの含水率を17重量%〜20重量%に調整する。具体的には、所定速度で搬送されるペレットにスプレー式の噴霧器などで水分を噴霧して、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する。このとき、噴霧器で水分を噴霧することで、水分がペレット全体に均一に与えられるため、ペレット内部の水分量が均一化される。なお、ペレットの含水率は、ペレットの搬送速度と噴霧器による水分の噴霧量との関係を事前に調査しておき、この調査結果に基づいてペレットの搬送速度及び水分の噴霧量を調整することで、ペレットの含水率を所望の値に調整することができる。一方、前工程のペレット乾燥工程S2を行っていない場合は、ペレットの含水率が17重量%〜18重量%よりも高いため、ペレット乾燥工程S2と同様にペレットを乾燥させて、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する。
【0018】
次に、油分噴霧工程S4を行う。油分噴霧工程S4は、後工程の膨化工程S5においてペレットが鉄板に付着するのを防止するためにペレットに油分を噴霧する工程である。このため、油分噴霧工程S4では、ペレットが鉄板に付着しない程度の微量の油分がペレットの表面に付着すればよい。具体的には、所定速度で搬送されるペレットにスプレー式の噴霧器などで油分を噴霧し、ペレットの表面に微量の油分を付着させる。
【0019】
次に、膨化工程S5を行う。膨化工程S5では、含水率が14重量%〜23重量%に調整されたペレットを加圧及び加熱により膨化させて、含水率が4.9重量%〜7.0重量%の膨化菓子を生成する。ここで、ペレットを加圧する圧力である膨化圧力、ペレットを加熱する温度である膨化温度、ペレットを加圧及び加熱する時間である膨化時間について説明する。膨化圧力は、低いとペレットの膨化が不十分となり、高いと膨化された膨化菓子の厚さが極端に薄くなってしまう。このため、膨化圧力は、ペレットの膨化を促進して膨化菓子が適度な厚さとなる適切な圧力に設定する。膨化温度は、高いと焦げ付いてしまい、低いとペレットの膨化が不十分となってしまう。このため、膨化温度は、ペレットの膨化を促進して焦げ付きを防止できる適切な温度に設定する。膨化時間は、短いとペレットの膨化が不十分となり、長いと焦げ付いてしまう。このため、膨化時間は、ペレットの膨化を促進して焦げ付きを防止できる適切な時間に設定する。
【0020】
膨化工程S5で用いる装置は、例えば、上側鉄板と下側鉄板とが対向配置されるとともに、上側鉄板及び下側鉄板が接離方向に移動可能に保持されている。そして、上側鉄板及び下側鉄板を所定の膨化温度に加熱した状態で、下側鉄板にペレットを載置して、上側鉄板を押し下げて所定の膨化圧力で下側鉄板に押し付ける。すると、ペレットは、上側鉄板と下側鉄板とに挟み込まれて、所定の膨化圧力で加圧されるとともに所定の膨化温度で加熱される。これにより、ペレットが瞬間的に薄い平板状に押し潰されて内部の水分が沸騰して飛ばされるため、多数の気泡を含む所定厚さの膨化菓子が生成される。
【0021】
次に、シーズニング工程S6を行う。シーズニング工程S6では、膨化工程S5で生成された膨化菓子に対して、油分を噴霧して調味料を付着させる。油分の噴霧は、膨化菓子に対する調味料の定着性を向上させるために行う。このため、膨化菓子に調味料が定着する程度の微量の油分が膨化菓子の表面に付着すればよい。具体的には、中空構造で傾斜した第1タンブラー及び第2タンブラーを用意する。そして、膨化工程S5で生成された膨化菓子を第1タンブラーの内部に投入し、この第1タンブラーを回転させながらスプレー式の噴霧器などで第1タンブラー内に油分を噴霧する。これにより、膨化菓子の表面に微量の油分が付着する。その後、油分が付着した膨化菓子を第2タンブラーの内部に投入し、この第2タンブラーを回転させながらスプレー式の噴霧器などで第2タンブラー内に調味料を散布する。これにより、膨化菓子の表面に付着された油分が調味料を保持することにより、膨化菓子の表面に調味料が付着する。
【0022】
次に、焼成工程S7を行う。焼成工程S7では、調味料が付着された膨化菓子を遠赤外線により焼成して、含水率が2重量%〜4重量%に調整する。具体的には、所定速度で搬送される膨化菓子に対して所定温度の遠赤外線を所定時間照射することで、膨化菓子を焼成するとともに含水率を2重量%〜4重量%に調整する。膨化工程S5において生成された膨化菓子は含水率が4.9重量%〜7.0重量%となっているため、例えば、250℃〜300℃に設定された遠赤外線を180秒〜240秒照射することで、膨化菓子を焼成して含水率を2重量%〜4重量%に下げることができる。
【0023】
このようにS1〜S7の工程により製造された膨化菓子は、含水率が2重量%〜4重量%、15Nの荷重に対する歪率が29%〜42%、18Nの荷重に対する歪率が32%〜46%、歪率が30%となる荷重が7.98N〜15.99N、歪率が40%となる荷重が14.32N〜17.10N、見かけ比重が0.035g/cm3〜0.074g/cm3となる。ここで、見かけ比重とは、同容量の水の質量との比であり、後述する実施例において詳しく説明する。また、本明細書において歪率とは、体積歪に類したものであり、具体的には、所定の容器に積層した膨化菓子に荷重を加えた場合に、荷重を加える前後の膨化菓子の積層高さにより算出される割合(圧縮率)である。そして、このような物性を有する膨化菓子は、咀嚼する際に、歯で噛んだ部分が適度な硬さで崩れていき、食感の良い良好なサクサク感が得られる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0025】
19mm×19mm×9mmの略直方体のジャガイモのペレットに噴霧器で水分を噴霧して、含水率の異なる7種類のサンプル1〜7を多数用意した。サンプル1は、含水率が14重量%に調整されたものであり、サンプル2は、含水率が17重量%に調整されたものであり、サンプル3は、含水率が19重量%に調整されたものであり、サンプル4は、含水率が20重量%に調整されたものであり、サンプル5は、含水率が23重量%に調整されたものであり、サンプル6は、含水率が26重量%に調整されたものであり、サンプル7は、含水率が30重量%に調整されたものである。そして、各サンプルに対して膨化工程S5及び焼成工程S7を行い、膨化菓子を製造した。なお、本実施例では、ペレット含水率調整工程S3によりペレットの含水率が調整された状態であって膨化工程S5を行う直前の状態を「膨化前」と称し、膨化工程S5を行った直後の状態を「膨化後」と称し、焼成工程S7を行った直後の状態を「遠赤後」と称す。
【0026】
【表1】
膨化工程S5の条件は、表1に示すとおりとした。すなわち、膨化圧力条件は、ペレットを加圧する上側鉄板と下側鉄板との面圧を13MPaとし、膨化温度条件は、上側鉄板の温度を215℃、下側鉄板の温度を213℃とし、膨化時間条件は、ペレットを加圧及び加熱する時間を0.35秒とした。
【0027】
焼成工程S7の条件は、300℃に設定した遠赤外線を180秒照射した。
