説明

膵機能不全を治療するための、リパーゼ、プロテアーゼおよびアミラーゼを含有する組成物

本発明は、容態(膵機能不全が含まれる)の治療のための組成物に関する。本発明の組成物は、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを、患者(膵機能不全に罹患している患者など)が有利な結果を得る特定の比率で含む。本発明はまた、膵機能不全の治療のためのこのような組成物の使用方法に関する。好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、約1.0:1.0:0.15USP単位の酵素活性比の架橋微生物リパーゼ結晶、微生物プロテアーゼ、および微生物アミラーゼによって特徴づけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国仮特許出願第60/619,764号(2004年10月14日出願)の米国特許法第119(e)条の下の優先権を主張し、この仮特許出願の開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、容態(膵機能不全が含まれる)の治療のための組成物に関する。本発明の組成物は、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを、患者(膵機能不全患者など)が有利な結果を得る特定の比率で含む。本発明はまた、膵機能不全の治療のためのこのような組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
消化は、消化した食物が容易に吸収される栄養成分に分解される生理学的過程を構成する。消化後、食物は、胃腸管の種々の区分を通過し、主に消化酵素によって消化が行われる。この過程に不可欠な3つの消化酵素群には、リパーゼ(脂肪消化のため)、プロテアーゼ(タンパク質消化のため)、およびアミラーゼ(炭水化物消化のため)が含まれる。
【0004】
食物消化および栄養吸収は、小腸で起こる。小腸で、容易に吸収するために、消化酵素によって摂取された食物が分解される。ほとんどの消化酵素は、膵臓から分泌され、膵管を通して小腸に到達する。
【0005】
膵臓は、適切な消化、栄養摂取、および代謝に必要な外分泌作用および内分泌作用をもたらす。膵臓の外分泌作用には、小腸内で脂肪のグリセロールおよび脂肪酸への加水分解タンパク質のペプチドおよびアミノ酸への加水分解、炭水化物のデキストリン、ジサッカリド、およびモノサッカリド(グルコースなど)への加水分解を触媒する酵素として機能するタンパク質の分泌が含まれる。膵外分泌機能障害(以後、「膵機能不全」)は、膵機能の低下に起因し、多数の臨床的障害によって引き起こされ得る。例えば、膵機能不全は、嚢胞性線維症、慢性膵炎、急性膵炎、膵臓癌、およびシュバッハマン・ダイヤモンド症候群に関連する(非特許文献1)。
【0006】
膵機能不全を罹患した患者では、膵臓は、正常な消化過程(脂肪、タンパク質、および炭水化物の消化が含まれる)を支持する十分な量の消化酵素を産生および/または分泌することができない。結果として、患者は、栄養素の吸収不良を引き起こす。膵機能不全の臨床症状には、腹部仙痛、腹部膨満、下痢、脂肪便、悪心、および体重減少が含まれる。
【0007】
膵機能不全は、嚢胞性線維症患者の89%で存在する(非特許文献2)。嚢胞性線維症は、主に胃腸管および呼吸器系に影響を与える常染色体劣性遺伝病である(非特許文献3)。嚢胞性線維症患者で産生される異常な量および粘度の粘液が、十分な量の膵酵素の分泌を妨害する。膵臓分泌物量の減少により、膵管内で濃縮され、酵素および重炭酸塩の十二指腸への放出が阻止される。結果として、膵機能不全を伴う嚢胞性線維症患者は、消化不良を起こし、脂肪およびタンパク質の著しい吸収不良を経験する。例えば、このような患者は、典型的に、食物脂肪の吸収が60%未満である(非特許文献4)。未処置のままであった場合、嚢胞性線維症患者の消化不良および吸収不良によって栄養不良になり、体重を増加または維持することができず、成長が低下し、慢性化膿性肺疾患が悪化する(非特許文献5;非特許文献6)。
【0008】
今日まで、膵機能不全の標準的な治療法は、主に、経口投与されるブタパンクレリパーゼ(リパーゼの混合物を含む)、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、およびアミラーゼに基づいている。ブタ膵酵素サプリメントは相当量のアミラーゼを含んでいるが、嚢胞性線維症患者が正常なアミラーゼレベルを有すると報告されている(非特許文献7)。したがって、アミラーゼはポリサッカリド消化を増加する機能を果たさないと考えられる(非特許文献8)。ブタ膵臓サプリメントのリパーゼ成分、プロテアーゼ成分、およびアミラーゼ成分は、典型的には、1:3.5:3.5の比率で存在する。
【0009】
膵酵素サプリメントは、通常、食事と共に経口投与される。これらのサプリメントは胃の低pH環境を通過する時に、その酵素活性が急速に減少する。結果として、確実に膵機能不全を緩和するのに十分に活性な酵素を近位の腸に存在させるために大量の酵素濃縮物(時折、食事あたり15個ものカプセルまたは錠剤)を必要としていた。
【0010】
プロテアーゼおよびリパーゼは、胃の酸性環境下で不可逆的に不活性化するようになり得るので、腸溶テクノロジーをパンクレリパーゼ製品に適用し、マイクロビーズ中に酵素を封入するか、そうでなければ、保護腸溶コーティングを用いて酵素が処理されている。このような腸溶コーティングによって製品のプロフィールが改良される一方で、治療による利益を得るためには依然として大量のサプリメントが必要である(非特許文献9)。膵機能不全の治療に必要な錠剤またはカプセルの量を軽減する目的で、高力価(high−strength)パンクレリパーゼ製品ライン(Ultrase(登録商標))が導入された。しかし、1991年の米国嚢胞性線維症財団は、FDAと協力して、このような高力価製品を摂取した嚢胞性線維症の患児が線維性大腸症を罹患する多数の症例を報告した(非特許文献10)。これらの患者では、結腸線維症によって狭窄を引き起こし、これにより、手術、いくつかの場合、結腸切除を必要とする。
【0011】
膵酵素の1日量を軽減する手段として、FDAは、市場から高力価の製品(体重1kgあたり、2,500USP単位を超える製品と定義)を排除した(非特許文献11)。さらに、米国嚢胞性線維症財団は、FDAと協力して、ブタ酵素抽出物の複雑な性質の詳細な試験を推奨している(前出)。コンセンサスパネルも、別の酸安定性リパーゼの調査を推奨している。
【0012】
いずれにせよ、患者間で腸の酸性化にばらつきがあるので、このようなサプリメントの生物学的利用能のばらつきが大きく、所与の膵酵素サプリメントは腸溶コーティングされる。結果として、多数の患者は、酵素サプリメントの臨床有効性を改良するために、pH調整剤(ヒスタミン−2(H2)受容体遮断薬およびプロトンポンプインヒビター(PPI)など)を摂取する(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16)。
【0013】
潜在性および薬学的性質ならびに安定性の欠如に関するばらつきもまた、従来の膵酵素サプリメントに対するいくつかの患者の不十分な応答に寄与する重要な要因として同定されている(非特許文献17;非特許文献18;非特許文献8;非特許文献19)。これらには、酵素活性、長期間にわたる日光の曝露による活性の喪失に対する感受性、熱、または湿度におけるバッチ毎のばらつきおよび不完全に定義された副作用プロフィールが含まれる(D.S.Borowitz et al.,J.Pediatr.,127,supra)。膵機能不全療法を困難にする他の要因には、胃液および/または管腔内プロテアーゼによる代替酵素の破壊、酵素サプリメントおよび食事からの栄養素の非同期胃内容排出、ならびに腸溶コーティング調製物からの酵素遊離の遅延が含まれる(非特許文献12;非特許文献19)。
【0014】
従来の膵酵素サプリメントを特徴づける潜在性、安定性、および生物学的利用能の問題のために、ブタ由来酵素の代替物としての微生物由来の酵素の使用が提案されている。例えば、特許文献1は、1つまたは複数の酸安定性リパーゼおよび1つまたは複数の酸安定性アミラーゼ(共に真菌起源であることが好ましい)を含む組成物を記載している。米国特許出願番号2004/0057944号は、Rhizopus delemarリパーゼ、Aspergillus melleusプロテアーゼ、およびAspergillus oryzaeアミラーゼを含む組成物を記載している。米国特許出願番号2001/0046493号は、真菌または植物のプロテアーゼおよび真菌または細菌のアミラーゼと共に、架結晶細菌リパーゼを含む組成物を記載している。
【特許文献1】米国特許第6,051,220号明細書
【非特許文献1】E.P.DiMagnoら著,V.Liangら編,The Pancreas:Biology,Pathobiology and Disease,1993年,第2版,p.665−701
【非特許文献2】D.Borowitzら,「Use of Fecal Elastase−1 to Identify Misclassification of Functional Pancreatic Status in Patients with Cystic Fibrosis」,J.Pediatr.,2004年,第145巻,p.322−326
【非特許文献3】S.M.Roweら,「Mechanisms of Disease:Cystic Fibrosis」,N.Engl.J.Med.,1995年,第352巻,p.1992−2001
【非特許文献4】M.Kraisingerら,「Clinical Pharmacology of Pancreatic Enzymes in Patients with Cystic Fibrosis and in vitro Performance of Microencapsulated Formulations」,J.Clin.Pharmacol.,1994年,第34巻,p.158−166
【非特許文献5】K.Gaskinら,「Improved Respiratory Prognosis in CF Patients with Normal Fat Absorption」,J.Pediatr.,1982年,第100巻,p.857−862
【非特許文献6】J.M.Littlewoodら,「Control of Malabsorption in Cystic Fibrosis」,Paediatr.Drugs,2000年,第2巻,p.205−222
【非特許文献7】P.L.Townesら,「Amylase Polymorphism:Studies of Sera and Duodenal Aspirates in Normal Individuals and in Cystic Fibrosis」,Am.J.Hum.Genet.,1976年,第28巻,p.378−389
【非特許文献8】E.Lebenthalら,「Enzyme Therapy for Pancreatic Insufficiency:Present Status and Future Needs,」 Pancreas,1994年,第9巻,p.1−12
【非特許文献9】J.H.Meyer著,P.G.Lankisch編,Pancreatic Enzymes in Health and Disease,1991年,p.71−88
【非特許文献10】S.C.Fitzsimmonsら,「High−Dose Pancreatic−Enzyme Supplements and Fibrosing Colonopathy in Children with Cystic Fibrosis」,N.Engl.J.Med.,1997年,第336巻,p.1283−1289
【非特許文献11】D.S.Borowitzら,「Use of Pancreatic Enzyme Supplements for Patients with Cystic Fibrosis in the Context of Fibrosing Colonopathy」,J.Pediatr.,1995年,第127巻,p.681−684
【非特許文献12】P.G.Lankish,「Enzyme Treatment of Exocrine Pancreatic Insufficiency in Chronic Pancreatitis」,Digestion,1993年,第54巻(補遺2),p.21−29
【非特許文献13】D.Y.Graham,「Pancreatic Enzyme Replacement:the Effect of Antacids or Cimetidine」,Dig.Dis.Sci.,1982年,第27巻,p.485−490
【非特許文献14】J.H.Saundersら,「Inhibition of Gastric Secretion in Treatment of Pancreatic Insufficiency」,Br.Med.J.,1977年,第1巻,p.418−419
【非特許文献15】H.G.Heijerman et al,「Omeprazole Enhances the Efficacy of Pancreatin(Pancrease)in Cystic Fibrosis」,Ann.Inter.Med.,1991年,第114巻,p.200−201
【非特許文献16】M.J.Brunoら,「Comparative Effects of Adjuvant Cimetidine and Omprazole during Pancreatic Enzyme Replacement Therapy」,Dig.Dis.Sci.,1994年,第39巻,p.988−992
【非特許文献17】CL. Chaseら,「Enzyme Content and Acid Stability of Enteric−Coated Pancreatic Enzyme Products in vitro」,Pancreas,2005年,第30巻,p.180−183
【非特許文献18】D.S.Borowitzら,J.Pediatr.,127,supra;C.J.Powellら,「Colonic Toxicity from Pancreatins:a Contemporary Safety Issue」,Lancet,1999年,第353巻,p.911−915
【非特許文献19】P.Reganら,「Comparative Effects of Antacids,Cimetidine and Enteric Coating on the Therapeutic Response to Oral Enzymes in Severe Pancreatic Insufficiency」,N.Eng.J.Med.,1977年,第297巻,p.854−858
