説明

膨張体及びつかみ装置

【課題】 補強層ジョイント部の接着性及び耐久性を向上させることができる膨張体、及び、この膨張体を備えるつかみ装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、部品をつかむつかみ装置1に用いられ、流体により膨張可能な筒状の膨張体7であって、弾性体11A及び補強コード11Bにより形成される補強層11と、補強層の外側に設けられ、補強層11を筒状に成型する際に繋ぎ合わされる補強層ジョイント部11Jを少なくとも覆うバリア層15と、補強層11及びバリア層15の外側に設けられ、弾性体11Aからなる外皮層17とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体により膨張可能な筒状の膨張体、及び、ボディー本体と膨張体との密封された空間に流体を注入することにより膨張体で部品をつかむつかみ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、部品等(例えば、エンジンのシリンダブロックや筒状のパイプ、感光ドラム)をつかむつかみ装置について、様々な提案がなされている。例えば、つかみ装置を構成する膨張体の内部に補強コードを埋設させることにより、使用範囲を拡大する(例えば、高圧においても使用することが可能である)ことができるとともに、質量が大きい部品等を運搬可能なつかみ装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
つかみ装置では、一般的に、耐オゾン性や耐薬品性等の耐候性の向上、又は、補強コードの露出による破損の防止、耐摩耗性を良好とするなどの耐久性向上を目的として補強層101と同じ材料(例えば、クロロプレンゴム(CR))の外皮層が備えられているが、図6(a)に示すように、補強層101Aと異なる材料かつ耐薬品性が異なる外皮層103(例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPDM))を配置することで、耐薬品性特性を変えることができる。
【特許文献1】特開平8−333077号公報(第2頁−第3頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のつかみ装置に用いられる膨張体100では、図6(b)に示すように、補強層101を筒状に成型する際に繋ぎ合わされる補強層ジョイント部101Jが互いの端部同士を付け合わせた状態で形成されるため、加硫時において、補強層ジョイント部101Jに外皮層103が侵入してしまうことがあり、伸び等が発生しやすくなってしまう。この結果、補強層ジョイント部101Jの接着性や耐久性が低下してしまい、膨張体100が破損してしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、補強層ジョイント部の接着性及び耐久性を向上させることができる膨張体、及び、この膨張体を備えるつかみ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した状況を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴に係る発明は、部品をつかむつかみ装置に用いられ、流体により膨張可能な筒状の膨張体であって、弾性体及び補強コードにより形成される補強層と、補強層の外側(径方向外側)に設けられ、補強層を筒状に成型する際に繋ぎ合わされる補強層ジョイント部を少なくとも覆うバリア層と、補強層及びバリア層の外側に設けられ、弾性体からなる外皮層とを備えることを要旨とする。
【0007】
ここで、部品とは、エンジンのシリンダブロックや筒状のパイプ、感光ドラム、食品、化粧品、医療用品など様々なものを示す。
【0008】
かかる特徴によれば、補強層ジョイント部を覆うバリア層が補強層と外皮層との間に設けられていることによって、加硫時において、補強層ジョイント部に外皮層が侵入してしまうことを防止することができるため、補強層ジョイント部の接着性及び耐久性を向上させることができる。この結果、膨張体の破損を抑制して寿命を延ばすことが可能となる。
【0009】
その他の特徴に係る発明は、バリア層が、補強層全体を覆うことを要旨とする。
【0010】
かかる特徴によれば、バリア層が補強層全体を覆っていることによって、補強層から補強コードが飛び出ていた場合であっても、該補強コードをバリア層で覆って補強コードと外皮層とが接触することをなくことができ、膨張体の耐久性が低下することをなくすことが可能となる。
【0011】
その他の特徴に係る発明は、バリア層が、補強層における弾性体と同一の材料からなることを要旨とする。
【0012】