【0028】
そして、本実施例では、上記条件の下で膨化菓子を製造し、中間製品である膨化後のサンプル(膨化菓子)の含水率、硬さ、比重を測定するとともに、最終製品である遠赤後のサンプル(膨化菓子)の含水率、硬さ、比重、形状を計測した。更に、本実施例では、更に、最終製品の食感等を確認するために、遠赤後のサンプル(膨化菓子)の官能検査を行った。
【0029】
[含水率の測定]
含水率の測定は、乾燥減量法により行った。含水率を測定するための使用機材は、株式会社ケット科学研究所製の赤外線水分計:FD−240と、株式会社泉精器製作所製のフードプロセッサ:IFP−2600とを用いた。含水率の測定方法は以下のとおりである。(1)サンプルをフードプロセッサで30秒間×2回粉砕する。(2)粉砕したサンプル7gを均一に広げた状態で試料皿に盛る。(3)赤外線水分計の設定を乾燥温度:140℃、乾燥時間:15分間として、赤外線水分計を用いて乾燥減量法によりサンプルの水分量を測定する。
【0030】
【表2】
表2は、膨化前、膨化後、遠赤後の含水率の測定結果を示しており、図2は、表2に示す膨化前、膨化後、遠赤後の含水率の測定結果をグラフで示した図である。図2では、横軸に膨化前の含水率(重量%)を示しており、縦軸に膨化後及び遠赤後の含水率(重量%)を示している。表2及び図2に示すように、膨化後の含水率は、4.92重量%〜7.10重量%となり、膨化前の含水率と膨化後の含水率とは、所定の比例関係となっている。すなわち、膨化前の含水率が小さければ膨化後の含水率も小さくなり、膨化前の含水率が高ければ膨化後の含水率も高くなる。一方、膨化後の含水率と遠赤後の含水率とは比例関係となっておらず、膨化前の含水率に関わり無く遠赤後の含水率は3重量%付近(2重量%〜4重量%)となった。
【0031】
[硬さの測定]
硬さの測定は、遠赤後のサンプルに荷重を加えたときの歪率を測定することにより行った。この硬さを測定するための使用機材は、株式会社山電製のクリープメータ:RE233005Bを用い、サンプルに荷重を加えるプランジャーには、直径16mmの円柱形のものを用いた。硬さの測定方法は以下のとおりである。(1)サンプルを表面積が1cm2程度になるように砕く。(2)内径30mmのプラスチック容器に砕いたサンプルを入れて、隙間を極力作らないようにして高さ30mmまで積み上げる。このとき、作業者の手の湿気がサンプルに移らないように、作業者はビニール手袋を着用した。また、環境中の湿気の影響を防ぐために、迅速に作業した。(3)クリープメータを用いてプランジャーからサンプルに荷重を加え、サンプルの歪率(サンプルの積層高さ)が60%に至るまでの荷重を測定する。
【0032】
【表3】
【表4】
表3及び表4は、硬さの測定結果を示した図であり、表3は、15N及び18Nの荷重に対する歪率を示しており、表4は、歪率が30%及び40%となる荷重を示している。そして、図3は、表3に示す硬さの測定結果をグラフで示した図であり、図4は、表4に示す硬さの測定結果をグラフで示した図である。図3では、横軸に膨化前の含水率(重量%)を示しており、縦軸に歪率(%)を示している。図4では、横軸に膨化前の含水率(重量%)を示しており、縦軸に荷重(N)を示している。
【0033】
表3及び図3に示すように、15Nの荷重を加えたときの歪率は、サンプル1〜5では29%〜42%となったのに対して、サンプル6及び7では、47%及び54%となった。また、18Nの荷重を加えたときの歪率は、サンプル1〜5では32%〜46%となったのに対して、サンプル6及び7では50%及び57%となった。
【0034】
表4及び図4に示すように、歪率が30%となる荷重は、サンプル1〜5では7.98N〜15.99Nとなったのに対して、サンプル6及び7では、7.32N及び7.01Nとなった。また、歪率が40%となる荷重は、サンプル1〜5では14.32N〜17.10Nとなったのに対して、サンプル6及び7では、13.26N及び9.58Nとなった。
【0035】
これらの結果から、サンプル6及び7のように膨化前の含水率が26重量%及び30重量%になると、脆く崩れやすいために良好なサクサク感が得られないが、サンプル1〜5のように膨化前の含水率を14重量%〜23重量%に調整すると、サンプル6及び7に比べて適度な硬さを有するために良好なサクサク感を得られることが分かった。
【0036】
そして、表3及び図3に示すように、15Nの荷重に対するサンプルの歪率は、膨化前の含水率が19重量%のサンプル3が最も小さく、18Nの荷重に対するサンプルの歪率は、膨化前の含水率が20重量%のサンプル4が最も小さくなっており、膨化前の含水率が19重量%又は30重量%から離れるに従い高くなっている。このため、膨化前の含水率が14重量%未満のサンプルでは、サンプル6及び7と同様に、サンプル1〜5と比べて歪率が高くなっていると推測できる。また、表4及び図4に示すように、歪率が30%となる荷重は、膨化前の含水率が19重量%のサンプル3が最も大きく、歪率が40%となる荷重は、膨化前の含水率が17重量%のサンプル2が最も大きくなっており、膨化前の含水率が17重量%より低くなるに従い、また、20重量%より高くなるに従い小さくなっている。このため、膨化前の含水率が14重量%未満のサンプルでは、サンプル6及び7と同様に、サンプル1〜5と比べて荷重が小さくなっていると推測できる。これらのことから、膨化前の含水率が14重量%未満のサンプルでも、サンプル1〜5に比べて脆く崩れやすいために良好なサクサク感が得られないことが推測できる。
【0037】
[比重の測定]
比重の測定は、見かけ比重を測定することにより行った。見かけ比重とは、同容量の水の質量との比である。見かけ比重の測定方法は、以下のとおりである。(1)1L(容積1180ml)の計量カップを用意し、サンプルを壊さないように計量カップの上の縁まで入れる。(2)上記(1)の状態でサンプルの重量を測定し、見かけの容積1ml当たりの重量を、
見かけ比重=(1180ml当たりの重量:g)/1180 …(1)
上記式(1)で算出する。
【0038】
そして、比重の測定は、6回繰り返して測定し、その平均値と標準偏差を算出した。
【0039】
【表5】
表5は、膨化後、遠赤後の比重の算出結果を示しており、図5は、表5に示す膨化後、遠赤後の比重の算出結果をグラフで示した図である。図5では、横軸に膨化前の含水率(重量%)を示しており、縦軸に比重(g/cm3)を示している。表5及び図5に示すように、膨化後の比重が0.033g/cm3〜0.073g/cm3、遠赤後の比重が0.035g/cm3〜0.074g/cm3となっており、膨化後の比重と遠赤後の比重とが所定の比例関係となっている。ところが、サンプル1〜5については、膨化前の含水率が上がるほど、膨化後及び遠赤後の比重が小さくなっているのに対し、サンプル6及び7については、膨化前の含水率が上がるほど、膨化後及び遠赤後の比重が大きくなっている。そこで、この現象の原因を探ってみたところ、サンプル6及び7のペレットを膨化すると、形状保持性が悪く、脆く崩れ易くなっていた。このため、サンプル6及び7では、計量カップに入れたサンプルが崩れてしまうことにより、膨化後及び遠赤後の比重が大きくなったものと考えられる。