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような発展にもかかわらず、膵酵素サプリメントの有効性および患者の服薬遵守の両方をさらに改善するための投薬処方物(dosage formulation)の至適化が依然として必要である。最も低い用量で最も高い有効性を示し、十分に定義された安全性プロフィールによって特徴づけられる膵酵素サプリメントの目的は、膵機能不全を罹患した全ての患者(嚢胞性線維症患者が含まれる)に非常に重要であり続けている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本発明は、容態(膵機能不全が含まれる)の治療のための組成物および方法に関する。好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、約1.0:1.0:0.15USP単位の酵素活性比の架橋微生物リパーゼ結晶、微生物プロテアーゼ、および微生物アミラーゼによって特徴づけられる。有利には、これらの組成物は、安定な酵素成分、言い換えると、胃腸管への活性酵素のin vivo(生体内)送達の確保およびそれによる膵機能不全のための治療計画における用量の有効な低下によって特徴づけられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを含む組成物が、約1.0:1.0:0.15USP単位の酵素活性比で、容態(膵機能不全が含まれる)の治療に有効であるという発見に関する。固有のリパーゼ:プロテアーゼ:アミラーゼ比により、従来のブタ由来膵酵素サプリメントでは不可能な低用量の治療計画でこれらの容態を治療可能である。さらに、このリパーゼ:プロテアーゼ:アミラーゼ比により、従来の酵素サプリメントにおいて結腸線維症を担うと考えられている高濃度のプロテアーゼが回避される(D.S.Borowitz et al.,J.Pediatr.,127,supra)。
【0018】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、約1.0:1.0:0.15USP単位の酵素活性比の架橋微生物リパーゼ結晶、微生物プロテアーゼ、および微生物アミラーゼを含む。
【0019】
(定義)
以下の用語は、他で示さない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0020】
用語「無定形」は、結晶(crystal)状態、クリスタリン(crystalline)状態、またはセミクリスタリン(semicrystalline)状態以外の任意の状態をいう。無定形物質には、無定形の固体および液体が含まれる。
【0021】
用語「結晶」または「クリスタリン」は、三次元で周期的に繰り返されるパターン内に配された原子を含む固体状態の一形態をいう(Barrett,Structure of Methals,2nd ed.,(1952)参照)。酵素の結晶形態またはクリスタリン形態は、その無定形またはセミクリスタリン形態と異なる。結晶は、特徴的な性質(格子構造、特徴的な形状、および光学的性質(例えば、屈折率など)が含まれる)を示す。
【0022】
用語「セミクリスタリン」は、クリスタリン領域および無定形領域の両方を有する固体状態をいう。
【0023】
用語「被験体」、「患者」、または「個体」は、任意の哺乳動物(そういうものとして分類される任意の動物(したがって、ヒトおよび他の霊長類が含まれるが含まれる)が含まれる)をいう。
【0024】
用語「消化不良」は、栄養素のその吸収可能な成分(モノ−、ジ−、またはオリゴサッカリド、アミノ酸、オリゴペプチド、脂肪酸、およびモノグリセリド)への分解障害をいう。消化不良は、いくつかの容態(膵機能不全が含まれる)に起因し得る。
【0025】
用語「吸収不良」は、小腸または大腸からの消化した栄養素(ビタミンおよび微量元素が含まれる)の吸収障害をいう。吸収不良は、腸の内層による粘膜取り込みの欠損または特定の消化異常に起因し得る。多数の栄養素、特定の主要栄養素(すなわち、脂肪、タンパク質、または炭水化物)、ならびに微量栄養素(カルシウム、マグネシウム、鉄、およびビタミンなど)に対して腸管吸収障害が起こり得る。吸収不良は、いくつかの容態(膵機能不全が含まれる)に起因し得る。タンパク質吸収不良を、「窒素化合物過剰排泄」という。脂質吸収不良を、「脂肪便」という。
【0026】
用語「リパーゼ」は、脂質のグリセロールおよび単純な脂肪酸への加水分解(すなわち、水の負荷による化合物の水酸基および水素原子のフラグメントへの分離)を触媒する酵素をいう。この酵素反応は、通常、カルシウムイオン(Ca2+)が必要である。膵臓によって分泌されたリパーゼは、小腸の上部ループ(upper loop)中の脂肪(トリグリセリド)の消化に非常に重要である。好ましい実施形態によれば、本発明の組成物および方法で有用なリパーゼは、非膵臓リパーゼである(すなわち、これらは、ヒトまたは動物の膵臓組織から精製されない)。本発明のより好ましい実施形態によれば、リパーゼは微生物リパーゼである。本発明のさらに好ましい実施形態では、リパーゼは、細菌リパーゼである。細菌リパーゼには、シュードモナスリパーゼおよび/またはバークホルデリアリパーゼが含まれる。
【0027】
微生物リパーゼを、その天然の微生物供給源から単離することができるか、培養において細菌、酵母、真菌、植物、昆虫、または哺乳動物宿主細胞のいずれか1つから選択される適切な宿主細胞(好ましくは、細菌)によって組換えDNAテクノロジーを介して産生された組換え微生物リパーゼであり得る。組換えリパーゼは、天然に存在するリパーゼ配列を含むか、これら由来の核酸によってコードされる。さらに、組換えリパーゼには、天然に存在する配列と相同または実質的に同一のアミノ酸配列ならびに天然に存在するリパーゼコード核酸と相同または実質的に同一の核酸によってコードされるリパーゼが含まれる。あるいは、本発明の組成物および方法で有用なリパーゼを、従来のペプチド合成技術によって合成することができる。
【0028】
用語「プロテアーゼ」は、タンパク質中の内部アミドペプチド結合の分解を触媒する酵素であるプロテイナーゼ、タンパク質分解酵素、またはペプチダーゼをいう。詳細には、プロテアーゼは、一方のアミノ酸のカルボキシル基と他方のアミノ基との間のアミド結合の切断によるタンパク質のその成分アミノ酸への変換を触媒する。プロテアーゼは、一般に、その触媒型(例えば、アスパラギン酸ペプチダーゼ、システイン(チオール)ペプチダーゼ、金属ペプチダーゼ、セリンペプチダーゼ、トレオニンペプチダーゼ)、アルカリまたは半アルカリプロテアーゼ、中性ペプチダーゼ、および未知の触媒機構のペプチダーゼによって識別される(http://merops.sanger.ac.ukを参照のこと)。好ましい実施形態によれば、本発明の組成物および方法で有用なプロテアーゼは、非膵臓プロテアーゼである(すなわち、これらは、ヒトまたは動物の膵臓組織から精製されない)。本発明のより好ましい実施形態によれば、プロテアーゼは、細菌プロテアーゼである。本発明のさらに好ましい実施形態によれば、プロテアーゼは、真菌プロテアーゼである。本発明の1つのさらなる実施形態によれば、プロテアーゼは、Aspergillus melleusプロテアーゼである。
【0029】
微生物プロテアーゼを、その天然の微生物供給源から単離することができるか、培養において細菌、酵母、真菌、植物、昆虫、または哺乳動物宿主細胞のいずれか1つから選択される適切な宿主細胞(好ましくは、真菌)によって組換えDNAテクノロジーを介して産生された組換え微生物プロテアーゼであり得る。組換えプロテアーゼは、天然に存在するプロテアーゼ配列を含むか、これら由来の核酸によってコードされる。さらに、組換えプロテアーゼには、天然に存在する配列と相同または実質的に同一のアミノ酸配列ならびに天然に存在するプロテアーゼコード核酸と相同または実質的に同一の核酸によってコードされるプロテアーゼが含まれる。あるいは、本発明の組成物および方法で有用なプロテアーゼを、従来のペプチド合成技術によって合成することができる。
【0030】
用語「アミラーゼ」は、全ての哺乳動物というわけではないが、ヒトにおいて膵臓内で産生され、且つ唾液腺でも産生される酵素をいう。ヒト唾液腺アミラーゼは、プチアリンとして公知である。アミラーゼは、小腸内での2つのデンプン成分(アミロースおよびアミロペクチン)の単糖への変換の触媒による炭水化物(例えば、ポリサッカリド)の消化を担う主な消化酵素である。より詳細には、アミラーゼは、デンプン、グリコーゲン、およびデキストリンを加水分解して、グルコース、マルトース、および限界デキストリンを形成する。臨床的には、血中アミラーゼレベルは、しばしば、急性膵炎および時折慢性膵炎の容態で上昇する。用語「非膵臓アミラーゼ」は、ヒトまたは動物の膵臓組織から精製されないアミラーゼをいう。本発明のより好ましい実施形態によれば、アミラーゼは、微生物アミラーゼである。本発明のさらに好ましい実施形態によれば、アミラーゼは、真菌アミラーゼである。本発明の1つのさらなる実施形態によれば、アミラーゼは、アスペルギルスアミラーゼであり、より好ましくは、Aspergillus oryzaeアミラーゼである。
【0031】
微生物アミラーゼを、その天然の微生物供給源から単離することができるか、培養において細菌、酵母、真菌、植物、昆虫、または哺乳動物宿主細胞のいずれか1つから選択される適切な宿主細胞(好ましくは、真菌)によって組換えDNAテクノロジーを介して産生された組換え微生物アミラーゼであり得る。組換えアミラーゼは、天然に存在するアミラーゼ配列を含むか、これら由来の核酸によってコードされる。さらに、組換えアミラーゼには、天然に存在する配列と相同または実質的に同一のアミノ酸配列ならびに天然に存在するアミラーゼコード核酸と相同または実質的に同一の核酸によってコードされるアミラーゼが含まれる。あるいは、本発明の組成物および方法で有用なアミラーゼを、従来のペプチド合成技術によって合成することができる。
【0032】
用語「治療有効用量」または「治療有効量」は、治療すべき容態の症状の発症を防止または遅延するか、症状を改善する組成物の量をいう。治療有効量は、治療すべき容態の治療、防止、重症度の軽減、発症の遅延、1つまたは複数の症状の発症の軽減に十分な量である。本発明の組成物を使用して治療することができる容態には、例えば、膵機能不全、吸収不良、および消化不良が含まれる。
【0033】
用語「USP単位」は、薬剤または組成物中に存在する酵素活性の米国薬局方単位をいう。1USP単位のリパーゼ、プロテアーゼ、またはアミラーゼは、Pancrelipase,USP,U.S.Pharmacopeia National Formulary,USP 24,pp.1254− 1255(2000)で定義されている。リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼのアッセイは、上記引例に開示されており、本明細書中で参考として援用される。
【0034】
(本発明の組成物の特徴)
有利には、本発明の組成物は、例えば、膵機能不全などの容態を罹患した患者における脂肪、タンパク質、およびデンプンの吸収を改善し、栄養摂取および成長を改善する。組成物は、酸−ペプシン環境下で高レベルの比活性を維持する。したがって、その酵素成分が上部胃腸管の酸性条件(胃の低pHおよび胃腸管の高プロテアーゼレベルが含まれる)に耐えるので、酵素を活性形態で腸に送達することができる。結果として、組成物を、ブタ膵酵素サプリメントと比較して、投与あたりより少量且つより少ない投与回数で投与することができる。言い換えると、これにより、患者の服薬遵守が改善される。
【0035】
さらに、本発明の組成物を、腸溶コーティングまたは酸抑制剤の添加を必要とせずに被験体に投与することができる。したがって、本発明の組成物の種々の実施形態で使用される微生物由来酵素成分は、ブタ膵酵素よりも胃酸に対する安定性が高い。
【0036】
(リパーゼ成分)
本発明の組成物のリパーゼ成分は、好ましくは、微生物リパーゼである。より好ましくは、リパーゼは、真菌または植物起源よりもむしろ細菌起源である。
【0037】
リパーゼは、好ましくは、酸性pH環境下で安定であり、そして/またはタンパク質分解に耐性を示すリパーゼである。リパーゼを、酸性pHでのその安定性および/またはタンパク質分解に対するその耐性を増強させる形態で使用することもできる。そのためには、リパーゼは、架橋結晶の形態であることが好ましい。上記リパーゼのいずれかを使用して、本発明の組成物の架橋リパーゼ結晶成分を形成することができる。
【0038】
(リパーゼの結晶化)
本発明の組成物で有用なリパーゼ結晶を、バッチ結晶化などの従来の方法を使用して成長させることができる。例えば、米国特許第6,541,606号を参照のこと。あるいは、リパーゼ結晶を、水溶液または有機溶媒を含む水溶液からのタンパク質沈殿の調節によって成長させることができる。例えば、米国特許第5,618,710号および米国特許出願番号2003/0017144号を参照のこと。当業者に認識されているように、結晶化中に調節されるべき条件には、例えば、溶媒の蒸発速度、適切な共溶質および緩衝液の存在、pH、ならびに温度が含まれる。
【0039】
リパーゼ結晶を、結晶化すべきリパーゼ酵素と沈殿剤(塩または有機物質(organic agent)など)を含む適切な溶媒または水性溶媒との組み合わせによって生成することができる。溶媒を、リパーゼと組み合わせ、任意選択的に、結晶化の誘導に適切であり、且つタンパク質の安定性および活性の維持に許容可能であると実験的に決定された温度での震盪に供する。溶媒は、任意選択的に、共溶質(2価の陽イオンなど)、補因子またはカオトロープ、ならびにpHを調節するための緩衝種(buffer species)を含むことができる。結晶化を容易にするための共溶質の必要性および濃度を実験的に決定することができる。産業規模での過程のために、結晶化させるための沈殿を、バッチ過程でのタンパク質、沈殿剤、共溶質、および、任意選択的に、緩衝液の単純な組み合わせによって調節することができる。あるいは、実験室レベルでの結晶化法(透析または蒸気拡散など)も使用することができる。McPherson et al.,Methods Enzymol.,114,pp.112−120(1985)およびGilliland,J.Crystal Growth,90,pp.51−59(1988)は、結晶化に適切な条件の包括的リストを含む。時折、結晶化溶媒と架橋剤とが不適合である場合、架橋前に緩衝液または溶媒を変更することが必要であり得る。
【0040】
リパーゼは多数の条件下(約4〜9のpH範囲が含まれる)で結晶化する。本発明の組成物のリパーゼ成分の調製のために、有用な沈殿剤には、イソプロパノール、tert−ブタノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)、硫酸アンモニア、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、および当業者に公知の他の沈殿剤が含まれる。有用な塩には、2価または1価の陽イオンおよびその塩が含まれる。
