説明

膨張性骨材及びその製造方法

【課題】
コンクリート構造物中における実際のアルカリ骨材反応のように、セメントマトリックが硬化して強度を有した段階以降に、膨張圧を呈することができる膨張性骨材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
膨張性骨材は、膨張材、細骨材及び凝結遅延剤を含む造粒体であって、該造粒体の表面に有機物質コーティング膜を備える。かかる膨張性骨材は、膨張材、細骨材、凝結遅延剤及び水を混合して造粒する工程と、その造粒体を乾燥させる工程と、乾燥させた造粒体の表面を有機物質でコーティングしてコーティング膜を形成する工程とから製造される。当該膨張性骨材は、コンクリート構造物のアルカリ骨材反応を検証する試験において、アルカリ骨材反応に見合った膨張圧を確認する粗骨材として有効に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張性骨材及びその製造方法に関し、特に、コンクリート構造物のアルカリ骨材反応を実験的に調べるにあたり、コンクリートの強度が発現された後に、コンクリート構造物中でのアルカリ骨材反応に見合った膨張反応を有効に確認することができる粗骨材として用いられる、膨張性骨材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を建造する際に、材料中にアルカリシリカ反応を呈する骨材を使用すると、コンクリート内に含まれるアルカリ成分と当該骨材とが徐々に反応し、当該反応による骨材の経時的な体積膨張によって、コンクリート構造物に有害な亀裂やひび割れが発生することが問題となっている。
最近では、かかる骨材の膨張圧によって、コンクリート構造物内の鉄筋をも破断させる危険性が懸念されており、このような現象を実験的に再現させ、鉄筋破断の事実確認やその機構解明が検討されている。
【0003】
かかるコンクリート構造物中のアルカリ骨材反応を実験的に再現するにあたっては、実際にアルカリシリカ反応に関して無害でないと判定された天然骨材をコンクリート中に使用したり、また、アルカリシリカ反応に見合った膨張圧を有する量のコンクリート用膨張材をコンクリート中に混和することにより、実施されている。
【0004】
しかし、実際には、コンクリート構造物中でのアルカリ骨材反応は、長期にわたって徐々に進行するものであり、コンクリート構造物のひび割れの発生までに数ヶ月を要する。
また、アルカリシリカ反応性試験で無害でないと判定された場合でも、実際にはひび割れが発生するほどの反応に至らないことがある。
これは、アルカリ骨材反応がコンクリート中のアルカリ量や水分に依存するため、骨材自体が反応性を示す場合でも骨材周辺の環境によっては、実際にはアルカリ骨材反応が発生しないためである。
従って、アルカリ骨材反応を強制的に生じさせる再現性試験では、アルカリシリカ反応を有するとされる天然骨材を用いても、アルカリ骨材反応に見合った膨張反応を再現することが困難である。
【0005】
また、一般に市場で入手できるコンクリート用膨張材をコンクリート中に混和した場合には、コンクリートが未硬化の状態で膨張材が水と反応してセメントマトリック自体を膨張させるため、セメントマトリックの強度が著しく低下し、鉄筋に大きな変形を与えるまでに至らないのが実状である。
従って、従来のアルカリシリカ反応を有する骨材を使用して、コンクリート構造物の再現性試験を実施した場合、鉄筋を破断させるだけの膨張圧を再現することが困難であった。
【0006】
コンクリート中に用いられる粒状膨張材としては、特開平2003−292356号公報に、膨張材、バインダ及び分散剤を含有して、平均粒径2〜15mmに造粒にされてなる粒状膨張材が開示されている。
しかし、かかる粒状膨張材は、生コンクリートへ混入させて膨張コンクリートを製造するには有効なものであるが、該粒状膨張材は、水と接触すると、すぐに膨張を開始して分解し、コンクリートマトリック自体を膨張させてしまうものであり、コンクリートが硬化した後に膨張して亀裂を生じさせるアルカリ骨材反応再現用の骨材として、その再現試験用に用いることはできない。
従って、コンクリート構造物のアルカリ骨材反応に見合った膨張圧を試験的に再現するのに、有効に用いることができる膨張性骨材の開発が切望されていた。