【0040】
これらの結果から、サンプル6及び7のように膨化前の含水率が26重量%及び30重量%になると、形状保持性が悪く崩れ易くなってしまうが、サンプル1〜5のように膨化前の含水率を14重量%〜23重量%に調整すると、形状保持性が向上することが分かった。
【0041】
[形状の測定]
形状の測定は、遠赤後のサンプルを無作為に30個選出し、この選出したサンプルの短径及び長径を物差しで計測した。そして、この計測した長径に対する短径の割合(短径/長径)を算出するとともに、短径、長径及び短径/長径の平均値及び標準偏差を算出した。
【0042】
【表6】
表6は、遠赤後の形状の算出結果を示しており、図6は、表6に示す遠赤後の形状の算出結果をグラフで示した図である。そして、図6(a)は、短径及び長径の平均値及び標準偏差を示しており、図6(b)は、長径に対する短径の割合の平均値を示している。表6及び図6に示すように、サンプル1〜5は、長径に対する短径の割合(平均値)が0.8〜1.0の間で安定しているのに対し、サンプル6及び7は、長径に対する短径の割合(平均値)が0.70以下に落ち込んでいる。標準偏差も、サンプル1〜5は0.12以下であるのに対し、サンプル6及び7は0.16以上と大きく上昇している。
【0043】
これらの結果から、膨化前の含水率が26重量%及び30重量%のペレットを膨化させると、膨化時の形状歪が大きくなり膨化菓子が歪な形状になってしまうが、膨化前の含水率が14重量%〜23重量%のペレットを膨化させると、膨化時の形状歪が抑えられて、比較的形状の揃った膨化菓子を製造することができることが分かった。
【0044】
[官能試験]
官能試験は、7名の被験者に対して、サンプル1〜7の遠赤後の膨化菓子を食べてもらい、外観、サクサク感、食感、総合評価、の5項目についてアンケートを行った。
【0045】
外観の評価は、
−2:非常に悪い
−1:悪い
0:可もなく不可もなく
1:よい
2:非常によい
の−2〜2の評価点で示してもらった。
【0046】
サクサク感の評価は、
0:サクサク感なし
1:サクサク感不足
2:サクサク感あり
3:かなりサクサクしている
4:非常にサクサクしている
の0〜4の評価点で示してもらった。
【0047】
食感の評価は、
−2:食感非常に悪い
−1:食感悪い
0:可もなく不可もなく
1:食感よい
2:食感非常によい
の−2〜2の評価点で示してもらった。
【0048】
おいしさの評価は、
−2:非常にまずい
−1:まずい
0:可もなく不可もなく
1:おいしい
2:非常においしい
の−2〜2の評価点で示してもらった。
【0049】
総合評価は、外観とおいしさとの観点から、
−2:非常に悪い
−1:悪い
0:可もなく不可もなく
1:よい
2:非常によい
の−2〜2の評価点で示してもらった。
【0050】
官能試験の結果を表7に示す。
【0051】
【表7】
表7は、官能試験の結果を示しており、図7〜図11は、表7に示す官能試験の結果をグラフで示した図である。そして、図7は外観の官能試験の結果を示しており、図8は、サクサク感の官能試験の結果を示しており、図9は、食感の官能試験の結果を示しており、図10は、おいしさの官能試験の結果を示しており、図11は、総合評価の官能試験の結果を示している。
【0052】
表7及び図7に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、外観の評点がプラスとなったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、外観の評点がマイナスとなった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子の見た目がよくなることが分かった。
【0053】
表7及び図8に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、サクサク感の評点が2点以上となったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、サクサク感の評点が1.5点未満となった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子のサクサク感が向上することが分かった。
【0054】
表7及び図9に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、食感の評点がプラスとなったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、食感の評点がマイナスとなった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子の食感が向上することが分かった。
【0055】
表7及び図10に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、おいしさの評点がプラスとなったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、おいしさの評点がマイナスとなった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子のおいしくなることが分かった。
【0056】
表7及び図11に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、総合評価の評点がプラスとなったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、総合評価の評点がマイナスとなった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子の見た目やおいしさ等が向上して、需要者にとって嗜好性の高い膨化菓子を製造することができることが分かった。
【0057】
このように、上記実施形態に係る膨化菓子の製造方法によれば、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整してから所定圧力及び所定温度で膨化させることで、膨化時の形状歪みを抑制することができるとともに、膨化菓子の形状保持性を向上させることができる。そして、このようにして膨化した後に遠赤外線で焼成することで、油で揚げることなくサクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【0058】
また、ペレット含水率調整工程S3において、水分を噴霧することで含水率を調整することで、ペレット全体に均等な水分を与えることができるため、ペレット内における含水率の偏りを低減することができる。
【0059】