【0041】
本発明の組成物で有用なリパーゼ結晶の最長寸法は、約0.01μmと約500μmとの間、あるいは、約0.1μmと約50μmとの間、または約0.1μmと約10μmとの間であり得る。これらは、球体、針状、棒状、平面(六角形および正方形)、菱形、立方体、両錐、および角柱からなる群から選択される形状であり得る。
【0042】
(リパーゼ結晶の架橋)
一旦リパーゼ結晶が適切な溶媒中で成長すると、これらを架橋することができる。架橋により、結晶の成分タンパク質分子の間の共有結合の導入によって結晶格子が安定化する。これにより、酵素を、所与の酵素について結晶格子またはインタクトな酵素の存在と不適合であり得る別の環境に移すことが可能になる。
【0043】
リパーゼ結晶の架橋の結果として、酵素安定性(例えば、pH、温度、機械的および/または化学的安定性)、リパーゼ活性のpHプロフィール、溶解性、結晶のサイズまたは体積の均一性、結晶からのリパーゼの放出速度、および/または基礎をなす結晶格子中の核酵素分子の間の間隙のサイズおよび形状を変更することができる。
【0044】
有利には、得られた架橋結晶が、未修飾リパーゼと比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%、または99.9%またはそれを超えるリパーゼ活性を示すリパーゼを含むような方法で架橋させる。安定性を、未修飾リパーゼと比較して、少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、またはそれ以上増加させることができる。例えば、保存条件下での安定性(pH安定性、温度安定性、プロテアーゼ(胃腸管プロテアーゼおよびPronaseTMが含まれる)に対する安定性、溶解安定性、またはin vivo(生体内)での生物学的安定性)を測定することができる。
【0045】
一定の例では、リパーゼ結晶の架橋により、リパーゼの溶液への溶解が遅延し、酵素分子が微晶性粒子に有効に固定される。架橋リパーゼ結晶の周辺の環境(保存条件よりもむしろ使用条件など)における誘発物質(trigger)への曝露の際に、リパーゼ結晶が溶解し、リパーゼポリペプチドを放出し、そして/またはリパーゼ活性が増加する。溶解速度を、1つまたは複数の以下の要因によって調節することができる:例えば、架橋度、架橋剤へのリパーゼ結晶の曝露時間の長さ、リパーゼ結晶への架橋剤の添加速度、架橋剤の性質、架橋剤の鎖の長さ、pH、温度、サルファヒドリル試薬(システインまたはグルタチオンなど)の存在、架橋リパーゼ結晶の表面積、架橋リパーゼ結晶のサイズ、または架橋リパーゼ結晶の形状。
【0046】
1つの架橋剤または架橋剤の組み合わせ(多官能性架橋剤(二官能性試薬が含まれる)が含まれる)を同時(並行が含まれる)または連続的に使用してリパーゼ結晶を架橋することができる。種々の実施形態では、周囲の環境中の誘発因子への曝露の際または所与の期間にわたってリパーゼ結晶間の架橋は減少するか弱まり、それにより、リパーゼが溶解し、活性が放出される。あるいは、結合点で架橋を破壊し、タンパク質を溶解させ、活性を放出させることができる。例えば、米国特許第5,976,529号および同第6,140,475号を参照のこと。任意の従来の架橋技術にしたがって架橋させることができる。
【0047】
架橋リパーゼ結晶中の架橋剤の最終濃度は、約0.001mMと約300mMとの間、好ましくは、約1.0mMと約50mMとの間、最も好ましくは、約2.0mMと約5.0mMとの間の範囲であるべきである。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、架橋剤は、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(「BS」)である。他の有用な架橋剤には、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、オクタンジアルデヒド、およびグリオキサールが含まれる。さらなる多官能性架橋剤には、ハロトリアジン(例えば、塩化シアヌル)ハロピリミジン(例えば、2,4,6−トリクロロ/ブロモ−ピリミジン);脂肪族または芳香族モノカルボン酸またはジカルボン酸の無水物またはハライド(例えば、無水マレイン酸、塩化(メタ)クリロイル、塩化クロロアセチル);N−メチロイル化合物(例えば、N−メチロイル−クロロアセトアミド);ジイソシアネートまたはジイソチオシアネート(例えば、フェニレン−1,4−ジ−イソシアネートおよびアジリジン)が含まれる。他の架橋剤には、エポキシド(例えば、ジエポキシド、トリエポキシド、およびテトラエポキシドなど)が含まれる。他の利用可能な架橋剤の代表的なリストについては、例えば、2003−2004 edition of the Pierce Chemical Company Catalogを参照のこと。架橋剤の他の例には、ジメチル3,3’−ジチオビスプロピオンイミダート・HCl(DTBP);ジチオビス(スクシンイミジルプロピオナート)(DSP);ビスマレイミドヘキサン(BMH);l,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(DFDNB);スベルイミド酸ジメチル二塩酸塩(DMS);グルタミン酸ジスクシンイミジル(DSG);酒石酸ジスルホスクシンイミジル(スルホ−DST);塩酸l−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロプリル)カルボジイミド(EDC);エチレングルコビス(スルホ−スクシンイミジルスクシネート)(スルホ−EGS);N−(γ−マレイミド−ブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS);N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミジル−4−アジドベンゾエート(スルホ−HSAB);スルホ−スクシンイミジル−6−(α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT);ビス−(β−(4−アジド−サリチルアミド)エチル)ジスルフィド(BASED);およびNHS−PEG−ビニルスルホン(NHS−PEG−VS)が含まれる。
【0049】
可逆的架橋剤も使用することができる。このような可逆的可溶剤は、個別の基として誘発因子が組み込まれた多官能性架橋剤である。反応性多官能基は、タンパク質中の反応性アミノ酸側鎖の相互結合に関与し、誘発因子は、周囲の環境中の1つまたは複数の条件(例えば、pH、還元剤の存在、温度、熱力学的水分活性)の変化によって破壊することができる結合からなる。
【0050】
架橋剤は、ホモ官能性またはヘテロ官能性であり得る。反応性官能基(または部分)を、例えば、1つまたは複数の以下の官能基から選択することができる(式中、R、R’、R’’、およびR’’’は、アルキル基、アリール基、または水素基であり得る)。
I.反応性アシルドナー(例えば、カルボン酸エステル(RCOOR’)、アミド(RCONHR’)、アシルアジド(RCON)、カルボジイミド(R−N=C=N−R’)、N−ヒドロキシイミドエステル(RCO−O−NR’)、イミドエステル(R−C=NH2(OR’))、無水物(RCO−C−COR’)、カルボン酸塩(RO−CO−O−R’)、ウレタン(RNHCONHR’)、酸ハライド(RCOHal)(式中、Hal=ハロゲン)、アシルヒドラジド(RCONNR’’R’’)、およびO−アシルイソ尿素(RCO−O−C=NR’(−NR’’R’’’))など)。
II.反応性カルボニル基(例えば、アルデヒド(RCHO)およびケトン(RCOR’)、アセタールRCO(H)R’、およびケタール(RR’COR’R”)(当業者に公知のタンパク質の固定および架橋の官能基を含む反応性カルボニル)(Pierce Catalog and Handbook,Pierce Chemical Company 2003−2004;S.S.Wong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking,(1991)など)。
III.アルキルまたはアリールドナー(例えば、アルキルまたはアリールハライド(R−Hal)、アジド(R−N)、硫酸エステル(RSOR’)、リン酸エステル(RPO(OR’))、アルキルオキソニウム塩(R)、スルホニウム(R)、硝酸エステル(RONO)、マイケル受容体(RCR’=CR’’’COR’’、アリールフルオリド(ArF)、イソニトリル(RN≡C−)、ハロアミン(RN−Hal)、アルケン、およびアルキンなど)。
IV.硫黄含有基(例えば、ジスルフィド(RSSR’)、スルフヒドリル(RSH)、およびエポキシド(RCOCR’)など)。
V.塩(例えば、アルキルまたはアリールアンモニウム塩R、カルボン酸塩(RCOO−)、硫酸塩(ROSO−)、リン酸塩(ROPO)、およびアミンRNなど)。
【0051】
可逆的架橋剤は、例えば、誘発因子を含む。誘発因子には、アルキル、アリール、または架橋すべきタンパク質と反応することができる活性化基を有する他の鎖が含まれる。反応基は、種々の基(求核、遊離ラジカル、または求電子置換に感受性を示す基など)(特に、ハライド、アルデヒド、カーボネート、ウレタン、キサンタン、およびエポキシドが含まれる)であり得る。例えば、反応基は、酸、塩基、フルオリド、酵素、還元、酸化、チオール、金属、光分解、ラジカル、または熱に対して不安定であり得る。
【0052】
架橋リパーゼ結晶を、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥によって粉末形態で得ることができる。凍結乾燥(すなわち、フリーズドライ)により、無定形懸濁液を形成することなく、且つ最小の変性リスクで、組成物から水を分離し、非冷却温度(室温)で長期間保存することができ、且つ水性溶媒、有機溶媒、または最適な混合した水−有機溶媒中で容易に再構成することができる結晶を生成することが可能である。Carpenter etal.,Pharm.Res.,14,pp.969−975(1997)。凍結乾燥を、米国特許第5,618,710号に記載のように行うか、当該分野で公知の他の方法によって行うことができる。例えば、架橋リパーゼ結晶を最初に凍結し、結晶水が昇華する高真空下に置き、強固に結合した水分子のみを含むリパーゼ結晶が残存する。
【0053】
(架橋リパーゼ結晶の特徴)
架橋リパーゼ結晶の酵素活性を、任意の従来の方法を使用して測定することができる。例えば、リパーゼ活性を、米国特許第5,618,710号の実施例6に記載のように、分光光度法で決定することができる。リパーゼ活性を、基質である酢酸p−ニトロフェニルの加水分解のモニタリングによって評価することができる。基質の分解を、初期基質濃度0.005%および出発酵素濃度1.5×10−8Mを用いた400nmでの吸光度の増加によってモニタリングする。室温でリパーゼ酵素を、5mlの反応体積の基質を含む0.2M トリス(pH7.0)に添加する。クリスタリンリパーゼを、吸光度の測定前の遠心分離によって反応混合物から除去する。
【0054】
あるいは、米国特許第5,614,189号の実施例2〜4に記載のように、リパーゼ活性を、オリーブ油の加水分解によってin vitroで測定することができる。
【0055】
リパーゼ活性を、in vivoで測定することもできる。例えば、少量(約3ml)のオリーブ油またはトウモロコシ油を、99Tc−(V)チオシアネートで標識し、クリスタリンリパーゼを、111Inで標識することができる。標識した脂肪を、標識クリスタリンリパーゼを点在させた動物性食品と混合する。胃内に5%未満の活性が残存するまで、近位および遠位の胃および小腸のシンチグラフィ画像を得る。次いで、各同位体の胃内容排出曲線(emptying curve)(例えば、長期間にわたる胃内の保持率)および目的の各領域から近位、中位、および遠位の小腸に侵入する同位体の量を決定する。
【0056】
好ましくは、本発明の組成物の架橋リパーゼ成分は、高い比活性を有する。高比活性リパーゼ活性は、典型的には、トリオレインに対する比活性が、500、1,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、または9,000単位/mgタンパク質を超える活性である。
【0057】
好ましくは、本発明の組成物架橋リパーゼ成分はまた、胃腸領域(すなわち、胃領域、十二指腸領域、および腸領域)で見出される過酷な環境下で長期間安定である。例えば、リパーゼは、好ましくは、酸性pH(例えば、pHが、7、6、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、または1.5未満の環境)で少なくとも1時間安定である。本明細書中で使用される、「安定な」は、リパーゼ結晶は、所与の条件および時間のためのリパーゼの可溶性形態よりも高活性であることを意味する。したがって、安定なリパーゼ結晶は、対応するリパーゼの可溶性形態よりも高い初期活性率を保持する。いくつかの実施形態では、リパーゼ結晶は、所与の条件および時間への曝露後にその活性の少なくとも10%を保持する。他の実施形態では、リパーゼは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはこれらを超えるその活性を保持する。
【0058】
あるいはまたはさらに、本発明の組成物の架橋リパーゼ結晶成分は、熱耐性を示す。例えば、種々の実施形態では、30℃、37℃、または40℃で少なくとも1時間安定である。
【0059】
(プロテアーゼ成分)
本発明の組成物のプロテアーゼ成分は、微生物プロテアーゼである。好ましくは、プロテアーゼは、細菌または植物起源よりもむしろ真菌起源である。より好ましくは、プロテアーゼは、アスペルギルスプロテアーゼである。最も好ましくは、プロテアーゼは、Aspergillus melleusプロテアーゼである。好ましい実施形態によれば、本発明の組成物のプロテアーゼ成分は、結晶化された非架橋形態である。プロテアーゼ結晶を、例えば、沈殿剤としてエタノールを使用した上記のリパーゼについて記載された結晶化技術にしたがって調製することができる。あるいは、本発明の組成物のプロテアーゼ成分は、非クリスタリン形態、架橋クリスタリン形態、またはコーティング形態、または組成物の他のタンパク質成分を消化しないようにカプセル化または配合した形態であり得る。
【0060】
(アミラーゼ成分)