かかる特徴によれば、バリア層が、補強層における弾性体と同一の材料からなることによって、加硫時において、補強層ジョイント部にバリア層が侵入してしまった場合であっても、補強層ジョイント部の接着性及び耐久性を低下させることをなくすことが可能となる。
【0013】
その他の特徴に係る発明は、膨張体周方向断面において、バリア層の厚さ(T)は、0.2mm以上であり、かつ、補強層の厚さ未満であることを要旨とする。
【0014】
かかる特徴によれば、バリア層の厚さ(T)が0.2mm以上であり、かつ、補強層の厚さ(A)未満であることによって、加硫時において、補強層ジョイント部に外皮層が侵入してしまうことを防止することは勿論、バリア層が補強層ジョイント部のみを覆っている場合、バリア層の肉厚部分を最小限に抑えて膨張体の柔軟性等のバラツキを抑制することができる。また、バリア層が補強層全体を覆っている場合、膨張体の下端部を折り返ししやすい性能である折返し性等の悪化を招くことなく、膨張体の縮小化(膨張体7の厚さの抑制)を実現することが可能となる。
【0015】
その他の特徴に係る発明は、流体が通過する通路が形成されている筒状のボディー本体と、流体により膨張可能な筒状の膨張体との密封された空間に流体を注入することによって、膨張体を膨らませて部品をつかむつかみ装置であって、膨張体が、弾性体及び補強コードにより形成される補強層と、補強層の外側(径方向外側)に設けられ、補強層を筒状に成型する際に繋ぎ合わされる補強層ジョイント部を少なくとも覆うバリア層と、補強層及びバリア層の外側に設けられ、弾性体からなる外皮層とを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、補強層ジョイント部の接着性及び耐久性を向上させることができる膨張体、及び、この膨張体を備えるつかみ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係るつかみ装置の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なのものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることを留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
(つかみ装置の構成)
まず、本実施の形態に係るつかみ装置の構成について、図1を参照しながら説明する。図1(a)は、本実施の形態に係るつかみ装置の排気状態を示す一部分解斜視図であり、図1(b)は、本実施の形態に係るつかみ装置の給気状態を示す一部分解斜視図である。
【0019】
図1に示すように、つかみ装置1は、空気等の流体が通過する通路3が形成されている筒状のボディー本体5と、流体により膨張可能な筒状の膨張体7(いわゆる、チューブ)との密封された空間に流体を注入することによって、膨張体7を膨らませて部品(例えば、エンジンのシリンダブロックや筒状のパイプ)をつかむ装置である。
【0020】
ボディー本体5に形成されている通路3は、ボディー本体5の内部で分岐しており、ボディー本体5の上部へ伸びる上部通路3Aと、ボディー本体5の側部へ伸びる側部通路3Bと、ボディー本体5と膨張体7との密封された空間へ伸びる内部通路3Cとによって構成されている。
【0021】
膨張体7の上端部は、加締めリング9Aによりボディー本体5に密封される。膨張体7の下端部は、膨張体7の内側へ向けて折り返されており、折り返された部分が加締めリング9Bによりボディー本体5に密封される。
【0022】
このようなつかみ装置1は、例えば、穴が空いた部品をつかむ場合、つかみ装置1における膨張体7(チューブ全体)を部品の穴に差し込む。その後、ボディー本体5と膨張体7とが密封された空間に通路3を介して流体を注入することによって膨張体7を膨張させる。膨張した膨張体7の外周面で部品の穴の内周面を圧接することで部品をつかむことができる。
【0023】
(膨張体の構成)
次に、上述した膨張体の構成について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、本実施の形態に係る膨張体の膨張体周方向断面図であり、図3は、本実施の形態に係る膨張体の展開上面図である。
【0024】
図2に示すように、膨張体7は、弾性体11A及び補強コード11Bからなる補強層11と、補強層11の内側に設けられ、弾性体11Aと同一材料からなる内側弾性層13と、補強層の外側に設けられ、補強層11を筒状に成型する際に繋ぎ合わされる補強層ジョイント部11Jを少なくとも覆うバリア層15と、補強層11及びバリア層15の外側に設けられ、弾性体11Aと異なる材料(弾性体)からなる外皮層17とを備えている。
【0025】