また、膨化工程S5において、含水率が4.9重量%〜7.0重量%となるようにペレットを膨化することで、ペレットの膨化を十分に促進させることができ、含水率を十分に減らすとともに焦げ付きを防止することができる。しかも、膨化工程S5で膨化菓子の含水率を5〜7重量%に下げておくことで、後工程の焼成工程S7において膨化菓子の含水率を低下させる度合いが小さくなるため、焼成工程S7における焼成時間を短縮することができる。
【0060】
また、焼成工程S7において、遠赤外線の照射時間及び遠赤外線の照射温度などの調整により膨化菓子の含水率を2重量%〜4重量%に下げることで、サクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【0061】
また、膨化工程S5と焼成工程S7との間にシーズニング工程S6を行うことで、調味料の定着性を向上させることができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ペレット成形工程S1〜焼成工程S7までを一連の流れとして説明したが、事前にペレット乾燥工程S2により乾燥されたペレットを用意しておき、ペレット含水率調整工程S3〜焼成工程S7のみを行うようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、膨化工程S5の前工程に油分噴霧工程S4を行うように説明したが、例えば、上側鉄板及び下側鉄板に油分を噴霧するなど、膨化工程S5においてペレットが鉄板に付着する問題が解決すれば、油分噴霧工程S4を行わなくてもよい。また、シーズニング工程S6において油分を噴霧するものとして説明したが、膨化菓子に調味料が定着すれば、油分を噴霧しなくてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャガイモを膨化させて膨化菓子を製造する膨化菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャガイモの菓子として、ジャガイモを薄くスライスして油で揚げたものや、細かくカットしたジャガイモカット片を接着して成形した後に油で揚げたものが、広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−329123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年の健康志向の高まりで、油で揚げない所謂ノンフライの菓子が望まれるようになってきた。このノンフライの菓子は、一般に、ジャガイモのスライス片やジャガイモの成形品に調味料を塗布したのち、遠赤外線などで焼成して乾燥させている。しかしながら、このノンフライの菓子は、硬すぎたり焦げ付いたりするため、食する人に良好なサクサク感を感じさせることが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、油で揚げずにサクサク感のある膨化菓子を製造することができる膨化菓子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る膨化菓子の製造方法は、所定形状に形成されたジャガイモのペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する含水率調整工程と、含水率調整工程により含水率が調整されたペレットを所定圧力で加圧するとともに所定温度で加熱することにより膨化させる膨化工程と、膨化工程により膨化させた後に遠赤外線で焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る膨化菓子の製造方法によれば、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整してから所定圧力及び所定温度で膨化させることで、膨化時の形状歪みを抑制することができるとともに、膨化菓子の形状保持性を向上させることができる。そして、このようにして膨化した後に遠赤外線で焼成することで、油で揚げることなくサクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【0008】
この場合、上記含水率調整工程は、水分を噴霧することによりペレットの含水率を調整することが好ましい。この膨化菓子の製造方法によれば、含水率調整工程において、水分を噴霧することで含水率を調整することで、ペレット全体に均等な水分を与えることができるため、ペレット内における含水率の偏りを低減することができる。
【0009】
また、上記膨化工程は、含水率が4.9重量%〜7.0重量%となるようにペレットを膨化することが好ましい。この膨化菓子の製造方法によれば、膨化工程において、含水率が4.9重量%〜7.0重量%となるようにペレットを膨化することで、ペレットの膨化を十分に促進させることができ、含水率を十分に減らすとともに焦げ付きを防止することができる。しかも、膨化工程で含水率を4.9重量%〜7.0重量%に下げておくことで、後工程の焼成工程において含水率を低下させる度合いが小さくなるため、焼成工程における焼成時間を短縮することができる。
【0010】
また、上記焼成工程は、含水率が2重量%〜4重量%となるように焼成することが好ましい。この膨化菓子の製造方法によれば、焼成工程において、遠赤外線の照射時間及び遠赤外線の照射温度などの調整により含水率を2重量%〜4重量%に下げることで、サクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【0011】
そして、上記膨化工程と上記焼成工程との間に、調味料を塗布する調味料塗布工程を更に有することが好ましい。この膨化菓子の製造方法によれば、膨化工程と焼成工程との間に調味料塗布工程を行うことで、調味料の定着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、油で揚げずにサクサク感のある膨化菓子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る膨化菓子の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】表2に示す膨化前、膨化後、遠赤後の含水率の測定結果をグラフで示した図である。
【図3】表3に示す硬さの測定結果をグラフで示した図である。
【図4】表4に示す硬さの測定結果をグラフで示した図である。
【図5】表5に示す膨化後、遠赤後の比重の算出結果をグラフで示した図である。
【図6】表6に示す遠赤後の形状の算出結果をグラフで示した図であり、(a)は、短径及び長径の平均値及び標準偏差を示しており、(b)は、長径に対する短径の割合の平均値をグラフで示している。
【図7】外観の官能試験の結果をグラフで示した図である。
【図8】サクサク感の官能試験の結果をグラフで示した図である。
【図9】食感の官能試験の結果をグラフで示した図である。
【図10】おいしさの官能試験の結果をグラフで示した図である。