本発明の組成物のアミラーゼ成分は、微生物アミラーゼである。好ましくは、アミラーゼは、細菌または植物起源よりもむしろ真菌起源である。より好ましくは、アミラーゼは、アスペルギルスアミラーゼである。最も好ましくは、アミラーゼは、Aspergillus oryzaeアミラーゼである。好ましい実施形態によれば、本発明の組成物のアミラーゼ成分は、無定形形態である。あるいは、本発明の組成物のアミラーゼ成分は、結晶形態(架橋クリスタリン形態、非クリスタリン形態、もしくはコーティング形態、または経口投与後に活性を保持するように調合した形態であり得る)であり得る。
【0061】
(架橋リパーゼ結晶、プロテアーゼ、およびアミラーゼを含む組成物)
本発明の組成物は、1つまたは複数の賦形剤と共に、架橋微生物リパーゼ結晶、微生物プロテアーゼ、および微生物アミラーゼを、約1.0:1.0:0.15USP単位の酵素活性比で含む組成物である。好ましくは、リパーゼは細菌リパーゼであり、プロテアーゼおよびアミラーゼは真菌起源である。最も好ましくは、組成物は、BS−3架橋剤と架橋した細菌リパーゼ結晶、Aspergillus melleusプロテアーゼ結晶、および可溶性Aspergillus oryzaeアミラーゼを、約1.0:1.0:0.15USP単位の酵素活性比で含む。
【0062】
本発明の組成物のリパーゼ成分の架橋により、過酷なpHでの安定性およびタンパク質分解下での防御が付与される一方で、プロテアーゼおよびアミラーゼ成分は有効に溶解するための最大溶解性を保持する。より詳細には、リパーゼ成分の結晶化および架橋は、より低い投薬量で酵素活性を増強する組成物が得られるのを補助する。プロテアーゼの結晶形態はまた、酵素の安定性、純度、および潜在性を増強するのを補助する。
【0063】
本発明の別の実施形態では、リパーゼは任意の安定化形態であり、組成物のプロテアーゼおよびアミラーゼ成分のいずれかまたは両方は結晶、無定形、またはセミクリスタリン形態であり得る。あるいは、前記いずれかまたは両方は、凍結乾燥形態であり得る。その形態と無関係に、前記いずれかまたは両方は、架橋することができる。
【0064】
本発明の組成物は、有利に、組成物で処置した患者の脂肪吸収係数および窒素吸収係数が相関して増加する。さらに、本発明の組成物は、患者のデンプン消化および炭水化物吸収を増加させるレベルのアミラーゼを含む。本発明によって、デンプン消化および炭水化物吸収に対するこのような効果を、ブタ膵臓サプリメントよりもリパーゼおよびプロテアーゼと比較してはるかに少量のアミラーゼを使用して得ることができることが発見された。この発見は、アミラーゼが特に嚢胞性線維症患者における膵機能不全の治療に必要ないという当該分野の信念に反する。
【0065】
本発明の組成物で有用な賦形剤は、充填剤または充填剤の組み合わせ(薬学的組成物中で使用される賦形剤など)として作用する。本発明の好ましい実施形態では、賦形剤は、微結晶性セルロース、マルトリン(Maltrin)、クロスポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、およびタルクを含む。さらに好ましい賦形剤群には、以下または以下の混合物が含まれる:スクロース、トレハロース、ラクトース、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、イノシトール、ナトリウム塩およびカリウム塩(酢酸、リン酸、クエン酸、およびホウ酸など)、グリシン、アルギニン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリリジン、およびポリアルギニン。
【0066】
他の好ましい賦形剤は、任意の以下または以下の組み合わせであり得る:1)アミノ酸(グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、プロリンなど)、2)炭水化物(例えば、モノサッカリド(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボースなど);3)ジサッカリド(ラクトース、トレハロース、マルトース、スクロースなど);4)ポリサッカリド(マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲンなど);5)アルジトール(マンニトール、キシリトール、ラクチトール、ソルビトールなど);6)グルクロン酸、ガラクツロン酸;7)シクロデキストリン(メチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど);8)無機分子(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム、ホウ酸、炭酸アンモニウム、およびリン酸アンモニウムなど);9)有機分子(酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩など);10)乳化剤または可溶化剤/安定化剤(アカシア、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロクサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、および他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、ワックス、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン誘導体など);ならびに11)増粘剤(寒天、アルギン酸およびその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロースおよびその炭酸プロピレン誘導体、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、チロキサポールなど)のいずれか。このような化合物の塩も使用することができる。
【0067】
賦形剤のさらなる例は、米国薬学会および英国薬学会が共同で刊行したHandbook of Pharmaceutical Excipientsに記載されている。組成物に関して、本発明によれば、賦形剤は不活性成分であり、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼは有効成分である。本発明の組成物中の有効成分と不活性成分との比は、w/wに基づいて、約1:9〜約9:1、好ましくは約1:6〜6:1であり得る。
【0068】
本発明の別の実施形態では、リパーゼ成分、プロテアーゼ成分、またはアミラーゼ成分のいずれか1つは、高分子キャリアと会合して組成物中に存在し得る。これにより、経口摂取後に有効量且つ低投薬量の酵素を腸(すなわち、遠位腸(distal bowel))に送達する、酸耐性制御放出組成物が得られる。
【0069】
有用な高分子キャリアには、例えば、タンパク質送達(制御放出生体送達が含まれる)のためのタンパク質結晶のカプセル化に使用されるポリマーが含まれる。このようなポリマーには、生体適合性ポリマーおよび生分解性ポリマーまたはこれらの混合物が含まれる。好ましくは、高分子キャリアは、生分解性ポリマーである。溶解速度、すなわち、酵素の送達を、特定のカプセル化技術、ポリマー組成物、ポリマー架橋、ポリマーの厚さ、ポリマーの安定性、酵素結晶の幾何学的性質および酵素の架橋度(いくらかある場合)によって決定する。1つの実施形態によれば、本発明の組成物を、高分子キャリアのマトリックス内にカプセル化し、それにより、リパーゼ成分、プロテアーゼ成分、およびアミラーゼ成分が胃腸管の過酷な環境からさらに保護される。
【0070】
(組成物の投薬経路、形態、投与計画、および治療方法)
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、任意の被験体(嚢胞性線維症を罹患した被験体が含まれる)における膵機能不全の治療方法で有用である。別の実施形態によれば、本発明の組成物は、被験体の吸収不良の治療方法で有用である。本発明のさらなる実施形態は、被験体における脂肪吸収係数の増加または窒素吸収係数の増加のための本発明の組成物の使用を含む。本発明の別の実施形態は、任意選択的に同量の、被験体における脂肪吸収係数および窒素吸収係数の両方の増加のための組成物の使用を含む。さらなる実施形態では、本発明の組成物は、被験体における炭水化物吸収の増加方法で有用である。
【0071】
本発明の組成物を使用した治療方法は、被験体に治療有効量のこのような組成物を投与する工程を含む。本発明の方法のいずれかを使用して、膵機能不全を罹患した任意の被験体(嚢胞性線維症患者が含まれる)を治療することができる。同様に、これらの方法のいずれかを使用して、任意の嚢胞性線維症患者を治療することができる。
【0072】
本発明の治療方法は、被験体に治療有効量の本発明の組成物を投与する工程であって、被験体におけるベースライン脂肪吸収係数が40%以下である場合、該治療有効量によって、被験体の脂肪吸収係数がベースラインより約30%と約35%との間の量で増加する、投与する工程を含む方法を含む。好ましくは、このような被験体における脂肪吸収係数の増加は、ベースラインより約30%の増加である。別の実施形態では、治療方法は、被験体に治療有効量の本発明の組成物を投与する工程であって、被験体におけるベースライン脂肪吸収係数が40%超であるが85%未満である場合、該治療有効量によって、被験体の脂肪吸収係数がベースラインより約10%と約25%との間の量で増加する、投与する工程を含む方法を含む。好ましくは、被験体の脂肪吸収係数の増加は、ベースラインより約15%の増加である。
【0073】
さらに、本発明の治療方法は、被験体に治療有効量の本発明の組成物を投与する工程であって、被験体におけるベースライン窒素吸収係数が40%以下である場合、該治療有効量によって、被験体の窒素吸収係数がベースラインより約30%と約35%との間の量で増加する、投与する工程を含む方法を含む。好ましくは、このような被験体における窒素吸収係数の増加は、ベースラインより約30%の増加である。別の実施形態では、治療方法は、被験体に治療有効量の本発明の組成物を投与する工程であって、被験体におけるベースライン窒素吸収係数が40%超であるが85%未満である場合、該治療有効量によって、被験体の窒素吸収係数がベースラインより約10%と約25%との間の量で増加する、投与する工程を含む方法を含む。好ましくは、被験体の窒素吸収係数の増加は、ベースラインより約15%の増加である。
【0074】
別の実施形態では、本発明の治療方法は、被験体に治療有効量の本発明の組成物を投与する工程であって、該治療有効量によって、被験体の炭水化物吸収がベースラインより約10%以上の程度で増加する、投与する工程を含む方法を含む。別の実施形態では、このような方法は、治療有効量の本発明の組成物が被験体の炭水化物吸収がベースラインより約20%以上の程度で増加する量である方法を含む。本明細書中で測定されるように、10%の炭水化物吸収の増加は、1日あたり90カロリーの増加である。365日後、1年あたり全部でさらに32,850カロリーが吸収されるであろう。1ポンド増加させるために約3,500カロリーが必要であるので、被験体の炭水化物吸収の10%増加に基づいて、1年あたり9ポンド余り増加するであろう。
【0075】
本発明の組成物を、任意の従来の送達経路(上部胃腸管(例えば、口腔(例えば、カプセル、錠剤、懸濁液、または食品と共に送達)、胃、上部腸管(例えば、チューブまたは注入による)、経口経路)が含まれる)のために処方することができる。好ましくは、組成物を、経口送達のために処方する。したがって、組成物は、任意の投薬形態(固体、液体、懸濁液、または分散液の形態が含まれる)(例えば、カプセル、錠剤、カプレット、サシェ、または糖衣錠など)であり得る。乳児および幼児または錠剤またはカプセルを摂取できない任意の成人のために、組成物を、液体、懸濁液、またはサシェ形態で投与し、他の適合可能な食品または製品と共に投与することができる。
【0076】
本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物を、1つまたは複数のカプセル、懸濁液、またはサシェで食事または軽食時に被験体に投与する。好ましくは、本発明の組成物を、食事または軽食あたり1つまたは2つのカプセル、懸濁液、またはサシェで被験体に投与する。組成物を、食事または軽食の半分を消費した後に投与することができる。本発明にしたがって膵機能不全を治療するための治療有効量の組成物は、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを、約1:1:0.15USP単位の酵素活性比で含み、投与あたり、約5,000USP単位と約100,000USP単位との間の活性リパーゼレベル、約5,000USP単位と約100,000USP単位との間の活性プロテアーゼレベル、および約750USP単位と約15,000USP単位との間の活性アミラーゼレベルで含む。より好ましくは、このような組成物は、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを、約1:1:0.15USP単位の酵素活性比で含み、投与あたり、約25,000USP単位と約100,000USP単位との間の活性リパーゼレベル、約25,000USP単位と約100,000USP単位との間の活性プロテアーゼレベル、および約3,750USP単位と約15,000USP単位との間の活性アミラーゼレベルで含む。最も好ましくは、このような組成物は、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを、約1:1:0.15USP単位の酵素活性比で含み、投与あたり、約25,000USP単位の活性リパーゼレベル、約25,000USP単位の活性プロテアーゼレベル、および約3,750USP単位の活性アミラーゼレベルで含む。
【0077】
幼児のために、本発明の組成物は、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを、約1:1:0.15USP単位の酵素活性比で含み、投与あたり、約12,500USP単位と約25,000USP単位との間の活性リパーゼレベル、約12,500USP単位と約25,000USP単位との間の活性プロテアーゼレベル、および約1,875USP単位と約3,750USP単位との間の活性アミラーゼレベルで含む。乳児のために、このような組成物は、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを、約1:1:0.15USP単位の酵素活性比で含み、投与あたり、約500USP単位と約1,000USP単位との間の活性リパーゼレベル、約500USP単位と約1,000USP単位との間の活性プロテアーゼレベル、および約75USP単位と約150USP単位との間の活性アミラーゼレベルで含む。本明細書中で考察された全ての酵素活性単位の数値および範囲について、リパーゼ、プロテアーゼ、またはアミラーゼの1単位を、各酵素について上記のアッセイにしたがって定義する。上記量はまた、それぞれ、成人、幼児、もしくは乳児の吸収不良もしくは消化不良の治療または成人、幼児、もしくは乳児の脂肪吸収係数、窒素吸収係数、炭水化物吸収、もしくはデンプン消化のいずれかの増加のための有効量である。