【特許文献1】特開2003−292356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、コンクリート構造物中における実際のアルカリ骨材反応のように、セメントマトリックが硬化して強度を有した段階以降に、膨張圧を呈することができる膨張性骨材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特定の組成を有し、その表面に、水に溶解せずかつアルカリ環境下で分解するコーティング膜を形成することで、上記課題が解決できることを見出しいたったものである。
すなわち、本発明の膨張性骨材は、膨張材、細骨材及び凝結遅延剤を含む造粒体であって、該造粒体の表面に有機物質コーティング膜を備えることを特徴とするものである。
【0009】
好適には、上記本発明の膨張性骨材において、膨張材100質量部に対し、細骨材を25〜75質量部、凝結遅延剤を1〜5質量部含有するものであり、更に好適には、有機物質コーティング膜は、水に溶解せずアルカリ環境下で分解する1種以上の有機化合物からなるコーティング膜であるとするものである。
【0010】
また、本発明の膨張性骨材の製造方法は、膨張材、細骨材、凝結遅延剤及び水を混合して造粒する工程と、その造粒体を乾燥させる工程と、乾燥させた造粒体の表面を有機物質でコーティングしてコーティング膜を形成する工程とからなることを特徴とするものである。
【0011】
好適には、上記膨張性骨材の製造方法において、膨張材100質量部に対し、細骨材を25〜75質量部、凝結遅延剤を1〜5質量部、水を10〜25質量部配合するものであり、更に好適には、有機物質コーティングは、造粒体を液状有機物質の中に浸漬することにより設けられるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の膨張性骨材は、コンクリートに混合した場合、セメントモルタルマトリックスを膨張させるのではなく、実際のコンクリート構造物中でのアルカリ骨材反応のように、コンクリートが硬化した後に膨張圧を徐々に呈することが可能となるため、コンクリート構造物、特に鉄筋コンクリート構造物における実際のアルカリ骨材反応に見合った膨張圧を確実に再現することができる。
更に、本発明の膨張性骨材は、実際のアルカリ骨材反応に見合った膨張圧を確実に再現して、鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋破断の事実確認やその機構を検討する実験において有効に活用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の膨張性骨材は、膨張材、細骨材及び凝結遅延剤を含む造粒体であって、該造粒体の表面に有機物質コーティン膜を備えるものである。
このような構成とすることで、膨張性骨材をコンクリートモルタル中に混合させても、コンクリートモルタルマトリックス自体が膨張することなく、該マトリックスが硬化した後、すなわち強度を発現した後に、徐々に該骨材の膨張力を呈することができ、実際のアルカリ骨材反応を確実に再現することが可能となるのである。
【0014】
本発明の膨張性骨材に使用する膨張材は、特に限定されないが、カルシウムサルホアルミネート系、石灰−エトリンガイト複合系、石灰系、鉄粉系、マグネシウム系及びアルミニウム粉末などの、市販されている任意のコンクリート用膨張材を1種以上で使用することができ、好ましくは、汎用性や造粒体の製造性の点から、カルシウムサルホアルミネート系の膨張材を用いることが望ましい。
【0015】
また、本発明の膨張性骨材に使用する細骨材としては、川砂、海砂、山砂、砕砂、3〜8号珪砂、石灰石、及びスラグ細骨材等を使用することができ、特に、微細な粉や粗い骨材を含まない粒度調整した珪砂や石灰石等の細骨材を用いることが好ましい。
その配合割合は、上記膨張材100質量部に対して、好ましくは25〜75質量部、特に好ましくは、25〜50質量部とすることが望ましい。
これは、細骨材が膨張材に対して25質量部未満では、膨張性骨材中に含まれる膨張材の割合が多くなり、コンクリート混練時の攪拌力に耐えられるだけの強度が確保できなくなる場合があるからであり、また、75質量部を超えると、膨張性骨材を球状に造粒することが困難となる場合があるからである。
【0016】
更に本発明の膨張性骨材には凝結遅延剤が含まれ、膨張材の反応を抑制する機能を有する。
該凝結遅延剤としては、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、タンニン酸、糖類、糖アルコール類等の任意の市販のコンクリート用凝結遅延剤を1種以上で使用でき、特に溶解度との兼ね合いから少量で遅延効果が得られる点から、グルコン酸ナトリウムを用いることが望ましい。