【図11】総合評価の官能試験の結果をグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る膨化菓子の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る膨化菓子の製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、まず、ペレット成形工程S1を行う。ペレット成形工程S1では、ジャガイモを略直方体にカットして、ジャガイモのペレットを成形する。ペレットの形状は、例えば、縦19mm×横19mm×高さ9mmの略直方体とする。なお、ペレットに成形するジャガイモは、剥皮したものを用いてもよく、剥皮しないものを用いてもよい。なお、ペレットの縦(mm)×横(mm)×高さ(mm)のサイズは、膨化菓子の所望サイズに応じて適宜設定することができる。ただし、縦及び横のサイズについては、膨化菓子の外観を良好にするため(すなわち、短径/長径の比率を1に近づけるため)に、それぞれ同一寸法に設定することが好ましい。また、高さのサイズについては、後述する膨化工程S5において、下側鉄板に載置するペレットの向きを一定にして、ペレットに対する加圧方向を一定するという観点から、5mm〜12mmが好ましく、6mm〜10mmがより好ましい。
【0016】
次に、ペレット乾燥工程S2を行う。ペレット乾燥工程S2では、ペレットを乾燥させて、含水率を12重量%〜16重量%に調整する。すなわち、ペレット乾燥工程S2は、ペレット成形工程S1で成形したペレットを保存・保管するためにペレットを乾燥させる工程である。このため、ペレットを保存・保管する必要がない場合は、ペレット乾燥工程S2を省略することができる。一方、ペレットを保存・保管する場合は、ペレットを乾燥させた後、冷蔵保存又は冷凍保存しておく。なお、本発明において含水率とは、重量基準の含水率を示している。
【0017】
次に、ペレット含水率調整工程S3を行う。ペレット含水率調整工程S3では、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する。好ましくは、ペレットの含水率を17重量%〜20重量%に調整する。具体的には、所定速度で搬送されるペレットにスプレー式の噴霧器などで水分を噴霧して、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する。このとき、噴霧器で水分を噴霧することで、水分がペレット全体に均一に与えられるため、ペレット内部の水分量が均一化される。なお、ペレットの含水率は、ペレットの搬送速度と噴霧器による水分の噴霧量との関係を事前に調査しておき、この調査結果に基づいてペレットの搬送速度及び水分の噴霧量を調整することで、ペレットの含水率を所望の値に調整することができる。一方、前工程のペレット乾燥工程S2を行っていない場合は、ペレットの含水率が17重量%〜18重量%よりも高いため、ペレット乾燥工程S2と同様にペレットを乾燥させて、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する。
【0018】
次に、油分噴霧工程S4を行う。油分噴霧工程S4は、後工程の膨化工程S5においてペレットが鉄板に付着するのを防止するためにペレットに油分を噴霧する工程である。このため、油分噴霧工程S4では、ペレットが鉄板に付着しない程度の微量の油分がペレットの表面に付着すればよい。具体的には、所定速度で搬送されるペレットにスプレー式の噴霧器などで油分を噴霧し、ペレットの表面に微量の油分を付着させる。
【0019】
次に、膨化工程S5を行う。膨化工程S5では、含水率が14重量%〜23重量%に調整されたペレットを加圧及び加熱により膨化させて、含水率が4.9重量%〜7.0重量%の膨化菓子を生成する。ここで、ペレットを加圧する圧力である膨化圧力、ペレットを加熱する温度である膨化温度、ペレットを加圧及び加熱する時間である膨化時間について説明する。膨化圧力は、低いとペレットの膨化が不十分となり、高いと膨化された膨化菓子の厚さが極端に薄くなってしまう。このため、膨化圧力は、ペレットの膨化を促進して膨化菓子が適度な厚さとなる適切な圧力に設定する。膨化温度は、高いと焦げ付いてしまい、低いとペレットの膨化が不十分となってしまう。このため、膨化温度は、ペレットの膨化を促進して焦げ付きを防止できる適切な温度に設定する。膨化時間は、短いとペレットの膨化が不十分となり、長いと焦げ付いてしまう。このため、膨化時間は、ペレットの膨化を促進して焦げ付きを防止できる適切な時間に設定する。
【0020】
膨化工程S5で用いる装置は、例えば、上側鉄板と下側鉄板とが対向配置されるとともに、上側鉄板及び下側鉄板が接離方向に移動可能に保持されている。そして、上側鉄板及び下側鉄板を所定の膨化温度に加熱した状態で、下側鉄板にペレットを載置して、上側鉄板を押し下げて所定の膨化圧力で下側鉄板に押し付ける。すると、ペレットは、上側鉄板と下側鉄板とに挟み込まれて、所定の膨化圧力で加圧されるとともに所定の膨化温度で加熱される。これにより、ペレットが瞬間的に薄い平板状に押し潰されて内部の水分が沸騰して飛ばされるため、多数の気泡を含む所定厚さの膨化菓子が生成される。
【0021】
次に、シーズニング工程S6を行う。シーズニング工程S6では、膨化工程S5で生成された膨化菓子に対して、油分を噴霧して調味料を付着させる。油分の噴霧は、膨化菓子に対する調味料の定着性を向上させるために行う。このため、膨化菓子に調味料が定着する程度の微量の油分が膨化菓子の表面に付着すればよい。具体的には、中空構造で傾斜した第1タンブラー及び第2タンブラーを用意する。そして、膨化工程S5で生成された膨化菓子を第1タンブラーの内部に投入し、この第1タンブラーを回転させながらスプレー式の噴霧器などで第1タンブラー内に油分を噴霧する。これにより、膨化菓子の表面に微量の油分が付着する。その後、油分が付着した膨化菓子を第2タンブラーの内部に投入し、この第2タンブラーを回転させながらスプレー式の噴霧器などで第2タンブラー内に調味料を散布する。これにより、膨化菓子の表面に付着された油分が調味料を保持することにより、膨化菓子の表面に調味料が付着する。
【0022】
次に、焼成工程S7を行う。焼成工程S7では、調味料が付着された膨化菓子を遠赤外線により焼成して、含水率が2重量%〜4重量%に調整する。具体的には、所定速度で搬送される膨化菓子に対して所定温度の遠赤外線を所定時間照射することで、膨化菓子を焼成するとともに含水率を2重量%〜4重量%に調整する。膨化工程S5において生成された膨化菓子は含水率が4.9重量%〜7.0重量%となっているため、例えば、250℃〜300℃に設定された遠赤外線を180秒〜240秒照射することで、膨化菓子を焼成して含水率を2重量%〜4重量%に下げることができる。
【0023】