【0078】
本発明の組成物の最も有効な投与様式および投薬計画は、所望の効果、以前の治療法、存在する場合、被験体の健康状態または容態自体の状態、治療に対する応答、および医師の判断に依存する。
【0079】
被験体の容態の改善の際に、必要に応じて、維持投薬計画を導入することができる。その後に、症状の効用(function)として、投薬量、投与頻度、またはその両方を、改善された容態が保持されるレベルに減少することができる。しかし、被験体は、その容態または症状の任意の再発の際に、長期を基本とした間欠的治療が必要であり得る。
【0080】
本発明をより深く理解し得るために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、例示のみを目的とし、いかなる方法によっても本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本発明の組成物ならびに膵機能不全の治療についてのその安全性および有効性を評価する臨床研究に関する。これらの研究は、膵機能不全を罹患した嚢胞性線維症患者における第1相および第2相臨床試験を含んでいた。
【0082】
第2相研究は、以下の変化によって測定される本発明の組成物の有効性を評価した:脂肪吸収係数(「CFA」)、窒素吸収係数(「CNA」)、経口炭水化物吸収、1日あたりの糞便重量、1日あたりの排便回数、および嚢胞性線維症質問書(「CFQ」)によって測定した胃腸管の症状に関する生活の質。本研究はまた、処置した被験体中のベースライン(酵素なし)から脂肪吸収の改善についての最も高い臨床的に重要な係数を示すこのような組成物の投薬量を評価した。
【0083】
第2相研究で証明されるように、本発明の組成物により、膵機能不全を有する嚢胞性線維症被験体のベースラインから治療期間までの平均CFAおよびCNAが統計的に有意に増加した。本発明の組成物は、最小の用量(カプセルあたり25,000USP単位のリパーゼ、25,000USP単位のプロテアーゼ、および3,750USP単位のアミラーゼ(本研究の「中用量」または「Arm2」))で有効であり、ほとんどの被験体でCFAおよびCNAの両方が有意に(10%以上)増加することが見出された。CFAおよびCNAは、処置においてリパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼをカプセルあたり100,000:100,000:15,000USP単位の酵素活性比で含む場合(本研究の「高用量」または「Arm3」)にも増加した。しかし、中用量投与計画と高用量の投与計画との間にCFAまたはCNAのいずれかに関する統計的有意性は存在しなかった。本発明の組成物および第2相研究で使用した組成物には、カプセルあたり5,000USP単位のリパーゼ、5,000USP単位のプロテアーゼ、および750USP単位のアミラーゼの用量(本研究の「低用量」または「Arm1」)で投与する組成物も含まれる。
【0084】
有利には、CFAおよびCNAのベースライン値ならびに処置した被験体の性別の調節後でさえも、CFAおよびCNAに対する本発明の組成物のこの効果は、統計的に有意なままであった(中用量および高用量治療群についてそれぞれp=0.0003および<0.0001)。CFAおよびCNAの両方を別の四分位(quartile)として試験した場合(図1および2)、40%未満のベースライン値の被験体で最も大きな変化が認められ、40%を超えるベースラインCFAおよびCNAを有する被験体で比例的により小さな変化が認められた。CFAに関して、40%以下のベースラインCFAを有する8人の被験体の中用量治療群における平均増加は、35.3%であった。40%以下のベースラインCFAを有する12人の被験体の高用量群における平均増加は、30.4%であった。40%以下のベースラインCFAを有する20人の被験体の中用量および高用量の治療群についての全体的な増加は、32.3%であった。
【0085】
本発明の組成物はまた、処置した被験体における1日あたりの排便回数および糞便の重量の変化に関して測定したところ、有意な治療効果が得られた。高用量を投与した被験体は、ベースラインから治療期間までに排便回数が有意に減少する一方で、中用量および高用量治療群の両方における糞便重量の減少が統計的に有意であった。実際、脂肪吸収の変化と糞便重量の変化との間に非常に有意な逆相関(R=−0.7283;P<0.0001)が認められた。したがって、これらに関して、高用量(Arm3)での研究は、中用量(Arm2)と有意に異ならなかった。
【0086】
全ての研究被験体では、酵素ありおよび酵素なしにおけるデンプン攻撃試験(Starch Challenge Test)で全体的に統計的に有意な変化は認められなかったにもかかわらず、最大グルコース変化および曲線下面積(「AUC」)の両方において高用量被験体で認められた効果は、示唆されるアミラーゼ活性に向かう傾向があった(p<0.057)。さらに、フィッシャーの正確確率検定を使用した即興的分析は、デンプン攻撃試験後に、酵素ありと酵素なしの処置期間の比較に基づいて、中用量群および高用量群のより多くの被験体が低用量治療群よりも最大グルコース変化が10%以上増加することを示した(p=0.0138)。これらの結果は、アミラーゼが本発明の重要な成分として機能し、デンプン消化および炭水化物吸収が改良されることを証明する。
【0087】
本発明の組成物で処置した被験体で深刻な有害事象は報告されず、第2相研究での全ての用量レベルを十分に許容した。本研究中に死亡した被験体はいなかった。
【0088】
(実施例1−研究組成物の調製)
本明細書中で考察した第1相および第2相研究で使用した組成物は、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを含んでおり、それぞれ、調節された条件下で、単離、精製、および乾燥前に異なる微生物株から個別に製造した。小腸内で安定であり、且つ強い酵素活性が保持される組成物が得られるような方法で製造した。
【0089】
リパーゼ:細菌からのリパーゼの産生および精製方法は、当業者に周知である。例えば、本発明のリパーゼ成分を、細菌Burkholderia cepacia(以前は、Pseudomonas cepaciaとして公知であった)からの発酵によって産生した。25,000リットルの発酵槽で行った。株を、凍結乾燥万能細胞バンクから入手し、スラントで成長させ、8リットルの種培養物に育成し、2,500リットルの種発酵槽でさらに発酵させ、最後に、25,000リットルの発酵槽で産生した。発酵後、生きた生物を、熱処理によって死滅させ、遠心分離によって除去した。蒸発によってタンパク質を濃縮し、その後にエタノール沈殿し、バスケット遠心分離機中にてエタノールで洗浄した。
【0090】
硫酸アンモニウム沈殿、DEAEセルロースを使用した吸着および溶離、ならびにその後の限外濾過におる精製、濃縮、および脱塩によって、より精製されたリパーゼを生成した。得られた材料を、アセトン処理およびCM−セルロースによってさらに精製し、安定剤としてグリシンを添加した。得られた材料を、膜濾過によって濾過し、凍結乾燥させた。次いで、材料を、篩にかけ、比活性、純度、および病原体の非存在について分析した。
【0091】
精製リパーゼを、ダイアフィルトレーションによってさらに処理してグリシン安定剤を除去した。次いで、これを、25%t−ブタノール中で沈殿および結晶化させ、その後に、好ましくは、架橋リパーゼ結晶中の架橋剤の最終濃度が約2.0mMと約5.0mMとの間の範囲内であるような上記の濃度範囲内のBSで架橋した。架橋リパーゼ結晶を、5倍体積の15%エタノール緩衝液で洗浄し、その後に5倍体積のエタノール緩衝液(1.5mM酢酸カルシウム(pH5.0)を含む)でさらに洗浄して、残存する架橋剤およびt−ブタノールの両方を低下させた。得られた材料を凍結乾燥し、輸送のためにHDPEボトルに積めてテープで密封し、シリカゲル乾燥剤と共に1つのPEバッグに梱包した。各バッチを、他の微生物に加えてBurkholderia cepaciaでの微生物汚染について明確に分析し、臨床用途のために発売される前にBurkholderia cepaciaおよび病原体について陰性でなければならなかった。
【0092】
プロテアーゼ:プロテアーゼの産生および精製方法は、当業者に公知である。例えば、プロテアーゼを、Aspergillus melleusの固体発酵によって産生した。種培養物を溶液中で成長させ、小麦ふすまに移した。一旦種が滅菌ふすまを被うと、発酵室での発酵のために固体をトレイにロードした。発酵の完了後、巨大抽出タンクによる水の潅流によって固体バイオマスから酵素を抽出した。
【0093】
次いで、プロテアーゼを含む抽出物を、活性炭濾過装置に流して濾過し、懸濁粒子を除去した。次いで、溶液を濃縮し、活性炭で2回処理した。プロテアーゼをエタノールで沈殿させ、最終精製のために真空乾燥させた。
【0094】
プロテアーゼを溶解し、イオン交換樹脂を通過させた。次いで、材料を濾過し、その後に結晶化タンクに移し、ここで、複数回エタノールを添加しながら結晶化させた。一旦結晶化が完了すると、結晶をバスケット遠心分離機で回収し、さらなるエタノールで洗浄した。結晶を、バスケット遠心分離機から回収し、強制換気によって乾燥させ、その後に真空乾燥させた。一旦乾燥させると、最終的な篩および包装のために粉末をバルクコンテナに移した。
【0095】
アミラーゼ:アミラーゼの産生および精製方法は、当業者に公知である。例えば、アミラーゼを、Aspergillus oryzaeの固体発酵によって産生した。種培養物を溶液中で成長させ、小麦ふすまに移した。一旦種が滅菌ふすまを被うと、発酵のために固体をトレイにロードした。発酵の完了後、抽出タンクによる水の潅流によって固体バイオマスから酵素を抽出した。濾過した抽出物を、濃縮し、ダイアフィルトレーションを行った。このダイアフィルトレーション後に、熱処理し、pHを調整し、その後に別のダイアフィルトレーションおよび濃縮を行った。魚類ゼラチンを、噴霧乾燥前の安定剤として材料に添加し、これは、生成物の総重量の30%までに相当する。一旦乾燥させると、材料を篩にかけ、デキストリンと混合し、包装した。長期保存のための安定剤としてデキストリンを使用し、これは、最終生成物の総重量の30%にもなる。得られた活性薬学的成分中のタンパク質の純度は、280nmで検出するSEC HPLCによって90%を超えた。この90%は、賦形剤としてのゼラチンおよびデキストリンの存在を示さず、賦形剤が280nmで有意に吸収されなかった。精製および処理後、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを、カプセルとして互いに配合した。より詳細には、乾燥酵素を、(賦形剤と)乾式混合し、ゼラチンカプセルに充填した。この組成物を、TheraCLECTMと呼んだ。
【0096】
(実施例2−第2相研究)
(処置用量)
第2相研究で使用した組成物は、有効成分である架橋Burkholderia cepaciaリパーゼ結晶、Aspergillus melleusプロテアーゼ結晶、および可溶性Aspergillus oryzaeアミラーゼの有効成分、ならびに以下の不活性成分を含んでいた:微結晶性セルロース、マルトリン、クロスポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、およびタルク。これらは、リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを、1:1:0.15USP単位の酵素活性比で含んでいた。
【0097】
組成物を、2つの異なる力価(strength)のカプセルの形態で送達させた。「TCT20」と呼ばれる高力価処方物を、20,000USP単位のリパーゼ、20,000USP単位のプロテアーゼ、および3,000USP単位のアミラーゼの力価でサイズ2の白色不透明硬ゼラチンカプセルに充填した。「TCT5」と呼ばれる低力価処方物を、5,000USP単位のリパーゼ、5,000USP単位のプロテアーゼ、および750USP単位のアミラーゼの力価でサイズ5の白色不透明硬ゼラチンカプセルに充填した。w/wベースでの有効成分:不活性成分比は、TCT20については3:4であり、TCT5については2:5であった。
【0098】
第2相研究でTheraCLECTMの用量を分からなくするためにサイズ2およびサイズ5プラセボカプセルを使用した。プラセボカプセルは、TheraCLECTMカプセルと同一の不活性成分を含み、カプセルの身元(活性対プラセボ)が分からないように、TheraCLECTMカプセルと同一の外観であった。適切な数および型のTheraCLECTMカプセルおよびプラセボカプセルを、投与レベルを分からなくするために、無作為に選択した被験体に投与した。
【0099】
第2相研究中、28日の処置期間中の各食事または軽食のほぼ中間で、被験体は、全部で6カプセルを摂取し、これらは、TheraCLECTMとプラセボカプセルとの組み合わせであり、下記のように、1つがサイズ5カプセルであり、5つがサイズ2カプセルであった。
【0100】
(表1−治療群(arm)による研究処置対プラセボの分布)
【0101】
【表1】

(投与の選択およびタイミング)
第2相研究の最も高い固定用量(100,000USP単位のリパーゼ/食事)は、80kgの被験体のための1kgあたり1,250リパーゼUSP単位および40kgの被験体のための1kgあたり2,500リパーゼUSP単位と等しかった。
【0102】
(表2−研究薬−TheraCLECTMの用量)
【0103】
【表2】

(第2相研究のさらなるパラメーター)
第2相研究は、無作為化した二重盲検の並行用量分類試験であった。本研究には、米国の約26箇所から全部で129人のTheraCLECTMの3つの投与レベルの男性および女性の被験体が参加した(治療群あたり約42人)。研究を、以下の4つの異なる観察および評価期間に分けた:スクリーニング、ベースライン、処置、および追跡。
【0104】
(第2相研究集団)
上記のように調製した組成物を、3つの被験体集団で試験した。修正治療意図(modified Intent−To−Treat)(「mITT」)集団は、ベースライン期間(酵素なし)測定を受け、少なくとも1つの無作為化投与を受け、安全性についての処置期間評価を受け、マーカー毎に糞便を回収した全ての適格な被験体を含んでいた。他の被験体集団を試験し、結果は、mITT集団の結果と一致した。
【0105】
(スクリーニング期間(日数S1〜ベースライン))