なお、凝結遅延剤として、アルカリ環境下で加水分解することによって水和抑制物質を生成するタンニン酸は、水に対する溶解度が低いため、配合量が制限される。
【0017】
これらの凝結遅延剤は、そのまま配合することも可能であるが、混合水に溶解して使用した場合には、前記膨張材粒子表面に接水を妨げる膜を形成することができることから、特に、混合水に溶解して使用することが好ましい。
かかる混合水を用いた場合には、後述する膨張性骨材を調製する際に配合する水の一部を構成するものである。
【0018】
このように、凝結遅延剤を配合することで、膨張性骨材は、セメントマトリックスが十分な強度を有した段階で、アルカリ骨材反応に見合った膨張反応を開始することが可能となり、該膨張性骨材に含まれる膨張材の初期反応を抑制することができる。
当該凝結遅延剤の配合割合は、上記膨張材の100質量部に対して、好ましくは、1〜5質量部、特に好ましくは1〜2質量部とすることが、上記機能を、より効果的に発現するため望ましい。
【0019】
本発明の膨張性造粒材は、膨張材、細骨材、凝結遅延剤及び水を配合して造粒することにより調製される。
かかる水は、造粒体を形成する液体バインダとしての機能を有するものであり、その配合量は、膨張材100質量部に対して、10〜25質量部、特に、15〜20質量部配合する。
これは、水の量が10質量部より少ないと、球状に造粒することが困難となり、また一方、25質量部を越えると、膨張性骨材の粒径が増大して、一般的に用いられる粗骨材の最大寸法25mmを超えてしまう場合があるからである。
ただし、上記したように、凝結遅延剤を調製するにあたり、混合水を使用した場合には、その配合量も、前記バインダとしての水の量として含めるものである。
【0020】
上記材料を配合混合して造粒するにあたり、一定方向に攪拌力が加わるコンクリートミキサ、好ましくはパン型ミキサやオムニミキサ等の任意の造粒装置を使用できる。
特に、オムニミキサを使用することで造粒成形作業が効率化できる。
【0021】
オムニミキサ等によって製造された造粒体の粒度範囲は0.025〜30mmであるが、かかる造粒体を、更に一般的な粗骨材の粒度範囲に調整する。
すなわち、一般的な粗骨材の粒度範囲である5〜25mmとするために、5mm未満の粉体および25mmを超える造粒体を、下記のふるい(JIS Z 8801−1に規定されたもの)によって分別取り除き、本発明における造粒体としては、平均粒径が5〜25mmのものを使用する。
特に好適には、その平均粒径は、10〜15mmのものとすることが、粗骨材の代替という観点から望ましい。
【0022】
このようにして造粒された造粒体の一例を写真として図1に示す。
なお、平均粒径は、以下の式によって表される質量分布基準の平均粒径Mを示すものである。
M=(Σf・m)/100
ここで、miは相隣する篩目の大きさの平均値、fはmを求めるふるい間に残留する粒子の質量百分率であり、ふるいはJIS Z 8801−1に規定されたものを用いたものである。
【0023】
次いで、得られた造粒体を乾燥させる。
乾燥方法は、余剰水が残存しなければ、特に限定されず、室温に放置して乾燥させても、乾燥機を用いて乾燥を施してもいずれの方法を用いて行ってよい。
例えば、乾燥機を用いた場合には、110℃で15〜30分程度の急速乾燥で十分である。
【0024】
その後、乾燥させた造粒体に、表面コーティング膜を形成する。
かかる表面コーティング膜は、水に溶解せずかつアルカリ環境下において分解するため、本発明の膨張性骨材をコンクリート材料として混練しても、水分の吸収によってコンクリートの流動性を大幅に低下させることなく、高アルカリ環境であるコンクリート中で徐々に分解し、セメント硬化体が強固となった段階で膨張圧をセメントマトリックスに伝達できることとなる。
すなわち、このようなコーティング膜は、水分の浸透を妨げる皮膜であり、膨張性骨材と水とが直接接触した場合の反応を抑制することができる。
【0025】
このようなアルカリ環境下で分解するコーティング膜は、水に溶解せずアルカリ環境下で分解する有機物質からなるコーティング膜である。
このような有機物質としては、脂肪酸エステル系の有機化合物が使用できる。
これらの有機物質のコーティング膜を、上記乾燥造粒体の表面に設けるには、該乾燥造粒体を有機物質に浸漬することにより、薄膜コーティングを形成する方法を用いることが可能である。