このようにS1〜S7の工程により製造された膨化菓子は、含水率が2重量%〜4重量%、15Nの荷重に対する歪率が29%〜42%、18Nの荷重に対する歪率が32%〜46%、歪率が30%となる荷重が7.98N〜15.99N、歪率が40%となる荷重が14.32N〜17.10N、見かけ比重が0.035g/cm3〜0.074g/cm3となる。ここで、見かけ比重とは、同容量の水の質量との比であり、後述する実施例において詳しく説明する。また、本明細書において歪率とは、体積歪に類したものであり、具体的には、所定の容器に積層した膨化菓子に荷重を加えた場合に、荷重を加える前後の膨化菓子の積層高さにより算出される割合(圧縮率)である。そして、このような物性を有する膨化菓子は、咀嚼する際に、歯で噛んだ部分が適度な硬さで崩れていき、食感の良い良好なサクサク感が得られる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0025】
19mm×19mm×9mmの略直方体のジャガイモのペレットに噴霧器で水分を噴霧して、含水率の異なる7種類のサンプル1〜7を多数用意した。サンプル1は、含水率が14重量%に調整されたものであり、サンプル2は、含水率が17重量%に調整されたものであり、サンプル3は、含水率が19重量%に調整されたものであり、サンプル4は、含水率が20重量%に調整されたものであり、サンプル5は、含水率が23重量%に調整されたものであり、サンプル6は、含水率が26重量%に調整されたものであり、サンプル7は、含水率が30重量%に調整されたものである。そして、各サンプルに対して膨化工程S5及び焼成工程S7を行い、膨化菓子を製造した。なお、本実施例では、ペレット含水率調整工程S3によりペレットの含水率が調整された状態であって膨化工程S5を行う直前の状態を「膨化前」と称し、膨化工程S5を行った直後の状態を「膨化後」と称し、焼成工程S7を行った直後の状態を「遠赤後」と称す。
【0026】
【表1】
膨化工程S5の条件は、表1に示すとおりとした。すなわち、膨化圧力条件は、ペレットを加圧する上側鉄板と下側鉄板との面圧を13MPaとし、膨化温度条件は、上側鉄板の温度を215℃、下側鉄板の温度を213℃とし、膨化時間条件は、ペレットを加圧及び加熱する時間を0.35秒とした。
【0027】
焼成工程S7の条件は、300℃に設定した遠赤外線を180秒照射した。
【0028】
そして、本実施例では、上記条件の下で膨化菓子を製造し、中間製品である膨化後のサンプル(膨化菓子)の含水率、硬さ、比重を測定するとともに、最終製品である遠赤後のサンプル(膨化菓子)の含水率、硬さ、比重、形状を計測した。更に、本実施例では、更に、最終製品の食感等を確認するために、遠赤後のサンプル(膨化菓子)の官能検査を行った。
【0029】
[含水率の測定]
含水率の測定は、乾燥減量法により行った。含水率を測定するための使用機材は、株式会社ケット科学研究所製の赤外線水分計:FD−240と、株式会社泉精器製作所製のフードプロセッサ:IFP−2600とを用いた。含水率の測定方法は以下のとおりである。(1)サンプルをフードプロセッサで30秒間×2回粉砕する。(2)粉砕したサンプル7gを均一に広げた状態で試料皿に盛る。(3)赤外線水分計の設定を乾燥温度:140℃、乾燥時間:15分間として、赤外線水分計を用いて乾燥減量法によりサンプルの水分量を測定する。
【0030】
【表2】
表2は、膨化前、膨化後、遠赤後の含水率の測定結果を示しており、図2は、表2に示す膨化前、膨化後、遠赤後の含水率の測定結果をグラフで示した図である。図2では、横軸に膨化前の含水率(重量%)を示しており、縦軸に膨化後及び遠赤後の含水率(重量%)を示している。表2及び図2に示すように、膨化後の含水率は、4.92重量%〜7.10重量%となり、膨化前の含水率と膨化後の含水率とは、所定の比例関係となっている。すなわち、膨化前の含水率が小さければ膨化後の含水率も小さくなり、膨化前の含水率が高ければ膨化後の含水率も高くなる。一方、膨化後の含水率と遠赤後の含水率とは比例関係となっておらず、膨化前の含水率に関わり無く遠赤後の含水率は3重量%付近(2重量%〜4重量%)となった。
【0031】
[硬さの測定]
硬さの測定は、遠赤後のサンプルに荷重を加えたときの歪率を測定することにより行った。この硬さを測定するための使用機材は、株式会社山電製のクリープメータ:RE233005Bを用い、サンプルに荷重を加えるプランジャーには、直径16mmの円柱形のものを用いた。硬さの測定方法は以下のとおりである。(1)サンプルを表面積が1cm2程度になるように砕く。(2)内径30mmのプラスチック容器に砕いたサンプルを入れて、隙間を極力作らないようにして高さ30mmまで積み上げる。このとき、作業者の手の湿気がサンプルに移らないように、作業者はビニール手袋を着用した。また、環境中の湿気の影響を防ぐために、迅速に作業した。(3)クリープメータを用いてプランジャーからサンプルに荷重を加え、サンプルの歪率(サンプルの積層高さ)が60%に至るまでの荷重を測定する。
【0032】
【表3】
【表4】
表3及び表4は、硬さの測定結果を示した図であり、表3は、15N及び18Nの荷重に対する歪率を示しており、表4は、歪率が30%及び40%となる荷重を示している。そして、図3は、表3に示す硬さの測定結果をグラフで示した図であり、図4は、表4に示す硬さの測定結果をグラフで示した図である。図3では、横軸に膨化前の含水率(重量%)を示しており、縦軸に歪率(%)を示している。図4では、横軸に膨化前の含水率(重量%)を示しており、縦軸に荷重(N)を示している。
【0033】
表3及び図3に示すように、15Nの荷重を加えたときの歪率は、サンプル1〜5では29%〜42%となったのに対して、サンプル6及び7では、47%及び54%となった。また、18Nの荷重を加えたときの歪率は、サンプル1〜5では32%〜46%となったのに対して、サンプル6及び7では50%及び57%となった。
【0034】
表4及び図4に示すように、歪率が30%となる荷重は、サンプル1〜5では7.98N〜15.99Nとなったのに対して、サンプル6及び7では、7.32N及び7.01Nとなった。また、歪率が40%となる荷重は、サンプル1〜5では14.32N〜17.10Nとなったのに対して、サンプル6及び7では、13.26N及び9.58Nとなった。
【0035】
これらの結果から、サンプル6及び7のように膨化前の含水率が26重量%及び30重量%になると、脆く崩れやすいために良好なサクサク感が得られないが、サンプル1〜5のように膨化前の含水率を14重量%〜23重量%に調整すると、サンプル6及び7に比べて適度な硬さを有するために良好なサクサク感を得られることが分かった。
【0036】
そして、表3及び図3に示すように、15Nの荷重に対するサンプルの歪率は、膨化前の含水率が19重量%のサンプル3が最も小さく、18Nの荷重に対するサンプルの歪率は、膨化前の含水率が20重量%のサンプル4が最も小さくなっており、膨化前の含水率が19重量%又は30重量%から離れるに従い高くなっている。このため、膨化前の含水率が14重量%未満のサンプルでは、サンプル6及び7と同様に、サンプル1〜5と比べて歪率が高くなっていると推測できる。また、表4及び図4に示すように、歪率が30%となる荷重は、膨化前の含水率が19重量%のサンプル3が最も大きく、歪率が40%となる荷重は、膨化前の含水率が17重量%のサンプル2が最も大きくなっており、膨化前の含水率が17重量%より低くなるに従い、また、20重量%より高くなるに従い小さくなっている。このため、膨化前の含水率が14重量%未満のサンプルでは、サンプル6及び7と同様に、サンプル1〜5と比べて荷重が小さくなっていると推測できる。これらのことから、膨化前の含水率が14重量%未満のサンプルでも、サンプル1〜5に比べて脆く崩れやすいために良好なサクサク感が得られないことが推測できる。