スクリーニング外来(screening visit)の第1日目(日数S1)に、本研究の参加に適格であるかを決定するために被験体を面接した。被験体は、完全な身体検査も受けた。
【0106】
被験体に、研究期間を通して高脂肪食を摂取するよう依頼した。被験体は、被験体が罹患している嚢胞性線維症および関連疾患の治療および管理のために必要な薬物を摂取することが許容された。被験体に、研究の入院患者ベースライン期間(日数B1〜B3)および処置期間(日数T1〜T28)に酵素補充と解釈され得る酵素補充剤(supplementation product)または補助食品(dietary aid)を投与しなかった。
【0107】
被験体を、3つのTheraCLECTM投与のうちの1つに無作為に選択した。
【0108】
(ベースライン期間(日数B1〜B3))
スクリーニング開始から10〜14日以内に、無作為化被験体は、絶食状態且つその日の最初の食事前(朝食前)に入院施設に入院することが必要であった。ベースライン期間を、第B1日目の1日の最初の食事(朝食)から開始した。朝食前に、体重を測定した。次いで、被験体は、膵酵素を補充することなく72時間の栄養制限食を開始した。糞便マーカー(stool marker)(500mg FD&C Dye Blue番号2)を、第B1日目の最初の食事の開始時に摂取した。実際の消費に基づいて、脂肪およびタンパク質の取り込みを記録した。便中脂肪および窒素評価のための糞便回収を、第1のマーカーの通過後に開始し(第1のマーカーを含む糞便を破棄する)、糞便中に第2のマーカーが最初に認められた時(第2のマーカーを含む糞便を回収した時)に終了した。
【0109】
ベースライン期間中の各日に、被験体を、有害事象および併用薬について評価し、生命徴候を記録し、簡単な身体検査を行った。
【0110】
(処置期間(日数T1〜T28))
処置期間の第1日目(T1)に、投与前手順の完了後およびT1日目のデンプン攻撃試験後の第1の食事(昼食)のほぼ中間で、研究薬物の第1の投与を各被験体に行った。次いで、第1の投与から少なくとも30分後に被験体を観察した。十分な薬物耐性を示す場合、治療期間のT1〜28における3回の食事および2回の軽食のほぼ中間に被験体に同用量の研究薬物を摂取させた。本研究では、食事の中間を、被験体が食事または軽食のほぼ半分を消費した時点と定義した。
【0111】
第T29日目に、被験体に対する薬物研究を中断した。第T29日目/ET外来診療中に、完全な身体検査を行った。被験体を、有害事象についても評価した。
【0112】
(追跡期間(F7±2日目))
追跡期間中、被験体を、医師が処方した高脂肪食および通常ケアの酵素(usual care enzyme)で維持した。処置期間(T29日目)の外来の完了から7±2日後に、追跡期間の外来が終了するように計画した(F7±2日目)。この外来時に、被験体に簡単な身体検査を受けさせ、有害事象および併用薬について評価した。
【0113】
(脂肪および窒素についての糞便分析)
スクリーニング外来中にスポット糞便エラスターゼ試験のための糞便を回収して、本研究の適性について評価した。各被験体は、潜血および白血球の存在についての試験中の種々の期間で試験する糞便を有していた。
【0114】
入院患者のベースライン期間および入院患者の処置期間中に、および入院患者の治療期間中に、脂肪(約100g/kg体重/日)および最低限のタンパク質(約2g/kg体重/日)からなる栄養制限食の第1の食事(朝食)の開始時に、指標マーカー(500mgのFD&C Blue番号2)を投与した。実際の脂肪およびタンパク質の取り込みを、食事の消費量に基づいて記録しなければならなかった。
【0115】
栄養制限食から72時間後、デンプン攻撃試験のための試験食を用いる絶食被験体に第2の青色指標マーカーを投与した。便中脂肪および窒素評価のための糞便回収を、第1のマーカーの通過後に開始し、第2の青色マーカーの通過時に完了した。回収した糞便を、糞便重量ならびに脂肪および窒素含有量の分析のために測定した。Seligson,D(ed), Standard Methods of Clinical Chemistry,Volume II,Fatty Acids in Stool,1985,Academic Press,pp 34−39;Veldee MS,Nutritional Assessment, Therapy, and Monitoring in Burtis CA, Ashwood ER(eds). Tietz Textbook of Clinical Chemistry,3rd Ed.,1999, W.B.Sanders Co,pp 1385−86。
【0116】
脂肪吸収係数(%CFA)を、以下の2つのデータポイントを使用したサイトによって手作業で計算した。
(1)cental research dieticianによって提供された24時間あたりの脂肪消費量(g)、および
(2)Mayo Clinical Laboratory Servicesによって提供された24時間あたりの脂肪排泄量(g)。
【0117】
CFAを、以下のように手作業で計算した:
(24時間あたりの平均脂肪消費量(g)−24時間あたりの平均脂肪排泄量(g))/(24時間あたりの平均脂肪消費量(g))×100。
【0118】
窒素吸収係数(%CNA)を、以下の2つのデータポイントを使用して手作業で計算した。
(1)cental research dieticianによって提供された24時間あたりの窒素消費量(g)、および
(2)Mayo Clinical Laboratory Servicesによって提供された24時間あたりの窒素排泄量(g)。
【0119】
CNAを、以下のように手作業で計算した:
(24時間あたりの平均窒素消費量(g)−24時間あたりの平均窒素排泄量(g))/(24時間あたりの平均窒素消費量(g))×100。
【0120】
(有効性の評価−脂肪吸収係数)
処置群によるベースライン、処置時での脂肪吸収係数、およびベースラインから処置までの変化をまとめた。報告した脂肪吸収係数は、1つの糞便回収物由来の2つの便中脂肪の結果を使用した2つの独立したCFA計算値の平均であった。処置期間中の平均脂肪吸収係数の3つの処置群間の相違を、一元配置分散分析を使用して分析した。全部で5%のI型エラー率に調節しながら3つの可能な2つ1組の比較を評価するために、テューキーのスチューデント化された範囲の検定を使用した。従属変数は、処置中の測定値を含んでいた。
【0121】
処置群および平均ベースラインCFAの同時効果を試験する線形回帰分析も行った。この場合も、従属変数は、処置中の測定値を含んでいた。モデルで試験されたさらなる要因には、以下のベースライン測定が含まれた:年齢、性別、人種、およびBMI。これらのさらなる要因について、減少過程を使用して、有意でない要因(p>0.10)をモデルから排除した。この線形回帰分析においてテューキーのスチューデント化された範囲の試験を使用して、2つ1組の比較も行った。
【0122】
処置群によるmITT集団についてのベースライン、治療での脂肪吸収係数(CFA)およびベースラインから処置までの変化を、以下の表3にまとめている。3つ全ての処置集団にわたって、ベースラインから処置期間までの平均CFAに有意な増加が認められた。脱落者を除く治療(on−treatment)によるCFAは、治療群1(低用量)よりも治療群2(中用量)および治療群3(高用量)で有意に高かった。さらに、治療群2および3は、酵素なしから酵素ありまでの平均増加が治療群1よりも高かった。治療群3が治療群2を超える一貫した多数の利点を示したが、この相違は統計的に有意ではなかった。
【0123】
(表3−平均脂肪吸収係数−分散分析)
【0124】
【表3】

*分散分析由来の全p値
**脱落者を除く治療の結果(2つ1組の比較のためのテューキーのスチューデント化された範囲の試験を使用):
治療群1対治療群2、mITT p値=0.0229。
治療群2対治療群3、mITT p値=0.7874。
治療群1対治療群3、mITT p値=0.0041。
【0125】
ベースラインCFAを0〜100%の五分位数に分けた場合、全治療群は、ベースラインCFAが40%を超えた場合よりも、0〜40%のCFAのベースラインで著しく増加したことが明らかである(図1を参照のこと)。さらに、ベースラインCFAが低いほど、治療に対する応答は高くなる。
【0126】
(有効性の評価−窒素吸収係数)
mITT集団についてのベースライン(B1〜B3)および処置時の窒素吸収係数を、処置群により以下の表4にまとめた。報告した窒素吸収係数は、1つの糞便回収物由来の2つの便中窒素の結果を使用した2つの独立したCNA計算値の平均であった。平均CNAの3つの処置群間の相違を、平均CFAと同一の様式で分析した。
【0127】
CFAの測定と同様に、3つ全ての処置集団にわたって、ベースラインから処置期間までの平均CNAに有意な増加は認められた。3つ全ての処置集団では、脱落者を除く治療によるCNAは、治療群1よりも治療群2および治療群3の両方で有意に高かった。さらに、治療群2および3は、酵素なしから酵素ありまでの平均増加が治療群1よりも高かった。治療群3が治療群2を超える一貫した多数の利点を示したが、この相違は統計的に有意ではなかった。
【0128】
(表4−平均窒素吸収係数−分散分析)
【0129】
【表4】

*分散分析由来の全p値
**脱落者を除く治療の結果(2つ1組の比較のためのテューキーのスチューデント化された範囲の試験を使用):
治療群1対治療群2、mITT p値=0.0145。
治療群2対治療群3、mITT p値=0.6130。
治療群1対治療群3、mITT p値=0.0009。
【0130】
ベースラインCNAを0〜100%の五分位数に分けた場合、全治療群は、ベースラインCNAが40%を超えた場合よりも、ベースラインCNAが40%以下の場合のベースラインで増加したことが図2において明らかである。治療群2および3は、治療群1よりも依然として有効なようであった。さらに、ベースラインCNAが低いほど、治療に対する応答は高くなる。
【0131】
(CFAおよびCNAの改善およびその間の相関)
本研究は、3つの全処置集団の間での中用量および高用量処置群におけるベースラインから処置期間までの平均CFAおよびCNAの有意な増加を反映した。さらに、治療群3(高用量処置群)は、この期間でのCFAおよびCNAの最も高い平均増加を示したが、中用量と高用量との間の相違は統計的に有意ではなかった。CFAおよびCNAのベースライン値および性別の調節後でさえも、CFAおよびCNAのこの処置効果は統計的に有意なままであった(それぞれ、p=0.0003および<0.0001)。
【0132】
CFA増加とCNA増加との間の相関も統計的に有意であった。図3および4は、それぞれベースラインレベルおよび処置レベルでの本発明の全用量の組成物を使用して処置したmITT患者におけるCFAとCNAとの間の相関を示す。図5は、これらの患者における処置レベルおよびベースラインレベルでんCFAとCNAとの間の相関の相違を示す。
【0133】
(有効性の評価−ベースライン分析からの変化−糞便採取)
関連する処置期間の終点に対するベースラインから処置期間までの排便回数および糞便重量の平均変化を、それぞれ表5および表6に各研究処置群について個別に示す。
【0134】
3つ全ての治療群では、ベースラインから処置期間までの排便回数が減少した(それぞれ、p=0.0968、p=0.0975、およびp=0.1807)。治療群3は、特に、ベースラインから処置までの排便回数の平均減少(−.2.6 mITT における)が最も高かった(p=0.0003)。しかし、排便回数の変化における群間の比較により、治療群間の統計学的有意差は認められなかった。
【0135】
3つ全ての処置集団の中用量処置群と高用量処置群におけるベースラインから処置までの糞便重量も有意に減少した(p=0.0001)。3つ全ての集団の治療群3はベースラインから処置までの糞便重量の平均減少が最も高いが(p<0.0001)、テューキーのスチューデント化された範囲の検定を使用した2つ1組の比較によって、中用量の治療群と高用量の治療群との間に統計的有意差は認められなかった。
【0136】
(表5−ベースラインから処置までの排便回数の変化)
【0137】
【表5】

*分散分析由来の全p値
**対応のあるt検定
注釈:ベースラインの結果からの変化(2つ1組の比較のためのテューキーのスチューデント化された範囲の試験を使用):
治療群1対治療群2、mITT p値=0.5502。
治療群2対治療群3、mITT p値=0.4842。
治療群1対治療群3、mITT p値=0.2040。
【0138】
(表6−ベースラインから処置までの糞便重量(g)の変化)
【0139】
【表6】

*分散分析由来の全p値
**対応のあるt検定
注釈:ベースラインの結果からの変化(2つ1組の比較のためのテューキーのスチューデント化された範囲の試験を使用):
治療群1対治療群2、mITT p値=0.8842。
治療群2対治療群3、mITT p値=0.2415。
治療群1対治療群3、mITT p値=0.1971。
【0140】
(有効性の評価−血中グルコース反応によって測定したデンプン消化および炭水化物吸収)
デンプン攻撃試験では、入院患者のベースライン期間および入院患者の処置期間中、一晩(少なくとも8時間)絶食した被験体に、100gの白小麦粉パン(炭水化物50g)を含む標準試験食を摂取させた。デンプン攻撃試験の開始前に被験体を30分間休憩させ、評価中に活動を制限した。血糖計(Accucheck,Bayer)を使用して、血糖値を測定した。試験食の直前に測定した。パン食の間の約中間にTheraCLECTMを投与した。4時間にわたり、血糖計による測定を連続的に行った。計算値は、絶食レベル由来の最大グルコース変化および酵素あり−酵素なしでのグルコース変化(T17〜T1)を含む。空腹時グルコースの測定値が75mg/dL未満である場合、真性糖尿病を有する被験体に対してデンプン攻撃試験を行わなかった。
【0141】
mITT集団における血中グルコース反応を、以下の変数によって測定した。
時間0からのグルコース変化:時間0からの各時点でのグルコースの変化。
最大グルコース反応:時間0後の最大グルコース値。
グルコース反応の最大変化:最大反応−時間0でのグルコース値と定義する。
ピークグルコース反応時間(Tmax):時間0から最大グルコース変化までの時間と定義する。
【0142】
以下での処置群によるこれらの各変数についての記述統計学を示す。
1.TheraCLECTMなし
2.TheraCLECTMあり
3.TheraCLECTMあり−TheraCLECTMなし
4.TheraCLECTMあり:TheraCLECTMなし比(R)
これらの記述統計学を、全被験体および糖尿病のみを罹患していない被験体について示す。被験体は、公知の糖尿病の病歴を有するか、インスリンまたは糖尿病関連経口薬を服用している場合または空腹時血糖値が126mg/dL以上であるか食後血糖値は200mg/dL以上である場合に嚢胞性線維症関連糖尿病を罹患していると見なされる。