【0026】
このようにして得られた膨張性骨材は、セメント、骨材及び水や、必要に応じて添加される混和剤(例えば、ポリカルボン酸系やメラミン系、リグニンスルホン酸系、変性ポリオール複合体)と共に配合され、コンクリートミキサあるいはアジテート車の攪拌ドラム等の混練装置を用いて混練されて、コンクリートが調製される。
【0027】
当該コンクリートを用いたコンクリート構造物によって、実際のコンクリート構造物のアルカリ骨材反応に見合った膨張圧を実験的に調べることが可能となる。
すなわち、当該膨張性骨材は、水分と直接接触しても反応せず、アルカリ環境下で徐々に分解して膨張する特性を有するものであるため、コンクリートの強度発現後に膨張圧が発生し、コンクリート構造物の実際のアルカリ骨材反応による体積膨張による鉄筋破断現象等の影響の再現を実現することができる。
【実施例】
【0028】
本発明を次の実施例及び図面により詳細に説明する。
(1)膨張性骨材の調製
カルシウムサルホアルミネート膨張材(住友大阪セメント(株)製、商品名;サクス、平均粒径16μm)100質量部、細骨材(千葉県君津産山砂)50質量部、凝結遅延剤(グルコン酸ナトリウム(試薬)、和光純薬工業(株)製)1質量部を水15質量部に溶解したものを、オムニミキサ(千代田技研工業(株)製;オムニミキサOMN−15、容量15リットル)に配合し、造粒して球状化した。
【0029】
得られた造粒体は、粒度が様々であったので、5mm未満の粉体および25mmを超える造粒体を、ふるいによって取り除く調整を行い、平均粒径が5mm〜25mmの造粒体を得た。
ただし、平均粒径は、上記した質量分布基準の平均粒径を意味し、ふるいはJIS Z 8801−1に規定されるものを用いたものである。
【0030】
次いで、得られた造粒体を乾燥装置(タバイ(株)製;PH−400)に入れて、乾燥温度110℃で20分急速乾燥させて、余剰水分を除去した。
その後、乾燥後の造粒体を、ステアリン酸(試薬(粉末)、和光純薬工業(株)製)を湯銭して液状化したものに、浸漬して、表面コーティング膜を形成して、本発明の膨張性骨材を得た。
【0031】
(2) 膨張性確認試験
i)コンクリートの調製
上記実施例で得られた膨張性骨材を用いてアルカリ骨材反応に見合った膨張圧の膨張性確認試験を実施するにあたり、コンクリートを以下のようにして調製した。
表1に示すように、早強ポルトランドセメント(住友大阪セメント(株)製)を373kg、細骨材(千葉県君津産山砂)を836kg、天然粗骨材(茨城県岩瀬産砕石)586kg、混和剤(商品名 ポゾリスNo.70、リグニンスルホン酸系減水剤、(株)エヌエムビー製)を3.73kg、水/セメント質量比が45%となるように水を添加して、コンクリートミキサによってベースコンクリートを調製した。
【0032】
その後、かかるベースコンクリート(膨張性骨材を除いた試料)に、膨張性骨材を350kg用いて、モデルアジテータ(ドラム回転速度11rpm)により均一に練り混ぜてコンクリート材料を調製した。
ただし、使用したモデルアジテータとは、容量70リットルの傾動式ミキサのドラムに平板状の羽根の代わりに幅約20cmの羽をその内周面に沿って螺旋状に取り付けることにより、アジテータ車の攪拌ドラムを模して構成したものである。
【0033】
【表1】

【0034】
ii)膨張性確認試験1
上記で得られたコンクリート材料を用いて、φ100×200mmの円柱供試体を製造するにあたり、型枠としてプラスチック製の型枠と鋼製の型枠とを用いて実施した。
本試験では、かかる型枠による拘束条件の相違に応じた、前記供試体の形状変化を評価した。
図2の写真に示すように、プラスチック製の型枠を用いた場合では、該型枠の拘束力が低いため、膨張性骨材の膨張圧によって、供試体が体積膨張を起こし、該プラスチック製型枠に亀裂が生じた。
【0035】
ただし、かかるプラスチック型枠の場合、コンクリート硬化体に亀裂が生じたのは、コンクリートを該型枠に打設してから3日後である。
この時点でのベースコンクリートの強度は36N/mmであり、膨張性骨材はベースコンクリートが確実に硬化した段階で、膨張圧を発揮したことが明らかとなった。
【0036】
また一方、鋼製の型枠を用いた場合には、プラスチック製の型枠とは異なり、特に亀裂は鋼製型枠に発生せず、コンクリートを打設後7日目に型枠から脱型した時点で、亀甲状のひび割れがベースコンクリートに発生した.