なお、補強コード11Bは、図3(a)に示すように、ボディー本体5の軸方向に対して平行であってもよく(いわゆる、ラジアルコード)、図3(b)に示すように、互いに交差するようにボディー本体5の軸方向に対して所定の角度θ(例えば、20度)傾斜していてもよい(いわゆる、バイアスコード)。
【0026】
バリア層15は、補強層11全体を覆っており、補強層11における弾性体11Aと同一の材料(弾性体)からなる。具体的には、弾性体11A、内側弾性層13及びバリア層15は、クロロプレンゴム(CR)等から選ばれることが好ましい。また、補強コード11Bは、ナイロンやスチールコード等から選ばれることが好ましい。さらに、外皮層17は、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)等から選ばれることが好ましい。
【0027】
また、膨張体周方向断面において、バリア層15の厚さ(T)は、0.2mm以上であり、かつ、補強層11の厚さ(A)未満であることが好ましい。
【0028】
なお、バリア層15の厚さ(T)が0.2mmよりも小さいと、補強層ジョイント部11Jを覆うには不十分であり、補強層ジョイント部11Jが開いてしまうことがあり、補強層ジョイント部11Jの接着性及び耐久性を向上させることができない場合がある。また、バリア層15の厚さ(T)が補強層11の厚さ(A)よりも大きいと、バリア層15が厚くなりすぎてしまい、膨張体7の下端部を折り返ししやすい性能である折返し性等の悪化を招いてしまい、膨張体7の縮小化を実現することが困難となってしまう場合がある。
【0029】
ここで、補強層ジョイント部11Jは、膨張体7の耐久性をさらに向上させるために、内側弾性層13を筒状に成型する際に繋ぎ合わされる内側ジョイント部13J、バリア層15を筒状に成型する際に繋ぎ合わされるバリアジョイント部15J、及び、外皮層17を筒状に成型する際に繋ぎ合わされる外皮ジョイント部17Jと、周方向にずれて配置されていることが好ましい。
【0030】
以上のような膨張体7を製造するには、該膨張体7を外側に折り返すために、まず、成型ドラム(不図示)に外皮層17を巻き付ける。次に、外皮層17を覆うようにバリア層15を巻き付ける。次に、バリア層15を覆うように補強層11を巻き付ける。次に、補強層11を覆うように内側弾性層13を巻き付け、この未加硫状態の膨張体を加硫機(不図示)により加硫することにより、筒状の膨張体7を製造することができる。
【0031】
(作用・効果)
以上説明した本実施の形態に係る膨張体7及びつかみ装置1によれば、補強層ジョイント部11Jを覆うバリア層15が補強層11と外皮層17との間に設けられていることによって、加硫時において、補強層ジョイント部11Jに外皮層17が侵入してしまうことを防止することができるため、補強層ジョイント部11Jの接着性及び耐久性を向上させることができる。この結果、膨張体7の破損を抑制して寿命を延ばすことが可能となる。
【0032】
また、バリア層15が、補強層11における弾性体11Aと同一の材料からなることによって、加硫時において、補強層ジョイント部11Jにバリア層15が侵入してしまった場合であっても、補強層ジョイント部11Jの接着性及び耐久性を低下させることをなくすことが可能となる。
【0033】
また、バリア層15が補強層11全体を覆っていることによって、補強層11から補強コード11Bが飛び出ていた場合であっても、該補強コード11Bをバリア層15で覆って補強コード11Bと外皮層17とが接触することをなくことができ、膨張体7の耐久性が低下することをなくすことが可能となる。
【0034】
また、バリア層15の厚さ(T)が0.2mm以上であり、かつ、補強層11の厚さ(A)未満であることによって、加硫時において、補強層ジョイント部11Jに外皮層17が侵入してしまうことを防止することは勿論、折返し性等の悪化を招くことなく、膨張体7の縮小化(膨張体7の厚さの抑制)を実現することが可能となる。
【0035】
さらに、補強層ジョイント部11Jが、内側ジョイント部13J、バリアジョイント部15J及び外皮ジョイント部17Jと膨張体周方向にずれて配置されていることによって、各ジョイント部が膨張体径方向で重なることをなくすことができ、膨張体7の耐久性をさらに向上させることができる。
【0036】
(変更例1)
上述した実施の形態に係る膨張体7を構成するバリア層15は、補強層11全体を覆っているものとして説明したが、以下のように変更することができる。なお、上述した実施の形態に係る膨張体7と相違する部分を主として説明する。図4は、変更例1に係る膨張体の膨張体周方向断面図である。
【0037】
図4に示すように、バリア層15は、補強層ジョイント部11Jのみを覆っている。この場合であっても、膨張体周方向断面において、バリア層15における最大の厚さ(T)は、0.2mm以上であり、かつ、補強層11の厚さ(A)未満であることが好ましい。