【0143】
表7では、25人の嚢胞性線維症関連真性糖尿病を有する被験体を分析から除外し、高ベースライングルコースおよび午前中のインスリン注射の結果としての「デンプン攻撃試験」後のグルコースの減少の両方由来のばらつきを減少させた。TCT5は、TCT25よりも酵素あり−酵素なしでの最大グルコースの増加が10mg/dL以上である被験体数が有意に(p=0.0053)減少するようである。さらに、表7の結果により、治療群2における中用量範囲のアミラーゼは治療群3における最も高い用量と有効性が同等であることが示唆される。
【0144】
(表7−嚢胞性線維症を有する非糖尿病患者におけるデンプン攻撃試験−−酵素あり−酵素なし処置での最大グルコース変化の観察)
【0145】
【表7】

概して、本研究は、血中グルコース反応によって測定したところ、本発明の組成物で処置した被験体は、デンプン消化および炭水化物吸収が増加し、高用量治療群の被験体ではこれらの増加により少ない時間しか必要としないことを証明した。
【0146】
(実施例3−第1相研究)
第2相研究前に、本発明の組成物を、膵機能不全を罹患した嚢胞性線維症患者における第1相試験でのその安全性および予備的有効性についても評価した。
【0147】
膵機能不全を罹患した23人の嚢胞性線維症患者におけるTheraCLECTMの急性安全性、耐用性、および臨床活性を決定するために、非盲検の用量分類研究を行った。被験体に、100、500、1,000、2,500、または5,000リパーゼ単位/kg/食事のTCTを3日間投与した。臨床的および実験的安全性パラメーターおよび有害事象をモニタリングした。
【0148】
第1相研究で重篤な有害事象または死亡は認められなかった。最も有害な事象は軽度であったが、胃腸管疾患は一般的であった。TheraCLECTMにより、100リパーゼ単位/kg/食事を投与した被験体以外の全ての群における脂肪吸収係数および窒素吸収係数が増加した。他の投与レベルでの全被験体について、平均CFA増加=20.6±23.5、平均CNA増加=19.7±12.2%、および平均糞便重量の減少=425±422g。
【0149】
TheraCLECTMは、5,000リパーゼ単位/kg/食事までの用量で、この短期曝露研究で十分に許容された。予備的有効性データは、脂肪および窒素吸収に対する有益な効果を証明した。有利には、これらの効果は、500リパーゼ単位/kg/食事の投薬量で認められ、これらの結果を達成するためのレベルを超える用量に増加させる必要はないようであった。これらのデータは、より大きく無作為化した第2相試験を支持した。
【0150】
(1.第1相研究デザイン)
嚢胞性線維症を有する膵機能不全被験体における5つの用量レベルのTheraCLECTMの急性安定性および耐用性を決定することを主な目的として、非盲検の多施設用量分類研究を行った。第2の目的は、経口脂肪および窒素吸収、胃腸の症状、ならびに糞便の回数および重量に対するTheraCLECTMの効果を決定することであった。TheraCLECTMは、リパーゼ、アミラーゼ、およびプロテアーゼの比率が固定されていた。投与コホートは、表8に示すように、リパーゼ用量/kg/食事に基づいていた。
【0151】
(表8−投与コホート)
【0152】
【表8】

比率が固定された以下の酵素を有するカプセルとして提供される:リパーゼ20,000USP単位+プロテアーゼ20,000USP単位+アミラーゼ3,000USP単位/カプセル。
【0153】
11箇所のCF財団承認施設のうちの1つに属する嚢胞性線維症を有する被験体を、本研究に採用した。全被験体は、現地の治験審査委員会によって承認されている同意書に署名し、小児科の患者の場合も同意を得た。被験体が、13歳以上45歳以下である場合、標準的基準に基づいて嚢胞性線維症と診断された場合(B.J.Rosenstein et al.,“The Diagnosis of Cystic Fibrosis:A Consensus Statement”,J.Pediatr.,132,pp.589−595(1998))、ScheBoモノクローナルELISAアッセイ(BioTech USA)を使用した外来患者で測定された100mg/gm未満である糞便エラスターゼに基づいて膵機能不全である場合、入院患者スクリーニングで測定された80%以下の脂肪吸収係数を有する場合、30%以上の推定1秒率(FEV)を有する場合、10パーセンタイルを超える体系指数を有する場合、急性上気道または下気道感染の証拠がなく、臨床的に安定している場合、被験体が含まれた。被験体が、妊娠または授乳している場合、前6カ月以内に緊急治療室または病院で介入を必要とする遠位小腸閉塞症候群の発作(episode)を起こした場合、前の週に胃のpHを変化させる薬物(例えば、ヒスタミン−2受容体アンタゴニスト、プロトンポンプインヒビター、または制酸薬)を服用しており、研究中にこれらの薬物を中断することができない場合、線維性大腸症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、または以下の基準によって定義される肝疾患の病歴を有する場合(正常値の2倍のアラニンアミノトランスフェラーゼ(AST)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)、またはアルカリホスファターゼ、静脈瘤出血の病歴、肝生検による肝硬変または有意な肝臓疾患の証拠、肝臓移植、被験体が前年にウルソデオキシコール酸を投与されたこと)に被験体を排除した。研究プロトコールの入院患者部分で経腸チューブ栄養を中断することができない被験体、既知の食品添加物に対する過敏症を有する被験体、または前月現在で承認されていない薬物、生物製剤、もしくはデバイスについて任意の他の調査研究に関与した被験体も排除した。
【0154】
最初のスクリーニング外来で被験体が基準を満たした場合、被験体を臨床研究センターに収容した。被験体の処方された酵素療法を中断し、指標染色マーカー(FD&C Blue番号2、500mg)を経口投与し、被験体に、体重1kgあたり100gの脂肪および最少で2gのタンパク質からなる特別食を3回の食事および2回の軽食に分割して与えた。実際の脂肪およびタンパク質取り込みを、食物消費量に基づいて記録した。特別食から72時間後、食事を中断し、第2の指標マーカーを与えた。この時点で、患者の通常の酵素療法を再開した。便中脂肪および窒素評価のための糞便回収を、青色マーカーが認められた第1の排便後に開始し、第2のマーカーが通過した時に完了した(それにより、回収物中に糞便が含まれる)。CFAを計算し、これが80%以下である場合、被験体は、本研究の処置期に適格であった。
【0155】
被験体を再度臨床研究センターに収容し、日常的な膵酵素補充を中断した。染色マーカーおよび特別食を与え、被験体に、その後の72時間に3回の各食事および2回の各軽食と共に研究薬物を摂取させた。コホートあたりの用量は前に記載している。被験体に、各食事前に研究薬物を摂取するように指示した。72時間後、特別食を中断し、第2の指標マーカーを投与した。この時点で、患者の通常の酵素療法を再開した。糞便回収手順は、上記と同一であった。退院から3日以内に臨床研究センターから追跡のための電話連絡を行い、退院から3〜7日後に追跡のための訪問を行った。
【0156】
安全性モニタリングは、外来患者の外来、入院患者のケア、および定期的な電話連絡の際の研究被験体の無制限の質問によって判断された有害事象の発生率、異常な臨床試験の頻度(日常的な血液学的試験、血液生化学検査、および凝集プロフィール、尿検査、尿中尿酸排泄、ならびに便中ヘムおよび白血球アッセイが含まれる)を含んでいた。GI用に修正した嚢胞性線維症質問表(CFQ)によって測定された胃腸管症状の頻度もモニタリングした(A.Quittner et al.,“CFQ Cystic Fibrosis Questionnaire,a Health Related Quality of Life Measure”,English Version 1.0.(2000))。
【0157】
CF財団の治療開発ネットワークのデータ安全モニタリング委員会(DSMB)がこの試験を監督した。DSMBが試験を通して増量のコホートの安全性データをモニタリングし、正式な安全性の評価を行った後に、被験体を5,000リパーゼ単位/kg/食事コホートに参加させることができた。なぜなら、上記用量が現在の投与推奨量を超えるからである。DSMBはまた、被験体の安全性に懸念がある場合はいつでも試験を停止させた。
【0158】
(2.第1相組成物)
TheraCLECTMの3つの酵素成分(リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼ)を、個別に製造した。リパーゼを、Burkholderia cepacia(以前は、Pseudomonas cepaciaとして公知であった)からの発酵によって誘導し、これを処理してリパーゼ結晶を形成させ、その後に架橋し、腸溶コーティングを行うことなく酸およびプロテアーゼに対して安定な酵素形成を得た(TheraCLECTMリパーゼと呼ぶ)。各バッチを、Burkholderia cepaciaとの微生物汚染について明確に培養し、臨床用途のために発売される前にBurkholderia cepaciaについて陰性でなければならなかった。プロテアーゼ成分は、Aspergillus melleusに由来し、アミラーゼ成分は、Aspergillus oryzaeの発酵に由来した。同様に、これらの生成物に対して複数の精製工程を行い、その後、これらを、全カビおよび酵母について培養した。
【0159】
3つの酵素成分を含むTheraCLECTMを、粉末含有カプセルとして処方した。前臨床有効性研究により、膵機能不全イヌモデルにおいてリパーゼおよびプロテアーゼが、500リパーゼ単位/kg/食事以上および1000プロテアーゼ単位/kg/食事以上の用量で有効であることが証明された。USPおよびFCC(食品添加物公定書(Food Chemical Codex))法(薬物試験のために使用したUSP法と等価)を使用して、TheraCLECTM中のアスペルギルス由来のアミラーゼのin vitro分析を行った。真菌アミラーゼは、ブタ由来アミラーゼと異なるpHプロフィールを有する。真菌アミラーゼは、pH4.8でブタアミラーゼよりも20倍活性である。したがって、標準的なパンクレリパーゼカプセル中のリパーゼに比例すると考えられる用量の1/20のアミラーゼを、TheraCLECTMのために選択した。
【0160】
(3.第1相研究のデータ分析)
脂肪吸収係数を、以下のように計算した。
(消費脂肪(g)−排泄脂肪(g))×100/消費脂肪(g)
窒素のg数を使用した同一の式を使用して、窒素吸収係数(CNA)を計算した。
【0161】
本発明者らは、人口統計学的特徴および予想される特徴(年齢、性別、人種、遺伝子型、肺機能、ならびにコホートおよび全体への投与によるスポット(spot)糞便エラスターゼが含まれる)をまとめることを計画した。この第1相研究のサンプルサイズは、20人の被験体と見積もり、投与コホートあたり4人の被験体と見積もった。本研究は、正式な統計的試験にできなかった。本発明者らは、標準的な分類体系を使用して有害事象を分類することを計画した。研究期間、測定点、および投与コホートによる異常な実験値の頻度を表にした。
【0162】
(4.第1相研究の結果)
11の嚢胞性線維症センターで23人の被験体(男性14人)が参加した。被験体の平均年齢は、23.5±(7.8)(SD)(範囲=15.2〜44.5歳)であった(表9)。被験体を同時に採用したいくつかのセンターの結果として、コホート1、3、および5でさらに1人の被験体をそれぞれ参加させた。
【0163】
(表9−研究の人口統計)
【0164】
【表9】

(5.安全性)
TheraCLECTMは、全用量レベルで十分に許容された。重篤な有害事象または死亡は報告されておらず、研究を取りやめた患者は存在しなかった。酵素なし療法の予備処置期間中、最も一般的に影響を受けた身体の系は、胃腸管であり、14人の被験体が全部で23の前処置有害事象を報告した。最も一般的な前処置胃腸管有害事象は、腹部不快感(4被験体が5事象を報告した)、上腹部痛(4被験体が4事象を報告した)、および鼓腸(4被験体が4事象を報告した)であった。2番目に最も影響を受けた身体の系は、呼吸器系であり、5被験体が8つの処置前有害事象を報告した。最も一般的な前処置呼吸器有害事象は、咳(4被験体が4事象を報告した)であった。
【0165】
2日目後に始まった処置緊急有害事象は、23人中18人(78.3%)の被験体で起こった。処置緊急有害事象の発生率は、コホートの間で統計的有意差は認められなかった(p=0.6196)。11人(47.8%)の被験体に関連有害事象(調査員によって研究薬物におそらくまたは場合によっては関連すると分類される事象と定義する)が認められた。
【0166】
6人の被験体は、研究中にアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の増加を経験した。4人被験体の酵素レベルが上昇し、この上昇は、研究薬物処置後に始まった。1人の被験体(コホート1)は、研究終了時の外来で高いALTレベルを示し、1人の被験体(コホート5)は、追跡外来における追跡評価でASTの上昇が認められた。
【0167】
(6.有効性)
表10ならびに図6および7にまとめるように、コホート1〜4の予備臨床活性データは、TheraCLECTMでの処置によって全ての膵酵素補充のない期間と比較した場合にCFAおよびCNAが増加したことを証明している。コホート1〜4の全被験体について、CFAの平均増加は20.6±23.5%であり、平均CNAは19.7±12.2%増加した。これらのコホートについて、TheraCLECTMでの処置後に糞便重量も減少し、平均減少は425±422gであった。CFAおよびCNAは、、最も低いTheraCLECTM用量レベルで酵素なしレベルより最も少なく増加した(コホート5:100USP単位リパーゼ/kg/食事、100USP単位プロテアーゼ/kg/食事、および15USP単位アミラーゼ/kg/食事)。
【0168】
(表10−TheraCLECTMの臨床活性:スクリーニング期間から処置期間までの変化)
【0169】
【表10】

SD=標準偏差
脂肪吸収係数=100*(消費脂肪(g)−得られた脂肪(g))/(消費脂肪(g))
窒素吸収係数=100*(消費窒素(g)−得られた窒素(g))/(消費窒素(g))。
【0170】
(第1相研究の結果)