【0037】
[比重の測定]
比重の測定は、見かけ比重を測定することにより行った。見かけ比重とは、同容量の水の質量との比である。見かけ比重の測定方法は、以下のとおりである。(1)1L(容積1180ml)の計量カップを用意し、サンプルを壊さないように計量カップの上の縁まで入れる。(2)上記(1)の状態でサンプルの重量を測定し、見かけの容積1ml当たりの重量を、
見かけ比重=(1180ml当たりの重量:g)/1180 …(1)
上記式(1)で算出する。
【0038】
そして、比重の測定は、6回繰り返して測定し、その平均値と標準偏差を算出した。
【0039】
【表5】
表5は、膨化後、遠赤後の比重の算出結果を示しており、図5は、表5に示す膨化後、遠赤後の比重の算出結果をグラフで示した図である。図5では、横軸に膨化前の含水率(重量%)を示しており、縦軸に比重(g/cm3)を示している。表5及び図5に示すように、膨化後の比重が0.033g/cm3〜0.073g/cm3、遠赤後の比重が0.035g/cm3〜0.074g/cm3となっており、膨化後の比重と遠赤後の比重とが所定の比例関係となっている。ところが、サンプル1〜5については、膨化前の含水率が上がるほど、膨化後及び遠赤後の比重が小さくなっているのに対し、サンプル6及び7については、膨化前の含水率が上がるほど、膨化後及び遠赤後の比重が大きくなっている。そこで、この現象の原因を探ってみたところ、サンプル6及び7のペレットを膨化すると、形状保持性が悪く、脆く崩れ易くなっていた。このため、サンプル6及び7では、計量カップに入れたサンプルが崩れてしまうことにより、膨化後及び遠赤後の比重が大きくなったものと考えられる。
【0040】
これらの結果から、サンプル6及び7のように膨化前の含水率が26重量%及び30重量%になると、形状保持性が悪く崩れ易くなってしまうが、サンプル1〜5のように膨化前の含水率を14重量%〜23重量%に調整すると、形状保持性が向上することが分かった。
【0041】
[形状の測定]
形状の測定は、遠赤後のサンプルを無作為に30個選出し、この選出したサンプルの短径及び長径を物差しで計測した。そして、この計測した長径に対する短径の割合(短径/長径)を算出するとともに、短径、長径及び短径/長径の平均値及び標準偏差を算出した。
【0042】
【表6】
表6は、遠赤後の形状の算出結果を示しており、図6は、表6に示す遠赤後の形状の算出結果をグラフで示した図である。そして、図6(a)は、短径及び長径の平均値及び標準偏差を示しており、図6(b)は、長径に対する短径の割合の平均値を示している。表6及び図6に示すように、サンプル1〜5は、長径に対する短径の割合(平均値)が0.8〜1.0の間で安定しているのに対し、サンプル6及び7は、長径に対する短径の割合(平均値)が0.70以下に落ち込んでいる。標準偏差も、サンプル1〜5は0.12以下であるのに対し、サンプル6及び7は0.16以上と大きく上昇している。
【0043】
これらの結果から、膨化前の含水率が26重量%及び30重量%のペレットを膨化させると、膨化時の形状歪が大きくなり膨化菓子が歪な形状になってしまうが、膨化前の含水率が14重量%〜23重量%のペレットを膨化させると、膨化時の形状歪が抑えられて、比較的形状の揃った膨化菓子を製造することができることが分かった。
【0044】
[官能試験]
官能試験は、7名の被験者に対して、サンプル1〜7の遠赤後の膨化菓子を食べてもらい、外観、サクサク感、食感、総合評価、の5項目についてアンケートを行った。
【0045】
外観の評価は、
−2:非常に悪い
−1:悪い
0:可もなく不可もなく
1:よい
2:非常によい
の−2〜2の評価点で示してもらった。
【0046】
サクサク感の評価は、
0:サクサク感なし
1:サクサク感不足
2:サクサク感あり
3:かなりサクサクしている
4:非常にサクサクしている
の0〜4の評価点で示してもらった。
【0047】
食感の評価は、
−2:食感非常に悪い
−1:食感悪い
0:可もなく不可もなく
1:食感よい
2:食感非常によい
の−2〜2の評価点で示してもらった。
【0048】
おいしさの評価は、
−2:非常にまずい
−1:まずい
0:可もなく不可もなく
1:おいしい
2:非常においしい
の−2〜2の評価点で示してもらった。
【0049】
総合評価は、外観とおいしさとの観点から、
−2:非常に悪い
−1:悪い
0:可もなく不可もなく
1:よい
2:非常によい
の−2〜2の評価点で示してもらった。
【0050】
官能試験の結果を表7に示す。
【0051】
【表7】
表7は、官能試験の結果を示しており、図7〜図11は、表7に示す官能試験の結果をグラフで示した図である。そして、図7は外観の官能試験の結果を示しており、図8は、サクサク感の官能試験の結果を示しており、図9は、食感の官能試験の結果を示しており、図10は、おいしさの官能試験の結果を示しており、図11は、総合評価の官能試験の結果を示している。
【0052】
表7及び図7に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、外観の評点がプラスとなったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、外観の評点がマイナスとなった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子の見た目がよくなることが分かった。
【0053】
表7及び図8に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、サクサク感の評点が2点以上となったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、サクサク感の評点が1.5点未満となった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子のサクサク感が向上することが分かった。
【0054】
表7及び図9に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、食感の評点がプラスとなったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、食感の評点がマイナスとなった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子の食感が向上することが分かった。
【0055】