【0038】
このような変更例1に係る膨張体7及び及びつかみ装置1によれば、加硫時において、補強層ジョイント部11Jに外皮層17が侵入してしまうことを防止することは勿論、バリア層15の肉厚部分を最小限に抑えて膨張体7の柔軟性等のバラツキを抑制することができる。
【0039】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0040】
具体的には、膨張体7は、部品の穴の内周面を圧接することで部品をつかむつかみ装置1に用いられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、膨張体7は、部品の外周面を圧接することで部品をつかむつかみ装置21に用いられても勿論よい。
【0041】
なお、このつかみ装置21は、空気等の流体が通過する通路23が形成されているリング状のボディー本体25と、流体により膨張可能な筒状の膨張体7(いわゆる、チューブ)とによって構成されている。この膨張体7の上端部は、膨張体7の外側へ向けて折り返されており、折り返された部分が加締めリング27Aによりボディー本体23に密封される。同様に、膨張体7の下端部は、膨張体7の外側へ向けて折り返されており、折り返された部分が加締めリング27Bによりボディー本体23に密封される。
【0042】
この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態に係るつかみ装置を示す一部分解斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る膨張体の膨張体周方向断面図である。
【図3】本実施の形態に係る膨張体の展開上面図である。
【図4】変更例1に係る膨張体の膨張体周方向断面図である。
【図5】その他の実施の形態に係るつかみ装置を示す一部分解斜視図である。
【図6】背景技術に係る膨張体の膨張体周方向断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…つかみ装置、3…通路、3A…上部通路、3B…側部通路、3C…内部通路、5…ボディー本体、7…膨張体、9A、9B…加締めリング、11…補強層、11A…弾性体、11B…補強コード、11J…補強層ジョイント部、13…内側弾性層、13J…内側ジョイント部、15…バリア層、15J…バリアジョイント部、17…外皮層、17J…外皮ジョイント部、21…つかみ装置、23…通路、25…ボディー本体、27A,27B…加締めリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品をつかむつかみ装置に用いられ、流体により膨張可能な筒状の膨張体であって、
弾性体及び補強コードにより形成される補強層と、
前記補強層の外側に設けられ、前記補強層を筒状に成型する際に繋ぎ合わされる補強層ジョイント部を少なくとも覆うバリア層と、
前記補強層及び前記バリア層の外側に設けられ、弾性体からなる外皮層と
を備えることを特徴とする膨張体。
【請求項2】
前記バリア層は、前記補強層全体を覆うことを特徴とする請求項1に記載の膨張体。
【請求項3】
前記バリア層は、前記補強層における前記弾性体と同一の材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膨張体。
【請求項4】
膨張体周方向断面において、前記バリア層の厚さ(T)は、0.2mm以上であり、かつ、前記補強層の厚さ(A)未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の膨張体。
【請求項5】
流体が通過する通路が形成されている筒状のボディー本体と、前記流体により膨張可能な筒状の膨張体との密封された空間に前記流体を注入することによって、前記膨張体を膨らませて部品をつかむつかみ装置であって、
前記膨張体は、
弾性体及び補強コードにより形成される補強層と、
前記補強層の外側に設けられ、前記補強層を筒状に成型する際に繋ぎ合わされる補強層ジョイント部を少なくとも覆うバリア層と、
前記補強層及び前記バリア層の外側に設けられ、弾性体からなる外皮層と
を備えることを特徴とするつかみ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−254903(P2008−254903A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100751(P2007−100751)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】