TheraCLECTMは安全なようであり、この3日間の曝露研究において十分に許容された。処置緊急有害事象は、用量とは無関係であった。被験体が通常のケアを受けているか、酵素なしであるか、TheraCLECTMを投与されているかにかかわらず、本研究中の胃腸管の病訴が頻繁であったが、被験体が通常のケアを受けている場合、外来期間中に頻度が最も低かった。研究における入院患者に、定期的に被験体にGI病訴について質問したが、非盲検で研究したので、先入観があった。便中の肝臓酵素の上昇およびヘムおよび白血球の両方の存在は、被験体にTheraCLECTMを投与した場合と酵素なしまたは通常のケアを行った場合とで同程度に一般的であった。
【0171】
ベースラインと比較してTheraCLECTMによって脂肪および窒素の吸収が改善され、TheraCLECTMのリパーゼおよびプロテアーゼ成分の有効性が証明された。500リパーゼ単位/kg/食事を超える用量で用量−応答曲線は認められないようであった。用量の増加と共に糞便重量が減少する傾向があったが、範囲は広かった。本研究におけるCFA値は、既刊文献中の値よりも低いようである。選択の偏り、食事、完全な回収、および酵素のタイミングによって説明可能である。
【0172】
糞便エラスターゼのスクリーニングによって判断したところ、本研究中の全被験体は重症膵機能不全を罹患しており、これは、酵素なしのCFAによって裏付けられた。他の研究は、膵酵素が十分な(pancreatic sufficient)患者が含まれており、これにより、平均CFAが高くシフトするであろう(R.C.Stern et al.,“A Comparison of the Efficacy and Tolerance of Pancrelipase and Placebo in the Treatment of Steatorrhea in Cystic Fibrosis Patients with Clinical Exocrine Pancreatic Insufficiency”,Am J.Gasteroenterol.,pp.1932−1938(2000);M.P Francisco et al.,“Ranitidine and Omeprazole as Adjuvant Therapy to Pancrealipase to Improve Fat Absorption in Patients with Cystic Fibrosis”,J.Pediatr.Gastrenterol.Nutr.,35,pp.79−83(2002))。
【0173】
本研究では、被験体に少なくとも1日あたり100gの脂肪を与えた。患者の日常的食事に基づいて実施された文献に報告されたCFAは、より低い脂肪摂取に基づいている可能性が高く、このことは、多数の外来患者が1日あたり100g未満の脂肪を摂取しているからである(P.Durie et al.,“Uses and Abuses of Enzyme Therapy in Cystic Fibrosis”,J.Royal Soc.Med.,91,suppl.34,pp.2−3(1998);D.A.Kawchak et al.,“Longitudinal,Prospective Analysis of Dietary Intake in Children with Cystic Fibrosis”,J.Pediatr.,129,pp.119−129(1996))。脂肪負荷が低いほど、嚢胞性線維症患者で認められる残存代償性(compensatory)舌リパーゼによってより容易に処理することができる(B.Fredrikzon et al.,“Lingual Lipase:an Important Lipase in the Digestion of Dietary Lipids in Cystic Fibrosis?”,Pediatr.Res.,14,pp.1387−1390(1980))。
【0174】
青色食用色素を使用して、糞便回収物に印を付けた。ついでながら言うと、臨床研究センターの看護師は、カーマインレッドまたはチャコールのマーカーは糞便中の識別が困難であり得ると報告している。500mgの用量のFD&C Blue番号2の経口投与は、糞便中を通過した場合に容易に目視することができ、糞便回収の開始および終了の境界が明確に定められる。糞便回収の短縮により、総糞便回収物中の脂肪がより少なくなり、CFAが不当に高くなる。以前の研究は、回収の開始および終了の識別が困難であったので、CFAが不当に高くなった可能性がある。糞便の回収は不快であるので、できるだけ速く回収を終了しようとする傾向がある。
【0175】
上記発明は本発明を明確にし、理解を深める目的で図面および実施例によっていくらか詳細に記載しているが、本発明の教示に照らして、本明細書中の開示(添付の特許請求の範囲が含まれる)の精神または範囲から逸脱することなく、一定の変更および修正を行うことができることが当業者に容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、第2相試験で本発明の組成物を使用して処置した患者における、ベースラインと比較した平均脂肪吸収係数(「CFA」)の変化を示す。
【図2】図2は、第2相試験で本発明の種々の組成物を使用して処置した患者における、ベースラインと比較した平均窒素吸収係数(「CNA」)の変化を示す。
【図3】図3は、第2相試験で本発明の組成物を使用して処置した患者における、ベースラインでの脂肪吸収係数(「CFA」)と窒素吸収係数(「CNA」)との間の相関関係を示す。
【図4】図4は、第2相試験で本発明の組成物を使用して処置した患者における、治療レベルでの脂肪吸収係数(「CFA」)と窒素吸収係数(「CNA」)との間の相関関係を示す。
【図5】図5は、第2相試験で本発明の組成物を使用して処置した患者における、治療レベルおよびベースラインレベルでの脂肪吸収係数(「CFA」)と窒素吸収係数(「CNA」)との間の相関関係の相違を示す。
【図6】図6は、第1相試験で本発明にしたがって種々の用量で処置した嚢胞性線維症患者における、ベースラインと比較した平均脂肪吸収係数(「CFA」)の変化を示す。
【図7】図7は、第1相試験で本発明にしたがって種々の用量で処置した患者における、ベースラインと比較した平均窒素吸収係数(「CNA」)の変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼを含む組成物であって、前記組成物中のリパーゼ、プロテアーゼ、およびアミラーゼの比が、1:1:0.15USP単位である、組成物。
【請求項2】
前記リパーゼが、架橋リパーゼ結晶の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リパーゼ結晶が、多官能性架橋剤を使用して架橋されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多官能性架橋剤が、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレートである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記プロテアーゼが、プロテアーゼ結晶の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アミラーゼが、無定形アミラーゼの形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記リパーゼが微生物リパーゼであり、前記プロテアーゼが微生物プロテアーゼであり、前記アミラーゼが微生物アミラーゼである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記微生物リパーゼが、細菌リパーゼである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記細菌リパーゼが、シュードモナスリパーゼである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記細菌リパーゼが、バークホルデリアリパーゼである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記微生物プロテアーゼが、真菌プロテアーゼである、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記真菌プロテアーゼが、アスペルギルスプロテアーゼである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記アスペルギルスプロテアーゼが、Aspergillus melleusプロテアーゼである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記微生物アミラーゼが、真菌アミラーゼである、請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
前記真菌アミラーゼがアスペルギルスアミラーゼである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記アスペルギルスアミラーゼが、Aspergillus oryzaeアミラーゼである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記リパーゼが、架橋シュードモナスリパーゼ結晶および架橋バークホルデリアリパーゼ結晶からなる群から選択され、前記結晶がビス(スルホスクシンイミジル)スベレートで架橋されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項18】
前記リパーゼが、架橋シュードモナスリパーゼ結晶および架橋バークホルデリアリパーゼ結晶からなる群から選択される架橋リパーゼ結晶の形態であり、前記プロテアーゼが、Aspergillus melleusプロテアーゼ結晶の形態であり、前記アミラーゼが無定形Aspergillus oryzaeアミラーゼの形態である、請求項7に記載の組成物。
【請求項19】
薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、錠剤、カプセル、錠剤、スラリー、サシェ、懸濁液、および糖衣錠からなる群から選択される経口投薬形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
哺乳動物の吸収不良を治療する方法であって、前記哺乳動物に、治療有効量の請求項1に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項22】
哺乳動物の膵機能不全を治療する方法であって、前記哺乳動物に、治療有効量の請求項1に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項23】
哺乳動物における脂肪吸収係数および窒素吸収係数を増加させる方法であって、前記哺乳動物に、治療有効量の請求項1に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項24】
前記脂肪吸収係数および窒素吸収係数が、前記哺乳動物で同量増加する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物の炭水化物吸収を増加させる方法であって、前記哺乳動物に、治療有効量の請求項1に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項26】
前記哺乳動物が嚢胞性線維症を罹患している、請求項21、請求項22、請求項23、および請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記治療有効量の組成物を、前記哺乳動物に、約25,000USP単位のリパーゼ、約25,000USP単位のプロテアーゼ、および約3,750USP単位のアミラーゼを投与する、請求項21、請求項22、請求項23、および請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記治療有効量の組成物を、前記哺乳動物に、約100,000USP単位のリパーゼ、約100,000USP単位のプロテアーゼ、および約15,000USP単位のアミラーゼを投与する、請求項21、請求項22、請求項23、および請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物を、前記哺乳動物に、各食事または軽食時に投与する、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記治療有効量の組成物により、ベースラインが40%以下である場合、前記哺乳動物の脂肪吸収係数が前記哺乳動物の脂肪吸収のベースライン係数よりも約30%と約35%との間の量で増加する、請求項21、請求項22、および請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記治療有効量の組成物により、ベースラインが40%以下である場合、前記哺乳動物の窒素吸収係数が前記哺乳動物の窒素吸収のベースライン係数よりも約30%と約35%との間の量で増加する、請求項21、請求項22、および請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記治療有効量の組成物により、ベースラインが40%を超えるが85%未満である場合、前記哺乳動物の脂肪吸収係数が前記哺乳動物の脂肪吸収のベースライン係数よりも約10%と約25%との間の量で増加する、請求項21、請求項22、および請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療有効量の組成物により、ベースラインが40%を超えるが85%未満である場合、前記哺乳動物の窒素吸収係数が前記哺乳動物の窒素吸収のベースライン係数よりも約10%と約25%との間の量で増加する、請求項21、請求項22、および請求項23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記治療有効量の組成物により、前記哺乳動物の炭水化物吸収が前記哺乳動物のベースライン炭水化物吸収よりも約10%以上の量で増加する、請求項21、請求項22、および請求項25のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−516965(P2008−516965A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536877(P2007−536877)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/036802
【国際公開番号】WO2006/044529
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(505245494)アルタス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】