表7及び図10に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、おいしさの評点がプラスとなったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、おいしさの評点がマイナスとなった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子のおいしくなることが分かった。
【0056】
表7及び図11に示すように、サンプル1〜5の膨化菓子は、総合評価の評点がプラスとなったのに対して、サンプル6及び7の膨化菓子は、総合評価の評点がマイナスとなった。このことから、膨化前の含水率を14重量%〜23重量%とすることで、膨化前の含水率が26重量%以上である場合に比べて、膨化菓子の見た目やおいしさ等が向上して、需要者にとって嗜好性の高い膨化菓子を製造することができることが分かった。
【0057】
このように、上記実施形態に係る膨化菓子の製造方法によれば、ペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整してから所定圧力及び所定温度で膨化させることで、膨化時の形状歪みを抑制することができるとともに、膨化菓子の形状保持性を向上させることができる。そして、このようにして膨化した後に遠赤外線で焼成することで、油で揚げることなくサクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【0058】
また、ペレット含水率調整工程S3において、水分を噴霧することで含水率を調整することで、ペレット全体に均等な水分を与えることができるため、ペレット内における含水率の偏りを低減することができる。
【0059】
また、膨化工程S5において、含水率が4.9重量%〜7.0重量%となるようにペレットを膨化することで、ペレットの膨化を十分に促進させることができ、含水率を十分に減らすとともに焦げ付きを防止することができる。しかも、膨化工程S5で膨化菓子の含水率を5〜7重量%に下げておくことで、後工程の焼成工程S7において膨化菓子の含水率を低下させる度合いが小さくなるため、焼成工程S7における焼成時間を短縮することができる。
【0060】
また、焼成工程S7において、遠赤外線の照射時間及び遠赤外線の照射温度などの調整により膨化菓子の含水率を2重量%〜4重量%に下げることで、サクサク感のある食感の良い膨化菓子を得ることができる。
【0061】
また、膨化工程S5と焼成工程S7との間にシーズニング工程S6を行うことで、調味料の定着性を向上させることができる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ペレット成形工程S1〜焼成工程S7までを一連の流れとして説明したが、事前にペレット乾燥工程S2により乾燥されたペレットを用意しておき、ペレット含水率調整工程S3〜焼成工程S7のみを行うようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、膨化工程S5の前工程に油分噴霧工程S4を行うように説明したが、例えば、上側鉄板及び下側鉄板に油分を噴霧するなど、膨化工程S5においてペレットが鉄板に付着する問題が解決すれば、油分噴霧工程S4を行わなくてもよい。また、シーズニング工程S6において油分を噴霧するものとして説明したが、膨化菓子に調味料が定着すれば、油分を噴霧しなくてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状に形成されたジャガイモのペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する含水率調整工程と、
前記含水率調整工程により含水率が調整された前記ペレットを所定圧力で加圧するとともに所定温度で加熱することにより膨化させる膨化工程と、
前記膨化工程により膨化させた後に遠赤外線で焼成する焼成工程と、
を有することを特徴とする膨化菓子の製造方法。
【請求項2】
前記含水率調整工程は、水分を噴霧することにより前記ペレットの含水率を調整することを特徴とする請求項1に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項3】
前記膨化工程は、含水率が4.9重量%〜7.0重量%となるように前記ペレットを膨化することを特徴とする請求項1又は2に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項4】
前記焼成工程は、含水率が2重量%〜4重量%となるように焼成することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項5】
前記膨化工程と前記焼成工程との間に、調味料を塗布する調味料塗布工程を更に有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項1】
所定形状に形成されたジャガイモのペレットの含水率を14重量%〜23重量%に調整する含水率調整工程と、
前記含水率調整工程により含水率が調整された前記ペレットを所定圧力で加圧するとともに所定温度で加熱することにより膨化させる膨化工程と、
前記膨化工程により膨化させた後に遠赤外線で焼成する焼成工程と、
を有することを特徴とする膨化菓子の製造方法。
【請求項2】
前記含水率調整工程は、水分を噴霧することにより前記ペレットの含水率を調整することを特徴とする請求項1に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項3】
前記膨化工程は、含水率が4.9重量%〜7.0重量%となるように前記ペレットを膨化することを特徴とする請求項1又は2に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項4】
前記焼成工程は、含水率が2重量%〜4重量%となるように焼成することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の膨化菓子の製造方法。
【請求項5】
前記膨化工程と前記焼成工程との間に、調味料を塗布する調味料塗布工程を更に有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の膨化菓子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−187644(P2010−187644A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38432(P2009−38432)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(506228696)ユニバースフーズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(506228696)ユニバースフーズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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