このように本発明の膨張性骨材をコンクリートに混和することによって、コンクリートに強度が発現された後に、アルカリ骨材反応によるひび割れと同様の亀甲状のひび割れを多数発生させることが可能となった。
【0037】
iii)膨張性確認試験2
上記で得られたコンクリート材料を用いて、図3に示すような、高さ(厚み)方向に2段に配筋されたD6帯鉄筋を埋設した、60×60×10cm四方の平板状の試験体を製造し、図1に示す3箇所のポイント(CH1,CH2,CH3)で幅・奥行き方向の寸法変位を測定した。
かかる変位の測定方法は、図3に示す通りであり、帯鉄筋内縁に支柱を設置して変位計(東京測器社製 CDP−100)が接触するプレートを取り付けた。
これによって、帯鉄筋で拘束を受けるコンクリート部分の変位を測定するとともに、帯鉄筋の伸び量とたわみ量を測定した。
【0038】
図4は、かかる平板状試験体の変位の測定結果である。
当該図より、コンクリート打設後2日以降に3〜6mmの変位が観られ、15日目までは徐々に変位が増加するが、その後急激に変位が増加していることがわかる。
かかる変位測定を終了した24日後では、最大で20mm近い変位があり、コンクリート打設直後は幅・奥行きとも600mmであった試験体の寸法は、この時点で630mm程度にまで膨張した。
【0039】
上記平板状試験体による変位の測定結果から、コンクリート材料打設後15日目以降、変位が急激に増加した段階で鉄筋に何らかの変状が生じたものと考えられ、打設24日後に当該試験体内部から鉄筋を取り出してみたところ、図5に示す写真のような亀裂が隅角部の付近で確認できた。
これらの結果から、本発明の膨張性骨材を用いることによって、実際のアルカリ骨材反応に近い現象をほぼ再現することが可能となったことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の膨張性骨材は、コンクリート構造物のアルカリ骨材反応を実験的に調べるに際して、アルカリ骨材反応に見合った膨張圧の膨張性確認用粗骨材及として有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の膨張性骨材の表面コーティング膜を形成する前の造粒体の一例を示す写真。
【図2】本発明の膨張性骨材を用いたコンクリート構造物の膨張性確認試験の一例を示す写真。
【図3】膨張性確認試験に用いた共試体の一例を示す概略図。
【図4】図3に示す共試体のコンクリート材料打設後の経過日数と寸法変位との関係を示す線図。
【図5】膨張性確認試験後の図3の共試体中の鉄筋の状態を示す写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張材、細骨材及び凝結遅延剤を含む造粒体であって、該造粒体の表面に有機物質コーティング膜を備えることを特徴とする、膨張性骨材。
【請求項2】
請求項1記載の膨張性骨材において、膨張材100質量部に対し、細骨材を25〜75質量部、凝結遅延剤を1〜5質量部含有することを特徴とする、膨張性骨材。
【請求項3】
請求項1または2記載の膨張性骨材において、有機物質コーティング膜は、水に溶解せずアルカリ環境下で分解する1種以上の有機化合物からなるコーティング膜であることを特徴とする、膨張性骨材。
【請求項4】
膨張性骨材を製造するにあたり、膨張材、細骨材、凝結遅延剤及び水を混合して造粒する工程と、その造粒体を乾燥させる工程と、乾燥させた造粒体の表面を有機物質でコーティングしてコーティング膜を形成する工程とからなることを特徴とする、膨張性骨材の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の膨張性骨材の製造方法において、膨張材100質量部に対し、細骨材を25〜75質量部、凝結遅延剤を1〜5質量部、水を10〜25質量部配合することを特徴とする、膨張性骨材の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の膨張性骨材の製造方法において、有機物質コーティングは、造粒体を液状有機物質の中に浸漬することにより設けられることを特徴とする、膨張性骨材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−51040(P2007−51040A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238963(P2005−238963)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】